JP2008039971A - レンズ系設計法 - Google Patents

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Abstract

【課題】光軸に対して回転対称なレンズ系において正確な収差係数を用いて高次収差を計算するレンズ系設計方法を提供する。
【解決手段】光軸に対して回転対称なレンズ系における入射瞳面上の座標値と物体面上の座標値による3個の回転不変量をU,V,Wとし、この回転不変量のそれぞれの冪乗数をi,j,kとし、光学系の物体面上の位置または像面上の位置の光軸からの距離をysとし、光学系の入射瞳面上の位置または射出瞳面上の位置の光軸からの距離をytとし、光学系の物体面上の位置または像面上の位置の光軸からの距離ysと3個の回転不変量U,V,Wに対する収差係数をAijkとし、光学系の入射瞳面上の位置または射出瞳面上の位置の光軸からの距離ytと3個の回転不変量U,V,Wに対する収差係数をBijkとしたとき、光学系の収差yを次式
【数196】
Figure 2008039971

により表して高次収差計算をするレンズ系設計方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、カメラ、顕微鏡、双眼鏡、複写機、投影機など、あらゆる光学分野に使用されるレンズ系(光学系)の設計方法に関する。
従来レンズ系は、光軸上に屈折光学素子または、反射光学素子または、それらを複数枚組み合わせたもので構成され、それらの光学系を構成するパラメータ(曲率半径、間隔、屈折率など)を最適に設計することで収差を補正し、所望の性能を得ていた。最適なパラメータ値を求めるために、現設計時点での収差値と、その設計値のパラメータをわずかに変化した場合の収差の変化率を求め、それらの値から、最小二乗法または減衰最小二乗法(DLS法)によりさらに良い設計解を得ていた。しかし、パラメータ値に対して収差値がきわめて非線形なために、最小二乗法または減衰最小二乗法による最適値を一回で求められることは稀で、何回も繰り返して計算することにより、所望の性能を得ていた。
しかし、DLS法などにより一旦設計解に収束すると、他にさらに良い解があってもそこに移動することは極めて困難で、何らかの手動的な操作によりパラメータを大幅に移動させなければ、別の設計解に収束することはできない。パラメータをどのように動かすかは、従来からレンズ設計者の勘と経験に頼らなければならなかった。そこで、最近になって、このような局所的な設計解で停止せずに、その極小値を乗り越えてもっと別の設計解を探索するというような、「グローバル最適化」を行うようなレンズ設計アルゴリズムが提案されるようになってきた。S. C. Johnstonによる方法は、その「グローバル最適化」の一つの方法であって、パラメータの変動に対して比較的変動がゆるやかな、高次の収差から最適化して、最後に最低次の収差まで最適化することにより、実収差による極小値を乗り越えて、よりグローバルに最適化する方法である(例えば、非特許文献1参照)。
S. C. Johnston[SPIE International Lens DesignConference Vol.554 p48-p51 (1985)]
このような高次収差から最適化を行うためには、当然高次収差係数を計算することが必要である。従来、高次収差係数の計算方法に関しては多くの論文があるが、どの論文でも高次収差の計算方法はかなり複雑であり、5次収差までは一般的に計算できるが、7次収差以上になると、球面収差以外はあまり知られていないのが実情である。
そこで、本発明では、従来計算が複雑で困難であった高次収差を、汎用的に計算する方法を提供することを課題としている。また、高次収差により最適化するために、高次収差のパラメータによる微係数を計算する必要があるが、その微係数を差分により近似して計算すると、次数が高くなるほどかなり計算時間がかかるようになる。そこで、本発明では、微係数をもっと短時間で計算する方法をも提供することを課題としている。
また、レンズ系の波動光学的評価のために、Zernike係数を求める場合があるが、そのためには、波面収差係数(ニーボアの係数)から求める必要があるが、高次の波面収差係数は、通常瞳面を分割して後、多数の光線追跡をして、それらの波面収差から数値解析(最小二乗法)により求められている。しかし、高次の収差まで求めるためには、かなり多数本の光線追跡をしないと、正確には求められないのが現状である。ところが、収差論的な計算方法であると、数値解析と違って、追跡する光線本数に依存せずに正確に計算できることが期待される。
前記課題を解決するために、第1の本発明に係るレンズ系設計方法は、光軸に対して回転対称なレンズ系における高次収差係数の3個の添え字を、それぞれの回転不変量の冪乗数で表して高次収差を計算する。
また、第2の本発明に係るレンズ系設計方法は、光軸に対して回転対称な光学系における入射瞳面上の座標値と物体面上の座標値による3個の回転不変量をU,V,Wとし、この回転不変量のそれぞれの冪乗数をi,j,kとし、光学系の物体面上の位置または像面上の位置の光軸からの距離をysとし、光学系の入射瞳面上の位置または射出瞳面上の位置の光軸からの距離をytとし、光学系の物体面上の位置または像面上の位置の光軸からの距離ysと3個の回転不変量U,V,Wに対する収差係数をAijkとし、光学系の入射瞳面上の位置または射出瞳面上の位置の光軸からの距離ytと3個の回転不変量U,V,Wに対する収差係数をBijkとしたとき、この光学系の収差yを次式
Figure 2008039971
により表して高次収差を計算する。
また、第3の本発明に係るレンズ系設計方法は、光軸に対して回転対称なレンズ系における物体面座標値と入射光線方向の正接による3個の回転不変量をU,V,Wとし、この回転不変量のそれぞれの冪級数をi,j,kとし、光学系の物体面上の位置または像面上の位置の光軸からの距離をysとし、光学系の入射光線方向または屈折光線方向の正接をtyとし、光学系の物体面上の位置または像面上の位置の光軸からの距離ysと3個の回転不変量U,V,Wに対する収差係数をAijkとし、光学系の入射光線方向または屈折光線方向の正接tyと3個の回転不変量U,V,Wに対する収差係数をBijkとしたとき、この光学系の収差yを次式
Figure 2008039971
により表して高次収差計算をする。
このとき、高次収差による非点収差の計算方法は、レンズ系の像面での位置および射出瞳面上の位置または光線方向の正接を、入射瞳面上の座標値または物体面上の座標値で微分した量から求めることが好ましい。
また、高次収差のレンズ形状を示すパラメータによる微分を計算するときには、パラメータによる微分計算した面以後の収差係数に、像面位置と射出瞳面位置の移動による微分の項を付加させないで、レンズ系全体の収差係数についてのパラメータによる微分を計算して後、パラメータによる近軸最終像面位置の移動による項を追加することが好ましい。
本発明により、高次収差の汎用的な計算が可能になり、計算時間と計算機のメモリーの制約がなければ、何次の次数までの収差でも計算可能となった。また、高次収差による非点収差の計算が可能となった。
さらに、高次収差をパラメータで微分することにより、微分を差分近似する場合よりも高速で高次収差を最適化することが可能となった。
従来、レンズの収差係数は、M.Herzberger[J. Opt. Soc. Amer.,29(1939),395]の論文にあるように、回転対称な光学系では、物体面上の点、または像面上の点の座標値を(s,y,z)、入射瞳面上の点、または射出瞳面上の点の座標値を(t,y,z)とすると、回転不変量
Figure 2008039971
により、収差を
Figure 2008039971
等のように展開して、3次収差係数はA1i、5次収差係数はA1ik、というように、収差係数の次数により係数の添え字の個数が異なっている。しかし、収差係数の次数により係数の添え字が異なっていると、収差係数の次数毎に異なった配列を用意する必要があり、異なった次数の収差係数をプログラムで汎用的に一括して処理するためには、非常に不便である。そこで、回転不変量を、
Figure 2008039971
として、収差を
Figure 2008039971
というように、収差係数の3個の添え字を,それぞれの回転不変量の冪乗数で表し、どの次数の収差係数も,添え字を3個に統一するようにする。すると、3次収差係数はA100, A010, A001, B100, B010, B001、つまり、Aijk,Bijkにおいてi+j+k=1、5次収差係数はA200, A110, A101, A020, A011, A002, B200, B110, B101, B020, B011, B002、つまりi+j+k=2、というように、添え字の合計数により収差係数の次数が異なるが、プログラミングするときに収差係数の次数毎に異なった配列を用意する必要がなく、異なった次数であっても収差係数の汎用的な処理が可能となる。汎用的な計算方法が確立すれば、計算時間と計算機のメモリーの制約がなければ、何次の次数までの収差でも計算可能となる。そして、低次の収差から順に計算する場合は、
Figure 2008039971
とすれば良い。この場合収差の最大次数は、2N+1であり、N=1と指定すれば3次収差が、N=2と指定すれば5次収差までが、N=3と指定すれば7次収差までが計算できる。
ところで、従来レンズの収差係数は、Seidel収差係数やHerzbergerによる係数のように、物体面座標値と入射瞳面座標値の関数の係数として与えられてきた。そこで、第一の展開方法として高次収差についても、物体面座標値と入射瞳面座標値の関数の係数として計算する方法を示す。ところが、カメラレンズや望遠鏡のレンズのように、物体がほぼ無限遠にある場合、物体面座標値と入射瞳面座標値の関数の係数として表すのは困難である。そこで、第二の展開方法として、松居吉哉の「レンズ設計法」(共立出版)のP79からにあるように、物体面座標値と入射光線方向の正接の関数の係数として計算する方法を示す。
先ず、第一の展開方法で、単一のレンズ面による収差係数の計算方法について、説明する。第一段階として、レンズ面上での光線到達位置を、物体面座標値と入射瞳座標値の冪級数展開で計算する方法を示す。図2の、第一の展開方法による高次収差計算過程の概略図では、V1の矢印で表してある。図1にあるように、物体位置をs、入射瞳位置をt、物体面上の点Sの座標値を(s,y,z),入射瞳面上の点Tの座標値を(t,y,z)とし、光軸をx軸とする。点Sと点Tを通過した光線がレンズ面上の点Rに到達するとし、点Rの座標値を(x,y,z)とし、レンズ面と光軸との交点を原点(0,0,0)とする。そして、レンズ面上での位置関係が
Figure 2008039971
であるとする。ここで、係数Cmはレンズの形状によってのみ決まる係数である。物体面上の点Sを出た光線が、レンズに到達するまでの光線の式は、図1において、横軸が光軸でそれをx軸、縦軸をy軸とすると、図1より明らかなように、
Figure 2008039971
となり、図1の縦軸をy軸の代わりにz軸とすると、
Figure 2008039971
となる。ただし、
Figure 2008039971
である。従って、
Figure 2008039971
となる。そこで、回転不変量を、
Figure 2008039971
として、
Figure 2008039971
と置く。ただし、summationの記号の定義として、
Figure 2008039971
は、(2N+1)次から(2M+1)次までの収差の和を表すものとする。
Figure 2008039971
とすると、式(1-1-8)〜(1-1-12)より、
Figure 2008039971
となり、係数を比較すると、
Figure 2008039971
となる。l+m+n=Nのとき、FlmnはU,V,WのN次の係数であるが、式(1-1-16)を見ると、Aijk,BijkはU,V,Wの(N-1)次までの係数の積和で表されることがわかる。つまり、U,V,Wの(N-1)次までの係数Aijk,Bijkを計算して後、U,V,WのN次の係数Flmnを計算するというように、漸化的に計算すれば良い。なお、冪級数で表される関数どおしの積の冪級数の係数を,係数比較により計算する方法は、Duncan T. Mooreがgradient index光線方程式を冪級数展開により求めた方法を参考にした[J. Opt. Soc. Amer. 65,451(1975)を参照]。また、
Figure 2008039971
とすると、漸化式
Figure 2008039971
が成り立つ。
Figure 2008039971
とすると、
Figure 2008039971
となる。式(1-1-6)に式(1-1-11)、(1-1-19)を代入すると、
Figure 2008039971
となる。式(1-2-21)の係数を比較すると、
Figure 2008039971
となる。これで、第一段階のレンズ面上での光線到達位置の冪級数展開の係数を求めたことになる。
なお、式(1-1-7)に式(1-1-12),(1-1-20)を代入すると、式(1-1-21)においてy,yの代わりにz,zを置き換えた式になる。一般的に回転対称なレンズ系では、y方向の座標値や方向余弦をz方向の座標値や方向余弦に置き換えても成り立つので、以後の標記においては、y方向で成り立つ式のみ標記し、z方向で成り立つ式を省略するときもある。
次に、第二段階として、屈折後の像面座標値を物体面座標値と入射瞳座標値の冪級数展開で計算する方法を示す。図2の、第一の展開方法による高次収差計算過程の概略図では、V2の矢印で表してある。図1にあるように、第一段階で求めた点R(x、y、z)から屈折して、像面上の点S′と射出瞳面上の点T′を通過し、点S′の座標値を(s′,y′,z′),点T’の座標値を(t′,y′,z′)とする。そして、屈折式により、点S′の冪級数展開の係数を求める。ボルン・ウオルフ著:「光学の原理I」(邦訳:東海大学出版会)のP192によると、屈折前の媒質の屈折率をn0,屈折後の媒質の屈折率をn1,屈折前の光線の方向余弦を(Cx,Cy,Cz)、屈折後の光線の方向余弦を(Cx′,Cy′,Cz′)とすると、屈折の法則は、ベクトルN(n0x−n1x′,n0y−n1y′,n0z−n1z′)が、点(x,y,z)における曲面と直交することと同じなので、式(1-1-1)を
Figure 2008039971
の形に書き直すと、
Figure 2008039971
が成立する。ゆえに、
Figure 2008039971
となる。従って、
Figure 2008039971
と置くと、図1において、横軸をx軸、縦軸をy軸とすると、図1より明らかなように、入射光線と屈折光線のx方向の方向余弦はそれぞれ、
Figure 2008039971
となり、入射光線と屈折光線のy方向の方向余弦はそれぞれ、
Figure 2008039971
となり、図1の縦軸をy軸の代わりにz軸とすると、入射光線と屈折光線のy方向の方向余弦はそれぞれ、
Figure 2008039971
となる。式(1-2-5)に、式(1-2-9)〜(1-2-12)を代入することにより、
Figure 2008039971
となり、式(1-2-6)に、式(1-2-9),(1-2-10),(1-2-13),(1-2-14)を代入することにより、
Figure 2008039971
となる。このレンズの曲率半径をrとすると、2C1=1/rであり、式(1-2-15)より、
Figure 2008039971
となる。そこで、像面上での係数を求めるために、
Figure 2008039971
と置く。また、
Figure 2008039971
と置いて、式(1-2-7)、(1-2-8)の平方根の冪級数展開を求めるが、平方根をテーラー展開して求めるよりも、
Figure 2008039971
の両辺を2乗して係数を比較する方が、はるかに速く計算できる。その方法を以下に説明すると、先ず、式(1-2-22)において、式(1-1-8)〜(1-1-10)より、
Figure 2008039971
となる。従って、
Figure 2008039971
と置くと、
Figure 2008039971
となる。また、
Figure 2008039971
と置いて、係数を比較して、
Figure 2008039971
となる。Oijkは、0次の場合はゼロなので、式(1-2-28)で、O2lmnのN次の係数は、Oijkの(N-1)次までの係数の積で与えられる。式(1-2-22)の両辺を2乗して、式(1-2-25)、(1-2-27)を代入すると、
Figure 2008039971
となり、係数を比較して、
Figure 2008039971
となる。
また、式(1-2-23)において、式(1-1-8)〜(1-1-12)、式(1-2-18)、式(1-2-19)より、
Figure 2008039971
となり、
Figure 2008039971
と置くと、係数を比較して、
Figure 2008039971
となる。l+m+n=Nのとき、PlmnはU,V,WのN次の係数であるが、式(1-2-33)を見ると、Aijk,Aijk′,Bijk,Bijk′のU,V,Wの(N-1)次までの係数の積和で表されることがわかるので、U,V,Wの(N-1)次までの係数Aijk,Aijk′,Bijk,Bijk′を計算して後、U,V,WのN次の係数Plmnを計算するというように、漸化的に計算すれば良い。式(1-2-23)の両辺を2乗して、式(1-1-19),(1-2-33)を代入することにより、
Figure 2008039971
となる。また、
Figure 2008039971
と置いて、係数を比較して、
Figure 2008039971
となる。Sijk,Xijkも、0次の場合はゼロなので、式(1-2-37),(1-2-38)で、S2lmn,X2lmnのN次の係数は、Sijk,Xijの(N-1)次までの係数の積で与えられる。式(1-2-35),(1-2-36)を式(1-2-34)に代入して、係数を比較して、
Figure 2008039971
となる。
式(1-1-19),(1-2-20),(1-2-21)より、
Figure 2008039971
となる。これを
Figure 2008039971
と置く。また、
Figure 2008039971
と置く。これらを式(1-2-15)に代入して、項別に展開すると、
Figure 2008039971
となる。係数を比較すると、最も低次の項は、
Figure 2008039971
となる。
それより高次の項は、
Figure 2008039971
と置いて、i+j+k=0の場合以外の合計を、
Figure 2008039971
のように表すと、
Figure 2008039971
となる。これらの像面上での点S′の冪級数展開係数が、単一のレンズ面による像面での収差係数になる。
次に、第三段階として、レンズ面上の点(x、y、z)と、像面上の点S′の冪級数展開係数から、射出瞳面上の点T′の冪級数展開係数を求める。図2の、第一の展開方法による高次収差計算過程の概略図では、V3の矢印で表してある。像面上での点S′の冪級数展開係数だけでなく、射出瞳面上の点T′の冪級数展開係数を求めるのは、複数の面にまたがって収差係数を求めるために必要だからである。射出瞳座標値を(t′,yt′,zt′)とすると、その座標値は図1より明らかなように、レンズ面の位置(x,y,z)および物体面座標値(s′,ys′,zs′)より、
Figure 2008039971
と表すことができる。従って式(1-3-1)より、
Figure 2008039971
となる。
Figure 2008039971
と置き、これと、式(1-1-11)と式(1-2-18)とを式(1-3-3)に代入すると、
Figure 2008039971
となる。従って、係数を比較して、
Figure 2008039971
となる。
次に、第二の展開方法として、物体面座標値と入射光線方向の正接により展開する方法で、単一のレンズ面による収差係数の計算方法について、説明する。この方法を用いると、物体がほぼ無限遠にある場合でも計算が容易である。
第一段階として、レンズ面上での光線到達位置を物体面座標値と入射光線方向の正接の冪級数展開で計算する方法を示す。図3の、第二の展開方法による高次収差計算過程の概略図では、V1の矢印で表してある。図1において、物体位置をx=s、物体面上の点Sの座標値を(s,ys,zs),物体側の光線の方向余弦を(cx,cy,cz)とし、光軸をx軸とする。点Sと点Tを通過した光線がレンズ面上の点Rに到達するとし、点Rの座標値を(x,y,z)とし、レンズ面と光軸との交点を原点(0,0,0)とする。そして、レンズ面上での位置関係が式(1-1-1)と同様であるとする。入射光線のy, z方向の正接をt,tとすると、t=c/cx,t=c/cxであり、物体面上の点Sを出た光線が、レンズに到達するまでの光線の式は、
Figure 2008039971
となる。そこで、回転不変量を、
Figure 2008039971
として、
Figure 2008039971
と置く。ただし、
Figure 2008039971
であるとする。y+zを式(1-1-14)と同様な式で式(2-1-3)〜(2-1-5)のような回転不変量で展開すると、式(1-1-16)と同様な式で係数が求められる。このとき、xを式(1-1-19)と同様な式で展開すると、式(1-1-20)と同様な式になる。式(2-1-1)に(2-1-6)、式(1-1-19)を代入すると、
Figure 2008039971
となり、係数を比較すると、
Figure 2008039971
となる。
次に、第二段階として、第二の展開方法で、屈折光線方向の正接を物体面座標値と入射光線方向の正接の冪級数展開で計算する方法を示す。図3の、第二の展開方法による高次収差計算過程の概略図では、V2の矢印で表してある。第一段階で求めた点(x、y、z)から、y方向にt、z方向にtの正接で屈折して、像面上の点S′を通過し、点S′の座標値を(s′,y′,z′),とする。そして、屈折式により、点S′の冪級数展開の係数を求める。第一の展開方法と同様に、BornとWolfの「光学の原理I」のP192によると、屈折前の媒質の屈折率をn,屈折後の媒質の屈折率をn′,屈折前の光線の方向余弦を(cx,cy,cz)、屈折後の光線の方向余弦を(c′x,c′y,c′z)とすると、屈折の式(1-2-5)、(1-2-6)において、
Figure 2008039971
であるので、
Figure 2008039971
と置いて、式(1-2-5)に代入すると、第一の展開方法の場合と同様に、
Figure 2008039971
となり、
Figure 2008039971
となる。そこで、屈折後の光線における正接の係数を求めるために、
Figure 2008039971
と置く。また、
Figure 2008039971
と置いて、式(2-2-4)、(2-2-5)の平方根の冪級数展開を求めるが、この場合も平方根をテーラー展開して求めるよりも、
Figure 2008039971
の両辺を2乗して係数を比較する方が、はるかに速く計算できる。その方法を以下に説明すると、先ず、式(2-2-12)の両辺を2乗して、式(2-1-5)を代入すると、
Figure 2008039971
となる。式(2-2-14)より明らかなように、T00k(k≠0)以外はゼロであることが分かる。従って、
Figure 2008039971
と置いて、係数を比較して、
Figure 2008039971
として、式(2-2-16)を式(2-2-14)に代入して係数を比較して、
Figure 2008039971
となる。
また、式(2-2-13)において、式(2-2-8),(2-2-9)より、
Figure 2008039971
となり、
Figure 2008039971
と置くと、係数を比較して、
Figure 2008039971
となる。l+m+n=Nのとき、PlmnはU,V,WのN次の係数であるが、式(2-2-20)を見ると、ATijk,BTijkのU,V,Wの(N-1)次までの係数の積和で表されることがわかるので、U,V,Wの(N-1)次までの係数ATijk,BTijkを計算して後、U,V,WのN次の係数Plmnを計算するというように、漸化的に計算することができる。式(2-2-13)の両辺を2乗して、式(2-2-20)を代入することにより、
Figure 2008039971
となる。また、
Figure 2008039971
と置いて、係数を比較して、
Figure 2008039971
となる。T′ijkも、0次の場合はゼロなので、式(2-2-23)で、T′2lmnのN次の係数は、T′ijkの(N-1)次までの係数の積で与えられる。式(2-2-22)を式(2-2-21)に代入して、係数を比較して、
Figure 2008039971
となる。
そして、式(2-2-10),(2-2-11)より、
Figure 2008039971
となる。これを
Figure 2008039971
と置く。またGijkを式(1-2-38)と同様な式で定義する。これらを式(2-2-7)に代入して、項別に展開すると、
Figure 2008039971
となる。係数を比較すると、最も低次の項は、
Figure 2008039971
となる。
それより高次の項は、
Figure 2008039971
と置いて、i+j+k=0の場合以外の合計を、
Figure 2008039971
のように表すと、
Figure 2008039971

となる。
次に、第三段階として、レンズ面上の位置(x、y、z)と、屈折光線方向の正接の冪級数展開係数から、像面上の点S′の冪級数展開係数を求める。図3の、第二の展開方法による高次収差計算過程の概略図では、V3の矢印で表してある。像面座標値を(s′,y′s,z′s)とすると、レンズ面上の位置(x,y,z)および入射光線のy,z方向の正接t,tより、
Figure 2008039971
となり、
Figure 2008039971
と置き、これと、式(1-1-19),(2-1-6),(2-2-8)を式(2-3-1)に代入すると、
Figure 2008039971
となる。従って、係数を比較して、
Figure 2008039971
となる。
以上で、各面での高次収差を計算する方法を示したが、次に複数のレンズ面にまたがる収差係数を、第一の展開方法で計算する方法を示す。すなわち図4において、第一のレンズ面に対する物体面上の点S0の座標値を(s0,ys0,zs0)、入射瞳面上の点T0の座標値を(t0,yt0,zt0)、第一のレンズ面と光軸すなわちx軸との交点を原点(0,0,0)とし、像面上の点S1の座標値を(s1,ys1,zs1)、射出瞳面上の点T1の座標値を(t1,yt1,zt1)とする。次に、第二のレンズ面に対する物体面上の点はSすなわち(s1,ys1,zs1)であり、入射瞳面上の点はTすなわち(t1,yt1,zt1)である。そして、第二のレンズ面に対する像面上の点S2の座標値を(s2,ys2,zs2)、射出瞳面上の点T1の座標値を(t2,yt2,zt2)とする。さらに、前記のような方法で、各面の座標値が収差係数により、
Figure 2008039971
と計算できたとする。ただし、上式で、回転不変量を、
Figure 2008039971
と定義する。ys2,yt2をys0,yt0の冪級数で展開するために、
Figure 2008039971
と置いた式と、式(3-3),(3-4)に、式(3-1),(3-2),(3-5) 〜(3-10)を代入した式とを係数比較することにより、式(3-11),(3-12)の収差係数が求められる。レンズ系全体の収差係数を求めるためには、上記の操作を逐次行えば良い。なお、第二の展開方法で計算する場合は、yt0,zt0,yt1,zt1,yt2,zt2の代わりに、それぞれ第一のレンズ面に入射する光線方向の正接ty0,tz0,第二のレンズ面に入射する光線方向の正接ty1,tz1,第二のレンズ面から射出する光線方向の正接ty2,tz2に置き換えれば良い。
しかし、この方法では、U1,V1,W1の冪乗にU0,V0,W0の冪乗を代入するために、収差係数が高次になるほど、著しく計算時間が長くなる。各面での収差係数を見る必要が無く、ただ単に最終像面での高次収差を見るためには、以下の計算方法の方が速く計算できる。
複数のレンズ面にまたがる収差係数を求める別の方法について、第一の展開方法で、第一段階として、第二面以後のレンズ面上の到達位置を求める方法を示す。すなわち、第二面以後の物体面位置をS(s,ys,zs)、入射瞳座標値をT(t,yt,zt)、レンズ面の位置をR(x,y,z)とし、物体面位置と入射瞳位置が第一面の物体面位置(s0,ys0,zs0)と入射瞳座標位置(t0,yt0,zt0)により、
Figure 2008039971
ただし、
Figure 2008039971
と表されるとする。また、レンズ面上での位置関係が式(1-1-1)を満足するとする。物体面上の点Sを出た光線が、レンズに到達するまでの光線の式は、式(1-1-6),(1-1-7)と同様の式で表されるので、
Figure 2008039971
となり、
Figure 2008039971
と置き、xを式(1-1-19)と同様な展開係数で展開して代入すると、
Figure 2008039971
となり、係数を比較すると、
Figure 2008039971
となる。
次に、第二段階として、複数のレンズ面にまたがる収差係数を求める場合の、屈折後の像面での座標値を、第一面の物体面位置と入射瞳座標位置の冪級数展開で計算する方法を示す。第一段階で求めた点(x、y、z)から屈折して、像面上の点S′と射出瞳面上の点T′を通過し、点S′の座標値を(s′,y′,z′),点T′の座標値を(t′,y′,z′)とする。そして、屈折式により、点S′の冪級数展開の係数を求めると、単一のレンズ面での収差係数を求めたのと同じ式(1-2-17)のようになる。そこで、像面上での係数を求めるために、
Figure 2008039971
と置く。そして、単一のレンズ面による収差係数を求めた場合と同じように、
Figure 2008039971
と置く。式(3-2-4)の展開係数は式(1-2-39)と同様な式になるが、式(3-2-3)の展開係数は式(1-2-30)とは異なり、式(1-2-22)に、式(3-1-1),(3-1-2)を代入して2乗し、その左辺は、
Figure 2008039971
となる。
Figure 2008039971
と置くと、係数を比較して、
Figure 2008039971
となる。また左辺は、式(3-2-3)を2乗して、
Figure 2008039971
となり、また、
Figure 2008039971
と置いて、係数を比較して、
Figure 2008039971

となる。式(3-2-5)〜(3-2-10)より、
Figure 2008039971
となる。
式(1-2-17)において、式(1-2-41),(1-2-42)のように置き、また、式(3-2-1)〜(3-2-4)より、
Figure 2008039971
となる。これらを式(1-2-17)に代入して、項別に展開すると、
Figure 2008039971
となる。係数を比較すると、最も低次の項は、
Figure 2008039971
となる。それより高次の項は、式(1-2-46)のように置いて、式(1-2-47)のように表すと、
Figure 2008039971
となる。これらの像面上での点S′の冪級数展開係数が、複数のレンズ面にまたがる場合の、像面での収差係数になる。
次に、第三段階として、レンズ面上の位置(x、y、z)と、像面上の点S′の冪級数展開係数から、射出瞳面上の点T′の冪級数展開係数を求める。像面上での点S′の冪級数展開係数だけでなく、射出瞳面上の点T′の冪級数展開係数を求めるのは、さらに次の面にまたがって収差係数を求めるために必要である。これは、式(1-3-4)のように置くと、単一のレンズ面の場合と同様に、式(1-3-6)〜(1-3-9)と同様な式になる。
次に、複数のレンズ面にまたがる収差係数を、第二の展開方法、すなわち第一レンズ面の物体面座標値と入射光線方向の正接により展開する方法で計算する方法について、説明する。この方法だと、物体がほぼ無限遠にある場合でも計算が容易である。
第二の展開方法で、第一段階として、レンズ面上での光線到達位置を計算する方法を示す。すなわち、第二面以後の物体面位置をS(s,ys,zs)、入射光線の正接をty,tz、レンズ面の位置をR(x,y,z)とし、物体面位置と入射光線の正接が、第一面の物体面位置(s0,ys0,zs0)と,第一面の入射光線の正接ty0,tz0により、
Figure 2008039971
ただし、
Figure 2008039971
と表されるとする。
+zを式(1-1-14)と同様な式で式(2-1-3)〜(2-1-5)のような回転不変量で展開すると、式(1-1-16)と同様な式で係数が求められる。このとき、xを式(1-1-19)と同様な式で展開すると、式(1-1-20)と同様な式になる。さらに、レンズ面上での光線到達位置を求めるために、
Figure 2008039971
とする。式(2-1-1)に式(4-1-1),(4-1-2),(4-1-5)を代入すると、
Figure 2008039971
となり、係数を比較すると、
Figure 2008039971
となる。
次に、第二段階として、第二の展開方法で、屈折後の光線方向の正接を第一レンズ面の物体面座標値と入射光線方向の正接の冪級数展開で計算する方法を示す。第一段階で求めた点(x,y,z)から、y方向にt′、z方向にt′の正接で屈折して、像面上の点S′を通過し、点S′の座標値を(s′,y′,z′),とする。そして、L,L′を式(2-2-4),(2-2-5)のように置くと、式(2-2-6),(2-2-7)のような式になる。そこで、屈折後の光線における正接の係数を求めるために、
Figure 2008039971
と置く。また、式(2-2-10),(2-2-11)のように置いて、式(2-2-4),(2-2-5)の平方根の冪級数展開を求めるが、この場合も平方根をテーラー展開して求めるよりも、式(2-2-12),(2-2-13)の両辺を2乗して係数を比較する方が、はるかに速く計算できる。その方法を以下に説明すると、先ず、式(2-2-12),(2-2-13)において、
Figure 2008039971
と置くと、式(2-2-18),(2-2-19)から式(2-2-20)が導かれたように、式(4-2-3),(4-2-4)に式(4-1-1),(4-1-2),(4-2-1),(4-2-2)を代入して、係数を比較して、
Figure 2008039971

となる。l+m+n=Nのとき、Plmn,P′lmnはU,V,WのN次の係数であるが、式(4-2-5),(4-2-6)を見ると、ATijk,BTijk,A′Tijk,B′TijkのU,V,Wの(N-1)次までの係数の積和で表されることがわかるので、U,V,Wの(N-1)次までの係数ATijk,BTijk,A′Tijk,B′Tijkを計算して後、U,V,WのN次の係数Plmn,P′lmnを計算するというように、漸化的に計算すれば良い。式(2-2-12),(2-2-13)の両辺を2乗して、式(4-2-5),(4-2-6)を代入することにより、
Figure 2008039971
となる。また、式(2-2-22)のように置いて,係数を比較して式(2-2-23)のようになり、
Figure 2008039971
と置いて、係数を比較して、
Figure 2008039971
となる。Tijk,T′ijkも、0次の場合はゼロなので、式(2-2-23)で、T2lmn,T′2lmnのN次の係数は、Tijk,T′ijkの(N-1)次までの係数の積で与えられる。式(2-2-22),(4-2-9)を式(4-2-7),(4-2-8)に代入して、係数を比較して、
Figure 2008039971
となる。
そして、式(2-2-10),(2-2-11)より、式(2-2-25)のようになり、これを式(2-2-26)のように置く。またGijkを式(1-2-38)と同様な式で定義する。これらを式(2-2-7)に代入して、項別に展開すると、
Figure 2008039971
となる。係数を比較すると、最も低次の項は、
Figure 2008039971
となる。
それより高次の項は、式(2-2-30)のように置いて、i+j+k=0の場合以外の合計を、式(2-2-31)のように表すと、
Figure 2008039971
となる。これらは屈折光線方向の正接の冪級数展開係数である。
次に、第三段階として、レンズ面上の点R(x,y,z)と、屈折光線方向の正接の冪級数展開係数から、像面上の点S’の冪級数展開係数を求める。物体面座標値を(s′,y′s,z′s)とし、式(2-3-3)のように置くと、式(2-3-5)〜(2-3-8)と同様な式になる。
次に、高次収差による非点収差を計算する方法を示す。図5において、入射光線の方向余弦Y0をΔY0だけ変動させたとき、Gauss像面GB0での光線ABが光線A′B′となる場合、ABとA′B′の交点をCとする。Cから光軸(x軸)に平行に引いた直線とGauss像面との交点をB0とする。Gauss面上での到達位置がGB=ysFからGB′=ysF+ΔysFと変化し,∠B0CB=θから∠B0CB′=θ+Δθと変化した場合、Gauss像面からレンズ方向へのメリジオナル像面位置をmとすると、図5により明らかなように、
Figure 2008039971
となり、Gauss像面からレンズ方向へのメリジオナル像面位置mは、
Figure 2008039971
となる。
また図6のように、像面付近で子午面(xy面)内で光軸からθ傾いている光線ABがあり、光線ABとGauss像面との交点をBとするとき、光軸に平行でAと交差する軸をx′軸として、x′軸とGauss像面との交点をB0とし、∠B0AB=θとする。入射光線の方向余弦を子午面からΔZ0だけ変動させたときのGauss像面での光線AB′の到達位置の変化をBB′=ΔzsF、角度の変化を∠BAB′=Δφとし、S像位置をAB0=sとし、AB=s′とすると、図6より明らかなように、
Figure 2008039971
ただし、
Figure 2008039971
となる。式(5-3),(5-4)より、
Figure 2008039971
となる。そして、AB′をx′z面に射影して、B′のx′z面上の射影点をB0′とし、∠B0AB0′=Δφ′とすると、
Figure 2008039971
となり、式(5−6)を式(5−5)に代入して、
Figure 2008039971
となる。
第一の展開方法として,高次収差が、レンズ系全体の物体面座標値(s0,ys0,zs0)と入射瞳面座標値(t0,yt0,zt0)の関数の係数として表される場合、入射光線の方向余弦Y0を微小変動させることは、入射瞳座標値yt0を微小変動させることと同じなので、
Figure 2008039971
と表すことができる。レンズ系全体の像面座標値を(sF,ysF,zsF)、射出瞳面座標値を(tF,ytF,ztF)とすると、
Figure 2008039971
となり、
Figure 2008039971
となる。式(5-1-1)〜(5-1-4)を、式(5-2)に代入することにより、
Figure 2008039971
となり、高次収差の第一の展開方法による子午面内での非点収差が計算できる。
次に、高次収差の第一の展開方法によるサジタル面内での非点収差を求めると、式(5-5)において、入射光線の方向余弦を子午面からΔZ0だけ変動させることは、入射瞳座標値zt0を微小変動させることと同じなので、
Figure 2008039971
と表すことができ、
Figure 2008039971
であるので、
Figure 2008039971
となる。式(5-7)に式(5-1-6)〜(5-1-9)を代入することにより、
Figure 2008039971
となり、高次収差の第一の展開方法によるサジタル面内での非点収差が計算できる。
レンズ系全体の像面座標値(sF,ysF,zsF)と、射出瞳面座標値(tF,ytF,ztF)が、レンズ系全体の物体面座標値(s0,ys0,zs0)と入射瞳面座標値(t0,yt0,zt0)により、
Figure 2008039971
と表されるとする。ただし、回転不変量U0,V0,W0が、式(3-5)〜(3-7)で表されるとする。このとき、式(5-1-5),(5-1-10)における微分は、
Figure 2008039971
となるが、回転対称な光学系では、非点収差を求める光線追跡は子午面内での光線追跡のみで充分であるので、式(5-1-15)〜(5-1-18)において、zs0=zt0=0として良く、従って回転不変量は、
Figure 2008039971
となり、ゆえに式(5-1-15)〜(5-1-18)は、
Figure 2008039971
となる。
Figure 2008039971
と置いて、式(5-1-22)と式(5-1-26)、式(5-1-24)と式(5-1-27)をそれぞれ係数比較して係数を求めると、
Figure 2008039971
となる。ただし、式(5-1-28)におけるA′、または式(5-1-29)におけるA′の添え字が l−1=−1 である場合の係数、または m−1=−1 である場合の係数は、値がゼロであることに注意する必要がある。式(5-1-26),(5-1-27)を式(5-1-5)に代入し、式(5-1-23),(5-1-25)を式(5-1-10)に代入し、
Figure 2008039971
と置くと、
Figure 2008039971
となり、係数を比較することにより、
Figure 2008039971
となる。これらにより、非点収差の第一の展開方法による冪級数展開が可能になる。
次に、第二の展開方法として,高次収差が、レンズ系全体の物体面座標値(s0,ys0,zs0)と入射光線方向の正接ty0,tz0の関数の係数として表される場合で、物体面が無限遠にある場合、レンズ系全体の像面座標値を(sF,ysF,zsF)、射出光線方向の正接をtyF,tzFとすると、入射光線の方向余弦Y0を微小変動させる代わりに、物体面座標値ys0を微小変動させて、
Figure 2008039971
となる。式(5-2-1),(5-2-2)を式(5-2)に代入することにより、
Figure 2008039971
となり、高次収差の第二の展開方法による子午面内での非点収差が計算できる。また、式(5-7)において、入射光線の方向余弦を子午面からΔZ0だけ変動させる代わりに、物体面座標値zs0を微小変動させて、
Figure 2008039971
と表すことができるので、式(5-2-4),(5-2-5)を式(5−7)に代入して、
Figure 2008039971
となり、高次収差の第二の展開方法によるサジタル面内での非点収差が計算できる。
レンズ系全体の像面座標値(sF,ysF,zsF)と、射出光線方向の正接をtyF,tzFが、レンズ系全体の物体面座標値(s0,ys0,zs0)と入射光線方向の正接ty0,tz0により、
Figure 2008039971
と表す。ただし、回転不変量を、
Figure 2008039971
と置く。このとき、式(5-2-3),(5-2-6)における微分は、
Figure 2008039971
となるが、回転対称な光学系では、非点収差を求める光線追跡は子午面内での光線追跡のみで充分であるので、式(5-2-14)〜(5-2-17)において、zs0=tz0=0 として良く、従って回転不変量は、
Figure 2008039971
となり、ゆえに式(5-2-14)〜(5-2-17)は、
Figure 2008039971
となる。
Figure 2008039971
と置いて、式(5-2-21)と式(5-2-25)、式(5-2-23)と式(5-2-26)をそれぞれ係数比較して係数を求めると、
Figure 2008039971
となる。ただし、式(5-2-27)におけるB′、または式(5-72)におけるB′の添え字が l−1=−1 である場合の係数、または m−1=−1 である場合の係数は、値がゼロであることに注意する必要がある。
式(5-2-25),(5-2-26)を式(5-2-3)に代入し、式(5-2-22),(5-2-24)を式(5-2-6)に代入し、式(5-1-30),(5-1-31)のように置くと、
Figure 2008039971
となり、係数を比較することにより、
Figure 2008039971
となる。これらにより、非点収差の第二の展開方法による冪級数展開が可能になる。
以上説明したように、高次収差による非点収差の計算方法を、レンズ系の像面での位置および射出瞳面上の位置または光線方向の正接を、入射瞳座標値または物体面座標値で微分した量から求めることにより、非点収差を高精度で求めることができる。
次に、高次収差のパラメータによる微係数を計算する方法を示す。多数のパラメータで実際の収差を自動修正で最適化する場合、収差のパラメータによる微分を差分近似するよりも、収差を数式解析的にパラメータ微分する方が、計算速度が速くなる場合が多いが [J. Opt. Soc. Am. 58, 1494 (1968) 参照]、高次収差においても、差分近似よりも数式解析的にパラメータ微分した方が、計算速度が速くなる場合が多い。
高次収差のパラメータによる微係数の計算では、先ず各面での収差係数のパラメータによる微分を計算するが、各面での収差係数を計算する方法が確立していれば、そ
のパラメータによる微分は極めて簡単である。例えば、その面の曲率半径の逆数がρであるとすると、式(1-1-20)のρによる微分は
Figure 2008039971
である。
このように、各面での収差係数のパラメータによる微分は簡単に求められるが、レンズ系全体での収差係数のパラメータによる微分を計算するのには注意が必要である。すなわち、レンズのある途中の面で曲率半径などのパラメータを微小変化させると、その面以後の像面位置と射出瞳面位置が変わり、レンズ系の最終像面位置まで次々と各面での物体面位置と入射瞳面位置、像面位置と射出瞳面位置が変わることになる。
例えば、図7のように、第一のレンズ面の曲率半径を微小に変動させることにより、光線と第一のレンズ面との交点がR1からR1′に変動し、第一のレンズ面の像面位置がx=s1からx=s1′に変動し、射出瞳面位置がx=t1からx=t1′に変動したとする。すると、第二のレンズ面の形状が全然変動しなくても、光線と第二のレンズ面との交点がR2からR2′に変動し、第二のレンズ面の像面位置がx=s2からx=s2′に変動し、射出瞳面位置がx=t2からx=t2′に変動することになる。そして、最終像面まで次々に各面での物体面位置と入射瞳面位置、像面位置と射出瞳面位置が移動することになる。
それをそのまま微分化すると、パラメータを微小変化させた面以後の収差係数の像面位置と射出瞳面位置による微分の項を付加させる必要がある。それをプログラミングすると、プログラミングが複雑になるばかりでなく、計算時間もかなりかかり、パラメータ微分による有利性がなくなる可能性がある。
ところが、「光学の原理I」のP300を読めばわかるように、s1,t1をそれぞれ像面位置と射出瞳面位置に置くと便利ではあるが、それが正確に像面位置と射出瞳面位置である必然性はない。そこで、レンズ系全体の収差係数のパラメータによる微分を計算するためには、ある途中面でのパラメータが微小変化しても、その面以後の各面での物体面位置と入射瞳面位置、像面位置と射出瞳面位置は、パラメータが変化しないままの位置であるとした方が良い。例えば、図7において、光線と第一のレンズ面との交点がR1からR1′に変動しても、第一のレンズ面の像面位置がx=s1のままで、射出瞳面位置がx=t1のままであるとする。また、第二のレンズ面の像面位置がx=s2のままで、射出瞳面位置がx=t2のままであるとする。そしてそれらを微分化しても、パラメータ微分した面以後の収差係数に、像面位置と射出瞳面位置の移動による微分の項を付加させないようにする。
その代わり、レンズ系全体の収差係数のパラメータによる微分を計算して後、予め近軸光線追跡のパラメータによる微分計算により計算した、パラメータによる近軸最終像面位置の移動による項を最後に追加すれば、各面での像面位置と射出瞳面位置の移動による微分の項を付加しなくても、正確な微分量を計算することができる。
以上のことを注意しておいて、計算時間ができるだけかからないような、レンズ系全体での収差係数のパラメータによる微分を計算する方法を考えると、図8のようになる。すなわち、レンズ系の中間の面を第I面とし、第I面のパラメータによる微分を求めると、次のようになる。すなわち、第I面による像面上の座標値を(sI,ysI,zsI)、射出瞳面上の座標値を(tI,ytI,ztI)、第(I-1)面による像面上の座標値を(sI-1,ysI-1,zsI-1)、,射出瞳面上の座標値を(tI-1,ytI-1,ztI-1)とし、第I面による像面上の座標値が第(I-1)面による像面上の座標値により、
Figure 2008039971
と表されるとする。ただし、
Figure 2008039971
とする。この計算は、計算全体の中で占める位置として、図8ではS1で表している。式(6-2),(6-3)の第I面の曲率半径の逆数ρIによる微分は、ρIを微小変化させても第(I-1)面以前の収差係数には影響を及ぼさないので、
Figure 2008039971
となる。この計算は、計算全体の中で占める位置として、図8ではS2で表してある。
次にレンズ系全体の像面上の座標値(sF,ysF,zsF)を逆から第(I+1)面まで係数比較して、第I面による像面上の座標値(sI,ysI,zsI)と、射出瞳面上の座標値(tI,ytI,ztI)で冪級数展開したものを、
Figure 2008039971
と表す。この計算は、図8では、V2の矢印で計算方向を示してある。レンズ系全体の像面上の座標値(sF,ysF,zsF)の、第I面のパラメータρIによる微分を求めると、第I面のパラメータρIが微小変化することにより第(I+1)面以後の各面の収差係数は変化しないので、式(6-9),(6-10)の収差係数は変化しない。従って、
Figure 2008039971
となる。式(6-11),(6-12)に、式(6-2),(6-3),(6-7),(6-8)を代入して係数比較することにより、レンズ系全体の像面上の座標値(sF,ysF,zsF)の、第I面のパラメータρIによる微分が、第(I-1)面による像面上の座標値と射出瞳面上の座標値の冪級数展開であらわすことができる。これを、
Figure 2008039971
と表す。この計算は、図8では、S1,S2,V2の結果により、矢印V3のように、第I面から、第F面について、パラメータ微分を計算したことになる。
そして、式(6-8),(6-9)における第(I-1)面による像面上の座標値(sI-1,ysI-1,zsI-1)は、各面の収差係数を次々と係数比較することにより、レンズ系全体の物体面上の座標値(s0,ys0,zs0)と入射瞳座標値(t0,yt0,zt0)とにより、
Figure 2008039971
のように表すことができる。ただし、回転不変量を、式(3-5)〜(3-7)のように定義する。また式(6-15),(6-16)の計算は、I-1=2以上の場合は、各面の物体面座標値と入射瞳座標値が、レンズ系全体の物体面上の座標値(s0,ys0,zs0)と入射瞳座標値(t0,yt0,zt0)で表して計算する方法、すなわち、式(3-1-1)から式(3-2-17)までにより示された方法で計算しても良い。この計算は、図8のV1のような計算方向で行う。
式(6-13),(6-14)に、式(6-15),(6-16)を代入して係数比較し、レンズ系全体の物体面上の座標値(s0,ys0,zs0)と入射瞳座標値(t0,yt0,zt0)とにより冪級数展開した第I面の収差係数のρIによる微分が求められる。これを、
Figure 2008039971
と表す。この計算は、図6では、S2と矢印V3に矢印V1を継ぎ足して、矢印V4のように、レンズ系全体の物体面から第F面(最終像面)まで計算したことになる。なお、レンズ系全体の物体面から第I面までの、パラメータρIによる微分を求めてから(これは図8ではV1+S1に相当する)、矢印V2のように最終面から第(I+1)面までの収差係数を係数比較して後、先に求めたパラメータρIによる微分と係数比較して、レンズ系全体のパラメータ微分を求めても良い。
最後に、予め近軸光線追跡のパラメータによる微分計算により計算した、パラメータによる近軸最終像面位置または最終射出瞳位置の移動による項を追加する。その方法を図9によって示す。
図9において、現在のレンズデータにより、レンズ系全体の最終レンズ面上の点Rからレンズ系全体の像面上の点Bに向けて光線が進行したとする。そして、最終レンズ面とレンズ系全体の像面との光軸上の距離をsとする。次に、第I面のパラメータρIが微小シフトした場合の、レンズ系全体の最終レンズ面上の点をR′とし、その光線と、パラメータが微小シフトする前のレンズ形全体の像面との交点をB′とする。しかし、第I面のパラメータρIが微小シフトすることによって、レンズ系全体の像面位置が変動し、その光線との交点をC′とする。そして、最終レンズ面と、第I面のパラメータρIが微小シフトした場合のレンズ系全体の像面との光軸上の距離をs′とする。また、Bから光軸に平行に引いた線と、線CC′を延長した線との交点を、C0とする。さらに、パラメータが微小シフトする前の光線と最終射出瞳面との交点をt、第I面のパラメータρIが微小シフトした場合の光線と最終射出瞳面との交点をt′とする。
図9で、第I面のパラメータρIが微小シフトした場合の最終像面での光線到達位置の変化量は、C0C′であるが、一方CC′は、BB′とほぼ同じなので、
0C′= C0C+BB′ …(6-19)
が成り立つ。また、図9において、縦軸がy軸の場合、光軸と、B,Dとの距離はそれぞれ、ysF,ytFなので、
Figure 2008039971
となる。式(6-19)においてBB′は 補正前の最終像面での光線到達位置の第I面のパラメータρIによる微分dysF/dρIに相当し、式(6-20)において(s′-s)は最終像面位置の第I面のパラメータρIによる微分dsF/dρIに相当するので、式(6-17)の補正は、
Figure 2008039971
となる。従って、収差係数の微分の補正は、
Figure 2008039971
となる。また同様にして、式(6-18)の補正は、最終射出瞳面位置の第I面のパラメータρIによる微分dtF/dρIにより、
Figure 2008039971
となる。従って、収差係数の微分の補正は、
Figure 2008039971
となる。
以上,第一の展開方法について、高次収差のパラメータによる微分の計算方法を説明してきたが、第二の展開方法の場合、式(6-1)から式(6-18)において、yt,ztの代わりに、光線のy方向、z方向の正接ty,tzを置き換えれば良い。パラメータによる最終像面位置の移動による項の追加は、式(6-21)の代わりに、
Figure 2008039971
とすれば良い。従って、収差係数の微分の補正は、
Figure 2008039971
となる。なお、第二の展開方法の場合、最終光線の光線方向の正接を補正する必要はない。
次に、高次収差による非点収差のパラメータによる微分を求める方法を示す。第一の展開方法による非点収差の係数の微分は、式(5-1-28),(5-1-29)をパラメータで微分して、
Figure 2008039971
とし、式(5-1-34)〜(5-1-37)をパラメータで微分して、もう一回式(5-1-34)〜(5-1-37)を用いて、
Figure 2008039971
となる。
第二の展開方法による非点収差の係数の微分は、式(5-2-27),(5-2-28)をパラメータで微分して
Figure 2008039971
とし、式(5-2-31)〜(5-2-34)をパラメータで微分して、もう一回式(5-2-31)〜(5-2-34)を用いて、
Figure 2008039971
となる。なお、これらの式において、収差係数の微分は、パラメータによる近軸最終像面位置または最終射出瞳位置の移動による補正をしたものを用いることが必要である。
以上説明したように、高次収差による非点収差の計算方法を、レンズ系の像面での位置および射出瞳面上での位置または光線方向の正接を、入射瞳座標または物体面座標値で微分した量から求めることにより、差分近似で求めるよりも計算時間を早くすることができる。
以上のような計算方法により高次収差を計算した実施例を次に示す。まず、実施例1として、図10のようなダブルガウスタイプのレンズ(焦点距離50mm,F1.4)における高次収差の計算例を示す。このレンズのレンズデータは表1のようになる。表1のように、物体からレンズの第一面までの距離は1000mmある。そして、表1の媒質でAIRとあるのは空気を表す。
Figure 2008039971
そして、本発明の方法により計算されたF1.4の7割の場合の高次球面収差による横収差を21次まで求めたものは、表2のようになる。これを見ると、最大次数が5次の場合、3次に比べて実際の収差から少し離れているが、7次以上になると収差の最大次数が高くなるほど、実際の収差に収束していくことがわかる。
Figure 2008039971
次に、本発明の方法により計算されたF1.4の場合の高次球面収差による横収差を21次まで計算したものは、表3のようになる。これを見ると、7割の場合に比べて、最大次数が少ないと実際の収差とはあまり一致せず、最大次数を上げてもなかなか収束せず、最大次数が17次のあたりから収束することがわかる。
Figure 2008039971
一方、F1.4の場合について、最大NAを1000分割して実際の光線追跡をし、数値解析(最小2乗法)により高次収差係数を計算してから計算された高次収差は表4から表7のようになる。表4、表5、表6、表7は、それぞれfittingする最大未知次数が11次、21次、31次,41次である。
Figure 2008039971
Figure 2008039971
Figure 2008039971
Figure 2008039971
表4と表5を比較するとわかるように、最大次数が3次から11次までの収差値はかなり異なっている。また、表5と表6を比較するとわかるように、最大次数が13次から21次までの収差値はかなり異なっている。つまり、最小2乗法により高次収差係数を計算すると、実際の収差を何次までの未知収差係数でfittingするかによって、計算結果が違ってくることがわかる。
このように、最小2乗法で収差係数を計算すると、fittingする最大未知次数が違うことにより高次収差が異なるのは、収差係数の次数は無限にあって、F1.4の大口径になればなるほど高次収差までとらないとなかなか収束しないのにもかかわらず、有限の次数で実際の収差をまとめようとするからである。従って、最小2乗法である次数までの収差係数を求める場合、それより何次か高次の次数の係数までを未知数として、連立方程式を解かなければならず、しかも、正確に求めたい次数よりもどれだけ高次の次数まで求めると、どれだけの精度が保証できるかという理論はない。
ところが、表4から表7まで順番に表3と比較してみれば分かるように、最小2乗法のfittingする最大未知次数が高くなるに従って、本発明の計算方法で計算した結果に近づいていることが分かる。つまり、本発明のような計算方法で計算すると、高次収差まで正確に計算することができ、しかも、設定した最大次数によって、それより低次の収差係数が変動することはない。
次に、実施例1のレンズデータの像高位置-9.77での光線到達位置を、本発明の計算方法で、高次の歪曲収差として最大次数を21次まで求めてから計算すると、表8のようになる。一方、同じ像高位置-9.77で、光軸中心から最大像高まで10000分割して主光線を光線追跡し、最小2乗法で高次の歪曲収差として最大次数を15次まで求めてから計算すると、表9のようになる。
Figure 2008039971
Figure 2008039971
表8を見ると、最大次数を上げれば上げる程、実際の位置に近づく事がわかる。ところが、表9の最小2乗法を見ると、最大次数の中間部分で、実際の位置よりかなりずれていて、数値解析では、高次の歪曲収差係数を正確に計算できないことがわかる。また、表で示しはしないが、fittingする最大未知次数を15次からさらに上げていくと、かえって精度を上げられず、解が発散することがわかった。従って、高次の歪曲収差を計算する方法は、数値解析では不可能で、本発明による計算方法しかないことが分かる。
次に実施例2として、平行光束で入射するレンズで、面数が20面の場合について、高次収差を最適化した。本発明による高次収差のパラメータ微分と、差分近似とについて、計算時間を比較した。比較のための差分近似に用いた計算方法としては、各面の収差係数を計算してからレンズ全体の収差係数を係数比較で計算する方法は時間がかかるので採用せずに、第二面以後の収差係数を計算するための物体面座標値と入射光線方向の正接を、常に第一面の物体面座標値と入射光線方向の正接の冪級数展開で表す方法、すなわち、式(4-1-1)〜(4-2-17)の式による方法を採用した。7次収差において微分と差分の場合の、最適化の1サイクルあたりの計算時間とパラメータ数の関係は、表10および図11のようになる。
Figure 2008039971
表10および図11を見ると分かるように、差分近似の場合はパラメータ数にほぼ比例して計算時間が増加していくのに対し、微分の場合はパラメータ数が増えても計算時間はほとんど変わらない。そして、パラメータ数が10の場合、微分の場合の計算時間は差分の約2分の1なのに対し、パラメータ数が20の場合、微分の場合の計算時間は差分の3分の1以下になっている。従って、パラメータ数が多くなるほど微分の方が有利であることが分かる。
高次収差を計算するための、光線の物体面上の位置、入射瞳面上の位置、レンズ面上の光線到達点、像面上の位置、射出瞳面上の位置関係を示す図である。 第一の展開方法による高次収差計算過程の概略図である。 第二の展開方法による高次収差計算過程の概略図である。 複数のレンズ面にまたがる収差係数を求める方法を説明するための図である。 高次収差によるメリジオナル像面の非点収差を計算する方法を示す図である。 高次収差によるサジタル像面の非点収差を計算する方法を示す図である。 レンズのある途中の面で曲率半径などのパラメータを微小変化させると、その面以後の像面位置と射出瞳面位置が次々と変わることを示す図である。 高次収差のパラメータによる微分を計算する方法を示す図である。 図8の方法で計算した後、パラメータによる近軸最終像面位置または最終射出瞳位置の移動による項を追加する方法を示す図である。 実施例1のレンズの光路図である。 7次収差の最適化において、微分と差分の場合の、最適化の1サイクルあたりの計算時間とパラメータ数の関係を示す図である。
符号の説明
U,V,W 回転不変量 i,j,k 回転不変量の冪乗数 y 高次収差

Claims (5)

  1. 光軸に対して回転対称なレンズ系における高次収差係数を3個の添え字を用いた多項式で表し、前記3個の添え字を、それぞれの回転不変量の冪乗数で表して高次収差を計算することを特徴とするレンズ系設計方法。
  2. 光軸に対して回転対称なレンズ系における入射瞳面上の座標値と物体面上の座標値による3個の回転不変量をU,V,Wとし、前記回転不変量のそれぞれの冪乗数をi,j,kとし、前記光学系の物体面上の位置または像面上の位置の光軸からの距離をysとし、前記光学系の入射瞳面上の位置または射出瞳面上の位置の光軸からの距離ytとし、前記光学系の物体面上の位置または像面上の位置の光軸からの距離ysと3個の回転不変量U,V,Wに対する収差係数をAijkとし、前記光学系の入射瞳面上の位置または射出瞳面上の位置の光軸からの距離ytと3個の回転不変量U,V,Wに対する収差係数をBijkとしたとき、前記光学系の収差yを次式
    Figure 2008039971
    により表して高次収差計算をすることを特徴とするレンズ系設計方法。
  3. 光軸に対して回転対称なレンズ系における物体面座標値と入射光線方向の正接による3個の回転不変量をU,V,Wとし、前記回転不変量のそれぞれの冪級数をi,j,kとし、前記光学系の物体面上の位置または像面上の位置の光軸からの距離をysとし、前記光学系の入射光線方向または屈折光線方向の正接をtyとし、前記光学系の物体面上の位置または像面上の位置の光軸からの距離ysと3個の回転不変量U,V,Wに対する収差係数をAijkとし、前記光学系の入射光線方向または屈折光線方向の正接tyと3個の回転不変量U,V,Wに対する収差係数をBijkとしたとき、前記光学系の収差yを次式
    Figure 2008039971
    により表して高次収差計算をすることを特徴とするレンズ設計方法。
  4. 前記光軸に対して回転対称なレンズ系における高次収差による非点収差は、レンズ系の像面での位置および射出瞳面上の位置または光線方向の正接を、前記入射瞳面上の座標値または前記物体面上の座標値で微分した量から求めることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のレンズ系設計方法。
  5. 前記光軸に対して回転対称なレンズ系における高次収差のレンズ形状を示すパラメータによる微分を計算するときには、前記パラメータによる微分計算した面以後の収差係数に、像面位置と射出瞳面位置の移動による微分の項を付加させないで、レンズ系全体の収差係数についての前記パラメータによる微分を計算して後、前記パラメータによる近軸最終像面位置の移動による項を追加することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のレンズ系設計方法。
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