JP2008037380A - 電動パワーステアリング用モータ駆動装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】モータ電流の検出異常時、モータ電流の検出値を用いることなく交流モータの駆動を継続的に制御できる電動パワーステアリング用モータ駆動装置の提供を課題とする。
【解決手段】上記課題は、電流指令器222から出力された電流指令値Ioとモータ電流値Isに応じて電流制御器223から第1モータ電圧指令値Vo1を出力する制御系に加え、速度指令器260から出力された速度指令値ωoと電流指令値Ioとモータ速度値ωsに応じて速度制御器262から第2モータ電流指令値Vo2出力する制御系を備え、モータ電流の検出が異常の時には、第2モータ電圧指令値Vo2を用いて交流モータの駆動を制御することにより、解決できる。
【選択図】図1
【解決手段】上記課題は、電流指令器222から出力された電流指令値Ioとモータ電流値Isに応じて電流制御器223から第1モータ電圧指令値Vo1を出力する制御系に加え、速度指令器260から出力された速度指令値ωoと電流指令値Ioとモータ速度値ωsに応じて速度制御器262から第2モータ電流指令値Vo2出力する制御系を備え、モータ電流の検出が異常の時には、第2モータ電圧指令値Vo2を用いて交流モータの駆動を制御することにより、解決できる。
【選択図】図1
Description
本発明は、車両のステアリング装置に操舵用の電動力を供給する電動パワーステアリング用モータ駆動装置に関し、代表的にはモータ電流検出の異常時にもモータの駆動制御を継続させるための技術に関する。
電動パワーステアリング用モータ駆動装置のモータ駆動制御の背景技術としては、例えば特許文献1,2に開示されたものが知られている。特許文献1には、モータに流す電流の目標値が所定値未満であり、検出されたモータ電流に異常がある時は、モータ電流制御を、検出されたモータ電流とモータ電流目標値に応じてモータ電流を制御するクローズドループ制御から、モータ目標電流値に応じてモータ電流を制御するオープンループ制御にする技術が開示されている。特許文献2には、電流検出回路の故障が検出した時は、直流モータを、操舵トルクの大きさに応じたフィードバック系の駆動から、オープンループ系の駆動に切換える技術が開示されている。
近年、電動パワーステアリング装置にはさらなる高出力化、きめ細かなモータ制御による操作性の向上が要求されている。このため、最近では、電動力を発生するモータを直流モータからブラシレスDCモータなどの交流モータとし、この交流モータを、ベクトル制御を用いてインバータ装置により駆動する電動パワーステアリング装置が提案され、自動車に搭載されている。ベクトル制御は、交流モータに供給されるモータ電流を検出してこれをフィードバック入力し、その検出されたモータ電流とトルク指令値から決定された電流指令値に応じて、交流モータに印加される交流電圧を制御するためのモータ電圧指令値を決定するものである。
ところが、ブラシレスDCモータなどの交流モータの駆動制御にベクトル制御を用いた場合、背景技術のように、制御系として完全なオープンループ系を採用することができない。このため、例えば電流センサの故障などによりモータ電流の検出に異常があった場合には、背景技術のように、制御系をオープンループ系に切り換えてモータの駆動制御を継続させることができない。
本発明は、モータ電流の検出異常時、モータ電流の検出値を用いることなく交流モータの駆動を継続的に制御できる電動パワーステアリング用モータ駆動装置を提供する。
ここに、本発明は、トルク指令値に基づくモータ電流指令値と検出されたモータ電流値に応じてモータ電圧指令値を決定する制御系に加え、トルク指令値に基づくモータ速度指令値とモータ電流指令値とに応じてモータ電圧指令値を決定する制御系を備え、モータ電流の検出が異常の時には、後者の制御系のモータ電圧指令値を用いて交流モータの駆動を制御することを特徴とする。
後者の制御系は、モータ速度を用いたモータ電圧モデル式によりモータ電圧指令値を決定する。モータ電流の検出が正常な時には、前者の制御系のモータ電圧指令値を用いて交流モータの駆動を制御する。
本発明によれば、トルク指令値に基づくモータ速度指令値とモータ電流指令値とに応じてモータ電圧指令値を決定する制御系を備えたので、モータ電流の検出異常時にはモータ電流の検出値とは関係なしにモータ電圧指令値を決定でき、そのモータ電圧指令値に応じた信号をPWM変調して出力し、交流モータに交流電圧を印加するインバータの駆動を制御できる。従って、本発明によれば、モータ電流の検出異常時、モータ電流の検出値を用いることなく交流モータの駆動を継続的に制御できる。
本発明によれば、モータ電流の検出異常時、モータ電流の検出値を用いることなく交流モータの駆動を継続的に制御できるので、モータ電流の検出異常時にも、運転者の操舵に応じて操舵用の電動力をステアリング装置に継続的に供給できる。従って、本発明によれば、ロバスト性に優れ、高性能で信頼性の高い電動パワーステアリング用モータ駆動装置を提供できる。
図1乃至図6を用いて、本発明が適用された電動パワーステアリング装置用モータ駆動装置の実施例を説明する。
尚、本実施例において説明するモータ駆動装置の構成は、電動ブレーキ装置など他の電動車載補機に用いられるモータ駆動装置や、家電用品或いは産業機器に用いられるモータ駆動装置に適用しても構わない。特にモータ電流の検出異常時にも交流モータ駆動の継続的な制御が必要であるモータ駆動装置への適用が好ましい。
また、本実施例では、モータ駆動装置に搭載されるモータとして、永久磁石式交流同期モータ(ブラシレスDCモータ)を用いた場合を例に挙げて説明するが、交流誘導モータなど他の交流モータを用いても構わない。
まず、図6を用いて、本実施例のモータ駆動装置を適用した電動パワーステアリング装置の構成を説明する。
電動パワーステアリング装置は、ステアリング装置にモータ駆動装置を付加し、運転者が操作するステアリングSTからマニュアルステアリングギアSTGに伝達される回転駆動力をモータ100の回転駆動力で補い、ステアリングSTに対する運転者の操作量を軽減(アシスト)するように構成されている。運転者の回転操作によってステアリングSTが回転すると、その回転駆動力はロッドROを介してマニュアルステアリングギアSTGに減速して伝達される。また、モータ100が駆動されると、その駆動力はマニュアルステアリングギアSTGに減速して伝達される。この減速して伝達された回転駆動力は左右のタイロッドTR1,TR2に伝達されて左右の車輪WH1,WH2に伝達される。これにより、左右の車輪WH1,WH2が舵取される。
モータ駆動装置は、操舵用の回転駆動力を発生するモータ100と、モータ100の駆動を制御するインバータ装置(モータ制御装置)200とを備えている。モータ100はバッテリBAを駆動電源とするものであり、マニュアルステアリングギアSTGの近傍に取り付けられて、その出力軸がギアGEを介してマニュアルステアリングギアSTGに機械的に接続されている。インバータ装置200は、バッテリBAから供給された直流電力を3相交流電力に変換してモータ100に供給し、モータ100の駆動を制御する。これにより、モータ100は操舵用の回転駆動力をマニュアルステアリングギアSTGにギヤGEを介して供給する。
ギヤGEは、ウォーム及びホイールからなる又は遊星ギヤからなる減速機構、或いは油圧機構を用いたトルク伝達機構などによって構成されている。ロッドROには、ステアリングSTに与えられた回転駆動力(トルク)を検出するためのトルクセンサTSが取り付けられている。トルクセンサTSの出力信号は、モータ100から出力されるトルクを制御するために、インバータ装置200に出力される。
尚、本実施例では、ラック&ピニオンギアの近傍にモータ100を取り付けたラック型電動パワーステアリング装置を例に挙げて説明する。電動パワーステアリング装置としては、ステアリングの近傍にモータを取り付けたコラム型電動パワーステアリング装置などもある。本実施例のモータ駆動装置はそのコラム型電動パワーステアリング装置にも同様に適用可能である。
次に、図1乃至図5を用いて、本実施例のモータ駆動装置の構成及び動作を詳細に説明する。
モータ100は、図1に示すように、3相の電機子巻線102U〜102Wがステータコアに巻かれて構成されたステータと、このステータの内周側に空隙を介して回転可能に配置されたロータ101と、ロータ101の磁極位置を検出するためのセンサ素子部を構成する回転位置検出器103とを備えている。電機子巻線102U〜102Wはスター結線により構成されている。ロータ101は、複数の磁極の極性(径方向の着磁方向)が周方向に交互になるように、磁極を構成する複数の永久磁石がロータコアの外周表面に所定の間隔をもって固着されて構成されている。
インバータ装置200は、バッテリBAから供給された直流電力を3相交流電力に変換するための電力系主回路を構成するインバータ回路(パワーモジュール部)210と、インバータ回路210のスイッチング動作を制御するための制御系回路を構成する制御モジュール部220とを備えている。制御モジュール部220は、ドライバ回路227,電流検出回路228,回転位置検出回路229,操作量指令器110及び制御器221などの回路を備えている。
インバータ回路210は、制御モジュール部220から出力されたゲート駆動信号(デッドタイム信号を含む)を受けてスイッチング動作する6個のスイッチング素子である電界効果トランジスタ(以下、「FET」と記述する)211A〜211Fによって構成されている。バッテリBAの正極側(ハイサイド)に接続されたFET211A〜211Cと、バッテリBAの負極側(ローサイド)に接続されたFET211D〜211Fは同相のもの同士、電気的に直列に接続され、アームと呼ばれる直列回路を構成している。これにより、バッテリBAの正負極間には3相分のアームが電気的に並列に接続され、ブリッジ回路が構成される。各アームの中点には、対応する相の電機子巻線102U〜102Wが電気的に接続されている。
インバータ回路210がスイッチング動作すると、バッテリBAから供給された直流のバッテリ電圧Edは3相交流のモータ印加電圧Vs(Vsu,Vsv,Vsw)に変換される。変換されたモータ印加電圧Vs(Vsu,Vsv,Vsw)は、対応する電機子巻線102U〜102Wに印加される。これにより、電機子巻線102U〜102Wに電流が流れて回転磁界が発生し、その回転磁界とロータ101の永久磁石が発生する磁束との磁気的作用によってロータ101が回転する。これにより、モータ100からトルク(回転駆動力)τmが出力される。
制御モジュール部220には、インバータ回路210のスイッチング動作を制御するために、ロータ101の回転位置(磁極位置)を検出するためのセンサの出力信号(検出信号)、及び3相の電機子巻線102U〜102Wに供給されるモータ電流を検出するためのセンサの出力信号(検出信号)が、トルクセンサTSの出力信号(検出信号)と共に入力されている。
ロータ101の回転位置(磁極位置)は、レゾルバ,エンコーダ,ホールIC,ホール素子及び磁気抵抗素子などから構成された回転位置検出器103(センサ素子部)と、回転位置検出器103の出力に基づく出力信号を出力する回転位置検出回路229(センサ回路部)とを備えた回転位置検出手段(回転位置センサ)によって検出される。回転位置検出回路229の出力信号は入力情報として制御器221に出力される。制御器221はその信号からロータ磁極位置を検出する。
尚、制御器21において検出されたロータ磁極位置は制御上、角度位置Psとして扱われる。ここで、角度には機械角と電気角があり、角度位置Psに用いられる角度は電気角である。ちなみに機械角はロータ101の1回転を360度、電気角はロータ101の磁極(極対)の角度を360度とするものであり、両方の角度間には電気角360度=機械角360度/極対数の関係がある。
電機子巻線102U〜102Wに流れるモータ電流は、FET211D〜211FとバッテリBAの負極側との間に直列に接続されたシャント抵抗212A〜212C(センサ素子部)と、差動増幅器及びフィルタ回路などから構成された電流検出回路228(センサ回路部)とを備えた電流検出手段(電流センサ)によって検出される。具体的に電流検出手段は、シャント抵抗212A〜212Cの端子間の電位差を差動増幅器により求めてその電位差に基づくパルス状の電圧信号を増幅し、この増幅信号を出力信号として制御器221に出力する。フィルタ回路は、FET211D〜211Fのスイッチング動作によるノイズの影響を受け難くするために、例えば差動増幅器の入力側に設けられ、差動増幅器の入力に含まれるノイズ成分を除去する。制御器221は、入力情報として電流検出回路228の出力信号を入力し、その信号からモータ電流検出値IUs,IVs,IWsを検出する。
モータ100から出力されるトルクは、トルクセンサTSの出力信号に基づいて操作量指令器110が演算する。操作量指令器110は、トルクセンサTSの出力信号に基づく操舵状態量(操舵角や操舵トルクなど)に車両状態量(車両速度や路面状態など)を加味してトルク指令値τ0を演算し、そのトルク指令値τ0を入力情報として制御器221に出力する。
制御器221は、モータ電流検出値IUs,IVs,IWs、トルク指令値τ0及び角度位置Psに基づいて、モータ印加電圧Vs(Vsu,Vsv,Vsw)を制御するためのモータ電圧指令値を演算し、そのモータ電圧指令値に対応したモータ電圧指令信号(正弦波を基本波とするPWM変調波)Wv(Wvu,Wvv,Wvw)をPWM搬送波(三角波)でPWM変調してドライバ回路227に出力する。ドライバ回路227には、幅が変調された3アーム分(6つ)のドライブ信号PWM(矩形波状のパルス信号)が入力される。
ドライバ回路227は、入力されたドライブ信号PWMに基づいて、各スイッチング素子のゲートに入力されるゲート駆動信号を生成し、各スイッチング素子のゲートに出力する。
制御器221はマイコンによって構成されており、機能的に電流指令器222,電流制御器223,波形制御手段224,電流変換器225,PWM変調器226,速度指令器260,速度変換器261,速度制御器262,出力電圧指令選択器263及び電流異常検出器264を備えている。制御器221には、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器が設けられている。
電流指令器222は、モータ100のトルク定数などに基づいて予め設定した電流指令マップ(トルク指令値τoに対する電流指令値の関係を示すテーブル)を備えている。そこで、電流指令器222は、その電流指令マップを参照して、ベクトル制御を行うために必要な電流指令値Io(トルク電流指令(q軸電流指令)及び励磁電流指令(d軸電流指令))を、入力されたトルク指令値τoに基づいて演算する。電流指令値Ioは電流制御器223及び速度制御器262に出力される。
電流変換器225はモータ電流検出値IUs,IVs,IWs及び角度位置Psを入力し、それらに基づいてモータ電流値Is(トルク電流値Iq(q軸電流値)と励磁電流値Id(d軸電流値))を演算する。すなわちモータ電流検出値IUs,IVs,IWsを角度位置Psに基づいて2相3相変換する。モータ電流値Isは電流制御器223に出力される。
ここで、電流変換器225に入力されるモータ電流検出値IUs,IVs,IWsは次のように検出される。FET211A〜211Cがオフ(FET211D〜211Fがオン)になると、各相のモータ電流がFET211D〜211F(FET内のダイオードを含む)とシャント抵抗212A〜212Cを流れ、シャント抵抗212A〜212Cの両端に電位が生じる。シャント抵抗212A〜212Cの両端の電位は電流検出回路228の差動増幅器に入力され、その差分(電位差)が求められる。その電位差は増幅されてシャント電圧波形信号として電流検出回路228から制御器221に出力される。シャント電圧波形信号は、制御器221のA/D変換器によってアナログ信号からデジタル信号に変換されると共に、信号レベルが変換される。これにより、制御器221においてモータ電流が検出され、モータ電流検出値IUs,IVs,IWsとして電流変換器225に出力される。
電流制御器223はモータ電流値Is及び電流指令値Ioを入力し、モータ電流値Isが電流指令値Ioに一致するように、それらの比較結果(差分)に基づいて第1出力電圧指令値Vo1(第1トルク電圧値Vq1(第1q軸電圧値)と第1励磁電圧値Vd1(第1d軸電圧値))を演算する。第1出力電圧指令値Vo1は出力電圧指令選択器263に出力される。
電流指令器222,電流制御器223及び電流変換器225は制御器221内において電流制御系(第1制御系)を構成している。本実施例では、モータ電流検出正常時、電流制御系を用いてモータ100の駆動を制御している。
速度指令器260は、モータ100のトルクに対するモータ100の速度動作点の関係に基づいて予め設定した速度指令マップ(トルク指令値τoに対する速度指令値の関係を示すテーブル)を備えている。そこで、速度指令器260は、その速度指令マップを参照して、正常なモータ電流検出値が得なれない時に、モータ100の駆動を制御するために必要な速度指令値ωoを、入力されたトルク指令値τoに基づいて演算する。速度指令値ωoは速度制御器262に出力される。
速度変換器261は角度位置Psを入力し、その変化量に基づいてモータ速度値ωsを演算している。モータ速度値ωsは速度制御器262に出力される。
速度制御器262は、第2出力電圧指令値Vo2(第2トルク電圧値Vq2(第2q軸電圧値)と第2励磁電圧値Vd2(第2d軸電圧値))を算出するための電圧モデル式を備えており、その電圧モデル式を用いて第2出力電圧指令値Vo2を演算している。そこで、速度制御器262は、速度指令値ωo,モータ速度値ωs及び電流指令値Ioを入力し、モータ速度値ωsが速度指令値ωoに一致するように、速度指令値ωoとモータ速度値ωsとの比較結果(差分)及び電流指令値Ioに基づいて電圧モデル式から第2出力電圧指令値Vo2を演算する。第2出力電圧指令値Vo2は出力電圧指令選択器263に出力される。
尚、速度制御器262の具体的な構成は図2を用いて後述する。
速度指令器260,速度制御器262及び速度変換器261は制御器221内において速度制御系(第2制御系)を構成している。本実施例では、モータ電流検出異常時、制御系を前述の電流制御系から速度制御系に切り換え、その速度制御系を用いてモータ100の駆動を制御している。このように、本実施例では、モータ電流の検出値に用いることなくモータ100の駆動を制御できるので、モータ電流検出異常が生じても、モータ100の駆動制御を継続できる。
電流異常検出器264は、電流検出回路228の出力信号(シャント電圧波形信号或いはモータ電流検出値IUs,IVs,IWs)に基づいて、電流検出回路228或いはシャント抵抗212A〜212Cなどの故障によるモータ電流の検出異常を検出する。この異常検出では、例えばモータ電流検出値IUs,IVs,IWsが予め設定した範囲外の値になった場合に異常と判定する。異常検出の結果、モータ電流検出が異常である場合には、電流異常検出器264はモータ電流検出異常信号を、モータ電流検出が正常である場合には、電流異常検出器264はモータ電流検出正常信号を、駆動モード(制御系)を切り換えるための信号として出力電圧指令選択器263に出力する。
出力電圧指令選択器263は、第1出力電圧指令値Vo1,第2出力電圧指令値Vo2及び電流異常検出器264の出力信号を入力し、電流異常検出器264の出力信号に基づいて第1出力電圧指令値Vo1及び第2出力電圧指令値Vo2のいずれか一方の電圧指令値を波形制御手段224に出力する。ここで、出力電圧指令選択器263は、電流異常検出器264からモータ電流検出正常信号が出力された場合には第1出力電圧指令値Vo1を、モータ電流検出異常信号が出力された場合には第2出力電圧指令値Vo2を波形制御手段224に出力する。
波形制御手段224は、第1出力電圧指令値Vo1及び第2出力電圧指令値Vo2のいずれか一方,角度位置Psを入力し、それらに基づいて3相のモータ電圧指令値を演算する。すなわち第1出力電圧指令値Vo1及び第2出力電圧指令値Vo2のいずれか一方を角度位置Psに基づいて2相3相変換する。3相のモータ電圧指令値はモータ電圧指令信号(正弦波を基本波とするPWM変調波)Wv(Wvu,Wvv,Wvw)としてPWM変調器226に出力される。
PWM変調器226は、三角波発生器から出力されたPWM搬送波及びモータ電圧指令信号Wvを入力し、モータ電圧指令信号WvとPWM搬送波Wcとを比較して、各相上下アームのスイッチング素子を駆動するためのドライブ信号PWMをドライバ回路227に出力する。
図3は、ドライバ回路227に出力される各相上アームのドライブ信号PWM(PWMパルス信号UgH,UgL,VgH,VgL,WgH,WgL)例であり、各相のモータ電圧指令信号Wv(Wvu,Wvv,Wvw)とPWM搬送波Wcとの比較により、パルス幅が変調されたパルス信号が出力されている。
以上説明したように、本実施例では、モータ電流検出が正常な場合には、トルク指令値τoに基づいて算出された電流指令値Ioに、検出されたモータ電流値Isが一致するように第1出力電圧指令値Vo1を出力し、第1出力電圧指令値Vo1に基づいてモータ電圧指令信号を発生させ、モータ電圧指令信号をPWM変調して出力し、モータ電流検出が異常な場合には、トルク指令値τoに基づいて算出された速度指令値ωoに、検出されたモータ速度値ωsが一致するように第2出力電圧指令値Vo2を出力し、第2出力電圧指令値Vo2に基づいてモータ電圧指令信号を発生させ、モータ電圧指令信号をPWM変調して出力するようにしたので、すなわちモータ電流検出異常の有無に応じて、電流制御系と速度制御系とを切り換えてモータ100の駆動を制御するようにしたので、モータ電流の検出異常時にはモータ電流の検出値とは関係なしにモータ電圧指令値を決定でき、そのモータ電圧指令値に応じた信号をPWM変調して出力し、モータ100に交流電圧を印加するインバータの駆動を制御できる。
これにより、本実施例によれば、モータ電流の検出異常時、モータ電流の検出値を用いることなくモータ100の駆動を継続的に制御でき、モータ電流の検出異常時にも、運転者の操舵に応じてモータ100は操舵用の駆動力をマニュアルステアリングギアSTGにギヤGEを介して継続的に供給できる。換言すれば、モータ100の駆動制御が停止に至り、ステアリング装置に対してモータ100からの操舵用駆動力の供給が停止し、ステアリング装置から運転者に対して要求されるステアリング操作量が急激に増加する(ステアリングホイールの操作感覚が重くなる)という状態を回避できる。従って、本実施例によれば、ロバスト性に優れ、高性能で信頼性の高い電動パワーステアリング用モータ駆動装置を提供できる。
次に、図2を用いて、速度制御器262の構成を説明する。
前述したように、速度制御器262は、電流指令値Io,速度指令値ωo及びモータ速度値ωsを入力し、速度指令値ωoにモータ速度値ωsが一致するように第2出力電圧指令値Vo2を出力するものであり、減算器266,トルク制御器(ASR)267,トルク電流指令値(q軸電流指令値)制限器268,励磁電流指令値(d軸電流指令値)制限器269及び第2出力電圧指令値演算器265を備えている。
入力された速度指令値ωo及びモータ速度値ωsは減算器266により減算される。これにより、速度指令値ωoからモータ速度値ωsが減算され、この減算から得られた速度偏差が増幅器267に出力される。トルク制御器(ASR)267は、入力された速度偏差に基づいてトルク電流指令値Iqsを演算し、トルク電流指令値制限器268に出力する。
トルク電流指令値制限器268は、速度偏差に基づくトルク電流指令値Iqs及びトルク電流指令値Iqを入力し、トルク電流指令値Iqに基づいてトルク電流指令値Iqsを制限したトルク電流制限指令値Iq′を演算する。また、励磁電流指令値制限器269では励磁電流指令値Idを入力し、予め決定した制限値に基づいて励磁電流指令値Idを制限した励磁電流制限指令値Id′を演算する。それらの演算により得られたトルク電流制限指令値Iq′及び励磁電流制限指令値Id′は第2出力電圧指令値演算器265に出力される。ここで、トルク電流指令値Iq及び励磁電流指令値Idをそれぞれ制限するのは、速度制御系による速度制御によりモータ100の駆動制御が遅れた場合、トルク指令値τoよりもモータ100の実トルクが過大になるのを防止するためである。
第2出力電圧指令値演算器265は予めモータ電圧モデル式を備えており、このモータ電圧モデル式を用いて、入力されたモータ速度値ωs,トルク電流制限指令値Iq′及び励磁電流制限指令値Id′に基づく第2出力電圧指令値Vo2を出力する。第2トルク電圧値Vq2(第2q軸電圧値)と第2励磁電圧値Vd2(第2d軸電圧値)のそれぞれを求めるモータ電圧モデル式は次の通りである。
Vd2=r×Id′−ωs×Lq×Iq′ (式1)
Vq2=ωs×Ld×Id′+r×Iq′+Ke×ωs (式2)
ここで、rはモータ100の電機子巻線の抵抗、Ldはモータ100の電機子巻線のd軸インダクタンス、Lqはモータ100の電機子巻線のq軸インダクタンス、Keは発電定数をそれぞれ示す。それらの値は設定値(一定値)であり、モータ100の設計時に予め設定されたものである。
Vq2=ωs×Ld×Id′+r×Iq′+Ke×ωs (式2)
ここで、rはモータ100の電機子巻線の抵抗、Ldはモータ100の電機子巻線のd軸インダクタンス、Lqはモータ100の電機子巻線のq軸インダクタンス、Keは発電定数をそれぞれ示す。それらの値は設定値(一定値)であり、モータ100の設計時に予め設定されたものである。
以上のように、本実施例では、式1,式2のそれぞれに対して、入力されたモータ速度値ωs,トルク電流制限指令値Iq′及び励磁電流制限指令値Id′を代入し、第2トルク電圧値Vq2(第2q軸電圧値)と第2励磁電圧値Vd2(第2d軸電圧値)のそれぞれを演算している。
尚、本実施例では、第2出力電圧指令値Vo2を電圧モデル式を用いて演算する場合を例に挙げたが、トルク電流制限指令値Iq′と第2トルク電圧値Vq2との関係、励磁電流制限指令値Id′と第2励磁電圧値Vd2との関係とを示すマップ(テーブル)を用いて演算するようにしてもよい。
次に、図4,図5を用いて、電動パワーステアリング用モータ駆動装置に搭載される実際のインバータ装置200の構成を説明する。
インバータ装置200は、図4に示すように、ケース240及びシールドカバー250から構成された筐体内に、パワーモジュール210と、制御モジュール220と、導体モジュール230を収納したものである。ケース240及びシールドカバー250はアルミニウム製である。
パワーモジュール210は、実際に、メタル基板上に絶縁物を介して配線パターンが形成され、その上に、図1を用いて説明したFETなどの半導体スイッチング素子SSWが取り付けられることにより構成されている。パワーモジュール210には、複数のリードフレーム210LFの一端が半田付けにより固定されている。リードフレーム210LFはパワーモジュール210と制御モジュール220とを電気的に接続するために用いられるものである。
制御モジュール220は、実際に、制御器221やドライバ回路227などを構成する電子部品などがPCB基板の上に取り付けられることにより構成されている。図示の状態では、基板の下側の面に、制御器221やドライバ回路227などを構成する電子部品などが取り付けられている。制御モジュール220には信号コネクタ220Cが取り付けられている。
導体モジュール230は、バッテリBAとパワーモジュール210の半導体スイッチング素子SSWのコレクタ端子とを接続する電力線となるバスバー230Bを樹脂のモールドにより一体成形したものである。図5に示すように、太い実線部分がそのバスバーを示す。導体モジュール230には、モータ100にモータ電流を供給する端子であるモータコネクタ230SC、及びバッテリBAから電力が供給される電源コネクタ230PCも同時に一体成形されている。また、導体モジュール230にはパーツ230Pが予め取り付けられている。パーツ230Pは、図5に示すように、コモンフィルタCF,ノーマルフィルタNF,コンデンサC1,C2,リレーRY1であり、バスバー230Bに接続されている。
コモンフィルタCF及びノーマルフィルタNFは、ラジオノイズを防止するために設置されたものである。リレーRYは、モータ100の異常時や制御モジュール220の異常時などにおいて、モータ100への通電を遮断するフェールセーフのために用いられるものである。コンデンサC1,C2は、パワーモジュール210に供給される直流電力を平滑するために用いられる。
パーツ230Pの端子とバスバー230BはTIG溶接(アーク溶接)により接続されている。図9の二重丸部分はその溶接部分を示しており、コモンフィルタCFの4個の端子,ノーマルフィルタNFの2個の端子,セラミックコンデンサC1,C2のそれぞれ2個の端子,リレーRYの3個の端子が、それぞれ、バスバー230Bの端子に溶接により接続されている。
また、図5に示すように、パワーモジュール210からモータ100にモータ電流を供給する配線にもバスバーを用いている。そのバスバーとパワーモジュール210はワイヤのボンディングにより接続されている。
パワーモジュール210の半導体スイッチング素子SSWをオンオフ制御する制御信号は制御モジュール220からパワーモジュール210にリードフレーム210LFを介して出力されている。また、パワーモジュール210のモータ電流を検出するためのセンサ素子であるモータ電流検出抵抗(シャント抵抗)DR1,DR2,DR3の出力信号もパワーモジュール210から制御モジュール220にリードフレーム210LFを介して出力されている。リードフレーム210LFは半田付けにより両モジュールに接続されている。
以上のように構成されたインバータ装置200はその製造時、次の手順によって組み立てられる。まず、ケース240の中にパワーモジュール210及び導体モジュール230をそれぞれネジ止めする。次に、パワーモジュール210及び導体モジュール230の上の位置に、制御モジュール220を同じくネジ止めする。次に、パワーモジュール210の端子に一端が半田付けされたリードフレーム210LFの他端を制御モジュール220の端子に半田付けする。最後に、シールドカバー250をケース240をネジ止めすることにより、インバータ装置200が完成する。
100…モータ、103…回転位置検出器、200…インバータ装置、212A〜212C…シャント抵抗、221…制御器、223…電流制御器、224…波形制御手段、226…
PWM変調器、228…電流検出回路、262…速度制御器、263…出力電圧指令選択器、264…電流異常検出器。
PWM変調器、228…電流検出回路、262…速度制御器、263…出力電圧指令選択器、264…電流異常検出器。
Claims (3)
- 交流電力により駆動されて操舵用の電動力を発生するモータと、
該モータに前記交流電力を供給するインバータと、
前記モータに流れるモータ電流を検出するための電流検出手段と、
前記モータのロータ回転位置を検出するための回転位置検出手段と、
トルク指令値に関する情報,前記電流検出手段の出力情報及び前記回転位置検出手段の出力情報を含む複数の情報を入力し、前記モータに印加される交流電圧を制御するためのモータ電圧指令値を決定して、そのモータ電圧指令値に応じた信号をPWM変調して出力する制御手段とを有し、
前記制御手段は、前記トルク指令値に基づくモータ電流指令値と前記検出されたモータ電流値に応じて、前記モータに印加される交流電圧を制御するための第1モータ電圧指令値を決定する第1制御系と、前記トルク指令値に基づくモータ速度指令値と前記モータ電流指令値とに応じて、前記モータに印加される交流電圧を制御するための第2モータ電圧指令値を決定する第2制御系とを備え、前記モータ電流の検出が異常の時には、前記第2モータ電圧指令値に応じた信号をPWM変調して出力する
ことを特徴とする電動パワーステアリング用モータ駆動装置。 - 請求項1に記載の電動パワーステアリング用モータ駆動装置において、
前記第2制御系は、モータ速度を用いたモータ電圧モデル式により前記第2モータ電圧指令値を決定する
ことを特徴とする電動パワーステアリング用モータ駆動装置。 - 請求項1又は2に記載の電動パワーステアリング用モータ駆動装置において、
前記制御手段は、前記モータ電流の検出が正常な時には、前記第1モータ電圧指令値に応じた信号をPWM変調して出力する
ことを特徴とする電動パワーステアリング用モータ駆動装置。
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