JP2008036866A - 転写箔、及び該転写箔を用いた板ガラス、アクリル板、又はポリカーボネート板 - Google Patents
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Abstract
【課題】
長期間にわたり安定した性能を発揮することを可能とした転写箔及び該転写箔を用いた板ガラスを提供する。
【解決手段】
基材フィルムである透明樹脂フィルムの表面に、離型性を有した樹脂により形成される離型層と、前記離型層のさらに表面に、金属酸化物により形成される金属酸化物層と、銀合金により形成される銀合金層と、をこの順に交互に積層してなり、かつ、最表面に前記金属酸化物層が位置するように積層してなり、そして前記最表面に位置する金属酸化物層のさらに表面に接着層を積層してなる転写箔とした。
【選択図】 なし
長期間にわたり安定した性能を発揮することを可能とした転写箔及び該転写箔を用いた板ガラスを提供する。
【解決手段】
基材フィルムである透明樹脂フィルムの表面に、離型性を有した樹脂により形成される離型層と、前記離型層のさらに表面に、金属酸化物により形成される金属酸化物層と、銀合金により形成される銀合金層と、をこの順に交互に積層してなり、かつ、最表面に前記金属酸化物層が位置するように積層してなり、そして前記最表面に位置する金属酸化物層のさらに表面に接着層を積層してなる転写箔とした。
【選択図】 なし
Description
本発明は転写箔及び該転写箔を用いた板ガラスに関するものであって、具体的には外部からの熱線を反射する機能を有する転写箔及び該転写箔を用いることにより熱線を反射する性質を備えた板ガラス、アクリル板、又はポリカーボネート板に関する。
昨今急激に地球温暖化に関する知識が広まり、また地球温暖化に対する関心が高まっている。その中でも、特に電力消費に関する事項に関心が集まる傾向が伺えるのであるが、消費電力に関する事項の中でも、特に日本においては室温調節への関心が高まっている。これは、日本のような四季の明確な気候では、冬場はまだしも夏場の高温多湿に人体が対処するのは大変困難であるが故に、高出力の空調機器が広く普及するに至っている。特に地上建築物や乗用車などの車両における密閉された室内では直射日光を浴び続けることにより容易に高温となってしまうので、密閉された状態を保ちつつ快適な室内状況を生み出すため、高出力、高性能の空調機器が用いられる。
しかしかような高出力の空調機器を用いると、それだけ電力消費量が増加し、ひいては排出二酸化炭素量の増大を招き、結果として地球温暖化を生み出すことが判っている。だが消費電力量を減少させるべく様々な努力がなされているのであるが、上述のような機器を用いるだけでは十分な対策とするに至らない。
そこで、密閉された室内に侵入する直射日光、具体的には密閉された室内への赤外線侵入量そのものを減少させる、という考え方が提示されている。そしてそのために、例えばガラス板に何らかの処理を施して赤外線遮蔽機能を付与し、これを窓ガラスに用いることで、室内が密閉されていたとしても窓から室内に侵入する赤外線を遮蔽することで室温が上昇することを抑え、その結果空調機器を激しく用いる必要がなくなり、ひいては消費電力量を抑えることが可能となるのである。
しかし、赤外線を遮蔽する機能をガラス板に付与するためには、ガラス板を加工するに際して特定の金属微粒子(又は金属フィラーとも呼ばれる。)をガラス板製造時に原料に混入させたり、ガラス板の表面に赤外線を遮蔽する性質を有した機能性層を直接積層することを行う必要があるが、原料に不純物を混入させることによりガラス板の製造自体が困難になったり、ガラス板の表面に直接機能性層を積層する場合もガラス板自身が破損することにより生じる損害が無視できないレベルに至ることがある、といった問題が生じていた。
そこで、ガラス板はガラス板として製造し、得られたガラス板の表面に赤外線を遮蔽する、という性質を有した機能性層を積層した機能性フィルムを、ガラス板の表面に貼着することが提案されている。このような方法を用いれば、ガラス板は従来の通りに製造できるし、機能性フィルムを後から貼着するだけで所望の機能を得られることより、窓の形状によらず自在に対応することも可能となり、また例えばガラス板に直接加工を施す場合、加工を施すことを失敗したりガラス板自身が破損した場合のコスト的損失が生じる可能性があるが、機能性フィルムを貼着するという方法であれば、かような損失は発生しないので、大変好ましい手法であると言える。
このような機能を有した機能性フィルムとしては、例えば特許文献1に記載されたようなものがある。この積層材料は熱線遮断性に優れた窓貼り用のものであるが、具体的には透明なベースフィルムの表面に半透明の金属薄膜層を積層し、さらにその表面にトップコート層、粘着層を順次積層形成した構成を有している。
この特許文献1に記載された積層材料では、金属薄膜層には、銀はアルミニウム、ニッケルなどの金属、又はニッケル−クロム合金のような合金を用いていることより、この層によって熱線反射性能を発揮するのであるが、実際にこのような物質を用いると、空気中の酸素に触れることで金属薄膜層が容易に腐食してしまい、長期間にわたり安定して性能を発揮することが困難であった。
本発明はこのような問題点に鑑みて為されたものであり、その目的は、長期間にわたり安定した性能を発揮することを可能とした転写箔及び該転写箔を用いた板ガラスを提供することである。
上記課題を解決するため、本願発明の請求項1に記載のフィルムは、基材フィルムである透明樹脂フィルムの表面に、離型性を有した樹脂により形成される離型層と、前記離型層のさらに表面に、金属酸化物により形成される金属酸化物層と、銀合金により形成される銀合金層と、をこの順に交互に積層してなり、かつ、最表面に前記金属酸化物層が位置するように積層してなり、そして前記最表面に位置する金属酸化物層のさらに表面に接着層を積層してなること、を特徴とする。
本願発明の請求項2に記載のフィルムは、表面に離型性を有してなる基材フィルムである離型性透明樹脂フィルムの表面に、金属酸化物により形成される金属酸化物層と、銀合金により形成される銀合金層と、をこの順に交互に積層してなり、かつ、最表面に前記金属酸化物層が位置するように積層してなり、そして前記最表面に位置する金属酸化物層のさらに表面に接着層を積層してなること、を特徴とする。
本願発明の請求項3に記載のフィルムは、請求項1又は請求項2に記載の転写箔であって、前記銀合金が銀とビスマスとよりなる銀合金であり、かつ前記ビスマスの銀合金全体に対する含有量が0.001重量%以上10重量%以下であること、を特徴とする。
本願発明の請求項4に記載のフィルムは、請求項1又は請求項3に記載の転写箔であって、前記透明樹脂フィルムが、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、若しくはナイロンフィルムの何れかであり、前記離型性を有した樹脂が、シロキサン系樹脂若しくはアクリルメラミン系樹脂の何れかであること、を特徴とする。
本願発明の請求項5に記載のフィルムは、請求項2又は請求項3に記載の転写箔であって、前記離型性透明樹脂フィルムが、フッ素樹脂フィルムであること、を特徴とする。
本願発明の請求項6に記載の発明は、請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の転写箔であって、前記接着層が、紫外線、赤外線、近赤外線のいずれかを吸収する性質を有する吸収剤を1種類若しくは複数種類含有してなること、を特徴とする。
本願発明の請求項7に記載の発明は、請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載の転写箔であって、前記金属酸化物層の、波長550nmにおける屈折率が1.6以上であること、を特徴とする。
本願発明の請求項8に記載の発明は、請求項1ないし請求項7の何れか1項に記載の転写箔であって、前記金属酸化物層が酸化インジウム、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化亜鉛、若しくはチタネートの何れかによる層であること、を特徴とする。
本願発明の請求項9に記載の発明は、請求項1ないし請求項8の何れか1項に記載の転写箔であって、前記金属酸化物層と前記銀合金層との合計層数が3以上9以下であること、を特徴とする。
本願発明の請求項10に記載の発明は、請求項1ないし請求項9の何れか1項に記載の転写箔であって、前記金属酸化物層はスパッタリング法、蒸着法、若しくはコーティング法の何れかの手法により積層されてなり、かつ前記銀合金層はスパッタリング法若しくは蒸着法により積層されてなること、を特徴とする。
本願発明の請求項11に記載の発明は、請求項1ないし請求項10の何れか1項に記載の転写箔であって、JIS規格(JIS A5759)に準拠して測定した前記転写箔の、可視光透過率が60%以上90%以下であり、JIS規格(JIS A5759)に準拠して測定した前記転写箔の、光線波長が1000nmにおける光線透過率が10%以上60%以下であり、JIS規格(JIS A5759)に準拠して測定した前記転写箔の、光線波長が1600nmにおける光線反射率が5%以上50%以下であること、を特徴とする。
本願発明の請求項12に記載の発明は、請求項1ないし請求項11の何れか1項に記載の転写箔において、前記離型性透明樹脂フィルムの表面、又は前記離型層の表面、に最初の金属酸化物層を積層する前に、反射防止機能を有した反射防止層、又はハードコート機能を有したハードコート層、の何れか若しくは両方を積層してなること、を特徴とする。
本願発明の請求項13に記載の発明は、請求項1ないし請求項12の何れか1項に記載の転写箔を表面に貼着してなる板ガラス、アクリル板、又はポリカーボネート板であること、を特徴とする。
本願発明に係る転写箔では、最終的には銀合金層を金属酸化物層で挟み込む層構成を採用しているために銀合金層が直接空気中の酸素と触れることがなく、また銀単体による層ではなく銀合金層としていることより銀の持つ性質が劣化することが防止され、即ちこの銀合金層を備えることにより発揮される熱線防止に関する機能が劣化することが防止されるのである。そして特に銀合金として銀にビスマスを混合させることにより、より一層銀合金の劣化が防止されると共にその性質が長く維持されるようになるので好ましい。また、ビスマスを選定することにより、得られる転写箔の可視光線透過率及び耐性に関し好ましい状態を両立することができる。そして基材に透明樹脂フィルムを用い、また金属酸化物として酸化チタン、酸化ニオブ、酸化亜鉛、若しくはチタネートとすることで、熱線防止の性能を備えつつ全体としての可視光線透過率も適度に確保されるので、この転写箔を用いても視感が著しく損なわれることがない。そしてこの転写箔をガラス表面に貼着することで、得られたガラスを例えば密閉された部屋の窓ガラスに用いれば、室内に赤外線が侵入することにより室温が急激に上昇する、という現象を防ぐことが可能となり、好ましい。
以下、本願発明の実施の形態について説明する。尚、ここで示す実施の形態はあくまでも一例であって、必ずもこの実施の形態に限定されるものではない。
(実施の形態1)
本願発明に係る転写箔について第1の実施の形態として説明する。
本実施の形態に係る転写箔は、表面に離型性を有してなる基材フィルムである離型性透明樹脂フィルムの表面に、離型性を有した樹脂により形成される離型層と、金属酸化物により形成される金属酸化物層と、銀合金により形成される銀合金層と、をこの順に交互に積層してなり、かつ、最表面に金属酸化物層が位置するように積層してなり、そして最表面に位置する金属酸化物層のさらに表面に接着層を積層してなる構成を有している。
本願発明に係る転写箔について第1の実施の形態として説明する。
本実施の形態に係る転写箔は、表面に離型性を有してなる基材フィルムである離型性透明樹脂フィルムの表面に、離型性を有した樹脂により形成される離型層と、金属酸化物により形成される金属酸化物層と、銀合金により形成される銀合金層と、をこの順に交互に積層してなり、かつ、最表面に金属酸化物層が位置するように積層してなり、そして最表面に位置する金属酸化物層のさらに表面に接着層を積層してなる構成を有している。
そして、本実施の形態に係る転写箔の可視光線透過率、及び光線波長が1000nmにおける光線透過率、に関しては、後述する転写箔の利用方法を鑑みれば、JIS規格(JIS A5759)に準拠して測定した前記転写箔の、可視光透過率が60%以上90%以下であり、またJIS規格(JIS A5759)に準拠して測定した前記転写箔の、光線波長が1000nmにおける光線透過率が10%以上60%以下であり、JIS規格(JIS A5759)に準拠して測定した前記転写箔の、光線波長が1600nmにおける光線反射率が5%以上50%以下であること、が望ましいため、本実施の形態に係る転写箔ではこの条件を満たすものであることとする。
以下、順次説明をしていく。
まず最初に本実施の形態に用いる基材フィルムである透明樹脂フィルムであるが、これは後述するように本実施の形態に係る転写箔が例えば窓ガラス用の板ガラスに用いられることを考えると光線透過率が優れていることが望ましいことより、基材となるフィルムはいわゆる透明樹脂フィルムであることが好ましく、また入手しやすいものであることが望ましい。このようなフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムや、ポリプロピレン(PP)フィルム、ナイロンフィルム等であれば、転写箔の基材としても広く用いられているものであり、その扱いも容易であるので好適な透明樹脂フィルムであると言える。
まず最初に本実施の形態に用いる基材フィルムである透明樹脂フィルムであるが、これは後述するように本実施の形態に係る転写箔が例えば窓ガラス用の板ガラスに用いられることを考えると光線透過率が優れていることが望ましいことより、基材となるフィルムはいわゆる透明樹脂フィルムであることが好ましく、また入手しやすいものであることが望ましい。このようなフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムや、ポリプロピレン(PP)フィルム、ナイロンフィルム等であれば、転写箔の基材としても広く用いられているものであり、その扱いも容易であるので好適な透明樹脂フィルムであると言える。
そしてこれらの透明樹脂フィルムの厚みとしては、5μm以上50μm以下であることが好ましいが、これは5μm未満の厚みであると後述の各種積層工程を実施するに際して生じる種々の処理に耐えられない可能性が高く、また50μmよりも厚くすると今度は最終的に得られるフィルム全体の厚みが増えてしまうからである。尚、本実施の形態における透明樹脂フィルムとしては、厚みが12μmのPETフィルムであるものとする。
そしてこの透明樹脂フィルムを本実施の形態に係る転写箔の基材フィルムとして利用するならば、この基材フィルムは最終的に離型されなければならない、その表面に離型性を備えた樹脂等を積層することにより離型層を設けておくことが好ましい。例えば、シロキサン系樹脂やアクリルメラミン系樹脂などをグラビアコーティング法やスリットリバース法等の周知な手法で積層すればよいが、本実施の形態ではシロキサン系樹脂をグラビアコーティング法でPETフィルムの表面に積層してなるものとする。またその厚みとしては0.1μm以上1.0μm以下であることが望ましいが、これは0.1μm以下であると離型層としての機能を発揮しなくなり、また1.0μm以上であるとすると、得られる本実施の形態の転写箔の厚みが不必要に厚くなってしまうからである。そして本実施の形態では0.5μmの厚みであるものとする。
さらにここでは詳述しないが、かような離型層を設ける代わりに、例えばPETフィルムの表面に対してある程度のプラズマ処理を施すことでPETフィルムの表面部分に脆い状態の層を設けることで離型層の代わりとすることも考えられる。即ち、この脆い状態の層の表面に後述の積層を施して転写箔とした後に実際に転写作業を行うと、この脆い状態の層が崩壊することにより、この部分から箔と基材フィルムとが剥離することになり、結果としてこの脆い状態の層が離型層と同様の働きをするのである。
以上、透明樹脂フィルムの表面に離型層を設けた場合について説明をしたが、これらの代わりに最初から離型性をその表面に有する離型性透明樹脂フィルムを基材フィルムとして用いることも考えられる。特にフッ素樹脂フィルムであれば現在広く流通もしており入手も容易であるので、本実施の形態に係る転写箔の基材フィルムとして利用するのに好適である。
このような離型性透明樹脂フィルムを基材フィルムとして用いれば、先に説明した離型層を別途も受ける必要もなくなるので、その結果全体の厚みが薄くなり、また余分な積層を行う必要がなくなるので、製造工程が簡略化できる、等の効果を得ることが可能なのである。
次にこの基材フィルムたる透明樹脂フィルムの表面に積層する金属酸化物による金属酸化物層につき説明する。
この金属酸化物層は、波長550nmにおける屈折率が1.6以上である高屈折率を有することが好ましいが、高屈折率が好ましい理由は、後述する銀合金層との関係において、この金属酸化物層の屈折率が高いほど、光学干渉効果をよりよくすることができるからである。そして例えば酸化インジウム、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化亜鉛、若しくはチタネートの何れかによる層であること、とするのが好適であるが、本実施の形態では酸化インジウム(ITO)を用いることとする。
この金属酸化物層は、波長550nmにおける屈折率が1.6以上である高屈折率を有することが好ましいが、高屈折率が好ましい理由は、後述する銀合金層との関係において、この金属酸化物層の屈折率が高いほど、光学干渉効果をよりよくすることができるからである。そして例えば酸化インジウム、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化亜鉛、若しくはチタネートの何れかによる層であること、とするのが好適であるが、本実施の形態では酸化インジウム(ITO)を用いることとする。
また金属酸化物層の厚みは20nm以上100nm以下であることが望ましいが、これは20nm未満であると本実施の形態に係る転写箔全体の可視光線透過率を低下させることになってしまい、また100nmを越えると本実施の形態に係る転写箔全体の赤外領域における透過率が上昇してしまうからである。そしてより好ましくこれらの透過率を制御するためには、厚みは25nm以上75nm以下であるとより好ましいものとすることができるが、本実施の形態ではこの厚みは30nmであるものとする。
尚、金属酸化物層の積層方法は従来公知の手法であって構わず、即ち、例えばスパッタリング用、蒸着法、又はコーティング法等の手法を用いればよく、またその際の条件も周知のものであってよいが、本実施の形態ではスパッタリング法であるものとする。
次に、銀合金層につき説明をする。
この銀合金層とは文字通り銀の合金であればよいが、本実施の形態では銀にビスマスを含有させてなる銀合金を用いるものとする。
この銀合金層とは文字通り銀の合金であればよいが、本実施の形態では銀にビスマスを含有させてなる銀合金を用いるものとする。
本実施の形態で銀合金を用いる理由は次の通りである。即ち、従来であれば赤外線を遮蔽する性質を有する転写箔を得るためには銀を単体で用いていたが、銀は耐腐食性が好ましいものではなかった。つまり銀単体で転写箔を構成すると透明な転写箔であって、かつ赤外線を遮蔽する性質を有する転写箔を得ることができていたが、銀に酸素が接触することにより銀が容易に腐食してしまい、積層されていた銀が黒ずんでしまい透明性が低下し、また銀が酸化することにより赤外線を遮蔽する効果が低下してしまっていたのであるが、かような問題の発生を防止するために、単体の銀に代えて銀に何らかの物質を混合させた銀合金を用いるようになったのである。
そのために用いられる合金として、金や銅、チタン等を用いることが多いが、これらの物質を混合させて銀合金とした場合、どうしても銀本来の持つ効果、本実施の形態においては赤外線を遮蔽するという効果が低下することは避けられない。
そこで本実施の形態においては、従来以上に銀の特性を極力損ねない上に銀に耐性を付与する物質としてビスマスを選定し、これを銀に含有させることにより、銀−ビスマス合金を銀合金として用いることとした。
ビスマスを選定することにより、即ち銀−ビスマス合金とすることにより、他の金属を含有させた銀合金(例えば銅を含有させた場合。)に比べて耐性面において優位性が見られ、例えば酸素と接触しても銀の酸化による黒ずみの発生や銀の持つ赤外線を遮蔽するという効果が低下する割合が大変微少なものとなる。そしてビスマスを用いた場合、純粋に銀のみを積層した場合の転写箔全体の可視光線透過率と同程度の可視光線透過率を確保することが可能である。即ち、ビスマスを用いることにより、得られる転写箔の可視光線透過率及び耐性に関し好ましい状態を両立することができるのみならず、その状態を長期間にわたり維持することが可能となるのである。
このように、銀単体で利用した場合に比しても可視光線透過率も好ましい値を確保しつつ、耐腐食性も維持できるレベルを保てるビスマスの銀合金全体に対する含有量は0.001重量%以上10重量%以下であることが好ましい。0.001重量%以下であるとビスマスを含有させることにより得られるはずの効果が得られなくなり、また10重量%以上とすると、今度は銀単体による層の場合と比して可視光線透過率及び耐腐食性を同レベルに維持することができなくなるからである。
また銀−ビスマス合金の積層方法としては、周知のスパッタリング法若しくは蒸着法を用いればよいが、本実施の形態ではスパッタリング法によるものとする。
以上説明した金属酸化物層と銀合金層とを交互に透明樹脂フィルムの表面に積層していくことにより、即ち透明樹脂フィルム/ITO層/銀−ビスマス合金層/ITO層・・・というように積層していくことにより本実施の形態に係る転写箔を得ることができるのであるが、その際金属酸化物層と銀合金層との合計層数が3以上9以下となるように積層することが望ましい。
これは、必要最小限の効果を得るためには合計3層以上は必要であり、また3層構成とすれば必要最小限の厚みに収めることが可能だからであり、9層構成とすれば熱線反射という効果を最大限に得ることができるものの、これ以上積層すれば可視光線透過率が必然的に低下すると同時に、全体の厚みを所望の薄さにすることが困難となるからである。
また金属酸化物層/銀合金層/金属酸化物層という構成とすることで熱線反射という効果を得られるのであるが、このように構成することにより銀合金層が高屈折率層に挟み込まれる形となり、その結果この層により得られる光学干渉効果によって可視光線透過率が好ましいレベルにまで高められると同時に熱線反射率も好ましいレベルにまで高めることができるからである。
そして最後に、最表面に位置する金属酸化物層のさらに表面に接着層を設ける。
この接着層は、アクリル系樹脂やスチレン系樹脂を積層することにより形成されるものであり、またその積層方法はグラビアコーティング法やスリットリバース法等の従来公知の手法であって構わないが、本実施の形態ではグラビアコーティング法を用いることとする。さらにまたこの接着層の厚さは0.05μm以上10.0μm以下であることが望ましいが、これは0.05μm未満であると接着性を発揮できず、また10.0μm以上とすると得られる転写箔が不必要に厚いものとなってしまうからである。そしてより一層好ましい厚みとしては5.0μm以下とすることであるが、本実施の形態ではこの接着層は、アクリル系樹脂を厚さ1.0μm積層したものとする。
この接着層は、アクリル系樹脂やスチレン系樹脂を積層することにより形成されるものであり、またその積層方法はグラビアコーティング法やスリットリバース法等の従来公知の手法であって構わないが、本実施の形態ではグラビアコーティング法を用いることとする。さらにまたこの接着層の厚さは0.05μm以上10.0μm以下であることが望ましいが、これは0.05μm未満であると接着性を発揮できず、また10.0μm以上とすると得られる転写箔が不必要に厚いものとなってしまうからである。そしてより一層好ましい厚みとしては5.0μm以下とすることであるが、本実施の形態ではこの接着層は、アクリル系樹脂を厚さ1.0μm積層したものとする。
またこの接着剤に、紫外線、赤外線、近赤外線のいずれかを吸収する性質を有する吸収剤を1種類若しくは複数種類含有させると、より好ましい接着層とすることが出来る。
これについて更に説明すると、例えば紫外線吸収剤を接着剤に含有させることにより、本実施の形態に係る転写箔を所望の箇所に転写した後であっても、転写箔の接着層が紫外線を吸収する効果を発揮することになり、その結果、本実施の形態に係る転写箔に有害紫外線をカットする効果が付与されることになる。その他、金属酸化物の超微粒子、例えばインジウム−スズ酸化物(ITO)やアンチモン−スズ酸化物(ATO)等を接着剤に含有させることで赤外線を吸収する効果を、また同様にジイモニウム系化合物等の近赤外線吸収色素を含有させることで近赤外線を吸収する効果を本実施の形態に係る転写箔に付与することが可能となり、即ち熱線反射効果を高めることが出来るようになるのである。
以上のようにして得られる本実施の形態に係る転写箔の可視光線透過率、光線波長が1000nmにおける光線透過率、及び光線波長が1600nmにおける光線透過率は、それぞれJIS規格(JIS A5759)に準拠して測定した測定値が、可視光透過率が60%以上90%以下となり、光線波長が1000nmにおける光線透過率が10%以上60%以下となり、光線波長が1600nmにおける光線反射率が5%以上50%以下となること、が望ましい。
可視光線透過率が60%以上90%以下であれば、ある程度の透明性、即ち不快感を覚えるほどにはくすまず、必要以上に明るすぎず外光全部を完全に取り入れてしまわないようにすることができ、光線波長が1000nmにおける光線透過率が10%以上60%以上であればある程度の熱線の侵入を阻止でき、また光線波長が1600nmにおける光線透過率が5%以上50%以下であればより一層熱線侵入を防止することができるので、この数値範囲を満足するように本実施の形態に係る転写箔を構成し、それを用いれば、必要な明るさは維持しつつ、不要な熱線の侵入を防止することが可能となる。
そして実際に上述した積層を行うことにより、上述した数値範囲に収まるようにした転写箔とすれば、適度に外光を取り入れ、また視認性も確保されつつ、熱線を反射することができる転写箔とすることができる。
そして、本実施の形態による転写箔において、離型性透明樹脂フィルムの表面、又は離型層を積層した透明樹脂フィルムの離型層の表面に、最初に金属酸化物層を積層する前に、反射防止機能を有した反射防止層、又はハードコート機能を有したハードコート層、の何れか若しくは両方を積層することにより、さらに特定機能を備えた転写箔とすることも可能であるが、そのためには従来より公知の物質を用いて、最表面に特定機能を有する層を積層すればよい。例えば反射防止層を設けるのであれば、フッ素系樹脂による低屈折率層をグラビアコーティング法などの手法によって積層すればよく、同様にハードコート層を設けるのであれば、アクリル系樹脂を原料としてコーティング法等の手法により積層すればよいが、これ以上の詳細な説明はここでは省略する。
また、得られた転写箔を表面に貼着した板ガラスとすれば、その板ガラスはこの転写箔が備える性質を備えたものとすることができる。即ち、これらのガラスであれば熱線反射機能を有するので、例えば、この板ガラスを建材に用いれば、この板ガラスを例えば窓ガラスに用いた空間では、何の機能も有さない普通のガラスを用いた場合に比べ、室内に熱線が侵入する割合を低下させることができるので、熱線侵入による室温上昇をある程度和らげることが可能となり、ひいては空調機器の利用頻度等を低下させることができるので、その結果消費電力量を抑えることができる、という効果が期待できる。また板ガラス以外であっても、例えばアクリル板やポリカーボネート板に対して用いれば、転写箔を貼着しして得られるアクリル板等も同様に所定の可視光線透過度を確保しつつ熱線反射機能を有したものとすることが出来るので、それを建築物における大面積の窓や開口部に用いても、その箇所から熱線が侵入しないので、上述同様の効果を得ることが可能となる。
以下、本発明に係る積層体につき、さらに実施例により説明する。
(実施例1)
まず透明樹脂フィルムとして厚みが12μmのPETフィルムを用いる。その表面に離型層としてシロキサン系樹脂を0.5μmの厚みとなるように積層する。次いでその表面にITOを30nmの厚みとなるように積層する。そして次にその表面に銀合金層として銀−ビスマス合金を10nmの厚みとなるように積層する。この際、ビスマスの銀合金全体に対する含有量は1重量%であるものとする。そして次にその表面に再びITOを30nmの厚みとなるように積層し、最後に最表面に接着層として紫外線吸収剤を含有させたアクリル系樹脂を厚みが1.0μmとなるように積層して接着層となし、実施例1に係る転写箔を得た。
まず透明樹脂フィルムとして厚みが12μmのPETフィルムを用いる。その表面に離型層としてシロキサン系樹脂を0.5μmの厚みとなるように積層する。次いでその表面にITOを30nmの厚みとなるように積層する。そして次にその表面に銀合金層として銀−ビスマス合金を10nmの厚みとなるように積層する。この際、ビスマスの銀合金全体に対する含有量は1重量%であるものとする。そして次にその表面に再びITOを30nmの厚みとなるように積層し、最後に最表面に接着層として紫外線吸収剤を含有させたアクリル系樹脂を厚みが1.0μmとなるように積層して接着層となし、実施例1に係る転写箔を得た。
(実施例2)
実施例1と同様にして転写箔を得たが、ビスマスの含有量を3重量%とした。
実施例1と同様にして転写箔を得たが、ビスマスの含有量を3重量%とした。
(実施例3)
実施例1と同様にして転写箔を得たが、ビスマスの含有量を8重量%とした。
実施例1と同様にして転写箔を得たが、ビスマスの含有量を8重量%とした。
(実施例4)
実施例1と同様にして転写箔を得たが、ビスマスの含有量を10重量%とした。
実施例1と同様にして転写箔を得たが、ビスマスの含有量を10重量%とした。
(比較例1)
実施例1と同様にして転写箔を得たが、銀合金層の代わりに銀単体による銀層とした。
実施例1と同様にして転写箔を得たが、銀合金層の代わりに銀単体による銀層とした。
(比較例2)
実施例1と同様にして転写箔を得たが、銀合金層として、ビスマスに代わり銅を銀合金全体に対する含有量が1重量%となるように銀に含有させた。
実施例1と同様にして転写箔を得たが、銀合金層として、ビスマスに代わり銅を銀合金全体に対する含有量が1重量%となるように銀に含有させた。
(比較例3)
実施例1と同様にして転写箔を得たが、ビスマスの含有量を20重量%とした。
実施例1と同様にして転写箔を得たが、ビスマスの含有量を20重量%とした。
以上、得られた実施例1〜4及び比較例1〜3に係る転写箔に関し、それぞれの銀合金層若しくは銀層の状態につき比較した。具体的には60℃、95%RHの環境下において得られた転写箔を72時間放置し、その後腐食の発生量を比較した。尚、同時にJIS A5759に準じて可視光透過率、光線波長1000nmにおける光線透過率、光線波長1600nmにおける光線透過率、それぞれについても測定をした。
その結果につき表に示す。
その結果につき表に示す。
この表より分かるように、実施例1〜4に係る転写箔における銀合金層には劣化が殆ど見られないが、比較例1〜3の場合は同様の条件で測定した結果、腐食が発生しており、即ち銀合金層が劣化してしまっていることがわかる。尚、比較例3においては比較的劣化の度合いは少ないように見えるが、一方で可視光線透過率が60%に届いておらず、結果としてこれを用いても本願発明に係る所望の転写箔とすることが出来ないことがわかる。
Claims (13)
- 基材フィルムである透明樹脂フィルムの表面に、
離型性を有した樹脂により形成される離型層と、
前記離型層のさらに表面に、金属酸化物により形成される金属酸化物層と、銀合金により形成される銀合金層と、をこの順に交互に積層してなり、
かつ、最表面に前記金属酸化物層が位置するように積層してなり、
そして前記最表面に位置する金属酸化物層のさらに表面に接着層を積層してなること、
を特徴とする、転写箔。 - 表面に離型性を有してなる基材フィルムである離型性透明樹脂フィルムの表面に、
金属酸化物により形成される金属酸化物層と、銀合金により形成される銀合金層と、をこの順に交互に積層してなり、
かつ、最表面に前記金属酸化物層が位置するように積層してなり、
そして前記最表面に位置する金属酸化物層のさらに表面に接着層を積層してなること、
を特徴とする、転写箔。 - 請求項1又は請求項2に記載の転写箔であって、
前記銀合金が銀とビスマスとよりなる銀合金であり、
かつ前記ビスマスの銀合金全体に対する含有量が0.001重量%以上10重量%以下であること、
を特徴とする、転写箔。 - 請求項1又は請求項3に記載の転写箔であって、
前記透明樹脂フィルムが、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、若しくはナイロンフィルムの何れかであり、
前記離型性を有した樹脂が、シロキサン系樹脂若しくはアクリルメラミン系樹脂の何れかであること、
を特徴とする、転写箔。 - 請求項2又は請求項3に記載の転写箔であって、
前記離型性透明樹脂フィルムが、フッ素樹脂フィルムであること、
を特徴とする、転写箔。 - 請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の転写箔であって、
前記接着層が、紫外線、赤外線、近赤外線のいずれかを吸収する性質を有する吸収剤を1種類若しくは複数種類含有してなること、
を特徴とする、転写箔。 - 請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載の転写箔であって、
前記金属酸化物層の、波長550nmにおける屈折率が1.6以上であること、
を特徴とする、転写箔。 - 請求項1ないし請求項7の何れか1項に記載の転写箔であって、
前記金属酸化物層が酸化インジウム、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化亜鉛、若しくはチタネートの何れかによる層であること、
を特徴とする、転写箔。 - 請求項1ないし請求項8の何れか1項に記載の転写箔であって、
前記金属酸化物層と前記銀合金層との合計層数が3以上9以下であること、
を特徴とする、転写箔。 - 請求項1ないし請求項9の何れか1項に記載の転写箔であって、
前記金属酸化物層はスパッタリング法、蒸着法、若しくはコーティング法の何れかの手法により積層されてなり、
かつ前記銀合金層はスパッタリング法若しくは蒸着法により積層されてなること、
を特徴とする、転写箔。 - 請求項1ないし請求項10の何れか1項に記載の転写箔であって、
JIS規格(JIS A5759)に準拠して測定した前記転写箔の、可視光透過率が60%以上90%以下であり、
JIS規格(JIS A5759)に準拠して測定した前記転写箔の、光線波長が1000nmにおける光線透過率が10%以上60%以下であり、
JIS規格(JIS A5759)に準拠して測定した前記転写箔の、光線波長が1600nmにおける光線反射率が5%以上50%以下であること、
を特徴とする、転写箔。 - 請求項1ないし請求項11の何れか1項に記載の転写箔において、
前記離型性透明樹脂フィルムの表面、又は前記離型層の表面、に最初の金属酸化物層を積層する前に、反射防止機能を有した反射防止層、又はハードコート機能を有したハードコート層、の何れか若しくは両方を積層してなること、
を特徴とする、転写箔。 - 請求項1ないし請求項12の何れか1項に記載の転写箔を表面に貼着してなること、
を特徴とする、板ガラス、アクリル板、又はポリカーボネート板。
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---|---|---|---|
JP2006210870A JP2008036866A (ja) | 2006-08-02 | 2006-08-02 | 転写箔、及び該転写箔を用いた板ガラス、アクリル板、又はポリカーボネート板 |
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ID=39172458
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009099545A (ja) * | 2007-09-28 | 2009-05-07 | Dainippon Printing Co Ltd | エレクトロルミネッセンス素子 |
JP2014231199A (ja) * | 2013-05-30 | 2014-12-11 | 住友理工株式会社 | 透明積層フィルム |
WO2022080203A1 (ja) * | 2020-10-14 | 2022-04-21 | Agc株式会社 | ガラス積層体とその製造方法 |
-
2006
- 2006-08-02 JP JP2006210870A patent/JP2008036866A/ja active Pending
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