JP2008026311A - ポリメラーゼ固定化電極 - Google Patents

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Abstract

【課題】DNA塩基配列の電気化学的解読装置において、溶液中に残存する未反応のヌクレオチド5’−三リン酸誘導体までも電極上で電気化学的に変換されてしまうことに起因する誤シグナルを低減する。
【解決手段】導電性基体と、導電性基体の表面に固定されたポリメラーゼユニットとからなるポリメラーゼ固定化電極を構成するに際して、ポリメラーゼ部分とアンカー部分と導電性部分とを有し、ポリメラーゼ部分と前記アンカー部分と導電性部分とが、(1)ポリメラーゼ部分、アンカー部分、導電性部分の順、もしくは(2)ポリメラーゼ部分、導電性部分、アンカー部分の順、で連結されて構成されたポリメラーゼユニットを用い、かつ、ポリメラーゼユニットの導電性基体への固定はアンカー部分によってなし、導電性部分の導電性基体に固定されていない側の端部がポリメラーゼ部分の活性部位近傍に位置させる。
【選択図】図2

Description

本発明は電気化学反応を用いて核酸の塩基配列情報を取得するために好適に使用できるポリメラーゼ固定化電極に関する。
非特許文献1には、核酸の塩基配列を解析する方法として、ダイデオキシ法が記載されている。また、特許文献1には、ダイデオキシ法を用いて核酸塩基配列を決定する方法が記載されている。また、特許文献2には、標的一本鎖核酸と、該一本鎖核酸のSNP部位の下流にあるヌクレオチド配列にハイブリダイズ可能な一本鎖核酸プローブが固定された基板とを、DNAポリメラーゼおよび標識ddNTPの存在下で反応させて検出する方法が記載されている。
Proceedings of National Academy of Sciences,USA,74:5463 〜5467 (1977) 特開平05−168500号公報 特開2003−189899
しかしながら、特許文献1に記載のダイデオキシ法を用いた塩基配列の解析方法では、電気泳動による伸長DNA鎖の分離という工程を含むため、解析結果を得るまでに長時間を要する。また、特許文献2に記載の検出方法では、未反応の標識ddNTPの洗浄が必要であり、かつ、判別可能な塩基数が一塩基のみであるという問題がある。
そこで、本発明の目的は、高感度に検出することができるポリメラーゼ固定化電極および該ポリメラーゼ固定化電極を用いた塩基配列の情報取得方法を提供することにある。
本発明は、
導電性基体と、該導電性基体の表面に固定されたポリメラーゼユニットとからなるポリメラーゼ固定化電極であって、
前記ポリメラーゼユニットが、ポリメラーゼ部分とアンカー部分と導電性部分とを有し、
前記ポリメラーゼ部分と前記アンカー部分と前記導電性部分とが、
前記ポリメラーゼ部分、前記アンカー部分、前記導電性部分の順、
もしくは、
前記ポリメラーゼ部分、前記導電性部分、前記アンカー部分の順で
連結されて構成されており、
前記ポリメラーゼユニットの前記導電性基体への固定が前記アンカー部分によってなされており、
前記導電性部分が有する端部のうち前記アンカー部分側の端部とは反対側の端部が前記ポリメラーゼ部分の活性部位近傍に位置することを特徴とするポリメラーゼ固定化電極である。
前記ポリメラーゼユニットが、前記ポリメラーゼ部分と前記アンカー部分と前記導電性部分とがこの順で連結されて構成されており、
前記アンカー部分のうちの前記導電性部分側の端部から前記導電性部分の自由端までの長さと、前記アンカー部分の前記ポリメラーゼ部分側の端部から前記ポリメラーゼ部分の活性部位までの長さがほぼ等しいことが好ましい。
前記ポリメラーゼ部分と前記アンカー部分との間にポリヒスチジンタグおよび前記ポリヒスチジンタグが配位する金属が存在し、
前記ポリメラーゼ部分と前記アンカー部分との連結が前記ポリヒスチジンタグと前記ポリヒスチジンタグが配位する金属との配位結合によってなされていることが好ましい。
前記ポリメラーゼユニットが、前記ポリメラーゼ部分と前記導電性部分と前記アンカー部分とがこの順で連結することによって構成されており、
前記導電性部分と前記ポリメラーゼ部分とが直接結合していることが好ましい。
前記ポリメラーゼ部分と前記導電性部分との間にポリヒスチジンタグおよび前記ポリヒスチジンタグが配位する金属が存在し、
前記ポリメラーゼ部分と前記導電性部分との連結が前記ポリヒスチジンタグと前記ポリヒスチジンタグが配位する金属との配位結合によってなされていることが好ましい。
前記導電性部分がπ共役金属錯体からなる基であることが好ましい。
前記導電性部分が核酸を含むことが好ましい。
また、別の本発明は、
塩基配列に関する情報取得方法であって、
標的核酸とプライマーとが二本鎖化した試料と、ポリメラーゼ固定化電極と、電気化学的に変換し得る部分を有するヌクレオチド誘導体とを用意する工程と、
前記試料と、前記ポリメラーゼ固定化電極と、前記ヌクレオチド誘導体と、を溶媒中で共存させる工程と、
前記プライマーに該ヌクレオチド誘導体が導入されているか否かを電気化学反応を用いて検出する工程と、を有し、
前記ポリメラーゼ固定化電極が、導電性基体と、該導電性基体の表面に固定されたポリメラーゼユニットとからなり、
前記ポリメラーゼユニットが、ポリメラーゼ部分とアンカー部分と導電性部分とを有し、
前記ポリメラーゼ部分と前記アンカー部分と導電性部分とが、
ポリメラーゼ部分、アンカー部分、導電性部分の順、
もしくは、
ポリメラーゼ部分、導電性部分、アンカー部分の順で
連結されて構成されており、
前記ポリメラーゼユニットの前記導電性基体への固定が前記アンカー部分によってなされており、
前記導電性部分が有する端部のうち前記アンカー部分側の端部とは反対側の端部が前記ポリメラーゼ部分の活性部位近傍に位置することを特徴とする塩基配列に関する情報取得方法である。
本発明のポリメラーゼ固定化電極を用いることで、塩基配列に関する情報を電気信号として効率良く、かつ高感度に得ることができる。
本発明は、導電性基体と、該導電性基体の表面に固定されたポリメラーゼユニットとからなるポリメラーゼ固定化電極であって、
前記ポリメラーゼユニットが、ポリメラーゼ部分とアンカー部分と導電性部分とを有し、
前記ポリメラーゼ部分と前記アンカー部分と導電性部分とが、
前記ポリメラーゼ部分、前記アンカー部分、前記導電性部分の順、
もしくは、
前記ポリメラーゼ部分、前記導電性部分、前記アンカー部分の順で
連結されて構成されており、
前記ポリメラーゼユニットの前記導電性基体への固定が前記アンカー部分によってなされており、
前記導電性部分が有する端部のうち前記アンカー部分側の端部とは反対側の端部が前記ポリメラーゼ部分の活性部位近傍に位置することを特徴とするポリメラーゼ固定化電極である。
第一の形態のポリメラーゼ固定化電極は、前記ポリメラーゼ固定化電極において、前記ポリメラーゼユニットが有するポリメラーゼ部分とアンカー部分と導電性部分とがこの順で連結することによって構成されているポリメラーゼ固定化電極である。
以下、第一の形態のポリメラーゼ固定化電極について説明する。
図1(A)に、第一の形態のポリメラーゼ固定化電極に用いるポリメラーゼユニット(a)の構造の一例を模式的に示す。図1(A)では、ポリメラーゼ部分1、アンカー部分2及び導電性部分3がこの順に(直列に)連結されていることによってポリメラーゼユニット(a)が構成されている。
また、図2(A)にポリメラーゼユニット(a)を用いたポリメラーゼ固定化電極の例を模式的に示す。ポリメラーゼ固定化電極は、ポリメラーゼ1と、アンカー部分2と、導電性部分3とをこの順に有するポリメラーゼユニット(a)と、導電性基体5によって構成されている。そして、ポリメラーゼユニット(a)は、ポリメラーゼユニット(a)が有するアンカー部分2によって導電性基体5に固定されている。ポリメラーゼ固定化電極は、ポリメラーゼ固定化電極が有する鋳型である標的核酸に相補的な核酸を合成する際に、末端に伸長されたヌクレオチドの塩基種別を電気化学的に判別することができるものである。
第一の形態のポリメラーゼ固定化電極は、図2(A)に示すように、ポリメラーゼ部分1と導電性部分3との間に存在するアンカー部分2によってポリメラーゼユニット(a)が固定化される。このような構成とすることにより、ポリメラーゼユニット(a)の導電性部分3をポリメラーゼ部分1の近傍に配置させることができる。
具体的には、以下の(A)と(B)の長さがほぼ等しくなるように設計することで、導電性部分3の前記導電性基体5に固定されていない側の端部が前記ポリメラーゼ部分(a)の活性部位近傍に位置しやすくなる。
(A)アンカー部分2の導電性部分3側の端部から導電性部分3の自由端(導電性部分の固定されていない側の端部)までの長さ
(B)アンカー部分2のポリメラーゼ部分1側の端部からポリメラーゼ部分1の活性部位までの長さ(アンカー部分2のポリメラーゼ部分1側の端部からポリメラーゼ部分における3'伸長末端に付加されたヌクレオチド誘導体までの長さ)
より好ましい設計としては、(A)の長さが(B)の長さよりも短く、(A)と(B)との長さの差が5nm以内となる設計である。これは、(B)の長さが(A)の長さよりも長い場合、ヌクレオチドが、導電性部分の立体障害により、ポリメラーゼ部分に捕捉されにくくなる場合があるからである。
ここで、本発明において、「近傍」とは5nmの以内のこととする。また、(A)と(B)との長さが略等しいとは(A)の距離と(B)の距離の差が5nm以内のこととする。
ここで、アンカー部分2の導電性部分3側の端部から導電性部分3の自由端までの長さとは、アンカー部分2と導電性部分3とが直接結合している場合は、アンカー部分2と導電性部分3との結合部分から自由端までの長さである。また、アンカー部分2と導電性部分3との間に第1のリンカーが存在する場合は、アンカー部分と第1のリンカーとの結合部分から自由端までの長さのことを示すものとする。
これにより、従来のものより低い過電圧で3'伸長末端に付加されたヌクレオチド誘導体の電気化学的変換が可能になる。その結果、溶液中に残存する未反応のヌクレオチド5’−三リン酸誘導体までも電極上で電気化学的に変換されてしまうことに起因する誤シグナルを低減することができる。なお、誤シグナルの寄与をより低減させる目的で、ポリメラーゼユニットを導電性基体に固定化した後に、導電性基体にブロッキング処理を施してもよい。このようなブロッキング処理としては、例えば、ウシ血清アルブミンやカゼイン等のタンパク質水溶液にポリメラーゼユニットを固定した導電性基体を浸漬する方法等が利用できる。また、アンカー部分と同じ結合様式をもつ類似化合物、例えばアンカー部分がジスルフィドである場合には、ジスルフィドやチオールを官能基としてもつ化合物を含む水溶液にポリメラーゼユニットを固定した導電性基体を浸漬する方法が利用できる。
以下、ポリメラーゼ固定化電極を構成する各部について図2(A)を用いて説明する。
前述したように、ポリメラーゼユニットは、ポリメラーゼ部分1と、アンカー部分2と、導電性部分3を基本要素とする。ポリメラーゼ部分1は標的核酸を鋳型としてこれに相補的な核酸を合成する部分であり、ポリメラーゼで構成される。このようなポリメラーゼは、情報を取得しようとする核酸の種類に応じて選択される。例えば、情報を取得しようとする核酸の種類がDNAである場合には、ポリメラーゼは、DNA依存的DNAポリメラーゼ(DNA-dependent DNA polymerase、EC 2.7.7.7)または、DNA依存的RNAポリメラーゼ(DNA-dependent RNA polymerase、EC 2.7.7.6)を選択する。ポリメラーゼがDNA依存的DNAポリメラーゼである場合は、以下の(1)の反応を触媒し、DNA依存的RNAポリメラーゼである場合は、以下の(2)の反応を触媒する酵素である。
deoxynucleoside triphosphate + DNA(n) = diphosphate + DNA(n+1) (1)
nucleoside triphosphate + RNA(n) = diphosphate + RNA(n+1) (2)
また、情報を取得しようとする核酸の種類がRNAである場合には、ポリメラーゼは、RNA依存的DNA ポリメラーゼ(RNA-dependent DNA polymerase、EC 2.7.7.49)または、RNA依存的RNA ポリメラーゼ(RNA-dependent RNA polymerase、EC 2.7.7.48)を選択する。ポリメラーゼがRNA依存的DNAポリメラーゼである場合には、以下の(3)の反応を触媒し、RNA依存性DNA ポリメラーゼである場合には以下の(4)の反応を触媒する酵素である。
nucleoside triphosphate + RNA(n) = diphosphate + RNA(n+1) (3)
deoxynucleoside triphosphate + DNA(n) = diphosphate + DNA(n+1) (4)
なお、ポリメラーゼの由来については限定されない。また、ポリメラーゼは、3'→5'エキソヌクレアーゼ活性が欠失していることが望ましい。これは、ヌクレオシド5´-三リン酸が枯渇しても伸長された核酸鎖が分解されないためである。
また、ポリメラーゼ部分1におけるポリメラーゼ活性部位とは、ポリメラーゼのpalmドメインに存在する2つのアスパラギン酸およびそれに相同な残基で、使用するポリメラーゼのアミノ酸配列を、タンパク質ファミリーとドメインに関する配列相同性データベースPfam(Nucleic Acids Research, 2006, Vol. 34, Database issue D247?D251)におけるDNA polymerase family A; pfam00476にアライメントしたとき、
モチーフ配列:Asp Tyr Ser Gln Ile Glu Leu Arg Val Leu Ala His Leu [配列番号11]
及びモチーフ配列:Arg Met Leu Leu Gln Val His Asp Glu Leu [配列番号12]
に相同性を有するアミノ酸配列部位である。
アンカー部分2は、ポリメラーゼユニット(a)を導電性基体5の表面に固定化する機能を有する。すなわち、ポリメラーゼユニット(a)は、アンカー部分2によって導電性基体5の表面に固定される。
アンカー部分2は、導電性基体に固定されている部位のこととする。このようなアンカー部分2としては、導電性基体と共有結合を形成しうる原子、原子団もしくは官能基であっても良く、導電性基体に親和性を有する生体分子などであっても良い。
より具体的には、導電性基体と共有結合を形成しうる原子、原子団及び官能基としては、ジスルフィド基などを用いることができる。導電性基体と共有結合を形成し得る官能基がジスルフィド基である場合、導電性基体は金を含む材料で形成されていることが好ましい。また、導電性基体に親和性を有する生体分子としては、ペプチド、抗体断片、核酸、アプタマー、糖鎖などを用いることができる。なお、ペプチドなどの一部が導電性基体に固定されている場合には、固定されている部分はアンカー部分とし、固定に関与していない部分はリンカーの一部と定義する。
また、アンカー部分2は、使用するポリメラーゼ部分の種類により適宜長さを調整することが可能であるが、ポリメラーゼ部分1よりも小さいことが好ましい。なお、アンカー部分2がポリメラーゼ部分1よりも小さいとは、具体的には、アンカー部分2内に存在する線分のうち最大のものがポリメラーゼ部分1の直径よりも小さいことである。ここで、ポリメラーゼ部分1の直径(φ)とは、ポリメラーゼ部分に外接する球の直径、またはポリメラーゼ部分の露出表面積を表面積としてもつ球の直径のいずれか大きい値、またはポリメラーゼ部分の結晶構造が知られていない場合には、ポリメラーゼ部分の分子量をMとした時、
Figure 2008026311
によって定義されるものとする(単位はnmである)。
アンカー部分2がポリメラーゼ部分1の直径よりも大きい場合、導電性基体5の表面(以下、電極面と呼ぶ場合がある)に対するポリメラーゼ部分1の密度が低下してしまい、結果としてシグナル強度が減少してしまう場合がある。また、電極面のうちポリメラーゼ部分1で覆われていない部分の量が多くなるため(電極面が露出するため)、未反応のヌクレオチド誘導体の電極へのアクセスが容易となりノイズが増大する可能性がある。
例えば、ポリメラーゼ部分1として大腸菌DNAポリメラーゼIのKlenow fragmentを用いる場合には、8.2 nm以下とすることが望ましい。
また、アンカー部分2での導電性基体5への固定化を容易にするという観点から考えれば、ポリメラーゼユニット(a)が有するアンカー部分2の導電性基体5への結合性を、ポリメラーゼユニット(a)のうちのアンカー部分2以外の部分(ポリメラーゼ部分1及び導電性部分3を含む部分)の導電性基体5への結合性よりも相対的に高い構成とすることが好ましい。このような構成とすることにより、アンカー部分2によって導電性基体5への固定を容易に行うことができる。好ましくは、ポリメラーゼ部分1および導電性部分3が導電性基体5と結合し難く、アンカー部分2が導電性基体5と結合し易くなるようにこれらの部分の構成を調整することが好ましい。
なお、ポリメラーゼ部分1、導電性部分3が導電性基体5と結合し難く、アンカー部分2が導電性基体5と結合し易くなるようにこれらの部分の構成を調整することが困難な場合であっても、本発明の構成は有効である。例えば、アンカー部分よりも導電性基体に対する結合性が相対的に高い部分を除いた、アンカー部分を含むポリメラーゼユニットの一部を先に電極表面に固定化する。この後にアンカー部分よりも導電性基体に対する結合性が相対的に高い部分を、先に固定した部分に連結する。このようにすることで、ポリメラーゼユニットを導電性基体にアンカー部分から結合させた状態を構築することができる。
次に導電性部分3について説明する。
導電性部分3は、ポリメラーゼ部分1と導電性基体5との間の電子の授受を担う部分であり、導電性基体5に結合しているアンカー部分2と接続し、導電性基体5と導通している。ポリメラーゼユニット(a)が導電性部分3を有することにより、電気化学的に変換し得る部分(詳細は後述する)を有するヌクレオチド誘導体を用いた情報取得を行う場合に、伸長鎖の3'末端に付加されたヌクレオチド誘導体の電気化学的変換を、低過電圧で実行することが可能となる。ここで、「AとBが導通している」とはAとBとの間の電気抵抗値が1.0×1020Ω以下のことを示す。
導電性部分3とアンカー部分2とは直接結合していても良いし、リンカーを介して間接的に結合していても良い。このような導電性部分3としては、例えば、以下のいずれかのような分子からなる基を用いて形成することができる。
即ち、
<1>導電性物質と、導電性を有する棒状有機分子で構成される構造体
ここで、棒状とは円柱もしくは四角柱に近い形状であり、円柱もしくは四角柱における高さに相当する部分の長さが他の部分である辺もしくは直径に比べて2倍以上長い形状である。また、「導電性を有する」とは導電率が10-6S/cm以上のものとする。
<2>前記導電性物質が前記棒状有機分子の内部、端部もしくは周側面の少なくともいずれかに担持されている前記<1>に記載の構造体<3>
<3>棒状有機分子がα−ヘリックス、DNAもしくはアミロースから選択される前記<1>または<2>に記載の構造体
<4>前記導電性物質が金属原子、金属酸化物、金属硫化物、カーボン化合物、から選択される少なくとも1種を含む前記<1>から<3>のいずれかに記載の構造体。
<5>前記導電性物質が、芳香族π共役高分子のドーピングに用いられるドーパントである前記<1>から<4>のいずれかに記載の構造体。
<6>前記ドーパントが、ポリアリニン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン等の導電性高分子、ルイス酸、プロトン酸、遷移金属ハライド、アルカリ金属、アルキルアンモニウムイオン、界面活性剤、またはアミノ酸のうち選択される少なくとも一つである前記<5>に記載の構造体。
<7>前記導電性物質がπ共役金属錯体分子(錯体の骨格が、錯体の中心金属とπ共役配位子によって構成されている錯体分子)である<1>〜<6>に記載の構造体。錯体の中心金属としては、遷移金属元素が好適に用いられる。例としては、Os、Fe、Ru、Co、Cu、Ni、V、Mo、Cr、Mn、Pt、Rh、Pd、Irが挙げられる。π共役配位子としては、分子の骨格にπ共役が広がっており、水溶液中、電極が使用される条件において充分な化学的安定性と配位能を有する化合物であれば、好適に使用できる。例としては、配位子部位としては、ビピリジン、ターピリジン、フェナントロリン、ポルフィリン、フタロシアニンおよびこれらの誘導体が挙げられる。
また、導電性部分3は、複数の性質が異なる領域で構成することもできる。なお、ここで「領域」とは、導電性などの性質により、お互いに区別することができる特定の範囲のこととする。導電性部分3がこのような構成である場合のポリメラーゼユニット(a)の別な例を図1(B)に模式的に示す。導電性部分3をアンカー部分2に近い側の第一の導電性領域9と自由端に近い側の第二の導電性領域(以降プローブ領域と呼ぶ場合がある)4とで構成とする。導電性部分3がプローブ領域4を有する場合の第一の形態のポリメラーゼ固定化電極の別な構成例としては、図2(B)に示すような構成とすることができる。このような構成とし、第二の導電性領域4を小さな構造とすることで、第一の導電性領域9の大きさが大きく、導電性部分を第一の導電性領域9のみで構成している場合には、ポリメラーゼ内の伸長鎖末端に付加されたヌクレオチド誘導体に対して導電性部分の自由端がアクセスし難い場合であっても、電子の授受を達成することができるようになる。なお、このような場合、前記プローブ領域4の自由端がポリメラーゼ部分1の核酸伸長反応部位の近傍に位置するように、第一の導電性領域9の長さを調整することが好ましい。そのような構成とすることで、導電性部分が一つの領域で構成されている場合と同様、導電性部分の自由端(第二の導電性領域の自由端)がポリメラーゼ分子内部の伸長鎖3'末端の物理的近傍に配置されて、伸長鎖の3'末端に付加されたヌクレオチド誘導体の電気化学的変換の低過電圧での実行が更に容易となる。
すなわち、伸長末端の電気化学的に変換可能な構造でキャッピングされたヌクレオチド誘導体の電気化学的な変換に要する過電圧を更に低減することが可能になる。
プローブ領域4は、Au、Pt、Ag、Co、Pd、Rh、Ni、Cr、Fe、Mo、Ti、Cu、Wや、これらの合金等の金属微粒子や、例えばACNQ(2-amino-3-carboxy-1,4-naphthoquinone)やフィロキノン、メナキノン、メナジオン等のキノン骨格を有する化合物、Os、Ru、Fe、Co等の金属錯体、ベンジルビオローゲン等のビオローゲン化合物、ニコチンアミド構造を有する化合物、リボフラビン構造を有する化合物、ヌクレオチド−リン酸構造を有する化合物等から形成することができる。また、必要に応じてこれらの材料の2種以上を組み合わせてプローブ領域4を構成することもできる。プローブ領域4は、ポリメラーゼ部分1内の伸長鎖末端に付加されたヌクレオチド誘導体に対してアクセスが可能である程度に小さいことが好ましく、0.5nmから2nm程度であることが好ましい。
導電性基体5は、導電性を有し、電極が使用される条件即ちポリメラーゼ部分1が酵素活性を有する条件において充分な電気化学安定性を有する材料を好適に使用することができる。このような導電性基体5の材料の例としては、金属、導電性高分子、金属酸化物、及び炭素材料などを挙げることができる。金属の例としては、Au、Pt、Ag、Ni、Cr、Fe、Mo、Ti、Al、Cu、V、In、Ga、Wのうち少なくとも一種類の元素を含むものがあげられ、これらは、合金であっても、めっきを施したものであってよい。導電性高分子の例としては、ポリアセチレン類、ポリアリーレン類、ポリアリーレンビニレン類、ポリアセン類、ポリアリールアセチレン類、ポリジアセチレン類、ポリナフタレン類、ポリピロール類、ポリアニリン類、ポリチオフェン類、ポリチエニレンビニレン類、ポリアズレン類、ポリイソチアナフテン類のうち少なくともひとつの化合物を含むものが挙げられる。金属酸化物の例としては、In、Sn、Zn、Ti、Al、Si、Zr、Nb、Mg、Ba、Mo、W、V、Srのうち、少なくとも一種類の元素を含むものがあげられる。炭素材料の例としては、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、フラーレン化合物およびこれらの誘導体が挙げられる。
上記各部の連結(ポリメラーゼ部分1、アンカー部分2、導電性部分3の間での連結および導電性部分3内での第一の導電性領域と第二の導電性領域の間の連結)は、所望とする機能を損なわない範囲でリンカーが介在してもよい。隣り合う各部分間の結合は、各部分を構成する分子の種類、結合方法、ポリメラーゼ固定化電極の用途などに応じて選択できる。例えば、ポリメラーゼユニットの製造条件、電極上への固定化条件において、また水溶液中、電極が使用される条件において充分な化学的、電気化学的安定性を有する結合であれば特に制限されるものではない。各部を接続させる際の方法としては、共有結合や、配位結合、水素結合、静電的相互作用、疎水的相互作用、物理的吸着等の結合によって接続する方法が挙げられる。
ポリメラーゼ部分1とアンカー部分2はポリヒスチジンタグを利用して連結することもできる。図3(A)にその一例を模式的に示す。この場合、ポリメラーゼ部分1とアンカー部分2との間のリンカーを、ポリヒスチジンタグ6と、およびポリヒスチジンタグ6が配位結合する金属(中心金属部分)8(図3(A)では例としてニッケルイオン(Ni)を挙げている)と、NTA(ニトリロ三酢酸)7とで構成する。
これにより、ポリメラーゼ部分とポリヒスチジンタグとが融合した部分(ポリメラーゼ部分1とポリヒスチジンタグ6とからなるパーツ)と、プローブ修飾ポリメラーゼを構成する他の部分(プローブ部分4と導電性部分3とアンカー部分2とNTA7とからなるパーツ)とを別々に調製することが可能になり好適である。図4(A)に、ポリヒスチジンタグを利用したポリメラーゼユニットを導電性基体に結合させた状態を模式的に示す。ポリヒスチジンタグを用いた場合でも、前述したように、プローブ領域4の自由端がポリメラーゼ部分1の活性部位近傍に位置するように設計する。したがって、アンカー部分2のプローブ領域4側の端部からプローブ領域4の自由端までの長さと、アンカー部分2のポリメラーゼ部分1側の端部からポリメラーゼ部分1における3'伸長末端に付加されたヌクレオチド誘導体に至るまでの長さを略等しくすることが好ましい。なお、この際の「略等しい」とは前述した定義と同様とする。
次に、第二の形態のポリメラーゼ固定化電極について説明する。
第二の形態のポリメラーゼ固定化電極に用いるポリメラーゼユニット(b)は、ポリメラーゼ部分とアンカー部分と導電性部分とがこの順で連結することによって構成されているポリメラーゼ固定化電極である。第一の形態のポリメラーゼ固定化電極との違いは、第一の形態のポリメラーゼ電極が有するポリメラーゼユニットにおいて、ポリメラーゼ部分とアンカー部分と導電性部分が連結する順序であり、それ以外は第一の形態と同様とする。
図2(C)に第二の形態のポリメラーゼ固定化電極の一例を示す。また、第二の形態のポリメラーゼ固定化電極に用いるポリメラーゼユニット(b)の一例を図1(C)に示す。
ポリメラーゼユニット(b)は、ポリメラーゼ部分1と導電性部分3とアンカー部分2とがこの順で連結して構成され、アンカー部分2によって導電性基体5に固定されている。
第二の形態のポリメラーゼ固定化電極においても、導電性部分3がポリメラーゼ部分1の物理的近傍に位置することによって、第1のポリメラーゼ固定化電極と同様の効果を得ることができる。このような構成とするには、導電性部分3とポリメラーゼ部分1との結合部位がポリメラーゼ部分1のポリメラーゼ活性部位近傍とすることが好ましい。これにより、第一の形態のポリメラーゼ固定化電極と同様、導電性部分3がポリメラーゼ分子内部の伸長鎖3'末端の物理的近傍に配置され、伸長鎖の3'末端に付加されたヌクレオチド誘導体の電気化学的変換の低過電圧での実行が容易となる。すなわち、従来より低い過電圧で3'伸長末端に付加されたヌクレオチド誘導体の電気化学的変換が可能になる。その結果、溶液中に残存する未反応のヌクレオチド5’−三リン酸誘導体までも電極上で電気化学的に変換されてしまうことに起因する誤シグナルを低減することができる。
なお、第一の形態のポリメラーゼ固定化電極と同様、ポリメラーゼユニット(b)が有する導電性部分を、複数の領域で構成することができる。図1(D)のように、ポリメラーゼ部分1とアンカー部分2との間の導電性部分3を、アンカー部分側の第一の導電性領域9とポリメラーゼ部分側の第二の導電性領域(プローブ領域)4で構成する。このようなポリメラーゼユニットを用いたポリメラーゼ固定化電極を図2(D)に示す。このような構成とすることによって、伸長鎖の3'末端に付加されたヌクレオチド誘導体の電気化学的変換の低過電圧での実行が更に容易となる。
ポリメラーゼ部分1と導電性部分3とは直接結合していることが好ましいが、リンカーを介して結合していても良い。リンカーが存在する場合は、リンカーの長さが2nmを超えない長さであることが好ましい。また、ポリメラーゼユニット(a)と同様、図3(B)に示すように、ポリメラーゼユニット(b)においても、ポリメラーゼ部分1とプローブ部分4との連結をポリヒスチジンタグの金属への配位結合によって形成することができる。なお、図3(B)に示すポリメラーゼ部分(b)を用いて形成したポリメラーゼ固定化電極は、図4(B)のような構成となる。
次に、ポリメラーゼ固定化電極(a)または(b)を用いた塩基配列の取得方法について説明する。ポリメラーゼ固定化電極を用いた塩基配列の取得方法は、例えば、所定部分の塩基配列の確定診断などに適用できる。
本発明のポリメラーゼ固定化電極は、ポリメラーゼを利用したヌクレオチドの二本鎖核酸への取り込み(一方の鎖を鋳型とした相補鎖の3’末端の伸長部分へのヌクレオチドの取り込み)を利用した塩基配列に関する情報を取得する方法等に好適に利用できる。このような情報取得方法としては、以下の各態様を挙げることができる。なお、本発明の核酸の塩基配列の解析方法における各工程の例を、図5を適宜参照して説明するが、図5(1)〜(4)の詳細を、拡大図として図8(1)、図8(2)、図9(1)及び図9(2)に示している。 図8(1)は図5(1)の拡大図であり、図8(2)は図5(2)の各大豆である。また、図9(1)は図5(3)の拡大図であり、図9(4)は図5(4)の拡大図である。
A)第1の実施形態
まず、標的核酸とプライマーとにより二本鎖化した試料(標的核酸にプライマーがハイブリダイズした試料)と、ポリメラーゼ固定化電極と、電気化学的に変換し得る部分を有するヌクレオチド誘導体とを用意する(図5(1))。ここで、電気化学的な変換とは、導電性基体を通じた電子の授受に起因して、前記誘導体の一部が脱離することや、この電子の授受に起因して惹起される化学結合の切断や、再構成のことである。
ヌクレオチド誘導体とは、例えばヌクレオシド 5'-三リン酸誘導体であり、少なくとも以下のものが該当する。
・アデノシン 5'-三リン酸誘導体、
・シチジン 5'-三リン酸誘導体、
・グアノシン 5'-三リン酸誘導体、
・ウリジン 5'-三リン酸誘導体、
・2'-デオキシアデノシン 5'-三リン酸誘導体、
・2'-デオキシシチジン 5'-三リン酸誘導体、
・2'-デオキシグアノシン 5'-三リン酸誘導体、
・2'-デオキシチミジン 5'-三リン酸誘導体
なお、B)以降の実施形態においても、ヌクレオチド誘導体としては、上記例示したものなどを用いることができる。なお、図では、複数種類のヌクレオチド誘導体を記載しているが、必要に応じて、複数種であっても良く、1種類であってもよい。
そして、該二本鎖化した試料と該ポリメラーゼ固定化電極と該ヌクレオチド誘導体とを溶媒中で共存させる(図5(1))。ここで、溶媒とは、前記試料と前記ポリメラーゼ固定化電極と前記ヌクレオチド誘導体とを保持する水溶性の液体もしくはゲル状の物質である。
該ヌクレオチドの塩基種と、該二本鎖化した試料におけるプライマーの3´末端に隣接する標的核酸の塩基種とが相補的である場合には、プライマーの3'末端に導入され(図5(2)(3))、相補的でない場合には、導入されない。その後、該プライマーに該ヌクレオチド誘導体が導入されているか否かを、電気化学反応を用いて検出する。
例えば、1種類のヌクレオチド誘導体のみを試料と共存させた場合に、試料にヌクレオチド誘導体が導入されていれば、当該ヌクレオチド誘導体に対応した塩基が所定部分にあることが分かる。一方、導入されていない場合、当該ヌクレオチド誘導体に対応した塩基は、少なくとも、所定部分には無いことが分かる。このような手法により、標的核酸の塩基配列に関する情報を取得することができる。
ここで、取得できる情報には、認識しようとする位置の塩基がアデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)などの内、何であるかという情報は勿論のこと、少なくとも何(例えば、A)ではないという情報も含まれる。以下の実施形態においても、同様である。
また、ヌクレオチド誘導体の電気化学的に変換し得る部分における、「変換」は、導電性基体を通して行われる電子の授受によって生じる化学結合の切断や再構成を意味する。そして、前記「変換」には、前記部分および該部分を含む上位のグループのヌクレオチド誘導体からの脱離、置換、あるいは付加を受ける反応なども含まれる。前記ヌクレオチド誘導体において、電気化学的に変換し得る部分とは、前記電気化学反応により、前記ヌクレオチド誘導体から脱離するか、前記ヌクレオチド誘導体を置換するか、あるいは前記ヌクレオチド誘導体に付加される部位のことである。また、前記部分は、付加される反応が惹起される部分であると捉えることもできる。なお、電気化学的に活性な(導電性基体と電子の授受をする)官能基としては、例えば金属錯体からなる基がある。しかしながら、この金属錯体のように、中心金属の酸化あるいは還元により酸化数が変化するだけで、化学結合の切断や再構成を伴わないようなものは本発明においては電気化学的に変換し得る部分とは言わない。以下の実施形態でも同様である。
B)第2の実施形態
標的核酸の塩基配列を読み取る方法について説明する。まず、標的核酸とプライマーとにより二本鎖化した試料と、ポリメラーゼ固定化電極と、各々の電気特性が異なり電気化学的に変換し得る部分を有する複数種類のヌクレオチド誘導体と、を用意する。電気特性が異なるとは、それぞれのヌクレオチド誘導体の電気化学的変換に要する電子の数や印加電圧などがそれぞれ異なり、通常の電気化学的測定手段により識別し得ることである。
該試料と、該ポリメラーゼ固定化電極と、該複数種類のヌクレオチド誘導体とを溶媒中で共存させる。これにより、標的核酸の塩基に相補的な塩基をもつヌクレオチド誘導体がプライマーの3'末端に重合される。この際、ヌクレオチド誘導体に導入されている電気化学的に変換し得る部分の存在により、ポリメラーゼ固定化電極を構成するポリメラーゼ部分によるプライマーの更なる伸長反応が阻害されるようにしておく。これにより、標的核酸が複数分子存在しているとしても、一塩基伸長される毎に重合反応が停止するので、全体の合成反応を同期させることが可能になる。
そして、該複数種類のヌクレオチド誘導体の内、該プライマーの3'末端に導入されているヌクレオチド誘導体を、その電気化学的に変換し得る部分を電気化学的に変換することにより同定する。この際、ヌクレオチド誘導体に導入されている電気化学的に変換し得る部分は、電気化学的変換に起因して惹起される脱離、置換もしくは付加反応によって、ポリメラーゼ固定化電極を構成するポリメラーゼ部分による伸長反応が再度可能になるようにしておく。
同定後、ポリメラーゼ部分による伸長反応は自発的に再開することとなる。したがって、ポリメラーゼ部分が一塩基分伸長反応をするのに必要な時間だけ待った後に、次の塩基の同定のために前記工程を繰り返し行うことで、標的核酸の塩基配列を逐次読み取ることができる。一般にポリメラーゼによる伸長反応は一塩基あたり500分の1秒で終了するので、高速な塩基配列の解読が可能である。
C)第3の実施形態
まず、標的核酸とプライマーとにより二本鎖化した試料(標的核酸にプライマーがハイブリダイズした試料)と、ポリメラーゼ固定化電極と、電気化学的に変換し得る部分を有するヌクレオチド誘導体とを溶媒中で共存させる。そして、該溶媒と電気的に接続されている(溶媒と接触している)導電性部材から電気信号を検出する。ここでいう電気信号は、前記プライマーに導入された前記ヌクレオチド誘導体の前記部分を、電気化学反応により変換することに起因する信号である。
以下に前記第1〜第3の態様に記載した塩基配列の情報取得方法の具体例について更に説明する。
本発明に用いる標的核酸としては、DNA、RNA、デオキシリボオリゴヌクレオチド(deoxyribooligonucleotides)、リボオリゴヌクレオチド(ribooligonucleotides)等を挙げることができる。これら標的核酸は一本鎖であっても良く、二本鎖であっても良い。また、標的核酸は必ずしも精製されている必要はない。すなわち、検体は、標的核酸を含む生体試料であってもよい。
本発明に用いるプライマーは、標的核酸がDNA、またはRNAである場合に、標的核酸とハイブリダイゼーションするオリゴヌクレオチドである。その長さについては限定されないが、15merから60mer程度の長さのオリゴヌクレオチドであることが望ましい。プライマーは、標的核酸の情報を取得したい位置にある塩基配列よりも3'側の下流領域(3'側領域)を二本鎖化(ハイブリダイゼーション)するために用いられる。プライマーは、この3'側領域の全域を認識する塩基配列を有するものでもよいし、この3'側領域の一部を認識するものでもよい。3'側領域の一部を認識するプライマーを用いる場合は、情報取得対象の塩基に対して3'側で1つ隣り(下流)の塩基まで必要に応じた伸長反応を行ってから、後述するポリメラーゼ固定化電極を構成するポリメラーゼ部分によるヌクレオチド誘導体の取り込み反応に用いる。
例えば、図6(a)に示すように、情報取得対象の塩基配列X1X2X3X4X5X6より3'側の領域が「G〜AACAT」である場合に、これに相補的である「C〜TTGTA」の塩基配列からなるプライマーを塩基X1より3'側の領域に結合させる。これにより、情報を取得したい領域の3'側領域を二本鎖化できる。また、図6(b)に示すように、情報を取得したい領域の3´側領域が「G〜AACAT」である場合に、情報取得対象の塩基配列X1X2X3X4X5X6のX1より二つ前の塩基を含む3'側領域を認識するプライマー「C〜TTGT」を情報取得対象の塩基配列X1X2X3X4X5X6の3'側領域に結合させてから、伸長反応を行い「A」を付加する。これにより、情報取得対象の一つである塩基X1より3'側の領域を二本鎖化できる。なお、図6(b)の場合において、X1より3つ以上前までの3'側領域を認識するプライマーを用いた場合は、その3'末端をX1より一つ前の塩基まで順次伸長反応を行う。
3'側領域の全域を認識する塩基配列を有するプライマーを用いた情報取得方法としては、以下の工程を有する方法を挙げることができる。
(1)標的核酸と、該標的核酸の塩基配列中の情報取得対象位置にある塩基の3'方向での一つ前の塩基を含む3'側領域全体を認識し該3'側領域の二本鎖化のためのプライマーと、ポリメラーゼ固定化電極と、測定用の置換基を有するヌクレオチド誘導体と、を用意する工程
(2)前記標的核酸の前記情報取得対象位置にある塩基の3'方向での一つ前の塩基を含む3'側領域に前記プライマーを結合させて二本鎖化する工程
(3)前記二本鎖化した部分を有する標的核酸に、前記ポリメラーゼ固定化電極の存在下で、前記ヌクレオチド誘導体を共存させて反応させる工程
(4)前記ヌクレオチド誘導体の有する測定用の置換基を利用して、前記情報取得対象位置にある塩基に関する情報を取得する工程。(具体的には、前記標的核酸の二本鎖うちの前記プライマーを含む鎖の3'末端の前記情報取得対象位置にある塩基に対応する位置への前記ヌクレオチド誘導体の取り込みの有無を検出する工程)
3'側領域の一部を認識するプライマーを用いた情報取得方法としては、以下の工程を有する方法を挙げることができる。
(1)標的核酸と、該標的核酸の塩基配列中の情報取得対象位置にある塩基の3'方向での二つ前の塩基を含む3'側領域を認識し該3'側領域の二本鎖化を可能とするプライマーと、ポリメラーゼ固定化電極と、測定用の置換基を有するヌクレオチド誘導体と、を用意する工程
(2)前記標的核酸に前記プライマーを結合させる工程
(3)前記標的核酸に結合したプライマーの3'末端を伸長させ、該標的核酸の塩基配列中の情報取得対象位置にある塩基の3'方向での一つ前の塩基を含む3'側領域を二本鎖化する工程
(4)前記伸長後のプライマーが結合した標的核酸に、前記ポリメラーゼ固定化電極の存在下で、前記ヌクレオチド誘導体を反応させる工程
(5)前記ヌクレオチド誘導体の有する測定用の置換基を利用して、前記情報取得対象位置にある塩基に関する情報を取得する工程(具体的には、前記標的核酸の前記情報取得対象位置にある塩基に対応する位置への前記ヌクレオチド誘導体の取り込みの有無を検出する工程)
本発明では、標的核酸と伸長される核酸の種類によりポリメラーゼ固定化電極を構成するポリメラーゼ部分の種類が選択される。前述したように、伸長される核酸がDNAの場合はDNAポリメラーゼ(核酸依存的DNAポリメラーゼ)が、伸長される核酸がRNAである場合にはRNAポリメラーゼ(核酸依存的RNAポリメラーゼ)が選択される。
標的核酸がDNA、またはデオキシリボオリゴヌクレオチドである場合には、DNA依存的DNAポリメラーゼ(DNA-dependent DNA polymerase)またはDNA依存的RNAポリメラーゼ(DNA-dependent RNA polymerase)を選択して用いる。また標的核酸がRNA、またはリボオリゴヌクレオチドである場合には、RNA依存的DNA ポリメラーゼ(RNA-dependent DNA polymerase)またはRNA依存的RNA ポリメラーゼ(RNA-dependent RNA polymerase)を選択して用いる。
本発明では、標的核酸の情報取得対象の塩基に対応する位置へのヌクレオチド誘導体の取り込みの有無を測定することで、この塩基に対する情報を得ることができる。この取り込みの有無は、ヌクレオチド誘導体に付与した電気化学的に変換し得る部分を利用することにより行われる。すなわち、電気化学的に変換し得る部分を有するヌクレオチド誘導体の、標的核酸上のプライマーあるいはプライマー伸長物の3'末端(例えば、図6における「Y」の位置)への取り込みを、電気化学的に変換し得る部分の取り込みにより判定する。例えば、伸長される核酸がDNAである場合には、以下に例示されるヌクレオチド誘導体の1種以上をプライマーにより二本鎖が形成されている標的DNAに反応させる。
ヌクレオチド誘導体としては、例えば、各々が区別し得る電気化学的に変換し得る部分を有する2'-デオキシアデノシン 5'-三リン酸誘導体、2'-デオキシシチジン 5'-三リン酸誘導体、2'-デオキシグアノシン 5'-三リン酸誘導体及び2'-デオキシチミジン 5'-三リン酸誘導体が挙げられる。
ここで、用いるヌクレオチド誘導体の種類を選択することで、以下に示す塩基に関する情報取得を行うことができる。
(1)図6に示す「X1」が「A」である場合に、2'-デオキシアデノシン 5'-三リン酸誘導体、2'-デオキシシチジン 5'-三リン酸誘導体及び2'-デオキシグアノシン 5'-三リン酸誘導体の少なくとも1種を反応系に添加しておく。すると、電気化学的に変換し得る部分の「Y」の位置への取り込みは測定されない。したがって、「X1」には反応系に添加したヌクレオチドに相補的なヌクレオチドは存在しないと結論付けることができる。
(2)一方、図6に示す「X1」が「A」である場合に、少なくとも2'-デオキシチミジン 5'-三リン酸誘導体を反応系に添加しておくと、電気化学的に変換し得る部分の「Y」の位置へ2'-デオキシチミジン 5'-三リン酸誘導体が取り込まれる。そして、この取り込みを2'-デオキシチミジン 5'-三リン酸誘導体の有する電気化学的に変換し得る部分を利用して測定することができる。したがって、「X1」が「A」であると結論付けることができる。
なお、伸長される核酸がRNAである場合は、ヌクレオチド誘導体として、以下の誘導体を1種以上用いる。即ち、各々の電気特性が異なる測定用の置換基を有するアデノシン 5'-三リン酸誘導体、シチジン 5'-三リン酸誘導体、グアノシン 5'-三リン酸誘導体及びウリジン 5'-三リン酸誘導体である。
ヌクレオチド誘導体に付与される電気化学的に変換し得る部分は、電気化学的変換に起因して構造変化が生じるものである。この構造変化により、ポリメラーゼ固定化電極を構成するポリメラーゼ部分による伸長反応が停止していた状態から、伸長反応が再開可能な状態になる。この構造変化としては、ヌクレオチド誘導体からの電気化学的に変換可能な部分を含む置換基の不可逆的な脱離であることが更に好ましい。
以下、電気化学的に変換可能な部分を有するヌクレオチド誘導体について説明する。
本発明における「電気化学的に変換し得る部分」とは、例えば、ヌクレオシド 5'−三リン酸を構成する何れかの原子に対して結合した、原子若しくは原子団である。したがって、電気化学的に変換可能な部分を有するヌクレオチドとは次の(1)から(3)の性質を有するヌクレオチドであるものである。すなわち、
(1)標的核酸とプライマーとの相補的結合対、あるいは標的核酸とプライマーから伸長された伸長鎖との相補的結合対における、プライマー若しくは伸長鎖の3'末端の水酸基に対して、ポリメラーゼの酵素触媒作用によるリン酸エステル結合を形成し得る。
(2)上記(1)の結果、プライマー若しくは伸長鎖の3'末端の水酸基に対してリン酸エステル結合を介して結合した後には、ポリメラーゼの酵素触媒作用による他のヌクレオシド 5'−三リン酸誘導体との更なるリン酸エステル結合の形成を阻害する。すなわち、本発明において使用するヌクレオチド誘導体は、キャッピングとしての機能を有する。
(3)電気化学的に還元若しくは酸化され得る部分を含む。
なお、上記の(1)から(3)の性質に加え、更に(4)の性質を有しているのが良い。
(4)上記(3)の結果、電気化学的に還元若しくは酸化されたことに起因する脱離・置換・もしくは付加反応が惹起され、ポリメラーゼの酵素触媒作用による更なるリン酸エステル結合を形成が可能となる。
電気化学的に変換可能な部分によるキャッピングは、その電気化学的性質の違いによって、電気化学的に脱離可能な脱離基、電気化学的に置換可能な置換基に分類される。いずれの分類でも、前記(1)から(3)の性質(好ましくは(4)も含む。)を満たすならば本発明に用いることができる。電気化学的に脱離可能な脱離基は、式1に示すR2、あるいは式3に示すR6のように2電子還元により脱離を受ける原子または原子団である。また、式2に示すR4、あるいは式4に示すR8のように2電子酸化により脱離を受ける原子または原子団である。
Figure 2008026311
ただしR1、R3、R5及びR7はヌクレオチドであり、R2、 R4、R6及びR8は電気化学的に脱離可能な脱離基である。脱離基の例としては、ホウ素などの典型金属を含む基、遷移有機金属錯体からなる基等を挙げることができる。
電気化学的に置換可能な置換基は式5及び式6に示すR10のような1電子還元により、ラジカルあるいはアニオンとして脱離を受ける原子または原子団である。あるいは式7及び式8に示すR12のような1電子酸化により、ラジカルあるいはカチオンとして脱離を受ける原子または原子団である。
Figure 2008026311
ただし、R9およびR11はヌクレオチドであり、R10およびR12は電気化学的に置換可能な置換基である。この置換基の具体例としては、ハロゲン、アルキルチオ、スルフィニル、ヒドロキシ、アシルオキシ、アミノ、過酸化、スルホニウムである。また、この置換基として、有機金属錯体、ニトロキシ、2,2,6,6-tetramethyl-1-piperidinyloxyl(TEMPO)、ハイドロキノリル、メトキノリル、フェノチアジル等を挙げることもできる。
ヌクレオチド誘導体は、前記電気化学的に脱離可能な脱離基あるいは電気化学的に置換可能な置換基によって修飾されたヌクレオシド 5'−三リン酸である。具体的には本発明のポリメラーゼ固定化電極を構成するポリメラーゼ部分の種類に応じて選択されるものであり、ポリメラーゼが、DNA依存的DNAポリメラーゼ(DNA-dependent DNA polymerase)またはRNA依存性DNA ポリメラーゼ(RNA-dependent DNA polymerase)である場合には、以下の4種の少なくとも1種を用いる。
・ 2'-デオキシアデノシン5'-三リン酸誘導体(dATP derivative)
・ 2'-デオキシシチジン5'-三リン酸誘導体(dCTP derivative)
・ 2'-デオキシグアノシン5'-三リン酸誘導体(dGTP derivative)
・ 2'-デオキシチミジン5'-三リン酸誘導体(dTTP derivative)
また本発明のポリメラーゼ固定化電極を構成するポリメラーゼ部分がDNA依存的RNAポリメラーゼ(DNA-dependentRNA polymerase)またはRNA依存性RNA ポリメラーゼ(RNA-dependent RNA polymerase)である場合には以下の4種の少なくとも1種を用いる。
・ アデノシン5'-三リン酸誘導体(ATP derivative)
・ シチジン5'-三リン酸誘導体(CTP derivative)
・ グアノシン5'-三リン酸誘導体(GTP derivative)
・ ウリジン5'-三リン酸誘導体(UTP derivative)
ヌクレオチド誘導体における電気化学的に脱離可能な脱離基の付加される原子、すなわち、式1におけるR1及び式2におけるR3を構成する原子としては、キャッピングに関する前記(1)から(4)の性質が満たされれば特に制限されない。
例えば、2'-デオキシアデノシン5'-三リン酸 (dATP)、2'-デオキシシチジン5'-三リン酸 (dCTP)、2'-デオキシグアノシン5'-三リン酸 (dGTP)、および2'-デオキシチミジン5'-三リン酸 (dTTP)に対しては、それらのリボースの1'、2'、4'位の炭素、3'位水酸基の酸素などが挙げられる。また、アデノシン5'-三リン酸 (ATP)、シチジン5'-三リン酸 (CTP)、グアノシン5'-三リン酸 (GTP)、およびウリジン5'-三リン酸 (UTP)に対しては、それらのリボースの2'位水酸基の酸素、3'位水酸基の酸素などが挙げられる。
また、式3におけるR5、式4におけるR7を構成する原子としては、キャッピングに関する前記(1)から(4)の性質がすべて満たされるのであれば制限されない。例えば、dATP、dCTP、dGTP、およびdTTPに対しては、それらのリボースの3'位の炭素が挙げられ、またATP、CTP、GTP、およびUTPに対しては、それらのリボースの2'位の炭素、3'位の炭素などが挙げられる。
ヌクレオチド誘導体における電気化学的に置換可能な置換基の付加される原子、すなわち式5におけるR9、式6におけるR9を構成する原子としては、キャッピングに関する前記(1)から(4)の性質がすべて満たされるのであれば制限されない。例えば、dATP、dCTP、dGTP、およびdTTPに対しては、それらのリボースの1'、2'、4'位の炭素、3'位水酸基の酸素などが挙げられる。またATP、CTP、GTP、およびUTPに対しては、それらのリボースの2'位水酸基の酸素、3'位水酸基の酸素などが挙げられる。
また、式7におけるR11、式8におけるR11を構成する原子としては、キャッピングに関する前記(1)から(4)の性質がすべて満たされるのであれば制限されない。例えば、dATP、dCTP、dGTP、およびdTTPに対しては、それらのリボースの3'位の炭素が挙げられる。また、ATP、CTP、GTP、およびUTPに対しては、それらのリボースの2'位の炭素、3'位の炭素などが挙げられる。
本発明に用いられる電気化学的に変換可能な構造でキャッピングされたヌクレオチド誘導体は、対応するヌクレオチドあるいはヌクレオシドを原料として製造することが可能である。すなわち、キャッピングを結合させる原子以外の、プリン、ピリミジンなどの塩基部分と糖水酸基を選択的に適宜保護した後、電気化学的に脱離可能な脱離基あるいは置換可能な置換基の付加を行うことにより合成することができる。
それぞれのヌクレオシド 5'−三リン酸のキャッピングに用いられる電気化学的に変換可能な構造は、電気化学的に変換可能な部分の電気化学的変換と、これにより惹起されるこの部分を含む構造の構造変換により、この構造を有するヌクレオチドを区別できるものであればよい。例えば、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)およびチミン(T)あるいはウラシル(U)の各々に対応して、それぞれのキャッピングの電気化学的還元若しくは酸化を受ける電位が相異なる値であればよい。この条件を満たす範囲で、4種のヌクレオチド誘導体の有する測定用置換基としては、異なる4種の測定用置換基を用いても、重複して同じ種類のものを用いてもよい。これは、変換可能な構造が同一種類のものであっても、塩基の種類に対応してキャッピングの結合する原子の位置がそれぞれ相異なるものとすることで電位の大きさを変えることが一般に可能であるからである。さらに、たとえ導入される原子の位置が同じであっても、リボース又はデオキシリボースに結合した塩基の種類に対応してそれぞれのキャッピングの電気化学的還元若しくは酸化を受ける電位が相異なる値であれば、電気化学的に変換可能な構造として同一種類のものを用いることができる。
キャッピングの電気化学的還元若しくは酸化を受ける電位については、使用する電極の種類や、溶媒により規定されるそれら電極系の電位窓内にあればその値は限定されないが、−100Vから+100V(vs.SCE)である。好ましくは、−10Vから+10V(vs.SCE)であり、更に好ましくは、−1.2V〜+1.0V(vs.SCE)程度が好ましい。
(解析方法)
次に本発明の核酸塩基配列の解析方法の手順について説明する。本発明の核酸塩基配列の解析方法における第1の工程に先立ち、標的核酸とプライマーとのハイブリダイゼーションによる相補的結合対を形成する。具体的な形成方法としては、標的核酸とプライマーとを混合し、熱処理によってそれらの二次構造を破壊した後、プライマーの融解温度(Tm)以下の温度にまで冷却する。なお、本発明の核酸塩基配列の解析方法における第1の工程に先立ち、RNAポリメラーゼのためのプロモーター配列を含む試料を調製することができる。このような試料は、プロモーター配列を含むプライマーを用いたPCR増幅によって、あるいはプロモーター配列と標的核酸をライゲーションした後に適当な宿主を用いてクローニングすることによって、調製することができる。
本発明の核酸塩基配列の解析方法における第1の工程では、標的核酸とプライマーとの相補的結合対もしくはRNAポリメラーゼのためのプロモーター配列を含む試料とポリメラーゼ固定化電極を用意する。そして、前記試料とポリメラーゼ固定化電極を溶液中で共存させる。標的核酸とプライマーとの相補的結合対もしくは前記RNAポリメラーゼのためのプロモーター配列を含む試料は、ポリメラーゼ固定化電極を構成するポリメラーゼ部分により捕捉される。
なお、前記試料とポリメラーゼ固定化電極とを共存(接触)させてポリメラーゼ固定化電極に前記試料を捕捉させる場合は、捕捉させた後にポリメラーゼ固定化電極を洗浄し、ポリメラーゼ固定化電極に捕捉されなかった試料を除去することが好ましい。このヌクレオチド誘導体の塩基部分は、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、及びチミン(T)(又はウラシル(U))の各々に対応して、電気化学的測定手段にて得られる電気信号が相異なる構造でキャッピングされている。勿論、同定できるのであれば、複数種のヌクレオチド誘導体を同じ構造体でキャッピングしておいても構わない。ヌクレオチド誘導体としては、例えば、ヌクレオシド 5'−三リン酸誘導体や、ヌクレオシド 5'−二リン酸誘導体や、ヌクレオシド 5'−モノリン酸誘導体や、ヌクレオシド 3'−リン酸誘導体が挙げられる。ポリメラーゼ固定化電極とヌクレオチド誘導体を含む混合物においては、各種ヌクレオシド 5'−三リン酸誘導体を相等しい濃度で含むことが好ましい。
この結果、標的核酸とプライマーとの相補的結合対を試料とした場合には、標的核酸とプライマー(またはその伸長物)との相補的結合対におけるプライマー側の3'末端の水酸基と、標的核酸と相補的な塩基を含むヌクレオシド 5'−三リン酸誘導体における5'リン酸基との間で、リン酸エステル結合が形成される。その際に、ピロリン酸が脱離する。
ポリメラーゼによる、1塩基伸長反応は通常1秒以内、特に大腸菌のDNAポリメラーゼIIIを利用した場合には最短500分の1秒で終了することが知られている。これまでのプロセスの一例を図5(1)から(3)に示す。また、RNAポリメラーゼのためのプロモーター配列を含む試料を用いた場合には、プロモーター下流の転写開始点より転写が開始される。
次に、核酸塩基配列の解析方法における第2の工程では、ポリメラーゼ固定化電極に対して時間と共に漸次変化する電圧を印加する。電圧を変化させる方向は、還元反応を行う場合には自然電位より負の方向、また酸化反応を行う場合には正の方向である。変化のさせ方は自然電位から一定速度で印加する電圧を増加させる、もしくはステップ状にあるいはパルス状に印加電圧を増加させていく。電位の絶対値を常に増加させる方向に変化させることによって、ヌクレオチド誘導体に結合したキャッピングの種類に依存して、それらの電気化学的変換に要する電圧の絶対値が小さいものから順に、変換がおきることになる。この電気化学的反応の一例を、図5(4)に示す。ヌクレオチド誘導体の電気化学的変換に際しては、反応液中にポリメラーゼの活性を阻害しない種類および濃度の支持塩を添加しておいてもよい。支持塩としてはNa2HPO4、NaH2PO4、KCl等を挙げることができるが、Na2HPO4及びNaH2P04を用いれば同時に緩衝液としても作用するのでこれらを用いるのが好ましい。
次に、第2の工程における印加した電圧値と、そのとき電極系に流れる電流値をモニターする。標的核酸と相補的な塩基を含むヌクレオチド誘導体に結合したキャッピングの種類に依存した電圧で、還元反応または酸化反応が惹起され、この反応に伴う電流を観測することができる。反応にともなう電流を観測した時点での電極に印加されている電圧は、ヌクレオチド誘導体に結合したキャッピングの種類に応じて異なるので、この電圧の値から伸長鎖の3'末端の塩基の種類を知ることができ、これによって該塩基と相補的である標的核酸の塩基の種類を知ることができる。
一塩基多型のような単一の塩基を解析する場合には、使用するプライマーを解析したい部位に隣接する3'側塩基配列の逆相補鎖を含む配列とすることで、上記第一の工程および第二の工程により解析することができる。この際使用するヌクレオシド5'−三リン酸誘導体は、塩基部分がA、C、G、およびT若しくはU全ての混合物である必要はなく、解析したい多型を構成する塩基の少なくとも1種類を使用すればよい。これに対応して、一塩基多型を解析する場合には、ポリメラーゼ固定化電極に対して印加する電圧を時間と共に漸次変化させることは必ずしも必要ではなく、使用したヌクレオチド誘導体の電気化学的変換に必要な電圧を印加すればよい。
引き続き標的核酸の塩基を連続して知りたい場合、すなわち解析したい領域の塩基配列を測定する場合には、上記の第一の工程および第二の工程を繰返せばよい。ここで、第一の工程と第二の工程との間には、溶液中に残存する未反応のヌクレオシド 5'−三リン酸誘導体を除去する操作は、必ずしも必要ではない。また、最初に系に添加するヌクレオシド 5'−三リン酸誘導体の量が十分であれば、第二の工程から第一の工程に戻って繰返す場合にもヌクレオシド 5'−三リン酸誘導体を補充する必要はない。
なお、3'伸長末端のヌクレオチドに修飾されたキャップ構造を電気化学的に変換するために電圧を印加すると、溶液中に残存する未反応のヌクレオシド 5'−三リン酸誘導体までも電極上で電気化学的に変換されてしまう場合がある。しかしながら溶液中に残存する未反応のヌクレオシド 5'−三リン酸誘導体が電極上で電気化学的に変換されてしまうことによる「誤シグナルの寄与」は、例えば、次のようにして、排除若しくは低減することができる。
一般に、ポリメラーゼのようなタンパク質内部の誘電率は水の誘電率とは異なる。このため、伸長鎖の3'末端に付加しているヌクレオチド誘導体のキャップ構造を電気化学的に変換するための電位と、溶液中に残存する未反応のヌクレオシド 5'−三リン酸誘導体のキャップ構造を電気化学的に変換するための電位との間には相違が生じる。この相違を印加電圧の違いとして識別することにより、誤シグナルの寄与を排除することが可能となる。
また、伸長鎖の3'末端に付加しているヌクレオチド誘導体は導電性基体の近傍に捕捉される。一方、溶液中に残存する未反応のヌクレオシド 5'−三リン酸誘導体は溶液中を浮遊している。このため、両者の拡散係数の間には相違が生じる。そこで、この拡散係数の違いを利用して誤シグナルの寄与を低減させることが可能となる。例えば、印加電圧の時間変化を急峻にすることによって、溶液中に残存する未反応のヌクレオシド 5'−三リン酸誘導体が導電性基体に拡散して到達する前に、導電性基体の近傍に捕捉されているヌクレオチド誘導体の電気化学反応を実行する方法などがある。なお、拡散係数の違いは、例えば、インピーダンス法により測定することが可能である。
さらに溶液中に残存する未反応のヌクレオシド 5'−三リン酸誘導体におけるリン酸基は、通常ポリメラーゼが触媒活性を有する条件で解離し、負電荷を有している。このため、伸長鎖末端の誘導体を例えば還元するために電極に負の電圧を印加すると、溶液中に残存する未反応のヌクレオシド 5'−三リン酸誘導体は電極との間で静電的反発が生じ、未反応のヌクレオシド5´−三リン酸誘導体は電極に近づけないことになる。したがって、伸長鎖末端の誘導体を還元して検出する場合には、本来的に誤シグナルの寄与は少ないと考えられる。また、伸長鎖末端の誘導体を酸化して検出する場合であっても、酸化電位の印加の前に一旦電極電位を負側に一定時間保持することによって、溶液中に残存する未反応のヌクレオシド 5'−三リン酸誘導体を電極近傍から遠ざけることが出来、これにより誤シグナルの寄与を低減させることが可能となる。
更に、一塩基多型を解析する場合には、電極の洗浄操作によって溶液中に残存する未反応のヌクレオシド 5'−三リン酸誘導体を取り除くことも有効である。
以上の塩基配列の情報取得方法に用いる情報取得装置としては、以下の構成のものを挙げることができる。
(情報取得装置)
情報取得装置は、標的核酸とプライマーとにより二本鎖化した試料とヌクレオチド誘導体とをポリメラーゼ固定化電極の存在下で反応させるための反応領域と、電圧印加部と、電気信号取得部と、を有して構成することができる。電圧印加部は、電気化学的に変換し得る部分を有するヌクレオチド誘導体を取り込んだ試料に電圧を印加するための部分(例えば、導電性部材で構成される第1の電極)である。電気信号取得部は、ヌクレオチド誘導体の該部分を電気化学的に変換することに起因する電気信号を取得するための部分(例えば、第2の電極)である。この装置の場合、電気信号取得部からの信号を用いて、ヌクレオチド誘導体を同定するための同定部を有することも好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明の方法は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
本実施例では導電性基体としては金基板を用い、ポリメラーゼ部分としてはクローニングされたN末端にポリヒスチジンタグを融合した改変型T7 DNAポリメラーゼを用い、アンカー部分としてジスルフィド基を用いる。また、第一の導電性領域としてπ共役金属錯体、第二の導電性領域として粒径1.4nmの金ナノ微粒子をそれぞれ用いる。これらがポリメラーゼ部分、アンカー部分、第一の導電性領域、第二の導電性領域の順で連結されたポリメラーゼユニットとしてのプローブ修飾ポリメラーゼを用いてポリメラーゼ固定化電極を作製する。ポリメラーゼユニットの導電性基体である金基板への固定は、アンカー部分であるジスルフィドと金基板とのAu−S結合形成によって行う。
以下、詳細について説明する。
(I)導電性部分の合成
まず、以下の各錯体配位子を合成する。
<1>錯体配位子の合成(1)
下記式(1)で表される錯体配位子(4’−(4−anilino)−2,2’:6’,2’’−terpyridine)を次のようにして合成する。
Figure 2008026311
1000mLのナスフラスコに還流管をつけ、9.7gの4−アミノベンズアルデヒド、22mLの2−アセチルピリジン、75gの酢酸アンモニウム、100gのアセトアミドを加え、空気雰囲気下3時間還流を行う。反応溶液を空冷し、200mLの水に50gの水酸化ナトリウムを溶かして加え、2時間還流させる。反応溶液を空冷、溶液をデカンテーションで除き、残った油状の固体を3度水洗する。残留物を溶解可能な最少量の熱臭化水素酸に溶かし、室温で1日間放置する。生じた濃茶色の沈殿を濾過し、300mLの水に加え、溶液が塩基性になるまで炭酸水素ナトリウムを加える。得られた固体をクロロホルムで抽出し、減圧溜去で溶液を濃縮した後に、シリカを充填剤、クロロホルムを溶媒としてフラッシュカラムをかけ、3番目のフラクションを取得する。これを減圧溜去で濃縮し、クロロホルム/メタノール混合溶媒から再結晶させることで、式(1)で表される錯体配位子を得る。
<2>錯体配位子の合成(2)
下記式(2)で表される錯体配位子を次のようにして合成する。
Figure 2008026311
100mLの三口フラスコに温度計、還流管をつけ、0.79gの式(1)で表される錯体配位子、0.15gの塩化アンモニウム、5mLの水を加え、スターラで強攪拌下、0.372gの亜鉛粉末を徐々に加える。自動的に反応が進行するので、氷浴で反応温度が53℃になるように調整し20分間反応させる。反応溶液を濾過し、残った亜鉛を3mLの湯で洗浄し、洗浄液を濾液に加え、多量の砕氷に注ぎ、溶液を充分に冷やす。充分な氷を含んだ溶液に0.75mLの濃硫酸を加える。この溶液に0.17gのニクロム酸ナトリウムを加えた0.75mLの水を加え、3分間攪拌、生じた沈殿を回収し、繰返し水洗する。デシケータ中、塩化カルシウムで乾燥することで、4’−(4−nitrosobenzene)−2,2’:6’,2’’−terpyridineを得る。
100mLのナスフラスコに、1.36gの4’−(4−nitrosobenzene)−2,2’:6’,2’’−terpyridineを加え、5mLの酢酸で溶解させる。この溶液に0.50gの4−Aminobenzenethiolを加え室温で12時間攪拌する。20mLの水を加え、炭酸ナトリウムをさらに加えて中和し、生成物を150mLのクロロホルムで抽出する。減圧溜去で溶液を濃縮した後、アルミナを充填剤、クロロホルム−ジメチルアミンの20/1混合溶媒を用いてカラムクロマトグラフィーを行い、得られた溶液を減圧溜去、乾燥させることで式(2)で表される錯体配位子を得る。
<3>錯体配位子の合成(3)
下記式(3)で表される錯体配位子を次のようにして合成する。
Figure 2008026311
100mLの三口フラスコに温度計、還流管をつけ、0.79gの式(1)で表される錯体配位子、0.15gの塩化アンモニウム、5mLの水を加え、スターラで強攪拌下、0.372gの亜鉛粉末を徐々に加える。自動的に反応が進行するので、氷浴で反応温度が53℃になるように調整し20分間反応させる。反応溶液を濾過し、残った亜鉛を3mLの湯で洗浄し、洗浄液を濾液に加え、多量の砕氷に注ぎ、溶液を充分に冷やす。充分な氷を含んだ溶液に0.75mLの濃硫酸を加える。この溶液に0.17gのニクロム酸ナトリウムを加えた0.75mLの水を加え、3分間攪拌、生じた沈殿を回収し、繰返し水洗する。デシケータ中、塩化カルシウムで乾燥することで、4’−(4−nitrosobenzene)−2,2’:6’,2’’−terpyridineを得る。
100mLのナスフラスコに1.36gの4’−(4−nitrosobenzene)−2,2’:6’,2’’−terpyridineを加え、5mLの酢酸で溶解させる。この溶液に0.50gの4,4’−dithiodianilineを加え室温で12時間攪拌する。20mLの水を加え、炭酸ナトリウムをさらに加えて中和し、生成物を150mLのクロロホルムで抽出する。減圧溜去で溶液を濃縮した後、アルミナを充填剤、クロロホルム−ジメチルアミンの20/1混合溶媒を用いてカラムクロマトグラフィーを行い、得られた溶液を減圧溜去、乾燥させることで、式(3)で表される錯体配位子を得る。
<4>錯体配位子の合成(4)
下記式(4)で表される錯体配位子を次のようにして合成する。
Figure 2008026311
100mLのナスフラスコに0.65gの式(1)で表される錯体配位子を加え、5mLの酢酸で溶解させる。この溶液に0.68gの4’−(4−nitrosobenzene)−2,2’:6’,2’’−terpyridineを加え室温で12時間攪拌する。10mLの水を加え、炭酸ナトリウムをさらに加えて中和し、生成物を150mLのクロロホルムで抽出する。減圧溜去で溶液を濃縮した後、アルミナを充填剤、クロロホルム−ジメチルアミンの20/1混合溶媒を用いてカラムクロマトグラフィーを行い、最初の燈色の成分を回収することで式(4)で表される錯体配位子を得る。
(II)電極の作製
次に、上記式(1)から(4)で表される錯体配位子を用いて電極を作製する。
<5>錯体配位子とMaleimido-C3-NTAの結合
Maleimido-C3-NTA(株式会社 同仁化学研究所製)と式(2)で表される錯体配位子とを業者の取扱説明書にしたがって結合させる。Maleimido-C3-NTAはN-[5-(3'-Maleimidopropylamido)-1-carboxypentyl]iminodiacetic acid, disodium salt, monohydrateである。
Figure 2008026311
<6>金微微粒子と錯体配位子の結合
金微粒子Mono-Sulfo-NHS-Nanogold(登録商標、Nanoprobes、Incorporated製、粒径1.4nm)と式(1)に示す錯体配位子とを業者の取扱説明書にしたがってアミド結合させる。
Figure 2008026311
<7>鉄の一配位錯体の調製
エチレングリコール中で、<5>で調製した錯体配位子とFe(BF4)2を等モル混合し還流する。アルミナを充填剤、クロロホルム−ジメチルアミンの20/1混合溶媒を用いてカラムクロマトグラフィーを行うことによって、鉄の一配位錯体を分取する。
<8>鉄の二配位錯体の調製
<7>で調製した鉄の一配位錯体と式(3)に示す錯体配位子の等モルを混合し、還流する。アルミナを充填剤、クロロホルム−ジメチルアミンの20/1混合溶媒を用いてカラムクロマトグラフィーを行うことによって、鉄の二配位錯体を分取する。
Figure 2008026311
<9>アンカー部分、第一の導電性領域及び第二の導電性領域を有する構造体の調整 直径0.5mmの金線の先端2cmをコンタクトとして残してフッ素樹脂の熱収縮チューブで覆い、金電極とした。これを1Mの水酸化カリウムで80℃、6時間加熱後、濃硫酸に12時間浸漬、濃硝酸に15分浸漬した後、超純水で洗浄乾燥する。<8>で調製した鉄の二配位錯体のクロロホルム溶液に、洗浄した金電極を5分間浸漬し、クロロホルムで洗浄し、窒素気流で乾燥させる。これを、0.1MのFe(BF42の水溶液に3時間浸漬、水で洗浄し、窒素気流で乾燥させる。これを0.1Mの式(4)で表される錯体配位子のクロロホルム溶液に3時間浸漬したのち、クロロホルムで洗浄し、窒素気流で乾燥させる。さらに0.1MのFe(BF42の水溶液に3時間浸漬、水で洗浄し、窒素気流で乾燥させる。これを0.1Mの式(4)で表される錯体配位子のクロロホルム溶液に3時間浸漬したのち、クロロホルムで洗浄し、窒素気流で乾燥させる。さらに0.1MのFe(BF42の水溶液に3時間浸漬、水で洗浄し、窒素気流で乾燥させる。これを0.1Mの式(4)で表される錯体配位子のクロロホルム溶液に3時間浸漬したのち、クロロホルムで洗浄し、窒素気流で乾燥させる。さらに0.1MのFe(BF42の水溶液に3時間浸漬、水で洗浄し、窒素気流で乾燥させる。これを<6>で調製した金ナノ微粒子と錯体配位子との結合物のクロロホルム溶液に3時間浸漬したのち、クロロホルムで洗浄し、窒素気流で乾燥させる。以上の工程で作製される構造体のアンカー部分(スルフィド)から第二導電性領域である金ナノ微粒子までの距離は9.2nmである。
<10>ポリメラーゼ部分の調製
Enterobacteria phage T7のゲノムDNA(GenBank Accesion No.V01146)よりgene 5, DNA polymeraseの情報を用いる。この遺伝子(T7 gene5)をpET-14bベクターのNdeI/BamHIサイトにクローニングする。T7のゲノムDNAを鋳型にして、以下の2種の合成オリゴDNAをプライマーとして用いてPCRを行い、2136bpのDNA増幅産物を得る。
5'-aataatcatatgatcgtttctgacatcgaa-3' (NdeI)[配列番号1]
5'-aataatggatcctcagtggcaaatcgccca-3' (BamHI)[配列番号2]
このDNA増幅産物を制限酵素NdeIおよびBamHIで消化切断する。得られた断片をpET-14b(Novagen社製)の同じ制限酵素サイトに挿入する。このことによって、ポリヒスチジンタグの融合したT7 gene5, DNA polymerase発現ベクターpET-14-T7g5を作製する。
次にT7 gene 5, DNA polymeraseのLys118からArg145までの28残基のアミノ酸を欠失するように、この遺伝子DNAの対応する一部を欠失させる。このようにして3´→5´エキソヌクレアーゼ活性を欠失させた改変型T7 DNAポリメラーゼ(N末Hisタグ付き)の発現ベクターpET-14-T7g5(D28)[配列番号3]を作製する。
作製した発現ベクターpET-14-T7g5(D28)を常法に従い大腸菌E.coli BL21(DE3)に形質転換する。形質転換体は抗生物質アンピシリンに対する耐性株として選別することができる。
得られた形質転換体を抗生物質アンピシリンを添加したLB培地10mLで一晩プレ・カルチャーした後、その0.2mLを、100mLのLB-Amp培地に添加し、30℃、170rpmで4時間振とう培養する。その後IPTGを添加 (終濃度 1mM) し、37℃で4~12時間培養を続ける。IPTG 誘導した形質転換体を集菌 (8000×g、 2分、4℃) し、1/10 量の 4℃ PBSに再懸濁する。凍結融解およびソニケーションにより菌体を破砕し、遠心 (8000×g、 10分、4℃)して固形夾雑物を取り除く。目的の発現タンパク質が上清に存在することをSDS-PAGEで確認した後、誘導発現されたHisタグ融合タンパク質をニッケルキレートカラムを用いて精製する。
<11>ポリメラーゼ固定化電極の作製
<9>の工程で作製した金電極を、100mM NiSO4水溶液に20分間浸漬し、ニトリロ三酢酸部分にニッケルイオンをキレートさせる。その後、水で電極を洗浄し余分のニッケルイオンを除去する。次に前記<10>の工程で調製したHisタグ融合タンパク質である改変型T7 DNAポリメラーゼのPBS緩衝液系での精製試料を添加し、4℃で20分間静置する。その後PBS緩衝液で洗浄することにより電極上に捕捉されなかった余分のポリメラーゼを除去する。次に大腸菌チオレドキシン(Thioredoxin from Escherichia coli(Sigma社製))のPBS溶液を加え4℃で20分間静置し、T7 DNAポリメラーゼを活性型とする。電極上に捕捉されたかった余分のチオレドキシンをPBS緩衝液で電極を洗浄することにより除去する。以上の工程で作製されるポリメラーゼ固定化電極のアンカー部分からポリメラーゼの活性中心までの距離は約10nmである。したがって、アンカー部分から第二導電性領域である金ナノ微粒子までの長さと、アンカー部分からポリメラーゼの活性部位までの長さは略等しい。
(実施例2)
本実施例では、導電性基体として金基板、ポリメラーゼ部分としてクローニングされた改変型T7 DNAポリメラーゼ、アンカー部分としてシステインをそれぞれ用いる。また、第一の導電性領域として二本鎖DNA、第二の導電性領域として粒径1.4nmの金ナノ微粒子をそれぞれ用いる。これらがこの順序で連結されたプローブ修飾ポリメラーゼが、アンカー部分であるシステインと金基板とのAu−S結合形成を介して該導電性基体上に固定化されている電極を作製する。
<1>アンカー部分を融合した改変型T7 DNAポリメラーゼの調製
以下の2種の5'末端リン酸化合成オリゴDNAをTEバッファー中で、等量混合し、加熱後徐冷することによってアニーリングする。
5'- TAGCAAAAAAAAATGTTGCTGTTC -3' [配列番号4]
5'- TAGAACAGCAACATTTTTTTTTGC-3' [配列番号5]
このDNA断片を、実施例1で調製した改変型T7 DNAポリメラーゼ(N末Hisタグ付き)の発現ベクターpET-14-T7g5(D28)[配列番号3]のNdeI認識サイトに挿入する。このことによって、発現ベクターpET-14-C3T7g5(D28) [配列番号6]を作製する。作製した発現ベクターpET-14-C3T7g5(D28)を常法に従い大腸菌E.coli BL21(DE3)に形質転換する。形質転換体は抗生物質アンピシリンに対する耐性株として選別することができる。
得られた形質転換体を抗生物質アンピシリンを添加したLB培地10mLで一晩プレ・カルチャーした後、その0.2mLを、100mLのLB-Amp培地に添加し、30℃、170rpmで4時間振とう培養する。その後IPTGを添加 (終濃度 1mM) し、37℃で4~12時間培養を続ける。IPTG 誘導した形質転換体を集菌 (8000×g、 2分、4℃) し、1/10 量の 4℃ PBSに再懸濁する。凍結融解およびソニケーションにより菌体を破砕し、遠心 (8000×g、 10分、4℃)して固形夾雑物を取り除く。目的の発現タンパク質が上清に存在することをSDS-PAGEで確認した後、誘導発現されたHisタグ融合タンパク質をニッケルキレートカラムを用いて精製する。N末端のポリヒスチジンタグはトロンビンにより切断・除去する。
<2>導電性部分としての二本鎖DNAの連結
<1>で調製したアンカー部分を融合した改変型T7 DNAポリメラーゼのアミノ酸
配列にはN末端近くにLys残基が新たに導入されている。その結果、例えば水溶性架橋剤Sulfo-EMCS(株式会社 同仁化学研究所製)を用いることによってSH基を有する分子と効率的に架橋結合させることができる。Sulfo-EMCSはN-(6-Maleimidocaproyloxy)sulfosuccinimide, sodium saltである。
改変型T7 DNAポリメラーゼと5'末端チオール化合成オリゴDNA:5'- acagcatcgcca
gtc -3' [配列番号7]とを業者の取扱説明書にしたがって架橋結合させる。また、5'末端チオール化合成オリゴDNA:5'- gactggcgatgctgt -3' [配列番号8]における末端チオール基と金微粒子とを業者の取扱説明書にしたがって結合させる。金微粒子としてはMONOMALEIMIDO NANOGOLD(登録商標、Nanoprobes、Incorporated製)を用いる。
配列番号7で表される1本鎖DNAに連結された改変型T7 DNAポリメラーゼと、配列番号8で表される1本鎖DNAに連結された金微粒子とを混合し、室温で放置することによってこれらをハイブリダイズさせて相補的2本鎖DNAを形成させる。
改変型T7 DNAポリメラーゼに連結された二本鎖DNAに対して、メタロインターカレータ複合体のインターカレートさせることによって二本鎖DNA部分へ導電性を付与する。すなわち、改変型T7 DNAポリメラーゼに連結された二本鎖DNAに対して、ジクロロ(2,2':6',2''−テルピリジン)白金(II)(Sigma-Aldrich社製、製品番号288098)の水溶液を加える。ジクロロ(2,2':6',2''−テルピリジン)白金(II)は、DNAに対して、結合することが知られている(Peyratout et al.(1995) Inorg.Chem. 34, 4484)。この結合は、テルピリジンリガンドをDNAにインターカレートさせ、続いて共有結合の形成、すなわち、プラチネーションによって得ることができる。
<3>電極への結合
直径0.5mmの金線の先端2cmとコンタクトを残してフッ素樹脂の熱収縮チューブで覆い、金電極とした。これを1Mの水酸化カリウムで80℃、6時間加熱後、濃硫酸に12時間浸漬、濃硝酸に15分浸漬した後、超純水で洗浄乾燥した。これに<2>の工程で作製したプローブ修飾ポリメラーゼのPBS緩衝液系での精製試料を添加し、4℃で20分間静置することによりポリメラーゼのアミノ酸配列におけるN末近辺のシステインを元にした金電極上への固定化を行う。その後PBS緩衝液で洗浄することにより電極上に捕捉されなかった余分のポリメラーゼを除去する。次に大腸菌チオレドキシン(Thioredoxin from Escherichia coli(Sigma社製))のPBS溶液を加え4℃で20分間静置し、T7 DNAポリメラーゼを活性型とする。電極上に捕捉されたかった余分のチオレドキシンをPBS緩衝液で電極を洗浄することにより除去する。以上の工程で作製されるポリメラーゼ固定化電極のアンカー部分からポリメラーゼの活性中心までの距離は約10nmである。また、アンカー部分から第二導電性領域である金ナノ微粒子までの長さは約8nmであり、アンカー部分からポリメラーゼの活性部位までの長さと略等しい。
(実施例3、比較例1)
実施例1および実施例2で作製したポリメラーゼ固定化電極と、対照としてT7 DNAポリメラーゼとチオレドキシンからなる活性型T7 DNAポリメラーゼの固定化電極を用いて、3'伸長末端の電気化学的変換に要する過電圧を比較する(比較例1)。対電極として白金線を、参照電極として銀/塩化銀電極を用いて3極セルを構成する(図7参照)。これらをポテンショスタットに接続する。電極電位設定のためのファンクションジェネレーター、および計測およびデータ処理のためのコンピュータを更にポテンショスタットに接続する。ポリメラーゼ固定化電極に印加される電圧は、ファンクションジェネレーターによりプログラムされており、ポテンショスタットを経て印加される。印加された電圧とこのとき観測される電流値はコンピュータに送られ収集される。
標的核酸として、配列番号9で表される合成オリゴデオキシヌクレオチドをモデルとして用いる。また、プライマーとして配列番号10で表される合成オリゴデオキシヌクレオチドを用いる。
まず、10ピコモルの標的核酸と10ピコモルのプライマーとを50マイクロリットルのTEバッファー中で混合し、96℃で20秒加熱後、25℃で放置する。
次に、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、およびチミン(T) の各々に対応して相異なる電気化学的に変換可能な構造でキャッピングされたヌクレオチド5´−三リン酸誘導体として以下のものを用いる。
・2'-iodo-2'-deoxyadenosine-5'-triphosphate(2'I-dATP)
・2'-bromo-2'-deoxyguanosine-5'-triphosphate(2'Br-dGTP)
・2'-chloro-2'-deoxythymidine-5'-triphosphate(2'Cl-dTTP)
・2'-fluoro-2'-deoxycytidine-5'-triphosphate(2'F-dCTP)
これらの一部は商業的に入手可能(JENA BIOSCIENCE社、あるいはTriLink BioTechnologies社など)である。また、以下の文献などに記載の公知の方法に従って合成することができる。
・特開平07-97391号公報。
・特公平08-5908号公報。
・Gruen M.他(Nucleosides Nucleotides 18, 137-151 (1999))。
・"Oligonucleotide Synthesis; a practical approach" M. J. Gait (ed), IRL PRESS,
(1984)。
標的核酸とプライマーとの混合物を添加し、ポリメラーゼ固定化電極に接触させる。37℃で5分間接触させた後、緩衝液Aで洗浄し、ポリメラーゼ固定化電極に捕捉されなかった標的核酸とプライマーとの混合物を除去する。
緩衝液A:
・33mM トリス−酢酸緩衝液(pH7.9)
・66mM 酢酸カリウム
・10mM 酢酸マグネシウム
・0.5mM ジチオトレイトール
・0.01%(w/v)ウシ血清アルブミン
次に、2'I-dATP、2'Br-dGTP、2'Cl-dTTP、2'F-dCTPの各々50μM水溶液(pH7.0)を、ポリメラーゼ固定化電極と接触させ、37℃で保持する。電圧の時間変化は、自然電位を基準とし、負の方向に一定速度で掃引していくフェーズと自然電位で保持するフェーズからなる変化の繰返しとする。この条件においては、電圧を掃引し始めてからピーク電流を観測するまでの時間によって、伸長反応後、3'伸長末端に付加されたヌクレオチド誘導体の電気化学的変換に要する電圧を比較することができる。
その結果、電気化学的変換に要する電圧の大きさの序列は、2'F-dCMP > 2'Cl-dTMP > 2'Br-dGMP > 2'I-dAMPで、ポリメラーゼ固定化電極の種類に依らない。しかし過電圧の大きさは、実施例1および実施例2で作製したポリメラーゼ固定化電極の方が、対照として用いたT7 DNAポリメラーゼとチオレドキシンからなる活性型T7 DNAポリメラーゼの固定化電極よりも低いことがわかる。また各ヌクレオチド誘導体の還元電流のピーク幅についても実施例1および実施例2で作製したポリメラーゼ固定化電極の方が、対照のポリメラーゼの固定化電極より狭いことがわかる。
(実施例4)
本実施例では導電性基体として金基板、ポリメラーゼ部分としてクローニングされた好熱菌由来の改変型DNAポリメラーゼ、導電性部分としてπ共役金属錯体、またアンカー部分としてジスルフィドをそれぞれ用いる。これらがこの順序で連結されたポリメラーゼユニットとしてのプローブ修飾ポリメラーゼが、アンカー部分であるジスルフィドと金基板とのAu−S結合形成を介して導電性基体上に固定化されている電極を以下のように作製する。
<1>アンカー部分、及び導電性部分の調製を固定化した金電極の作製
直径0.5mmの金線の先端2cmとコンタクトを残してフッ素樹脂の熱収縮チューブで覆い、金電極とした。これを1Mの水酸化カリウムで80℃、6時間加熱後、濃硫酸に12時間浸漬、濃硝酸に15分浸漬した後、超純水で洗浄乾燥する。
実施例1で調製した、下記式(2)で表される錯体配位子
Figure 2008026311
の0.1Mクロロホルム溶液に、洗浄した金電極を5分間浸漬した後、クロロホルムで洗浄し、窒素気流で乾燥させる。これを、0.1MのFe(BF4)2の水溶液に3時間浸漬、水で洗浄し、窒素気流で乾燥させる。
これを実施例1で調製した、下記式(7)で表される錯体配位子
Figure 2008026311
の0.1Mクロロホルム溶液に3時間浸漬したのち、クロロホルムで洗浄し、窒素気流で乾燥させる。
<2>ポリメラーゼ部分の調製
好熱菌Thermus aquaticus(ATCC 25104)より常法によりゲノムDNAを調製する。このゲノムDNAを鋳型にして、合成オリゴDNA:
5'- aataatccatggccctggaggaggccccctggcccccgccggaag -3' (Nco I)[配列番号13]および
5'- aataatgtcgactcactccttggcggagagccagtcctcccctat -3' (Sal I)[配列番号14]
をプライマーとして用いPCRを行い、DNAポリメラーゼのStoffel fragmentをコードする遺伝子を含む約1,646bpのDNA増幅産物を得る。
このDNA増幅産物を制限酵素Nco IおよびSal Iで消化切断し、pET-45b(+) (Novagen社製)の同じ制限酵素サイトに挿入することによって、DNAポリメラーゼのStoffel fragment (TaqDP、配列番号15)発現ベクターpET-TaqDP(配列番号16)を作製する。
次に、DNAポリメラーゼの活性部位近傍に導電性部分を繋ぎ込むための、DNAポリメラーゼに部位特異的変異を導入する。pET-TaqDP(配列番号16)に対して、956番目から958番目の塩基CGCをCATに、1034番目から1036番目の塩基CAGをCATに、1196番目から1198番目の塩基TTCをCATに、それぞれ置換する。部位特異的変異の導入は、QuikChange( Site-Directed Mutagenesis Kit(STRATAGENE(社製)を用いてPCR反応により同社プロトコルに従って行う。
このようにしてDNAポリメラーゼ(TaqDP、配列番号15)の296番目のアルギニン、322番目のグルタミン、376番目のフェニルアラニンをそれぞれヒスチジンに置換した変異型DNAポリメラーゼ(mTaqDP、配列番号17)の発現ベクターpET-mTaqDP(配列番号18)を調製する。
発現ベクターpET-mTaqDPを常法に従いE.coli BL21(DE3)に形質転換する。形質転換体は抗生物質アンピシリンに対する耐性株として選別することができる。
得られた形質転換体を抗生物質アンピシリンを添加したLB培地10mLで一晩プレ・カルチャーした後、その0.2mLを、100mLのLB-Amp培地に添加し、30℃、170rpmで4時間振とう培養する。その後IPTGを添加 (終濃度 1mM) し、37℃で4から12時間培養を続ける。IPTG 誘導した形質転換体を集菌 (8000×g、 2分、4℃) し、1/10 量の 4℃ PBSに再懸濁する。凍結融解およびソニケーションにより菌体を破砕し、遠心 (8000×g、 10分、4℃)して固形夾雑物を取り除くことにより、無細胞抽出液(cell-free extract)を調製する。目的の発現タンパク質が上清に存在することをSDS-PAGEで確認した後、誘導発現された変異型DNAポリメラーゼタンパク質を精製する。精製は、最初に上記無細胞抽出液を95℃の湯浴上で20分間恒温保持することで宿主である大腸菌由来のタンパク質を変性・凝固させ、これを遠心分離(8000×g、 10分、20℃)して除去する。次に、200mM NaClを含む50mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)で平衡化したSephadex75(アマシャムバイオサイエンス社)を用い、ゲルろ過を行うことで、目的のタンパク質を含むフラクションを得る。
<3>ポリメラーゼ部分の固定化
<1>の工程で作製した金電極を、100mM NiSO4水溶液に20分間浸漬し、ニトリロ三酢酸部分にニッケルイオンをキレートさせる。その後、水で電極を洗浄し余分のニッケルイオンを除去する。次に前記<2>の工程で調製した好熱菌由来の変異型DNAポリメラーゼのTris−HCl緩衝液系での精製試料を添加し、4℃で20分間静置する。その後Tris−HCl緩衝液で洗浄することにより電極上に捕捉されなかった余分のポリメラーゼを除去する。以上の工程により作製されるポリメラーゼ固定化電極では、ポリメラーゼ部分はその活性中心近傍に導入されたヒスチジン残基を介してπ共役金属錯体の端部に配位結合している。
(実施例5)
実施例4で作製したポリメラーゼ固定化電極を用いて、3'伸長末端の電気化学的変換に要する過電圧を測定する(実施例5)。また、比較例1のDNAポリメラーゼ(TaqDP、配列番号15)の固定化電極を、実施例5と同じ条件で、3'伸長末端の電気化学的変換に要する過電圧を測定する(比較例2)。これらをポテンショスタットに接続する。電極電位設定のためのファンクションジェネレーター、および計測およびデータ処理のためのコンピュータを更にポテンショスタットに接続する。ポリメラーゼ固定化電極に印加される電圧は、ファンクションジェネレーターによりプログラムされており、ポテンショスタットを経て印加される。印加された電圧とこのとき観測される電流値はコンピュータに送られ収集される。
標的核酸としては、配列番号9で表される合成オリゴデオキシヌクレオチドをモデルとして用いる。また、プライマーとしては、配列番号10で表される合成オリゴデオキシヌクレオチドを用いる。
まず、10ピコモルの標的核酸と10ピコモルのプライマーとを50マイクロリットルのTEバッファー中で混合し、96℃で20秒加熱後、25℃で放置する。
次に、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、およびチミン(T) の各々に対応して相異なる電気化学的に変換可能な構造でキャッピングされたヌクレオチド5´−三リン酸誘導体として以下のものを用いる。
・2'-iodo-2'-deoxyadenosine-5'-triphosphate(2'I-dATP)
・2'-bromo-2'-deoxyguanosine-5'-triphosphate(2'Br-dGTP)
・2'-chloro-2'-deoxythymidine-5'-triphosphate(2'Cl-dTTP)
・2'-fluoro-2'-deoxycytidine-5'-triphosphate(2'F-dCTP)
標的核酸とプライマーとの混合物を添加し、電極系に接触させる。37℃で5分間保持し、その後、緩衝液Bで洗浄し、ポリメラーゼ固定化電極に捕捉されなかった標的核酸とプライマーとの混合物を除去する。
緩衝液B:
・33mM トリス−酢酸緩衝液(pH7.9)
・66mM 酢酸カリウム
・10mM 酢酸マグネシウム
・0.01%(w/v)ウシ血清アルブミン
次に、2'I-dATP、2'Br-dGTP、2'Cl-dTTP、2'F-dCTPの各々50μM水溶液(pH7.0)を、ポリメラーゼ固定化電極と接触させ、70℃で保持する。電圧の時間変化は、自然電位を基準とし、負の方向に一定速度で掃引していくフェーズと自然電位で保持するフェーズからなる変化の繰返しとする。この条件においては、電圧を掃引し始めてからピーク電流を観測するまでの時間によって、伸長反応後、3'伸長末端に付加されたヌクレオチド誘導体の電気化学的変換に要する電圧を比較することができる。
その結果、電気化学的変換に要する電圧の大きさの序列は、2'F-dCMP > 2'Cl-dTMP > 2'Br-dGMP > 2'I-dAMPで、ポリメラーゼ固定化電極の種類に依らない。しかし過電圧の大きさは、実施例4で作製したポリメラーゼ固定化電極の方が、対照として用いたDNAポリメラーゼ(TaqDP、配列番号15)の固定化電極(比較例2)よりも低いことがわかる。また各ヌクレオチド誘導体の還元電流のピーク幅についても実施例4で作製したポリメラーゼ固定化電極の方が、対照のポリメラーゼの固定化電極より狭いことがわかる。
本発明のポリメラーゼ固定化電極に用いるポリメラーゼユニットの構成例を示す模式図である。 本発明のポリメラーゼ固定化電極の構成例を示す模式図である。 本発明のポリメラーゼ固定化電極に用いるポリメラーゼユニットの別の構成例を示す模式図である。 本発明のポリメラーゼ固定化電極の別の構成例を示す模式図である。 本発明のポリメラーゼ固定化電極を用いた際の核酸の塩基配列の解析方法における各工程を説明する模式図である。 標的核酸上でのプライマーの認識位置を示す図である。 本発明の核酸の塩基配列の解析方法を実行するDNA塩基配列解析装置の構成例を示す模式図である。 図5(1)及び図5(2)の拡大図である。 図5(3)及び図5(4)の拡大図である。
符号の説明
1 ポリメラーゼ部分
2 アンカー部分
3 導電性部分
4 第二の導電性領域(プローブ領域)
5 導電性基体
6 ポリヒスチジンタグ
7 錯体配位子部分
8 金属
9 第一の導電性領域

Claims (8)

  1. 導電性基体と、該導電性基体の表面に固定されたポリメラーゼユニットとからなるポリメラーゼ固定化電極であって、
    前記ポリメラーゼユニットが、ポリメラーゼ部分とアンカー部分と導電性部分とを有し、
    前記ポリメラーゼ部分と前記アンカー部分と前記導電性部分とが、
    前記ポリメラーゼ部分、前記アンカー部分、前記導電性部分の順、
    もしくは、
    前記ポリメラーゼ部分、前記導電性部分、前記アンカー部分の順で、
    連結されて構成されており、
    前記ポリメラーゼユニットの前記導電性基体への固定が前記アンカー部分によってなされており、
    前記導電性部分が有する端部のうち前記アンカー部分側の端部とは反対側の端部が前記ポリメラーゼ部分の活性部位近傍に位置することを特徴とするポリメラーゼ固定化電極。
  2. 前記ポリメラーゼユニットが、前記ポリメラーゼ部分と前記アンカー部分と前記導電性部分とがこの順で連結されて構成されており、
    前記アンカー部分のうちの前記導電性部分側の端部から前記導電性部分の自由端までの長さと、前記アンカー部分の前記ポリメラーゼ部分側の端部から前記ポリメラーゼ部分の活性部位までの長さがほぼ等しいことを特徴とする請求項1に記載のポリメラーゼ固定化電極。
  3. 前記ポリメラーゼ部分と前記アンカー部分との間にポリヒスチジンタグおよび前記ポリヒスチジンタグが配位する金属が存在し、
    前記ポリメラーゼ部分と前記アンカー部分との連結が前記ポリヒスチジンタグと前記ポリヒスチジンタグが配位する金属との配位結合によってなされていることを特徴とする請求項1に記載のポリメラーゼ固定化電極。
  4. 前記ポリメラーゼユニットが、前記ポリメラーゼ部分と前記導電性部分と前記アンカー部分とがこの順で連結することによって構成されており、
    前記導電性部分と前記ポリメラーゼ部分とが直接結合していることを特徴とする請求項1に記載のポリメラーゼ固定化電極。
  5. 前記ポリメラーゼ部分と前記導電性部分との間にポリヒスチジンタグおよび前記ポリヒスチジンタグが配位する金属が存在し、
    前記ポリメラーゼ部分と前記導電性部分との連結が前記ポリヒスチジンタグと前記ポリヒスチジンタグが配位する金属との配位結合によってなされていることを特徴とする請求項1に記載のポリメラーゼ固定化電極。
  6. 前記導電性部分がπ共役金属錯体からなる基である請求項1に記載のポリメラーゼ固定化電極。
  7. 前記導電性部分が核酸を含む請求項1に記載のポリメラーゼ固定化電極。
  8. 塩基配列に関する情報取得方法であって、
    標的核酸とプライマーとが二本鎖化した試料と、ポリメラーゼ固定化電極と、電気化学的に変換し得る部分を有するヌクレオチド誘導体とを用意する工程と、
    前記試料と、前記ポリメラーゼ固定化電極と、前記ヌクレオチド誘導体と、を溶媒中で共存させる工程と、
    前記プライマーに前記ヌクレオチド誘導体が導入されているか否かを電気化学反応を用いて検出する工程と、
    を有し、
    前記ポリメラーゼ固定化電極が、導電性基体と、該導電性基体の表面に固定されたポリメラーゼユニットとからなり、
    前記ポリメラーゼユニットが、ポリメラーゼ部分とアンカー部分と導電性部分とを有し、
    前記ポリメラーゼ部分と前記アンカー部分と導電性部分とが、
    ポリメラーゼ部分、アンカー部分、導電性部分の順、
    もしくは、
    ポリメラーゼ部分、導電性部分、アンカー部分の順で
    連結されて構成されており、
    前記ポリメラーゼユニットの前記導電性基体への固定が前記アンカー部分によってなされており、
    前記導電性部分が有する端部のうち前記アンカー部分側の端部とは反対側の端部が前記ポリメラーゼ部分の活性部位近傍に位置することを特徴とする塩基配列に関する情報取得方法。
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