しかしながら、前記特許文献1の構成では、上部から生体に照明を照射しているため、穿刺の際、注射針により生体上に影ができる。そして、近赤外光画像において影は暗く映るので、影を血管として誤認識してしまい、血管として誤った強調表示をしてしまうという事情がある。また、注射針の表面の形状が曲面であるため針の側面は影となり、注射針を同様に血管として誤った強調表示をしてしまうという事情があった。さらに、注射針を移動させ、血管上に注射針が重なった場合、注射針により血管が隠されてしまうため、血管の位置が分からなくなるという事情があった。
本発明は、前記従来の事情を鑑みてなされたものであって、穿刺の際に、注射針が撮像画像内に入っても誤認識することなく正しく血管位置と注射針位置とを強調して表示することができる画像表示装置及び画像表示方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の第1の画像表示装置は、生体を撮像して得られるデジタル画像を有するフレームを所定の時間間隔で入力する画像入力部と、前記デジタル画像内の血管位置を血管位置情報として抽出する血管位置抽出部と、前記血管位置情報を記録する記録部と、前記デジタル画像内の注射針の有無及び位置を注射針位置情報として検出する注射針検出部と、前記血管位置抽出部によって抽出された現フレームにおける第1の血管位置情報、前記記録部に記録された前フレームにおける第2の血管位置情報、および前記注射針位置情報とに基づいて、前記生体の血管及び前記注射針を強調したデジタル画像を強調画像として表示する強調画像表示部とを有する構成としている。
この構成により、穿刺の際に、注射針が撮像画像内に入っても誤認識することなく正しく血管位置と注射針位置とを強調して表示することができる。
また、本発明の第2の画像表示装置は、前記血管位置情報は前記血管位置における血管画素に関する情報を含み、前記注射針位置情報は前記注射針位置における注射針画素に関する情報を含み、前記強調画像表示部が、前記注射針位置情報に基づき、前記注射針位置の中心位置から所定の範囲を注射針影響領域として設定する注射針影響領域設定部と、前記第1の血管位置情報のうち前記注射針影響領域を除く領域の血管位置情報および前記第2の血管位置情報のうち前記領域に対応する第1の対応領域の血管位置情報に基づいて、フレーム間の位置ずれ量を算出する位置ずれ量算出部と、前記位置ずれ量に基づいて、前記第1の血管位置情報のうち前記注射針影響領域を除く領域の血管位置情報と、前記第2の血管位置情報のうち前記注射針影響領域に対応する第2の対応領域の血管位置情報とを合成し、現フレームの血管位置情報とする血管位置合成部と、前記現フレームの血管位置情報および前記注射針位置情報に基づいて、前記デジタル画像における前記血管画素と前記注射針画素とを強調した前記強調画像を作成し出力する画像強調部と、を有する構成としている。
この構成により、穿刺の際に、注射針が撮像画像内に入っても誤認識することなく正しく血管位置と注射針位置とを強調して表示することができる。
また、本発明の第3の画像表示装置は、前記血管位置抽出部が、前記デジタル画像に対して、相対的に周辺画素よりも輝度値が小さい画素領域を血管位置として抽出する構成としている。
この構成により、正しく血管位置を抽出することができる。
また、本発明の第4の画像表示装置は、前記注射針検出部が、前記注射針の形状のエッジを抽出する画像処理フィルタを用いて各画素におけるエッジ量を求め、求められたエッジ量と所定の閾値との比較を行い、前記エッジ量が前記所定の閾値よりも大きい画素を注射針位置として検出する構成としている。
この構成により、正しく注射針位置を抽出することができる。
また、本発明の第5の画像表示装置は、前記注射針検出部が、前記画像処理フィルタを前記注射針が向く方向に合わせて複数個用意しておき、各画像処理フィルタ毎に求めたエッジ量のうち、最大のエッジ量を前記所定の閾値との比較に用いる構成としている。
この構成により、注射針の方向が随時変化する場合であっても、注射針の方向によらずに注射針画素を検出することができる。
また、本発明の第6の画像表示装置は、前記注射針検出部で用いる所定の閾値が、前記注射針が存在しない状態の生体を撮像したデジタル画像に対し前記画像処理フィルタを用いてエッジ量を求め、求めた最大のエッジ量よりも大きな値を設定する構成としている。
この構成により、画像がノイズ等の影響を受けた場合であっても、注射針画素とその他の画素を正確に区別することができる。
また、本発明の第7の画像表示装置は、前記注射針影響領域設定部によって前記注射針影響領域を設定する際に用いる所定の範囲が、前記注射針により前記生体上にできる影と前記注射器とが含まれる範囲を設定する構成としている。
この構成により、注射針が撮像画像内に入ってもその影響による誤認識をおこすことなく、さらに生体上にできる影が誤って血管として認識されて抽出されることを防ぐことができる。
また、本発明の第8の画像表示装置は、前記注射針影響領域設定部が、前記注射針の向きに合わせて前記所定の範囲を回転させて前記注射針影響領域を設定する構成としている。
この構成により、注射針方向が変化した場合であっても、注射針方向に合わせて注射針影響領域を設定することができる。
また、本発明の第9の画像表示装置は、前記画像強調部が、前記現フレームの血管位置情報を第2の血管位置情報として前記記録部へ記憶する構成としている。
この構成により、現フレームにて強調画像を作成するために使用した血管位置情報を、次フレームにおける強調画像作成のために活用することができる。
また、本発明の第10の画像表示装置は、前記画像強調部が、前記血管位置情報と前記注射針位置情報に基づき、前記デジタル画像内の前記血管画素を第1の色に、前記注射針画素を第2の色に、前記血管と前記注射針とが重なり合う画素を第3の色により強調する構成としている。
この構成により、血管位置、注射針位置、血管と注射針とが重なり合う位置を視覚的に容易に判断することができる。
また、本発明の第11の画像表示装置は、前記画像強調部が、前記第2の血管位置情報において前記第2の対応領域における血管位置情報が記録部によって記憶されていない場合、前記強調画像を加工し表示することで通知を行う構成としている。
この構成により、第1の血管位置情報のうち注射針影響領域と置き換えて合成するための血管情報が現時点で存在しない旨を通知することが可能である。
また、本発明の第12の画像表示装置は、前記強調画像の加工が、前記強調画像における前記注射針影響領域の画素を第4の色により強調する構成としている。
この構成により、第1の血管位置情報のうち注射針影響領域と置き換えて合成するための血管情報が現時点で存在しない旨を視覚的に容易に認識することができる。
また、本発明の第13の画像表示装置は、前記第1の血管位置情報と第2の血管位置情報とのうち、前記注射針影響領域に含まれる血管位置情報に基づき、前記注射針により影響を受けている画素を影響画素として検出し、検出された前記影響画素が含まれるように、前記注射針影響領域の範囲を修正する注射針影響領域範囲修正部をさらに有し、前記注射針影響領域設定部が、次フレームにおいて、前記注射針影響領域範囲修正部によって修正された注射針影響領域の範囲を用いて注射針影響領域を設定する構成としている。
この構成により、注射針影響領域を最小限の範囲で無駄なく設定することができ、より精度高く血管位置と注射針位置とを認識することが可能である。
また、本発明の第14の画像表示装置は、前記注射針影響領域範囲修正部が、前記注射針影響領域の各位置において、前記第1の血管位置情報と前記第2の血管位置情報との差分値の絶対値を求め、求められた絶対値が所定の閾値よりも大きくなっている位置および前記注射針検出部によって検出された注射針位置を前記影響画素とする構成としている。
この構成により、現フレームと前フレーム間の差異を各位置毎に正確に把握することができ、注射針影響領域をより無駄なく設定することが可能である。
また、本発明の第15の画像表示装置は、前記注射針影響領域範囲修正部が、前記注射針の側面方向および先端方向でのみ前記注射針影響領域の範囲の修正を行う構成としている。
この構成により、確実に注射器が存在する注射器の根元方向に関して初期値から変更しないようにすることで、演算量を減らすことができる。
また、本発明の第1の画像表示方法は、生体が撮像されて得られるデジタル画像を有するフレームが所定の時間間隔で入力される画像入力工程と、前記デジタル画像内の血管位置が血管位置情報として抽出される血管位置抽出工程と、前記血管位置情報が記録される記録工程と、前記デジタル画像内の注射針の有無及び位置が注射針位置情報として検出される注射針検出工程と、前記血管位置抽出工程において抽出された現フレームにおける第1の血管位置情報、前記記録工程において記録された前フレームにおける第2の血管位置情報、および前記注射針位置情報とに基づいて、前記生体の血管及び前記注射針が強調されたデジタル画像が強調画像として表示される強調画像表示工程とを有する方法としている。
この方法により、穿刺の際に、注射針が撮像画像内に入っても誤認識することなく正しく血管位置と注射針位置とを強調して表示することができる。
また、本発明の第2の画像表示方法は、前記血管位置情報は前記血管位置における血管画素に関する情報を含み、前記注射針位置情報は前記注射針位置における注射針画素に関する情報を含み、前記強調画像表示工程が、前記注射針位置情報に基づき、前記注射針位置の中心位置から所定の範囲が注射針影響領域として設定される注射針影響領域設定工程と、前記第1の血管位置情報のうち前記注射針影響領域を除く領域の血管位置情報および前記第2の血管位置情報のうち前記領域に対応する第1の対応領域の血管位置情報に基づいて、フレーム間の位置ずれ量が算出される位置ずれ量算出工程と、前記位置ずれ量に基づいて、前記第1の血管位置情報のうち前記注射針影響領域を除く領域の血管位置情報と前記第2の血管位置情報のうち前記注射針影響領域に対応する第2の対応領域の血管位置情報とが合成され、現フレームの血管位置情報とされる血管位置合成工程と、前記現フレームの血管位置情報および前記注射針位置情報に基づいて、前記デジタル画像における前記血管画素と前記注射針画素とを強調した前記強調画像が作成され出力される画像強調工程とを有する方法としている。
この方法により、穿刺の際に、注射針が撮像画像内に入っても誤認識することなく正しく血管位置と注射針位置とを強調して表示することができる。
また、本発明の第3の画像表示方法は、前記第1の血管位置情報と第2の血管位置情報とのうち、前記注射針影響領域に含まれる血管位置情報に基づき、前記注射針により影響を受けている画素が影響画素として検出され、検出された前記影響画素が含まれるように、前記注射針影響領域の範囲が修正される注射針影響領域範囲修正工程をさらに有し、前記注射針影響領域設定工程が、次フレームにおいて、前記注射針影響領域範囲修正部によって修正された注射針影響領域の範囲を用いて注射針影響領域が設定される方法としている。
この方法により、注射針影響領域を最小限の範囲で無駄なく設定することができ、より精度高く血管位置と注射針位置とを認識することが可能である。
本発明の画像表示装置及び画像表示方法によれば、穿刺の際に、注射針が撮像画像内に存在しても正しい血管位置情報を得ることができ、血管位置と注射針位置を区別し強調表示することができる。
本発明の実施例1として、近赤外光を生体に対し上部から照射し、生体からの反射光を近赤外光波長のみを透過する光学フィルタを通して、近赤外波長の感度が高い白黒CCDカメラで撮像し、デジタル化した近赤外光画像内の血管位置と注射針位置を強調表示する場合を例として説明を行う。この近赤外光画像は、1画素を8bitで表し、画素値は輝度を示す濃淡画像とする。このようにして撮像された近赤外光画像においては、血液中のヘモグロビンは近赤外光を吸収する性質をもっているため、血管が存在する領域だけ反射光が少なくなり、血管が存在する画素の輝度値は小さくなる。また、注射針においては近赤外光を強く反射するため、注射針が存在する画素の輝度値は大きくなる。
まず、本発明の実施例1における画像表示装置900の説明を行う。図9は、本発明の実施例1における画像表示装置900の要部概略構成を示すブロック図である。
画像表示装置900は、例えばコンピュータにより形成され、血管位置抽出部902、注射針検出部903、および強調画像表示部904を含んで構成される。また、さらに、強調画像表示部904は、注射針影響領域設定部9041、位置ずれ量算出部9042、血管位置合成部9043、画像強調部9044、および画像メモリ9045を含んで構成される。
画像処理装置900に入力される近赤外光画像901は、例えば近赤外光を生体に対し上部から照射し、その反射光を、近赤外波長のみを透過する光学フィルタを通し白黒CCDカメラで撮像し、デジタル化した画像である。画像表示装置900は、この近赤外光画像901に含まれる血管位置と注射針位置を強調して表示する。
血管位置抽出部902は、近赤外光画像901において、相対的に周辺画素よりも輝度値が小さくなっている画素領域を血管位置として抽出し、抽出した血管位置情報を強調画像表示部904に出力する。
注射針検出部903は、近赤外光画像901に対して、注射針301(後述の図3参照)の形状を示すライン状のエッジを抽出する画像処理フィルタを用いてエッジ量を求め、求めたエッジ量と所定の閾値との比較を行い、条件を満たす画素を注射針位置として検出する。そして、検出した注射針位置情報を強調画像表示部904に出力する。
強調画像表示部904は、血管位置抽出部902から出力された血管位置情報と注射針検出部903から出力された注射針位置情報とを元に、近赤外光画像901内の血管位置と注射針位置の画素を強調した画像を作成し、作成した画像を強調画像905として表示する。
また、強調画像表示部904に含まれる注射針影響領域設定部9041は、注射針検出部903から出力される注射針位置情報に基づき、近赤外光画像901において注射針による影響を受けている部分を含む画素を、注射針影響領域601(後述の図6参照)として設定し、位置ずれ量算出部9042と血管位置合成部9043とに出力する。
位置ずれ量算出部9042は、血管位置抽出部902から出力される第1の血管位置情報701(後述の図7参照)、画像メモリ9045に記憶されている第2の血管位置情報702(前フレームにおいて近赤外光画像901の強調に用いた血管位置情報)(後述の図7参照)、および注射針影響領域設定部9041から出力される注射針影響領域601に基づき、第1の血管位置情報701と第2の血管位置情報702間における血管位置の位置ずれ量を算出し、算出した位置ずれ量を血管位置合成部9043に出力する。
血管位置合成部9043は、血管位置抽出部902から出力される第1の血管位置情報701、画像メモリ9045に記憶されている第2の血管位置情報702、注射針影響領域設定部9041から出力される注射針影響領域601、位置ずれ量算出部9042から出力される位置ずれ量を元に、第1の血管位置情報701と第2の血管位置情報702を合成することにより、注射針301による影響を受けていない合成した血管位置情報801(後述の図8参照)を生成し、画像強調部9044に出力する。
画像強調部9044は、血管位置抽出部902または血管位置合成部9043から出力される血管位置情報801、注射針検出部903から出力される注射針位置情報、および近赤外光画像901に基づき、近赤外光画像901における血管位置と注射針位置を強調した画像を作成し、強調画像905として出力する。またこれと同時に、強調に用いた血管位置情報を第2の血管位置情報702として画像メモリ9045に出力する。
以上のように構成された画像表示装置900を用い、血管位置抽出部902では例えばステップS101で行う処理を、注射針検出部903では例えばステップS102で行う処理を、強調画像表示部904では例えばステップS103で行う処理を行い、さらに強調画像表示部904の内部において、注射針影響領域設定部9041では例えばステップS1032で行う処理を、位置ずれ量算出部9042では例えばステップS1033で行う処理を、血管位置合成部9043では例えばステップS1034で行う処理を、画像強調部9044では例えばステップS1031とステップS1035で行う処理を行うことで、入力された近赤外光画像901に対して、注射針301による影響を受けずに正しい血管位置情報を得ることができ、常に最新の血管位置と注射針位置を区別して強調表示することができる。
次に、画像表示装置900が行う処理について説明する。
図1は、本発明の実施例1における画像表示装置900が行う処理を示すフローチャートである。図1のフローチャートはステップS101ないしステップS103からなり、ステップS101は血管位置抽出工程の一例を、ステップS102は注射針検出工程の一例を、ステップS1031からステップS1035からなるステップS103は強調画像表示工程の一例を、それぞれ示し、生体を連続して撮像した近赤外光画像901に対し、各フレームでこれらステップの処理を行う。
以下、近赤外光画像901に対して、本発明の実施例1の画像表示装置900が行う画像処理をフローチャートに従って図2から図8を用いて詳細に説明する。
まず、血管位置抽出部902が近赤外光画像に対して血管位置を抽出する(ステップS101)。これは、相対的に周辺画素よりも輝度値が小さくなっている画素領域を血管位置として抽出することで行う。なお、近赤外光画像901と同サイズの画像メモリ9045が予め用意されており、抽出された血管位置情報は、例えば血管位置に対応する画素値を1、その他の画素値を0とすることで画像データとして記憶しておく。そして、後段の処理(ステップS103)では、血管位置情報を画像メモリ9045に記憶されている画像データの各画素を参照することで、血管位置を知ることができる。
以下、血管位置抽出処理について説明する。図2は、本発明の実施例1における血管位置抽出処理を説明する図である。図2(A)は血管が映っている近赤外光画像901であり、図2(B)は図2(A)における近赤外光画像901の破線矢印で示す水平ライン上のL1―L2間の輝度値を示す輝度グラフである。
血管位置抽出処理は、血管位置抽出部902が図2に示すように近赤外光画像901の水平ライン上のL1―L2間の画素を抜き出し、抜き出した画素の輝度値に基づき血管201であるかどうかの判定に用いる輝度閾値TH1を算出し、算出した輝度閾値TH1とL1―L2間の中点となる注目画素の輝度値を比較し、注目画素の輝度値が輝度閾値TH1よりも小さい場合、注目画素を血管位置として抽出する。図2(B)では、注目画素C1の輝度値が輝度閾値TH1よりも小さいので、注目画素C1は、血管位置抽出部902によって血管201として抽出される。
なお、本実施例においては、L1―L2間の距離は、例えば撮像する近赤外光画像901において想定される血管の太さの最大長の2倍の画素数を設定しておき、輝度閾値TH1はL1―L2間の画素の輝度値のうち値の大きいほうからL1―L2間の画素数の半分を抜き出し、抜き出した画素の輝度平均値を算出し、算出した輝度平均値を0.8倍した値とする。このように輝度閾値TH1を算出することで、血管位置と皮膚位置とを分離する閾値を算出することができる。
なお、ここで用いた数値は一例であり、L1―L2間の距離は、血管201と皮膚202とが必ず含まれるように画素距離を設定すればよく、また、平均値に用いる画素の個数はL1―L2間の距離から必ず皮膚202の画素となる個数分を設定し、皮膚画素の輝度平均値を求め、輝度閾値TH1は算出した皮膚画素の輝度平均値を元に皮膚画素の輝度値よりも小さくなる値を設定すればよい。
血管位置抽出部902は、この一連の処理を近赤外光画像901全体に対し、画像上部から各水平ライン毎に、画像の左側から順に1画素ずつずらしながらL1―L2間の画素を抜きだして行っていくことで、血管位置を順次抽出していく。
なお、ここで用いた血管位置抽出処理は一例であり、他の手法により、相対的に周辺画素よりも輝度値が小さくなっている画素領域を血管位置として抽出してもよい。
こうして抽出した血管位置情報は、以下のステップS103において参照される。
次に、注射針検出部903が近赤外光画像内の注射針位置を検出する(ステップS102)。図3は、本発明の実施例1における注射針位置検出処理を説明する図である。図3(A)は血管201と注射針301が映っている近赤外光画像901であり、図3(B)は図3(A)における近赤外光画像901のA1―A2間の画素の輝度値を示す輝度グラフである。図3(B)に示す通り、血管画素の輝度値は、近赤外光を吸光しているため皮膚画素の輝度値よりも小さくなる。一方、注射針画素は、近赤外光を強く反射しているため皮膚画素の輝度値よりも大きくなり、また、注射針301の側面は曲面のため影となり輝度値が小さくなっている。尚、図3(B)において水平ライン上の血管部分、注射針部分以外の個所は皮膚部分を表している。
そこで、このような輝度値の特徴を持つ注射針301を検出するため、注射針検出部903は、注射針301の形状を示すライン状のエッジを抽出する画像処理フィルタを用いてエッジ量を求め、求めたエッジ量と所定の閾値との比較を行い、後述する条件を満たす画素を注射針位置として検出するようにする。このようにエッジ量を用いることで、注射針検出部903は、照明光に対する注射針301の角度により反射光が変化し、注射針画素の輝度値が変化しても、注射針の明るくなる中心部と暗くなる側面部において輝度差ができるため、注射針位置を確実に検出することが可能である。
図4は、本発明の実施例1におけるエッジ量算出に用いる画像処理フィルタの一例を示したものである。なお、エッジ量に関しては、注射針検出部903が図4に示す画像処理フィルタを近赤外光画像901に重ね合わせ、対応する画素の輝度値と画像処理フィルタの値を乗算し、全ての値を足し合わせて絶対値をとることで求める。
例えば、近赤外光画像901の画素の輝度値をG1,G2,G3,G4とし、対応する画像処理フィルタの値をF1,F2,F3,F4とすると、エッジ量はG1×F1+G2×F2+G3×F3+G4×F4の絶対値を取ることで求まる。そして、注射針検出部903は、求めたエッジ量を重ね合わせた各画素のエッジ量とし、近赤外光画像901全体に対し画像処理フィルタがはみ出さない範囲で、画像処理フィルタを重ね合わせる位置を1画素ずつずらしながらエッジ量を求めていく。また、注射針検出部903がエッジ量を求める際、重ね合わせた画素において、既にエッジ量が求められていた場合は、値の大きいほうを用いることとする。
そして、図4(A)に示すように、注射針301は血管201の太さに比べ細いので、注射針301の太さに合わせて横幅を細くし縦幅が長い例えば縦対横が4対2となる画像処理フィルタを用いてエッジ量を求めると、近赤外光画像901内において、細い直線の形状の画素、つまり注射針301の画素のエッジ量が最も大きくなり、求めたエッジ量が所定の閾値よりも大きい画素を抽出することで、近赤外光画像901内の注射針画素を検出する。尚、この画像処理フィルタでは、縦2列のうち左列のフィルタの値が−1であり、右列のフィルタの値が1である。
また、注射針検出部903が検出する注射針において、ある程度太さがある場合は、図4(B)に示すように例えば縦対横が4対5となる画像処理フィルタを用いエッジ量を求めてもよい。尚、この画像処理フィルタでは、縦5列のうち最左列および最右列のフィルタの値が−1であり、左から2番目の列および右から2番目の列のフィルタの値が1であり、真ん中の列のフィルタの値が0である。この画像処理フィルタを用いた場合、1と0の位置が注射針301において明るくなっている画素、−1の位置が注射針301の側面画素に重なるとき、最もエッジ量が大きくなる。なお、図4(B)に示す画像処理フィルタは、注射針301の太さが5画素の場合に最適化されたものであり、注射針301の太さに応じて、画像処理フィルタ内の0となっている領域の幅を変更してやればよい。
また、図4に示す画像処理フィルタは、近赤外光画像901に対し垂直方向の注射針301を検出するものであり、検出すべき注射針301の方向に合わせて画像処理フィルタを回転したものを用いてもよい。図5は、本発明の実施例1における図4(A)に示す画像処理フィルタを回転させた一例である。つまり、図5(A)は図4(A)に対し略30度右側に回転させた画像処理フィルタ、図5(B)は図4(A)に対し略30度左側に回転させた画像処理フィルタ、図5(C)は図4(A)に対し略60度右側に回転させた画像処理フィルタ、図5(D)は図4(A)に対し略60度左側に回転させた画像処理フィルタ、図5(E)は図4(A)に対し略45度右側に回転させた画像処理フィルタ、図5(F)は図4(A)に対し略45度左側に回転させた画像処理フィルタ、図5(G)は図4(A)に対し略90度回転させた画像処理フィルタを示している。
さらに、注射針301の方向が随時変化する場合は、予め注射針301が向く方向に併せて画像処理フィルタを複数個用意しておき、各重ね合わせ位置においてすべての画像処理フィルタを用いて注射針検出部903がエッジ量を算出し、各画像処理フィルタ毎に求めたエッジ量のうち、最大のエッジ量を所定の閾値との比較に用いるようにしてもよい。例えば、図4(A)と図5に示す画像処理フィルタを用意しておく。こうすることで、注射針301の方向に限らず、注射針画素を検出することができる。
また、注射針検出処理において、エッジ量と比較を行う所定の閾値は、注射針301が存在しない状態の生体を撮像した近赤外光画像901に対し前記画像処理フィルタを用いてエッジ量を求め、求めた最大のエッジ量よりもさらに大きな値、例えば求めた最大のエッジ量にノイズ等を加味したオフセット値を加えた値を閾値として設定しておくことにより、注射針画素とその他の画素を区別できる閾値を設定することができる。
なお、近赤外光画像901と例えば同サイズの画像メモリ9045が予め用意されており、上記のように検出された注射針位置情報は、注射針位置に対応する画素値を1、その他の位置の画素値を0とすることで画像データとして記憶される。そして、後段の処理(ステップS103)では、注射針位置情報を記憶している画像データの各画素を参照することで、近赤外光画像901における注射針301の有無、また注射針301が存在する場合、注射針位置を知ることができる。この注射針位置情報は、以下のステップS103において参照される。
次に、ステップS101にて抽出された血管位置情報とステップS102にて検出された注射針位置情報を元に、強調画像表示部904は、撮像した近赤外光画像901内の血管位置と注射針位置の画素を強調した強調画像905を作成し表示を行う(ステップS103)。
このステップにおいては、注射針検出部903によって注射針301が検出されなかった場合は(ステップS1031)、強調画像表示部904が、ステップS101にて抽出された血管位置情報を元に近赤外光画像901の血管画素を強調した強調画像905を表示し(ステップS1035)、一方注射針301が検出された場合は(ステップS1031)、強調画像表示部904が、注射針位置情報に基づき近赤外光画像901において注射針301により影響を受けている領域を決定し(ステップS1032)、決定した領域に基づき、位置ずれ量を算出した後に(ステップS1033)、ステップS101で抽出された血管位置情報(以下、第1の血管位置情報)と、前フレームにおいて近赤外光画像901の強調に用いた血管位置情報(以下、第2の血管位置情報)とを合成することで(ステップS1034)、注射針301による影響を受けていない現フレームにおける血管位置情報を生成し、生成した血管位置情報と注射針位置情報を元に近赤外光画像901の血管画素と注射針画素を強調した強調画像905を表示する(ステップS1035)。
この処理により、穿刺の際に、近赤外光画像901内に注射針301が混入しても血管201として誤認識することなく正しく血管位置と注射針位置を区別して強調して表示することができるようになる。なお、第2の血管位置情報702は、前フレームの血管位置情報を画像メモリ9045に画像データとして記憶しているものであり、注射針301により誤抽出された血管位置を含まない、正しい血管位置のみで構成された血管位置情報である。
以下、ステップS103における強調画像表示処理をより具体的に説明する。まず、撮像した近赤外光画像901において、注射針影響領域設定部9041が注射針301が存在するかどうかの判定を行う(ステップS1031)。これは、ステップS102で検出された注射針位置情報を用いて行い、例えば注射針位置情報を示す画像データ内の画素値に1となっている画素が存在しない場合、注射針影響領域設定部9041は注射針301が無いと判断し、ステップS1035に進む。
一方、画像データ内の画素値に1となっている画素が存在した場合、注射針影響領域設定部9041は注射針301があると判断し、まず、近赤外光画像901内において、注射針301によって影響を受けている画素を含む領域を注射針影響領域601として設定する(ステップS1032)。ここでの、注射針301により影響を受けている画素とは、ステップS101における血管抽出処理において、誤って血管画素として抽出されてしまう画素であり、注射針301により生体上にできる影602(後述の図6参照)や、注射器301自身、特には注射針301側面の影である。これらの画素は、周辺の画素に比べ輝度値が小さくなるため、血管201として誤って抽出される。
図6は、本発明の実施例1における注射針影響領域601を説明する図であり、図6(A)は近赤外光画像901における注射針位置と注射針影響領域601を示し、図6(B)は注射針影響領域601の設定方法を示す図である。
図6(A)において、注射針301による影602が右側にできており、このような影602は必ず注射針301周辺にできる。従って、図6(B)に示すように、まず注射針影響領域設定部9041は注射針位置の中心画素位置603を求め、そこから所定の範囲を注射針影響領域601として設定する。こうすることで、注射針301により影響を受けている画素を含む注射針影響領域601を設定することができる。
なお、注射針位置の中心画素位置は、注射針位置情報を用い、近赤外光画像901の横方向をX軸、縦方向をY軸とすると、注射針影響領域設定部9041によって注射針画素位置のX座標,Y座標をそれぞれ全て足し合わせ、足し合わせた値を、注射針画素数で割ることで求める。また、中心画素位置603から設定する所定の範囲は、例えば、XY軸に対して水平,垂直方向に、注射針301の中心画素位置603から、注射針301の先端方向604への画素数、注射針301の根元方向605への画素数、注射針301の側面左方向606への画素数、注射針301の側面右方向607への画素数で与え、予め複数の近赤外光画像901を用いて、注射針301によりできる影602と注射針301を含む注射器が必ず含まれる範囲を設定しておく。こうして設定された注射針影響領域601は、注射針方向に一致した四角形の領域となる。
また、図6では、注射針301の方向が近赤外光画像901に対し垂直な縦方向である場合における注射針影響領域601の設定方法について説明を行ったが、注射針301方向が変化した場合は、注射針301の傾きに合わせて、注射針影響領域設定部9041が、注射針影響領域601に含まれる各画素のXY座標値を、注射針位置の中心画素位置603を中心に回転させることで、注射針301方向が変化しても同等の注射針影響領域601を設定する。
なお、注射針301の傾きは、注射針影響領域設定部9041によって水平1ライン上の注射針画素において中点となるX座標をY軸上の全ての座標で順次求め、求めた各Y軸における注射針画素の中点を最小2乗近似で結ぶ直線の傾きから求める。そして、注射針影響領域601の回転は、例えば一般的に良く用いられている2次元のアフィン変換を用いて行う。アフィン変換は、変換前の座標を(x,y)、変換後の座標を(x’,y’)、反時計回りの回転角度をθとした場合、次のように表される。
x’=x×cosθ+y×sinθ、y’=−x×sinθ+y×cosθ
なお、近赤外光画像901と例えば同サイズの画像メモリ9045が予め用意されており、こうして検出された注射針影響領域601は、注射針影響領域601に対応する画素値を1、その他の位置の画素値を0とする画像データとして記憶される。そして、後段の処理では、画像データの各画素を参照することで、注射針影響領域601を知ることができる。
次に、位置ずれ量算出部9042は、ステップS101で抽出された第1の血管位置情報701と前フレームにおいて近赤外光画像901の強調に用いた血管位置情報である第2の血管位置情報702とを合成する際に用いる、フレーム間の位置ずれ量を算出する(ステップS1033)。
一般的に、穿刺の際に腕を移動させることはないが、人間であるため完全に静止することはなく数画素程度位置が変化する。従って、現フレームの第1の血管位置情報701と前フレームの第2の血管位置情報702を合成するためには、変化した位置ずれ量を求める必要がある。
なお、位置ずれ量は、位置ずれ量算出部9042が血管位置情報を示す画像データ間の相関を評価し、相関が最も大きい位置となるXY軸方向の移動量を位置ずれ量として算出する。そして、画像データ間の相関には残差を用い、一対の画像データを重ね合わせてそのときの重なった画素値の差を累積加算して残差を得る。残差は、2枚の画像データのミスマッチ度合いを示しているので、重ね合わせる位置を変更しつつ、各重ね合わせ位置で残差を求め、残差が最小となる重ね合わせ位置を検出することで、位置ずれ量を求めることができる。
また、画像を重ね合わせて残差を求める対象となる画素領域を、第1の血管位置情報701のうちステップS1032において設定した注射針影響領域601を除く領域、第2の血管位置情報702のうち注射針影響領域601に対応する画素領域705(後述の図7参照)を除く領域とする。これは、第1の血管位置情報701には、注射針301により誤った血管位置情報が混入しているため、注射針影響領域601および注射針影響領域601に対応する画素領域705を除くことで、精度良く位置ずれ量を求めることができる。また、さらに、重ね合わせる位置を変更した際、重ね合わせる画素が存在しなくなる領域も残差を求める対象となる画素領域から除いておく。
図7は、本発明の実施例1における現フレームの第1の血管位置情報701と前フレームの第2の血管位置情報702における位置ずれ量を算出する対象となる位置ずれ量算出領域703を示した図である。図7(b)において、位置ずれ量算出領域703は、第2の血管位置情報702上に斜線で示しており、注射針影響領域601に対応する画素領域705と、重ね合わせる位置を変更した際、重ね合わせる画素が存在しなくなる画像の周辺部を除いた領域となっている。また、図7(a)において、第1の血管位置情報701には、血管画素以外にも注射針301や注射針301による影602が血管201として誤抽出されている。
従って、図7(a)における第1の血管位置情報701に対して、図7(b)における第2の血管位置情報702を重ね合わせ、第2の血管位置情報702において斜線で示している位置ずれ量算出領域703に重なる画素において残差を算出することで、正しい血管位置の情報のみを用いて位置ずれ量を算出することができる。
そして、例えば第1と第2の血管位置情報701、702の左上隅が一致するように重ね合わせた位置を基準とし、位置ずれ量算出部9042は重ね合わせる位置をXY軸方向にそれぞれ1画素ずつずらしながら、各位置において残差を求め、求めた残差が最も小さくなる位置のXY軸方向のそれぞれの移動量704を位置ずれ量とする。
なお、各位置で求めた残差が全て同値、または複数の位置で同値だった場合には、位置ずれ量算出部9042は位置ずれ量をXY軸方向共に0とする。これは、血管位置情報において、位置あわせの基準となる血管201が存在しない場合や、1本の直線など単純な血管201でどの位置でもマッチングする場合に起こる。このような場合、各血管位置情報の合成の際、位置を移動させる必要は無い。
また、位置ずれ量算出部9042による位置ずれ量を算出のために、重ね合わせ位置をずらすXY軸方向の移動量704は、フレーム間で血管位置が移動すると想定される最大の画素数を予め設定しておけばよい。
次に、ステップS1033において算出した位置ずれ量に基づき、血管位置合成部9043はステップS101で抽出した第1の血管位置情報701と前フレームの第2の血管位置情報702を合成し、注射針301によって影響を受けていない現フレームにおける血管位置情報801を生成する(ステップS1034)。
具体的には、血管位置情報合成処理では、血管位置合成部9043は、ステップS1033において算出した位置ずれ量を元に、第1の血管位置情報701における注射針影響領域601に含まれる各画素に対応する第2の血管位置情報702の画素を特定し、第1の血管位置情報701における注射針影響領域601の各画素の画素値を対応する画素位置の第2の血管位置情報702の画素値と置き換えることで、血管位置情報の合成を行う。
図8は、本発明の実施例1における第1の血管位置情報701と第2の血管位置情報702の合成を示す図である。図8に示すとおり、血管位置合成部9043は、図8(a)に示すような第1の血管位置情報701における注射針影響領域601の画素値を、図8(b)に示すように第2の血管位置情報702における注射針影響領域601に対応する画素領域705の画素値と置き換えて合成することで、図8(c)に示すような血管201として誤抽出している注射針301や注射針301による影602からなる血管位置情報を除いた、正しい血管のみの合成した血管位置情報801を生成する。
また、注射針301が移動し、血管201が注射針301に隠れてしまった場合においても、第2の血管位置情報702を用いることで、正確な血管位置を得ることができる。
さらに、注射針影響領域601以外は、撮像した現フレームの血管位置情報を用いているため、採血等で血流の状態が変化した場合でも、最新の変化に応じた血管位置情報を得ることができる。
そして、画像強調部9044は、以上のステップで作成された血管位置情報と注射針位置情報を元に撮像した近赤外光画像901を強調した強調画像905を作成し出力することで表示を行う(ステップS1035)。
なお、表示される強調画像905は、例えば1画素がRGB各8bitの輝度値を持つカラー画像とし、画像強調部9044は近赤外光画像901の血管位置と注射針位置の画素を色付けすることで強調する。一例として、血管位置の画素は赤色成分を強調し、注射針位置の画素は青色成分を強調することで、区別する。また、注射針301に隠れている血管位置情報も分かるので、画像強調部9044は血管201と注射針301とが重なり合う画素を、例えば異なる緑色成分を強調し区別することで、観察者にとってさらに分かりやすく強調表示する。
なお、画像強調部9044による各画素の強調処理は、血管位置情報と注射針位置情報を示す画像データの各画素値を参照し、血管位置や注射針位置以外の画素は、RGB値ともに近赤外光画像901の輝度値をそれぞれ代入し、血管位置や注射針位置の画素は、近赤外光画像901の輝度値から強調する色成分の色情報を相対的に大きくすることで行う。
具体的には、血管位置画素の赤色成分を強調する場合、画像強調部9044が例えばR値は近赤外光画像901の輝度値を、G値とB値とは近赤外光画像901の輝度値から所定の値を減算した値を代入することで行う。この際、近赤外光画像901の輝度値から減算する所定の値が大きいほど、R値が相対的に大きくなるため、より強く強調されることとなる。この減算する値は、観察者が最も区別しやすい値を予め設定しておけばよい。なお、減算結果が負の場合は0を代入する。
同様に、画像強調部9044が注射針位置画素の青色成分を強調する場合はB値を相対的に大きくし、血管201と注射針301が重なる位置画素の緑色成分を強調する場合はG値を相対的に大きくすればよい。そして、こうして作成した強調画像905を表示する。
また、画像強調部9044は、上記画像強調と同時に次フレームにおいて用いられる第2の血管位置情報702として、強調表示に用いた血管位置情報を、例えば近赤外光画像901と同サイズの記憶用の画像メモリ9045に記憶しておく。
なお、以上の一連のステップでは、最初のフレームは注射針301が存在しない近赤外光画像901に対し処理を行い、数フレーム後に穿刺のため注射針301が近赤外光画像901に入ってくるケースを想定しており、必ず第2の血管位置情報702として前フレームの正しい血管位置を示す血管位置情報が記憶されていることが前提となっている。
しかしながら、最初のフレームにおいて近赤外光画像901内に注射針301が存在する場合、ステップS1032からステップS1035の処理を行うにあたり、第2の血管位置情報702が記憶されていないため、注射針影響領域601における正しい血管位置を表示することができない。
そこで、このような第2の血管位置情報702において、注射針影響領域601の血管位置情報が記憶されていない場合は、強調画像表示部904が表示する強調画像905に、その旨を知らせる加工を施し表示することで観察者に通知を行うようにする。そして、通知を受けた観察者は、注射針301を移動させることで、記憶されていない領域の第2の血管位置情報702を得ることが可能となる。
具体的には、例えば最初に第2の血管位置情報702を示す画像メモリ9045の画像データを−1で初期化しておく。こうすることで、第2の血管位置情報702において注射針影響領域601の血管位置情報が記憶されていない場合、第1の血管位置情報701と第2の血管位置情報702とを合成した血管位置情報において、注射針影響領域601の画素値が−1となる。
そして、画像強調部9044は、ステップS1035において強調画像905を作成する際、血管位置情報内に−1の画素値が存在した場合、注射針影響領域601における第2の血管位置情報702が記憶されていないと判断し、−1の画素値を持つ画素を、血管位置や注射針位置を強調する際に用いた色とは異なる色を用い強調する。
例えば、黄色成分を強調することとし、R値とG値は近赤外光画像の輝度値を、B値は近赤外光画像の輝度値から所定の値を減算した値を代入する。このように通知を行うことで、観察者は黄色で強調された領域から注射針301を移動させ、第2の血管位置情報702において記憶されていなかった注射針影響領域601の血管位置情報が得られる。
このような本発明の実施例1における画像表示装置900によれば、生体を撮像して得られるデジタル画像を有するフレームを所定の時間間隔で入力する画像入力部と、デジタル画像内の血管位置を血管位置情報として抽出する血管位置抽出部902と、血管位置情報を記録する画像メモリ9045と、デジタル画像内の注射針の有無及び位置を注射針位置情報として検出する注射針検出部903と、血管位置抽出部902によって抽出された現フレームにおける第1の血管位置情報、画像メモリ9045に記録された前フレームにおける第2の血管位置情報、および注射針位置情報とに基づいて、生体の血管及び注射針を強調したデジタル画像を強調画像として表示する強調画像表示部904とを有する構成とすることで、撮像した近赤外光画像901に対して、注射針301による影響を受けずに正しい血管位置情報を得ることができ、常に最新の血管位置と注射針位置を区別して強調表示することができる。
以下、本発明の実施例2による画像表示装置1200について、図面を参照しながら説明する。
まず、本発明の実施例2における画像表示装置1200の説明を行う。図12は、本発明の実施例2における画像表示装置1200の要部概略構成を示すブロック図である。
画像表示装置1200は、例えばコンピュータにより形成され、血管位置抽出部902、注射針検出部903、および強調画像表示部1204を含んで構成される。また、さらに、強調画像表示部1204は、注射針影響領域設定部12041、位置ずれ量算出部9042、血管位置合成部9043、注射針影響領域範囲修正部12042、画像強調部9044、および画像メモリ9045を含んで構成される。本発明の実施例1で説明した画像表示装置900と同様の構成のものについては同一符号を付し、説明を省略する。
実施例1の構成と異なる点は、強調画像表示部1204の注射針影響領域範囲修正部12042が新たに追加された点である。注射針影響領域範囲修正部12042は、血管位置抽出部902から出力される第1の血管位置情報701、画像メモリ9045に記憶されている第2の血管位置情報702、注射針検出部903から出力される注射針位置情報、注射針影響領域設定部12041から出力される注射針影響領域601、および位置ずれ量算出部9042から出力される位置ずれ量を用いて、注射針影響領域601の範囲をフレーム毎に修正し、修正した注射針影響領域601の範囲を注射針影響領域設定部12041へ出力する。
以上のように構成された画像表示装置1200を用い、血管位置抽出部902では例えばステップS201で行う処理を、注射針検出部903では例えばステップS202で行う処理を、強調画像表示部1204では例えばステップS203で行う処理を行い、さらに強調画像表示部1204の内部において、注射針影響領域設定部12041では例えばステップS2032で行う処理を、位置ずれ量算出部9042では例えばステップS2033で行う処理を、血管位置合成部9043では例えばステップS2034で行う処理を、注射針影響領域範囲修正部12042では例えばステップS2035で行う処理を、画像強調部9044では例えばステップS2031とステップS2036で行う処理を行うことで、フレーム毎に、撮像した近赤外光画像901に合わせて最適な注射針影響領域601を設定することができ、血管位置情報をより有効に用いることができるようになる。
次に、本発明の実施例2における画像表示装置1200が行う処理について説明する。
図10は、本発明の実施例2における画像表示装置1200が行う処理を示すフローチャートである。図10のフローチャートはステップS201ないしステップS203からなり、ステップS201は血管位置抽出工程の一例を、ステップS202は注射針検出工程の一例を、ステップS2031からステップS2036からなるステップS203は強調画像表示工程の一例を、それぞれ示し、生体を連続して撮像した近赤外光画像901に対し、各フレームでこれらステップの処理を行う。
実施例1の処理と異なる点は、注射針影響領域範囲修正工程の一例が新しく追加され、注射針影響領域設定工程の一例において用いられる注射針影響領域の範囲を、フレーム毎に、第1の血管位置情報701の注射針影響領域601に含まれる画素領域および第2の血管位置情報702の注射針影響領域601に対応する画素領域705の輝度値に基づき、撮像した近赤外光画像901に対し最適となるように修正し、次フレームにおける注射針影響領域設定工程の一例では、修正した注射針影響領域601の範囲を用いて注射針影響領域601を設定するようにした点が異なる。
このように、注射針影響領域601の範囲をフレーム毎に修正し、次フレームへフィードバックすることにより、必要最小限の範囲の注射針影響領域601を設定することとなり、血管位置情報をより有効に用いることができるようになる。
具体的には、位置ずれ量算出工程の一例において位置ずれ量の算出に用いる血管位置情報が増えるので精度の向上が図れる。また、血管位置情報合成工程の一例においては第1の血管位置情報701をより多く使用することとなり、さらに多くの最新の血管位置情報を表示することが可能となる。
以下、実施例1と同様に、近赤外光を生体に対し上部から照射し反射光を撮像した近赤外光画像901に対し、本発明の実施例2の画像表示装置1200が行う画像処理をフローチャートに従って詳細に説明する。
まず、図1のステップS101と同様に、血管位置抽出部902は近赤外光画像901に対して血管位置を抽出する(ステップS201)。そして、血管位置抽出部902によって抽出された血管位置情報は、近赤外光画像901と例えば同サイズの画像メモリ9045を予め用意しておき、血管位置に対応する画素値を1、その他の画素値を0とすることで画像データとして記憶される。なお、血管位置を抽出する処理は、図1のステップS101と同様であるため、ここでは説明を省略する。
次に、図1のステップS102と同様に、注射針検出部903は近赤外光画像901内の注射針位置を検出する(ステップS202)。そして、近赤外光画像901と同サイズの画像メモリ9045が予め用意されており、注射針検出部903によって検出された注射針位置情報は、注射針位置に対応する画素値を1、その他の画素値を0とすることで画像データとして記憶される。なお、注射針位置を検出する処理は、図1のステップS102と同様であるため、ここでは説明を省略する。
そして、次に、図1のステップS103と同様に、注射針検出部903によって注射針301が検出されなかった場合には(ステップS2031)、強調画像表示部1204は、ステップS201にて抽出された血管位置情報を元に近赤外光画像901の血管画素を強調した強調画像905を表示する(ステップS2036)。
一方、注射針検出部903によって注射針301が検出された場合には(ステップS2031)、強調画像表示部1204は、注射針位置情報に基づき近赤外光画像901において注射針301により影響を受けている領域を決定し(ステップS2032)、決定した領域に基づき、位置ずれ量を算出した後に(ステップS2033)、ステップS201で抽出された第1の血管位置情報701と、前フレームにおいて近赤外光画像901の強調に用いた第2の血管位置情報702を合成することで注射針301による影響を受けていない現フレームにおける血管位置情報801を生成し(ステップS2034)、生成した血管位置情報と注射針位置情報を元に、近赤外光画像901の血管画素と注射針画素を強調した強調画像905を表示する(ステップS2036)。そして、強調画像表示部1204は、これらの一連の処理に加え、さらに、注射針影響領域601の範囲を修正し(ステップS2035)、次フレームへフィードバックする処理も行う(ステップS203)。
以下、ステップS203における強調画像表示処理をより具体的に説明する。まず、図1のステップS1031と同様に撮像した近赤外光画像901において、注射針検出部903は、注射針301が存在するかどうかの判定を行う(ステップS2031)。そして注射針301が無い場合、ステップS2036に進む。
一方、注射針301が存在する場合には、注射針影響領域設定部12041は、近赤外光画像901内において、注射針301によって影響を受けている画素を含む領域を注射針影響領域601として設定する(ステップS2032)。このステップS2032においては、図1のステップS1032で用いた所定の範囲を初期値とし、それ以降のフレームでは後段のステップS2035にて修正された範囲を用いて、ステップS1032と同様にして注射針影響領域601を設定する。
そして、図1のステップS1033と同様に、位置ずれ量算出部9042は、血管位置合成部9043が第1の血管位置情報701と第2の血管位置情報702とを合成する際に用いるフレーム間の位置ずれ量を算出する(ステップS2033)。
そして、図1のステップS1034と同様に、位置ずれ量算出部9042によって求めた位置ずれ量に基づき、血管位置合成部9043が第1の血管位置情報701と第2の血管位置情報702を合成し、注射針301によって影響を受けていない現フレームにおける血管位置情報801を生成する(ステップS2034)。
そして次に、注射針影響領域601における第1の血管位置情報701と第2の血管位置情報702とに基づき、注射針影響領域範囲修正部12042は、ステップS2032で用いる注射針影響領域601の範囲を修正する処理を行う(ステップS2035)。
図8に示すように、図8(a)の注射針影響領域601において、第1の血管位置情報701では注射針301の画素と注射針301によりできる影602の画素が血管画素として誤抽出されているが、図8(b)において第2の血管位置情報702は正しい血管位置のみで構成されているため、血管201の誤抽出画素は存在していない。
従って、第1の血管位置情報701における注射針影響領域601およびと第2の血管位置情報702における注射針影響領域601に対応する画素領域705において、差異がある画素を注射針301により影響を受けている影響画素1103(図11参照)として特定することができる。そして、特定した影響画素1103を含むように注射針影響領域範囲修正部12042が注射針影響領域601の範囲を修正することで、必要最小限の範囲を設定することが可能となる。
具体的には、注射針影響領域範囲修正部12042は、第1の血管位置情報701の注射針影響領域601の画素に対して、ステップS2033で算出された位置ずれ量を元に、対応する第2の血管位置情報702の注射針影響領域601に対応する画素領域705の画素を見つけ、各対応する画素位置において画素値の差の絶対値を求め、求めた絶対値が所定の閾値よりも大きくなっている画素を注射針301により影響を受けている影響画素1103として特定する。
なお、本実施例の説明では血管位置情報において、血管画素を1、その他の画素を0としているため、画素値の差の絶対値が1となる画素が影響画素1103となる。また、注射針301が存在する画素も影響を与えるので、注射針301を確実に影響画素1103とするため注射針位置情報に示す注射針位置の画素も影響画素1103とする。
そして、図11に示すように、注射針影響領域範囲修正部12042は、注射針画素位置の中心画素から、注射針301の先端方向、根元方向、側面左方向、側面右方向への画素数で与えられている注射針影響領域601の範囲を、影響画素1103が含まれる必要最小限の範囲となるように修正を行う。図11においては、修正前の注射針影響領域1101から修正後の注射針影響領域1102へ領域を変更している。図11は本発明の実施例2における注射針影響領域601の範囲を修正する場合の注射針影響領域601の範囲を示す図である。
より具体的には、注射針影響領域601における最も端に位置する影響画素1103、つまり、横軸をX軸、縦軸をY軸とし、それぞれ右方向、下方向ほど座標値が大きくなるものとした場合、注射針影響領域範囲修正部12042は、最もX座標が小さい影響画素1103を左端位置、最もX座標が大きい影響画素1103を右端位置、最もY座標が小さい影響画素1103を上端位置、最もY座標が大きい影響画素1103を下端位置、とする影響画素1103を探索し、探索した端位置の影響画素位置からさらに所定のオフセット値分、XY軸方向外側に位置する画素も含まれるように、注射針影響領域601の範囲を修正する。従って、図11に示す修正後の注射針影響領域1102では、最も端に位置する影響画素1103からオフセット分、外側に広い範囲の注射針影響領域601となっている。
なお、ここで用いるオフセット値には、フレーム間における注射針301の変化量を設定しておく。これにより、次フレームにおいても確実に、注射針影響領域601の範囲内に注射針301により影響を受ける画素を収めることができ、近赤外光画像901内の注射針位置に応じて、注射針影響領域601の範囲を縮小または拡大することが可能となる。
また、さらに注射針影響領域601の範囲の修正処理において、範囲の修正処理を、注射針301の先端方向、側面左方向、側面右方向でのみ行い、注射針301の根元方向では行わないようにしてもよい。これは、注射針301の根元方向には確実に注射器が存在するため、初期値から変更しないようにすることで、演算量を減らすことができる。
以上のようにして求めた注射針影響領域601の範囲は、次フレームにおける注射針影響領域601を設定する際に用いられる。
そして、最後に、図1のステップS1035と同様に、画像強調部9044は、血管位置情報と注射針位置情報とを元に撮像した近赤外光画像901を強調した強調画像905を作成し出力することで表示を行う(ステップS2036)。
以上のように、本発明の実施例2における画像表示装置1200によれば、第1の血管位置情報と第2の血管位置情報とのうち、注射針影響領域601に含まれる血管位置情報に基づき、注射針により影響を受けている画素を影響画素として検出し、検出された影響画素が含まれるように、注射針影響領域の範囲を修正する注射針影響領域範囲修正部12042をさらに有し、注射針影響領域設定部12041が、次フレームにおいて、注射針影響領域範囲修正部12042によって修正された注射針影響領域の範囲を用いて注射針影響領域を設定する構成とすることで、フレーム毎に、撮像した近赤外光画像901に合わせて最適な注射針影響領域601を設定することができ、血管位置情報をより有効に用いることができるようになる。