JP2008011714A - コハク酸の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】イソシトレートリアーゼ及びマレートシンターゼの活性が増強した細菌または該細菌の処理物を、炭酸イオン、重炭酸イオンまたは二酸化炭素ガスを含有する反応液中で有機原料に作用させてコハク酸を生成させ、該コハク酸を回収することによってコハク酸を製造する。
【選択図】なし
Description
ように改変された細菌である、(1)の方法。
本発明の製造方法に用いることのできる細菌は、イソシトレートリアーゼ及びマレートシンターゼの活性が増強した細菌である。以下、イソシトレートリアーゼ及びマレートシンターゼをそれぞれICL、MSと表記することがある。
「ICL及びMSの活性が増強した」とは、野生株などの非改変株と比較してこれらの酵素の活性が増強した場合や、通常の培養条件、例えば、糖類を主たる炭素源とする培養条件で培養したときと比較してこれらの酵素の活性が増強した場合を含む。ICL及びMSの活性は、非改変株または通常の培養条件と比較して、単位菌体重量当たり1.5倍以上増強されていることが好ましく、2倍以上増強されていることがより好ましい。
ICLはイソクエン酸をコハク酸とグリオキシル酸に変換する反応を触媒する酵素であり、ICL活性は後述するような Reinscheidらの方法(J.Bacteriology 176 3474,1994)によって、測定することができる。
MSはグリオキシル酸とアセチルCoAからリンゴ酸を生成する反応を触媒する酵素であり、MS活性はDixonらの方法(Biochemical J. 72 3P,1959)によって測定することができる。
一方、ICL及びMSは、酢酸や脂肪酸などを培地に添加することで行うことで誘導され、グルコースなどの糖類を主炭素源とした場合は転写レベルでそれらの発現が抑制されることが報告されている(Gerstmeir R. et al. Journal of Biotechnology 104 (2003) 99-1
22)。従って、これらの酵素の活性化は、酢酸若しくは脂肪酸を培地中に添加して菌体を培養することによっても行うことができる。この場合、酢酸若しくは脂肪酸を1mM〜1Mの濃度で培地に添加することが好ましい。
バチルス属細菌としては、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)等が挙げられ、リゾビウム属細菌としては、リゾビウム・エトリ(Rhizobium etli)などが挙げられる。
コリネ型細菌としては、コリネバクテリウム属に属する微生物、ブレビバクテリウム属に属する微生物又はアースロバクター属に属する微生物が挙げられ、このうち好ましくは、コリネバクテリウム属又はブレビバクテリウム属に属するものが挙げられ、更に好ましくは、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)、ブレビバクテリウム・アンモニアゲネス(Brevibacterium ammoniagenes)又はブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)に属する微生物が挙げられる。
ブレビバクテリウム・フラバムMJ-233は、1975年4月28日に通商産業省工業技術院微生物工業技術研究所(現独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター)(〒305-8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に受託番号FERM P-3068として寄託され、1981年5月1日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、FERM BP-1497の受託番号で寄託されている。
るDNA、または上記塩基配列と90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上の相同性を有するDNAのようなホモログであってもよい。ここで、ストリンジェントな条件としては、通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、1×SSC,0.1%SDS、好ましくは、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度でハイブリダイズする条件が挙げられる。
また、ICL遺伝子は、配列番号10のアミノ酸配列と90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上の相同性を有し、ICL活性を有するタンパク質をコードするDNAであってもよく、MS遺伝子は、配列番号14のアミノ酸配列と90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上の相同性を有し、MS活性を有するタンパク質をコードするDNAであってもよい。
ICL遺伝子およびMS遺伝子を組み込むことができるプラスミドベクターとしては、宿主細菌内での複製増殖機能を司る遺伝子を少なくとも含むものであれば特に制限されない。コリネ型細菌に遺伝子を導入するために使用できるプラスミドの具体例としては、特開平3−210184号公報に記載のプラスミドpCRY30;特開平2−72876号公報及び米国特許5,185,262号明細書公報に記載のプラスミドpCRY21、pCRY2KE、pCRY2KX、pCRY31、pCRY3KE及びpCRY3KX;特開平1−191686号公報に記載のプラスミドpCRY2およびpCRY3;特開昭58−67679号公報に記載のpAM330;特開昭58−77895号公報に記載のpHM1519;特開昭58−192900号公報に記載のpAJ655、pAJ611及びpAJ1844;特開昭57−134500号公報に記載のpCG1;特開昭58−35197号公報に記載のpCG2;特開昭57−183799号公報に記載のpCG4およびpCG11等を挙げることができる。
それらの中でもコリネ型細菌の宿主−ベクター系で用いられるプラスミドベクターとしては、コリネ型細菌内でプラスミドの複製増殖機能を司る遺伝子とコリネ型細菌内でプラスミドの安定化機能を司る遺伝子とを有するものが好ましく、例えば、プラスミドpCRY30、pCRY21、pCRY2KE、pCRY2KX、pCRY31、pCRY3KEおよびpCRY3KX等が好適に使用される。
レビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)MJ-233株(FERM BP-1497)を形質転換することにより、ICL遺伝子およびMS遺伝子の発現が増加したコリネ型細菌が得られる。
形質転換は、例えば、電気パルス法(Res. Microbiol., Vol.144, p.181-185, 1993)等によって行うことができる。
また、ICLおよびMSの活性の増強は、公知の相同組換え法によって染色体上でICL遺伝子およびMS遺伝子を多コピー化させることによって行うこともできる。
また、ICLおよびMSの活性の増強は、宿主染色体上でICL遺伝子およびMS遺伝子のプロモーターを置換または改変することによっても行うことができる。プロモーター置換の方法としては、例えば、sacB遺伝子を用いる方法(Schafer,A.et al.Gene 145 (1994)69-73)が挙げられる。
このように、プロモーターを適宜選択することによって、ICL遺伝子およびMS遺伝子の発現量の調節が可能である。
以上、コリネ型細菌を用いる例を述べたが、他の細菌を用いる場合も同様の方法によって、ICLおよびMSの活性増強を達成することができる。
ずれの操作を先に行ってもよい。
また、コリネバクテリウム・グルタミカム以外の細菌、または他の細菌又は動植物由来のPC遺伝子を使用することもできる。特に、以下に示す細菌または動植物由来のPC遺伝子は、その配列が既知(以下に文献を示す)であり、上記と同様にしてハイブリダイゼーションにより、あるいはPCR法によりそのORF部分を増幅することによって、取得することができる。
ヒト [Biochem.Biophys.Res.Comm., 202, 1009-1014, (1994)]
マウス[Proc.Natl.Acad.Sci.USA., 90, 1766-1779, (1993)]
ラット[GENE, 165, 331-332, (1995)]
酵母;サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)
[Mol.Gen.Genet., 229, 307-315, (1991)]
シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)
[DDBJ Accession No.; D78170]
バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)
[GENE, 191, 47-50, (1997)]
リゾビウム・エトリ(Rhizobium etli)
[J.Bacteriol., 178, 5960-5970, (1996)]
いが、コハク酸の生成を阻害しない範囲で可能な限り高くするのが有利であり、通常、5〜30%(W/V)、好ましくは10〜20%(W/V)の範囲内で反応が行われる。また、反応の進行に伴う上記有機原料の減少にあわせ、有機原料の追加添加を行っても良い。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により制限されるものではない。
(A)ストレプトマイシン/スペクチノマイシン耐性遺伝子の導入
pTZ4(コリネ型細菌用ベクター:特開2005-95169)と共存可能なコリネ型細菌用ベクターは、pTZ4と和合性を示す複製領域を持つプラスミドベクターpC2(Plasmid 36, 62(1996))のカナマイシン耐性遺伝子をストレプトマイシン/スペクチノマイシン耐性遺伝子に置き換えることによって構築した。
ストレプトマイシン/スペクチノマイシン耐性遺伝子(大腸菌Tn7)の取得は、同遺伝子を有する植物形質転換用バイナリーベクターpLAN421(Plant Cell Reports 10 286 (1991))を鋳型としたPCRによって行った。
反応液組成:鋳型DNA10ng、PfxDNAポリメラーゼ(インビトロジェン社製) 0.2μL、1倍濃度添付バッファー、0.3μM各々プライマー、(配列番号1および配列番号2で示した合成DNA)、1mM MgSO4、0.25μMdNTPsを混合し、全量を20μLとした。
反応温度条件:DNAサーマルサイクラー PTC-200(MJResearch社製)を用い、94℃で20秒、60℃で20秒、72℃で60秒からなるサイクルを20回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は1分20秒、最終サイクルの72℃での保温は2分とした。
増幅産物の確認は、0.8%アガロース(SeaKem GTG agarose:FMCBioProducts製)ゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い、937bpの断片を検出した。ゲルからの目的DNA断片の回収は、QIAQuick Gel Extraction Kit(QIAGEN製)を用いて行い、回収後同DNA断片を、T4 ポリヌクレオチドキナーゼ(T4 Polynucleotide Kinase:宝バイオ製)により5'末端をリン酸化した。
pC2を制限酵素HindIIIおよびNruIで切断後、クレノウフラグメント(Klenow Fragment:宝バイオ製)により両末端を平滑化したDNA断片の末端を、上記で調製したストレプトマイシン/スペクチノマイシン耐性遺伝子と混合し、ライゲーションキットver.2(宝バイオ製)を用いて結合した。得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換し、50μg/mLスペクチノマイシンをLB寒天培地に塗抹した。得られたコロニーから、液体培養後、定法によりプラスミドDNAを調製し、配列番号1
および配列番号2の合成DNA をプライマーとした上記PCRによって解析した結果、ストレプトマイシン/スペクチノマイシン耐性遺伝子が挿入されていることが確認され、これをpC3と命名した。
次に、pC3を制限酵素BamHIおよびPvuIIで切断して調製したDNA断片をクレノウフラグメントにて末端を平滑化し、これにpBglIIリンカー(宝バイオ製:CAGATCTG)を混合し、ライゲーションキットver.2(宝バイオ製)を用いて連結後、得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換し、50μg/mLスペクチノマイシンを含むLB寒天培地に塗抹した。得られたコロニーから、液体培養後、定法によりプラスミドDNAを調製し、制限酵素BglIIにて切断されるプラスミドを選抜し、これをpC3.1と命名した。
大腸菌プラスミドpT7Blue(Novagen社)を鋳型としてLacZマルチクローニングサイトを含むα−ペプチド遺伝子を配列番号3および配列番号4で示す合成DNAをプライマーとしたPCRにより調製した。
反応液組成:鋳型DNA10ng、PfxDNAポリメラーゼ(インビトロジェン社製)
0.2μL、1倍濃度添付バッファー、0.3μM各々プライマー、1mM MgSO4、0.25μMdNTPsを混合し、全量を20μLとした。
反応温度条件:DNAサーマルサイクラー PTC-200(MJResearch社製)を用い、94℃で20秒、60℃で20秒、72℃で30秒からなるサイクルを20回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は1分20秒、最終サイクルの72℃での保温は2分とした。
増幅産物の確認は、1.0%アガロース(SeaKem GTG agarose:FMCBioProducts製)ゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い、5777bpの断片を検出した。ゲルからの目的DNA断片の回収は、QIAQuick Gel Extraction Kit(QIAGEN製)を用いて行い、回収後同DNA断片を、T4 ポリヌクレオチドキナーゼ(T4 Polynucleotide Kinase:宝バイオ製)により5'末端をリン酸化した。
pC3.1を制限酵素PstIおよびHpaIで切断後、クレノウフラグメント(Klenow Fragment:宝バイオ製)により末端を平滑化したDNA断片を、上記で調製したα−ペプチドの遺伝子断片と混合し、ライゲーションキットver.2(宝バイオ製)を用いて結合した。得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換し、50μg/mLX-Galおよび50μg/mLスペクチノマイシンを含むLB寒天培地に塗抹した。得られたコロニーの中から青色を呈するもの選抜し、液体培養後、定法によりプラスミドDNAを調製した。このプラスミドDNAは、挿入したLacZマルチクローニングサイトに由来するEcoRVの切断部位を有することが確認され、これをpC3.14と命名した(図1に構築手順を示す)。
(A)ブレビバクテリウム・フラバムMJ233株ゲノムDNAの抽出
A培地[尿素 2g、(NH4)2SO4 7g、KH2PO40.5g、K2HPO4 0.5g、MgSO4・7H2O 0.5g、FeSO4・7H2O 6mg、MnSO4・4−5H2O6mg、ビオチン 200μg、チアミン 100μg、イーストエキストラクト 1g、カザミノ酸 1g、グルコース 20g、蒸留水1Lに溶解]10mLに、ブレビバクテリウム・フラバムMJ−233株を対数増殖期後期まで培養し、得られた菌体を10mg/mLの濃度にリゾチームを含む10mM NaCl/20mMトリス緩衝液(pH8.0)/1mM EDTA・2Na溶液0.15mLに懸濁した。
次に、上記懸濁液にプロテナーゼKを、最終濃度が100μg/mLになるように添加し、37℃で1時間保温した。さらにドデシル硫酸ナトリウムを最終濃度が0.5%になるように添加し、50℃で6時間保温して溶菌した。この溶菌液に、等量のフェノール/クロロフォルム溶液を添加し、室温で10分間ゆるやかに振盪した後、全量を遠心分離(
5,000×g、20分間、10〜12℃)し、上清画分を分取し、酢酸ナトリウムを0.3Mとなるように添加した後、2倍量のエタノールを加え混合した。遠心分離(15,000×g、2分)により回収した沈殿物を70%エタノールで洗浄した後、風乾した。得られたDNAに10mMトリス緩衝液(pH7.5)−1mM EDTA・2Na溶液5mLを加え、4℃で一晩静置し、以後のPCRの鋳型DNAに使用した。
フルクトース−1,6−二リン酸アルドラーゼ遺伝子のプロモーター断片の取得は実施例2の(A)で調製したDNAを鋳型とし、全ゲノム配列が報告されているコリネバクテリウム・グルタミカム ATCC13032株の該遺伝子の配列(GenBank Database Accession No.AP005276)を基に設計した合成DNA(配列番号5および配列番号6)を用いたPCRによって行った。
反応液組成:鋳型DNA1μL、PfxDNAポリメラーゼ(インビトロジェン社製)0.5μL、1倍濃度添付バッファー、0.4μM各々プライマー、1mM MgSO4、0.2μMdNTPsを混合し、全量を50μLとした。反応温度条件:DNAサーマルサイクラー PTC-200(MJResearch社製)を用い、94℃で15秒、60℃で20秒、72℃で30秒からなるサイクルを35回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は1分、最終サイクルの72℃での保温は3分とした。
増幅産物の確認は、1.0%アガロース(SeaKem GTG agarose:FMCBioProducts製)ゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い、約0.45kbの断片を検出した。ゲルからの目的DNA断片の回収は、QIAQuick Gel Extraction Kit(QIAGEN製)を用いて行った。
イソシトレートリアーゼ遺伝子断片の取得は実施例2の(A)で調製したDNAを鋳型とし、全ゲノム配列が報告されているコリネバクテリウム・グルタミカム ATCC13032株の該遺伝子の配列(GenBank Database Accession No.AP005276)を基に設計した合成DNA(配列番号7および配列番号8)を用いたPCRによって行った。
反応液組成:鋳型DNA1μL、PfxDNAポリメラーゼ(インビトロジェン社製)0.5μL、1倍濃度添付バッファー、0.4μM各々プライマー、1mM MgSO4、0.2μMdNTPsを混合し、全量を50μLとした。反応温度条件:DNAサーマルサイクラー PTC-200(MJResearch社製)を用い、94℃で15秒、60℃で20秒、72℃で1分30秒からなるサイクルを35回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は1分、最終サイクルの72℃での保温は3分とした。
増幅産物の確認は、0.75%アガロース(SeaKem GTG agarose:FMCBioProducts製)ゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い、約1.3kbの断片を検出した。ゲルからの目的DNA断片の回収は、QIAQuick Gel Extraction Kit(QIAGEN製)を用いて行った。
上記(B)および(C)でそれぞれ調製したDNA断片を混合した試料を鋳型とし、配列番号5および配列番号8に記載のDNAプライマーを用いたクロスオーバーPCRによって両断片を結合した。
反応液組成:鋳型DNA1μL、PfxDNAポリメラーゼ(インビトロジェン社製)0.5μL、1倍濃度添付バッファー、0.4μM各々プライマー、1mM MgSO4、0.2μMdNTPsを混合し、全量を50μLとした。反応温度条件:DNAサーマルサイクラー PTC-200(MJResearch社製)を用い、94℃で15秒、60℃で20秒、72℃で2分からなるサイクルを25回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は1分、最終サイクルの72℃での保温は3分とした。
増幅産物の確認は、0.75%アガロース(SeaKem GTG agarose:FMCBioProducts製)ゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い、約1.8kbの断片を検出した。ゲルからの目的DNA断片の回収は、QIAQuick Gel Extraction Kit(QIAGEN製)を用いて行った。
このようにして調製したDNA断片をT4 ポリヌクレオチドキナーゼ(T4 Polynucleotide Kinase:宝バイオ製)により5'末端をリン酸化した後、BamHIリンカー(宝バイオ製)をライゲーションキットver.2(宝バイオ製)を用いて結合した。次いで、制限酵素BamHIで処理し、BamHI切断末端を持つフルクトース−1,6−二リン酸アルドラーゼ遺伝子のプロモーターおよびイソシトレートリアーゼ遺伝子からなるキメラ遺伝子断片を調製した。
pMJPC1(特開2005-95169)を制限酵素KpnIで切断後、Klenow Fragment(宝バイオ製)で末端を平滑化した後、pBamHIリンカー(宝バイオ製:CGGATCCG)をライゲーションキットver.2(宝バイオ製)を用いて連結した。次いで、これをBamHIで処理した後、Calf Intestine Alkaline Phosphatase(宝バイオ製)で末端を脱リン酸化処理した後、0.75%アガロース(SeaKem GTG agarose:FMCBioProducts製)ゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い、約6.4kbの断片をゲルからQIAQuick Gel Extraction Kit(QIAGEN製)を用いて回収した。
このようにして調製したベクター断片と、上記で調製したBamHI切断末端を持つフルクトース−1,6−二リン酸アルドラーゼ遺伝子のプロモーターおよびイソシトレートリアーゼ遺伝子からなるキメラ遺伝子をライゲーションキットver.2(宝バイオ製)を用いて結合した。
得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換し、50μg/mLカナマイシンを含むLB寒天培地に塗抹した。得られたコロニーを液体培養後、定法によりプラスミドDNAを調製した。次いで、このプラスミドDNAを制限酵素BamHI処理した結果、約1.8kbのDNA断片を生じるクローンを選抜し、これをpICL2.0と命名した(図2に構築手順を示す)。
pICL2.0の挿入断片の塩基配列は、アプライドバイオシステム社製塩基配列解読装置(モデル377XL)およびビッグダイターミネーターサイクルシークエンスキットver3を用いて決定した。その結果得られたDNA塩基配列および推測されるアミノ酸配列をそれぞれ配列番号9、10に記載する。
(A)マレートシンターゼ遺伝子断片の調製
マレートシンターゼ遺伝子断片の取得は実施例2の(A)で調製したDNAを鋳型とし、全ゲノム配列が報告されているコリネバクテリウム・グルタミカム ATCC13032株の該遺伝子の配列(GenBank Database Accession No.AP005276)を基に設計した合成DNA(配列番号11および配列番号12)を用いたPCRによって行った。
反応液組成:鋳型DNA1μL、PfxDNAポリメラーゼ(インビトロジェン社製)0.5μL、1倍濃度添付バッファー、0.4μM各々プライマー、1mM MgSO4、0.2μMdNTPsを混合し、全量を50μLとした。反応温度条件:DNAサーマルサイクラー PTC-200(MJResearch社製)を用い、94℃で15秒、60℃で20秒、72℃で2分30秒からなるサイクルを35回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は1分、最終サイクルの72℃での保温は5分とした。
増幅産物の確認は、0.75%アガロース(SeaKem GTG agarose:FMCBioProducts製)ゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い、約2.3kbの断片を検出した。ゲルからの目的DNA断片の回収は、QIAQuick Gel Extraction Kit(QIAGEN製)を用いて行った。
実施例2の(B)および上記(A)でそれぞれ調製したDNA断片を混合した試料を鋳型とし、配列番号5および配列番号12に記載のDNAプライマーを用いたクロスオーバーPCRによって両断片を結合した。
反応液組成:鋳型DNA1μL、PfxDNAポリメラーゼ(インビトロジェン社製)0.5μL、1倍濃度添付バッファー、0.4μM各々プライマー、1mM MgSO4、0.2μMdNTPsを混合し、全量を50μLとした。反応温度条件:DNAサーマルサイクラー PTC-200(MJResearch社製)を用い、94℃で15秒、60℃で20秒、72℃で3分からなるサイクルを25回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は1分、最終サイクルの72℃での保温は5分とした。
増幅産物の確認は、0.75%アガロース(SeaKem GTG agarose:FMCBioProducts製)ゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い、約2.7kbの断片を検出した。ゲルからの目的DNA断片の回収は、QIAQuick Gel Extraction Kit(QIAGEN製)を用いて行った。
このようにして調製したフルクトース−1,6−二リン酸アルドラーゼ遺伝子のプロモーターおよびマレートシンターゼ遺伝子からなるキメラ遺伝子断片をT4 ポリヌクレオチドキナーゼ(T4 Polynucleotide Kinase:宝バイオ製)により5'末端をリン酸化し、これを実施例1で構築したpC3.14を制限酵素EcoRVで処理して調製したDNA断片とライゲーションキットver.2(宝バイオ製)を用いて結合した。
得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換し、50μg/mLX-Galおよび50μg/mLスペクチノマイシンを含むLB寒天培地に塗抹した。得られたコロニーの中から青色を呈するもの選抜し、これをpMS2.0と命名した(図3に構築手順を示す)。
pMS2.0の挿入断片の塩基配列は、アプライドバイオシステム社製塩基配列解読装置(モデル377XL)およびビッグダイターミネーターサイクルシークエンスキットver3を用いて決定した。その結果得られたDNA塩基配列および推測されるアミノ酸配列をそれぞれ配列番号13、14に記載する。
(A)pICL2.0およびpMS2.0の導入
ブレビバクテリウム・フラバムMJ233/ΔLDH株(LDH遺伝子が破壊された株:特開2005−95169)の形質転換に用いるプラスミドDNAはpICL2.0およびpMS2.0を用いて形質転換した大腸菌MJ110株から調製した。
ブレビバクテリウム・フラバムMJ233/ΔLDH株の形質転換は電気パルス法(Res.Microbiol.Vol. 144, p. 181-185, 1993)によって行い、得られた形質転換体を25μg/mLカナマイシンおよび10μg/mLストレプトマイシンを含むLBG寒天培地[トリプトン10g、イーストエキストラクト5g、NaCl5g、グルコース20g、および寒天15gを蒸留水1Lに溶解]に塗抹した。この培地上に生育した株をブレビバクテリウム・フラバムMJ233/ICL/MS/ΔLDHと命名した。
上記(B)で得られた形質転換株をグルコース2%、カナマイシン25mg/L及びストレプトマイシン10mg/Lを含むA培地100mlで終夜培養を行った。得られた培養液10mlを集菌後、5mMのMgCl2を含む50mM Hepes/NaOH緩衝液(pH7.5)10mlで2回洗浄し、4.5Mのグルセロール及び5mMのMgCl2を含む50mM Hepes/NaOH緩衝液(pH7.5)2mlに再度懸濁させた。懸濁液をバイオラプター(コスモバイオ製)で破砕し、10,000g、15分間の遠心分離を行なった後に上清を分離した。得られた上清については更に40,000rpm、
60分の超遠心分離を行い、超遠心後の上清を用いてイソシトレートリアーゼ活性を測定した。
酵素活性の測定は50mM MOPS-NaOH (pH7.3)、5mM DTT、 15mM MgCl2 、1mM EDTA、 5mM isocitrate、 0.2mM NADH、18U lactate dehydrogenase (pig heart isoenzyme I)および上記酵素抽出液を含む反応液中で25℃で反応させることにより行った。1Uは、1分間に1μモルのNADHの減少を触媒する酵素量とした。
上記測定法によるブレビバクテリウム・フラバムMJ233/ICL/MS/ΔLDHのICL比活性は0.709U/mg-蛋白質であった。なお親株であるブレビバクテリウム・フラバムMJ233/ΔLDH株をグルコース2%を含むA培地を用いて同様に培養した菌体では、ICL活性は0.0445U/mg-蛋白質であり、増強株では約16倍にICL活性が増加していることが確認された。
100mLの種培養培地(尿素:4g、硫酸アンモニウム:14g、リン酸1カリウム:0.5g、リン酸2カリウム0.5g、硫酸マグネシウム・7水和物:0.5g、硫酸第一鉄・7水和物:20mg、硫酸マンガン・水和物:20mg、D−ビオチン:200μg、塩酸チアミン:200μg、酵母エキス:1g、カザミノ酸:1g、及び蒸留水:1000mLの培地100mL)を500mLの三角フラスコにいれ、120℃、20分加熱滅菌した。これを室温まで冷やし、あらかじめ滅菌した50%グルコース水溶液を4mL、無菌濾過した5%カナマイシン水溶液を50μL、2%ストレプトマイシン水溶液を50μL添加し、実施例4(A)で作製したブレビバクテリウム・フラバムMJ233/ICL/MS/ΔLDH株を接種して24時間30℃にて種培養した。但し、対象株ブレビバクテリウム・フラバムMJ233/ΔLDH株を培養する場合は、ストレプトマイシンおよびカナマイシンを添加しなかった。
得られた全培養液を10000g、5分の遠心分離により集菌し、菌体懸濁培地(硫酸マグネシウム・7水和物:1g、硫酸第一鉄・7水和物:40mg、硫酸マンガン・水和物:40mg、D−ビオチン:400μg、塩酸チアミン:400μg、リン酸一アンモニウム:0.8g、リン酸二アンモニウム:0.8g、塩化カリウム:0.3g、及び蒸留水:1000mL)にOD660の吸光度が80になるように懸濁した。4ml反応器に前記の菌体懸濁液0.5mlおよび基質溶液(グルコース:200g、炭酸マグネシウム:194g、及び蒸留水:1000mL)0.5mLを加えて、20%二酸化炭素ガス、80%窒素雰囲気下、35℃で5時間又は24時間反応させた後、上述の条件で遠心分離し、上清のコハク酸濃度を分析した。
反応5時間では、培地中のグルコースは残存しており、ブレビバクテリウム・フラバムMJ233/ΔLDH株の反応液中のコハク酸濃度が22.5g/Lであったの対し、ブレビバクテリウム・フラバムMJ233/ICL/MS/ΔLDH株では25.9g/Lのコハク酸を蓄積していた。ICLおよびMSを活性化した株のコハク酸生産性が約15%向上していた。
また、反応24時間では、残存グルコース濃度は1g/L未満であり、分析したコハク酸濃度から計算されるブレビバクテリウム・フラバムMJ233/ICL/MS/ΔLDH株の対糖収率は、親株であるブレビバクテリウム・フラバムMJ233/ΔLDH株に対して7.2%増大していた。
これらの結果から、ICLおよびMSの活性化は、コハク酸の生産性および収率を向上させる顕著な効果があることが明らかになった。
Claims (8)
- イソシトレートリアーゼ及びマレートシンターゼの活性が増強した細菌または該細菌の処理物を、炭酸イオン、重炭酸イオンまたは二酸化炭素ガスを含有する反応液中で有機原料に作用させてコハク酸を生成させ、該コハク酸を回収することを特徴とするコハク酸の製造方法。
- 前記細菌が、イソシトレートリアーゼ及びマレートシンターゼの活性が増強するように改変された細菌である、請求項1に記載の方法。
- 前記細菌が、イソシトレートリアーゼをコードする遺伝子及びマレートシンターゼをコードする遺伝子を、糖類を主な炭素源とする培地において機能するプロモーターの制御下に置くことによって改変された細菌である、請求項2に記載の方法。
- 前記細菌が、さらに、ラクテートデヒドロゲナーゼ活性が、非改変株に比べて10%以下に低減化するように改変された細菌である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- 前記細菌が、コリネ型細菌、バチルス属細菌、又はリゾビウム属細菌からなる群より選ばれるいずれかの細菌である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
- 有機原料を嫌気的雰囲気下で作用させることを特徴する請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
- 有機原料が、グルコースまたはシュークロースである請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
- 請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法によりコハク酸を製造する工程、及び得られたコハク酸を重合させる工程を含む、コハク酸含有ポリマーの製造方法。
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