JP2008008769A - 被検体における桂枝茯苓丸の有効性を診断するためのマーカータンパク質 - Google Patents

被検体における桂枝茯苓丸の有効性を診断するためのマーカータンパク質 Download PDF

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Abstract

【課題】漢方医療において経験則や医師の熟練の度合によらずに、客観的で再現性の高い診断を可能にするための手段を提供することを目的とする。
【解決手段】被検体由来の試料において、質量分析法で分析したm/zが9,200(9,100〜9,300)および/または15,970(15,000〜17,000)のマーカータンパク質を検出することを含む、該被検体における桂枝茯苓丸の有効性を診断する方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、被検体における桂枝茯苓丸の有効性を診断する方法およびそのためのキットに関する。
現代医療は、基本的には、西洋において発達した科学をもとに成り立っている医学体系であり、種々の医薬品・医療技術の開発に支えられて、20世紀になって目覚しい発展を遂げてきている。西洋医学は科学の一分野として、客観性および論理性という2つの要素で問題解決を図ろうとするところに特徴があり、人を精神と身体に分けてこれらを別ものとしてとらえるとともに、体を臓器ごとに区分し、さらにそれを細分化して人の体を細かな部品の集合体と考え、突き詰めると、そこに原因があると考える傾向にある。そして、人が病気になった場合は、その体の部品である臓器や細胞がどのような障害を受けているか、その障害の原因を究明することに重点がおかれている。西洋医学における治療法は、細菌に対して抗菌薬を処方するなど、病気の原因となるものを直接攻撃したり、検査値が基準値内に収まるようにコントロールしたり、あるいは癌や腫瘍に対して外科手術を施して病気を取り除くなど、特定の標的に的を絞った治療が行われる。こうした西洋医学による治療では、患者からの訴えよりも、むしろ検査結果を重視する傾向が強く、患者が体の「つらさ」などを訴えてみても、検査等によりその原因が客観的に突き止められなければ、その問題を解決する手段を見出すことが困難な状況にある。
近年、糖尿病、高血圧、肥満などのような生活習慣病が問題になっている。これらの病気は、原因を一つに特定することができず、病気の原因となるものを直接攻撃したり、西洋医学のように特定の標的に的を絞った治療は難しい。このように、これまでの西洋医学的な考え方だけでは、適切な対応が見出せない疾病に対し、西洋医学とは違うアプローチで治療を行う漢方医学が注目されている。
漢方医学では、西洋医学とは異なり、人間の精神と身体を分けて考えたり、体を部分に分けて考えることはせずに、心を含めた体全体の病態や体質をとらえて、漢方医学独自の診断名・処方の指示を意味する「証」(ショウ)として診断する。
漢方医学独自の診断名・処方の指示を意味する「証」(ショウ)は、患者に現れる徴候パターンであり、遺伝要因と環境要因とから成り立っており、具体的には、脈、舌の状態、顔色、腹部の硬さ等、無数に存在する患者の徴候の総和として現れるものであり、西洋医療における症状のような個別的なものとは異なり、漢方医師がこれを「四診」(シシン)によって総合的に判断している。「四診」とは、視覚によって、患者の状態を判断する「望診」(ボウシン)、聴覚と嗅覚によって患者の状態を判断する「聞診」(ブンシン)、患者への質問により、患者の状態を判断する「問診」(モンシン)、手で実際に患者の体に触れて、患者の状態を判断する「切診」(セッシン)のことで、その評価基準は、あくまでも漢方医師の主観的な経験則に基づいている。
このように、漢方診断は、漢方医師の主観と経験則とに完全に依存した「証」の評価に基づいており、客観的な数値化は未だ出来ておらず、漢方処方の経験がないか、短い医師には正しい漢方薬の選択が難しかった。また医師による「証」の評価に基づいて漢方薬を処方しても、処方した漢方薬が有効な患者もいればそうでない患者もいるという問題があった。さらに、同じ疾患でも患者の状態によって処方する漢方薬が異なることも、漢方薬の選択を困難にする一因であった。
桂枝茯苓丸はお血を目標に用いられる漢方薬であるが、お血の診断においても医師間でばらつきが認められたり、診断を行うためにある程度の熟練が要求される。また、桂枝茯苓丸の適用症も月経異常などの婦人科疾患から皮膚炎まで多様であり、これらの適用症を有する患者であっても、桂枝茯苓丸の投与が有効な患者もいればそうでない患者もいるというのが現状であった。
したがって、客観的な「証」の評価法の実現および確立は、従来から漢方医療の信頼性・再現性のための最重要課題ともなっており、「証」の客観化の試みは、今日まで幾度となく繰り返されてきた。例えば、脈診においては脈波計や圧式脈診計などを使用したり、腹診においては超音波画像診断装置や振動触覚センサーなどを用いたりすることで、主観性の高い「証」を少しでも客観化しようという試みがなされたが、未だに十分な成果をあげていない。
また、熟練した漢方医師の膨大な知識・経験に基づく評価などを数値化し、データベース化することによって、漢方医療において、非熟練者に利用可能な客観的な診断指標を与えようとする提案もなされているが(特許文献1参照)、この数値化のもとになるのはあくまでも「主観」そのものであって、真の客観性はない。
特開2002−288340号公報
本発明は、漢方医療において経験則や医師の熟練の度合によらずに、客観的で再現性の高い診断を可能にするための手段を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく、桂枝茯苓丸投与による治療を行った患者の血漿中に含まれるタンパク質について、プロテインチップシステムを用いて網羅的に解析するとともに、桂枝茯苓丸の投与が有効であった患者群と無効であった患者群に分類した。その結果、桂枝茯苓丸の有効性の診断に有用なマーカータンパク質を同定することに成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)被検体由来の試料において、質量分析法で分析したm/zが9,200(9,100〜9,300)および/または15,970(15,000〜17,000)のマーカータンパク質を検出することを含む、該被検体における桂枝茯苓丸の有効性を診断する方法。
(2)桂枝茯苓丸適用性の疾患または症状を有する被検体における桂枝茯苓丸の有効性を診断する、(1)記載の方法。
(3)桂枝茯苓丸適用性の疾患または症状が関節リウマチである、(2)記載の方法。
(4)マーカータンパク質がハプトグロビンα1鎖またはその断片および/またはハプトグロビンα2鎖またはその断片である、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)マーカータンパク質の検出を質量分析法を用いて行う、(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)ハプトグロビンα1鎖またはその断片に特異的に結合する抗体および/またはハプトグロビンα2鎖またはその断片に特異的に結合する抗体を含む、被検体における桂枝茯苓丸の有効性を診断するためのキット。
(7)被検体由来の試料において、ハプトグロビンの遺伝子型または/および表現型を判別することにより、該被検体における桂枝茯苓丸の有効性を診断する方法。
本発明によれば、従来はもっぱら経験則に依存してきた漢方医療における診断に、客観性を与えることが可能となる。本発明により、経験豊富で熟練した漢方医師でなくとも、患者に対して桂枝茯苓丸を投与するか否かの選択を、容易かつ確実にすることができる。また、熟練した漢方医師にあっても、本発明を補完的に利用することにより、より正確で確実な診断が可能となる。
一実施形態において本発明は、被検体由来の試料において、質量分析法で分析したm/zが9,200(9,100〜9,300)および/または15,970(15,000〜17,000)のマーカータンパク質を検出することを含む、該被検体における桂枝茯苓丸の有効性を診断する方法に関する。
桂枝茯苓丸は、桂皮、茯苓、芍薬、牡丹皮および桃仁を構成生薬とする漢方薬である。本明細書において桂枝茯苓丸には、桂枝茯苓丸料(湯剤などの丸剤以外の剤型)およびこれらの乾燥抽出エキスをそのまま漢方エキス剤としたもの、ならびにこれをさらに散剤、顆粒剤、細粒剤、錠剤、カプセル剤等に加工したものが包含される。市販のものとしては、7.5g中に、桂皮3.0g、茯苓3.0g、芍薬3.0g、牡丹皮3.0gおよび桃仁3.0gの混合生薬の乾燥エキス1.75gを含有するツムラ医療用エキス顆粒などが挙げられる。
桂枝茯苓丸適応性の疾患または症状としては、お血およびお血に伴う症状;婦人科疾患、例えば、子宮およびその付属器の炎症、子宮内膜炎、卵巣機能不全、月経不順、月経困難、子宮筋腫、子宮周囲炎、卵管炎、不妊症、性器出血、帯下、更年期障害(頭痛、めまい、のぼせ、肩こり等)、骨盤内うっ血症候群および冷え症;運動器疾患、例えば、打撲傷、腰痛症、筋肉痛、肩こり症、むちうち症および皮下出血;循環器疾患、例えば、高血圧症、低血圧症および下肢静脈瘤;消化器疾患、例えば、痔疾患(痔核、痔出血)および慢性肝炎;皮膚疾患、例えば、湿疹、肝斑、蕁麻疹、尋常性ざ瘡、皮膚炎、うおのめ、進行性脂掌角皮症および主婦温疹;泌尿器疾患、例えば、睾丸炎、尿路結石排出後の血尿および前立腺炎;白内障および乳腺炎等が挙げられる。
「お血」とは、東洋医学における最も重要な病態認識のひとつであり「脈管中をすらすらと流通すべき血(けつ)が何らかの原因により、つかえて順調に流通しなくなった病態」(柴崎保三,漢方の臨床,16(7),1969)と定義され、血液の流通障害を内含する一つの症候群として認識されるものである。お血は、様々な疾患に深くかかわる病態であると考えられており、お血症状を治療することにより症状を軽減したり、発病を未然に防ぐことなどが期待される。なお、「お血」は以下の漢字で表記される場合もあるが、本明細書では全て「お血」と略記する。
Figure 2008008769
お血およびお血に伴う症状として、具体的には、関節リウマチ、脳血管障害、冠動脈疾患、慢性肝炎、ベーチェット病、月経障害、不妊症、更年期障害、腎硬化症、または末梢血管障害などが挙げられる。本発明は、特に関節リウマチを有する被検体における桂枝茯苓丸の有効性の診断に好適である。
関節リウマチは、関節を内張りしている滑膜の炎症である。関節は、連続する二つの骨の骨端部と骨端部を覆う関節軟骨、および両骨端部をつなぐ嚢状組織の関節包とそれを内側から内張りしている厚さ1mmにも満たない薄い滑膜で構成されているが、関節リウマチは、この滑膜の炎症(滑膜炎)であって、この炎症が慢性化して次第に全身の関節に広がっていく病気である。
現在における有力な関節リウマチの検査法および診断法は、その特有の症状と検査所見との組み合わせによって行う方法によるものであって、一般に、アメリカリウマチ学会の基準(1987年改訂版)を参考にして行われる。より具体的には、以下の7項目の内の4項目以上を満たせば関節リウマチと診断される。ただし、(1)〜(4)までは6週間以上持続することが必要である。(1)1時間以上続く朝のこわばり(主に手指)、(2)3箇所以上の関節の腫れ、(3)手の関節(手関節、中手指節関節、近位指節関節)の腫れ、(4)対称性の関節(左右同じ関節)の腫れ、(5)手のX線写真の異常所見、(6)皮下結節、(7)血液検査でリウマチ反応が陽性であること。
本発明のマーカータンパク質は、質量分析法、特にレーザーイオン化−飛行時間型質量分析法で分析したm/zが9,200(9,100〜9,300)であるか、または15,970(15,000〜17,000)である。本明細書において、m/zとは質量分析法で検出したピーク値であり、mがイオンの質量を意味し、zがイオンの電荷数を意味する。m/zの記載において、9,200または15,970がその代表値であり、かっこ内の数値は試料間でズレが生じた場合の幅を示す。本発明においては、2種のマーカータンパク質の片方のみを検出してもよいし、両方を検出してもよい。両方を検出する場合は、片方で診断した後、さらにもう片方で診断することにより、診断の確実性を増すことができる。電荷が2価または3価のタンパク質もまた、同等のマーカータンパク質となりうる。
本発明において診断の対象となる被検体は、好ましくは哺乳動物、例えば、ヒト、ゴリラ、チンパンジーおよびサルなどの霊長類、マウス、ウサギおよびモルモットなどの齧歯類、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ネコならびにイヌなどであり、より好ましくは霊長類、特にヒトである。
被検体由来の試料としては、例えば、組織、リンパ球培養上清および体液が挙げられる。体液としては、例えば、血液、血漿および血清などの血液関連体液、唾液、汗ならびに尿などが挙げられる。
被検体由来の試料においてマーカータンパク質を検出する方法は特に制限されず、当技術分野で通常用いられる方法を使用できる。具体的には、抗原抗体反応を利用する方法、プロテインチップによる解析法(蛋白質 核酸 酵素 Vol.47 No.5(2002)、蛋白質 核酸 酵素 Vol.47 No.8(2002))、質量分析法、電気泳動法(例えば2次元電気泳動法、SDSポリアクリルアミド電気泳動法)などが挙げられる。
好ましい方法として、プロテインチップと質量分析法を組み合わせた方法が挙げられる。すなわち、被検体由来の試料をプロテインチップと接触させ、プロテインチップ上に結合した試料由来のタンパク質を質量分析することにより、本発明のマーカータンパク質を検出する。
プロテインチップは、本発明のマーカータンパク質を結合できるものであれば特に制限されないが、例えば実施例でも使用したCIPHERGEN社製のプロテインチップシステムを用いることができる。
ここで質量分析法としては、電気的相互作用を利用して原子・分子のイオンを質量の違いによって分析する手法を使用できる。このような質量分析法は、イオンの生成、分離、検出の3つの工程を含む。このような質量分析法としては、特に制限されず、当技術分野で公知のものを使用できる。質量分析する際に使用できるイオン化法の様式としては、レーザーイオン化法、特にマトリックス補助レーザ脱離(MALDI)法、電子衝撃によるイオン化(EI)法、エレクトロスプレーイオン化(ESI)法、光イオン化法、2次イオン化法、高速原子衝突イオン化法、電界電離イオン化法、表面電離イオン化法、化学イオン化(CI)法、フィールドイオン化(FI)法、火花放電によるイオン化法等が挙げられる。また、分離様式としては、飛行時間型、単一または多重四重極型、単一または多重磁気セクター型、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FTICR)型、イオン捕獲型、高周波型ならびにイオン捕獲/飛行時間型等が挙げられ、飛行時間型を用いるものが好ましい。上記のようなイオン化法と分離様式、電気的記録ならびに写真記録のような検出様式とを組み合わせることにより質量分析を実施することができる。レーザーイオン化−飛行時間型質量分析法を利用するのが好ましい。
以下本発明の一実施形態として、CIPHERGEN社製のプロテインチップシステムおよび飛行時間型質量分析法を用いた解析方法を以下に示す。
(1)1〜数百μLの試料(血漿)を直径約2mmのスポットに添加する。
(2)洗浄インキュベート後、水または緩衝液で表面を洗浄し、チップ表面にアフィニティの無い物質を除去する。これにより、チップ表面に結合していないタンパク質とともに、目的タンパク質の測定を妨げる塩や界面活性剤を除去することができる。
(3)目的タンパク質の測定に必要なエネルギー吸収分子(EAM)を加えて乾燥させる。
(4)測定プロテインチップ上に残った試料を、飛行時間型質量分析計により測定する。プロテインチップにUVパルスレーザーを照射することにより、エネルギーを受けてイオン化したタンパク質は一定の電圧で加速され、真空管の対極にあるイオン検知器へ向かって飛行する。この時、イオン検知管に到達するまでの時間は軽い分子ほど早く、重い分子ほど遅いので、飛行時間を計測することによって、物質の質量数を求めることができる。
プロテインチップと被検体由来の試料とを反応させ、該チップと相互作用したタンパク質を質量分析法で分析し、m/zで9,200(9,100〜9,300)を有するピークおよび/または15,970(15,000〜17,000)を有するピークが、桂枝茯苓丸が無効であることがわかっている被検体群から得られたデータと比較して有意に大きい場合、あるいは、桂枝茯苓丸が有効であることがわかっている被検体群から得られたデータと比較して同等の場合、桂枝茯苓丸が有効な被検体であると診断することができる。例えば、データの比較には、一般的なクラス判別法を用いることができる(Yu et al. / J Zhejiang Univ SCI 2005 6B(4):227-231、CANCER RESEARCH 63, 6971-6983, October 15, 2003)。
本発明では、プロテインチップを用いることにより、桂枝茯苓丸の有効性の診断に有用なマーカータンパク質を特定することに成功した。本発明者らは、これらのマーカータンパク質を、さらに以下のように精製および同定した。以下、精製と同定の方法について説明する。
タンパク質の精製は何種類かのプロテインチップとスピンカラム、電気泳動などを組み合わせて行うことができる。
(a)分子量による分画:例えば、3K、30K、70Kのスピンカラムなどを利用して分子量による違いを利用したタンパク質の粗精製を行う。
(b)イオン交換カラムによる精製:イオン交換樹脂が充填されたスピンカラムを用いて精製を行う。サンプルをのせた後、溶出バッファーのpH段階を変えることにより、タンパク質のpI値の違いを利用してタンパク質の精製を行う。
(c)プロテインチップを利用した精製:スピンカラムを用いて精製されたサンプルを銅イオン固定化チップやイオン交換チップを使用してさらに精製する。洗浄の際にイオン交換チップではpHを変えて検討する。
(d)電気泳動:必要に応じて、さらに電気泳動による精製を行う。
上記で精製したタンパク質は、タンパク質分解酵素により消化し、消化断片を順相のプロテインチップ上で捕捉して分子量を測定する(ペプチドマッピング)。さらに、タンパク質同定用のソフトウエアに測定された断片の分子量を入力してデータベース解析を行うことによりタンパク質を同定する。
(a)ペプチドマッピング:精製されたタンパク質は、プロテインチップ上またはチューブ内でトリプシンなどのタンパク質分解酵素を用いて分解する。最終的に電気泳動により精製を行った場合には、ゲルから目的とするタンパク質のバンドを切り出し、ゲル内でタンパク質分解酵素によりタンパク質を分解する。そこからペプチド断片を抽出し、プロテインチップを用いてペプチドマッピングを行う。
(b)データ解析:トリプシン由来のピークを除き、検出したペプチド断片の質量数をタンパク質同定用ソフトウエアに入力する。タンパク質を同定するためのデータベースとしては、例えば、Mascot、MS−Tag、Peptide Search、PepFrag、SEQUESTなどが挙げられる(実験医学別冊、ポストゲノム時代の実験講座2、プロテオーム解析法、羊土社(2000))。
その結果、質量分析法で分析したm/zが9,200(9,100〜9,300)であるマーカータンパク質(以下マーカータンパク質Aと称する)は、ハプトグロビンα1鎖(以下α1鎖と称する)として同定され、m/zが15,970(15,000〜17,000)であるマーカータンパク質(以下マーカータンパク質Bと称する)は、ハプトグロビンα2鎖(以下α2鎖と称する)として同定された。ハプトグロビン(Haptoglobin)は、ヘモグロビンと特異的に結合する糖タンパク質で、肝実質細胞や細網内皮系組織で生成される。一般にハプトグロビンは、Hp1−1、Hp2−1、Hp2−2の三つの遺伝型に分類され、それらのタンパク構造は、α1鎖、α2鎖及びβ鎖から構成され、一般式(α1β)、(α1β)(α2β)、(α2β)で表されるポリマーを形成している(Clinical Chemistry, 42(10), 1589(1996))。ハプトグロビンのアミノ酸配列は、例えば、RefSeqにおいてアクセッション番号NP_005134として公開されている。
本発明において、α1鎖およびα2鎖には、バリアントおよび翻訳後修飾されたものも包含され、これらを検出する方法もまた本発明の診断方法に包含され、これらに特異的に結合する抗体を含むキットも本発明のキットに包含される。バリアントとしては、例えば、公知のハプトグロビンのアミノ酸配列において、C末端またはN末端において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたものなどが挙げられる。数個とは、例えば2〜3個である。特にC末端にアルギニンが付加されたもの、N末端にアラニンが付加されたもの、および前記双方の付加が生じたものなどが挙げられる。翻訳後修飾としては、リン酸化、アセチル化、メチル化、ミリストイル化、グリコシル化、アミド化およびユビキチン化などが挙げられる。
α1鎖およびα2鎖の断片としては、当該マーカータンパク質のうち少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%の連続したアミノ酸を有する断片が挙げられる。また、免疫原性を有する断片でもよく、具体的には、当該マーカータンパク質のうち少なくとも6アミノ酸、好ましくは6〜200アミノ酸、より好ましくは8〜50アミノ酸からなる部分ペプチドが挙げられる。
本発明のマーカータンパク質Aには、配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質、および該タンパク質と機能的に同等のタンパク質が包含される。本発明のマーカータンパク質Bには、配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質、および該タンパク質と機能的に同等のタンパク質が包含される。
配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等のタンパク質には、配列番号1のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α1鎖の生物学的活性を有するタンパク質が包含される。また、配列番号1のアミノ酸配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは97%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α1鎖の生物学的活性を有するタンパク質も包含される。数個とは、通常2〜5個、好ましくは2〜3個をいう。また、配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等のタンパク質には、配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質のバリアントおよび翻訳後修飾されたものが包含される。バリアントおよび翻訳後修飾については上記のとおりである。
マーカータンパク質Bについても同様に、配列番号2のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α2鎖の生物学的活性を有するタンパク質、ならびに配列番号2のアミノ酸配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは97%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、α2鎖の生物学的活性を有するタンパク質が包含される。また、配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等のタンパク質には、配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質のバリアントおよび翻訳後修飾されたものが包含される。バリアントおよび翻訳後修飾については上記のとおりである。
上記のように同定されたマーカータンパク質の検出は、タンパク質検出のための相互作用を利用した方法、例えば、抗原抗体反応を利用した分析法により検出することもできる。抗原抗体反応を利用した分析法としては、例えば、酵素結合免疫測定法(ELISA)、二重モノクローナル抗体サンドイッチイムノアッセイ法(米国特許第4,376,110号)、モノクローナルポリクローナル抗体サンドイッチアッセイ法、免疫蛍光法、ウェスタンブロッティング法、ドットブロッティング法、免疫沈降法などが挙げられるが、これらに限定されない。
抗原抗体反応を行うためには、本発明のマーカータンパク質またはその断片を入手し、これを免疫原として用いることにより本発明のマーカータンパク質と特異的に結合する抗体を作製する。抗体はポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよい。抗体のグロブリンタイプは、特に限定されるものではなく、IgG、IgM、IgA、IgE、IgD、IgYのいずれでもよいが、IgGおよびIgMが好ましい。モノクローナル抗体には、特に、重鎖および/または軽鎖の一部が特定の種、または特定の抗体クラスもしくはサブクラス由来であり、鎖の残りの部分が別の種、または別の抗体クラスもしくはサブクラス由来である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、ならびに、所望の生物学的活性を有する限り、Fab、F(ab’)、Fv断片等の免疫反応性の抗体断片が含まれる(米国特許第4,816,567号)。
免疫原としての、マーカータンパク質またはその断片は、公知の遺伝子組換え手法を利用して、生産することができる。また固相合成法などの技術も使用できる。断片としては、免疫原性を有する断片であればよく、具体的には、マーカータンパク質のうち少なくとも6アミノ酸、好ましくは6〜200アミノ酸、より好ましくは8〜50アミノ酸からなる部分ペプチドが挙げられる。マーカータンパク質またはその断片は、目的の塩基配列からなるDNAを適当なベクターに連結し、これをマーカータンパク質またはその断片が発現し得るように宿主中に導入し、得られた形質転換体を培養し、その培養物から採取することにより得ることができる。
例えば、ポリクローナル抗体は、マーカータンパク質またはその断片を抗原として哺乳動物を免疫感作し、該哺乳動物から血液を採取し、採取した血液から抗体を分離・精製することにより得ることができる。抗原は、所望により適当なアジュバントを含有する緩衝液に溶解して免疫感作に用いることができる。免疫感作した哺乳動物を一定期間飼育した後、該哺乳動物の血液を少量サンプリングし、抗体価を測定し、抗体価が上昇してきたら、状況に応じて抗原の投与を適当回数実施する。最後の投与から1〜2ケ月後に免疫感作した哺乳動物から通常の方法により血液を採取して、該血液を、例えば遠心分離、硫酸アンモニウムまたはポリエチレングリコールを用いた沈澱、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー等のクロマトグラフィー等の通常の方法によって分離・精製することにより、本発明のマーカータンパク質を認識するポリクローナル抗体を得ることができる。
また、モノクローナル抗体は、抗体産生細胞とミエローマ細胞株との細胞融合によりハイブリドーマを作製し、該ハイブリドーマを培養することにより得ることができる。ハイブリドーマの作製は、公知の方法(G.Kohler et al.,Nature,256 495(1975))により行うことができる。細胞融合により得られたハイブリドーマは限界希釈法等によりクローニングし、更に、本発明のマーカータンパク質を用いた酵素免疫測定法によりスクリーニングを行うことにより、該マーカータンパク質を特異的に認識するモノクローナル抗体を産生する細胞株を得ることができる。このようにして得られたハイブリドーマから目的とするモノクローナル抗体を製造するには、通常の細胞培養法や腹水形成法により該ハイブリドーマを培養し、培養上清あるいは腹水から該モノクローナル抗体を精製すればよい。培養上清もしくは腹水からのモノクローナル抗体の精製は、常法により行うことができる。例えば、硫安分画、ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィーなどを適宜組み合わせて使用できる。
一実施形態において本発明は、α1鎖またはその断片に特異的に結合する抗体および/またはα2鎖またはその断片に特異的に結合する抗体を含む、被検体における桂枝茯苓丸の有効性を診断するためのキットに関する。
抗体については上記のとおりであり、本発明のキットにおいて抗体は、適当な標識によりラベル(例えば、酵素標識、放射性標識、蛍光標識等)されていてもよいし、ビオチン等により適当に修飾されていてもよい。本発明のキットは上記した抗体のほか、必要に応じて、標識および標識体の検出等、本発明にかかるマーカータンパク質の検出に必要な試薬等を適宜含んでいてもよい。
一実施形態において本発明は、被検体由来の試料において、ハプトグロビンの遺伝子型または/および表現型を判別することにより、該被検体における桂枝茯苓丸の有効性を診断する方法に関する。
被検体由来の試料においてハプトグロビンの遺伝子型または/および表現型を判別する方法は特に制限されず、当技術分野で通常用いられる方法を使用できる。具体的には、薄層アクリルアミドゲル電気泳動法などが挙げられ、株式会社江東微生物研究所、株式会社三菱化学ビーシーエル等が臨床検査として実施している。
ハプトグロビンの型は、Hp1−1が(α1β)で、Hp2−1が(α1β)(α2β)で、Hp2−2が(α2β)で表されるため、Hp1−1型にはα1鎖がありα2鎖がなく、Hp2−2型はα2鎖がありα1鎖がなく、Hp2−1型はα1鎖とα2鎖の両方があることによる。よって、ハプトグロビンの型を判定することにより、該被検体における桂枝茯苓丸の有効性を診断することができる。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明の範囲は実施例の範囲に限定されない。
実施例1.プロテオーム解析
関節リウマチ患者の桂枝茯苓丸投与前(0W)、4週目(4W)、12週目(12W)の血漿を用いた。採血はEDTA加で行われた。採取した血液は遠心分離し、得られた血漿を-80℃にて凍結保存した。なお、サンプルの凍結・融解による影響を避けるため、後日溶解させて少量ずつシリコンコートしたプラスチック遠心チューブに分注し、使用まで-80℃にて凍結保存した。
プロテインチップはすべてサイファージェン・バイオシステムズ株式会社製の製品を使用した。
1)Q10(強陰イオン交換基固定チップ)による解析
被験試料の前処理:
被験試料を氷上解凍し、Urea buffer(7 mol/L Urea-2 mol/L Thiourea-4 % CHAPS-1 % DTT-2 % IPG buffer, pH 3-10)にて10倍に希釈して氷上10分間静置した後、96 穴 V底プレートに50μLずつ分注した。前処理済み被験試料プレートは使用直前まで氷上静置した。
Binding/washing操作:
操作はすべて室温で実施し、Biomek2000(ベックマン・コールター株式会社)による自動処理システムを用いて行った。
Q10を、洗浄したバイオプロセッサー交換用樹脂製容器およびガスケットと共に96穴タイプバイオプロセッサー(以下、この一式をバイオプロセッサーと記す)にセット後、Biomek2000の所定の位置に設置し、操作を開始した。以下に操作概要を示す。
最初にチップ表面の膨潤および緩衝化を行った。150μLのBinding/washing buffer(50 mmol/L Tris・HCl,pH 8)をバイオプロセッサーに分注し、5分間プレートミキサーにて振盪後、bufferを除去した。同様の操作を2回実施した。
続いてサンプルの処理を行った。まず、前処理済み被験試料プレートをBiomek2000のWorksurface上の所定の位置に設置し、Binding/ washing bufferを90μLずつバイオプロセッサーに分注した後、前処理済み被験試料を10μLずつ添加して10倍に希釈した。30分間振盪してチップ表面にタンパク質を吸着させた後、試料を除去した。続いてBinding/washing bufferを150μLずつバイオプロセッサーに分注し、5分間振盪後、bufferを除去した。この操作を3回実施し、非特異的吸着タンパク質の除去を行った。さらに、脱塩のため、Milli-Q水にて2回洗浄した。
2)CM10(弱陽イオン交換基固定チップ)による解析
被験試料の前処理:
被験試料を氷上解凍し、Urea bufferにて10倍に希釈して氷上10分間静置した。静置後、96 穴 V底プレートに50μLずつ分注した。前処理済み被験試料プレートは使用直前まで氷上静置した。
Binding/washing操作:
操作はすべて室温で実施し、Biomek2000による自動処理システムを用いて行った。CM10を、洗浄したバイオプロセッサー交換用樹脂製容器およびガスケットと共に96穴タイプバイオプロセッサーにセット後、Biomek2000の所定の位置に設置し、操作を開始した。以下に操作概要を示す。
最初にチップ表面の緩衝化を行った。150μLのBinding/washing buffer(100 mmol/L Na・Acetate buffer,pH 4)をバイオプロセッサーに分注し、5分間プレートミキサーにて振盪後、bufferを除去した。同様の操作を2回実施した。
続いてサンプルの処理を行った。前処理済み被験試料プレートをBiomek2000のWorksurface上の所定の位置に設置し、Binding/ washing bufferを90μLずつバイオプロセッサーに分注した後、前処理済み被験試料を10μLずつ添加して10倍に希釈した。30分間プレートミキサーにて振盪し、チップにタンパク質を吸着させた後、試料溶液を除去した。さらにBinding/washing bufferを150μLずつバイオプロセッサーに分注し、5分間振盪後、bufferを除去した。この操作を3回実施し、非特異的吸着タンパク質の除去を行った。最後に、脱塩のため、Milli-Q水にて2回洗浄操作を行った。
3)エネルギー吸収分子(EAM)の添加
EAMはすべてサイファージェン・バイオシステムズ株式会社製の製品を使用した。α-cyano-4-hydroxycinnamic acid (CHCA)あるいはSinapinic acid (SPA)が過飽和となる量のEAM溶解液(50%CH3CN-0.5%TFA)と混合し、激しく攪拌した。5分間静置後、2分間遠心分離し、上清を分取した。分取した上清と同量のEAM溶解液を加えて混合し、EAM 50%飽和溶液として実験に供した。Calibration用にはEAM飽和溶液(上清)を用いた。なお、本溶液は使用当日に調製し、調製後は使用まで遮光静置した。
Binding/washing操作終了後、各プロテインチップをバイオプロセッサーから取り外し、自然乾燥させた。乾燥させた各プロテインチップを96穴タイプバイオプロセッサーにセットし、Biomek2000のWorksurfaceの所定の位置に設置した。
96穴V底プレートに必要量のEAM 50%飽和溶液を分注して所定の位置にセットし、EAM 50%飽和溶液1μLを2回ずつ各チップにスポットした。
4)SELDI-TOF/MS(Surface Enhanced Laser Desorption / Ionization-Time of Flight / Mass Spectrometry)による測定
調製後チップを十分乾燥させ、ProteinChip System PBSIIc(サイファージェン・バイオシステムズ株式会社製)操作マニュアルに従ってチップを挿入した。なお、測定値のばらつきを低減させるため、すべての測定について以下の設定で行った。
同一ポジションについて10回の検出データを積算した。その際、データ積算前にLaser Intensityを測定条件の +30として5回空測定を行い、安定化させてから測定条件にて積算を開始した。16箇所について同様に実施した検出データを積算した平均値を計測した。その他の測定条件についてはチップの種類や処理条件により最適の条件が異なるため、予備検討を行って測定条件を設定し、プロトコールを作成して自動測定した。なお、EAMにCHCAを使用したチップはlow range (m/z 3,000-10,000)、SPAの場合は、low range (m/z 3,000-10,000)および high range (m/z 10,000-30,000)を解析用データとして取得した。
得られたデータは、測定日ごとに実施したCalibrationデータを用いて、それぞれ補正した。また、Peak Intensityについては各データを同一基準で比較評価するため、プロテインチップシステムのアプリケーションに付属のGlobal normalization機能を用い、係数0.2にてnormalizationを行った。
得られたスペクトルのうち、CM10でSPAを使用した場合のデータを図1および図2に示す。
実施例2.ピークの有無の確認
1)ピーク有無選抜法を用いた確認
同一の施設(施設A)に来院した関節リウマチ患者22名について、実施例1記載のプロテオーム解析を実施した。そのうち桂枝茯苓丸が有効な患者は12名であり、桂枝茯苓丸が有効であった患者の割合(有効率)は54.6%であった(表1)。
プロテオーム解析の結果をもとに、ピーク有無の解析を行った。9,200のピークを有すると判断された患者は13名であったが、そのうち実際に桂枝茯苓丸が有効であった患者は8名であり、桂枝茯苓の有効性を予測できた割合(有効予測率)は61.5%であった(表2)。選別なしの有効率が54.6%であるため、9,200のピークの有無を指標として患者を選別することにより、桂枝茯苓丸の有効率を向上することができた。
更に、9,200のピークが有ると判断された患者13名について、15,970のピークの有無を同様に解析した。二つのピークともに有りと判定された患者は11名であった。そのうち8名が実際に桂枝茯苓丸が有効な患者であったため、有効予測率は72.7%であった(表2)。9,200と15,970の二つのピークを指標とすることにより、有効予測率を向上することができた。
Figure 2008008769
Figure 2008008769
別の施設(施設B)についても同様の解析を行ったが、上記と同様に高い有効予測率を示した(表1および表2)。今回の発明は、異なる施設における結果も同様に評価できる点でも、有効である。
2)目視による確認
上記と同じプロテオーム解析について、目視によるピーク有無解析を行った。同様に桂枝茯苓丸の有効性を予測することができた。
実施例3.電気泳動法によるピーク有無の解析
被験試料を1.5倍容のUrea buffer(7 mol/L Urea - 2 mol/L Thiourea - 4 % CHAPS - 1 % DTT - 2 % IPG buffer , pH 3 - 10)と混合後、4℃で20分間緩やかに攪拌し、前処理済み被験試料とした。
スピンカラムによる粗精製:
200μLの 100 mmol/L NaCl - 50 mmol/L Glycine・Na, pH 10で3回洗浄して平衡化を行ったQレジンスピンカラムに、100 mmol/L NaCl - 50 mmol/L Glycine・Na, pH 10で10倍希釈した前処理済み被験試料をアプライし、4℃で30分間(またはそれ以上)緩やかに攪拌した。攪拌後、30秒間遠心操作を行い、未吸着画分を回収した。さらに、200μLの100 mmol/L NaCl - 50 mmol/L Glycine・Na, pH 10をスピンカラムに添加し、4℃にて10分間緩やかに攪拌した。攪拌後、30秒間遠心操作を行い、溶出画分1を回収した。
続いて200μLの150 mmol/L NaCl - 50 mmol/L Glycine・Na, pH 10をスピンカラムに添加し、4℃にて10分間緩やかに攪拌した。攪拌後、30秒間遠心操作を行い、溶出画分2-1を回収した。本操作を3回繰り返し、溶出画分2-2,3,4を回収した。
引き続き200μLの200 mmol/L NaCl - 50 mmol/L Glycine・Na, pH 10をスピンカラムに添加し、4℃にて10分間緩やかに攪拌した。攪拌後、30秒間遠心操作を行い、溶出画分3-1を回収した。本操作を3回繰り返し、溶出画分3-2,3,4を回収した。
最後に200μLの33.3 % Isopropanol - 16.7 % Acetonitril - 1% Trifluoroacetic acidをスピンカラムに添加し、4℃にて10分間緩やかに攪拌した。攪拌後、30秒間遠心操作を行い、溶出画分4-1を回収した。本操作を繰り返し、溶出画分4-2を回収した。
プロテインチップシステムによる目的タンパク質の確認:
回収した各画分を3μLずつ順相系プロテインチップNP20にアプライした。15分間静置後、5μLのMilli-Q水をアプライした。ピペットにてMilli-Q水を除去後、再び5μLのMilli-Q水をアプライした。ピペットにて除去して風乾後、50% SPAを1μL添加し、乾燥させた。同操作を再度実施し、プロテインチップリーダーPBSIIcにて測定を行い、溶出画分3-1,2,3,4に目的タンパク質のピークがあることを確認した。
溶出画分3-1,2,3,4の濃縮および脱塩:
溶出画分3-1,2,3,4を3000 Daカットの限外ろ過スピンフィルターにて濃縮を行った。さらに脱塩のため、10 mmol/L Tris・HCl, pH 8にて希釈し、再度濃縮した。この操作を再度行い、電気泳動用濃縮試料とした。
電気泳動による検出:
濃縮試料を、常法により16.5%ポリアクリルアミドゲルを用いたトリストリシン系のSDS-PAGEにて分離した。SDS-PAGE上ではM/Z 9,200(9,100〜9,300)のタンパク質は分子量約13.5 kDaに、M/Z 15,970(15,000〜17,000)のタンパク質は分子量約17.7 kDaに検出された。なお、各バンドが目的タンパクに該当することは、ゲルから抽出操作を行い、プロテインチップシステムにより、前述と同様の方法で確認した。
実施例4.マーカータンパク質の同定
実施例2では、プロテインチップを用いることにより、桂枝茯苓丸の有効性の診断に有用なマーカータンパク質を特定することに成功した。これらのマーカータンパク質を、さらに以下のように精製および同定した。
被検試料7μLをBromophenol Blueを含む膨潤液と混合した。このサンプル125μLにてIPG ReadyStripゲル(7cm, pH3-10NL, BIO-RAD)を12時間以上膨潤した。このゲルを所定のプログラムにて泳動(一次元目、等電点電気泳動)した後、IPGゲルを平衡化バッファーA(50 mM Tris-HCl(pH 8.5), 6 M Urea, 30% Glycerol, 2% SDS, 1% DTT, 0.005% Bromophenol Blue)にて15分間、引き続き平衡化バッファーB(50 mM Tris-HCl(pH 8.5), 6 M Urea, 30% Glycerol, 2% SDS, 4.5% Iodoacetamide, 0.005% Bromophenol Blue)にて15分間平衡化を行った。その後、平衡化したIPCゲルを16.5%ゲル(レディゲルJペプチド用、BIO-RAD)にセットし、二次元目の泳動を行った(二次元目、SDS-PAGE)。
上記二次元泳動を行ったゲルを銀染色(和光・銀染色MSキット)後、目的のスポットを切り出した。ゲル片を脱色後、Trypsinを含むトリスバッファー(pH 8.0)を加え、35℃、20時間の処理を行った。その後、各サンプル溶液のほぼ全量をLC-MS/MS分析に供した。
LC-MS/MS分析およびm/zの値から、m/z 9,200(9,100〜9,300)のマーカータンパク質はハプトグロビンα1鎖として同定され、m/z 15,970(15,000〜17,000)のマーカータンパク質はハプトグロビンα2鎖として同定された。
実施例1のプロテオーム解析で得られたスペクトルを示す。 実施例1のプロテオーム解析で得られたスペクトルを示す。

Claims (7)

  1. 被検体由来の試料において、質量分析法で分析したm/zが9,200(9,100
    〜9,300)および/または15,970(15,000〜17,000)のマーカータンパク質を検出することを含む、該被検体における桂枝茯苓丸の有効性を診断する方法。
  2. 桂枝茯苓丸適用性の疾患または症状を有する被検体における桂枝茯苓丸の有効性を診断する、請求項1記載の方法。
  3. 桂枝茯苓丸適用性の疾患または症状が関節リウマチである、請求項2記載の方法。
  4. マーカータンパク質がハプトグロビンα1鎖またはその断片、および/またはハプトグロビンα2鎖またはその断片である、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
  5. マーカータンパク質の検出を質量分析法を用いて行う、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
  6. ハプトグロビンα1鎖またはその断片に特異的に結合する抗体および/またはハプトグロビンα2鎖またはその断片に特異的に結合する抗体を含む、被検体における桂枝茯苓丸の有効性を診断するためのキット。
  7. 被検体由来の試料において、ハプトグロビンの遺伝子型または/および表現型を判別することにより、該被検体における桂枝茯苓丸の有効性を診断する方法。
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