JP2008002961A - 生体物質検出・回収方法およびその装置、認識素子及び生体物質解析方法 - Google Patents

生体物質検出・回収方法およびその装置、認識素子及び生体物質解析方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 極性脂質を基本成分とする生体物質を含む試料溶液を複数の試料溶液の中から確実に選択できるようにし、さらに、その選択された試料溶液の中から生体物質の本来の機能を阻害することなく回収して、他の解析に使用することが可能な生体物質検出・回収方法及びその装置を提供する。更に、その方法及び装置に好適な認識素子を提供する。
【解決手段】試料溶液中の標的物質の検出を、固相表面に極性脂質を基本成分とする認識物質を固定化して前記標的物質との生体物質間の相互作用により生じる前記固相表面の物理的特性の変化に基づいて行う工程、前記極性脂質のリポソーム構造を認識素子として用い前記標的物質が検出された前記試料溶液中の前記標的物質を捕捉する工程及び前記標的物質を捕捉した前記認識素子を回収する工程を有することを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、試料溶液中に含まれる生体分子を検出し、生体物質検出・回収方法およびその装置、認識素子及び生体物質解析方法に関する。
生体物質は、核酸、mRNAなどのRNA、アミノ酸、ジペプチド、トリペプチドなどのオリゴペプチド、タンパク質などのポリペプチド、単糖、2単糖やオリゴ糖、多糖類などの糖類、ステロイドなどのホルモン類、ノルアドレナリン、ドーパミン、セロトニンなどの神経伝達物質、そのほか内分泌攪乱剤、各種薬剤、カリウム、ナトリウム、塩化物イオン、水素イオン、また、近年様々な用途に応用される高分子ポリマーなどが挙げられる。このように生命現象に関わる物質は多種多様で、様々な化学的特性を有している。従来、物質ごとの特性を利用した多種多様な検出、分離方法が考案され利用されてきた。
アミノ酸や糖の分離に最も用いられている方法として、液体クロマトグラフィーが挙げられる。この方法では、形状のバリエーションだけではなく、分離単体の種類や分離溶媒の種類が多様であるので、最適な条件下で実行することで多くの生化学物質や化学物質を分離することが可能である。あるいはこれに類似の技術で、溶液の搬送を電気浸透流で行う方法も利用されている。また、タンパク質やポリヌクレオチド(DNAやRNA)などの、電荷を持った高分子の分離には一般的に電気泳動が用いられる。電気泳動においても、分離単体の選択と、溶媒の選択(多くの場合、pHと静電力のコントロールを行う)により、一般的には、サイズの2%くらいまでの違いを識別し分離できる。あるいはチャージの違いで分ける等電点電気泳動では0.02pHの違いに対応する等電点の違いでタンパク質を分離できる。ポリヌクレオチドの分野で、DNAシーケンサーに用いられている技術では、類似配列のDNAに限れば、700bpと701bpのDNAを長さの差で分離することも可能である。
タンパク質を高感度に検出する方法として、イムノアッセイが挙げられる。この方法は臨床検査にも応用されており、タンパク質だけではなく抗体が認識することができる化合物の検出も可能である。細胞中で発現しているmRNAを解析する方法としては網羅的に解析するDNAチップやmRNAがPCRにて増幅する速度から被検出対象mRNAの濃度を検出するリアルタイムPCR法が有効である。
上記したように、生化学研究の分野は様々な分離法や検出法に支えられて発展してきた。生命の構成要素を成分ごとに分離し、それらの特性を明らかにすることで、生命現象全体が再構築できると考えられていたからである。
一方で、近年のゲノム研究をはじめとするオーミクス研究では、生体の構成要因は遺伝子だけでも数万に及び、それ以外に、ゲノム情報によらずに関係し合う化学物質や物質間の相互作用は膨大な数にのぼることが明らかになりつつある。このため、生命現象は物質の複雑な相互作用の結果であるという古典的な解釈が再浮上している。
前記生体物質の相互作用を検出する方法としては、溶液系の反応場で検出する方法と固相表面を反応場とし測定する方法がある。
前者の方法では、物質間が相互作用した際に生じる熱量を測定する等温滴定カロリメトリー法、核磁気共鳴法(NMR)によって分子の構造変化をモニターする方法、蛍光共鳴エネルギー転移法が挙げられる。
後者の方法では、表面プラズモン共鳴法や水晶振動子を利用した方法が挙げられる。表面プラズモン共鳴センサーは、金属薄膜に全反射する光を入射した際に生じる微弱なエネルギー波(エバネッセント波)が誘電体と接触している金属表面における粗密波(表面プラズモン)と共鳴する事で全反射光が減衰する現象(SPR現象)を応用する。生体物質間の相互作用によって生じた金属薄膜表面の誘電率変化をSPR現象の減衰ピークの生じる角度変化によって検出する水晶振動子は、水晶板の圧電効果を利用し、水晶板に一定の電圧を印加することで一定の周波数で発振する素子を用いる。水晶板表面に負荷される質量や粘性および弾性の変化によって周波数が変化し、生体物質が相互作用した際に生じる質量負荷の変化を周波数として検出することができる。この他に、表面の屈折率を計測するエリプソメーター、二面編波式干渉法、表面弾性波を利用した方法がある。
また、近年急速に発展しているDrug Delivery System(以下「DDS」とする。)と呼ばれる技術では、薬剤を患部組織へ直接作用させると同時に、正常細胞への影響を抑えることで薬剤の副作用を軽減を図る技術である。DDS技術にはactive targetingとpassive targetingという二つの概念が存在し、前者はモノクローナル抗体のように物質間の特異的結合能を利用し標的組織への輸送を図る。後者は、腫瘍血管の増生やリンパ系の未熟、また著しい腫瘍血管透過性の亢進などの特徴を利用するものであり、生体親和性に富む高子ポリマー修飾薬剤またはミセル、リポソームなどのナノ粒子に含有される薬剤は正常血管からは漏出せず、腫瘍血管からは漏れやすく結果として、passive targeting が可能となる。この他にも、人工臓器および医療用デバイスの開発によって様々な脂質分子やそのアナログ分子が開発され利用されている。
上記生体物質の相互作用の検出、さらに、先に述べた物質の検出、同定及び分離方法には各種のものがあるが、次のような問題点がある。
従来から所定量の試料溶液から生体物質を分離する方法としては、分離部(カラム)においてその担体と溶媒界面における媒質の分配に依存し分離されるクロマトグラフィー技術や担体と相互作用をする物質を分離する電気泳動が多く用いられてきた。分離された生体物質は質量分析法やDNAシーケンサーによって同定され、機能解析が行われる。生体物質を機能も様々であるため多種多様な方法で物質間相互作用や分光学的手法による構造解析などが行われる。
その一例として、表面プラズモン共鳴センサーを用いて、認識物質に対し相互作用した物質の活性を測定した後、センサー上で捕捉した物質を回収して質量分析法にて同定する報告がされている(非特許文献1)。
しかし、固相表面と液相間との反応はLangmuirの法則に従う平衡反応であると同時に、ごく限られた領域の検出部で物質を捕捉、回収することになるので、元の試料溶液中の被検出対象物質濃度がとても濃くなければ、後の分析に耐えうるサンプル量を得る事は困難であった。また、抗原抗体反応、DNAの相補鎖同士のハイブリダイゼーションおよび認識物質が一般的にアプタマーと呼ばれているある特定物質に対し特異的に結合するポリヌクレオチドであれば結合定数も強く、非常に安定した結合体を形成するが、結合能が低い物質間相互作用においてはほとんどが試料溶液中に未反応で残ってしまい、回収が困難であった。
また、極性脂質を基本構成成分とする生体物質、たとえば脂質膜やそれに含まれる糖鎖、脂質膜中に存在することで正常に機能する膜タンパク質などは成分ごとに単離してしまうことによって、本来の機能を示さない。また脂質膜にはそれ自体を反応場とすることが知られており、脂質膜と相互作用している状態で初めて機能を発現する生体物質がある。このように極性脂質を基本構成成分とする認識物質により特定の機能を有する生体物質を解析する場合には、相互作用解析、具体的には結合の有無やその親和性を解析し、それと同時に構造解析などの機能解析を行う必要がある。
また、DDS技術や医療用デバイス、人工臓器といった技術の発展によって、細胞膜を構成するphosphatidylcholineの極性基と同一の構造をもつ2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの重合体(以下「MPCポリマ」とする。)のような様々なポリマーやリポソーム試薬が開発されており、その生体物質の非特異的吸着や適合性を評価する方法が求められている。
Analytical Chemistry 71,2858-2865 (1999)
そこで、本発明は、極性脂質を基本成分とする生体物質を含む試料溶液を複数の試料溶液の中から確実に選択できるようにし、さらに、その選択された試料溶液の中から生体物質の本来の機能を阻害することなく回収して、他の解析に使用することが可能な生体物質検出・回収方法及びその装置を提供する。更に、その方法及び装置に好適な認識素子を提供することを目的とする。また、得られた生体物質を使用して該物質の解析を行う方法を提供することを目的とする。
本発明の生体物質検出・回収方法は、請求項1に記載の通り、試料溶液中の標的物質の検出を、固相表面に極性脂質を基本成分とする認識物質を固定化して前記標的物質との生体物質間の相互作用により生じる前記固相表面の物理的特性の変化に基づいて行う工程、前記極性脂質のリポソーム構造を認識素子として用い前記標的物質が検出された前記試料溶液中の前記標的物質を捕捉する工程及び前記標的物質を捕捉した前記認識素子を回収する工程を有することを特徴とする。
また、請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の生体物質検出・回収方法において、前記生体物質間の相互作用を水晶振動子の周波数変化によって検出することを特徴とする。
また、請求項3に記載の本発明は、請求項1に記載の生体物質検出・回収方法において、前記生体物質間相互作用を表面プラズモン共鳴法センサ表面の誘電率変化により検出することを特徴とする。
また、請求項4に記載の本発明は、請求項1に記載の生体物質検出・回収方法において、前記標的物質がペプチド分子であることを特徴とする。
また、本発明の生体物質解析方法は、請求項5に記載の通り、請求項1に記載の生体物質検出・回収方法により回収された前記標的物質が捕捉された前記認識素子を分光学的手法によって構造解析を行う工程を有することを特徴とする。
また、本発明の生体物質解析方法は、請求項6に記載の通り、請求項1に記載の生体物質検出・回収方法により回収された前記標的物質が捕捉された前記認識素子を固体核磁気共鳴法によって構造解析を行うことを特徴とする。
また、本発明の認識素子は、請求項7に記載の通り、緩衝液を含む試料溶液中の標的物質の検出を、固相表面に極性脂質を基本成分とする認識物質を固定化して前記標的物質との生体物質間の相互作用により生じる前記固相表面の物理的特性の変化に基づいて行う工程、前記極性脂質のリポソーム構造を認識素子として用い前記標的物質が検出された前記試料溶液中の前記標的物質を捕捉する工程及び前記標的物質を捕捉した前記認識素子を回収する工程を含む生体物質検出・回収方法において使用される認識素子であって、前記緩衝液の比重よりも、前記リポソームに含まれる溶液の比重を重くしたことを特徴とする。
また、請求項8に記載の本発明は、請求項7に記載の認識素子において、前記リポソームに含まれる溶液を、糖類を主成分とした溶液としたことを特徴とする。
また、本発明の生体物質検出・回収装置は、請求項9に記載の通り、試料溶液中の標的物質と相互作用する極性脂質を基本成分とする認識物質を固定化するための固相表面に備え、前記固相表面の物理的特性の変化に基づき前記標的物質を検出するための検出手段、前記標的物質が検出された前記試料溶液と前記認識物質のリポソーム構造である認識素子とを混合するための混合手段及び前記試料溶液から前記標的物質が捕捉された認識素子を回収するための遠心分離手段を備えたことを特徴とする。
また、請求項10に記載の本発明は、請求項9に記載の生体物質検出・回収装置において、前記検出手段は、水晶振動子のセンサーであることを特徴とする。
また、請求項11に記載の本発明は、請求項9に記載の生体物質検出・回収装置において、前記検出手段は、表面プラズモン共鳴センサーであることを特徴とする。
また、請求項12に記載の本発明は、請求項8又は9に記載の生体物質検出・回収装置において、前記検出手段の前記検出部と前記混合手段とは、前記試料溶液を搬送するための流路により接続されていることを特徴とする。
また、請求項13に記載の本発明は、請求項8又は9に記載の生体物質検出・回収装置において、前記検出手段の前記検出部と前記混合手段との間に、前記試料溶液を排出するための他の流路を備えたことを特徴とする。
本発明により、生命機能の一端を担う重要な成分である脂質膜やそれに結合することで機能する物質に対する生化学物質の相互作用が検出できると同時に、回収することができる。これによって、より詳細な機能解析が行える。
また、極性脂質により構成されたリポソームを認識素子を使用することにより、固相表面と液相の平衡状態において捕捉できる標的物質を使用する場合に比べ、結合積が増えより効率的に試料溶液中の標的物質を回収することができる。この結果、相互作用の測定と標的物質の回収を効率的に行うことができ、回収された標的試料は他の分析手段に使用することができる。また、極性脂質を基本構成とする認識物質により特定の機能を有する生体物質を解析する場合に、相互作用解析、具体的には結合の有無やその親和性を解析し、それと同時に構造解析などの機能解析を行うことができる。
また、本発明の認識素子によれば、緩衝液の比重よりも重い糖類を主成分とした溶液等を含むために、沈殿しやすく遠心分離により容易に回収することができる。
認識物質と相互作用する標的物質を検出し効率的に標的物質を回収できるので、認識物質と相互作用する標的物質を検出し、効率的に標的物質を回収することが可能となるため、標的物質を他の手法、例えば固体核磁気共鳴法などによる解析が可能となる(非特許文献1:Biophys. J 78, 2405-2417(2000))。
固相表面での生体物質間相互作用は、水晶振動子センサーや表面プラズモンセンサーを利用できるため、容易にシステムを構築することが可能となる。
上述の通り、本発明は、標的物質を含む試料溶液の検出を、固相表面(本明細書において、固相表面あるいは固相表面に設けられた電極等を含む。)に極性脂質を基本成分とする認識物質を固定化して前記標的物質との生体物質間の相互作用により生じる前記固相表面の物理的特性の変化に基づいて行う工程、前記極性脂質により構成されたリポソームを認識素子として用い前記標的物質が検出された前記試料溶液中の前記標的物質を捕捉する工程及び前記標的物質を捕捉した前記認識素子を回収する工程を有するものである。
本明細書において、生体物質というのは生命現象に関わる物質一般を指し、本明細書における認識物質は極性脂質膜および極性脂質と複合体を形成しているものとする。そして、この認識物質と相互作用し得る物質を標的物質とする。
以下に、各工程について説明する。
(標的物質を含む試料溶液の検出工程)
本発明における検出手段は、固相表面を反応検出場とし、標的物質と認識物質との生体物質間の相互作用により生じる固相表面の物理的特性を測定することができるセンサーであればよく、水晶振動子、表面プラズモン、エリプソメトリー、二面編波式干渉法および表面弾性波を利用したセンサーを使用することができる。
検出手段として水晶振動子を使用する場合には、水晶板の両面に設けられた電極のうちの一方の電極に、認識物質を固定化し、認識物質が固定化されている水晶板の片側を試料溶液に浸し、前記両電極に電圧を所定周波数で印加するようにし、その際に、電極上の認識物質と標的物質との相互作用による水晶板の周波数変動を両電極を介して測定すればよい。
また、検出手段として、表面プラズモンセンサーを使用する場合には、プリズム底面に金属層を設け、認識物質を積層し、プリズム底面を試料溶液を浸漬させ誘電率の変化を測定する。具体的には、表面プラズモン共鳴現象の減衰ピークの生じる角度変化を測定すればよい。
前記検出手段を構成する固相表面に、被検出対象である標的物質を特異的に認識する認識物質を固定化しておき、標的物質を含む試料溶液が認識物質と相互作用することにより、固相表面の物理的特性が変化し、認識物質と標的物質の相互作用、即ち、試料溶液中に標的物質を含むことが検出される。この際、試料溶液中の標的物質と認識物質との反応は平衡であるために、標的物質のほとんどが未反応で試料中に残るために以後の工程において捕捉と回収を行って、他の解析等に使用できる。
認識物質と相互作用が確認して標的物質を含むことが確認できた試料溶液は、そのまま次の工程に送られる。尚、標的物質を含むか否かの判断については、ゼロかそうでないか以外にも、所定の濃度をボーダーとしてその判断を行うようにしてもよい。また、標的物質を含まない試料溶液についてはドレイン等を介して排出する工程を設けることが好ましい。複数の試料溶液を連続して検出する場合に、標的物質を含まない溶液を排出すれば作業効率が高めることができるからである。
(標的物質を捕捉する工程)
標的物質を回収するために前記極性脂質をリポソーム構造とした認識素子を前記試料溶液中に添加することにより、標的物質を捕捉する。認識素子は微粒子としてみなすことができ、標的物質との衝突確率が高く、試料中の標的物質のほとんどが認識素子により捕捉することができる。
また、上記試料溶液中の標的物質の検出時においては、標的物質とセンサー上の認識素子との反応は平衡であるために、標的物質のほとんどが未反応で試料溶液中に存在している。認識素子は、この未反応の標的物質を捕捉することもできる。
(認識素子を回収する工程)
標的物質を捕捉した認識素子は、遠心分離や電気泳動法等の公知の分離方法により容易に回収することができる。
また、前記試料溶液には通常緩衝液が使用されるが、この緩衝液の比重よりも、前記リポソームに含まれる溶液の比重を重くすることが好ましく、より好ましくは緩衝液の比重に対してリポソームの比重は1.02から1.08とすることが好ましい。サイズの小さい認識素子を遠心分離によって回収しやすくなるからである。具体的な例を挙げると、グリセロール等の糖類を主成分とする溶液を前記比重の範囲とすればよい。更に好ましくは300mMのグルコース水溶液とする。
尚、緩衝液とはpHを保つための溶液で、中性付近で用いられる緩衝液としてはリン酸、Tris、HEPES等が挙げられる。生体内での反応を再現するためにはこれにNaCl等の塩やタンパク質の変性防止目的としてグリセロール等の糖が加えられ用いる。尚、本明細書においては、これら生理緩衝液一般を指す。
また、認識素子を回収する工程の後に、回収された認識素子から、認識物質と標的物質の結合を解離させ、認識素子を回収することで残った標的物質を得るようにしてもよい。これにより、質量分析、電気泳動、DNAシーケンサーまたはアミノ酸配列分析等を使用して測定するために十分なサンプル量を確保することができる。
次に、本発明における極性脂質を基本成分とする認識物質をリポソーム構造にし、認識素子として調整する方法、および生体物質間の相互作用を検出する固相表面に認識物質を固定化する方法について説明する。
前記認識素子を調整する方法の一例として、Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry 65,2638-2643 (2001)の論文(非特許文献1)に記載されている方法が挙げられる。上記論文では卵黄由来のphosphatidyl choline(以下「egg-PC」とする。)を用いて、300 mMのグルコース水溶液が含有されている単層ベシクル小胞(以下「SUV」とする。)を調整している。egg-PCをクロロホルムに溶解し、egg-PC溶液をガラス上にまき真空乾燥させることでegg-PCフィルムを作成する。egg-PCフィルムを300 mMのグリセロール水溶液で懸濁すると、egg-PCの多重ベシクル小胞(以下「MLV」とする。)を得ることができるegg-PCのSUVはMLVを超音波処理することで調整される。
上記論文ではSUVを用いているが、本発明ではリポソームを認識素子として用いるため、MLVを利用しても構わないが、サイズや内包する溶液の比重が大きいと容易に沈殿して認識素子としての捕捉効率にも悪影響を与え、サイズや含有させる溶液組成を考慮する必要がある。サイズが大きすぎるとリポソームは使い勝手が悪くなるため粒径20〜500 nmとすることが好ましい。
また、SUVの調整やサイズをコントロールする方法として市販されているフィルターを用いることができる。この他の脂質組成においても上記論文記載の方法で十分対応ができるが、Dimyristoyl phosphatidylglycerol(以下「DMPG」とする。)のような極性の偏った極性脂質においてはクロロホルムだけでは溶解できないのでエタノールなどの極性溶媒を用いればよい。また、膜タンパク質を有する認識素子を作成する場合は、上記方法で得られるリポソームに膜タンパク質を再構成する方法で可能となるし、膜表在性ペプチドなどは上記リポソームと混合することで修飾することができる。
続いて固相表面を検出器とするセンサー上に基本成分が極性脂質である認識物質を固定化する方法について説明する。脂質膜や膜タンパク質のセンサーへの固定化方法は従来技術を応用すればよい。例えば、上記と同様にリポソームに調整した認識物質を固定化する方法(非特許文献2:Biochemistry 38,15659-15665(1999)、非特許文献3:Journal of Medical Chemistry 43,2083-2086(2000)、)、Langmuir-Blodgett膜を作成し固定化する方法や疎水性表面にSUVに調整したリポソームを接触させることによる単層膜での固定化方法(非特許文献4:Biochimica et Biophysica Acta 1462,89-108(1999)、非特許文献5:Analytical Biochemistry 226,342-348(1995))、SiO2といった親水性表面やBiacore社の表面プラズモンチップでSensor Chip L1(登録商標)を用いて二重膜として固定化する方法(非特許文献6:Langmuir 20,7526-7513(2004)、非特許文献7:FEBS Letter 559,96-98(2004))、脂質膜をフィルムで固定化する方法(非特許文献8:Analytical Chemistry 62,1431-1438(1990))が挙げられる。また、膜タンパク質を固定化する方法として、界面活性剤で可溶化した膜タンパク質をセンサー上に固定化し、センサー表面上で質膜に再構成する方法(非特許文献9:Analytical Biochemistry 316,243-250(2003))や膜タンパク質をリポソームに再構成後センサー表面に固定化する方法(非特許文献10:Biophysical Chemistry 85,141-152(2000))が考案されている。
また、本発明の生体物質解析方法は、上述した生体物質検出・回収方法の後に、生体物質検出・回収方法により回収された前記標的物質が捕捉された前記認識素子を分光学的手法によって構造解析を行うものである。これにより、少量の試料を有効に活用して生体物質の解析を行うことができる。
また、本発明の生体物質解析方法は、標的物質を含む試料溶液の検出を、固相表面に固定化された極性脂質を基本成分とする認識物質と前記標的物質との生体物質間の相互作用により生じる前記固相表面の物理的特性の変化に基づいて行う工程、前記極性脂質のリポソーム構造体である認識素子により前記標的物質を含むことが検出された前記試料溶液中の前記標的物質を捕捉する工程、前記標的物質を捕捉した前記認識素子を回収するとともに固体核磁気共鳴法によって構造解析を行うものである。
次に、本発明の生体物質検出・回収装置について説明する。
本発明は、試料溶液中の標的物質と相互作用する極性脂質を基本成分とする認識物質を固定化するための固相表面に備え、前記固相表面の物理的特性の変化に基づき前記標的物質を検出するための検出手段、前記標的物質が検出された前記試料溶液と前記極性脂質のリポソーム構造を認識素子と混合するための混合手段及び前記試料溶液から前記標的物質が捕捉された認識素子を回収するための遠心分離手段を備えたものである。
前記検出手段は、生体物質検出・回収方法のところで説明した検出手段と同じである。前記混合手段は、認識素子を試料溶液に加え混合できるものであればよく、また、遠心分離手段についても、遠心分離により認識素子を回収できるものであればよく、いずれも市販されている。
上記検出手段の検出部から混合手段への試料溶液の移動は、手作業によっても行うことができるが、好ましくは検出手段を容器内に設け、この容器と混合手段とを流路により接続してポンプ等を利用して移動できるように構成することが好ましい。検出を行った試料溶液をそのまま混合手段に移動することができ、作業効率がよいからである。また、前記容器又は前記流路をドレインに接続するようにしてもよい。検出により、不要と判断した試料溶液を排出し、更に回収することができるからである。更に、電磁弁等により、前記ドレインへの切換ができるようにすれば、操作がより簡便となるため好ましい。また、試料溶液の量については特に制限はないが、通常10μL〜5 mL程度である。
次に、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
(実施例1)
抗菌性ペプチドであるMagainin2(以下「MG2」とする。)を標的物質のモデルとし、Dimyristoyl phosphatidylcholine(以下「DMPC」とする。)膜とDMPG膜を認識物質として採用し、試料溶液中の標的物質と認識物質との相互作用を検出する手段として表面プラズモン共鳴(以下「SPR」とする。)センサーを使用して行う。その後、標的物質を含む試料溶液中の標的物質を各極性脂質膜から構成されるリポソーム(認識素子)により回収するとともに遠心分離器により、リポソームを分離するとともにこれに対して円偏光二色性法および固体高分解能核磁気共鳴法(以下「NMR」とする。)によってMG2および各脂質膜の構造解析を行う例を示す。
図1は、実施例1の方法の説明及び使用する装置の概念図である。
図1の最上段部に符号101で示す容器には、試料溶液と測定緩衝液である1%BSA, 10 mM Tris(pH 7.4), 150 mM NaCl溶液と試料が導入される。この容器(101)内には、検出手段としてSPRセンサー(127)が設けられており、SPRセンサー(127)表面上に固定化されている認識物質(125)と標的物質(124)の相互作用を検出できるように構成される。
DMPCもしくはDMPGとする認識物質(125)を、SPRセンサー(127)に固定化する方法は以下の通りである。
金表面であるSPRセンサー(127)をオゾンプラズマで10秒間処理し、さらにピランハ溶液(30%過酸化水素水と濃硫酸の混合溶液)で10分間金表面を洗浄する。続いて、トルエンに溶解した5 mM n-Octadecanethiol溶液をセンサー表面に置き、1時間、室温で放置することで、n-Octadecanethiolの自己組織化膜が形成される。n-Octadecanethiolの自己組織化膜ではメチル基が表面にくるため、SPRセンサー(127)表面が疎水性に改質される。次に上記している方法にて50 nmのサイズに調整された、DMPCまたはDMPGのSUVを0.5 mMの濃度で疎水性センサー表面に反応させることで、認識物質(125)である各極性脂質を単相膜としてセンサー(127)表面に固定化することができる。
標的物質であるMG2(124)を含まない試料A(121)として、VECTOR社から購入した正常マウス血清IgG分画(商品コードJ920)を用いることとする。正常マウス血清IgG分画(122)は1% BSA, 10 mM Tris(pH 7.4), 150 mM NaCl溶液とし、DMPC(125)の固定化されたSPRセンサー(127)に導入すると、SPRシグナルに変化はなく相互作用が検出されない。これに対し、試料A(121)と1 μMのMG2(124)の混合試料B(123)をSPRセンサー(127)に導入するとSPRシグナルに変化が生じ、DMPC(125)と相互作用する物質が検出される。
図2に、試料溶液A(121)および試料溶液B(123)をSPRセンサー(127)にて測定した結果の模式図を示す。符号202で示す結果は試料溶液A(121)を測定した結果でSPRシグナルに変化は見られないことがわかる。これに対し、試料溶液B(123)を測定すると符号201のようにSPRシグナルに変化が検出される。
DMPGを認識物質とした場合においても、DMPCの時と同様に試料溶液B(123)でのみシグナルが変化し標的物質(124)が検出されることが確認される。
認識物質(125)と相互作用する標的物質が検出されなかった試料溶液A(121)は、流路(111)を介してポンプ(102)によってドレインへ回収するようにする。標的物質MG2(124)が検出された試料溶液B(123)は流路(112)を通って混合手段である混合槽(103)に移され、認識物質(125)のリポソームである認識素子(128)と混合される。認識素子(128)であるリポソームはサイズが100 nmのSUVで、200 mMのグルコース溶液を内包するように調整しておく。
その際、上述したSPRセンサー(127)における標的物質(124)と固定化された認識物質(125)との相互作用は、Langmuirの固相表面−液相間の法則に従うため、図1の中段右側に示すように試料溶液B(123')中の標的物質(124)のほとんどが未反応な状態で残る。このため、粒子状の認識素子(128)は試料溶液B(123’)中の標的物質MG2(124)のほとんどと結合し複合体(129)の状態で捕捉される。
十分な時間、試料溶液B(123’)と認識素子(128)を混合した後、この混合液を遠心分離手段である遠心分離槽(104)に流路(113)を介して移動し、130,000gで5分間遠心することで沈殿物として複合体(129)を回収する。
遠心後の上清は流路(114)、ポンプ(105)及び流路(115)を介してドレインへと排出する。
上記の方法により、複合体(129)は測定緩衝液に再懸濁された状態で回収することができる。
上記方法によって回収されたDMPCおよびDMPGのリポソームである認識素子(128)とMG2(124)との結合複合体(129)を円偏光二色性法および固体NMR法によって構造解析を行う。円偏光二色性法によって、MG2(124)の二次構造解析を行った結果、222 nmにおけるellipticityから、DMPC膜に結合したMG2(124)に比べDMPG膜に結合したMG2(124)ではαへリックス構造をとっていることが分かる。固体NMR法は、Biochimica et Biophysica Acta 1558,34-44(2002)(非特許文献11)記載の方法によって31Pを観測核として測定した。結果、DMPCおよびDMPGの相転移点温度(Tm)がMG2(124)が結合した場合に変化していることが分かる。また、マジック角回転(MAS)法を用いて等方化学シフト値を比較すると、DMPCとDMPGともにMG2(124)が結合することで変化し、また、その変化量はDMPG膜のほうが大きいことが分かる。このことから、MG2(124)は酸性脂質であるDMPGに対して2次構造変化を伴うより安定した結合を行い、より大きな構造変化を誘起していることが示唆される。
このように、本実施例によれば極性脂質膜を認識物質とした物質間相互作用をモニターすると同時に被検出対象標的物質を認識物質のリポソームである認識素子に捕捉したサンプルによって円偏光二色性法および固体NMR法によって詳細な構造解析に使用することができる。また、動的光散乱やゼータ電位によって認識素子であるリポソームのサイズを計測し、MG2の極性脂質膜に対する機能を知ることも可能である。
また、本実施例では相互作用解析は単純化するために検出のみとしたが、様々な濃度の試料をセンサー上にアプライすることによって結合(解離)定数を求めるアフィニティー解析やその結合および解離速度から速度論解析を行う事もできる。
(実施例2)
次に薬物送達系(Drug Delivery System,DDS)として応用するためのリポソームの評価として、脂質とDNAの複合体の評価を行った例を示す。固相表面で生体物質間相互作用を検出手段として27 MHzを基本周波数とする水晶振動子センサーを採用し、中性脂質である1,2-dioleoyl-sn-glycero-3- phosphatidylcholine(以下「DOPC」とする。)とDOPCとカチオン脂質である1,2-dioleoyl-3-3trimethyl-ammoniumpropane(以下「DOTAP」とする。)の混合膜を認識物質として採用する。DOPCとDOTAPの混合比は5:1のものを調整する。各脂質はクロロホルムとメタノールの混合溶媒に溶解し、フィルムを作成後、0.2 wt %のAnthraceneを含む10 mM PBS(pH 7.5), 150 mM NaClの緩衝液で懸濁し、0.2 μmのフィルターを通したMLVを調整し、遠心、回収することで認識素子とする。ここで調整されたリポソームのアルキル鎖疎水部にはAnthraceneが修飾され、蛍光寿命測定法による解析が可能となる。認識物質であるDNAはClontech社から購入したPlasmid DNA pCMVSport-β-Gal DNA(以下「DNA β-Gal」とする。)を使用する。
図3に、本実施例を行うに当たって使用する装置の概略図を示す。図3の上部から測定緩衝液(10 mM PBS(pH 7.5), 150 mM NaCl)と標的物質DNA β-Galの試料溶液が導入される。溶液が導入される流路(305)は、流路(306)と流路(307)に分岐され、一方は検出手段(301)に接続され、他方は混合手段(303)に接続される。尚、流路の分岐箇所には図示しないが電磁切換弁が設けられ、流路(306)又は流路(307)への試料溶液の移動を任意に切り換えることができるように構成される。
検出手段(301)においては、水晶振動子センサーが設けられている。水晶振動子センサーの電極上には認識物質であるDOPCもしくはDOPC/DOTAP混合膜が二重膜で固定化されている。DOPCもしくはDOPC/DOTAP混合膜の固定化方法は、水晶振動子表面にSiO2膜を0.1 μmの膜厚で蒸着し、オゾンプラズマアッシングを10秒間行った表面に、SUVのDOPCもしくはDOPC/DOTAPを結合させることにより行う。
検出手段(301)の水晶振動子センサーにより相互作用が検出された試料溶液は、混合手段である混合槽(303)に移動する。ここでは、試料溶液に前記した認識素子を導入し混合を行う。ここで認識素子と標的物質が結合し、認識素子−標的物質複合体が形成される。十分な時間混合した後、流路(308)を介して分離手段(304)である遠心分離装置により認識素子および認識素子−標的物質複合体を分離し、流路(309)を介して上清をポンプ(302)によりドレインから排出し、沈殿物を試料として回収する。
図4に水晶振動子センサーにて、DOPCに対する標的物質DNA β-Galの相互作用を解析した結果の概要図を示す。
水晶振動子センサー表面に3μM, 6μM, 9μM, 12μMのDNA β-Galを導入しその周波数の経時変化の模式図が図4(a)である。
導入するDNA β-Galの濃度が高くなるにつれ、水晶振動子センサーの周波数減少の減衰時定数が短く、DOPCとDNA β-Galとの相互作用が平衡に達するまでの時間が早いことが分かる。
この周波数変化を用いて動力学解析を行ったものを同図(b)に概念図として示す。
動力学解析方法は1対1の結合モデルで行う。水晶振動子センサー上に固定化されている認識物質(A)とそれと相互作用する標的物質(B)は結合し複合体(C)を形成する過程はA+B⇔Cに従う平衡であり、その親和性は下記数1で定義される結合(解離)定数Ka(Kd)で定量化することができる(ここで、[A]、[B]、[C]はそれぞれのモル濃度を示す)。
この反応における結合速度定数k+と解離速度定数k-は下記数2で与えられる。
認識物質と標的物質の結合複合体(C)の生成濃度は下記数3で表される。
数3における[C](t→∞)は標的物質濃度が[B]の時に平衡に達した複合体Cの濃度である。複合体は時間に対し緩和時定数1/τを持つ一次の指数関数に従って形成されることが分かる。この1/τは標的物質濃度[B]に依存する。ここで、[C]/[C](t→∞)は水晶振動子の周波数変化ΔFであるΔF/ΔF(t→∞)と置き換えることができるため数3における認識物質と標的物質の複合体Cの濃度は周波数変化ΔFとして書くことができる。
図4(b)は図4(a)の周波数変化を数(3)でフィットし、各DNA β-Gal濃度における1/τを求め、DNA β-Gal濃度に対してプロット(405)した図である。このプロットの回帰直線(406)の切片および傾きから、DOPCとDNA β-Galの相互作用における結合速度定数k+、解離速度定数k-および結合(解離)定数Ka (Kd)が求まる。
図4で示した方法と同様、DOPC/DOTAPとDNA β-Galの相互作用における結合速度定数k+、解離速度定数k-を求めた結果、DNA β-Galの親和性はカチオン脂質が含まれるDOPC/DOTAPの方が中性脂質であるDOPCに比べ高いことがわかる。
3μMのDNA β-Galを混合槽(303)に導入し、各脂質から構成される前記認識素子に結合させ、DNA β-Galと認識素子の複合体を回収した試料を、蛍光寿命測定法を用いて解析を行う。これにより、DOPCおよびDOPC/DOTAPの流動性に関する知見を得ることができ、DNA β-GalがMLVの脂質二重膜間に捕捉されていることが分かる。
このように、本発明によって回収された脂質膜を基本構成とする認識物質とそれに機能を示す生体物質に関する解析を様々な手法で行うことができる。
上記した実施例1および実施例2では、水晶振動子の計測では共振点周波数のみを計測例を示しているが、特願2005-192612に示されるような水晶振動子の基本波の共振点付近のコンダクタンスの最大値の1/2になる周波数(F1、F2)およびこのオーバートーンのF1、F2を用いる方法や、Q-sence AB社が提案しているQCM-Dと呼ばれる測定方法により、質量付加の正確な測定、固定化されたフィルム膜の粘弾性変化および溶液の粘性変化を測定することにより、より正確な相互作用解析が行えることは言うまでもない。また、その他の手法、例えばエリプソメーターや二面編波式干渉法といった方法でも計測は可能である。
本発明は、生化学研究等の研究・開発分野やこれに関する製品の分野において広く利用することができる。
実施例1の方法の説明及び使用する装置の概念図 試料溶液Aおよび試料溶液BをSPRセンサーに接触させた際のシグナル変化を検出した結果の模式図 実施例2の方法の説明及び使用する装置の概念図 水晶振動子センサーにて、DOPCに対する標的物質DNA β-Galの相互作用を解析した結果の概要図
符号の説明
101 容器
102 ポンプ
103 混合槽
121 試料溶液A
123 試料溶液B
124 MG2
124 標的物質
125 DMPC
125 認識物質
127 SPRセンサー
129 複合体
111,112,113,114,115 流路
301 検出手段
303 混合手段
304 分離手段
305,306,307,308,309 流路

Claims (13)

  1. 試料溶液中の標的物質の検出を、固相表面に極性脂質を基本成分とする認識物質を固定化して前記標的物質との生体物質間の相互作用により生じる前記固相表面の物理的特性の変化に基づいて行う工程、前記極性脂質のリポソーム構造を認識素子として用い前記標的物質が検出された前記試料溶液中の前記標的物質を捕捉する工程及び前記標的物質を捕捉した前記認識素子を回収する工程を有することを特徴とする生体物質検出・回収方法。
  2. 前記生体物質間の相互作用を水晶振動子の周波数変化によって検出することを特徴とする請求項1に記載の生体物質検出・回収方法。
  3. 前記生体物質間相互作用を表面プラズモン共鳴法センサ表面の誘電率変化により検出することを特徴とする請求項1に記載の生体物質検出・回収方法。
  4. 前記標的物質がペプチド分子であることを特徴とする請求項1に記載の生体物質検出・回収方法。
  5. 請求項1に記載の生体物質検出・回収方法により回収された前記標的物質が捕捉された前記認識素子を分光学的手法によって構造解析を行う工程を有することを特徴とする生体物質解析方法。
  6. 請求項1に記載の生体物質検出・回収方法により回収された前記標的物質が捕捉された前記認識素子を固体核磁気共鳴法によって構造解析を行うことを特徴とする生体物質解析方法。
  7. 緩衝液を含む試料溶液中の標的物質の検出を、固相表面に極性脂質を基本成分とする認識物質を固定化して前記標的物質との生体物質間の相互作用により生じる前記固相表面の物理的特性の変化に基づいて行う工程、前記極性脂質のリポソーム構造を認識素子として用い前記標的物質が検出された前記試料溶液中の前記標的物質を捕捉する工程及び前記標的物質を捕捉した前記認識素子を回収する工程を含む生体物質検出・回収方法において使用される認識素子であって、前記緩衝液の比重よりも、前記リポソームに含まれる溶液の比重を重くしたことを特徴とする認識素子。
  8. 前記リポソームに含まれる溶液を、糖類を主成分とした溶液としたことを特徴とする請求項7に記載の認識素子。
  9. 試料溶液中の標的物質と相互作用する極性脂質を基本成分とする認識物質を固定化するための固相表面に備え、前記固相表面の物理的特性の変化に基づき前記標的物質を検出するための検出手段、前記標的物質が検出された前記試料溶液と前記認識物質のリポソーム構造である認識素子とを混合するための混合手段及び前記試料溶液から前記標的物質が捕捉された認識素子を回収するための遠心分離手段を備えたことを特徴とする生体物質検出・回収装置。
  10. 前記検出手段は、水晶振動子のセンサーであることを特徴とする請求項9に記載の生体物質検出・回収装置。
  11. 前記検出手段は、表面プラズモン共鳴センサーであることを特徴とする請求項9に記載の生体物質検出・回収装置。
  12. 前記検出手段の前記検出部と前記混合手段とは、前記試料溶液を搬送するための流路により接続されていることを特徴とする請求項8又は9に記載の生体物質検出・回収装置。
  13. 前記検出手段の前記検出部と前記混合手段との間に、前記試料溶液を排出するための他の流路を備えたことを特徴とする請求項8又は9に記載の生体物質検出・回収装置。
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