JP2007532176A - ヒトの歯の根管内の細菌及びバイオフィルムを熱分解により根絶するためのシステム - Google Patents

ヒトの歯の根管内の細菌及びバイオフィルムを熱分解により根絶するためのシステム Download PDF

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Abstract

【解決手段】ヒトの歯の根管(22)内の細菌とバイオフィルムの熱分解による根絶のためのシステムと処置過程には、細長い可撓性を有する光学プローブ(20)と、プローブに低赤外線エネルギーを提供するレーザー発振器(28)が関与している。光学プローブは、歯の根管に実質的にその全長に亘って挿入するのに十分な長さを有している。光学プローブは、プローブからの放射を根管全体に亘って横方向に分散させる。放射は、根管系全域の象牙質細管内の細菌及び生きたバイオフィルムを、一度に、選択的に狙うのに必要なエネルギー密度と時間で与えられ、これにより(a)黒体の「高温先端部」の発生を阻止し、(a)根管隙内にレーザー間質温熱療法(LITT)を施す。
【選択図】図1

Description

本発明は、人体の細菌及びバイオフィルムを熱分解により根絶するためのシステムと処置過程に関し、更に具体的には、歯内療法学に関わる歯の歯構造部及びその付近の根尖歯根膜炎の治療に関する。
三次元根管系の組織を殺菌又は消毒するという明確な目的のために、各種レーザー及びファイバー送出システムが提案されている。一般に、そのようなシステムは、一方向にエネルギー送出することか、光送出ファイバー経路の遠位端に黒体白熱の「高温先端部」を生成することに限られている。被覆のない「むき出しの」ファイバー先端部が歯根管隙内の組織及び液に接触したときに、そのようなエネルギー送出が発現する。この場合、壊死組織片が即座に先端部に積もり、この壊死組織片が、付帯する光送出ファイバーを通して伝播される強力な赤外線レーザーエネルギーを吸収してしまう。こうなると、先端部は高温になり瞬時に炭化してしまう。赤外線レーザーの光子のエネルギーは、こうして新たに炭化した先端部に吸収され続けるので、先端部は赤く熱せられた状態になる(726℃以上)。この「高温先端部」エネルギーの二次的な放出が象牙質細管に伝導されると、これに伴って、口腔組織及び流体(血液を含む)において望ましくない局部的な加熱及び光生物学的事象が発生し、即ち送出ファイバーの遠位端付近の歯組織が溶けたり黒く焦げる事態が引き起こされる。
ダーボー(Darveau)及びタナー(Tanner)他、「歯周炎における微生物の挑戦、歯周病学(Periodontology)」、2000年
従って、歯内療法学分野においては、健康な歯又は他の周辺組織を傷つけずに、生きたバイオフィルム及び細菌を効果的に破壊することにより、細菌によって加速される炎症性疾患の治療法を改善することが必要とされている。
本発明の第1の目的は、ヒトの歯の根管の細菌及びバイオフィルムを熱分解により根絶すること、及び、細長く可撓性を有する光学プローブとプローブに低赤外線エネルギーを供給するレーザー発振器とが関与したシステムと処置過程を提供することである。光学プローブは、サファイヤ及びジルコニウムから成る等級の部材で構成され、光学プローブの全長に沿い横方向360度に亘って光学的エネルギーを分散させる光拡散面を有しているのが望ましい。低赤外線エネルギーは、700nmから1100nmの範囲内にあり、光学プローブは、歯の根管の概ね全長に亘って挿入することができる程度の長さを有しているのが望ましい。光学プローブは、プローブからの放射を根管全体に亘って横方向に分散させる。放射は、根管系全域の象牙質細管内の細菌及び生きたバイオフィルムを選択的に狙うのに必要なエネルギー密度と時間で、一度に供給され、これにより(1)黒体「高温先端部」の発生を阻止し、(2)根管隙内にレーザー間質温熱療法(LITT)を引き起こす。一時的な光学的エネルギーは根管系全域に沿って同時に分配され、360度三次元散乱を起こす。これにより、黒体「高温先端部」が発生することなく、小さいエネルギーと長い処置時間を利用できるようになる。その結果、根管隙が溶けたり黒く焦げることはなくなり、以下に説明する他の利点が得られる。
本発明の性質と目的を深く理解するために、添付図面を参照する。
感染を起こしている根管隙と根尖歯根膜炎の現状モデル
生きている歯神経(歯髄)が病原性微生物に感染すると、不可逆性歯髄炎が進行することになる。これは、細菌の侵入を原因とする局部的な炎症性産物と組織の損傷に、歯髄がやられて死に到ったときに発現する。この流れは、髄室及び付帯する歯根管三次元構造内に真性の微小膿瘍が現れるという結果を招く。感染が進むにつれて、歯髄の全軟組織は液化壊死の過程をたどることになる。硬質の歯根管構造内では、側副血行が全く無くなることになり、その結果、根管隙内の壊死性炎症液の十分な排出ができなくなる。炎症性細菌を含有した液は、根管系の根尖先端に漏出し、根尖周囲の血管が密集している歯根膜靭帯組織に広範囲に亘って炎症反応を引き起こす。根尖周囲は歯根の最も下位の解剖学的構造部位であり、根尖セメント質、歯根膜靭帯、歯槽骨組織を含んでいる。この部位には、血管、リンパ管、及び神経線維が密集している。従って、歯管構造又は根管系が感染すると、周囲の根尖周囲組織に、瞬時の且つ深刻な免疫性及び炎症性の影響が表れる。細菌は、感染を起こした根管隙の溜めを常に利用できるため、血管新生の盛んな歯根膜上皮の間近に在ってさえ成長と増殖を続ける。
歯根膜靱帯の血管新生が旺盛であるという特性は、宿主による、適切な量をはるかに上回る免疫性及び炎症性産物の生成と局所的拡散を可能にし、それ以上の細菌のコロニー化と根尖周囲隙への侵入を阻止する。それら免疫性及び炎症性産物としては、リゾチーム、補体、ブラジキニン、トロンビン、フィブリノゲン、抗体、及びリンパ球が挙げられる。
しかしながら、根管の細菌の詰った溜めはこの猛攻撃を生き抜き、この独特の嫌気性環境の隙間、即ち感染を起こした根管系、で成長を続ける。それら細菌は、歯が失われるか根管治療が成功裏に完了するかの何れかまで、根尖周囲隙に種をまき続け根尖周囲の感染を加速させる。前者のシナリオは慢性根尖歯根膜炎として知られている。
根尖周囲組織の極度な炎症が起きると、破骨細胞のアップレギュレーションにより骨吸収活動が刺激される可能性が極めて高い。病変部位が長期に亘って治療されないまま放置されると、感染が拡大するにつれて根尖先端部の周りに放射線透過性区域が現れて、骨の構造が崩れる。これは、急性根尖周囲膿瘍となって発現し、細菌及び炎症副産物が根管系から根尖周囲隙の骨構造周りに急激に拡大した結果である。治療を施さないと、この局部的な感染は、病変部の急性骨炎(骨の感染症)及び蜂巣炎(軟組織の感染症)を含む重度の続発症を引き起こしかねない。
それら疾病の従来的な治療は、元凶となっている歯を救うことを期待して、根管隙の完璧な壊死組織切除と根尖密封材による適時の慎重な根管隙の密封により、根尖周囲の刺激物とその生命源を除去することであった。成功裏に完了すれば、この根管治療法では、フィブリン凝塊の初期形成により根尖周囲組織の治癒が可能になるはずである。このフィブリン凝塊は肉芽組織となり、最終的には成熟して新しい骨構造と歯根膜靱帯になる。
全ての歯内療法的治療法の絶対的な目的は、根管系の三次元領域を完全に密封することである。密封が正しく成し遂げられれば、元凶となっている歯は、根尖周囲部位が治癒して再生した後では適度な快適さと機能性を取り戻すことができる。
象牙質細管形態学
歯の象牙質は、何百万という象牙質細管(象牙質の小さく中空の液で満ちた管)が歯髄から歯根の象牙質とセメント質の接合部の手前まで走って構成されている。これらの細管は、直径が凡そ1μmから3μmであり、歯髄から象牙質とセメント質の接合部まで歯根構造の全構造体を概ね真っ直ぐに走っていることが特徴である。歯に含まれる象牙質細管の量は場所を問わず平方ミリメートル当たり4,900から90,000であると計算されている(MjorとNordahl、1996年)。
歯髄に感染を起こし最終的には根管系に病理学的疾病を発生させる細菌は、グラム陰性嫌気性菌である場合が多い。30年前、注入シリコンを使った新奇な研究で、Davis(Oral Surg Oral Med Oral Path、1972年)は、根管系の複雑性、形態、及び構造は、如何に良好に前処置された管であっても、従来用いられている歯内療法的壊死組織切除法にとってアクセス不可能な領域を含んでいるものであることをはっきりと示した。実際に、SenとPi'kin(Endon Dent Traumatol、1995年)は、一旦、歯髄に感染が起こると、病原菌は象牙質細管を含め歯の管系の全部位で回復し得ることを見い出した。
病原菌は、感染歯の象牙質細管の、感染した管の壁と象牙質セメント質接合部の間の中ほどに存在していることを多くの研究者が示している。細菌の浸透も、根の先端部3分の2の象牙質細管内へ150μm侵入し、細菌の内毒素は象牙質壁内に存在していると説明されている。PerezとRochd(1993年)による体外研究では、実験用に接種した歯では、象牙質細管内への細菌の浸透率が737μmとなることが見い出された。
象牙質細管系は、歯内療法上の病原菌にとって生態的に申し分のない居場所を提供している。細管は、温度が常に37度であり、湿度も最適で、成長と再生を維持するための栄養分も容易に入手できる。従来の根管治療において毒性と耐性が最も高い有機体の1つに、グラム陰性有機体であるエンテロコッカスフェカーリスがある。エンテロコッカスフェカーリスは、多くの抗生剤、管内薬剤、及び酸素生成洗浄剤に対して耐性を示す通性嫌気性菌である(Sundqvist, Oral Surg. Oral Med. Oral Path.、1998年)。
近年の根管治療法の考察
近年の根管治療法は、根管密閉とガッタパーチャによる根尖端部密封の確立に先立ち、細菌と病変歯髄組織を歯の三次元根管系から取り除く過程を含んでいる。密閉段階の前処置過程として病変歯髄組織と細菌を取り除くには、機械的及び化学的な一連の事象(洗浄、整形、及び消毒)を制御されたやり方で行わなければならない。歯の根管系は非常に複雑な幾何学構造を有しており、1つの管に多くの湾曲部が存在し得ることは既知の事実である。この複雑な幾何学構造に適切に対応するために、多種多様な手用器具(やすり類)及び回転器具(低速手用部品を備えた電動式)が開発され、歯内療法的処置の初期洗浄と整形に使用するために供されている。それら歯内療法器具は、湾曲した三次元根管構造の洗浄と整形手順を支援するため、可撓性と固有の金属形状記憶特性を備えている。これらの器具は、機械的な根管壊死組織切除法に対して、「ステップバッック」進入法又は「クラウンダウン」進入法の何れかで具合よく使用される。根管系の徹底的な壊死組織切除法というこの重要な段階は、従来は、上記のように機械的に行っており、管壁面上に有機体及び石灰化した壊死組織片の「汚濁層」が残ることになる。
成功している近代の根管処置の第2の部分には、洗浄用次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)の5%溶液を用いて三次元根管系に対して化学的機械的壊死組織清拭法を行うことが関わっている。次亜塩素酸ナトリウムには、根管系の有機物残渣の多くを分解して剥がれた表層の壊死組織片を除去する能力のあることが、多くの研究で示されている(SvecとHarrison. J. Endod.、1977年)。次亜塩素酸ナトリウムは、歯内療法洗浄液として歯科開業医に好都合に使用されている。次亜塩素酸ナトリウムは、管領域を洗い流すことの他にも、抗菌薬として有効であると共に組織分解特性も併せ持っている。
しかしながら、次亜塩素酸ナトリウムのような歯内療法洗浄液は、根管系の全長に亘って浸透することはできないということも周知の事実である。象牙質細管の長さを含め、根管系の解剖学的に複雑な構造体の多くは、洗浄剤に触れないままとなり、従ってその領域には生きたバイオフィルムと細菌が残ることになる。これは、基本的に、根管壁上の洗浄液の表面張力により引き起こされ、根管処置がうまくいかない主原因である。OrstavikとHaapasalo(Endod. Dent. Traumatol.、1990年)は、次亜塩素酸ナトリウムの抗菌効果は、象牙質では100μmの距離までしか保証されないことを見出した。
この様に、ヒトの根管系は多様な解剖学的構造上の複雑性を有しており、その多くは診断されず、従って歯内療法やすりも洗浄剤にも触れないことになる。この見過ごしが、最終的に歯内療法処置の失敗に到る原因である。この複雑性、並びに根管やすり、回転器具又は次亜塩素酸ナトリウム洗浄剤が三次元根管系の全域へ到達し洗浄を行うことができるわけではないために、感染した歯内の全ての病原菌及び生きたバイオフィルムを完全に撲滅及び/又は除去することは事実上不可能であった。
器具で処置し、洗浄し、前処置を施したが、密閉処置を行っていない管隙内に残った細菌は、洗浄、整形処置から2日〜4日以内に倍増して元の数に戻るという知見は、多くの証拠と臨床経験によって支持されている。残った細菌がこのように急速に倍増する結果、多くの研究者は、根管診療で歯内療法専門医に訪れる合間に(CaOHペーストの様な)管内薬剤を使用することを推奨している。しかしながら、現在使用されている管内薬剤の殆どは、薬効が抗菌効果、予想される抗原活性、に限られ、象牙質細管内への拡散効果は劣っているために、残った細菌に隠れ場所を与えてしまうことになる。
生きたバイオフィルムとしての歯内療法上の病原菌
最近の研究は、殆どの細菌コロニーを保護されている生きたバイオフィルムの一部として新たに定義し明白に認めていることから、この象牙質細管に細菌が生き残るという事実は今では既知である。(DarveauとTanner他、歯周炎における微生物の挑戦、Periodontology 2000年、及びChen; バイオフィルム感染としての歯周炎、J Calif Dent Assoc. 2001年。)
CostertonとLewandowski, J Bacteriology(1994年)は、バイオフィルムを「相互に、及び/又は表面又は界面に付着するマトリクス封入型微生物集団」として記載している。上記研究者らは、バイオフィルムを「進化して共同体全体としての生き残りを可能にする生態学上の共同体」で、「コロニー内での代謝廃棄物の移動を円滑化するバイオフィルムマトリクス(原始的な循環系)の栄養経路」を備えたもの、とも説明している。感染した歯内の象牙質細管と三次元根管構造が上記の生態学的適所となり、そこに隠れている細菌コロニーがバイオフィルムと見なされるならば、解剖学的に複雑で隠された根管系構造からこれら病原微生物を駆逐するもっと効果的な管理技法を描き実施する必要がある。
現在理解されているバイオフィルムは、それ自体の幾つかの基本的性質が認識されている(MarchとBradshaw, 口内バイオフィルムの制御に対する生理学的取り組み、Adv Dent Res、1997年)。これには、限定するわけではないが、異なる種類の微生物間の共同体連携、バイオフィルムマトリクス内で区別できる微小コロニー、細菌コロニーを取り巻く保護マトリクス、異なる微小コロニー内の区別できる異なる微小環境、原始的な連絡系、及び抗生物質、抗菌剤に対する独自の防御性と耐性、並びに免疫性及び炎症性宿主反応が含まれている。
歯内療法上の疾病を制御する最も以前の試みは、実験室環境で歯内療法上の細菌を理解することに基づいて行われた。しかしながら、生きたバイオフィルムとしての、歯内療法上の細菌は、古典的な実験室モデルから予測されるものとは極めて異なる様式で活動し機能する。バイオフィルム内の歯内療法上の細菌は、培養環境での場合とは異なる更に有害な化学物質及び酵素を生成する。また、バイオフィルム内では、種間関係を通して抗生物質耐性の広がりが高まっている。バイオフィルム(蛋白質を含むぬるぬるしたマトリクス)それ自体は、細菌だけを狙った多くの治療法から身を護る効果的な防御壁として機能する。抗菌及び管内薬剤は、バイオフィルム内の耐性酵素反応により中和されるのであれば、バイオフィルムを貫通して原因細菌に到達することすらできないであろう。このように歯内療法的疾病のパラダイムを新たに理解すれば、象牙質細管の隠れた細菌とそれら病原菌に隠れ場所を提供し保護する抵抗力の強いバイオフィルムに対抗するために、新奇且つこれまでに試みられなかった処置を考え出すことができる。
歯内療法的に関与する歯の治療に対するこれまでに説明した古典的な取り組み法では、限界があり、最終的には疾病に再感染し進行が継続するという結果を招く。
徹底的な歯内療法的細菌性壊死組織切除のための新しい論理
バイオフィルムを物理特性的に見て生卵のアルブミンと同様のものと考えると、これを金属のやすりや回転器具だけで根絶させるのは難しいことが容易に理解されよう。金属製の器具を用いてこすったりやすりがけするだけでは、潰れた卵をセラミックの床から片付けることは実質的に不可能であろう。ぬるぬるした蛋白質を含むアルブミンは常にある程度残るはずである。
生きたバイオフィルムを処置する場合、(機械的及び化学的壊死組織除去後に)象牙質細管深くに残されたぬるぬるしたマトリクスには生き残った細菌が含まれており、これら生き残った細菌がいるおかげでバイオフィルムは数時間足らずで再成長する。現在の医学的思考は、機械的及び化学的壊死組織切除法で歯科開業医がアクセスすることができない三次元根管系の領域が明らかに存在し、従って生きたバイオフィルムと病原菌によりコロニー生成が継続する、という事実に取り組む努力をしている。以上が、なぜ管内細菌及びバイオフィルム熱分解用として特別にしつらえた可撓性レーザー分散先端部で生きたバイオフィルムを狙うのかの理由である。
三次元の歯内療法上の管と象牙質細管内の生きたバイオフィルムを標的にすることで、上記の古典的な歯内療法の機械的及び化学的壊死組織除去技法は、今や、増強され、制御された低赤外線レーザー熱分解を用いた新たな局面に突入する。歯内療法的感染部と隠れた象牙質細管細菌を生きたバイオフィルムとして更に深く理解することができたので、この残されたぬるぬるの蛋白質を含むトリクスを、象牙質細管と根管系に存在する細菌性及び宿主炎症性及び破壊性酵素の全てと共に、制御された低赤外線光学エネルギーの散乱送出により完全に不活性化させることができるようになった。この光学エネルギーから熱への局部的な変換を利用すると、本発明の特別にしつらえた根管光分散先端部を出たレーザー光子は象牙質細管の全長に亘って浸透するので、バイオフィルムを(フライパンの中の卵のように)凝固させる。
機械的洗浄と整形が施された後にこの光学レーザーエネルギーを送り出すことにより、象牙質細管に残っているバイオフィルム、細菌及び有毒酵素は全て、変性し不活性となった固体の凝塊という新たな物理的形状を呈することになる。生きたバイオフィルムの熱分解は、機械的及び化学的治療法の手順が完了した後の、補助的な根管治療として使用される。レーザーによる増強法は、歯内療法の処置でこれまでアクセスできなかった根管系の領域を探し出して狙い打ちにすると同時に、細管内に残っている生きたバイオフィルムを変性させ不活性化した固体の凝塊に転換させて殺す、新奇な取り組み法を提示したものである。
レーザーによる壊死組織切除法を管隙の機械的洗浄及び整形と結びつけることが、感染した歯の古典的な歯内療法的処置に対する有効な補助的治療法となることは、従来の技術で確立されている。しかしながら、これまで、従来技術による処置は、実施が困難で問題をはらんでいた。
従来技術によるレーザー根管壊死組織切除法の説明
歯内療法学の分野でレーザーについて尋ねられる質問は、いつも「レーザーは、従来の古典的な方法に勝る改善された治療成果をもたらすことができるか」というものである。現時点では、補助的な根管治療法として米国食品医薬品局により承認されているレーザーシステムが数種類ある。そうではあっても、歯内療法的治療のためのレーザー使用の承諾は制限されたままである。これは、根管隙の範囲内では一方向にしか光学エネルギー送出ができないという生来的な問題のせいである。根管隙の機械的洗浄と整形が古典的な歯内療法学の第1の目的である。この目的のために、実際に象牙質を効率的に切除する(切削する)ことができる中間の赤外線レーザーだけが、根管やすりに代えて使用される。今までは、この処置には、エルビウムレーザー(中間赤外線アブレーションレーザー)しか承認されていなかった。しかしながら、古典的な機械的壊死組織切除法に比較して、中間赤外線レーザーによるアブレーション速度は遅く、光線は送出先端部から一方向(垂直方向か水平方向の何れか)にしか出て行くことができない。また、エルビウムレーザーは、水の発色団に対する使用可能吸収係数が最高なので、その様なレーザーの光線は、象牙質の中へ、パルス当たり2μmから10μmしか浸透しないことになる。これは、象牙質細管に残っている細菌の750μmの侵入深度に比べて遙かに短い。
根管象牙質の切除は、本発明の焦点でも所望の成果でもない。三次元根管構造に対して従来のやり方で前処置を施してしまうと、レーザーにより発生した熱で汚濁層が取り除かれ象牙質が溶けることを、タケダ(Int. Endod. J.、1999年)は見い出した。従来の技術では、多くの研究が、可撓性を有する小さな光ファイバを通して光学エネルギーを送出することにより細菌を熱で殺し管面を密封するのに、Nd:YAGレーザー(1064nm)並びに従来の歯科用ダイオードレーザー(800nm)を使用して行われている。レーザーエネルギーが象牙質細管内での細菌熱分解に有効であると見なされるためには、光学エネルギーが実際に象牙質を通って根の表面全域に浸透することが一番重要である。光学エネルギーの強さは象牙質内に深く浸透するほど弱くなるが、殺菌効果は深さ1mmまで維持される(Kline, J.Clin. Laser Med. Surg.,1997)という将来有望な研究知見がある。ここで、上記論理を、象牙質細管は光学エネルギー導体(小型導波管)の役目を果たし(Odor, Int. Ended. J.、1996年)、レーザー放射は根管の遠位側のグラム陽性及びグラム陰性細菌に負に作用する(Morits, Lasers Surg. Med.、2000年)という知見に結びつけると、レーザーを歯内療法上の細菌及びバイオフィルムの熱分解に使用することの有効性が明らかになる。
前世代のレーザー送出装置では、光学エネルギーを根管系の尖端3分の1に送り出すことは、不可能とは言えないにしろ非常に難しかった。可撓性を備えた新しい光ファイバーを用いれば、レーザーエネルギーを根管系に直接送り込み根の尖端3分の1に届けることができる。
目標組織内での最大浸透値を有する、この機能を果たすのに理想的なレーザーは、800nmから1064nmの近赤外線レーザーである。しかしながら、従来の技術のファイバー送出には、まだ解決されていない一連の課題が提示されている。光生物学の全態様において共通の主題は、単位時間、単位面積当たりの出力密度が、発現するレーザー/組織相互反応の種類に直接影響を及ぼすという事実である。高密度レーザーエネルギーは、象牙質(組織標的)に吸収されると、光熱相互作用により局所的な熱エネルギーに変わる。Nd:YAG又は800nmダイオードレーザーを用いた根管壊死組織レーザー切除術のこれまでの技術で通常使用されるパラメータの範囲内で、200μmから400μmの光ファイバーの小さな単位面積から驚くほど高密度の光学エネルギーが送出されており、このために根管隙で先端部が炭化し、近位側の象牙質が溶け出すと共に隣接する骨に熱による壊死が見られた。以下は、これらの望ましくない量子熱相互作用の説明である。
近赤外線レーザーエネルギーの一般的光生物学
Niemz(レーザーと組織の相互作用、基礎と応用、Berlin, Springer, pp45-80、2002年)は、1マイクロ秒以上のパルス持続時間で近赤外線レーザー波長を用いた場合の全ての効果は、事実上、熱であると断定している。それらレーザーによる発熱に関しては考察すべき5つの要素として、
(1)レーザーの波長と光学的浸透深度
(2)被曝組織の吸収特性
(3)時間的モード(パルス式か連続か)
(4)被曝時間
(5)レーザー光線の出力密度、が挙げられる。
理解すべき近赤外線ダイオードレーザーの第1のパラメータは、光学エネルギーの浸透深度である。近赤外線範囲のダイオードレーザーは、水中での吸収係数が非常に低く、従って80%が水分の組織(口腔粘膜と象牙質細管を含む)では深い光浸透性を達成する。これは、従来の歯科ダイオード軟組織レーザーに対して、パルス当たり浸透深度は、Er:YAG硬組織レーザーよりも10倍高くなると推定される、という意味である。近赤外線ダイオード及びNd:YAGレーザーの短い波長は、メラニンやヘモグロビンの様な分子(発色団)並びに濃く色素沈積した細菌では非常に高い吸収率ピークを有している。これは、レーザーエネルギーができる限り小さい吸収率で水を通過できるようにし、光子はそれら色素に吸収され水を通過するので組織のもっと深いところに(4cmまで)熱効果が生じることになる。この光生物学は、制御されたやり方で更に深い箇所で軟組織凝固が起こるようにし、象牙質細管内及びこれを通って伝播できるようにする。
次に留意すべきパラメータは、現在利用可能な近赤外線系のパルスモードに基づく、照射されている組織の熱効果である。現時点で、歯科治療では、近赤外線レーザーは、ダイオード系については連続波(CW)又はゲート型連続波(ゲートCW)何れかのパルスモードで、又はNd:YAGレーザーについては自走パルス(FRP)モードで、光子を放射する。レーザーの光子エネルギーに対する組織被曝の持続時間が、達成される熱組織相互作用を決定することになるので、上記事実は実施上非常に重要である。
CW又はゲートCWモードでは、レーザー光子は或る単一の出力レベルで連続した流れとして放射される。流れがゲート型の場合、光線の経路に配置された機械的ゲートにより光線が断続的に閉止され、基本的にはレーザーエネルギーをオンとオフに切り替える。この型式のレーザーシステムのオンオフサイクルの長さは、一般的には数ミリ秒程度であり、「パルス当たり出力」はCW光線の平均出力に維持される。Nd:YAGレーザーは、FRPモードでは、数ミリ秒程度の極めて短時間の間隔でピークエネルギーが非常に高いレーザーエネルギーを生成することができる。
例えば、上記レーザーの内で一時的パルス持続時間が100マイクロ秒のレーザーで、パルスが毎秒10回(10Hz)で送出されるレーザーは、レーザー光子が1秒(合計時間)の1000分の1の時間だけ組織に当たり、1秒の内の残りの時間はオフになっていることを意味する。これは、組織に、次のレーザーエネルギーのパルスが放射されるまでに十分な冷却時間を与えることになる。パルス間の間隔が長いことは、組織の熱緩和時間にとって好都合である。CW動作モードでは、常にパルス式エネルギー印加よりも発熱量が多くなる。
一時的パルスが長すぎる(又はCWへの被曝が長すぎる)場合は、組織の熱緩和効果が打ち負かされ、標的以外の領域に対する不可逆的損傷が起こる場合もある。適切な冷却と適度の被曝時間が実行されると、上記問題は回避される。つまり、組織のレーザーエネルギーとの相互作用で最終的に到達する温度だけが問題なのではなく、この温度上昇の一時的持続時間も、望ましい組織効果の誘導と不可逆性の組織損傷の抑制に重要な役目を果たす。ナノ秒又はピコ秒のパルス(今日の歯科レーザーは達成できない)であれば、レーザーパルスの間の熱拡散は無視できる程度であろう。
光線の出力密度は、レーザーにより生成されたピーク出力を集束ビームの面積で割ることにより求められる。これは、エネルギー送出に使用されるファイバーの直径(200nm、400nm、600nm)が小さければ小さいほど、そしてファイバーが組織に近ければ近いほど(即ち、組織に触れずに、スポットの大きさが小さいほど)、出力密度(光線の面積平方mm当たり放射される光子の量)は大きくなり、熱相互作用も大きくなることを意味する。非接触の「清浄な」先端部では、考慮すべき2つの最も重要な点は、光線のスポットの大きさと、ファイバー先端部から組織までの距離である。歯科用近赤外線レーザーを「高温先端部」ファイバーで「接触モード」で使用した場合(即ち、全根管に適用)、エネルギー送出、従って光生物学は、実質的に変化する。
標的の組織にレーザー光子を送出するための手段となることに加えて、ダイオードレーザー装置の先端部の石英ファイバーは、先端部が炭化し、即ち「活性化した」場合には、「高温先端部」の切削又は溶解装置として機能することになる。活性化したむき出しのファイバー先端部が組織及び流体に接触すると(歯の神経管に配置された場合を想定)、壊死組織片が即座に先端部に積もる。この壊死組織片はファイバーを通って伝播する強力な近赤外線エネルギーを吸収し、その結果、先端部が壊死組織片を加熱して瞬時に炭化させる。近赤外線レーザー光子からのエネルギーは、この新たに炭化した先端部に吸収され続けるので、先端部は赤熱状態になる(726℃以上)。Grand, S.他、変性による石英光ファイバーでの伝達損失、Lasers in Surgery and Medicine, 21:65-71(1997年)。一旦この状態が発現すると、(「黒体放熱体」となった)ファイバーの先端部は、白熱して輝いて、二次的な可視光放射を生成する。近赤外線歯科用レーザーからのより多くの光子が黒く炭化した先端部に衝突し続け、有機体壊死組織片に吸収されるので、先端部では急激な温度上昇が見られる(Kuhn, T., 黒体理論と量子の不連続性、1894-1912, Chicago, The University of Chicago Press、1978)及び(Planck, M., 熱理論)。
ダイオードレーザー処置で「高温先端部」として知られているのは、この炭化し輝いているファイバー先端部の強烈な熱のことである。象牙質細管にこの「高温先端部」が在ると、光生物学と、レーザーと組織の相互作用は、一次発光近赤外線光子しか放射しない、炭化していない非接触のファイバーを使用した場合に見られるものとは、随分と異なったものになる。従来の技術では、上記ファイバーの実態(即ち「高温先端部」)は克服することができず、このことを医師ははっきりと理解して、安全で予測可能な根管処置が上記レーザーで実現できるようにしなければならない。
「高温先端部」と「黒体放熱体」の光生物学
ファイバー先端部の強烈な熱とそれに続く炭化の熱力学的及び光生物学的な派生する結果を理解するには、黒い固体がどの様に電磁エネルギーを吸収してその後再放出するのかを少し復習するのが有用である。1800年代半ばに、Gustav Kirchoffは「高温の不透明の物質は放射の連続スペクトルを発する」ことを観察した。彼は、黒い固体物体は熱せられると「輝い」て光を発することを観察した。この現象は、「黒体発光」と呼ばれている。1900年、Max Plankは、高温の固体からの熱と光の放射に関する利用可能な実験データを調査することにより、量子力学の幾つかの基本的な規則(黒体エネルギー放出は原子の熱放射と熱励起により起こる)を説明し明らかにした。根管隙でダイオードレーザーを接触モードで使用する歯科医は、これより、根管処置の一環として使用している「高温先端部」(黒体)に関する量子実態の幾つかについて正しく評価することになろう。
(1)理論的には、黒体は全ての光を吸収する物体である(即ち、炭化した先端部はレーザーから発せられる近赤外線光子の大部分を吸収する)。
(2)炭化した先端部はレーザー光子を吸収し続けて、加熱される(即ち、「高温先端部」へのレーザー発射が長いほど、又は出力エネルギーが大きいほど、先端部はより熱くなる)。
(3)放射される光子のエネルギーとピーク波長は、先端部の温度に依存する(即ち、先端部が熱くなるほど、先端部から発せられる光、赤外線、可視光線、及び紫外線の総量が増える)。
(4)加熱された先端部は、赤外線、可視光線、紫外線の波長の連続スペクトルとして光(光子)を発する(即ち、レーザーの一次発光による単一の赤外線波長だけではなくなる)。
(5)全ての波長において、より熱い物体はより明るい。
接触型「熱い先端部」を用いた場合の光生物学的差異
上記のように、接触モードでは、近赤外線光子(レーザーの一次発光)の大部分は黒体先端部と炭化した凝塊に吸収され、「高温先端部」を生じる。従って、結果的に生じた先端部に付随する凝固帯は、象牙質細管と組織に対する「高温先端部」の曝露時間と、先端部からそれら組織への熱伝導によって決まる。レーザーの一次発光が炭化した先端部を通るとこの様に大幅に減少することは、Grant他により詳しく研究され(変性による石英光ファイバーでの伝達損失、Lasers in Surgery and Medicine, 21:65-71(1997年))、ここで彼らは、接触型レーザー外科処置時の「ファイバー相互作用」にとりわけ注目した。Grantは、ファイバーの先端部に組織が付着してレーザー光の大部分が吸収される状態では、瞬時に炭化の起こることを示した。
ファイバー先端部の炭化は、温度上昇を生じる原因となり、その結果ファイバーの光学品質に多大な損傷が生じる(温度は900℃以上に急激に上昇する)。彼らは、一旦、先端部に炭化が起こると、先端部はもはや適切な光導体として機能しなくなることも見い出した。レーザーは、もはや一次光子で適切に光凝固させることができなくなり、むしろ、先端部の強烈な熱のため、組織を切開及び焼灼することになる。
光伝送ファイバーのガラス部分が、2つの領域、即ち、ストランドの中心を通って走るコアと、コアを取り巻くクラディング、で構成されていることを思い出すことも重要である。クラディングは、コアとは屈折率が異なり、レーザー光がファイバーを通って伝送される間にレーザー光を反射してコアに戻す反射器として機能する。また、レーザー放射時間を更に長くし出力を更に大きくすると、ファイバー先端部が更に深刻な熱に起因する損傷を被ることで、レーザー放射の順方向出力伝送が大幅に低下する。
360μmファイバーを830nmダイオードレーザーで、3ワットCWで試験したところ、本発明の発明人(レーザー出力計を使って試験を行った)は、組織の壊死組織片によるファイバーの炭化で、順方向出力伝送が瞬時に30%損なわれることを見い出した。放射時間が継続し組織の壊死組織片が堆積するにつれ、損失は更に大きくなることが観察された。
この現象は、WillemsとVandertopにより生体内で確かめられた。接触型レーザー支援の神経内視鏡検査は、事前処置された「黒体」ファイバー先端部を使用して安全に実施することができ、この実験データは、Laser Surg. Med.2001;28(4):324-9に掲載されている。ダイオードとNd:YAGレーザーを使用して、ウサギの大脳組織の切除効率について、従来型のファイバー先端部と被覆を施したファイバー先端部を比較した。従来型のファイバー先端部では、有害な影響が組織の奥深くまで見られることが組織学と熱映像によって実証された。被覆を施したファイバーを使用した場合には、殆ど全てのレーザー光が熱エネルギーに変換され(先端部の炭化に伴い)、先端部自体の温度は瞬時にして切除に適した温度になったと、彼等は報告している。また彼らは、切除は低いエネルギーと出力(1秒間に1ワット)で観察され、熱効果は表層構造までに限られていたと報告している。
このように熱効果が表層構造までに限られる結果、レーザーの一次発光の大部分が先端部により吸収されると、レーザー放射の順方向出力伝送が減衰される。その結果、光伝送品質が損なわれる。また、重大なこととして、先端部への損傷が原因でファイバー伝送品質が損なわれると、先端部から伝送されるエネルギー、焦点、及びエネルギーの均質性が影響を受ける。一次エネルギーは、先端部を出る順方向出力伝送にはなお利用できても、組織浸透と光凝固に対して効果を発揮するには程遠いほどに小さい。現在の技術における接触モード又は非接触モードのダイオードレーザーには、重要且つ根本的に異なる生物学的因果関係が存在する。
事実、ダイオード送出先端部の上記量子熱相互作用に基づいて、且つこの高エネルギー密度の問題の故に、国際標準は従来技術に合わせて設定されている。この標準では、この従来技術に合わせて、ダイオードレーザーファイーバーは、健康な根尖周囲構造に不可逆性の傷害を負わせることになる臨界的な温度上昇を発生させること無く、歯の根尖停止位置に1秒よりも長い期間留まることはできないと規定している。これは、支持し維持するのが難しい標準である。根管壊死組織切除法に使用する場合の歯科用ダイオード及びNd:YAGレーザーに対して設定されている国際標準は、表1に示す通りである。
Figure 2007532176
従来技術は以下に説明する本出願の方法を必要としている。歯内療法的治療が行われる歯に従来の機械的及び化学的前処置を施した後、根管隙を無菌ペーパーポイントで十分に乾燥させる。光ファイバーを挿入して根尖停止位置との摩擦無しに曲げて根管隙に入れることができるように、根管開口部を最小でもISO30まで広げる。この制限はファイバーの破損を防止することが目的である。一旦レーザーを活性化させると、臨界的な温度上昇と根尖周囲組織への不可逆的損傷を回避するために、治療医は1秒間しか根尖停止位置に留まることができない。この1秒間照射を行った後、活性化したレーザーファイバーを回転させながら根尖部から歯の歯冠部まで移動させ、内部象牙質構造全域への到達を試みる。これが終わると、従来のやり方で根管隙をガッタパーチャで密封する。ガッタパーチャで密封する前に適切な細菌熱分解を成し遂げるため、この処置を3週間コースで3回行うことを薦める。上記従来技術による処置のうち適用可能な段階は、本発明の器具と処置過程を用いれば以前にも増して効果的に実施することができる。
図1及び図2のシステム
図1及び図2に示すように、本発明は、レーザー増強型根管間質温熱療法(「LARIF」)とでも呼ぶことのできる処置に使用するための、専用の可撓性光学送出プローブ20を提供している。このプローブを使えば、ヒトの歯の根管22の細菌とバイオフィルムの熱分解による根絶がやり易くなる。光学ケーブル26、レーザー発振器28、タイマー30、電源装置32、及び手/足制御装置34が、光学アダプタ24を介してプローブに作動的に接続されている。
望ましくは、光学プローブは、サファイヤ及びジルコニウムから成る等級の部材で構成され、光学プローブの全長に沿い横方向360度に亘って光学的エネルギーを分散させる光拡散面を有しており;光学ファイバーは直径が400μmから1000μmの範囲にあり;光学プローブは直径がISO20からISO70の範囲にあり;レーザー発振器は、低赤外線波長範囲700nmから1100nmの放射を生成し;光ファイバーはレーザー発振器と光学プローブの近位端の入口との間に作動的に接続されている。この設計は、光学プローブが、歯の根管部に実質的にその全長に亘って挿入するのに十分な長さを有し、或るエネルギー密度で且つ根管系全域の細菌及びバイオフィルムを破壊するのに必要な期間に亘って放射を散布するために、プローブから根管全域に向けて放射を分散させるようにしている。
このレーザー根管プローブは、プローブの全長に沿って散乱光学エネルギーの側方放射を起こす拡散面を有している。或る実施形態では、この拡散面は粗面である。別の実施形態では、この面は艶消されている。この構造は、根管系の象牙質に送り込まれる光学エネルギーにおける以下に述べる独特な物理的特性を可能にする。
或る形態では、プローブ20は先細又は円錐状である。先に示したように、これは改造された先端部表面360度全域に亘って半径方向に近赤外線光子を散乱させる。この先細又は円錐状の艶消サファイヤ又はジルコニウム分散プローブを用いると、三次元根管隙と象牙質細管内でのバイオフィルム熱分解を有効にする近赤外線光学エネルギーの均一且つ予想可能な照射量を得られ、これにより光子は局所的な熱に変換される。代表的な(光子の)分散現象は、H. フジイ他の「端面を粗らした光ファイバーの光散乱特性」、Optical and Laser Technology, PP.40-44、1984年2月、に概括的に論じられている。
図示の実施形態では、根管間質温熱治療プローブの外表面は、すりガラス効果又は艶消効果を出し、近赤外線レーザー光子の側方送出又は散乱を可能に且つ強化できるように、肌理が付けられている。実際、プローブは、直線状の散光体又は放熱体を形成している。プローブ自体は、入力モード非依存型であり、即ち、散光体から出る光の分布は連結モードとは無関係ということである。上記の器具を使えば、細菌及びバイオフィルム熱分解に効果を及ぼすために、照射用の光学的な近赤外線エネルギーを三次元根管系全域に亘って均等に分配することができる。
(1)プローブが根管内に静止している間に、半径方向に放射された一次レーザーの光子を、プローブの長手方向の全長に沿って、象牙質細管を含む根管系22の三次元構造全体に亘って、制御されたやり方で利用することができる。
(2)プローブの拡散面は、根管構造に着座しているときには、隣接している組織が放射に曝される時間を制御しながら、プローブの長手方向全長に亘って光学的エネルギーを散乱させることができるようにする。
(3)実際には治療を正確に実施することができないことに起因する、象牙質の又は根尖周囲の組織を焦がすか又は溶かすほどの高密度光学エネルギーの集中は存在しない。具体的には、「黒体」の形成は抑制される。
(4)歯科開業医は、単純な連続波レーザーモードを使用することができるようになるので、弱いレーザーエネルギーを使用ができるようになり、処置時間を長くすることができるので、側副組織の安全に関する余裕が大きくなる。
この処置は、側副組織並びに健康な根尖周囲構造への被害を回避する。主な関心事項は、根尖周囲組織及び/又は歯根膜靱帯及び骨につながる根の外表面での臨界的温度上昇の回避である。何れの領域も1分間を超える期間10℃の温度上昇に見舞われれば、歯根膜靱帯壊死、歯強直及び/又は歯根吸収が起きかねない。(Eriksson, J. Prosthet. Dent.、1983年。)
治療好機枠
近赤外線歯科用レーザーを用いて安全で予測可能な細菌細胞死と生きたバイオフィルム熱分解を実現するためには、操作者は、レーザーとヒトの組織との熱相互作用により与えられる非常に狭い治療枠を認識していなければならない。正常なヒトの体温は37℃であり、この温度は、象牙質細管内の急激な細菌成長曲線に一致する。近赤外線歯科用レーザーで放射光学エネルギーが口腔組織に印加されると、レーザー照射領域の温度は、瞬時に上昇し始める。組織温度が10度上昇する毎に、組織との有害な生物学的相互作用が生じる。45℃で、残りの軟組織が温度上昇状態になる。50℃で、細胞酵素活性の低下が起こり細胞によっては不動化が見られる。60℃では、細胞タンパク質とコラーゲンの変性が生じ、凝固が始まる。80℃では、細胞膜の透過が起こる。そして、100℃で、水分と生体物質の蒸散が起こる。根尖周囲又は歯根を取り巻く歯根膜靱帯構造で温度上昇が80℃以上を記録した期間が長ければ(5秒から10秒)、骨、歯根膜、及び歯の構造に不可逆性で且つ望ましくない被害が生じる。
近赤外線歯科用ダイオードレーザーで光熱分解(熱による死)と生きたバイオフィルム凝固を実現するためには、目標組織及び象牙質細管において所与時間の間に著しい温度上昇が起こらねばならない。感染性の口腔細菌叢の大部分は、周囲の象牙質細管が50℃の温度に達するまでは、殆ど衰えることなく成長し続ける。この温度で、細胞成長曲線は勢いを失い始める。
60℃では、系内の存在するかもしれない好熱生物を除いて、殆どの細菌の成長が止まる。60℃から80℃は、有意な細菌の死及び生きたバイオフィルムの凝固を起こすために時間依存方式で一般に受け入れられている温度範囲である。生きたバイオフィルムのぬるぬるしたタンパク質を含むマトリクスから固体凝固物への位相変化を起こすための必須条件は、熟練した制御と送出の下で、組織及び組織領域に短時間だけ上記の温度範囲(60℃から80℃)を実現することである。この必須条件は、近赤外線歯科用レーザーが、健康な口腔組織に対して過度の被害を発生させること無く細胞熱分解に有効となるように起こらなければならない。キーポイントになる要件は、歯の周辺軟組織領域での臨界的温度上昇を回避することである。本発明のレーザー増強型根管光学分散先端部を得た今、上記のことは可能となった。
本発明による熱分解の標的となる以下に挙げた細菌は、特に歯内療法的感染に関わるものである。歯内療法的感染を引き起こす細菌には、限定するわけではないが、フゾバクテリウム属、ペプトスレプトコッカス属、ユーバクテリウム属、プレボテラ属、乳酸菌属、連鎖球菌属、バクテロイデス属、エンテロコッカス属、アクチノミセス属、及びプロピオン酸菌属が含まれる。
図3の治療的処置
図3に示すヒトの歯の根管の治療過程を図3に示しており、この過程は、ステップ36の、根管の細長い空隙全域から細菌とバイオフィルムを除去する段階と;ステップ38の、細長い空隙全域に壊死組織切除を施す段階と;ステップ40の、細長い空隙全域に細長い光学プローブを挿入する段階と;ステップ42の、低赤外線放射を長手方向に光学プローブの全長に送り込み、細長いプローブの面を通して横方向に、根管壁の表面へと伝送する段階と;前記伝送する段階は、前記根管及びその隣接部位の細菌及びバイオフィルムの残存物を破壊するのに十分なエネルギー密度と十分な時間で、伝送する段階であり、更に;ステップ44の、根管空隙を根尖密封物で密閉する段階と、を含んでいる。
熱力学状態の基本法則によれば、エネルギーの交換及び伝達は少なくとも2つのやり方で起きる必要があり、その1つが熱伝達である。本発明に活用される光学赤外線エネルギーの吸収による熱滞積は、具体的には、三次元根管隙での細胞排除と生きたバイオフィルム凝固の補助的方法として用いられる。
600nmから1100nmの低赤外線スペクトルの半導体ダイオードとNd:YAGレーザーは、象牙質細管において切除効果無しに好ましい浸透曲線を示すことから、上記目的のために使用される。赤外線放射のこのスペクトルは水に対する吸収率が低いので、放射エネルギーの生体組織への浸透率は3cmよりも奥に到達するほどに深い(Nimetz, M. Photobiology2002年)。水の発色団に対する低い吸収率と、組織内の深い浸透率というこれらの特性のおかげで、本発明の固有の必要性に応える優れたスペクトルになっている。上記固有の特性により、レーザー増強型根管分散先端部から象牙質細管に送り出された近赤外線レーザーエネルギーは、三次元根管隙内の何処であろうと、細菌と生きたバイオフィルムを探し出して狙い撃ちし、凝固させて排除するという目的を達成する。
この光熱分解は、現在市場に出回っている従来型の低赤外線歯科用レーザーの多くで、巧く作動する。そのような歯科レーザーは、容易に入手することができ、810nm、830nm、980nm、又は1064nmの波長で機能する。上記各波長は、事実上細菌に対する透過性を有し、光熱変換を介した光熱分解と生きたバイオフィルムの凝固は、細菌死を起こすことになる方法である。
本発明に適用することができる別のダイオードレーザーでは、操作者が、出力を緩やかに落として処置領域の被曝時間を更に延ばし、完全なバイオフィルムの凝固を伴って又は伴わずに、選択的な細菌死を得ることができるようになっている。これは、二波長(870nmと930nm)ダイオードレーザーである。このレーザーは、光熱効果に代わり光損傷効果で細菌を殺すように設計されている。波長(870nmと930nm)は、選択された症例において、生きたバイオフィルム内の細菌に対して不透過性であり、1つ又はそれ以上の細菌細胞内発色団又は色素と致死作用を起こして、細菌細胞に損傷を与えて死に至らしめるので、上記効果を発揮できる。このレーザーは、根管分散先端部に連結すると、生きたバイオフィルムの境界を突き抜けて選択的に病原菌を狙い打ちするので、薬理的又は機械的方法よりも更に効果的である。また二波長レーザーは、必要なエネルギーが他の従来型の低赤外線レーザーよりも少なく、細菌に対する治療の枠が拡大する。このレーザーは、細菌発色団を既に選択的に狙い撃ちしているので、光熱分解及び凝固と共に光損傷によっても細菌を殺す。
作用
本発明は、この様に、従来型の歯科用半導体ダイオード及びNd:YAGレーザーで現在利用可能な治療好機枠を拡大する器具と方法を提供している。この近赤外線レーザーエネルギーは、光学的根管先端部を通して散布され、単純且つ予測可能なやり方で且つ隣接する象牙質構造を傷つけずに、生きたバイオフィルムを凝固させて殺す。
本発明の器具と処置過程は、多くの歯科専門家が現在所有している、代表的には波長範囲が800nmから1064nmの近赤外線で作動する、レーザーシステムと共に使用できるように適合化されている。
赤外線スペクトルのこのようなレーザーシステムの多くは、歯科学及び医学において病原菌を殺すために使用されてきた。紫外線スペクトルも、細菌DNAを攻撃し細菌を殺すために使用されている。しかしながら、多くの紫外線波長は、ヒトの組織に対して有害な影響を与える。ここ数年、歯科では、組織の切断、焼灼、及び細菌熱分解に、近赤外線半導体ダイオードとNd:YAGレーザーが使用されている。最も広く使用されている歯科用近赤外線の4大波長は、810nm、830nm、980nm、及び1064nmである。これらの近赤外線レーザーは、水に対する吸収曲線が非常に低く、従って、非常に深い組織浸透曲線を描く。これらの波長は、殆どの口腔細菌叢に対してほぼ完全に近い透過性を有するので、有機体の発色団を直接狙い撃ちにするのではなく、細菌死は、レーザーによる光学エネルギーから熱への局所的変換によってもたらされる、細菌と生きたバイオフィルムに対する熱滞積の働きだけによるものである。この熱滞積は、光吸収の経路を追従するので、歯内療法的レーザー処置時の過剰な出力又はエネルギー密度は、患者にとって有害な熱関連効果を引き起こす。
近赤外線歯科レーザーは、口腔の病原体、特に歯内療法的組織の病原体を殺し、歯内療法的感染症を治療するために使用されてきた。これは、歯科科学において、生きたバイオフィルムと、艶消加工された光学的送出先端部を通して光学的光子を散布することとが明解に理解される前に、既に試みられている。この類の全ての処置では、治療好機枠と安全性が明確に時間依存性であることが分っている。この狭い枠は、従来型の近赤外線歯科用レーザー送出システムの製造された機構と生来的な熱力学により作り出される赤外線光学エネルギーの送出が強力で深いために、存在するものである。従来技術の送出は、常に200μm又は400μm光ファイバーの遠位端を通して行われてきた。
上記論理的な進行が実証するように、本発明のレーザー増強型根管分散先端部は、医師が既に持っている既存の低赤外線レーザーと共に、及びこれに連結して、使用することができる。
レーザー誘導型間質温熱療法
レーザー誘導型間質温熱療法(「LITT」)には、ヒト又は動物の疾病又は腫瘍部位の組織の異なる量の破壊を取り扱う熱機械的現象が関わっている。LITTを達成するために、レーザー光子の選択的吸収により、関与する組織の温度を所与の期間中に所与の閾値温度より高い温度まで上昇させる。それら光子は、組織内に光学エネルギーを散乱させ拡散させるように条件付けられた光ファイバーを介して組織に伝送される。この光学エネルギーを伝送するために使用されるファイバーは、間質温熱療法ファイバー(ITT)と呼ぶことにするが、一般的にはガラススリーブにより目標組織の熱から防護されている。防護されていないファイバーでは、組織の残骸と凝固物が在れば、溶けるか破壊される温度に至るほどの著しい温度上昇が見られることになろう。
LITTの科学原理を、レーザーファイバーコネクタを介してNd:YAG又はダイオードレーザーに接続された、可撓性で粗面の合成サファイヤ(又は他の耐熱光学材料)先端部に利用して、散乱及び拡散により光学エネルギーを、象牙質細管を含む三次元根管系全域に効果的に与えることが、本発明の意図するところである。この発明では、LITT根管先端部は、従来の機械的及び化学的根管整形及び壊死組織切除が行われた後に残っている細菌と生きたバイオフィルムに作用して凝固させるために使用される。
上記のように、本発明の目的は、特別に設計されたLITT可撓性根管先端部で生きたバイオフィルム及び病原菌を直接狙い撃ちすることにより、近赤外線歯科用レーザーにより与えられた治療好機枠を拡大することである。この先端部は、LITTの原理及び論理を使用して根管系全域に一度に光学エネルギーを散布するように設計された、粗面の又は艶消の合成サファイヤ(又は他の硬質耐熱光学材料)である。それらLITT根管系先端部は、大きさがISO20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75に対応する。本発明によるLITT根管先端部の長さは、10mmから40mmの範囲で様々である。
上記方法において、レーザー増強型根管間質温熱療法先端部(LARIT)を用いて、生きたバイオフィルム発色団を直接狙い撃ちすることにより、810nm、830nm、二波長(870nmと930nm)、980nm、又は1064nmの歯科用レーザーの操作者は、出力を落として処置に利用できる時間を引き延ばして、凝固と熱分解による細菌の死と生きたバイオフィルムの位相変化を得ることができる。生きたバイオフィルムと標的の細菌におけるこの選択的な光学エネルギーから熱への変換は、系全域に対するより少ないエネルギー送出でより迅速で完全な細菌死と凝固を引き起こし、これにより近赤外線歯科用レーザーの治療好機枠を拡大する。これは、歯科患者にとってより安全な処置につながり、より多くのコラーゲン、骨、及び健康な軟組織を、光学的エネルギーの送出による不可逆性損傷から保護する。
レーザーエネルギーは、市販の歯科用近赤外線レーザーにより、所有権のあるのファイバーコネクタを介してLARIT装置に接続された円錐状の先端部を有する直径200μm乃至100mの外科処置用ファイバーを通して送出される。レーザーエネルギーは、連続波又はパルスモードで送出される。レーザーエネルギーは、LARIT装置を根管系内の根の尖端から1mm乃至2mmの位置に静止させた状態で、面積当たり5秒から120秒送出される。LARIT装置を通してレーザーから生成されるエネルギーは、処置時間中200ミリワット以上400ミリワット未満である。
本発明は、以下に記す近赤外線歯科用レーザーの重要な特徴及び特性を利用している。(1)現在使用中の広く市販されている近赤外線歯科用レーザーは、上記処置を用いた細菌の熱分解にとって完璧な範囲の波長を有している。(2)LARITと共に使用する場合の出力パラメータ、200mw乃至400mwは、現在利用可能な歯科レーザーで使用するのに適切である。(3)本発明の処置過程と製品は、近赤外線歯科レーザーと共に使用する場合、細菌の熱分解と生きたバイオフィルム凝固専用の従来型の歯科用切除用レーザーよりも、より安全でより断定的である。
本発明による根管処置に使用される新奇なレーザー構造を示している。 図1の構造の拡大破断図であり、レーザーエネルギーの周囲組織への拡散放射を示している。 本発明が関与する処置過程のフロー図である。

Claims (22)

  1. ヒトの歯の根管内の細菌及びバイオフィルムを熱分解により根絶するためのシステムであって、
    細長く可撓性を有する光学プローブと、少なくとも1つの光ファイバを通して前記光学プローブの遠位端と連通しているレーザー発振器と、前記レーザー発振器に作動的に接続されている電源装置と、前記電源装置と前記レーザー発振器に作動的に接続されている制御装置と、を備えているシステムにおいて、
    (a)前記光学プローブは、サファイヤとジルコニウムから成る等級の部材で構成され、前記光学プローブの全長に沿い横方向360度に亘って光学的エネルギーを分散させる光拡散面を有しており、
    (b)前記光ファイバーは、直径が400μmから1000μmの範囲にあり、
    (c)前記光学プローブは、直径がISO20からISO70の範囲にあり、
    (d)前記レーザー発振器は、700nmから1100nmの低赤外線波長範囲の放射を生成し、
    (e)前記光ファイバーは、前記レーザー発振器と前記光学プローブの近位端の入口との間に作動的に接続されており、
    (f)前記光学プローブは、前記歯の根管の概ね全長に亘って挿入できる程度の長さを有しており、
    (g)前記光学プローブは、前記プローブからの前記放射を前記根管全体に亘って横方向に分散させ、
    (h)前記制御装置は、前記根管内の前記細菌を破壊するのに必要なエネルギー密度と時間で、前記放射を分散させるために前記レーザー発振器にエネルギーを供給する、システム。
  2. 前記時間は、前記根管内の病原性微生物を破壊するのに十分である、請求項1に記載のシステム。
  3. 前記レーザー発振器はダイオードであり、前記放射は連続モード放射である、請求項1に記載のシステム。
  4. 前記レーザー発振器はダイオードであり、前記放射はゲート型連続モード放射である、請求項1に記載のシステム。
  5. 前記レーザー発振器はNd:YAGレーザーであり、前記放射は自走パルスモード放射である、請求項1に記載のシステム。
  6. ヒトの歯の根管を治療する処置過程において、
    (a)前処置過程として、前記根管の細長い空隙全域から細菌とバイオフィルムを除去する段階と、
    (b)前記細長い空隙全域に壊死組織切除を施す段階と、
    (c)前記細長い空隙全域に細長い光学プローブを挿入する段階と、
    (d)低赤外線放射を長手方向に前記光学プローブの全長に送り込み、前記細長いプローブの面を通して横方向に、前記空隙を画定している前記根管の表面へと、そして前記根管に隣接している象牙質を通して、伝送する段階と、
    (e)前記伝送する段階は、前記根管とその隣接部位の前記細菌及びバイオフィルムの残存物を破壊するのに十分なエネルギー密度と十分な時間で行われる段階であり、更に、
    (f)前記空隙を根尖密封物で密閉する段階と、から成る処置過程。
  7. 前記光学プローブは、サファイヤとジルコニウムから成る等級の部材で構成されている、請求項6に記載の処置過程。
  8. 前記光学プローブは、前記光学プローブの全長に沿い横方向360度に亘って光学的エネルギーを分散させる光拡散面を有している、請求項6に記載の処置過程。
  9. 前記放射は、前記レーザーから前記プローブに、直径が400μmから1000μmの範囲にある少なくとも1つの光ファイバーを介して伝送される、請求項6に記載の処置過程。
  10. 前記光学プローブは、直径がISO20からISO70の範囲にある、請求項6に記載の処置過程。
  11. 前記レーザー発振器は、700nmから1100nmの低赤外線波長範囲の放射を生成する、請求項6に記載の処置過程。
  12. ヒトの歯の根管内の感染を治療するための処置過程において、
    (a)前記根管の細長い空隙から細菌とバイオフィルムを機械的及び化学的に除去する段階と、
    (b)前記細長い空隙を機械的に整形する段階と、
    (c)前記細長い空隙に細長い光学プローブを挿入する段階と、
    (d)低赤外線放射を長手方向に前記光学プローブの全長に送り込み、前記細長いプローブの面を通して横方向に、前記空隙を画定している前記根管の表面へと伝送する段階と、
    (e)前記伝送する段階は、前記根管とその隣接部位の前記細菌及びバイオフィルムの残存物を破壊するのに十分なエネルギー密度と十分な時間で行われる段階であり、更に、
    (f)前記空隙を根尖密封物で密封する段階と、から成り、
    (g)前記光学プローブは、サファイヤとジルコニウムから成る等級の部材で構成されており、
    (h)前記光学プローブは、前記光学プローブの実質的に全長に沿い横方向360度に亘って光学的エネルギーを分散させる光拡散面を有しており、
    (i)前記放射は、前記レーザーから前記プローブに、直径が400μmから1000μmの範囲にある少なくとも1つの光ファイバーを介して伝送され、
    (j)前記光学プローブは、直径がISO20からISO70の範囲にあり、
    (k)前記レーザー発振器は、700nmから1100nmの低赤外線波長範囲の放射を生成する、処置過程。
  13. 前記感染はフゾバクテリウム属を含んでいる、請求項12に記載の処置過程。
  14. 前記感染はペプトスレプトコッカス属を含んでいる、請求項12に記載の処置過程。
  15. 前記感染はユーバクテリウム属を含んでいる、請求項12に記載の処置過程。
  16. 前記感染はプレボテラ属を含んでいる、請求項12に記載の処置過程。
  17. 前記感染は乳酸菌属を含んでいる、請求項12に記載の処置過程。
  18. 前記感染は連鎖球菌属を含んでいる、請求項12に記載の処置過程。
  19. 前記感染はバクテロイデス属を含んでいる、請求項12に記載の処置過程。
  20. 前記感染はエンテロコッカス属を含んでいる、請求項12に記載の処置過程。
  21. 前記感染はアクチノミセス属を含んでいる、請求項12に記載の処置過程。
  22. 前記感染はプロピオン酸菌属を含んでいる、請求項12に記載の処置過程。
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