JP2007530121A - 遺伝子治療 - Google Patents
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Abstract
本発明は、人間または動物の身体部位の細胞に核酸(30)を導入する方法であって、上記身体部位から輸出管をほぼ閉塞することと、上記輸出管を経て圧力下に上記身体部位に上記核酸を導入することとからなる方法を提供すると共に、身体の或る部位の細胞に上記核酸を導入する装置であって、上記核酸を含む配合液を保持するリザーバと、該リザーバと流体連絡していて、上記身体部位の上記輸出管を経て上記身体部位に上記配合液を運ぶカテーテル・チューブと、カテーテルで運ばれる液体を加圧する圧力発生手段と、ほぼ上記輸出管をほぼ閉塞する閉塞手段(8)とを含む装置を提供する。
【選択図】 図5のc
【選択図】 図5のc
Description
本発明は、人間または動物の身体の標的臓器、特に肝臓へ核酸を導入するための装置および方法に関する。
遺伝子治療は遺伝疾患や後天性疾患の治療において途方もない潜在的利点を持っているが、現行の遺伝子治療技術に対する主なハードルの1つは、臨床で見られるトランスフェクションレベルの低さである。遺伝子治療は、トランスフェクションが必然的に効果的な遺伝子発現の必要条件となるので、治療用の核酸を組み入れたベクターを取り込む動物の細胞に依存する。たとえ投与された核酸がコード配列ではなく制御配列であったとしても、なお細胞に取り込まれ、細胞タンパク質産生に影響を与えなければならない。
肝臓が身体で果す中心的役割はタンパク質産生であり、肝癌の罹患率により肝臓が遺伝子治療の重要な目標となっている。しかしながら、全身性注入、たとえば、腕の静脈(肘正中皮静脈)への注入では、肝細胞に有意なトランスフェクションを行えなかった(Habib et al., Human Gene Therapy 12: 219-226 [2001])。肝細胞は肝臓の主要細胞種であり、抗体用のタンパク質を除くすべての血漿タンパク質の合成を含む、広範囲にわたる物質の合成、変性、蓄積を担っており、提案された治療がなんらかの正常な肝機能に関係する場合に肝細胞のトランスフェクションを行わなければならない。
肝動脈への局所的注入を行う試み(Habib et al.(既出)および Reid et al., Cancer Research 62: 6070-6079 [2002])がなされてきたが、この場合でも、肝細胞のトランスフェクション率はとても満足できるものではなかった。
提案された治療が癌治療であるときには腫瘍に直接注入することがしばしば提案されてきたが、手術または放射線治療後に再発する癌のほとんどは多病巣性であるから、これらの状況では腫瘍内注入は適していない。
したがって、効果的な遺伝子治療という結果になり得る効率で肝細胞にトランスフェクトする新しい方法についての要望がある。
マウスでは、流体力学的な注入を用いて肝細胞をトランスフェクトしていた(Liu et al., Gene Therapy 6: 1258-1266 [1999])。この場合、関連する遺伝子をコードするプラスミド・ベクターを含む大量の流体を強制的かつ迅速に動物の尾静脈に注入した。使用量は1〜2mlであり、これはマウスの総循環量に等しい。生理食塩水中のプラスミドの配合物は大静脈を通って心臓に行く。マウスの心臓はこの量を処理できず、プラスミドを運ぶ液体を強制的に肝臓の肝静脈に送る。この技術によれば、加えられた圧力が、細胞膜の流動性に起因して肝細胞によるプラスミドの取込みを成功させていた。
しかしながら、この技術は、人間のようなもっと大きい動物には適用できなかった。体循環への大量の流体の強制的注入が心不全を招くからである。
本発明は、これらの問題を解決するものであり、流体力学の原理を利用して心臓に損傷を与えることなく遺伝子治療に適切なレベルで細胞のトランスフェクションを達成する。
したがって、或る態様では、本発明は、人間または動物の身体の或る部位の細胞に核酸を導入する方法であって、前記身体部位からの輸出管をほぼ閉塞し、この輸出管を経てその身体部位へ圧力下に前記核酸を導入することからなる方法を提供する。
身体部位とは、好ましくは臓器であることになるが、出ていく側の静脈の閉塞、すなわち、その部位の輸出管の閉塞によって通常の血液循環から全体的または部分的に効果的に隔離できる任意の部分であってよい。種々の臓器および身体の他の部分(たとえば、四肢)のための輸出管の例としては以下のものがある。腎臓の腎静脈、副腎の副腎静脈、肺の肺静脈、心臓の冠状静脈または冠静脈洞、脾臓の脾静脈、下肢の大腿動脈、膵臓の膵静脈である。
ここで、「身体」または「患者」に言及する場合、人間と、家畜およびペットならびに研究に使用される動物を含む人間以外の動物とを含むことを了解されたい。それでも人間が好ましい対象である。
一層詳しく言えば、本発明は、身体臓器の細胞に核酸を導入する方法であって、前記臓器の輸出管をほぼ閉塞し、この輸出管を経て圧力下に前記核酸を臓器に導入することからなる方法を提供する。或る特定の実施形態において、本発明は、核酸を肝細胞に導入する方法であって、肝静脈をほぼ閉塞し、この肝静脈を経て圧力下に前記核酸を肝臓に導入することからなる方法を提供する。
さらに別の態様では、本発明は、身体の或る部位の細胞に核酸を導入する装置であって、前記核酸を含む配合液を保持するリザーバと、このリザーバと流体連絡していて、前記身体部位の輸出管を経て前記身体部位に前記配合液を運ぶカテーテル・チューブと、カテーテルで運ばれる液体を加圧する圧力発生手段と、前記輸出管をほぼ閉塞する閉塞手段とを含む装置を提供する。
さらに別の態様では、本発明は、核酸を肝細胞に導入する装置であって、前記核酸を含む配合液を保持するリザーバと、このリザーバと流体連絡していて、肝静脈を経て前記配合液を患者の肝臓まで運ぶカテーテル・チューブと、カテーテルで運ばれる液体を加圧する圧力発生手段と、前記肝静脈をほぼ閉塞する閉塞手段とを含む装置を提供する。
さらに別の態様では、本発明は、身体臓器の細胞に核酸を導入する装置であって、前記核酸を含む配合液を保持するリザーバと、このリザーバと流体連絡していて、患者の臓器にこの臓器の輸出管を経て前記配合液を運ぶカテーテル・チューブと、カテーテルで運ばれる液体を加圧する圧力発生手段と、前記輸出管をほぼ閉塞する閉塞手段とを含む装置を提供する。
この技術は、脳以外の身体の任意の臓器に遺伝物質を導入するのに使用できる。肝臓が特に好ましく、この技術を例示する以下の説明においては肝臓を使用する。しかしながら、他の適切な臓器としては、腎臓、心臓、脾臓、膵臓、肺、副腎、胃、前立腺、卵巣などがある。身体の臓器または部位は、輸出管(導出静脈)の閉塞の際に、それが一時的に全体的または部分的に通常の血液循環から隔離される血液循環系を必要とする。ここで、肝臓、肝静脈などと謂った場合、同じ技術および原理を、必要な変更を加えた上で、身体の他の臓器および部位に適用できることは了解されたい。
本発明の方法に従って四肢を治療するとき、トランスフェクトされるべき細胞はそこにある血管の細胞であってよく、たとえば、VEGFを発現するプラスミドによるトランスフェクションによって達成され得る虚血状態において血流を増大させることができる。あるいは、筋ジストロフィーの治療として、成長因子をコードするプラスミドにより筋細胞にトランスフェクトすることができる。心臓は特殊なケースである。心臓細胞(たとえば、心筋細胞)にトランスフェクトしようとする場合、心臓自体を閉塞することはないが、冠状静脈または冠状静脈洞を閉塞して遺伝子導入、およびトランスフェクションを行うことができる。
通常の循環系によれば、血液は肝動脈および肝門静脈から肝臓に入り、3つの肝静脈(右、中央、左)のうちの1つに集まり、そこから心臓に移動する。したがって、肝静脈の1つをほぼ閉塞することよって肝臓を一時的かつ部分的に通常の循環から隔離できる。重要なのは、閉塞手段の効果が、肝細胞にトランスフェクトしようとしている核酸を含む配合液を高圧で肝臓に導入したときに、心臓がこの配合液からほぼ隔離されているということにある。これは、心臓が高圧液体にさらされて損傷を受けることがないことを意味すると共に、肝臓の送達部位の圧力が肝細胞による核酸の取込みが遺伝子治療を成功させるに充分であることを意味する。本発明によれば、左肝静脈の閉塞、およびそれを通じた送達が好ましい。身体の他の臓器および部位の輸出管の閉塞も、同様の隔離および保護効果、すなわち、心臓の隔離および保護効果を奏する。
閉塞手段は、任意適当な公知形態を採り得る。たとえば、機械的な展開機構、たとえば、傘スタイルの機構を使用することが考えられる。しかしながら、好ましくは、閉塞手段は、たとえば、流体、好ましくは生理食塩水を満たしたときに静脈壁と合うように拡大するように配置したバルーンからなるとよい。バルーンは、代表的には、4塩基物質族、シリコーン類、ポリウレタン(PU)、ポリアミド(PA)およびラテックスから作る。
PUは、非常に順応性のあるバルーンを作るのに使用できる。このバルーンは低圧かつ高膨張率(300倍以上の直径に拡大できる)で膨らますことができる。このバルーンは、血管をバルーンの形に追従させるというよりもむしろ血管の形に合わせる傾向がある。PAは、より高い圧力に耐えるが順応性は低いバルーンを作るのに使用できる。PAのバルーンは、固いバルーンを形成するように膨らむ傾向がある。このことは、しっかりした位置決めまたは信頼性のある送達を約束する。シリコーンおよびラテックスも使用できる。シリコーンおよびラテックスは、高い膨張率を持ち、浸漬コーティングで製造できる。ラテックスおよびシリコーンは、PUおよびPAより不活性度が小さい傾向がある。閉塞手段は、カテーテル・チューブと別に設けてもよいが、カテーテル・チューブと一体的に設けると好ましい。
或る実施形態では、2つまたはそれ以上の閉塞手段を設けることができる。こうすると、たとえば、核酸の導入点の上流、下流の両方で肝静脈の実質的な隔離を行うことができるようになる。あるいは、2つの閉塞手段を使用して、第1の手段(リザーバに近い方)が圧力ダムとして作用し、第2の手段が閉塞を行うようにすることができる。したがって、順応性の高い第1の閉塞手段、たとえば、順応性の高いバルーンが注入中に引き起こされる可能性のある圧力波を受け止め、第2のバルーンが閉塞装置としてのみ作用し、漏出を最小限に抑える。このようなシステムは、200または300mlを超える液体を注入している場合に特に望ましいだろう。
圧力発生手段は、任意便利な形態を採り得るが、好ましくは、リザーバと連動して所定圧力まで配合液を加圧するとよい。簡単で便利な例として、リザーバは普通の注射器からなり、圧力発生手段は普通の注射器駆動装置からなる。注射器駆動装置は、所定速度で配合液を送達するようにプログラムすることができる。この所定速度は、所与のカテーテル管腔孔、孔寸法などに合わせて肝臓に配合液を投与する圧力を決定することになる。もちろん、たとえば、フィードバックループを形成するように圧力センサを含むことができるもっと複雑な装置も考えられる。リザーバは、生理食塩水点滴で用いられるような可撓性バッグからなるものであってもよい。たとえば、このバッグは、制御しながら配合液を圧出できる圧力発生手段を経由するジャケットを備えていてもよい。圧出は手動で行ってもよい。
リザーバは、好ましくは、1つまたはそれ以上の注射器の形をしているとよい。単一の注射器でも大量、たとえば、300mlを送達できるが、2つまたは3つの注射器、たとえば、各々150mlまたは100mlの注射器を使用して所望圧力で液体を送達する方が便利であるだろう。別々の注射器で、核酸とさらに別の物質(たとえば、治療上活性な薬剤)を便利に同時投与できる。したがって、複数のリザーバ・コンパートメントがあると好ましい。通常は、これらのコンパートメントからの液体が混合されて、カテーテルから送達される液体がすべてのコンパートメントからの液体の混合物となる。したがって、リザーバ・コンパートメントは、同時に空になると好ましいが、順次に空になってもよい。マニホルドに注射器を取り付けると、種々の流体タイプを制御しながら送達できる。
好ましくは、圧力発生手段は、肝細胞が核酸を取込むのに充分な圧力で核酸を含む配合液を肝臓に送達できるようになっているとよい。適切な圧力としては、10〜80mmHg、たとえば、15〜50mmHgであり、好ましい圧力は20〜60または30〜50mmHgである。
カテーテルは、中程度の角度でほぼ軸線方向に、ほぼ半径方向に、または、その任意の組み合わせで核酸を静脈に導入するように配置するとよい。閉塞手段を導入点の上流側、下流側の両方のカテーテルに設け、導入部位を通常の血流からほぼ完全に隔離し、影響を受けないようにすることができるので、半径方向の導入が目下のところ好ましい。これらの注入ポートの好ましい位置は、トランスフェクトしようとしている細胞の位置にも依存することになる。カテーテルの適切な寸法は、標的臓器または身体部位および閉塞しようとしている静脈に依存することになるが、5〜10mm、たとえば、7mmの円周長を持つと便利であろう。
図示するようなガイドワイヤを使用してガイド・カテーテルと同様にカテーテルを位置決めすると便利であろう。ガイド・カテーテルおよびガイドワイヤの使用は、心血管PTCAおよび他のバルーン適用例で周知である。ガイド・カテーテルは、編組Pebex、PUまたはナイロンから製造できる。ガイド・カテーテルは、特に心横断交差(transcardio crossing)に有用である。
好ましくは、トランスフェクションの程度が超音波を用いて高められる。超音波源は治療している動物の外部にあってもよいが、好ましくは、特に肝臓内に源を設置すること、好ましくはカテーテルに組み込むことによって超音波付与を局限化するとよい。したがって、いくつかの好ましい実施形態では、カテーテルは、核酸送達部位内で超音波振動を発生するように配置された超音波発振器を備える。カテーテルは、たとえば、圧電型変換器またはそのアレイを備えていてもよい。超音波発振器は、好ましくは、指向性振動を発生し、それを目標の肝細胞に方向付け、必要なパワーを最小限に抑えることができるように配置するとよい。
上記の装置は、あらゆるタイプの遺伝子治療に適しており、したがって、肝細胞にトランスフェクトすることを望む核酸は、生体内細胞に核酸を送達するのに適したベクターの形をしていてもよいし、このようなベクターのいずれかを含むものであってもよい。適切なベクターは、単純に、裸の核酸であってもよいし、核酸をカプセル化したリポソームであってもよい。裸の核酸、たとえば、プラスミドの形をした核酸は、特に細胞のトランスフェクションに適しており、本発明に従って使用するのに好ましい。Liu等(既述)によって用いられたテスト・プラスミドに基づくプラスミドが適しており、Liu等によって示されているように、肝特異プロモータは不要であるが、遺伝子発現の特殊性を高めるのに使用してもよい。
肝臓への核酸の送達のため、したがって、肝細胞のトランスフェクションのためのもっと複雑であるが、等しく適切であるベクターは、ウィルス・ベクターである。外来遺伝子もしくは異種遺伝子またはコード配列をウィルス・ゲノムに挿入できるので、ウィルスは遺伝子治療で使用するには非常に良く適している。細胞がウィルスに感染した後、外来核酸が細胞の核に送達される。ウィルスは細胞に積極的に感染できるが、本発明の流体力学的核酸送達方法により、「感染」率がかなり増大し、したがって、結果的に、トランスフェクション率を増大させ、遺伝子治療の有効性を高めることになる。(腫瘍)レトロウィルス、レンチウィルス、アデノウィルス、アデノ随伴ウィルスおよびヘルペスウィルスに由来する、臨床的に利用できるウィルス・ベクターは少なくとも5種類ある。これらのウィルス・ベクターは、そのゲノムを宿主細胞DNA(腫瘍レトロウィルスおよびレンチウィルス)に組み込むので、細胞を分割する際に安定した遺伝子の変更を必要とする場合に好ましいだろう。先に述べた他のウィルスは、細胞核に染色体外のエピソームとして残存するが、非増殖細胞においては持続的な導入遺伝子発現を仲介できる。最も適切なベクターは、試みられつつある特定の遺伝子治療によるだろう。
便宜上、ここで用いる「遺伝子」なる用語は、mRNAに転写され、ポリペプチド(構造遺伝子)に翻訳される核酸の領域ばかりでなく、RNA(たとえば、rRNA、tRNA)に転写される拡散の領域、および前の2タイプの発現の制御因子として機能する核酸の領域を意味している。好ましくは、肝臓に送達される核酸は、所与の医療状態の治療に(直接的または間接的に)関連する構造遺伝子をコードすることになるが、すでに細胞内に存在する遺伝子との組み合わせで治療の利点を与えることができる制御領域を導入することが適当であろう。
このベクターの核酸分子は、代表的には、DNAであるが、たとえば、ベクターがRNAウィルスである場合には、RNAであってよい。アンチセンス分子およびiRNAが或る種の治療には適しているだろう。非ウィルス・ベクターはcDNAを含んでよく、そして核酸は、たとえば、プラスミドDNAと同様に、線形であっても円形であってもよい。DNAは、一本鎖であってもよいし、二本鎖であってもよい。
核酸がトランスフェクトされた細胞において発現することを望むタンパクをコードする場合、核酸分子は、代表的には、作動可能に結合したプロモータおよびおそらく他の制御配列も含むことになる。或る種のベクター、特にウィルス・ベクターの場合、核酸は、他の細胞にトランスフェクトし得るさらに別のベクター、たとえば、アデノウィルスのgag、pol、env遺伝子の産生を伴って構造タンパクその他のタンパクをコードすることにもなる。発現ベクターの設計および構造は、当業者にはよく知られており、文献にも十分記載されている。
キャリアまたはプレパレーション(preparation)化合物を治療に先立って注入し、血液を洗い出したり、毛細血管を開く助けとしたりしてもよい。適切な化合物はこの技術分野では公知である。
Liu等(既述)が記載する方法と同様に、本発明の方法およびこの方法で使用する装置は、流体力学的核酸送達方法と考えることができる。換言すれば、比較的大量の核酸を含む配合液(たとえば、DNA溶液)を静脈に迅速に導入するのである。したがって、人間および同様の大きさの動物の場合、100ml〜1300mlの配合液を一回の投与、連続的な投与またはほぼ連続的な投与で導入できる。投与量は、被験体の年齢、性別、体力によることになる。たとえば、健康で若い男性または雄であれば、800〜1300mlを受け入れることができるが、初老の女性は200〜600mlしか受け入れることができない。実施例に示すように、もっと少ない量を用いてもよい。人間が被験体である場合に使用される量は、代表的には、50mlまたはそれ以上、好ましくは75mlまたはそれ以上、より好ましくは、100mlまたはそれ以上、たとえば150〜350mlである。
配合液は、プラスミドまたはその他のベクターに加えて、任意の生理的に受け入れ可能なキャリアを含むことができ、特に、生理食塩水が好ましい。送達される核酸の濃度は、予定の治療に応じて変化することになり、当業者であれば容易に最適化できる。適切な一回投与量は、5〜50mg、たとえば、500mlの生理食塩水あたり10〜30mgのプラスミドである。ほとんどの患者にとって適切な代表的な一回投与量は、500mlの生理食塩水に入れた20mgのプラスミドである。実施例に示すように、もっと少ない投与量、送達量も適切であり、好ましくは、上記の送達量であれば、5mgまたはそれ以上、たとえば5〜20mgである。
注入速度は、発生させるべき圧力に依存することになる。代表的には、注射器ベースのシステムを使用して、500mlのプラスミド含有生理食塩水を、1/2〜8分、たとえば1〜3分にわたって投与することになる。もっと多い量であれば、一般的にもっと時間がかかることは明らかであるが、送達時間よりも重要なのは核酸を送達する圧力である。ここで説明しているような閉じた流体系においては、リザーバでモニタされるような圧力は、肝臓における送達点の圧力に対応することになる。実施例で示すように、特にもっと少ない量を使用する場合、注入時間はもっと少なくなくてもよく、たとえば10〜60秒、好ましくは15〜30秒、たとえば約20秒であってもよい。
核酸の迅速な送達の後、肝静脈は、代表的には2〜20分、好ましくは5〜15分、たとえば約10分の間その閉塞状態に維持される。閉塞の解除は、好ましくは、徐々に行う。たとえば、バルーンをゆっくりとすぼませることにより行う。
核酸の迅速な送達の後、肝静脈は、代表的には2〜20分、好ましくは5〜15分、たとえば約10分の間その閉塞状態に維持される。閉塞の解除は、好ましくは、徐々に行う。たとえば、バルーンをゆっくりとすぼませることにより行う。
さらに別の態様によれば、本発明は、圧力下に被験体の身体部位のほぼ閉塞された輸出管を経て、この身体部位に導入して前記被験体を遺伝子治療で治療するための薬剤の製造での核酸分子の使用を提供する。
一層詳しく言えば、本発明は、被験体の肝臓へ圧力下にほぼ閉塞された肝静脈を経て導入するための薬剤の製造での核酸分子の使用を提供する。適切な薬剤は、先に説明したが、代表的には、生理食塩水を含むことになる。ここに述べたように、核酸は裸であってもよいし(たとえば、プラスミド)、リポソーム型、ウィルスその他のベクター内に含有されていてもよい。核酸、したがってそれを含有する薬剤は、被験体に遺伝子治療を施す目的で、たとえば、被験体内の細胞(たとえば、肝細胞)に導入される。このようにして施すことのできる特定の治療は数多くあり、癌(一般的に、肝臓に限らない)の治療、肝硬変その他の肝疾患の治療ならびに肝臓内に現れないが、肝細胞にトランスフェクトする核酸によってコードされるタンパク質を肝臓で産生させることで効果を得る状態の治療がある。身体の他の臓器および身体の他の部位に影響を及ぼす疾患も本発明に従って治療できる。
以下、添付図面を参照しながら本発明の或る種の好ましい実施形態をほんの例示として説明する。
図1は、本発明によるカテーテルおよびそれと組み合わせたガイドワイヤの斜視図である。
図2は、図1のカテーテルを通る断面図である。
図3は、わずかに異なった実施形態を示す、図2と同様の図である。
図4は、膨らませたバルーンを示す、図2と同様の図である。
図5のa〜cは、使用状態のカテーテルを種々の倍率で示す概略断面図である。
図6aは、核酸の加圧導入を示す、図4と同様の図(便宜上、全体的に円形状になった状態で表している)である。
図6bは、肝細胞のトランスフェクションを示す一続きの3つの概略断面図である。
図7は、本発明の別の実施形態によるカテーテルを通る断面図である。
図8のaおよびbは、本発明のさらに別の実施例によるさらに別のカテーテルを通る断面図である。
図9のaおよびbは、図8のaおよびbの一部拡大断面図である。
図10は、本発明による注入システムの断面図である。
図11は、本発明に従って実施された、実施例4で説明する手順に従った7人の患者における血清血小板数を示すグラフである。
図12は、図11と同じデータに基づくグラフであり、基準線と比較した血小板数のパーセンテージ変化を示す図である。
図1は、本発明によるカテーテルおよびそれと組み合わせたガイドワイヤの斜視図である。
図2は、図1のカテーテルを通る断面図である。
図3は、わずかに異なった実施形態を示す、図2と同様の図である。
図4は、膨らませたバルーンを示す、図2と同様の図である。
図5のa〜cは、使用状態のカテーテルを種々の倍率で示す概略断面図である。
図6aは、核酸の加圧導入を示す、図4と同様の図(便宜上、全体的に円形状になった状態で表している)である。
図6bは、肝細胞のトランスフェクションを示す一続きの3つの概略断面図である。
図7は、本発明の別の実施形態によるカテーテルを通る断面図である。
図8のaおよびbは、本発明のさらに別の実施例によるさらに別のカテーテルを通る断面図である。
図9のaおよびbは、図8のaおよびbの一部拡大断面図である。
図10は、本発明による注入システムの断面図である。
図11は、本発明に従って実施された、実施例4で説明する手順に従った7人の患者における血清血小板数を示すグラフである。
図12は、図11と同じデータに基づくグラフであり、基準線と比較した血小板数のパーセンテージ変化を示す図である。
まず図1を参照して、ここには、本発明の一実施形態によるカテーテル2が示してあり、このカテーテルは、その中を貫いて軸線方向に延びる対応ガイドワイヤ4を有する。カテーテル2は、一般的に、膨張可能なバルーン8で縦方向に分割された外側ハウジング6を含む。図1に示す未膨張状態では、カテーテルおよびバルーンは、心臓および上行大静脈を経て下大静脈を容易に通過できる。
マーカー帯10が先端の本体部6まわりに設けてあり、本体の位置決めを助ける。したがって、マーカー帯10の材料は使用される画像処理システムに依存することになる。
マーカー帯10が先端の本体部6まわりに設けてあり、本体の位置決めを助ける。したがって、マーカー帯10の材料は使用される画像処理システムに依存することになる。
図2は、カテーテル2をより詳細に示しているが、ガイドワイヤは図を明瞭にするために省略している。図2からは、カテーテル2が2つの同軸の管腔12、14を含むことがわかる。中央管腔12は、カテーテルの先端16で開いており、使用時にガイドワイヤを受け入れる。外側管腔14は、周方向に間隔を置いて設けた一連の孔18によってバルーン8の内部と連通している。したがって、外側の管腔14から生理食塩水を導入したり、引き出したりすることによってバルーン8を膨らませたり、しぼませたりすることができる。バルーン8の膜は弾力性があり、注入する生理食塩水の量に応じて成人の場合には最高約18mmの直径まで膨らませることができ、子供の場合には最高約8mmの直径まで膨らませることができる。これは、カテーテルを使用することになっている肝静脈の直径よりも大きい。図4は、バルーン8を膨らませた状態で示している斜視図である。
図3は、わずかに異なった実施形態を示す、図2と同様の図である。この実施形態は、バルーン8'が図2のバルーン8と比較して長手方向に大きくなっているという点でのみ図2の実施形態と異なっている。これは、静脈壁と接触する面積が大きくなり、したがって、所与の膨張程度に対して滑ることなくより大きな圧力に耐えることが明らかなので、或る種の環境において有利であり得る。
本発明による方法における上記カテーテルの使用法を、以下、図5のa〜cおよび図6のaおよびbを付加的に参照しながら説明する。最初に図1、2、5aを参照して、ガイドワイヤ4を導入器22によって下大静脈20に挿入し、次いで、心臓24を通して上行大静脈26に入れ、右肝静脈28に入れる。次いで、カテーテル2をガイドワイヤ上で滑らせてその先端16を肝静脈28の所望位置に位置決めする。これは、たとえば、超音波式その他の適当な画像処理システムを使用してカテーテル先端の方へのマーカー帯10の進行をモニタすることにより達成し得る。
ひとたびカテーテルの先端16が所定位置に達したならば、生理食塩水を外側の管腔14内へ圧送し、バルーン8を膨らませ、図5のbでわかるように肝静脈28の壁を押圧する。これにより、静脈内のカテーテル2の位置を固定し、心臓24に通じる血液の流れを閉塞する。次いで、ガイドワイヤ4を完全にまたは部分的に引き抜くことができる。その後、所定の遺伝子治療に合わせた核酸物質を含有する配合液を、カテーテルの中央管腔12を通して制御圧力下に注入する。この実施形態では、必要な圧力は、予めプログラムした注射器駆動装置を使用して達成するが、これを行う多くの適当な方法が考えられ得る。
概略的に示す核酸30の排出が図5のc、6のaに示してある。カテーテル・バルーン8による肝静脈28の閉塞により、上行大静脈26から心臓24に移動させることなく、肝臓内部の圧力で核酸30を保持する。或る特定の例では、核酸はほぼ50mmHgの圧力で導入する。この圧力に、静脈28の壁に対するバルーン8の作用が抵抗する。
肝臓のこの領域における肝細胞32に対するこの加圧された核酸の効果により、図6bに概略的に示すように、肝細胞の壁34を通して核酸30を押込む。このことは、細胞32が核酸を取り込み、核酸の影響を細胞のタンパク産生に与えることを意味する。
一実施例において、治療はこのようにして最高10分、好ましくは1〜5分間続け、患者の相対的な体力に応じて100ml〜1Lの量を投与する。
ひとたび投与が完了したならば、普通は、さらに5〜20分、たとえば10分を置いて、ガイドワイヤ4を中央管腔12から引っ込め、バルーン8をそこから生理食塩水を抽出することによってしぼませる。これにより、血液および導入液体の若干量が心臓24へ流れる。次いで、ガイドワイヤ4上を滑らせてカテーテル2を引き抜き、最後に、ガイドワイヤ4を引き抜く。
本発明による方法における上記カテーテルの使用法を、以下、図5のa〜cおよび図6のaおよびbを付加的に参照しながら説明する。最初に図1、2、5aを参照して、ガイドワイヤ4を導入器22によって下大静脈20に挿入し、次いで、心臓24を通して上行大静脈26に入れ、右肝静脈28に入れる。次いで、カテーテル2をガイドワイヤ上で滑らせてその先端16を肝静脈28の所望位置に位置決めする。これは、たとえば、超音波式その他の適当な画像処理システムを使用してカテーテル先端の方へのマーカー帯10の進行をモニタすることにより達成し得る。
ひとたびカテーテルの先端16が所定位置に達したならば、生理食塩水を外側の管腔14内へ圧送し、バルーン8を膨らませ、図5のbでわかるように肝静脈28の壁を押圧する。これにより、静脈内のカテーテル2の位置を固定し、心臓24に通じる血液の流れを閉塞する。次いで、ガイドワイヤ4を完全にまたは部分的に引き抜くことができる。その後、所定の遺伝子治療に合わせた核酸物質を含有する配合液を、カテーテルの中央管腔12を通して制御圧力下に注入する。この実施形態では、必要な圧力は、予めプログラムした注射器駆動装置を使用して達成するが、これを行う多くの適当な方法が考えられ得る。
概略的に示す核酸30の排出が図5のc、6のaに示してある。カテーテル・バルーン8による肝静脈28の閉塞により、上行大静脈26から心臓24に移動させることなく、肝臓内部の圧力で核酸30を保持する。或る特定の例では、核酸はほぼ50mmHgの圧力で導入する。この圧力に、静脈28の壁に対するバルーン8の作用が抵抗する。
肝臓のこの領域における肝細胞32に対するこの加圧された核酸の効果により、図6bに概略的に示すように、肝細胞の壁34を通して核酸30を押込む。このことは、細胞32が核酸を取り込み、核酸の影響を細胞のタンパク産生に与えることを意味する。
一実施例において、治療はこのようにして最高10分、好ましくは1〜5分間続け、患者の相対的な体力に応じて100ml〜1Lの量を投与する。
ひとたび投与が完了したならば、普通は、さらに5〜20分、たとえば10分を置いて、ガイドワイヤ4を中央管腔12から引っ込め、バルーン8をそこから生理食塩水を抽出することによってしぼませる。これにより、血液および導入液体の若干量が心臓24へ流れる。次いで、ガイドワイヤ4上を滑らせてカテーテル2を引き抜き、最後に、ガイドワイヤ4を引き抜く。
こうして、上記の装置および方法により、肝細胞においてかなり高いトランスフェクション効率を示す改良遺伝子治療方法が開示される。
本発明の別の実施形態が図7に示してある。この実施形態では、カテーテル36は3つの管腔を含む。中央ガイドワイヤ用管腔38に加えて、上下の管腔40、42がある。下側管腔40は、対応する側孔48、50によって一対の軸線方向に間隔を置いたバルーン44、46と連通している。上側管腔42は、2つのバルーン44、46間で軸線方向に位置した一連の側孔52で半径方向に開いている。
核酸がガイドワイヤ用管腔38を通して投与されることがないので、処置中にガイドワイヤ(図を明瞭にするために図示せず)を引き抜く必要はないことを除き、図7に示すカテーテル36の使用法は先の実施形態と同様である。さらにまた、2つのバルーン44、46を設けることで、肝静脈の一部分を上流側、下流側の両方で流体工学的に隔離できる。このことは、遺伝子送達が血流によって全く影響を受けないということを意味し、そして、先の実施形態と比較してより高い投与圧を安全に使用できることを意味し得る。
本発明の別の実施例が図8のaおよびb、図9のaおよびbに示してある。図9のaおよびbにおいて、第1のバルーン53が圧力ダムとして作用できる一方で第2のバルーン54は閉塞を行う。管腔は標準の止血弁Y字形接合器55で塞いである。Y字形接合器により、ガイドワイヤおよび膨らませ用ポートの挿入が可能となっている。弁はシリコーン・シールまたは「O」リングであり、端キャップをねじったときにテーパ部に沿って移動して閉じる。これで管腔を閉じる。弁はガイドワイヤ用および核酸の送達用に使用される中央管腔に沿った血液および流体の損失を防ぐ。図9のaに明確に示す二重の膨らませ用管腔56により、異なった膨張圧力が可能となる。
本発明の別の実施形態が図7に示してある。この実施形態では、カテーテル36は3つの管腔を含む。中央ガイドワイヤ用管腔38に加えて、上下の管腔40、42がある。下側管腔40は、対応する側孔48、50によって一対の軸線方向に間隔を置いたバルーン44、46と連通している。上側管腔42は、2つのバルーン44、46間で軸線方向に位置した一連の側孔52で半径方向に開いている。
核酸がガイドワイヤ用管腔38を通して投与されることがないので、処置中にガイドワイヤ(図を明瞭にするために図示せず)を引き抜く必要はないことを除き、図7に示すカテーテル36の使用法は先の実施形態と同様である。さらにまた、2つのバルーン44、46を設けることで、肝静脈の一部分を上流側、下流側の両方で流体工学的に隔離できる。このことは、遺伝子送達が血流によって全く影響を受けないということを意味し、そして、先の実施形態と比較してより高い投与圧を安全に使用できることを意味し得る。
本発明の別の実施例が図8のaおよびb、図9のaおよびbに示してある。図9のaおよびbにおいて、第1のバルーン53が圧力ダムとして作用できる一方で第2のバルーン54は閉塞を行う。管腔は標準の止血弁Y字形接合器55で塞いである。Y字形接合器により、ガイドワイヤおよび膨らませ用ポートの挿入が可能となっている。弁はシリコーン・シールまたは「O」リングであり、端キャップをねじったときにテーパ部に沿って移動して閉じる。これで管腔を閉じる。弁はガイドワイヤ用および核酸の送達用に使用される中央管腔に沿った血液および流体の損失を防ぐ。図9のaに明確に示す二重の膨らませ用管腔56により、異なった膨張圧力が可能となる。
図10は、本発明による注入システム57の実施形態を示しており、この実施形態は、12秒で300mlの液体を送達できる。3つの注射器59を取付けたマニホルド58が設けてある。
当業者には明らかなように、ここでは本発明の或る種の好ましい実施形態のみを説明しており、発明の範囲内で可能な多くの変更、修正がある。たとえば、中心で案内されるカテーテルは必須ではなく、たとえば、モノレール・カテーテルを代わりに使用してもよい。説明した治療を受けている細胞に超音波その他の適当な形態の放射線を当て、核酸によるトランスフェクションを向上させることも考えられる。このために、超音波振動器、たとえば、圧電発信器をカテーテル上に設けてもよい。
当業者には明らかなように、ここでは本発明の或る種の好ましい実施形態のみを説明しており、発明の範囲内で可能な多くの変更、修正がある。たとえば、中心で案内されるカテーテルは必須ではなく、たとえば、モノレール・カテーテルを代わりに使用してもよい。説明した治療を受けている細胞に超音波その他の適当な形態の放射線を当て、核酸によるトランスフェクションを向上させることも考えられる。このために、超音波振動器、たとえば、圧電発信器をカテーテル上に設けてもよい。
本発明を以下の実施例でさらに説明する。
実施例1
以下のプロトコルを約40kgの2頭のブタについて実施した。
ブタは全身麻酔薬を行った。カテーテルを頚静脈(外部頸静脈)に導入した。カテーテルは2つの流路を有する。1つの中央流路は導入器(たとえば、ガイドワイヤ)を支持することができ、もう1つの流路はバルーンを膨らませるのに使用できる。
蛍光増倍管の下にカテーテルを頸静脈から上大静脈、右心、上肝臓大静脈まで押込み、最終的に、3つの肝静脈のうちの1つに到達させた。この実験の目的のためには、左肝静脈が最も適切である。
カテーテルはそれ以上進まなくなるまで導入した。
次いで、バルーンを膨らませ、肝静脈の内腔を完全に閉じた。
次いで、導入器を取り出し、圧力下に1、2分内の速さで核酸を注入した。500〜1000mlの量を注入した。
バルーンは約10分間膨らませたままにし、次いで、ゆっくりとしぼませ、カテーテルを引き抜いた。
次いで、麻酔薬の注入を止め、動物を回復させた。経時的血液検査を3週間にわたって行い、なんらかの毒性、肝障害ならびに遺伝子発現をチェックした。
これらの実験はこの技術が安全であることを示した。肝機能検査を通常通りに行い、動物は良好な健康状態に留まった。有意の遺伝子発現が観察された。
実施例1
以下のプロトコルを約40kgの2頭のブタについて実施した。
ブタは全身麻酔薬を行った。カテーテルを頚静脈(外部頸静脈)に導入した。カテーテルは2つの流路を有する。1つの中央流路は導入器(たとえば、ガイドワイヤ)を支持することができ、もう1つの流路はバルーンを膨らませるのに使用できる。
蛍光増倍管の下にカテーテルを頸静脈から上大静脈、右心、上肝臓大静脈まで押込み、最終的に、3つの肝静脈のうちの1つに到達させた。この実験の目的のためには、左肝静脈が最も適切である。
カテーテルはそれ以上進まなくなるまで導入した。
次いで、バルーンを膨らませ、肝静脈の内腔を完全に閉じた。
次いで、導入器を取り出し、圧力下に1、2分内の速さで核酸を注入した。500〜1000mlの量を注入した。
バルーンは約10分間膨らませたままにし、次いで、ゆっくりとしぼませ、カテーテルを引き抜いた。
次いで、麻酔薬の注入を止め、動物を回復させた。経時的血液検査を3週間にわたって行い、なんらかの毒性、肝障害ならびに遺伝子発現をチェックした。
これらの実験はこの技術が安全であることを示した。肝機能検査を通常通りに行い、動物は良好な健康状態に留まった。有意の遺伝子発現が観察された。
実施例2
この実施例では、下大静脈(IVC)を閉塞した後にラットの肝静脈に、肝特異的プロモータの制御の下にラットTPO(トロンボポエチン)を発現するプラスミドpDERM IIを注入すると共に、ラットの尾静脈に静注した。400gのラットにはプラスミド100μgを注入した(対照)。IVCは、肝静脈との接合部のすぐ上またはこの接合部でクランプ止めした。
TPOは、通常、肝臓で産生され、骨髄に作用し、巨大核細胞による血小板の産生を刺激する。体循環における1mlの血液中の血小板(PLT)および白血球(WBC)の数を7匹のラットで測定し、各群についての平均値を算出した。その結果が下記の表1に示してある。すべての値は1000単位である。
この実施例では、下大静脈(IVC)を閉塞した後にラットの肝静脈に、肝特異的プロモータの制御の下にラットTPO(トロンボポエチン)を発現するプラスミドpDERM IIを注入すると共に、ラットの尾静脈に静注した。400gのラットにはプラスミド100μgを注入した(対照)。IVCは、肝静脈との接合部のすぐ上またはこの接合部でクランプ止めした。
TPOは、通常、肝臓で産生され、骨髄に作用し、巨大核細胞による血小板の産生を刺激する。体循環における1mlの血液中の血小板(PLT)および白血球(WBC)の数を7匹のラットで測定し、各群についての平均値を算出した。その結果が下記の表1に示してある。すべての値は1000単位である。
これらの結果は、肝静脈への流体力学的注入を使用した場合、TPO(すなわち、プラスミドトランスフェクション効率)のレベルがより大きいことを示している。
実施例3
背景
C型肝炎、肝硬変に罹患した患者は、血小板減少(すなわち、低い血小板数)を患う。トロンボポエチン(TPO)は、肝臓から分泌され、骨髄に循環し、巨大核細胞の成熟の原因となり、血小板放出を生じる。肝硬変患者のTPO産生は低いので、遺伝子治療を使用してTPO産生量を増やし、血小板数を正常レベルまで戻すことをここに提案する。
臨床研究を始める前に、本発明者等は、本発明の流体力学技術を使用してブタにおけるこの方法の実現可能性を研究した。
背景
C型肝炎、肝硬変に罹患した患者は、血小板減少(すなわち、低い血小板数)を患う。トロンボポエチン(TPO)は、肝臓から分泌され、骨髄に循環し、巨大核細胞の成熟の原因となり、血小板放出を生じる。肝硬変患者のTPO産生は低いので、遺伝子治療を使用してTPO産生量を増やし、血小板数を正常レベルまで戻すことをここに提案する。
臨床研究を始める前に、本発明者等は、本発明の流体力学技術を使用してブタにおけるこの方法の実現可能性を研究した。
動物と方法
4頭のブタ(中間重量50kg)により研究した。遺伝子治療注入の前に、これらのブタに、血液学的検査(完全血球数)、生化学的検査(肝機能検査、尿素および電解質ならびに血清αフェトプロテイン測定値)および放射線検査(超音波走査)を行った。
全身麻酔および気管内換気の下に、内頸静脈を経てカテーテルを肝静脈に導入した。バルーンを膨らませた後、造影剤をカテーテルに注入し、カテーテル・バルーンが肝静脈を完全に閉塞し、大静脈に向かって逆流がないことを検証した。
3頭のブタに、通常の生理食塩水に溶かした肝特異的プロモータの制御の下に人間TPOをコードするプラスミドを注入した。これは、20秒にわたって閉塞肝臓部位に注入した。TPOプラスミドは、200mlの通常の生理食塩水に溶かした状態において、10mgの一回投与量で注入した。4番目のブタには、βガラクトシダーゼ染色で青色の着色を与えるlac Zをコードするプラスミドを注入した。
いずれの場合においても、注入は一回であった。注入後に血液検査を行い、血液学的パラメータ、生化学的パラメータおよび肝臓パラメータを評価した。
4頭のブタ(中間重量50kg)により研究した。遺伝子治療注入の前に、これらのブタに、血液学的検査(完全血球数)、生化学的検査(肝機能検査、尿素および電解質ならびに血清αフェトプロテイン測定値)および放射線検査(超音波走査)を行った。
全身麻酔および気管内換気の下に、内頸静脈を経てカテーテルを肝静脈に導入した。バルーンを膨らませた後、造影剤をカテーテルに注入し、カテーテル・バルーンが肝静脈を完全に閉塞し、大静脈に向かって逆流がないことを検証した。
3頭のブタに、通常の生理食塩水に溶かした肝特異的プロモータの制御の下に人間TPOをコードするプラスミドを注入した。これは、20秒にわたって閉塞肝臓部位に注入した。TPOプラスミドは、200mlの通常の生理食塩水に溶かした状態において、10mgの一回投与量で注入した。4番目のブタには、βガラクトシダーゼ染色で青色の着色を与えるlac Zをコードするプラスミドを注入した。
いずれの場合においても、注入は一回であった。注入後に血液検査を行い、血液学的パラメータ、生化学的パラメータおよび肝臓パラメータを評価した。
これらの表に示すように、この処置と関連した合併症はなかった。肝機能検査における有意な変化はまったくなかったが、血小板数および白血球両方で増加があった。
プラスミド・lac Zの注入後の肝臓における青色の着色がトランスフェクション成功のさらなる証拠となった。
10ミリグラムの一回投与量で、および50mlを上回る量で本発明の方法に従って注入したプラスミドTPOは、血清血小板数および白血球の増大の原因になり得る。この方法をあらゆる形態の肝臓遺伝子治療で使用できることをここに提案する。
プラスミド・lac Zの注入後の肝臓における青色の着色がトランスフェクション成功のさらなる証拠となった。
10ミリグラムの一回投与量で、および50mlを上回る量で本発明の方法に従って注入したプラスミドTPOは、血清血小板数および白血球の増大の原因になり得る。この方法をあらゆる形態の肝臓遺伝子治療で使用できることをここに提案する。
実施例4
背景
先の前臨床モデルにおいて、本発明の流体力学的技術なしにTPOレベルを有意に増大させることが難しいことは本発明者等にはわかっていた。実施例3は、本発明者等の流体力学的技術がブタのような大型動物(50kg以上の体重)においてTPO産生を有意に高め得ることを示している。
したがって、本発明の流体力学的技術によって注入したプラスミドTPOでの遺伝子治療が、血小板数を増大させることができるかどうかを知るために、血小板減少患者において臨床研究を開始した。
背景
先の前臨床モデルにおいて、本発明の流体力学的技術なしにTPOレベルを有意に増大させることが難しいことは本発明者等にはわかっていた。実施例3は、本発明者等の流体力学的技術がブタのような大型動物(50kg以上の体重)においてTPO産生を有意に高め得ることを示している。
したがって、本発明の流体力学的技術によって注入したプラスミドTPOでの遺伝子治療が、血小板数を増大させることができるかどうかを知るために、血小板減少患者において臨床研究を開始した。
患者と方法
7人の患者(男性2人、女性5人)、中間年齢52歳を研究した。遺伝子治療注入の前に、これらの患者に、血液学的検査(全血球算定)、生化学的検査(肝機能検査、尿素および電解質ならびに血清αフェトプロテイン)および放射線検査(超音波スキャンおよびCTスキャン)を行った。
インフォームドコンセントの署名後に、局所麻酔の下に大腿動脈を経てカテーテルを肝静脈に導入した。バルーンを膨らませた後、造影剤をカテーテルに注入し、カテーテル・バルーンが肝静脈を完全に閉塞し、大静脈に向かって逆流がないことを検証した。
通常の生理食塩水に溶かしたプラスミドTPOを、20秒間にわたって、閉塞した肝臓部分に注入した。注入は手によって、迅速かつ強制的に実施した。TPOプラスミドを、それぞれ50ml、75ml、100ml中の一回の投与量1mgで、患者1、2、3に注入した。患者4には、150ml中の2mgで注入した。患者5、6には、それぞれ150ml、200ml中の5mgで注入した。7番目の患者には、200ml中の10mgで注入し、8番目の患者には、250ml中の10mgで注入した。注入後5分でバルーンをしぼませ、カテーテルを引き抜いた。患者達は、この処置の2時間後に家に帰した。いずれの場合においても、注入は一回であった。
注入後に血液検査を行い、血液学的パラメータ、生化学的なパラメータおよび肝臓パラメータを評価した。
7人の患者(男性2人、女性5人)、中間年齢52歳を研究した。遺伝子治療注入の前に、これらの患者に、血液学的検査(全血球算定)、生化学的検査(肝機能検査、尿素および電解質ならびに血清αフェトプロテイン)および放射線検査(超音波スキャンおよびCTスキャン)を行った。
インフォームドコンセントの署名後に、局所麻酔の下に大腿動脈を経てカテーテルを肝静脈に導入した。バルーンを膨らませた後、造影剤をカテーテルに注入し、カテーテル・バルーンが肝静脈を完全に閉塞し、大静脈に向かって逆流がないことを検証した。
通常の生理食塩水に溶かしたプラスミドTPOを、20秒間にわたって、閉塞した肝臓部分に注入した。注入は手によって、迅速かつ強制的に実施した。TPOプラスミドを、それぞれ50ml、75ml、100ml中の一回の投与量1mgで、患者1、2、3に注入した。患者4には、150ml中の2mgで注入した。患者5、6には、それぞれ150ml、200ml中の5mgで注入した。7番目の患者には、200ml中の10mgで注入し、8番目の患者には、250ml中の10mgで注入した。注入後5分でバルーンをしぼませ、カテーテルを引き抜いた。患者達は、この処置の2時間後に家に帰した。いずれの場合においても、注入は一回であった。
注入後に血液検査を行い、血液学的パラメータ、生化学的なパラメータおよび肝臓パラメータを評価した。
結果
この処置と関連した合併症はまったくなかった。熱または悪寒もまったくなかった。カテーテル挿入中にのみ鼠径部にほんの少しの痛みがあった。肝機能検査において、変化はまったくなかった。図11は、最初の7人の患者における血清血小板数を示している。図12は、基準線と比較した血小板数のパーセンテージ変化を示している。これらの結果は、1mgまたは2mgのプラスミドTPOを受けた最初の4人の患者で血小板数が変化しなかったことを示している。一方、5および10ミリグラムを受けた患者5、6、7で、3週以上にわたって持続した血小板数の40〜60%の増加があったことはまさに明らかである。
この処置と関連した合併症はまったくなかった。熱または悪寒もまったくなかった。カテーテル挿入中にのみ鼠径部にほんの少しの痛みがあった。肝機能検査において、変化はまったくなかった。図11は、最初の7人の患者における血清血小板数を示している。図12は、基準線と比較した血小板数のパーセンテージ変化を示している。これらの結果は、1mgまたは2mgのプラスミドTPOを受けた最初の4人の患者で血小板数が変化しなかったことを示している。一方、5および10ミリグラムを受けた患者5、6、7で、3週以上にわたって持続した血小板数の40〜60%の増加があったことはまさに明らかである。
結論
したがって、投与量5mg以上で、容量50mlを上回るように本発明に従って注入したプラスミドTPOは、増加した血清血小板数の増大の原因であり得る。この方法は、潜在的に、あらゆる形態の肝臓遺伝子治療で使用できる。
したがって、投与量5mg以上で、容量50mlを上回るように本発明に従って注入したプラスミドTPOは、増加した血清血小板数の増大の原因であり得る。この方法は、潜在的に、あらゆる形態の肝臓遺伝子治療で使用できる。
Claims (20)
- 身体部位から輸出管をほぼ閉塞することと、該輸出管を経て圧力下に上記身体部位に核酸を導入することとからなる、人間または動物の身体の或る部位の細胞に該核酸を導入する方法。
- 核酸を含む配合液を保持するリザーバと、該リザーバと流体連絡していて、身体部位の輸出管を経て上記身体部位に上記配合液を運ぶカテーテル・チューブと、カテーテルで運ばれる液体を加圧する圧力発生手段と、上記輸出管をほぼ閉塞する閉塞手段とを含む、身体の或る部位の細胞に上記核酸を導入する装置。
- 身体部位が身体のうちの臓器である、請求項1または2に記載の方法または装置。
- 臓器が、腎臓、心臓、脾臓、膵臓、肺、副腎、胃、前立腺および卵巣を含むリストから選択される、請求項3に記載の方法または装置。
- 臓器が肝臓である、請求項4に記載の方法または装置。
- 核酸を10〜80mmHgの圧力で導入するか、または、圧力発生手段が10〜80mmHgの圧力を発生するように適合される、請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の方法または装置。
- 核酸がプラスミドの形をしている、請求項1〜6のうちいずれか1項に記載の方法または装置。
- 閉塞を1つまたはそれ以上のバルーンで達成するか、または、閉塞手段が1つまたはそれ以上のバルーンを含む、請求項1〜7のうちいずれか1項に記載の方法または装置。
- 核酸を60秒未満で身体部位に導入する、請求項1〜8のうちいずれか1項に記載の方法または装置。
- 核酸を含む配合液の総量が50〜1300mlである、請求項1〜9のうちいずれか1項に記載の方法または装置。
- 核酸を含む配合液の総量が75〜350mlである、請求項10に記載の方法または装置。
- リザーバが1つまたはそれ以上の注射器チューブを含む、請求項2〜11のうちいずれか1項に記載の装置。
- 圧力発生手段が1つまたはそれ以上の注射器を含む、請求項2〜12のうちいずれか1項に記載の装置。
- カテーテルが1つまたはそれ以上の半径方向の注入ポートを含む、請求項2〜13のうちいずれか1項に記載の装置。
- カテーテルが2つの管腔を含む、請求項2〜14のうちいずれか1項に記載の装置。
- 1つの管腔がガイドワイヤを受け入れるように適合される、請求項15に記載の装置。
- 1つの管腔が閉塞手段を膨らませることができるように適合される、請求項14または15に記載の装置。
- 配合液がガイドワイヤ用管腔を通る、請求項16に記載の装置。
- カテーテルが閉塞手段を膨らませることができるように適合される2つの管腔を含む、請求項15〜18のうちいずれか1項に記載の装置。
- 遺伝子治療によって被験体を治療するために、圧力下、該被験体の身体部位のほぼ閉塞した輸出管を経て、上記被験体の上記身体部位へ導入するための薬剤の製造における核酸分子の使用。
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