JP2007527209A - Copdキナーゼ(rcキナーゼ)において制御される、キナーゼの制御 - Google Patents

Copdキナーゼ(rcキナーゼ)において制御される、キナーゼの制御 Download PDF

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Abstract

【課題】なし
【解決手段】ヒトRCキナーゼ活性を制御する試薬、及びヒトRCキナーゼ遺伝子産物と結合する試薬を用いて、治療効果を得るためにこのタンパク質を制御することができる。そのような制御は、慢性閉塞性肺疾患、喘息、癌、及び細胞のシグナル伝達に欠陥がある疾患の治療に特に有用である。
【選択図】なし

Description

(発明の技術分野)
本発明は、キナーゼ活性の制御の分野に関する。さらに詳細には、本発明は、COPDキナーゼ(RCキナーゼ)において制御される新規ヒトキナーゼに関する。本発明は、RCキナーゼの遺伝子がCOPD患者で過剰発現し、診断マーカ、及び治療の標的として有用であることを開示するものである。RCキナーゼを用いた、COPDの予測、診断、及び予後診断、ならびに予防、及び治療の方法を開示する。RCキナーゼが無調節である、あるいはRCキナーゼの活性の調節、又は増強によって疾患の進行を改変することができる他の疾患の予測、診断、及び予後診断、ならびに予防、及び治療の方法も開示する。RCキナーゼ活性の調節は、COPD、喘息、癌、アルツハイマー病(Alzheimer's
disease)、炎症性疾患や心血管疾患などの疾患の状態に影響を及ぼすことができる。
(発明の背景)
細胞内シグナル伝達(signaling)は、種々の重要な生物学的機能を制御する。シグナルを伝導するために細胞によって使用される共通の1つの方法は、タンパク質リン酸化(protein
phosphorylation)である。シグナルを伝達するために、タンパク質キナーゼと呼ばれる活性化した酵素が、シグナル伝達系中で下流の分子にリン酸基を結合させ、それによって、分子の型に応じて、その酵素活性、その細胞内局在、他の分子とのその相互作用、その形状、又はその半減期を制御する。この型のシグナル伝達に関与するタンパク質キナーゼの重要なファミリーは、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)である(Widmann,
C.らの論文(Physiol Rev 79 (1): 143-80, 1999))。MAPKはそれ自体リン酸化によって制御されているので、それはしばしば、他のキナーゼを含む細胞内での複雑なリン酸中継系の構成要素となる。例えば、MAPKは、MAPKキナーゼ(MKK)によってリン酸化することができ、そのキナーゼは順にMAPKキナーゼキナーゼ(MKKK)によってリン酸化することができる。そのようなリン酸中継系を使用して、シグナルを増幅し、シグナルの特異性を決定し、シグナル伝達系中の異なる点での制御を可能にすることができる。MAPK、MKK、及びMKKKは、遺伝子発現、有糸分裂、増殖、細胞運動、代謝、及びプログラム細胞死を含めた細胞活動に多種多様に役割を果たすことが認められている。MAPK、MKKやMKKKなどのタンパク質キナーゼファミリー酵素が重要な機能を有するので、新たなMAPK経路のキナーゼ、及び治療効果を得るためにその新たなキナーゼを制御する方法を同定することが当技術分野で必要とされている。
(発明の概要)
本発明の目的は、ヒトRCキナーゼを制御する試薬、及び方法を提供することである。本発明のこれらの、及び他の目的を、下記に記載する1以上の実施態様によって提供する。
本発明の一実施態様は、RCキナーゼポリペプチドをコードし、
a)配列番号7、8、9、10、11、又は12で示されるアミノ酸配列と少なくとも約50%同一であるアミノ酸配列;及び配列番号7、8、9、10、11、又は12で示されるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むRCキナーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
b)配列番号1、2、3、4、5、又は6の配列を含むポリヌクレオチド、
c)ストリンジェントな条件下で、(a)、及び(b)で特定されるポリヌクレオチドとハイブリダイズするポリヌクレオチド、
d)遺伝コード(genetic code)の縮重により、その配列が、(a)〜(c)で特定されるポリヌクレオチド配列から逸脱しているポリヌクレオチド、並びに
e)(a)〜(d)で特定されるポリヌクレオチド配列の断片、誘導体、又は対立遺伝子変種に相当するポリヌクレオチド、からなる群から選択される単離ポリヌクレオチドである。
本発明の他の実施態様は、上記のポリヌクレオチドによってコードされる、実質的に精製されたRCキナーゼポリペプチドである。
本発明はさらに、COPDについての予防、予測、診断、予後診断、及び治療用の新規の組成物、及び使用に関する。疾患状態でRCキナーゼ発現レベルが上昇するので、その遺伝子産物は、治療方法、ならびに診断的にかつ臨床的にモニターする方法に特に有用な標的である。
本発明はさらに、RCキナーゼ遺伝子の誘導体、断片、アナログ、及び相同体に基づいた、COPDについての予防、予測、診断、予後診断、及び治療用の新規の組成物、及び使用に関する。
本発明はさらに、DNA、及びmRNAレベルでの、COPDにおけるRCキナーゼの調節障害を検出する方法に関する。
本発明はさらに、COPDで変化しているRCキナーゼ遺伝子、又はRCキナーゼのゲノム核酸配列の検出による、COPDの予測、診断、又は予後診断の方法に関する。
一実施態様では、RCキナーゼ遺伝子の発現をアレイで検出することができる。
さらなる実施態様では、Luminex社(米国特許第6,268,222号)によって提供されるような、ビーズに基づく直接蛍光読み取り技術で遺伝子の発現を検出することができる。
一実施態様では、本発明は、細胞、又は組織の表現型を決定する方法に関し、正常、又は非処理細胞と比較した、配列番号1、2、3、4、5、又は6を含むポリヌクレオチドの発現の差を検出する段階を含み、そのポリヌクレオチドは、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、又は少なくとも約3倍の発現の差がある。
さらに他の実施態様では、本発明は、染色体2q21.3上のヒトゲノム領域、具体的には、ジーンバンク(Genbank)受入番号NT_005058のヒトゲノム配列コンティグ(contig)上で認められた、COPDの予測、診断、及び予後診断、ならびに予防、及び治療で使用するゲノム領域を提供する。特に、前記染色体領域の遺伝子内領域だけでなく、遺伝子間領域、偽遺伝子、又は非転写遺伝子も、診断、予測、予後診断、予防、及び治療用の組成物、及び方法に使用することができる。
さらに他の実施態様では、本発明は、配列番号7、8、9、10、11、又は12のポリペプチドを含むポリペプチド、あるいは配列番号1、2、3、4、5、又は6のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの活性を制御する作用物質をスクリーニングする方法を提供する。試験化合物を、配列番号7、8、9、10、11、又は12のポリペプチドを含むポリペプチド、あるいは配列番号1、2、3、4、5、又は6のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドと接触させる。該試験化合物とポリペプチドの結合を検出する。それによって、ポリペプチドと結合する試験化合物を、COPDの治療に関する潜在的な治療用作用物質として同定する。
さらに他の実施態様では、本発明は、配列番号7、8、9、10、11、又は12のポリペプチドを含むポリペプチド、あるいは配列番号1、2、3、4、5、又は6のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの活性を制御する作用物質をスクリーニングする他の方法を提供する。試験化合物を、配列番号7、8、9、10、11、又は12のポリペプチドを含むポリペプチド、あるいは配列番号1、2、3、4、5、又は6のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドと接触させる。ポリペプチドによって媒介される生物学的活性を検出する。それによって、生物学的活性を低下させる試験化合物を、COPDにおける、配列番号7、8、9、10、11、又は12のポリペプチドを含むポリペプチド、あるいは配列番号1、2、3、4、5、又は6のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの活性の低下に関する潜在的な治療用作用物質として同定する。それによって、生物学的活性を増大させる試験化合物を、COPDにおける、配列番号7、8、9、10、11、又は12のポリペプチドによってコードされるポリペプチド、あるいは配列番号1、2、3、4、5、又は6のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの活性の増大に関する潜在的な治療用作用物質として同定する。
他の実施態様では、本発明は、配列番号1、2、3、4、5、又は6のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドの活性を制御する作用物質をスクリーニングする方法を提供する。試験化合物を、配列番号1、2、3、4、5、又は6のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドと接触させる。該試験化合物と、配列番号1、2、3、4、5、又は6のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドとの結合を検出する。それによって、ポリヌクレオチドと結合する試験化合物を、COPDにおける、配列番号1、2、3、4、5、又は6のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドの活性の制御に関する潜在的な治療用作用物質として同定する。
したがって、本発明は、配列番号7、8、9、10、11、又は12のポリペプチド、あるいは配列番号1、2、3、4、5、又は6のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを提供し、それを使用して、配列番号7、8、9、10、11、又は12のポリペプチドを含むポリペプチド、あるいは配列番号1、2、3、4、5、又は6のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの、例えば、アゴニスト、及びアンタゴニスト、部分アゴニスト、逆アゴニスト、活性化因子、活性化補助因子や抑制因子など、制御因子、又は調節因子として作用する可能性がある化合物を同定することができる。したがって、本発明は、COPDにおいて、配列番号7、8、9、10、11、又は12のポリペプチドを含むポリペプチド、あるいは配列番号1、2、3、4、5、又は6のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを制御する試薬、及び方法を提供する。該制御は、アップレギュレーション(up-regulation)でもよく、あるいはダウンレギュレーション(down-regulation)でもよい。配列番号1、2、3、4、5、又は6のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドの発現、安定性もしくは量、あるいは、配列番号7、8、9、10、11、又は12のポリペプチドを含むポリペプチド、又は配列番号1、2、3、4、5、又は6のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの活性を調節する試薬は、タンパク質、ペプチド、ペプチドミメティック(peptidomimetic)、核酸、核酸アナログ(例えば、ペプチド核酸、ロックト核酸(LNA))、又は小分子でもよい。配列番号1、2、3、4、5、又は6のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドの発現、安定性もしくは量、あるいは、配列番号7、8、9、10、11、又は12のポリペプチドを含むポリペプチド、又は配列番号1、2、3、4、5、又は6のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの活性を調節する方法は、遺伝子置換療法、アンチセンス、リボザイム、RNA干渉、及び三重核酸の手法でもよい。
本発明の一実施態様では、COPDの予測、予防、診断、予後診断、及び治療で使用する、配列番号7、8、9、10、11、又は12のポリペプチドを含む完全長、又は部分ポリペプチド、あるいは配列番号1、2、3、4、5、又は6のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド、あるいは配列番号1、2、3、4、5、又は6のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドと特異的に結合する抗体を提供する。
本発明のさらに他の実施態様は、COPDの治療用薬物の製剤における、配列番号1、2、3、4、5、又は6のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド、あるいは配列番号7、8、9、10、11、又は12のポリペプチドを含むポリペプチド、あるいは配列番号1、2、3、4、5、又は6のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドと特異的に結合する試薬の使用である。
さらに他の実施態様は、COPDの治療用薬物の製剤における、配列番号7、8、9、10、11、又は12のポリペプチドを含むポリペプチド、又は配列番号1、2、3、4、5、又は6のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの活性もしくは安定性、あるいは配列番号1、2、3、4、5、又は6のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドの発現、量もしくは安定性を調節する試薬の使用である。
本発明のさらに他の実施態様は、配列番号1、2、3、4、5、又は6のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド、あるいは配列番号7、8、9、10、11、又は12のポリペプチドを含むポリペプチド、あるいは配列番号1、2、3、4、5、又は6のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドと特異的に結合する試薬、及び医薬として許容し得る担体を含む医薬組成物である。
本発明のさらに他の実施態様は、配列番号1、2、3、4、5、又は6のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを含み、あるいは配列番号7、8、9、10、11、又は12のポリペプチドを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む医薬組成物である。
一実施態様では、細胞中で、配列番号1、2、3、4、5、又は6のポリヌクレオチドを含み、又は配列番号7、8、9、10、11、又は12のポリペプチドを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、あるいはその相補的な配列の発現のレベルを変化させる試薬を、細胞を用意し、該細胞を試験試薬で処理し、配列番号1、2、3、4、5、又は6のポリヌクレオチドを含み、又は配列番号7、8、9、10、11、又は12のポリペプチドを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、あるいはその相補的な配列の細胞中での発現レベルを決定し、処理細胞中でのそのポリヌクレオチドの発現レベルを非処理細胞中でのそのポリヌクレオチドの発現レベルと比較することによって同定し、非処理細胞中でのそのポリヌクレオチドの発現レベルと比較した処理細胞中でのそのポリヌクレオチドの発現レベルの変化から、細胞中でそのポリヌクレオチドの発現レベルを変化させる作用物質が示唆される。
本発明はさらに、この方法によって同定される試薬を含む医薬組成物を提供する。
本発明の他の実施態様は、配列番号7、8、9、10、11、又は12のポリペプチドを含み、あるいは配列番号1、2、3、4、5、又は6のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを含む医薬組成物である。
本発明のさらなる実施態様は、配列番号1、2、3、4、5、又は6のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を含み、かつRCキナーゼと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードしあるいは配列番号7、8、9、10、11、又は12のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む医薬組成物である。本発明に有用な医薬組成物はさらに、配列番号1、2、3、4、5、又は6のポリヌクレオチド、又はその断片を含むポリペプチド、抗体、あるいは抗体断片を含む融合タンパク質を含んでよい。
(発明の詳細な説明)
本明細書において使用される「RCキナーゼ」とは、配列番号7、8、9、10、11、又は12のポリペプチド、ならびにその誘導体、断片、アナログ、及び相同体、あるいは配列番号1のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド、ならびにその誘導体、断片、アナログ、及び相同体を指す。
配列番号1は、RCキナーゼポリペプチドをコードするDNA配列の変異体1を示す。この変異体は、長さが3719 bpであり、オープンリーディングフレーム(open
reading frame)がその配列の塩基1〜3679に及ぶ。配列番号2は、RCキナーゼポリペプチドをコードするDNA配列の変異体2を示す。この変異体は、長さが3338
bpであり、オープンリーディングフレームがその配列の塩基1〜3243に及ぶ。配列番号3は、RCキナーゼポリペプチドをコードするDNA配列の変異体3を示す。この変異体は、長さが3510
bpであり、オープンリーディングフレームがその配列の塩基1〜3415に及ぶ。配列番号4は、RCキナーゼポリペプチドをコードするDNA配列の変異体4を示す。この変異体は、長さが4058
bpであり、オープンリーディングフレームがその配列の塩基1〜4018に及ぶ。配列番号5は、RCキナーゼポリペプチドをコードするDNA配列の変異体5を示す。この変異体は、長さが1460
bpであり、オープンリーディングフレームがその配列の塩基1〜1420に及ぶ。配列番号6は、RCキナーゼポリペプチドをコードするDNA配列の変異体6を示す。この変異体は、長さが1604
bpであり、オープンリーディングフレームがその配列の塩基1〜1564に及ぶ。配列番号7は、配列番号1のDNA配列から推定されるアミノ酸配列を示す。配列番号8は、配列番号2のDNA配列から推定されるアミノ酸配列を示す。
配列番号9は、配列番号3のDNA配列から推定されるアミノ酸配列を示す。配列番号10は、配列番号4のDNA配列から推定されるアミノ酸配列を示す。配列番号11は、配列番号5のDNA配列から推定されるアミノ酸配列を示す。配列番号12は、配列番号6のDNA配列から推定されるアミノ酸配列を示す。
さらに、新規のRCキナーゼ、特にヒトRCキナーゼの活性は、本発明の発見である。ヒトRCキナーゼは、配列番号7、8、10、又は12のカルボキシ末端から約268アミノ酸残基から開始し、約256残基にまたがる単一のS_TKcキナーゼドメイン(セリン/-スレオニンタンパク質キナーゼ、触媒ドメイン)を含む。ヒトRCキナーゼの変異体の2つ、配列番号9、及び11は、このキナーゼドメインの一部が欠失している。ヒトRCキナーゼのキナーゼドメインは、他の既知キナーゼ型酵素のキナーゼドメインと高度に相同である。配列番号7、8、10、又は12で示されるヒトRCキナーゼは、ジーンバンク受入番号AAC97114で識別され、「MEKキナーゼα」と注釈付けられる粘菌キイロタマホコリカビ(Dictyostelium
discoideum)タンパク質と287アミノ酸(キナーゼドメイン)にわたって44%同一であり、67%類似する。同様に、配列番号7、8、10、又は12で示されるヒトRCキナーゼは、ジーンバンク受入番号A48084で識別され、「STE11タンパク質キナーゼ相同体NPK1」と注釈付けられる一般的な煙草であるタバコ(Nicotiana
tabacum)タンパク質と276アミノ酸(キナーゼドメイン)にわたって47%同一であり、67%類似し、ジーンバンク受入番号NP_002392で識別され、「MAP/ERKキナーゼキナーゼ3;MAPKKK3」と注釈付けられるヒトタンパク質と291アミノ酸(キナーゼドメイン)にわたって46%同一であり、63%類似する。
配列番号7〜12のコード配列は、それぞれ配列番号1〜6で示される。これらのコード配列を含む遺伝子は、ジーンバンク受入番号NT_005058で識別されるヒト第2染色体ゲノムコンティグ内に位置し、61,000塩基を超えるゲノムにまたがって、少なくとも11個のエキソンに分割される。11個の3’にあるほとんどのエキソンを、5’から3’へと遺伝子に沿った順に読んで、それぞれエキソンC、D、E、F、G、H、I、J、K、L、及びMとする場合、6個の選択的スプライス変異体は、本発明によって下記の通りに表現される。配列番号1は、エキソンE、G、及びHを除いたすべてのエキソンを使用するスプライス変異体を表現するものである。配列番号2は、エキソンLの一部を除いたすべてのエキソンを使用するスプライス変異体を表現するものである。配列番号3は、エキソンE、及びLの一部を除いたすべてのエキソンを使用するスプライス変異体を表現するものである。配列番号4は、エキソンEを除いたすべてのエキソンを使用するスプライス変異体を表現するものである。配列番号5は、エキソンE、J、及びLの一部を除いたすべてのエキソンを使用するスプライス変異体を表現するものである。配列番号6は、エキソンE、及びJを除いたすべてのエキソンを使用するスプライス変異体を表現するものである。
大部分のキナーゼ触媒ドメインを含む単一のエキソンは、以前は「仮想タンパク質FLJ23074」と注釈付けられ、その遺伝子のタンパク質産物、及び機能は不明である。
RCキナーゼは、他のRCキナーゼポリペプチド、MKK4、及びMKK6をリン酸化する能力を有する。MAPKシグナル伝達が重要であることと併せて考慮すると、RCキナーゼ活性の改変から、COPD、喘息、癌、アルツハイマー病、炎症性疾患、及び心血管疾患に対する治療の機会が与えられる可能性がある。
(ポリペプチド)
下記で定義するように、本発明に従ったRCキナーゼポリペプチドは、配列番号7、8、9、10、11、又は12で示されるアミノ酸配列、あるいは生物学的に活性なその変異体を含む。したがって、本発明のRCキナーゼポリペプチドは、RCキナーゼ分子の一部、完全長RCキナーゼ分子、あるいはRCキナーゼ分子のすべて、又は一部を含む融合タンパク質でもよい。
(生物学的に活性な変異体)
生物学的に活性である、すなわちRCキナーゼ活性を保持するRCキナーゼ変異体も、RCキナーゼポリペプチドである。好ましくは、天然に存在する、又は天然に存在しないRCキナーゼ変異体は、配列番号7、8、9、10、11、又は12で示されるアミノ酸配列と少なくとも約50、好ましくは約70、75、90、96、又は98%同一であるアミノ酸配列を有する。推定されるRCキナーゼと配列番号7、8、9、10、11、又は12のアミノ酸配列との間の%同一性は、従来の方法によって決定する。例えば、Altschulらの論文(Bull.
Math. Bio. 48: 603 (1986))、及びHenikoff及びHenikoffの論文(Proc. Natl. Acad. Sci. USA
89: 10915 (1992))を参照されたい。簡潔に述べると、2つのアミノ酸配列を、ギャップ開始ペナルティー(gap opening penalty)に10を、ギャップ伸長ペナルティー(gap
extension penalty)に1を、Henikoff、及びHenikoff(1992)の「BLOSUM62」スコア行列(scoring matrix)を用いて、アラインメントスコア(alignment
score)が最適となるように整列させる。
当業者は、2つのアミノ酸配列の整列に利用可能な確立されたアルゴリズム(algorithm)が多数存在することを理解している。Pearson、及びLipmanの「FASTA」類似性検索アルゴリズムは、本明細書で開示されているアミノ酸配列と、推定される変異体のアミノ酸配列によって共有される同一性のレベルを調べるのに適したタンパク質アラインメント法である。FASTAアルゴリズムは、Pearson、及びLipmanの論文(Proc.
Nat'l Acad. Sci. USA 85: 2444 (1988))、並びにPearsonの論文(Meth. Enzymol. 183: 63
(1990))に記載されている。簡潔に述べると、FASTAは最初に、保存的なアミノ酸置換、挿入、又は欠失を考慮せずに、最も高い密度の一致部分(ktup変数が1である場合)、又は一致部分の対(ktup=2の場合)を有する、クエリー配列(例えば、配列番号2)と試験配列によって共有される領域を同定することにより、配列類似性を特徴付ける。次いで、最も高い密度の一致部分を有する10個の領域について、アミノ酸置換行列を用いて対となるアミノ酸すべての類似性を比較することによりスコアを再計算し、領域の末端を「切り取って」、最も高いスコアに寄与するその残基のみを含める。「カットオフ(cutoff)」値(配列の長さ、ktup値に基づいた所定の式によって計算される)より大きいスコアを有するいくつかの領域がある場合、切り取った最初の領域を調べて、その領域を結合してギャップを含めたおよそのアラインメントを形成することができるかどうか判定する。最後に、2つのアミノ酸配列の最も高いスコアの領域を、アミノ酸の挿入、及び欠失を考慮する改変したNeedleman、Wunsch、Sellersのアルゴリズム(Needleman、及びWunschの論文(J.
Mol. Biol.48: 444 (1970));Sellersの論文(SIAM J. Appl. Math.26: 787 (1974)))を用いて整列させる。FASTA分析の好ましいパラメーター(parameter)は:ktup=1、ギャップ開始ペナルティー=10、ギャップ伸長ペナルティー=1、及び置換行列=BLOSUM62である。Pearsonの論文(Meth.
Enzymol. 183: 63 (1990))の付録2で説明されているように、スコア行列ファイル(「SMATRIX」)を改変することにより、これらのパラメーターをFASTAプログラムに導入することができる。
FASTAを使用して、上記に記載の比を用いて核酸分子の配列同一性を決定することもできる。ヌクレオチド配列比較では、ktup値は、1〜6とすることができ、好ましくは3〜6であり、最も好ましくは3であり、他のパラメーターはデフォルト値にする。
%同一性の変動は、例えば、アミノ酸の置換、挿入、又は欠失に起因する可能性がある。アミノ酸置換は、1対1のアミノ酸の取替えと定義される。置換アミノ酸が、類似した構造的かつ/、又は化学的特性を有するとき、それは事実上保存的である。保存的な取替えの例は、ロイシンのイソロイシン、又はバリンとの置換、アスパラギン酸のグルタミン酸との置換、あるいはスレオニンのセリンとの置換である。
アミノ酸の挿入、又は欠失は、アミノ酸配列に対する、又はその内部の変化である。それは通常、約1〜5アミノ酸の範囲に収まる。どのアミノ酸残基について置換し、挿入し、又は欠失させることができるかを決定する際の指針は、DNASTARソフトウェアなど当技術分野で周知のコンピュータプログラムを用いて見つけることができる。当技術分野で知られ、例えば実施例2で記載されているように、フィブロネクチンの結合、又はRCキナーゼ活性についてアッセイすることにより、アミノ酸の変化によって生物学的に活性なRCキナーゼポリペプチドとなるかどうかを容易に判定することができる。
(融合タンパク質)
融合タンパク質は、RCキナーゼのアミノ酸配列に対する抗体の生成、及び様々なアッセイ系での使用に有用である。例えば、融合タンパク質を使用して、その活性部位を含めたRCキナーゼポリペプチドの一部分と相互作用するタンパク質を同定することができる。タンパク質アフィニティークロマトグラフィーなどの方法、又は酵母2ハイブリッド系やファージディスプレイ系など、タンパク質とタンパク質の相互作用に関する、ライブラリーに基づくアッセイをこの目的で使用することができる。そのような方法は当技術分野で周知であり、薬物スクリーニングとして使用することもできる。
RCキナーゼ融合タンパク質は、ペプチド結合によって互いに融合した2つのタンパク質セグメントを含む。融合タンパク質で使用する、隣接アミノ酸は、上記に記載のものなど、配列番号7、8、9、10、11、又は12で示されるアミノ酸配列、あるいは生物学的に活性なその変異体から選択することができる。好ましくは、融合タンパク質は、ヒトRCキナーゼのキナーゼドメイン、及び/又はATP結合部位を含む。第1のタンパク質セグメントは、全長RCキナーゼを含むこともできる。
第2のタンパク質セグメントは、全長タンパク質、又はタンパク質断片、又はポリペプチドでもよい。融合タンパク質構築で一般に使用するタンパク質には、β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)を含めた自己蛍光タンパク質、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、ルシフェラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、及びクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)がある。さらに、融合タンパク質構築で、ヒスチジン(His)タグ、FLAGタグ、インフルエンザ血球凝集素(HA)タグ、Mycタグ、VSV-Gタグ、及びチオレドキシン(Trx)タグを含めたエピトープタグを使用する。他の融合構築物は、マルトース結合タンパク質(MBP)、S-タグ、Lex
aDNA結合ドメイン(DBD)融合体、GAL4DNA結合ドメイン融合体、単純ヘルペスウイルス(HSV)BP16タンパク質融合体を含むことができる。RCキナーゼポリペプチドが異種の部分から離れて切断され精製されるように、RCキナーゼポリペプチドをコードする配列と、異種のタンパク質の配列との間に位置する切断部位を含むように融合タンパク質を設計することもできる。
当技術分野で知られているように、融合タンパク質を化学的に合成することができる。好ましくは、2つのタンパク質セグメントの共有結合によって、又は分子生物学の分野で標準的な手順によって融合タンパク質を生成する。当技術分野で知られているように、組換えDNAの方法を使用して、例えば、第2のタンパク質セグメントをコードするヌクレオチドに合った読み枠で、本明細書で開示されているRCキナーゼのコード配列を含むDNA構築物を調製し、そのDNA構築物を宿主細胞中で発現させることによって融合タンパク質を調製することができる。融合タンパク質を構築する多くのキットが、Promega
Corporation(Madison, WI)、Stratagene(La Jolla, CA)、CLONTECH(Mountain View, CA)、Santa
Cruz Biotechnology(Santa Cruz, CA)、MBL International Corporation(MIC;
Watertown, MA)やQuantum Biotechnologies(Montreal, Canada; 1-888-DNA-KITS)などの会社から入手可能である。
(種相同体の同定)
ヒトRCキナーゼの種相同体は、RCキナーゼポリヌクレオチド(下記に記載する)を用いて適切なプローブ、又はプライマーを調製し、マウス、サルや酵母など他の種由来のcDNA発現ライブラリーをスクリーニングし、RCキナーゼの相同体をコードするcDNAを同定し、当技術分野で知られているようにcDNAを発現させて得ることができる。
(ポリヌクレオチド)
RCキナーゼポリヌクレオチドは、一本鎖でもよく、あるいは二本鎖でもよく、RCキナーゼポリペプチドのコード配列、又はコード配列の相補体を含む。RCキナーゼポリヌクレオチドの部分的なコード配列を、配列番号1、2、3、4、5、又は6で示す;RCキナーゼのコード配列は、ヌクレオチド11885〜12023、及びヌクレオチド10564〜10693の配列番号3で示されるゲノム配列内にも含まれる。
ヒトRCキナーゼポリペプチドをコードする変性ヌクレオチド配列、ならびにRCキナーゼのコード配列である配列番号1、及び3で示されるヌクレオチド配列と少なくとも約50、好ましくは約75、90、96、又は98%同一である相同なヌクレオチド配列も、RCキナーゼポリヌクレオチドである。2つのポリヌクレオチドの配列間の%配列同一性は、ギャップ開始ペナルティーが-12、ギャップ伸長ペナルティーが-2であるアフィンギャップ(affine
gap)検索を用いてFASTAアルゴリズムを使用するALIGNなどのコンピュータプログラムを用いて決定する。生物学的に活性なRCキナーゼポリペプチドをコードするRCキナーゼポリヌクレオチドの相補的DNA(cDNA)分子、種相同体、及び変異体も、RCキナーゼポリヌクレオチドである。
(変異体、及び相同体の同定)
先に開示したRCキナーゼポリヌクレオチドの変異体、及び相同体も、RCキナーゼポリヌクレオチドである。通常、当技術分野で知られているように、ストリンジェントな条件下での、既知のRCキナーゼポリヌクレオチドとの候補ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションにより、相同なRCキナーゼポリヌクレオチドの配列を同定することができる。例えば、2×SSC(0.3
M NaCl、0.03 Mクエン酸ナトリウム、pH 7.0)、0.1%SDS、室温で2回、それぞれ30分;次いで、2×SSC、0.1%SDS、50℃で1回、30分;次いで、2×SSC、室温で2回、それぞれ10分という洗浄条件を用いて、塩基対の不整合を最大で約25〜30%含む相同な配列を同定することができる。より好ましくは、相同な核酸の鎖は、塩基対の不整合を15〜25%、さらに好ましくは塩基対の不整合を5〜15%含む。
適切なプローブ、又はプライマーを調製し、マウス、サルや酵母など他の種由来のcDNA発現ライブラリーをスクリーニングすることによって、本明細書で開示されているRCキナーゼポリヌクレオチドの種相同体を同定することができる。例えば、ヒトcDNA発現ライブラリーをスクリーニングすることによって、RCキナーゼポリヌクレオチドのヒト変異体を同定することができる。相同性が1%低下する毎に二本鎖DNAのTが1〜1.5℃低下することがよく知られている(Bonnerらの論文、J.
Mol. Biol. 81, 123 (1973))。したがって、例えば、推定される相同なRCキナーゼポリヌクレオチドを、配列番号1、2、3、4、5、又は6のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、あるいは配列番号3のエフリン(ephrin)様セリンプロテアーゼコード配列とハイブリダイズさせて、試験ハイブリッドを形成させることにより、ヒトRCキナーゼポリヌクレオチドの変異体、又は他の種のRCキナーゼポリヌクレオチドを同定することができる。試験ハイブリッドの融解温度を、完全に相補的なヌクレオチド配列を有するRCキナーゼポリヌクレオチドを含むハイブリッドの融解温度と比較し、試験ハイブリッド内での塩基対の不整合の数、又は百分率を算出する。
厳密なハイブリダイゼーション、及び/又は洗浄条件の後にRCキナーゼポリヌクレオチド、又はその相補体とハイブリダイズするヌクレオチド配列も、RCキナーゼポリヌクレオチドである。ストリンジェントな洗浄条件は、当技術分野でよく知られ、理解され、例えば、Sambrookらの著書「分子クローニング:実験室マニュアル、第2版」(1989)のページ9.50〜9.51で開示されている。
通常、厳密なハイブリダイゼーション条件には、調べるハイブリッドの算出Tよりおよそ12〜20℃低い温度と塩濃度の組合せを選択すべきである。本明細書で開示されているコード配列を有するRCキナーゼポリヌクレオチドと、そのヌクレオチド配列と少なくとも約50、好ましくは約75、90、96、又は98%同一であるポリヌクレオチド配列とのハイブリッドのTは、例えば、Bolton、及びMcCarthyの論文(Proc.
Natl. Acad. Sci. U.S.A. 48, 1390 (1962))の方程式:
T=81.5℃−16.6(log10[Na])+0.41(%G+C)−0.63(%ホルムアミド)−600/l)
上式で、l=塩基対単位のハイブリッドの長さを用いて算出することができる。
ストリンジェントな洗浄条件には、例えば、65℃で4×SSC、又は42℃で50%ホルムアミド、4×SSC、又は65℃で0.5×SSC、0.1%SDSがある。高度にストリンジェントな洗浄条件には、例えば、65℃で0.2×SSCがある。
(ポリヌクレオチドの調製)
天然に存在するRCキナーゼポリヌクレオチドを、膜構成成分、タンパク質や脂質など他の細胞構成成分を含まない状態で単離することができる。ポリヌクレオチドを、細胞で調製し、標準的な核酸精製技術を用いて単離し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの増幅技術を用いて合成することもでき、あるいは自動合成装置を用いて合成することもできる。ポリヌクレオチドを単離する方法は、当技術分野で日常的であり既知である。ポリヌクレオチドを得る任意のそのような技術を用いて、単離RCキナーゼポリヌクレオチドを得ることができる。例えば、制限酵素、及びプローブを用いて、RCキナーゼのヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド断片を単離することができる。単離ポリヌクレオチドは、他の分子を含まない、あるいは少なくとも70、80、又は90%含まない調製物中にある。
RCキナーゼmRNAを鋳型として用いて、標準的な分子生物学の技術でRCキナーゼのcDNA分子を調製することができる。その後、当技術分野で知られ、Sambrookらの著書(1989)などのマニュアルで開示されている分子生物学の技術を用いて、RCキナーゼのcDNA分子を複製することができる。PCRなどの増幅技術を使用して、ヒトゲノムDNA、又はcDNAを鋳型として用いてRCキナーゼポリヌクレオチドのさらなるコピーを得ることができる。
あるいは、合成化学の技術を用いて、RCキナーゼポリヌクレオチドを合成することができる。遺伝コードの縮重によって、例えば、配列番号7、8、9、10、11、又は12で示されるアミノ酸配列、あるいはその配列の生物学的に活性な変異体を有するRCキナーゼポリヌクレオチドをコードする代替のヌクレオチド配列を合成することが可能である。
(全長ポリヌクレオチドの取得)
配列番号1、2、3、4、5、又は6の部分配列、あるいはその相補体を使用して、それらが由来していた、対応する全長の遺伝子を同定することができる。部分配列について、当業者に知られている標識法を使用して、ポリヌクレオチドキナーゼを用いて32Pでニックトランスレーションを行う、又は末端標識することができる(「分子生物学の基本方法」Davisら編(Elsevier
Press, N.Y., 1986))。ヒト組織から調製されたλライブラリーを、対象とする標識配列を用いて直接スクリーニングすることもでき、あるいはそのライブラリーを全部まとめてpBluescript(Stratagene
Cloning Systems, La Jolla, Calif. 92037)に転換して、細菌コロニー(colony)スクリーニングを促進することもできる(Sambrookらの著書(1989)ページ1.20を参照)。
どちらの方法も、当技術分野で周知である。簡潔に述べると、pBluescript中のライブラリーを含む細菌コロニー、又はλプラークを含む細菌叢の付いたフィルターを変性させ、DNAをフィルターに固定する。Davisらの論文(1986)に記載のハイブリダイゼーション条件を用いて、フィルターを標識プローブとハイブリダイズする。λ、又はpBluescript中にクローン化した部分配列を陽性対照として使用して、背景結合を評価し、正確なクローンの同定に必要なハイブリダイゼーション、及び洗浄の厳密性を調整することができる。得られた放射線写真を、二連のプレートのコロニー、又はプラークと比較する;各露出斑は、陽性コロニー、又はプラークに対応する。そのコロニー、又はプラークを選択し増殖させ、さらなる分析、及び配列決定のためにコロニーからDNAを単離する。
陽性cDNAクローンを分析して、その部分配列由来の一方のプライマーと、ベクター由来の他方のプライマーを用いたPCRを使用して、それが含むさらなる配列の量を決定する。制限消化、及びDNA配列決定により、元の部分配列より大きなベクター挿入PCR産物を有するクローンを分析して、それがノーザンブロット分析から決定したmRNAのサイズと同じサイズ、又は類似の挿入断片を含むかどうかを決定する。
1以上の重複したcDNAクローンを同定した後、例えばエキソヌクレアーゼIII消化後にそのクローンの完全な配列を決定することができる(McCombieらの論文(Methods
3, 33-40, 1991))。一連の欠失クローンを生成し、そのそれぞれを配列決定する。得られた重複配列を組み合わせて、高度な重複性がある単一の隣接配列(通常は各ヌクレオチド位置に3〜5つの重複配列)にし、その結果高度に正確な最終配列が得られる。
PCRに基づく様々な方法を使用して、ヒトRCキナーゼの開示された部分をコードする核酸配列を伸長して、プロモーターや制御エレメントなどの上流配列を検出することができる。例えば、制限部位PCRは、普遍的なプライマーを使用して、既知の位置に隣接未知の配列を回収する(Sarkarの論文(PCR
Methods Applic. 2, 318-322, 1993))。リンカー配列に対するプライマーと、既知の領域に特異的なプライマーの存在下で、ゲノムDNAを最初に増幅する。次いで増幅した配列に、同じリンカープライマーと、最初のものより内部にある別の特異的なプライマーを用いた第2回のPCRを施す。適当なRNAポリメラーゼで各回のPCRの産物を転写し、逆転写酵素を用いて配列決定する。
インバース(inverse)PCRを使用して、既知の領域に基づく多岐なプライマーを用いて配列を増幅、又は伸長することもできる(Trigliaらの論文(Nucleic
Acids Res. 16, 8186, 1988))。OLIGO 4.06 Primer Analysisソフトウェア(National
Biosciences Inc., Plymouth, Minn.)など市販されているソフトウェアを用いて、長さ22〜30ヌクレオチドであり、GC含量が50%以上であり、温度約68〜72℃で標的配列とアニールするプライマーを設計することができる。その方法は、いくつかの制限酵素を使用して、遺伝子の既知の領域中に適切な断片を生成する。次いで、分子内連結によりその断片を環状化し、それをPCR鋳型として使用する。
使用することができる他の方法は、捕捉PCRであり、ヒト、及び酵母の人工染色体DNA中の既知の配列と隣接DNA断片のPCR増幅を使用する(Lagerstromらの論文(PCR
Methods Applic. 1, 111-119, 1991))。この方法では、PCRを行う前に、複数の制限酵素消化、及び連結を使用して、設計した二本鎖配列をDNA分子の未知の断片中に入れる。
未知の配列の回収に使用することができる他の方法は、Parkerらの論文(Nucleic Acids Res. 19, 3055-3060, 1991)の方法である。さらに、PCR、ネスティドプライマー、及びPROMOTERFINDERライブラリー(CLONTECH,
Palo Alto, Calif.)を使用して、ゲノムDNA歩行を行うことができる。このプロセスは、ライブラリーをスクリーニングする必要を回避するものであり、イントロン/エキソン結合を発見する際に有用である。
全長cDNAをスクリーニングするとき、大きなcDNAを含むようにサイズ選択されているライブラリーを使用することが好ましい。また、遺伝子の5’領域を含んだ多くの配列を含む点でランダムプライム(random-primed)ライブラリーも好ましい。ランダムプライムライブラリーの使用は、オリゴd(T)ライブラリーが全長cDNAをもたらさない状況で特に好ましいことがある。ゲノムライブラリーは、5’非翻訳制御領域への配列の伸長に有用である可能性がある。
市販されているキャピラリー電気泳動系を使用して、PCR、又は配列決定用産物のサイズを分析し、そのヌクレオチド配列を確認することができる。例えば、キャピラリー配列決定は、電気泳動分離用の流動性のあるポリマー、レーザーで活性化される4種の異なる蛍光色素(各ヌクレオチドについて1種)、及び電荷結合素子カメラによる放出波長の検出を使用することができる。適当なソフトウェア(例えば、GENOTYPER、及びSequence
NAVIGATOR、Perkin Elmer)を用いて出力/光の強度を電気信号に転換することができ、試料の添加からコンピュータ分析、及び電子データ表示までのプロセス全体をコンピュータ制御することができる。キャピラリー電気泳動は、特定の資料中に限られた量しか存在しない可能性があるDNAの小片の配列決定に特に好ましい。
(ポリペプチドの取得)
例えば、ヒト細胞からの精製により、RCキナーゼポリヌクレオチドの発現により、又は直接の化学合成により、RCキナーゼポリペプチドを得ることができる。
(タンパク質精製)
RCキナーゼ発現構築物をトランスフェクトした細胞を含めて、細胞からRCキナーゼポリペプチドを精製することができる。腎、胎児肺、精巣、B細胞、成体肺上皮、及び慢性リンパ性白血病の細胞は、RCキナーゼポリペプチドの特に有用な供給源である。精製RCキナーゼポリペプチドを、当技術分野で周知の方法を用いて、特定のタンパク質、炭水化物や脂質など細胞中で通常RCキナーゼポリペプチドと結合している他の化合物から分離する。そのような方法には、それだけに限らないが、サイズ排除クロマトグラフィー、硫酸アンモニウム分画化、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、及び調製ゲル電気泳動がある。精製RCキナーゼポリペプチドの調製物は、少なくとも80%純粋である;好ましくは、調製物は90%、95%、又は99%純粋である。SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動など、当技術分野で知られている任意の手段によって調製物の純度を評価することができる。精製調製物の酵素活性について、例えば実施例2で記載するようにアッセイすることができる。
(ポリヌクレオチドの発現)
RCキナーゼポリペプチドを発現させるために、挿入コード配列の転写、及び翻訳に必要なエレメントを含む発現ベクター中にRCキナーゼポリヌクレオチドを挿入することができる。当業者に周知の方法を使用して、RCキナーゼポリペプチドをコードする配列、ならびに適当な転写、及び翻訳調節エレメントを含む発現ベクターを構築することができる。この方法には、in
vitro組換えDNA技術、合成技術、及びin vivo遺伝子組換えがある。そのような技術は、例えば、Sambrookらの著書(1989)、及びAusubelらの著書「分子生物学における現在のプロトコル」(John
Wiley & Sons, New York, N.Y, 1989)に記載されている。
RCキナーゼポリペプチドをコードする配列を含み、それを発現する様々な発現ベクター/宿主系を利用することができる。これらには、それだけに限らないが、組換えバクテリオファージ、プラスミド、又はコスミドDNA発現ベクターで形質転換した細菌などの微生物;酵母発現ベクターで形質転換した酵母、ウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染させた昆虫細胞系、ウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)で、又は細菌発現ベクター(例えば、Ti、又はpBR322プラスミド)で形質転換した植物細胞系、あるいは動物細胞系がある。
調節エレメント、又は制御配列とは、ベクターのその非翻訳領域のエンハンサー、プロモーター、5’、及び3’非翻訳領域であり、宿主細胞タンパク質と相互作用して、転写、及び翻訳を行う。そのようなエレメントは、その強さ、及び特異性が様々である可能性がある。利用するベクター系、及び宿主に応じて、構成的な誘導性プロモーターを含めた任意の数の適切な転写、及び翻訳エレメントを使用することができる。細菌系でのクローン化のとき、BLUESCRIPTファージミド(Stratagene,
LaJolla, Calif.)、又はpSPORT1プラスミド(Life Technologies)のハイブリッドlacZプロモーターなどの誘導性プロモーターなどを使用することができる。昆虫細胞で、バキュロウイルスのポリヘドリンプロモーターを使用することができる。植物細胞のゲノムに由来する(例えば、熱ショック、RUBISCO、及び貯蔵タンパク質遺伝子)、又は植物ウイルスに由来する(例えば、ウイルスプロモーター、又はリーダー配列)プロモーター、又はエンハンサーをベクター中にクローン化することができる。哺乳動物細胞系では、哺乳動物遺伝子、又は哺乳動物ウイルス由来のプロモーターが好ましい。RCキナーゼポリペプチドをコードする複数コピーのヌクレオチド配列を含む細胞系統を調製する必要がある場合、SV40、又はEBVを基礎とするベクターを、適当な選択マーカーとともに使用することができる。
(細菌、及び酵母の発現系)
細菌系では、RCキナーゼポリペプチドについて予定する使用に応じて、いくつかの発現ベクターを選択することができる。例えば、大量のRCキナーゼポリペプチドが、抗体の誘導に必要である場合、容易に精製される融合タンパク質の高レベルの発現を誘導するベクターを使用することができる。そのようなベクターには、それだけに限らないが、RCキナーゼポリペプチドをコードする配列を、ハイブリッドタンパクが生成されるように、アミノ末端がMetの配列、その後のβガラクトシダーゼの7残基とインフレームでベクター中に連結することができるBLUESCRIPT(Stratagene)などの多機能な大腸菌(E.
coli)のクローン化、及び発現ベクターがある。pINベクター(Van Heeke、及びSchusterの論文(J. Biol. Chem. 264,
5503-5509, 1989))、又はpGEXベクター(Promega, Madison, Wis.)を使用して、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として外来ポリペプチドを発現させることができる。一般に、そのような融合タンパク質は、可溶性であり、グルタチオンアガロースビーズへの吸着、その後の遊離グルタチオンの存在下での溶出によって溶解細胞から容易に精製することができる。そのような系で調製されたタンパク質を、対象とするクローン化ポリペプチドを自由にGST部分から放出できるように、ヘパリン、トロンビン、又は第Xa因子プロテアーゼ切断部位を含むように設計することができる。
酵母サッカロマイセスセレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)では、α因子、アルコールオキシダーゼ、及びPGHなどの構成的な、又は誘導性のプロモーターを含むいくつかのベクターを使用することができる。総説については、Ausubelらの著書(1989)、及びGrantらの論文(Methods
Enzymol. 153, 516-544, 1987)を参照されたい。
(植物、及び昆虫の発現系)
植物発現ベクターを使用する場合、RCキナーゼポリペプチドをコードする配列の発現を、いくつかのプロモーターのうちいずれかで駆動させることができる。例えば、CaMVの35S、及び19Sプロモーターなどのウイルスプロモーターを、単独で、又はTMV由来のωリーダー配列と組み合わせて使用することができる(Takamatsuの論文(EMBO
J. 6, 307-311, 1987))。あるいは、RUBISCOの小サブユニットや熱ショックプロモーターなどの植物プロモーターを使用することもできる(Coruzziらの論文(EMBO
J. 3, 1671-1680, 1984);Broglieらの論文(Science 224, 838-843, 1984);Winterらの論文(Results
Probl. Cell Differ. 17, 85-105, 1991))。直接のDNA形質転換、又は病原体が媒介するトランスフェクションによって、これらの構築物を植物細胞中に導入することができる。そのような技術は、一般に入手可能ないくつかの総説に記載されている(例えば、「McGraw
Hill科学技術年鑑」のHobbs、又はMurray(McGraw Hill, New York, N.Y., pp. 191-196, 1992)を参照)。
昆虫系を使用して、RCキナーゼポリペプチドを発現させることもできる。例えば、そのような系の1つでは、オートグラファカリフォルニカ(Autographa
californica)核多角体病ウイルス(AcNPV)をベクターとして使用して、スポドプテラフルギベルタ(Spodoptera frugiperda)細胞内で、又はトリコプルシアラバエ(Trichoplusia
larvae)内で外来遺伝子を発現させる。RCキナーゼポリペプチドをコードする配列を、ポリヘドリン遺伝子などウイルスの非必須領域中にクローン化し、ポリヘドリンプロモーターの調節下に置くことができる。RCキナーゼポリペプチドの挿入に成功すると、ポリヘドリン遺伝子が不活性となり、被覆タンパク質を欠く組換えウイルスが生成される。次いで、その組換えウイルスを使用して、例えば、RCキナーゼポリペプチドを発現することができるS.フルギベルタ細胞、又はトリコプルシアラバエに感染させることができる(Engelhardらの論文(Proc.
Nat. Acad. Sci. 91, 3224-3227, 1994))。
(哺乳動物の発現系)
哺乳動物宿主細胞で、ウイルスを基礎とするいくつかの発現系を利用することができる。例えば、アデノウイルスを発現ベクターとして使用する場合、RCキナーゼポリペプチドをコードする配列を、後期プロモーター、及び三連リーダー配列からなるアデノウイルス転写/翻訳複合体と連結することができる。ウイルスゲノムの非必須なE1、又はE3領域での挿入を使用して、感染した宿主細胞中でRCキナーゼポリペプチドを発現することができる生存可能なウイルスを得ることができる(Logan、及びShenkの論文(Proc.
Natl. Acad. Sci. 81, 3655-3659, 1984))。さらに、ラウス肉腫ウイルス(RSV)エンハンサーなどの転写エンハンサーを使用して、哺乳動物宿主細胞中での発現を高めることができる。
ヒト人工染色体(HAC)を使用して、プラスミド中に含まれ、発現させることが可能なものより大きなDNA断片を送達することもできる。6 M〜10 MのHACを構築し、従来の送達方法(例えば、リポソーム、ポリカチオン性アミノポリマー、又は小胞)により細胞に送達する。
特定の開始シグナルを使用して、RCキナーゼポリペプチドをコードする配列のより効率のよい翻訳を行うこともできる。そのようなシグナルには、ATG開始コドン、及び隣接配列がある。RCキナーゼポリペプチドをコードする配列、その開始コドン、及び上流配列を適当な発現ベクター中に挿入する場合、さらなる転写、又は翻訳調節シグナルを必要としないことがある。しかし、コード配列、又はその断片のみを挿入する場合、外因性の翻訳調節シグナル(ATG開始コドンを含む)を供給すべきである。開始コドンは、挿入断片全体の翻訳が確実に行われるように、正しい読み枠中にあるべきである。外因性の翻訳エレメント、及び開始コドンは、天然でも合成でも、種々の起源のものでよい。使用する特定の細胞系に適したエンハンサーを含めることによって、発現の効率を高めることができる(Scharfらの論文(Results
Probl. Cell Differ. 20, 125-162, 1994)を参照)。
(宿主細胞)
挿入した配列の発現を調節し、又は発現したRCキナーゼポリペプチドに所望の形でプロセシングを行うことができるかどうかで、宿主細胞株を選択することができる。ポリペプチドのそのような修飾には、それだけに限らないが、アセチル化、カルボキシル化、糖鎖付加、リン酸化、脂質化、及びアシル化がある。「プレプロ(prepro)」型のポリペプチドを切断する翻訳後プロセシングを使用して、正確な挿入、折畳み、及び/又は機能を促進することもできる。翻訳後活性に特定の細胞機構、及び特徴的な機序を有する様々な宿主細胞(例えば、CHO、HeLa、MDCK、HEK293、及びWI38)は、米国基準菌株保存機構(American
Type Culture Collection)(ATCC; 10801 University Boulevard, Manassas, VA
20110-2209)から入手可能であり、外来タンパク質の正確な修飾、及びプロセシングを確実に行うものを選択することができる。
組換えタンパク質を長期間高収量で生成するには、安定な発現が好ましい。例えば、RCキナーゼポリペプチドを安定に発現する細胞系統は、同じ、又は別々のベクター上にウイルスの複製起点、及び/又は外因性の発現エレメント、及び選択マーカー遺伝子を含むことができる発現ベクターを使用して形質転換することができる。ベクターの導入後、選択培地に切り換える前に、強化培地中で細胞を1〜2日間増殖させることができる。選択マーカーの目的は、選択に対する耐性を与えることであり、その存在によって、導入したRCキナーゼ配列の発現に成功した細胞の増殖、及び回収が可能となる。その細胞型に適した組織培養技術を用いて、安定な形質転換細胞の耐性クローンを増殖させることができる。
任意の数の選択系を使用して、形質転換細胞系統を回収することができる。これには、それだけに限らないが、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wiglerらの論文(Cell
11, 223-32, 1977))、及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowyらの論文(Cell 22, 817-23, 1980))がある。それぞれtk-、又はaprt-細胞で、遺伝子を使用することができる。また、代謝拮抗物質、抗生物質、又は除草剤耐性を、選択の基礎として使用することもできる。例えば、dhfrは、メトトレキセート(methotrexate)に対する耐性を与える(Wiglerらの論文(Proc.
Natl. Acad. Sci. 77, 3567-70, 1980));nptは、アミノグリコシド系のネオマイシン、及びG-418に対する耐性を与える(Colbere-Garapinらの論文(J.
Mol. Biol. 150, 1-14, 1981));als、及びpatは、それぞれクロルスルフロン(chlorsulfuron)、及びホスフィノトリシン(phosphinotricin)アセチルトランスフェラーゼに対する耐性を与える(Murrayの論文(1992、上記))。さらなる選択遺伝子、例えば細胞がトリプトファンの代わりにインドールを利用することを可能にするtrpB、又は細胞がヒスチジンの代わりにヒスチノールを利用することを可能にするhisDについても記載されている(Hartman、及びMulliganの論文(Proc.
Natl. Acad. Sci. 85, 8047-51, 1988))。アントシアニン、β-グルクロニダーゼ、及びその基質GUS、ルシフェラーゼ、及びその基質ルシフェリンなどの可視マーカーを使用して、形質転換体を同定し、特定のベクター系に起因する一過性の、又は安定なタンパク質発現の量を定量することができる(Rhodesらの論文(Methods
Mol. Biol. 55, 121-131, 1995))。
(ポリペプチドの発現の検出)
マーカー遺伝子発現の存在から、RCキナーゼポリヌクレオチドも存在することが示唆されるが、その存在、及び発現を確認することを必要としないことがある。例えば、RCキナーゼポリペプチドをコードする配列をマーカー遺伝子配列内に挿入する場合、マーカー遺伝子の機能が存在しないことによって、RCキナーゼポリペプチドをコードする配列を含む形質転換細胞を同定することができる。あるいは、マーカー遺伝子を、RCキナーゼポリペプチドをコードする配列と並行して、単一のプロモーターの調節下に置くことができる。誘導、又は選択に反応してマーカー遺伝子が発現すると、通常はRCキナーゼポリヌクレオチドが発現したことが示唆される。
あるいは、当業者に知られている様々な手順により、RCキナーゼポリヌクレオチドを含み、RCキナーゼポリペプチドを発現する宿主細胞を同定することもできる。これらの手順には、それだけに限らないが、核酸、又はタンパク質の検出、及び/又は定量のための膜、溶液、又はチップを基礎とする技術を含む、DNA-DNA、又はDNA-RNAのハイブリダイゼーション、及びタンパク質バイオアッセイ、又はイムノアッセイ技術がある。
RCキナーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのプローブ、又は断片、又は断片を用いたDNA-DNA、又はDNA-RNAのハイブリダイゼーション、又は増幅により、RCキナーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の存在を検出することができる。核酸増幅を基礎とするアッセイでは、RCキナーゼポリペプチドをコードする配列から選択されるオリゴヌクレオチドを使用して、RCキナーゼポリヌクレオチドを含む形質転換体を検出する。
RCキナーゼポリペプチドに特異的なポリクローナル、又はモノクローナル抗体を使用する、そのポリペプチドの発現を検出し測定する様々なプロトコルが当技術分野で知られている。例としては、酵素結合免疫吸着検定(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、及び蛍光活性化細胞選別(FACS)がある。RCキナーゼポリペプチド上の2つの干渉しないエピトープと反応するモノクローナル抗体を用いた、2つの部位での、モノクローナルを基礎とするイムノアッセイを使用することもでき、競合的な結合アッセイを使用することもできる。これらの、及び他のアッセイは、Hamptonらの著書「血清学的方法:実験室マニュアル」(APS
Press, St. Paul, Minn., 1990)、及びMaddoxらの論文(J. Exp. Med. 158, 1211-1216, 1983)に記載されている。
多種多様な標識、及び結合技術が当業者に知られ、様々な核酸、及びアミノ酸のアッセイでそれを使用することができる。RCキナーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと関係する配列を検出するための標識ハイブリダイゼーション、又はPCRプローブを調製する手段には、オリゴ標識、ニックトランスレーション、末端標識、又は標識ヌクレオチドを用いたPCR増幅がある。あるいは、RCキナーゼポリペプチドをコードする配列をベクター中にクローン化して、mRNAプローブを調製することもできる。そのようなベクターは当技術分野で知られ、市販され、それを使用して、標識ヌクレオチド、及びT7、T3やSP6など適当なRNAポリメラーゼを添加することによりin
vitroでRNAプローブを合成することができる。種々の市販されているキット(Amersham Pharmacia Biotech、Promega、及びUS
Biochemical)を用いて、これらの手順を実施することができる。検出を容易にするのに使用することができる適切なレポーター分子、又は標識には、放射性核種、酵素、蛍光、化学発光、又は色素産生性作用物質、ならびに基質、補助因子、抑制因子、磁性粒子などがある。
(ポリペプチドの発現、及び精製)
細胞培養からのタンパク質の発現、及び回収に適した条件下で、RCキナーゼポリペプチドをコードするヌクレオチド配列で形質転換した宿主細胞を培養することができる。使用する配列、及び/又はベクターに応じて、形質転換細胞によって産生されたポリペプチドを分泌させ、又は細胞内に含有させることができる。当業者には理解されるであろうが、RCキナーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを、原核細胞膜、又は真核細胞膜を介したRCキナーゼポリペプチドの分泌を誘導するシグナル配列を含むように設計することができる。
他の構成を用いて、RCキナーゼポリペプチドをコードする配列を、可溶性タンパク質の精製を促進するポリペプチドドメインをコードするヌクレオチド配列と結合することができる。そのような精製促進ドメインには、それだけに限らないが、固定化した金属上での精製を可能にするヒスチジン-トリプトファンモジュールなどの金属キレート化ペプチド、固定化したイムノグロブリン上での精製を可能にするプロテインAドメイン、及びFLAGS伸長/アフィニティー精製系(Immunex
Corp., Seattle, Wash.)で利用するドメインがある。精製ドメインとRCキナーゼポリペプチドの間に第Xa因子、又はエンテロキナーゼに特異的な配列(Invitrogen,
San Diego, CA)などの切断可能なリンカー配列を含めることを用いて、精製を促進することができる。1つのそのような発現ベクターは、チオレドキシン、又はエンテロキナーゼ切断部位の前にRCキナーゼポリペプチド、及び6ヒスチジン残基を含む融合タンパク質の発現をもたらす。ヒスチジン残基は、IMAC(固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィー、Porathらの論文(Prot.
Exp. Purif 3, 263-281, 1992)に記載)上での精製を促進するが、エンテロキナーゼ切断部位は、融合タンパク質からRCキナーゼポリペプチドを精製する手段をもたらす。融合タンパク質を含むベクターは、Krollらの論文(DNA
Cell Biol. 12, 441-453, 1993)に開示されている。
(化学合成)
当技術分野で周知の化学的方法を用いて、RCキナーゼポリペプチドをコードする配列の全部、又は一部を合成することができる(Caruthersらの論文(Nucl.
Acids Res. Symp. Ser. 215-223, 1980);Hornらの論文(Nucl. Acids Res. Symp. Ser.
225-232, 1980)を参照)。あるいは、そのアミノ酸配列を合成する化学的方法を用いて、RCキナーゼポリペプチド自体を調製することもできる。例えば、固相技術を使用する直接のペプチド合成によって、RCキナーゼポリペプチドを調製することができる(Merrifieldの論文(J.
Am. Chem. Soc. 85, 2149-2154, 1963);Robergeらの論文(Science 269, 202-204, 1995))。手動の技術を用いて、又は自動でタンパク質合成を行うことができる。自動合成は、例えば、Applied
Biosystems 431A Peptide Synthesizer(Perkin Elmer)を用いて行うことができる。化学的方法を用いてRCキナーゼポリペプチドの様々な断片を別々に合成し結合して、全長分子を調製することができる。
分取高速液体クロマトグラフィーによって、新たに合成したペプチドを実質的に精製することができる(例えば、Creightonの著書「タンパク質:構造、及び分子上の原理」(WH
Freeman and Co., New York, N.Y., 1983))。アミノ酸分析、又は配列決定によって、合成RCキナーゼポリペプチドの組成を確認することができる(例えば、エドマン(Edman)分解の手順;上記のCreightonの著書を参照)。さらに、RCキナーゼポリペプチドのアミノ酸配列の任意の部分を直接の合成の間に変化させ、かつ/、又は化学的方法を用いて他のタンパク質由来の配列と結合して、変異ポリペプチド、又は融合タンパク質を調製することができる。
(変化させたポリペプチドの調製)
当業者には理解されるであろうが、天然に存在しないコドンを有した、RCキナーゼポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を調製すると有利となることがある。例えば、特定の原核生物、又は真核生物の宿主に好まれるコドンを選択して、タンパク質発現の速度を高め、又は天然に存在する配列から生じる転写物より長い半減期など、所望の特性を有するRNA転写物を調製することができる。
本明細書で開示されているヌクレオチド配列を、当技術分野で一般に知られている方法を用いて工学的に調製して、遺伝子産物のクローン化、プロセシング、及び/又は発現の改変を含めて、種々の理由でRCキナーゼポリペプチドをコードする配列を変化させることができる。無作為断片化ならびに遺伝子断片、及び合成オリゴヌクレオチドのPCR再構築によるDNAシャッフリングを使用して、ヌクレオチド配列を工学的に調製することができる。例えば、部位特異的突然変異生成を使用して、新たな制限部位の挿入、糖鎖付加のパターンの変化、コドンの優先度の変化、スプライス変異体の生成、突然変異の導入などを行うことができる。
(抗体)
RCキナーゼポリペプチドのエピトープと特異的に結合する、当技術分野で知られている任意の型の抗体を生成することができる。本明細書において「抗体」には、完全なイムノグロブリン分子、ならびにFab、F(ab’)やFvなど、RCキナーゼポリペプチドのエピトープと結合することができるその断片が含まれる。通常、エピトープの形成には少なくとも6、8、10、又は12個の隣接アミノ酸を必要とする。しかし、隣接しないアミノ酸を含むエピトープは、より多数の、例えば少なくとも15、25、又は50個のアミノ酸を必要とすることがある。
RCキナーゼポリペプチドのエピトープと特異的に結合する抗体を、治療上、ならびに、それだけに限らないが、ウェスタンブロット、ELISA、ラジオイムノアッセイ、免疫組織化学アッセイ、免疫沈降、又は当技術分野で知られている他の免疫化学アッセイを含めた免疫化学アッセイで使用することができる。様々なイムノアッセイを使用して、所望の特異性を有する抗体を同定することができる。競合的結合、又は免疫放射測定アッセイについての多数のプロトコルが当技術分野で周知である。そのようなイムノアッセイでは、免疫原とその免疫原に特異的に結合する抗体との複合体形成を通常測定する。
通常、RCキナーゼポリペプチドと特異的に結合する抗体は、免疫化学アッセイで使用するとき、他のタンパク質で供給される検出シグナルより少なくとも5倍、10倍、又は20倍高い検出シグナルを供給する。好ましくは、RCキナーゼポリペプチドと特異的に結合する抗体は、免疫化学アッセイで他のタンパク質を検出せず、溶液からRCキナーゼポリペプチドを免疫沈降させることができる。
RCキナーゼポリペプチドを用いて、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、サルやヒトなどの哺乳動物を免疫感作させて、ポリクローナル抗体を産生させることができる。所望の場合、RCキナーゼポリペプチドを、ウシ血清アルブミン、サイログロブリンやスカシガイヘモシアニン(keyhole
limpet hemocyanin)などの担体タンパク質と結合させることができる。宿主の種に応じて、様々なアジュバントを使用して、免疫応答を増大させることができる。そのようなアジュバントには、それだけに限らないが、フロイントアジュバント、無機ゲル(例えば、水酸化アルミニウム)、及び表面活性物質(例えば、リゾレシチン、プルロニックポリオール(pluronic
polyol)、ポリアニオン、ペプチド、油性乳剤、及びスカシガイヘモシアニン、及びジニトロフェノール)がある。ヒトで使用されるアジュバントの中で、BCG(カルメット-ゲラン桿菌(bacilli
Calmette-Guerin))、及びコリネバクテリウムパルブム(Corynebacterium parvum)は特に有用である。
培養中の連続的な細胞系統による抗体分子の産生をもたらす任意の技術を用いて、RCキナーゼポリペプチドと特異的に結合するモノクローナル抗体を調製することができる。この技術には、それだけに限らないが、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、及びEBVハイブリドーマ技術がある(Kohlerらの論文(Nature
256, 495-497, 1985);Kozborらの論文(J. Immunol. Methods 81, 31-42, 1985);Coteらの論文(Proc.
Natl. Acad. Sci. 80, 2026-2030, 1983);Coleらの論文(Mol. Cell Biol. 62, 109-120,
1984))。
さらに、「キメラ抗体」の調製について開発された技術、適当な抗原特異性、及び生物学的活性を有する分子を得るためのヒト抗体遺伝子へのマウス抗体遺伝子のスプライシングを使用することができる(Morrisonらの論文(Proc.
Natl. Acad. Sci. 81, 6851-6855, 1984);Neubergerらの論文(Nature 312, 604-608, 1984);Takedaらの論文(Nature
314, 452-454, 1985))。モノクローナル抗体、及び他の抗体を「ヒト化(humanized)」して、それを治療に使用したとき、抗体に対する患者の免疫応答の増大を防止することもできる。そのような抗体は、治療で使用されるほどヒト抗体と配列が十分に類似していることもあり、あるいはいくつかの鍵となる残基の変更を必要とすることもある。個々の残基の部位特異的突然変異生成によってヒト配列と異なる残基を置換することにより、又は相補性決定領域全体をすり合わせることにより、げっ歯類抗体とヒト配列の間の配列の違いを最小限にすることができる。あるいは、GB2188638Bに記載のように、組換えの方法を用いて、ヒト化抗体を調製することもできる。米国特許第5,565,332号で開示されているように、RCキナーゼポリペプチドと特異的に結合する抗体は、部分的に、又は完全にヒト化された抗原結合部位を含むことができる。
あるいは、単鎖抗体の調製について記載された技術を、当技術分野で知られている方法を用いて適合させて、RCキナーゼポリペプチドと特異的に結合する単鎖抗体を調製することもできる。無作為なコンビナトリアルイムノグロブリンライブラリーからの鎖シャッフリングによって、関連する特異性を有するが、別個のイディオタイプ組成の抗体を生成することができる(Burtonの論文(Proc.
Natl. Acad. Sci. 88, 11120-23, 1991))。
ハイブリドーマcDNAを鋳型として使用する、PCRなどのDNA増幅法を用いて、単鎖抗体を構築することもできる(Thirionらの論文(1996, Eur.
J. Cancer Prev. 5, 507-11))。単鎖抗体は、単特異性でも二重特異性でもよく、二価でも四価でもよい。四価の二重特異性単鎖抗体の構築は、例えば、Coloma、及びMorrisonの論文(1997,
Nat. Biotechnol. 15, 159-63)で教示される。二価の二重特異性単鎖抗体の構築は、Mallender、及びVossの論文(1994,
J. Biol. Chem. 269, 199-206)で教示される。
下記に記載するように、単鎖抗体をコードするヌクレオチド配列を、手動、又は自動のヌクレオチド合成を用いて構築し、標準的な組換えDNAの方法を用いて発現構築物中にクローン化し、細胞内に導入してコード配列を発現させることができる。あるいは、例えば線維状ファージの技術を用いて、単鎖抗体を直接調製することもできる。Verhaarらの論文(1995,
Int. J. Cancer 61, 497-501);Nichollsらの論文(1993, J. Immunol. Meth. 165, 81-91)。
文献中で開示されているように、リンパ球集団でin vivo産生を誘導し、又はイムノグロブリンライブラリー、又は高度に特異的な結合試薬の一団をスクリーニングすることによって、RCキナーゼポリペプチドと特異的に結合する抗体を調製することもできる(Orlandiらの論文(Proc.
Natl. Acad. Sci. 86, 3833-3837, 1989);Winterらの論文(Nature 349, 293-299, 1991))。
本発明の方法で、他の型の抗体を構築し治療に使用することができる。例えば、WO93/03151で開示されているように、キメラ抗体を構築することができる。イムノグロブリンに由来し、多価であり多重特異性である、WO94/13804で開示されている「二重特異性抗体(diabody)」などの結合タンパク質を調製することもできる。
当技術分野で周知の方法によって本発明の抗体を精製することができる。例えば、RCキナーゼポリペプチドが結合したカラムを通過させることによって、抗体をアフィニティー精製することができる。次いで、高塩濃度の緩衝液を用いて、結合した抗体をカラムから溶出させることができる。
(アンチセンスオリゴヌクレオチド)
アンチセンスオリゴヌクレオチドとは、特定のDNA、又はRNA配列に相補的なヌクレオチド配列である。細胞内に導入した後、相補的なヌクレオチドは、細胞によって生成された天然の配列と結合して複合体を形成し、転写、又は翻訳を遮断する。好ましくは、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、長さが少なくとも11ヌクレオチドであるが、少なくとも12、15、20、25、30、35、40、45、又は50以上のヌクレオチド長でもよい。それより長い配列を使用することもできる。アンチセンスオリゴヌクレオチド分子をDNA構築物内に供給し、上記に記載のように細胞内に導入して、細胞内のRCキナーゼ遺伝子産物のレベルを低下させることができる。
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、又はその両方の組合せでよい。オリゴヌクレオチドは、アルキルホスホナート、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホノチオエート、アルキルホスホナート、ホスホラミデート(phosphoramidate)、リン酸エステル、カルバマート、アセタミデート、カルボキシメチルエステル、炭酸エステル、及びリン酸トリエステルなど、非ホスホジエステルヌクレオチド間結合で一方のヌクレオチドの5’末端を他方のヌクレオチドの3’末端と共有結合させることにより、手動で、又は自動合成装置によって合成することができる。Brownの論文(Meth.
Mol. Biol. 20, 1-8, 1994);Sonveauxの論文(Meth. Mol. Biol. 26, 1-72, 1994);Uhlmannらの論文(Chem.
Rev. 90, 543-583, 1990)を参照されたい。
RCキナーゼ遺伝子発現の改変は、RCキナーゼ遺伝子の調節領域、5’領域、又は制御領域と二重鎖を形成するアンチセンスオリゴヌクレオチドを設計することによって行うことができる。転写開始部位、例えば開始部位から-10〜+10の位置に由来するオリゴヌクレオチドが好ましい。同様に、「三重らせん」塩基対形成の方法を用いて抑制を行うことができる。ポリメラーゼ、転写因子、又はシャペロンが結合するのに十分に開く二重らせんの能力を抑制するので、三重らせん塩基対形成は有用である。三重鎖DNAを使用する治療上の利点は、文献中に記載されている(例えば、Huber、及びCarrの著書「分子の、及び免疫学的な手法」(Futura
Publishing Co., Mt. Kisco, N.Y., 1994)中のGeeらの記載)。リボソームとの転写物の結合を妨げることによってmRNAの翻訳を遮断するように、アンチセンスオリゴヌクレオチドを設計することもできる。
RCキナーゼポリヌクレオチドのアンチセンスオリゴヌクレオチドとその相補的な配列との間の二重鎖形成の成功に、正確な相補性は必要でない。RCキナーゼポリヌクレオチドと正確に相補的であり、それぞれが、隣接RCキナーゼヌクレオチドと相補的でない一続きの隣接ヌクレオチドで分離されている、例えば、2、3、4、又は5個以上の一続きの隣接ヌクレオチドを含むアンチセンスオリゴヌクレオチドは、RCキナーゼmRNAに対する標的特異性をもたらすことができる。好ましくは、それぞれの一続きの相補的な隣接ヌクレオチドは、長さが少なくとも4、5、6、7、又は8ヌクレオチド以上である。非相補的な介在配列は、好ましくは長さが1、2、3、又は4ヌクレオチドである。当業者は容易に、アンチセンス-センス対の算出融解点を用いて、特定のアンチセンスオリゴヌクレオチドと特定のRCキナーゼポリヌクレオチド配列との間で許容される不整合の程度を決定することができる。
RCキナーゼポリヌクレオチドとハイブリダイズする能力に影響を及ぼさずに、アンチセンスオリゴヌクレオチドを修飾することができる。この修飾は、アンチセンス分子の内部、あるいは片方、又は両方の末端で行うことができる。例えば、アミノ基と末端リボースの間の炭素残基の数が様々であるコレステリル、又はジアミン部分を付加することによって、ヌクレオシド間のリン酸結合を修飾することができる。リボースの代わりのアラビノースや、3’の水酸基、又は5’のリン酸基を置換した3’、5’-置換オリゴヌクレオチドなどの修飾した塩基、及び/又は糖を、修飾アンチセンスオリゴヌクレオチド中で使用することもできる。これらの修飾オリゴヌクレオチドは、当技術分野で周知の方法によって調製することができる。例えば、Agrawalらの論文(Trends
Biotechnol. 10, 152-158, 1992);Uhlmannらの論文(Chem. Rev. 90, 543-584, 1990);Uhlmannらの論文(Tetrahedron.
Lett. 215, 3539-3542, 1987)を参照されたい。
(リボザイム)
リボザイムとは、触媒活性を有するRNA分子である。例えば、Cechの論文(Science 236, 1532-1539; 1987);Cechの論文(Ann.
Rev. Biochem. 59, 543-568; 1990)、Cechの論文(Curr. Opin. Struct. Biol. 2, 605-609;
1992)、Couture、及びStinchcombの論文(Trends Genet. 12, 510-515, 1996)を参照されたい。当技術分野で知られているように、リボザイムを使用して、RNA配列を切断することにより遺伝子機能を抑制することができる(例えば、Haseloffらの米国特許第5,641,673号)。リボザイム作用の機序では、リボザイム分子が相補的な標的RNAと配列特異的なハイブリダイゼーションを起こし、その後核酸鎖内部分解が生じる。例として、特定のヌクレオチド配列の核酸鎖内部分解を特異的にかつ効率よく触媒することができる、工学的に調製されたハンマーヘッド型モチーフのリボザイム分子がある。
RCキナーゼポリヌクレオチドのコード配列を使用して、RCキナーゼポリヌクレオチドから転写されたmRNAと特異的に結合するリボザイムを生成することができる。高度に配列特異的な形で、トランスで他のRNA分子を切断することができるリボザイムを設計し構築する方法は、当技術分野で開発され、記載されている(Haseloffらの論文(Nature
334, 585-591, 1988)を参照)。例えば、リボザイムの切断活性は、リボザイム中に別個の「ハイブリダイゼーション」領域を工学的に調製することによって、特定のRNAを標的とすることができる。ハイブリダイゼーション領域は、標的RNAと相補的な配列を含み、したがって標的と特異的にハイブリダイズする(例えば、GerlachらのEP321,201を参照)。
下記の配列:GUA、GUU、及びGUCを含むリボザイム切断部位があるかどうかRNA分子を走査することにより、RCキナーゼのRNA標的内にある特定のリボザイム切断部位を最初に同定する。同定後、切断部位を含むRCキナーゼの標的RNAの領域に対応する15〜20個のリボヌクレオチドの短いRNA配列を、標的を動作不能にする可能性がある二次構造の特徴について評価することができる。リボヌクレアーゼ保護アッセイを用いて相補的なオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションの実行容易性について試験することで、候補の標的の適切さを評価することもできる。より長い相補的な配列を使用して、標的に対するハイブリダイゼーション配列のアフィニティーを増大させることができる。リボザイムのハイブリダイズする領域と切断領域は、一体的に関係する可能性がある;したがって、相補的な領域を介してRCキナーゼの標的RNAとハイブリダイズした後、リボザイムの触媒領域は標的を切断することができる。
DNA構築物の一部として、リボザイムを細胞内に導入することができる。微小注入、リポソームが媒介するトランスフェクション、エレクトロポレーションやリン酸カルシウム沈殿などの機械的な方法を用いて、リボザイムを含むDNA構築物を、RCキナーゼ発現を低下させることが望ましい細胞内に導入することができる。あるいは、細胞がDNA構築物を安定に保持することが望ましい場合、当技術分野で知られているように、それをプラスミド上に供給し、別々のエレメントとして維持し、又は細胞のゲノム中に組み込むことができる。DNA構築物は、細胞内でリボザイムの転写を調節するための、プロモーターエレメント、エンハンサーやUASエレメントなどの転写制御エレメント、及び転写終結シグナルを含む可能性がある。
Haseloffらの米国特許第5,641,673号で教示される通り、リボゾーム発現が標的遺伝子の発現を誘導する因子に反応して起こるように、リボザイムを工学的に調製することができる。RCキナーゼのmRNAの破壊が、リボザイムと標的遺伝子のどちらも細胞内で誘導されるときだけに起こるように、リボザイムを工学的に調製して、さらなるレベルの制御をもたらすこともできる。
(スクリーニングの方法)
本発明は、MAPキナーゼのリン酸中継系を介するシグナル伝達を制御し、炎症伝達物質の産生を制御し、細胞外マトリックスの分解を制御するために、調節因子、すなわち、RCキナーゼポリペプチドもしくはポリヌクレオチドと結合し、かつ/、又は、例えばRCキナーゼポリペプチドもしくはポリヌクレオチドの発現もしくは活性に対する刺激性もしくは抑制性の効果を有する候補、又は試験化合物を同定する方法を提供する。MAPキナーゼのリン酸中継系を介するシグナル伝達の低下、及び炎症伝達物質の産生の低下は、望ましくない炎症、細胞増殖、細胞分化、サイトカイン産生、又はアポトーシスの防止に有用である。MAPキナーゼのリン酸中継系を介するシグナル伝達の増大、及び炎症伝達物質の産生の増大は、損傷組織の修復の促進、刺激物質、又は毒素に対する耐性の増強、又は感染に対する耐性の増大に有用である。細胞外マトリックスの分解の低下は、肺の微小構造に対する損傷、又は不可逆的な変化の防止、及び悪性細胞の転移の防止、又は抑止に有用である。例えば、不適当に低いレベルの細胞外マトリックスの分解を特徴とする発生障害で、又は再生で、細胞外マトリックスの分解の増大が望ましいことがある。
本発明は、RCキナーゼポリペプチド、又はRCキナーゼポリヌクレオチドと結合しあるいはその活性を調節する試験化合物をスクリーニングするアッセイを提供する。試験化合物は、好ましくはRCキナーゼポリペプチド、又はポリヌクレオチドと結合する。より好ましくは、試験化合物は、RCキナーゼポリペプチドのRCキナーゼ活性、又はRCキナーゼポリヌクレオチドの発現を、その試験化合物が存在しない場合と比較して、少なくとも約10、好ましくは約50、より好ましくは約75、90、又は100%低下させる。
(試験化合物)
試験化合物は、当技術分野ですでに知られている薬剤作用物質でもよく、あるいは、以前にどんな薬剤活性を有することも知られていない化合物でもよい。化合物は、天然に存在するものでもよく、あるいは、実験室で設計することもできる。それを微生物、動物、又は植物から単離することもでき、組換えによって生成することもでき、あるいは、当技術分野で知られている化学的な方法で合成することもできる。所望の場合、それだけに限らないが、生物学的なライブラリー、空間的にアドレス指定可能な並列固相、又は溶液相ライブラリー、逆重畳積分を必要とする合成ライブラリーの方法、「1ビーズ1化合物」のライブラリーの方法、及びアフィニティークロマトグラフィー選択を使用する合成ライブラリーの方法を含めて、当技術分野で知られている多数のコンビナトリアルライブラリーの方法のいずれかを用いて試験化合物を得ることができる。生物学的なライブラリーの手法は、ポリペプチドライブラリーに限られるが、他の4つの手法は、ポリペプチド、非ペプチド性オリゴマー、又は化合物の小分子ライブラリーに適用可能である。Lamの論文(Anticancer
Drug Des. 12, 145, 1997)を参照されたい。
分子ライブラリーの合成の方法は、当技術分野で周知である(例えば、DeWittらの論文(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90,
6909, 1993);Erbらの論文(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91, 11422, 1994);Zuckermannらの論文(J.
Med. Chem. 37, 2678, 1994);Choらの論文(Science 261, 1303, 1993);Carellらの論文(Angew.
Chem. Int. Ed. Engl. 33, 2059, 1994);Carellらの論文(Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33,
2061);Gallopらの論文(J. Med. Chem. 37, 1233, 1994)を参照)。化合物のライブラリーは、溶液で(例えば、Houghtenの論文(BioTechniques
13, 412-421, 1992)を参照)、あるいはビーズ上で(Lamの論文(Nature 354, 82-84, 1991))、チップ上で(Fodorの論文(Nature
364, 555-556, 1993))、細菌もしくは胞子上で(Ladnerの米国特許第5,223,409号)、プラスミド上で(Cullらの論文(Proc.
Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89, 1865-1869, 1992))、又はファージ上で(Scott、及びSmithの論文(Science
249, 386-390, 1990);Devlinの論文(Science 249, 404- 406, 1990);Cwirlaらの論文(Proc.
Natl. Acad. Sci. 97, 6378-6382, 1990);Feliciの論文(J. Mol. Biol. 222, 301-310,
1991);、及びLadnerの米国特許第5,223,409号)提示することができる。
(高処理能スクリーニング)
高処理能スクリーニングを用いて、RCキナーゼポリペプチド、又はポリヌクレオチドと結合できるかどうか、あるいはRCキナーゼ活性、又はRCキナーゼ遺伝子発現に影響を及ぼすことができるかどうかについて試験化合物をスクリーニングすることができる。高処理能スクリーニングを用いると、多くの別個の化合物を並行して試験することができ、その結果、多数の試験化合物を迅速にスクリーニングすることができる。最も広く確立されている技術は、96穴マイクロタイタープレート(microtiter
plate)を利用するものである。マイクロタイタープレートの穴は、通常50〜500μlのアッセイ体積を必要とする。プレートに加えて、96穴の形式に適合する多数の器具、材料、ピペッター、ロボット装置、プレート洗浄器、及びプレート読取器が市販されている。
あるいは、「無形式アッセイ」、又は試料間に物理的な障壁がないアッセイを使用することもできる。例えば、単一の相同なアッセイでコンビナトリアルペプチドライブラリーに色素細胞(メラニン細胞(melanocyte))を使用するアッセイが、Jayawickremeらの論文(Proc.
Natl. Acad. Sci. U.S.A. 19, 1614-18 (1994))に記載されている。細胞をペトリ皿中のアガロース下に置き、次いでコンビナトリアル化合物を運搬するビーズをアガロースの表面上に置く。コンビナトリアル化合物は、ビーズから部分的に遊離する。化合物がゲル基質中に局所的に拡散するにつれて、活性な化合物が細胞に色の変化を引き起こすので、活性な化合物を暗色素領域として視覚化することができる。
無形式アッセイの他の例は、生体分子スクリーニング学会第1回年会(First Annual Conference of The Society for
Biomolecular Screening)でのChelskyの報告「コンビナトリアルライブラリーのスクリーニングの戦略:新規、及び旧来の手法」(Philadelphia,
Pa. (Nov. 7-10, 1995))で述べられている。Chelskyは、ゲル内の酵素がゲル全体にわたって色の変化を引き起こすように、単一の相同な酵素アッセイで炭酸脱水酵素をアガロースゲルの内部に入れた。その後、光分解性リンカーを介してコンビナトリアル化合物を運搬するビーズをゲルの内部に入れ、UV光によって化合物を部分的に遊離させた。酵素を抑制する化合物は、色の変化が少ない局所抑制域として観察された。
さらに他の例は、Salmonらの論文(Molecular Diversity 2, 57-63 (1996))に記載されている。この例では、寒天中で増殖している癌細胞に対する細胞毒性効果を有する化合物について、コンビナトリアルライブラリーをスクリーニングした。
他の高処理能スクリーニングの方法は、Beutelらの米国特許第5,976,813号に記載されている。この方法では、試験試料を、多孔性基質内に入れる。次いで、1種、又は複数種のアッセイ構成成分を、ゲル、プラスチックシート、フィルターや他の型の取扱いが容易な固体支持体などの基質の中、上、又は下に置く。試料を多孔性基質に導入したとき、それらは十分ゆっくりと拡散し、その結果試験試料が一緒に動くことなくアッセイを行うことができる。
(結合アッセイ)
結合アッセイでは、試験化合物は、RCキナーゼポリペプチドの活性部位、又はフィブロネクチンドメインと結合しそれを占有し、それによって活性部位、又はフィブロネクチンドメインが基質に到達できなくなり、その結果正常な生物学的活性が妨げられる小さな分子であることが好ましい。そのような小さな分子の例には、それだけに限らないが、小さなペプチド、又はペプチド様分子がある。結合アッセイでは、試験化合物、又はRCキナーゼポリペプチドは、蛍光、放射性同位体、化学発光や、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼやルシフェラーゼなどの酵素標識など、検出可能な標識を含むことができる。次いで、例えば、放射線放出を直接カウントし、シンチレーションカウントを行い、又は検出可能な産物への適当な基質の転換を判定することにより、RCキナーゼポリペプチドと結合した試験化合物の検出を行うことができる。
あるいは、その相互作用物質のどちらも標識せずに、試験化合物とRCキナーゼポリペプチドの結合を判定することもできる。例えば、微小生理機能測定器を使用して、試験化合物と標的ポリヌクレオチドの結合を検出することができる。微小生理機能測定器(例えば、Cytosensor(商標))とは、光電的にアドレス可能な電位差センサー(light
addressable potentiometric sensor)(LAPS)を用いて細胞がその周囲環境を酸性化する速度を測定する分析機器である。この酸性化速度の変化を、試験化合物とRCキナーゼポリペプチドの相互作用を示す指標として使用することができる(McConnellらの論文(Science
257, 1906-1912, 1992))。
試験化合物の、RCキナーゼポリペプチドとの結合能の判定は、実時間生体分子相互作用分析(BIA)などの技術を用いて実現することもできる。Sjolander、及びUrbaniczkyの論文(Anal.
Chem. 63, 2338-2345, 1991)、及びSzaboらの論文(Curr. Opin. Struct. Biol. 5, 699-705,
1995)。BIAとは、相互作用物質のいずれも標識せずに、実時間で生体特異的な相互作用を研究する技術である(例えば、BIAcore(商標))。光学的な現象の表面プラズモン共鳴(SPR)の変化を、生体分子間の実時間反応を示す指標として使用することができる。
本発明のさらに他の態様では、RCキナーゼポリペプチドを、2ハイブリッドアッセイ、又は3ハイブリッドアッセイでの「ベイト(bait)タンパク質」として使用して(例えば、米国特許第5,283,317号;Zervosらの論文(Cell
72, 223-232, 1993);Maduraらの論文(J. Biol. Chem. 268, 12046-12054, 1993);Bartelらの論文(BioTechniques
14, 920-924, 1993);Iwabuchiらの論文(Oncogene 8, 1693-1696, 1993);、及びBrentのWO94/10300を参照)、RCキナーゼポリペプチドと結合し、又は相互作用し、その活性を調節する他のタンパク質を同定することができる。
2ハイブリッド系は、ほとんどの転写因子が組立式の性質を有し、分離可能なDNA結合ドメイン、及び活性化ドメインからなることに基づいている。簡潔に述べると、そのアッセイは、2種の異なるDNA構築物を利用する。例えば、一方の構築物では、RCキナーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、既知の転写因子(例えば、GAL-4)のDNA結合ドメインをコードするポリヌクレオチドと融合している。他方の構築物では、不明なタンパク質(「プレイ(prey)」、又は「試料」)をコードするDNA配列は、既知の転写因子の活性化ドメインをコードするポリヌクレオチドと融合している。「ベイト」と「プレイ」のタンパク質がin
vivoで相互作用してタンパク質依存性複合体を形成することができる場合、転写因子のDNA結合ドメインと活性化ドメインは非常に近接する。この近接によって、その転写因子に反応する転写制御部位に作動的に連結したレポーター遺伝子(例えば、LacZ)の転写が可能となる。レポーター遺伝子の発現を検出することができ、機能的な転写因子を含む細胞コロニーを単離し、それを使用してRCキナーゼポリペプチドと相互作用するタンパク質をコードするDNA配列を得ることができる。
一方、又は両方の非結合型の相互作用物質からの結合した物質の分離を促進し、同様に、アッセイの自動化に適合させるために、RCキナーゼポリペプチド(、又はポリヌクレオチド)、又は試験化合物の固定化が望ましいことがある。したがって、RCキナーゼポリペプチド(、又はポリヌクレオチド)、又は試験化合物を固体支持体に結合することができる。適切な固体支持体には、それだけに限らないが、ガラス、又はプラスチックスライド、組織培養プレート、マイクロタイターの穴、管、シリコンチップ、又はビーズなどの粒子(それだけに限らないが、ラテックス、ポリスチレン、又はガラスビーズを含む)がある。共有結合、及び非共有結合、受動的吸着、あるいはポリペプチド、又は試験化合物、及び固体支持体とそれぞれ結合した結合部分の対の使用を含めて、当技術分野で知られている任意の方法を使用して、RCキナーゼポリペプチド(、又はポリヌクレオチド)、又は試験化合物を固体支持体に結合することができる。好ましくは、個々の試験化合物の位置を追跡することができるように、試験化合物をアレイ中の固体支持体と結合する。試験化合物とRCキナーゼポリペプチド(、又はポリヌクレオチド)の結合は、反応物質を入れるのに適した任意の容器中で行うことができる。そのような容器の例には、マイクロタイタープレート、試験管、及び微小遠心管がある。
一実施態様では、RCキナーゼポリペプチドは、RCキナーゼポリペプチドの固体支持体への結合を可能にするドメインを含む融合タンパク質である。例えば、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ融合タンパク質を、グルタチオンセファロースビーズ(Sigma
Chemical, St. Louis, Mo.)、又はグルタチオン誘導体化マイクロタイタープレート上に吸着させることができ、次いでそれを試験化合物、又は試験化合物、及び非吸着RCキナーゼポリペプチドと混合する;次いで、複合体形成をもたらす条件下で(例えば、塩、及びpHの生理的な条件で)、その混合物をインキュベートする。インキュベーション後、ビーズ、又はマイクロタイタープレートの穴を洗浄して、任意の非結合構成成分を除去する。上記に記載のように、相互作用物質の結合を直接的に、又は間接的に判定することができる。あるいは、複合体を固体支持体から解離した後、結合を判定することもできる。
ポリペプチド、又はポリヌクレオチドを固体支持体上に固定化する他の技術を、本発明のスクリーニングアッセイで使用することもできる。例えば、ビオチンとストレプトアビジンの結合を利用して、RCキナーゼポリペプチド(、又はポリヌクレオチド)、又は試験化合物を固定化することができる。当技術分野で周知の技術(例えば、ビオチン化キット、Pierce
Chemicals, Rockford, Ill.)を用いて、ビオチン-NHS(N-ヒドロキシスクシンイミド)からビオチン化RCキナーゼポリペプチド、又は試験化合物を調製し、ストレプトアビジン被覆96穴プレート(Pierce
Chemical)の穴中に固定化することができる。あるいは、RCキナーゼポリペプチド、ポリヌクレオチド、又は試験化合物と特異的に結合するが、RCキナーゼポリペプチドの活性部位やフィブロネクチンドメインなどの所望の結合部位に干渉しない抗体を、プレートの穴に誘導体化することができる。非結合標的、又はタンパク質を、抗体結合により穴中で捕捉することができる。
GST固定化複合体について先に記載したものに加えて、そのような複合体を検出する方法には、RCキナーゼポリペプチド(、又はポリヌクレオチド)、又は試験化合物と特異的に結合する抗体を用いた複合体の免疫検出、RCキナーゼポリペプチドのRCキナーゼ活性の検出を利用する酵素結合アッセイ、及び非還元条件下でのSDSゲル電気泳動がある。
RCキナーゼポリペプチド、又はポリヌクレオチドと結合する試験化合物についてのスクリーニングを、細胞そのもので実施することができる。RCキナーゼポリヌクレオチド、又はポリペプチドを含むどんな細胞も、細胞を基礎とするアッセイ系で使用することができる。RCキナーゼポリヌクレオチドは、細胞内で天然に存在するものでもよく、あるいは上記に記載したものなどの技術を用いて導入することもできる。結腸癌細胞系統のHCT116、DLD1、HT29、Caco2、SW837、SW480、及びRKO、乳癌細胞系統の21-PT、21-MT、MDA-468、SK-BR3、及びBT-474、A549肺癌細胞系統やH392膠芽細胞腫細胞系統などの腫瘍細胞系統を含めて、初代培養物、又は樹立細胞系統を使用することができる。細胞そのものを、試験化合物と接触させる。細胞を溶解してRCキナーゼポリペプチドと試験化合物の複合体を遊離させた後、上記に記載のように、試験化合物とRCキナーゼポリペプチド、又はポリヌクレオチドの結合を判定することができる。
(酵素アッセイ)
RCキナーゼポリペプチドのRCキナーゼ活性を増大、又は低下させることができるかどうか、試験化合物を試験することができる。例えば、実施例1で参照する方法を用いて、RCキナーゼ活性を測定することができる。精製したRCキナーゼポリペプチド、細胞抽出物、又は細胞そのものと試験化合物を接触させた後に、RCキナーゼ活性を測定することができる。RCキナーゼ活性を少なくとも約10、好ましくは約50、より好ましくは約75、90、又は100%低下させる試験化合物を、MAPキナーゼのリン酸中継系を介するシグナル伝達、炎症伝達物質の産生、又は細胞外マトリックスの分解を低下させる潜在的な作用物質として同定する。RCキナーゼ活性を少なくとも約10、好ましくは約50、より好ましくは約75、90、又は100%増大させる試験化合物を、MAPキナーゼのリン酸中継系を介するシグナル伝達、炎症伝達物質の産生、又は細胞外マトリックスの分解を増大させる潜在的な作用物質として同定する。
(遺伝子発現)
他の実施態様では、RCキナーゼ遺伝子発現を増大、又は低下させる試験化合物を同定する。RCキナーゼポリヌクレオチドを試験化合物と接触させ、RCキナーゼポリヌクレオチドのRNA、又はポリペプチド産物の発現を決定する。試験化合物の存在下でのRCキナーゼのmRNA、又はポリペプチドの発現レベルを、試験化合物の不在下でのRCキナーゼのmRNA、又はポリペプチドの発現レベルと比較する。次いで、この比較に基づいて、試験化合物を発現の調節因子として同定することができる。例えば、RCキナーゼのmRNA、又はポリペプチドの発現が試験化合物の存在下でその不在下より高いとき、その試験化合物を、RCキナーゼのmRNA、又はポリペプチドの発現の刺激因子、又は促進因子として同定する。あるいは、mRNA、又はタンパク質の発現が試験化合物の存在下でその不在下より低いとき、その試験化合物を、RCキナーゼのmRNA、又はポリペプチドの発現の抑制因子として同定する。
mRNA、又はタンパク質を検出するための、当技術分野で周知の方法によって、細胞内でのRCキナーゼのmRNA、又はポリペプチドの発現のレベルを決定することができる。定性的、又は定量的な方法を使用することができる。例えば、ラジオイムノアッセイ、ウェスタンブロット法や免疫組織化学などの免疫化学的方法を含めた、当技術分野で知られている様々な技術を用いて、RCキナーゼポリヌクレオチドのポリペプチド産物が存在するかどうかを判定することができる。あるいは、RCキナーゼポリペプチドへの標識アミノ酸の取り込みを検出することにより、in
vivoで、細胞培養物中で、又はin vitro翻訳系でポリペプチドが合成されているかどうかを判定することができる。
無細胞アッセイ系で、又は細胞そのもので、そのようなスクリーニングを実施することができる。RCキナーゼポリヌクレオチドを発現するどんな細胞も、細胞を基礎とするアッセイ系で使用することができる。RCキナーゼポリヌクレオチドは、細胞内で天然に存在するものでもよく、あるいは上記に記載したものなどの技術を用いて導入することもできる。結腸癌細胞系統のHCT116、DLD1、HT29、Caco2、SW837、SW480、及びRKO、乳癌細胞系統の21-PT、21-MT、MDA-468、SK-BR3、及びBT-474、A549肺癌細胞系統やH392膠芽細胞腫細胞系統などの腫瘍細胞系統を含めて、初代培養物、又は樹立細胞系統を使用することができる。
(医薬組成物)
本発明は、患者に投与されることで治療効果を発揮できる医薬組成物をさらに提供する。本発明の医薬組成物は、RCキナーゼポリペプチド、RCキナーゼポリヌクレオチド、RCキナーゼポリペプチドに特異的に結合する抗体、又はRCキナーゼポリペプチドにおけるミメティックス(mimetics)、作動薬、拮抗薬、又は阻害薬を含む。組成物は、単独、又は安定化化合物などの少なくとも1種の他の作用物質と併用して投与でき、食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、水を含むがこれらに限定されない、任意の生体適合性の無菌医薬担体中で投与できる。組成物は、単独で、又は他の作用物質、薬物、ホルモンのいずれかと併用して患者に投与できる。
これらの医薬組成物は、活性成分に加え、医薬として使用できる製剤中への活性化合物の処理を促進する賦形剤、及び助剤を含む、医薬として許容可能な適切な担体を含有することができる。本発明の医薬組成物は、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、脊髄内、髄腔内、脳室内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、非経口、局所、舌下、直腸手段のいずれかを含むがこれらに限定されない、かなり多数の経路によって投与できる。経口投与に対する医薬組成物は、経口投与に適する用量において当分野の技術者に周知の医薬的に許容できる担体を用いて製剤可能である。上記担体により、患者による摂取に対し、錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして医薬組成物が製剤できる。
固体賦形剤を含む活性化合物の併用、場合によって適切な助剤の添加後における生成混合物の粉砕や顆粒混合物のプロセシングを介して経口使用に対する医薬製剤を得ることで、必要に応じて錠剤、又は糖衣錠用コアが得られる。適切な賦形剤として、乳糖、ショ糖、マンニトール、ソルビトールのいずれかを含む糖;トウモロコシ、小麦、米、ポテトなどの植物由来のデンプン;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、又はナトリウムカルボキシメチルセルロースなどのセルロース;アラビアゴムやトラガカントゴムを含むゴム;ゼラチン、コラーゲンなどのタンパク質などの炭水化物、又はタンパク質の充填剤である。必要に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、又はアルギン酸ナトリウムを例とするこれらの塩など崩壊剤、又は可溶化剤が添加できる。
糖衣錠用コアは、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、及び/もしくは二酸化チタンをさらに含有可能な糖濃縮溶液、ラッカー溶液、適切な有機溶媒、又は溶媒混合物などの適切な皮膜と併用できる。染料、又は顔料は、製品の識別、又は活性化合物の量すなわち用量を特定するために、錠剤、又は糖衣錠皮膜に添加できる。
経口使用可能な医薬製剤としては、ゼラチンとグリセロール、又はソルビトールなどの皮膜からなる押込嵌めカプセル、ならびにゼラチン製の密封ソフトカプセルが挙げられる。押込嵌めカプセルは、充填剤、又は乳糖もしくはデンプンなどの結合剤、タルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、場合によって安定剤などと混合された活性成分を含有可能である。ソフトカプセルでは、安定剤の有無にかかわらず活性化合物は、脂肪油、液体、又は液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体中に溶解、又は懸濁できる。
非経口的投与に適する医薬製剤は、水溶液内、好ましくはハンクス溶液、リンガー液、又は緩衝生理食塩水などの生理適合性緩衝液中で製剤できる。注射用水性懸濁液は、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、又はデキストランなどの懸濁液の粘性を高める物質を含有することができる。さらに、活性化合物の懸濁液は、適切な油注射用油性懸濁液として調製できる。適切な親油性溶媒、又は媒体として、ゴマ油などの脂肪油、オレイン酸エチルもしくは中性脂肪などの合成脂肪酸エステル、又はリポソームが挙げられる。脂質でないポリカチオンのアミノポリマーは、送達用にさらに使用できる。場合によって、懸濁液は、高濃度溶液の調製を可能にするために、化合物の溶解度を高める適切な安定剤、又は作用物質をさらに含有することができる。局所投与、又は経鼻投与において、浸透されるべき特定の障壁に適する浸透剤は、製剤において使用される。上記浸透剤は、一般に当分野の技術者において知られている。
本発明の医薬組成物は、当分野の技術者に既知の方法、例えば混合、溶解、粒状化、糖衣錠調製、粉末化、乳化、カプセル化、包括固定化、又は凍結乾燥化といった従来式処理によって製造できる。医薬組成物は、塩として供給でき、塩化水素、硫黄、酢、乳、酒石、リンゴ酸、琥珀酸などを含むがこれらに限定されない、多くの酸とともに形成できる。塩は、水などのプロトン溶媒中で対応する遊離塩基形態よりも一層の可溶性を示す傾向がある。その他の場合では、好ましい調製物は、使用に先立って緩衝液と混合される、4.5から5.5のpH範囲で1〜50
mMのヒスチジン、0.1%〜2%のショ糖、及び2〜7%のマンニトールのいずれかもしくはすべてを含有可能な凍結乾燥された粉末であってもよい。
さらに、製剤、及び投与における技術に関する詳細は、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCESの最新版(Maack
Publishing Co., Easton, Pa.)に見出すことができる。医薬組成物は、調製された後に、適切な容器内に配置し、指示した状態の治療のためにラベルを貼ることができる。かかるラベル表示には、投与の量、頻度、方法などを含むものと考えられる。
(予測的、診断的、及び予後的アッセイ)
本発明は、開示されているバイオマーカー、すなわち開示されている配列番号1、2、3、4、5、6のいずれかのポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドマーカー、及び/又はそれによってコードされるポリペプチドマーカー、又は配列番号7、8、9、10、11、12のいずれかのポリペプチド配列を含むポリペプチドマーカーを検出することによって被験者がCOPDや他の疾患を発症するリスクがあるか否かを決定するための方法を提供する。
臨床的応用では、生物学的試料は、本明細書において同定されたバイオマーカーの存在、及び/又は不在に対してスクリーニング可能である。上記試料は、針生検コア、外科的切除試料、又は例えば血清、細針による乳頭吸引物、尿などのような体液である。例えば、これらの方法は、場合によってクライオスタットによる切片調製によって分画し、異常細胞が全細胞集団の約80%にまで濃縮される生検試料を得ることを含む。特定の実施態様では、これらの試料から抽出されたポリヌクレオチドは、当分野の技術者に周知の技術を用いて増幅してもよい。選択されたマーカーの検出された発現レベルは、統計的に有効な異常試料群、及び健常試料群と比較することになろう。
1つの実施態様では、本診断方法は、ノーザンブロット解析、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、in situハイブリダイゼーション、免疫沈降、ウェスタンブロットハイブリダイゼーション、又は免疫組織化学によるなど、被験者が開示されたマーカーにおける異常なmRNA、及び/又はタンパク質レベルを有するか否かを測定することを含む。本方法によると、被験者から細胞が採取され、開示されたバイオマーカーのレベル、すなわちタンパク質、又はmRNAのレベルが測定され、健常被験者におけるこれらのマーカーのレベルと比較される。バイオマーカーポリペプチド、又はmRNAのレベルにおける異常レベルは、COPDなどの疾患を示唆することが多い。
別の実施態様では、診断方法は、サザンブロット解析、ドットブロット解析、蛍光もしくは比色分析のin situハイブリダイゼーション、比較ゲノムハイブリダイゼーション、又は定量的PCRによるなど、被験者が該遺伝子、又は該遺伝子座において異常なDNA含量を有するか否かを測定することを含む。一般にこれらのアッセイは、代表的なゲノム領域から得られるプローブの使用を含む。プローブは、少なくとも該ゲノム領域、又は該領域に相補的もしくは類似的な配列の複数部分を含む。特に該遺伝子の遺伝子内もしくは遺伝子間の領域すなわちゲノム領域。プローブは、ハイブリダイゼーションによって標的領域に結合可能なヌクレオチド配列、又は類似機能を有する配列(例えば、PNA、モルホリノオリゴマー)で構成できる。一般に、該患者の試料内で改変されたゲノム領域は、罹患していない対照試料(同じ患者もしくは異なる患者の正常組織、周囲の非罹患組織、末梢血)、又は該改変を受けておらず、したがって内部対照として機能できる同一試料のゲノム領域と比較される。好ましい実施態様では、同一染色体上に位置する領域が用いられる。あるいは、生殖細胞性領域、及び/又は試料内における定義された変化量を有する領域が用いられる。1つの好ましい実施態様では、DNA含量、構造、組成物、修飾のいずれかは、明確なゲノム領域の範囲内に該当するものが比較される。該試料のDNA含量を検出する方法が特に求められる。この場合、標的領域の量が増幅、及び/又は欠失によって改変される。別の実施態様では、標的領域は、臨床的態様に関していえば、該試料内の細胞に対して影響を与える、又は疾患に罹患しやすくする多型(例えば、一塩基多型、又は突然変異)の存在に対して解析され、診断的、予後的、又は治療的価値を有する。好ましくは、配列変種の同定を用いることで、該試料において該臨床的態様を有する特徴的挙動を招くハプロタイプが定義される。
本発明の1つの実施態様は、少なくとも10種、少なくとも5種、少なくとも4種、少なくとも3種のいずれか、かつより好ましくは少なくとも2種のマーカーの検出によるCOPDの予測、診断、又は予後における方法である。これらにより、同マーカーは、COPDにおいて改変される1つの染色体領域上に位置する遺伝子、及び/又はゲノム核酸配列である。
本発明の1つのさらなる実施態様は、RCキナーゼ遺伝子、及び/又はゲノム核酸配列の検出によるCOPDの予測、診断、又は予後における方法である。
1つの実施態様では、COPD、特にCOPDの予測、診断、又は予後のための方法は、生物学的試料において、
(a)配列番号1、2、3、4、5、6のいずれかのポリヌクレオチド;
(b)(a)に特定されるポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、RCキナーゼと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(c)遺伝子コードの縮重のために(a)、及び(b)に特定されるポリヌクレオチドから逸脱した配列を有し、RCキナーゼと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(d)(a)から(c)に特定されるポリヌクレオチド配列の特異的な断片、誘導体、対立遺伝子変種のいずれかを表し、RCキナーゼと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
のいずれかの検出によって実施され、かつ、(a)から(d)に特定される任意のポリヌクレオチドもしくは類似のオリゴマーを生物学的試料のポリヌクレオチド材料にハイブリダイズすることによってハイブリダイゼーション複合体を形成するステップと、該ハイブリダイゼーション複合体を検出するステップとを含む。
別の実施態様では、COPDの予測、診断、又は予後に対する方法は、直前に記載されるように実施されるが、この場合、ハイブリダイゼーション以前に生物学的試料のポリヌクレオチド材料が増幅される。
別の実施態様では、COPDの診断、又は予後に対する方法は、特に、
(a)配列番号1、2、3、4、5、6のいずれかのポリヌクレオチドから選択されるポリヌクレオチド;
(b)(a)に特定されるポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、RCキナーゼと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(c)遺伝子コードの縮重のために(a)、及び(b)に特定されるポリヌクレオチドから逸脱した配列を有し、RCキナーゼと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(d)(a)から(c)に特定されるポリヌクレオチド配列の特異的な断片、誘導体、対立遺伝子変種のいずれかを表し、RCキナーゼと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(e)(a)から(d)に特定されるポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド;
(f)配列番号7、8、9、10、11、12のいずれかのポリペプチドを含むポリペプチド;のいずれかの検出によって実施され、かつ、(a)から(d)において特定されるポリヌクレオチド、又は(e)もしくは(f)において特定されるポリペプチドと特異的に相互作用する試薬を有する生物学的試料と接触するステップを含む。
(1.DNAアレイ技術)
1つの実施態様では、本発明は、ポリヌクレオチドプローブが組織化されたアレイ中のDNAチップ内に固定される方法をさらに提供する。オリゴヌクレオチドは、リソグラフィーを含む種々の処理によって固体支持体に結合できる。例えば、チップは、オリゴヌクレオチド(GeneChip,
Affymetrix)を41,000個まで支持できる。本発明は、単一のチップ上にアレイ状のポリヌクレオチドマーカーを提供することによって試験の信頼度を向上させることから、COPDなどCOPDに対する利用可能な試験に比べて相当な利点を発揮する。
本方法は、患者の生検を得ることを含む。ここでは、場合によって全細胞集団の約80%に至るまで異常細胞を増やすためのクライオスタットによる切片調製や、血清もしくは尿、液体(例えば細針吸引液由来)を含有する血清もしくは細胞などの体液の使用によって分画される。次いでDNA、又はRNAが抽出され、増幅され、かつDNAチップを用いて分析されることで、マーカーであるポリヌクレオチド配列の有無が判定される。1つの実施態様では、ポリヌクレオチドプローブが二次元マトリックス、又はアレイ内の基板上にスポットされる。ポリヌクレオチド試料は、標識されてからプローブにハイブリダイズできる。プローブポリヌクレオチドに結合した標識試料のポリヌクレオチドを含む二本鎖ポリヌクレオチドは、試料の未結合部が洗い流されると検出できる。
該プローブのポリヌクレオチドは、ガラス、ニトロセルロースなどを含む基板上にスポットできる。プローブは、共有結合、又は疎水性相互作用などの非特異的相互作用によって基板に結合できる。試料のポリヌクレオチドは、放射性標識、蛍光体、発色団などを用いて標識できる。アレイ、及びこれらのアレイを用いる方法を構築するための技術は、EP
No.0799897;PCT No.WO97/29212;PCT No.WO97/27317;EP No.0785280;PCT No.WO97/02357;米国特許第5593839号;米国特許第5578832号;EP
No.0728520;米国特許第5599695号;EP No.0721016;米国特許第5556752号;PCT No.WO95/22058;、及び米国特許第5631734号に記載されている。さらに、アレイを用いることで遺伝子の差次的発現を検査でき、また遺伝子の機能が判定できる。例えば、本ポリヌクレオチド配列のアレイを用いることで、例えば正常細胞と異常細胞の間の発現量がいずれのポリヌクレオチド配列で異なるかが判定できる。対応する正常な試料では認められない、異常な試料における特定のメッセージの高度な発現は、COPDに特異的なタンパク質を示す可能性がある。
したがって、1つの態様では、本発明は、本明細書において開示される固有のポリヌクレオチドマーカーに特異的なプローブ、及びプライマーを提供する。
1つの実施態様では、本方法は、ポリヌクレオチドプローブを用いることで特に患者由来の組織における悪性細胞あるいはCOPD細胞の存在が判定されることを含む。特に、本方法は、
1)長さが少なくとも12ヌクレオチド、好ましくは少なくとも15ヌクレオチド、より好ましくは25ヌクレオチド、及び最も好ましくは少なくとも40ヌクレオチドのヌクレオチド配列と、配列番号1、2、3、4、5、6のいずれかのポリヌクレオチドのコード配列もしくはこれらに相補的な配列の一部に相補的なコード配列のすべて、又はほぼすべてとを含むポリヌクレオチドプローブを提供することと、
2)COPDにおいて差次的に発現されることと、
3)COPD患者由来の組織試料を得ることと、
4)COPDに罹患していない患者由来の第2の組織試料を提供することと、
5)ストリンジェントな条件下でポリヌクレオチドプローブを該第1、及び第2の組織試料のそれぞれのRNAと接触させることと(例えば、ノーザンブロットもしくはin
situハイブリダイゼーションアッセイ)、
6)(a)第1の組織試料のRNAとのプローブのハイブリダイゼーション量を(b)第2の組織試料のRNAとのプローブのハイブリダイゼーション量と比較することとを含む。この場合、第2の組織試料のRNAとのハイブリダイゼーション量と比較した場合の第1の組織試料のRNAとのハイブリダイゼーション量の統計的有意差は、第1の組織試料におけるCOPD、特にCOPDを示唆している。
(2.データ解析方法)
例えばCOPDの異常細胞もしくは対応する正常細胞における発現レベルといった1種、又は複数種の「RCキナーゼ」の発現レベルと参照発現レベルとの比較は、好ましくはコンピュータシステムを利用して実施される。1つの実施態様では、発現レベルは2種の細胞において得られ、これら2組の発現レベルは、比較のためにコンピュータシステムに導入される。好ましい実施態様では、1組の発現レベルは、コンピュータシステムにおいて既存である値と比較するために、又はコンピュータシステムに入力される際にコンピュータで読み取り可能な形式で、コンピュータシステムに入力される。
1つの実施態様では、本発明は、本発明の遺伝子発現プロファイルデータ、又は異常細胞における少なくとも1種の「RCキナーゼ」の発現レベルに相当する値のコンピュータで読み取り可能な形式を提供する。その値は、例えばマイクロアレイ解析といった実験から得られるmRNA発現レベルであってもよい。その値はまた、例えばGAPDHなどの極めて多岐にわたる条件下で多数の細胞内で発現が一定している参照遺伝子に対して規格化されたmRNAレベルであってもよい。他の実施態様では、コンピュータにおける値は、異なる試料内の規格化されたもしくは規格化されていないmRNAレベルの比率、又はこれらの間の差である。
遺伝子発現プロファイルデータは、Excel表などの表形式であってもよい。データは単独か、又は例えば他の発現プロファイルを含むより大規模なデータベースの一部であってもよい。例えば、本発明の発現プロファイルデータは、公的データベースの一部であってもよい。コンピュータで読み取り可能な形式は1つのコンピュータ内に存在してもよい。別の実施態様では、本発明は、遺伝子発現プロファイルデータを表示するコンピュータを提供する。
1つの実施態様では、本発明は、例えば被験者の細胞といった第1の細胞と第2の細胞との間における1種、又は複数種の「RCキナーゼ」の発現レベル間の類似性を決定するための方法を提供し、この方法は、第1の細胞において1種、又は複数種の「RCキナーゼ」の発現レベルを得ることと、第2の細胞において1種、又は複数種の「RCキナーゼ」の発現レベルに対応する値を含むレコードを含むデータベースやコンピュータに格納されたデータと比較する目的で選択された1種、又は複数種の値を受信できる、例えばユーザインタフェースといったプロセッサ命令を含むコンピュータにこれらの値を入力することを含む。コンピュータは、比較データを図、チャート、又は他種の出力に変換するための手段をさらに含んでもよい。
別の実施態様では、「RCキナーゼ」の発現レベルを示す値は、2種以上の細胞から得られる参照発現レベルとともに1種、又は複数種のデータベースを含むコンピュータシステムに入力される。例えば、コンピュータは、異常、及び正常細胞の発現データを含む。命令はコンピュータに提供され、コンピュータは入力データをコンピュータ内のデータと比較することで、入力データが正常細胞もしくは異常細胞のデータと類似しているか否かが判定できる。
別の実施態様では、コンピュータは、COPDの異なる病期における被験者の細胞内の発現レベルの値を含み、コンピュータはコンピュータに入力された発現データと格納データとを比較することができ、例えば被験者におけるCOPDの病期を決定するために、コンピュータ内の発現プロファイル中に酷似する入力データが存在することを示す結果を生成する。
さらに別の実施態様では、コンピュータ中の参照発現プロファイルは、細胞がin vivo、又はin vitroでCOPDの治療に使用される薬物で治療された、1人もしくは複数の被験者のCOPD細胞由来の発現プロファイルである。in
vitro、又はin vivoで薬物治療を受けた被験者の細胞の発現データを入力する際、コンピュータは、入力データをコンピュータ内のデータと比較し、コンピュータ内に入力された発現データが薬物に反応性を示す被験者の細胞のデータにより類似しているか、又は薬物に反応性を示さない被験者の細胞のデータにより類似しているかを示す結果を提供するように命令される。したがって、この結果は、被験者が薬物による治療に反応性を示す傾向があるか、又はそれに反応性を示す傾向がないかを示す。
1つの実施態様では、本発明は、1種、又は複数種の遺伝子に対する遺伝子発現データを受信するための手段;1種、又は複数種の該遺伝子のそれぞれから共通の参照フレームまで遺伝子発現データを比較するための手段;、及びその比較結果を提示するための手段を含む系を提供する。この系は、データをクラスタリングするための手段をさらに含んでもよい。
別の実施態様では、本発明は、(i)複数種の遺伝子に対する入力遺伝子発現データとして受信するコンピュータコード、及び(ii)複数種の該遺伝子の各遺伝子由来の該遺伝子発現データを共通の参照フレームと比較するコンピュータコードを含む遺伝子発現データを解析するためのコンピュータプログラムを提供する。
本発明は、(i)クエリー細胞内のCOPDの特徴を示す1種もしくは複数種の遺伝子の発現レベルに対応する複数の値を、1種もしくは複数種の参照細胞の発現、又は発現プロファイルの参照データ、及びその細胞型の注釈を含んだレコードを含むデータベースと比較するステップと、(ii)クエリー細胞が発現プロファイルの類似性に基づいて極めて類似する対象の細胞を特定するステップとを実施するためのプログラム命令を含む機械で読み取り可能な、又はコンピュータで読み取り可能な媒体をさらに提供する。参照細胞は、COPDの異なる病期にある被験者由来の細胞であってもよい。参照細胞は、さらに特定の薬物治療に応答する、又は応答しない被験者由来あり、かつ場合によってin
vitro、又はin vivoで薬物とともにインキュベートした細胞であってもよい。
参照細胞は、さらにいくつかの様々な治療に応答する、又は応答しない被験者由来の細胞である場合があり、コンピュータシステムは被験者に対して好ましい治療を示唆する。したがって、本発明は、COPDを有する患者に対する治療を選択するための方法を提供し、この方法は、(i)患者の異常細胞においてCOPDの特徴を示す1種、又は複数種の遺伝子の発現レベルを提供するステップと、(ii)複数の参照プロファイルでそれぞれが1つの治療に関連したものを提供し、この場合、被験者の発現プロファイル、及び各参照プロファイルが複数の値を有し、各値がCOPDの特徴を示す遺伝子の発現レベルを示す、ステップと、(iii)被験者の発現プロファイルに最も類似する参照プロファイルを選択することにより、該患者に対する治療が選択されるというステップとを含む。好ましい実施態様では、ステップ(iii)はコンピュータによって実施される。最も類似する参照プロファイルは、対応する発現データに関連した重み値を用いて多数の比較値に加重することによって選択できる。
2種の生物学的試料におけるmRNAの相対存在量は、摂動としてスコアリングし、その大きさを決定できる(すなわち、その存在量は試験対象の2種のmRNA供給源で異なる)か、又は摂動しないもの(すなわち相対存在量は同じである)としてスコアリングできる。様々な実施態様では、2種のRNA供給源間の差異が、少なくとも約25%の係数(一方の供給源由来のRNAは、他方の供給源よりも25%多い)、より普通には約50%、さらに一層頻繁には約2(存在量2倍)、3(存在量3倍)、又は5(存在量5倍)の係数であり、それが摂動としてスコアリングされる。摂動は、計算、及び発現比較のためにコンピュータによって使用できる。
好ましくは、正、又は負として摂動を識別することに加え、摂動の大きさを決定することは有利である。これは上記のように差次的標識のために用いられる2種の蛍光体の放射比率を計算することによって、又は当分野の技術者に容易に理解されると思われる類似の方法によって実施できる。
コンピュータで読み取り可能な媒体は、COPD病期の記述子、又はCOPDに対する治療に対するポインタをさらに含む場合がある。
稼動する場合、本発明のシステムに関する状況の範囲内で、遺伝子発現データを受信する手段、遺伝子発現データを比較するための手段、表示するための手段、規格化するための手段、及びクラスタリングするための手段は、本明細書において記載され、ハードウェア、又はハードウェア、及びソフトウェア内に実装された個々の機能性;本明細書において特定され、コンピュータプログラムによって命令される機能を実行するプログラム化されたコンピュータの論理回路などの部品;あるいは本明細書で記載される特定の形式においてコンピュータの機能を実行させることが可能なコンピュータプログラムを意味する実行可能な命令でコード化されたコンピュータメモリを備えたプログラム化されたコンピュータを必要とする可能性がある。
当業者であれば、本発明のシステム、及び方法は、MS-DOS、又はMicrosoft Windowsを動作させるIBM互換のパーソナルコンピュータを含む多種のシステムに適用できることが理解されるであろう。
コンピュータは、外部部品に接続された内部部品を含んでもよい。内部部品は、メインメモリと相互接続されたプロセッサ要素を含んでもよい。コンピュータシステムは、200
MHz以上のクロック速度を有するIntel Pentium(登録商標)ベースのプロセッサに加え、32 MB以上のメインメモリを備えうる。外部部品は、大容量記憶装置を含んでもよく、これは1以上のハードディスク(これらは通常はプロセッサやメモリとともにパッケージ化される)であり得る。上記のハードディスクは、通常は1
GB以上の記憶容量を有する。他の外部部品として、「マウス」を例とする入力装置、又は他のグラフィック入力装置、及び/又はキーボードに加えて、モニタを例とするユーザインタフェース装置が挙げられる。さらに、プリンタ装置がコンピュータに結合できる。
通常、コンピュータシステムは、他のローカルコンピュータシステム、リモートコンピュータシステム、又はインターネットなどの広域通信ネットワークに対するイーサーネット接続の一部となりうるネットワークリンクにさらに接続される。ネットワークリンクによってコンピュータシステムが他のコンピュータシステムとデータ、及び処理タスクを共有することが可能になる。
当該技術において標準でかつ本発明に固有である数種のソフトウェア部品が、このシステムの動作中にメモリに読み込まれる。これらのソフトウェア部品は、コンピュータシステムに本発明の方法に従って集約的に機能を実行させる。これらのソフトウェア部品は、通常は大容量記憶装置上に保存される。ソフトウェア部品とは、コンピュータシステム、及びそのネットワーク内部接続の管理を担うオペレーティングシステムを意味する。このオペレーティングシステムは、例えばWindows
95、Windows 98、Windows NTもしくはWindows XPなどのMicrosoft Windowsファミリーである。ソフトウェア部品とは、本発明に特異的な方法を実現するプログラムを補助するためにこのシステム上で利便性を発揮する共通の言語、及び機能を意味する。多くの高級、又は低級コンピュータ言語は、本発明の解析方法をプログラムするのに使用できる。命令は、稼働時間中もしくはコンパイル中に解釈可能である。好ましい言語として、C/C++、JAVA(登録商標)などが挙げられる。最も好ましくは、本発明の方法は、使用対象のアルゴリズムを含む、方程式のシンボリック入力、及び処理の高級仕様を可能にする数学的ソフトウェアパッケージ内でプログラムされ、これにより利用者が個々の方程式もしくはアルゴリズムの手続き的プログラムを作成する必要がなくなる。上記パッケージには、Mathworks(Natick,
Mass.)製Matlab、Wolfram Research(Champaign, III.)製Mathematica、又はMath Soft(Cambridge,
Mass.)製S-Plusなどが含まれる。したがって、ソフトウェア部品とは、手続き型言語、又はシンボリックパッケージにおけるプログラムとしての本発明の解析方法を意味する。好ましい実施態様では、コンピュータシステムは、COPDの1種、又は複数種の遺伝子特性の発現レベルを示す値を含むデータベースをさらに含む。データベースは、種々の細胞におけるCOPDの遺伝子特性の1種、又は複数種の発現プロファイルを含んでもよい。
典型的な実施態様では、本発明の方法を実行するために、利用者はまず発現プロファイルデータをコンピュータシステム内に読み込む。これらのデータは、利用者によってモニタ、及びキーボードから、又はネットワーク接続によって接続された他のコンピュータシステムから、又はCD-ROMもしくはフロッピーディスクなどのリムーバブル記録媒体上で、又はネットワークを介して直接入力できる。次いで利用者は、比較する、かつ例えば共変遺伝子を遺伝子の集団内にクラスタリングするステップを実行する発現プロファイル解析ソフトウェアの実行を開始する。
別の典型的な実施態様では、発現プロファイルは、米国特許第6203987号に記載される方法を用いて比較される。利用者は、まず発現プロファイルデータをコンピュータシステムに読み込む。Genesetプロファイル定義は、記憶媒体、又はリモートコンピュータから、好ましくは動的Genesetデータベースシステムからネットワークを介してメモリ内に読み込まれる。次いで利用者は、発現プロファイルを予測された発現プロファイルに変換するステップを実行する予測ソフトウェアの実行を開始する。次いで予測された発現プロファイルが表示される。
さらに別の典型的な実施態様では、利用者はまず予測されたプロファイルをメモリ内に導入する。次いで利用者は参照プロファイルのメモリ内への読み込みを開始する。次に、利用者は、客観的にプロファイルを比較するステップを実施する比較ソフトウェアの実行を開始する。
(3.変異型ポリヌクレオチド配列の検出)
さらに別の実施態様では、本発明は、例えばCOPDといった配列番号1の任意のポリヌクレオチドによってコードされた任意の1種のポリペプチドの異常な活性に関連したCOPDを発症する素因など、被験者が疾患の発症に対してリスクがあるか否かを判定するための方法を提供する。この場合、ポリペプチドの異常な活性は、
(i)マーカーポリペプチドをコードする遺伝子の完全性に影響を与える改変、又は
(ii)コードするポリヌクレオチドの誤発現の少なくとも1つを特徴とする遺伝的病変の有無を検出することによって特徴付けられる。
例えば、上記の遺伝的病変は、
I.ポリヌクレオチド配列からの1種、又は複数種のヌクレオチドの欠失、
II.ポリヌクレオチド配列に対する1種、又は複数種のヌクレオチドの付加、
III.ポリヌクレオチド配列における1種、又は複数種のヌクレオチドの置換、
IV.ポリヌクレオチド配列における染色体全体の再配列、
V.ポリヌクレオチド配列の伝令RNA転写物のレベルにおける全体的改変、
VI.ゲノムDNAのメチル化パターンなどのポリヌクレオチド配列における異常な修飾、
VII.遺伝子の伝令RNA転写物の非野生型スプライシングパターンの存在、
VIII.マーカーポリペプチドの非野生型レベル、
IX.遺伝子における対立遺伝子の欠失、
X.マーカーポリペプチドの不適切な翻訳後修飾、
の少なくとも1種の存在を確認することによって検出できる。
本発明は、コード化ポリヌクレオチド配列における突然変異を検出するためのアッセイ技術を提供する。これらの方法は、サザンブロットハイブリダイゼーション、制限酵素部位マッピングといった配列分析に関与する方法や、分析対象のポリヌクレオチドとプローブとの間のヌクレオチド対の不在の検出に関する方法を含むがこれらに限定されない。
特定の疾患、又は障害、例えば遺伝的な疾患、又は障害は、変異タンパク質を必ずしもコードしないある種の遺伝子の多形性領域の特定の対立遺伝子変種に関連する。したがって、被験者が有する遺伝子の多形性領域における特定の対立遺伝子変異型の存在によって被験者が特定の疾患、又は障害を発症しやすくなる可能性がある。遺伝子内の多形性領域は、個人からなる集団における遺伝子のヌクレオチド配列を決定することによって同定できる。多形性領域が同定されれば、個人からなる特定の集団、例えばCOPDなどの特定の疾患を発症した個人からなる集団を調べることによって、特定の疾患との関連性が判定できる。多形性領域は、例えばエキソン、エキソンのコードもしくは非コード領域内、イントロン、プロモーター領域などといった遺伝子の任意の領域に配置できる。
典型的な実施態様では、ある遺伝子のセンスもしくはアンチセンス配列、又はこれらの天然の突然変異体、あるいは5’もしくは3’隣接配列、又は被験者の遺伝子に本質的に関連したイントロン配列、又はこれらの天然の突然変異体にハイブリダイズできるヌクレオチド配列領域を含んだポリヌクレオチドプローブを含むポリヌクレオチド組成物が提供される。細胞のポリヌクレオチドはハイブリダイゼーションができる状態にあり、プローブは試料のポリヌクレオチドと接触し、試料のポリヌクレオチドに対するプローブのハイブリダイゼーションが検出される。上記技術を用いることで、欠失、置換などを含むゲノムレベルもしくはmRNAレベルにおける病変、又は対立遺伝子変種が検出できるとともに、mRNA転写レベルが決定できる。
好ましい検出方法は、突然変異、又は多形性部位と重なり、かつ突然変異、又は多形性領域の周囲に約5、10、20、25、30ヌクレオチドのいずれかを有するプローブを用いた対立遺伝子に特異的なハイブリダイゼーションである。本発明の好ましい実施態様では、対立遺伝子変種に特異的にハイブリダイズできる数種のプローブは、例えば「チップ」といった固相支持体に結合される。「DNAプローブアレイ」とも称される、オリゴヌクレオチドを含むこれらのチップを用いた突然変異検出分析は、例えばCroninらの論文(119)に記載されている。1つの実施態様では、チップは少なくとも1つの遺伝子の多形性領域におけるすべての対立遺伝子変種を含む。次いで固相支持体は、試験ポリヌクレオチドに接触され、特異的なプローブに対するハイブリダイゼーションが検出される。したがって、1種、又は複数種の遺伝子の多数の対立遺伝子変種の素姓が、簡単なハイブリダイゼーション実験において同定できる。
特定の実施態様では、病変の検出は、アンカーPCRもしくはRACEPCRなどのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(例えば、米国特許第4683195号、及び米国特許第4683202号を参照)か、それともリガーゼ連鎖反応(LCR)[Landegranらの論文、(1988,
(120))、及びNakazawaらの論文、(1994 (121))、後者は遺伝子における点突然変異の検出にとって特に有用となり得る;Abravayaらの論文、(1995,
(122))]においてプローブ/プライマーの利用を含む。単に図示される実施態様では、この方法は、(i)患者から細胞の試料を収集するステップと、(ii)ポリヌクレオチド(例えば、ゲノム、mRNA、又はその両方)を試料の細胞から単離するステップと、(iii)ポリヌクレオチド試料をポリヌクレオチド配列と特異的にハイブリダイズする1種もしくは複数種のプライマーに、ポリヌクレオチド(存在する場合)のハイブリダイゼーション、及び増幅が生じるような条件下で接触させるステップと、(iv)増幅産物の有無を検出するか、又は増幅産物の大きさを検出し、かつその長さを参照試料と比較するステップとを含む。PCR、及び/又はLCRは、本明細書において記載される突然変異の検出に用いられる技術のいずれかと組み合わせて予備増幅ステップとして利用するのが望ましいと予想される。
代替的な増幅方法として、自己持続的配列複製[Guatelli, J. C.らの論文、(1990, (123))]、転写増幅系[Kwoh, D. Y.らの論文、(1989,
(124))]、Qβレプリカーゼ[Lizardi, P. M.らの論文、(1988, (125))]、又は任意の他のポリヌクレオチド増幅方法に続き、当分野の技術者に周知の技術を用いた増幅分子の検出が挙げられる。ポリヌクレオチド分子が極めて少ない数で存在する場合、これらの検出スキームは同分子の検出に特に有用である。
本アッセイの好ましい実施態様では、試料細胞由来の遺伝子における突然変異、又はその対立遺伝子変種は、制限酵素切断パターンにおける改変によって同定される。例えば、試料、及び対照のDNAは、単離され、(場合によって)増幅され、1種、又は複数種の制限エンドヌクレアーゼによって消化され、かつ断片長の大きさがゲル電気泳動によって測定される。さらに、配列特異的なリボザイム(例えば、米国特許第5498531号を参照)を利用することで、リボザイム切断部位の発現もしくは欠損によって特異的な突然変異の存在をスコアリングすることが可能である。
(4.In situハイブリダイゼーション)
一態様では、本発明は、配列番号1、2、3、4、5、6のいずれかのポリヌクレオチド配列、又はこれらに相補的な配列のいずれかから選択される所定のマーカーのポリヌクレオチド由来のプローブによるin
situハイブリダイゼーションを含む。この方法は、標識されたハイブリダイゼーションプローブを、COPD、特にCOPDに罹患した可能性がある患者から得られた所定の組織型の試料、及びCOPDに罹患していない患者から得られた正常組織と接触させることと、プローブが正常組織を標識する程度よりも有意に異なる程度(例えば、少なくとも2の係数、少なくとも5の係数、少なくとも20の係数、少なくとも50の係数のいずれか)で患者の組織を標識するか否かを判定することを含む。
(治療の適応、及び方法)
本明細書において開示されたヒトRCキナーゼは、先に同定されたセリン/トレオニンキナーゼと同一の目的で、又はより特異的には先に同定されたMAPKキナーゼキナーゼと同一の目的で有用でありそうである。例えば、腫瘍増殖因子ベータ(TGF-β)は、セリン/トレオニンキナーゼ活性を支配する細胞表面受容体に結合し、かつそれを活性化する種々の細胞型の増殖、及び分化を調節する。Atfiらの論文(Proc.
Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92, 12110-04, 1995)は、TGF-βが78-kDaタンパク質(p78)セリン/トレオニンキナーゼを活性化すること;p78キナーゼがTGF-βが成長阻害因子として働く対象の細胞内に限って活性化されたことを示している。別の例はMAPKKK3であり、これはRCキナーゼと極めて密接に関連するヒトキナーゼである。MAPKKK3は、SEK、及びMEK1/2を個々に活性化することによってストレス活性化タンパク質キナーゼ(SAPK)、及び細胞外シグナル調節性タンパク質キナーゼ(ERK)経路を直接調節することで知られている。それは核因子カッパ-B(NFκ-B)依存性レポーター遺伝子からの転写をさらに増加することができる。その他の先に同定されたMAPKキナーゼキナーゼとして、c-Raf、Mos、MEKK1、B-Raf、TAK1、A-Raf、Tpl-2、MEKK2、MUK、SPRK、MAPKKK5、MEKK4、MSTなどが挙げられる。本明細書において開示されるヒトRCキナーゼは、さらに上記シグナル伝達に関与する可能性がある。したがって、その活性の調節を用いることで、上記シグナル伝達が不完全、又は無調節である障害が治療できる。
RCキナーゼの発現プロファイリングによって、それが肺や気管において高度に発現され、活性化したB細胞内や他の白血球内における発現が認められうることが示された。例えばジーンバンク受入番号BU676900、BG484791、CA311871、BQ045211、BM969829などといった、ヒトRCキナーゼから発現されるESTの一部は、肺の上皮細胞、及び原発性肺嚢胞性線維症の上皮細胞においてさらに発現される。さらに、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者から得られる肺と正常な肺から得られる肺とを比較するマイクロアレイ解析によって、COPD肺においてRCキナーゼが平均4.58倍アップレギュレートされることが示された(図1)。このように、ヒトRCキナーゼは、COPDなどの肺疾患の治療において潜在的な標的であってもよいと考えられる。
COPDは、一般に気腫の混合物から生成する気道閉塞、及び慢性気管支炎に起因する末梢の気道閉塞として生理的に定義される状態である(Senior &
Shapiroの論文「肺の疾患、及び障害」(3d ed., New York, McGraw-Hill, 1998, pp. 659-681, 1998);Barnesの論文(Chest
117, 10S-14S, 2000)。気腫は、肺の空隙の異常な拡張を起こす肺胞壁の破壊を特徴とする。慢性気管支炎は、2年連続で各年3カ月間、慢性の喀痰を伴う咳を呈するものとして臨床上定義される。COPDでは、気道閉塞は通常、進行性であり、可逆性であるのは部分的にすぎない。COPDの進展にとって群を抜いて最も重要なリスク因子は喫煙であるが、この疾患は非喫煙者において発症する。
細胞内でのRCキナーゼの発現は、塩化カリウム(KC1)95 mMによって細胞を処理して細胞を高浸透圧ストレス下に置いた後に顕著に増加する。さらに、一部の細胞系は、過酸化水素(H2O2)500μmに反応してRCキナーゼの発現を上昇させるが、これは細胞を酸化ストレス下に置く処理であり、B細胞による特異的なT細胞の刺激能が損なわれると報告されている。高浸透性、及び酸化ストレスに反応する細胞系におけるRCキナーゼの上記アップレギュレーションは、COPD患者の肺におけるRCキナーゼのより高度な発現が喫煙における刺激物質によって誘発される細胞ストレス、又はこれらの刺激物質に対する炎症性応答によって誘発されるストレスの結果である可能性があることを示す。
気道の慢性炎症は、COPDの主要な病的な特徴である(Senior & Shapiro, 1998)。炎症性細胞集団は、マクロファージ、好中球、CD8リンパ球などの数の上昇を包含する。タバコの煙などの吸入された刺激物質は、気道における常在性のマクロファージとともに、ケモカイン(例えばインターロイキン-8)や他の化学走化性因子の放出を招く上皮細胞を活性化する。これらの化学走化性因子は、血液由来の好中球、単球、リンパ球などの肺組織や気道内への往来を増加させるように作用する。気道内に動員されるCD8リンパ球は、タバコの煙などの吸入された化学物質によって改変されているタンパク質を認識し、かかる改変されたタンパク質を発現させる細胞のアポトーシスを誘発することができる。さらに、リンパ球が炎症伝達物質を放出することで、他の白血球が肺に動員できる。リンパ球によって殺されたアポトーシス細胞は、タンパク質分解酵素をさらに放出できる。気道内に動員された好中球、及び単球は、タンパク質分解酵素や反応性酸素種などの種々の障害性を秘めた伝達物質を放出できる。十分に研究がなされていないが、気道閉塞を有する喫煙者の肺において、特に気道外膜において発生するリンパ結節内部でB細胞の数の増加が認められている(Bosken,
CHらの論文、(Am Rev Respir Dis., 145 (4 Pt 1): 911-7, 1992))。B細胞は、COPD患者の肺において抗原提示、炎症性サイトカインの産生、ならびに免疫応答を標的化し、促進し、かつ維持するIgEやIgAなどの抗体の産生において役割を担う場合がある。気道壁の肥厚、界面活性機能の障害、粘液などの分泌過多とともにマトリックス分解、及び気腫のすべては、気道やガス交換の障害を招くこの炎症性応答の続発症である可能性がある。
RCキナーゼは、MAPキナーゼキナーゼMKK4や、程度は低下するがMAPキナーゼキナーゼMKK6に対するリン酸化能を有することは、RCキナーゼが1種、又は複数種のMAPキナーゼのシグナル伝達系における上流の活性化因子であることを示す。上記のように、MAPキナーゼシグナル伝達系の活性化は、細胞増殖、分化、環境ストレスへの適応、サイトカイン産生、アポトーシスなどを含む細胞に対する多大な影響力を有する。多くの場合、MKK4の活性化によって、JNK型MAPキナーゼのリン酸化を招くことが判明しており、同様にAP-1転写因子複合体の成分であるc-Junが活性化できる。JNK型MAPキナーゼは、NFAT転写因子を阻害することでも知られている。さらに、JNK型MAPキナーゼのリン酸化を招くシグナル伝達系の開始物質であるMEKK1などの他のMAPKキナーゼキナーゼは、転写因子NFκBを活性化できることが判明している。このことは、同転写因子がこれら伝達系の下流の標的でもあることを意味している。他方、MKK6の活性化によって、免疫応答の活性化において重要であることが知られ、かつ炎症性サイトカインの発現における主要な調節物質であるp38型MAPキナーゼのリン酸化が引き起こされる。
RCキナーゼは、細胞ストレスによってアップレギュレートされ、かつ活性化される可能性があるようであり、MKK4(及び程度は低下するがMKK6)をリン酸化することで、転写因子であるAP-1、及びNFκBの活性化が起こる。このシグナル伝達系が活性化される結果、インターロイキン-8の産生は増加され、COPDの病理上の役割を担う好中球などの炎症性細胞の動員を招く。細胞ストレスの発生、転写因子であるAP-1、及びNFDBの活性化、及びインターロイキン-8の過剰産生は、多数の炎症性疾患の特徴を示し、それらの多くはRCキナーゼの調節を介して治療、又は予防が行われる場合がある。上記の疾患として、喘息;アレルギー性鼻炎;アトピー性皮膚炎;じんましん;結膜炎;春季カタル;慢性関節リウマチ;全身性エリテマトーデス;乾癬;腐食性(diabrotic)大腸炎;全身性炎症反応症候群(SIRS);敗血症;多発性筋炎;皮膚筋炎(DM);結節性多発動脈炎(Polyaritis
nodoa)(PN);混合結合組織病(MCTD);シェーグレン症候群;痛風などが挙げられる。
ヒトRCキナーゼEST、例えばジーンバンク受入番号BI832332、BX090530、N47620、N57475などは、正常な脳髄質、及び中枢神経系における多発性硬化症病変においてさらに発現される。したがって、ヒトRCキナーゼは、多発性硬化症をはじめとする中枢神経系障害の治療にとって潜在的な標的となりうる。
ヒトRCキナーゼEST、例えばジーンバンク受入番号AI683447は、高分化型子宮内膜腺癌においてさらに発現される。したがって、ヒトRCキナーゼは、癌治療にとって潜在的な標的となりうる。癌は、基本的に発癌性細胞形質転換によって引き起こされる疾患である。形質転換細胞をそれに対応する正常細胞と区別し、かつ癌の病態生理にとって基盤となる形質転換細胞にはいくつかの特質がある。これらの特質として、制御されない細胞増殖、正常な死を誘発するシグナルに対する非応答性(不死化)、増加した細胞運動性、及び侵襲性、新規の血管形成(血管新生)の誘発を介する血液供給に対する増加した動員能、遺伝的不安定性、無調節な遺伝子発現などが挙げられる。これらの異常な生理の様々な組合せにより、薬物-耐性の獲得とともに最終的に器官の不全や患者の死が続発する難治性疾患の状態が引き起こされることが多い。
大半の標準的癌治療は、それらの有効性を発揮するために、細胞増殖を標的とし、形質転換細胞と正常細胞の間の分化増殖能力に依存している。このアプローチは、数種の重要な正常細胞型が高度な増幅性も有し、かつ癌細胞がこれらの作用物質に頻繁に耐性を示すようになるという事実によって阻止される。したがって、伝統的な抗癌治療に対する治療指数が2.0を超えることはまれである。
ゲノミクス主導の分子標的同定が登場したことにより、癌患者に対してより安全でより有効な治療の提供を約束する治療的介入を目的とした、新規の癌に特異的な標的を同定する可能性が開かれている。したがって、新たに発見された腫瘍に関連する遺伝子、及びそれらの産物は、疾患におけるそれらの役割に対して試験可能で、革新的な治療法を発見して開発するための道具として利用できる。先に概説した生理的過程のいずれかにおいて重要な役割を担う遺伝子は、癌の標的として特徴抽出できる。
ゲノミクスを介して同定された遺伝子、又は遺伝子断片を1種、又は複数種の異種の発現系において発現させることで、機能性組み換えタンパク質が容易に産生できる。これらのタンパク質を、それらの生化学的特性に対してin
vitroにおいて特徴付け、そしてハイスループットな分子スクリーニングプログラムにおけるツールとして使用することで、それらの生化学的活性の化学調節物質が同定される。標的タンパク質活性の作動薬、及び/又は拮抗薬は、この方法で同定でき、ひいては抗癌活性を目的とした細胞モデル、及びin
vivoにおける疾患モデルにおいて試験可能である。生物モデルにおける反復試験によるリード化合物の最適化ならびに詳細な薬物動態分析、及び毒性分析は、薬剤開発やそれに続くヒトにおける試験のための基盤を形成する。
本発明は、上記のスクリーニングアッセイによって同定された新規作用物質の使用とさらに関連する。したがって、適切な動物モデルにおいて本明細書で記載のように同定された試験化合物を用いることは本発明の範囲内である。例えば、本明細書で記載のように同定された作用物質(例えば、調節物質、アンチセンス核酸分子、特異的抗体、リボザイム、又はポリペプチド結合パートナー)を動物モデルにおいて用いることで、かかる作用物質による治療における有効性、毒性、又は副作用が決定できる。あるいは、本明細書で記載のように同定された作用物質を動物モデルにおいて用いることで、かかる作用物質の作用機序が決定できる。さらに、本発明は、本明細書に記載の治療に対する上記スクリーニングアッセイによって同定された新規の作用物質の使用に関連する。
RCキナーゼ活性に影響を与える試薬をin vitroもしくはin vivoにおいてヒト細胞に投与することで、RCキナーゼ活性の低下が可能である。好ましくは、試薬はヒトRCキナーゼ遺伝子の発現産物に結合する。発現産物がポリペプチドである場合、試薬は好ましくは抗体である。ヒト細胞のex
vivoにおける治療のために、抗体は、身体から取り出された幹細胞の調製物に添加できる。次いで細胞は、当分野に技術者に既知のようにクローン増殖の有無にかかわらず、同一もしくは別の人体において置き換え可能である。
1つの実施態様では、試薬はリポソームを用いて送達される。好ましくは、リポソームは、少なくとも約30分間、より好ましくは少なくとも約1時間、そしてさらにより好ましくは少なくとも約24時間、投与されている動物内で安定である。リポソームは、ヒトなどの動物における特定の部位に対して試薬、特にポリヌクレオチドを標的化できる脂質組成物を含む。好ましくは、リポソームの脂質組成物は、肺もしくは肝臓などの動物の特異的器官に対して標的化できる。
本発明において有用なリポソームは、標的細胞の原形質膜と融合することでその含有物を同細胞に送達できる脂質組成物を含む。好ましくは、リポソームのトランスフェクション効率は、約10個の細胞に送達される16
nmolのリポソーム当たり約0.5μgのDNA、より好ましくは約10個の細胞に送達される16 nmolのリポソーム当たり約1.0μgのDNA、そしてさらにより好ましくは約10個の細胞に送達される16
nmolのリポソーム当たり約2.0μgのDNAである。好ましくは、リポソームの直径は、約100から500 nmの間、より好ましくは約150から450 nmの間、そしてさらにより好ましくは約200から400
nmの間である。
本発明における使用に適するリポソームとして、例えば、当分野の技術者に既知の遺伝子送達方法において標準的に用いられるリポソームが挙げられる。より好ましいリポソームとして、ポリ陽イオンの脂質組成物を有するリポソーム、及び/又はポリエチレングリコールに結合されるコレステロール骨格を有するリポソームが挙げられる。場合によって、リポソームは、リポソームの外表面上に暴露される腫瘍細胞リガンドなどの腫瘍細胞に対してリポソームを標的化できる化合物を含む。
リポソームとアンチセンスオリゴヌクレオチド、又はリボザイムなどの試薬との複合体形成は、当該技術において標準である方法を用いて達成できる(例えば米国特許第5705151号を参照)。好ましくは、約0.1μgから10μgのポリヌクレオチドは、約8
nmolのリポソームと結合され、より好ましくは約0.5μgから約5μgのポリヌクレオチドが約8 nmolのリポソームと結合され、さらにより好ましくは約1.0μgのポリヌクレオチドが約8
nmolのリポソームと結合される。
別の実施態様では、抗体は、受容体が介在する標的化された送達を用いてin vivoで特異的な組織に送達できる。受容体に介在するDNA送達技術は、例えば、Findeisらの論文、「バイオテクノロジーにおける動向11」(202-05
(1993));Chiouらの論文、「遺伝子治療学:直接遺伝子導入の方法、及び応用」((J. A. Wolff, ed.) (1994));Wu &
Wuの論文、(J. Biol. Chem. 263, 621-24 (1988));Wuらの論文、(J. Biol. Chem. 269, 542-46
(1994));Zenkeらの論文、(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 87, 3655-59 (1990));Wuらの論文、(J.
Biol. Chem. 266, 338-42 (1991))に教示されている。
試薬が一本鎖抗体である場合、トランスフェリン-ポリカチオンが介在するDNA導入、ネイキッド、又はカプセル化された核酸によるトランスフェクション、リポソームが介在する細胞融合、DNAがコーティングされたラテックスビーズの細胞内輸送、原形質融合、ウイルス感染、エレクトロポレーション、「遺伝子銃」、及びDEAEもしくはリン酸化カルシウムが介在するトランスフェクションを含むがこれらに限定されない、十分に確立した技術を用いてex
vivoかもしくはin vivoにおいて、抗体をコードするポリヌクレオチドが構成でき、細胞内に導入できる。
(治療有効量の決定)
治療有効量は、当分野の技術者の能力の範囲内で十分に決定される。治療有効量の不在下の場合と比較して、治療有効量といえば細胞外マトリックスの分解を増減させる活性成分量が着目される。
細胞培養アッセイであっても通常のマウス、ウサギ、イヌ、ブタのいずれかといった動物モデルであっても、任意の化合物における治療有効量は最初から推定できる。動物モデルも用いることで、適切な濃度範囲、及び投与経路が決定できる。次いで上記の情報を用いることで、ヒトへの投与における有効な用量、及び経路が決定できる。
例えばED50(集団の50%における治療有効量)、及びLD50(集団の50%における致死量)といった治療的有効性、及び毒性は、細胞培養、又は実験動物における標準医薬処置によって決定できる。毒性の治療効果に対する用量比率は治療指数であり、それはLD50/ED50の比率として表現できる。
大きな治療指数を示す医薬組成物が好ましい。細胞培養アッセイ、及び動物試験から得られるデータは、ヒト用の用量範囲を製剤する際に用いられる。上記組成物に含有される用量は、好ましくは毒性がほとんどないかまったくないED50を含む循環濃度の範囲内にある。同用量は、用いられる剤形、患者の感受性、投与経路などに依存して同範囲内で変化する。
正確な用量は、治療を要する被験者に関する要素を参照すると、担当医によって決定されるであろう。用量、及び投与を調節することで、十分な濃度の活性成分が提供される、又は所望の効果が維持される。考慮可能な要素として、疾患状態の重症度、被験者における全身の健康状態、患者の年齢、体重、性別、食生活、投与の時間、及び頻度、併用薬(1種、又は複数種)、反応感受性、治療への耐性/反応性などが挙げられる。長期作用型医薬組成物は、特定製剤の半減期、及びクリアランス速度に依存し、3日から4日ごと、1週間ごと、又は2週間ごとに1回、投与できる。
正常な用量は、0.1から100,000μgの間で変化し、投与経路に応じて総用量が最大で約1μgになりうる。特定の用量、及び送達方法に関する手引きは、文献において提供され、一般に当分野の担当医には入手可能である。当分野の技術者に、タンパク質もしくはこれらの阻害薬に対するというよりはヌクレオチドに対する種々の製剤が利用されるであろう。同様に、ポリヌクレオチド、又はポリペプチドの送達は、特定の細胞、条件、位置などに特異的になるであろう。
抗体のin vivoにおける用量は、患者の体重に対して約5μgから約50μg/kg、約50μgから約5 mg/kg、約100μgから約500μg/kg、及び患者の体重に対して約200から約250μg/kgの範囲において有効である。一本鎖抗体をコードするポリヌクレオチドの投与において有効なin
vivoにおける用量は、約100 ngから約200 ng、500 ngから約50 mg、約1μgから約2 mg、約5μgから約500μg、約20μgから約100μgのDNA範囲である。
発現産物がmRNAである場合、試薬は好ましくはアンチセンスオリゴヌクレオチド、又はリボザイムである。アンチセンスオリゴヌクレオチド、又はリボザイムを発現するポリヌクレオチドは、上記のような様々な方法によって細胞への導入が可能である。
好ましくは、試薬は、試薬が存在しない場合と比較して、少なくとも約10%、好ましくは約50%、より好ましくは約75%、90%、100%のいずれかに見合う分、RCキナーゼポリヌクレオチドの発現、又はRCキナーゼポリペプチドの活性を低下させる。RCキナーゼポリヌクレオチドの発現レベル、又はRCキナーゼポリペプチドの活性を低下させるのに選択された機序の有効性は、RCキナーゼに特異的なmRNAに対するヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーション、定量的RT-PCR、RCキナーゼポリペプチドの免疫学的検出、又はRCキナーゼ活性の測定などの当分野の技術者に周知の方法を用いて評価できる。
上記の実施態様のいずれかにおいて、本発明の医薬組成物のいずれかは、他の適切な治療薬と併用して投与できる。併用療法における利用に適する作用物質の選択は、従来の薬学基準によると一般的な当該技術によって実施できる。治療薬の併用を相乗的に作用させることによって、上記の様々な障害における治療、又は予防を有効にできる。このアプローチを用いることで、各薬物の用量を低減しても治療上の有効性が得られ、有害な副作用の潜在力が低下する可能性がある。
上記の治療方法のいずれかは、上記の治療を必要とする、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ウサギ、サル、最も好ましくはヒトなどの哺乳類を含む任意の被験者に適用できる。
上記の開示は一般に本発明について記載し、本開示において列挙したすべての特許、及び出願特許は、本明細書において明確に援用される。例示目的のみで提供され、かつ本発明の範囲を限定することを意図するものではない、以下の特定の実施例を参照することによってより完全な理解を得ることができる。
(実施例1)
(RCキナーゼ活性の検出)
FLAGタグ付きRCキナーゼポリペプチドの高レベルの発現のために、トランスフェクション試薬Polyfect(Qiagen)を用いてHEK293細胞を発現ベクターpcDNA3.1-RCキナーゼポリペプチド(FLAGエピトープ配列をそのアミノ末端に有するIDNO:1のDNA配列の発現)によってトランスフェクトした。感染の48時間後に細胞を採取し、50
mM トリス、pH 7.4、150 mM NaCI、1 mM EDTA、1% TrironX、1 mM NAF、1 mM Na3VO4、及びプロテイナーゼ阻害剤カクテル(Roche)の中に溶解した。次いで抗FLAG抗体を用いてRCキナーゼポリペプチドを溶解物から免疫沈降させた。50
mMのトリス-HCI、pH 8.0、50 mMのNaCI、5 mMのMgCl2、1 mMのジチオトレイトールの中で免疫沈降させたFLAG-RCキナーゼポリペプチドとともに、40μlの容量でin
vitroにおけるキナーゼアッセイを実施した。5μCiの(-32P)ATPで補給された1 mMのATPを4μl添加することによって反応を開始し、37℃で30分間インキュベートした。その後、試料をSDS-PAGEに施し、リン酸化タンパク質をオートラジオグラフィーによって検出した。ヒストンH1、ミエリン塩基性タンパク質であるMEK2、MKK4、及びMKK6を基質として試験した。配列番号7のアミノ酸配列を有するポリペプチドは、RCキナーゼ活性を有し、特異的に他のRCキナーゼポリペプチドであるMKK4、及びMKK6のリン酸化能を有することが示された(図8)。
(実施例2)
(RCキナーゼポリペプチドに結合する試験化合物の同定)
グルタチオン-S-トランスフェラーゼタンパク質を含有し、かつグルタチオンが誘導化された96ウェルマイクロタイタープレートのウェル上に吸収された精製されたRCキナーゼポリペプチドを生理緩衝溶液中でpH
7.0で小分子ライブラリー由来の試験化合物と接触させる。RCキナーゼポリペプチドは、配列番号2、5、6、7のいずれかに示されるアミノ酸配列を含む。試験化合物は蛍光タグを含む。試料を5分から1時間にかけてインキュベートする。試験化合物の不在下で参照試料をインキュベートする。
試験化合物を含有する緩衝溶液をウェルから洗浄する。RCキナーゼポリペプチドに対する試験化合物の結合をウェルの含量の蛍光測定によって検出する。試験化合物をインキュベートしていないウェルの蛍光に比較してウェル中の蛍光を少なくとも15%増加させる試験化合物をRCキナーゼポリペプチドに結合する化合物として同定する。
(実施例3)
(RCキナーゼ活性を低下させる試験化合物の同定)
実施例1に記載のように精製されたRCキナーゼポリペプチドを小分子ライブラリー由来の試験化合物と接触させ、そして実施例1で述べた基質、又はRCキナーゼの他の基質のいずれかを用いてRCキナーゼ活性に対してアッセイする。参照として試験化合物の不在下でRCキナーゼポリペプチドのアッセイをさらに実施する。実施例1に記載されるように、又はTrostらの論文、(J.
Biol. Chem. 275, 7373-77, 2000);Hayashiらの論文、(Biochem. Bioplzys. Res. Commun.
264, 449-56, 1999);Masureらの論文、(Eur. J. Biochem. 265, 353-60, 1999);Mukhopadhyayらの論文、(J.
Bacteriol. 181, 6615-22, 1999)に教示されるように、キナーゼ活性を測定する。
あるいは、下流効果を測定する、例えばRCキナーゼを発現する細胞内でのNFκBもしくはAP-1のレポーター遺伝子活性をアッセイする、又はRCキナーゼを発現する細胞によるインターロイキン-8の産生をアッセイすることによってRCキナーゼ活性が間接的に測定できる。例えば、MercuryTM
Pathway Profiling Luciferase System 2(CLONTECH)レポーター遺伝子、ならびにRCキナーゼ発現ベクターは、細胞にトランスフェクトすることによって使用できる。トランスフェクトされた細胞内のAP-1もしくはNFκBレポーター、及びRCキナーゼの存在下で強いルシフェラーゼ活性を呈するため、これらの細胞は、化合物がそのレポーター活性の間接的な測定によってRCキナーゼを阻害するか否か、その有効性を監視できる。RCキナーゼ発現細胞を小分子ライブラリー由来の試験化合物に接触させ、インターロイキン-8の産生に対してアッセイすることによって、さらにRCキナーゼ活性が間接的に監視できる。参照として、アッセイ化合物の不在下で同じアッセイを実施した。
RCキナーゼ活性を対照と比較して少なくとも20%低下させる試験化合物は、RCキナーゼ阻害剤として同定される。
(実施例4)
(RCキナーゼ遺伝子の発現を低下させる試験化合物の同定)
RCキナーゼを発現する発現構築物でトランスフェクトされた培養細胞に試験化合物を投与し、37℃で10から45分間インキュベートする。試験化合物の不在下で同じ時間インキュベートされた同種の培養細胞は、負の制御をもたらす。
Chirgwinらの論文、(Biochem. 18, 5294-99, 1979)に記載されたRNAを2種の培養物から単離する。20から30μgの全RNAを用いてノーザンブロットを準備し、かつ32Pで標識されたRCキナーゼに特異的なプローブとともにExpress-hyb(CLONTECH)中で65℃でハイブリダイズする。プローブは、配列番号1、2、3、4、5、6のいずれかの相補体から選択された少なくとも11個の隣接ヌクレオチドを含む。試験化合物の不在下で得られたシグナルと比較して、RCキナーゼに特異的なシグナルを低下させる試験化合物は、RCキナーゼ遺伝子発現の阻害剤として同定される。
(実施例5)
(RCキナーゼ遺伝子産物に特異的に結合する試薬による慢性閉塞性肺疾患の治療)
ホスホロアミダイト法(Uhlmannらの論文、(Chem. Rev. 90, 534-83, 1990))を用いたPharmacia Gene
Assemblerシリーズシンセサイザ上で、配列番号1、2、3、4、5、6のいずれかの相補体から選択された少なくとも11個の隣接ヌクレオチドを含むアンチセンスRCキナーゼオリゴヌクレオチドの合成を実施する。アセンブリ、及び脱保護の後に、オリゴヌクレオチドを2回エタノール沈殿し、乾燥し、そして所望の濃度でリン酸塩で緩衝食塩水(PBS)中で懸濁する。これらのオリゴヌクレオチドの純度をキャピラリーゲル電気泳動、及びイオン交換HPLCによって試験する。Limulus
Amebocyte Assay(Bang, Biol. Bull. (Woods Hole, Mass.) 105, 361-362, 1953)を用いてオリゴヌクレオチド調製物中のエンドトクシン濃度を決定する。
慢性閉塞性肺疾患患者に対し、アンチセンスオリゴヌクレオチドを含有する水性組成物を0.1〜100μMの濃度で気管支内に投与する。疾患の重症度は、RCキナーゼ活性の低下に起因して緩和される。
(実施例6)
(マイクロアレイ解析によって検出されるRCキナーゼの疾患特異的な発現)
(標的調製)
4名の健常な個人、及び慢性閉塞性肺疾患と診断された3名の個人(Analytical Biological Services Inc. Wilmington,
DE, USA)から採取した凍結された肺組織由来のヒト全RNAをTrizol(商標)(InvitrogenCorp., Carlsbad, CA, USA)を用いて調製した。細菌制御mRNA(2.5pg/μl
AraB/entF、8.33pg/μl fixB/gnd、及び25pg/μl hisB/leuB)、及び1.0μlの0.5pモル/μl T7-(dT)24オリゴヌクレオチドプライマーを含有する最終容量12μl中の反応混合物に全RNAから各5μgずつを添加した。混合物を70℃で10分間インキュベートし、氷上で冷却した。氷上に維持した混合物とともに4μlの5×第1鎖用バッファー、2μlの0.1
M DTT、1μlの10 mM dNTP混合物、及び1μlのSuperscript(商標)IIRNアーゼH-逆転写酵素(200U/μl)を添加して最終容量20μlを調製し、混合物を42℃の水槽内で1時間インキュベートした。30μlの5×第2鎖用バッファー、3μlの10
mM dNTP混合物、4μlの大腸菌(Escherichia coli)DNAポリメラーゼI(10U/μl)、及び1μlのRNアーゼH(2U/μl)を含有する混合物内、最終容量150μl中で、16℃で2時間にわたり二本鎖cDNAを合成した。Qiagen
QIAquick精製キットを用いてcDNAを精製し、乾燥し、そして3.0μlのヌクレアーゼを含まない水、4.0μlの10倍反応用緩衝液、4.0μlの75 mM
ATP、4.0μlの75 mM GTP、3.0μlの75 mM CTP、3.0μlの75mM UTP、7.5μlの10 mMビオチン11-CTP、7.5μlの10
mMビオチン11-UTP(PerkinElmer Life Sciences Inc. Boston, MA, USA)、及び4.0μlの酵素混合物を含有するIVT反応混合物中で再懸濁した。反応混合物を37℃で14時間インキュベートし、RNeasy(登録商標)キット(Qiagen)を用いてcRNA標的を精製した。260
nmでUV吸光度を測定することによってcRNA収量を定量し、40 mMのトリス-酢酸塩(TrisOAc)pH 7.9、100 mMのKOAc、及び31.5
mMのMgOAc中で94℃で20分間にわたり断片化した。これにより、典型的には100から200塩基の大きさの範囲を有する断片化された標的が生成する。
(アレイハイブリダイゼーション)
78μlのAmershamHyb緩衝液成分A、及び130μlのAmershamHyb緩衝液成分Bを含有する260μlのハイブリダイゼーション溶液中で各UniSet
Human I Expression Bioarrayチップ(AmershamBiosciences)のハイブリダイゼーション用に10μgの断片化された標的cRNAを用いた。cRNAを変性させるために、90℃で5分間ハイブリダイゼーション溶液を加熱し、氷上で冷却した。試料を最大速度で5秒間ボルテックスし、ハイブリダイゼーションチャンバーの入口内に250μlを注入した。ハイブリダイゼーションチャンバーを擦り合わせし、スライドをISF-4-W振とう培養機(Kuhner,
Birsfelden, Switzerland)内に導入した。300 r.p.m.で振動させながら、スライドを37℃で24時間インキュベートした。
(ストレプトアビジン-Cy5を用いたハイブリダイゼーション後の処理)
スライドをISF-4-Wシェーカーから取り出し、ハイブリダイゼーションチャンバーを各スライドから取り出した。各スライドをTNT緩衝液(0.1 M トリス-HCl
pH 7.6、0.15 M NaCl、0.05% Tween-20)中で室温ですすぎ、次いでTNT緩衝液中で42℃で60分間洗浄した。ストレプトアビジン-Cy5(AmershamBiosciences)の1:500希釈を用いて、室温で30分間シグナルを生成させた。TNT緩衝液を用いて室温で4回、各回5分間洗浄することにより、余分な色素を除去した。0.05%のTween-20中でスライドをすすぎ、窒素ガス下で乾燥させた。レーザーを635
nmに、光電子増倍管(PMT)電圧を600に、そして走査解像度を10μmに設定したAxon GenePix 4000B Scannerを用い、処理されたスライドをスキャンした。Axon
GenePixPro v4.0 Scanning Software(AmershamBiosciences)によって画像を取得し、CodeLink(商標)Expression
Analysis Software(AmershamBiosciences)を用いて解析した。
(データ解析)
CodeLink(商標)Expression Analysis Software(AmershamBiosciences)は、Microsoft Excelでフォーマットされたスプレッドシートとして各スポットされたドットに対して自動的にシグナルデータを生成する。次いでコンピュータプログラムSpotfire
Decision Site 7.0(Spotfire Japan K.K., Tokyo, Japan)を用いてデータを比較し、正常、及びCOPDの肺における各遺伝子間の倍数差を測定した。この解析の結果、RCキナーゼ遺伝子の転写が正常な肺よりもCOPDの場合においてより高度に発現されることを認めた(図1、2)。
(実施例7)
(RCキナーゼの組織特異的な発現)
様々な組織におけるRCキナーゼの量的発現パターンを逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によって決定する。
RCキナーゼがCOPDの疾患過程に関与することを実証するために、発現プロファイリング:Human Total RNA Panel I-V(Clontech
Laboratories, Palo Alto, CA, USA)、正常ヒト肺一次細胞系(BioWhittaker Clonetics,
Walkersville, MD, USA)、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)(Kurabo, Osaka, Japan)、数種の共通の細胞系(ATCC,
Washington, DC)、及び末梢血から精製された様々な細胞における供給源から得た25μgの全RNAを一本鎖cDNAの合成に反応する鋳型として用いた。製造業者のプロトコルに準じ、オリゴ(dT)(Nippon
Gene Research Laboratories, Sendai, Japan)、及びRT-PCR用SUPERSCRIPT(商標)First-Strand
Synthesis System(Life Technologies, Rockville, MD)を用いて、一本鎖cDNAを合成した。次いでこれらの試料において、合成された一本鎖cDNAの1/1250thを定量的PCRに対する鋳型として用いた。合成済みのcDNA(Human
Immune System MTC Panel、及びHuman Blood Fractions MTC Panel、Clontech Laboratories)として追加的に試料を購入し、これらにおいては10μgのcDNAを定量的PCRに対する鋳型として用いた。
DNA結合性蛍光色素SYBR Green Iの存在下でオリゴヌクレオチドプライマー5’-AATGGCACCCACAGTGACATGCTT-3’(配列番号13)、及び5’-CCCTCGGTGTGCTCCGATGTAAAA-3’(配列番号14)を用いてLightCycler(Roche
Molecular Biochemicals, Indianapolis, IN)内で定量的PCRを実施した。次いで標準曲線に適合させることによって結果を鋳型cDNAのng当たりの遺伝子転写のコピー数に変換した。標的遺伝子から予め増幅された既知の濃度のPCR産物上で定量的PCR反応を同時に実施することによって標準曲線を導出した。
様々な組織型における細胞当たりのmRNA転写レベルの差異を補正するために、5種の異なるハウスキーピング遺伝子:グリセルアルデヒド-3-ホスファターゼ(GAPDH)、ヒポキサンチングアニンホスフォリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、βアクチン、ポルフォビリノーゲンデアミナーゼ(PBGD)、及びβ-2-低分子グロブリンに関して同様に計算された発現レベルを用いて規格化方法を実施した。ハウスキーピング遺伝子発現のレベルは、すべての組織に対して比較的一定であると考えられ(Adamsら,
1993、Adamsら, 1995、Liewら, 1994)、故にcDNA鋳型のng当たりの細胞のおおよその相対数に対する基準として利用できる。LightCycler、及び一定量(25
ug)の開始RNAを用いて遺伝子ごとの3つの別々の反応においてすべての組織試料における5種のハウスキーピング遺伝子の発現レベルを測定した。同時に反応させた既知の濃度を有する標準との比較から派生した各遺伝子に対する計算されたコピー数を記録し、すべての組織試料における遺伝子のコピー合計数のパーセンテージに変換した。各組織試料において、各遺伝子に対する合計のパーセンテージ値を計算し、標準として適宜選択された1種の組織の合計パーセンテージ値により、合計パーセンテージ値を各組織に対して分割することによって規格化係数を計算した。組織試料において特定の遺伝子の発現に対して実験によって得た値を規格化するために、取得値に試験された組織に対する規格化係数を掛けた。単一のハウスキーピング遺伝子、すなわちβ-2-低分子グロブリンに対して規格化されたヒト血液分画MTCパネル由来の組織以外の全組織に対してこの規格化方法を使用した。このことは、これらの組織における他のハウスキーピング遺伝子の発現には活性化状態に依存して幅広い変動があることに起因している。これは試験される各試料中の一本鎖cDNAの10
ng当たりのmRNAのコピー数に対する規格化値を示す。この発現プロファイリングの結果を図4、及び図5に示す。
患者の試料、及び健常者の肺試料における遺伝子の相対コピー数を測定するために、Trizol(商標)(Invitrogen Corp., Carlsvad,
CA, USA)を用いて全RNAを4名の健常な個人、及び慢性閉塞性肺疾患と診断された2名の個人(Analytical Biological Services
Inc.Wilmington, DE, USA)から得た凍結肺組織から調製した。次いで上記のようにcDNAを合成し、上記のように定量的PCRに対する鋳型として用いた。単一のハウスキーピング遺伝子GAPDHを用いて規格化を実施した。正常、及びCOPDの肺組織試料の間におけるRCキナーゼ遺伝子転写物の異なる発現レベルを図3に示す。これは試験対象の各試料中で測定されるGAPDH転写に対するRCキナーゼ転写の比率について示す。
(実施例8)
(RCキナーゼcDNAのクローニング)
公的データベース(ジーンバンク受入番号NM_025052、2022塩基長)内で利用可能なRCキナーゼのヌクレオチド配列とこの遺伝子座にマッチするESTとの間の差異に起因して、RACE(cDNA両末端の迅速な増幅)を用いて正確な完全長配列を得るための試みを行った。GeneRacer(商標)キット(Invitrogen
Corp., Carlsbad, CA, USA)を用いてこの目的のためのRACE用鋳型をヒト肺組織から合成した。次いで遺伝子に特異的なオリゴヌクレオチドプライマー5’-CCCTCGGTGTGCTCCGATGTAAAA-3’(配列番号14)、及びキットに含まれるGeneRacer5’プライマーを用いてRCキナーゼcDNAのPCR増幅を実施した。PCR増幅によって約5千塩基長の産物を産生した。これはジーンバンクデータベース内に登録された転写物よりも有意に長いことを示す。
RCキナーゼの完全長配列を増幅するために、RCキナーゼ遺伝子における予測された上流のエキソン、及び下流のエキソンの範囲内でPCRプライマーを設計した。遺伝子予測プログラムGenomeScanによって生成されたRCキナーゼのマウスオーソログを整列することによって上流のエキソンを予測し、ヒトRCキナーゼの遺伝子座とともにジーンバンク内に受入番号XM-136210で登録した。アライメント領域は、ヒト遺伝子のエキソン候補であると考えられた。遺伝子座、及びアライメントの3’末端領域の選択とともにESTのアライメントによって下流のエキソンを予測した。RCキナーゼの完全長配列の増幅に対して用いられるプライマーは、5’-TTCAAAGAAACAGCAGCTTTTGGACATT-3’(配列番号15)、及び5’-GCATCTGCAGTGGAACTGGGAAGAA-3’(配列番号16)であった。
PCR産物をpCR4-TOPO配列決定ベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA)内にクローニングし、ABI Prism Dye Terminator
Cycle Sequencing Reaction Kit(Applied Biosystems, Foster City, CA)を用いてサイクルシークエンスを実施し、さらにABIPrism377シークエンシングシステム(Applied
Biosystems)上で解析した。
(実施例9)
COPDの発症がタバコの煙に含有される刺激物質の長期にわたる反復吸入と強い相関があることから、本出願人らはRCキナーゼの発現に関する化合物を含む様々な細胞ストレスの影響を判定するための解析を行った。図6、及び7に示すように、95
mM塩化カリウム(KCl)を用いて細胞を高浸透圧ストレス下に置く処理を細胞に施した後、細胞系のHEK293、Jurkat、及びDaudiにおけるRCキナーゼの発現はかなり増加した。さらに、Jurkat細胞系(及び程度は低下するがDaudi細胞系)は、500μmの過酸化水素(H2O2)、すなわち細胞を酸化ストレス下に置き、B細胞の特異的なT細胞に対する刺激能を傷害する点が報告されている処理に反応してそのRCキナーゼの発現を増加させた。高浸透圧、及び酸化ストレスに反応した細胞系におけるRCキナーゼの上記アップレギュレーションは、COPD患者の肺におけるRCキナーゼのより高度な発現がタバコの煙中の刺激物質によって誘発される細胞ストレス、又はこれらの刺激物質に対する炎症性反応によって誘発されるストレスの結果である可能性があることを示唆している。
(実施例10)
RCキナーゼの過剰発現が転写因子に対する活性化能を有しているかどうか判定するために、本出願人らはルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイを用いて特定の転写因子の活性化を測定した。図9に示すように、RCキナーゼのトランスフェクション、及び過剰発現は、転写因子であるAP-1、及びNFκBの活性化を招く。転写因子NFATの活性化はほとんど検出できなかった。次いで本出願人らは、マイクロアレイを用いて転写因子活性化のこの結果について検討することにより、RCキナーゼが過剰発現する場合にどの遺伝子が転写の増加を示すかを解析した。その結果、ケモカインインターロイキン-8の発現はRCキナーゼでトランスフェクトされた細胞内で著しく増加することを認めた。この結果を確認するために、酵素結合免疫吸着アッセイによって、RCキナーゼ発現ベクターでトランスフェクトされた細胞由来、及び空ベクターでトランスフェクトされた細胞由来の培地内におけるインターロイキン-8の量を比較した。図10に示すように、RCキナーゼの過剰発現は、これらの細胞によるインターロイキン-8の産生において約35倍の増加を引き起こす。したがって、図11に図示するように、RCキナーゼは、細胞ストレスによってアップレギュレートされ、活性化されるものとみられ、それからMKK4(及び程度は低下するがMKK6)をリン酸化し、転写因子であるAP-1、及びNFκBの活性化を引き起こす。このシグナル伝達系の活性化の結果として、インターロイキン-8の産生が増加し、COPDの病変における役割を担う好中球などの炎症性細胞の動員を招く。
(実施例11)
RCキナーゼを発現する細胞によるインターロイキン-8産生の測定
ヒトIL-8に対するDuoset ELISA Development System(Genzyme Diagnostics, Cambridge, MA)を用い、MAXISORP
96ウェル平底プレート(Nunc, Roskilde, Denmark)を用いてRCキナーゼを発現するHEK293細胞の培地内のh-IL-8レベルを測定した。
空ベクター、又はRCキナーゼ発現ベクターを用いて実施したトランスフェクションの2日後、培地をHEK293細胞から収集した。100μlの収集された培地を希釈し、一次抗体で一晩予備コーティングしたプレートのウェルに入れ、300μlの1%
BSA-PBSとともに室温で1時間ブロッキングした。次いでプレートを室温で2時間インキュベートした。300μlのPBS-0.05% Tweenによってプレートを2回洗浄後、PBS-0.1%
BSA-0.05% Tweenによって希釈した100μlの二次抗体0.25μg/mlをウェルに添加し、プレートを室温でさらに1時間インキュベートした。次いで300μlのPBS-0.05%
Tweenによってプレートを3回洗浄した。PBS-0.1% BSA-0.05% Tweenによって希釈された100μlの検出抗体(ストレプトアビジン-HRP)0.25μg/mlを添加し、プレートを室温で1時間インキュベートした。300μlのPBS-0.05%
Tweenによってプレートを4回洗浄後、ペルオキシターゼ介在色(Sumitomo Bakelite, Tokyo, Japan)を用いてプレートを発色させ、OD
450 nmで吸光度を測定した。次いで測定された吸光度を同時に調製したIL-8の連続希釈標準液の吸光度と比較することによって、インターロイキン-8の濃度を算出した。
その結果、HEKZ93細胞内におけるRCキナーゼの過剰発現により、インターロイキン-8の産生が約35倍増加することが示された(図10)。
マイクロアレイ解析によって決定された、COPD患者由来の肺組織においてアップレギュレートされた上位20種の遺伝子について示す図である。健常な被験者由来の肺組織における平均的発現と比較した場合のこれらの遺伝子の発現増加を最右列に倍数で示す。RCキナーゼの発現は、COPDでは健常者と比べて4.58倍の増加を示し、マイクロアレイ上に示された約10,000種の遺伝子の中で18番目にランクされる。 様々な健常な肺、及びCOPDの肺の試料を用いたマイクロアレイ実験から得られたヒトRCキナーゼにおける相対発現レベルを示す図である。 健常な肺、及びCOPDの肺におけるRCキナーゼの相対発現レベルを定量的RT-PCRによって確認したものについて示す図である。マイクロアレイ解析において用いられた同じ組合せの組織に関して生成されたこの結果は、図2に示されるマイクロアレイ実験結果と十分に相関する。 様々な組織におけるヒトRCキナーゼの定量的RT-PCRの発現プロファイルを示す図である。 様々な免疫関連細胞、原発性肺細胞系、及び不死細胞系におけるヒトRCキナーゼの定量的RT-PCR発現プロファイルを示す図である。 細胞成長、又は細胞ストレスを誘発する様々な刺激による処置に応答した、HEK293細胞系でのヒトRCキナーゼの発現レベルの変化を示す図である。RCキナーゼ発現は95mMのKClによる刺激後にアップレギュレートされる。 細胞成長、又は細胞ストレスを誘発する様々な刺激による処置に応答した、Jurkat、及びDaudi細胞系でのヒトRCキナーゼの発現レベルの変化を示す図である。Jurkat、及びDaudi細胞の両方は、95mM KC1による刺激後におけるRCキナーゼ発現のアップレギュレーションを示し、Jurkat細胞は500μMのH2O2による刺激後におけるRCキナーゼ発現のアップレギュレーションを示す。 基質として試験された様々なMAPキナーゼキナーゼに対するヒトRCキナーゼのリン酸化活性を示す図である。RCキナーゼは、自己、及びMKK4をリン酸化することはできたが、MKK6に対してはわずかな活性を示したにすぎず、かつMEK2に対しては活性が検出できなかった。RCキナーゼは、RCキナーゼトランスフェクタントの溶解物の免疫沈降によって調製され、次いで基質と[33P]-ATPの混合物に添加された。リン酸化活性は、培養後のオートラジオグラフィー、及びSDS-PAGE上でのサイズ分離によって検出された。対照として、空ベクター-トランスフェクタントからの免疫沈殿物、及びRCキナーゼトランスフェクタントからの熱不活化免疫沈殿物が用いられた。 転写因子であるAP-1、及びNFκBの活性化に対するヒトRCキナーゼの誘導能を示す図である。RCキナーゼの発現ベクター、又は空ベクターを転写因子であるAP-1、NFAT、NFκB、及びTATA様プロモーターに対するルシフェラーゼレポーター遺伝子構築物と併せてHEK293細胞内にトランスフェクトした。ルシフェラーゼ活性(TATA様プロモーターのバックグラウンドルシフェラーゼ産生と比較した相対光単位(RLU)での発現量)がトランスフェクションの48時間後に測定された。 RCキナーゼ発現構築物によってトランスフェクトされたHEK293細胞におけるインターロイキン-8の産生の増加を示す図である。空ベクターかRCキナーゼ発現構築物のいずれかをトランスフェクションした48時間後に、酵素結合免疫吸着アッセイによって培地内のIL-8タンパク質濃度が測定された。 MAPキナーゼリン酸化リレー系におけるRCキナーゼの役割を示す図である。RCキナーゼは、受容体介在シグナル伝達、ストレス、マイトジェンもしくは他の刺激に応答して活性化されるか、又はその発現がかかる刺激に応答してアップレギュレートされる。その結果、MKK4、及び恐らくは他の基質は、リン酸化され、ひいては転写因子であるNFκB、及びAP-1の活性化を招く。次いで転写因子は、IL-8、及び他の炎症伝達物質の発現におけるアップレギュレーションに寄与し、炎症、及び他のCOPD関連の病変に貢献する。

Claims (26)

  1. RCキナーゼポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドであって、
    a)配列番号7、8、9、10、11、又は12で示されるアミノ酸配列と少なくとも約50%同一である各アミノ酸配列、及び配列番号7、8、9、10、11、又は12で示されるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むRCキナーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
    b)配列番号1、2、3、4、5、又は6の配列を含むポリヌクレオチド;
    c)ストリンジェントな条件下で、(a)、及び(b)で特定されるポリヌクレオチドとハイブリダイズするポリヌクレオチド;
    d)遺伝コードの縮重により、その配列が、(a)〜(c)で特定されるポリヌクレオチド配列から逸脱しているポリヌクレオチド;並びに
    e)(a)〜(d)で特定されるポリヌクレオチド配列の断片、誘導体、又は対立遺伝子変種に相当するポリヌクレオチド、からなる群から選択される、前記単離ポリヌクレオチド。
  2. 請求項1に記載のいずれかのポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
  3. 請求項2に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
  4. 請求項1に記載のポリヌクレオチドによってコードされる実質的に精製されたRCキナーゼポリペプチド。
  5. RCキナーゼポリペプチドを製造する方法であって:
    a)前記RCキナーゼポリペプチドの発現に適した条件下で請求項3に記載の宿主細胞を培養するステップ;及び
    b)前記宿主細胞培養物から前記RCキナーゼポリペプチドを回収するステップを含む、前記方法。
  6. 生体試料中でRCキナーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを検出する方法であって:
    a)請求項1に記載のいずれかのポリヌクレオチドを生体試料の核酸物質とハイブリダイズさせ、それによってハイブリダイゼーション複合体を形成するステップ;及び
    b)前記ハイブリダイゼーション複合体を検出するステップを含む、前記方法。
  7. ハイブリダイゼーションの前に、前記生体試料の核酸物質を増幅する、請求項6に記載の方法。
  8. 請求項1に記載のポリヌクレオチド、又は請求項4に記載のRCキナーゼポリペプチドを検出する方法であって:
    生体試料を、前記ポリヌクレオチド、又は前記RCキナーゼポリペプチドと特異的に相互作用する試薬と接触させるステップを含む、前記方法。
  9. 請求項6から8のいずれか一項に記載の方法を行うための診断キット。
  10. RCキナーゼの活性を低下させる作用物質をスクリーニングする方法であって:
    試験化合物を、請求項1に記載のいずれかのポリヌクレオチドによってコードされている、いずれかのRCキナーゼポリペプチドと接触させるステップと;
    前記試験化合物と前記RCキナーゼポリペプチドの結合を検出するステップとを含み、前記ポリペプチドと結合する試験化合物を、RCキナーゼの活性を低下させる潜在的な治療用作用物質として同定する、前記方法。
  11. RCキナーゼの活性を制御する作用物質をスクリーニングする方法であって:
    試験化合物を、請求項1に記載のいずれかのポリヌクレオチドによってコードされているRCキナーゼポリペプチドと接触させるステップと;
    前記ポリペプチドのRCキナーゼ活性を検出するステップとを含み、前記RCキナーゼ活性を増大させる試験化合物を、前記RCキナーゼの活性を増大させる潜在的な治療用作用物質として同定し、かつ前記ポリペプチドのRCキナーゼ活性を低下させる試験化合物を、前記RCキナーゼの活性を低下させる潜在的な治療用作用物質として同定する、前記方法。
  12. RCキナーゼの活性を制御する作用物質をスクリーニングする方法であって:
    試験化合物を、請求項1に記載のいずれかのポリヌクレオチドによってコードされるRCキナーゼポリペプチド、及びMKK4と接触させるステップと;及び
    MKK4をリン酸化する前記ポリペプチドのRCキナーゼ活性を検出するステップを含み、前記RCキナーゼ活性を増大させる試験化合物を、前記RCキナーゼの活性を増大させる潜在的な治療用作用物質として同定し、かつ前記ポリペプチドのRCキナーゼ活性を低下させる試験化合物を、前記RCキナーゼの活性を低下させる潜在的な治療用作用物質として同定する、前記方法。
  13. RCキナーゼの活性を低下させる作用物質をスクリーニングする方法であって:
    試験化合物を、請求項1に記載のいずれかのポリヌクレオチドと接触させるステップ、及び前記試験化合物と前記ポリヌクレオチドの結合を検出するステップとを含み、前記ポリヌクレオチドと結合する試験化合物を、RCキナーゼの活性を低下させる潜在的な治療用作用物質として同定する、前記方法。
  14. RCキナーゼの活性を低下させる方法であって:
    細胞を、請求項1に記載のいずれかのポリヌクレオチド、又は請求項4に記載のいずれかのRCキナーゼポリペプチドと特異的に結合する試薬と接触させるステップを含み、それによってRCキナーゼの活性を低下させる、前記方法。
  15. RCキナーゼポリペプチド、又はポリヌクレオチドの活性を調節する試薬であって、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法によって同定される、前記試薬。
  16. 請求項2に記載の発現ベクター、又は請求項14に記載の試薬、及び医薬として許容し得る担体を含む、医薬組成物。
  17. 疾患においてRCキナーゼの活性を調節するための、請求項15に記載の医薬組成物の使用。
  18. 前記疾患が慢性閉塞性肺疾患、癌、又は細胞のシグナル伝達に欠陥がある疾患である、請求項17に記載の使用。
  19. RCキナーゼ遺伝子の発現レベル、又はゲノム核酸配列の検出による、呼吸器疾患の予測、診断、又は予後診断の方法。
  20. 前記呼吸器疾患が慢性閉塞性肺疾患、癌、又は細胞のシグナル伝達に欠陥がある疾患である、請求項19に記載の方法。
  21. 前記検出の方法が、PCR、アレイ、又はビーズの使用を含む、請求項19、又は20に記載の方法。
  22. 少なくとも1種のマーカーの検出によるCOPDの予測、診断、又は予後診断の方法であって:
    a)配列番号1、2、3、4、5、又は6の配列を含むポリヌクレオチド、又はポリヌクレオチドアナログ;
    b)ストリンジェントな条件下で、(a)で特定されるポリヌクレオチドとハイブリダイズし、RCキナーゼと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、又はポリヌクレオチドアナログ;
    c)遺伝コードの縮重により、その配列が、(a)、及び(b)で特定されるポリヌクレオチドから逸脱し、RCキナーゼと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド、又はポリヌクレオチドアナログ;
    d)(a)〜(c)で特定されるポリヌクレオチド配列の特定の断片、誘導体、又は対立遺伝子変種に相当し、RCキナーゼと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、又はポリヌクレオチドアナログ;
    e)(a)〜(d)で特定されるポリヌクレオチド、又はポリヌクレオチドアナログの配列によってコードされる精製ポリペプチド;及び
    f)配列番号7、8、9、10、11、又は12の配列の少なくとも1つを含む精製ポリペプチド、から選択される少なくとも1種のマーカーを検出することを特徴とする、前記方法。
  23. 少なくとも2種のマーカーの検出によるCOPDの予測、診断、又は予後診断の方法であって:
    a)配列番号1、2、3、4、5、又は6の配列を含むポリヌクレオチド、又はポリヌクレオチドアナログ;
    b)ストリンジェントな条件下で、(a)で特定されるポリヌクレオチドとハイブリダイズし、かつRCキナーゼと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド、又はポリヌクレオチドアナログ;
    c)遺伝コードの発生により、その配列が、(a)、及び(b)で特定されるポリヌクレオチドから逸脱し、RCキナーゼと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、又はポリヌクレオチドアナログ;
    d)(a)〜(c)で特定されるポリヌクレオチド配列の特定の断片、誘導体、又は対立遺伝子変種に相当し、RCキナーゼと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、又はポリヌクレオチドアナログ;
    e)(a)〜(d)で特定されるポリヌクレオチドの配列、又はポリヌクレオチドアナログによってコードされる精製ポリペプチド;及び
    f)配列番号7、8、9、10、11、又は12の配列を含む精製ポリペプチド、から選択される少なくとも2種のマーカーを検出することを特徴とする、前記方法。
  24. 請求項19から23のいずれか一項に記載の方法を行うための診断キット。
  25. COPDの予測、診断、又は予後診断のための組成物であって:
    a)i.配列番号1、2、3、4、5、又は6の配列の少なくとも1つを含むポリヌクレオチド、又はポリヌクレオチドアナログ;
    ii.ストリンジェントな条件下で、(i)で特定されるポリヌクレオチドとハイブリダイズし、RCキナーゼと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードするいずれかのポリヌクレオチド、又はポリヌクレオチドアナログ;
    iii.遺伝コードの縮重により、その配列が、(i)、及び(ii)で特定されるポリヌクレオチドから逸脱し、RCキナーゼと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、又はポリヌクレオチドアナログ;
    iv.(i)〜(iii)で特定されるポリヌクレオチド配列の特定の断片、誘導体、又は対立遺伝子変種に相当し、RCキナーゼと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、又はポリヌクレオチドアナログ;
    v.(i)〜(iv)で特定されるポリヌクレオチド、又はポリヌクレオチドアナログの配列によってコードされるポリペプチド;及び
    vi.配列番号7、8、9、10、11、又は12の配列の少なくとも1つを含むポリペプチド、
    についての検出作用物質、あるいは
    b)i.配列番号1、2、3、4、5、又は6の配列の少なくとも1つを含むいずれかのポリヌクレオチド;
    ii.ストリンジェントな条件下で、(i)で特定されるポリヌクレオチドとハイブリダイズし、RCキナーゼと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードするいずれかのポリヌクレオチド;
    iii.遺伝コードの縮重により、その配列が、(i)、及び(ii)で特定されるポリヌクレオチドから逸脱し、RCキナーゼと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
    iv.(i)〜(iii)で特定されるポリヌクレオチド配列の特定の断片、誘導体、又は対立遺伝子変種に相当し、RCキナーゼと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
    v.(i)〜(iv)で特定されるポリヌクレオチドの配列によってコードされるポリペプチド;及び
    vi.配列番号7、8、9、10、11、又は12の配列の少なくとも1つを含むポリペプチド、から選択される少なくとも2種のマーカーについての少なくとも2種の検出作用物質を含む、前記組成物。
  26. 複数のポリヌクレオチド、又はポリヌクレオチドアナログを含むアレイであって:それぞれのポリヌクレオチドが、
    a)配列番号1の該配列の少なくとも1つを含むポリヌクレオチド、又はポリヌクレオチドアナログ;
    b)ストリンジェントな条件下で、(a)で特定されるポリヌクレオチドとハイブリダイズし、RCキナーゼと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、又はポリヌクレオチドアナログ;
    c)遺伝コードの縮重により、その配列が、(a)、及び(b)で特定されるポリヌクレオチドから逸脱し、RCキナーゼと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、又はポリヌクレオチドアナログ;及び
    d)(a)〜(c)で特定されるポリヌクレオチド配列の特定の断片、誘導体、又は対立遺伝子変種に相当し、RCキナーゼと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、又はポリヌクレオチドアナログ、から選択され、固体支持体と結合している、前記アレイ。
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