JP2007525428A - 肝細胞増殖因子アンタゴニストによるヒトのマラリア感染の防止方法 - Google Patents

肝細胞増殖因子アンタゴニストによるヒトのマラリア感染の防止方法 Download PDF

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Abstract

ヒトへのプラスモディウム寄生虫の感染の防止のための方法を提供する。この方法は、三日熱マラリア原虫の肝細胞への感染を妨げる化合物の適用を含む。

Description

本出願は2003年3月12日に出願した米国仮出願第60/453,483号(整理番号08907.6001)に基づき、その利益を主張する。その仮出願の開示全体に依拠し、開示全体は本明細書に参照により組み込まれる。
本出願は、肝細胞増殖因子受容体アンタゴニストおよび肝細胞増殖因子により誘導されるシグナルのインヒビターに関する。さらに具体的には、本出願は、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)および三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)の感染を防止するための該化合物の使用に関する。
マラリアの病因は広く研究され、多くの科学刊行物および総説に記載されている[最近の例としてMillerら、Nature 415:673〜679頁(2002)参照]。病因は熱帯熱マラリア原虫であり、より少ない程度には三日熱マラリア原虫、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)および卵形マラリア原虫(Plasmodium ovale)である。マラリアによる死はほぼ専ら熱帯熱マラリア原虫により生じる。これらの原虫は、優先的にヒトから栄養を摂る、寿命の長い媒介動物アノフェレス・ガンビェ(Anopheles gambiae)により伝播する。このカが刺すとスポロゾイトが皮膚内部に注入される。スポロゾイトは肝臓に移動し、そこで数個の肝細胞を通過した後で感染が成立し分裂する。スポロゾイト1個は数万のメロゾイトに発達し、メロゾイトは肝臓から放出され赤血球に侵入する。熱帯熱マラリア原虫および三日熱マラリア原虫は赤血球内で無性増殖する。2日間で1個のメロゾイトから約20個のメロゾイトが生じる。赤血球は破裂しメロゾイトを放出し、そのメロゾイトが再び赤血球に侵入する。疾患は赤血球内で原虫の無性増殖と共に始まる。少数のメロゾイトは配偶子母細胞にまで発達し、配偶子母細胞は疾患を引き起こさないがメスのハマダラカ(Anopheles)を介して他の動物に感染を伝播する。三日熱マラリア原虫は肝臓からメロゾイトを放出後すぐに配偶子母細胞に発達するが、熱帯熱マラリア原虫の配偶子母細胞はずっと後に発達する。
マラリアはアジアおよび南アメリカの一定の地域、特にサハラ以南のアフリカで重大な健康問題となっている。毎年世界人口の10%近くがマラリアを患い、これは6億の臨床症例となる。最近の概算によると毎年マラリアで少なくとも百万人が死亡し、30秒に1人がマラリアで死亡していることになる[GreenwoodおよびMutabingwa、Nature 415:670〜672頁(2002)]。アフリカでは、5歳未満の小児20人に1人がマラリアで死亡している。近年マラリアの状況は悪化し、そのマラリアの負荷の増加に寄与する多くの他の要因があるが、最も重大な要因は安価で有効な薬物に耐性を示す熱帯熱マラリア原虫および三日熱マラリア原虫の変異体の出現、ならびに殺虫剤耐性のカの出現である。
本発明は、当技術分野のこれらの必要性を満たすのに役立つ。マラリアの回避性のために決定的な治療が困難となっている。マラリア感染の拡散および獲得を防止でき、そのような感染の防止および治療の補助が可能な薬剤および方法を本明細書に提示する。
さらに詳細には、本発明は、マラリアの活性をin vivoで抑制する方法であって、ヒトなどの感染した宿主の肝臓でのマラリア原虫の初期複製を防止することによって防御効果を示すことができる抗マラリア剤をヒト宿主に投与することを含む方法を提供する。その抗マラリア剤は、少なくとも1つのHGF活性インヒビター、および場合によってはプリマキンなどの抗マラリア薬を含む。in vivoでマラリアによる肝細胞の感染を防止もしくは少なくとも抑制するのに、またはin vivoでマラリア原虫の複製もしくは拡散を防止もしくは少なくとも抑制するのに十分な量の抗マラリア剤をヒトに投与する。
本発明は、ヒトの疾患であるマラリアを引き起こす原虫の成長を補助する肝細胞の能力に関する。ヒトの疾患を引き起こすプラスモディウム属原虫は熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、四日熱マラリア原虫および卵形マラリア原虫である。さらに具体的には、本発明はプラスモディウム感染の確立にMetの活性化および下流のシグナルが必須であることを明らかにしている。プラスモディウムのスポロゾイトは肝細胞に空胞を作り、その中で分裂できるようになるまでに数個の肝細胞を通過することが以前から知られている。スポロザイトの肝細胞通過が肝細胞増殖因子(HGF)と呼ばれる周知のサイトカインの産生と関連することはこれまで分かっていなかった。HGFは不活性な一本鎖タンパク質として放出されることが知られている。ジスルフィド架橋結合したヘテロ二量体を形成するタンパク質分解性切断によりHGFは活性化される。このヘテロ二量体は受容体型プロテインチロシンキナーゼMetに結合し、それを活性化する。活性化されたMetの細胞質ドメインはいくつかの異なる経路を介してシグナルを伝達する多様なタンパク質を動員する。これらのシグナルは、細胞の分散、増殖、管形成および浸潤性成長のような多様な応答をもたらす。本発明は、HGFに対する肝細胞の新規なMet媒介型応答を明らかにしている。肝細胞はHGFによってスポロゾイトによる侵入に許容性となり、それにより空胞内でのスポロゾイトの増殖が可能となる。
本発明は、プラスモディウム感染の防止のための新規方法も提供する。
好ましい実施形態では、肝細胞へのプラスモディウムの感染は損傷を有する肝細胞からのHGF産生を妨げる分子によって防止される。
HGFの活性型へのタンパク質分解性切断を妨げる分子、およびHGFを隔離することによりHGFがその受容体であるMetを介して肝細胞と結合するのを防止する分子もまた感染の防止に適している。
別の態様において、本発明はMetがマラリア感染を防止する薬物に対する標的であることを明らかにしている。
本発明の好ましい実施形態において、HGFのその受容体Metへの結合を妨げる分子によりマラリア感染は防止される。そのような分子は、Metに対するHGFの結合部位を遮断するHGFに特異的な抗体である。同様に本発明の好ましい実施形態において、そのような分子は、HGFの結合を遮断するがMetを活性化しない、Metに対する抗体またはそのような抗体のフラグメントである。本発明の別の実施形態において、そのような分子はMetと結合するがMetを活性化しないオリゴヌクレオチド(アプタマー)である。本発明のなお別の実施形態において、そのような分子はHGFによるMet活性化を妨げるHGF変異体である。そのような変異体にはNR4があるが、それに限定されない。
本発明の別の態様において、肝細胞へのプラスモディウムの感染は、活性化Metによるシグナル伝達を妨げる薬物により防止される。本発明の好ましい実施形態において、そのような薬物はプロテインチロシンインヒビターである。そのような薬物の例はゲニステインである。
別の好ましい実施形態において該薬物は、プロテインチロシンキナーゼMetの選択的インヒビターである。好ましい実施形態においてこれらのインヒビターは低分子量化合物であり、経口経路により、または坐剤として投与される。
本明細書において使用する用語「抗マラリア剤」は、1つまたは複数のHGF活性インヒビターを含む組成物を意味する。用語「HGF活性インヒビター」は、HGF受容体アンタゴニスト、HGF媒介型シグナル伝達のインヒビター、およびプロテインチロシンキナーゼインヒビターから独立して選択される1つまたは複数の化合物を意味する。HGF活性インヒビターを単独でまたは相互に組み合わせて使用できる。場合によってはHGF活性インヒビターを1つまたは複数の公知の抗マラリア薬と組み合わせて本発明の抗マラリア剤を形成してもよい。
本発明は、マラリア原虫の肝細胞への侵入に関する。ヒト宿主に対するカの刺傷による伝播後に、マラリアスポロゾイトは肝臓にたどり着き、そこで各スポロゾイトは10000個ものメロゾイトを生じることができ、これらのメロゾイトは血中に放出される。肝細胞への侵入はマラリア感染に必須の過程である。原形質膜の破壊後に細胞を原虫が移行するか、または細胞内細菌や他の寄生虫のように侵入中の病原体周辺にインターナリゼーション空胞を形成することにより、スポロゾイトは肝細胞に侵入できる。初めはスポロゾイトはインターナリゼーション空胞を形成せずに肝細胞を通過する。スポロゾイトは肝細胞の原形質膜を破ることにより肝細胞に入り、サイトゾルを横切り、宿主細胞を離れ、その宿主細胞は死滅するかまたは膜の修復に成功するかのどちらかである。肝細胞を経由するプラスモディウムの通過およびその後の寄生虫恐怖性空胞の確立の根本となる分子メカニズムはあまり分かっていない。げっ歯類マラリア原虫プラスモディウム・ベルゲイ(Plasmodium berghei)ではなくプラスモディウム・ヨエリー(Plasmodium yoelii)および熱帯熱マラリア原虫による空胞形成は、肝細胞により発現される4回膜貫通タンパク質であるCD81に依存する。CD81はC型肝炎ウイルスのる受容体であることが知られているが、スポロゾイトの表面に存在するどのリガンドとも相互作用しないと考えられる。プラスモディウムのある種による肝細胞への侵入にCD81が果たす役割はまだ解明されていない[Silvieら、Nature Medicine 9:93〜96頁(2003)]。興味深いことにスポロゾイトは寄生虫恐怖性空胞を形成することにより肝細胞に侵入する前に数個の細胞のサイトゾルを横断しなければならず、この横断は次の感染段階に分化するために不可欠である[Motaら、Science 291:440〜42頁(2001)]。この研究成果はスポロゾイトにより傷を負った肝細胞は、隣接する肝細胞を感染に対し感受性にする1つまたは複数の感染感受性誘導因子(ISIF)を放出することを示唆している。本発明の重要な態様は、肝細胞増殖因子として知られているタンパク質がマラリア感染においてISIFとして機能するという発見である。
I.HGFおよびHGF受容体Met
肝細胞増殖因子は肝細胞に対するマイトジェンとして[Michalopolousら、Cancer Res.、44:441〜4419頁(1984);Rusaselら、J. Cell Physiol.、119:183〜192頁(1984);Nakamuraら、Biochem. Biophys. Res. Comm.、122:1450〜1459頁(1984)] 、ならびに独立して上皮細胞および血管内皮細胞の解離を促進する細胞分散因子として発見された[Stockerら、Nature 327、239〜242頁(1987)]。簡便のためにこの因子をHGFと呼ぶ。HGFは肝切除されたラットの血清から最初に精製され[Nakamuraら、Biochem. Biophys. Res. Comm.、122:1450〜1459頁(1984)]、その後ラット血小板から[Nakamura らProc. Natl. Acad. Sci. USA、83:6849〜6493頁(1986)]およびヒト血漿から[Gohdaら、J. Clin. Invest. 81:414〜419頁(1988)]精製された。ラットHGF、ヒトHGFおよび「デルタ5HGF」と呼ばれる天然変異体をコードするcDNAがクローニングされた[Miyazawaら、Biochem. Biophys. Res. Commun.、163:967〜973頁(1989);Nakamuraら、Nature 342:440〜443頁(1989);Sekiら、Biochem. Biophys. Res. Commun.、172:321〜327頁(1990);Tashiroら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、87:3200〜3204頁(1990);Okajimaら、Eur. J. Biochem.、193:375〜381頁(1990)]。ヒトHGFはアミノ酸440個のαサブユニット(分子量62kDa)およびアミノ酸234個のβサブユニット(分子量34kDa)から成る。ヒトHGFは生物学的に不活性なプロHGF(728アミノ酸)として生成し、これはプロテアーゼによってArg494とVal495の間で切断されて、ジスルフィド結合したヘテロ二量体を形成する。62kDaのαサブユニットはN末端ヘアピンドメイン(約27アミノ酸)およびそれに続く4つの標準クリングルドメインを含み、クリングルドメインは3つのS−S架橋によって安定化された80アミノ酸の二重ループ構造である。第一クリングルドメインはプロテインチロシンキナーゼ受容体Metに結合するが、これについては以下にさらに詳細に記載する。ヘアピンループおよび第二クリングルドメインは低親和性で膜関連ヘパラン硫酸プロテオグリカンと結合する。34kDaのβサブユニットはセリンプロテアーゼ血液凝固因子のものと非常に類似しているがプロテアーゼ活性は有さないセリンプロテアーゼ様ドメインを含む。HGFはプラスミノーゲンと全体で38%の配列同一性およびマクロファージ刺激タンパク質(MSP)として知られている別のサイトカインと45%の配列同一性を示す。HGFはMetと呼ばれるプロテインチロシンキナーゼ受容体と結合し、一方でその近縁であるMSPはRonとして知られる別のプロテインチロシンキナーゼ受容体と結合する。
HGFは一本鎖プロHGFとして分泌される。このHGF前駆体は細胞外マトリックスまたは産生細胞に近接した細胞表面に関連するプロテオグリカンに結合している。Arg494とVal495の間のタンパク質分解性切断による一本鎖前駆体から生物学的活性ヘテロ二量体への活性化は厳密に制御された過程である[(総説にはKataokaら、Life XY 1:1036〜1042頁(2001)を参照のこと)。
HGF活性化に関係しているとされた最初の酵素はウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーター(uPA)および組織型プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)であった。その後3つの追加のHGF活性化酵素、すなわち凝固因子XIIa、マトリプターゼ(matriptase)としても知られている膜型セリンプロテアーゼ1(MT−SP1)およびHGFアクチベーター(HGFA)が同定された。これらの酵素はどれも内因性インヒビタータンパク質の制御下にある。HGFAは最も効果的なHGF切断酵素である。HGFと同様に、HGFAはArg407の後での切断により一本鎖プロHGFAから生成されるヘテロ二量体である。HGFA切断酵素の1つはトロンビンであり、トロンビンは損傷した組織において凝固カスケードを介して活性化される酵素である。活性型HGFAヘテロ二量体は主要な血清プロテイナーゼインヒビターにより阻害されず、2つのタンパク質、すなわちHGAインヒビター1型(HAI−1)およびHGAインヒビター2型(HAI−2)の制御下にあり、後者のHAI−2は胎盤ビクニン(PB)と同一である。HAI−1は損傷した組織および再生中の組織でアップレギュレートされる。HAI−1は細胞表面に発現し、そこでHGFAと結合しHGFAを抑制する。IL−1βのようなサイトカインはTNF−α変換酵素(TACE)およびADAM(ディスインテグリン及びメタロプロテイナーゼ)ファミリータンパク質であるTACE様メタロプロテイナーゼによるHGFA/HAI−1複合体の分断を誘導する。分断後に、HGFAはHAI−1から解離して、HGFを活性化できるようになる。このようにHAI−1はインヒビターであるだけでなく、細胞表面に存在する酵素の貯蔵所として作用する、成熟HGFAの特異的アクセプターでもある。HAI−1は2002年10月15日に公表された米国特許第6,465,622B2号に記載され、その特許においてHAI−1はHGFおよびHGFAの制御因子としての使用が特許請求の範囲に記載されている。
HGF受容体であるMetは発癌物質で処理された肉腫細胞系で生成される発癌融合タンパク質の構成要素として本来発見された。[Cooperら、Nature、311:29〜33頁(1984)]。正常細胞ではMetの一次転写物は150kDaのポリペプチドを生成し、これがグリコシル化され、その後に切断されてS−S結合ヘテロ二量体を形成する。HGFおよびその受容体Metは7月15日に公表された米国特許第5,648,273号の発明であり、その特許は肝炎および肝細胞発癌のような増殖性障害および疾患の診断のためのリガンド−受容体の使用を特許請求の範囲に記載している。
Metヘテロ二量体は、高度にグリコシル化され完全に細胞外に存在するβサブユニットならびに大きな細胞外領域および細胞内チロシンキナーゼドメインを有するαサブユニットから成る。Metは受容体型チロシンキナーゼ(RTK)スーパーファミリーのメンバーである。このスーパーファミリーはHerファミリー(EGFR、Her2、Her3、Her4)、インスリン受容体ファミリー(インスリン受容体、IGF−1R、インスリン関連受容体)、PDGF受容体ファミリー(PGFRaおよびPGFRb、CSF−R、kit、Flk2)、Flkファミリー(Flk−1、Flt−1、Flk−4)、FGF受容体ファミリー(FGF−R1、2、3、および4)などを含めた少なくとも19ファミリーに分けられる。Metおよびその近縁のRonは、それぞれリガンドであるHGFおよびマクロファージ刺激タンパク質(MSP)に対する別個の受容体ファミリーを形成している。
HGFの結合の際に、c−Metは特定のチロシン残基の自己リン酸化を受ける。チロシンキナーゼドメインの活性化ループ内に位置するTyr1234およびTyr1235のリン酸化がc−Metの固有キナーゼ活性を活性化する一方で、C末端にあるTyr1349およびTyr1356のリン酸化は、ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)、ホスホリパーゼC−γ(PLC−γ)、src、Stat3、Grb2およびGrb2関連ドッキングタンパク質Gab1のようなシグナル伝達タンパク質のための多基質ドッキング部位をもたらす。Grb2はアダプタータンパク質Shcを介してMetとも相互作用する。Grb2はRasヌクレオチド交換タンパク質SOSを動員し、SOSはRas−MAPKシグナル伝達経路を活性化する。このように、活性化したMet受容体にシグナル伝達物質がドッキングすると、多様な経路を介するシグナル伝達が開始される。MetのC末端のアミノ酸26個はシグナル伝達物質のためのドッキング部位を提供するだけでなく、Metの酵素活性も調節する。キナーゼドメインにおける突然変異(M1250T)はC末端アミノ酸による調節の役割を回避する[Gualら、Oncogene 20:5493〜502頁(2001)]。
HGFに対する多様な応答がMetを発現する種々の標的細胞について記載されている。これらの応答には増殖、プログラム細胞死、細胞の解離、相反、細胞外マトリックスを通過した細胞の移動、および分岐形態形成がある。胚発生の間にHGF産生間葉細胞とMet発現上皮細胞との間の相互作用が、胎盤、乳腺、肝臓、筋肉および神経組織のような多様な器官の形成に関与していると考えられる。HGF遺伝子ノックアウトマウスおよびMet遺伝子ノックアウトマウスは胎盤、肝臓および筋肉の発生に欠陥を示しE13.5から15.5の間に死亡する[(Schmidtら、Nature 373:699〜702頁(1995);Ueharaら、Nature 373:702〜705頁(1995);Bladtら、Nature 376:768〜771頁(1995))。生体では、HGF−Met相互作用は損傷治癒、血管新生、および組織再生に関与している。当然HGFによるMetの活性化は腫瘍の成長、浸潤および転移に関係するとみなされている。HGFおよびその受容体Metの生物学的特性はいくつかの総説[Maulikら、Cytokine & Growth Factor Reviews、13:41〜59頁(2002)]およびそこに参照されている数多くの刊行物に十分に記載されている。
生物学的性質に基づき、HGFおよびHGFアンタゴニストの両方が多様な疾患の治療に有用であると提案されている。HGFの製造およびその治療用途がいくつかの特許で特許請求の範囲に記載されている。HGFは、ヘパリンに対して高親和性であることに基づいて血液から単離された(1991年4月2日に公表された米国特許第5,004,805号)。HGFのPEG化はクリアランスを延長し、必要な用量を減らし、HGF療法の副作用を軽減すると考えられている(1999年11月2日に公表された米国特許第5,977,310号)。ヘパリン、ヒアルロン酸、デキストラン、デキストラン硫酸、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、コンドロイチン、またはコンドロイチン硫酸のようなHGF分解を阻害する多糖によりHGFレベルを増加させることができる(1998年4月17日に公表された米国特許第5,736,506号)。HGF活性化プロテアーゼも特許請求の範囲に記載されている(1997年10月14日に公表された米国特許第5,677,164号)。HGF療法の適用には動脈閉塞性疾患の治療(2000年10月17日に公表された米国特許第6,133,231号)、炎症性腸疾患の治療(2001年11月20日に公表された米国特許第6,319,899B1号)、例えば血管手術または血管形成術により外傷または損傷を受けた血管の表面再形成の増強(2000年10月17日に公表された米国特許第6,133,234号)がある。HGFは通常使用されている免疫抑制剤により生じる副作用を軽減するためにも特許請求の範囲に記載されている(1998年7月7日に公表された米国特許5,776,464号)。最後に、血管または他の標的器官へのHGF遺伝子含有ベクターの局所適用が多様な治療目的について記載されている(2001年6月19日に公表された米国特許第6,248,722B1号)。Metおよび下流のシグナル伝達経路は癌治療の魅力的な標的であると長い間みなされてきた。第一に、腫瘍細胞系および動物の腫瘍モデルを用いた研究からMetが癌細胞の浸潤性増殖および転移に重要な役割を果たすことが示された。第二に、Met遺伝子の増幅が大腸癌の肝転移で観察された。第三に、甲状腺癌および膵臓癌のようないくつかの種類のヒト腫瘍でMetは過剰発現している。第四に、Met遺伝子の生殖細胞系突然変異が遺伝性腎乳頭状癌でみられ、体細胞Met遺伝子突然変異が散在性乳頭状癌でみられた。
本発明は、Met受容体の阻害がMetアンタゴニストの新規な治療用途を表わすというMet受容体の以前に知られていない機能を明らかにするものである。Metを介したシグナル伝達はマラリアスポロゾイトによる生産的浸潤に対して肝細胞を許容性にする。Metシグナル伝達は、インターナリゼーション空胞の形成を介した肝細胞へのスポロゾイトの侵入および/または肝細胞の原形質膜により形成される空胞内でのスポロゾイトの増殖に不可欠である。Metのこの機能の発見はマラリア感染の防止への新規な手法の基礎となっている。本発明のさらなる実施形態は、HGFが媒介するMetまたはMet下流のシグナル伝達事象の活性化を妨げることによるマラリア感染の確立を防止する化合物の使用であり、MetまたはMet下流のシグナル伝達事象は肝細胞をマラリア原虫による感染に許容性にすることに関与している。いくつかのMetアンタゴニストが文献に記載されており、Metの過度の機能または異所性機能により少なくとも部分的に引き起こされる疾患の治療への適用について特許において特許請求の範囲に記載されているものもある。Metアンタゴニストの以前に特許請求の範囲に記載の適応疾患は悪性腫瘍の治療である。感染症の、詳細にはマラリア原虫による感染の治療のためのMetアンタゴニストの可能性ある用途は本発明により明らかである。本発明の特許請求の範囲は、マラリア原虫によるヒトの感染の防止のためのMetアンタゴニストの使用である。公知のHGFアンタゴニストを以下の節に記載する。
II.HGF受容体アンタゴニスト
A.HGF変異体
天然のHGFおよびcDNAをコードするHGFの遺伝子操作により作製されたHGFの両方を含む様々な形態のHGFがMet機能の一部または全てと拮抗する。未開裂のプロHGFはMetと結合するがMetを活性化できない。いくつかのHGFアイソフォームがHGF一次転写物の示差的スプライシングにより生成する。これらには(HGFのNドメインおよび第一クリングルドメインから成る)NK1と、(HGFのNドメインおよび初めの2つのクリングルドメインから成る)NK2がある。マカクの子宮内膜および胎盤から発見された2つの追加の変異体、すなわちdNK1およびdNK2は、第一クリングルドメインに5個のアミノ酸欠失を有するタンパク質をコードすることを除いてNK1およびNK2アイソフォームと類似している[LindseyおよびBrenner、Mol Human Reprod. 8:81〜87頁(2002)]。NK1およびNK2はHGF受容体Metと高親和性結合し、HGFアンタゴニストとして作用すると報告されている[LokkerおよびP.J. Godowski、J. Biol. Chem. 268:17145〜17150頁(1993);Chanら、Science 254:1382〜1387頁(1991)]。しかし、その後の研究は、これらのHGF変異体が細胞内含量、ヘパリンの存在または不在、および分析されたHGF機能に応じてHGFの部分アゴニストとしてまたはHGFアンタゴニストのいずれかとして機能する可能性があることを示した。HGF、NK1、NK2、HGF+NK1、またはHGF+NK2を過剰発現するトランスジェニックマウスを用いたin vivo研究は、HGFアイソフォームのin vivoでの潜在的機能を明らかにした。HGFのトランスジェニック発現は、肝臓の成長の増強、進行性糸球体硬化、嗅粘膜の破壊、中枢神経への筋肉細胞の異所性局在および真皮や上皮へのメラニン細胞の異所性局在、早発乳腺小葉腺房発生ならびに腫瘍誘発に対する感受性のような多様な表現型の結果を有する。NK1のトランスジェニック発現は同様の表現型をもたらすが、NK2のトランスジェニック発現はHGFおよびNK1が誘導する表現型の特性を何も示さない。HGF+NK2二重トランスジェニックマウスにおいてNK2はHGFの過剰発現の病理結果と拮抗し、移植されたMet発現腫瘍細胞の皮下増殖をダウンレギュレートする。しかし、NK2のトランスジェニック過剰発現はこれらの同じ腫瘍細胞の転移を促進する。このようにNK2はHGFに対する応答の多くと拮抗するが、転移を促進する応答である細胞を解離(分散)させる能力をHGFと共有する[Otsukaら、Molecular and Celleular Biology 20:2055〜2065頁(2000)]。
別のHGF変異体であるNK4はエラスターゼによるHGFの単一切断消化により発生する。NK4はN末端ヘアピン構造および4つのクリングルドメインを含んでいる。NK1およびNK2とは対照的に、NK4は純粋なHGFアンタゴニストである[Dateら、FEBS Letters 420:1〜6頁(1997)]。単離されたHGFα鎖のように、NK4はMetと結合するが、単離されたHGFβ鎖を添加しない限りMetの自己リン酸化を誘導しない。HGFと拮抗する能力が原因で、NK4タンパク質の投与またはNK4遺伝子導入[Hiraoら、Cancer Gene Ther 9:700〜7頁(2002);Maeharaら、Clin Exp Metastasis 19:417〜26頁(2002)]はMet発現癌の治療への新規な手法と評価されつつある。タンパク質分解性切断に抵抗性を示すように操作された、NK4に類似した一本鎖HGF変異体が、1999年3月9日に公表された米国特許第5,879,910号および1996年12月3日に公表された米国特許第5,580,963号に記載されている。
B.可溶性Met受容体
可溶型Metは、培養された内皮細胞、平滑筋細胞および様々な腫瘍細胞系から放出される。可溶性受容体はHGFによる細胞表面関連Metの活性化に対抗すると考えられている。HGFと高親和性で結合する能力を保持し、それによりHGF活性を中和することができるMet−IgG融合タンパク質が作製されている。
C.アンギオスタチン
血管新生のインヒビターであるアンギオスタチンは、3〜4個のクリングルドメインを含むプラスミノーゲンのフラグメントである。アンギオスタチンの抗血管新生作用は、アンギオスタチンが内皮細胞表面のATPアーゼを阻害し、インテグリンの機能および細胞周囲のタンパク質分解を妨げる能力に基づくと考えられている。最近の研究は、アンギオスタチンの抗血管新生活性が少なくとも部分的にHGFの作用を中和する能力が原因であることを示している[WajihおよびSane、オンライン事前出版Blood、10月24日(2002)]。
HGFと47%の配列相同性を有するアンギオスタチンはMetと結合し、内皮細胞および平滑筋細胞におけるHGF媒介型シグナル伝達を防止する。アンギオスタチンはHGFに応答したこれらの細胞の増殖を阻害するが、Met以外のプロテインチロシンキナーゼ受容体を介して作用する血管内皮細胞増殖因子(VEGF)または塩基性線維芽細胞増殖因子(BFGF)のような他の増殖因子に応答した増殖は阻害しない。このようにアンギオスタチンはMetの選択的アンタゴニストとして機能する。
D.抗HGF受容体抗体
抗Met抗体の中には受容体アゴニストであるものもあれば、リガンド媒介型受容体活性化を遮断するものもある。Met遮断性モノクローナル抗体およびそのような抗体の様々な誘導体がジェネンテック社により開発され、米国特許第6,468,529号B1(2002年10月22日公表)、米国特許第6,214,344号B1(2001年4月10日公表)、米国特許第6,207,152号B1(1996年5月公表)および米国特許第5,686,292号(1995年6月公表)に記載されている。これらの抗体またはそのような抗体の誘導体は癌の治療に有用であることが特許請求の範囲に記載されている。
E.Met選択的アプタマー
ランダム配列を有する一本鎖オリゴヌクレオチドは多様な構造を形成できる。SELEX法として知られている方法により、大きなランダムオリゴヌクレオチドライブラリーから特定の標的に結合するオリゴヌクレオチドを選択できる。Metに選択的に結合し、リガンド媒介型Met活性化を遮断するオリゴヌクレオチドリガンドがSELEX法を用いてGilead社により同定された。これらのHGFアンタゴニストは米国特許第6,344,321号B1(2002年2月2日公表)、米国特許第5,843,653号(1995年6月公表)、および米国特許第5,475,096号(1991年6月公表)に記載されている。
III.HGF媒介型シグナル伝達のインヒビター
A.MetのC末端ペプチド
Metの細胞質ドメインのモデル化から、C末端尾部は触媒ポケットと接することにより受容体の分子内モジュレーターとして作用することが示唆されている。BardelliらはMetのC末端尾部の配列に対応するペプチドを設計した。このペプチドはアンテナペディアホメオドメインのインターナリゼーション媒介配列に対応する配列を有するように延長することにより細胞透過性となっていた。Metの尾部ペプチドはリガンドが誘導する自己リン酸化および下流のMetシグナル伝達を遮断した。このペプチドはMetの近縁であるRonによるシグナル伝達も遮断したが、他のプロテインチロシンキナーゼ受容体を介したEGF、PDFGまたはVEGFによるシグナル伝達には影響しなかった。よって、MetのC末端尾部ペプチドはMet/Ronの選択的アンタゴニストである。
B.Grb2アンタゴニスト
SH2ドメインはホスホチロシン(Tyr−P)残基のC側に隣接した2または3個以内のアミノ酸と追加の二次結合相互作用を行うことによってTyr−P残基を認識する。Tyr−P近隣の残基の差異はSH2ドメインサブファミリーに対して異なる親和性を生じる。このように、特定セットのシグナル伝達物質のSH2ドメインをTyr−P含有トリペプチドにより選択的に遮断できる。リン酸化チロシンとSH2ドメインとの相互作用のインヒビターは1999年7月13日に公表された米国特許第5,922,697号に記載されている。Tyr−P残基がホスホノメチルフェニルアラニンまたは関連構造に置換された化合物はホスファターゼによる分解に対し耐性である。ペプチドの多様な他の修飾は特定のSH2ドメインに対する親和性を増加させるか、または化合物が原形質膜を通過して細胞内標的に達する能力を増加させる[YaoらJ. Med. Chem.、42:25〜35頁(1999)]。Grb2のSH2ドメインのトリペプチド性インヒビターはHGF媒介型細胞運動性、マトリックスへの浸潤、および分岐形態形成を遮断することが報告された。これらと同じインヒビターはHGF媒介型細胞増殖にわずかな作用しか有さない。Grb2のSH2ドメインに特に高い親和性を有するインヒビターは、癌、転移、乾癬、ならびにアレルギー性疾患、自己免疫疾患、ウイルス性疾患および心血管疾患の治療に有用な化合物として2001年6月12日に公表された米国特許第6,254,742B1号に記載されている。
C.Gab1のリン酸化のインデューサー
PKC−αおよびPKC−β1によるGrb2関連バインダー1(Gab1)のセリン/トレオニン残基のリン酸化はMetシグナルのダウンレギュレーションのメカニズムを提供している。オカダ酸によるセリン/トレオニンホスファターゼPP1およびPP2Aの阻害は、PKCのようなセリン/トレオニンキナーゼの活性化およびgab1のセリン/トレオニン残基の過リン酸化を生じる。同時に起こるチロシン残基の過少リン酸化はGab1がMetにPI3キナーゼを動員するのを防止する[Gualら、Oncogene 20:156〜166頁(2001]。
D.ドミナントネガティブsrc変異体
srcはそのSH2ドメインを介してリガンド活性化されたMetのリン酸化チロシン残基と結合する。変異型受容体MET M1268Tはsrcと構成的に結合し、ヌードマウスにおいて変異型受容体遺伝子を発現するNIH3T3細胞は腫瘍を形成する。これらの細胞にドミナントネガティブsrc構築体をトランスフェクトすると細胞の成長が遅れ、焦点接着キナーゼ(FAK)およびパキシシリン(paxicillin)のリン酸化がダウンレギュレートされるが、Grb2の結合およびPLC−γのリン酸化は作用を受けないことが報告された[Nakaigawaら、Oncogene 19:2996〜3002頁(2000)]。
E.PI3Kインヒビター
Metに対するPI3Kの結合は基準モチーフYXXMではなく新規なモチーフYVXVを必要とする点で珍しい。この新規のモチーフはPI3Kのp85サブユニットのNおよびC末端SH2ドメインに対して低い親和性を有するが、MetのC末端尾部にある2つの間隔の狭いYVXVモチーフはPI3Kに対するドッキング部位に相当する。この結合は合成ホスホペプチドにより阻害される。PI3K媒介型シグナルはHGFが誘導する細胞分散(細胞骨格の再構築、細胞間結合の消失、細胞遊走)および形態形成に必須と考えられる。PI3Kのインヒビターであるウォルトマンニン(wortmannin)はMetにより誘導されるコラーゲンマトリックス上での腎細胞の分岐を阻害する。PI3Kのシグナルは細胞の形質転換に必須ではないと考えられるが、転移には貢献する。
F.NFκBインヒビター
肝細胞においてHGFはNF−カッパBのDNAの結合を刺激し、基準的なIカッパBリン酸化−分解サイクルを介した、ならびに細胞外シグナル調節型キナーゼ(extracellular signal-regulated kinase)1/2およびp38 MAPキナーゼカスケードを介した転写活性化を刺激する。NFκBインヒビターを用いた研究は、HGFにより誘導されるNFκBの活性化が増殖および管形成に必要であるが、分散にもHGFの抗アポトーシス機能にも必要ないことを示した[(Mullerら、Mol Cell Biol 22:1060〜72頁、(2002)]。
G.低分子量GTP結合タンパク質のインヒビター
Rasの阻害は上皮細胞の拡大、アクチン再構築および分散を妨げる。ドミナントネガティブRacは、非小細胞肺癌細胞においてHGFが誘導した格段およびアクチン再構築を無効にする。RhoのマイクロインジェクションはHGFが誘導する拡大および分散を阻害するが、運動性を阻害しない。
H.Hsp90アンタゴニスト
シャペロンHsp90はシグナル伝達に関与する多くのタンパク質を安定化する。このシャペロンは癌細胞の増殖および/または生存を促進する多様な突然変異、または異所性発現したシグナル伝達タンパク質の安定性および機能に必要と考えられている。Hsp90クライアントタンパク質には突然変異p53、Bcr−Abl、src、Raf−1、Akt、ErbB2および低酸素誘導因子1α(HIF−1α)がある。ベンゾキノン系アンサマイシン化合物であるゲルダナマイシンおよびハービマイシンならびに構造的に無関係のラディシコール(radicicol)はHsP90のN末端ヌクレオチド結合ポケットを遮断し、多くが腫瘍の進行に関与するHsp90クライアントタンパク質の分解を引き起こす。Hsp90インヒビターの1つ17−アリルアミノゲルダナマイシン(17AAG)は現在第I相臨床試験中であり、ラディシコールの新規なオキシム誘導体(KF58333)は前臨床評価中である[(Sogaら、Cancer Chemother Pharmacol 48:435〜45頁(2001))。
最近の研究は、Metがゲルダナマイシンまたは関連化合物に特に感受性のHsp90クライアントであることを示した。ナノモル濃度で、ゲルダナマイシンはMetタンパク質の発現をダウンレギュレートし、HGF媒介型細胞運動性および細胞侵入を阻害し、HGFおよびMetを発現する細胞の形質転換表現型または構成的に活性化されたMet突然変異体から復帰させる。Met下流のシグナル伝達経路はHsp90インヒビターにいっそうさらに感受性であると考えられる。ゲルダナマイシン類は、発育阻止濃度を9桁下回るフェムトモル濃度でHGF媒介型プラスミン活性化を阻害した。興味深いことに、マウスにおいてラディシコールはプラスモディウム・ベルゲイに対して中程度の活性を有することが報告された[Tanakaら、J. Antibiot. 51:153〜60頁(1998)]。しかし、この活性はMet阻害とは関係しないようである[Tanakaら、J Antibiot 10:880〜8頁(1999)。
IV.プロテインチロシンキナーゼインヒビター
タンパク質上のチロシン残基の可逆的リン酸化はシグナル伝達の重要なメカニズムである。多様な天然および合成化合物がチロシンキナーゼインヒビターであることが知られている。これらのインヒビターのほとんど全てが酵素のATPポケットを遮断することによってプロテインキナーゼを遮断する。したがって、多くがチロシンキナーゼだけでなくセリン/トレオニンキナーゼおよび/または他のATP利用タンパク質に対して広域スペクトルの活性を有する。
1.一般的なプロテインキナーゼインヒビター
インドロカルバゾールK252aは、Ca2+媒介型シグナル伝達のアンタゴニストのスクリーニング中に最初にアクチノマヅラ属(Actinomadura)の培養液から、後にノカルジオプシス属(Nocardiopsis)から単離された。K252aは様々なアイソフォームのプロテインキナーゼC(PKC)、cAMPおよびcGMP依存性キナーゼ、ならびにプロテインチロシンキナーゼ、詳細にはTrkおよびMetファミリーのプロテインチロシンキナーゼのようなセリン/トレオニンプロテインキナーゼを阻害する。K252aはMet媒介型シグナルをナノモル濃度で阻害する。この化合物はMetの自己リン酸化を阻害し、下流のエフェクターであるMAPキナーゼおよびAktの活性化を防止する。この化合物はMLP−29細胞におけるHGF媒介型分散を防止し、GTL−16胃癌細胞におけるMet駆動性増殖を低下させ、Metが媒介するNIH3T3線維芽細胞の形質転換を逆転させる。K252aおよび関連化合物はTrkおよびMetが駆動する癌に対して使用される可能性がある有望なリード薬物である[Morottiら、Oncogene 21:4885〜4893頁(2002)]。考えられることには、K525aはMet特異的インヒビターの開発におけるリードとして役立ち得る。
2.プロテインチロシンキナーゼに選択性を有するインヒビター
種々のクラスの化合物が公知のプロテインチロシンキナーゼインヒビターである。そのようないくつかの化合物が植物または微生物から単離され、研究目的に広く用いられている。最もよく知られているのはゲニステイン、ラベンダスチン(lavendustin)A、チルホスチン47、ハービマイシン、スタウロスポリンおよびラディシコールである。ハービマイシンAは、キナーゼドメインと共有相互作用することにより広域スペクトルのプロテインチロシンキナーゼを阻害するベンゾキノイドアンサマイシン抗生物質である。スタウロスポリンはscrファミリーのメンバーおよびセリン/トレオニンキナーゼを含む広域スペクトルのキナーゼを阻害するインドールカルバゾール抗生物質である。最近、多数のプロテインチロシンキナーゼインヒビターが合成され、いくつかの特許出願で特許請求の範囲に記載されている:1)ビス単環式、二環式または複素環式アリール化合物(PCT WO92/20642号)、2)ビニレン−アザインドール誘導体(PCT WO94/14808号)、3)1−シクロプロピル−4−ピリジル−キノロン(米国特許第5,330,992号)、4)スチリル化合物(米国特許第5,217,999号)、2)スチリル置換ピリジル化合物(米国特許第5,302,606号)、5)キナゾリン誘導体(EP出願第0566266A1号および米国特許第6,103,728号)、6)セレノインドールおよびセレニド(PCT WO94/03427号)、7)三環式ポリヒドロキシル化合物(PCT WO92/21660号)、8)ベンジルホスホン酸化合物(PCT WO91/15495号)、9)チルホスチン様化合物(米国特許第6,225,346B1号)、10)チエニル化合物(米国特許第5,886,195号)、11)srcおよびFGF−γチロシンキナーゼに対してある程度の選択性を有するベンゾジアゼピン系化合物(2000年8月8日に公表された米国特許第6,100,254号)。種々のクラスのチロシンキナーゼインヒビターがMet、HER2、EGFR、IGFR、PDGFR、src、およびKDR/FLK−1のようなチロシンキナーゼにより推進される癌の治療のために特許出願されている。公知のチロシンキナーゼインヒビターはいずれもMetに選択的ではない。しかし、Met特異的インヒビターが将来開発され得ることが考えられる。この楽観的観測は、限られたセットのプロテインチロシンキナーゼを阻害するいくつかの化合物が合成され、その1つは癌治療に承認され、数個が臨床開発中であるであるという事実に基づいている。これらの化合物は、1)ピラゾールピリミジンPP1はZAP−70、JAK2およびEGF受容体キナーゼに比べてlckおよびsrcキナーゼに対して選択性を示す。2)STI−571(GLEEVEC(登録商標))は全ての形のabl、PDGF受容体、c−kitチロシンキナーゼを阻害する。3)ZD1839はEGF受容体にある程度の選択性を有する合成アニリンキナゾリンである。4)OSI−774はEGF受容体にある程度の選択性を有するもう1つの経口活性キナゾリン誘導体である。5)4−アニリノキナゾリン誘導体はVEGF−Rに対して選択性を示す(2001年9月18日公表の米国特許第6,291,455B1号)。6)SU101はPDGF受容体に選択性を示すがその抗増殖作用はピリミジン生合成に重大なミトコンドリア酵素であるジヒドロオロチン酸デヒドロゲナーゼを阻害する開環代謝物を一部の原因とする。7)アリールおよびヘテロアリールキナゾリン化合物はCSF−Rに選択性を示す(2002年4月9日公表の米国特許RE37,650E)。8)VEGF受容体(Flk1/KDR)アンタゴニストであるSU5416はインドリン−2−オンというファーマコフォアおよびFGF受容体チロシンキナーゼドメインの結晶研究に基づき設計された。9)ビス単環式アリール、二環式アリールおよびヘテロアリール化合物はEGFRおよびPDGFRに対して選択性を示す(米国特許第5,409,930号)。10)ピセアタンノール(3,4,3,5V−テトラヒドロキシ−trans−スチルベン)はsykおよびlckに選択性を示すが、セリン/トレオニンキナーゼおよびATPアーゼも阻害する。11)ベンゾジアゼピンを基本とするいくつかの化合物は非受容体型チロシンキナーゼであるsrcおよびFGF−R受容体型チロシンキナーゼファミリーに対してある程度の選択性を示す。これらの例は、1つまたは少数のチロシンキナーゼに対して選択性を有する化合物を発生させることができることを示している。
V.プロテインキナーゼインヒビターの抗マラリア作用
植物と同様にプラスモディウムを例とする関連アピコンプレックス門(Apicomplexan)の寄生虫はプロテインチロシンキナーゼを産生しないと考えられる。2、3の報告は、プラスモディウムにプロテインチロシンキナーゼが存在することを示唆している(以下のA節を参照)。しかし、ホモロジー検索は既知のプロテインチロシンキナーゼファミリーに関係する配列を全く検出できなかった。したがって、プロテインチロシンキナーゼインヒビターの抗マラリア作用はヒト宿主により産生される酵素の阻害が原因と考えられる。多様なキナゾリン誘導体が抗マラリア活性を有すると報告されている。これらの化合物には2,4−ジアミノ−6(3,4−ジクロロベンジルアミンキナゾリン(PAM1392[Thompsonら、Exp. Parasitol 25:32〜49頁、1969])、2,4−ジアミノ−6−[93,4−ジクロロベンジル0−ニトロソアミノ]キナゾリン(CI−679)[SchmidtおよびRossan、Am. J. Trop. Med. Hyg. 28:781〜92頁(1979)]、Elslagerと共同研究者ら[Elsagerら、J.Med.Chem. 21:1059〜70頁(1978)]および中国の研究者[Gyら、Xao Xue Bao 19:108〜18頁、(1984)、Yaoら、Yao Xue Bao 19:76〜8頁(1984)]によるいくつかの他の2,4−ジアミン−6−置換キナゾリン誘導体がある。2,4−ジアミノ−5−メチル693,4,5−トリメトキシアニリノメチル)キナゾリン塩の抗マラリア活性は1983年3月15日に公表された米国特許第4,376,858号に記載されている。プラスモディウムに対するキナゾリン誘導体の可能性のある一作用様式はチロシンキナーゼの阻害である(2000年8月15日に公表された米国特許第6,103,728号)。
A)プラスモディウムプロテインキナーゼの阻害
1)DluzeskiおよびGardaはいくつかのプロテインキナーゼインヒビター(スタウロスポリン(staurosporin)、ゲニステイン、2,5−ジヒドロキシ桂皮酸メチル、チルホスチンB44およびB46、ラベンダスチンAならびにRO3)が熱帯熱マラリア原虫の赤血球サイクルを阻害することを報告した[DluzewskiおよびGarda、Experientia 52:621〜623頁(1996)]。強力なセリン/トレオニンキナーゼインヒビターであるスタウロスポリンを除いて、これらの化合物はプロテインチロシンキナーゼを選択的に阻害する。これらのインヒビターは赤血球内での原虫の発達および/または侵入を防止した。これらのインヒビターの活性が広域スペクトルであることから、プロテインチロシンキナーゼの阻害が観察された効果に何らかの役割を果たしたかどうかは明らかではなく、標的タンパク質が赤血球から得られたか原虫から得られたかも明らかではない。
2)微生物からアルテミシニン様化合物をスクリーニングする間に、Tanakaと共同研究者らは抗マラリア活性を有するいくつかの菌類代謝物を同定した。これらの化合物の1つであるラディシコールは広域スペクトルプロテインキナーゼインヒビターであり、マウスにおけるプラスモディウム・ベルゲイに対して中程度の活性を有した[Tanakaら、J. Antibiot 51:153〜60頁(1998)]。
3)最近になってSharmaは膜結合型PTK活性が輪状体段階からトロフォゾイト段階に成熟する間に増加することを報告した。クロロキンによるPKT活性の阻害はマラリア原虫に対するこの薬物の可能性のある一作用機作を表していると提案された[SharmaおよびMishra、Indian J. Biochem. Biophys. 36:299〜304頁(1999);Sharma、Indian J. Exp. Biol. 38:1222〜6頁(2000)]。
B)ヒトプロテインチロシンキナーゼの阻害
プラスモディウムの多様な病原作用はヒト宿主のプロテインチロシンキナーゼにより媒介されることから、その病原作用をプロテインチロシンキナーゼインヒビターで阻害できる。文献にいくつかの例が報告されている。
1)血管内皮への感染赤血球の接着は宿主の内皮細胞により発現されるCD36に熱帯熱マラリア原虫膜タンパク質1(PfEMP1)が結合することを必要とする。CD36に媒介されるシグナルが接着に必須である。srcおよびlckキナーゼの選択的インヒビターであるピラゾールピリミジンPP1はこのシグナルを阻害し、接着を防止する[Yippら、Bloodオンライン版(2002)]。
2)CD36およびCD36媒介型プロテインキナーゼ依存性シグナルも、単球およびマクロファージによる熱帯熱マラリア原虫感染赤血球の非オプソニン性クリアランスに関与している。ゲニステインならびにERKおよびp38MAPKの選択的インヒビター(それぞれPD98059およびSB203580)の両方がCD36の遮断とほぼ同程度に感染赤血球の取り込みを低下させた[McGilvrayら、Blood 96:3231〜40頁(2000)]。
3)グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)は熱帯熱マラリア原虫の主要毒素である。マラリアのGPIは細胞に添加後1分以内に多数の細胞内基質のチロシンリン酸化の迅速な開始を誘導する。これらのシグナルは原虫の接着のアップレギュレーションおよびマクロファージおよび内皮細胞からの一酸化窒素(NO)の放出誘導に関与している。チロシンキナーゼアンタゴニストであるチルホスチンおよびゲニステインは接着とNO放出との両方を防止する[Tachadoら、J Immunol 156:1897〜1907頁(1996);Schofieldら、J. Immunol. 156:1886〜96頁]。
以前の研究でプロテインチロシンキナーゼ受容体Metはマラリア感染に関係するとされていなかった。本発明は、プロテインチロシンキナーゼMetをマラリアスポロゾイトによる感染に対する肝細胞の感受性の重大なメディエーターとして特定した。
VI.HGF関連抗マラリア剤
A.硫酸化多糖
上に述べたように、HGFレベルはデキストラン硫酸、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、コンドロイチン、またはコンドロイチン硫酸を含めたHGF分解を阻害する多糖により増加し得る。マラリアの治療のための硫酸化カードラン、デキストリン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、カラゲナンのような硫酸化多糖とキニンとの組み合わせが1998年7月14日に公表された米国特許第5,780,452号に記載されている。提案された方法は、マラリア原虫がヒト赤血球に侵入するのを硫酸化多糖が阻害する能力に基づいている。本発明はこの方法を疑問視する。それは、1998年4月17日に公表された米国特許第5,736,506号に記載された事実では、硫酸化多糖はHGFの分解を阻害することによりそのレベルを増加させるおそれがあるからである。したがって硫酸化多糖は本発明の抗マラリア剤から除外される。
プラスモディウムスポロゾイトと共に培養した肝細胞からの「感染感受性誘導因子」(ISIF)の放出
マウス肝細胞癌細胞Hepa1−6およびP.ヨエリーのスポロゾイトを含む培養物から上清を調製した(mH/Pyならし培地)。ISIF活性を検出するために、新鮮肝細胞癌細胞をmH/Pyならし培地と共に種々の時間にわたりインキュベートした。次に、細胞を洗い、P.ヨエリースポロゾイトと共にインキュベートした。24時間後に赤外型(EEF)の原虫を染色することで感染を調べた。対照として、P.ヨエリースポロゾイトを添加する前に新鮮培地と共に同時間プレインキュベートしたHepa1−6細胞を使用した。mH/Pyならし培地で肝細胞を前処理することにより感染レベルが増加した(図1a)。mH/Pyならし培地で1時間前処理した肝細胞癌細胞で感染に対する感受性の最も大きな増強が観察された(図1a)。熱不活性化スポロゾイトで得られたmH/Pyならし培地は有効ではなかった(図1b)。感染したカの唾液腺の解剖によりスポロゾイトを得たため、肝細胞癌細胞および未感染カの唾液腺の物質を含む培養物から得られたならし培地も試験した。このように調整された培地(ならし培地)は有効ではなかった(図1b)。
損傷を有する肝細胞からのISIFの放出
ISIFの起源(スポロゾイトまたは肝細胞)およびその放出の必要条件を検討するために機械的応力を用いてHepa1−6細胞に損傷を加えた。損傷を有する細胞を組織培養ウェルに入れ、1時間後に上清を回収した。P.ヨエリースポロゾイトを加える前に、新鮮Hepa1−6細胞をこの上清と共にプレインキュベートした。mH/Pyならし培地で観察されたのと同様に上清とのプレインキュベーションにより感染が増大した(図1c)。この知見はISIFがスポロゾイトに由来するのではなく、損傷の結果として肝細胞から放出されることを示している。
ISIFは肝細胞増殖因子(HGF)である
ISIF活性が既知の増殖因子により媒介されるかどうかを試験するために、損傷後に放出されることが分かっている2つの十分に特性決定された増殖因子である塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)および肝細胞増殖因子(HGF)を試験した。P.ベルゲイのスポロゾイトを加える前に、HepG2細胞をヒトHGFまたはbFGFと共にプレインキュベートした。陽性および陰性対照として、細胞をそれぞれhH/Pbならし培地または新鮮培地と共にインキュベートした。HGFはhH/Pbならし培地よりも大きく感染を増加させた(図2a)。bFGFは有効ではなかった。hH/Pbならし培地中のISIFがHGFであるかどうかを決定するために、新しいHepG2細胞およびスポロゾイトと共にインキュベートする前に、この培地に抗HGF中和モノクローナル抗体を加えた。抗体はhH/Pbならし培地の効果を無効にしたばかりではなく、対照培養で観察される基準レベルよりも下に感染を減少させた(図2a)。抗bFGFモノクローナル抗体の添加は作用を有さなかった(図2a)。これらの結果は、ISIFがHGFであることを示し、HGFの放出は肝細胞がスポロゾイトに感染するための必要条件であることを表している。
ISIF/HGFは損傷形成後の肝細胞により分泌される
真核細胞における構成性分泌を遮断する、ゴルジ小胞へのタンパク質輸送のインヒビターであるブレフェルジンA(BFA)でHepG2細胞を処理した。次にBFA処理細胞および未処理対照細胞を洗い、P.ベルゲイのスポロゾイトと共にインキュベートしてならし培地を作製した。このならし培地の試験はBFA処理がISIF/HGF分泌を阻害することを示した(図2b)。BFAの効果は用量依存的であった。機械的に損傷形成したHepG2細胞の上清を様々な時間インキュベートした後で回収した。感染感受性アッセイ(図2c)およびウエスタンブロット分析(図2d)により決定されたISIF/HGFレベルは時間と共に増加した。ISIF活性は抗HGF中和抗体の添加により無効となった(図2c)。
ISIF/HGF活性と感染レベルとの相関
P.ベルゲイは、低効率ではあるが非肝臓上皮細胞系HeLaに感染できる(図2e)。一連の実験を実施して、原虫が誘導するISIF/HGF産生およびISIF/HGFに対する応答性についてHepG2細胞とHeLa細胞とを比較した。HepG2細胞と共の(hH/Pbならし培地)およびHeLa細胞と共の(HeLa/Pbならし培地)原虫の培養物からならし培地を作製した。両ならし培地は異なるレベルであるもののISIF/HGFを含んでいた。ISIF活性はウエスタンブロットおよびELISAにより決定されたHGFレベルとよく相関した。HepG2細胞のように、HeLa細胞はISIF/HGFに感受性であった。HeLa細胞の感染はhH/Pbならし培地により増大し、HepG2細胞の感染はHeLa/Pbならし培地により増大した。ISIF活性はHeLa/Pbならし培地よりもhH/Pbならし培地の方が常に大きかった(図2e)。これらのデータはHeLa細胞がISIF/HGFに応答性で、感染の程度がHGFの用量と共に増加することを示している。
感染に及ぼすHGFの作用はMetに媒介される
HGFがその受容体Metを介して作用することを示すために多様な実験プロトコルを使用した。まず、Hepa1−6細胞をP.ベルゲイのスポロゾイトと共に1時間インキュベートすると、この受容体のチロシンリン酸化により実証されるようにMetキナーゼの活性化を生じた(図3a)。第二に、構成的に活性化されたMETチロシンキナーゼ(tpr−Met)14をトランスフェクトしたHepG2細胞(図3b)およびMet15の細胞外ドメインに対するアゴニストモノクローナル抗体で処理したHepG2細胞(図3c)においてP.ベルゲイ感染は増大した。これらの結果はMETの活性化がスポロゾイトによる感染に対する肝細胞の感受性を増大させることを示している。さらに、tpr−Metにおいてtpr配列がMetの細胞外ドメインと置き換わっていることから、リステリア(Listeria)感染で起こるようにプラスモディウムのスポロゾイトが肝細胞に入り込むための受容体としてMetを使用できる可能性を排除している。
METをダウンレギュレートするために2つのプロトコルを使用した。第一に、gfp配列と融合したmetの細胞外ドメインおよび膜貫通ドメインを含むキメラ構築体をHepG2にトランスフェクトした。この構築体の生成物は原形質膜で発現され、HGFと結合するが、キナーゼドメインおよび細胞内伝達因子に対するドッキング部位として働くチロシンを欠くために細胞にシグナルを伝達できない。このキメラは内因性METと二量体形成してその活性化を防止するため、優性干渉(dominant interfering)タンパク質として挙動する。トランスフェクション効率は54.3±2.1%であり、P.ベルゲイのスポロゾイトの感染は総細胞数の約60%減少した(図3d)。GFPの発現により表されるトランスフェクトされた個々の細胞は感染に完全に耐性であった。FGF受容体に対する優性干渉構築体を用いた類似した実験はP.ベルゲイ感染に対するHepG2の感受性に影響しなかった。第二の手法ではRNA干渉を用いてMETをダウンレギュレートした。HepG2細胞の2つの独立した集団に特異的metオリゴをトランスフェクトし、そのオリゴはウエスタンブロットで検出されるようにMET発現の減少を引き起こした(図3e)。これらの細胞の感染率は模擬トランスフェクトされた細胞に比べて90%減少した(図3f)。これらの結果はHGF受容体METを介したHGFシグナル伝達が肝細胞にプラスモディウムのスポロゾイトが感染するための必要条件であることを実証している。
マラリア感染時におけるHGF/METの役割のin vivoでの関連性
肝潅流により初代肝細胞を得た。これらの細胞で調整した培地は肝細胞系により調整した培地と同様のISIF活性を有していた(図4a)。特異的HGF受容体インヒビターK252aはISIF活性を打ち消した(図4a)。損傷を形成した細胞にのみ透過する細胞不透過性蛍光トレーサー高分子を用いてスポロゾイトが横断した細胞を検出できる。蛍光標識デキストランの存在下でP.ヨエリーのスポロゾイトをHepa1−6細胞と共にインキュベートしてからHGFを染色した。in vivoでスポロゾイトが横断した細胞を検出するために、マウスの損傷細胞を検出するための標準アッセイを使用した。肝臓組織切片を得てHGFを染色した。in vitroおよびin vivoでデキストラン陰性細胞はHGFを発現しなかったが、大部分のデキストラン陽性細胞はHGF染色にも陽性であった(図4b)。結果は、肝感染時にスポロゾイトが横断した肝細胞は、おそらく損傷形成により誘導されるストレスの結果としてHGFを発現し、HGF受容体であるMETを介したHGFシグナル伝達が感染に必要であることを示している。METシグナル伝達がマラリアの自然感染時の肝細胞感染の際に必要であることを証明するために、METに対する優性干渉タンパク質(MET−GFP、実施例7)を発現するレンチウイルスを1群3匹のマウスに注射した。対照として同様であるがGFPのみを発現するウイルスを1群3匹のマウスに注射した。2日後に両群のマウスを300000個のプラスモディウムスポロゾイトでチャレンジした。寄生虫血症を2または3日後に調べた。それぞれの切片を得て、ウイルス感染レベルを決定した(図4c)。結果は肝臓におけるMET−GFPの発現が自然感染に必要であることを示している(図4d)。
in vitroでプラスモディウム・ベルゲイのスポロゾイトの肝感染に及ぼすゲニステインの作用
HepG2細胞をDMEM10%FCS、1mMグルタミン中で維持した。感染したアノフェレス・ステフェンシ(Anopheles stephensi)カの唾液腺の解剖からP.ベルゲイのスポロゾイトを得た。(ゲニステインの存在下または非存在下で)HepG2細胞2×10個の単層にP.ベルゲイのスポロゾイト(5×10)を加え、その24時間後に固定し、抗EEF mAb(2E6)の後に抗マウスIgG−FITC抗体で染色した。カバーグラス1枚あたりのEEF数を計数することで感染を定量した。結果を図5に示す。結果は感染細胞数を示す。ゲニステインは25μMですでに感染のおよそ75%の減少を示す。
in vivoでのプラスモディウム・ベルゲイのスポロゾイトの肝感染に及ぼすゲニステインの作用
感染したカ、アノフェレス・ステフェンシの唾液腺の解剖からP.ベルゲイのスポロゾイトを再び得た。P.ベルゲイのスポロゾイト(5×10)を1群5匹のマウス2群に静脈内注射した。一方の群には6時間前にDMSOに溶かしたゲニステイン4mgを注射し、もう一方の群にはDMSO単独を注射しておいた(対照)。原虫特異的プライマーを用いたリアルタイムRT−PCRにより42時間後に肝感染を定量した。結果を図6に示す。感染の減少は約80%であった。
I.現在使用されている抗マラリア薬
既に説明したように、本発明の抗マラリア剤はHGF活性インヒビターと組み合わせて場合によっては現在使用されている抗マラリア薬を含有し得る。HGF活性の1つまたは複数のインヒビターと組み合わせることができる抗マラリア薬の例を以下に示す。
マラリア治療薬は顕花植物である青蒿(ginghao)(アルテミシア・アヌア(Artemisia annua))およびキナ皮に存在することが長い間知られていたが、今日マラリアを治療または予防するために利用できる薬物の数はごく限られている。現在使用されている抗マラリア薬は最近の総説[Ridley、Nature 415:686〜693頁(2002)]およびP.Rosenthalが編集した書籍[Antimalarial chemotherapy. Mechanisms of action, resistance, and new directions in drug discovery, Humana、トトワ、ニュージャージー州(2001)]に記載されている。最も広く研究されている抗マラリア剤は、キノリン、葉酸拮抗剤、アルテミシニン、アトクアボンのような電子伝達インヒビター、およびテトラサイクリンのような抗生物質である。耐性確立と対抗するために一部の薬物は固定配合剤の形で使用され、薬物のいくつかの新しい組み合わせが現在研究中である。
A.キノリン
南アメリカではキナ木の皮から製造される粉末が永年熱症状の治療に使われてきた。キナ末は17世紀にヨーロッパに導入され解熱成分であるキニンが1820年にPelletierおよびCaventouにより単離された。キニンは重症マラリア、多剤耐性マラリアおよび妊娠三半期の第1期のマラリアの治療に現在使用されている。キニンの右旋性ジアステレオマーであるキニジンはキニンよりも活性であるが心毒性も高く高価である。抗不整脈剤として広く利用されていることから、非経口のキニジンは米国では重症のマラリアの治療に使用されている。キニンおよびキニジンを静脈内大量注射として与えると、これらの薬物は低血圧を引き起こすおそれがあり、低血糖も引き起こすおそれもある。これは妊婦に特に問題である。さらに有効で安全性の高い抗マラリア薬を同定しようとキニンの構造に基づき多数の関連化合物が合成された。クロロキンは1934年にドイツで最初に合成され、第二次世界大戦中に米国で合成された一連の多数の4−アミノキノリンの中で最も有望なリードとして独立して同定された。Nivaquine、Malarquine、およびAralenのような様々な商標で知られているクロロキンは数十年の間熱帯熱マラリア原虫の化学療法の主力であった。クロロキンは安価で、正しい用量で使用すれば安全で、有効性が高く外来患者に使用可能である。クロロキンは特に黒人患者に掻痒、悪心、まれに神経精神症状や小脳機能障害を誘導するおそれがあるが、通常は十分に許容される。筋肉内もしくは皮下投与、または静脈内点滴によりクロロキンを投与できる。クロロキン耐性はゆっくりと発生したが、今や東南アジアだけでなくアフリカの多くの地域にも範囲が広がっている。クロロキンは非熱帯熱マラリア原虫の感染の治療に、ならびに耐性がまだ出現していない地域での熱帯熱マラリア原虫によるマラリアの治療および予防に現在使用されている。
クロロキンは4−アミノキノリンである。一連の多数の4−アミノキノリンが、クロロキン耐性のプラスモディウム属株に対して活性を有する新薬を同定する目的で合成された。この努力はクロロキン耐性マラリアの治療に現在使用されているアモジアキン(Camoquine)の発見に導いた。しかし、アモジアキンはクロロキンと幾分交差耐性を示すという事実ならびに予防に使用した場合の肝炎および顆粒球減少症のような有害作用によりその使用は限られている。過去30年間に甚だ努力したにもかかわらず、科学者はクロロキンに代わる安価で有効な4−アミノキノリンの製造に失敗した[O'Neillら、Pharmacol. Ther. 77:29〜58頁(1998)が総説]。
1960年代に2つの抗マラリア剤、メフロキンおよびハロファントリン(halofantrine)が米国のウォルターリード医学研究所でキニン関連構造の試験から出現した。ホフマンラロシュによりLariamという商標で開発されたメフロキンは1985年に最初に予防に適用され、それ以来1450万人に防止に、160万人に治療に使用された。クロロキン耐性のある地域での治療および予防にメフロキンは現在使用されている。メフロキンは2〜3週間の消失半減期を有する。治療クールは2または3回の服用を含み、有害作用には消化管障害および神経精神作用がある。メフロキンと同様に近縁のハロファントリンは高価である。吸収が患者によって多様であることから静注用製剤が開発された。ハロファントリンはクロロキン耐性熱帯熱マラリア原虫により引き起こされた疑いのあるマラリアの治療に使用されている。その使用は致死的心毒性のリスクのために制限されている。
8−アミノキノリンであるプリマキンは、メチレンブルーが弱い抗プラスモディウム活性を有するというPaul Ehrlichによる1891年の発見の検証として開発された。一連の多数のメトキシおよび8−アミノキノリン誘導体からパマキンが最初にリードとして同定され、1926年に医療に導入された。ペンタキン、イソペンタキン、およびプリマキンはこのクラスの中で毒性が低く有効性の高い化合物の探索から出現した。プリマキンは朝鮮戦争のときに広く試験され、現在は特定の適応症に対して使用されている。構造に関連性があるものの、プリマキンはクロロキンと作用様式が異なる。他のキノリン抗マラリア剤とは異なり、プリマキンは肝臓段階の熱帯熱マラリア原虫に作用し、肝臓段階後期および潜伏型の三日熱マラリア原虫および卵形マラリア原虫を破壊する。後者の活性は現在使用されている抗マラリア剤の中で独特であり、プリマキンをマラリア再発の防止のための選択薬にしている。マラリアの再発は三日熱マラリア原虫または卵形マラリア原虫による最初の攻撃の40週間後に起こるおそれがある。プリマキンは赤内型の三日熱マラリア原虫および卵形マラリア原虫に対して作用するが、これらの原虫による一次攻撃を抑制しない。赤内型の三日熱マラリア原虫および卵形マラリア原虫とは逆に、赤内型の熱帯熱マラリア原虫はプリマキンに感受性ではない。したがって、プリマキンは熱帯熱マラリア原虫が引き起こすマラリアの治療には使用されない。プリマキンは半減期が非常に短く、プリマキンを毎日投与しなければならない。消化管副作用は通常軽度であるが、特にグルコース6−リン酸デヒドロゲナーゼ欠損の患者ではより重篤なオキシダント溶血が起こる場合がある。関連化合物であるタフェノキン(tafenoquine)は約14日の最終半減期でずっとゆっくりと消失する。この新規な化合物はプリマキンよりも大きな治療指数を有する可能性があるが、治療におけるその役割はまだ立証されていない。
B.アルテミシニン(Artemisinin)
アルテミシニンは中国の顕花植物である青蒿(アルテミシア・アヌア)の有効成分であり、青蒿はすでに2000年前から本草家に使用されてきた。1960年代に青蒿のエーテル抽出物である青蒿素がマウスのマラリアに有効であることが発見された。その有効成分は1972年に中国の科学者によって単離された。アルテスナート(artesunate)水性製剤が中国で製造され、百万人を超えるマラリア患者の治療に安全に使用された。米国ではKlaymanがヨモギ属種であるスイートワームウッドを発見し、油性抽出液を開発して重症マラリアの治療について試験した。動物における神経毒性作用が原因で、油性製剤は西側諸国では承認されなかった。しかしキノリン系抗マラリア剤に対する耐性の確立を受けて、アルテミシニンへの関心が高まり、いくつかの半合成誘導体が製造された。アルテミシア・アヌアの抽出により得られるアルテミシニン以外に、いくつかの半合成誘導体が現在使用されている。それらにはアルテメテル(artemether)、アルテエーテル(arteether)、アルテスナートおよびジヒドロアルテミシニンがある。ジヒドロアルテミシニンは他の全てのアルテミシニン系薬物の代謝物であり、体内の主有効成分である。アルテミシニンは赤血球内の全ての期の原虫、特に若い輪状体に対して広域スペクトルの活性を有する。アルテミシニンは他のいかなる抗マラリア薬よりも速やかに虫血症を減少させ、配偶子母細胞の伝播を抑制する。半合成アルテミシニン誘導体の欠点はそれらが親薬物よりも高価なことである。アルテミシニン誘導体およびその活性代謝物ジヒドロアルテミシニンの半減期が短いため、これらの化合物を単独で使用する場合に5〜7日間にわたる治療が必要となる。アルテメテルは重症マラリアの治療に初め使用された。しかし、この薬物の筋肉内投与はキニンの静脈内投与よりも良好でないことが証明された。アルテミシニンおよびその誘導体は合併症を伴わないマラリアの治療に他の抗マラリア剤と組み合わせて現在使用されている。
C.キノリンおよびアルテミシニンの作用機作
既知の抗マラリア薬の作用の基礎をなす分子メカニズムおよびプラスモディウムがこれらの薬物に対して確立する耐性を理解することは将来の薬物開発に重要である。キノリンおよびアルテミシニンはリソソーム食胞に濃縮され、そこでこれらの薬物はヘムと相互作用することにより抗マラリア活性を発揮すると考えられる。ヘムは宿主赤血球に豊富に存在するヘモグロビンの分解により発生する。II価鉄ヘム(FeII)は酸化されてヘマチン(FeIII)になり、マラリア色素と呼ばれる不活性色素として細胞質に隔離される。マラリア色素は凝集したヘム二量体の格子構造を含む。ヘムの隔離は遊離ヘムによる脂質の過酸化または他の毒性作用から原虫を防御する。キノリンの一次標的は食胞に大量のII価鉄ヘムを産生する長寿のトロフォゾイトである。クロロキンや他の抗マラリア性キノリンはII価鉄ヘムの二量体形成を阻害するか、または食胞からマラリア色素が形成する細胞質へのII価鉄ヘムの配置を防止すると考えられている。アルテミシニンの抗マラリア作用もヘムに依存する。これらの薬物はII価鉄ヘムの存在下でこれらの薬物の過酸化結合の酸化的切断の結果として発生する遊離基を介して原虫を殺すと考えられている。しかし、キノリン系抗マラリア剤[Sullivanら、J. Biol Chem 273:31103〜31107頁(1998)]およびアルテミシニン[Olliaroら、Trends in Parasitology 17:122〜126頁(2001]の正確な作用様式はまだ解明されていない。
クロロキンおよびおそらく他のキノリンに対する熱帯熱マラリア原虫の耐性は、食胞への薬物輸送の減少が原因と考えられる。薬物輸送の欠陥は推定クロロキン耐性輸送体遺伝子(PFCRT)およびP糖タンパク質コード遺伝子(Pfmdr1)における突然変異が原因の可能性がある。アルテミシニンの輸送はPfmdr1遺伝子の突然変異により影響されると考えられるが、アルテミシニンおよびその誘導体に対する臨床耐性はまだ観察されていない。
D.葉酸拮抗薬
クロロキン以外に最も重要な抗マラリア薬は、ヌクレオチド合成に必須でありアミノ酸代謝に関与する葉酸補因子の合成を阻害するように設計された化合物である。最も一般的に使用されている葉酸拮抗薬は2,4−ジアミノピリミジン、ピリメタミン、クロログアニド(プログアニル、パルドリン)、および硫黄薬物スルファドキシン、フルファレンまたはダプソンである。ピリメタミンはプラスモディウムにおいてチミジル酸シンターゼとの融合タンパク質として存在するジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)を阻害する。スルホンアミドであるスルファドキシンは、葉酸経路の別の酵素であるジヒドロオプテロエートシンターゼ(dihydroopteroate synthase)(DHPS)を阻害する。熱帯熱マラリア原虫に対する葉酸拮抗治療の成功は葉酸補因子合成に関与する対応する酵素への薬物の結合が宿主−原虫の間で異なることが原因とされている。ピリメタミンはヒトDHFRよりもプラスモディウムDHFR−TSに高い親和性を有する。しかし、他のDHFR−TSインヒビターも原虫に選択的に毒性であるが、プラスモディウムの酵素の方に強く結合することはない。哺乳動物細胞に比べて葉酸拮抗薬に対する原虫の感受性が増加しているのは、少なくとも部分的にはマラリア原虫とヒト宿主の間のDHFR翻訳制御の差異が原因と考えられる[ZhangおよびRathod、Science 296:545〜7頁(2002)]。
葉酸拮抗薬が単独で使用される場合に、標的酵素、すなわちピリメタミンの場合ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)およびスルファドキシンおよび関連硫黄薬物の場合ジヒドロオプテロエート(DHPS)の突然変異の結果、それらの薬物の作用に対する耐性が速やかに確立する。したがって葉酸拮抗薬は組み合わせて使用される。ピリメタミンはスルファドキシン、スルファレンまたはダプソンのような他の葉酸拮抗化合物との固定配合剤の形で製剤化される。商標Fansidarで知られているピリメタミンとスルファドキシンとの固定配合剤はマラリアの最も重要な葉酸拮抗治療になっている。スルファドキシン/ピリメタミンまたはスルファレン/ピリメタミンはクロロキン耐性と考えられる重症熱帯熱マラリア原虫感染の治療に使用される。これらの配合剤は妊娠中の間欠熱マラリアの治療に非常に有用であることが立証された。硫黄成分に対する偶発的過敏は皮膚に痛い水疱を形成するおそれがある。この有害作用のためスルファドキシン/ピリメタミンの予防的使用が避けられている。相互に独立して葉酸経路の2つの異なる酵素に作用する2つの化合物の配合剤が耐性確立のリスクを減らすために設計された。しかし、不幸なことにその配合剤が広く使用された結果として熱帯熱マラリア原虫株が実際に出現した。
近年、葉酸拮抗薬は葉酸合成に関係しない機作によりマラリア原虫に対して作用する薬物とも固定配合剤の形で組み合わされている。AIDS患者のニューモシスティス(Pneumocystis)肺感染と闘うために本来開発された薬物であるアトクアボンはおそらくミトコンドリアの電子伝達を妨害することによりマラリアに有効であることが立証された。耐性の速やかな確立と対抗するために、アトクアボンはクロログアニド(プログアニル、パルドリン)と組み合わされた。プログアニルの抗マラリア活性はプラスモディウムの二機能ジヒドロ葉酸レダクターゼ−チミジル酸シンターゼ(DHFR−TS)を選択的に阻害する環状トリアジン代謝物であるシクログアニルが原因である。グラクソスミスクライン社がMalaroneの商標で販売しているアトバコン−プログアニル配合剤はマラリアに対する安全で有効な新薬である。しかし、その複雑な合成が原因でアトクアボンは高価である。製造業者はアフリカに薬物を寄付する計画を開始したが、寄付された治療数は第一線の使用には不十分なようである。
E.抗生物質
プラスモディウムおよび他のいくつかの寄生虫は35kbの環状DNAを含むアピコプラストとして知られる色素体器官を保有する。色素体は原核生物転写翻訳系に似た構成要素を組み込んでいる。この系はテトラサイクリン、ドキシサイクリンおよびクリンダマイシンのような細菌タンパク質合成を阻害することが知られている化合物に感受性である。これらの抗生物質の作用様式が遅いことが原因で、これらの抗生物質は他の迅速に作用する薬物と組み合わせて主に使われる。テトラサイクリンおよびドキシサイクリンの使用は年齢8歳を超えた患者に限られ、妊婦および授乳中の女性には禁忌である。両抗生物質はキニンと組み合わせて使用される。リノマイシン(linomycin)の半合成誘導体であるクリンダマイシン(7−クロロ−リノマイシン)は抗生物質として1960年代に導入された。クリンダマイシンは小児および妊婦に安全である。クリンダマイシンのジェネリック製剤がいくつか入手可能である。3日の治療クールはスルファドキシン/ピリメタミンよりも費用がかかるが、アトバコン−プログアニルまたはハロファントリン(halofantrine)よりも安価である。クリンダマイシンはいくつかの治験でマラリアの単独療法に使用されたが、迅速作用薬との組み合わせで最も有用である[LellおよびKremsner、Antimicrobial Agents and Chemotherapy 46:3215〜2320頁(2002)]。
F.マラリア原虫の肝臓での発生を阻害する治療
現在使用されている抗マラリア薬の中で肝細胞におけるプラスモディウムの発達に対して作用するものはごく少数である。これらにはプリマキンと葉酸拮抗薬の配合剤であるピリメタミン/スルファドキシンがある。肝臓型のプラスモディウムに対するプリマキンの作用機作は未知であるが、この葉酸拮抗配合剤はおそらくスポロゾイトの増加に必要なプラスモディウムDNAの合成を阻害すると考えられる。本発明はプラスモディウムの肝臓での発達を妨げる新規な薬物標的および薬物標的候補を提供する。
II.抗マラリア薬の開発に注ぐ現在の努力
A.薬剤耐性からの復帰体
抗マラリア剤の主な問題は薬剤耐性プラスモディウム属株の確立である。薬剤耐性は耐性から復帰させる化合物と組み合わせることにより対抗できる。多様な化合物によりクロロキンに対する熱帯熱マラリア原虫の耐性をin vitroで低下できる[SinghおよびPuri、Acta tropica 77:185〜193頁(2000)]。しかし、マウスモデルではシプロヘプタジンのみがネズミマラリア原虫(P. yoelii negeriensis)のクロロキン耐性系に対する治療力について立証されたが、ベラパミルおよび抗ヒスタミン性クロロフェニラミンのような他の薬物は中度の活性を示した。クロロフェニラミンはクロロキンにより起こる掻痒の治療に使われることが多い。臨床研究ではクロロキン/クロルフェニラミン配合剤はクロロキン単独よりも高い治癒速度をもたらす[Sowumiら、Tropical Mecicine and International Health 3:177〜185頁(1998)]が、以前の研究ではクロロキンとデシプラミンの配合剤には臨床有益性は存在しなかった[Warsameら、Transactions of the Royal Society of Tropical Medicine Hygiene 86:235〜236頁(1992)]。薬物輸送に関与するタンパク質の発現を低下させるために設計されたアンチセンスオリゴヌクレオチドは2002年8月27日に公表された米国特許第6,440,660B1号に記載されている。
B.新規な抗マラリア薬の配合剤
耐性に有効な最も重要な方法は薬物の配合剤を使用することである。上にすでに言及したように、この方法はピリメタミンとスルファドキシン(ファンシダール)またはアトバコンとプログアニル(Malarone)のような固定配合剤の利用によって過去に使用されてきた。最近では多様な新規の方法が実行され他にも色々な方法が研究中である[総説には世界保健機関の最近の出版物を参照のこと(WHO/CDS/RBM/2001.35)]。クロロキン、アモダキン(amodaquine)、メフロキンおよびキニンのようなキノリン化合物は葉酸拮抗配合剤スルファドキシン/ピリメタミンと組み合わされている。メフロキンとスルファドキシン/ピリメタミンとの配合剤(Fansimef、ロシュ)はこれらの化合物が相加的な抗マラリア活性を有するという観察に基づき開発された。しかし、予想しないことに合併症を有さないマラリアの第一線治療としてこの配合剤を使用するとメフロキン耐性が速やかに確立するに至った。したがって、この配合剤は予防にも治療にも推奨されていない。アルテミシニンは治療期間を短縮しコンプライアンスを高めるために半減期の長い薬物と組み合わされる。アルテミシニンで原虫のクリアランスが速やかであるのは組み合わせる相手の薬物に対する耐性が確立する機会を減らすと考えられている。アルテミシニン系配合剤にはアルテスナートを加えたクロロキンもしくはアモダキンまたはメフロキンまたはスルファドキシン/ピリメタミン、およびアルテメテルとルメファントリン(lumefantrine)との配合剤がある。CoartemおよびRiamet(ノバルティス)の商標で知られている後者の配合剤は固定配合剤として入手でき、現在利用できる最も有望な併用治療となっている。この配合剤は行政当局から最近承認された。研究中の配合剤には様々なピペラキン(piperaquine)−ジヒドロアルテミシニン−トリメトプリム(Artecom)、Artecomを加えたプリマキン(CV8)、アルテスナートを加えたピロナリジン(pyronaridine)、ナフトキンを加えたジヒドロアルテミシニンおよびクロログアニル−ダプソンを加えたアルテスナート(CDAまたはLapdapプラス)がある。抗生物質であるテトラサイクリンおよびドキシサイクリンはキニンと組み合わせて使用されることが多く、クリンダマイシンはキニン、クロロキン、最近ではホスミドマイシンと組み合わされる。ホスミドマイシンはイソプレノイド生合成の非メバロン酸経路の主要酵素である1−デオキシ−D−キシルロース5−リン酸(DOXP)を阻害する新規な抗マラリア薬である。
C.新規な抗マラリア薬
薬物作用および薬剤耐性の基本となるメカニズムが解明され、プラスモディウムが利用する生化学経路の理解が進んでいることから、抗マラリア薬の開発は今や以前よりも迅速に進むことができると期待されている。プラスモディウムにおける代謝経路のあらましをインターネットから入手できる(http://sites.huji.ac.il/malaria/)。プラスモディウムのゲノムプロジェクトの実行、改良トランスフェクション法の開発、およびRNA干渉法の適用により学ぶ過程は加速した。抗マラリア薬の開発に対する新しい取り込みは最近の出版物に総説されている[Winstanley、Parasitology Today 16:146〜153頁(2000);Antimalarial chemotherapy. Mechanisms of action, resistance, and new directions in drug discovery, Humana、トトワ、ニュージャージー州、P. Rosenthal編(2001);Ridley、Nature 415:686〜693頁(2002);RobertおよびMcConkey、Molecular & Biochemical Parasitology 119:273〜278頁(2002)])。これらの努力について以下の節に簡潔に記載し、これらの努力と本発明の構成である方法とを対比させることを目的とした。
マラリア療法への現在の手法を3部門、すなわち既知の薬物の改善版、新しく同定された標的に対する薬物、および未知のあまり規定されていない標的を有する薬物に分けることができる。
1)既知の薬物の改良型
クロロキンは依然として新規な薬物開発の魅力的なリードである。新しいリード化合物の例には短鎖クロロキンアナログ(ビスキノリン)、毒性代謝物の形成能を欠くアモジアキンアナログ、および本来中国で開発された4−アミノキノリンであるピロナリジンがある。大きな化合物ライブラリーのハイスループットスクリーニングがキノリンの結合と類似した方法でヘムと結合する新規な構造を同定するために採用された。アルテミシニン関連トリオキサンが2000年10月24日に公表された米国特許第6,136,847号に記載されている。新薬候補にはピリメタミンの標的であるDHFRに対するビグアニド、ならびにプラスモディウムにおけるプリンおよびピリミジン代謝の他のインヒビターもある(1997年9月2日に公表された米国特許第5,663,155号)。アトバコンの標的であるチトクロムcレダクターゼの新規なインヒビターにはβ−メトキシアクリレートがある。
2.新たに同定された標的に対する薬物
2.1.プロテアーゼインヒビター
後生動物寄生虫による感染の治療のためのプロテアーゼインヒビターは1998年4月14日に公表された米国特許第5,739,170号および2001年2月27日に公表された米国特許第6,194,421B1号に記載されている。
2.1.2.ヘモグロビン分解に関与するプロテアーゼ
赤内型プラスモディウムは食胞内で宿主細胞のヘモグロビンの80%以下を分解する。ヘモグロビンは食胞内でペプチドに分解され、このペプチドは細胞質に運び出されアミノ酸に最終分解される。ヘモグロビン分解に関与する酵素にはアスパラギン酸プロテアーゼ(プラスメプシン(plasmepsin))、システインプロテアーゼであるファルシパイン(falcipain)、メタロペプチダーゼおよび他に数種のペプチダーゼがある。最もよく知られているヘモグロビン分解性プロテアーゼはアスパラギン酸プロテアーゼである[Coombsら、Trends in Parasitology 17:532〜7頁(2001)]。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のアスパラギン酸プロテアーゼの触媒活性を阻害する薬物が以前に開発され、レニンのようなヒトアスパラギン酸プロテアーゼ、ならびにアスペルギルス(Aspergillus)およびカンジダ(Candida)のような種々の病原微生物のアスパラギン酸プロテアーゼを阻害するリードが同定された。プラスモディウム属ゲノムのホモロジー検索により、以前から知られている2つのプラスメプシンIおよびII以外に8つのプラスメプシンがあることが明らかになった。プラスモディウムのプラスメプシンのインヒビターは、ヒトアスパラギン酸プロテアーゼに対する薬物をスクリーニングするために合成された化合物の大集団から発見される可能性もある。ホモロジーモデリングはマラリア原虫のin vitro成長を阻害する、システインプロテアーゼであるファルシパイン−2(ビニルスルホン、イソキノロン)のインヒビターを明らかにした[Sabnisら、J. Biomol. Struct. Dyn. 19、765〜74頁(2002)]。課題はプラスモディウムの酵素に対して活性であるが、相同なヒトプロテアーゼには活性でないか、または活性がずっと低いインヒビターを発見することである。
2.1.3.赤血球への侵入に関与するプロテアーゼ
赤血球へのメロゾイトの侵入には原虫および赤血球表面のいくつかのタンパク質のタンパク質分解性切断が必要である。メロゾイトにより発現される2つのプロテアーゼ、すなわち熱帯熱マラリア原虫スブチリシン様プロテアーゼ−1および2(PfSUB−1およびPfSUB−2)が検討された。これらおよびいくつかの他のプロテアーゼが潜在的な薬物標的である[Blackman、Curr.Drug Targets 1:59〜83頁(2000)]。
2.2.脂肪酸合成
脂肪酸合成は2−炭素ドナーであるマロニルコエンザイムA(CoA)を利用したアシル鎖の反復伸長として起こる。細菌では(II型経路として知られる)この経路にはいくつかの脂肪酸シンターゼ(FAS)が関与する。動物では(I型経路として知られる)この経路は単一の高分子量多機能タンパク質により触媒される。de novo脂肪酸合成のためのII型経路は細菌だけではなく植物およびプラスモディウムを含めたある種の寄生虫のアピコプラストにも存在する。プラスモディウムII型経路にはアシルキャリアタンパク質(ACP)、β−ケトアシル−ACPシンターゼIII(FabH)およびI/II(FabB/F)、ならびにエノイル−ACPレダクターゼ(FabI)が関与する。抗生物質トリクロサンおよびチオラクトマイシンならびにそれらの誘導体は、脂肪酸合成を阻害する抗マラリア新薬の探索におけるリード化合物である[Wallerら、Antimicrobial Agents and chemotherapy 47:297〜301頁(2003);Priggeら、Biochemistry 42:1160〜69頁(2003)]。
2.3.イソプレノイド生合成の非メバロン酸経路
イソプレノイドはヒトにおいてメバロン酸経路を経由して合成されるが、プラスモディウムではMEP経路とも呼ばれる非メバロン酸経路により合成される。この経路はある種の細菌および植物で作動することが知られている。プラスモディウムではアピコプラストの環状DNAによりコードされる酵素を必要とする。非メバロン酸経路の主要酵素である1−デオキシ−D−キシルロース5−リン酸[DOXP]レダクトイソメラーゼはホスミドマイシンにより阻害される。この抗生物質はもともとストレプトマイセス・ラベンジュレ(Streptomyces lavendulae)から単離された。ホスミドマイシンはin vitroおよびマウスマラリアに強力な抗マラリア活性を有する。最初の臨床治験はこの薬物の耐容性が良好であることを示している。しかし、不幸なことにこの薬物は耐性の速やかな確立をもたらす。したがって、この薬物を他の薬物と組み合わせて使用しなければならない。前臨床試験はホスミドマイシンとリンコマイシンおよびクリンダマイシンとの組み合わせが有用な可能性があると示唆している。
2.4.プロテインプレニルトランスフェラーゼ
Ras、Rac、Rap、Rho、Rabのような低分子量Gタンパク質、ヘテロ三量体Gタンパク質γサブユニット、核ラミン、プロテインキナーゼ、およびプロテインチロシンホスファターゼを含めた多様なタンパク質が翻訳後にカルボキシル末端近くでファルネシル(C15)基またはゲラニルゲラニル(C20)基でプレニル化される。ファルネシル基またはゲラニルゲラニル基の結合はプレニルトランスフェラーゼにより触媒される。これらの酵素のインヒビターは広く研究された抗癌剤の候補である。2つのプレニルトランスフェラーゼPFTおよびPGGT−Iが熱帯熱マラリア原虫で同定された。いくつかのペプチド模倣体およびモノテルペン、リモネンはプレニル化および原虫の成長を阻害する[Chakrabartiら、J. Biol. Chem. 277:42066〜73頁(2002)]。ファルネシルトランスフェラーゼインヒビター(ホスホセキテルペン)は2002年8月2日に公表された米国特許第6,429,203号に記載されている)。
2.5.乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)
プラスモディウムLDH(pLDH)は有性世代および無性世代のプラスモディウムによるATPの嫌気的生成に必須である。pLDHの種々のアイソマーが種々のプラスモディウム属種にみられる。それらの検出は診断テストとして、および薬物の抗マラリア効力を監視するために使用されている。ヒトLDHとの構造差が原因で、pLDHは有望な薬物標的とみなされている[Dunnら、Nat. Struct. Biol. 3:912〜5頁、(1996)]。
2.6.リン脂質生合成のインヒビター
赤血球のプラスモディウムの発達と増殖には大量のリン脂質が必要である。感染した赤血球に存在する主要なリン脂質であるホスファチジルコリン(PC)は、原虫の酵素により血漿由来コリンから主に合成される。多数のコリン様化合物が合成され、一部は抗マラリア活性を有している。リード化合物G25およびそのアナログであるVB5−Tは熱帯熱マラリア原虫および三日熱マラリア原虫のin vitroでの成長を哺乳動物細胞系に毒性でない濃度で阻害する。非常に低用量のG25療法は 熱帯熱マラリア原虫およびP.シノモルギ(P. cynomolgi)に感染したサルを治癒した。これらのコリン系薬はコリンの取り込みを妨げることによりPC合成を妨げると考えられる[Wengelnikら、Science 295:1311〜14頁(2002)]。
2.7.グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)合成
GPIは真核生物に遍在する。GPIはグリコシルトランスフェラーゼの作用によりホスファチジルイノシトール(PI)に糖残基を連続付加することにより小胞体(ER)で合成される。成熟中のGPIは膜を通過して細胞質からERの内腔側に移行する。合成の完了後、GPI糖脂質は遊離またはタンパク質と共有結合した形で細胞表面に運び出される。GPIはプラスモディウムと同様に他の寄生虫の重要な炎症誘導化合物である。2つのGPIアンカータンパク質、サーカムスポロゾイトタンパク質(CS)ならびにメロゾイト表面タンパク質MSP−1およびMSP−2、ならびにGPI自体がワクチンの候補である。プラスモディウムのPGIと哺乳動物が合成するGPIの間に差があることから、プラスモディウムにおけるGPI合成は魅力的な薬物標的である[Delorenziら、Infection and Immunity 70:4510〜4522頁(2002)]。
この手法のための原理の証明がトリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei)で得られた。PIG−B遺伝子の破壊によるGPI合成の遮断は血液段階のT.ブルセイを死滅させた。
2.8.プロテインキナーゼ
プラスモディウムタンパク質キナーゼは数群および数ファミリーに分けることができる[Kappesら、Parasitology Today 15:449〜454頁(1999)]。これらのキナーゼの大部分はアミノ酸レベルで哺乳動物の同等物と40から60%の相同性を示す。薬物開発に特に興味深いのは、植物および一部の原生動物種にみられるが哺乳動物にはみられないカルシウム依存性プロテインキナーゼ(CDPK)ならびにPfPK1、PfPK4およびFESTのような触媒ドメインに大きな挿入を有するいくつかのキナーゼである。Pfnek−1はこのクラスの潜在的な薬物標的の一例である。Pfnek−1は、真核細胞の分裂に関与するnever−in−mitosis/アスペルギルス(NIMA)/NIMA様キナーゼ(Nek)ファミリーのプロテインキナーゼとホモロジーを示す。他の熱帯熱マラリア原虫プロテインキナーゼおよびNIMA/Nekファミリーと同様にPfnek−1は触媒ドメイン以外に大きなC末端伸長部を有する。その基質の1つは異型の熱帯熱マラリア原虫MAPKホモログのPfmap−2である。細菌に発現させた組換えPfnek−1タンパク質を、インヒビターをスクリーニングするための阻害アッセイに使用できる[[Dorinら、Eur J Biochem 268:2600〜8頁(2001)]。既知のプロテインチロシンキナーゼと相同性を有するタンパク質はプラスモディウムでは発見されていないが、プロテインチロシンリン酸化は起こることが報告されている。
2.9.ポリアミン
全ての真核生物と同様にプラスモディウムは3つのポリアミン、すなわちジアミンであるプトレシンならびにその誘導体であるスペルミジンおよびスペルミンを有する。これらの化合物は細胞増殖および分化に多面発現的な機能を有する。ポリアミンの機能を妨げる方法には、ポリアミン合成阻害、ポリアミンの逆変換阻害、およびポリアミン輸送の阻害、または構造アナログによるポリアミン代謝の脱調節がある。マラリアおよび他の病原原生動物により引き起こされる疾病の治療のためのポリアミン合成インヒビターとポリアミン構造アナログとの組み合わせは研究中である。この手法は新規な抗癌薬の探索の際に作製された大きな化合物ライブラリーの恩恵を受けている[Mullerら、Trends in Parasitology 17:242〜9頁(2001)]。
2.10.ヒストンデアセチラーゼ
ヒストンは特定のリジン残基の連続アセチル化/脱アセチル化を介した転写制御に関与する核タンパク質である。熱帯熱マラリア原虫にヒストンは豊富に存在し、少なくとも1つのヒストンデアセチラーゼが同定された。フザリウムspp.(Fusarium spp.)から単離された環状テトラペプチドであるアピシジン(apicidin)は、おそらく連続アセチル化/脱アセチル化過程を妨げることにより哺乳動物細胞の増殖およびプラスモディウムspp.を含めたアピコンプレックス門の寄生虫のin vitro発達を抑制する[Darkin-Rattrayら、Proc Natl Acad Sci USA 93:13143〜7頁(1996)]。この発見により、寄生虫に選択的なヒストンデアセチラーゼインヒビターの探索に至った。リード化合物にはトリコスタチンA(trichostatin A)(TSA)、n−酪酸ナトリウム、ヘキサメチレンビスアセトアミド(HBMA)、ならびに最近開発されたHMBAアナログであるアゼラインビスヒドロキサム酸(azelaic bishydroxamic acid)(ABHA)およびスベリン酸ビスジメチルアミドのアナログがある[Andrewsら、International Journal For Parasitology 30:761〜768頁(2000)]。
2.11.シキミ酸経路
シキミ酸経路は原核生物、真菌ならびに植物および藻類の色素体に存在するが、脊椎動物には存在しない。この経路はp−アミノ安息香酸エステル(PABA)および葉酸エステルの合成のための必須の基質であるコリスミ酸エステルを発生する。この経路はユビキノン、芳香族アミノ酸およびほとんど全ての他の芳香族化合物の合成にも必要である。シキミ酸経路を有さない哺乳動物は外因性葉酸エステルに頼っている。コリスミ酸シンターゼ(CS)は最近開発されたRNA干渉法を用いて有用な薬物標的として評価された[RobertおよびMcConkey、Molecular & Biochemical Parasitology 119:273〜278頁(2002)])。この経路を阻害する薬物のリードはすでに入手可能である。5−エノピルビルシキミ酸3−リン酸シンターゼのインヒビターである除草剤グリホセート(商標ラウンドアップ、Zero、Tumbleweedの方がよく知られている)はin vitroでプラスモディウムの成長を阻害する。
2.12.シクロフィリン
シクロフィリンは全ての生物に存在する。ヒトシクロフィリンA(hCyPA)は免疫抑制剤シクロスポリンA(CSA)のサイトゾルでの標的として本来同定された。CSAでマウスの免疫を抑制する試みから、CSAがげっ歯類マラリアの成長を抑制するという予想外の事実が明らかとなった。CSAおよびいくつかの非免疫抑制性CSAアナログがin vitroで抗マラリア活性を有することがその後示された。早期赤血球内輪状体段階の原虫が特に感受性が高いと考えられる。3つのクローニングされたプラスモディウムシクロフィリンの1つでPfCyP19がヒトCypAに最も近いホモログである。他のシクロフィリンのようにPfCyP19はペプチジルプロリルシス/トランスイソメラーゼ(PPラーゼまたはラタマーゼ)活性を有する。これは高親和性でCSAと結合し、原虫の成長を阻害する能力はロタマーゼ活性の阻害と関係せず、PfCyP19−CSA複合体による未同定の標的タンパク質の阻害に関係するようである。
2.13.輸送系
赤血球への原虫の侵入は、原虫の膜輸送系の変化および未感染の赤血球にはみられない新しい透過経路(NPP)の出現と関連している[Kirk、Physiological Reviews 81:495〜537頁(2001)に総説]。原虫および/または赤血球由来輸送体タンパク質は空胞膜および原虫表面に局在する。ATP/ADP交換体、V型H1−ATPアーゼ、H1−PPアーゼのような原虫表面の輸送体の一部は概して細胞内小器官の膜にみられる。輸送タンパク質はマラリア化学療法への新しい手法にとって興味深いものである。他方で原虫による養分の取り込みを遮断する薬物を設計できる。他方で細胞内の原虫に細胞毒物をターゲッティングするための経路として輸送系を活用できる。研究中の薬物標的の候補には養分取り込みに役割を果たす感染した赤血球表面に局在する電圧依存性チャネル[Desaiら、Nature 406:949〜51頁(2000)]、δ−アミノレブリン酸デヒドラターゼ(ALAD)の取り込みに関与し、ヘム合成のためにプラスモディウムにより使用される宿主の他の酵素の取り込みにもおそらく関与するタンパク質[Bondayら、Nature Medicine 6:898〜903頁(2000)]、および感染した赤血球に存在する原虫の原形質膜に局在する、原虫にコードされるヘキソース輸送体[Woodrowら、J. Biol. Chem. 274:7272〜7頁(1999)]がある。
3.作用機作が未知である抗マラリア薬
3.1 トリプタントリン(tryptanthrin)
1963年に合成された後、インドロ[2,1−b]−キナゾリン−6,12−ジオン(トリプタントリン)が古代ヨーロッパおよび中国の染料植物および薬用草本であるイサチスチンクトリア(Isatis tinctoria)(タイセイ)から単離された。この化合物は容易に合成でき、過剰のトリプトファンおよびアントラニル酸を含む培地で増殖させたカンジダ・リポリティカ(Candida lipolytica)により産生されることからトリプタントリンという名前になっている。トリプタントリンは多様な微生物、具体的にはミコバクテリア、熱帯リーシュマニア(Leishmania donovani)、トリパノソーマ・クルージ(Trypanosoma cruzi)、およびプラスモディウムのような細胞内微生物に対して活性を有する[Bhattacharjeeら、Bioorganic & MedicinalChemistry 10:1979〜1989頁(2002);Scovillら、Antimicrobial Agents And Chemotherapy 46:882〜883頁(2002)]。この化合物はアリール水素受容体のアゴニストであり、肝細胞チトクロムP4501A1発現を誘導し[Schrenkら、Biochem. Pharmacol. 54:165〜71頁(1997)]、シクロオキシゲナーゼ2および5−リポキシゲナーゼを阻害する[Danzら、Planta Med. 68:152〜7頁(2002)]。細胞内微生物に対する作用機作は未知である。マラリア原虫に対する活性が最適となるように開発された一連の誘導体が2001年9月4日に公表された米国特許第6,284,772号に記載されている。
3.2 フェブリフジン(febrifugine)
フェブリフジンおよびイソフェブリフジンは1940年代後半および1950年前半にジョウザンアジサイ(Dichroa febrifuga)またはヒドランゲア・ウンベラーテ(Hydrangea umbellate)の抽出物から抗マラリア剤として発見された。フェブリフジンはクロロキンと構造類似性を示すが[Chang, J. Theor. Biol. 59:497〜501頁、1976]、その抗マラリア作用はヘモグロビンの分解に関係していないようである。この化合物は一酸化窒素生成を増加させ、これはプラスモディウムに対する作用様式の可能性がある[Murataら、Biochemical Pharmacology 58:1593〜1601頁(19990)。フェブリフジンの合成とその抗マラリア活性は米国特許第6,420,372B1号に記載されている。
3.3.ハイブリッドペプチド
セクロピン、アタシン(attacin)、マガイニン、サクロトキシン(sacrotoxin)、サペシン(sapecin)、バクテネシン(bactenecin)、アラメチジシン(alamethidicin)、デフェンシンおよびPGLA2のような天然環状ペプチドおよびストレプトリジン、メリチン、バルバトリジン、パラダキシン(paradaxin)、およびデルタヘモリジンのようなトキシンから成るペプチドが1998年2月3日に公表された米国特許第5,714,467号に抗マラリア化合物として記載されている。
III.サイトカインの抗マラリア作用
インターロイキン1(IL−1)は、スポロゾイトの接種前に適用した場合にのみアカゲザルにおける熱帯熱マラリア原虫スポロゾイトの肝臓での発達を抑制する[Maheshwari、Bull. World Health Organ. 68:138〜44頁1990]]。IL−1の防御作用はIL−6[Vredenら、Eur. J. Immunol. 22:2271〜5頁(1992)]またはC反応性タンパク質(CRP)のような急性期タンパク質を誘導する能力が原因の可能性がある。CRPはおそらくホスホリルコリン結合部位を介して熱帯熱マラリア原虫またはP.ヨエリーのスポロゾイトと結合することによりin vitroおよびin vivoで肝細胞の感染を抑制する。テレピン油の注射もCRPの産生を誘導し、ラットをマラリア感染から守る。テレピン油を注射されたラットの血清で防御効果を移動でき、この防御は抗CRP抗体により無効となる[J. Immunol 139:4192頁(1987)]。インターフェロンγ(IFN−γ)は肝細胞内でプラスモディウムの赤外型(EEF)の発生を妨げると考えられる[J. Immunol 138:4447頁]。低用量でIFN−γはin vitro[J. Immunol 139:2020頁(1987)]およびin vivo[Ferreiraら、Science 232:881〜884頁(1986);Masheshwariら、Inf. Immunity 53:628〜630頁1986]]で肝細胞内のEEFの発生を抑制する。第−2、0、および+2日に与えられた5つの用量のヒトIFN−γは、第0日でのP.シノモルギのスポロゾイト感染からアカゲザルを防御した。トロフォゾイト誘導性感染に対する防御はみられなかった[Maheshwari、Bull. World Health Organ. 68:138〜44頁1990]]。マラリアの治療へのIFN−γの使用は1993年12月14日に公表された米国特許第5,270,037号および1990年4月10日に公表された米国特許第4,915,941号に記載されている。腫瘍壊死因子(TNF)の投与はP.ビンケイ(P. vinckei)による感染から防御しなかった(Acta Tropica 45:289頁(1988)]が、ミニポンプによる長期投与はP.チャバウディ(P. chabaudi)由来スポロゾイトの感染後の虫血症を減少させた[J. lmmunol. 139:3493頁、1987)]。
IV.マラリアワクチン
マラリアと闘うための別の重要な方法はワクチン接種である。弱毒化微生物または非病原性成分の免疫による防御免疫の誘導は医学の大きな功績である。ワクチン接種によりいくつかの急性感染症の罹患と死亡が事実上なくなった。不幸なことにワクチン接種は結核およびマラリアのような慢性感染の防止にはあまり成功していない。20世紀の第二部では熱帯熱マラリア原虫および三日熱マラリア原虫の3つの主要発達段階に対するワクチンを開発するために集中した努力が払われた。前赤血球段階に対するワクチンは感染がヒト宿主の血液に入るのを防止することを目的とする。血液段階の無性世代原虫に対するワクチンは、感染が一旦血液に入り込んだこれらの疾病誘起段階と闘うことを目的としている。血中およびカの中腸内の原虫の有性世代に対するワクチンは媒介動物であるカが原虫に感染することを妨げることによりヒト集団およびカ集団にマラリアが伝播するのを遮る。現在は多成分ワクチンが開発中である。これらのワクチンは、プラスモディウムの異なる発達段階で発現する多数の抗原に対する体液性免疫および細胞性免疫を誘導することを目的とする[最近の例についてはKumarら、Trends in Parasitology 18:129頁(2002)を参照のこと]。過去に試験されたワクチンの中で有効性を立証されたものはない。
IV.宿主成分のターゲッティング
ワクチンおよび大部分の抗マラリア薬の標的は原虫の成分である。これらの標的の多くは原虫の生存および成長に必須である宿主原虫相互作用に関与し、かつ/または感染により引き起こされる病状に関与する。現在の方法の代替となる可能性があるのは原虫により生成される分子と相互作用することが知られている宿主成分をモジュレートすることである。一見したところでは、この方法は経験にそぐわないようである。実際に従来の抗微生物化学療法の重要な必要条件は宿主の機能を妨げないことである。しかし、宿主の成分のターゲッティングは薬剤耐性が薬物標的の変化をもたらすことができないという利点がある。2つの重要なクラスの抗マラリア薬であるキノリンおよびアルテミシニンは、それらが宿主の成分であるヘムを標的とする点で例外的である。キノリン耐性は薬物輸送に影響する変異体の選択を必要とすることから非常にゆっくりと確立する。標的となる宿主成分が微生物外部に存在する場合には耐性はなお生じにくい。マラリアのげっ歯類モデルでは肝細胞または赤血球表面の宿主細胞タンパク質を遮断することにより、および多様なシグナル伝達インヒビターにより、この疾患を防止または軽減できる(以下参照)。これらの発見は疾患の病因の理解およびワクチンの設計に貢献したが、抗マラリア薬の開発プロジェクトを全く促進しなかった。本発明は、宿主により生成され、感染を発現するためにマラリア原虫が必要とするタンパク質に関する。この宿主タンパク質は原虫の膜に封入されない。肝細胞増殖因子として知られる別の宿主タンパク質に対する受容体として働くのは、Metとして知られるプロテインチロシンキナーゼである。
in vivoで抗マラリア剤に変化する化合物および抗マラリア剤から形成される代謝物と類似した代謝物をin vivoで生成する化合物を用いて本発明の方法を実施できることも理解されるであろう。
1つまたは複数の抗マラリア薬の配合剤を本発明の方法の実施に採用できる。このように、例えばHGF活性インヒビターを、クロロキンのような他の抗マラリア薬と一緒に、またはスルファドキシン/ピリメタミンのような抗マラリア薬の配合剤と一緒に使用できる。遊離塩基の形で、または薬学的に許容される酸付加塩の形で抗マラリア薬を使用できる。適当な塩の例は塩化物、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、および二リン酸塩である。他の水溶性、無毒性、無機および有機塩も使用できる。
本発明の方法を実施する上で、本抗マラリア剤の作用様式が主に肝臓であることから、経口経路で抗マラリア剤をヒト宿主に投与する。経口投与の目的でカプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、トローチ剤、および顆粒剤のような固形剤形、または当技術分野で通常使用される水のような不活性希釈剤を含む例えば乳剤、液剤、懸濁液剤、シロップ剤、およびエリキシル剤のような液体剤形で本発明の抗マラリア剤を調製できる。他の投与様式も採用できる。
本抗マラリア剤はin vivoでマラリア媒介動物による感染を防止もしくは少なくとも抑制するために、またはin vivoでマラリアの拡散を防止もしくは少なくとも抑制するために適当な濃度の薬剤をもたらすのに十分な量で本発明の方法に採用される。このように薬剤の量はヒト宿主による吸収、分布およびクリアランスに依存する。もちろん抗マラリア剤の有効性は用量に関係する。抗マラリア剤の投薬量は検出できる最小の効果をもたらすのに十分であるべきだが、投薬量は立証された致死量の多くとも10分の1を下回る必要がある。宿主に投与された抗マラリア剤の投薬量は限界値の間広くにわたって変動し得る。薬剤を治療有効な最少量で投与でき、患者が耐える最大投薬量まで所望により投薬量を増加できる。本抗マラリア剤を比較的高負荷用量の後で低維持用量として投与できるし、または本薬剤を均一な投薬量で投与できる。
投薬量および投与回数は本発明の方法に採用される抗マラリア剤に応じて変動する。例えばゲニステインを経口経路で1日5mgから約5000mg/日、好ましくは1日約50mgから約500mg/日の量で使用できる。一般に投薬量は1日約500mgを超えず、1日約50mgを超えないことが最も多い。抗マラリア剤の用量は平均的な体格の成人に関して明記される。このように、投薬量は体格の小さなまたは大きな患者について20〜25%調整できる。同様に、小児投薬量は十分に知られている投薬量計算式を用いて調整できる。
本発明の抗マラリア剤を製剤するためにHGF活性インヒビターと組み合わせて使用される抗マラリア薬の量は一般にマラリアの治療に安全で有効であることが分かっている量を超えない。このように、例としてプリマキン二リン酸を5〜7.5mg含む錠剤にして1日2〜3錠の割合で経口投与できる。成人に対するプリマキンの用量は経口で塩基約15mg/日(塩26mg/日)または経口で塩基約45mg/週(塩79mg/週)である。小児に対しては用量は経口で塩基約0.3mg/kg/日(塩0.5mg/kg/日)または経口で塩基約0.9mg/kg/週(塩1.5mg/kg/週)である。
細胞の感染の防止または抑制における本発明の抗マラリア剤の有効性は標準in vitroアッセイを用いて実証される。このように、マラリア感染または複製に及ぼす本抗マラリア剤の阻害作用は、抗マラリア剤の存在下または非存在下で培養肝細胞にマラリアスポロゾイトを加え、次に標準法で肝細胞内でのスポロゾイトの増殖を試験することにより実証できる。マラリア感染または複製を防止または阻害することに果たす抗マラリア剤の有効性をin vivoでマラリア感染の哺乳動物モデルで確認できる。これらのアッセイを実施するために必要なマラリアを、通常の方法を用いて通常の起源から得ることができる。
丸剤、錠剤、ドロップ、トローチ剤、カプセル剤、坐剤、注射用または経口用液剤などの剤形で、ヒトを含むがそれに限定されない哺乳動物の予防または治療に、本抗マラリア剤およびそれらの薬学的に許容される塩を使用できる。
哺乳動物における病的状態の治療に使用するための医薬組成物を調製するために、適当な薬学的に許容される担体、希釈剤およびアジュバントを本明細書において記載された抗マラリア剤と組み合わせることができる。本発明の医薬組成物は固体または液体の薬学的に許容される無毒担体と一緒に有効成分を含有する。そのような医薬担体は、石油、動物、植物、または合成起源のものを含めた水または油のような無菌液体であり得る。適当な液体の例はラッカセイ油、ダイズ油、鉱物油、ゴマ油などである。医薬組成物が静脈内投与される場合、水が好ましい担体である。生理食塩水およびブドウ糖液およびグリセリン溶液もまた液体担体、詳細には注射用溶液として採用できる。適当な医薬賦形剤にはデンプン、ブドウ糖、乳糖、ショ糖、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、白亜、シリカゲル、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセリン、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセリン、プロピレングリコール、水、エタノールなどがある。これらの組成物は液剤、懸濁液剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放性製剤などの剤形をとり得る。適当な医薬担体はE. W. Martinの「Remington's Pharmaceutical Sciences」に記載されている。医薬組成物は、宿主に適正に投与するための剤形をもたらすために適当な量の担体と一緒に治療有効量の有効成分を含有する。
まとめると、本抗マラリア剤はヒトへのマラリア感染を予防するための薬剤として特に有用である。本抗マラリア剤は極めて珍しくかつ予想しないことに、マラリア媒介動物に対して活性を示す。本抗マラリア剤は培養肝細胞およびマラリアスポロゾイトを注射されたマウスの肝臓におけるマラリアスポロゾイトの増加を顕著に抑制する。本抗マラリア剤は、具体的には感染の発生を低減することにより、ヒトにおける死亡および罹患の発症を低減することができる。
細胞を通過するスポロゾイトの移行、および機械的な細胞の損傷形成が「感染感受性誘導因子(ISIF)」の放出を誘導することを示す図である。 スポロゾイトが横断した宿主細胞により分泌されるHGFが感染に必要であることを示す図である。 プラスモディウム感染に及ぼすHGFの作用がHGF受容体METに媒介されることを示す図である。 in vitroおよびin vivoでプラスモディウムが横断した細胞によりHGFが発現され、METを介したHGFのシグナル伝達がマラリア感染に必須であることを示す図である。 in vitroでプラスモディウム・ベルゲイのスポロゾイトによる肝感染に対するゲニステインの作用を示す図である。 in vivoでプラスモディウム・ベルゲイのスポロゾイトによる肝感染に対するゲニステインの作用を示す図である。

Claims (16)

  1. マラリアの活性をin vivoで防止または抑制する方法であって、その必要があるヒトに、ヒトへのマラリア原虫の感染を防止もしくは抑制するのにまたはin vivoでマラリアの拡散を抑制するのに十分な量の抗マラリア剤を投与することを含む、上記方法。
  2. 抗マラリア剤が薬学的に許容される担体と混合されてヒトに投与される、請求項1記載の方法。
  3. ヒトに対して病原性を有するプラスモディウム属株による感染症の発現を防止するヒトの治療薬であって、該プラスモディウム属株が熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)、および卵形マラリア原虫(Plasmodium ovale)である、上記治療薬。
  4. プラスモディウムの肝細胞の通過により生じるプロテインチロシンキナーゼMetの活性化を妨げる分子を含む、請求項3記載の治療薬。
  5. HGFの活性化を妨げる、請求項4記載の分子。
  6. HGFを抑制し、それによりそのMetへの結合を防止する、請求項4記載の分子。
  7. Metアンタゴニストである、請求項4記載の分子。
  8. Metに対する抗体または該抗体のフラグメントである、請求項7記載の分子。
  9. オリゴヌクレオチド(アプタマー)である、請求項7記載の分子。
  10. Metに結合するがこれを活性化しないHGF変異体である、請求項7記載の分子。
  11. NK4タンパク質である、請求項10記載の分子。
  12. 低分子量プロテインチロシンキナーゼインヒビターである、請求項5記載の分子。
  13. ゲニステインである、請求項11記載の分子。
  14. 選択的Metアンタゴニストである、請求項12記載の分子。
  15. マラリアの活性をin vivoで防止または抑制する方法であって、その必要があるヒトに、ヒトへのマラリア原虫の感染を防止もしくは抑制するのにまたはin vivoでのマラリアの拡散を抑制するのに十分な量の抗マラリア剤を投与することを含む、上記方法。
  16. マラリアの活性をin vivoで防止または抑制する方法であって、その必要があるヒトに、ヒトへのマラリア原虫の感染を防止もしくは抑制するのにまたはin vivoでのマラリアの拡散を抑制するのに十分な量の抗マラリア剤を投与することを含む、上記方法。
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