JP2007517775A - 血管内皮細胞増殖インヒビターであるvegi−192aを使用して、癌を処置するための方法 - Google Patents
血管内皮細胞増殖インヒビターであるvegi−192aを使用して、癌を処置するための方法 Download PDFInfo
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Abstract
本発明は、癌を処置するための方法を特徴とする。本発明はまた、癌を処置するための組成物を特徴とする。これらの方法および組成物は、有効量のVEGI−192Aポリペプチドを投与することによる。本発明はまた、癌を処置するためのキットを提供する。そのキットは、VEGI−192Aポリペプチドと、癌を処置するためにそのVEGI−192Aポリペプチドを投与するための指示と、を備える。いくつかの実施形態において、その癌は、肺癌である。またはいくつかの実施形態において、その癌は、乳癌である。
Description
(関連出願の援用)
本願は、2003年12月11日に出願した米国仮特許出願番号60/529,173および2004年1月13日に出願した米国仮特許出願番号60/536,653の優先権の利益を要求し、これらの米国仮特許出願は、その全体は参考として援用される。
本願は、2003年12月11日に出願した米国仮特許出願番号60/529,173および2004年1月13日に出願した米国仮特許出願番号60/536,653の優先権の利益を要求し、これらの米国仮特許出願は、その全体は参考として援用される。
(連邦政府により後援を受けている研究または開発に関する陳述)
本発明は、米国国立衛生研究所の助成金NIH−HL060660およびNIH−CA102181のもと、米国政府の支援によりなされた。米国政府は、本発明において特定の権利を有し得る。
本発明は、米国国立衛生研究所の助成金NIH−HL060660およびNIH−CA102181のもと、米国政府の支援によりなされた。米国政府は、本発明において特定の権利を有し得る。
(発明の分野)
本発明は、血管内皮細胞増殖インヒビターであるVEGI−192Aを使用して、癌を処置するための方法に関連する。
本発明は、血管内皮細胞増殖インヒビターであるVEGI−192Aを使用して、癌を処置するための方法に関連する。
(発明の背景)
血管内皮細胞増殖インヒビター(VEGI)は、内皮細胞特異的な遺伝子産物である。ヒトVEGIについて4つのアイソフォームが報告されている。発見されたVEGIの最初の形態は、長さが174アミノ酸である;192アミノ酸残基の2つの異なる形態および251アミノ酸残基の1つの形態が、遅れて発見された。非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;特許文献1;特許文献2を参照のこと。全てのアイソフォームは、共通の遺伝子から生じるスプライシング改変体である。この4つのアイソフォームは、これらのN末端領域において異なるが、このタンパク質の残りをコードする151アミノ酸の同一コアを共有する。
血管内皮細胞増殖インヒビター(VEGI)は、内皮細胞特異的な遺伝子産物である。ヒトVEGIについて4つのアイソフォームが報告されている。発見されたVEGIの最初の形態は、長さが174アミノ酸である;192アミノ酸残基の2つの異なる形態および251アミノ酸残基の1つの形態が、遅れて発見された。非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;特許文献1;特許文献2を参照のこと。全てのアイソフォームは、共通の遺伝子から生じるスプライシング改変体である。この4つのアイソフォームは、これらのN末端領域において異なるが、このタンパク質の残りをコードする151アミノ酸の同一コアを共有する。
その4つのアイソフォームの配列比較は、腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーとのタンパク質と20〜30%の同一性を共有することを示唆する。これらの種々のアイソフォームの役割は、明確には示されていなかった。その役割は、明らかに難解かつ複雑であり、この分子の膜結合形態および分泌形態の両方が報告されている。これまでに報告された証拠はすべて、VEGI−174の分泌形態が腫瘍細胞の増殖を阻害してアポトーシスを開始することを指摘するようである。VEGI−174についての疎水性プロファイリングは、VEGI−174が、細胞外ドメインを構成するアミノ酸29〜174を有する代表的なII型膜貫通型タンパク質であることを示す。全長VEGI−174は、癌細胞において過剰発現された場合に腫瘍増殖に対して何の効果も有さず、また内皮細胞中トランスフェクトされた場合でもこれらの内皮細胞を阻害しない。非特許文献2;非特許文献3を参照のこと。TNFファミリーのいくつかのメンバー(例えば、TNFおよびFasリガンド)は、膜から切断されて可溶性タンパク質として機能することが、示されている。非特許文献4;非特許文献5を参照のこと。このことはまだ、VEGI−174について証明されていない。それにもかかわらず、VEGI−174の細胞外ドメインと、分泌タンパク質に由来する分泌シグナルペプチドとのみを含む、このVEGI−174の人工的な組換え分泌形態は、癌細胞において過剰発現された場合に腫瘍増殖を阻害した。非特許文献1;特許文献3を参照のこと。VEGI−251(最も豊富なアイソフォーム)は、推定上の分泌シグナルペプチドを有する。VEGI−251の過剰発現は、内皮細胞のアポトーシスおよび増殖阻害を引き起こす。特許文献1;特許文献2。同様に、VEGIの全形態により共有される、151アミノ酸のコア配列を含む組換えVEGIは、低い効力ではあるが、アポトーシスを開始して腫瘍細胞の増殖を妨害することが示された。非特許文献6を参照のこと。組換え生成されリフォールディングされたVEGI−192Aは、インビトロでウシ成体大動脈内皮(ABAE)細胞の増殖を阻害したことが報告された。特許文献1;特許文献2。タンパク質をリフォールディングするための方法は、特許文献4において報告された。
本明細書中で引用された全ての特許、特許出願、および刊行物は、これらの全体が本明細書により参考として援用される。この背景の節における刊行物に対する言及は、その刊行物が、本発明に対する先行技術を構成することの承認ではないことが、注意されるべきである。
国際公開03/039491号パンフレット
米国特許出願公開第2003/0170242号明細書
米国特許出願公開第2002/0111325号明細書
米国特許第6,583,268号明細書
Zhaiら,Int.J.Cancer(1999)82:131−136
Zhaiら,FASEB J.(1999)13:181−189
Chewら,FASEB J.(2002)16:742−744
Bjornbergら,Scand J.Immunol.(1995)42:418−424
Kayagakiら,J.Exp.Med.(1995)182:1777−83
Wang,ら,Acta Biochimica et Biophysica Sinica(2000)32(5):485−489
(発明の簡潔な要旨)
本発明は、組換え生成されたVEGI−192Aタンパク質が、癌(例えば、肺癌および乳癌)を処置することにおいて効果的であるという発見に基づく。
本発明は、組換え生成されたVEGI−192Aタンパク質が、癌(例えば、肺癌および乳癌)を処置することにおいて効果的であるという発見に基づく。
1つの局面において、本発明は、個体において癌を処置する方法であり、この方法は、この個体に対して有効量のVEGI−192Aポリペプチドを投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、この癌は、肺癌または乳癌である。
別の局面において、本発明は、個体において腫瘍の増殖を阻害する方法であり、この方法は、この個体に対して有効量のVEGI−192Aポリペプチドをこの個体に投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、この癌は、肺癌または乳癌である。
別の局面において、本発明は、個体における癌の進行を遅延させる方法であり、この方法は、この個体に対して有効量のVEGI−192Aポリペプチドをこの個体に投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、この癌は、肺癌または乳癌である。
別の局面において、本発明は、癌に罹患した個体における転移の発生を遅延させる方法であり、この方法は、この個体に対して有効量のVEGI−192Aポリペプチドをこの個体に投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、この癌は、肺癌または乳癌である。
別の局面において、この処置される癌は、進行型である。いくつかの実施形態において、この進行癌は、肺癌または乳癌である。
別の局面において、本発明は、VEGI−192Aポリペプチド(いくつかの実施形態において、有効量のVEGI−192Aポリペプチド)と、薬学的に受容可能な賦形剤とを含む、薬学的組成物である。
別の局面において、本発明は、本明細書に記載される方法のいずれかにおいて使用するためのキットを提供する。いくつかの実施形態において、このキットは、容器、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせたVEGI−192Aポリペプチドを含む組成物、および本明細書に記載の方法のいずれかにおいてこの組成物を使用するための指示、を含む。
本発明のいくつかの実施形態において、このVEGI−192Aポリペプチドは、ヒトVEGI−192Aである。いくつかの実施形態において、このVEGI−192Aポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態において、この個体は、哺乳動物である。いくつかの実施形態において、この個体はヒトである。
(発明の詳細な説明)
本発明は、治療上有効な量のVEGI−192Aタンパク質の投与が、末期(進行型)癌(例えば、肺癌および乳癌)を含む癌を処置するために使用され得るという発見に基づく。
(I.一般的な技術)
本発明の実施は、そうではないと示されない限りは、当業者の範囲内にある、分子生物学(組換え技術が挙げられる)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学についての従来の技術を使用する。このような技術は、文献(例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版(Sambrookら,1989)Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編,1984);Methods in Molecular Biology,Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis編,1998)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney編,1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.MatherおよびP.E.Roberts,1998)Plenum Press;Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths,およびD.G.Newell編,1993−8)J.WileyおよびSons;Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);Handbook of Experimental Immunology(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell,編);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.MillerおよびM.P.Calos編,1987);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら編,1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullisら編,1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coliganら編,1991);Short Protocols in Molecular Biology(WileyおよびSons,1999);Immunobiology(C.A.JanewayおよびP.Travers,1997);Antibodies(P.Finch,1997);Antibodies:a practical approach(D.Catty編,IRL Press,1988−1989);Monoclonal antibodies:a practical approach(P.ShepherdおよびC.Dean編,Oxford University Press,2000);Using antibodies:a laboratory manual(E.HarlowおよびD.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999));The Antibodies(M.ZanettiおよびJ.D.Capra編,Harwood Academic Publishers,1995);およびCancer:Principles and Practice of Oncology(V.T.DeVitaら編,J.B.Lippincott Company,1993))において十分に説明されている。
本発明は、治療上有効な量のVEGI−192Aタンパク質の投与が、末期(進行型)癌(例えば、肺癌および乳癌)を含む癌を処置するために使用され得るという発見に基づく。
(I.一般的な技術)
本発明の実施は、そうではないと示されない限りは、当業者の範囲内にある、分子生物学(組換え技術が挙げられる)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学についての従来の技術を使用する。このような技術は、文献(例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版(Sambrookら,1989)Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編,1984);Methods in Molecular Biology,Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis編,1998)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney編,1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.MatherおよびP.E.Roberts,1998)Plenum Press;Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths,およびD.G.Newell編,1993−8)J.WileyおよびSons;Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);Handbook of Experimental Immunology(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell,編);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.MillerおよびM.P.Calos編,1987);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら編,1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullisら編,1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coliganら編,1991);Short Protocols in Molecular Biology(WileyおよびSons,1999);Immunobiology(C.A.JanewayおよびP.Travers,1997);Antibodies(P.Finch,1997);Antibodies:a practical approach(D.Catty編,IRL Press,1988−1989);Monoclonal antibodies:a practical approach(P.ShepherdおよびC.Dean編,Oxford University Press,2000);Using antibodies:a laboratory manual(E.HarlowおよびD.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999));The Antibodies(M.ZanettiおよびJ.D.Capra編,Harwood Academic Publishers,1995);およびCancer:Principles and Practice of Oncology(V.T.DeVitaら編,J.B.Lippincott Company,1993))において十分に説明されている。
(II.定義)
薬物または薬学的組成物の「有効量」とは、有益な結果もしくは望ましい結果をもたらすために充分な量である。そのような結果としては、臨床上の結果、例えば、(例えば、乳癌または肺癌といった癌の状況において)腫瘍の大きさを減縮させること、癌性細胞の増殖の遅滞、その疾患に起因する1つ以上の症状を減少させること、その疾患に罹患している患者の生活の質を向上させること、その疾患を処置するために必要とされる他の薬物の用量を減少させること、標的化を介するなどして別の薬物の効果を増強させること、その疾患の進行を遅延させること、および/または個体の生存を延長することが挙げられる。有効量は、1回以上の投与により、投与され得る。本発明の目的のために、薬物、化合物、または薬学的組成物の有効量は、直接的または間接的に、癌性細胞の増殖を低減させる(または、癌性細胞を破壊する)ため、ならびに癌性細胞の転移の発生もしくは癌性細胞の増殖を低減および/または遅延させるために、充分な量である。癌の臨床的状況において理解されているように、薬物、化合物、または薬学的組成物の有効量は、別の薬物、化合物、または薬学的組成物と併せて達成され得るし、または達成されないかもしれない。それゆえ、「有効量」は、1つ以上の治療剤を投与する状況において考慮され得、単一の薬剤は、1つ以上の他の薬剤と併せて望ましい結果が達成され得るかまたは達成される場合には、有効量で与えられるとみなされ得る。
薬物または薬学的組成物の「有効量」とは、有益な結果もしくは望ましい結果をもたらすために充分な量である。そのような結果としては、臨床上の結果、例えば、(例えば、乳癌または肺癌といった癌の状況において)腫瘍の大きさを減縮させること、癌性細胞の増殖の遅滞、その疾患に起因する1つ以上の症状を減少させること、その疾患に罹患している患者の生活の質を向上させること、その疾患を処置するために必要とされる他の薬物の用量を減少させること、標的化を介するなどして別の薬物の効果を増強させること、その疾患の進行を遅延させること、および/または個体の生存を延長することが挙げられる。有効量は、1回以上の投与により、投与され得る。本発明の目的のために、薬物、化合物、または薬学的組成物の有効量は、直接的または間接的に、癌性細胞の増殖を低減させる(または、癌性細胞を破壊する)ため、ならびに癌性細胞の転移の発生もしくは癌性細胞の増殖を低減および/または遅延させるために、充分な量である。癌の臨床的状況において理解されているように、薬物、化合物、または薬学的組成物の有効量は、別の薬物、化合物、または薬学的組成物と併せて達成され得るし、または達成されないかもしれない。それゆえ、「有効量」は、1つ以上の治療剤を投与する状況において考慮され得、単一の薬剤は、1つ以上の他の薬剤と併せて望ましい結果が達成され得るかまたは達成される場合には、有効量で与えられるとみなされ得る。
本明細書で使用される場合、「と併せて(と組み合わせて)」とは、1種の処置様式を、VEGI−192Aおよび他の抗癌薬物の投与などの別の処置様式にさらに、投与することを指す。従って、「と併せて(と組み合わせて)」とは、1種の処置様式を、個体に他の処置様式を投与する前に、その投与中、またはその投与後に、投与することを指す。
本明細書で使用される場合、「処置」または「処置する」とは、有益な結果または望ましい結果(好ましくは、臨床上の結果)を得るためのアプローチである。本発明の目的のため、有益な臨床上の結果または望ましい臨床上の結果としては、癌性細胞の増殖を低減する(または、癌性細胞を破壊する)こと、癌において見られる癌性細胞の転移を低減すること、その腫瘍の大きさを減縮させること、その疾患に起因する1つ以上の症状を減少させること、その疾患に罹患している患者の生活の質を向上させること、その疾患を処置するために必要とされる他の薬物の用量を減少させること、その疾患の進行を遅延させること、および/または個体の生存を延長すること、のうちの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用される場合、「転移の発生を遅延させること」は、転移の発生を、遅らせること、妨害すること、遅延させること、遅滞させること、安定させること、および/または延期させることを意味する。この遅延は、処置される癌および/または個体の病歴に応じて、種々の時間の長さであり得る。当業者にとって明白であるように、十分な遅延または有意な遅延は、実際には、その個体がその転移を発生しないという点で、予防を包含する。
「個体」とは、脊椎動物であり、好ましくは哺乳動物であり、最も好ましくはヒトである。哺乳動物としては、家畜、競技用動物、ペット(例えば、ネコ、イヌ、ウマ)、霊長類、マウスおよびラットが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用される場合、「薬剤」とは、生物学的化合物、薬学的化合物、または化学的化合物を指す。限定しない例としては、単純であるかもしくは複雑である有機分子または無機分子、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、抗体、抗体誘導体、または抗体フラグメントが挙げられる。様々な化合物(例えば、低分子およびオリゴマー(例えば、オリゴペプチドおよびオリゴヌクレオチド)、ならびに様々なコア構造に基づく合成有機化合物)が合成され得る。さらに、様々な天然の供給源(例えば、植物抽出物または動物抽出物など)が、スクリーニングのための化合物を提供し得る。
本明細書で使用される場合、「治療剤」とは、治療(本明細書では、一般的に、癌の状況における治療)のために有用であるあらゆる薬剤(抗腫瘍薬物、毒物または細胞毒、細胞毒因子、および放射性薬剤が挙げられる)を意味する。
本明細書で使用される場合、そうではないと示されない限りは、単数形「a」、「an」、および「the」は、複数の言及物を包含することが、注意されるべきである。
(III.治療目的のためにVEGI−192Aを使用する方法)
本発明は、有効量のVEGI−192Aを個体に投与することにより、その個体において癌を処置するための方法を提供する。いくつかの実施形態において、その癌は肺癌または乳癌である。
本発明は、有効量のVEGI−192Aを個体に投与することにより、その個体において癌を処置するための方法を提供する。いくつかの実施形態において、その癌は肺癌または乳癌である。
本発明はまた、個体に対して有効量のVEGI−192Aをその個体に投与することにより、その個体において腫瘍増殖(例えば、肺癌または乳癌)を阻害するための方法も提供する。
本発明はまた、個体に対して有効量のVEGI−192Aをその個体に投与することにより、その個体において癌(例えば、肺癌または乳癌)の進行を遅延させる方法も提供する。
本発明はまた、癌(例えば、肺癌または乳癌)に罹患した個体における転移の発生を、有効量のVEGI−192Aをその個体に投与することにより遅延させる方法も提供する。
本発明はまた、癌(例えば、肺癌または乳癌)に罹患した個体における血管内皮細胞の成長および/または増殖を、有効量のVEGI−192Aをその個体に投与することにより阻害する方法も提供する。本発明はまた、癌(例えば、肺癌または乳癌)に罹患した個体における新血管形成を、有効量のVEGI−192Aをその個体に投与することにより阻害する方法も提供する。
処置される癌は、進行型であり得る。いくつかの実施形態において、この進行癌は、肺癌または乳癌である。
種々のVEGI−192A処方物が、投与のために使用され得る。いくつかの実施形態において、VEGI−192Aは、そのまま投与され得る。他の実施形態において、VEGI−192Aおよび薬学的に受容可能な賦形剤が、投与され、そして様々な処方物中に存在し得る。薬学的に受容可能な賦形剤は、当該分野において公知である。薬学的に受容可能な賦形剤は、薬理学的に有効な物質の投与を促進する比較的不活性な物質である。例えば、賦形剤は、形態または粘度を与え得、あるいは希釈剤として作用し得る。適切な賦形剤としては、安定化剤、湿潤剤および乳化剤、容量オスモル濃度を変化させるための塩、被包剤、緩衝剤、ならびに皮膚浸透増強剤が挙げられるが、これらに限定されない。非経口薬物送達および経口薬物送達のための賦形剤および処方物が、Remington,The Science and Practice of Pharmacy 第20版 Mack Publishing(2000)において示されている。
一般的に、これらの薬剤は、注射(例えば、腹腔内注射、静脈内注射、皮下注射、腫瘍内注射、筋内注射など)による投与のために処方されるが、他の投与形態(例えば、経口投与、粘膜投与など)もまた、使用され得る。投与は、全身投与(例えば、静脈内投与および腹腔内投与)であっても、限局的投与であってもよい。VEGI−192Aタンパク質は、部位特異的送達技術または標的化局所送達技術を介して投与される。部位特異的送達技術または標的化局所送達技術の例としては、様々な移植可能なVEGI−192Aタンパク質蓄積源もしくは局所送達カテーテル(例えば、注入カテーテル、留置カテーテル、または針状カテーテル)、合成移植物、外膜ラップ、シャントおよびステントもしくは他の移植可能なデバイス、部位特異的キャリア、直接注射、または直接塗布が挙げられる。例えば、PCT国際公開第00/53211号および米国特許第5,981,568号を参照のこと。したがって、VEGI−192Aタンパク質は、好ましくは、薬学的に受容可能なビヒクル(例えば、生理食塩水、リンガー溶液、およびブドウ糖溶液など)と組み合わされる。
特定の投薬レジメン(すなわち、用量、時期および反復)は、特定の個体およびその個体の病歴に依存する。一般的に、以下の用量のいずれかが使用され得る:少なくとも約50mg/体重kgの用量;少なくとも約20mg/体重kgの用量;少なくとも約10mg/体重kgの用量;少なくとも約5mg/体重kgの用量;少なくとも約3mg/体重kgの用量;少なくとも約1mg/体重kgの用量;少なくとも約750μg/体重kgの用量;少なくとも約500μg/体重kgの用量;少なくとも約250μg/体重kgの用量;少なくとも約100μg/体重kgの用量;少なくとも約50μg/体重kgの用量;少なくとも約10μg/体重kgの用量;少なくとも約1μg/体重kgの用量、あるいはそれ以上が投与される。経験的な考慮事項(例えば、半減期)は、一般的に投与量の決定に寄与する。
いくつかの個体においては、1回以上の投与が必要とされ得る。投与頻度は、治療の経過にわたって決定および調整され得る。投与頻度は、癌性細胞の個数を減少させること、癌性細胞の退縮を維持すること、癌性細胞の成長および/または増殖を低減すること、あるいは転移の発生を遅延させることに基づく。癌性細胞の存在は、当業者にとって公知であるかまたは本明細書で考察される、多くの方法(例えば、免疫組織化学による検出、または生検材料もしくは生物学的サンプルのフローサイトメトリーによる検出)により同定され得る。いくつかの場合において、VEGI−192Aタンパク質の連続徐放性処方物が、適切であり得る。持続的放出を達成するための様々な処方物および装置が、当該分野において公知である。
一つの実施形態において、VEGI−192Aについての投与量は、1回以上の投与を与えた個体において経験的に決定され得る。個体は、VEGI−192Aの追加の用量を与えられる。VEGI−192Aの効力を評価するために、特定の癌疾患の状態についてのマーカーが、モニターされ得る。これらのマーカーとしては、触診または視覚での観察による腫瘍の大きさの直接測定;X線技術または他の画像化技術による腫瘍の大きさの間接測定;直接腫瘍生検および腫瘍サンプルの顕微鏡検査により評価される改善;間接的腫瘍マーカー(例えば、前立腺癌についてのPSA)の測定、痛みもしくは麻痺の低減;発語、視覚、呼吸、または癌に関連した他の障害の改善;食欲増加;あるいは、一般に認められた試験または生存の延長により測定されるような、生活の質の増強が挙げられる。その投与量が、その個体、癌の型、癌の病期、その癌がその個体中の他の部位へ転移を始めたかどうか、ならびに使用された過去の処置および同時に行っている処置に依存して変動することは、当業者にとって明白である。
他の処方物としては、当該分野において公知である適切な送達形態(例えば、リポソームのようなキャリアが挙げられるが、これに限定されない)が挙げられる。例えば、Mahatoら(1997)Pharm.Res.14:853−859を参照のこと。リポソーム調製物として、サイトフェクチン、多重膜リポソームおよび単膜リポソームが挙げられるが、これらに限定されない。
VEGI−192Aは、他の癌治療(例えば、放射線治療または化学療法剤)と併せて、使用され得る。VEGI−192Aは、他の癌治療剤(例えば、リツキサン(Rituxan)(登録商標)およびハーセプチン(Herceptin)(登録商標))と併せて、投与され得る。
疾患の評価は、当該分野において標準的な方法(例えば、画像化方法および適切なマーカーのモニタリング)を使用して、実施される。
(IV.組成物およびこの組成物を作製するための方法)
本発明の方法において使用される組成物は、VEGI−192Aタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、このVEGI−192Aタンパク質は、組換え生成される。いくつかの実施形態において、このVEGI−192Aタンパク質は、E.coliから組換え生成され、そして精製される。この組成物は、VEGI−192Aおよび1つ以上の他の抗癌剤を含み得ることが、理解される。
本発明の方法において使用される組成物は、VEGI−192Aタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、このVEGI−192Aタンパク質は、組換え生成される。いくつかの実施形態において、このVEGI−192Aタンパク質は、E.coliから組換え生成され、そして精製される。この組成物は、VEGI−192Aおよび1つ以上の他の抗癌剤を含み得ることが、理解される。
VEGI−192A(VEGI−192Aタンパク質とVEGI−192Aポリペプチドとで互換可能に使用される)としては、天然に存在する任意の種(例えば、ヒトまたは他の哺乳動物由来の全長)、生物学的に活性なペプチドフラグメント(例えば、国際公開第03/039491号および米国特許出願公開第2003/017242号において記載されるVEGI−192Aフラグメント、ならびに配列番号1のアミノ酸26を含むN末端短縮型VEGI−192Aフラグメント)、ならびに天然に存在する改変体および天然に存在しない改変体(例えば、生物学的特性に有意には影響しない機能的に同等な改変体、および増大した活性または低下した活性(例えば、内皮細胞の増殖を阻害すること)を有する改変体)が挙げられる。
ヒトVEGI−192Aのヌクレオチド配列およびヒトVEGI−192Aのアミノ酸配列は、PCT国際公開第03/039491号、米国特許出願公開第2003/0170242号において記載され、ヒトVEGI−192Aのアミノ酸配列はまた、表1(配列番号1)においても示されている。いくつかの実施形態において、VEGI−192Aタンパク質は、表1に示される配列番号1のアミノ酸配列を含む。VEGI−192Aの実施形態は、融合タンパク質(N末端融合物またはC末端融合物)(例えば、表2に示されるN末端融合タンパク質)を含む。VEGI−192Aは、いかなる種(例えば、ヒト)由来でもあり得る。
(表1.ヒトVEGI−192Aのアミノ酸配列)
本発明のVEGI−192Aの改変体としては、VEGI−192A(例えば、配列番号1)と、少なくとも約70%同一、約75%同一、約80%同一、約85%同一、約90%同一、約95%同一、約96%同一、約97%同一、約98%同一、または約99%同一のいずれかであるポリペプチドが挙げられ得る。
2つのポリペプチド配列は、下記のように最大一致を求めて整列させた場合にその2つのポリペプチド配列中のアミノ酸の配列が同一である場合に、「同一である」と言われる。2つの配列間の比較は、代表的には、比較ウィンドウにわたってそれらの配列を比較して、局所領域の配列類似性を同定および比較することによって、実施される。本明細書で使用される場合、「比較ウィンドウ」とは、ある配列が、同数の連続位置である参照配列と、その2つの配列が最適に整列された後に比較され得る、少なくとも約20個連続する位置、通常は30個〜約75個連続する位置、40個〜約50個連続する位置の部分を指す。
比較のための配列の最適なアライメントは、生命情報科学ソフトウェアのLasergeneスイート(DNASTAR,Inc.,Madison,WI)中のMegalignプログラムを使用し、デフォルトパラメーターを使用して行われ得る。このプログラムは、以下の参考文献に記載されたいくつかのアライメントスキームを実現する:Dayhoff,M.O.(1978)A model of evolutionary change in proteins−Matrices for detecting distant relationships.In Dayhoff,M.O.(編)Atlas of Protein Sequence and Structure,National Biomedical Research Foundation,Washington DC 第5巻,増補3,pp.345−358;Hein J.,1990,Unified Approach to Alignment and Phylogenes pp.626−645 Methods in Enzymology 第183巻,Academic Press,Inc.,San Diego,CA;Higgins,D.G.およびSharp,P.M.,1989,CABIOS 5:151−153;Myers,E.W.およびMuller W.,1988、CABIOS 4:11−17;Robinson,E.D.,1971,Comb.Theor.11:105;Santou,N.,Nes,M.,1987,Mol.Biol.Evol.4:406−425;Sneath,P.H.A.およびSokal,R.R.,1973,Numerical Taxonomy the Principles and Practice of Numerical Taxonomy,Freeman Press,San Francisco,CA;Wilbur,W.J.およびLipman,D.J.,1983,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:726−730。
好ましくは、「配列同一性の割合」は、最適に整列された2つの配列を、少なくとも20の位置についての比較ウィンドウにわたって比較することにより決定され、ここで、この2つの配列の最適な整列のため参照配列(付加も欠失も含まない)と比較された場合に、比較ウィンドウ中のそのポリペプチド配列の部分は、20%以下の付加または欠失(すなわちギャップ)、通常は5%〜15%の付加または欠失、あるいは10%〜12%の付加または欠失を含み得る。この割合は、同一のアミノ酸残基が両方の配列中に存在する位置数を決定して一致した位置の数を得ること、この一致した位置数をその参照配列中の位置の総数(すなわち、そのウィンドウの大きさ)で割ること、そして、この結果に100をかけて配列同一性の割合を得ることよって、計算される。
本発明のVEGI−192Aの改変体は、そのタンパク質の活性を有意には変化させない1つ以上のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、またはアミノ酸付加を含み得る。改変体は、自然変異由来であっても、人間の操作由来であってもよい。変化は、例えば、そのタンパク質のフォールディングにも活性にも有意には影響しない、微細な性質(例えば、保存的アミノ酸置換)であり得る。VEGIポリペプチドの特性を改善または変更するために、タンパク質工学が使用され得る。当業者にとって公知である組換えDNA技術は、新規な変異タンパク質または改変体(例えば、単一もしくは複数のアミノ酸の置換、欠失、付加または融合タンパク質)を創出するために、使用され得る。このような改変されたポリペプチドは、例えば、増強した活性または増加した安定性を示し得る。さらに、これらは、少なくとも特定の精製条件下および特定の貯蔵条件下において、対応する天然ポリペプチドよりも高い収率で精製され得、かつより優れた溶解度を示し得る。それゆえ、本発明はまた、選択された宿主細胞における発現、スケールアップなどによりよく適合されたVEGI−192Aポリペプチドを生成するように1つ以上のアミノ酸残基が欠失、付加、もしくは置換された、VEGI−192A誘導体およびVEGI−192Aアナログもまた包含する。
本発明の方法において使用されるVEGI−192Aの機能的に同等な改変体は、VEGI−192Aポリペプチドを含む融合タンパク質を包含する。生物学的に活性なVEGI−192Aポリペプチドは、配列(例えば、免疫学的反応性を増強する配列、支持体もしくはキャリアへのこのポリペプチドの結合を促進する配列、またはリフォールディングおよび/もしくは精製を促進する配列(例えば、エピトープ(例えば、Myc、インフルエンザウイルス血球凝集素由来HA、His−6、FLAG、または表2に示されるHis−Tag)をコードする配列))に融合させられ得る。これらの配列は、VEGI−192AポリペプチドのN末端またはC末端で、VEGI−192Aポリペプチドに融合させられ得る。さらに、このタンパク質またはこのポリヌクレオチドは、その機能を増強するかまたは細胞内での局在化を特定する他のポリペプチド(例えば、分泌配列)に融合させられ得る。上記の組換え融合タンパク質を生成するための方法は、当該分野において公知である。この組換え融合タンパク質は、当該分野において周知の方法により、生成、リフォールディング、および単離され得る。いくつかの実施形態において、VEGI−192Aタンパク質は、実施例に記載されるように調製され得る、ヒスチジン残基を含む融合ポリペプチドを使用した。いくつかの実施形態において、このヒスチジン融合タンパク質は、配列番号1を含む。
本明細書中に記載されるVEGI−192Aタンパク質実施形態のいずれも、VEGI−174、VEGI−251、VEGI−192Bを含まないことが理解される。米国特許出願公開第20020111325号;米国特許出願公開第20030170242号を参照のこと。
本発明において使用される組成物は、凍結乾燥処方物の形態または水溶液の形態において、薬学的に受容可能なキャリア、薬学的に受容可能な賦形剤、または薬学的に受容可能な安定剤(Remington:The Science and practice of Pharmacy 第20版(2000)Lippincott WilliamsおよびWilkins,Ed.K.E.Hoover.)をさらに含み得る。受容可能なキャリア、受容可能な賦形剤、または受容可能な安定剤は、その投与量およびその濃度において、レシピエントにとって非毒性である。これらは、緩衝剤(例えば、リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸);抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸およびメチオニン);保存薬(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコールまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン(例えば、メチルパラベンまたはプロピルパラベン);カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチン、またはイムノグロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジン);単糖類、二糖類、および他の糖質(例えば、グルコース、マンノース、またはデキストラン);キレート化剤(例えば、EDTA);糖(例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール);塩を形成する対イオン(例えば、ナトリウム);金属複合体(例えば、Zn−タンパク質複合体);および/または非イオン性界面活性剤(例えば、TWEENTM、PLURONICSTMまたはポリエチレングリコール(PEG))を含み得る。薬学的に受容可能な賦形剤が、本明細書でさらに記載される。
VEGI−192Aタンパク質およびその組成物はまた、この薬剤の効果を増強および/または補完するように働く他の抗癌剤と併せて使用され得る。
VEGI−192A(改変体も含む)は、当該分野において公知の方法を使用して生成(例えば、組換え生成)され得る。VEGI−192Aおよび改変体は、米国特許第6,583,268号、同時係属中の出願(代理人整理番号54411−20004.00;米国仮出願60/528,983に対する優先権を主張する)に記載の方法および実施例に記載の方法に従って、E.Coli中で発現され、リフォールディングされ、精製され得る。
(V.VEGI−192Aを含む治療目的のためのキット)
本発明はまた、本方法における使用のためのキットを提供する。本発明のキットは、精製VEGI−192Aタンパク質を含む1つ以上の容器、および本明細書に記載される発明の方法のいずれかに従って使用するための指示を含む。一般的に、この指示は、本明細書に記載の方法のいずれかに従って、癌(例えば、肺癌および乳癌)を処置するためのVEGI−192Aタンパク質の投与についての説明を含む。このキットは、個体が癌を保有しているかどうかおよびその癌の病期を同定することに基いて、処置に適した個体を選択することの説明をさらに含む。
本発明はまた、本方法における使用のためのキットを提供する。本発明のキットは、精製VEGI−192Aタンパク質を含む1つ以上の容器、および本明細書に記載される発明の方法のいずれかに従って使用するための指示を含む。一般的に、この指示は、本明細書に記載の方法のいずれかに従って、癌(例えば、肺癌および乳癌)を処置するためのVEGI−192Aタンパク質の投与についての説明を含む。このキットは、個体が癌を保有しているかどうかおよびその癌の病期を同定することに基いて、処置に適した個体を選択することの説明をさらに含む。
VEGI−192Aタンパク質の使用に関するこの指示は、一般的に、意図された処置のための投与量、投薬スケジュール、および投与経路についての情報を含む。上記の容器は、単位用量、バルク包装(例えば、複数用量包装)、またはサブユニット用量であり得る。本発明のキットに供給される指示は、代表的に、ラベルまたは包装挿入物(例えば、このキットに含まれる紙のシート)上の文書での指示であるが、機械で読み取り可能な指示(例えば、磁気保存ディスクまたは光保存ディスクに保有される指示)もまた、許容可能である。
ラベルまたは包装挿入物とは、この組成物が癌(例えば、転移性癌)を処置するために使用されること、を示す。指示は、本明細書に記載の方法のいずれかを実施するために提供され得る。
本発明のキットは、適切な包装中にある。適切な包装として、バイアル、ボトル、びん、柔軟な包装物(例えば、封をされたマイラー(Mylar)製の袋またはプラスティック製の袋)などが挙げられるが、これらに限定されない。特殊なデバイスと組み合わせて使用するための包装(例えば、吸入器、経鼻投与デバイス(例えば、噴霧器)または注入デバイス(例えば、小型ポンプ))もまた、企図される。キットは、無菌アクセスポートを有し得る(例えば、その容器は、皮下注射針により貫通可能な栓を有する、静脈内溶液用の袋またはバイアルであり得る)。この容器はまた、無菌のアクセスポートも有し得る(例えば、この容器は、皮下注射針により貫通可能な栓を有する、静脈内溶液用の袋またはバイアルであり得る)。上記組成物中の少なくとも1種の活性薬剤は、VEGI−192Aタンパク質である。この容器は、別の薬学的活性薬剤をさらに含み得る。
キットは、さらなる構成要素(例えば、緩衝液および解釈できる情報)を必要に応じて提供する。通常、このキットは、容器、およびこの容器に接触しているラベルまたは包装挿入物、あるいはこの容器に付随したラベルまたは包装挿入物を含む。
いくつかの実施形態において、本発明は、上記のキットの中身を含む製品を提供する。いくつかの実施形態において、このキットは、VEGI−192Aタンパク質を、癌(例えば、肺癌および乳癌)を処置するための使用を指示する情報とともに含む。いくつかの実施形態において、このキットは、VEGI−192Aタンパク質および別の抗癌剤を、互いに組み合わせて癌(例えば、肺癌および乳癌)を処置するための使用を指示する情報とともに含む。
(実施例1:組換えVEGI−192Aのリフォールディングおよび精製)
(ベクターの構築およびベクターの発現):表1に示したヒトVEGI−192AをコードするDNAフラグメントを、PCR増幅により作製した。そのPCR産物を、pET−19b(カタログ番号69677−3,Novagen,San Diego,CA)のNde I/Bam HI部位に挿入し、N末端融合タグ付きVEGI−192Aタンパク質(表2)を作製した。PCR、連結反応、およびE.coliのBL21 DE3株への形質転換の後、シングルのコロニーを選択し、増幅させた。それから最終的に、DNA配列の正確さを確実にするために、その構築物を配列決定した。N末端His−Tag付きVEGI−192Aのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、表2に示す。
(ベクターの構築およびベクターの発現):表1に示したヒトVEGI−192AをコードするDNAフラグメントを、PCR増幅により作製した。そのPCR産物を、pET−19b(カタログ番号69677−3,Novagen,San Diego,CA)のNde I/Bam HI部位に挿入し、N末端融合タグ付きVEGI−192Aタンパク質(表2)を作製した。PCR、連結反応、およびE.coliのBL21 DE3株への形質転換の後、シングルのコロニーを選択し、増幅させた。それから最終的に、DNA配列の正確さを確実にするために、その構築物を配列決定した。N末端His−Tag付きVEGI−192Aのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、表2に示す。
(表2.N末端His−Tag付きVEGI−192Aのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列)
(リフォールディング前の封入体の処理):封入体を細菌から収集した。遠心分離により、細菌細胞を収集し、次に1% TRITON X−100(登録商標)を含む20mLのTN(150mM NaCl,50mM tris,pH 8.0)中に再懸濁した。10ミリグラムのリゾチーム(lysosyme)を添加し、その細胞懸濁物を、−20℃で一晩凍結させた。次に、この細胞溶解物を融解し、20μLの1M 硫酸マグネシウムおよび100μgのDNaseを添加した。遊離した細菌性DNAが完全に溶解するまで、この細胞を、撹拌しながらインキュベートした。それから、この溶解物を、1% TRITON X−100(登録商標)を含む250mLのTNを用いて希釈し、この混合物を2〜4時間撹拌した。封入体を、遠心分離により収集し、(再懸濁および遠心分離により)3回洗浄した。
(リフォールディング、および、リフォールディングしたタンパク質のクロマトグラフィー単離):この洗浄した封入体を、8M 尿素、0.1M Tris、1mM グリシン、10mM β−メルカプトエタノール、10mM ジチオトレイトール(DTT)、1M 還元型グルタチオン(GSH)、0.1mM 酸化型グルタチオン(GSSG)、pH 10.5中に溶解させた。このタンパク質溶液の280nmにおける吸光度(OD280)を、2.0に調整した。この溶液を、超遠心分離(30分×66,000g)により清澄にし、それからリフォールディングさせた。
清澄化した溶液を、迅速に、20容量の20mM Tris、1.36mM ラウロイルサルコシンナトリウム、0.009mM トリメチルアミンN−オキシド二水和物、0.005mM セチルトリメチルアンモニウムブロミド、pH 10.5中に希釈した。生じた溶液を、1M HClを用いて、4日間にわたり段階的にpH 8.0に調整した。
リフォールディングさせたタンパク質を、限外ろ過(Millipore Pellicon,10,000Daカットオフメンブレン)により濃縮し、平衡化したSephacryl S−300カラムに適用した。そして20mM Tris、0.4M 尿素、0.2M NaCl、pH 8で溶出させた(図1)。図1A由来の画分をプールし(1、2,3と示した)、実施例2〜4に記載した、内皮細胞阻止アッセイおよび動物腫瘍モデル試験のために、約5mg/mlに濃縮した(図1Bに示したSDS−PAGE)。
機能的なVEGI−192Aもまた、Ni+−アフィニティカラムを使用して、精製した。Ni+−キレート化カラム(500ml)を、20mM Tris、1.36mM ラウロイルサルコシンナトリウム、0.4M 尿素、pH 8を使って、平衡化した。リフォールディングさせたVEGI−192A(4L)を、そのカラムに適用した。そのカラムを1Lの20mM Tris、0.4M 尿素、0.2M NaCl、5mM イミダゾール、pH 8(緩衝液A)で洗浄した。緩衝液A中のイミダゾールの線形勾配(5〜500mM)により、VEGI−192Aをそのカラムから溶出させた。図2Aに示す溶出ピークをプールし、20mM Tris、0.4M 尿素、0.2M NaCl、pH 8に対して透析した。次に、透析したVEGI−192Aを、限外ろ過により約5mg/mlに濃縮した。生成したVEGI−192Aについての、非還元性SDS−PAGE分析および還元性SDS−PAGE分析を、図2Bに示す。
別の実験において、可溶化したVEGI−192Aを含む清澄化した溶液を、20容量の20mM Tris、0.034mM ラウロイルサルコシンナトリウム、0.009mM トリメチルアミンN−オキシド二水和物、0.005mM セチルトリメチルアンモニウムブロミド、pH 10.5中に、迅速に希釈することにより、リフォールディングプロセスを実行した。生じた溶液を、1M HClを用いて、4日間にわたり段階的にpH 8.0に調整した。リフォールディングさせたVEGI−192Aを、上記と同じ方法で濃縮および精製した。実施例2に記載の内皮細胞阻止アッセイにより測定すると、このリフォールディング緩衝液を使用した精製VEGI−192Aの活性は、上記のリフォールディング状態に比べ、1/100であった。
(実施例2:内皮細胞増殖阻止アッセイによる、組換えVEGI−192Aの生物学的活性についての特徴付け)
ウシ成体の大動脈内皮(ABAE)細胞を、37℃、5% CO2で、IMEM(Gibco BioFluids,Rockville,MD)、10% FBS、1ng/ml 線維芽細胞成長因子−2(Promega,Madison,WI)中で培養した。この細胞の休止の程度を、3H−チミジン取り込みにより、決定した。細胞の5%以下しか3H−チミジンを取り込まない場合、この細胞が細胞周期のG0期において同調したとみなした。10% FBSおよび1ng/ml 線維芽細胞成長因子−2を含むIMEM中で、G0で同調した細胞を、ごくわずか(5000細胞/cm2)再播種し、37℃、5% CO2でインキュベートしたとき、この細胞が増殖の周期に再び入った。実施例1に記載のように調製したVEGI−192Aを、細胞を播く時か、または播いた後20時間以内の、細胞が増殖の周期に入る時点のいずれかに、培養培地に添加した。単細胞懸濁物を、所定の時間間隔でそれぞれの培養ウェルから、トリプシン処理により調製した。各懸濁物中の細胞数を、クールター計数器を使用することにより、または、テトラゾリウム化合物−MTS(Promega)−(生細胞により代謝され得、490nmにおいて検出可能な青色の化合物を生成する;MTSの代謝の速度は、培養内の生細胞数に比例する)を利用した比色定量アッセイを使用することにより、決定した。このアッセイにおいて、利用したVEGI−192Aの濃度は、0.1ng/mLから1μg/mLに及んだ。
ウシ成体の大動脈内皮(ABAE)細胞を、37℃、5% CO2で、IMEM(Gibco BioFluids,Rockville,MD)、10% FBS、1ng/ml 線維芽細胞成長因子−2(Promega,Madison,WI)中で培養した。この細胞の休止の程度を、3H−チミジン取り込みにより、決定した。細胞の5%以下しか3H−チミジンを取り込まない場合、この細胞が細胞周期のG0期において同調したとみなした。10% FBSおよび1ng/ml 線維芽細胞成長因子−2を含むIMEM中で、G0で同調した細胞を、ごくわずか(5000細胞/cm2)再播種し、37℃、5% CO2でインキュベートしたとき、この細胞が増殖の周期に再び入った。実施例1に記載のように調製したVEGI−192Aを、細胞を播く時か、または播いた後20時間以内の、細胞が増殖の周期に入る時点のいずれかに、培養培地に添加した。単細胞懸濁物を、所定の時間間隔でそれぞれの培養ウェルから、トリプシン処理により調製した。各懸濁物中の細胞数を、クールター計数器を使用することにより、または、テトラゾリウム化合物−MTS(Promega)−(生細胞により代謝され得、490nmにおいて検出可能な青色の化合物を生成する;MTSの代謝の速度は、培養内の生細胞数に比例する)を利用した比色定量アッセイを使用することにより、決定した。このアッセイにおいて、利用したVEGI−192Aの濃度は、0.1ng/mLから1μg/mLに及んだ。
MTSによる比色定量アッセイを使用した、ABAE内皮細胞阻止アッセイにおいて、3つのプール全てに活性があり、プール3が最も活性があった(図1C)。図1Cに示すように、プール3中の組換えVEGI−192Aは、インビトロでの内皮細胞の増殖を阻止することにおいて、IC50 12ng/ml(0.49nM)を示した。別の実験において、生成した組換えVEGI−192Aは、インビトロでの内皮細胞の増殖を阻止することにおいて、IC50 0.24nM(6ng/ml)を示した。
(実施例3:ルイス肺癌の増殖の阻害、および、組換えVEGI−192Aによる、腫瘍を保有するマウスの生存期間の増強)
C57B16/Jマウスに、ルイス肺癌(LLC)細胞を、皮下に移植した。この癌細胞を、PBSで洗浄し、0.05% トリプシン溶液中に分散させ、再懸濁させた。8℃において4000rpmで10分間の遠心分離の後、細胞ペレットをPBS中に再懸濁させ、その濃度を2.5×106細胞/mlに調整した。次に、0.1mlの癌細胞懸濁物を、マウスの側腹に、皮下注射した。腫瘍を、目盛りノギスを用いて測定し、腫瘍体積を、式:体積=幅×幅×長さ×0.52を使用して決定した。腫瘍体積が少なくとも100〜200mm3(体重の0.5〜1%)になった(5〜7日以内に起こった)後、マウスを3つの群に無作為化した。2つの群のマウスに、PBSに懸濁した組換えヒトVEGI−192A(実施例1に記載のように調製した)を、5mg/kgまたは20mg/kgで、週に2回、腹腔内(IP)注射か、または腫瘍内(IT)注射のいずれかにより、与えた。腫瘍が触知可能であるときか、または腫瘍体積が700〜1000mm3に達したとき、IP注射またはIT注射を開始した。第3の群に、ビヒクル(リン酸緩衝化生理食塩水)のみの比較可能な注射を与えた。コントロールの群の腫瘍体積が2000mm3を超えたとき、実験を終了し、マウスを屠殺および検死した。
C57B16/Jマウスに、ルイス肺癌(LLC)細胞を、皮下に移植した。この癌細胞を、PBSで洗浄し、0.05% トリプシン溶液中に分散させ、再懸濁させた。8℃において4000rpmで10分間の遠心分離の後、細胞ペレットをPBS中に再懸濁させ、その濃度を2.5×106細胞/mlに調整した。次に、0.1mlの癌細胞懸濁物を、マウスの側腹に、皮下注射した。腫瘍を、目盛りノギスを用いて測定し、腫瘍体積を、式:体積=幅×幅×長さ×0.52を使用して決定した。腫瘍体積が少なくとも100〜200mm3(体重の0.5〜1%)になった(5〜7日以内に起こった)後、マウスを3つの群に無作為化した。2つの群のマウスに、PBSに懸濁した組換えヒトVEGI−192A(実施例1に記載のように調製した)を、5mg/kgまたは20mg/kgで、週に2回、腹腔内(IP)注射か、または腫瘍内(IT)注射のいずれかにより、与えた。腫瘍が触知可能であるときか、または腫瘍体積が700〜1000mm3に達したとき、IP注射またはIT注射を開始した。第3の群に、ビヒクル(リン酸緩衝化生理食塩水)のみの比較可能な注射を与えた。コントロールの群の腫瘍体積が2000mm3を超えたとき、実験を終了し、マウスを屠殺および検死した。
腫瘍を保有する動物における腫瘍の増殖速度についての十分な阻害が、その腫瘍が触知可能であるときに、その腫瘍を保有する動物への腹腔内(IP)注射により組換えVEGI−192Aを送達した場合か、または腫瘍体積が700〜1000mm3に達したときに、その腫瘍を保有する動物への腹腔内(IP)注射により組換えVEGI−192Aを送達した場合に、観察された。図3Aに示すように、700〜1000mm3の腫瘍体積を持つマウスへのIP注射またはIT注射による、5mg/Kgの組換えVEGI−192Aの全身性送達は、腫瘍の増殖の明白な阻害を示した。腫瘍体積が、処置の開始時に体重の5%近く(700〜1000mm3)である場合でさえ、腫瘍の増殖速度に50%もの阻害が達成された。
この動物の体重の5%近く(700〜1000mm3の腫瘍体積)に達した病期のLLC腫瘍は、臨床の場における末期のヒト肺癌に類似し得る。なぜなら、この病期のLLC腫瘍を保有する動物は、特に肺へ広範囲に広がった微小転移巣(一度、この原発性腫瘍を外科的に除去すると、巨大転移巣に成長する)をすでに発生させているからである。O’Reillyら,Cell 79(2):315−28(1994);Caoら,J.Clin.Invest.101(5):1055−63(1998)を参照のこと。
腫瘍を保有するマウスの生存期間もまた試験した。生存期間を、LLC細胞を移植した日と、腫瘍体積が3000mm3を超えた量に達した日、または、高侵襲性腫瘍が増殖するにつれての脊柱への腫瘍の浸潤に起因して動物が麻痺する状態になった日との間の日数によって、決定した。このルイス肺癌モデルにおける動物を、腫瘍体積が3000mm3を超えた量に達したとき、または、高侵襲性腫瘍が増殖するにつれての脊柱への腫瘍の浸潤に起因する動物が麻痺する状態になったとき、屠殺した。その時点での生存期間および生存動物数のプロット(図3B)から示されるように、生存期間のメジアン(処置時(未処置群についての腫瘍の平均の大きさが700mm3である11日目に始めた)から開始した)は、約4日であった。一方、処置した群についての生存期間のメジアンは12日間であり、3倍長い生存期間を示した。
別の実験において、LLC細胞(1注射あたり1×106)を、C57BL/6黒色マウス(Harlan,Indianapolis,IN)の側腹に皮下注射した。腫瘍が触知可能である早い時期に、処置を開始した(図9)。この動物を、5日目、9日目、および12日目に、VEGI−192A(20mg/kg)のIP投与により、処置した。コントロールの群を、ビヒクルで処置した。図9に示すように、VEGI処置した群について、有意により遅い腫瘍の増殖速度が観察された。
(実施例4:組換えVEGI−192Aによる、ヒト肺癌異種移植腫瘍の処置)
MDA−MB−231ヒト肺癌を、雌の無胸腺ヌードマウスの乳房の脂肪パッドに注射した(1注射あたり1×106細胞)。注射した癌細胞は、5〜7日以内に触知可能な腫瘍を形成した。この腫瘍体積(V)を、楕円形の体積についての等式V=0.52LW2を使用することにより、決定した。一旦、腫瘍体積が約100mm3に達した後、実施例1に記載のように生成した組換えVEGI−192Aを、腫瘍部位への皮下(SC)注射により、この動物に送達した(5mg/Kg、週に2回)。このコントロール群を、代わりにビヒクル(PBS)を使用した以外は同じ実験条件下で、処置した。一旦、腫瘍体積が2000mm3を超過した後、または、腫瘍重量が、体重の約10%である2グラムより重くなった後、この動物を屠殺した。生物病理学分析のために、腫瘍、他の器官(肺、肝臓、脾臓)、および末梢血を収集した。
MDA−MB−231ヒト肺癌を、雌の無胸腺ヌードマウスの乳房の脂肪パッドに注射した(1注射あたり1×106細胞)。注射した癌細胞は、5〜7日以内に触知可能な腫瘍を形成した。この腫瘍体積(V)を、楕円形の体積についての等式V=0.52LW2を使用することにより、決定した。一旦、腫瘍体積が約100mm3に達した後、実施例1に記載のように生成した組換えVEGI−192Aを、腫瘍部位への皮下(SC)注射により、この動物に送達した(5mg/Kg、週に2回)。このコントロール群を、代わりにビヒクル(PBS)を使用した以外は同じ実験条件下で、処置した。一旦、腫瘍体積が2000mm3を超過した後、または、腫瘍重量が、体重の約10%である2グラムより重くなった後、この動物を屠殺した。生物病理学分析のために、腫瘍、他の器官(肺、肝臓、脾臓)、および末梢血を収集した。
腫瘍血管系へのVEGI−192A処置の効果を分析するために、新鮮な凍結切片(コントロール群の動物由来のもの、および腫瘍部位へのSC注射を与えた群の動物由来のもの)を、アポトーシス細胞を蛍光標識すること(図4のパネルAおよびCに示す)、またはCD31(内皮細胞のマーカー)について免疫染色すること(図4のパネルBおよびDに示す)により分析した。パネルAにおいて、未処置腫瘍は、ほとんどアポトーシス細胞を示さず、パネルBにおいて、未処置腫瘍は、大量の微小血管を示した。相対的に、VEGI−192A処置した腫瘍(パネルC)は、腫瘍内部において、アポトーシス細胞および壊死領域について強力な蛍光標識を示した。パネルDに示すように、VEGI−192A処置した腫瘍は、顕著に低減した微小血管密度を示した。腫瘍組織における細胞死が観察された。
(実施例5:組換えVEGI−192Aの投与による、ルイス肺癌(LLC)細胞取り込みの阻害)
LLC細胞を、実施例3に記載のように調製し、C57B1マウスの背部に接種した(1注射あたり1×105細胞)。この動物を、LLC細胞の接種(0日目)と同時に、5mg/kg VEGI−192A(実施例1に記載のように調製した)の腹腔内(IP)注射により、処置した。腫瘍体積を、4日目に測定した。図5に示すように、腫瘍接種時での動物の処置は、腫瘍取り込み速度の顕著な阻害という結果をもたらした(t検定、p<0.002)。
LLC細胞を、実施例3に記載のように調製し、C57B1マウスの背部に接種した(1注射あたり1×105細胞)。この動物を、LLC細胞の接種(0日目)と同時に、5mg/kg VEGI−192A(実施例1に記載のように調製した)の腹腔内(IP)注射により、処置した。腫瘍体積を、4日目に測定した。図5に示すように、腫瘍接種時での動物の処置は、腫瘍取り込み速度の顕著な阻害という結果をもたらした(t検定、p<0.002)。
別の実験(図10に示す)において、LLC細胞(1注射あたり1×106)を、C57BL/6黒色マウス(Harlan,Indianapolis,IN)の側腹に接種した。この動物を、癌細胞接種直後に、VEGI−192A(20mg/kg、実施例1に記載のように調製した)により処置した。4日目まで毎日、この処置を繰り返した。接種後5日目に腫瘍体積を評価したときに、ビヒクル処置した群における全ての動物は、35mm3の平均体積(+/−標準偏差)の皮下腫瘍を発達させた(5匹中5匹、すなわち100%)。一方で、VEGI処置した群の約半分が、測定可能な腫瘍を示し(6匹中2匹、すなわち33%)、その腫瘍体積は、はるかに小さかった(図10)。この結果は、VEGIの全身投与が、癌細胞による腫瘍形成の遅滞を引き起こしたことを、示す。
(実施例6:組換えVEGI−192Aの投与による宿主の免疫系の活性化)
LLC細胞を、実施例3に記載のように調製し、C57B1マウスの背部に接種した(1注射あたり1×105細胞)。VEGI−192Aの投与を、この腫瘍が触知可能になった、4日目に開始した。VEGI−192A(実施例1に記載のように調製した)を、4日目、7日目、8日目、9日目、および10日目に5mg/kg注射した。11日目に、脾臓を回収し、計量した。血清もまた11日目に収集した。血清中のサイトカインレベルを、製品の指示に従って、抗体結合体化発光アッセイキット(LINCOplex,LINCO Research,Inc.,Missouri)を使用して、測定した。
LLC細胞を、実施例3に記載のように調製し、C57B1マウスの背部に接種した(1注射あたり1×105細胞)。VEGI−192Aの投与を、この腫瘍が触知可能になった、4日目に開始した。VEGI−192A(実施例1に記載のように調製した)を、4日目、7日目、8日目、9日目、および10日目に5mg/kg注射した。11日目に、脾臓を回収し、計量した。血清もまた11日目に収集した。血清中のサイトカインレベルを、製品の指示に従って、抗体結合体化発光アッセイキット(LINCOplex,LINCO Research,Inc.,Missouri)を使用して、測定した。
VEGI−192Aによる動物の処置は、有意に大きくなった脾臓(図6に示す)、および顕著に増強した数種のサイトカイン(例えば、TNF−α、IL−6、IL−1B、IL−15、およびIP−10)の産生(図7に示す)をもたらした。IL−15およびIP−10は、様々なリンパ球の活性化および新血管形成の阻害に関与することが、公知である。
マウス血清における上記サイトカインのプロフィールを、VEGI−192A処置に応答した培養ヒト内皮細胞と比較した。増殖中またはコンフルエントな(G0で同調した)ヒト臍帯静脈細胞(HUVEC)を、500ng/mlのVEGI−192Aにより5時間処置した。処置後、処置した増殖中のHUVECおよびコンフルエントなHUVEC、ならびに処置しなかった増殖中のHUVECおよびコンフルエントなHUVECの両方についてのサイトカイン発現のプロフィールを、Fred Hutchinson Cancer Research Center,Seattle,Washingtonから取得したcDNAマイクロアレイを使用して測定した。図7B由来のマウス血清におけるサイトカインのプロフィールを、VEGI−192Aにより処置した、増殖中のHUVECおよびコンフルエントなHUVECの両方についてのサイトカインのプロフィールと比較した。図8に示すように、VEGI−192A処置は、増殖中のHUVECおよびコンフルエントなHUVECの両方において、IL−15発現およびIP−10発現を誘導した。これは、VEGI−192A処置が、ヒトにおいてこれら2つのサイトカインの産生を増強し得ることを示唆した。
(実施例7:VEGI−192A処置後のLLC腫瘍保有マウスにおける、腫瘍血管系の免疫組織化学的分析)
本発明者らは、腫瘍血管の豊富さおよび構造に対する、VEGI−192A(実施例1に記載されるように調製した)によるLLC腫瘍保有マウスの全身処置の影響を決定した。LLC細胞を、実施例3に記載のように調製し、C57BL/6黒色マウス(Harlan,Indianapolis,IN)の側腹に皮下接種した(1注射あたり1×106細胞)。VEGI−192Aまたはビヒクルの腹腔内投与を、4日目に開始した。3週間にわたり、週に2回、VEGI−192A(5mg/kg)を注射した。ビヒクル処置群に、比較可能なリン酸緩衝化生理食塩水注射を与えた。免疫組織化学的分析を、下記のように実行した。腫瘍を取り出し、4℃で4時間、PBS中に4%パラホルムアルデヒドを含む固定液の中へ置いた。それから、この腫瘍を、RNaseを含まないPBS中の30%ショ糖(4℃)中へと移し、4℃で一晩置いた。次に、この腫瘍を、ドライアイス上のOCT化合物内に置いた。免疫染色の前に、切片(厚さ8μm)を、45℃で2時間、スライドガラス上で乾燥させた。内皮細胞を、CD31に対するラットモノクローナル抗体(PECAM−1;BD PharMingen,クローン MEC 13.3、1:250希釈,カタログ番号01951D)により同定した。血管平滑筋細胞を、モノクローナル抗アクチン−α−FITC(Sigma,クローン1A4、1:250希釈、カタログ番号F3777)により同定した。血管基底膜を、IV型コラーゲンに対するウサギポリクローナル抗体(1:10,000希釈;Cosmo Bio Co.,Tokyo,Japan)により同定した。核を、Hoechst(100ng/ml;Sigma)により同定した。使用した二次抗体は、ビオチン化抗ラット(Vector Laboratories,Burlingame,CA.カタログ番号BA4001)、ウサギ抗ラットIgG−TRITC(Sigma,カタログT4280)、およびロバ抗ラットIgG−FITC(Jackson カタログ番号712−096−153)、ビオチン検出用AMCAアビジンD(Vector Laboratories,カタログ番号A−2008)、ならびにヤギ抗ウサギIgG−TRITC(Sigma カタログ番号T6778)であった。ABC標準キットおよびDABキット(Vector Laboratories)を、免疫組織化学のために使用した。この標本を、内因性ペルオキシダーゼ活性を妨害するため、室温で15分間、0.03%H2O2(Sigma)とともにインキュベートし、それから、非特異的な抗体結合を妨害するため、0.2% Triton X−100および5% ウシ血清アルブミン(Sigma)を含むPBSとともにインキュベートした。次に、この標本を、PBS中で1〜2μg/mlに希釈した一次抗体とともに、室温で1時間かまたは4℃で12〜15時間インキュベートした。コントロール標本を、一次抗体をPBSに置換した以外は同一の条件下で処理した。PBSを使ってすすいだ後、この標本を、二次抗体とともに室温で1時間インキュベートし、PBSを使ってすすいだ。次に、室温で30分間、ABC標準キットかまたはAMCAアビジンDとともにインキュベートした。この標本を、PBSを使ってすすぎ、DABキットとともにインキュベートした。それから、すすぎ、Vectashield(Vector Laboratories)内で顕微鏡標本を作製した。
本発明者らは、腫瘍血管の豊富さおよび構造に対する、VEGI−192A(実施例1に記載されるように調製した)によるLLC腫瘍保有マウスの全身処置の影響を決定した。LLC細胞を、実施例3に記載のように調製し、C57BL/6黒色マウス(Harlan,Indianapolis,IN)の側腹に皮下接種した(1注射あたり1×106細胞)。VEGI−192Aまたはビヒクルの腹腔内投与を、4日目に開始した。3週間にわたり、週に2回、VEGI−192A(5mg/kg)を注射した。ビヒクル処置群に、比較可能なリン酸緩衝化生理食塩水注射を与えた。免疫組織化学的分析を、下記のように実行した。腫瘍を取り出し、4℃で4時間、PBS中に4%パラホルムアルデヒドを含む固定液の中へ置いた。それから、この腫瘍を、RNaseを含まないPBS中の30%ショ糖(4℃)中へと移し、4℃で一晩置いた。次に、この腫瘍を、ドライアイス上のOCT化合物内に置いた。免疫染色の前に、切片(厚さ8μm)を、45℃で2時間、スライドガラス上で乾燥させた。内皮細胞を、CD31に対するラットモノクローナル抗体(PECAM−1;BD PharMingen,クローン MEC 13.3、1:250希釈,カタログ番号01951D)により同定した。血管平滑筋細胞を、モノクローナル抗アクチン−α−FITC(Sigma,クローン1A4、1:250希釈、カタログ番号F3777)により同定した。血管基底膜を、IV型コラーゲンに対するウサギポリクローナル抗体(1:10,000希釈;Cosmo Bio Co.,Tokyo,Japan)により同定した。核を、Hoechst(100ng/ml;Sigma)により同定した。使用した二次抗体は、ビオチン化抗ラット(Vector Laboratories,Burlingame,CA.カタログ番号BA4001)、ウサギ抗ラットIgG−TRITC(Sigma,カタログT4280)、およびロバ抗ラットIgG−FITC(Jackson カタログ番号712−096−153)、ビオチン検出用AMCAアビジンD(Vector Laboratories,カタログ番号A−2008)、ならびにヤギ抗ウサギIgG−TRITC(Sigma カタログ番号T6778)であった。ABC標準キットおよびDABキット(Vector Laboratories)を、免疫組織化学のために使用した。この標本を、内因性ペルオキシダーゼ活性を妨害するため、室温で15分間、0.03%H2O2(Sigma)とともにインキュベートし、それから、非特異的な抗体結合を妨害するため、0.2% Triton X−100および5% ウシ血清アルブミン(Sigma)を含むPBSとともにインキュベートした。次に、この標本を、PBS中で1〜2μg/mlに希釈した一次抗体とともに、室温で1時間かまたは4℃で12〜15時間インキュベートした。コントロール標本を、一次抗体をPBSに置換した以外は同一の条件下で処理した。PBSを使ってすすいだ後、この標本を、二次抗体とともに室温で1時間インキュベートし、PBSを使ってすすいだ。次に、室温で30分間、ABC標準キットかまたはAMCAアビジンDとともにインキュベートした。この標本を、PBSを使ってすすぎ、DABキットとともにインキュベートした。それから、すすぎ、Vectashield(Vector Laboratories)内で顕微鏡標本を作製した。
この標本を、シングル蛍光フィルター、二重蛍光フィルターおよび三重蛍光フィルター、ならびに低照度RETIGA 1300C CCD Camera(Quantitative Imaging Corporation,Burnaby,BC,Canada)をQcaptureソフトウェアとともに装備した、Nikon Eclipse E800蛍光顕微鏡により調べた。画像を、デジタルデータとして保存した。画像分析を、Image−pro plusソフトウェア(Media Cybernetics,Inc)またはImage−J(NIH)を用いて実行した。
(腫瘍における内皮細胞の特異的な根絶):新鮮な凍結腫瘍切片を作製し、内皮マーカーであるCD31(赤色)および平滑筋細胞抗原−α(SMA−α)(緑色)についての免疫染色に供した(図11A、11B)。それから、本発明者らは、コンピュータ支援型画像分析によって、最大の微小血管(「ホットスポット」)数を含む、それぞれのスライドガラス上の15の視野を分析した。1つの視野(倍率400×)あたりの赤色画素および緑色画素の密度を測定した(図11C)。この結果(図11に示される)は、腫瘍血管における内皮細胞の特異的な消失を示唆する。CD31陽性細胞により占められた全画素として測定した内皮細胞の密度は、1週間の処置以内に88%の減少を示し、3週間以内にさらなる減少を示した。興味深いことに、平滑筋細胞の数は、比較的変化しないままであった。結果として、内皮細胞 対 平滑筋細胞の比は、VEGI処置した腫瘍において顕著に減少し、この動物を1週間または3週間処置した後に、1.8から0.4に、および、1.8から0.15に、それぞれ変化した。同様な免疫染色を、別の内皮細胞マーカー(CD105)について行い、同一の結果を得た。これらの結果は、VEGI−192Aの抗血管形成活性が、腫瘍血管内皮細胞の特異的な根絶を引き起こしたことを示す。
(内皮細胞の消失後の腫瘍における平滑筋細胞の存続):本発明者らは、内皮細胞が消失した後も、実験期間の間は平滑筋細胞が存続することを確認した(図12)。腫瘍血管系のいくつかの管腔は、多少維持されているように見えた。これは、良好な平滑筋細胞の支持を持つ腫瘍血管は、その内皮細胞のほとんどがもはや存在しなくなった後で多少の残存機能を有し得るという可能性を高めた。
(VEGI−192A処置した腫瘍における残存血管構造の存在):この残存血管構造を、さらに調べた。常に内皮細胞により覆われているビヒクル処置腫瘍中の血管の管腔(図12A)とは違って、赤血球を含むが内皮細胞に覆われていないVEGI処置腫瘍において、空間が存在した(図12B)。次に、これら空間が、内皮細胞が欠如した残存血管であるかどうかを決定した。これは、コラーゲンIV(血管の基底膜の主要な成分)についての免疫染色により、達成した。図12Cおよび12Dに示すように、コントロール群のビヒクル処置腫瘍中の血管基底膜に関連する、容易に検出可能な内皮細胞(図12D)と比較すると、腫瘍血管系の基礎構造は、VEGI−192A処置によって内皮細胞がほぼ完全に消失した場合でさえ、ほぼ無傷に維持されていた(図12C)。これらの基底膜構造は、腫瘍が、VEGI−192Aで処置されるか(図12E)、または、ビヒクルで処置されるか(図12F)に関わりなく、しばしば平滑筋細胞を伴った。これらの残存管の外見は、処置しなかった腫瘍において見られる管の外見と区別不能であり、唯一の相違点は、処置しなかった腫瘍における血管構造が内皮細胞を含むことである。これらの結果は、内皮細胞がこれらの腫瘍から取り除かれた後も、少なくとも実験期間を通して、基底膜および平滑筋細胞からなる残存血管構造が存在することを示す。
上記の発明は、明瞭にするためおよび理解するために、例示および実施例によって多少詳細に記載されているが、特定の変更および特定の改変が実施され得ることが、当業者にとって明らかである。それゆえ、説明および実施例は、添付の特許請求の範囲よって示される本発明の範囲を、限定しないものとして解釈されるべきである。
Claims (14)
- 個体において肺癌を処置するための方法であって、該方法は、
有効量のVEGI−192Aポリペプチドを投与する工程
を包含する、方法。 - 請求項1の方法であって、前記癌は進行型である、方法。
- 請求項1の方法であって、前記癌は転移性である、方法。
- 請求項1の方法であって、前記VEGI−192Aポリペプチドは、ヒトVEGI−192Aである、方法。
- 請求項1の方法であって、前記VEGI−192Aポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含む、方法。
- 請求項1の方法であって、前記VEGI−192Aポリペプチドは、E.coliから組換え生成される、方法。
- 肺癌を処置するためのキットであって、該キットは、
VEGI−192Aポリペプチドと、
肺癌を処置するために該VEGI−192Aポリペプチドを投与するための指示と、
を備える、キット。 - 個体において乳癌を処置するための方法であって、該方法は、
有効量のVEGI−192Aポリペプチドを投与する工程
を包含する、方法。 - 請求項8の方法であって、前記癌は進行型である、方法。
- 請求項8の方法であって、前記癌は転移性である、方法。
- 請求項8の方法であって、前記VEGI−192Aポリペプチドは、ヒトVEGI−192Aである、方法。
- 請求項8の方法であって、前記VEGI−192Aポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含む、方法。
- 請求項8の方法であって、前記VEGI−192Aポリペプチドは、E.coliから組換え生成される、方法。
- 乳癌を処置するためのキットであって、該キットは、
VEGI−192Aポリペプチドと、
乳癌を処置するために該VEGI−192Aポリペプチドを投与するための指示と、
を備える、キット。
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