JP2007329031A - 回路遮断器 - Google Patents

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健太郎 小倉
Takao Mihashi
孝夫 三橋
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Abstract

【課題】全電圧領域に渡って遮断性能を向上させることができる回路遮断器を提供する。
【解決手段】ベース1とカバー2とからなる絶縁容器内に固定された固定接触子22と、上記固定接触子に対向配置されて遮断部を構成し、開閉機構によって開閉される可動接触子24と、上記遮断部の近傍に設けられ、多段に積み重ねられた消弧グリッド27と、上記絶縁容器に形成されたアークガス排気口28と、上記アークガス排気口に装着され、ガス抜き穴29aを有するバリア29と、上記バリアに重ねて設けられ、上記遮断部の大電流遮断時と高電圧遮断時とで上記ガス抜き穴の開口部の大きさを制御する遮蔽板30とを備えた構成とする。
【選択図】図1

Description

この発明は、配線用遮断器や漏電遮断器などの回路遮断器、特に、大電流遮断時には消弧室内部のアークガスの排出を容易にし、高電圧遮断時にはアークガスの排出を抑制して全電圧領域における遮断性能を向上させることが可能な回路遮断器に関するものである。
従来の配線用遮断器は、アークガス排気口に防護板を設け、回路が正常な状態では上記排気口を上記防護板で覆って異物の混入を防止し、遮断器が接続された回路で事故などの異常が発生した場合は、遮断器の接点部が開極して電流を遮断すると共に、接点間に発生したアークによる消弧室内部の圧力上昇で上記防護板を弾性変形させ、アークガス排気口を開放してアークガスを排出させるようにしていた。(例えば特許文献1参照)。
特許文献1における図4は、上述したアークガス排出口を有する3極回路遮断器の例を縦断面図で示している。この図において、モールド樹脂のケース1と、ケース1の上面を覆うカバー2とからなる絶縁容器内には、電源側(図の左端側)から負荷側(図の右端側)に至る3条の3相分の遮断室がケース1及びカバー2間に形成された相間隔壁(図示されていない)で区画されて互いに平行に形成されている。
各極の遮断室(図示は中央極)には固定接触子3と可動接触子4とからなる遮断部が収容されている。電源側端子5と一体の固定接触子3はケース1に固定され、絶縁物のホルダ6を介してケース1に回転自在に支持された可動接触子4は、図示中央極に設置された開閉機構7により開閉駆動されるようになっている。また、遮断部にはこれを囲むように、多段のグリッド8を有する消弧室が配置されている。
図示の閉極状態において、回路遮断器が接続された回路に過電流が流れると、可動接触子4が開極方向に駆動されて電流遮断が行われる。その際、遮断部にはアークが発生し、このアークは消弧室のグリッド8に引き込まれて消弧される、また、同時にアークの熱により遮断室内の空気や周辺の絶縁物が加熱されてアークガスが発生し、このアークガスが遮断室の両端(電源側及び負荷側)の開口16から外部に噴出する。
ここで、遮断室の開口16は、この部分から遮断室内に電線屑などの異物が混入しないように後述する遮蔽板17で覆われている。この遮蔽板17にはアークガスを排出させる排気口が形成されているが、この排気口からもまた異物が侵入しないように、遮蔽板17の前面には上記排気口を塞ぐ防護板18が重ねて設けられている。
特許文献1における図5は上記遮蔽板17及び防護板18が取り付けられた開口16を拡大して示す正面図である。この図に示すように、遮断室の開口16はケース1とカバー2とに跨って形成されているが、ケース1にはこの開口16に臨む左右両端に垂直な溝19がそれぞれ設けられ、図の下半分が上半分より幅が広く形成された凸形状の遮蔽板17は下半分の左右両端が溝19に挿入される形で固定されている。遮蔽板17の上半分は開口16に臨むカバー2の周縁に密接し、この部分にアークガスを排出させるための長方形の排気口20が図示の場合は左右2列に3個ずつ、計6個設けられている。
一方、遮蔽板17と同様に凸形の防護板18は、一端(図の上端)を自由端とし、他端(図の下端)を固定端とし、この固定端の左右両側に張り出す取付片18aが溝19に遮蔽板17と一緒に挿入されて固定され、自由端部で遮蔽板17の排気口20を塞いでいる。遮蔽板17及び防護板18にはいずれもベークライト板やポリエステルガラスマット積
層板などの材料が用いられているが、その板厚は遮蔽板17が1mm程度であるのに対し、防護板18は弾性変形が容易なようにその半分以下に作られている。そして、アークガスの排出時には、ガス圧で防護板18の自由端が特許文献1の図4における負荷側に鎖線で示しているように弾性変形し、排気口20を開いてアークガスを排出させる。つまり、防護板18の自由端は排気口20を開閉する弁の作用を有している。なお、回路遮断器において、消弧室内のアークガスを効果的に利用することで遮断性能が向上することは、特許文献2にも示されている。
特許第3246588号公報 再公表特許WO01/041168号公報
従来の回路遮断器は上記のように構成されているため、アークガス排気口の防護板は、アークが発生して消弧室内部の圧力が上昇すると、開放動作することになる。一方、回路遮断器の遮断責務には大電流遮断と高電圧遮断がある。高電圧遮断は、例えば3相交流回路での一線地絡の単相遮断に相当し、比較的小電流であるが遮断器が接続されている回路の定格電圧が開極した接触子間に印加されるため電圧的には厳しい条件となる。
これに対して大電流遮断は、例えば短絡遮断に相当し、遮断電流は大きいが開極した接触子間に印加される電圧は定格電圧の1/√3倍であるため、電圧的には比較的容易な条件となる。また、国際電気標準会議ではACシステムにおける標準電圧として、3相で230,400,690,1000Vが規定されているが、一般に主回路電圧が高くなるに従って事故発生時に流れる短絡電流は小さくなるので、同じ3相短絡事故であっても主回路電圧が高い高電圧遮断の場合(例えば、690Vもしくは1000V)に比較して、主回路電圧が低い場合(例えば、230Vもしくは400V)には、より大きな遮断容量(大電流遮断)が要求される。
一般的な製品では、適用回路毎に異なる仕様のものを用意すると膨大な種類となることから、この両遮断性能を有するものが要求されている。言い換えれば、大電流遮断と高電圧遮断の両立が求められるが、高電圧遮断に合わせると大電流遮断時には内圧上昇により回路遮断器の筐体割れが発生し、大電流遮断に合わせると必要な内圧が維持できずに高電圧遮断が出来ないという問題点があった。
この発明は上記のような問題点を解決するためになされたものであり、全電圧領域に渡って遮断性能を向上させることができる回路遮断器を提供することを目的とする。
この発明に係る回路遮断器は、ケースとカバーとからなる絶縁容器内に固定された固定接触子と、上記固定接触子に対向配置されて遮断部を構成し、開閉機構によって開閉される可動接触子と、上記遮断部の近傍に設けられ、多段に積み重ねられた消弧グリッドと、上記絶縁容器に形成されたアークガス排気口と、上記アークガス排気口に装着され、ガス抜き穴を有するバリアと、上記バリアに重ねて設けられ、上記遮断部の大電流遮断時と高電圧遮断時とで上記ガス抜き穴の開口部の大きさを制御する遮蔽板とを備えたものである。
この発明に係る回路遮断器は上記のように構成され、アークガス排気口の開放面積を大電流遮断時と高電圧遮断時とで変化させるようにしているため、圧力が高い大電流遮断時には遮断期間を通してアークガス排気口の流路面積を大きくしてアークガスの排出量を増やし、高電圧遮断時(比較的小電流時)にはアークガス排気口の流路面積を制限すること
で電流零点近傍での圧力低下を防止し、全電圧領域に渡って優れた遮断性能を実現させることができる。
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図にもとづいて説明する。図1は、実施の形態1における消弧室周辺の構成を示す縦断面図である。異常電流を検出して開極指令を出すリレー部や遮断部の駆動機構などは特許文献1と同様であるため図示及び説明を省略する。
図2は、実施の形態1における遮蔽板の構成を示す正面図、図3は、図2に示す遮蔽板を図1のアークガス排気口に取り付けた状態を示すもので、(A)は正面図、(B)は上面図である。図4は、絶縁容器の側面に形成した側面排気口と、その排気口に取付けられた圧力弁を示す横断面図、図5は、側面排気口の圧力弁を示すもので、(A)は圧力弁の構成を示す斜視図、(B)は絶縁容器への取り付け状況を示す斜視図である。また、図6は、回路遮断器における遮断時の電流、アーク電圧、消弧室内部圧力の変動の概略を示した特性図である。
実施の形態1による回路遮断器は、図1に示すように、絶縁物からなるベース1、カバー2の内部で3相分の遮断室が隔壁によって区画され互いに平行に形成されている。図1は図4に示す3相分の遮断室のうち中央相を除く両側の相の遮断室の一方を示している。各相の遮断室には絶縁物からなるミドルベース20がベース1に固定され、図示しないリレー部や駆動機構部など、消弧空間以外の部分へのアークガスの流入を防いでいる。
各相の消弧室には固定接点21が固着された固定接触子22、可動接点23が固着された可動接触子24が収納されている。固定接触子22の一端にはアークランナ25が設けられ、他端は電源側端子26と接続され、固定接触子22、電源側端子26は共にベース1に固定されている。可動接触子24は図示していない可動子ホルダによってベース1に固定され、駆動機構部によって開閉動作が行なわれるようになっている。
固定接触子と可動接触子とからなる遮断部に隣接して磁性体からなるグリッド27が複数枚、適当な間隔で積層されて配置されている。グリッド27に隣接して回路遮断器の絶縁容器の一端にはアークガスを消弧室内部から絶縁容器の外部へ排出するアークガス排気口28が設けられ、この排気口にはガス抜き穴29aを有するバリア29が設けられている。バリア29には、ガス抜き穴29aからの異物混入を防止する目的で絶縁物の剛性体からなる遮蔽板30がガス抜き穴29aを覆うように重ねて設けられている。
遮蔽板30は図2に詳細構造を示すように、両側の下端部に支軸30aが設けられ、この支軸30aを中心にして回転可能なようにベース1に保持されている。また、上記支軸30aにはひねりバネ30bが装着され、遮蔽板30が常時、バリア29側に付勢されるようになっている。
図3は、バリア29と遮蔽板30とをベース1に装着した状態を示すもので、(A)は正面図、(B)は上面図を示している。即ち、遮蔽板30は絶縁容器の外部から見てバリア29を覆うようにバリア29の外側に重ねて設けられ、支軸30とバネ30bはベース1の隔壁1aに設けた溝1bにバリア29と共に上方から差し込まれる形で固定されて、アークガスに直接晒されない構成となっており、アークガスの熱によるバネの力の低下を防止するようにしている。
また、遮断器の絶縁容器の側面には図4に示すように、アークガスを排気する側面排気口31が設けられている。この排気口31は可動接触子24が最大開極状態にあるときに、その可動接点23の中心よりグリッド27側、即ち図1に示した1点鎖線A−A’より図
において右側に位置するように設けられている。側面排気口31にはまた、絶縁物からなる圧力弁32が排気口を塞ぐように設けられている。圧力弁32は図5(A)にその構造を示すように、両側に支軸32aが設けられて回転可能に構成されると共に、支軸32aには圧力弁32を側面排気口31を塞ぐ方向に常時付勢するひねりバネ32bが装着されている。支軸32a及びバネ32bは図5(B)に示すように、ベース1の側面に設けられた溝1cに図示のように挿入され、カバー2によって覆われている。
次に、動作について説明する。回路遮断器に事故等による異常電流が流れると、図示しないリレー部が事故電流を検知して引き外し装置が動作し、機械的な操作力が可動接触子24に加わるか、または、固定接触子22と可動接触子24との間の事故電流による電磁反発力によって可動接触子24が図1に破線で示すように開極し、固定接点21と可動接点23との間にアークが発生する。ただし、事故状況により高電圧遮断または大電流遮断と、条件が異なる2つの遮断責務が存在する。従って、遮断時における消弧室内部の様相がそれぞれ異なってくることとなり、それぞれに効果的な消弧室の形態が考えられる。
以下、実施の形態1における上述した2つの遮断状況下での消弧室の状況について説明する。
高電圧遮断の場合、固定接点21と可動接点23との間に発生したアークはグリッド27を磁路とする鎖交磁束の影響などでグリッド27の方向へ駆動され、グリッド27によって分断アークとなる。この結果、陰極降下および陽極降下が生じてアーク電圧が高くなり、遮断性能が高められる。この際、消弧室内の圧力は図6にPで示すように発弧(アーク電圧AVの発生タイミング)と同時に上昇していき、遮蔽板30は図1に破線Vsで示すように回転動作する。
しかしながら、アークに入力されるエネルギーは小さいため、バリア29の上側に形成されているガス抜き穴29aだけを通過して遮断器外部に放出されることとなる。これによって消弧室内部のアークガスが消弧室外部へと排出され、アークガス排気口28の上側に向かってアークが伸長することでもアーク電圧が高くなり、遮断性能を高めることとなる。なお、この時、側面排気口31の圧力弁32は圧力が低いため開放動作しない。
この後、圧力が次第に低下してくると、上述のように、アークに入力されるエネルギーが小さいため、遮蔽板30は初期位置に復帰しようとする。このため、ガス抜き穴29aの開放面積が次第に縮小して消弧室内部からのアークガスの流れも開放部分に集中し排気量が抑制される。従って、消弧室内の圧力低下速度が抑えられるため、電流零点近傍においてもアークに対する吹き付け圧力を維持し続け、遮断性能を高めることが可能となる。電流遮断後、遮蔽板30はバネ30bによって初期状態に復帰することとなる。
次に、大電流遮断における消弧室の状態について説明する。高電圧遮断とは異なり大電流ではグリッド27等の磁性体は磁気飽和状態となるため、グリッド27の方向への駆動力は得られない。図6において、電流Iがピークに達する以前から消弧室内部は大電流アークの発生で高圧状態(高電圧遮断時の圧力変化と同様の傾向であるが絶対値が異なる)になるため、バネで付勢されている遮蔽板30を動かすのに十分な圧力が加わり、図1に破線Isで示すように大きく回転動作する。これにより遮断初期からバリア29のガス抜き穴29aの全てが開放されることとなり、アークガス排気口28が完全に開放状態となる。
この結果、消弧室内部の余剰アークガスが消弧室外部へと排出され、接点部からグリッド27方向へのガスの流れが生じ、このガス流により接点間に発生したアークにグリッド27方向への駆動力が加わる。グリッド27に移動したアークは分断アークとなって、陰極降下および陽極効果が生じてアーク電圧AVが高くなる。さらに、アークガス排気口2
8に向かってアークが伸長することでもアーク電圧AVが高くなって遮断性能を高めることとなる。この時、側面排気口31の圧力弁32も消弧室内の圧力が高いため、図4に破線で示すように外部に向けて回転動作し、側面排気口31も開放されて消弧室内のアークガスが排気される。
遮断器側面に向けたガスの流れが発生することで、アークは側面に向けても伸長してアーク抵抗が高くなり、この作用が上述したグリッドなどによる効果に加わって更に遮断性能を高めることが可能になる。この後、圧力は次第に低下してくるが、大電流時はアークに入力されるエネルギーが大きいため、電流零点近傍に至っても遮蔽板30、圧力弁32は回転した状態を維持したままであり、アークに対してガスの流れを維持し続け、遮断性能を高めることとなる。電流遮断後、遮蔽板30及び圧力弁32はバネ30b、32bによってそれぞれ初期状態に復帰することとなる。
実施の形態1は上記のように構成されているため、高電圧遮断時には電流零点近傍での圧力低下を防止し、大電流遮断時には遮断期間を通してアークガス排気口の流路面積を大きくして筐体割れを防ぐことが可能となり、全電圧領域に渡って優れた遮断性能を実現することができる。なお、上記実施の形態では電源側排気と側面排気を組み合わせたが、電源側排気もしくは側面側排気のみでも全電圧領域に渡って遮断性能を向上させることができる。
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2を図にもとづいて説明する。図7は、実施の形態2における消弧室周辺の構成を示す縦断面図、図8は、アークガス排気口の正面図である。
これらの図において、図1、図2と同一または相当部分には同一符号を付して説明を省略する。また、異常電流を検出して開極指令を出すリレー部や遮断部の駆動機構などは特許文献1と同様であるため図示及び説明を省略する。
実施の形態2による回路遮断器は、図7及び図8に示すように、実施の形態1と同様に形成された遮蔽板30の図7における高さ方向の寸法を実施の形態1より短くして、図7、図8に示すように、バリア29の上部のガス抜き穴29aが遮断器外部に対して常時露出するようにしたものである。
この実施の形態によれば、高電圧遮断の場合、固定接点21と可動接点23との間に発生したアークはグリッド27を磁路とする鎖交磁束の影響などでグリッド27の方向へ駆動され、グリッド27によって分断アークとなる。この結果、陰極降下および陽極降下が生じてアーク電圧が高くなり遮断性能が高められる。この際、消弧室内の圧力は図6にPで示すように発弧(アーク電圧AVの発生タイミング)と同時に上昇していき、バリア29の上部のガス抜き穴29aからアークガスが排出されることになる。従って、遮蔽板30を回転動作させるに十分な圧力が加わらないため遮蔽板30は初期状態を維持し続けることとなる。
これにより、アークガス排気口28の上側に向かってアークが伸長することでもアーク電圧が高くなり、遮断性能を高めることとなる。なお、この時、側面排気口31の圧力弁32は圧力が低いため開放動作しない。この後、圧力が次第に低下してくるが、ガス抜き穴29aの開放面積が制限されているため排気量が抑制される。従って、消弧室内の圧力低下速度が抑えられるため、電流零点近傍においてもアークに対する吹き付け圧力を維持し続け、遮断性能を高めることが可能となる。
次に、大電流遮断における消弧室の状態について説明する。高電圧遮断とは異なり大電流ではグリッド27等の磁性体は磁気飽和状態となるため、グリッド27の方向への駆動
力は得られない。図6において、電流Iがピークに達する以前から消弧室内部は大電流アークの発生で高圧状態(高電圧遮断時の圧力変化と同様の傾向であるが絶対値が異なる)になるため、主として開放されているバリア29の上部のガス抜き穴29aからアークガスが排出されるが、バネで付勢されている遮蔽板30にも十分な圧力が加わり、図7に破線Isで示すように回転動作する。
これにより遮断初期からバリア29のガス抜き穴29aの全てが遮断器外部に露出することとなり、アークガス排気口28が完全に開放状態となる。この結果、消弧室内部の余剰アークガスが消弧室外部へと排出され、接点部からグリッド27方向へのガスの流れが生じ、このガス流により接点間に発生したアークにグリッド27方向への駆動力が加わる。
グリッド27に移動したアークは分断アークとなって、陰極降下および陽極効果が生じてアーク電圧が高くなる。さらに、アークガス排気口28に向かってアークが伸長することでもアーク電圧が高くなって遮断性能を高めることとなる。この時、側面排気口31の圧力弁32も消弧室内の圧力が高いため、図4に破線で示すように外部に向けて回転動作し、側面排気口31も開放されて消弧室内のアークガスが排気される。
遮断器側面に向けたガスの流れが発生することで、アークは側面に向けても伸長してアーク抵抗が高くなり、この作用が上述したグリッドなどによる効果に加わってさらに遮断性能を高めることが可能になる。この後、圧力は次第に低下してくるが、大電流時はアークに入力されるエネルギーが大きいため、電流零点近傍に至っても遮蔽板30、圧力弁32は回転した状態を維持したままであり、アークに対してガスの流れを維持し続け、遮断性能を高めることとなる。電流遮断後、遮蔽板30及び圧力弁32はバネ30b、32bによって初期状態に復帰することとなる。
実施の形態2は上記のように構成されているため、実施の形態1と同様に、高電圧遮断時には電流零点近傍での圧力低下を防止し、大電流遮断時には遮断期間を通してアークガス排気口の流路面積を大きくして筐体割れを防ぐことが可能となり、全電圧領域に渡って優れた遮断性能を実現することができる。
実施の形態3.
次に、この発明の実施の形態3を図にもとづいて説明する。図9は、実施の形態3における消弧室周辺の構成を示す縦断面図である。この図において、図1と同一または相当部分には同一符号を付して説明を省略する。また、異常電流を検出して開極指令を出すリレー部や遮断部の駆動機構などは特許文献1と同様であるため図示及び説明を省略する。
図1と異なる点は、アークガス排気口28に遮蔽板を設けず、かつ、バリア29の一部に放圧弁33を設けた点である。放圧弁33の周囲にはバリア29のガス抜き穴29aが形成されていることは云うまでもない。
この実施の形態によれば、高電圧遮断の場合、固定接点21と可動接点23との間に発生したアークはグリッド27を磁路とする鎖交磁束の影響などでグリッド27の方向へ駆動され、グリッド27によって分断アークとなる。この結果、陰極降下および陽極降下が生じてアーク電圧が高くなり遮断性能が高められる。この際、消弧室内の圧力は図6にPで示すように発弧(アーク電圧AVの発生タイミング)と同時に上昇していき、バリア29の放圧弁33の周囲のガス抜き穴29aからアークガスが排出されることになる。従って、放圧弁33を開放させるに十分な圧力が加わらないため、放圧弁33は閉鎖状態を維持し続けることとなる。
これにより、アークガス排気口28に向かってアークが伸長することでもアーク電圧が高くなり遮断性能を高めることとなる。なお、この時、側面排気口31の圧力弁32は圧力が低いため開放動作しない。この後、圧力が次第に低下してくるが、ガス抜き穴29aの開放面積が小さいため排気量が抑制される。従って、消弧室内の圧力低下速度が抑えられるため、電流零点近傍においてもアークに対する吹き付け圧力を維持し続け遮断性能を高めることができる。
次に、大電流遮断における消弧室の状態について説明する。高電圧遮断とは異なり大電流ではグリッド27等の磁性体は磁気飽和状態となるため、グリッド27の方向への駆動力は得られない。図6において、電流Iがピークに達する以前から消弧室内部は大電流アークの発生で高圧状態(高電圧遮断時の圧力変化と同様の傾向であるが絶対値が異なる)になるため、主としてバリア29のガス抜き穴29aからアークガスが排出されるが、放圧弁33にも十分な圧力が加わり、図9に破線Isで示すように放圧弁33を開放して放圧動作する。
これにより遮断初期からバリア29の流路面積が大きくなり、アークガス排気口28が完全に開放状態となる結果、消弧室内部の余剰アークガスが消弧室外部へと排出され、接点部からグリッド27方向へのガスの流れが生じ、このガス流によって接点間に発生したアークにグリッド27方向への駆動力が加わる。
グリッド27に移動したアークは分断アークとなって、陰極降下および陽極効果が生じてアーク電圧が高くなる。さらに、アークガス排気口28に向かってアークが伸長することでもアーク電圧が高くなって遮断性能を高めることとなる。この時、側面排気口31の圧力弁32も消弧室内の圧力が高いため、図4に破線で示すように外部に向けて回転動作し、側面排気口31も開放されて消弧室内のアークガスが排気される。
遮断器側面に向けたガスの流れが発生することで、アークは側面に向けても伸長してアーク抵抗が高くなり、この作用が上述したグリッドなどによる効果に加わってさらに遮断性能を高めることが可能になる。この後、圧力は次第に低下してくるが、大電流時はアークに入力されるエネルギーが大きいため、電流零点近傍に至っても圧力弁32、放圧弁33は開放状態を維持したままであり、アークに対してガスの流れを維持し続け、遮断性能を高めることとなる。電流遮断後、圧力弁32及び放圧弁33は初期状態に復帰することとなる。
実施の形態3は上記のように構成されているため、高電圧遮断時には放圧弁33の周囲のガス抜き穴29aからアークガスを放出し、電流零点近傍においてもアークに対する吹き付け圧力を維持し続けて遮断性能を高め、大電流遮断時には放圧弁33を開放しアークガス排気口28の流路面積を大きくして消弧室内部の余剰アークガスを消弧室外部へ排出し、全電圧領域に渡って優れた遮断性能を実現することができる。
実施の形態4.
次に、この発明の実施の形態4を図にもとづいて説明する。図10は、実施の形態4における消弧室周辺の構成を示す縦断面図、図11は、アークガス排気口の正面図である。これらの図において、図7、図8と同一または相当部分には同一符号を付して説明を省略する。また、異常電流を検出して開極指令を出すリレー部や遮断部の駆動機構などは特許文献1と同様であるため図示及び説明を省略する。
図7、図8と異なる点は、アークガス排気口28に遮蔽板30を設けず、かつ、バリア29を絶縁物からなる弾性体で形成すると共に、その下端をベース1に固定し、上端をラッチ34で保持するようにした点である。
この実施の形態によれば、高電圧遮断の場合、固定接点21と可動接点23との間に発生したアークはグリッド27を磁路とする鎖交磁束の影響などでグリッド27の方向へ駆動され、グリッド27によって分断アークとなる。この結果、陰極降下および陽極降下が生じてアーク電圧が高くなり遮断性能が高められる。この際、消弧室内の圧力は図6にPで示すように発弧(アーク電圧AVの発生タイミング)と同時に上昇していき、バリア29のガス抜き穴29aからアークガスが排出されることになる。従って、ラッチ34を動作させるに十分な圧力が加わらないため、バリア29はラッチ34で保持された状態を維持し続けることとなる。
これにより、アークガス排気口28に向かってアークが伸長することでもアーク電圧が高くなり遮断性能を高めることとなる。なお、この時、側面排気口31の圧力弁32は圧力が低いため開放動作しない。この後、圧力が次第に低下してくるが、ガス抜き穴29aの開放面積が制限されているため排気量が抑制される。従って、消弧室内の圧力低下速度が抑えられるため、電流零点近傍においてもアークに対する吹き付け圧力を維持し続け、遮断性能を高めることができる。
次に、大電流遮断における消弧室の状態について説明する。高電圧遮断とは異なり大電流ではグリッド27等の磁性体は磁気飽和状態となるため、グリッド27の方向への駆動力は得られない。図6において、電流Iがピークに達する以前から消弧室内部は大電流アークの発生で高圧状態(高電圧遮断時の圧力変化と同様の傾向であるが絶対値が異なる)になるため、開放されているバリア29のガス抜き穴29aからアークガスが排出されるが、ラッチ34にも動作させるに十分な圧力が加わり、ラッチ34が解放されてバリア29の保持状態が解除され、図10に破線Isで示すように弾性変形する。
これにより遮断初期からアークガス排気口28が完全に開放状態となる。この結果、消弧室内部の余剰アークガスが消弧室外部へと排出され、接点部からグリッド27方向へのガスの流れが生じ、このガス流によって接点間に発生したアークにグリッド27方向への駆動力が加わる。グリッド27に移動したアークは分断アークとなって、陰極降下および陽極効果が生じてアーク電圧が高くなる。さらに、アークガス排気口28に向かってアークが伸長することでもアーク電圧が高くなって遮断性能を高めることとなる。
この時、側面排気口31の圧力弁32も消弧室内の圧力が高いため、図4に破線で示すように外部に向けて回転動作し、側面排気口31も開放されて消弧室内のアークガスが排気される。遮断器側面に向けたガスの流れが発生することで、アークは側面に向けても伸長してアーク抵抗が高くなり、この作用が上述したグリッドなどによる効果に加わってさらに遮断性能を高めることが可能になる。この後、圧力は次第に低下してくるが、大電流時はアークに入力されるエネルギーが大きいため、電流零点近傍に至ってもバリア29は弾性変形した状態を維持したままであり、アークに対してガスの流れを維持し続け、遮断性能を高めることとなる。電流遮断後、バリア29は弾性体であるため、ラッチ34を押し上げ初期状態に復帰することとなる。
実施の形態4は上記のように構成されているため、高電圧遮断時にはラッチ34は動作しないが、アークガスはバリア29のガス抜き穴29aから排出され、大電流遮断時には高圧のアークガスによってラッチ34が解放され、アークガス排気口28が完全に開放状態となって消弧室内部の余剰アークガスが消弧室外部へ排出され、全電圧領域に渡って優れた遮断性能を実現することができる。
この発明の実施の形態1による回路遮断器の消弧室周辺の構成を示す縦断面図である。 実施の形態1における遮蔽板の構成を示す正面図である。 図2に示す遮蔽板を図1のアークガス排気口に取付けた状態を示すもので、(A)は正面図、(B)は上面図である。 実施の形態1において側面に側面排気口を形成した絶縁容器の横断面図である。 実施の形態1における側面排気口の圧力弁を示すもので、(A)は圧力弁の構成を示す斜視図、(B)は絶縁容器への取り付け状況を示す斜視図である。 この発明が適用される回路遮断器における遮断時の電流、アーク電圧、圧力の関係を示す特性図である。 この発明の実施の形態2による回路遮断器の消弧室周辺の構成を示す縦断面図である。 実施の形態2におけるアークガス排気口の正面図である。 この発明の実施の形態3による回路遮断器の消弧室周辺の構成を示す縦断面図である。 この発明の実施の形態4による回路遮断器の消弧室周辺の構成を示す縦断面図である。 実施の形態4におけるアークガス排気口の正面図である。
符号の説明
1 ベース、 1a 隔壁、 1b 溝、 1c 溝、 2 カバー、
20 ミドルベース、 21 固定接点、 22 固定接触子、
23 可動接点、 24 可動接触子、 25 アークランナ、
26 電源側端子、 27 グリッド、 28 アークガス排気口、
29 バリア、 29a ガス抜き穴、 30 遮蔽板、 30a 支軸、
30b バネ、 31 側面排気口、 32 圧力弁、 32a 支軸、
32b バネ、 33 放圧弁、 34 ラッチ。

Claims (6)

  1. ケースとカバーとからなる絶縁容器内に固定された固定接触子と、上記固定接触子に対向配置されて遮断部を構成し、開閉機構によって開閉される可動接触子と、上記遮断部の近傍に設けられ、多段に積み重ねられた消弧グリッドと、上記絶縁容器に形成されたアークガス排気口と、上記アークガス排気口に装着され、ガス抜き穴を有するバリアと、上記バリアに重ねて設けられ、上記遮断部の大電流遮断時と高電圧遮断時とで上記ガス抜き穴の開口部の大きさを制御する遮蔽板とを備えた回路遮断器。
  2. 上記遮蔽板は絶縁物からなる剛性体で構成されると共に、上記バリアのガス抜き穴を開閉する方向に変位可能に設けられ、バネによって常時は上記ガス抜き穴を閉塞する方向に付勢されていることを特徴とする請求項1記載の回路遮断器。
  3. 上記遮蔽板は上記バリアのガス抜き穴の一部のみを覆うように上記バリアと重ねて設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の回路遮断器。
  4. ケースとカバーとからなる絶縁容器内に固定された固定接触子と、上記固定接触子に対向配置されて遮断部を構成し、開閉機構によって開閉される可動接触子と、上記遮断部の近傍に設けられ、多段に積み重ねられた消弧グリッドと、上記絶縁容器に形成されたアークガス排気口と、上記アークガス排気口に装着され、ガス抜き穴を有するバリアと、上記バリアに設けられた放圧弁とを備えた回路遮断器。
  5. ケースとカバーとからなる絶縁容器内に固定された固定接触子と、上記固定接触子に対向配置されて遮断部を構成し、開閉機構によって開閉される可動接触子と、上記遮断部の近傍に設けられ、多段に積み重ねられた消弧グリッドと、上記絶縁容器に形成されたアークガス排気口と、上記アークガス排気口に一端が固定され、他端がラッチで保持されると共に、ガス抜き穴を有する弾性絶縁物からなるバリアとを備え、上記ラッチは上記遮断部の大電流遮断時に生ずるガス圧により上記バリアの他端の保持を解放して上記アークガス排気口を開放状態とすることを特徴とする回路遮断器。
  6. ケースとカバーとからなる絶縁容器内に固定された固定接触子と、上記固定接触子に対向配置されて遮断部を構成し、開閉機構によって開閉される可動接触子と、上記遮断部の近傍に設けられ、多段に積み重ねられた消弧グリッドと、上記絶縁容器に形成されたアークガス排気口と、上記絶縁容器の側面に設けられたアークガスの側面排気口とを備え、上記アークガスの側面排気口は、上記遮断部の固定接触子と可動接触子とが最大開極状態にあるとき、上記可動接触子の可動接点の中心部より消弧グリッド側に配設されたことを特徴とする回路遮断器。
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