JP2007327898A - ガウシアンレイバンドルモデルにおける音場エネルギーの広がりの標準偏差算出方法及びそのプログラム - Google Patents

ガウシアンレイバンドルモデルにおける音場エネルギーの広がりの標準偏差算出方法及びそのプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】両隣の音線が存在しない場合であっても、音場の計算精度が劣化を防ぐことのできる、ガウシアンレイバンドルモデルにおける音場エネルギーの広がりの標準偏差算出方法を得る。
【解決手段】音源が発する音線経路を算出し、両隣の音線が存在しない点Pを検出するステップと、点Pの隣に仮想音線を設定し、仮想音線上において音源からの水平距離が点Pと同一である点を点Qとし、点Pにおける位相速度を用いて点Qにおける位相速度を求めるステップと、点Pが存在する音線の屈折点P’の深度を、音速プロファイルデータ中の対応する点より求めるステップと、音速プロファイルデータを補間して、点Qにおける位相速度に対応する点を求め、当該点より仮想音線の屈折点Q’の深度を求めるステップと、点P’の深度及び点Q’の深度より、音線と仮想音線との深度差を求めるステップと、を有することを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、音線モデル(ガウシアンレイバンドルモデル)を用いた水中の音波伝播特性を計算する音波伝播シミュレーションにおいて、音線を中心としたガウス分布状のエネルギーの広がりを仮定する際、該ガウス分布の標準偏差σを計算する方法に関するものである。
海洋中の音波伝播は、水中での音波の屈折や海面海底での反射によって、複雑な特性を示す、これらの現象を模擬し、水中の音波伝播特性を計算する際に用いる代表的なモデルとしては、音線モデル、ノーマルモデル、放物線型方程式(Parabolic Equation、以下PEと略す)モデル等がある。
なかでも、ガウシアンレイバンドルは、非特許文献1に記述された方法で、音線モデルの1種であり、(古典)音線モデルに固有の現象である、影領域で音圧0、焦線領域で音圧∞となる問題を補った方法である。
図6は、音線モデルの概念図を説明するものである。
音線モデルは、音源より俯角θの音線が複数放射されているものとして種々の解析を行うものである。図6においては、音源より俯角θνで音線νが放射されている。
音線ν上の任意の点は、音源からの水平距離rと深度zνで表すことができる。解析の便宜上、音線上の複数の点を、距離に基づくインデックスiで区別する場合もある。
また、ガウシアンレイバンドルモデルを用いた解析で、音速プロファイルと呼ぶデータを用いる場合がある。
図7は、音速プロファイルデータの例を図示するものである。
音速プロファイルは、水中における音速の、深度と速度との関係を表すものであり、計測ないしは計算によって求める。
音速プロファイルは海洋中の地形等によっても左右され、図7の(a)〜(c)に例示するように、種々のパターンが存在する。
以下、ガウシアンレイバンドルモデルにおける解析の原理について説明する。
音源から、N本の音線を放射させると、海中の任意の点(r,z)において、
Figure 2007327898
なる音場(パワー)を生成する。ここで、Σは音線毎の加算を表し、Γνは水平距離rにおけるエネルギーの減衰量、zνは水平距離rにおける音線深度を表す。
σνは、音線上の点(r,zν)からのガウス分布状のエネルギーの広がりの標準偏差を表し、次式で計算する。
Figure 2007327898
式(2)において、max()は、()内の要素の最大値をとることを表し、Δzνは隣の音線との深度差を表し、λは音源から放射される音波の波長を表す。
prνは、水平スローネス(位相速度の逆数)を表し、次式で計算する。
Figure 2007327898
式(3)において、θνは音線上の点(r,zν)における音線の俯角を表し、cνは音線上の点(r,zν)における音速を表す。
βν0は、次式(4)で計算する値であり、音源のみに依存する(以降、音源情報と呼ぶ)。
Figure 2007327898
式(4)において、Δθν0は音線の放射角刻みを表し、prν0は音源位置における水平スローネスを表し、次式(5)で計算する。
Figure 2007327898
式(5)において、θν0は音源位置における音線νの放射角度、c0は音源位置の音速を表す。
図8は、従来の音場計算装置のブロック図である。
図8の音場計算装置は、入力端子801、音線計算器802、σ計算器803、音場計算器804、出力端子805を有する。
入力端子801は、環境条件や計算条件を入力するためのものである。
音線計算器802は、音線経路を計算する。
σ計算器803は、音線からのエネルギーの広がりの標準偏差を計算する。
音場計算器804は、音場を計算する。
出力端子805は、計算結果を出力するためのものである。
次に、図8の音場計算装置の動作について、図8に沿って説明する。
最初に、入力端子801から、周波数、音線放射角度、音源深度、受波深度z、水中の音速分布(音速プロファイル)、海面反射損失、海底反射損失等のパラメータが入力される。
音線計算器802は、入力端子801を通じて該パラメータが入力されると、該パラメータに基づいて音線経路を計算する。
次に音線計算器802は、音線経路上の各点の座標(rνi,zνi)(νは音線番号を表し、ν=1,2,・・・,N、iは距離インデックスを表し、i=1,2,・・・,n)における経路長Sνi、音速cνi、俯角θνiを計算し、さらに音源における音速c0を計算する。
次に、音線計算器802は、音線経路上の各点の座標(rνi,zνi)及び経路長Sνi、音速cνi、俯角θνi、音源における音速c0、音線の放射角度θν0、音線の放射角度刻みΔθ0、海面反射損失、海底反射損失、周波数、受波深度zをσ計算器803に出力する。
σ計算器803は、音線計算器802から、音線経路上の各点の座標(rνi,zνi)及び経路長Sνi、音速cνi、俯角θνi、音源における音速c0、音線の放射角度θν0、音線の放射角度刻みΔθ0、海面反射損失、海底反射損失、周波数、受波深度zが入力されると、音線経路上の各点の座標(rνi,zνi)におけるエネルギーの広がりの標準偏差σνiを、次式(6)により計算する。
Figure 2007327898
式(6)において、Δz1及びΔz2は、両隣の音線との深度差を表す。深度差について、次の図9で説明する。
図9は、式(6)における深度差Δz1及びΔz2を説明するものである。
座標(rνi,zνi)の点は、音線ν上の距離インデックスiの点である。
音線νの両隣には、音線νー1と音線ν+1が存在している。
Δz1は、音線νと音線νー1との深度差を表す。
Δz2は、音線νと音線ν+1との深度差を表す。
Δz1及びΔz2は、次式(7)で計算する。
Figure 2007327898
ここで、音線が片側にしか存在しない場合には、次式(8)によって計算する。
Figure 2007327898
次に、σ計算器803は、式(6)または式(8)によって計算した標準偏差σνi及び音線経路上の各点の座標(rνi,zνi)及び経路長Sνi、音速cνi、俯角θνi、音源における音速c0、音線の放射角度θν0、音線の放射角度刻みΔθ0、海面反射損失、海底反射損失、周波数、受波深度zを、音場計算器804に出力する。
音場計算器804は、σ計算器803から、標準偏差σνi及び音線経路上の各点の座標(rνi,zνi)及び経路長Sνi、音速cνi、俯角θνi、音源における音速c0、音線の放射角度θν0、音線の放射角度刻みΔθ0、海面反射損失、海底反射損失、周波数、受波深度zが入力されると、式(3)を用いて、音速cνi、俯角θνiから、音線経路上の各点の座標(rνi,zνi)における水平スローネスprν0を計算する。
次に、音場計算器804は、式(4)を用いて、音源における音速c0、音線の放射角度θν0、音線の放射角度刻みΔθ0から、音源情報βν0を計算する。
次に、音場計算器804は、式(1)を用いて、海中の任意の点(r,z)の音場Ψe(r,z)を計算し、該音場Ψe(r,z)を出力端子805から出力する。
Henry Weinberg(1996)."Gaussian ray bundles for modeling high−frequency propagation loss under shallow−water conditions",J.Acoust.Soc.Am.100(3)
しかしながら、上記の方法では、複雑な海底地形等の影響によって、両隣の音線が存在しないような状態が発生した場合、式(6)におけるΔz1及びΔz2を求めることができないため、これまで、σiνは固定値(1/2*4πλ)を使用していた。該固定値を用いて音場計算を行うと、両隣または片隣の音線が存在する場合と比較して、音場の計算精度が劣化してしまう。
そのため、両隣の音線が存在しない場合であっても、音場の計算精度が劣化を防ぐことのできる、ガウシアンレイバンドルモデルにおける音場エネルギーの広がりの標準偏差算出方法及びそのプログラムが望まれていた。
本発明に係るガウシアンレイバンドルモデルにおける音場エネルギーの広がりの標準偏差算出方法は、
水中の音波伝播特性を計算するためのガウシアンレイバンドルモデルにおいて、音場エネルギーの広がりの標準偏差を求める方法であって、
水中音速と深度との関係を示す音速プロファイルデータを格納した記憶手段より、当該データを読み込むステップと、
音源が発する音線経路を算出するステップと、
前記音線経路上の座標点の中から、両隣の音線が存在しない点Pと、当該点Pを有する音線とを検出するステップと、
点Pの隣に仮想音線を設定し、該仮想音線上において、音源からの水平距離が点Pと同一である点を点Qとし、点Pにおける位相速度を用いて、点Qにおける位相速度を求める位相速度算出ステップと、
点Pが存在する音線の屈折点P’の深度を、前記音速プロファイルデータ中の、点Pにおける位相速度に対応する点より求める第1の深度算出ステップと、
前記音速プロファイルデータを補間して、前記位相速度算出ステップで求めた点Qにおける位相速度に対応する点を求め、当該点より前記仮想音線の屈折点Q’の深度を求める第2の深度算出ステップと、
前記第1の深度算出ステップで求めた点P’の深度、及び前記第2の深度算出ステップで求めた点Q’の深度より、前記音線と前記仮想音線との深度差を求める深度差算出ステップと、
前記深度差算出ステップで求めた深度差より、音場エネルギーの広がりの標準偏差を求めるステップと、
を有することを特徴とするものである。
本発明によれば、両隣の音線が存在しない場合に、標準偏差として固定値を用いる方法と比較して、より高精度な音場計算が可能となる。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る音場計算装置のブロック図を示すものである。
図1の音場計算装置は、所定の入力パラメータに基づき、ガウシアンレイバンドルモデルを用いて音場を計算するものであり、計算の過程で音場エネルギーの広がりの標準偏差を算出するに際し、本発明に係る標準偏差計算方法を用いる。
以下、図1の音場計算装置の各部について説明する。
図1の音場計算装置は、入力端子101、音線計算器102、σ計算器103、音場計算器104、出力端子105、仮想音線生成器106、記憶手段107を有する。
入力端子101は、環境条件や計算条件を入力するためのものであり、受け取ったパラメータを音線計算器102に出力する。
音線計算器102は、入力端子101より受け取ったパラメータに基づき、音線経路を計算して、計算結果及び入力端子101より受け取ったパラメータを仮想音線生成器106に出力する。
仮想音線生成器106は、音線計算器102の出力に基づき仮想音線を生成し、その結果と音線計算器102より受け取ったパラメータをσ計算器103に出力する。
σ計算器103は、仮想音線生成器106の出力を受け取り、音線からのエネルギーの広がりの標準偏差を計算し、計算結果と仮想音線生成器106より受け取ったパラメータを、音場計算器104に出力する。
音場計算器104は、σ計算器103の出力に基づき音場を計算し、計算結果を出力端子105に出力する。
出力端子105は、最終的な計算結果を出力するためのものである。
記憶手段107は、音速プロファイルデータ108を格納する。
音線計算器102、σ計算器103、音場計算器104、及び仮想音線生成器106は、例えばPLD(Programmable Logic Device)やマイコンのような演算手段上に実装することもできるし、コンピュータソフトウェアとして実装することもできる。
次に、各部の処理の詳細について、順を追って説明する。なお、ここでは図8〜図9で説明した従来技術の構成と異なる部分について説明するものとする。
音場計算器102は、図8の音場計算器802の出力パラメータに加えて、音速プロファイルデータを、仮想音線生成器106に出力する。
音速プロファイルは、あらかじめ計測ないしは計算により求めて記憶手段107に格納しておいてもよいし(図1の(1))、音線計算器102が各距離インデックスiにおける音速プロファイルデータを計算により求めて各距離インデックスi毎に記憶手段107に格納しておき、出力の時に記憶手段107より読み出して仮想音線生成器106に出力するようにしてもよい(図1の(2))。
いずれの場合においても、音速プロファイルデータを手作業で逐一入力するのは煩雑であるため、記憶手段107に一旦格納された音速プロファイルを自動的に読み込んで計算に用いる方法が望ましい。
また、このようにすることで、2次元環境(距離方向に音速が変化する環境)に対応することも可能となる。
仮想音線生成器106は、音線計算器102から、音線経路上の各点の座標(rνi,zνi)及び経路長Sνi、音速cνi、俯角θνi、音源における音速c0、音線の放射角度θν0、音線の放射角度刻みΔθ0、海面反射損失、海底反射損失、周波数、受波深度z、音速プロファイルが入力されると、以下のステップ1〜ステップ4の計算を行う。
(ステップ1)
音線経路上の各点の座標(rνi,zνi)の中から、両隣の音線が存在しない点Pを検出する。点Pが存在する音線をERとする。
(ステップ2)
点Pにおける位相速度Cmνiを求める(算出式は後述の式(10))。この点Pにおいてスネルの法則を適用すると、音線ERの屈折点の深度を求めることができる。
即ち、位相速度がCmνiとなる点を求め、音速プロファイルにおいてこれに対応する深度Dνiを求めることにより、音線ERが屈折する点P’の深度Dνiを推定することができるのである。
なお、図2の上図は、本ステップの内容を図示するものである。
図2の上図における点P’は、音線ERが屈折する点であり、この点P’の深度Dνiを本ステップにより推定する。
(ステップ3)
音線ERの隣に仮想音線KRが存在すると仮定し、仮想音線KR上において、音源からの水平距離が点Pと同一である点を点Qとする。
次に、点Qにおける位相速度Cmk(ν+1)iを、点Pにおける位相速度Cmνiを用いて次式(9)により算出する。
Figure 2007327898
次に、音速プロファイルを線形補間し、点Qにおける位相速度Cmk(ν+1)iに対応する深度Dk(ν+1)iを推定する(なお、線形補間については、後述の図3で改めて述べる)。
これは、ステップ2と同様にスネルの法則より、仮想音線KRが屈折する点Q’の深度Dk(ν+1)iを求めていることに等しい。
なお、図2の下図は、本ステップの内容を図示するものである。
図2の下図における点Q’は、仮想音線KRが屈折する点であり、この点の深度Dk(ν+1)iを本ステップにより推定する。
式(9)において、Cmνi、Cm0(ν+1)i、Cm0νiは、それぞれ点Pにおける位相速度、音源における仮想音線KRの位相速度、音源における音線ERの位相速度を表し、次式(10)によって計算する。
Figure 2007327898
(ステップ4)
ステップ2で求めた点P’の深度Dνiと、ステップ3で求めた点Q’の深度Dk(ν+1)iの差を、音線ERと仮想音線KRの深度差Δzkとする。
次の図3で、音速プロファイルの線形補間、及び深度差Δzkの計算方法について説明する。
図3は、音速プロファイルの線形補間、及び音線ERと仮想音線KRの深度差Δzkの計算方法について説明するものである。
音速プロファイルデータを用いて、位相速度Cmνi、Cmk(ν+1)iにそれぞれ対応する深度Dνi、Dk(ν+1)iを計算する場合、音速プロファイルのパターンによって、計算方法が異なる。以下、個々のパターンについて説明する。
(パターンa)
図3の(a)に示すように、位相速度Cmνi、Cmk(ν+1)iにそれぞれ対応する深度Dνi、Dk(ν+1)iが1組存在する場合には、次式(11)に示すように、DνiとDk(ν+1)iの差分を、音線と仮想音線との深度差Δzkとすればよい。
Figure 2007327898
(パターンb)
図3の(b)に示すように、位相速度Cmνi、Cmk(ν+1)iにそれぞれ対応する深度Dνi、Dk(ν+1)iが2組存在する場合には、次式(12)により音線と仮想音線との深度差Δzkを求める。
Figure 2007327898
ただし、Δz1kとΔz2kは、次式(13)によって計算する。
Figure 2007327898
(パターンc)
図3の(c)に示すように、位相速度Cmνiに対応する深度Dνiも、Cmk(ν+1)iに対応するDk(ν+1)iも存在しない場合には、点Pの水深を深度差として用いる。
最終的に、仮想音線生成器106は、音線経路上の各点の座標(rνi,zνi)及び経路長Sνi、音速cνi、俯角θνi、音源における音速c0、音線の放射角度θν0、音線の放射角度刻みΔθ0、海面反射損失、海底反射損失、周波数、受波深度z、両隣の音線が存在しない点に関しては、仮想音線との深度差Δzkを、σ計算器103に出力する。
σ計算器103は、仮想音線生成器106から、音線経路上の各点の座標(rνi,zνi)及び経路長Sνi、音速cνi、俯角θνi、音源における音速c0、音線の放射角度θν0、音線の放射角度刻みΔθ0、海面反射損失、海底反射損失、周波数、受波深度z、両隣の音線が存在しない点に関しては、仮想音線との深度差Δzkが入力されると、以下の計算を行う。
(1)両隣の音線が存在する点については、式(6)を用いて標準偏差σνiを計算する。
(2)片隣の音線が存在する点については、式(8)を用いて標準偏差σνiを計算する。
(3)両隣の音線が存在しない点については、次式(14)を用いて標準偏差σνiを計算する。
Figure 2007327898
次に、σ計算器103は、音線経路上の各点の座標(rνi,zνi)及び標準偏差σiν、経路長Sνi、音速cνi、俯角θνi、音源における音速c0、音線の放射角度θν0、音線の放射角度刻みΔθ0、海面反射損失、海底反射損失、周波数、受波深度zを、音場計算器104に出力する。
音場計算器104、出力端子105の動作は、図8〜図9で説明した従来技術と同様であるため、説明を省略する。
以上のように、本実施の形態1によれば、
水中の音波伝播特性を計算するためのガウシアンレイバンドルモデルにおいて、音場エネルギーの広がりの標準偏差を求める方法であって、
水中音速と深度との関係を示す音速プロファイルデータを格納した記憶手段より、当該データを読み込むステップと、
音源が発する音線経路を算出するステップと、
前記音線経路上の座標点の中から、両隣の音線が存在しない点Pと、当該点Pを有する音線とを検出するステップと、
点Pの隣に仮想音線を設定し、該仮想音線上において、音源からの水平距離が点Pと同一である点を点Qとし、点Pにおける位相速度を用いて、点Qにおける位相速度を求める位相速度算出ステップと、
点Pが存在する音線の屈折点P’の深度を、前記音速プロファイルデータ中の、点Pにおける位相速度に対応する点より求める第1の深度算出ステップと、
前記音速プロファイルデータを補間して、前記位相速度算出ステップで求めた点Qにおける位相速度に対応する点を求め、当該点より前記仮想音線の屈折点Q’の深度を求める第2の深度算出ステップと、
前記第1の深度算出ステップで求めた点P’の深度、及び前記第2の深度算出ステップで求めた点Q’の深度より、前記音線と前記仮想音線との深度差を求める深度差算出ステップと、
前記深度差算出ステップで求めた深度差より、音場エネルギーの広がりの標準偏差を求めるステップと、
を有するので、
両隣の音線が存在しない場合に、標準偏差として固定値を用いる方法と比較して、より高精度な音場計算が可能となる。
また、前記深度差算出ステップにおいて、前記音速プロファイルデータ中に、対応する点P、点Qにおける位相速度が1組存在する場合には、
点P’の深度と点Q’の深度の差分の絶対値を、前記音線と前記仮想音線との深度差として算出するので、
音速プロファイルデータを用いて、音線と仮想音線との深度差を、簡単な差分計算により求めることができる。
また、前記深度差算出ステップにおいて、前記音速プロファイルデータ中に、対応する点P、点Qにおける位相速度が2組存在する場合には、
各組の差分の絶対値を平均することにより、前記音線と前記仮想音線との深度差として算出するので、
音速プロファイルデータを用いて、音線と仮想音線との深度差を、簡単な平均値計算により求めることができる。
また、前記深度差算出ステップにおいて、前記音速プロファイルデータ中に、対応する点Pにおける位相速度も点Qにおける位相速度も存在しない場合には、
点Pの水深を深度差として用いるので、
音速プロファイルデータを用いて深度差を求めることができない場合であっても、近似的に標準偏差を求めることができる。
また、前記位相速度算出ステップにおいては、
音源における前記音線の位相速度と、音源における前記仮想音線の位相速度との比を求め、
点Pにおける位相速度に当該比を乗算して、点Qにおける位相速度を算出するので、
仮想音線上の実在しない点Qにおける位相速度を、計算により求めることができる。
実施の形態2.
実施の形態1では、図3の(c)に示すように、位相速度Cmνi対応する深度Dνiも、Cmk(ν+1)iに対応するDk(ν+1)iも存在しない場合には、点Pの水深を深度差として用いることとした。
本発明の実施の形態2では、上記のような場合に固定的な値(水深)を用いる代わりに所定の計算式をもって解析的に深度差を求める方法について説明する。
図4は、本発明の実施の形態2に係る音場計算装置のブロック図を示すものである。
図4の音場計算装置の構成は、実施の形態1の図1とほぼ同様であるが、音線と仮想音線との深度差Δzkを求める仮想音線生成器406の動作が、図1の仮想音線生成器106と異なっている。以下、仮想音線生成器406の動作について説明する。
仮想音線生成器406は、音線計算器402から、音線経路上の各点の座標(rνi,zνi)及び経路長Sνi、音速cνi、俯角θνi、音源における音速c0、音線の放射角度θν0、音線の放射角度刻みΔθ0、海面反射損失、海底反射損失、周波数、受波深度z、音速プロファイルが入力されると、以下のステップ1〜ステップ4の計算を行う。
(ステップ1)〜(ステップ3)
ステップ1〜ステップ3は、実施の形態1の仮想音線生成器106と同様であるため、説明を省略する。
(ステップ4)
ステップ2、3で求めた深度Dνi、Dk(ν+1)iを用いて、音線と仮想音線との深度差Δzkを計算する。
(パターンa)
図3の(a)の場合は、実施の形態1と同様に、式(11)を用いて、音線と仮想音線との深度差Δzkを計算する。
(パターンb)
図3の(b)の場合は、実施の形態1と同様に、式(12)(13)を用いて、音線と仮想音線との深度差Δzkを計算する。
(パターンc)
図3の(c)の場合は、等音速を仮定して、次式(15)を用いて、解析的に音線と仮想音線との深度差Δzkを計算する。
Figure 2007327898
図5は、式(15)の内容を図示するものである。
音線経路上の任意の座標点の深度は、水平距離rと、音線の俯角θに対する正接とから求めることができる。これは仮想音線についても同様であるため、式(15)に示すように、点Pと点Qそれぞれにおける水平距離rνiと、それぞれの音線の俯角θν0、θ(ν+1)0とより、深度差を求めることができる。
なお、実施の形態1、2のいずれにおいても、図3において音速プロファイルデータを補間する際には、補間処理は線形補間、放物線補間、スプライン補間等、任意の補間方法を用いることができる。
以上のように、本実施の形態2によれば、
前記深度差算出ステップにおいて、前記音速プロファイルデータ中に、対応する点Pにおける位相速度も点Qにおける位相速度も存在しない場合には、
点Pの音源からの水平距離の音線俯角に対する正接成分と、点Qの音源からの水平距離の仮想音線俯角に対する正接成分とを求め、
両者の差分の絶対値を、前記音線と前記仮想音線との深度差として算出するので、
水深を固定的に用いる実施の形態1の方法と比較して、より精度の高い音場計算が可能となる。
実施の形態1に係る音場計算装置のブロック図を示すものである。 仮想音線生成器106の動作を図示するものである。 音線と仮想音線との深度差Δzkの計算方法について説明するものである。 実施の形態2に係る音場計算装置のブロック図を示すものである。 式(15)の内容を図示するものである。 音線モデルの概念図を説明するものである。 音速プロファイルデータの例を図示するものである。 従来の音場計算装置のブロック図である。 式(6)における深度差Δz1及びΔz2を説明するものである。
符号の説明
101 入力端子、102 音線計算器、103 σ計算器、104 音場計算器、105 出力端子、106 仮想音線生成器、107 記憶手段、108 音速プロファイルデータ、401 入力端子、402 音線計算器、403 σ計算器、404 音場計算器、405 出力端子、406 仮想音線生成器、407 記憶手段、408 音速プロファイルデータ、801 入力端子、802 音線計算器、803 σ計算器、804 音場計算器、805 出力端子。

Claims (7)

  1. 水中の音波伝播特性を計算するためのガウシアンレイバンドルモデルにおいて、音場エネルギーの広がりの標準偏差を求める方法であって、
    水中音速と深度との関係を示す音速プロファイルデータを格納した記憶手段より、当該データを読み込むステップと、
    音源が発する音線経路を算出するステップと、
    前記音線経路上の座標点の中から、両隣の音線が存在しない点Pと、当該点Pを有する音線とを検出するステップと、
    点Pの隣に仮想音線を設定し、該仮想音線上において、音源からの水平距離が点Pと同一である点を点Qとし、点Pにおける位相速度を用いて、点Qにおける位相速度を求める位相速度算出ステップと、
    点Pが存在する音線の屈折点P’の深度を、前記音速プロファイルデータ中の、点Pにおける位相速度に対応する点より求める第1の深度算出ステップと、
    前記音速プロファイルデータを補間して、前記位相速度算出ステップで求めた点Qにおける位相速度に対応する点を求め、当該点より前記仮想音線の屈折点Q’の深度を求める第2の深度算出ステップと、
    前記第1の深度算出ステップで求めた点P’の深度、及び前記第2の深度算出ステップで求めた点Q’の深度より、前記音線と前記仮想音線との深度差を求める深度差算出ステップと、
    前記深度差算出ステップで求めた深度差より、音場エネルギーの広がりの標準偏差を求めるステップと、
    を有することを特徴とするガウシアンレイバンドルモデルにおける音場エネルギーの広がりの標準偏差算出方法。
  2. 前記深度差算出ステップにおいて、前記音速プロファイルデータ中に、対応する点P、点Qにおける位相速度が1組存在する場合には、
    点P’の深度と点Q’の深度の差分の絶対値を、前記音線と前記仮想音線との深度差として算出することを特徴とする請求項1に記載のガウシアンレイバンドルモデルにおける音場エネルギーの広がりの標準偏差算出方法。
  3. 前記深度差算出ステップにおいて、前記音速プロファイルデータ中に、対応する点P、点Qにおける位相速度が2組存在する場合には、
    各組の差分の絶対値を平均することにより、前記音線と前記仮想音線との深度差として算出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガウシアンレイバンドルモデルにおける音場エネルギーの広がりの標準偏差算出方法。
  4. 前記深度差算出ステップにおいて、前記音速プロファイルデータ中に、対応する点Pにおける位相速度も点Qにおける位相速度も存在しない場合には、
    点Pの水深を深度差として用いることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のガウシアンレイバンドルモデルにおける音場エネルギーの広がりの標準偏差算出方法。
  5. 前記深度差算出ステップにおいて、前記音速プロファイルデータ中に、対応する点Pにおける位相速度も点Qにおける位相速度も存在しない場合には、
    点Pの音源からの水平距離の音線俯角に対する正接成分と、点Qの音源からの水平距離の仮想音線俯角に対する正接成分とを求め、
    両者の差分の絶対値を、前記音線と前記仮想音線との深度差として算出することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のガウシアンレイバンドルモデルにおける音場エネルギーの広がりの標準偏差算出方法。
  6. 前記位相速度算出ステップにおいては、
    音源における前記音線の位相速度と、音源における前記仮想音線の位相速度との比を求め、
    点Pにおける位相速度に当該比を乗算して、点Qにおける位相速度を算出することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のガウシアンレイバンドルモデルにおける音場エネルギーの広がりの標準偏差算出方法。
  7. 請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のガウシアンレイバンドルモデルにおける音場エネルギーの広がりの標準偏差算出方法をコンピュータに実行させることを特徴とするガウシアンレイバンドルモデルにおける音場エネルギーの広がりの標準偏差算出プログラム。
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