JP2007314531A - 軟骨細胞の酸化防止と増生用途に使用されるヒアルロン酸 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、軟骨細胞の酸化損傷を改善し、さらに軟骨細胞の増生を促進させるためのヒアルロン酸の使用に関する。特に、本発明は、分子量が60〜120万ダルトン範囲にあるヒアルロン酸を用いて、軟骨細胞の活性酸素の損傷を保護し、軟骨細胞の増生を促進するための使用に関する。本発明は、さらに関節炎の治療あるいは予防に用いる医薬品の製造、及び関節炎の病状の改善のために提供する経口的食品あるいは飲料に用いられるヒアルロン酸の使用に関する。
【解決手段】活性酸素により引き起された軟骨細胞の酸化損傷を改善するためのヒアルロン酸の使用を提供する。
【選択図】図1

Description

本発明は、軟骨細胞の酸化損傷を改善し、さらに軟骨細胞の増生を促すヒアルロン酸(hyaluronic acid)の使用に関する。また、本発明は、関節炎の治療あるいは予防に使用される医薬品の製造に用いられるヒアルロン酸と、関節炎の病状の改善に使用される経口的食品あるいは飲料に用いられるヒアルロン酸の使用に関する。
関節とは生体の骨格運動の軸受けとなる部分である。関節する両骨の相対する面の該表面には、弾性を有し表面が平らで滑らかな軟骨層が覆っており、骨格が実際に接触し、且つ活動摩擦する際に、その振動を吸収し摩擦力を低減する作用により、関節の活動を潤滑にする役目を果している。その軟骨の接触面の滑動の潤滑性を高めるため、関節内には粘稠性の滑液が含まれ、潤滑油と同様な役割を担っている。軟骨と関節滑液中には、主要な成分としてヒアルロン酸が存在する。関節滑液内に含まれる0.15%(w/v)の水溶液状のヒアルロン酸は、主として関節滑液嚢細胞(synoviocyte)で生成され、長い鎖を有する巨大分子からなる多糖ポリマー類であり、その機能と特性としては:1、関節滑液中、水溶液の形態で存在し、粘稠性を提供する(Pathophysiology. 2003, 9:215-220を参照);2、グルコサミノグリカン(Glucosaminoglycan、GAGなど)と結合してプロテオグリカン(Proteoglycan)を形成し、関節軟骨細胞外の基質の主要成分となる;3、軟骨内において、軟骨細胞の付着と生存の骨幹を提供する;4、酸化物質の毒性作用によりその構造が破壊される(例えば、Arthritis & Rheumatism. 2003, 48:3151〜3158参照)、その中でも最後の項目は、今日特に重要視されている。
軟骨細胞の損傷は、関節運動の機械的損傷あるいは老化などその他の要因により、代謝性の酸化剤が低減し、酸化物質とフリーラジカルなどが増加することにより発生するが、正常な軟骨構造を保持するためには、健全な軟骨細胞がその軟骨基質中に含まれるヒアルロン酸の構造(質)と量とを恒常的に保持する必要がある。従って、これらの細胞は人体の生命サイクルの中期あるいはさらに早い時期で、徐々に老化または死亡して退化性病変を形成する場合がある。軟骨細胞の機能の退化の原因は非常に複雑で、今日学界でも不明なところが多いが、一つだけ公認されている重要な要因としては、代謝過程(前記の機械的損傷と生体の自然的生物学的操作などを含む)において酸化物質を生じ、特にフリーラジカルなど強力な酸化剤による損傷が挙げられている。
化学反応において、活性酸素(reactive oxygen species, ROS)あるいはフリーラジカル(free radicals)と称されるものが、不安定な状態で存在するが、これらは一つの電子を獲得することによりバランスを保つので、酸化という方式でその他の原子あるいは化合物と電子を競合する。人体内にある全てのフリーラジカル中、95%以上が前記のROSに属するものと言われており、活性酸素やその誘導体は互いに電子の獲得を競うことにより、他の分子や化合物の状態に影響をもたらす。細胞構造中、多くの場所においてフリーラジカルが発生する:例えば、ミトコンドリア、リソソーム、細胞膜リン脂質、筋内部膜系など。フリーラジカルが過剰になると細胞組織に損傷をもたらす。生体内に酸化物質が過剰な場合、体内のバランスが崩れ、脂質、タンパク質やDNAに損傷を与え、さらにガン、パーキンソン病、高血圧、動脈硬化症、心筋梗塞、血栓形成、血小板凝固などの病状を引き起こす。今日、フリーラジカルが細胞膜上の脂質の不飽和結合鎖と脂質過酸化反応を起こし、細胞膜に損傷を与えることがすでに知られている。フリーラジカルは、含硫タンパク質とその他のタンパク質にも損傷をもたらし、イオン輸送系(ion transport systems)の損傷を引き起こし、細胞に損傷を与えあるいはタンパク質の分解、構造変化や変性などを引き起こす。この他にも、フリーラジカルはDNAの塩基に損傷を与え、DNAの切断、突然変異、細胞周期の異変、さらには発ガン性を有することさえある。
日本特許第1,284,023号 日本特許第1,353,027号
今日、関節炎において、活性酸素(例えば、HO、O2 ―・、H2O2、HOClなど)は脱分極(depolarization)を行うことでヒアルロン酸の構造を破壊し、その量を低下させて、関節の粘稠性と潤滑性を低減し、炎症症状を引き起すことがすでに知られている(例えば、Free Radic Biol Med. 2003, 35:169-78;Pathophysiology. 2003, 9:215-220を参照)。過酸化水素と塩化銅の存在は、高分子量(例えば、120万ダルトン)のヒアルロン酸の構造を破壊することが知られている(Carbohydr Res. 1999, 321:228-34; Carbohydr Res. 2006, 341:639-44;Pathophysiology. 2003, 9:215-220を参照)。また、前記の文献にも関節滑液中のヒアルロン酸は、過酸化水素あるいは過酸化水素に誘導されたヒドロキシルラジカルにより容易に破壊されることが言及されている(Inflammation. 1993, 17:403-15参照)。これより過酸化水素は、ヒアルロン酸の構造変化の主因と見なされている。本発明は、分子量が異なり、生成源の違うヒアルロン酸を用いて、生体内や生体外におけるヒアルロン酸の耐酸化性について実験を進めるとともに、軟骨細胞の増生を促進する方法を評価した。さらに添加したヒアルロン酸が、人体の関節退化過程において、ある程度の還元性と保護細胞の機能を提供することについても検討し、軟骨細胞増生の効果を有することを見出した。
本発明の目的の一つとして、活性酸素によって引き起される軟骨細胞の損傷を改善するヒアルロン酸(hyaluronic acid)の使用が提供される。
本発明の別の目的の一つとして、軟骨細胞の増生を促すヒアルロン酸の使用が提供される。具体的な形態において、本発明のヒアルロン酸による軟骨細胞の増生を促すための方法として、軟骨細胞の成長サイクルを調整することにより達成することが挙げられる。また、別の具体的な形態により、この成長サイクルの調整は、成長サイクル調整因子サイクリン B1がG2/M期の発現を増加することによることが挙げられる。
さらに、本発明のまた別の目的は、関節炎の治療あるいは予防に使用される医薬品を提供することにあるが、その特徴としては、分子量が50〜800万ダルトン(Dalton)範囲にあるヒアルロン酸を使用する。具体的形態において、上記のヒアルロン酸は、軟骨細胞の酸化損傷の改善に用いられる。さらに、別の具体的形態により、上記のヒアルロン酸は、関節滑液内のフリーラジカル活性を低減するために使用されていることが示される。
また、本発明のさらに別の目的としては、分子量が50〜800万ダルトン範囲にあるヒアルロン酸を含有し、関節炎の病状を改善するために用いられる経口的食品を提供することにある。
本発明のその他の特徴としては、下記に詳しく挙げられる具体的な実施例を見ることで容易に明らかにされることと思われる。
以下、具体的実施例によって、本発明の特徴を詳細に説明する。これらの具体的実施例は、本発明を説明するために提供され、本発明を限定するものではない。本発明の範囲と精神において、本発明はこれらとその修飾と変化をも包括する。
下記の実施例において用いたヒアルロン酸は、日本特許第1,284,023号と第1,353,027号に記載の方法を用いて分離したものである。これらには600万ダルトンのヒアルロン酸(Synvisc, Biomatrix 社製品, 米国)、60〜120万ダルトンのヒアルロン酸(ARTZDispo, Seikagaku 社製品, 日本)、同じく60〜120万ダルトンのヒアルロン酸(Hikamilon Dispo, 大正製薬(株)製品, 日本)、60〜120万ダルトンのヒアルロン酸(Lumisteron Dispo, 日新(株)製品, 日本)、60〜120万ダルトンのヒアルロン酸(Unihylon Dispo, UJI(株)製品, 日本)、50〜73万ダルトンのヒアルロン酸(Hyalgan, Fidia 社製品, イタリア)、50〜73万ダルトンのヒアルロン酸(Suplasyn, Bioniche社製品, アイルランド)が含まれる。
<実施例1>
ヒアルロン酸による関節滑液内の過酸化水素と炎症物質の低減にかかわる実験
臨床上、ヒアルロン酸を患者の関節内に注入した場合、滑液内のフリーラジカルに与える影響を明らかにするため、まず、ヒアルロン酸治療を受けた患者の関節滑液を取り出し、それに含まれるフリーラジカル量を測定した。
収集した人体関節滑液を氷上に置き、その200μlを取り鉄皿内に放置し、それを化学レーザー測定計(CLA-FS1型,東北エレクトロニック(株)製品, 仙台市,日本)の測定槽内に入れる。測定の初めに50秒間内バックグラウンド値を測定した後、500μlの5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン(ルミノール、米国シグマ社より購入、その粉末をリン酸バッファー生理食塩水(PBS)に溶解して、0.1mM溶液とし、4℃下で保存する)、あるいはビス-N-メチルアクリジウム硝酸塩(ルシゲニン、米国シグマ社より購入、その粉末をリン酸バッファー生理食塩水(PBS)に溶解して0.1mM溶液とし、4℃下で保存する)を加え、300秒で停止するまでフリーラジカル含量を測定(10秒毎に累積値を測定する)した。データのキープレ分析を行う。タイム−カウント値の50秒の積分平均値を算出し、30をかけることで300秒のバックグラウンド積分値を得る。さらに、全てのタイム−カウント値より構成される面積積分値より先の300秒のバックグラウンド積分値を除き、さらに25で割ることで検体の10秒毎の平均フリーラジカルカウント値を得る。その結果を図1に示す。図1より明らかに50〜800万ダルトンのヒアルロン酸は、関節滑液中の過酸化水素の発生を低減させ得ることが分かる。過酸化水素を低減させる効果の順に示すと下記ようになる。60〜120万ダルトンのヒアルロン酸>50〜73万ダルトンのヒアルロン酸>600万ダルトンのヒアルロン酸。
図1に、それぞれの分子量の異なるヒアルロン酸が関節滑液内の過酸化水素の発生を低減させる結果を示す。図中、過酸化水素の低減効果は、60〜120万ダルトン>50〜73万ダルトン>600万ダルトンの順序となる。
また、ヒアルロン酸の治療を受けていない患者の関節滑液を対照に実験した結果、対照の関節滑液内には多量なO2 ―・、ヒドロキシルラジカルが含まれ、その患者にヒアルロン酸を与えたところ、関節滑液内の過酸化水素量は対照に比べて明らかに下降した(図2を参照)。
<実施例2>
インビトロ試験によるヒアルロン酸のフリーラジカル発生量の低減と、軟骨細胞の死亡率の低減にかかわる実験
インビトロにおける、ヒアルロン酸のフリーラジカル活性の低減効果を明らかにするため、濃度の異なる過酸化水素(0、100、200と400μM)をそれぞれ200μl用いて、化学レーザー測定計を用いてフリーラジカルの発現状態を測定した。別に、200μMの条件下で20μlのヒアルロン酸を加え、フリーラジカルの発現量を測定し、その結果を図3に示す。図3より、フリーラジカルの発現量は、過酸化水素濃度の増大にともない増加した。しかし、20μlヒアルロン酸処理した200μM過酸化水素の条件下では、フリーラジカルの発現が抑制され、過酸化水素を加えていない場合の発現と同様の結果を示した。文献によると、フリーラジカル含量の増加は細胞の死亡率を高めることから、ヒアルロン酸がフリーラジカルによる細胞死亡率を減少させるかどうかを検討することにした。老人患者(60才以上)の軟骨組織を収集し、それより一次軟骨細胞を分離して培養した。
検体を入れた遠心管の重量を測量し、遠心管の重量を差し引き、軟骨検体の重量を記録する。10mlのリン酸バッファー生理食塩水(PBS)を遠心管に加え、5回水平に回転後PBSを吸着乾燥する。軟骨検体を1回重複して洗浄する。平口のピンセットで軟骨検体をはさみとり、10cm径の細胞培養皿に移す。次に、10mlのPBSで再度軟骨検体を1回洗浄する。メスを用いて軟骨検体を分離し、検体に粘着した柔組織と軟骨組織を分離し、分離した純白な軟骨組織を無菌培養皿に移す。メスを用いて軟骨組織を小さく分ける(容積が1mm3以上にならないようにする)。60μlの第2型セルロース分解酵素(100mg/ml)を加える。小分けした軟骨組織を入れた細胞培養皿を37℃、5%二酸化炭素の条件下の細胞培養装置内の振とう器に放置し、50rpmの速度で4時間振とうする。5mlの細胞培養液を吸いとり、分解後の軟骨組織に注ぎ、用意しておいた無菌の15ml遠心管にその全部を移す。再度5mlの細胞培養液を吸いとり、その分解した軟骨を入れた培養皿を注ぎ、第2型セルロース分解酵素により分離された細胞全体を、用意した無菌の15mlの遠心管に回収する。室温下で1000rpmの速度で5分間遠心分離を行う。上澄液を吸いとり、10mlのPBSを加えて細胞を分散させ、再度1000rpmで5分間遠心分離する。軟骨細胞を2回重複洗浄する。10mlの細胞培養液を加えて細胞を均一に分散させた後、その細胞培養液を50μl取り、1.5mlの小さな遠心管に移し、40μlのPBSと10μlの10×トリパンブルー染料を加え、均一に混合した後、その混合液を10μl取り、ゆっくりと血球計器に入れて顕微鏡下でカウントする。カウントした細胞密度を下式により計算する。9方眼におけるカウント数×2×104/9 =細胞数/ml。軟骨細胞を1×104/mlの細胞密度で円錐形フラスコに移し、37℃、5%二酸化炭素の条件下の細胞培養装置に放置する。3日毎に使いすて用の吸引器で、円錐形フラスコ内の細胞培養液を吸いとり、10mlのPBSを円錐形フラスコ内の上縁から加え(直接細胞にあたらないように注意する)、フラスコを水平に振とうした後、リン酸バッファー生理食塩(phosphate buffer saline)を吸引除去し、さらに、12mlの細胞培養液を円錐形フラスコ内に加え、続き37℃、5%二酸化炭素の条件下の細胞培養装置に入れて培養する。
培養された材料について、生存実験を行う場合、培養液内に異なる濃度の過酸化水素(0、100、200と400μM)を加え、別に、0と200μM濃度の過酸化水素を加えた2組に、それぞれ20μlのヒアルロン酸を加え、さらに細胞培養を1日続けた後、軟骨細胞を回収してその生存率を調べた。その結果を図3Bに示す。軟骨細胞の生存率は、過酸化水素の濃度の増大にともない降下した。従って、ヒアルロン酸を含有する環境では、細胞の生存率は逆に増加を示し、これにより、ヒアルロン酸は確かにフリーラジカルの発現量を低減し、軟骨細胞の死亡率を低下させ、さらに軟骨細胞の増生を促す効果があることを確認した。
図3Bは、ヒアルロン酸(20μl)が存在あるいは存在しない条件下で、過酸化水素の濃度による軟骨細胞の生存率(%)を示したものである。結果としては、過酸化水素の濃度の増加にともない軟骨生存率は下降し、ヒアルロン酸が存在する場合、軟骨細胞の生存率は逆に増加することが明らかにされた。
<実施例3>
老人の軟骨細胞の成長を促すヒアルロン酸の効果にかかわる実験
本実験において、さらにヒアルロン酸の存在の有無が、老人の関節における軟骨細胞の成長に与える影響を調べるため、軟骨細胞の成長曲線を測定した。前記実施例2の方法と同様にして、老人の軟骨細胞を培養し、細胞が約80%までに増加した時点で皿分けし、各皿に、細胞を8×104個/60mm皿に入れ、次の夜まで培養した。翌日、細胞培養皿を取り出し、細胞培養液を1mg/mlのヒアルロン酸を含む細胞培養液に置換して培養した(HA組)、対照組は、さらに通常の培養液に置換し、12日間続いて培養した。その間、第5日目に培養液を一回新しくする。第0日目(Day0)より細胞総数をカウントし、その後、2日毎に1回カウントし、実験を3回重複行ない、その結果を図4に示す。図4に示された成長曲線より、老人の軟骨細胞は、ヒアルロン酸が加えられた条件下において、第2日から第4日まで見られるが、HA組の軟骨細胞数は、明らかに対照組に比べて多く1.7倍を示した。また、第6日目には、HA組は対照組に比べ、さらに2倍以上も増加した結果が示された。第8日から12日目にかけて、HA組の成長速度は緩やかとなったが、対照組と比べた場合、未だ1.4〜1.6倍と大きな差異を示した。
<実施例4>
軟骨細胞の成長サイクルを調整することによる、老人の軟骨細胞の成長を促すヒアルロン酸にかかわる実験
ヒアルロン酸が、老人の軟骨細胞の細胞サイクルを調整するか否かを明らかにするため、前記実施例2の方法により軟骨細胞を培養し、約80%までに増加した時点で皿分けし、各皿に3×105個細胞/100mm皿を入れ、翌日より細胞培養液を1mg/mlのヒアルロン酸を含む細胞培養液に置換して培養した(HA組)、対照組は通常の培養液で置換し、8日間培養を続行した。第0日目(Day0)より細胞を回収し、その後は2日毎に1回回収する。回収された細胞は処理後、フローサイトメトリー(flow cytometery)により、その成長サイクルを分析した。
まず、単細胞の懸濁液を調製する。次に、培養した細胞をPBSで洗浄し、トリプシンで処理し、細胞が丸く変形した後、5mlの胎児ウシ血清(5% FCS)を含む培養液で細胞を回収し、細胞懸濁液を均一に分散し、5mlの氷冷したPBSを用いて細胞を洗浄する。5分間低速で遠心分離した後、注意しながら上澄液を除去し、細胞に接触しないように約50μlの溶液を残す。0.2mlのPBSを加えて均一に細胞を分散する。細胞懸濁液を振とう、混合しながら、同時に1mlの70%アルコールを滴下し、細胞を固定し、-20℃の冷蔵庫に少なくとも1時間静置する(アルコール固定後のサンプルは一夜静置しても良い)。5分間低速(1200回転/分)で遠心分離し、細胞に接触しないよう注意しながら上澄液を吸い取り、細胞のかたまりを均一に分散し、5mlのPBSを加えて細胞を洗浄する。一分間静置した後、5分間1200回転の低速で遠心分離し、その後、できる限り上澄液を吸引除去する。1mlのヨードイリジンPI/ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(Triton X-100)染色液を加え、細胞塊を均一に分散し、軽く振りまぜ、室温、暗室中において30分間作用し(最終濃度は、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(Triton X-100)0.1%、RNase A 0.2mg/mlとヨウ化プロピジウム(PI)20μg/ml、加熱後の酵素はできる限り繰返し使用しないこと)。測定直前にサンプルを均一に混合し、35-μmのナイロン(登録商標)ふるいでサンプルを濾過する。サンプル調整後2時間以内に、フローサイトメーター(flow cytometer、FL2-A)を用いて細胞蛍光の発現を測定し、得られたデータを用いて細胞サイクルの変化を分析する。
その結果を図5に示す。G0/G1期における測定結果(図5Aを参照)は、第4日目に対照の細胞数比率(%)がHA組より高かったが、他はほとんど差異がなかった。また、S期における測定結果(図5Bを参照)は、実験と対照との2組には、第0日目から第8日目まで、統計的な差異は見られなかった。この他、G2/M 期の測定結果(図5Cを参照)は、第4日目にHAが対照に比べて細胞数比率(%)が高いことが見られたが、第6日目以降は差異が見らなかった。
<実施例5>
ヒアルロン酸による、成長サイクル調整因子にかかわる細胞サイクルタンパク質B1(G2/M)の発現の増大についての実験
ヒアルロン酸がいかに細胞サイクルの進行を変え、且つ、細胞サイクル調整因子と相関性があるか否かを明らかにするため、前記実施例2と同様の方法により老人の軟骨細胞を培養し、1mg/mlのヒアルロン酸が添加されると添加されない条件下で、それぞれ2、4、6と8日培養し、細胞のタンパク質を回収し、ウェスタン・ブロッティング(Western blotting)法を用い、その異なる細胞サイクル調整因子の発現について分析した。
細胞を1倍量のPBSを用いて3回洗浄し、次にRIPAバッファー液(50mMトリス(pH7.5)、150mMの食塩、1%のNP40、0.1%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5%のデオキシコール酸ナトリウム、タンパク質分解酵素阻害剤)を加え、細胞を破砕してタンパク質を溶解する。スクレーパーを用いて培養皿から細胞をはがし、マイクロ遠心管に回収する。遠心分離を行ない(12000回転、30分間、4℃)、上澄液を取り電気泳動にかける。タンパク質定量後の検体20μgを取り、検体に検体バッファー液(グリセロールを含む)=1:4の割合で混合し、100℃で5分間加熱し、試料を加えて電気泳動を行なう。電気泳動の後、ゲルを取り出し、適当なサイズのナイロン(登録商標)紙を切り取り、トランスファー・バッファー(100mlの濃縮液(トリス30.28gとグリシン144.9gを1L容量とする、pH8.2〜8.4)+700mlの2次蒸留水+ 200mlのメタノール)中に浸し、その紙でゲルを覆い、一緒にトランスファー・チャンバーに入れ、電極をつなぎ電流をセットし、トランスファーを始める。トランスファー条件として、300mA、2.5〜3時間で行なう。トランスファー終了後、ナイロン(登録商標)紙を取り出し、5%の脱脂ミルクを溶かしたトリス・バッファー液中に放置し、室温下で1時間振とうする。トリス・バッファー液を使用してナイロン(登録商標)紙を洗浄(3回洗浄、1回5分間)し、一次抗体を加え室温下で1時間あるいは4℃で一夜振とうする。さらに、トリス・バッファー液を用いてナイロン(登録商標)紙を5回洗浄(1回5分間)し、二次抗体を加えて室温下で40分間振とうする。前記のようにトリス・バッファー液を用いてナイロン(登録商標)紙を洗浄した後、化学ルミネッセンス試験キット(ECL kit)を加え(溶液1:溶液2=1:1)、溶液でナイロン(登録商標)紙を完全に覆い、室温下で1分間反応を行ない、暗室下で露光させる。
その結果を図6に示す。G0/G1期を調整するタンパク質として、例えば、細胞サイクルタンパク質D1、cdk4とcdk6は、対照とヒアルロン酸(HA)組において差異は皆無であったが、ヒアルロン酸処理後の軟骨細胞中、第4日目にG2/M期を調整するタンパク質の細胞サイクルタンパク質B1の発現量が対照より高い結果を示した。この他、細胞サイクルタンパク質B1と関連性のあるタンパク質cdc2には変化が見られなかった。
このように、本発明は、異なる濃度の過酸化水素を軟骨細胞の培養環境中に加え、細胞が酸化物質より損傷を受ける状況を模擬したものであり、その後分子量あるいは生成源の異なるヒアルロン酸を上記のシステム中に添加し、細胞の損傷の発生が軽減するか否かを観察したものである。本発明における発見は、関節腔内にヒアルロン酸を注射した場合の効果のメカニズムを説明し、関節炎を予防、治療する別途の有効な方法を提供するものである。この他、本発明の耐過酸化水素用のヒアルロン酸は、過度の鉄を累積した血液色素沈着症、青銅糖尿病と色素沈着性肝硬変などにも利用できる。これらの実験結果により、本発明は、関節炎の病状の改善に利用できるヒアルロン酸を含有する経口的食品あるいは飲料を製造するヒアルロン酸の使用をも提供するものである。
図1は、関節滑液中の過酸化水素の発生を低減する、異なる分子量のヒアルロン酸の効果を示したものである。 図2は、ヒアルロン酸を患者に与えた後、その関節滑液中の活性酸素(O2 ―・)、過酸化水素と炎症因子C-反応性タンパク質(C-reactive protein, CRP)と肝発炎性タンパク質(haptoglobin)量が対照に比べて低下する状態を示したものである。 図3Aは、フリーラジカルの発現がヒアルロン酸添加の条件下で抑制されていることを示したものである。図3Bは、ヒアルロン酸(20μl)の存在の有無の条件下で、軟骨細胞の生存率が過酸化水素濃度の増加により変化を示したものである。 図4は、ヒアルロン酸の添加の有無の条件下で、老人の軟骨細胞の成長状態の経時的変化を示したものである。 図5は、ヒアルロン酸処理(1mg/ml)の有無による老人軟骨細胞の細胞サイクルをフローサイトメトリー(flow cytometery)で分析した結果を示したものである。 図6は、ヒアルロン酸処理(1mg/ml)の有無による軟骨細胞中の発現の変化をウェスタン・ブロッティング法によりG0/G1期を調整するタンパク質の細胞サイクルタンパク質D1、cdk4とcdk6及びG2/M期を調整するタンパク質の細胞サイクルタンパク質B1を分析した結果を示したものである。

Claims (15)

  1. 活性酸素により引き起された軟骨細胞の酸化損傷を改善するためのヒアルロン酸の使用。
  2. 前記ヒアルロン酸の分子量は、50〜800万ダルトンであることを特徴とする、請求項1に記載のヒアルロン酸の使用。
  3. 前記ヒアルロン酸の分子量は、60〜120万ダルトンであることを特徴とする、請求項2に記載のヒアルロン酸の使用。
  4. 前記活性酸素は、ヒドロキシルラジカル(HO)と、スーパーオキシド(O2 −・)と、過酸化水素(H2O2)と、次亜塩素酸(HOCl)とからなる群より選ばれるものであることを特徴とする、請求項1に記載のヒアルロン酸の使用。
  5. 前記軟骨細胞の酸化損傷からの改善は、活性酸素のフリーラジカル活性を低減することにより達成することを特徴とする、請求項1に記載のヒアルロン酸の使用。
  6. 前記ヒアルロン酸は、さらに軟骨細胞の死亡率を低減させることを特徴とする、請求項1に記載のヒアルロン酸の使用。
  7. 軟骨細胞の増生を促進するための、ヒアルロン酸の使用。
  8. ヒアルロン酸による前記軟骨細胞の増生の促進は、軟骨細胞の成長サイクルを調整することにより達成することを特徴とする、請求項7に記載のヒアルロン酸の使用。
  9. 前記ヒアルロン酸は、成長サイクル調整因子サイクリン B1のG2/M期の発現を増加することを特徴とする、請求項8に記載のヒアルロン酸の使用。
  10. 分子量が50〜800万ダルトン範囲にあるヒアルロン酸を含有することを特徴とする、関節炎の治療あるいは予防に用いられる医薬品。
  11. 前記ヒアルロン酸の分子量は、60〜120万ダルトン範囲にあることを特徴とする、請求項10に記載の医薬品。
  12. 前記ヒアルロン酸は、関節軟骨細胞の酸化損傷を改善することに用いられることを特徴とする、請求項10に記載の医薬品。
  13. 前記ヒアルロン酸は、関節滑液内のフリーラジカル活性を低減するために使用されることを特徴とする、請求項10に記載の医薬品。
  14. 分子量が50〜800万ダルトン範囲にあるヒアルロン酸を含有することを特徴とする、関節炎の病状を改善するために提供する経口的食品。
  15. 前記ヒアルロン酸の分子量は、60〜120万ダルトン範囲にあることを特徴とする、請求項14に記載の食品。
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