JP2007314525A - プロピレンオキサイドの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】過酸化水素をエポキシ化触媒の存在下、液相中、プロピレンと反応させプロピレンオキサイドを製造する工程、および当該工程で生成するベントガス中のプロピレンおよびプロピレンオキサイド等のリサイクル可能な成分をニトリルを含む溶媒に吸収させて回収する工程、回収されるニトリルを含む溶媒から水を分離する工程からなるプロピレンオキサイドの製造方法。
【選択図】図1
Description
エポキシ化反応の溶媒としては、単独種のニトリル、2種以上のニトリルの混合溶媒、あるいはニトリルと水の混合溶媒、アルコール、アルコール水の混合溶媒が挙げられる。ニトリルとしては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルがあげられる。アルコールとしてはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、sec-ブタノール、t−ブタノールの単独もしく2種類以上の混合溶媒が上げられる。工業的には、アセトニトリル、アセトニトリル水の混合溶媒、メタノールあるいはメタノール水の混合溶媒が入手容易であり安価である点で好ましい。また、アセトニトリル、メタノールは水溶性であり、液相が均一になるため、プロセス構築が容易になる点で好ましい。エポキシ化工程後の分離工程で生成するベントガスには、リサイクル可能な成分である未反応プロピレンが代表的な成分として含まれ、反応生成物であるプロピレンオキサイドが含まれることもあるが、これもリサイクル可能な成分である。ベントガス中に含まれるリサイクル可能な成分をニトリルを含む溶媒に吸収させて回収することにより、当該成分を蒸留分離する場合のような多大なエネルギーを必要せず、安価なプロピレンオキサイドを製造することができる。
水素および酸素から過酸化水素を系内で合成し、エポキシ化反応に用いる場合、プロピレンが燃焼し、二酸化炭素が副生する場合がある。また、酸素の供給源に安価な空気を用いた場合、ベントガス中には、窒素や二酸化炭素等のプロピレンのエポキシ化に不活性な不活性ガスやプロピレン中の不純物が蓄積することもあるが、これらの蓄積物や不活性ガス等もベントガスとして係外に抜くことができる。
吸収工程で得られるプロピレンおよびプロピレンオキシドを吸収したニトリルを含む吸収液は、吸収工程とエポキシ化工程の溶媒が同じ場合はそのままエポキシ化工程に供給される。吸収工程とエポキシ化工程の溶媒が異なる場合は、リサイクル可能な成分を蒸留分離した後、当該成分のみをエポキシ化工程に供するか、吸収液に水を追加供給して溶媒組成をエポキシ化工程の溶媒組成にあわせた後にエポキシ化工程に供される。水を追加供給する場合は、吸収液をエポキシ化工程に供する際にエポキシ化工程の反応溶媒の組成に合わせて水分を調整するため不足する水分を追加供給しても構わない。
ニトリルを含む溶媒を反応溶媒として使用する場合に好ましく用いられるエポキシ化反応触媒としては、MWW構造を有する結晶性チタノシリケートやMWW構造を有する結晶性チタノシリケートの層状前駆体等のチタノシリケートが例示される。チタノシリケート触媒としては、ニトリルを含む溶媒使用時に高い活性が得られる点で酸素12員環以上の細孔構造をもつチタノシリケート触媒が好ましく、Ti−MWW触媒,層状チタノシリケート触媒がより好ましい。Ti−MWWとは、IZA(国際ゼオライト学会)の構造コードでMWW構造を有する結晶性チタノシリケートである。層状チタノシリケートとしては、例えばChemistry Letters,774−775,(2000)記載のTi−MWWゼオライトの層状前駆体等が知られている。例えば触媒,158,vol43,(2001)にTi−MWWゼオライト前駆体が層構造を持つ事が記載されているようにX線回折ピークより確認する事ができる。
図1において、流体1はプロピレン、過酸化水素水、アセトニトリル、不活性ガスである。流体2はエポキシ化反応留出物である。流体2は分離工程でガス流体3と液流体4に分離される。液流体4は分離・精製工程で流体5,流体6,流体7に分離され、製品化,リサイクル,パージされる。製品プロピレンオキサイドは流体5として取出す事ができる。流体6は主として、プロピレンとプロパンから成る。流体6は、一部がエポキシ化工程にリサイクルされ、一部が、プロパン分離工程に送られる。プロパン分離工程では、通常、搭頂部よりプロピレンを回収(流体8)し、搭底部よりプロパンを分離(流体9)する。回収されたプロピレン(流体8)は再びエポキシ化工程へ供給される。流体7は、主として水、アセトニトリルから成り、プロピレングリコールやそのオリゴマー等が含まれることもある。流体7は、一部がエポキシ化工程にリサイクルされ、一部が溶媒回収工程に供給される。溶媒回収工程では、共沸組成でアセトニトリルと水が搭頂部より回収(流体10)され、水およびプロピレングリコールやオリゴマー等の高沸点化合物が搭底部より分離され、一部が廃棄工程(流体11)に送られ、残りはエポキシ化工程(流体12)およびベントガス中のリサイクル可能な成分を回収する吸収工程(流体13)に供給される。分離工程にて分離されたガス流体3は、不活性ガス、プロピレン、酸素、プロピレンオキサイドを含む。流体3の一部はベントラインよりパージされ、残りは吸収工程に供給される。流体3は吸収工程にて、溶媒回収工程にて得られたアセトニトリルと水の混合物(流体13)と接触し、プロピレンおよびプロピレンオキサイドが回収され、再びエポキシ化工程に供給される。リサイクル可能な成分を回収した後の残りのガス流体は、系外にパージされる。
本発明を実施例により説明する。即ち、26℃、大気圧下、サーマルマスフローコントローラーを用いて、プロピレンガス3.3×10−7m3/s,窒素ガス3.0×10−6m3/sに制御したガスを混合し、0.10kgのアセトニトリル溶媒中にバブリングさせた。吸収開始30分後に溶液を取出すことで、サンプリングを行った。分析はガスクロマトグラフィを用いて行なった。その結果、単位溶媒重量あたりのプロピレン吸収量は、0.0477mol/kgであった。
アセトニトリル溶媒の代わりにメタノール溶媒を用いた以外実施例1と同様に実験を行った。その結果、単位溶媒重量あたりのプロピレン吸収量は、0.0425mol/kgであった。
エポキシ化工程
300ccオートクレーブに重量比がアセトニトリル/水=80/20であるアセトニトリル水を131gとTi−MWW触媒2.276g、パラジウム1パーセント担持活性炭触媒1.056gを仕込んだ後、圧力を窒素にて絶対圧4MPaに調整し、ジャケットへの温水循環によりオートクレーブ内の温度を60℃に調整した。当該オートクレーブに水素3.8体積パーセント、酸素8.9体積パーセント、窒素87.3体積パーセントの組成である混合ガスを143NL/Hr、アントラキノン0.7ミリモル/kg、燐酸二水素アンモニウム0.7mmol/kgを含有するアセトニトリル水(アセトニトリル/水の重量比は80/20である)を90g/Hr、プロパンを0.4体積パーセント含むプロピレン液を31.0g/Hrで連続的に供給した。反応中、反応温度は60℃、反応圧力は4MPaになるように制御した。固体成分であるTi−MWW触媒、パラジウム担持活性炭触媒は焼結フィルターによりろ過し、液成分91.9g/Hrとガス成分200.9g/Hrを連続的に抜き出した。反応液ガスを同時にサンプリングし、大気圧に戻し、液成分とガス成分に分離し、各々ガスクロマトグラフィーにより組成分析を行った。その結果、プロピレンオキサイドが4.09g/Hr、プロピレングリコールが0.68g/Hr、プロパンが0.55g/Hr生成し、プロピレンが27.1g/Hr、水素が1.31NL/Hr、酸素が9.92NL/Hr未反応で残っていた。プロピレンの転化率は12.5パーセント(対 反応機へ供給されたプロピレン)であり、転化したプロピレン基準の選択率は76.6パーセントであった。また、転化した水素基準の選択率は36.7パーセントであった。
吸収工程では溶媒回収工程で得られるアセトニトリルと水の混合溶媒から、溶媒精製工程にて水を分離したアセトニトリル溶媒を使用する。
これらの工程については既知物性データおよび実施例1の吸収データをもとに行った計算シミュレーション結果を以下に示す。
反応器から抜出した液成分とガス成分を60℃、4MPaで気液分離シミュレーションを行うと、プロピレン24.1g/Hr、プロパン0.6g/Hr、プロピレンオキサイド1.3g/Hr、アセトニトリル4g/Hr、水0.7g/Hr、水素0.1g/Hr、酸素14.2g/Hr、窒素156g/Hrのガスを得る。このガスを理論段数20段の塔の塔底からフィードし、25℃のアセトニトリルを1000g/Hrの速度で塔頂からフィードして交流接触させるシミュレーションを行うと、塔頂からの排出ガスにはリサイクル可能な成分であるプロピレン及びプロピレンオキサイドはほとんど含まれず、塔底からプロピレン24.1g/Hr、プロパン0.6g/Hr、プロピレンオキサイド1.3g/Hr、アセトニトリル1002.748g/Hr、水0.7g/Hr、酸素0.074g/Hrの回収液を得る。
Claims (7)
- 過酸化水素をエポキシ化触媒の存在下、液相中、プロピレンと反応させプロピレンオキサイドを製造する工程、および当該工程で生成するベントガス中のリサイクル可能な成分をニトリルを含む溶媒に吸収させて回収する工程からなるプロピレンオキサイドの製造方法。
- リサイクル可能な成分がプロピレンオキシドあるいは未反応プロピレンである請求項1に記載の製造方法。
- ベントガス中に含まれる、リサイクル可能な成分を吸収したニトリルを含む溶媒からなる溶液をエポキシ化反応に供することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
- ニトリル含む溶媒が、過酸化水素をエポキシ化触媒の存在下、プロピレンと反応させプロピレンオキサイドを製造する工程の反応液から回収されるニトリルを含む溶媒である請求項3に記載の製造方法。
- 回収されるニトリルを含む溶媒から水を分離する工程を含むことを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
- エポキシ化触媒が酸素12員環以上の細孔をもつチタノシリケート触媒である請求項1記載の方法。
- 酸素12員環以上の細孔をもつチタノシリケート触媒がMWW構造を有する結晶性チタノシリケートあるいはその前駆体である請求項6記載の方法。
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