JP2007312655A - 目的遺伝子の増幅形態を制御するための方法 - Google Patents

目的遺伝子の増幅形態を制御するための方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、発明者が開発した高度遺伝子増幅系を用いて目的遺伝子の遺伝子増幅を行なう際に、当該遺伝子の増幅形態を制御するための方法を提供する。
【解決手段】本発明は、本発明者の高度遺伝子増幅系を用いて遺伝子増幅を行なう際に、以下の(a)または(b)の条件を満たす方法である。(a)目的遺伝子をダブルマイニュート染色体上または均一染色体領域で小型増幅領域として増幅させる場合には、転写活性調節型プロモーターの転写活性が活性化された状態で導入工程および選抜工程を行なう。(b)目的遺伝子を染色体の均一染色領域で大型増幅領域として増幅させる場合には、転写活性調節型プロモーターの転写活性が不活性化された状態で導入工程および選抜工程を行なう。
【選択図】なし

Description

本発明は、哺乳動物細胞において所望の遺伝子を増幅する際に、当該遺伝子の増幅形態を制御するための方法を提供する。より具体的には、本発明は、本発明者が開発した「高度遺伝子増幅系」を用いて所望の遺伝子を増幅する際に、当該遺伝子を(a)ダブルマイニュート染色体上または染色体の均一染色領域で小型増幅領域として増幅させる、または(b)当該遺伝子を染色体の均一染色領域で大型増幅領域として増幅させる方法に関する。
本発明者は、哺乳動物複製開始領域(IR; initiation region)と核マトリックス結合領域(MAR; matrix attachment region)とを持つプラスミド(以下「IR/MAR プラスミド」という)をヒト由来がん細胞(COLO 320 大腸がん細胞株、およびHeLa細胞株)にリポフェクション法で導入し、プラスミド上に存在する薬剤耐性遺伝子(ブラスティサイジン(Blasticidine)あるいはネオマイシン(Neomycine))を利用して選択するだけで、
(1)所望のタンパク質をコードする遺伝子(以下、適宜「目的遺伝子」という)の細胞内コピー数を1万コピー程度にまで増幅できること、および
(2)目的遺伝子はIR/MAR プラスミドに対して同一の遺伝子構築物(シス)として導入した場合であっても、別の遺伝子構築物(トランス)として導入した場合であっても、高度に増幅することができるということを発見した(特許文献1および非特許文献1参照)。そして、本発明者は当該知見に基づいて、IR/MAR プラスミドと目的遺伝子とを、哺乳動物細胞(例えば、ヒト由来がん細胞(COLO 320 大腸がん細胞株、およびHeLa細胞株)、CHO細胞等)にリポフェクション法で導入し、プラスミド上に存在する薬剤耐性遺伝子(BlasticidineあるいはNeomycine )を利用して選択するだけで、目的遺伝子を1万コピー程度に増幅できる系(以下、「高度遺伝子増幅系」という)を完成させるに至った。
上記高度遺伝子増幅系を用いて目的遺伝子を高度に増幅した場合、目的遺伝子は主に以下の増幅形態によって増幅される:
(a)染色体外のダブルマイニュート染色体(以下、適宜「DM」という)上、または染色体の均一染色領域(Homogeneously staining regeon;以下、適宜「HSR」という)で小型増幅領域として増幅される;または
(b)HSRで大型増幅領域として増幅される。
現時点において、どのような機構によって、遺伝子の増幅形態が決定されるのかについて詳細は明らかではないが、遺伝子増幅を行なう場合において、(a)DM上またはHSRで小型増幅領域として増幅させるか、または(b)HSRで大型増幅領域として増幅させるかを目的に応じて任意に制御できる、すなわち遺伝子の増幅形態を制御できるということは、学術上のみならず産業上、極めて有意義である。つまり上記(a)の形態で遺伝子増幅を行なうことができれば、増幅遺伝子における反復配列に起因する転写抑制の影響を受けにくくなり、目的タンパク質を高発現させることができるというメリットを享受できる。一方、上記(b)の形態で遺伝子増幅を行なうことができれば、細胞あたりの目的遺伝子のコピー数を顕著に増加することができるというメリットを享受できる。
特開2003−245083号公報(公開日:平成15(2003)年9月2日) Noriaki Shimizu, et al. (2001) Plasmids with a Mammalian Replication Origin and a Matrix Attachment Region Initiate the Event Similar to Gene Amplification. Cancer Research vol.61, no.19, p6987-6990.
しかし、目的遺伝子を哺乳動物細胞内で増幅させる場合において、目的遺伝子を上記(a)の形態で増幅させたり、上記(b)の形態で増幅させたりする方法、つまり増幅形態を制御する方法は、これまで一切知られていなかった。また上記高度遺伝子増幅系を用いて遺伝子増幅を行なう際に、遺伝子の増幅形態を制御する方法についても同様に一切知られていない。
そこで本発明は、増幅遺伝子、特に高度遺伝子増幅系を用いて増幅された遺伝子を、より効率的に高発現させるべく、哺乳動物細胞において目的遺伝子を増幅する際に、当該遺伝子の増幅形態を制御するための方法を提供することを目的とした。換言すれば、本発明は、高度遺伝子増幅系を用いて目的遺伝子を増幅する際に、当該目的遺伝子を(a)DM上またはHSRで小型増幅領域として増幅させる、または(b)当該目的遺伝子をHSRで大型増幅領域として増幅させる方法を提供することを目的とした。
本発明者は、上記課題を解決すべく上記高度遺伝子増幅系を用いて鋭意検討を行なったところ、遺伝子導入を行なう際のベクターに含まれるプロモーターの転写活性の状態(活性化されている状態、または不活性な状態)を制御することによって、目的遺伝子の増幅形態を制御できることを発見し本発明を完成するに至った。
すなわち本発明にかかる方法は、上記課題を解決するために、
(i)真核生物細胞内で機能する複製起点および核マトリックス結合領域を含む第1ポリヌクレオチドと、
(ii)発現させるべきタンパク質をコードする第2ポリヌクレオチド、および所定の操作によって転写活性が活性化または不活性化される転写活性調節型プロモーターを含むポリヌクレオチドであり、かつ当該第2ポリヌクレオチドが転写活性調節型プロモーターに制御可能に連結されている第3ポリヌクレオチドとを、哺乳動物細胞へ同時に導入する導入工程、並びに
当該第1および第3ポリヌクレオチドが導入された哺乳動物細胞を選抜する選抜工程を含み、かつ
以下に示す(a)または(b)の条件を満たすことを特徴とする第2ポリヌクレオチドの増幅形態を制御するための方法である。
(a)第2ポリヌクレオチドをダブルマイニュート染色体上または均一染色体領域で小型増幅領域として増幅させる場合には、転写活性調節型プロモーターの転写活性が活性化された状態で導入工程および選抜工程を行なう。
(b)第2ポリヌクレオチドを染色体の均一染色領域で大型増幅領域として増幅させる場合には、転写活性調節型プロモーターの転写活性が不活性化された状態で導入工程および選抜工程を行なう。
また本発明にかかる方法は、上記真核生物細胞内で機能する複製起点が、c-myc遺伝子座、ジヒドロ葉酸リダクターゼ遺伝子座、またはβ-グロビン遺伝子座の複製起点に由来するものであることが好ましい。
さらに本発明にかかる方法は、上記核マトリックス結合領域が、Igκ遺伝子座、SV40初期領域、またはジヒドロ葉酸リダクターゼ遺伝子座の核マトリックス結合領域に由来するものであることが好ましい。
本発明によれば、高度遺伝子増幅系を用いて目的遺伝子を増幅する際に、(a)目的遺伝子をDM上またはHSRで小型増幅領域として増幅させる、または(b)目的遺伝子をHSRで大型増幅領域として増幅させることが可能となる。それゆえ本発明によれば、目的遺伝子を目的に応じた形態で増幅させることができ、ひいては所望のタンパク質(例えば有用タンパク質)を大量に生産することができるという効果を奏する。
本発明の実施の形態について説明すれば、以下のとおりである。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明にかかる方法は、高度遺伝子増幅系を用いて発現させるべきタンパク質をコードするポリヌクレオチド(すなわち「目的遺伝子」)を増幅する際に、当該目的遺伝子の増幅形態を制御するための方法に関するものである。
ここで本発明において「目的遺伝子の増幅形態を制御する」とは、目的に応じて(a)目的遺伝子をDM上またはHSRで小型増幅領域として増幅させる、または(b)目的遺伝子をHSRで大型増幅領域として増幅させることを意味する。まず目的遺伝子がDM上で増幅された、またはHSRで増幅されたかを判断する方法については、特に限定されるものではないが、例えば分裂期の染色体について公知のFISH法(fluorescence in situ hybridization)を行ない、哺乳動物細胞へ導入した目的遺伝子を検出して、DM上に蛍光を示すか、またはHSRで蛍光を示すかによって判断することができる。HSRは染色体上の領域であるのに対して、DMは染色体外に存在するため、蛍光顕微鏡観察を行なうことによって、目的遺伝子がDM上で増幅されたか、またはHSR上で増幅されたかを当業者は容易に判断し得る。なおFISH法を実施する際の具体的な方法については特に限定されるものではなく、従来公知の方法を適宜選択の上、採用すればよい。
目的遺伝子がDM上で増幅される場合、通常、小型増幅領域として増幅される。一方、目的遺伝子がHSRで増幅される場合、大型増幅領域として増幅される場合と、小型増幅領域として増幅される場合、および小型増幅領域がラダー状に配置した構造を形成する場合とがある。目的遺伝子が大型増幅領域として増幅されたか、または小型増幅領域として増幅されたかについては、例えば、”The ACT Cytogenetics Laboratory Manual (second edition” edited by Margaret J. Barch, Raven Press (1991) に記載された方法にしたがって分裂間期染色体標本を作製し、分裂間期染色体標本中で、染色体腕の幅を基準にして、それよりも増幅領域の長さが長ければ大型、それより短ければ小型、といったようにして判断することができる。
なお、上記「目的遺伝子をDM上またはHSRで小型増幅領域として増幅させる」とは、同一の条件で目的遺伝子が導入され、且つ遺伝子増幅が起こった形質転換細胞の多クローン性集団に含まれるクローンの過半数を、目的遺伝子がDM上またはHSRで小型増幅領域として増幅されたクローンとすることを意味する。また上記「目的遺伝子をHSRで大型増幅領域として増幅させる」とは、同一の条件で目的遺伝子が導入され、且つ遺伝子増幅が起こった形質転換細胞の多クローン性集団に含まれるクローンの過半数を、目的遺伝子がHSRで大型増幅領域として増幅されたクローンとすることを意味する。
遺伝子増幅が起こった形質転換細胞の多クローン性集団における目的遺伝子がDM上またはHSRで小型増幅領域として増幅されている形質転換細胞の割合は、形質転換細胞の多クローン性集団について、目的遺伝子がDM上で小型増幅領域として増幅されているクローン数、HSRで小型増幅領域として増幅されているクローン数、および目的遺伝子がHSRで大型増幅領域として増幅されているクローン数を既述の方法によって検出し、遺伝子増幅が起こっているクローン数(すなわち目的遺伝子がDM上で小型増幅領域として増幅されているクローン数、HSRで小型増幅領域として増幅されているクローン数、および目的遺伝子がHSRで大型増幅領域として増幅されているクローン数の合計)に対する目的遺伝子がDM上またはHSRで小型増幅領域として増幅されているクローン数の割合を算出することによって求められる。
また、遺伝子増幅が起こった形質転換細胞の多クローン性集団における目的遺伝子がHSRで大型増幅領域として増幅されている形質転換体の割合は、形質転換細胞の多クローン性集団について、目的遺伝子がDM上で小型増幅領域として増幅されているクローン数、HSRで小型増幅領域として増幅されているクローン数、および目的遺伝子がHSRで大型増幅領域として増幅されているクローン数を既述の方法によって検出し、遺伝子増幅が起こっているクローン数に対する目的遺伝子がHSRで大型増幅遺伝子として増幅されているクローン数の割合を算出することによって求められる。
本発明にかかる方法は、(i)真核生物細胞内で機能する複製起点および核マトリックス結合領域を含む第1ポリヌクレオチドと、
(ii)発現させるべきタンパク質をコードする第2ポリヌクレオチド、および所定の操作によって転写活性が活性化または不活性化される転写活性調節型プロモーターを含むポリヌクレオチドであり、かつ当該第2ポリヌクレオチドが転写活性調節型プロモーターに制御可能に連結されている第3ポリヌクレオチドとを、哺乳動物細胞へ同時に導入する導入工程、並びに
当該第1および第3ポリヌクレオチドが導入された哺乳動物細胞を選抜する選抜工程を含み、かつ
以下に示す(a)または(b)の条件を満たすことを特徴とする第2ポリヌクレオチドの増幅形態を制御するための方法である。
(a)第2ポリヌクレオチドをダブルマイニュート染色体上または均一染色体領域で小型増幅領域として増幅させる場合には、転写活性調節型プロモーターの転写活性が活性化された状態で導入工程および選抜工程を行なう。
(b)第2ポリヌクレオチドを染色体の均一染色領域で大型増幅領域として増幅させる場合には、転写活性調節型プロモーターの転写活性が不活性化された状態で導入工程および選抜工程を行なう。
本発明にかかる方法には、上記当該選抜工程によって選抜された哺乳動物細胞を培養する培養工程が含まれていてもよい。以下、本発明にかかる方法を工程ごとに説明する。
<導入工程>
本発明にかかる方法における導入工程は、
(i)真核生物細胞内で機能する複製起点および核マトリックス結合領域を含む第1ポリヌクレオチドと、
(ii)発現させるべきタンパク質をコードする第2ポリヌクレオチド、および所定の操作によって転写活性が活性化または不活性化される転写活性調節型プロモーターを含むポリヌクレオチドであり、かつ当該第2ポリヌクレオチドが転写活性調節型プロモーターに制御可能に連結されている第3ポリヌクレオチドとを、を哺乳動物細胞へ同時に導入する工程である。
上記第1ポリヌクレオチドには、真核生物細胞内で機能する複製起点および核マトリックス結合領域が含まれている。かかる第1ポリヌクレオチドに含まれる複製起点としては真核生物細胞内で機能するものであれば特に限定されるものではなく、c-myc遺伝子座、ジヒドロ葉酸リダクターゼ遺伝子座、β-グロビン遺伝子座等の複製起点が挙げられる。なおc-myc遺伝子座の複製起点については、「McWhinney, C. et al., Nucleic Acids Res. vol. 18, p1233-1242 (1990)」参照のこと。またジヒドロ葉酸リダクターゼ遺伝子座の複製起点については、「Dijkwel, P.A. et al., Mol. Cell. Biol. vol.8, p5398-5409 (1988) 」参照のこと。またβ-グロビン遺伝子座の複製起点については、「Aladjem, M. et al., Science vol. 281, p1005-1009 (1998) 」参照のこと。
また第1ポリヌクレオチドに含まれる核マトリックス結合領域としては、真核生物細胞内で機能するものであれば特に限定されるものではなく、Igκ遺伝子座、SV40初期領域、ジヒドロ葉酸リダクターゼ遺伝子座等の核マトリックス結合領域に由来する配列が挙げられる。なお、Igκ遺伝子座の核マトリックス結合領域については、「Tsutsui, K. et al., J. Biol. Chem. vol. 268, p12886-12894 (1993) 」参照のこと。またSV40初期領域の核マトリックス結合領域については、「Pommier, Y. et al., J. Virol., vol 64, p419-423 (1990) 」参照のこと。またジヒドロ葉酸リダクターゼ遺伝子座の核マトリックス結合領域については、「Shimizu N. et al., Cancer Res. vol. 61, p6987-6990 」参照のこと。
なお上記第1ポリヌクレオチドには、この他、適宜目的に応じて、大腸菌内でクローニングを行なうために必要な配列、および/または、選択マーカー(マーカータンパク質)としての薬剤耐性遺伝子(ブラスティサイジン抵抗性遺伝子、ネオマイシン抵抗性遺伝子、ヒグロマイシン抵抗性遺伝子等)または緑色蛍光タンパク質遺伝子等が含まれていてもよい。これらの選択マーカーを指標とすることによって、第1ポリヌクレオチドが導入された哺乳動物細胞を選別できる。
一方、第2ポリヌクレオチドは、発現させるべきタンパク質をコードするポリヌクレオチド(すなわち「目的遺伝子」)であり、特に限定されるものではなく、所望のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを適宜選択の上、採用すればよい。第2ポリヌクレオチドは、その塩基配列情報を元にPCR等の公知の技術を用いて取得すればよい。なお本発明の説明において「発現させるべきタンパク質」のことを、適宜「目的タンパク質」と称する。
また本発明にかかる方法において利用する、第3ポリヌクレオチドは、第2ポリヌクレオチドが、所定の誘導操作によってプロモーター活性が活性化される転写活性調節型プロモーターに制御可能に連結されているポリヌクレオチドを含むものである。ここで、上記「転写活性調節型プロモーター」とは、それら導入される哺乳動物細胞において機能し、かつ転写因子等による所定の操作によって、プロモーターの転写活性が活性化または不活性化されるプロモーターのことをいう。すなわち「転写活性調節型プロモーター」は、転写活性化因子によって転写活性が活性化されるプロモーターであっても、転写不活性化因子によって転写活性が不活性化されるプロモーターであってもよい。また「転写活性調節型プロモーター」は、上記特性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、TREプロモーター(クロンテック社製)、T−REXプロモーター(インビトロジェン社製)等の市販品が本発明にかかる方法において利用可能である。
上記第1ポリヌクレオチド、および第3ポリヌクレオチドが、哺乳動物細胞へ同時に導入されることによって、本発明者が特許文献1等に開示した「高度遺伝子増幅系」を構成することができ、当該哺乳動物細胞において第2ポリヌクレオチドを高度に増幅することが可能となる。上記哺乳動物細胞は、特に限定されるものではなく、例えばCHO−K1細胞(入手先:例えば、ATCC CCL-61、RIKEN RCB0285、RIKEN RCB0403等)、各種腫瘍細胞等が挙げられる。ただし、上記哺乳動物細胞としては、無限増殖能を有する腫瘍細胞が特に好ましい。上記腫瘍細胞としては、例えば、HeLa細胞(入手先:例えば、ATCC CCL-2、ATCC CCL-2.2、RIKEN RCB0007、RIKEN RCB0191等)、ヒト大腸がんCOLO 320DM細胞(入手先:例えば、ATCC CCL-220)、ヒト大腸がんCOLO 320HSR細胞(入手先:例えば、ATCC CCL-220.1)、NS0細胞(入手先:例えば、RIKEN RCB0213)等が挙げられる。なおヒト大腸がんCOLO 320DM細胞については、「Shimizu, N., Kanda, T., and Wahl, G. M. Selective capture of acentricfragments by micronuclei provides a rapid method for purifying extrachromosomally amplified DNA. Nat. Genet., 12: 65−71, 1996.」参照のこと。
なお、第1および第3ポリヌクレオチドを哺乳動物細胞に導入する際には、両ポリヌクレオチドが同時に哺乳動物細胞へ導入される態様であれば特に限定されるものではなく、両ポリヌクレオチドを連結して同一の遺伝子構築物として導入してもよいし、おのおの別々の遺伝子構築物として導入してもよい。また遺伝子構築物の形態については、プラスミドであってもコスミドであってもよい。また第1および第3ポリヌクレオチドの哺乳動物細胞への導入方法は、特に限定されるものではなく、リポフェクション、エレクトロポレーション法、パーティクルガン法等公知の方法を適宜選択の上、採用すればよい。
なお第1および3ポリヌクレオチドを別の遺伝子構築物として導入する場合には、それぞれの遺伝子構築物に選択マーカーをコードする遺伝子が含まれていることが好ましい。上記ポリヌクレオチドが導入された哺乳動物細胞を選抜することができるからである。この時、第1ポリヌクレオチドを含む遺伝子構築物に含まれる選択マーカーと、第3ポリヌクレオチドを含む遺伝子構築物に含まれる選択マーカーとが異なることが好ましいことはいうまでもない。
また本発明にかかる方法においては、当該プロモーターの転写因子をコードするポリヌクレオチド(第4ポリヌクレオチド)を哺乳動物細胞に導入して転写活性化因子を発現させる工程を包含していてもよい。かかる工程によれば、目的タンパク質の発現を制御するプロモーターの転写活性を調節することができ、目的タンパク質の発現を適宜調節することができるという効果を奏する。ここで第4ポリヌクレオチドとは、上記第3ポリヌクレオチドに含まれるプロモーターの転写因子をコードするポリヌクレオチドのことである。例えば、プロモーターとしてTREプロモーターを用いた場合には、Tet−ONタンパク質をコードするポリヌクレオチド(「Tet−ON遺伝子(クロンテック社製)」という)、またはTet−OFFタンパク質をコードするポリヌクレオチド(「Tet−OFF遺伝子(クロンテック社製)」という)を第4ポリヌクレオチドとすればよい。第4ポリヌクレオチドを上記哺乳動物細胞に導入して転写活性化因子を発現させる工程では、かかる第4ポリヌクレオチドと当該第4ポリヌクレオチドを発現させるためのプロモーターとを制御可能に連結して構築した遺伝子構築物を哺乳動物細胞に導入すればよい。当該第4ポリヌクレオチドを発現させるためのプロモーターは、哺乳動物細胞において機能するものであれば特に限定されるものではなく、転写活性調節型プロモーターであっても、非転写活性調節型プロモーターであってもよい。また第4ポリヌクレオチドを含む遺伝子構築物の哺乳動物細胞への導入の時期は、上記第1および第3ポリヌクレオチドの導入後に第4ポリヌクレオチドを導入してもよいし、またその逆であってもよい。さらに上記第1および第3ポリヌクレオチドの導入と同時に第4ポリヌクレオチドを哺乳動物細胞へ導入してもよい。本発明者の検討によれば、上記第1および第3ポリヌクレオチドの導入と同時に第4ポリヌクレオチドを哺乳動物細胞へ導入した方が、目的タンパク質が高発現するとの知見が得られているため、同時に導入することが最も好ましい。なお第4ポリヌクレオチドを哺乳動物細胞へ導入する際には、第4ポリヌクレオチドを導入するための遺伝子構築物に選択マーカーをコードする遺伝子が含まれていることが好ましい。上記ポリヌクレオチドが導入された哺乳動物細胞を選抜することができるからである。この時、第1および/または3ポリヌクレオチドを含む遺伝子構築物に含まれる選択マーカーと、第4ポリヌクレオチドを含む遺伝子構築物に含まれる選択マーカーとが異なることが好ましいことはいうまでもない。なお遺伝子構築物の形態、哺乳動物細胞への導入方法については、既述の第1および第3ポリヌクレオチドの場合と同様にすればよい。
ところで本発明にかかる方法は、
(a)第2ポリヌクレオチドをダブルマイニュート染色体上または均一染色体領域で小型増幅領域として増幅させる場合には、転写活性調節型プロモーターの転写活性が活性化された状態で導入工程および選抜工程を行なう;または、
(b)第2ポリヌクレオチドを染色体の均一染色領域で大型増幅領域として増幅させる場合には、転写活性調節型プロモーターの転写活性が不活性化された状態で導入工程および選抜工程を行なうことを特徴としている。
上記プロモーターの転写活性を、活性化させたり、または不活性化させたりする方法は、プロモーターに応じた所定の方法により行なえばよい。より具体的には、上記(a)を行なう際には、当該プロモーターが転写活性化因子の存在によってその転写活性が活性化されるプロモーターである場合には、導入工程および選抜工程を行なう系内に転写活性化因子を存在させて導入工程および選抜工程を行なえばよく、逆に当該プロモーターが転写不活性化因子の存在によってその転写活性が不活性化されるプロモーターである場合には、導入工程および選抜工程を行なう系内に転写不活性化因子を存在させずに導入工程および選抜工程を行なえばよい。
一方、上記(b)を行なう際には、当該プロモーターが転写活性化因子の存在によってその転写活性が活性化されるプロモーターである場合には、導入工程および選抜工程を行なう系内に転写活性化因子を存在させずに導入工程および選抜工程を行なえばよく、逆に当該プロモーターが転写不活性化因子の存在によってその転写活性が不活性化されるプロモーターである場合には、導入工程および選抜工程を行なう系内に転写不活性化因子を存在させて導入工程および選抜工程を行なえばよい。
例えば、第3ポリヌクレオチドに含まれる転写活性調節型プロモーターとして、TREプロモーター(クロンテック社製)を用い、当該プロモーターの転写活性化因子をコードするTet−ON遺伝子(クロンテック社製)を第4ポリヌクレオチドとして用いた場合に、上記(a)を行なうためには、テトラサイクリン(Doxycycline(クロンテック社製))の存在下で第2ポリヌクレオチド、第3ポリヌクレオチド、および第4ポリヌクレオチドを哺乳動物細胞に導入し、さらにテトラサイクリン(Doxycycline(クロンテック社製))の存在下で選抜工程を実施すればよい。また上記(b)を行なうためにはテトラサイクリン(Doxycycline(クロンテック社製))の非存在下で第2ポリヌクレオチド、第3ポリヌクレオチド、および第4ポリヌクレオチドを哺乳動物細胞に導入し、さらにテトラサイクリン(Doxycycline(クロンテック社製))の非存在下で選抜工程を実施すればよい。Tet−ONタンパク質(クロンテック社製)は、TREプロモーターと結合する転写活性化因子であり、テトラサイクリン(Doxycycline(クロンテック社製))の存在下でTREプロモーター(クロンテック社製)の転写活性が活性化される。
一方、第3ポリヌクレオチドに含まれる転写活性調節型プロモーターとして、TREプロモーター(クロンテック社製)を用い、当該プロモーターの転写活性化因子をコードするTet−OFF遺伝子(クロンテック社製)を第4ポリヌクレオチドとして用いた場合に、上記(a)を行なうためには、テトラサイクリン(Doxycycline(クロンテック社製))の非存在下で第2ポリヌクレオチド、第3ポリヌクレオチド、および第4ポリヌクレオチドを哺乳動物細胞に導入し、さらにテトラサイクリン(Doxycycline(クロンテック社製))の非存在下で選抜工程を実施すればよい。また上記(b)を行なうためにはテトラサイクリン(Doxycycline(クロンテック社製))の存在下で第2ポリヌクレオチド、第3ポリヌクレオチド、および第4ポリヌクレオチドを哺乳動物細胞に導入し、さらにテトラサイクリン(Doxycycline(クロンテック社製))の存在下で選抜工程を実施すればよい。Tet−OFFタンパク質(クロンテック社製)は、TREプロモーター(クロンテック社製)と結合する転写活性化因子であり、テトラサイクリン(Doxycycline(クロンテック社製))の存在下でTREプロモーター(クロンテック社製)の転写活性が不活性化される。
なお現時点では、本発明にかかる方法によって、遺伝子の増幅形態をなぜ制御できるかについての詳細は不明であるが、発明者は以前、「複製フォークと転写装置が衝突する構造であって、衝突点にMARが存在すると、高頻度に2本鎖切断を誘導し、その位置の構造を不安定化する」ことを発見したことから、転写活性化によってこのような2本鎖切断が高頻度に誘導され、それが構造を変換させたためであると推察している。
<選抜工程>
本発明にかかる方法の「選抜工程」は、上記第1および第3ポリヌクレオチドが導入された哺乳動物細胞を選抜する工程である。より詳細には、本工程は、上記第1および第3ポリヌクレオチドが導入されていない哺乳動物細胞、および第1および第3ポリヌクレオチドが導入された哺乳動物細胞が含まれる細胞の多クローン性集団から後者の細胞を選抜する工程である。なお、薬剤耐性を指標として本工程を行なう場合には、哺乳動物細胞を培地で培養する工程が含まれる場合があるが、本工程では第1および第3ポリヌクレオチドが導入されていない哺乳動物細胞、および第1および第3ポリヌクレオチドが導入された哺乳動物細胞が含まれる細胞の混合物を培養するのに対して、後述する培養工程は第1および第3ポリヌクレオチドが導入された哺乳動物細胞として既に選抜された細胞を培養する点において、両工程は明らかに相違する。かかる選抜工程によって、哺乳動物細胞に導入された第2ポリヌクレオチド(目的遺伝子)が高度に増幅された哺乳動物細胞を選抜することができる。
上記選抜工程の具体的方法は特に限定されるものではないが、例えば、第1および第3ポリヌクレオチドを哺乳動物細胞へ導入する際に用いた遺伝子構築物に薬剤耐性遺伝子が含まれている場合、その薬剤耐性を利用して第1および第3ポリヌクレオチドが導入された哺乳動物細胞を選抜すればよい。また、PCR法やサザンブロット法によって、哺乳動物細胞に含まれる第1および第3ポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片を検出することによって、第1および第3ポリヌクレオチドが導入された哺乳動物細胞を選抜してもよい。上記薬剤耐性、PCR法、サザンブロット法の具体的な方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法が適宜利用され得る。
<培養工程>
本発明にかかる方法の「培養工程」は、上記選抜工程によって既に選抜された哺乳動物細胞を培養する工程である。かかる培養工程によって、第2ポリヌクレオチド(目的遺伝子)が導入され且つ高度に増幅された哺乳動物細胞を増殖させることができ、所定の操作(転写誘導操作)によって、目的タンパク質を生産することができる。
上記培養工程の具体的方法は特に限定されるものではなく、培養する哺乳動物細胞に最適な条件を検討の上、適宜採用すればよい。
以下添付した図面に沿って実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
以下の実施例において使用する材料および方法を以下に示す。
(プラスミド)
pSFVdhfr(11.0kbp)は、John Kolman 博士および Geoffrey M. Wahl 博士(The Salk Institute, San Diego, CA)から供与された。PSFVdhfrはヒドロ葉酸リダクターゼ遺伝子に対して3'-下流の領域に由来するOriβを含む4.6kbp断片を有している(「Dijkwel, P. A., and Hamlin, J. L. Matrix attachment regions are positioned near replication initiation sites, genes, and an interamplicon junction in the amplified dihydrofolate reductase domain of Chinese hamster ovary cells. Mol. Cell Biol., 8: 5398−5409, 1988.」参照)。
pSFVdhfr/d2EGFPは、pSFVdhfrのヒグロマイシン抵抗性遺伝子発現ユニットを除去し、その位置にTREプロモーター(クロンテック社製)、d2EGFP構造遺伝子(「d2EGFP遺伝子」という)、SV40 poly A配列(pTRE-d2EGFP (クロンテック社製)由来)を、この順で、転写がIRの方向に向かうように組み込むことにより構築した(図1参照のこと)。
(細胞)
ヒト結腸直腸のCOLO 320DM腫瘍細胞株(ヒト大腸がんCOLO 320DM細胞株、以下「COLO 320DM」という)は、「Shimizu, N., Kanda, T., and Wahl, G. M. Selective capture of acentricfragments by micronuclei provides a rapid method for purifying extrachromosomally amplified DNA. Nat. Genet., 12: 65−71, 1996.」の記載に従い取得し、維持した。
また上記細胞および当該形質転換細胞の培養についても上記文献に従って行なった。簡単には、上記細胞株をRPMI 1640培地(日水製薬社製)へ10%牛胎児血清を添加した培地中で、37℃、5% CO2存在下で培養した。
(リポフェクション)
上記全てのプラスミドをQiagenプラスミド精製キット(Qiagen Inc., Valencia, CA)により精製し、GenePorter 2リポフェクションキット(Gene Therapy Systems, San Diego, CA)により細胞にトランスフェクトした。
(方法および結果)
ヒトDHFR遺伝子座由来のIRおよびMAR、並びにBlasticidine抵抗性遺伝子を持ち、かつ、TRE-promoter(テトラサイクリン誘導プロモーター)の支配下にd2EGFP遺伝子を持つプラスミド(pSFVdhfr/d2EGFP)と、TRE-promoterの転写活性化因子(Tet-ONタンパク質)をコードするTet-ON遺伝子を有するpTet-ON plasmid(クロンテック社製)とを等量混合し、同時にリポフェクション法によりヒト大腸がんCOLO 320DM細胞へトランスフェクションを行なった(導入工程)。
導入工程後の各細胞を、5μg/ml Blasticidineを含む培地中で2週間培養することによって、形質転換細胞の多クローン性の多クローン性集団を選抜した(選抜工程)。
選抜工程によって選抜された形質転換細胞の多クローン性集団を新鮮な培地に接種し、さらに2週間培養を行なった(培養工程)。
なお、以下に示す(I)または(II)のパターンにしたがって、Doxycycline(クロンテック社製、以下「Dox」という)を1μg/mlとなるように培地中へ添加した。なおDoxが培地中に添加されることによって、TRE-promoterの転写活性が活性化される。
(I)導入工程、選抜工程および培養工程の全工程においてDoxが系内に添加されている。
(II)導入工程および選抜工程においてDoxが系内に添加されていない。培養工程の最後の1日のみにおいてDoxが培地に添加されている。
上記(I)または(II)のパターンにおける培養工程終了後の形質転換細胞について、FISH法により増幅遺伝子の検出を行なった。FISH法は、細胞に導入したものと同じプラスミドDNAをビオチンまたはDIG(ジゴキシゲニン:Digoxigein)標識したものをプローブとし、形質転換体細胞から調製した染色体標本との間でハイブリダイゼーションを行なった後、ハイブリダイズしたプローブを蛍光色素で検出することによって行なわれた。
その結果を図2に示した。また各図中の(a)および(b)は、上記(I)のパターンで処理されたCOLO 320DMの結果であって、(a)はd2EGFP遺伝子がHSRで小型増幅領域として増幅されているクローンの蛍光顕微鏡像、および(b)はd2EGFP遺伝子がDM上で小型増幅領域として増幅されているクローンの蛍光顕微鏡像である。また図2の(c)は、(II)のパターンで処理されたCOLO 320DMの結果であって、d2EGFP遺伝子がHSRで大型増幅領域として増幅されたことを示す蛍光顕微鏡像である。増幅遺伝子は、図中矢印および/または白色で示されている部分であり、増幅領域が小型であるか大型であるかは、”The ACT Cytogenetics Laboratory Manual (second edition” edited by Margaret J. Barch, Raven Press (1991)に記載された方法にしたがって分裂間期染色体標本を作製し、分裂間期染色体標本中で、染色体腕の幅を基準にして確認した。
(I)または(II)のパターンで処理したCOLO 320DMについて、形質転換細胞の多クローン性集団における目的遺伝子がDM上で小型増幅領域として増幅されている形質転換細胞の割合(図3中「DM」で示す)、目的遺伝子がHSRで小型増幅領域として増幅されている形質転換体の割合(図3中「小型HSR」で示す)、および目的遺伝子がHSRで大型増幅領域として増幅されている形質転換体の割合(図3中「大型HSR」で示す)を図3に示した。
図3によれば、(I)のパターンで処理したCOLO 320DMの形質転換細胞集団の26%のクローンにおいて、d2EGFP遺伝子がHSRで小型増幅領域として増幅されていた。また同形質転換細胞集団の23%のクローンにおいて、d2EGFP遺伝子がDM上で小型増幅領域として増幅されていた。なお、(I)のパターンで処理したCOLO 320DMの形質転換細胞集団において、d2EGFP遺伝子がHSRで大型増幅領域として増幅されていたクローンは見出されなかった。すなわち上記結果は、d2EGFP遺伝子の遺伝子増幅が起こった形質転換細胞集団に含まれるクローンの過半数が、d2EGFP遺伝子がDM上で小型増幅領域として増幅されたクローンであることを意味する。
一方、(II)のパターンで処理したCOLO 320DMの形質転換細胞集団の28%のクローンにおいて、d2EGFP遺伝子がHSRで大型増幅領域として増幅されていた。また同形質転換細胞集団の13%のクローンにおいて、d2EGFP遺伝子がDM上で小型増幅領域として増幅されていた。なお、(II)のパターンで処理したCOLO 320DMの形質転換細胞集団において、d2EGFP遺伝子がHSRで小型増幅領域として増幅されていたクローンは見出されなかった。すなわち上記結果は、d2EGFP遺伝子の遺伝子増幅が起こった形質転換細胞集団に含まれるクローンの過半数が、d2EGFP遺伝子がHSRで大型増幅領域として増幅されたクローンであることを意味する。
したがって、細胞に対して(I)のパターンで処理を行なうことによって、目的遺伝子(d2EGFP遺伝子)をDM上またはHSRで小型増幅領域として増幅させ得るということがわかり、また細胞に対して(II)のパターンで処理を行なうことによって、目的遺伝子(d2EGFP遺伝子)をHSRで大型増幅領域として増幅させ得るということがわかった。換言すれば、プロモーターの転写活性が活性化された状態で導入工程および選抜工程を行なうことによって、目的遺伝子(d2EGFP遺伝子)をDM上またはHSRで小型増幅領域として増幅させ得るということが示され、プロモーターの転写活性が不活性化された状態で導入工程および選抜工程を行なうことによって、目的遺伝子(d2EGFP遺伝子)をHSR上で大型増幅領域として増幅させ得るということが、上記結果によって示された。
上記説示したように本発明にかかる方法によれば、高度遺伝子増幅系を用いて目的遺伝子を増幅する際に、(a)当該目的遺伝子をダブルマイニュート染色体上または均一染色体領域で小型増幅領域として増幅させる、または(b)目的遺伝子を染色体の均一染色領域で大型増幅領域として増幅させることができる。それゆえ本発明によれば、目的遺伝子を目的に応じた形態で増幅させることができ、ひいては所望のタンパク質(例えば有用タンパク質)を大量に生産することができるという効果を奏する。
したがって本発明は、タンパク質の生産を行なう産業、例えば医薬品、化学、食品、化粧品、繊維等種々広範な産業において利用可能である。
実施例において使用したプラスミド(pSFVdhfr/d2EGFP)の構造を模式的に示す図である。 実施例において取得した形質転換細胞のクローン(COLO 320DM)の蛍光顕微鏡像(×600)であり、(a)はd2EGFP遺伝子がHSRで小型増幅領域として増幅されているクローンの蛍光顕微鏡像、(b)はd2EGFP遺伝子がDM上で小型増幅領域として増幅されているクローンの蛍光顕微鏡像、(c)はd2EGFP遺伝子がHSRで大型増幅領域として増幅されているクローンの蛍光顕微鏡像である。 実施例において、(I)または(II)のパターンで処理したCOLO 320DMについて、全形質転換細胞に対する目的遺伝子がDM上で小型増幅領域として増幅されている形質転換細胞の割合、全形質転換細胞に対する目的遺伝子がHSRで小型増幅領域として増幅されている形質転換体の割合、および全形質転換細胞に対する目的遺伝子がHSRで大型増幅領域として増幅されている形質転換体の割合を示す棒グラフである。

Claims (3)

  1. (i)真核生物細胞内で機能する複製起点および核マトリックス結合領域を含む第1ポリヌクレオチドと、
    (ii)発現させるべきタンパク質をコードする第2ポリヌクレオチド、および所定の操作によって転写活性が活性化または不活性化される転写活性調節型プロモーターを含むポリヌクレオチドであり、かつ当該第2ポリヌクレオチドが転写活性調節型プロモーターに制御可能に連結されている第3ポリヌクレオチドとを、哺乳動物細胞へ同時に導入する導入工程、並びに
    当該第1および第3ポリヌクレオチドが導入された哺乳動物細胞を選抜する選抜工程を含み、かつ
    以下に示す(a)または(b)の条件を満たすことを特徴とする第2ポリヌクレオチドの増幅形態を制御するための方法:
    (a)第2ポリヌクレオチドをダブルマイニュート染色体上または均一染色体領域で小型増幅領域として増幅させる場合には、転写活性調節型プロモーターの転写活性が活性化された状態で導入工程および選抜工程を行なう;
    (b)第2ポリヌクレオチドを染色体の均一染色領域で大型増幅領域として増幅させる場合には、転写活性調節型プロモーターの転写活性が不活性化された状態で導入工程および選抜工程を行なう。
  2. 上記真核生物細胞内で機能する複製起点が、c-myc遺伝子座、ジヒドロ葉酸リダクターゼ遺伝子座、またはβ-グロビン遺伝子座の複製起点に由来することを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 上記核マトリックス結合領域が、Igκ遺伝子座、SV40初期領域、またはジヒドロ葉酸リダクターゼ遺伝子座の核マトリックス結合領域に由来することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
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