ディスプレイ装置の構造
ディスプレイ媒体を含むことができる電気泳動ディスプレイ装置の構造について、最初に記述する。しかし、本明細書で述べる電気泳動ディスプレイ媒体の使用は、これらの実施形態に必ずしも限定するものではなく、電気泳動ディスプレイ装置に関する任意のその他の適切な設計を、それに限定されることなく使用することができる。本明細書では特に述べていないが、本ディスプレイ媒体で使用することができる適切な電気泳動ディスプレイ装置の設計の例として、米国特許第6788449号が挙げられる。
図1に示すように、電気泳動ディスプレイ装置の実施形態は、互いに対向して配置された2枚の導電性基板10および20を含み、その間には、電気泳動またはディスプレイ層40がある。ディスプレイ層は、例えば、約10μmから約500μmや、約20μmから約350μmなど、約5μmから約1000μmの厚さを有することができる。
層40は、流体および着色粒子を備えるディスプレイ媒体がそれぞれ入っている複数の個別の貯蔵部[reservoir](30、31、および32)を画定するスペーサを内部に含む層を有してもよい。複数とは、例えば、約2から約100000000、または場合によってはそれ以上であり、約100から約50000000、または約1000から約1000000などを指す。したがって、例えば複数の貯蔵部のそれぞれが約100ミクロン(μm)の幅である場合、1000×1000個の貯蔵部からなる四角形の領域(または約4インチ×4インチのディスプレイ)は、合計で約1000000個の貯蔵部を有することになる。この点について、各貯蔵部は、装置の画素に対応すると考えることができる。貯蔵部は、例えば内部にディスプレイ媒体を入れた、または入れることができる任意の単位を指し、例えばスペーサデバイスによって分離された単位、ポケット、1枚のシート内または2枚のシート間に形成されたキャビティまたは気泡、シートまたは層内のカプセルまたはマイクロカプセルなどが含まれる。
図1の実施形態では、粒子は、1組の黒色粒子および1組の白色粒子を含むことが示されている。しかし、以下にさらに詳細に論じるように、粒子は、少なくとも1組または複数組の異なる着色の粒子を含むことができ、例えば、1から約10組の粒子、例えば1から約6組の粒子、または約2から約4組の粒子などを含むことができる。
電気泳動ディスプレイ装置の導電性基板として、例えば現在知られており使用されている材料、または当技術分野で将来使用することができる材料も含めて、これらに限定されることなく任意の適切な材料を使用することができる。導電性基板の少なくとも1つ、特に、その基板を介して装置が作成した画像が観察される少なくとも上部導電性基板は、その画像を視認できるよう透明であるべきである。要求があれば、両方の基板を透明にすることができる。下部または背面基板は、透明である必要はなく、代わりに例えば、光反射材料または光吸収材料を採用することができる。使用可能な適切な材料として、導電性ポリマーフィルム、例えばインジウムスズ酸化物(ITO)などの透明導電性材料で被覆されたポリマーフィルムであって、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、例えばMYLAR(Du Pont)や、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリエーテルスルホン(PES)フィルムなどや、ITO被覆ガラスなどの導電性ガラスフィルム、および導電性薄膜金属を挙げることができる。透明性(トランスペアレンシー)に関しては、ITO被覆ポリマーフィルムおよびガラスが適切である。基板はフレキシブルまたは剛性であってよい。
その間にスペーサ層を挟持する基板は、電気泳動ディスプレイ装置の全長および全幅に対応した長さおよび幅を有することができる。したがって基板は、ディスプレイ装置の個別の貯蔵部でちょうど分離された小片として存在しない連続的な一体のフィルムでよいが、複数の分離された基板を使用してもよい。基板は、適切な導電性および構造的完全性を維持しつつ、できる限り薄くすることができる。例えば基板は、約10から約250ミクロンや約20から約100ミクロンなど、約10ミクロンから約500ミクロンの高さまたは厚さを有することができる。
導電性基板の間には、以下にさらに詳細に記述するディスプレイ媒体がそれぞれ充填された、複数の個別貯蔵部(30、31、32)が含まれる。個別の貯蔵部は、それぞれ電気泳動ディスプレイ装置の1つの容器および/またはセルを画定する。
実施形態では、スペーサは、個別の貯蔵部を相互に切り離した状態に保つのに使用することができる。任意の適切なスペーサデザインを使用することができる。例えばスペーサは、米国特許公開第2003−0132925A1号に記載されているタイプのものでよい。個別の貯蔵部の幅および直径のいずれか又は両方は、例えば、約5ミクロンから約400ミクロンでよく、約5から約200ミクロンまたは約5から約50ミクロンなどである。またスペーサ層40は、例えば様々に着色されたディスプレイ媒体を内部に有するポケットシートが一緒に積み重ねられる場合、2層から約8層または約2層から約4層など、複数の層/シートを含むことが出来る。
貯蔵部内で使用されるディスプレイ媒体は、機能させるために、貯蔵部の幅/直径よりも小さいサイズの粒子を含有する。
スペーサ層が複数の個別の貯蔵部を備える場合、複数の貯蔵部を切り離すスペーサの固体部分、即ちスペーサ層の個別の貯蔵部間のスペーシングまたは仕切りは、できる限り薄いことが望ましい。好ましいスペーシング/仕切りの厚さは、例えば、約10ミクロンから約75ミクロンまたは約15ミクロンから約50ミクロンなど、約10ミクロンから約100ミクロン程度である。
ディスプレイ装置は、所望の任意の適切な全長および幅を有することができる。電気泳動ディスプレイ装置は、任意の所望の高さを有するように作製することもできるが、例えば約30から約400ミクロンまたは約50から約300ミクロンなど、約30から約1000ミクロンの全高を、装置のサイズおよび使い易さの点から使用することができる。
電気泳動ディスプレイ装置を形成する際、スペーサ層の貯蔵部、例えばポケットには、ディスプレイ媒体が充填され、スペーサ層は、第1または底面の導電性基板上に配置されている。貯蔵部の充填および基板上のスペーサの設置は、任意の適切な順序で行うことができる。実施形態では、スペーサ層は、第1の導電性基板または中間フィルムに物理的に取着することができ、これは任意の適切な方法により行うことができる。接着剤を便宜上使用することができるが、導電性フィルムのスパッタリング堆積法などその他の取着方法を使用してもよい。貯蔵部にディスプレイ媒体を充填したら、スペーサを第1の導電性基板上に配し、第2または上部導電性基板をスペーサ層上に位置付ける。これは、非ポケット状の貯蔵部において、および/またはいかなる中間層も含まないディスプレイにおいて、貯蔵部を封止する役割を果たす。第1および第2の基板は、要求があれば、逆の順序でスペーサ層に関連付けて位置合わせしてもよく、また例えばスペーサ層が、ディスプレイ媒体が充填されている個別の密封されたポケットのシートを有する場合には、これら基板を同時にスペーサ層に関連付けてもよい。この場合も、スペーサ層に関連付けた第2の導電性基板の位置付けは取着によって行うことができ、要求があれば、接着剤による接着を含む、任意の適切な手段によって行うことができる。追加の中間層は、所望のようにスペーサ層と導電性基板との間に含めることができ、したがって上述の配置および/または取着は、スペーサと導電性基板との直接的接着または結合である必要はない。
実施形態では、ディスプレイ装置をフレキシブルにすることができる。この実施形態では、基板がそれぞれフレキシブルなポリマーフィルムからなり、スペーサは、これら基板の少なくとも一方においてグリッドパターンを有する。グリッドパターンは、ポリマーフィルム基板の一方または両方と一体化することができる。一体化は、例えば、グリッドパターン壁または側壁を指し、このグリッドパターン壁または側壁は、ポリマーフィルム基板と同じ材料を含みかつ同じ成型ステップでポリマーフィルムと共に形成され、ディスプレイ装置の個別のセルを隔離する。柔軟性に関し、各フィルムは、約5μmから約75μmの厚さを有することができ、例えば約10から約50μm、または約10から約30μmである。接合したフィルムを含む装置全体は、150μm未満の厚さを有することができ、例えば約10から約150μm、または約20から約75μmである。
グリッドパターンの個別の貯蔵部の幅および/または長さは、好ましくは、例えば約5ミクロンから約200ミクロンであり、約5から約100ミクロンまたは約10から約100ミクロンなどである。明らかに、貯蔵部内で使用されるディスプレイ媒体は、ディスプレイを機能させるため、貯蔵部の幅/長さよりも小さいサイズの粒子を含有しなければならない。複数の貯蔵部を分離するグリッドの固体部分、即ち壁は、できる限り薄いことが望ましい。例えば約10ミクロンから約100ミクロン程度、例えば約15から約50ミクロン程度の仕切の厚さを使用することができる。
表面にグリッドパターンが形成されているフィルムは、ディスプレイ媒体が充填されているグリッド壁によって画定されたセルを有し、そして、このディスプレイ媒体含有フィルムを、別のフレキシブルポリマーフィルム基板に、例えば表面にグリッドパターンの無いフィルムに、またはグリッドパターンを有しやはり同じディスプレイ媒体が充填されたフィルムそのものに接合(接着)する。接合は、任意の方法によって、例えばヒートシールおよび/または接着剤を使用して実現することができる。接着剤を使用する場合、その接着剤は、接合中にディスプレイ媒体がグリッドのセル内に維持されるように、ディスプレイ媒体に対して斥力作用を有することができる。例えば、ディスプレイ媒体が疎水性である場合、親水特性を有する接着剤を使用することができる。
表面にグリッドパターンが形成されたフレキシブルポリマーフィルムを形成するには、成型(mold)(マイクロ成型)用のマスタを最初に作製する。これは、任意の適切な技術によって、例えば適切な露光(例えばフォトマスクを介して)と、基板上、例えばガラス上に位置付けられたSU−8(市販(Microchem Corp.)のスピンオンエポキシ(spun-on epoxy))などのフォトレジスト材料フィルムの現像によって行うことができる。マスタを形成するための、追加の適切な材料およびマイクロ加工技法、例えばシリコーンまたはガラスへのエッチング、あるいは電気メッキまたは無電界メッキによる加工を含めた技法を使用してもよい。その全体を本願に引用して援用される米国特許公開第2005/0239935号は、成型ステップの方法および材料について記述している。現像したパターンは、フレキシブルフィルム基板の望ましいグリッドパターンに対応する。
さらに、マスタの表面を、低表面エネルギーコーティングまたは剥離(release)層で被覆することができる。その例には、TEFLON AF(DuPont)やCYTOP(旭硝子)、長鎖フッ素化アルキルクロロシラン、これらの混合物などのフルオロポリマーが含まれる。
次いで反転画像マスタスタンプを作製し、このマスタスタンプを、グリッドパターンが一体的にまたは表面に形成されている最終のフレキシブルポリマーフィルムを形成するのに使用する。マスタからマスタスタンプを製造するには、良好な剥離特性を有する材料、例えばPDMS(ポリジメチルシロキサン)(Dow Corningより、SYLGARD 184として入手可能)などのシリコーン材料を使用することができる。マスタスタンプ/型用として、その他使用することできる材料には、例えば、UV硬化性ポリマーなどを含めた適切な剥離特性を有し、または有するように処理された任意のポリマー、あるいは、例えば型の寿命を延ばすことが可能なニッケルなどの金型を含めることができる。型は、フルオロカーボン(例えばCYTOP)や低表面エネルギーシラン(例えばOTSまたはフルオロシラン)、またはシリコーンなどの剥離剤で被覆することができる。Taylor T−WET 630やTaylor T−SIL 50などの市販の剥離剤を使用することができる。
マスタスタンプを形成するための実施例のプロセスを、図2〜4に示す。マスタスタンプ52を作製するために、その材料、例えばシリコーンと硬化剤とを、例えば約50:1から約5:1の比で、例えば約25:1から約5:1または約10:1から約5:1などの比で混合することができる。適切な硬化剤材料は、スタンプの作製に使用される材料に左右される。例えばSYLGARD 184 PDMSの場合、適切な硬化剤は、架橋剤、阻害剤/減速剤、およびシリコーン強化樹脂を含有する混合物を含んでよい。架橋剤の例には、Gelestから入手可能なHMS−151(メチルヒドロシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー)などの機能性水素化シロキサン(hydride functional siloxane)架橋剤材料が含まれる。阻害剤/減速剤の例には、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンが含まれる。シリコーン強化樹脂の例には、ビニル「Q」強化樹脂(vinyl "Q" reinforcing resin)、Gelestから入手可能なVQM−135などのビニル末端基含有PDMS(vinyl terminated PDMS)が含まれる。任意選択でガラスなどの基板51上にあるマスタマイクロセルアレイ50を、ホルダ内で、例えばTEFLONホルダ内で表を上にして配置し、硬化後の型の剥離に役立つようにする。次いでシリコーンなどのマスタスタンプ/型の材料を、セル表面に薄層で付着させる(図2)。混合物は、取り込まれた空気が全て除去されるように排出(排気)することができる。任意選択で、混合物の残りを型の表面に付着させ、再度排出して全ての気泡を除去することができる。次いで材料を、例えば約25℃から約300℃で、例えば約25℃から約250℃または約50℃から約200℃などで硬化させ、および/または固化(凝固)し、その後、マスタスタンプ52をマスタ50から取り外す(図4)。
次いでフレキシブルポリマー基板55を、マスタスタンプから形成することができる。ポリマーとして、実質的に透明なより低粘度の材料を使用し、例えば硬化性の、例えばUV硬化性接着剤などの材料を使用することができる。例えば、Epoxies,Etc.からの60−7155などのエポキシアクリル樹脂、または60−7165(Epoxies,Etc.)などのウレタンアクリル樹脂を使用することができる。米国特許公開第2005/0239935号に記載されるようなその他の材料も、本明細書においてその用途を見出すことができる。ポリマーは、UV硬化性ポリマーに限定されず、熱可塑性ポリマー、熱架橋ポリマー、または2成分反応系を選択してもよい。例えば、イソプロパノールに溶かしたDuponol WAQ(ラウリル硫酸ナトリウム)や、クロロエチレンで希釈したDow Corning 230流体(アルキルアリールポリシロキサン流体)、および/または塩素系溶剤(chlorinated solvent)に溶かしたワセリンなどの剥離剤を、シリコーンマスタスタンプ52に付着させて、成型後にそこから硬化したポリマーフィルムを分離するのに役立てることができる。ポリマー材料55をシリコーンマスタスタンプに付着させ、および/またはITOで被覆されたMYLARのようにフレキシブル基板56の表面に塗り広げ、それによってマスタスタンプ52のセルが完全に充填されるようにマスタスタンプをポリマー材料55にプレスする(図5)。圧力は、例えばローラを使用することによって均一に加えることができる。平板をサンプル上に配置し、クランプ留めし、それによって硬化中に均一な圧力を加えてもよい。次いでサンプルを、例えばDYMAX 5000−EC 400W UV露光システムを使用して、紫外線および/または高温に、例えば約5から約60秒間、例えば約30秒間曝すことにより硬化することができる。サンプルをクランプから取り外し、さらに例えば約5秒から約30秒間、例えば約10秒間硬化することができる。次いで基板56上のフィルム55を、マスタスタンプから剥がすことができる(図6)。グリッドパターンを有する最終フィルムを、例えばイソプロパノールなどで濯ぐことにより、残留物を全て除去することができる。
実施形態では、基板は、ガラスやITO被覆ガラスなどのように、フレキシブルでなくてよい。この場合、ポリマーのフラットフィルムを、最初に剛性基板上に形成し、次いでそこから剥がし、フレキシブル基板上に置いて、上述の別の処理にかける。
次いで表面にグリッドパターンを有するフレキシブルポリマーフィルムに、ディスプレイ流体を充填し、接着(結合)してディスプレイ装置を形成することができる。ディスプレイ流体は、グリッドパターンのセルが充填されるように、フィルム全体にわたって付着させることができ、典型的な場合には、接着する前に、余分なディスプレイ流体を拭き取りまたはエッジを擦り取る。流体は、セルのみに局在し、結合表面は清浄で残留流体が無いことが望ましい。
追加のステップとして、流体の表面張力よりも低い表面エネルギーを有するように、フィルムの結合表面に変更を加えることができる。この方法により、流体は、結合表面を濡らさなくなる。例えば、ポリマーフィルムを低表面エネルギー材料で型押しする。例えばフルオロカーボンポリマーやシラン、またはアルキル鎖材料などの例えば約8から約1000個の炭素原子の長さのもので、型押しすることによって、この型押しされたエッジは、セル内のディスプレイ媒体の流体で濡れなくなり、別のフィルムに対する良好な結合が確実になる。前述の低表面エネルギー材料は、典型的な場合、例えばシリコーン流体またはISOPARでよいディスプレイ媒体の流体よりも低い表面エネルギーを有する。結合エッジのコーティングは、例えば図7および8に示すように実現することができ、フレキシブルフィルム55の上面に低表面エネルギー材料58を型押ししまたは接触させて、グリッド/セルの上面を材料で被覆するようにする。これに後続し、セルに対するディスプレイ媒体60の充填(図9)では、ディスプレイ媒体がセル内に保持されるように、かつ後続のこれら表面結合を妨げる可能性のあるディスプレイ媒体がセル上面に存在しない状態で維持されるように、このディスプレイ媒体はセルの上面を濡らさない。
図10から12は、2枚の充填されたポリマーフィルム55を一緒に結合して、個別セル61内にディスプレイ媒体が入っているフレキシブルディスプレイ装置65を生成するプロセスの例を示す。2枚のフィルム間の接着は、熱、圧力、および/または光に対する曝露の使用によって強化することができる。最終的なフレキシブル装置65は、図11および12に示されるように、ディスプレイ媒体が充填された個別のセル61を含む。
当然ながら、フレキシブルフィルム基板を作製するための前述の手順は、非フレキシブルディスプレイ装置を同様に作製するのにも使用することができる。この点に関し、剛性基板、例えばITO被覆ガラスなどは、上述のマスタ形成プロセスの場合のように、表面に形成されたグリッドパターを有することができる。例えば、SU−8などのフォトレジスト材料を、基板上にスピンコートし、フォトマスクを介して露光し、現像して、基板上にグリッドパターンを形成することができる。
同様に、フォトリソグラフィによって画定されたグリッドパターンを、厚さ50ミクロンのMYLARシートなどのフレキシブル基板(導電性ITO層で被覆することができる)上に形成してもよい。この場合、フレキシブル基板は、処理中の平坦性を確実なものにするために、処理中に剛性基板に取り付けしなければならない可能性がある。フレキシブル基板を剛性基板に取り付ける例としては、古河電気工業(株)製UC−228W−110などの、両面UV剥離接着テープを介したものがある。
例として、SU−8−25(Microchem Corp.)を基板上に、約1000から約3000rpmで、例えば約2000rpmでスピンコートして、約10から約100μmの厚さ、例えば約20から約50μmまたは約20から約40μmの厚さを有するフィルムを提供することができる。スパンオンコーティング(spun on coating)は、例えば水平にしたホットプレート上で、例えば約1から約20分間、例えば約5分間、約80から約150℃で、例えば約115℃でベークすることができる。次いでフォトレジストを、例えば約340〜400nmの波長を有する紫外線で、約2から約10分間、例えば約3分間、8mW/cm2でフォトマスクを通して露光する。任意選択のポスト露光ベークは、ホットプレート上で約1から約20分間、例えば約5分間、約80℃から約150℃で、例えば約115℃で実施することができる。次いでフォトレジストを、適切な現像液中で、例えばPGMEA(SU−8に適切な現像液であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート;その他のフォトポリマーは、当技術分野で理解されるように異なる現像液を必要とする可能性がある)中で現像する。次いで現像されたフォトレジストフィルムを、イソプロパノールなどで濯ぎ、最終のハードベークに、例えば約100℃から約250℃で、例えば約150℃で、約1から約20分間、例えば約5分間かけることができる。その後、低表面エネルギー表面コーティング、例えばCYTOPコーティング(旭硝子(株)から入手可能な非晶質可溶性パーフルオロポリマーフィルム)などを付着させることができる。低表面エネルギーコーティングは、粒子と、電極またはポリマーフィルムとの接着が妨げられるように、非粘着性フィルムを形成する。コーティングは、例えば約10nmから約1000nmの厚さ、例えば約50から約250nmまたは約100nmから約200nmの厚さとすることができる。
適切な電気泳動ディスプレイ装置の別の実施形態を、図13に示す。図13において、電気泳動ディスプレイ装置は、やはり、互いに対向配置された導電性基板10および20を備える。しかしこの実施形態では、基板間の層が、内部に電気泳動ディスプレイ媒体がカプセル封入されている複数のマイクロカプセル45を有する。マイクロカプセルは、適切なマトリックス材料中に保持することができる。マイクロカプセルを利用する同様の電気泳動ディスプレイ装置は、米国特許第6017584号に記載されている。マイクロカプセルは、例えば約5ミクロンから約1000ミクロン、例えば約5から約200ミクロンまたは約5から約50ミクロンのサイズ(直径)を有するように作製することができる。
この実施形態において、マイクロカプセルは、ディスプレイ媒体と共に作製し、またこの媒体で充填することができ、次いでこのマイクロカプセルは、導電性基板の一方又は両方に対し、あるいはマイクロカプセルと基板との間の中間層上に対し、あるいは多層を使用する場合には、装置のマイクロカプセルのその他の層上に、固定しまたは接着することができる。マイクロカプセルは、ディスプレイ装置のディスプレイ層内に、単層(この層のマイクロカプセルの平均直径に実質的に相当する厚さを有する層)を、形成することが望ましい。しかし、例えば2から約10層または2から約4層の多層を使用してもよい。
マイクロカプセルの作製では、カプセル封入の任意の適切な方法を使用することができる。カプセル封入のプロセスは、従来のまたは複合コアセルベーション、界面重合、in−situ重合、電解質分散、および冷却、あるいは噴霧乾燥プロセスを含むことができる。これらのプロセスでは、ディスプレイ媒体を壁面形成材料溶液に添加し、それによってカプセル封入を行い、得られたカプセル封入型微小球を、架橋することができる。マイクロカプセルは、マイクロカプセル壁面形成材料として、メラミン−ホルムアルデヒド、尿素−ホルムアルデヒド、レゾルシノール−ホルムアルデヒド、フェノール−ホルムアルデヒド、ゼラチン−ホルムアルデヒド、イソシアネート−ポリオール、ゼラチン/アラビアゴムやゼラチン/ポリホスフェート、およびポリ(スチレンスルホン酸)/ゼラチンなどの2種の反対の電荷を有するポリマーのインターポリマー複合体、ヒドロキシプロピルセルロース、前述の混合物および/または組合せなどを使用して作製することができる。
界面重合の手法は、水相中のエマルジョンとして存在する、電気泳動組成物中での油溶性モノマーの存在を利用する。微細な疎水性液滴中のモノマーは、水相中に導入されたモノマーと反応し、液滴とこれを取り囲む水性媒体との界面で重合し、液滴の周りに殻を形成する。得られた壁面は相対的に薄く透過性があるが、このプロセスは、いくつかのその他のプロセスの高温特性を必要とせず、したがって、誘電性液体の選択の際にかなりの柔軟性をもたらす。
被覆されまたは印刷された電気泳動インク材料の均一性および品質を改善するために、コーティング助剤(促進剤;coating aid)を使用することができる。湿潤剤は、典型的にはコーティング/基板界面での界面張力を調節するために、また液/気表面張力を調節するために添加する。湿潤剤には、例えば、陰イオン性および陽イオン性界面活性剤、非イオン性の化学種であって、シリコーンやフルオロポリマーベースの材料などが含まれる。分散剤は、カプセルとバインダー(結合剤)との間の界面張力を調整するために使用することができ、凝集および粒子沈降の制御が行われる。
表面張力調整剤は、空気/インク界面張力を調整するために添加することができる。ポリシロキサンは、典型的には表面レベリングを改善すると同時に、コーティング内のその他の欠陥を最小限に抑えるのに使用する。表面張力調整剤には、例えばフッ素系界面活性剤(fluorinated surfactant:フッ素化界面活性剤)、例えばDuPont製ZONYLシリーズや3M(St.Paul.Minn.)製FLUORADシリーズ、およびAutochem製フルオロアルキルシリーズなど;シロキサン、例えばUnion Carbide製SILWET;ポリエトキシおよびポリプロポキシアルコールなどが含まれる。シリコーンやシリコーンを含まないポリマー材料などの消泡剤は、インク内部から表面への空気の移動を高めるために、またコーティング表面での気泡の破裂を促進させるために、添加することができる。その他の有用な消泡剤には、例えばグリセリルエステル、多価アルコールや、アルキルベンゼンの油溶液や天然脂肪、脂肪酸、および金属石鹸などの配合消泡剤、そして、ジメチルシロキサポリマーとシリカとの組合せから作製されたシリコーン消泡剤が含まれる。UV吸収剤や酸化防止剤などの安定剤を、インクの寿命を改善するために添加してもよい。
コアセルベーション手法は、油/水エマルジョンを利用することができる。1種以上のコロイドを、水相からコアセルベートにし(凝集させる)、温度、pH、および/または相対濃度の制御によって油滴(oily droplet)の周りに殻として堆積させ、それによってマイクロカプセルを生成する。コアセルベーションに適した材料には、ゼラチンおよびアラビアゴムが含まれる。例えば、米国特許第2800457号を参照されたい。
実施例の複合コアセルベーションプロセスでは、カプセル封入されるディスプレイ媒体を、壁面形成材料によって、例えば水、ゼラチン、およびアラビアゴムの混合物によって、例えば約30℃から約80℃の高めた温度で、例えば約35℃から約75℃または約35℃から約65℃で乳化する。次いでpHを、酢酸などの酸を添加することによって、例えば5未満に、例えば約4から約5に、例えば約4.4から約4.9などに低下させて、コアセルベーションを誘発させる。次いでマイクロカプセル封入した粒子を冷却する。次いでマイクロカプセルの壁面材料は、例えばグルテルアルデヒドなどを添加し、その混合物を、例えば尿素の存在下で撹拌することによって、架橋することができる。
マイクロカプセルは、核となる固体および/または液体のカプセル材料の周りに、多層壁面を有することができる。これらは、例えば、最初に界面重合反応によって薄い壁面を形成し、その後、in−situ重合反応によってまたはコアセルベーションプロセスによって、第2のより厚い壁面を形成することによって作製することができる。マイクロカプセルの第1の壁面は、典型的にはポリ尿素、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、エポキシ−アミン縮合物、シリコーンなどを有することができる。マイクロカプセルの第2の壁面は、メラミン−ホルムアルデヒド、尿素−ホルムアルデヒド、レゾシノール−ホルムアルデヒド、フェノール−ホルムアルデヒド、ゼラチン−ホルムアルデヒドの縮合物、またはゼラチン/アラビアゴムやポリ(スチレンスルホン酸)/ゼラチンなどの2種の反対の電荷を有するポリマーのインターポリマー複合体を有することができる。
半連続ミニエマルジョン重合プロセスは、例えば米国特許第6529313号に記載されるように、電気泳動ディスプレイ媒体をカプセル封入するのに使用してもよい。
電気泳動ディスプレイ媒体をカプセル封入する利点は、マイクロカプセルを、図13に示すように球状に作製できること、またはプロセスの制御によって球状以外に作製できることである。種々の形状で、マイクロカプセルのより良好な充填密度、およびより良好なディスプレイ品質が可能になる。
生成したマイクロカプセルを、次に、装置の導電性基板の一方に、直接またはそれらの間の中間層を介して位置付けまたは接着する。マイクロカプセルは、基板の導電性側、例えば表面に導電性ITOコーティングを有する側に接着することができる。接着は、例えば、接着剤やポリマーマトリックス材料などの任意の適切な結合剤を使用して実現することができ、この接着剤やポリマーマトリックス材料などの任意の適切な結合材を、基板上にマイクロカプセルを被覆させる前にマイクロカプセルと混合され、または表面にマイクロカプセルを配置する前に基板上を被覆し、または基板上に配置した後にマイクロカプセル表面を被覆する方法の1以上、又は3つ全てを含めた方法を用いて接着できる。
接着剤または結合剤として、例えばポリビニルアルコール(PVA)またはNEOREZなどのポリウレタンを含めた任意の材料を使用することができる。結合剤は、カプセルを支持し保護すると共に電極材料をカプセル分散系に結合する接着剤媒体として、使用することができる。結合剤は、非導電性、半導電性、または導電性にすることができる。結合剤は、多くの形および化学タイプで利用可能である。これらの中には、水溶性ポリマー、水性ポリマー(water-borne polymer)、油溶性ポリマー、熱硬化性および熱可塑性ポリマーと、放射線硬化ポリマーがある。
水溶性ポリマーの中には、様々な多糖、ポリビニルアルコール、N−メチルピロリドン、N−ビニルピロリドン、様々なCARBOWAX種(Union Carbide)、およびポリ(2−ヒドロキシエチルアクリルレート)がある。
水分散性または水性(water-borne)の系は、一般にラテックス組成物であり、例えばNEOREZおよびNEOCRYL樹脂(Zeneca Resins)、ACRYSOL(Rohm and Haas)、BAYHYDROL(Bayer)、およびHP製品(Cytec Industries)である。これらは一般に、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、またはシリコーンの1種以上と時折り配合されるポリウレタンの格子であり、それぞれが、ガラス転移温度、粘着度、軟度、透明度、柔軟性、透水性および耐溶媒性、伸び弾性率および引張り強さ、熱可塑性流、および固形分レベルによって定義される特定の性質の組を持つ最終的な硬化樹脂を与えるものである。いくつかの水性の系は、反応性モノマーと混合し、触媒作用を及ぼすことによって、より複雑な樹脂を形成することができる。一部はさらに、例えばカルボキシル基と反応するアジリジンなどの架橋試薬の使用によって、架橋することができる。
水性樹脂(water-borne resin)および水性カプセル(aqueous capsules)の例は、米国特許第6822782号に示されている。
熱硬化性の系には、エポキシ群を含めることができる。これらの2成分系は、粘度を大幅に変えることができ、その1対の反応性が、混合物の「ポットライフ」を決定する。被覆操作が可能になるようにポットライフが十分長い場合、カプセルは、樹脂の硬化および固化の前の被覆プロセスで、規則正しい配列で被覆することができる。
しばしばポリエステルである熱可塑性ポリマーは、高温で融解する。このタイプの生成物の典型的な付着は、ホットメルトグルー(glue)である。耐熱性カプセルの分散系は、そのような媒体で被覆されることができる。凝固プロセスは冷却中に開始し、最終的な硬さ、透明度、および柔軟性は、ポリマーの分岐および分子量の影響を受ける。
油または溶媒可溶性ポリマーは、その組成が水系(水媒介系)としばしば同様であり、但し水そのものは明らかに別とする。溶媒系の配合の許容範囲は広く、溶媒の選択およびポリマーの溶解性によってのみ限定される。溶媒ベースの系に関する大きな関心は、カプセルそのものの実現可能性であり、カプセル壁の一体化は、溶媒によってどのようにも損なわれない。
放射線硬化樹脂は、一般に、溶媒ベースの系の中に見出される。カプセルは、そのような媒体中に分散することができ、被覆され、次いで樹脂を、長波長または短波長の紫外線の閾値まで時限露光することによって、硬化することができる。ポリマー樹脂を硬化する全ての場合と同様に、最終的な性質は、モノマー、オリゴマー、および架橋剤の分岐および分子量によって決定される。
しかし、いくつかの「水希釈性(water-reducible)」モノマーおよびオリゴマーが市販されている。最も厳密な意味では、それらは水溶性ではなく、しかし、水は低濃度で、許容可能な希釈剤であり、混合物中に比較的容易に分散させることができる。これらの環境下で、水は、粘度を低下させるのに使用する(最初は数千から数十万センチポアズ)。例えば、タンパク質または多糖材料から作製されるような水ベースのカプセルは、粘度が十分に低いという条件で、そのような媒体中に分散させ、被覆されている。そのような系での硬化は、一般に紫外線による。
マイクロカプセルは、隣接し並行した状態に整列させることができ、実施形態では、導電性基板間に単層に整列される(即ち、マイクロカプセルは積み重なっていない)。しかし、複数層のマイクロカプセルを使用してもよい。
さらにその他の実施形態では、ディスプレイ装置は、ディスプレイ媒体が内部に入っている複数の個別のキャビティまたはポケットを内部に含有する結合剤、例えば透明な結合剤の、少なくとも1層を備え、例えば1から10層であって、1から4層または1から2層、特に1層を備える。例えば図14および15に示すように、結合剤層70は、その内部に複数のキャビティ72を含有し、そのキャビティには、ディスプレイ媒体の流体73および粒子74が充填されている。要求に応じて、異なるカラーディスプレイ媒体に対して異なる層を使用することができる。透明結合剤層は、剛性のまたは柔軟な(フレキシブル)ディスプレイ装置に組み込むことができる。
したがってこの実施形態は、基板上に大面積のディスプレイ装置を生成するため容易に適用できる、この装置のディスプレイ層にディスプレイ媒体を組み込む方法に関する。本質的に、何組かのディスプレイ媒体の粒子を、犠牲結合剤、即ちその後に除去されることになる結合剤を含む複合粒子に、最初に混ぜる。結合剤層の結合剤中に複合粒子を組み込んだ後、犠牲結合剤は除去され、結合剤層内で複合粒子が占有するスペースは、ディスプレイ媒体の粒子が入っているキャビティまたはボイドになる。次いで犠牲的結合剤を除去するとき、または犠牲結合剤を除去した後に、キャビティが充填されるようにディスプレイ流体の液体を添加する。
このように、何組かのディスプレイ媒体の粒子と犠牲結合剤とを有する複合粒子を最初に形成する。複合粒子は、結合剤層内に形成されるキャビティのサイズに、実質的に相当するサイズを有することができる。例えば複合粒子およびそこから形成されたキャビティは、約5から約1000μmのサイズ、例えば約10から約350μmまたは約20から約200μmのサイズを有することができる。
複合粒子の犠牲的結合剤として、ポリエチレンまたはプロプロピレンワックスなどのワックス、例えばBaker Petrolite製のPOLYWAXワックスを利用することができる。ディスプレイ媒体の流体の存在下で溶解し、または結合剤層から融解し除去することができる追加の材料を、使用してもよい。例えば、追加の犠牲的結合剤材料には、熱可塑性ワックス、合成微結晶質ワックス、結晶質ポリエチレンワックス、または、約50℃から約200℃の融点および約5℃未満の急な融解/結晶化温度を有することができるその他のワックス状材料が含まれる。その他の例には、カルナウバワックス(carnauba wax)やカンデリラワックス(candelilla wax)、キャスターワックス(castor wax)などのワックスが含まれる。
ワックスという用語は、例えば、室温で固体であり、また一般にグリセリドを含有しないこと以外は、その組成が脂肪および油と類似している、高分子量の化合物の低融点有機混合物を指す。一部は炭化水素であり、その他は脂肪酸とアルコールのエステルである。これらは、脂質に分類される。ワックスは熱可塑性であるが、高重合体ではないので、プラスチック群とは見なされない。一般的な性質は、撥水性、滑らかな質感、低毒性、不愉快な臭いおよび色が無いことである。これらは可燃性であり、良好な誘電特性を有し、ほとんどの有機溶媒中に溶解し、水には不溶である。主なタイプは下記の通りであり、即ち天然の場合は、(1)動物(蜜蝋、ラノリン、シェラックワックス、中国昆虫蝋(Chinese insect wax))、(2)植物(カルナウバ、カンデリラ、バーベリ、サトウキビ)、(3)鉱物:化石または地蝋(オゾセライト、セレシン、モンタン);石油ワックス(パラフィン、微結晶質)(スラックまたはスケールワックス)である。合成の場合は、(1)エチレンポリマーおよびポリオールエーテルエステル(CARBOWAX、ソルビトール)、(2)塩素化ナフタレン(HALOWAX)、(3)炭化水素タイプ、即ちフィッシャー−トロプシュ合成である。
そのような市販の材料およびその供給源の例には、ポリエチレンおよびポリプロピレンワックスと、それらの修飾誘導体(modified derivative)が含まれる。ポリエチレンワックスの一例は、Baker−Petrolite Corporation製のPOLYWAX 1000である。この材料は、分子量分布が狭く、したがって融解分布が狭い、ほぼ結晶質のポリエチレンワックスである。この材料は、融解温度のすぐ上になるまで低融解粘度のままであり、これは粒子の球状化に望ましい性質である。その他の例には、POLYWAX 400やPOLYWAX 500、POLYWAX 600、POLYWAX 655、POLYWAX 725、POLYWAX 850などの、より低い分子量のPOLYWAX材料、ならびにPOLYWAX 2000やPOLYWAX 3000などの、より高い分子量のPOLYWAX材料が含まれる。市販されているポリエチレンワックスのその他の例には、Clariantから入手可能なLICOWAX製品ラインの構成要素が含まれる。そのような材料の例には、LICOWAX PA520S、LICOWAX PE130、およびLICOWAX PE520、ならびにCERIDUST 230やCERIDUST 3615、CERIDUST 3620、およびCERIDUST 6071などの微粉化ポリエチレンワックスが含まれる。
市販されているモンタンワックスの例には、全てClariantから入手可能なLICOLUB CaW 3、LICOWAX E、LICOWAX OPが含まれる。
市販されている合成形態のカルナウバワックスは、Baker−Petrolite Corporationから入手可能なPETRONAUBA Cである。
ポリプロピレンワックスの例には、LICOMONT AR504、LICOWAX PP230、CERIDUST 6071、CERIDUST 6072、CERIDUST 6721(Clariant)が含まれる。
修飾ポリエチレンワックスの例には、UNILIN 350、UNILIN 425、UNILIN 550、およびUNILIN 700(Baker−Petrolite Corporation)を含むUNILINアルコールなどの直鎖状アルコールワックス;UNICID 350、UNICID 425、UNICID 550、およびUNICID 700(Baker−Petrolite Corporation)を含むUNICIDカルボン酸ポリマーなどの直鎖状カルボン酸;CARDIS 314、CARDIS 36、CARDIS 320(Baker−Petrolite Corporation)などの酸化ポリマー材料、およびPETROLITE C−8500やPETROLITE C−7500、PETROLITE E−2020、PETROLITE C−9500、PETROLITE E−1040(Baker−Petrolite Corporation)などの酸化ポリエチレンワックスが含まれる。
さらにワックスの他に、その他の低重合体を含めた種々のポリマー材料も、それによって所望の性質および特徴が生成される限り、本明細書で利用することができる。そのような追加のポリマーの例には、例えば、無水マレイン酸−エチレンコポリマー、無水マレイン酸ポリプロピレンコポリマー、ナイロン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ(クロロメチルスチレン)、およびポリメチルメタクリレートなどのアクリレートが含まれる。
市販されている無水マレイン酸−エチレンコポリマーの例には、CERAMER 1608やCERAMER 1251、CERAMER 67、およびCERAMER 5005(Baker−Petrolite Corporation)などのCERAMERポリマーが含まれる。市販されているマレイン酸基ポリプロピレンポリマー(maleic functional polypropylene polymer)の例には、X−10036およびX−10016(Baker−Petrolite Corporation)が含まれる。市販されているプロピレン−エチレンコポリマーの例には、PETROLITE EP−700やPETROLITE EP−1104、PETROLITE EP−1100、およびPETROLITE EP−1200(Baker−Petrolite Corporation)などのPETROLITEコポリマーが含まれる。
複合粒子は、全重量で約25%から約90%、例えば全重量で約35%から約80%、または全重量で約35%から約70%の犠牲結合剤の粒子を有するものでよい。
複合粒子は、何組かのディスプレイ媒体粒子と犠牲結合剤とをブレンドし、そこから所望のサイズの複合粒子を形成することによって、形成する。任意の適切なブレンドおよび粒子形成プロセスを使用することができる。
複合粒子の形成後、適切な量の複合粒子、例えば結合剤層の約10重量%から約80重量%、例えば結合剤層の約10重量%から約70重量%または約20重量%から約65重量%を、結合剤層の結合剤材料と混合する。次いで所望の厚さの結合剤層を、任意の適切な層形成法によって形成することができる。
結合剤層の結合剤として、任意の光学的に透明な材料を使用することができる。例えば、マイクロカプセルと共に使用される上述の結合剤のいずれかを使用することができる。実施形態では、結合剤層は、犠牲的ポリマー材料を抽出してキャビティを形成するために、流体73によって可塑化または膨潤可能であることが望ましい。結合剤層は、流体73によって分解されるべきではない。これを実現する手段は、分解することなく溶媒で膨潤できるように、結合剤層を架橋することである。ポリマーシートを形成するために実施形態で使用されるポリマー材料には、例えば、RTVシリコーンやDow Corning製SYLGARDシリコーンエラストマーのいずれかのようなエラストマー材料、熱またはUV硬化性ポリウレタン樹脂、熱またはUV硬化性エポキシ樹脂から選択された1種以上のポリマー材料と、1種以上の硬化剤とを含めることができる。硬化は、熱やUV、水分、電子線、またはγ放射線などの任意の適切な方法によって実現することができる。柔軟性が望まれる場合は、シリコーンエラストマーの使用が効果的である。しかし、例えばポリエチレンやポリエステル、エポキシ、ポリウレタン、ポリスチレン、プレキシガラス、およびこれらの混合物などの、追加の光学的に透明な結合剤材料を使用してもよい。
結合剤層、したがってディスプレイ装置のディスプレイ層は、約5から約1000μmの厚さ、例えば約10から約500μm、または約20から約350μmの厚さを有することができる。
結合剤層では、複合粒子は、透明結合剤層内にキャビティを生成する鋳型として働く。1つ以上の層に形成された後、この1つ以上の結合剤層を、内部に埋め込まれた複合粒子から犠牲結合剤を除去する処理にかける。これには例えば、犠牲結合剤を溶解する溶媒処理手順、犠牲結合剤を融解し除去するための高温での処理、およびこれらの組合せなどを含めることができる。例えばこのシートを、ディスプレイ媒体の流体の存在下で、超音波処理にかけることができる。犠牲結合剤は、結合剤層の外部に拡散し、複合粒子により形成されたキャビティ内にディスプレイ媒体粒子が残る。犠牲結合剤の除去ステップを、ディスプレイ媒体の流体を使用して実施する場合、犠牲結合剤はディスプレイ媒体の流体に置き換えられ、したがってディスプレイ媒体が充填されたキャビティが残る。あるいは結合剤層は、犠牲結合剤の除去ステップの後に、ディスプレイ媒体の流体で膨潤し、粒子が入っているキャビティをディスプレイ媒体流体で充填することができる。
実施形態では、ディスプレイ装置を、吸収性バックプレーンを含むように、例えば光吸収性バックプレーンを含むように作製してもよい。ITO被覆ガラスやMYLARなどのITO被覆ポリマーのような、実質的に透明な基板を有する非常に薄いディスプレイ装置は、低光学密度を示し、彩度の低い色ざめ(色あせ)(washed out)現象を示す可能性がある。吸収性の高いバックプレーンは、装置を通した光透過率を低下させることができ、それによって、ディスプレイの色あせ現象が無くなる。コントラストはより大きく、彩度はより高く見える。
吸収性バックプレーンは、望ましくは黒色を有することができる。これは、任意の適切な方法によって実現することができる。例えば、黒色フィルムまたはペイントを、透明基板の背面に付加することができる。吸収性バックプレーンは、装置を形成する前または後に、例えば、ディスプレイ装置に対し基板および/又はフィルムアセンブリへのグリッドパターンの形成前に、あるいは装置の組立て後であるが電極取り付け前に、適用することができる。また、黒などの暗色を与える着色剤は、導電性基板が導電層としてかつ吸収性バックプレーンとして働くように、導電性基板層そのものに直接組み込むこともできる。
ディスプレイ装置は、カラーフィルタを含んでもよい。カラーフィルタは、ディスプレイ層上に、または上部導電性基板上に、または間にディスプレイ媒体を有する上部導電性基板とディスプレイ層との間に配置することができる。カラーフィルタは、ディスプレイ装置が他の方法で2色性能を有する場合、例えば、1組の白色粒子が着色された流体、例えば黒色の流体に加えられたものを備えることができ、または2種の異なる着色粒子、例えば黒色粒子および白色粒子がディスプレイ流体に含まれるものを備える場合に有用である。カラーフィルタは、そのようなディスイプレイ装置にフルカラー性能を与えることができ、例えば、以下に述べるように2色性能を全8色に増やすことができる。
マルチカラーディスプレイは、こうして、種々のカラーのフィルタ、例えば赤、緑、青、黄、シアン、またはマゼンタなどのフィルタを、個別セルの観察側に配置することによって、実現することができる。赤、緑、および青の色のカラーフィルタを使用できることが有利である。さらにカラーフィルタは、種々の色のストライプを含むことができる。カラーフィルタは、適切な色が依然として実質的に透明なままであるように、顔料や染料、または顔料と染料の混合物などの着色剤で染色した透明ポリマーフィルムなどの透明材料を有することが望ましい。したがって着色剤は、カラーフィルタの透明材料中に、約0.1重量%から約10重量%、例えば約0.5重量%から約5重量%の量で存在することができる。
適切な数の色切替え可能貯蔵部を内部に含むディスプレイ装置のセル上に、カラーフィルタを配置することによって、マルチカラーを実現することができる。例えば、カラーフィルタの各色が、独立駆動されるように対応付けられたセルの、切替え可能な部分を有する場合、マルチカラーを実現することができる。換言すると、カラーフィルタの各着色セクションは、以下にさらに十分説明されるように、導電性基板を介して独立に処理することができるディスプレイ層の下層セクションに関連付けられており、その結果、ディスプレイ層の各セクションを制御することにより、表示される色を制御することができるようになされている。
実施形態では、カラーフィルタ層は、それぞれがカラーフィルタの異なる色を有する複数のカラーフィルタセクションを含む。このように、より大きなフルカラーディスプレイは、この装置によって作製することができる。これらの実施形態では、カラーフィルタセクションは、それぞれをディスプレイの画素に対応させることができる。したがってカラーフィルタ層は、例えば約2から約100000000個、または場合によってはそれ以上、例えば約100から約50000000個、または約1000から約10000000個のカラーフィルタセクションを含むことができる。
図16は、内部に黒色粒子および白色粒子の個別セル84を備えたディスプレイ層82を含む、ディスプレイ装置80を示す。カラーフィルタ85をセル上に配置し、このカラーフィルタは、赤86、緑87、および青88のストライプを含んでいる。このように、8色を表示することができる。例えば赤は、赤のストライプの下に白色粒子83を表示するように駆動し、青および緑の下に黒81を表示するようにセルを駆動することによって表示できる。同様に、緑および青は、カラーフィルタのこれらそれぞれのストライプの下に白色粒子を表示すると共に、他の2色のストライプの下で黒を表示することによって、同様に表示できる。黄は、青の下を黒とし、白を赤および緑の下を白とすることによって得ることができる。シアンは、白色粒子を緑および青のストライプの下に表示すると共に、黒を赤の下に表示することによって得ることができる。マゼンタは、白をカラーフィルタの赤および青のストライプの下に、かつ黒を緑の下に表示することによって、得ることができる。白は、カラーフィルタの全ストライプの下を白色粒子とすることで表示され、黒は、全カラーフィルタ下を黒とすることで表示される。異なるカラーフィルタ色を選択する場合、当然ながらその他の色を表現できる。
ディスプレイ媒体
次に、電気泳動ディスプレイ装置で使用される電気泳動ディスプレイ媒体の、様々な実施形態について述べる。
実施形態では、ディスプレイ媒体は、少なくとも1種の流体と、この流体中に分散された少なくとも1組の、例えば少なくとも2組の、例えば2組から10組、または2組から4組の着色粒子とを備える。
本明細書の実施形態では、ディスプレイ媒体は、流体系に分散された1組以上の着色粒子を含む。流体は、クリア(清澄)/透明でよく、または目に見える色、例えば内部に分散された何組かの粒子によって示される色から、種々の対比色を示すことができる。着色流体は、典型的には1組の着色粒子、例えば白色粒子を用いるディスプレイで使用されるが、このときの流体の色は、白以外の対比色である。
実施形態では、ディスプレイ媒体の流体およびその内部にある1組以上の粒子は、実質的に一致した密度を有することができ、例えばこれら材料の密度は、互いに約10%以内であり、またはより具体的には互いに5%以内であり、または互いに2%以内である。その他の実施形態では、流体は、異なる密度を有する2種の不混合性流体、即ちその第2の不混和性流体よりも小さい密度を有する第1の不混合性流体が第2の不混合性流体の上部に存在するように、これら2種の不混合性流体を含むことができ、粒子の組のそれぞれは、粒子が2種の不混和性流体の間の界面に存在するように、2種の不混合性流体の密度の間の密度を有する。
流体は、ディスプレイ媒体を約10重量%から約95重量%、例えばディスプレイ媒体の約30重量%から約90重量%、または約40重量%から約80重量%含むことができる。
流体は、電気泳動ディスプレイで使用される、当技術分野で知られている任意の適切な流体からなるものでよい。流体は、例えば液体状態の材料を指し、気体でも空気でもない。当然ながら、空気または任意のその他の気体がディスプレイ装置の貯蔵部に存在してもよいが、ディスプレイ媒体の流体は、液体状態の流体を指す。どの流体を選ぶかは、化学的不活性、内部に懸濁させる粒子に一致した密度、および/または粒子との化学的適合性(相溶性)(chemical compatibility)という問題を基にすることができる。実施形態では、懸濁流体は、低誘電率を有することができる(例えば約4以下であって、約0.5から約2など)。流体の粘度は、例えば電界の影響下、内部で粒子を移動させるために、操作温度では比較的低くてよい。実施形態では、流体は、室温程度(約23℃から約27℃)で約0.25センチストークス(1ストークス=10−4m2/s)から約10センチストークスの範囲、例えば約0.5センチストークスから約5センチストークス、または約1センチストークスから約2センチストークスの動粘性率(kinematic viscosity)を有することができる。流体は誘電性でよく、実質的にイオンを含まなくてよい。流体は、内部の着色粒子に対して最小限の溶媒動作を備えることもでき、比重は、着色粒子に実質的に等しく、例えば互いに約10%以内である。さらに流体は、一部のポリマーに対して貧溶媒となるように選択することができ、これは、粒子の製作に役立つポリマー材料の範囲を増大させるので、粒子を製作する際に使用するのに有利である。
流体は、例えば同時係属出願第11/169924号に記載されるように、少なくとも約35℃の融点温度を有する熱可逆的ゲル化剤を内部に含むことができる。
ハロゲン化有機溶媒や、飽和直鎖状または分岐状炭化水素、シリコーン油、および低分子量ハロゲン含有ポリマーなどの有機溶媒は、使用することができる流体のいくつかの適切なタイプである。有機溶媒には、例えば、デカンエポキシドやドデカンエポキシドなどのエポキシド、例えばシクロヘキシルビニルエーテルなどのビニルエーテル、および例えばトルエンやナフタレンなどの芳香族炭化水素を含めることができる。ハロゲン化有機溶媒には、例えば、テトラフルオロジブロモエチレンやテトラクロロエチレン、トリフルオロクロロエチレン、1,2,4−トリクロロベンゼン、四塩化炭素、およびこれらの混合物などを含めることができる。これらの材料は、高い密度を有することができる。炭化水素には、例えば、デカン、ドデカン、テトラデカン、キシレン、トルエン、ヘキサン、シクロへキサン、ベンゼン、脂肪族炭化水素をISOPAR(商標)(Exxon)、NORPAR(商標)(Exxon製のノルマルパラフィン系液体のシリーズ)、SHELL−SOL(商標)(Shell)、およびSOL−TROL(商標)(Shell)シリーズに溶かしたもの、ナフサ、およびその他の石油溶媒を含めることができる。これらの材料は、低い密度を有することができる。シリコーン油の例には、オクタメチルシクロシロキサン、およびより高い分子量の環状シロキサン、ポリ(メチルフェニルシロキサン)、ヘキサメチルジシロキサン、およびポリジメチルシロキサンが含まれる。これらの材料は、低い密度を有することができる。低分子量のハロゲン含有ポリマーには、例えば、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)ポリマーまたはKRYTOX(商標)ポリマー(Dupont)を含めることができる。
典型的な場合、ISOPAR Mなどの炭化水素流体は、低コストであり、絶縁耐性が良好であり、揮発性が低く、かつ反応性がないので、電気泳動インクの用途で使用される。
実施形態では、例えば非架橋エマルジョン凝集粒子をディスプレイ媒体の着色粒子として使用する場合、および/または脂肪族炭化水素の存在下で粒子表面から脱着する可能性のある、表面コーティングでの処理による電荷を着色粒子に与える場合に、脂肪族炭化水素が性能の劣化を引き起こす可能性がある。したがって、ディスプレイ媒体の流体として、シリコーン流体などの非膨潤流体を使用することが望ましいと考えられる。市販のシリコーン流体には、DOW 200、即ちDow Corningから入手可能なポリジメチルシロキサンポリマーが含まれる。適切なシリコーン流体のその他の例には、DMS−T00、DMS−T01、DMS−T01.5、DMS−T02、DMS−T03、DMS−T05、DMS−T07、DMS−T11など、Gelest Corporationからトリメチルシロキシ末端(trimethylsiloxy terminated)流体として入手可能なポリジメチルシロキサン流体;SIO6700.0、SID2650.0、SID4625.0(それぞれD4、D5、およびD6流体としても知られる)などのシクロメチコーン;PMM−0011、PDM−7040などのフェニルメチルシロキサン;SIB1816.0などのフルオロシリコーン;DES−T03、DES−T11などのポリジエチルシロキサン;SIP6827.0などの分岐状で低粘度のフェニルトリス(トリメチルシロキシ)シラン流体、SIP6722.8などのフェネチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン流体などが含まれる。
着色される場合、流体は、内部に存在する染料および/または分散性顔料などの適切な分散性着色剤を包含することも含めた、当技術分野での任意の適切な手段によって着色することができる。
実施形態では、流体は、電荷制御添加剤と、ディスプレイ媒体および/またはそこに分散される粒子の帯電動作に影響を及ぼす可能性のあるその他のイオン種とを、実質的に含まない。しかしその他の実施形態では、流体は、表面エネルギーまたは粒子の電荷を変化させる表面改質剤や、電荷制御剤、分散剤、および/または界面活性剤などの添加剤を含有することができる。
ディスプレイ媒体は、2種の不混合性液体を有してもよい。そのような2層流体系は、密度が異なりかつ互いに不混合性である2種の流体を使用して実現することができる。例えば、3MのフルオロエーテルおよびExxonのISOPAR(商標)は、不混合性流体の適切な組合せである。より密度の高いフルオロエーテルが底部に存在するのに対し、より密度の低いISOPAR(商標)が上部に存在する。ディスプレイ媒体の粒子は、2種の不混合性液体の密度の間の値を有することができ、このディスプレイ媒体の粒子は2層の間の界面に存在する。
2種の不混合性液体を使用する利点としては、粒子の静止部分(the rest position of the particles)が、ディスプレイ液体が入っている貯蔵部の底面ではなくて2種の不混合性液体の界面(貯蔵部の中間部分付近でよい)にあることを含めることができる。このため、粒子と貯蔵部底面との接着の可能性を回避することができる。さらに粒子は、観察者に異なる色を表示するために、切替え位置にある貯蔵部の距離の一部しか移動する必要がないので、切替え時間をより速くすることができ、その界面で静止している粒子は、底面で静止している粒子に比べてより容易に離れる(遊離する:break loose)ことができ、そのため粒子の安定性および製品寿命を増大させることができる。
ディスプレイ媒体の流体中に分散される粒子の組の様々な実施形態について、次に述べる。
実施形態では、ディスプレイ媒体が、実質的に同じ色を示す少なくとも1組の粒子を含む。ディスプレイ媒体は、流体中に分散された1組の着色粒子を含むことができ、少なくとも2組、例えば2組から10組または2組から4組の異なる着色粒子を分散させたものも含まれる。色は、例えば電磁スペクトルの波長範囲内にある、全体的な吸収特性を指す。本明細書で実質的に同じ色は、例えばこの組のその他の粒子と実質的に同じ色相およびコントラスト(暗/明)を示す粒子を指す。ディスプレイ媒体中の、異なる粒子の組の着色粒子は、互いに異なる色、即ち異なる吸収特性を示す。例えば、第1の粒子の組が黄色を示す場合、第2の異なる色の粒子の組は、異なる色調(shade)(色相/コントラスト)の黄色、または全く異なる色、例えばシアンやマゼンタなどを示すことになる。
ディスプレイ媒体は、2組の異なる着色粒子、例えば黒色粒子および白色粒子を含むことができる。実施形態では、ディスプレイ媒体は、少なくとも3組の異なる着色粒子を含む。例として、3組の着色粒子は、減法三原色である、黄、シアン、およびマゼンタを含むことができ、または赤、青、および緑を含むことができる。一例の、4組の異なる着色粒子を含有するディスプレイ媒体は、黄、シアン、マゼンタ、および黒を含むことができる。例えば高輝度発色のための、追加の異なる着色粒子の組は、本明細書に記載される任意の実施形態で、追加の着色粒子の組として含めることができる。
ディスプレイ媒体中の同じ着色粒子の各組は、ディスプレイ媒体の約5重量%から約50重量%、例えば約5重量%から約40重量%、または約5重量%から約30重量%を構成することができる。
実施形態では、例えば導電率が約10−11S/mから約10−15S/m程度、例えば約10−12から約10−14S/m、または約10−12から約10−13S/mである、低電気伝導率の電気泳動ディスプレイ媒体が記述されている。したがってディスプレイ媒体の導電率は、誘電性流体の導電率に匹敵する。ディスプレイ媒体の粒子は、そこに高い電界を印加することによって帯電するようになり、これを電界誘起(field-induced)帯電またはin situ帯電と呼んでもよく、その場合は粒子の帯電は、例えば電界強度および帯電時間(または帯電サイクル数)に依存する。帯電後、粒子は、1g当たり数マイクロクーロン(μC)程度(即ち10−6C/g程度)、例えば約±0.1から約±20μC/g、約±0.2から約±10μC/g、または約±0.3から約±5μC/gの電荷(電荷と質量の比)を有することができる。
従来のディスプレイ媒体では、粒子は典型的な場合、非水性インク分散系の調製中に、イオン解離が可能な電荷制御剤を流体に添加することによって帯電させた。誘電性流体中での、電荷制御剤の正および負のイオン種への解離の結果、粒子は一方の極性のイオンを優先的に表面吸着し、したがってこの粒子は帯電するようになる。得られる分散系は、帯電粒子、過剰な遊離イオン(free ion)、および対イオンを含んだ粒子の複合混合物を含有する。過剰な遊離イオンが存在するために、電気泳動インクは高電気伝導率であることも特徴とするが、この電気伝導率は、添加される電荷制御剤の濃度と共に増大し、典型的には誘電性流体に比べて100〜1000倍高くなる。インクの導電率が高いと電力消費量も増大し、ディスプレイの切替え速度がより遅くなる可能性がある。さらに、ディスプレイ媒体中に過剰な遊離イオンが存在すると、使用中の粒子同士の衝突中に、粒子の多くが誤った符号/極性に切り替わる可能性があり、そのため画質および応答時間が低下する可能性がある。
したがって本明細書の実施形態の、流体および粒子の組を内部に含むディスプレイ媒体は、電荷制御添加剤と、同様にディスプレイ媒体の帯電特性および/または導電率に影響を与える過剰なイオン種とを、実質的に含まないように作製することができる。本明細書で実質的にイオンを含まないとは、例えば前述の導電率の値を実現することができる程度まで、イオン種を含まないディスプレイ媒体を指す。その結果、本明細書のディスプレイ媒体は、前述の低導電率特性を示すことができる。
ディスプレイ媒体中に電荷制御添加剤を所望通り存在させない結果、ディスプレイ媒体の粒子の組の粒子は、その他の方法によって低帯電特性を示す能力を含むように作製する必要がある。これは例えば、界面活性剤および/または水の存在下で粒子を形成することによって実現することができ、その場合、これら材料の少量を、形成中に粒子に組み込むことができる。粒子に電荷を与えることができるその他の成分には、APS(過硫酸アンモニウム)などの重合開始剤、DDT(ドデシルチオール)などの連鎖移動剤、または粒子表面に露出しまたは部分的に露出する可能性のあるポリマー主鎖中の酸性/塩基性官能基が含まれる。これらの材料は、粒子中の電荷種として働くことができ、時間0ではほとんど無視できる電荷を与えるが、これは例えば、以下により詳細に述べるように高電界を印加することによって、上述の低電荷の値まで粒子を帯電させることができる。これらの材料は、粒子の一部であり、ディスプレイ媒体中では実質的に解離せず、それによってディスプレイ媒体は、低い導電率を維持することが可能になる。さらに、例えば媒体中での誤った符合の粒子の発生および/または十分なイオン種の損失により、ディスプレイの性能を経時的に劣化させるイオン種を媒体中に存在させなければならない従来の系とは異なって、本明細書の粒子はイオン種を発生せず、帯電のためにイオン種を存在させる必要がなく、したがってそのような劣化の可能性を回避できる。
ディスプレイ媒体の粒子として、粒子が上記にて論じたように低電荷特性を示すことが可能である限り、任意の適切なプロセスによって作製された任意の粒子を使用することができる。したがって、粒子材料を塊として形成し、次いで破砕し研削して所望の平均粒径にする物理的研削方法と、粒子を反応媒体中で個々に成長させて、所望の平均粒径にする化学的構築方法とは、どちらもトナーの技術分野で周知のタイプの方法であるが、これらの両方によって作製された粒子を使用することができる。粒子は、例えば約5nmから約100μmの平均サイズ、例えば約10nmから約50μm、または約0.5μmから約25μmを有するように作製することができる。粒子は、典型的にはディスプレイ装置の貯蔵部のサイズよりも小さいサイズを有し、したがってディスプレイ媒体は、粒子が貯蔵部内を自由に移動できるように含有されることになる。
粒子は、未処理の顔料、染色された(レーキ処理(laked)された)顔料、顔料/ポリマー複合体、および染色され顔料が付けられた凝集ポリマー粒子などでよい。粒子の着色剤として、染料、顔料、染料の混合物、顔料の混合物、または染料と顔料の混合物を使用することができる。粒子および/または粒子の着色剤は、レーキ処理されまたは染色された顔料を含んでもよく、即ち染料を粒子上に沈殿(precipitate)させたものであり、あるいは、カルシウム、バリウム、またはアルミニウム塩によって沈殿する1種以上のスルホン酸またはカルボン酸系列を含有する、アゾ、トリフェニルメタン、またはアントラキノン構造などの容易に溶解する陰イオン染料の金属塩などの染料で、粒子を染色したものである。
上記粒子の典型的な製造技法は、液体トナーおよびその他の技術分野から得られ、ボールミリング、磨砕、およびジェットミリングなどが含まれる。顔料付きポリマー粒子は、例えば顔料をポリマー中に配合することによって作製することができる。次いで複合材料を(湿式または乾式)研削して、所望のサイズにする。次いで任意選択で、担体液体に添加し、高剪断(shear)下で数時間ミリング処理して、最終的な粒径および/または粒径分布にする。
粒子の形成に使用することができる化学プロセスには、例えば、エマルジョン凝集、分散重合、ミニまたはマイクロエマルジョン重合、懸濁重合、沈殿、相分離、溶媒蒸発、in situ重合、または任意のマイクロカプセル化プロセスが含まれる。
顔料付き粒子に使用することができるポリマーには、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、フェノール樹脂、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、エチレンアクリル酸またはメタクリル酸コポリマー、アクリルコポリマー、およびターポリマーなどが含まれる。特定の例には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイソブチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリラウリルメタクリレート、ポリステアリルメタクリレート、ポリイソボルニルメタクリレート、ポリ−t−ブチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリアクリロニトリル、およびこれら材料の2種以上のコポリマーが含まれる。
顔料/ポリマー複合粒子、例えば顔料/ポリマーの研削/磨砕などの物理−化学的プロセスによって生成され、あるいは表面処理/表面に対する安定化ポリマー基のグラフト処理によって生成された複合粒子を、本明細書で使用することができるが、そのような複合粒子は、様々な帯電特性を示す多分散性(polydisperse)粒子を有することができる。したがって実施形態では、ディスプレイ媒体用の粒子がエマルジョン凝集粒子であり、例えば、ポリエステル樹脂ベースのエマルジョン凝集粒子、およびスチレン−アクリレートまたはアクリレート樹脂ベースのエマルジョン凝集粒子が含まれる。そのような粒子は化学的に成長され、サイズが実質的に単分散性になり、かつ形状が実質的に球状になる傾向がある。エマルジョン凝集粒子に関する別の利点は、粒子表面が、結合剤樹脂によって実質的に完全に不動態化(passivate)することであり、粒子の電荷に対する顔料などの着色剤の寄与を無くすことができる。
エマルジョン凝集粒子に適切なポリエステル樹脂の例には、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリペンチレンテレフタレート、ポリヘキサレンテレフタレート、ポリヘプタデンテレフタレート、ポリオクタレンテレフタレート、ポリエチレンセバケート、ポリプロピレンセバケート、ポリブチレンセバケート、ポリエチレンアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリペンチレンアジペート、ポリヘキサレンアジペート、ポリヘプタデンアジペート、ポリオクタレンアジペート、ポリエチレングルタレート、ポリプロピレングルタレート、ポリブチレングルタレート、ポリペンチレングルタレート、ポリヘキサレングルタレート、ポリヘプタデングルタレート、ポリオクタレングルタレート、ポリエチレンピメレート、ポリプロピレンピメレート、ポリブチレンピメレート、ポリペンチレンピメレート、ポリヘキサレンピメレート、ポリヘプタデンピメレート、ポリ(プロポキシル化ビスフェノールフマレート)、ポリ(プロポキシル化ビスフェノールスクシネート)、ポリ(プロポキシル化ビスフェノールアジペート)、ポリ(プロポキシル化ビスフェノールグルタレート)、これらの混合物、コポリマー、または組合せなどが含まれる。
エマルジョン凝集プロセスにより形成されたポリエステルトナー粒子は、米国特許第5593807号、米国特許第5290654号、米国特許第5308734号、米国特許第5370963号などのいくつかの特許に示されている。適切なポリエステル粒子の別の例には、米国特許第6387581号や第6395445号などのいくつかの特許に開示されるように、スルホン化リチウムおよび/またはナトリウムポリエステル樹脂を有するものが含まれる。ポリエステルは、前述の参考文献に記載されるポリエステル材料の、いずれかを含むことができる。
ポリエステルベースのエマルジョン凝集粒子を調製するための例示的プロセスは、ポリエステル樹脂エマルジョン、例えば任意選択で1種以上の界面活性剤を含有する水性ベースのエマルジョンを反応器に投入し、この反応器に着色剤を撹拌しながら添加することを含むことができる。ワックス分散系を任意選択で添加してよい。この混合物を撹拌し、所望の温度、例えば約40℃から70℃に加熱し、例えば約45℃から約70℃または約40℃から約65℃に加熱する。凝集剤の溶液を混合物中にポンプ送出して、ポリエステル粒子の成長/凝集を開始させる。次いで追加量の樹脂エマルジョンを添加することができ、この場合、染料や顔料、またはこれらの混合物などの着色剤を実質的に含まない殻を、核凝集着色粒子表面に形成することが望ましい。次いで反応器の温度を、反応の終わりに向けて例えば約45℃から約75℃に上昇させることができ、例えば約50℃から約75℃または約45℃から約70℃に上昇させて、適切な球状化および凝集によって所望の平均粒径および形状を実現させる。このスラリを冷却し、洗浄し、乾燥させることができる。
エマルジョン凝集粒子に適したアクリレート樹脂結合剤の例には、例えば、ポリ(スチレン−アルキルアクリレート)、ポリ(スチレン−1,3−ジエン)、ポリ(スチレン−アルキルメタクリレート)、ポリ(スチレン−アルキルアクリレート−アクリル酸)、ポリ(スチレン−1,3−ジエン−アクリル酸)、ポリ(スチレン−アルキルメタクリレート−アクリル酸)、ポリ(アルキルメタクリレート−アルキルアクリレート)、ポリ(アルキルメタクリレート−アリールアクリレート)、ポリ(アリールメタクリレート−アルキルアクリレート)、ポリ(アルキルメタクリレート−アクリル酸)、ポリ(スチレン−アルキルアクリレート−アクリロニトリル−アクリル酸)、ポリ(スチレン−1,3−ジエン−アクリロニトリル−アクリル酸)、およびポリ(アルキルアクリレート−アクリロニトリル−アクリル酸)などのポリマーが含まれ、ラテックスは、ポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(メチルスチレン−ブタジエン)、ポリ(メチルメタクリレート−ブタジエン)、ポリ(エチルメタクリレート−ブタジエン)、ポリ(プロピルメタクリレート−ブタジエン)、ポリ(ブチルメタクリレート−ブタジエン)、ポリ(メチルアクリレート−ブタジエン)、ポリ(エチルアクリレート−ブタジエン)、ポリ(プロピルアクリレート−ブタジエン)、ポリ(ブチルアクリレート−ブタジエン)、ポリ(スチレン−イソプレン)、ポリ(メチルスチレン−イソプレン)、ポリ(メチルメタクリレート−イソプレン)、ポリ(エチルメタクリレート−イソプレン)、ポリ(プロピルメタクリレート−イソプレン)、ポリ(ブチルメタクリレート−イソプレン)、ポリ(メチルアクリレート−イソプレン)、ポリ(エチルアクリレート−イソプレン)、ポリ(プロピルアクリレート−イソプレン)、ポリ(ブチルアクリレート−イソプレン);ポリ(スチレン−プロピルアクリレート)、ポリ(スチレン−ブチルアクリレート)、ポリ(スチレン−ブタジエン−アクリル酸)、ポリ(スチレン−ブタジエン−メタクリル酸)、ポリ(スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル−アクリル酸)、ポリ(スチレン−ブチルアクリレート−アクリル酸)、ポリ(スチレン−ブチルアクリレート−メタクリル酸)、ポリ(スチレン−ブチルアクリレート−アクリロニトリル)、およびポリ(スチレン−ブチルアクリレート−アクリロニトリル−アクリル酸)からなる群から選択された樹脂を含有する。
エマルジョン凝集プロセスにより生成されるアクリレートトナー粒子は、米国特許第5278020号、米国特許第5346797号、米国特許第5344738号、米国特許第5403693号、米国特許第5418108号、および米国特許第5364729号などのいくつかの特許に示されている。アクリレートは、前述の参考文献に記載されている材料のいずれかを含むことができる。実施形態では、アクリレートポリマーは、β−カルボキシエチルアクリレートを含むことのできるスチレン−ブチルアクリレートなどのスチレン−アクリレートコポリマーでよい。
したがって結合剤は、特に、スチレン−アルキルアクリレート、例えばスチレン−アクリル酸ブチルコポリマー樹脂、またはスチレン−ブチルアクリレート−β−カルボキシエチルアクリレートポリマー樹脂を含むことができる。
アクリレートポリマー結合剤の作製に使用されるモノマーは、例えばスチレン、メタクリレートやブチルアクリレート、β−カルボキシエチルアクリルレート(β−CEA)などのアクリレート、ブタジエン、イソプレン、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、アクリロニトリル、ジビニルベンゼンなどのベンゼン、および同種のものの、いずれか1種以上を含むことができる。知られている連鎖移動剤は、ポリマーの分子量特性を制御するのに利用することができる。連鎖移動剤の例には、ドデカンチオール、ドデシルメルカプタン、オクタンチオール、四臭化炭素、四塩化炭素など、様々な適切な量のもの、例えばモノマーの約0.1から約10重量%、好ましくはモノマーの約0.2から約5重量%のものが含まれる。また、デカンジオールジアクリレートやジビニルベンゼンなどの架橋剤は、より高い分子量のポリマーを得るために、例えば約0.01重量%から約25重量%、好ましくは約0.5から約10重量%の有効量でモノマー系に含めることができる。
アクリレートベースのエマルジョン凝集粒子を作製するための方法の例は、最初に樹脂エマルジョンを混合するステップを含むことができ、例えば、1種以上の界面活性剤、着色剤、および凝集剤を任意選択で含有する水性ベースのエマルジョンを、樹脂のガラス転移温度(Tg)以上の温度で、例えば通常は約50℃から約80℃の範囲内でありまたは約52℃から約65℃の範囲内である樹脂のTgよりも、5℃から約50℃高い温度で、混合するステップを含むことができる。粒子は、所望のサイズに成長させまたは凝集させる。次いで核凝集着色粒子表面にあって、例えば染料や顔料、またはこれらの混合物などの着色剤を実質的に含まず、本質的には結合剤樹脂からなる、凝集粒子の外殻材料を添加することができ、例えば約0.1から約2ミクロンの厚さを有する殻を凝集粒子表面に形成する。次いで、凝集を、例えば塩基を添加することにより停止させる。次いで、例えば約60℃から約98℃の高温で、適切な形状および形態が得られるまで粒子を凝集させることができる。次いで粒子を、任意選択でさらなる処理にかけ、例えば湿式篩いにかけ、濾過により洗浄し、および/または乾燥する。
上記にて論じたエマルジョン凝集粒子の作製に使用される界面活性剤として、その例には、陰イオン、陽イオン、非イオン性界面活性剤などが含まれる。
トナー調製は、典型的には上記にて詳述したように水性(水)環境で実施し、電気泳動インクは非水性環境(油)である。トナーを調製する場合、過剰な界面活性剤を除去するために、最終的な水洗浄を行う。トナー粒子の表面にありまたは粒子そのものの内部に捕えられた微量の残留界面活性剤は、そのまま存在して粒子の低導電率に寄与する。しかし実際に油の中に入り込む界面活性剤の量は、この界面活性剤は水中にあることを好むので、非常に少ない。その結果、流体媒体は、望ましい低導電率を有する。
実施形態では、エマルジョン凝集粒子は、約0.5から約25μmの平均粒径、例えば約5から約15μmまたは約5から約12μmの平均粒径を有するように作製される。粒径は、任意の適切な装置、例えば従来のコールターカウンタを使用して決定することができる。
エマルジョン凝集粒子は、体積(D84/D50)に関する上限幾何標準偏差(GSD)が約1.1から約1.25の範囲内であるように、実質的に単分散のサイズを有してもよい。全トナー粒子の累積パーセンテージ50%が得られる粒子の直径を、体積D50と定義し、累積パーセンテージ84%が得られる粒子の直径を、体積D84と定義する。これら前述の体積平均粒径分布のインデックスGSDvは、累積分布のD50およびD84を使用して表すことができ、体積平均粒径分布のインデックスGSDvは、(体積D84/体積D50)と表される。トナー粒子の上限GSDv値は、トナー粒子が非常に狭い粒径分布を有するように作製されることを示している。
エマルジョン凝集粒子は、円形に非常に近い状態に作製してもよく、それによって、ディスプレイ媒体中での移動に関してより良好な流動特性が示される。換言すれば、より丸く/より滑らかな粒子は、より高い電気泳動移動度を有し、したがってディスプレイ内での応答時間がより速い。真円度は、粒子が完全な球状にどれくらい近いかの尺度である。真円度1は、完全な円形球状の形を有する粒子であるとみなす。エマルジョン凝集粒子は、約0.92から約0.99の平均真円度、例えば約0.94から約0.98または約0.95から約0.97の真円度を有することができる。真円度は、既知のMalvern Sysmex流動粒子画像分析器FPIA−2100を使用して決定することができる。
実施形態では、粒子の結合剤が、分子量の異なる2種の結合剤材料の混合物からなり、その結果この結合剤は、2峰性(bimodal)分子量分布を有することになる(即ち、少なくとも2つの異なる分子量領域に、分子量のピークを有する)。例えば、結合剤は、第1のより低い分子量結合剤、例えば非架橋結合剤と、第2の高分子量結合剤、例えば架橋結合剤と、を有するものでよい。第1の結合剤は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定したときに、例えば約1000から約30000、より具体的には約5000から約15000の数平均分子量(Mn)と、例えば約1000から約75000、より具体的には約25000から約40000の重量平均分子量(Mw)と、例えば約40℃から約75℃のガラス転移温度とを有することができる。第2の結合剤は、かなり大きい数平均および重量平均分子量、例えば1000000を超えるMwおよびMnと、例えば約35℃から約75℃のガラス転移温度とを有することができる。ガラス転移温度は、例えば結合剤中のアクリレートの量を調節することによって制御することができる。例えば、より高いアクリレート含量は、結合剤のガラス転移温度を低下させることができる。第2の結合剤は、ラテックスの広範なゲル化および高い分子量により、高度に架橋したポリマーであるゲルと呼ぶことができる。この実施形態では、ゲル結合剤は、全結合剤の約0重量%から約50重量の量で、好ましくは全結合剤の約8重量%から約35重量%の量で存在することができる。
第1の、より低い分子量の結合剤は、前述のポリマー結合剤材料のいずれかの中から選択することができる。第2のゲル結合剤は、第1の結合剤と同じかまたは異なってよい。例えば、アクリレート結合剤の場合、第2のゲル結合剤は、ポリ(スチレン−アルキルアクリレート)、ポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(スチレン−イソプレン)、ポリ(スチレン−アルキルメタクリレート)、ポリ(スチレン−アルキルアクリレート−アクリル酸)、ポリ(スチレン−アルキルメタクリレート−アクリル酸)、ポリ(アルキルメタクリレート−アルキルアクリレート)、ポリ(アルキルメタクリレート−アリールアクリレート)、ポリ(アリールメタクリレート−アルキルアクリレート)、ポリ(アルキルメタクリレート−アクリル酸)、ポリ(スチレン−アルキルアクリレート−アクリロニトリルアクリル酸(acrylonitrileacrylic acid))、およびポリ(アルキルアクリレート−アクリロニトリル−アクリル酸)、および/またはこれらの混合物などの、高度に架橋した材料を含むことができる。実施形態では、ゲル結合剤は第1の結合剤と同じであり、どちらもアクリル酸スチレンであり、例えばスチレン−ブチルアクリレート、または、スチレン−スチレンのブチルアクリレート−ブチルアクリレート−β−カルボキシエチルアクリレート(styrene-butyl acrylate of styrene-butyl acrylate-b-carboxy ethyl acrylate)である。より高い分子量の第2のゲル結合剤は、例えば、より大量のスチレンをモノマー系に含むもの、より大量の架橋剤をモノマー系に含むもの、および/またはより少量の連鎖移動剤を含むものにより実現することができる。
さらに別の実施形態では、エマルジョン凝集粒子が、核−殻構造を有する。この実施形態において、核は、上述の粒子材料を有することができ、少なくとも結合剤および着色剤を含む。核粒子が形成され、所望のサイズに凝集すると、薄い外殻が核粒子表面に形成される。殻は、結合剤材料のみを有していていてもよいが、要求があれば、その他の成分を内部に含むことができる。殻は、核粒子のラテックスと同じラテックス樹脂を備えることができる。殻ラテックスは、全結合剤材料の約5から約40重量%の量で、例えば全結合剤材料の約5から約30重量%の量で、核凝集体に添加することができる。殻または凝集体表面のコーティングは、ある厚さを有することができ、その殻の厚さは約0.2から約1.5μmであり、例えば約0.3から約1.2μmまたは約0.5から約1μmである。
存在する場合は核および殻も含めた結合剤の総量は、固形分ベースで、エマルジョン凝集粒子(外部添加剤を除いたトナー粒子)の約60から約95重量%の範囲内でよく、例えば粒子の約70から約98重量%でよい。
粒子は、安定フリーラジカル重合法を介して得られた種粒子から開始して、エマルジョン凝集体により作製してもよい。そのような安定フリーラジカル重合(SFRP)プロセスは、当技術分野で知られており、例えば米国特許第5322912号に記載されている。SFRPプロセスでは、安定フリーラジカル剤が成長鎖を促進させ、その鎖を一時的にしかし可逆的に停止させるので、ポリマーの成長鎖を「擬似リビング」と呼ぶ。これにより、粒子の電荷を高めるモノマーを組み込むことができるブロックコポリマーの形成が、可能になる。このブロック特性に起因するモノマーは、粒子表面に存在することができ(特に親水性モノマーから形成される場合)、したがって粒子の電荷が高まる。そのようなモノマーは、アミノエチルアクリレートまたはメタクリレートなどのアミン、スチレンスルホネートなどのスルホネート、β−カルボキシエチルアクリレートやメタクリレートなどの酸、またはイオン化または4級化することができる任意のヘテロ原子モノマーにすることができる。得られるSFRPのポリマーを水相に分散させて、上記にて論じたエマルジョン凝集プロセスの開始ラテックスを形成する。したがってSFRPは、エマルジョン凝集粒子の結合剤として、上述のポリマーのいずれかを形成するのに使用することができる。
ポリマー結合剤および着色剤の他に、粒子はワックス分散系を含有してもよい。Baker Petroliteから入手可能なPOLYWAX(登録商標)系列のワックスなどの直鎖状ポリエチレンワックスが、有用である。当然ながら、ワックス分散系は、ポリプロピレンワックス、当技術分野で知られているその他のワックス、即ちカルナウバワックスなどを含めたもの、およびワックスの混合物を含んでもよい。トナーは、例えば固形分ベースでワックスの約1から約15重量%の粒子、例えば約3から約12重量%または約5から約10重量%の粒子を含有することができる。
さらに、着色粒子は任意選択で、コロイド状シリカ(コロイダルシリカ)などの凝集および/または流動剤を含有してもよい。適切な任意選択の凝集剤には、周知の凝集剤であるポリ塩化アルミニウム(PAC)および/またはポリスルホケイ酸アルミニウム(PASS)を含めた当技術分野で知られておりまたは使用される任意の凝集剤が含まれる。凝集剤は、外部添加剤を除きかつ乾燥重量ベースで、トナー粒子の0から約3重量%の量で存在し、例えばトナー粒子の0重量%よりも多くかつ約2重量%までの量で、トナー粒子中に存在する。流動剤は、存在する場合には、SNOWTEX OL/OSコロイド状シリカなどの任意のコロイド状シリカでよい。コロイド状シリカは、外部添加剤を除きかつ乾燥重量ベースで、トナー粒子の0から約15重量%の量で、例えばトナー粒子の0重量%よりも多くかつ約10重量%までの量で、トナー粒子中に存在する。
必ずしも必要ではないが、トナーは、米国特許第4338390号に開示されるようなアルキルピリジニウムハロゲン化物、重硫酸塩、有機硫酸塩およびスルホン酸塩化合物であったり、セチルピリジニウムテトラフルオロホウ酸塩、ジステアリルジメチルアンモニウムメチル硫酸塩、アルミニウム塩、または錯体などを含めた第4級アンモニウム化合物など、追加の既知の正または負電荷添加剤を、有効で適切な量で含んでもよく、例えば、トナーの約0.1から約5重量%で含んでもよい。
実施形態では、ディスプレイ媒体に組み込まれる着色粒子の1種以上の組は、架橋エマルジョン凝集粒子を含む。架橋は、例えば熱硬化または放射、例えばUV硬化を含めた任意の適切な方法により実現することができる。架橋は、例えば開始剤と共に、組成物中に架橋可能なモノマーまたはオリゴマー添加剤を含み、この組成物を硬化環境(例えば、熱硬化用の高温または放射線硬化用のUV光)に曝して添加剤の硬化を行うことにより実現される、高分子量状態を指す。組成物のその他の成分、例えばその他の結合剤樹脂成分が、架橋に寄与してもよい。
ゲル含有量(分;content)は、粒子の架橋の程度を定めるのに使用することができる。架橋は、個別のポリマー鎖に比べて著しく増大した強度および低下した溶媒可溶性を有するゲル部分を形成する。ゲル含有量は、架橋しているポリマー粒子のポリマー鎖の割合を指し、それによってゲル網状構造の一部を構成する。実施形態では、粒子は、約10%から約100%、例えば約20から約80%、または約25から約75%のゲル含有量を有することができる。
ポリマー粒子のゲル含有量は、定量的に測定され、例えば連続抽出によって、例えばソックスレー抽出によって測定され、架橋処理後の反応生成物は完結したものであり、それによって架橋ポリマー材料の重量を得ることができる。連続抽出法では、可溶性のポリマーを、典型的にはほとんどの溶媒またはどの溶媒にも溶解しない架橋ポリマーの塊から除去することが可能である。したがって、ポリマーが溶解しかつ架橋部分が不溶である溶媒の使用が、この手順で使用される。架橋ポリマー材料の重量を、連続抽出される材料の全重量で割り、100を掛けることによって、ゲル含有量の値を得ることができる。架橋の程度は、架橋手順の時間および/または強度を制御することによって、および/または粒子中の架橋可能な材料の濃度によって、調節することができる。
上記にて論じたように、ISOPAR Mなどの炭化水素流体は、電気泳動ディスプレイ媒体で使用するのに望ましい流体である。しかし、そのような流体系をエマルジョン凝集粒子の組と共に使用する場合、流体が、例えばエマルジョン凝集樹脂の膨潤を引き起こし、膨潤した粒子からのワックスや表面処理試薬などの成分材料の浸出を引き起し、その結果、装置の劣化が生ずる可能性がある。
架橋可能な粒子は、結合剤である1種以上の架橋添加剤に含めることによって調製できる。上述のエマルジョン凝集粒子形成プロセスの後、トナー粒子を、例えばUV放射線を含めた放射線硬化ステップにかけて架橋プロセスを実施し、その結果、溶媒膨潤に対して優れた耐久性を有し、かつ高温での軟化/融解に対する耐久性も高められた、堅牢な粒子が得られる。
架橋添加剤は、任意のタイプのエマルジョン凝集樹脂結合剤に添加して、これにより粒子をUV架橋性にすることができる。したがって1種以上の架橋添加剤を、アクリレートまたはポリエステルタイプのエマルジョン凝集樹脂に含めることができる。この添加剤は、例えば粒子中の全結合剤の約0.5から約50重量%、例えば約0.5から約25重量%、または約1から約20重量%の量で存在してよい。
架橋添加剤の例には、ジアクリレートやトリアクリレート、テトラアクリレートなどの多官能性アクリレートが含まれる。例えば、多官能性(multifunctional)アクリレートモノマーまたはオリゴマーには、ジアクリレートを含むことができ、このジアクリレートは、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート(Sartomer SR 9003としてAtofinaから入手可能)、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(Sartomer SR 238)、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、脂肪族ジアクリレートオリゴマー(Atofina製CN 132)、脂肪族ウレタンジアクリレート(Atofina製CN 981)、および芳香族ウレタンジアクリレート(Atofina製CN 976)などでり、また、上記多官能性アクリレートモノマー又はオリゴマーには、アミン変性ポリエーテルアクリレート(BASF CorporationからPO 83 F、LR 8869、および/またはLR 8889として入手可能)、トリメチロールプロパントリアクリレート(Sartomer SR 351)、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(Sartomer SR 368)、芳香族ウレタントリアクリレート(Atofina製CN 970)、ジペンタエリスリトールペンタ−/ヘキサ−アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(Sartomer SR 295)、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート(Sartomer SR 494)、およびジペンタエリスリトールペンタアクリレート(Sartomer SR 399)などのトリアクリレートまたは高級官能性モノマーまたはオリゴマー、または前述のいずれかの混合物を含めることができる。適切な架橋添加剤の追加の例には、塩素化ポリエステルアクリレート(Sartomer CN 2100)、アミン変性(amine modified)エポキシアクリレート(Sartomer CN 2100)、芳香族ウレタンアクリレート(Sartomer CN 2901)、およびポリウレタンアクリレート(BASF製Laromer LR 8949)が含まれる。使用することができるその他の不飽和硬化性樹脂は、米国特許公開第2005/0137278A1号に記載されている。
架橋開始剤も、架橋添加剤に含まれる。2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(BASF Lucirin TPOとして入手可能)、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド(BASF Lucirin TPO−Lとして入手可能)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニル−ホスフィンオキシド(Ciba IRGACURE 819として入手可能)およびその他のアシルホスフィン、2−ベンジル2−ジメチルアミノ1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン−1(Ciba IRGACURE 369として入手可能)、チタノセン、およびイソプロピルチオキサントン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2−メチル−1−(4−メチルチオ)フェニル−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン、ジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸エチルエステル、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン、ベンジル−ジメチルケタール、およびこれらの混合物などの光開始剤を使用することができる。アミン相乗剤、例えばエチル−4−ジメチルアミノベンゾエートや2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエートなどを使用してもよい。このリストは完全なものではなく、UV光などの放射線の、所望の波長で露光することによってフリーラジカル反応を開始する、任意の知られている光開始剤を使用することができる。
完全に硬化可能な成分に対する、粒子に含まれる光開始剤の総量は、例えば約0.5から約20重量%、例えば好ましくは約1から約15重量%、または約1から約10重量%でよい。
架橋可能な粒子の作製では、1種以上の架橋添加剤および光開始剤をエマルジョン中に含めるよう変更を加える以外は、粒子を前述のエマルジョン凝集法のいずれかと同じに作製することができる。次いで粒子を、通常通り凝集しおよび/または合体させる。粒子形成の完了後、次いで粒子を熱またはUV放射線などの放射線にかけて、架橋を開始させ実施することができる。放射線硬化の後、粒子は依然として実質的に同じサイズおよび形状を有するままであるが、架橋されており、したがってより高い温度での溶媒および融解に対してはるかに耐久性がある。
実施形態では、ディスプレイ媒体に組み込まれる着色粒子の1組以上が、樹脂に組み込まれた無水マレイン酸および/またはマレイン酸官能基を有するポリマーから得られたエマルジョン凝集粒子を含む。水の存在下では、無水マレイン酸基が加水分解されてカルボン酸基(マレイン酸)になる。粒子の作製に使用されるポリマー樹脂の調製形態に応じて、無水マレイン酸基の加水分解の程度を変えることができる。エマルジョン凝集プロセスでは、導入される酸基がより大きい粒子への凝集を可能にし、それと同時に実質的に均一な負電荷を粒子に与える。換言すれば、エマルジョン凝集プロセスでは、より大きいサイズの粒子をポリマーラテックスから成長させる凝集/合体部位として、酸機能部(酸官能基:acid functionality)を使用する。さらに、この酸機能部(酸官能基)、例えばカルボン(COOH)酸官能基(カルボン酸機能部:carboxylic acid functionality)(カルボキシ基)は、実質的に均一な負電荷を粒子に与えると考えられる。
これらの粒子を使用する利点とは、粒子の負電荷が、この組の粒子の間で実質的に均一であることである。同じ着色粒子組の粒子の中で実質的に均一な電荷とは、例えば、この組のいずれか2個の所与の粒子間での電荷が互いに約20%以内であるような、約10%以内であるような電荷分布を指す。その結果、この組の粒子の全ての電気泳動移動度は実質的に同じであり、この組の粒子は、電界の印加後に実質的に同じ応答時間を有することが可能になる。実質的に均一な電荷、したがって電界の印加後に実質的に均一な移動度および応答時間を確実にすることは、ある組の着色粒子と、他の異なる色の組の着色粒子との意図しない混合を避けるのに有利であるが、それは、例えば着色粒子の組の一部が電界に対して適正に応答せず、異なる組の異なる色の粒子が、ある着色粒子の組と一体化する可能性があるからである。意図される画像の色の劣化は、この組の粒子間での電荷の均一性が、不十分であるために生ずる可能性がある。
無水マレイン酸官能基(maleic anhydride functionality)を有するポリマーの形成は、2005年3月31日出願の出願第11/139543号に記載されている。具体的には、上記にて特定された出願に記載されている、ポリマー/ドナーモノマー、フリーラジカル開始剤、安定フリーラジカル剤、任意選択の添加剤、またはその他の成分のいずれかを、本明細書で適切に使用することができる。無水マレイン酸官能基を含むように作製することができる例示的なポリマー/ドナーモノマーには、例えば、スチレン、ブチルアクリレート、カルボキシエチルアクリレート、およびこれらの混合物などが含まれる。
無水マレイン酸官能基は、ポリマー作製の任意の段階でポリマーに組み込むことができ、マレイン酸への変換率は、調製形態により変えることもできる。例えば無水マレイン酸官能基は、バルク重合ステップで、またはラテックス形成ステップでポリマーに導入することができ、このラテックスは、例えば乳化重合などにより後続の粒子形成で使用されるものである。バルク重合では、その手順を水が存在しない状態で実施し、無水マレイン酸官能基は無反応(不活性)である。この樹脂を乳化してラテックスにする場合、表面の無水マレイン酸基だけが酸の形に変換される。逆に言えば、無水マレイン酸官能基を水性(waterborn)ポリマーラテックスに添加した場合、無水マレイン酸基の全てが加水分解して酸の形になる。粒子は、上記にて論じたエマルジョン凝集手順のいずれかを介し、開始ラテックスとして既に述べたような無水マレイン酸官能性ポリマーラテックスを使用して、乳化重合などによって作製することができる。
エマルジョン凝集プロセスでは、凝集を、水性媒体(水溶性媒体:aqueous medium)中のラテックスを使用して実施する。その結果、無水マレイン酸が加水分解して水性媒体になるので、酸官能基、例えばカルボン酸基が粒子に与えられる。凝集手順に不要な過剰な酸官能基は、粒子によって示される負電荷をもたらす可能性がある。
実施形態では、ディスプレイ媒体に組み込まれた1組以上、例えば1組から10組、例えば1組から4組または2組から4組の着色粒子が、粒子を含む。該粒子は、例えばエマルジョン凝集ポリエステルまたはエマルジョン凝集アクリレート粒子などのエマルジョン凝集粒子を含み、その表面は陽イオンポリマーで処理されて、実質的に均一な正電荷をこの粒子の組の粒子に与えている。したがって、これら粒子を使用する際の利点とは、粒子の正電荷が、この組の粒子の間で実質的に均一であることである。同じ着色粒子組の粒子の間で実質的に均一な電荷とは、例えば、この組のいずれか2個の異なる粒子の間の電荷が互いに約20%以内、例えば約10%以内にあるような電荷分布を指す。その結果、この組の粒子の全ての電気泳動移動度は実質的に同じであり、この組の粒子は、電界の印加後に実質的に同じ応答時間を有することが可能になる。実質的に均一な電荷、したがって電界の印加後に実質的に均一な移動度および応答時間を確実にすることは、1組の着色粒子と1組の別の色の粒子との意図しない混合を避けるのに有利であるが、それは、例えば着色粒子の組の一部が電界に対して適正に応答せず、異なる組の異なる色の粒子が着色粒子の組に混ざってしまう可能性があるからである。意図される画像の色の低下は、この組の粒子間での電荷の均一性が、不十分であるために生ずる可能性がある。
実施形態では、陽イオンポリマーが、粒子に正電荷を与えるメタクリレートポリマーまたはコポリマーであり、例えば、EUDRAGIT EPO(Rohm America)などのアミノメタクリレートポリマーである。選択することができる特定の陽イオンポリマーのその他の例は、少量の第4級アンモニウム基を有するアクリル酸およびメタクリル酸エステルから合成されたコポリマーである、EUDRAGIT RLおよびRS(Rohm Pharma)である。EUDRAGIT RLおよびRSは、アンモニウム基と残りの中性(メタ)アクリル酸エステルとのモル比が異なっている(それぞれ1:20および1:40)。EUDRAGIT NEは、エチルアクリレートおよびメチルメタクリレートをベースにした中性コポリマーの水性分散系である。EUDRAGIT RD 100は、ナトリウムカルボキシメチルセルロースと組み合わせたアクリレートおよびメタクリレートと第4級アンモニウム基とのコポリマーの粉末形態である。別の陽イオンポリマーは、ジメチルアミノエチルメタクリレートおよび中性メタクリル酸エステルのコポリマーであるEUDRAGIT RTM E(Rohm Pharma)である。
使用される陽イオンポリマーの濃度を変えることによって、帯電の程度を変えることができる。例えば、陽イオンポリマーがより低い濃度であることは、粒子表面の正電荷が少ないことを意味する。粒子表面に、陽イオンポリマーの実質的に均一なコーティングを生成することによって、同一の表面電荷を得ることができ、粒子の移動度は全ての粒子に関して同じである。巨視的に、トナー粒子は全て一度に移動するように見え、より迅速で清浄な(クリアな:cleaner)色の移行が行われる。
EUDRAGIT EPOなどのEUDRAGITメタクリレートポリマーは、陽イオン性であり、pH依存性があり、pH5までの溶液に対して可溶性である。したがって、その溶解形態にある陽イオンポリマーを粒子の酸性化スラリに添加することによって、着色粒子組の粒子は陽イオンポリマーで表面処理することができる。次いでpHを、5よりも高く、例えば約7から約12に、例えば約10から約12にゆっくり上昇させ、それによって陽イオンポリマーが粒子表面に沈殿するようにする。陽イオンポリマーは、水の蒸発後に粒子表面上に被膜を形成することによって、粒子を表面処理すると考えられる。処理された粒子の表面は、陽イオンポリマーの陽イオン性を獲得し、その結果、正電荷トナーが得られる。
他の実施形態では、ディスプレイ媒体に組み込まれた1組以上、例えば1組から10組、例えば1組から4組または2組から4組の着色粒子が、粒子を含み、該粒子は例えばエマルジョン凝集ポリエステルまたはエマルジョン凝集アクリレート粒子などのエマルジョン凝集粒子を含んでいる。この凝集粒子には、その表面に陽イオン層と陰イオン層とが交互に配された多層が堆積されており、この多層コーティングの表面層に応じて実質的に均一な正電荷または実質的に均一な負電荷がこの粒子組の粒子に与えられるものである。例えば、多層コーティングの表面層が陽イオン材料である場合、粒子は、実質的に均一な正電荷を示すことになり、多層コーティングの表面層が陰イオン材料である場合、粒子は実質的に均一な負電荷を示すことになる。
上述のように、エマルジョン凝集粒子を作製する場合、そのような粒子は、典型的にはその表面に陰イオン基を含むことになり、例えば、このプロセスで使用される過剰な界面活性剤から受け継がれ、またラテックス樹脂から受け継がれるようなカルボン酸基(カルボキシ基:carboxylic acid group)を含み、またはスルホン酸ナトリウム基(sodio-sulfonate group:スルホ基、スルホン酸基)を含む(スルホン酸のナトリウム塩を含む)ことになる。したがってエマルジョン凝集粒子は、典型的には上記にて論じた負電荷を有し、水中および誘電性流体中では負の電気泳動移動度を示す。この電荷は、上述の電気泳動ディスプレイでの粒子の使用に望ましく、かつ適切であるが、不均一になる可能性がある。しかし、粒子の表面に陰イオン基が存在することによって、粒子表面に構築される追加の陽イオンおよび陰イオン材料のための部位が提供され、この性質は、粒子間により均一な電荷をもたらすのに有利に使用される。
例えば、粒子表面の陰イオン基は、陽イオン材料を有する表面での移動性陽イオン間のイオン交換を可能にする。その結果、実質的に均一なナノスケールのコーティングがトナー粒子表面の周りに形成され、このコーティングが、粒子に正電荷を与える。
さらに、陽イオンおよび陰イオン材料として、高分子電解質材料を使用することができる。このように、陽イオン材料の陰イオン材料とが交互に配された層を構築することができる。即ち、陽イオン高分子電解質の層を形成した後、表面陽イオン高分子電解質および陰イオン高分子電解質のイオン種間でイオン交換を行って、粒子に負電荷を与える均一なナノスケール陰イオンコーティングを、表面に堆積することができる。
堆積プロセスは水溶液中で実施され、したがってこのプロセスは、上述のエマルジョン凝集粒子形成プロセスに対して非常に適合性(compatible)がある。
陽イオンおよび陰イオンの高分子電解質材料の層は、交互に複数堆積することが望ましい。例えばコーティングは、合計で2から約20層、例えば合計で2から約10層または2から約8層含有することができる。各層は、その厚さがほぼナノスケールであり、約0.1から約30nm、例えば約0.5から約10nmまたは約1から約3nmの厚さを有する。層を交互に堆積することによって、単一の層を堆積しただけでは実現することのできない粒子の被覆が可能になる。このため粒子は、より均一な電荷密度を有することが可能になる。
一般に、高分子電解質の堆積により実現されるゼータ電位(mV)は、約5mVから約100mVまで様々であり、例えば陽イオン高分子電解質表面層の場合には、約5から約75mV、または約10から約50mVであり、陰イオン高分子電解質表面層の場合には、約−5から約−120mV、例えば約−5から約−100mVの間、または約−10mVから約−80mVの間である。一般に、溶液中に分散された各粒子は、典型的には固定層と呼ばれる逆に帯電したイオンによって取り囲まれる。固定層の外側には、逆の極性のイオンの様々な組成物があり、通常、拡散2重層と呼ばれる雲状領域を形成し、したがってこの領域全体は、電気的に中性である。粒子が分散された溶液に電圧を印加した場合、粒子は、固定層および拡散2重層の一部を伴って逆の極性の電極に引き付けられ、または「滑り面」の内側に引き付けられる。ゼータ電位は、この「滑り面」を含めたこの内部領域の電位と見なされる。この電位が0に近付くにつれ、粒子は凝集し易くなる。
層を交互に複数堆積することにより、異なる着色粒子の組の間で異なる電荷密度を生成することも可能になる。例えば、各層が同じ陽イオンおよび陰イオン高分子電解質を含む多層コーティングを有する第1の粒子の組は、ある特定の電荷密度を示すことになるのに対し、多層コーティングの1層以上がこの多層コーティングのその他の高分子電解質とは異なる陽イオン高分子電解質または陰イオン高分子電解質を使用する同様の粒子の組は、第1の粒子の組とは異なる電荷密度を示すことができる。したがって多層コーティングに異なる高分子電解質を使用することによって、異なる粒子の組の間で異なる電荷密度を実現することが可能になる。このため、異なる粒子の組を同じディスプレイ媒体で使用することが可能になり、また異なる粒子の組が有する異なる電荷密度を別々に制御することが可能になる。当然ながら同様の手法で、異なる粒子の組の異なる多層コーティングの作製の際に、完全に異なる陽イオン高分子電解質および/または陰イオン高分子電解質を使用することによって、異なる粒子の組での異なる電荷密度を実現してもよい。
実施形態では、多層コーティングを構築するのに高分子電解質を使用する必要があるが、コーティングの表面層として高分子電解質を使用することは必ずしも必要ではない。陽イオンまたは陰イオンの非高分子電解質、例えば上述のように陽イオンポリマーを、コーティングの表面層として使用することができる。
陽イオン高分子電解質として、任意の適切な高分子電解質を使用することができる。高分子電解質は、例えば、溶解したときにイオン化が可能な任意の化合物を指す。陽イオン高分子電解質のある例としては、
下記ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)(PDAD)塩化物と
(式中、nは、例えば約100から約8000であり、これは例えば約500から約5000である(PDAD(Cl)は、約50000から約500000の重量平均分子量を有することができる)。)、
下記ポリ(アリルアミン)塩化水素((PAH)Cl)と
(式中、nは、例えば約10から約5000であり、これは例えば約100から約1000である(PAH(Cl)は、約10000から約100000の重量平均分子量を有することができる)。)、
下記ポリエチレンイミンと
(式中、xおよびyはそれぞれ独立に、1から約1000でよく、これは例えば1から約500でよい(ポリエチレンイミンは、約200から約50000の重量平均分子量を有することができる)。)
が含まれる。
ポリエチレンイミンのその他の変種、例えば、下記
またはC
6H
21N
5、直鎖状および分枝状の鎖の混合物などであって、その重量平均分子量が約1200から約750000に及ぶものを使用することができ、但し、上式でnは、約7から約5000まで様々でよい。
陰イオン高分子電解質として、任意の適切な高分子電解質を使用することができる。陰イオン高分子電解質の特定の例には、ポリ(スチレンスルホネート)ナトリウム塩と
(式中、nは、例えば約10から約5000であり、これは例えば約100から約1000である(ポリ(スチレンスルホネート)ナトリウム塩は約75000から約250000の重量平均分子量を有することができる)。)、
ポリスチレンスルホン酸と、ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩と、ポリアクリル酸と
(式中、nは、例えば約10から約75000であり、例えば約10から約60000である(ポリアクリル酸は、約2000から約5000000の重量平均分子量を有することができる)。)、
ポリアクリル酸の部分ナトリウム塩(polyacrylic acid partial sodium salt)と、が含まれる。
陽イオンおよび陰イオンの高分子電解質層を交互に配した多層コーティングを使用することにより、実現することができる追加の利点とは、粒子を、電気泳動ディスプレイ媒体の流体中に、より容易に分散させることができることである。例えば、粒子の表面に陽イオンおよび/または陰イオン種が存在することによって、ディスプレイ媒体中での粒子の分散を促進させることができ、またはそのような分散を促進させる追加のイオン種と交換することができる。一例として、陽イオン高分子電解質である表面層の結果、粒子の表面に結合した陰イオン、例えばClイオンは、下記ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム
などの分散強化イオン種と交換することができる。この特定の実施例では、得られる粒子が疎水性である。
その他の分散強化種には、SPAN 20(モノラウリン酸ソルビタン)やSPAN 60(モノステアリン酸ソルビタン)、SPAN 80(モノオレイン酸ソルビタン)、SPAN 85(トリオレイン酸ソルビタン)、およびこれらの混合物などの非イオン性界面活性剤、ならびにOLOA(ポリイソブチレンスクシンイミド)、またはSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)やSDBS(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)などのその他の陰イオン界面活性剤が含まれる。
分散強化イオン種(dispersion enhancing ionic species)を表面に有する状態で得られた粒子は、ディスプレイ媒体中に、例えばISOPARやDOW 200 5cStシリコーン油などの媒体中に、容易に分散することができる。これは分散強化種が、Cl−などの単一の種に比べ、油に対してより相溶性があり、より大きく、よりバルキーな(bulkier:嵩高い)の材料である結果、油に対してより良好な相溶性を有するからである。
粒子の着色剤用染料としては溶媒染料が好ましく、溶媒染料の種類の中では、本発明のインクビヒクル(ink vehicle)に対して相溶性があるという理由でアルコール可溶性染料(spirit soluble dye)が好ましい。適切なアルコール可溶性染料の例には、Neozapon Red 492(BASF);Orasol Red G(Ciba);Direct Brilliant Pink B(Global Colors);Aizen Spilon Red C−BH(保土谷化学工業);Kayanol Red 3BL(日本化薬);Spirit Fast Yellow 3G;Aizen Spilon Yellow C−GNH(保土谷化学工業);Cartasol Brilliant Yellow 4GF(Clariant);Pergasol Yellow CGP(Ciba);Orasol Black RLP(Ciba);Savinyl Black RLS(Clariant);Morfast Black Conc.A(Rohm and Haas);Orasol Blue GN(Ciba);Savinyl Blue GLS(Sandoz);Luxol Fast Blue MBSN(Pylam);Sevron Blue 5GMF(Classic Dyestuffs);およびBasacid Blue 750(BASF)など、Neozapon Black X51[C.I.Solvent Black,C.I.12195](BASF)、Sudan Blue 670[C.I.61554](BASF)、Sudan Yellow 146[C.I.12700](BASF)、およびSudan Red 462[C.I.260501](BASF)が含まれる。
本明細書で粒子として使用することができ、またはポリマー粒子の着色剤として使用することができる顔料の例には、例えばチタニアや硫酸バリウム、カオリン、酸化亜鉛、およびカーボンブラックなどの未処理の顔料(neat pigment)が含まれる。顔料は、懸濁流体に不溶であるべきである。
ポリマー粒子では、着色剤を、例えば粒子の約0.1から約75重量%の量で、例えば粒子の約1から約50重量%または約3から約25重量%の量で、粒子中に含めることができる。
前述の粒子の実施形態のいずれかでは、粒子は、その表面に1種以上の外部添加剤を含んでもよい。そのような外部添加剤は、ブレンドによって、例えばヘンシェルブレンダ(Henschel blender)を用いて加えることができる。実施形態では、外部添加剤パッケージは、二酸化ケイ素またはシリカ(SiO2)、二酸化チタンまたはチタニア(TiO2)、チタン酸、酸化セリウム、およびステアリン酸カルシウムまたはステアリン酸亜鉛などの1種以上を含むことができる。粒子は、約5nmから約250nmの平均サイズ(直径)を有することができる。異なる大きさに形成された粒子の混合物を使用してもよく、例えば第1のシリカは、直径を測定したときにその平均1次(primary)粒径が、例えば約5nmから約50nmであり、例えば約5nmから約25nmまたは約20nmから約40nmであり、第2のシリカは、直径を測定したときにその平均1次粒径が、例えば約100nmから約200nmであり、例えば約100nmから約150nmまたは約125nmから約145nmである。外部添加剤粒子は、表面材料で処理してもよい。
実施形態では、外部添加剤を使用して、粒子に電荷を与えることができる。例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)またはヘキサメチルジシラン(HMDS)で処理したシリカ粒子には、正電荷を与えることができる。イソブチルトリメトキシシランで処理したチタン酸には、負電荷を与えることができる。
ディスプレイ媒体用の粒子の密度は、懸濁流体(suspending fluid)の密度に実質的に一致させることができる。例えば懸濁流体は、この懸濁流体と粒子とのそれぞれの密度の差が約0から約2g/ml、例えば約0から約0.5g/mlである場合、懸濁流体に分散された粒子の密度と「実質的に一致した」密度を有することができる。
画像の表示
上述の低導電率粒子の組を含むディスプレイ媒体では、粒子は、まず、例えばこの粒子に電界を印加することによって、適切な時間および適切な電界で帯電させる。この電界誘起またはin situ帯電は、ディスプレイ媒体中の粒子の組のそれぞれに、適切な帯電特性を与える。さらに以下に述べるように、粒子の組のそれぞれは、時間t=0で実質的に0の電荷を有する。高電界の印加によって、粒子の各組は適切なレベルに帯電する。異なる着色の粒子の組は、異なる電荷レベルに帯電させることができ、それによって異なる組のそれぞれの粒子は、流体内で異なる移動度を有することが可能になる。
本明細書の粒子の電界誘起またはin−situ帯電は、任意の適切な方法により実現することができる。そのような1つの方法を図17に示す。図17の装置100は、ディスプレイ媒体を投入することができるセル140を含み、このセルは、平行平板電極150、160などの1対の電極の間に配置されている。適切な電界は、制御発生器120および電源110を介して発生させることができ、その帯電は、過度電流をモニタする電位計170によってモニタする。反射濃度計130は、電界によって前後(back and forth)が切り替えられたときに、セル140内に配置さられたディスプレイ媒体の反射率の変化をモニタする。反射濃度計は、例えば、LabVIEWインターフェースソフトウェアおよびPC180によって制御することができる。実施形態では、印加された電界強度は、約0.05V/μmから約5V/μmに及んでよく、例えば約0.25V/μmから約3V/μmまたは約0.5V/μmから約2V/μmである。電界は、約0.001秒から約5時間、例えば約0.005秒から約2時間、または約0.01秒から約1時間、または約1秒から約30分間印加することができる。電界は任意の形をとることができ、具体的には四角波形、三角波形、および正弦波形などでよい。
帯電電界は、ディスプレイ流体に、形成後に印加することができ、即ち異なる着色の粒子の組の全てをそこに添加した後に、印加することができる。さらに電界は、ディスプレイ流体がディスプレイ装置の複数の貯蔵部内に配置されて装置のディスプレイ層が形成された後に、ディスプレイ流体に印加することができる。或いは、電界は、ディスプレイ装置のディスプレイ層の複数の貯蔵部内にディスプレイ流体を入れる前に、ディスプレイ流体に印加することができる。電界誘起帯電を、内部に複数の粒子の組を有するディスプレイ媒体で実施する場合、異なる粒子の組は、同じ帯電電界の印加の下で、異なる電荷レベルに帯電されるようにそれぞれ選択されるべきである。
異なる波形および電界強度の印加、ならびに内包される粒子のサイズなどのディスプレイ媒体の性質、粒子の製造に使用される界面活性剤、粒子のポリマーの組成、および/または上記にて論じたような電荷剤を粒子表面または粒子中に包含することなどは、ディスプレイ媒体中の粒子の帯電動作に影響を与える。以下の実施例は、前述の事項を例示するものである。
図18は、四角波形電界を使用してISOPAR Mに分散された黄色トナー(Imari MF、黄色エマルジョン凝集スチレンブチルアクリレートトナー)を有するディスプレイ媒体(ISOPAR Mへのトナーの固形分投入は、8重量%)の過渡電流特性を示す。図19は、電流−時間曲線の積分面積から決定された、異なる電界強度で獲得されたディスプレイ媒体中の粒子の全電荷を示す。これらの図で特定された電荷の値は、nCを単位として試験セル内の全電荷を指すことに留意されたい。単位質量当たりの電荷(単位 μC/g)を計算するには、試験セル内の全電荷を試験セル内のトナー質量で割る。全質量は、インク密度から得られる。本明細書では、セル内で8重量%のインクのトナー質量に典型的な、標準値14mgを使用した。図18および19から、電気泳動粒子は電界によって帯電するようになり、帯電は、電界強度の増加と共に増大することがわかる。
図20は、帯電サイクル時間の関数として三角波形電界(300mHz)を使用する、図18および19で使用した同じディスプレイ媒体での過渡電流特性を示す。電界は、V/μmという単位で示され、μmは、電極間の隙間である。ピークは、粒子がこの隙間の一方から他方にジャンプすることを反映しており、電流が一時的に最大になる。1V/μm付近の電界のピークは、電極間の隙間が50μmの場合、このジャンプを発生させるのに50Vの電界が必要であることを示す。粒子の全電荷を図21に示す。結果はやはり、粒子が電界によって帯電し、その帯電はサイクル時間と共に増大することを示している。また帯電は、帯電用に印加された波形のタイプの結果として、処理することができる。電流対電界曲線の直線部分の勾配によって与えられたインク導電率は、約1.9×10−12S/mであり、ディスプレイ媒体中には遊離イオンがごく僅かしか存在しないことを示している。電界強度、サイクル周期(波形)、およびディスイプレイ媒体材料は、粒子をどのように速く帯電させるかに最も著しく影響を及ぼすと思われるパラメータである。同様の結果は、異なるように着色された粒子、例えばマゼンタ、シアン、および黒のImari MFトナーに関して得られる。
図22は、3つの異なるサイズ(7.2μm、9.3μm、および16.8μm)を有する電気泳動インク粒子の、帯電特性の例を示す。各ディスプレイ媒体は、ISOPAR Mに分散された、示されているサイズのSFRPシアンスチレンブチルアクリレートトナー粒子を含む(ISOPAR Mへのトナーの固形分投入は、8重量%である)。図22に示すように、同じ時間でかつ同じ帯電波形を使用した場合、最小の粒子は最高の電荷を獲得することができるのに対し、最大の粒子は最小の電荷を得る。
図19、21、および22から同様にわかるように、粒子は、この粒子が電界にどの程度長くかけられていたかに応じて、異なる電荷を有するように作製することができる。換言すれば粒子は、電界をより長くおよび/またはより強く印加したときに粒子が有する電荷を急上昇させることができるような、動的な帯電特性(dynamic charging characteristics)を示すことができる。このため、異なる色に着色されしかし同様に構成されかつサイズが決められた粒子の組を、ディスプレイ装置内で一緒に使用することが可能になるが、その理由は、同様の、しかし異なる色に着色された粒子の組のそれぞれが、依然として異なる電荷を有するように作製することができ、その結果、ディスプレイ装置内で異なる電気泳動移動度を有するようになるからである。換言すれば、実施形態における着色粒子の所与の組の電荷レベルは、帯電電界の印加を介して調整可能である。
図23は、異なる帯電動作を示す。具体的には、図23は、ISOPAR Mに分散された従来のシアンポリエステルトナーから構成される電気泳動ディスプレイ媒体の帯電特性を示す。ISOPAR Mへのトナーの固形分投入量は、8重量%である。このポリエステルトナーは、エマルジョン凝集などの化学プロセスではなく、従来の物理的研削プロセスを介して調製される。ポリエステルトナーを作製するための従来のプロセスは、ジオール(プロピレングリコールなど)と酸(テレフタル酸など)との縮合重合である。次いでバルクポリマーを、顔料の存在下で押出しを介して機械的に粉砕し、それによって微細なトナー粒子を作製する。図23からわかるように、帯電動作は静的であり、即ち粒子は、電界が印加される時間の長さとは無関係に、実質的に同じ電荷を得る。ポリエステルトナーによって示される静的帯電に関する要素は、エマルジョン凝集トナー調製プロセスで存在する界面活性剤、凝集剤、およびその他のイオン種が無いことである。
上述のように、ディスプレイ媒体に含まれる異なる粒子の組は、それぞれ、例えば異なる電荷を有することによって異なる電気泳動移動度を有するように作製することができる。例えば、シアンや黄、マゼンタ、および黒などの4種の異なる着色粒子を含有するディスプレイ媒体では、シアンが約3μC/gの電荷を有するように、黄が約2μC/gの電荷を有するように、マゼンタが約1μC/gの電荷を有するように、黒が約0.5μC/gの電荷を有するように制御することができる。異なる着色粒子の組は、このように実質的に同様の電荷レベルを有するべきでなく、したがって例えば、各粒子の組は、別の異なる着色粒子の組とは少なくとも約0.1μC/gだけ、例えば互いに約0.3μC/gまたは約0.7μC/gだけ、またはそれ以上異なる電荷を有するべきである。
電界誘起帯電の後、ディスプレイ媒体に適切なACまたはDC電流を流した状態では、異なる電荷レベルを有するディスプレイ媒体中の帯電粒子が、電界に応答して異なる速度で移動することになり、したがって異なる色を表示することができるように、粒子の移動に必要な制御が可能になる。したがって、例えば異なる材料からなり、異なる方法によって作製され、異なるサイズを有し、異なる動的対静的帯電特性を有するような粒子の選択も含めた適切な異なる着色粒子の選択を通して、および/または異なる着色粒子の帯電の制御を通して、ディスプレイ媒体中に異なるように帯電され異なるように着色された粒子の組を含めることにより、マルチカラーおよび/またはフルカラーディスプレイを得ることができる。
電界誘起帯電は、画像形成でディスプレイ媒体を含むディスプレイ装置を使用する前に、ディスプレイ媒体で実施することができる。また、電界誘起帯電手順は、ディスプレイ媒体中で粒子により運ばれる電荷を再生し(renew)または復元する(refersh)ために、ディスプレイ装置の寿命期間中に繰り返すことができる。このため装置は、ディスプレイ媒体中の粒子が経時的な電荷の劣化を示す場合であっても、より長い寿命を有することが可能になる。この場合もやはり、粒子は低導電率を有しており、また帯電のためにディスプレイ媒体中の過剰な遊離イオンに依存しないので、粒子は、電界誘起帯電電界を再度印加した後に実質的に同じレベルまで帯電させ直すことができ、それによって、装置はより長い耐用年数を有することが可能になる。この復元(refreshing)または再帯電(recharging)の実施形態では、複数の粒子の組を有するディスプレイ媒体を用いることがやはり望ましく、この場合、異なる粒子の組はそれぞれ、同じ電界を印加することによって異なる電荷レベルまで帯電し、したがって2組の異なる着色粒子は、復元ステップ後に実質的に同様の電荷を獲得するようは作製されない。
電気泳動ディスプレイ装置を、この装置で画像が形成されるように操作する際、表示させるために貯蔵部内の所望の色の粒子の組を移動させる目的で、電界、特に可逆的直流電流または交流電流を装置の貯蔵部に印加する。
ディスプレイ装置の実施形態では、個別の貯蔵部のそれぞれを個々にアドレス可能(制御可能)にすることができ、即ちこれらの個別の貯蔵部またはカプセルで、適切な色を生成するために、個別の電界を装置の個別の貯蔵部それぞれに印加することができる。個別の貯蔵部の異なる1つ1つの適切な組または群は、同じ駆動電極に対応付けてもよい。例えばディスプレイでは、各貯蔵部または貯蔵部の組が、画像の画素またはサブ画素を表現することができ、したがって各画素またはサブ画素は、装置から所望の全体画像が生成されるよう、別々に制御することができる。全体画像を示すことができるようにディスプレイ装置の各貯蔵部を制御するための、ハードウェア/ソフトウェアを含めた制御方法は、ディスプレイの技術分野で知られており、任意のそのような制御方法を本明細書で利用することができる。個別の制御(アドレス可能性)を可能にするために、電極のサイズは、ディスプレイ装置の個別の貯蔵部のサイズと同じにすることができ、またはこの貯蔵部のサイズよりも小さくすることができ、それによって、それぞれの個別の制御(コントロール)が可能になる。このように、各貯蔵部/カプセルに印加される電界を、個々に制御することができる。また、電極のサイズを貯蔵部のサイズと異ならせる(例えば大きくする)こともでき、それによって複数の貯蔵部を、貯蔵部/カプセルよりも大きい単一の電極で制御することが可能になり、または貯蔵部の一部のみを、貯蔵部のサイズよりも小さい電極で制御する(オンおよびオフにする)ことが可能になる。即ち、電極のパターンを貯蔵部と並べる必要はない。前述のいずれかは、例えば下部導電性基板上に導電性経路(配線)の適切なパターニングをすることによって行うことができる。電極のパターニングの例は、例えば米国特許第3668106号に見出すことができる。
ディスプレイ装置の個別の貯蔵部により表示される色の制御は、下記の説明によって明らかにすることができる。この例では、ディスプレイ媒体が、シアン、黄、マゼンタ、および黒という少なくとも4組の異なる着色粒子を含有し、シアンの電荷は約3μC/gであり、黄の電荷は約2μC/gであり、マゼンタの電荷は約1μC/gであり、黒の電荷は約0.5μC/gである。異なる着色粒子の組それぞれが、異なる電荷、具体的には異なる低導電率の電荷を有するので、異なる着色粒子の組それぞれは、印加電界に別々に応答することになる(即ち、異なる着色粒子の組それぞれは、異なる電気泳動移動度を示す)。この例では、シアン粒子が最高の電荷レベルを保持し、したがって印加電界の下、最も迅速に応答する。したがって、観察者に対しシアン粒子による表示をするには、最初に電界を印加することによって背面基板にこの粒子を引っ張れば(引き付ければ)よい。電界を逆にすると、シアン粒子は最も迅速に前面(正面側、観察側)電極に引き付けられ、その結果、観察者は、その貯蔵部/カプセルでシアンのみ認識することになる。
黄色粒子の組は、2番目に高い電荷レベルを有する。黄色の粒子を表示するために、上部のシアン色表示からの電界を再び逆にして、この粒子の組を背面電極に向けて引き戻す。しかし電界は、シアン粒子が、黄色粒子の位置を通り過ぎて(黄色粒子を追い越して)、背面電極に向かうのに必要な期間だけ、印加する。シアン粒子が黄色粒子の位置を通り過ぎると、観察者は、黄色粒子が前面電極に最も近付いた時点で黄色を認識する。反転電界をより長い時間にわたり印加する場合、黄色粒子はマゼンタ粒子を通り過ぎて背面電極に向かう。この転換点で電界の印加の停止処理をすると、この時点ではマゼンタ粒子が前面電極に最も近い位置となるので、観察者はマゼンタを認識することが可能になる。最後に、この例での黒色粒子は最も低い電荷を有するために最も遅く移動するので、マゼンタ粒子が黒色粒子の位置を通り過ぎるまで反転電界を維持すると、例えばディスプレイ媒体中の粒子の組が後方の電極(背面電極)に引っ張られる状態を維持すると、この時点では黒色粒子が前面電極に最も近付くことになるので、観察者は黒色粒子を認識することが可能になる。
粒子を移動させるために印加することができる電界の強度は、2つの電極間の隙間の厚さで電圧を割った値として定義することができる。電界の典型的な単位は、ミクロン当たりの電圧(V/μm)である。図19は、粒子の電荷レベル対印加電界を示す。電界は、0.5から3V/μmに及んでよい。印加電界は、約0.1V/μmから約25V/μmに及んでよく、例えば約0.25V/μmから約5V/μm、または約1V/μmから約2V/μm、またはこれらの間の任意の範囲でよい。電界印加の持続時間は、約10ミリ秒から約5秒に及ぶことができ、または約100ミリ秒から約1秒、またはこれらの間の任意の範囲である。一般に、粒子表面の電荷が大きくなるにつれて、粒子は所与の電界強度でより速く移動するようになる。例えば図18を見ると、輸送時間はこの曲線の最高のピークである。輸送時間は、全ての粒子が一方の電極から他方の電極にジャンプする平均時間を表す。明らかに、600Vの曲線では、輸送時間のピークがちょうど0.02秒(20ミリ秒)過ぎた時点で生じている。図18を例として使用して、様々な電圧曲線は様々な粒子群の移動度を表わしていると仮定すると、20ミリ秒(msec)では1組の粒子(600Vの軌跡)が隙間を横断するが、その他の組の粒子(その他の軌跡により表す)はその距離の僅か1/2または1/3、またおそらく1/4しか隙間を横断しないことになる。したがってこの情報は、マルチカラーディスプレイ媒体の色のそれぞれを表示するのに必要な電界強度および印加持続時間を決定するのに使用することができる。
当然ながら、ディスプレイ媒体中の任意の着色粒子の組は、無制限に、異なる着色粒子の組よりも迅速に移動させることができ、したがってこの例での移動度の順序付けは、例示を目的として任意に示すことができる。
カラーディスプレイを制御する別の具体的な例は、マルチカラーディスプレイ媒体であるので、図24から27を参照する。この場合、黄色粒子(Y)は高い正電荷を有するように作製し、マゼンタ粒子(M)は低い正電荷、シアン(C)は高い負電荷、黒(K)は低い負電荷を有するように作製する。より高い電荷を有する粒子は、これらの図ではより大きく示されているが、このより大きいサイズは、より大きい電荷を表すものであり、粒子間の実際のサイズ関係を必ずしも示していない。粒子は全て同じサイズを有することができ、またはより大きい電荷の粒子は、実際により低い電荷の粒子よりもそのサイズを小さくすることができる。
所望の着色粒子の組の選択的移動を可能にするために、駆動電圧波形を正極性から負極性に変化させ、またはその逆にする。上部基板を+に帯電させた場合(図25)、−に帯電した粒子がこの電極に引き付けられる。より高い電荷粒子、即ちこの場合のシアンは、この電極に移動する第1の粒子になり、その後、より低い移動度の黒色粒子が続き、したがってシアンが表示される。上面電位が+から−に切り換わった場合(図24)、迅速に移動する+粒子、即ちこの場合は黄色が最初に引き付けられ、その後、より遅く移動するマゼンタ種が続く。したがって、より高く帯電した粒子を観察することは、これら粒子が常に反対に帯電した電極に到達する最初の粒子になるので、比較的簡単である。
より低い移動度の種を選択的に観察するために、図26および27に示すように短い切換電圧パルスを印加することによって、電圧波形を変化させる。この選択的パルスは、導電性基板の両端間の電流/電界の極性を逆転させ、したがって、高く帯電した粒子の移動を瞬時に逆転させ、これらの粒子をセルの中央に向けて移動させる。次いでより高い移動度の粒子がより低い移動度の粒子を追い越して背面基板に向かったら、反対の極性の追加の粒子の組が、より低移動度の粒子よりも前面観察導電性基板に対して近付く前に、電界を除去する。外側(即ち観察可能な側)には、ゆっくり移動する低移動度の粒子が、パルス電界に対する感受性が非常に低いために残されている。したがって、負電荷粒子を背面基板に引き付けるために電界をパルス送出することにより、より低い負電荷の黒色粒子が、より高い負電荷のシアン粒子の代わりに表示される(図27)。同様に、より高い正電荷の黄色粒子が表示される場合、正電荷粒子を背面基板に引き付けるために電界をパルス送出することにより、より低い正電荷のマゼンタ粒子が黄色の代わりに表示される(図26)。
実施形態では、より高い移動度の粒子が約±1から約±5μC/gの電荷、例えば約±2から約±3μC/gの電荷を有することができ、より低い移動度の粒子は約±0.1から約±1μC/gの電荷、例えば約±0.1から約±0.7μC/gの電荷を有することができる。
上述のマルチカラーシステムにおける色の表示の制御は、任意の数の異なる着色粒子組、例えば2組、3組、4組、またはそれ以上の組の粒子を含有するディスプレイ媒体に利用することができる。ハイライト色の粒子の組、例えば青のハイライト色、赤のハイライト色、緑のハイライト色などのハイライト色の粒子の組を、マルチカラーの粒子の組に含め、それによって追加の色範囲の能力をディスプレイに付加することができ、色の制御を上述のように行うことができる。したがって、ディスプレイ媒体中のハイライト色の粒子の組も含めた全ての粒子の組は、5組、6組、7組、8組、またはそれ以上にすることができる。
電界を除去した後、粒子は、任意の適切な手段により、選択された色の状態を維持することができる。例えば何組かの粒子は、電界除去後に粒子をディスプレイの上部または底部に浮遊させるため、ディスプレイ流体とは僅かに異なる密度を有するように作製することができる。電界は印加されていないので、粒子は、そのような沈降運動中に、電界が除去された時点での表色を実質的に維持すべきである。あるいは流体は、電界除去後の粒子表色を維持するために、十分濃厚な粘度を有することができる。例えば、0.65から20cStの粘度範囲、例えば約1から約20cSt、または約5から約20cStの粘度範囲が適切と考えられる。十分粘性のある流体を容易にするために、流体は、例えば米国特許出願第11/169924号に記載されているゲル化剤を含有することができる。ゲル化剤は、より低い温度で流体粘度を高くするように作用し、電界が印加されていない場合は、画像を貯蔵部/カプセル内で固定することが可能である。表示された画像を固定するためのその他の方法は、流体粘度を変化させるその他の手段の形をとることができる。電気流動学的効果(流体粘度が電界の印加によって変化する)や磁界効果(流体粘度が磁界に応答して変化する)などの現象を、望みに応じて利用することができる。
次に実施形態を、以下の実施例を用いてさらに説明する。
10,20 導電性基板、30,31,32 貯蔵部、40 スペーサ層、45 マイクロカプセル、60 ディスプレイ媒体、70 結合剤層、72 キャビティ、73 流体、74 粒子、100 装置、110 電源、140 セル。