JP2007309912A - 電気化学検出センサー及びその製造方法 - Google Patents

電気化学検出センサー及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 電気的特性を測定することができ、しかも簡単に早く製作することが出来る電気化学検出センサー及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 電極を金属イオンが含まれる溶液に浸し、電圧を印加させることにより電極一部に金属を析出させた。この電極に自己組織化単分子膜(SAM:Self Assembled Monolayers)を形成することにより、自己組織化単分子膜(SAM:Self Assembled Monolayers)で修飾された部分と修飾されていない部分とが形成された電極が作成できた。自己組織化単分子膜部分は、各種生体活性分子の固定のために働くとともに、自己組織化単分子膜のない電極部分は、電気化学的特性をセンシングする際に有効であった。
【選択図】なし

Description

本発明は、被検出物質を電気化学的な信号で検出する電極を有する電気化学検出センサー及びその製造方法に関する。
固体表面に種々の生体活性分子(酵素、DNA、オリゴヌクレオチド、抗体、レクチン、レセプター等)を簡便且つ高密度に配向・集積させる手法の一つとして、自己組織化法が知られており、自己組織化単分子膜(SAM:Self Assembled Monolayers)について従来から研究・応用が活発に行われている。特に、チオールやジスルフィドなどは、金表面と反応してAu-S結合し、自己組織化単分子膜を形成することで知られている。自己組織化単分子膜は、特殊な装置を必要とせず、チオール等の溶液中に基板を浸漬するだけで容易に構築できるといった利点を有する。自己組織化単分子膜の性質は、そのアルキル鎖長や末端の官能基、主鎖の親水性などにより変化させることが出来ることから、多彩な機能を固体表面に導入できると期待されている。
一方、被検出物質と相互作用する生体活性分子を電極表面に固定し、被検出物質と生体活性分子との相互作用をインピーダンスや電流、共鳴吸収の角度変化、振動数変化等により検出するバイオセンサーが提案され、実用化されている。そして、電極表面へのプローブ分子の固定に前記自己組織化単分子膜を利用する試みがなされている。自己組織化単分子膜に生体活性分子を固定する際の反応条件は緩和で生体活性分子の活性低下が少ない、分子の配向の制御が簡便である、高密度で安定した強固な結合を得ることができる等、生体活性分子の固定化に自己組織化単分子膜を利用することで様々な利点が得られる。また、自己組織化単分子膜では、末端の官能基を選択することで、抗体やたんぱく質、DNAなど汎用されるほとんどの生体活性分子を類似の操作方法で固定できる。バイオセンサーの構築には高感度化と再現性、安定性が重要視されており、それらを満たすうえで、自己組織化単分子膜は非常に優れた生体活性分子の固定法であるといえる。
アルキルチオール類を金表面に吸着させた自己組織化単分子膜を利用したバイオセンサーとしては、例えば表面プラズモン共鳴(SPR)、水晶振動子マイクロバランス(QCM)等を利用したものが提案されている(特許文献1)。いずれも基板となる金表面にチオールやジスルフィドを用いてプローブ分子を固定し、ターゲット分子との相互作用をそれぞれインピーダンスや電流、共鳴吸収の角度変化、振動数変化として検出している。
一方、自己組織化単分子膜を利用せずに電極表面に生体活性分子(酵素、DNA、オリゴヌクレオチド、抗体、レクチン、レセプター等)を付着させる方法もいくつか考えられている。架橋剤で電極表面のポリマーに結合させたり、ゲルなどに封入したり、そのまま物理吸着させたりする方法もよく用いられる。また、インクに混合して印刷する場合もある(特許文献2)。
特表2005−530176号公報 特開平8−94575号公報
ところで、一般に蒸着やメッキなどで作成される金基板や電極、金ペーストを用いた印刷で作成される金電極に自己組織化単分子膜を形成した後、生体分子を固定化しバイオセンサーを構築した場合、センシングには表面プラズモン共鳴変化、水晶振動子マイクロバランス変化、インピーダンス変化などを用いることが多く、電気化学検出は利用されていない。これは、膜形成により電極表面の絶縁性が増すため、正確な電流、電圧変化を測定することが難しいからである。すなわち、金電極に自己組織化単分子膜を形成した後、生体分子を固定したバイオセンサーにおいては、自己組織化単分子膜によって電極表面の絶縁性が増すため、電気化学的な測定は難しく、電流−電圧特性の実験をすることができないと考えられていた。
また、従来の金属基板の製造方法は、蒸着などにより行われるが(特許文献1)、高密度に形成可能ではある反面、設備の大型化や時間がかかる問題を有する。一方、導電材料を印刷形成して作製される印刷電極は、大量生産が可能で、安価な使い捨てセンサーに有用である。このため、印刷電極技術を利用したセンサーの製造技術を確立することが強く望まれている。なお、印刷電極等で部分的に金属部分を形成するためには、フォトファブリケーションやソフトインプリントによる方法、つまり所定パターンが形成されたスクリーンマスクを使用した印刷等によって形成することが考えられるが、このような方法では、工程が複雑で時間がかかる。
さらに、印刷電極上に生体活性分子を固定する際、自己組織化単分子膜を利用せずに電極表面に生体活性分子を付着させる方法もいくつか考えられている。架橋剤で電極表面のポリマーに結合させたり、ゲルなどに封入したり、そのまま物理吸着させたりする方法もよく用いられる。また、インクに混合して印刷する場合もある(特許文献2)。しかし、これらの処理により生体活性分子が変性して活性が低下したり、活性部位の配向の制御が難しく、反応効率が低下したりした。
そこで本発明の目的は、電気的特性を測定することができ、しかも簡単に早く製作することが出来る電気化学検出センサー及びその製造方法を提供することにある。
本発明者は、生体活性分子の固定化には自己組織化単分子膜のようなスペーサの使用は必須であるものの、電極の全面にスペーサを修飾すると、生体活性分子に結合した被検出物質又は被検出物質の酵素反応生成物等の電気化学的信号が電極表面に到達し難くなり、これによって電気化学的な応答が減少してしまっていることを実験により確認した。そして、このように電気化学検出にかかる電極表面が自己組織化単分子膜等のスペーサによって電気化学的な検出を妨げる程度に覆われることを避けるための構造と、自己組織化単分子膜等のスペーサを電極上に部分的に結合させる簡便な方法を開発した。
本発明の電気化学検出センサーは、被検出物質を電気化学的な信号で検出する電極を有する電気化学検出センサーにおいて、被検出物質と相互作用を起こす生体活性分子がスペーサによって前記電極上に部分的に固定化されており、前記スペーサは、前記電極の表面に部分的に析出した金属の表面に結合されていることを特徴とする。ここで、前記スペーサが、自己組織化単分子膜(SAM:Self Assembled
Monolayers)であることを特徴とする。本発明によれば、自己組織化単分子膜等のスペーサは、各種生体活性分子(酵素、DNA、オリゴヌクレオチド、抗体、レクチン、レセプター等)の固定のために働くとともに、自己組織化単分子膜等のスペーサのない電極部分は、電気化学的特性をセンシングする際に有効であることが実験により確認された。すなわち、電極の全面に自己組織化単分子膜等のスペーサを修飾するのではなく、金属を析出させて自己組織化単分子膜等のスペーサで覆った部分と、金属を析出させずスペーサで覆われていない部分との両方を電極表面に設けたことにより、電気化学的な応答が増加することが実験により確認された。
本発明の電気化学検出センサーの製造方法は、金属イオンが含まれる溶液に電極を浸し、電圧を印加することにより前記電極の表面に金属を部分的に析出させ、その金属部分に生体活性物質を結合可能なスペーサを結合させることを特徴とする。本発明によれば、金属が含まれる溶液に電極を浸して電圧を印加した後、自己組織化単分子膜(SAM:Self Assembled
Monolayers)等のスペーサの原料である構成単分子を含む溶液に接触させるという簡便な方法により電極の一部に自己組織化単分子膜等のスペーサを形成することが出来る。ここで、電圧を所定時間印加することで、析出する金属量をコントロールすることができる。
本発明によれば、電極を金属が含まれる溶液に浸し電圧を印加させることにより金属を部分的に析出させ、その後その金属部分に自己組織化単分子膜等のスペーサを部分的に形成することにより、電気的特性を測定することができる電気化学検出センサーを簡単に早く製作することが出来る。電気化学的特性の測定は小型で安価な装置で可能であるため、電気化学的特性でセンシングできることにより、非常に安価で汎用性のあるバイオセンサーの作成が可能となる。
以下、本発明に係る電気化学検出センサー及びその製造方法について詳細に説明する。
本実施の形態の電気化学検出センサーは、絶縁基板上に導電性材料が印刷により所定のパターンで形成された印刷電極からなる作用極を有し、この作用極の表面に部分的にスペーサの一種である自己組織化単分子膜(SAM:Self Assembled Monolayers)等を形成したものである。図1に示すように、印刷電極1には、作用電極J1、対極J2、参照極J3という3つの電極が形成されており、これらの電極から配線が導電性材料によりパターン形成されている。配線2部分は、絶縁性樹脂(レジスト)Rで被膜されるとともに、コネクタCと接続され、外部計測器により計測される仕組みである。今回用いたのは、作用極J1がカーボンペースト(導電性材料)のスクリーン印刷電極であり、この電極J1にのみ部分的に自己組織化単分子膜を形成する。
ここで、作用極J1の構造について詳細に説明する。作用極J1は、導電性材料を所定の作用極形状に印刷してなる電極と、電極の表面に部分的に形成された析出金属からなる金属部分とを備えている。金属部分の表面には、スペーサの一端が結合し、さらに、スペーサの他端には被検出物質と相互作用を起こす生体活性分子が結合している。
電極は、例えばカーボンペーストを主体とする導電性材料を所定のパターンに印刷することによって形成される。
金属部分を構成する金属としては、自己組織化単分子膜等のスペーサの構成分子と親和性のある金属を用いることができ、例えばチオール結合を利用して自己組織化単分子膜を形成する場合には金が一般に用いられる。なお、金に限らず、電気化学的に析出可能であれば、金以外に白金、銅などの貴金属、種々の半導体や金属酸化物なども可能である。
スペーサは、生体活性分子を電極層に固定化するためのものであり、例えば自己組織化単分子膜等が好適に用いられる。
被検出物質と相互作用を起こす生体活性分子とは、例えば、被検出物質を認識する分子、又は、被検出物質に対し電気信号変化を発生させるような相互作用を起こさせる分子等のことを言う。ここで、被検出物質を認識する生体活性分子とは、例えば、被検出物質と特異的に結合する分子のことであり、DNA、RNA等のポリヌクレオチドやオリゴヌクレオチド等の核酸、抗体、レクチン、レセプター等が挙げられる。被検出物質に対し電気信号変化を発生させるような相互作用を起こさせる生体分子とは、例えば、電気化学的に不活性な被検出物質を電気化学的に活性な反応生成物に変換する酵素が挙げられる。なお、これとは逆に、電気化学的に活性な被検物質を電気化学的に不活性な反応生成物に変換する酵素、さらには、電気化学的検出により所定の電位にピークを持つ被検物質を異なる電位にピークを持つ反応生成物に変換する酵素も、被検出物質に対し電気信号変化を発生させるような相互作用を起こさせる分子に含まれ、電気化学検出センサーの生体活性分子として利用可能である。
以下、前述の電気化学検出センサーにおいて、前述した作用極J1の構造を形成する方法について説明する。
まず、析出させたい金属イオンまたはその金属を含むキレートイオン等を含む溶液を準備する。析出させたい金属の性質に応じて、金属を含む溶液の種類は、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸などの酸や、水酸化カリウムなどのアルカリ性溶液などが選択できる。溶液によっては、メッキのように表面全体をコートするように析出する場合もあるが、部分的に析出できるように調製する。
その溶液に印刷電極1のレジストRより先端の部分を接触させ、作用極J1に電圧を印加する。具体的には、その溶液中における金属の還元電位以下の電圧を一定時間かける。時間によって、析出させる金属の量を調節することができる。少量だけ析出させたいときは、例えば1秒でよい場合もあり、大量に物質を固定したい場合は例えば10分という場合もある。また、溶液中の金属イオン濃度によって析出金属量を制御することも可能である。
以上のように、金属イオンを含む溶液中で電圧を印加することで、作用極J1の表面に金属が部分的に、例えば島状又は点状に析出する。金属を析出させる際、析出させる金属の還元電位近傍の電圧を電極に印加することが好ましい。析出させる金属の還元電位近傍とは、本明細書においては、具体的には還元電位から−500mVまでの範囲を指すこととする。還元電位近傍の電圧をかけることによって得られる析出金属は、自己組織化単分子膜を形成する際に用いられる構成単分子の例えばチオール基との結合に適した構造となる。この結果、析出した金属部分に自己組織化単分子膜が高密度に結合し、生体活性分子を高密度に固定化できるので、電気化学検出センサーにおける電気化学的応答をより大きなものとすることができる。一方、還元電位近傍よりも負の電圧、すなわち、還元電位から−500mVよりさらに負の電圧を印加した場合、還元電位近傍の電圧を印加した場合に比較すると、得られる電気化学的応答は小さいものとなる。
なお、金属の還元電位は、金属を析出させるべき電極及び金属イオンが含まれる溶液の種類に応じて変動するものである。したがって、金属を析出させる際には、電極及び溶液の種類に応じて適宜最適な電位を選択する必要がある。
また、作用極J1の表面に金属を析出させる際、金属を析出させるための還元電位より200mV以上負電位側の電位を印加し、次に、還元電位近傍の電圧を印加することがより好ましい。ここで、金属を析出させるための還元電位より負電位側の電位を印加する時間は数秒以内とする。このような操作を行うことで、チオール基が結合しやすく、且つ単位面積当たり数多く析出した微小金属が得られる。
次に、金属が部分的に析出した電極に、自己組織化単分子膜の構成単分子を含む溶液を滴下させたり浸漬させたりする。これにより、析出した金属部分の表面に構成単分子の基板結合部位が吸着、結合し、自己組織化単分子膜が形成される。この結果、作用極J1においては電極の表面に部分的、具体的には島状又は点状に自己組織化単分子膜が形成され、自己組織化単分子膜が形成されず電極層が露出した非形成領域と自己組織化単分子膜が部分的に形成された領域との両方が、作用極J1内に存在することになる。
自己組織化単分子膜の構成分子における基板結合部位としては、チオール(−SH)基が一般的であるが、チオール基のみならず、ジスルフィド基、スルフィド基、チオフェン等も可能である。なお、金属部分の種類や浸漬条件(溶液、濃度、温度、時間)により、自己組織化単分子膜の構造・配向を制御することも可能である。
以上の製造方法によれば、電極表面への電気化学的な金属の析出を利用して電極表面への部分的な金属の形成を実現している。この方法による部分的な金属の形成は、例えばフォトファブリケーション等に比較して工程が単純であり、部分金属の形成時間も短時間で済む。したがって、本発明によれば、電極上への自己組織化単分子膜等のスペーサの部分的な形成を簡単且つ短時間で実現することができ、電気化学検出センサーを簡便に製造することができる。
(実施例1)
本実施例では、テトラクロロ金酸の塩酸溶液(Auが0.1mg/ml)の中に上記基板のレジストRより先端部分を浸し、0.4Vの電圧を30秒と200秒印加して金の部分析出電極を作成した。30秒電圧を印加したものが図2であり、200秒電圧を印加したものが図3である。図面上、白く見えている点々が析出した金であり、時間によって大きさが異なっていることが分かる。一方、比較例として、作用極の全表面が金ペーストで作製された印刷電極を用意した。自己組織化単分子膜(SAM:Self Assembled Monolayers)用のチオール分子としてMUA(11-メルカプトウンデカン酸)を用いた。MUAを少量のエタノールに溶解し、最終濃度が1mMとなるように蒸留水で調製した。本溶液を金の部分析出電極J1上に滴下し、約1時間静置後、エタノールで3回洗浄した。
本実施例で、結合したチオール分子の数は、0.5MのKOH中でのMUAの還元シグナルをサイクリックボルタメトリーで検出することにより評価した。チオール分子が結合した金表面では、―1.3V程度の電位において、MUAが金表面から離脱する際の還元電流が検出できる。その電流値の大きさは結合したチオール分子の数と正の相関を示すと言われている。一部に金が析出した電極(作用極)およびカーボン(ペースト)のみの電極の、MUA処理後のチオール分子の還元電流の値は図4のとおりであった。図4は、金に結合したチオール単分子膜の金からの離脱ピークを表わしている。30秒電圧を印加したものに比べ(b)、200秒電圧を印加したものの方(a)が、離脱ピークが高い。また、カーボンのみの電極(c)では、一部に金が析出した電極のように離脱ピークが生じない。これにより、金を析出させた電極(作用極J1)では、チオール分子が結合しており、さらに電極J1上に導入されるチオール分子の数は金の量に応じて調節できることが示された。
上記チオール分子が結合した電極(作用極J1)の特性評価は、2mMのフェロシアン化ナトリウムと0.5Mの硫酸ナトリウムの混合溶液を用いて行った。上記で作製した電極の測定結果は、図5(b)のとおりである。本溶液では鉄の酸化、還元にともなう電流がそれぞれ約0.15V,0.05Vに観察される。電位は電極としての性能を、電流値は電極の有効面積を反映している。作用極全面が金で作製された電極(比較例)では、図5(a)に示すように、チオール分子は金の電極面全体に自己組織化単分子膜(SAM:Self Assembled Monolayers)を形成するため、フェロシアン化ナトリウムの良好な電気シグナルをえることはできない。これに対し、本実施例の一部に金を析出させた電極では、図5(b)に示すように、面積の減少による若干の電流値の低下はあるが、ピークセパレーションはほとんど変化しないなど電極としての特性が大きく劣化することは無かった。本実施例の電極一部に金を有する電極では、SAMとその後の生体活性分子などの固定化の後も電極表面にカーボンの部分が残るため、高感度にその電流変化をとらえることが出来ると考えられる。
(実施例2)
電極の一部に作製した自己組織化単分子膜(SAM:Self Assembled Monolayers)に酵素(グルコースオキシダーゼ)を固定するグルコースセンサーを製作した。作用極J1がカーボンのスクリーン印刷電極(面積:2.6mm2)1を用い、テトラクロロ金酸の0.1M塩酸溶液(金の含量として0.1mg/mL)中、−0.4Vで、200秒間、金を析出させた。これを用い電極(作用極)J1上に固定する酵素量を3段階に変えグルコースセンサーを作製した。1μM,1nM,1pM濃度のジチオジブチル酸(DDA)溶液8μLをそれぞれ作用極J1上に滴下し、室温で1時間静置した。エタノールで3回洗浄後カルボキシル基の活性化のため400mMのEDC8μLを作用極J1に滴下し、1時間静置した。蒸留水で3回洗浄した。その後、1U/mLのグルコースオキシダーゼ溶液を滴下し、1時間反応させて酵素を電極(作用極)J1上に固定した。蒸留水で3回洗浄し、余分な未結合酵素を取り除いた。
本実施例ではジチオール分子の濃度を変え、続いて反応させる酵素液濃度を一定にして、固定する酵素量をコントロールしたが、ジチオール分子の数を一定にして、続いて反応させる酵素液濃度を変化させて固定酵素量をコントロールしても良い。
本グルコースセンサーを用いて、グルコースの検出を行った。グルコースはグルコースオキシダーゼによりグルコノラクトンと過酸化水素に変換される。本反応を利用して水溶液中のグルコース濃度を、過酸化水素を検出することにより算出することができる。また、生成した過酸化水素は本印刷電極1において、約0.8Vでの電流値として検出することができる。今回作製した3段階の量でグルコースオキシダーゼが固定されたセンサーを対象に、10mMのグルコースを含むリン酸バッファー溶液30μLを電極上に滴下し、室温で5分間反応させた。その後0Vから−1.3Vまでのサイクリックボルタメトリーを行った。0.78Vにおける電流値を固定された酵素量に応じてプロットしたのものが図6である。生成する過酸化水素の量を電気的に測定した。固定された酵素の量に応じて、電流値が増加していることから、本センサーにより、グルコースの検出が可能であることがわかる。
(実施例3)
電極に析出させる金微粒子の析出電位条件を変化させて、SAM膜のチオール基がより多く結合するための電位条件を調べた。スクリーン印刷電極をテトラクロロ金酸の0.1M塩酸溶液に浸し、その電極の作用極にそれぞれ0.2、−0.2、−0.6Vの電圧で200秒間印加し金を析出させた。それらの電極上に、少量のMUAを500mM TrisHClに溶かして作製した溶液を10μl滴下した。6時間静置した後メタノールで洗浄し、作用極表面にMUA膜の結合した金粒子を有する電極を作製した。それらの電極を50mM KOH溶液に浸し、−0.5〜−1.6Vの範囲で作用電極電位を掃査することにより、結合させたSAM膜の還元脱離電流値を調べた。金の還元電位は、図8から明らかなように、0.3V付近であった。図7の結果から、0.2Vの条件がチオールの還元電流値が大きく、−0.6Vでは還元電流値のピークが複数に分かれ、またそれらの電流値も小さくなっていることが判る。また、金の還元電位から500mV負電位側である−0.2Vの条件においても、0.2Vと遜色ない結果が得られた。このことから、これらの条件ではチオール結合させる金粒子の析出条件は、還元電位から500mV負電位側の−0.2Vが好ましく、100mV程度負電位側の0.2Vが一番良いことが判る。以上の実施例3より、より還元電位に近い電位がSAM膜結合に適していることが判る。
(実施例4)
実施例3と同じく金属粒子の析出電位による影響を調べた。前述の様にして金微粒子を作用電極上に析出させた。その析出条件は0.3と−0.4Vである。その電極上に、ATD( acetylenyl-terminated dithiol )を50mM TrisHCl溶液中に溶かして5mMとした溶液2μlを滴下した。12時間静置後超純水で洗浄し、作用極表面にATD膜の結合した金粒子を有する電極を作製した。 それらの電極をPBS溶液に浸し、0〜0.9Vの範囲でDPV測定することにより、作製した電極の特性を調べた。図9の結果から、―0.4Vの析出条件では、本来であれば出て欲しくないピークが確認されて、0.3Vではそのピークが無く良好な結果が得られていることが判る。この結果からも実施例3と同じくより金の還元電位に近い電位で作製した電極が、SAM膜に適していることが判る。
印刷電極の一例を示す図である。 作用電極がカーボンのスクリーン印刷電極を用いて、金溶液中で30秒間電圧を印加した状態の図である。 作用極がカーボンのスクリーン印刷電極を用いて、金溶液中で200秒間電圧を印加した状態の図である。 金に結合した自己組織化単分子膜の金からの離脱量を表わしている図である。 (a)は、比較例の作用極の全面が金の電極にSAMを形成したもののフェロシア化カリウム溶液の酸化還元電流の測定値を表わした図である。(b)は、実施例1の一部が金電極で覆われた電極にSAMを形成したもののフェロシア化カリウム溶液の酸化還元電流の測定値を表わした図である。 0.78Vにおける電流値を固定された酵素量に応じてプロットした図である。 実施例3において金の析出電位の影響を調べた結果を示す特性図である。 金の還元電位を説明するための特性図である。 実施例4において金の析出電位の影響を調べた結果を示す特性図である。
符号の説明
1 電極(印刷電極)、
J1 作用極、J2 対極、J3 参照極、 R レジスト

Claims (11)

  1. 被検出物質を電気化学的な信号で検出する電極を有する電気化学検出センサーにおいて、
    被検出物質と相互作用を起こす生体活性分子がスペーサによって前記電極上に部分的に固定化されており、前記スペーサは、前記電極の表面に部分的に析出した金属の表面に結合されていることを特徴とする電気化学検出センサー。
  2. 前記金属が、金属イオンが含まれる溶液に前記電極を浸し、電圧を印加することにより析出したものであることを特徴とする請求項1記載の電気化学検出センサー。
  3. 前記スペーサが、自己組織化単分子膜(SAM:Self Assembled Monolayers)であることを特徴とする請求項1又は2記載の電気化学検出センサー。
  4. 前記電極が、導電性材料を所定のパターンに印刷形成した印刷電極であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の電気化学検出センサー。
  5. 前記導電性材料の主体がカーボンペーストであることを特徴とする請求項4記載の電気化学検出センサー。
  6. 金属イオンが含まれる溶液に電極を浸し、電圧を印加することにより前記電極の表面に金属を部分的に析出させ、その金属部分に生体活性物質を結合可能なスペーサを結合させることを特徴とする電気化学検出センサーの製造方法。
  7. 前記金属を析出させる際、前記金属の還元電位近傍の電圧を印加することを特徴とする請求項6記載の電気化学検出センサーの製造方法。
  8. 前記金属を析出させる際、先ず前記還元電位より負電位側の電位を印加し、次に前記還元電位近傍の電圧を印加することを特徴とする請求項7記載の電気化学検出センサーの製造方法。
  9. 前記スペーサが、自己組織化単分子膜(SAM:Self Assembled Monolayers)であることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項記載の電気化学検出センサーの製造方法。
  10. 前記電極が、導電性材料を所定のパターンに印刷形成した印刷電極であることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項記載の電気化学検出センサーの製造方法。
  11. 前記導電性材料の主体が、カーボンペーストであることを特徴とする請求項10記載の電気化学検出センサーの製造方法。
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