JP2007307588A - スポット溶接用電極 - Google Patents

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Abstract

【課題】 ナゲット核の形成が容易なスポット溶接用電極を提供する。
【解決手段】スポット溶接用電極1は先端面を中心部2とその周辺部3に分け、中心部2については曲率半径R1を例えば40mm以下の凸部とし、周辺部3については曲率半径R2を例えば60mm以上の凸部とし、通電初期の電流密度を高くして容易にナゲット核が形成されるようにし、周辺部3をナゲットに食い込ませることで、ナゲットは径方向に成長する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、スポット溶接用電極とこの電極を用いたスポット溶接方法に関する。
スポット溶接を施す際に用いる電極として、従来からCF電極(円錐台電極)或いはDF電極(ドーム・フラット電極)のように先端面の中央が平坦な電極を用いている。
上記のCF電極やDF電極を亜鉛めっき鋼板のスポット溶接に用いた場合に、裸鋼板(軟鋼板)をスポット溶接する場合に比べて、スティッキング(張り付き)、溶接散り、インデンテーション(溶接部のくぼみ)が顕著に現れ連続打点性も悪化する。
上記の原因は、亜鉛めっき鋼板にあっては、表面の亜鉛層が柔らかい上に酸化被膜が形成されにくく、加圧直後のブリッジによる真の接触面積が広くなるため通電直後の電流密度が低下するので、ナゲット(溶融池)の核が形成されにくいこと、更に、亜鉛層は融点が低いためこの亜鉛層が流動して被溶接物同士、被溶接物と電極との間のミクロ的な凹凸を埋めてしまうので、電流密度が低下してナゲットが形成されにくいと考えられる。
そこで、本発明者は裸鋼板をスポット溶接した場合の、電極先端面の形状変化に着目した改善を先に特許文献1として提案している。即ち、裸鋼板をスポット溶接してゆくと、電極先端の平坦面の部分が「へそ」と呼ばれる凸部に変化し、これによって数千ショットの間、ナゲット径が安定する。一方、亜鉛めっき鋼板の場合には、凸部とならずに中心部が凹んだリング状に変化してしまう。
そこで、特許文献1では、図4(a)及び(b)に示すように、予め電極先端面の中心部(直径d)の曲率半径(R)を所定の厚み(T=0.05〜0.3mm)に亘って、R=T/2+d×d/8Tとなるようにしている。
特開2001−179464号公報
特許文献1に開示される電極を板厚が厚い被溶接物や、高張力鋼板(ハイテン材)のスポット溶接に適用しても、溶接部の強度要件を十分に満足することができず、電極の径を拡大したり、溶接ガンによる加圧力を上げて電極先端を被溶接物に食い込ませて電極と被溶接物との接触面積を大きくする必要がでてくる。
このように、径の大きな電極に交換するのは作業性を悪化し、また加圧力を上げるには溶接ガンを大型化しなければならず、コストアップになる。
上記課題を解決するため、本発明に係るスポット溶接用電極は、電極先端面の中心部が小さな曲率半径の凸部とされ、前記中心部に連続する周辺部が大きな曲率半径の凸部、大きな傾斜角のテーパ面または軸方向に直交する平坦面とされている。
前記電極先端面の中心部の曲率半径としては、例えば40mm以下とし、また前記電極先端面の周辺部の曲率半径としては、例えば60mm以上とすることが好ましい。尚、前記電極先端面の周辺部をテーパ形状にした場合には、軸線に対するテーパ角は85°以上、平坦面でもよいので、テーパ角は85°〜90°とすることが好ましい。
また、本発明に係るスポット溶接方法は、上記の電極を用いることを前提とし、先ず電極先端面の中心部によってナゲットの核を形成し、次いで電極の先端部を被溶接物に食い込ませて電極先端面の周辺部によってナゲットの径を拡大せしめる。
本発明によれば、電極先端面の中心部を小さな曲率半径の凸部としたので、通電初期の電流密度が高くなり初期の発熱レベルが上がり、ナゲット核の形成が容易になる。また、その後のナゲットの成長も早くなり、亜鉛めっき鋼板(Zn材)等の電流アップ要因の改善、厚板材や高張力鋼板における電流条件も緩和され、溶接散りの発生限界曲線の限界加圧力を下げることができる。
また、本発明によれば、電極先端面の前記中心部に連続する周辺部を大きな曲率半径の凸部、大きな傾斜角のテーパ面または軸方向に直交する平坦面としたので、大きなナゲット径を要求される厚板材や高張力鋼板において、比較的小さなインデンテーションでナゲット径の拡大が可能になり、溶接ガンによって高い圧力で押し付ける必要がなくなる。
また、本発明によればインデンテーションのわずかな変化によって、接触面積が大きく変化するので被溶接物の軟化の程度によって自律的に電流密度の調整作用が働き、溶接散りの抑制や溶接部のヒートバランスを改善することができる。
また本発明によれば、電極先端面の小さな曲率半径の凸部(中心部)のみを使用した薄板のスポット溶接から、電極先端面全体を使った厚板の溶接まで、電極を交換することなく共通の電極を用いることができる。即ち、被溶接物の材質やめっき(表面処理)の有無に関係なく幅広く適用でき、電極先端径によって個別に溶接条件を設定し直さなくて済み、加圧力も抑えられるので設備費削減に効果的で、ナゲットの大きさも最適なものに設定できるので品質面でも向上する。
更に、スポット溶接をロボットで連続して行う場合、従来にあっては、板厚違い、2枚重ね、3枚重ねなど溶接条件の異なる箇所毎に工程編成するか、電極の交換を行っていたが、本発明によれば、どの溶接ポイントであっても通電時間と電流値と加圧力を変化させるだけで対応できる。
以下に本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。図1(a)は本発明に係るスポット溶接用電極の先端部の拡大側面図、(b)は同スポット溶接用電極の先端部の拡大端面図である。
スポット溶接用電極1は先端面を中心部2とその周辺部3に分け、電極の元径は16mm、中心部2については直径Drを6mm、曲率半径R1を40mm以下の凸部とし、周辺部3については直径Deを10mm、曲率半径R2を60mm以上の凸部としている。
図2は別実施例に係るスポット溶接用電極の先端部の拡大側面図であり、この実施例にあっては中心部2の形状は前記実施例と同一であるが、周辺部3の形状をテーパ面としている。このテーパ面の軸線Lとなす角度は85°以上とする。尚、テーパ面の軸線Lとなす角度を90°とすると周辺部3の形状軸Lに直交する平坦面となるが、この態様も本発明に含まれる。
以上の構成の電極を用いてスポット溶接するには、先ず図3(a)に示すように、スポット溶接される高張力鋼板などの被溶接物を重ね、一対の電極1,1の軸が一致するように溶接予定箇所に突き当て加圧し電流を流すと、電極1、1の先端面の中心部2によってナゲット4の核を形成する。
次いで図3(b)に示すように加圧力により、熱で軟化した被溶接物表面に電極1の先端面の周辺部3が食い込み、ナゲット4の径を拡大せしめる。このようにナゲット4の径を拡大すると、強固に溶接することができる。
ナゲット4(核)を形成するには、電極と被溶接物との接触面積を小さくし電流密度を上げる必要がある。先端面の中心部2を凸形状にすることで電流密度を上げることができる。電流を流し始めると電極と被溶接物との接触面は発熱し、被溶接物が軟化するので加圧されている電極は食い込んでゆく。そしてこの食い込みにつれて接触面積を大きくするには、加圧力と電流を増加させる必要がある。
本願発明のように周辺部3を緩やかにすることで小さな食い込みでも接触面積の増加変動が大きくなり、インデンテーションを最小限に抑制しつつナゲット4が軸方向よりも径方向に広がる。一方中心部2が無く周辺部3のみにすると、電流密度が低く核を形成することができない。
次に、図1に示した形状の電極を用いて、高張力鋼板(ハイテン)について行ったスポット溶接とその結果を(表1)に示す。
(表1)から本発明に係る電極を用いることで、高張力鋼板の裸及び亜鉛めっき鋼板仕様においても、各板厚に応じて最適なナゲットが形成されていることが分かる。ゆえに高張力鋼板よりも柔らかい材質の材料に於いては、さらに好溶接条件(加圧力低下、通電時間短縮、電流値低下)でナゲットが形成されることが言える。
(a)は本発明に係るスポット溶接用電極の先端部の拡大側面図 (b)は同スポット溶接用電極の先端部の拡大端面図 別実施例に係るスポット溶接用電極の先端部の拡大側面図 本発明に係るスポット溶接用電極を用いた溶接方法を説明した図で、(a)はナゲット核の形成、(b)はナゲットの成長を示す。 (a)は従来のスポット溶接用電極の先端部を示す図、(b)はその拡大図
符号の説明
1…スポット溶接用電極、2…先端面の中心部、3…先端面の周辺部、4…ナゲット、Dr…中心部の直径、De…周辺部の直径、R1…中心部の曲率半径、R2…周辺部の曲率半径。

Claims (4)

  1. 電極先端面の中心部が小さな曲率半径の凸部とされ、前記中心部に連続する周辺部が大きな曲率半径の凸部、大きな傾斜角のテーパ面または軸方向に直交する平坦面とされていることを特徴とするスポット溶接用電極。
  2. 請求項1に記載のスポット溶接用電極において、前記電極先端面の中心部の曲率半径は40mm以下、前記電極先端面の周辺部の曲率半径は60mm以上であることを特徴とするスポット溶接用電極。
  3. 請求項1に記載のスポット溶接用電極において、前記電極先端面の中心部の曲率半径は40mm以下、前記電極先端面の周辺部の軸線に対するテーパ角は85°以上であることを特徴とするスポット溶接用電極。
  4. 請求項1に記載の電極を用いたスポット溶接方法であって、前記電極先端面の中心部によってナゲットの核を形成し、次いで電極の先端部を被溶接物に食い込ませて電極先端面の周辺部によってナゲットの径を拡大せしめることを特徴とするスポット溶接方法。
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