JP2007302640A - 抗放射線被ばく障害剤 - Google Patents

抗放射線被ばく障害剤 Download PDF

Info

Publication number
JP2007302640A
JP2007302640A JP2006135194A JP2006135194A JP2007302640A JP 2007302640 A JP2007302640 A JP 2007302640A JP 2006135194 A JP2006135194 A JP 2006135194A JP 2006135194 A JP2006135194 A JP 2006135194A JP 2007302640 A JP2007302640 A JP 2007302640A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
lactoferrin
radiation exposure
radiation
irradiation
administration
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2006135194A
Other languages
English (en)
Inventor
Giichi Nishimura
義一 西村
Shino Takeda
志乃 武田
Nobuo Ikoda
暢夫 伊古田
Izuru Tsunoda
出 角田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
National Institute of Radiological Sciences
Original Assignee
National Institute of Radiological Sciences
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by National Institute of Radiological Sciences filed Critical National Institute of Radiological Sciences
Priority to JP2006135194A priority Critical patent/JP2007302640A/ja
Publication of JP2007302640A publication Critical patent/JP2007302640A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)

Abstract

【課題】放射線被ばくによる生体障害を効果的に予防またが抑制する薬剤であって、副作用が小さく、有効な薬剤を提供することを目的とする。
【解決手段】放射線被ばくによる生体障害を効果的に予防または抑制する薬剤として、ラクトフェリンが有効であることを見出した。ラクトフェリンは通常食品としても流通しているものであるため、安価であり、かつ副作用がほとんど見られないという非常に大きな利点を奏する。
【選択図】なし

Description

本発明は、ラクトフェリンを含む抗放射線被ばく障害剤に関する。
ラクトフェリン(LF)は、哺乳類の乳汁をはじめとした分泌液や好中球の二次顆粒に存在している分子量約80000の鉄結合性糖タンパクである。LFは生体中の鉄吸収を調整するほか、非免疫性の生体防御、血液や組織中では好中球の殺菌作用や各種免疫細胞の増殖、分化、サイトカイン産出などにも関与しているといわれており、抗腫瘍作用等の生体活性も報告されている(例えば、特許文献1参照)。
一方、原子力発電に携わる作業者・技術者、放射線を利用する測定機器類の取扱者、および癌の放射線治療を行う医師・技術者は常に放射線被ばくによる健康障害に直面している。また、航空機の操縦士や乗務員の宇宙線被ばくが問題になっている。さらに、放射線治療を受けている癌患者は吐き気や下痢などの副作用に悩まされる場合が多い。X線CTなど放射線を利用して健康診断を受ける人の微量の放射線被ばくによる発癌リスクが問題になっている。このように、職業人と一般人とを問わず、放射線被ばくによる生体障害リスクを克服する抗放射線被ばく障害剤の開発研究は社会の重要な課題である。しかしながら、放射線被ばくによる生体障害を予防および治療するための抗放射線被ばく障害剤で実用化されている薬剤は極めて少ない。例えば、米国ではアミフォスチン(Amifostine)が頭頚部の放射線癌治療において口腔乾燥症の予防に認可されている(非特許文献1参照)。また、放射線被ばくによる生体障害を効果的に防御する放射線防護剤として各種アミノチオール類が報告されている(非特許文献2参照)。また乳酸桿菌の放射線防護剤としての有効性も報告されている(非特許文献3参照)。
国際出願公開パンフレット WO01/051079 J. Cancer Research, 1807-1812(2004) 菅原努ほか著、「放射線と医学」、共立出版株式会社、1986年 Radiat.Res. 125、293-297(1991)
本発明は、放射線被ばく、および癌の放射線治療や診断における生体障害を効果的に予防し、または抑制あるいは治療する薬剤であって、副作用が小さく、有効な薬剤を提供することを目的とする。
また、本発明の目的は、放射線被ばく、および癌の治療や診断における放射線による障害を有効に予防または抑制あるいは治療するための安価な薬剤を提供することにある。
本発明者等は、放射線被ばく、および癌の放射線治療や診断における生体障害(副作用)を効果的に予防または抑制あるいは治療する薬剤として、ラクトフェリンが有効であることを見出して本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、ラクトフェリンを有効成分とする抗放射線被ばく障害剤に関する。
ラクトフェリンを放射線の被ばく前あるいは被ばく後に投与することによって、放射線による障害を予防、抑制あるいは治療する効果を奏する。
また、ラクトフェリンは、通常食品としても流通しているものであるため、安価であり、かつ副作用がほとんど見られないという非常に大きな利点を奏する。
本発明は、ラクトフェリンを有効成分とする抗放射線被ばく障害剤を提供する。
本明細書において、“抗放射線被ばく障害剤”とは、放射線照射前あるいは放射線照射前から放照射中にかけて投与することにより放射線の被ばくによる生体障害を予防する効果を奏する薬剤、放射線照射後に投与することにより放射線の被ばくによる生体障害を抑制あるいは治療する薬剤を意味する。放射線とは、放射性崩壊によって放出される粒子(光子を含む)のつくるビームであって、α線、β線、γ線などがあり、さらにX線や、核反応、素粒子の相互転換で放出される粒子線、宇宙線なども含む。
(1)ラクトフェリン
ラクトフェリンは分子量が約80000程度の糖蛋白質である。ラクトフェリンは、トランスフェリンファミリー蛋白質と呼ばれる一群の蛋白質であり、鉄、銅、アルミニウム、バナジウム、亜鉛、ガリウム等の金属イオン、特に鉄イオンと結合する蛋白質である。ラクトフェリンは金属飽和型のホロ型、金属不飽和型或いは遊離型のアポ型のいずれのタイプであってもよい。また、部分的に飽和されていてもよい。また、ラクトフェリンの加水分解物、ラクトフェリン由来ペプチドも同様な抗放射線被ばく障害作用を示す範囲において、本発明の範囲とする。
ラクトフェリンは、牛の乳汁(牛乳)に含まれるものが有名であるが、その他、ウマ、ヒト、マウス、ラット、ヤギ等多くの哺乳動物の乳汁及び涙などの分泌物にも含まれている。また、これらの天然に得られるラクトフェリンの他、遺伝子工学的手法により得られたラクトフェリンも同様に使用可能である(例えば、下記文献参照:1.W.G. Gordon, M,L. Groves, and J.J. Basch, Bovine milk “red protein”: Amino acid composition and comparison with blood transferring. Biochemistry, 2, 817 (1963), 2.M-H. Metz-Boutigue, J. Jolles. J. Mazurier, F. Schoentgen, D. Legrand, G. Spike, J. Montreuil, and P. Jolles, Human lactoferrin: amino acid sequence and structural comparisons with other transferrins. Eur. J. Biochem, 145, 659-676 (1984), 3.G. Spok, B. Coddeville and J. Montreuil, Comparative study of the primary structures of sero-, lacto- and ovotransferrin glycans from different species. Biochimie , 70, 1459-1469 (1988), 4.B.F. Anderson, H.M. Baker, G.E. Norris, D.W. Rice, and E.N. Baker, Structure of human lactoferrin: Crystallographic structure analysis and refinement at 0.28 nm resolution. J.Mio.Bio., 209, 711-734 (1989), 5.P.P. Ward, C.S. Piddington, G. Cunningham, X.Zhou, R.D. Wyatt, and O.M. Conneely, Expression and functional analysis of recombinant human lactoferrin, “Lactoferrin Interactions and Biological Functions “ (Eds. By T.W. Hutchens and B.Lonnerdal), (Chapter 11), Humana Press, Totowa, pp.155-176 (1997), 6.S.Iyer, B.Lonnerdal, C.L. Day, E.N. Baker, J.W. Tweedie, Tai-Tung Yip, and T.W. Hutchens, Recombinant human lactoferrin and its variants,“Lactoferrin Interactions and Biological Functions “ (Eds. By T.W. Hutchens and B.Lonnerdal) , (Chapter 16), Humana Press, Totowa, pp.245-256 (1997), 7.C.Teng, H. Shi, N. Yang, and H. Shigeta, Mouse lactoferrin gene Promoter-specific regulation by EGF and cDNA cloning of the EGF-response-element binding protein -. “Advances in Lactoferrin Research“ (Eds. By G. Spikr, D. Legrand, J. Mazurier, A. Pierce, and J-P. Perraudin) , Advances in experimental medicine and biology Vol. 443, Plenum Press, New York, pp.65-78 (1998), 8.S.J. Kim, D-Y. Yu, Y-M. Han, C-S. Lee, and K-K. Lee, Cloning of human genomic lactoferrin sequence and expression in the mammary glands of transgenic animals, “Advances in Lactoferrin Research“ (Eds. By G. Spikr, D. Legrand, J. Mazurier, A. Pierce, and J-P. Perraudin) , Advances in experimental medicine and biology Vol. 443, Plenum Press, New York, pp.79-83 (1998), 9.S. kim, . Ju, K. Lee, M. Wu, I, Kwon, J. Lee, D. Min, and C. Sung, Expression of lactoferrin from Korean native cattle in yeast, “Lactoferrin: Structure, Function an Applications”, (Eds. by K.Shimazaki, H. Tsuda, M. Tomita, T. Kuwata, and J-P. Perraudin), Elsevier Science B.V., Amsterdam, pp.273-277 (2000), 10.S.J. Kim, Y-M. Han, D-Y. Yu, and K-K. Lee, Genomic human lactoferrin sequence induced high levels of protein expression in milk of transgenic mice, “Lactoferrin: Structure, Function an Applications”, (Eds. by K.Shimazaki, H. Tsuda, M. Tomita, T. Kuwata, and J-P. Perraudin), Elsevier Science B.V., Amsterdam, pp.279-288 (2000), 11.H. Anzai, F. Takaiwa and K.Katsumata, Production of human lactoferrin in transgenic plants, “Lactoferrin: Structure, Function an Applications”, (Eds. by K.Shimazaki, H. Tsuda, M. Tomita, T. Kuwata, and J-P. Perraudin), Elsevier Science B.V., Amsterdam, pp.265-271 (2000)。)
(2)投与形態及び投与方法
本発明において、ラクトフェリンを有効成分として含む抗放射線被ばく障害剤は様々な剤型とすることができる。投与経路は例えば、経口、静脈、皮下、筋肉投与等が挙げられる。予防効果という観点からは投与法が簡便である経口投与が好ましい。また、放射線被ばく後に効果を迅速に得るという観点からは動物実験では腹腔内投与で効果があるため、腹腔あるいはこれと同等の効果を奏する経路による投与が好ましい。
剤型としては、例えば、粉末、液剤、散剤、顆粒剤、錠剤、腸溶剤およびカプセル剤などの経口剤や、静脈、皮下、筋肉、腹腔内用等の注射剤、坐剤などの非経口剤が挙げられる。経口投与剤、注射剤等の形態で用いる場合には、本発明の効果を阻害しない範囲内で、これらの剤形に通常使用される様々な賦形剤や添加剤を使用することができる。
本発明において、抗放射線被ばく障害剤は医薬的に許容しうる担体もしくは希釈剤などを含有した組成物として使用することができる。このような担体もしくは希釈剤の例としては、例えば、澱粉類、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、デキストリン、マンニット、ソルビット、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、トラガカントゴム、ゼラチン、アラビアゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、微結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、寒天、アルギン酸ナトリウム、カオリンなどの固体希釈剤や、例えば、水、生理食塩水、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコ−ル、グリセリン、ハルトマン液、リンゲル液などの液体希釈剤をあげることができる。
本発明の抗放射線被ばく障害剤が所期の効果を発揮するためには、被投与体の年齢、体重、被ばくの程度、投与経路、投与方法等により異なり、適宜決定することができる。例えばラクトフェリンを1日50〜300mg/kg、より好ましくは100〜200mg/kg程度の範囲で使用することにより高い効果が認められる。
本発明のラクトフェリンを含む抗放射線被ばく障害剤は、全身被ばくが予期される原子力発電所作業員や放射線技師など、およびX線や重粒子線などの放射線が腫瘍の局所に照射されるがん患者に対して、被ばく前ないし直後に投与することができる。
(3)放射線被ばく障害に対する効果
実験として、0.1%のラクトフェリンを加えた飼料と通常の飼料(コントロール)をそれぞれ用いたマウス群を1ヶ月間飼育した後、6.8GyのX線を1回全身照射し、照射後、30日間の生存率を観察したところ、照射30日後の生存率は、コントロール群が62%であったのに対し、ラクトフェリン投与群では85%という高い生存率を示した。このような高い生存率を示した(図1)。また、マウス群に対して6.8GyのX線を1回全身照射した後、ラクトフェリンを腹腔内投与したところ、照射30日後の生存率は、コントロール群が約50%であったのに対し、ラクトフェリン投与群では90%以上もの高い生存率を示した(図6)。
ラクトフェリンがこのように高い放射線防護作用を示すメカニズムは明らかではないが、以下に述べるラクトフェリンのラジカルスカベンジャー能、腸内細菌への作用等が関与していると考えられる。また、照射後のLF腹腔内投与で生存率の上昇が観察されたことは、免疫系が大きく関与していることを示唆させる。
放射線被ばく障害は、基本的には放射線の電離作用によるDNA損傷に起因する。放射線は微量でもDNAを傷つけるが、生体にはそれを修復する機能が備わっている。しかし、大量の放射線による被ばくなど、何らかの原因でDNAが損傷したり、DNAの修復ができなくなったときに、細胞死や突然変異が起こり、様々な障害が現れてくる。
一般的に放射線抵抗性は抗酸化作用による活性酸素抑制および免疫機能の活性化により生ずるものと考えられている。生体の約70%は水分であるが、水に放射線があたるとフリーラジカルが発生する。放射線の生体に対する作用の多くは生体中の水の放射線分解によって生成する活性酸素やフリーラジカルによるものである。水の放射線照射により、スーパーオキシドアニオンラジカル(O2 -)とヒドロキシラジカル(・OH)という二つのフリーラジカルが生成する。生体には活性酸素やフリーラジカルを消去し、生体膜の過酸化を防ぐ強力な化学的な防御機構が存在しているが、このフリーラジカルを消去させることが生命の維持に不可欠となる。これらの障害から生体を防御するには、(1)スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)やカタラーゼのようにヒドロキシラジカルの発生源を阻止する、(2)鉄や銅などの金属をトラップし、ヒドロキシラジカルの発生を阻止する、(3)発生したヒドロキシラジカルをトラップして生体構成成分への障害を防ぐ、といったことが考えられる。
ラクトフェリンはスーパーオキシドに対する消去能は認められなかったが、ヒドロキシラジカルに対するラジカルスカベンジャー能を有することが明らかとなった(図2及び図3)。ラクトフェリンは鉄を含んでおり、阻止メカニズムとしては上記(2)の可能性が高いものと考えられる。
また、照射後のマウスの腸内細菌数及び腸内細菌組成についても測定したところ、菌数及び菌組成における変化が観察された。
コントロール群と比べてラクトフェリン投与群の照射後の腸内細菌数は、コントロール群は菌数が増加し、ラクトフェリン投与群は菌数が減少する傾向にあった(図4)。
また、コントロール群では10日後に菌数が増加したのに対し、ラクトフェリン投与群では30日後に菌数増加が見られた。すなわち、ラクトフェリン投与群では細菌の増殖が抑制された(図5)。
放射線照射の影響として、骨髄や脾臓などの造血器官や肝臓などの細胞が傷付けられることによって誘引される敗血症や多臓器不全がある。ラクトフェリンを投与することによって、放射線照射により免疫機能が低下している期間に、細菌の増殖が抑制されることが、生存率の向上に寄与していることが考えられる。
特に腸内細菌組成に関して、コントロール群では、Enterobavteriaceaeの割合が有意に多くなったのに対し、ラクトフェリン投与群ではEnterobavteriaceaeの増加は見られなかった。一方、Lactobacillusはコントロール群に対してラクトフェリン投与群では有意に増加した。Enterobavteriaceaeは、Escherichia coliなども含まれることから、著しい増加は身体にとって好ましくない。放射線照射により免疫機能が低下している期間に、Lactobacillusの増加によりEnterobavteriaceaeの増殖が抑制され、これが、生存率の向上に寄与していることが考えられる。
つぎに、実施例をあげて本発明を具体的に説明する。
実施例1
ラクトフェリンの抗放射線被ばく障害作用の測定
0.1%のLF(ラクトフェリン、株式会社森永乳業製)を含む完全精製飼料(AIN-93、飼料1kgの基礎組成は、(i)AIN-93ビタミン混合(酒石酸コリン添加)10g、(ii)AIN-93Gミネラル混合35g、(iii)コーンスターチ532g、(iv)カゼイン200g、(v)セルロースパウダー50g(いずれもオリエンタル酵母KK)、(vi)大豆油70g、(vii)L-シスチン3g、(viii)グラニュー糖100gを混合したものである。これにラクトフェリンを加える場合、コーンスターチ重量で調整する)を作成した。またコントロール飼料としてLFを加えないAIN-93飼料を調製した。ラクトフェリン投与群及びコントロール群の各群25匹の6週齢のC3H/Heマウスを、それぞれの飼料で一ヶ月間飼育した。
6.8GyのX線を一回全身照射し、照射後、30日間の生存率を観察した。なお、飼料はそれぞれ照射前と同じ飼料で飼育を続けた。結果を図1に示す。
図1から明らかなように、照射後30日目の生存率は、コントロール群では62%であったのに対し、ラクトフェリン含有飼料を用いた群では85%と高い生存率を示した。
実施例2
ラクトフェリンのラジカルスカベンジャー能の測定
(i)Cu(en)2反応で発生させた・OH(ヒドロキシラジカル)の50%を阻害するラクトフェリン濃度(IC50)をスピントラップ法により測定した。すなわち、活性酸素やラジカルの寿命は非常に短いため、スピントラップ剤を用いて安定なDMPO-O2-体ならびにDMPO-OH体とし、これをESR(日本電子製、JES-FR30S ESR分光器)で測定した。その結果、ラクトフェリンのIC50は0.0035mMであった(図2)。なお、・OH消去能を有することが知られているTroloxのIC50は15mM、GSH(グルタチオン)のIC50は0.17mMである。従って、ラクトフェリンは非常に低濃度で・OH消去能を示すといえる。
(ii)過酸化水素と紫外線を用いて発生させた・OHに対するラクトフェリンのIC50を同様に測定した。その結果、IC50は0.025mMであった(図3)。なお、コントロールとして用いたGSHのIC50は2.8mMである。従って、ラクトフェリンは非常に低濃度で・OH消去能を示し、(i)の結果を支持している。
実施例3
放射線照射による腸内細菌数及び細菌組成の変化
実施例1と同じラクトフェリン投与群及びコントロール群のマウスを作成し、5Gy放射線を照射した。照射前、照射5日後、10日後及び30日後における各マウスの腸内細菌数と細菌組成を以下のようにして測定した。
<腸内容物の取り出し・細菌の培養>
マウスをエーテル蒸気で麻酔、不動化後、大腸(結腸、直腸)を取り出した。大腸部分の内容物(糞)をピンセットで搾り出し、9倍量の滅菌生理食塩水(0.9%NaCl)を加えドリル型ホモジナイザーでホモジナイズした。なお、内容物の搾り出しからホモジナイズまでの操作は、CO2を充満させた箱の中で行った。
上記懸濁液を試料原液とし、常法に従って10段階希釈液を作り、ヘム鉄を加えたトリプトソイ寒天培地およびBL寒天培地表面に塗抹し、それぞれ好気、嫌気状態で培養(37℃)した。
培養24時間目に、発生コロニー(集落)数を計測した。生菌数は、腸内容物1gあたりの数値で示した。開腹から培養までの操作は、30分以内に行った。
<細菌の同定>
ヘム鉄入りのトリプトソイ寒天培地およびBL寒天培地から、TSI寒天培地、LIM寒天培地へと釣菌し、コロニーの形態、グラム染色、各性状試験などを行い、Bergey's Manual に従い同定を行った。嫌気性細菌の場合、TSI 寒天培地、LIM寒天培地での培養試験は、試験管を嫌気条件下におき、37 ℃で、24時間行った。
なお、偏性嫌気性細菌の確認は、嫌気培養を行ったBL寒天培地から新たなBL寒天培地へと20個のコロニーを白金耳で釣菌し、好気条件下におき、37 ℃で、24時間培養することにより行った。
<統計>
JMP(米国SASインスティチュート社、バージョン5)を使用し、分析を行った。交互作用があったものは、最小2乗平均差のTukeyの検定にかけて比較を行った。危険率p<0.05を有意差ありとした。
5Gyの放射線照射がマウス腸内細菌数に及ぼす影響を図4に示す。図4において、a、bは、有意差の有無を表しており、異なるアルファベットは有意差があることを示す。例えば、5日後(5d)におけるコントロール群のaとラクトフェリン投与群のaは、有意差がないことを示し、10日後(10d)におけるコントロール群のbとラクトフェリン投与群のaは、有意差があることを示している。
腸内細菌数は、コントロール群では照射後10日目に有意に増加した。ただし、コントロールでは10日目に菌数は著しく増加したのに対し、ラクトフェリン投与群では細菌の増殖が起こるまで(30日)に時間を要した。ラクトフェリンの投与は、動物の免疫活性を高めることが知られていることから、放射線の照射により免疫力の低下した時期に、腸内細菌数の増加を抑制すると共に、有用菌数を増加し、悪玉菌数を抑制したと考えられる。これにより、消化管を経由した細菌の体内への侵入を抑えると共に、体内に侵入した細菌や異物の処理能を高めることによって、生残率を高めていることが考えられる。
5Gyの放射線照射がマウス腸内細菌叢(組成)に及ぼす影響を図5に示す。図5において、a、b、cは、有意差の有無を表しており、異なるアルファベットは有意差があることを示す。
Latobacillus sp.については、照射前では、コントロール群に比べ、ラクトフェリン投与群で有意に高かったほか、照射後5日目および30日目にもラクトフェリン投与群に高い値がみられた。
Enterobacteriaceaeの割合については、照射前にはコントロール群、ラクトフェリン投与群の間に有意な差はみられなかったが、照射後にはコントロール群においてもラクトフェリン投与群においても菌数が増加した。30日目では、ラクトフェリン投与群において、コントロール群に比べて有意に低い値が認められた。
Bacillus spは、照射前ではコントロール群、ラクトフェリン投与群共に検出されたが、照射後では、両群とも検出されなかった。Streptococcus sp.の検出率は、コントロール群ではすべての期間で検出されたのに対し、ラクトフェリン投与群では、0日目にのみ検出され、その後は検出されなかった。Staphylococcus sp.は、0日目および5日目にはコントロール群、ラクトフェリン投与群共に検出されたが、10日目以降では両群共、検出されなかった。Corynebacterium sp.は、0日目と30日目のみにコントロール群、ラクトフェリン投与群共に検出されたが、両群に有意な差は認められなかった。Bacteroides sp.には、照射の影響は認められなかった。
以上のように、ラクトフェリン投与群では、照射前から30日目にわたって、Latobacillus sp.の高い値がみられ、一方、Enterobacteriaceaeの割合については、照射前にはコントロール群、ラクトフェリン投与群の間に有意な差はみられなかったが、30日目では、ラクトフェリン投与群において、コントロール群に比べて有意に低い値が認められた。ラクトフェリン投与群では、Lactobacillusの増加により身体にとって好ましくないEnterobavteriaceaeの増殖が抑制され、生存率の向上に寄与したことが考えられる。
実施例4
後投与によるラクトフェリンの抗放射線被ばく障害作用の測定
6週齢のC3H/Heマウス(雄)52匹を、AIN-93完全精製飼料(ラクトフェリンなし)で2週間飼育した後、6.8GyのX線を全身照射した。照射したマウスの26匹には、照射後直ちに生理食塩水で溶解したLF、0.3ml(ラクトフェリン量は4mg/匹)を腹腔内投与した。残りの26匹はコントロールとした。照射後、両群のマウスとも、AIN-93完全精製飼料(ラクトフェリンなし)で飼育し、生存率を観察した。結果を図6に示す。
図6から明らかなように、放射線投与後にラクトフェリンを投与した場合にも、コントロール群と比較して生存率が大幅に向上した。
一時的な全身被ばくが予期される原子力発電所作業員や放射線技師、および放射線の照射を局所に受ける癌患者などにおいて、予め投与することにより放射線被ばく障害の予防薬としてあるいは被ばく後に治療薬として使用できる。また、航空機乗務員や宇宙での作業に従事する者のように長期間の低線量放射線被ばく者に対しても、継続して長期間にわたり投与することができる。
ラクトフェリン投与マウスの放射線照射後の生存率を示す図である。 Cu(en)2反応で発生させた・OH(ヒドロキシラジカル)を阻害するラクトフェリン濃度を示すグラフである。縦軸は相対強度を示す。 過酸化水素と紫外線で発生させた・OH(ヒドロキシラジカル)を阻害するラクトフェリン濃度を示すグラフである。縦軸は相対強度を示す。 ラクトフェリン投与マウスの放射線照射後の腸内細菌数の変化を示す図である。 ラクトフェリン投与マウスの放射線照射後の腸内細菌組成の変化を示す図である。 放射線照射後に、ラクトフェリンを腹腔内投与したマウスの生存率を示す図である。

Claims (1)

  1. ラクトフェリンを有効成分とする抗放射線被ばく障害剤。
JP2006135194A 2006-05-15 2006-05-15 抗放射線被ばく障害剤 Pending JP2007302640A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006135194A JP2007302640A (ja) 2006-05-15 2006-05-15 抗放射線被ばく障害剤

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006135194A JP2007302640A (ja) 2006-05-15 2006-05-15 抗放射線被ばく障害剤

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2007302640A true JP2007302640A (ja) 2007-11-22

Family

ID=38836895

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006135194A Pending JP2007302640A (ja) 2006-05-15 2006-05-15 抗放射線被ばく障害剤

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2007302640A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2014017046A1 (ja) 2012-07-23 2014-01-30 国立大学法人東京大学 放射線障害の予防及び/又は治療剤
CN104643041A (zh) * 2013-11-18 2015-05-27 中国医学科学院放射医学研究所 一种防止放射性核素污染的食品组合

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000514399A (ja) * 1995-05-02 2000-10-31 グロペップ プティ リミテッド 化学療法または放射線による消化管損傷を防止または治療する方法
JP2004525908A (ja) * 2001-02-28 2004-08-26 テンプル・ユニバーシティ−オブ・ザ・コモンウェルス・システム・オブ・ハイアー・エデュケイション 細胞及び組織をα,β不飽和アリールスルホンにより電離放射線から防護する方法

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000514399A (ja) * 1995-05-02 2000-10-31 グロペップ プティ リミテッド 化学療法または放射線による消化管損傷を防止または治療する方法
JP2004525908A (ja) * 2001-02-28 2004-08-26 テンプル・ユニバーシティ−オブ・ザ・コモンウェルス・システム・オブ・ハイアー・エデュケイション 細胞及び組織をα,β不飽和アリールスルホンにより電離放射線から防護する方法

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2014017046A1 (ja) 2012-07-23 2014-01-30 国立大学法人東京大学 放射線障害の予防及び/又は治療剤
US9895331B2 (en) 2012-07-23 2018-02-20 The University Of Tokyo Prophylactic and/or therapeutic agent for radiation damage
CN104643041A (zh) * 2013-11-18 2015-05-27 中国医学科学院放射医学研究所 一种防止放射性核素污染的食品组合

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Rosen et al. New approaches to radiation protection
Duran-Struuck et al. Principles of bone marrow transplantation (BMT): providing optimal veterinary and husbandry care to irradiated mice in BMT studies
JP2019081804A (ja) 疾患を治療または予防する、あるいは寿命を延ばすのに有益な微生物の増殖促進性組成物及び方法
Wambi et al. Dietary antioxidants protect hematopoietic cells and improve animal survival after total-body irradiation
Michalak et al. The effect of metal-containing nanoparticles on the health, performance and production of livestock animals and poultry
CN114028387B (zh) Brusatol在制备抗辐射损伤药物中的应用
JP6400638B2 (ja) タンパク質の機能を保存する方法及びタンパク質の保管方法
Wang et al. Radiation injury and gut microbiota-based treatment
Shakal et al. Evaluation of antibacterial activity of zinc oxide nanoparticles against avian mycoplasmosis with assessment of its impact on broiler chickens’ performance and health
JP2007176879A (ja) 酵母を有効成分とする放射線防護剤
JP2007302640A (ja) 抗放射線被ばく障害剤
US20210121538A1 (en) Interactional Biosystem
JPS62174021A (ja) 抗酸化生体防御剤
EP0691848A1 (en) Immunopotentiative and infection-protective agent, containing two or more bacillus, egg white and garlic
Park et al. Radioprotection of deinococcal exopolysaccharide BRD125 by regenerating hematopoietic stem cells
Nose et al. Rescue of lethally irradiated mice from hematopoietic death by pre-exposure to 0.5 Gy X rays without recovery from peripheral blood cell depletion and its modification by OK432
RU2123344C1 (ru) Средство для раннего лечения радиационных и комбинированных радиационно-термических поражений
Javaregowda et al. Roles of mesenchymal stem cells (MSCs) in bacterial diseases
Kalechman et al. Increased DNA repair ability after irradiation following treatment with the immunomodulator AS101
Changizi et al. The Effect of Lactobacillus Casei and Lactobacillus Acidophilus Probiotic Isolates on the Expression of BCL2, BAX and CASPASE3 Genes in Wistar Breeding Rat Albindor to evaluate Gamma Irradiation Induced Apoptosis
Varnalidis et al. Synbiotics administration leads to attenuated mucosal inflammatory neutrophil infiltration and increased hematocrit in experimental ulcerative colitis
Galıp et al. The Effect of Saccharomyces Cerevisiae and Spirulina Platensis on Glutathione and Leucocytes Count in Rabbits
AU2016222458B2 (en) Compositions containing Nucleosides and Manganese and their Uses
JP2006335656A (ja) Th1/Th2生体反応インバランスを調節するための組成物
Alaqil Propolis inclusion into broiler diets improves the immunomodulation and productive performance after challenge with Escherichia coli infection

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20081210

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20110829

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20111028

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120206

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20120618