JP2007301387A - 人工軟骨組織の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い強度と生体適合性を有する人工軟骨組織の製造方法の提供。
【解決手段】哺乳動物から採取した軟骨から軟骨由来細胞を単離し、単離した軟骨由来細胞を、該哺乳動物種由来の血清、または血漿存在下で培養する人工軟骨組織の製造方法。当該人工軟骨組織は、外因性の足場材料や異種の夾雑タンパク質を実質的に含まず、縫合糸で縫着可能な一定の力学的強度を有し、軟骨の慢性退行性疾患である変形性関節症の軟骨欠損部位に対する治療方法として有効である。
【選択図】なし

Description

本発明は、組織工学的手法を用いて調製された人工軟骨組織の製造方法に関するものである。
関節軟骨は、骨端を被覆し、関節の円滑な動作を担う重要な組織である。関節軟骨は、細胞外基質(以下、基質)とよばれる非細胞性の組織の中に、軟骨細胞が点在している構造を呈しており、その中に神経と血管は存在しない。このような細胞が基質中に点在している構造、すなわち、単位体積あたりに存在する細胞数が少ないこと、並びに血管が存在しないことは、障害を生じた際の自己再生能力が極めて乏しいことを意味している。
加齢や外傷などにより関節軟骨が損傷すると、関節の円滑な動きが阻害され、関節疼痛を引き起こす。軟骨そのものには神経は存在しないが、関節を構成する関節包や軟骨下骨(軟骨の下にある骨)には知覚神経が存在するため、痛みを感じることになる。
軟骨損傷部位において、軟骨細胞を含む軟骨組織が残存していれば、成長因子などによる薬物療法の可能性があるが、軟骨組織そのものが欠損している場合は、外部から軟骨細胞または軟骨組織を移植するか、軟骨の下部にある骨髄から骨髄細胞を誘導し、軟骨を形成させる以外に軟骨を再生させる方法はない。骨髄から骨髄細胞を誘導し、軟骨を形成させる方法は、現在、外傷性の軟骨損傷に適用されているが、再生軟骨は力学的強度が劣る線維性軟骨であるため、数年間しか関節機能を維持することができないといわれている。
また、軟骨の慢性退行性疾患である変形性関節症の軟骨欠損部位に対しては、骨髄細胞を誘導して軟骨を形成させることは難しく、末期の変形性関節症に対する治療方法として、人工関節置換術しかないのが現状である。人工関節置換術は関節疼痛の改善に有効であるが、関節機能は大幅に制限され、人工関節の寿命も15年程度(患者の骨と人工関節の間に緩みが生じる)であるため、「最後の手段」として位置づけられている。
前記の理由から、軟骨細胞または軟骨組織の移植による治療方法に注目が集まっている。その方法の一つとして、遺体または自己の軟骨をその下の骨(軟骨下骨)とともに採取し、軟骨欠損部に移植する手段が挙げられる。遺体から採取された骨軟骨移植片を使用する方法は、我が国では提供者(ドナー)不足や感染症の危険性により、ほとんど実施されていない。患者自身の非荷重部位から採取された骨軟骨移植片を使用する方法は、モザイクプラスティーとよばれ、最近、多くの臨床例が報告されつつあるが、採取量に限度がある点、採取部位に大きな骨軟骨欠損創が残る点、などが欠点である。
軟骨細胞または軟骨組織を移植する、もう一つの治療方法として、培養軟骨細胞または培養軟骨組織を補填する方法がある。この方法は、患者本人または他人から少量の軟骨組織を採取し、軟骨細胞を分離後、目的とする細胞数、または形状に達するまでin vitroで軟骨細胞を培養する点が特徴的である。一定期間の培養後、培養軟骨細胞または培養軟骨組織(以下、軟骨補填体)は、軟骨欠損部位に移植される。このような手法は一般的には、「再生医療」または「ティッシュエンジニアリング」あるいは「組織工学」とよばれており、軟骨に限らず、種々の組織、器官について検討されている。細胞分化の制御技術の進歩により、最近では、胚性幹細胞や間葉系幹細胞から培養軟骨細胞を調製できることも示されている。
培養により調製された人工軟骨組織を移植する場合、種々の形態が検討されている。先駆的な例としては、患者から分離した軟骨細胞を単層培養してその数を増やした後、細胞懸濁液として、軟骨欠損部位に移植する方法(例えば、非特許文献1参照。)が挙げられる。この方法では、移植物が散逸しないように、移植後に移植部位を骨膜のパッチで被覆している。
他の方法として、患者から分離した軟骨細胞をアテロコラーゲンのスキャホールド(足場材料)内に播種し、培養した後、ペースト状のコラーゲンゲルとして、移植する方法(例えば、特許文献1参照。)が報告されている。
さらに、軟骨細胞のスキャホールドとしては、前述のアテロコラーゲンの他に、乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)などの生体吸収性合成ポリマーも利用されている。これら合成ポリマーは初期強度が高く、また、任意の3次元形状を付与することが可能なので、関節軟骨以外に、培養耳介軟骨の調製にも利用されている(例えば、非特許文献2参照。)。
特開2001−224678号公報 N. Engl. J. Med. 1994,331, 889−895. Plast. Reconstr. Surg. 1999,103, 1111−1119
しかしながら、非特許文献1の方法では、軟骨細胞を単層培養すると、軟骨細胞本来の形質が一部消失(脱分化)するため、移植物に要求される事項は「再分化」「基質の生合成」「欠損部位の修復」と多くなり、必然的に修復に要する時間も長くなる。その期間における移植細胞の散逸も多く、効果を疑問視する研究者も多い。
また、特許文献1の方法でも、移植後に移植部位を骨膜のパッチで被覆している。この場合、軟骨細胞の脱分化は最小限に抑えられるため、単層培養された軟骨細胞に比べて好結果が期待されるが、骨膜のパッチが必要な点は欠点である。また、ペースト状であるため、その強度は本来の軟骨に比べて非常に弱い。このことは本来の軟骨になるまでに長期間を要することや、関節の荷重部位軟骨への適応の困難さを意味している。
さらに、非特許文献2の方法では、関節軟骨に対しては、合成ポリマーを利用した場合、移植後の生着率が芳しくない。軟骨は無血管組織で血流がないため、生体吸収性の合成ポリマーであっても、その消失に長時間を要し、消失するまでの期間、移植物と周囲組織との癒合や関節軟骨の基質組成への変化を阻害することがあるためである。スキャホールドの使用に伴う種々の課題を根本的に解決するためには、スキャホールドを実質的に含まない軟骨補填体が理想である。
一方、培養に使用される血清または血漿については、調製された人工軟骨組織の安全性上、非常に大きな問題を含んでいる。すなわち、これまでに報告されている、培養軟骨細胞または培養軟骨組織の多くは、ウシ胎子血清(FBS)を利用して調製されている。FBSは軟骨細胞に対して、優れた増殖促進作用や基質合成促進作用を示すため、人工軟骨組織を調製する上で非常に有用であるが、ウシ海綿状脳症(BSE)の危険性や人工軟骨組織に夾雑するFBS由来のタンパク質による免疫原性の危険性がある。これらの危険性を完全に排除するためには、無血清培地や患者自身の自家血清を用いることが最適であるが、縫着可能で生着性に優れた、すなわち、一定以上の力学的強度を有する、人工軟骨組織を調製することが困難であった。
以上のように、外因性の足場材料と異種タンパク質を実質的に含まず、力学的強度に優れ、良好な生着を期待できる人工軟骨組織は、いまだに開発されていないのが実情である。移植に際しては、骨膜のパッチ等は用いずに、目的部位に縫着できる人工軟骨組織が望ましい。
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、外因性の足場材料や異種の夾雑タンパク質を実質的に含まず、縫合糸で縫着可能な一定の力学的強度を有する人工軟骨組織の調製方法を確立し、併せて、一定の力学的強度または組成を有し優れた生着性を示す人工軟骨組織の製造方法を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、本発明者らは同種または自家の血清を用いた人工軟骨組織の調製方法、並びに調製された人工軟骨組織の組成、力学的強度、並びに生着性について鋭意検討を重ねた結果、驚くべきことに生後6月以後の哺乳動物の血清または血漿とトランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)スーパーファミリーに属する成長因子とを含む条件下で軟骨由来細胞を培養することにより、コラーゲン含量が高く、かつ強度に優れた生体適合性を有する人工軟骨組織が得られることに想到し、本発明を完成するに至った。
本発明は、哺乳動物から採取した軟骨から軟骨由来細胞を単離し、単離した軟骨由来細胞を、該哺乳動物種由来の血清、または血漿存在下で培養する人工軟骨組織の製造方法を提供する。
上記発明においては、血清、または血漿が、生後6月以上の哺乳動物由来の血清、または血漿であることとしてもよい。
また、血清、または血漿が、ヒト由来の血清、または血漿であることとしてもよい。
また、上記発明においては、トランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)スーパーファミリーに属する成長因子を含む培地中で、軟骨由来細胞を培養する工程を含むことが好ましい。
この場合に、上記発明においては、培地中に、トランスフォーミング成長因子−βスーパーファミリーに属する成長因子が、20ng/mL以上含有されていることが好ましい。
また、この場合に、トランスフォーミング成長因子−βに属する成長因子が、トランスフォーミング成長因子-β1,2または3であることとしてもよい。
また、本発明の参考例として、実質的に異種タンパク質および実質的に軟骨由来細胞以外由来のスキャホールドを含まず、哺乳動物の軟骨由来細胞と、該軟骨由来細胞が形成した細胞外基質とを含む人工軟骨組織であって、次の(1)または(2)を満たす人工軟骨組織を提供する。
(1)
毎秒0.5mmの速度で圧縮したとき、300kPa以上の30%圧縮時応力を有する。
(2)
組織乾燥重量1mg当たり113μg以上のコラーゲンを含む。
上記参考例においては、哺乳動物の軟骨由来細胞を、該哺乳動物種由来の血清、または血漿存在下で培養して得られることが好ましい。
また、上記参考例においては、血清、または血漿が、生後6月以上の哺乳動物由来の血清、または血漿であることが好ましい。
さらに、哺乳動物がヒトであることとしてもよい。
また、上記参考例においては、トランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)スーパーファミリーに属する成長因子を含む培地中で培養して得られることとしてもよい。
また、上記参考例においては、培地中に、トランスフォーミング成長因子−βスーパーファミリーに属する成長因子が、20ng/mL以上含有されていることが好ましい。
本発明により、強度に優れた人工軟骨組織を製造することができるという効果を奏する。
以下、本発明の一実施形態に係る人工軟骨組織とその製造方法について詳説する。
まず、本実施形態に係る人工軟骨組織について説明する。
本実施形態に係る人工軟骨組織は、哺乳動物の軟骨由来細胞と、該軟骨由来細胞が形成した細胞外基質とを含む人工軟骨組織であって、次の(1)または(2)を満たしている。
(1)毎秒0.5mmの速度で圧縮したとき、300kPa以上の30%圧縮時応力を有する。
(2)組織乾燥重量1mgあたり113μg以上のコラーゲンを含む。
この場合において、哺乳動物とは、特に限定はされないが、例えば、サル、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ウシ、ブタ、ウサギ、ネズミ、ヒト等が例示され、ウシ以外の哺乳動物であることがより好ましい。その中でも殊にヒトが好ましい。
また、軟骨由来細胞とは軟骨中に存在する細胞を指称し、好ましくは、生体から採取した軟骨から細胞外基質を分解して除去して得られる細胞である。
人工軟骨組織における細胞外基質の主要成分はコラーゲンとプロテオグリカンである。主たるコラーゲンはII型で、その他、I型、IX型およびXI型を僅かに含む。また、プロテオグリカンの大部分はアグリカンである。
本実施形態における人工軟骨組織のコラーゲン含量は113μg/mg以上であり、150μg/mg以上であることが好ましく、200μg/mg以上であることが最も好ましい。このようなコラーゲン含量を有する本実施形態に係る人工軟骨組織は、引っ張り強度および圧縮強度のいずれも優れ、高い生着率を期待できるからである。
本実施形態に係る人工軟骨組織の強度は、後述の圧縮強度試験方法で、30%圧縮時応力が300kPa以上であることが好ましく、500kPa以上であることが最も好ましい。かかる圧縮時応力を有する本発明人工軟骨組織は殊に生体生着率が高いからである。
本実施形態に係る人工軟骨組織は、上記コラーゲン含量の好ましい含量を有するか、あるいは上記好ましい強度を有するが、いずれも好ましい範囲であることが最も好ましい。
また、本実施形態に係る人工軟骨組織は、軟骨細胞以外由来のスキャホールドを実質的に含まない。すなわち、軟骨組織は一般的に高い弾力性と耐疲労性を有する。したがって、これらの性質は人工軟骨組織においては必須となる。一般にこれらの性質を担保するために、外因性のスキャホールドが人工軟骨組織に使用されることがあるが、本実施形態に係る人工軟骨組織はこのような外因性のスキャホールドを有しなくとも、高い弾力性、耐疲労性を有している。ここで、「実質的に含まない」には、意図的に添加していないことが含まれる。
このような本実施形態に係る人工軟骨組織は、哺乳動物の軟骨由来細胞を、該哺乳動物種由来の血清または血漿存在下で培養して得られる。
ここで、血清または血漿とは、軟骨由来細胞を採取した哺乳類と同種の動物から採取した血清または血漿であればいずれも使用することが可能である。その中でも殊に生後6月以上の哺乳動物由来の血清または血漿であることが好ましい。
次に、本実施形態に係る人工軟骨組織の製造方法について説明する。
本実施形態に係る人工軟骨組織の製造方法は、哺乳動物から軟骨由来細胞を単離し、単離した軟骨由来細胞を培養して軟骨組織を製造する方法であって、軟骨由来細胞の培養を該哺乳動物種由来の血清または血漿存在下で行うものである。
ここで、血清とは、動物の動脈または静脈から採取した血液を適切な容器内に放置して凝固させ、その凝固物(血餅とよばれる)を遠心分離などにより除いた結果、上清として得られる淡黄色の液のことであり、血液の成分から、血球といくつかの血液凝固因子が除かれている。本発明における血漿とは、動物の動脈または静脈から採取した血液から血球を除いた画分のことで、通常、血液に血液凝固阻止剤を加えて遠心分離することにより、上清として得られる淡黄色の液のことである。
本実施形態に係る人工軟骨組織は、さらに具体的には、例えば、以下の方法により調製することができる。
(1)軟骨組織からの細胞の分離
本工程において、軟骨を無菌的に採取後、採取した軟骨を、血清または血漿(以下、「血清類」という)を含まない培地中でタンパク質分解酵素を用いて前処理したのち、コラゲナーゼと血清類を含む培地で軟骨を処理し、細胞を分離する。
ここで、タンパク質分解酵素とは、パパイン、トリプシン、プロテアーゼ、プロナーゼなど、タンパク質を分解することが知られている酵素である限りにおいて使用することができる。このような酵素の使用量および処理時間は、採取した軟骨組織から軟骨細胞を得るのに十分な濃度および処理時間が好ましいが、このような濃度や処理時間は、当業者であれば容易に適宜調整することが可能である。
(2)細胞の単層培養
本工程において、(1)で分離した軟骨細胞を、線維芽細胞成長因子、インシュリン様成長因子、血清類を含む培地中で培養する。
ここで、培地とは、軟骨細胞の培養に使用される培地である限りにおいて特に限定はされないが、好ましくはダルベッコの変法イーグルおよびハムF12倍地が例示され、これらを1:1で含む培地が最も好ましい。
本工程で使用される線維芽細胞増殖因子は、特に塩基性線維芽細胞増殖因子が好ましい。その使用濃度は1ng/mL〜500ng/mLが例示され、特に10〜300ng/mLが好ましい。
本工程で使用されるインシュリン様成長因子は、特に限定はされないが、インシュリン様成長因子Iが好ましい。その使用濃度は1ng/mL〜1000ng/mL、好ましくは50ng/mL〜500ng/mLが例示される。
本工程で使用される血清類は、軟骨細胞を採取した哺乳動物と同種の動物由来である。このような血清類の培地への添加量は3〜30%、好ましくは5〜20%程度が例示される。
本工程における培養は、細胞数が少なくとも5×10個以上に増加するまで続ける。
なお、培地にはその他の物質(例えば抗生物質など)が含まれていてもよい。
(3)三次元培養
本工程では、前工程で得られた軟骨細胞を培養皿から剥離して、細胞を分散させた後、アルギン酸ナトリウムゲルに細胞を包埋し、かかるゲル中の前記細胞を培地中において培養する。
軟骨細胞を剥離し、分散するために使用する物質として、コラゲナーゼやプロテアーゼ、プロナーゼ等のタンパク質分解酵素を用いることができる。これらの酵素の添加量および処理時間は、当業者であれば適量を適宜選択することが容易に可能である。
本工程における培地は、(2)の工程における培地と同じである。かかる培地は、(2)の工程と同様にインシュリン様成長因子Iや血清類を含む。
本工程においては、細胞をアルギン酸ナトリウムゲルに包埋する。かかる包埋は、例えば、遊離した細胞をアルギン酸ナトリウムを含む生理的食塩水中に分散させ、かかる生理的食塩水をカルシウムイオン(例えば塩化カルシウムなど)を含む液に滴下して、アルギン酸ナトリウムを凝集させてゲルを形成して行われる。
このような状態で、細胞を10〜20日間、好ましくは12〜16日間培養する。
(4)人工軟骨組織の形成
キレート剤によりアルギン酸ゲルを溶解させ、軟骨細胞を回収後、培地に懸濁した軟骨細胞を所望の形状の培養容器へ移し、培養する。培地にはトランスフォーミング成長因子−βスーパーファミリーに属する成長因子とインシュリン様成長因子、自家または同種血清類を添加し、培養する。
ここで、キレート剤とは、例えば、エチレンジアミン四酢酸、クエン酸などが例示される。かかるキレート剤は、培養した細胞に悪影響を与えない限りにおいてその種類は限定されない。このようなキレート剤の使用量、濃度はアルギン酸ゲルが溶解する様に、当業者であれば適宜調整することが可能である。
また、トランスフォーミング成長因子−βスーパーファミリーに属する成長因子とは、トランスフォーミング成長因子−βと構造の類似した一群のペプチド性因子のことで、約200〜400アミノ酸からなる前駆体として産生されたのち、C末端側の110〜140アミノ酸からなる部分が切断され、この部分が活性本体となる点、並びに活性本体のC末端側のペプチドにおいて、7個のシステイン残基が保存されている点、の2点の特徴を有している。具体的には、トランスフォーミング成長因子−β1,β2,β3,アクチビン−A,B,AB,C,E,インヒビン−A,B,フォリスタチン、骨形成因子−2,3,4,5,6,7,8,増殖分化因子−5,6,7,8,9,11,などの成長因子類を意味する。
アルギン酸ゲルが溶解した後に、軟骨細胞を遠心分離、濾過などで回収する。このようにして得られた細胞を、トランスフォーミング成長因子−βスーパーファミリーに属する成長因子(好ましくはトランスフォーミング成長因子−β1)とインシュリン様成長因子(好ましくはインシュリン様成長因子I)を含む培地中で培養する。トランスフォーミング成長因子−βは、培地中に5ng/mL〜200ng/mL、特に、10ng/mL〜50ng/mL含まれることが好ましい。また、インシュリン様成長因子は1ng/mL〜1000ng/mL、特に、50ng/mL〜500ng/mLが培地中の好ましい濃度として例示される。
なお、培地は、(2)の工程と同様であり、適宜抗生物質を添加してもよい。
本工程で使用される血清類は、(2)の工程記載の血清類と同様であり、軟骨細胞を採取した哺乳動物と同種の動物由来である。このような血清類の培地への添加量は3〜30%、好ましくは5〜20%程度が例示される。
以下、本実施形態に係る人工軟骨組織とその製造方法を実施例を用いて、より具体的に説明する。
測定例1:人工軟骨組織の力学的強度の測定
(1)引裂強度試験
直径5mm、厚さ1mmに調製した人工軟骨組織を試料として使用した。試料の中心部に長さ約10cmの6−0ナイロン縫合糸(松田医科工業株式会社)を2本通し、互いの縫合糸が交差しないように注意して、各縫合糸の両端を輪状に結紮した。次に、一方の縫合糸を固定し、他方の縫合糸をデジタルフォースゲージ(日本電産シンポ株式会社)に固定し、4.8mm/分の速度で牽引した。荷重を経時的に記録し、人工軟骨組織が破断した時の荷重(単位はN)を記録した。測定時の室温は25℃とした。移植において、人工軟骨組織を周囲の軟骨と縫着する際、6−0ナイロン糸を用いるので、6−0ナイロン糸に対する引裂強度を測定した。
(2)圧縮強度試験
直径3mm(面積7.07mm)、厚さ1mmに調製した人工軟骨組織を試料として使用した。試料をクリープメータ(RE2−33005S、株式会社山電)の試料台にのせ、クリープメータのプランジャーで試料を0.5mm/秒の速度で圧縮した。試料の圧縮率と荷重を経時的に記録し、試料が30%圧縮されたときの応力(単位はkPa)を測定した。測定時の室温は25℃とした。
測定例2:人工軟骨組織の生化学的性状
(1)試料の前処理
試料を凍結乾燥した後、乾燥重量を測定した。次に、1mg/mLのプロナーゼ(Calbiochem社)を含む5mmol/Lの炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.5)を1mL加え、密栓した後、60℃で5時間消化した。消化液を1500Xgで15分間遠心分離し、得られた上清をコラーゲン含量の分析用試料とした。
(2)コラーゲン含量
Woessner JF. Jrの方法(Arch. Biochem. Biophys., 1961, 93, 440-447)に従って、加水分解した試料中のヒドロキシプロリンを測定することにより算出した。
前処理で得られた試料の100μLをガラスバイアルビン(08−CPV型,Chromacol社)にとり、同量の塩酸(和光純薬工業株式会社)を加え、4フッ化エチレン樹脂製セプタム付アルミキャップ(8−AC−TST1型,Chromacol社)で密栓後、120℃で16時間加水分解した。前処理で用いたプロナーゼを含む5mmol/Lの炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.5)を陰性対照試料とした。また、濃度既知のブタII型コラーゲン溶液(Chondrex社)を標準試料として使用した。
加水分解した試料の一定量を別にとり、蒸留水を加えて20倍希釈した。前処理試料に比較して、都合、40倍希釈となる。希釈試料の100μLをガラス試験管にとり、水酸化ナトリムを共存させた真空デシケーター内で減圧、乾固した。乾燥した試料に蒸留水を加え、Woessner JF.Jrの方法に従って、発色後、530nmにおける吸光度を測定した。標準試料の吸光度を基にして検量線を作成し、その検量線から各試料中のコラーゲン含量を算出した。
(実施例1)
ブタ関節軟骨由来の細胞を用いた人工軟骨組織の調製とその力学的並びに生化学的性状
1.細胞の分離
生後約1年齢のLWD種ブタの後肢を有限会社下田畜産から購入した。膝関節を開放後、大腿骨の関節軟骨を無菌的に採取した。以降、Mok S.S.らの方法(J. Biol. Chem., 1994, 269, 33021-33027)を一部、変更して、関節軟骨由来の細胞(以下、軟骨細胞と記載する)を分離した。
採取した軟骨を、0.2%のプロナーゼ(Calbiochem社)と50μg/mLのゲンタマイシン(Invitrogen社)を含むDMEM/F−12培地(ダルベッコ変法イーグルとハムF12を1:1で含む培地,Invitrogen社)に入れ、スターラーで攪拌しながら5%のCO存在下、37℃で1時間処理した。培地を除去したのち、残渣に0.025%のコラゲナーゼ−P(Roche社)と5%のブタ血清(Invitrogen社)を含む培地を加え、5%のCO存在下、37℃で16時間消化した。消化後、細胞を洗浄し、70μmのセルストレーナー(Becton Dickinson社)で回収し、血球計算盤を用いて細胞数を計測した。
2.単層培養
Trippel
S.B.らの方法(J. Bone and Joint Surg., 1993, 75, 177-189)を一部、変更して、以下のように実施した。分離した軟骨細胞を、10ng/mLの塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF、科研製薬株式会社)、100ng/mLのインシュリン様成長因子I(IGF−I、藤沢薬品工業株式会社)、10%のブタ血清、25μg/mLのL−アスコルビン酸(Sigma社)、10μg/mLゲンタマイシンを含むDMEM/F−12培地に、2×10個/mLになるように細胞数を調整したのち、その30mLを直径15cmの培養皿(Becton Dickinson社)に播種した。
その後、5%のCO存在下、37℃で6日間培養し、次の工程に必要な細胞数(9.4×10個)を確保した。培地は一日おきに交換した。
3.三次元培養
単層培養された軟骨細胞を含む培養皿に、0.2%のプロナーゼと50μg/mLのゲンタマイシンを含むDMEM/F−12培地を加え、5%のCO存在下、37℃で15分間処理した。剥離した細胞を含む培地を回収し、300×gで遠心分離して、上清を廃棄した。残渣に0.025%のコラゲナーゼ−Pと5%のブタ血清を含む培地を加え、5%のCO存在下、37℃で1時間消化した。分散した細胞を、1.2%のアルギン酸ナトリウム(ISP社)を含む生理食塩液に2×10個/mLの密度で懸濁し、以下、Flechtenmacher J. らの方法(Arthritis Rheum., 1996, 39, 1896-1904)を一部変更して、アルギン酸ゲルを用いた三次元培養を行った。
細胞を懸濁したアルギン酸ナトリウム溶液を50mLの使い捨て注射筒(テルモ株式会社)に入れ、22Gの注射針(テルモ株式会社)を装着した。注射筒のピストンを押し、内容液を102mmol/LのCaCl(Sigma社)溶液に滴下した。この操作により、アルギン酸は細胞を含んだ状態でビーズ状にゲル化する。アルギン酸ビーズの直径は約2mmで、ビーズ1個当たり約2×10個の軟骨細胞を含んでいる。滴下後10分に、ビーズを生理食塩液で3回洗浄し、その後、100ng/mLのIGF−I、5%または10%のブタ血清、25μg/mLのL−アスコルビン酸、10μg/mLのゲンタマイシンを含むDMEM/F−12培地で、5%のCO存在下、37℃で14日間培養した。培地の液量は1000ビーズ当たり45mLとし、直径15cmの培養皿を使用した。培地は一日おきに交換した。三次元培養により、軟骨細胞は、その周囲に軟骨基質成分であるプロテオグリカンとII型コラーゲンを産生する。
4.人工軟骨組織の形成
14日間の三次元培養後、Mok S.S.らの方法(J. Biol. Chem., 1994, 269, 33021-33027)に従って、0.15mol/Lの食塩を含む55mmol/Lのクエン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)をアルギン酸ビーズの5倍容量加え、攪拌後、室温で15分間放置した。Caイオンによりゲル化したアルギン酸はクエン酸により溶解する。得られた懸濁液を110×g、4℃で5分間遠心分離後、沈殿に生理食塩液を加え、攪拌し、同様に遠心分離した。この操作を生理食塩液についてさらに1回、下記の培地で1回繰り返し、軟骨基質を伴う軟骨細胞を沈殿として回収した。
軟骨細胞を含む沈殿の約250μLを、20ng/mLのトランスフォーミング成長因子β1(TGF−β1.R&D社)、100ng/mLのIGF−I、5%または10%のブタ血清、25mg/mLのL−アスコルビン酸、10μg/mLのゲンタマイシンを含むDMEM/F−12培地に懸濁した。次に、図1に示すような、内径15mm、外径25mm、高さ3mmの第1層(下層)シリコンリング1と内径15mm、外径19mm、高さ10mmの第2層(上層)シリコンリング2を中心部に圧着した6穴の培養皿(Becton Dickinson社)3を用意した。上層のシリコンリング2は取り外すことができる。そのシリコンリング1,2内に細胞懸濁液Aを静かに入れ、5%のCO存在下、37℃で16時間放置し、軟骨基質を伴う細胞Bをシリコンリング1内に沈殿させた。
この状態で、上層のシリコンリング2を取り外し、次に、細胞Bの懸濁に用いた培地Cを10mL加え、下層のシリコンリング1と内部に沈殿している細胞Bを浸漬した。この状態で5%のCO存在下、37℃で培養した。この培養により、各細胞Bの軟骨基質同士が融合し、一定以上の力学的強度を有する人工軟骨組織を調製できた。基本となる培養期間は14日間としたが、培養期間を変えることにより、種々の力学的強度の人工軟骨組織を調製することが可能であった。
上記の方法によって調製された人工軟骨組織の直径は約14mmで厚さは約1mmであった。引裂強度測定用に116点、圧縮強度測定用に6点の試料を選択し、それぞれ直径5mm(引裂試験用)、直径3mm(圧縮試験用)の円板状試料を打ち抜いた。また、円板状試料を打ち抜いた後に残った試料についてはコラーゲン含量とプロテオグリカン含量を測定した。
5.引裂強度とコラーゲン含量
引裂試験用の116点の人工軟骨組織について、コラーゲン含量は168±48.9μg/mg乾燥重量(平均値±標準偏差。以下、同様。)、引裂強度は0.117±0.097Nであった。
また、コラーゲン含量またはプロテオグリカン含量との相関解析の結果を表1に示す。
Figure 2007301387
また、コラーゲン含量と引裂強度との相関を図2に示す。これらによれば、コラーゲン含量と引裂強度(破断時荷重)との相関関数は、コラーゲン含量≒304.2×破断時荷重+113.78である。
引裂強度と有意に相関した生化学的性状に関する測定値はコラーゲン含量であり、0を越える引裂強度、すなわち、6−0ナイロン糸で縫着可能な強度を有する人工軟骨組織のコラーゲン含量は約113.78μg/mg乾燥重量以上であった。一方、プロテオグリカン含量と引裂強度との相関はなかった。
6.圧縮強度とコラーゲン含量
圧縮試験用の6点の人工軟骨組織について、コラーゲン含量は、186±20.3μg/mg乾燥重量、圧縮強度は564±236kPaであった。
また、コラーゲン含量またはプロテオグリカン含量と圧縮強度との相関解析の結果を表2に示す。圧縮強度と有意に相関した生化学的性状に関する測定値はコラーゲン含量であった。
Figure 2007301387
7.結論
引裂強度および圧縮強度のいずれの力学的強度に関しても、それを反映する成分はコラーゲンであった。
(実施例2)
ブタ関節軟骨由来の細胞を用いて調製した人工軟骨組織のブタ膝関節への移植
1.人工軟骨組織
実施例1に記載した方法に従って、ブタ関節軟骨由来の細胞を用いて6点の人工軟骨組織を調製した。ただし、2点の試料についてはブタ血清の代わりにウシ胎子血清(FBS)を用いて調製した。調製された人工軟骨組織の直径は約14mmで、厚さは約1mmであった。直径8mmの円板状に打ち抜き、得られた試料を移植に用いた。円板状試料を打ち抜いた残りの試料については、コラーゲン含量と30%圧縮時強度とを測定した。
2.実験動物への埋植処理
生後約6ヶ月齢のLWD種雌性ブタ4匹を用いた。移植時の体重は83.5〜93.0kgであった。麻酔前投与薬として硫酸アトロピン(田辺製薬株式会社)を0.05mg/kgの用量で筋肉内に投与した。その後、キシラジン塩酸塩(バイエル株式会社)を2mg/kg、塩酸ケタミン(三共株式会社)を20mg/kgの用量で筋肉内投与して麻酔した。その後、チアミラールナトリウム(三菱ウェルファーマ株式会社)を静脈内に適宜投与して、麻酔を維持した。
右後肢膝の周囲を剃毛し、イソジン(明治製菓株式会社)で十分に消毒した。次に、皮膚、筋層、関節包を切開し、大腿骨内顆を露出させた。関節面の荷重部位に2カ所、直径8mmの軟骨全層欠損創を作製し、その欠損創に実施例1で調製したブタの人工軟骨組織を挿入した。次に、6−0ナイロン縫合糸(松田医科工業株式会社)を用いて、人工軟骨組織を移植部位周囲の軟骨と4カ所において縫合した。関節腔内を生理食塩液(大塚製薬株式会社)で十分に洗浄した後、関節包、筋層、皮膚の順で縫合した。移植手術終了後、麻酔が覚めるまでの期間、ブタを保温した。移植手術当日、および術後7日まで毎日、硫酸ジヒドロストレプトマイシン(明治製薬株式会社)を0.05mg/kgの用量で筋肉内投与した。
3.解剖並びに生着状態の観察
人工軟骨組織移植後13週に、ブタをペントバルビタール(大日本製薬株式会社)で麻酔した後、頸動脈から放血して、と殺した。右後肢大腿骨顆部を分離し、移植部位の状態を肉眼で観察した。その結果、ブタ血清を用いて調製した人工軟骨組織全てについて、生着が確認された。生着状態に関して、各試料間に大きな差異は認められなかった。代表例の写真を図3に示す。図中、符号Aは移植部位を示している。
一方、ウシ胎子血清で調製した人工軟骨組織については、2点の内1点で生着が認められたが、他の1点の移植部位は中央部が大きく陥没しており、軟骨の下にある骨(軟骨下骨)の消退が認められた。写真を図4に示す。ここで、符号Aは移植部位、符号Bは軟骨下骨の消退による陥没を示している。この軟骨下骨の消退の原因として、人工軟骨組織に含まれるウシ胎子血清成分とブタとの間の抗原抗体反応が考えられる。移植した人工軟骨組織の内訳と結果とを表3にまとめて示す。
Figure 2007301387
4.結論
ブタ血清を用いて調製された人工軟骨組織をブタ関節軟骨に移植した結果、コラーゲン含量166μg/mg乾燥重量〜212μg/mg乾燥重量、30%圧縮時応力329kPa〜793kPaの人工軟骨組織は生着した。一方、ウシ胎子血清を用いて調製された人工軟骨組織をブタ関節軟骨に移植した結果、2例中1例において抗原抗体反応に基づくと思われる軟骨下骨の大きな消退が認められた。
(実施例3)
トランスフォーミング成長因子−β1と力学的強度
1.人工軟骨組織の調製
実施例1に記載された方法に従って、ブタ関節軟骨由来の細胞を用いた人工軟骨組織を調製した。図1に示したシリコンリングを用いる調製工程において、濃度の異なるトランスフォーミング成長因子−β1(TGF−β1)を含む培地を使用した。培地中のTGF−β1濃度は、2.5,5,10,20,40ng/mLとし、それぞれ、2.5ng/mL群、5ng/mL群、10ng/mL群、20ng/mL群および40ng/mL群とした。
2.引裂強度の測定
測定例1の(1)に記載された方法に従って、調製されたブタの人工軟骨組織の引裂強度を測定した。2.5ng/mL群は2点、他の群は4点の試料を使用した。
その結果、引裂強度は、TGF−β1の濃度に依存して増加し、20ng/mL以上でほぼ一定の値となった(図5)。TGF−β1の濃度の上限に関しては、特に限定されるものではないが、50ng/mL程度までの使用が当業者に知られている(例えば、Blunk T, et al., Differential effect of growth factors on tissue-engineered cartilage. Tissue Engineering, 8, 73-84(2002)参照。)。
3.結論
TGF−β1は人工軟骨組織の力学的強度の向上に有効で、その効果は、培地中の濃度が20ng/mL以上で最大となることが示された。
(実施例4)
ヒト関節軟骨由来の細胞を用いた人工軟骨組織の調製とそのコラーゲン含量
1.細胞の分離
右大腿骨頸部内側骨折の患者(女性、年齢81歳)が全股関節形成術を受ける際に摘出された大腿骨頭から軟骨を採取した。軟骨の採取は、患者の許諾並びに当該医療施設の倫理委員会の承認を得た後に実施した。採取された軟骨から、実施例1に記載された方法に従って、軟骨細胞を分離した。ただし、ブタ血清の代わりにヒト血清(Uniglobe Research社製)を使用した。
2.単層培養
実施例1に記載された方法を一部変更して、以下のように実施した。分離した軟骨細胞を、10ng/mLのbFGF、100ng/mLのIGF−I、10%のヒト血清、25μg/mLのL−アスコルビン酸および10μg/mLのゲンタマイシンを含むDMEM/F−12培地30mLに懸濁した後に、直径15cmの培養皿に播種した。
その後、5%のCO存在下、37℃で16日間培養し、次の工程に必要な細胞数(2.1×10個)を確保した。培地は3−4日おきに交換した。
3.三次元培養
単層培養された軟骨細胞を含む培養皿に、0.2%のプロナーゼと50μg/mLのゲンタマイシンとを含むDMEM/F−12培地を加え、5%のCO存在下、37℃で15分間処理した。剥離した細胞を含む培地を回収し、300Xgで遠心分離して上清を廃棄した。沈殿に0.025%のコラゲナーゼ−Pと5%のヒト血清とを含む培地を加え、5%のCO存在下、37℃で1時間消化した。分散した細胞を、1.2%のアルギン酸ナトリウムを含む生理食塩液に2×10個/mLの密度で懸濁し、以下、実施例1に記載された方法を一部変更して、アルギン酸ゲルを用いた三次元培養を行った。
細胞を懸濁したアルギン酸ナトリウム溶液を50mLの使い捨て注射筒に入れ、22Gの注射針を装着した。注射筒のピストンを押し、内容液を102mmol/LのCaCl溶液に滴下した。滴下後10分にビーズを生理食塩液で3回洗浄し、その後100ng/mLのIGF−I、100ng/mLの骨形成因子(BMP)−7(R&D社製)、10%のヒト血清、25μg/mLのL−アスコルビン酸、および10μg/mLのゲンタマイシンを含むDMEM/F−12培地で、5%のCO存在下、37℃で24日間培養した。培地の液量は40mLとし、直径15cmの培養皿を使用した。培地は3日おきに交換した。
4.人工軟骨組織の形成
24日間の三次元培養後、実施例1に記載された方法に従って、0.15mol/Lの食塩を含む55mmol/Lのクエン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)をアルギン酸ビーズの5倍容量加え、ゲル化したアルギン酸を溶解した。得られた懸濁液を300Xg、4℃で5分間遠心分離後、沈殿に生理食塩液を加え、攪拌し、同様に遠心分離した。この操作を生理食塩液に付いてさらに1回、下記の培地で1回繰り返し、軟骨基質を伴う軟骨細胞を沈殿として回収した。
軟骨細胞を含む沈殿の約250μLを5または20ng/mLのTGF−β1、100ng/mLのIGF−I、100ng/mLのBMP−7、10%のヒト血清、25μg/mLのL−アスコルビン酸および10μg/mLのゲンタマイシンを含むDMEM/F−12培地に懸濁した。次に、図1に示す容器内に、細胞懸濁液を静かに入れ、5%のCO存在下、37℃で16時間放置し、軟骨基質を伴う細胞をシリコンリング内に沈殿させた。シリコンリングの上層部分を取り外し、次に、細胞の懸濁に用いた培地を10mL加え、下層のシリコンリングと内部に沈殿している細胞を浸漬した。この状態で5%のCO存在下、37℃で21日間培養した。
上記の方法に従って、調製された4点の人工軟骨組織の直径は約13mmで厚さは約1mmであった。測定例1に記載された方法に従って、コラーゲン含量を測定した。結果を表4に示す。
Figure 2007301387
5. 結論
実施例記載の方法により、実質的に異種タンパク質を含まず、縫着可能なヒトの人工軟骨組織を調製できた。
本発明の一実施形態に係る人工軟骨組織の製造方法の実施例1に用いられ、2重のシリコンリングを中央部に有する培養皿を示す縦断面図であり、(a)はシリコンリング内に細胞懸濁液を入れた状態を示し、(b)は上層のシリコンリングを外し、培地で浸漬した状態をそれぞれ示す。 本発明の一実施形態に係る製造方法により製造された人工軟骨組織の実施例1におけるコラーゲン含量と引裂強度との関係を示すグラフである。 本発明の一実施形態に係る製造方法により製造された人工軟骨組織の実施例2におけるブタ血清を用いて調製した人工軟骨組織の生着状態の写真を示す図である。 本発明の一実施形態に係る製造方法により製造された人工軟骨組織の実施例2におけるウシ血清を用いて調製した人工軟骨組織の生着状態の写真を示す図である。 本発明の一実施形態に係る製造方法により製造された人工軟骨組織の実施例3におけるトランスフォーミング成長因子−β1の濃度と引裂強度との関係を示すグラフである。
符号の説明
1,2 シリコンリング
3 培養皿
A 細胞懸濁液
B 細胞
C 培地

Claims (6)

  1. 哺乳動物から採取した軟骨から軟骨由来細胞を単離し、単離した軟骨由来細胞を、該哺乳動物種由来の血清、または血漿存在下で培養する人工軟骨組織の製造方法。
  2. 血清、または血漿が、生後6月以上の哺乳動物由来の血清、または血漿である請求項1に記載の人工軟骨組織の製造方法。
  3. 血清、または血漿が、ヒト由来の血清、または血漿である請求項2に記載の人工軟骨組織の製造方法。
  4. トランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)スーパーファミリーに属する成長因子を含む培地中で、軟骨由来細胞を培養する工程を含む請求項2または請求項3に記載の人工軟骨組織の製造方法。
  5. 培地中に、トランスフォーミング成長因子−βスーパーファミリーに属する成長因子が、20ng/mL以上含有されている請求項4に記載の人工軟骨組織の製造方法。
  6. トランスフォーミング成長因子−βに属する成長因子が、トランスフォーミング成長因子−β1,2または3である請求項4または請求項5に記載の人工軟骨組織の製造方法。
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