JP2007296823A - パターン形成用モールド,パターン形成用モールドの離型処理方法および離型剤濃度の評価方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、モールドを用いてモールド表面の微細なパターンを樹脂膜等の被転写体に転写する際に、事前にモールド表面が離型作用を受けるに十分な量の離型剤で被覆されているか否かを迅速且つ簡便に知る方法、離型剤濃度を評価可能なモールド並びにモールドの離型処理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】表面に凹凸パターンが形成されたパターン形成用モールドであり、該パターン形成用モールドを被転写体に対して凹凸パターン面を押し付けて該凹凸パターンを転写するためのパターン形成用モールドにおいて、少なくとも前記凹凸パターン面に離型作用を持つ物質および所定の検出手法に対して標識となる物質が付着されていることを特徴とする。
【選択図】図3
【解決手段】表面に凹凸パターンが形成されたパターン形成用モールドであり、該パターン形成用モールドを被転写体に対して凹凸パターン面を押し付けて該凹凸パターンを転写するためのパターン形成用モールドにおいて、少なくとも前記凹凸パターン面に離型作用を持つ物質および所定の検出手法に対して標識となる物質が付着されていることを特徴とする。
【選択図】図3
Description
本発明は、ナノインプリントに用いるモールドの表面に存在する離型剤の濃度を測定あるいは推定可能なモールド及びその評価方法に関する。より具体的には、本発明は、離型剤を用いてモールド表面に離型処理を施す際、標識となる物質を該離型剤と混合して離型処理に用いることにより、転写後、モールドの表面に残存する離型剤の濃度を推定する方法、並びに、この原理を用いてモールド表面の離型剤の濃度を測定可能にした電子装置などに関する。
数十nmから数百nmの微細な構造を作製する方法としては、従来より光や電子線を利用したリソグラフィー法が知られており、このような方法を利用することによって種々の半導体デバイスが製造されている。
前者の光リソグラフィー法では、配線に対応したパターンをレジスト膜表面に縮小して露光し、さらに現像する煩瑣なプロセスを含んでいる。後者の電子線リソグラフィー法では、直接電子ビームにより描画するため、多数の基板に書き込むには多大の時間を要する。これらの理由から、上記したような従来のリソグラフィー法を用いた場合には、一般に高いスループットを得るのが困難である。
これに対して、近年、ナノインプリントと呼ばれる微細構造を作製する方法がスループットの高い方法として知られている。この方法は、所望の凹凸パターンを予めSi基板や金属板上に描いておき、これを通常、ガラス転移点を超えて加熱されている樹脂膜の表面に押し当てて原盤の凹凸像を樹脂膜上に写すもので、原盤の凹凸像に対して逆転した凹凸像が樹脂膜上に形成される。
このような目的に用いられる樹脂膜の材料としては、例えばPMMA(ポリメチルメタクリレート)やボリカーボネート、或いはポリスチレンといった熱可塑性樹脂をはじめ、これらの架橋ポリマーやポリイミドなどの熱硬化樹脂も用いられる。このようなナノインプリントによって、数十nm〜数百nmの径を有する樹脂の柱(ピラー)が基板上に並んだ構造や、窪みや溝の構造を特徴としたパターンも作られる。
このように所望の形状に加工された基板は、電子デバイスなどを作製するための微細加工の手段として用いられる。さらに、このような微細な形状に加工された基板は、光学特性など物理的にも興味ある性質を顕す可能性を有しているほか、生体細胞やタンパク、あるいはDNAなどといった生体物質の支持基板としても興味ある応用が可能である。
ナノインプリント法の別の実施形態では、石英板のような透明の基板からなるモールドを用い、光硬化性の樹脂溶液をモールドで押し当てた後、該透明なモールドの背後から樹脂の硬化に有効な波長の光線を照射することにより、微細な凹凸が転写された樹脂膜を得る方法がある。
このようなナノインプリント法では、いずれにしてもモールド表面の微細な凹凸に樹脂膜が入リ込むことになる。そのため、転写工程の後、樹脂膜の凹凸を損傷させないでモールドから引き剥がすことは一般には容易ではない。このような問題を解決する目的で転写工程の前に、モールドの表面に対して離型処理と呼ばれる化学処理を施すのが一般的である。この離型処理方法として、例えば、酸化ケイ素からなる表面に水酸基を設ける方法
(非特許文献1)や離型剤前駆体の蒸気を発生させてモールドの表面の水酸基と反応させる気相法も用いて、石英やシリコンの酸化膜上の水酸基と離型剤を反応させ、離型剤を表面に固定する方法(非特許文献2)などが知られている。
(非特許文献1)や離型剤前駆体の蒸気を発生させてモールドの表面の水酸基と反応させる気相法も用いて、石英やシリコンの酸化膜上の水酸基と離型剤を反応させ、離型剤を表面に固定する方法(非特許文献2)などが知られている。
また、モールドの表面に離型性を付与する別の方法として、上に述べたようなモールド表面と直接化学結合を形成するようなケースの他に、離型剤を物理吸着によってモールド表面に付着させる方法がある。この場合にも、離型剤を含んだ溶液にモールドを浸漬する方法と、離型剤の蒸気を減圧下もしくは常圧のもとでモールド表面に吸着させる方法が知られている。
Anaytical Chemistry, 73,2426(2001)
Langmuir,21,1158(2005)
しかし、化学結合による方法や物理吸着による離型処理方法のいずれの場合においても、多かれ少なかれ転写工程の繰り返しによって徐々に離型剤がモールド表面から失われていくことには変わりがない。もし、離型剤が失われた結果、十分な被覆度でモールドが離型剤で被覆されていないと、転写時に樹脂がモールドに付着し、その結果モールドと樹脂基板を剥離する際に微細な転写構造が失われることになる。特に、アスペクト比の大きい突起(ピラー)が樹脂面に形成されるような場合には、樹脂突起の先端もしくは突起部の全体がモールドに付着したまま剥離され、その結果、微細な転写構造が失われることになる。
このような経緯から、離型剤がモールドの表面を十分に被覆しているか否かという情報を得ることは、転写工程における歩留まりを確保する上から極めて重要である。モールド表面に存在する離型剤を検出するには、表面分析による方法が最も一般的である。しかし、このような方法に用いる装置は殆どの場合大型で極めて高価であり、また測定に多大の時間を要する点で、転写工程のような製造現場で迅速に測定する目的には向かない。
本発明の目的は、モールドを用いてモールド表面の微細なパターンを樹脂膜等の被転写体に転写する際に、事前にモールド表面が離型作用を受けるに十分な量の離型剤で被覆されているか否かを迅速且つ簡便に知る方法、離型剤濃度を評価可能なモールド並びにモールドの離型処理方法を提供することにある。
上記課題を解決すために、本発明者は、離型剤の膜をモールド表面に設けるプロセスについて考察する過程で、標識となる物質を離型剤とともにモールド表面に付着,固定する方法を見出すに至った。上記目的を達成する本発明の第一の手段は、表面に凹凸パターンが形成されたパターン形成用モールドであり、該パターン形成用モールドを被転写体に対して凹凸パターン面を押し付けて該凹凸パターンを転写するためのパターン形成用モールドにおいて、少なくとも前記凹凸パターン面に離型作用を持つ物質および所定の検出手法に対して標識となる物質が付着されていることを特徴とするパターン形成用モールドにある。
また、本発明の第二の手段は、表面に凹凸パターンを有するパターン形成用モールドの表面に、被転写体に対して離型作用を有する物質を形成する離型処理方法であって、前記離型作用を有する物質および所定の検出手法に対して標識となる物質を前記凹凸パターン表面に形成する工程を有することを特徴とするパターン形成用モールドの離型処理方法にある。
また、本発明の第三の手段は、表面に凹凸パターンが形成され、該凹凸パターン面に離型剤を有するパターン形成用モールドの離型剤濃度の評価方法であって、前記離型剤が付着した前記凹凸パターン面に予め標識剤に付着させ、前記標識剤に起因するシグナルを検出することにより、前記離型剤の濃度を評価することを特徴とするパターン形成用モールドの離型剤濃度の評価方法にある。
このように、外部の所定の検出手段からの光線や電磁波などの刺激に対して反応する物質を標識剤として一定の割合で離型剤にドープしておき、転写工程に入る前に該モールド表面を光線や電磁波で刺激して標識剤が発するシグナルを受信する。その際、モールド表面で標識剤が離型剤分子に直接結合している場合には、離型剤が失われるとそのまま表面に残存する標識剤も共に失われることになり、その結果モ一ルド表面の標識剤の濃度が離型剤の濃度に比例することになる。このため、該標識剤が発するシグナルの強度が、モールド表面を被覆する離型剤の濃度を表すことになり、簡便に離型剤の濃度を評価することが可能となる。
本発明によれば、モールドを用いてモールド表面の微細なパターンを樹脂膜等の被転写体に転写する際に、事前にモールド表面が離型作用を受けるに十分な量の離型剤で被覆されているか否かを迅速且つ簡便に知ることが可能となる。また、これにより、転写工程におけるスループットの向上および歩留まり向上を図ることができる。
本発明では、所定の検出手法に対して標識となる物質を離型剤とともにモールド表面に付着,固定したモールドとすることにより、外部の所定の検出手段からの光線や電磁波などの刺激に起因して標識剤から発するシグナルを検出することで離型剤の濃度を評価する。
本発明において、モールド表面に離型剤を付与する離型処理方法としては公知の手法を適用することが可能である。この離型処理の典型的な方法の1つは、アルコキシシリル基を末端に有するフッ化アルキル化合物の溶液に一定時間モールドを浸した後、加熱するものである。こうして、表面に多数のフッ化アルキル化合物が化学結合したモールド表面を得ることができる。この処理法では、モールドの表面に存在する水酸基が上記アルコキシシリル基と反応し、その結果、フッ化アルキル基がシロキシ基を介してモールドの表面に共有結合されることになる。
フッ化アルキル基を多数設けた表面は、一般に表面エネルギーが極めて小さいため、高温で付着した樹脂などを容易に剥がすことができ、いわゆる高い離型性を示す。このような離型性を示すフッ化アルキルでは、必ずしもアルキル基に結合する水素原子のすべてをフッ素原子に置換しておく必要はなく、モールドの表面に比較的近い炭素に結合する水素は、水素原子のまま残してもさほど障害とはならない。これは、モールドの上部から付着する樹脂から見ると、フッ化アルキル基の鎖の奥の方に位置するためである。
上記したような離型処理に好適に用いられるフッ化アルキル基の炭素数は、一般には4〜12である。しかし、ここに例示した数字は、本発明の適用範囲を限定するものではない。
上記したような離型処理においては、既に述べたようにモールド表面に予め水酸基を多数設けておくことが必要である。石英の場合、事前に特定の化学処理を加えることにより、最表面の酸化ケイ素を加水分解して水酸基としうることが良く知られている。シリコンをベースとするモールドの場合も、通常表面は酸化ケイ素の自然酸化膜となっているため、基本的に石英と同様の表面処理法を採用することができる。
ナノインプリント法に使用するモールドの表面を離型処理する別の方法には、離型剤前駆体の蒸気を発生させてモールドの表面の水酸基と反応させる、いわゆる気相法がある。この場合に用いる離型剤の前駆体はある程度大きい蒸気圧を有している必要がある。この方法でも、石英やシリコンの酸化膜上の水酸基と反応させて離型剤が表面と結合した構造を得ることができる。
また、離型剤を物理吸着によってモールド表面に付着させる方法である、離型剤を含んだ溶液にモールドを浸漬する方法と、離型剤の蒸気を減圧下もしくは常圧のもとでモールド表面に吸着させる方法を採用することも可能である。この物理吸着による方法では、先に述べた化学結合による方法に比較して、離型剤が転写工程の際に失われ易いという欠点があるものの、表面に特別な前処理が必要でない場合が多く、簡便であるという長所を有している。
次に、本発明で用いる標識剤は、例えば、紫外域の光の照射を受けて可視域で発光性を示し、これらの分子に含まれるアルコキシシリル基の加水分解を経て、基板表面の水酸基と結合させることができる。
このような方法で、標識剤の発するシグナルを観測するだけでモールド表面に残存する離型剤の被覆度を知ることができる。もし、離型剤の被覆度が事前に設定した値よりも小さくなった場合には、モールドの離型処理を改めて行う必要があることが分かる。
標識剤自体は必ずしも離型作用を有する必要はない。その理由は、蛍光もしくは燐光を発する発光物質に例をとると、発光物質の濃度が低い場合でも、シグナルとして有効な発光強度が得られやすいことと、逆に、発光物質の濃度が高すぎると消光が起こり、却って発光強度が低下するという事情にある。従って、標識物質の濃度が離型剤に対して十分に低ければ、離型剤による離型作用を阻害することはない。発光物質を例にとると、本発明の実施に有効な濃度は10-17mol/cm2 から10-8mol/cm2 である。より好ましくは
10-14mol/cm2 から10-10mol/cm2の範囲である。
10-14mol/cm2 から10-10mol/cm2の範囲である。
標識剤の濃度が小さいことの別の重要な点は、標識剤が離型剤から分離して凝集するということがないことで、このような性質の結果、標識剤が離型剤分子の間に平均的に分散して存在することとなり、標識剤の濃度がより正確に離型剤の濃度を表すことになって、本発明の目的の上から極めて好ましいことである。
先に述べた例のように、離型剤がモールドの表面に物理的に吸着しているような場合には、これに用いる標識剤も同様にモールド表面に物理的に吸着させておくことが重要である。こうすることによって、離型剤と標識剤が転写工程でモールド表面から失われる容易さが等しくなるようにすることができる。その結果、標識剤の発する信号の強度が離型剤の被覆度を表す指標となり、モールド表面に存在する離型剤の濃度を知ることができる。
標識となる物質がX線もしくは電子線の照射を受けて電子放出する性質を利用することもできる。この場合、照射されるX線もしくは電子線のエネルギーと、放出される電子のエネルギーの関係から、予め標識とした物質のシグナルのみを対象として観測が司能である。
標識となる物質がラマン活性を有する物質であることを本発明の目的に利用しようとする場合には、前記発光を利用する場合に比べていくつかの特徴がある。その1つは、有機物質のラマンシグナルは通常その物質特有のパターンからなっており、ノイズとの識別が容易である。しかしながら、シグナル自体が一般に微弱であるため、ラマン信号を受けるための設備が大掛かりになる、あるいは、より強いラマンシグナルが得られるようにモールドに金属箔を介在させるなどの特別の配慮が必要となる場合がある。この場合も、ラマン励起するためにレーザー光線を利用するとモールド表面の掃引が容易になり、モールド表面の離型剤の欠損状態についての空間分布を容易に得ることができるようになる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
離型剤はモールドの表面に可能な限り強く結合することが望ましいため、通常はモールドの表面と共有性の結合を形成させることにより強く固定される。このような共有結合による固定の代表的な例は、フッ化アルキル(アルコキシ)シラン化合物を含む溶液にモールドを浸してモールドの表面に存在する水酸基と反応させて、フッ化アルキルシリルオキシ結合を形成することである。
その際、該アルコキシシリル基が直接モールド表面の水酸基と反応するとは限らず、むしろ溶媒中に存在する水分子によって該アルコキシシリル基が加水分解を受けて一旦シラノールとなり、これがモールド表面の水酸基と反応すると信じられている。この様子を図1に掲げる。基板1は石英やガラス、あるいは表面に酸化膜を有するシリコン基板、あるいは表面に水酸基を有する金属などである。離型剤単量前駆体3は、離型剤単量前駆体3の分子のトリメトキシシリル基に離型作用を示す置換基2として疎水性基が結合した構造を有する。この疎水性基2としてはフッ化アルキル基が本発明の目的に好適である。ここでは、該アルキル基のすべての炭素原子がフッ化されている必要は無く、該フッ化アルキル基が結合するケイ素原子に隣接した炭素の数原子については、水素原子と結合しても本発明の目的を達成する上で障害とはならない。上記フッ化アルキル基が結合したトリメトキシシラン化合物が水分子によって加水分解を受けてシラノールとなり、これが基板1の表面に存在する水酸基と脱水縮合することにより基板表面に結合される。この反応の進行に伴って、基板1の表面は次第にフッ化アルキルシリルオキシ基によって被覆されるようになる。
図1に示されているように、フッ化アルキルシリル基が基板1表面と結合するばかりでなく、フッ化アルキルシリルオキシ基同士も結合し、その結果、2次元的なネットワークを形成することに特徴がある。このようにして形成される表面膜は、摩擦などの外力に対して十分な抵抗力を有することとなる。このような2次元膜における結合の様子を図2に掲げる。
もし、試剤の仕込み量を多くし、且つ、反応時間を長くすれば、フッ化アルキルシリル基を有する膜をモールド表面で3次元的に成長させることも可能である。この場合には、すべてのシリル基が基板1の表面と結合するのではなく、一部のフッ化アルキルシリル基が基板1に結合しないまま他のフッ化アルキルシリルオキシ基と結合し、その結果、フッ化アルキル基を有する離型剤膜が3次元的に成長することになる。
上記したようなフッ化アルキル基による離型剤膜の形成に用いることのできるフッ化アルキルシリル化合物の例としては、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラハイドロデシル−1−トリエトキシシランなどが挙げられる。
図1に示した反応で離型剤の膜を形成する際、アルコキシシリル基を有する標識剤の単量前駆体を離型剤単量前駆体3に意図的にある割合で混入しておけば、離型剤に対して一定の割合で標識剤がドープされた表面膜が自動的にモールド表面に形成されることとなる。こうして標識剤分子が一定の割合でドープされた離型剤膜を有する基板の様子を図3に掲げる。同図は標識剤が蛍光性物質4である場合について描いたもので、紫外線などの励起光5の照射によって蛍光6が発せられる様子を示している。この蛍光を光度計によって検知することにより、蛍光強度が分かり、その結果、モールドの使用によって減耗した離型剤の程度を知ることができる。
このような方法で形成される標識剤のドープ方法では、離型剤と標識剤が同一の化学基によって表面に固着されるため、強い外力が働いた際の両者の剥がれ易さが基本的に同じであるという、本発明の目的に照らして好ましい特徴が付与される。このような効果のため、標識剤が発するシグナルの強度を測定することにより、離型剤の濃度を知ることが可能となる訳である。
図3に示した用途に用いられる標識剤の例としては、蛍光性物質を例にとれば、N−
(トリエトキシシリルプロピル)ダンシルアミドや0−4−メチルクマリニル−N−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]カーバメートなどが挙げられる。
(トリエトキシシリルプロピル)ダンシルアミドや0−4−メチルクマリニル−N−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]カーバメートなどが挙げられる。
図3に表した結合の仕方における重要な点は、離型剤分子と標識剤分子がシロキシ基を介して直接結合しているということである。このため、離型剤もしくは標識剤のいずれかが表面から剥離される際には、両者が初期のドープ比率と同じ比率で一緒に剥離されるということになり、本発明の方法の定量的厳密性を更に高めることとなる。
表面に離型剤を固定する別の方法は、用いるフッ化アルキルシリル化合物のうち、ある程度大きい蒸気圧を有する化合物を用いて減圧下で蒸発させ、モールド表面の水酸基と反応させるものである。このような目的に合致したフッ化アルキルシリル化合物の例としては、フッ化アルキルトリクロロシランが挙げられる。この場合には、トリクロロシリル基とモールド表面の水酸基が反応してHCl分子が脱離するとともに、図1の場合と類似のフッ化アルキルシリルオキシ結合による表面膜が形成される。このような蒸発による方法の利点は、モールドが深い溝や深い孔などのアスペクト比の大きい構造を有する場合に発揮される。すなわち、フッ化アルキルトリクロロシランの蒸気が溝や孔の深部まで容易に到達するため、モールドの表面構造のすべてに離型剤を行き渡らせることが可能となる。
このような気相法で用いることのできる、蒸気圧を有するフッ化アルキルシリル化合物の具体的な例としては、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラハイドロデシル)−1−トリクロロシランが挙げられる。また、上記気相法で離型剤にドープする標識剤としては、離型剤と同様に蒸気圧を有する必要がある。この場合、離型剤と同レベルの蒸気圧が得られない場合は、仕込み量を加減することにより、得られるドープ量を実質的に調節することが可能である。このような、蒸気圧を有する蛍光性標識剤としては、N−(トリクロロシリルプロピル)ダンシルアミドやO−4−メチルクマリニル−N−[3−(卜リクロロシリル)プロピル]カーバメートなどが挙げられる。
標識となる物質は、必ずしも離型性を有することがないため、離型剤とともに形成されるモールド表面膜の最表面には露出しないことが好ましい。こうすることによって、樹脂等の転写の際に標識剤が樹脂に触れるのを防止することができる。このような状況をもたらすためには、標識物質の分子鎖長が、一緒にモールド表面に付着もしくは結合される離型剤の分子鎖長よりも実質的に短いことが好ましい。
また、このような問題を避ける別の方法は、表面膜とした際、膜の表面に出る可能性のある標識剤の上部に、フッ化アルキル基またはフッ化アリル(aryl)基を置換基として設けておくことが有効である。このような処置を施した標識剤がモ一ルド表面に結合された例を図4に掲げる。同図では、標識作用を示す置換基7の各上部に、離型作用を示す置換基8が結合された例を示す。ここでは、表面に結合・固定される離型剤のすべての要素が標識剤の成分を含んでいる場合を例示している。
標識剤の発する光学シグナルを検知する方法としては、通常の蛍光分光光度計を用いる方法の他に近接場光学を利用した方法もある。また、図5に示したように、光学ファイバー9を用いて励起光源10から励起光を導いてモールド11に照射し、発生した蛍光を分光光度計12まで別の光ファイバー13で導く方法もある。
標識剤としては、上記した蛍光性物質の蛍光強度を利用する方法のほかに、ラマン活性物質を用いる方法も可能である。また、標識剤として色素を用い、その特定波長における吸光度から表面膜の減耗を知ることも可能である。あるいは、標識剤に磁性の原子もしくは分子を含ませておき、この磁気を検出することによって表面膜の残存率を推定することも可能である。
以下、実施例により本発明をさらに講細に説明する。
(実施例1)
離型剤として(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラハイドロオクチル)−1−トリエトキシシラン(Gelest社製)を、また、蛍光標識剤としてO−4−メチルクマリニル−N−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]カーバメート(Gelest社製)を、脱水した2−プロパノールにそれぞれ2mmol/Lおよび50μmol/Lの濃度で溶解した。この溶液を乾燥した窒素ガスを満たしたグローブボックス中に置き、この溶液に、表面に微細な凹凸パターンを設けた20mm×20mmの石英モールドを浸して24時間放置した。
(実施例1)
離型剤として(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラハイドロオクチル)−1−トリエトキシシラン(Gelest社製)を、また、蛍光標識剤としてO−4−メチルクマリニル−N−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]カーバメート(Gelest社製)を、脱水した2−プロパノールにそれぞれ2mmol/Lおよび50μmol/Lの濃度で溶解した。この溶液を乾燥した窒素ガスを満たしたグローブボックス中に置き、この溶液に、表面に微細な凹凸パターンを設けた20mm×20mmの石英モールドを浸して24時間放置した。
次いで、この溶液から石英モールドを取り出し、2−プロパノールで洗浄し、次いで蒸留水で洗浄した。この石英モールドをグローブボックスより取り出し、大気中で115℃で1.5h 加熱した。この石英モールドを蛍光分光光度計(目立分光蛍光光度計F−4500)の中に設置して波長340nmの励起光を照射して500nmにおける蛍光強度を測定した。
次いで、この石英モールドをナノインプリント装置に設置し、シリコン基板上に設けた膜厚850nmのポリメチルメタクリレート(アルドリッチ、平均分子量12万)の膜に対して温度160℃,圧力4.8kN で押し当て、45℃まで冷却した後、モールドを引き剥がした。この転写操作をそれぞれ新規に設けたポリメチルメタクリレート膜に対して5回繰り返した後、前記と同様の方法で石英モールドの蛍光強度を測定した。
こうして、約60回転写を行った結果、5回置きに測定した蛍光の強度と、転写回数の関係が得られた。結果を図6に掲げた。同図の●印で示したプロットより明らかなように、転写回数が増えるに連れて蛍光強度が低下していることが分かった。同図に挿入した×印は、転写に際してピラー構造に欠陥が観測されたケースを示しておリ、×の数(×〜×××)でその欠陥の程度を表している。同図より蛍光強度と転写構造の欠陥の程度に相関性の存在が明らかとなった。その結果、蛍光強度より、モールドの離型性能の低下を知ることができ、離型処理の必要な時点を簡便に把握できた。
(実施例2)
離型剤として(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラハイドロデシル)−1−トリエトキシシランを、また、蛍光標識剤としてN−(トリエトキシシリルプロピル)ダンシルアミドを用いて実施例1と同様の操作でメチルメタクリレート膜への転写を行った。それぞれ5回の転写の後、波長325nmの励起光を照射して波長530nmにおける蛍光強度を測定した。その結果、転写回数の増加に伴って図6と同様の蛍光強度の減衰が観測されるとともに、蛍光強度が樹脂膜に転写されたパターンの欠陥の程度との間に相関性が観測された。この結果より、実施例1と同様に蛍光強度より、モールドの離型性能の低下を知ることができ、離型処理の必要な時点を簡便に把握できた。
(実施例2)
離型剤として(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラハイドロデシル)−1−トリエトキシシランを、また、蛍光標識剤としてN−(トリエトキシシリルプロピル)ダンシルアミドを用いて実施例1と同様の操作でメチルメタクリレート膜への転写を行った。それぞれ5回の転写の後、波長325nmの励起光を照射して波長530nmにおける蛍光強度を測定した。その結果、転写回数の増加に伴って図6と同様の蛍光強度の減衰が観測されるとともに、蛍光強度が樹脂膜に転写されたパターンの欠陥の程度との間に相関性が観測された。この結果より、実施例1と同様に蛍光強度より、モールドの離型性能の低下を知ることができ、離型処理の必要な時点を簡便に把握できた。
1…基板、2…離型作用を示す置換基、3…離型剤、4…蛍光剤、5…励起光、6…蛍光、7…標識作用を示す置換基、8…離型作用を示す置換基、9…光学ファイバー、10…励起光源、11…モールド、12…蛍光分光光度計、13…光ファイバー。
Claims (15)
- 表面に凹凸パターンが形成されたパターン形成用モールドであり、該パターン形成用モールドを被転写体に対して凹凸パターン面を押し付けて該凹凸パターンを転写するためのパターン形成用モールドにおいて、
少なくとも前記凹凸パターン面に離型作用を持つ物質および所定の検出手法に対して標識となる物質が付着されていることを特徴とするパターン形成用モールド。 - 請求項1に記載のパターン形成用モールドにおいて、前記標識となる物質が紫外線もしくは可視光線等の照射を受けて蛍光もしくは燐光を発する発光性物質であることを特徴とするパターン形成用モールド。
- 請求項1に記載のパターン形成用モールドにおいて、前記標識となる物質がX線もしくは電子線の照射を受けて電子放出する性質を有することを特徴とするパターン形成用モールド。
- 請求項1に記載のパターン形成用モールドにおいて、前記標識となる物質がラマン活性を有する物質であることを特徴とするパターン形成用モールド。
- 請求項1に記載のパターン形成用モールドにおいて、前記離型作用を持つ物質および前記標識となる物質が、同じ構造の化学基によってモールド表面に固定されていることを特徴とするパターン形成用モールド。
- 請求項1に記載のパターン形成用モールドにおいて、前記標識となる物質がフッ化アルキル残基を有していることを特徴とするパターン形成用モールド。
- 請求項1に記載のパターン形成用モールドにおいて、前記標識となる物質が磁性原子もしくは磁性分子を含む物質であることを特徴とするパターン形成用モールド。
- 請求項2に記載のパターン形成用モールドにおいて、前記発光性物質の分子の長さが前記離型作用を有する物質の分子の鎖長よりも短いことを特徴とするパターン形成用モールド。
- 請求項2に記載のパターン形成用モールドにおいて、該標識となる物質が離型作用を有する物質と直接化学結合されていることを特徴とするパターン形成用モールド。
- 請求項2に記載のパターン形成用モールドにおいて、前記離型作用を有する物質に対して、前記発光性物質の濃度が10-17mol/cm2から10-8mol/cm2 であることを特徴とするパターン形成用モールド。
- 表面に凹凸パターンを有するパターン形成用モールドの表面に、被転写体に対して離型作用を有する物質を形成する離型処理方法であって、
前記離型作用を有する物質および所定の検出手法に対して標識となる物質を前記凹凸パターン表面に形成する工程を有することを特徴とするパターン形成用モールドの離型処理方法。 - 表面に凹凸パターンが形成され、該凹凸パターン面に離型剤を有するパターン形成用モールドの離型剤濃度の評価方法であって、
前記離型剤が付着した前記凹凸パターン面に予め標識剤に付着させ、前記標識剤に起因するシグナルを検出することにより、前記離型剤の濃度を評価することを特徴とするパターン形成用モールドの離型剤濃度の評価方法。 - 請求項12に記載の評価方法であって、前記標識剤が蛍光物質であり、前記モールド表面を励起光のビームで起因して前記発光性物質から発射される発光の空間分布を測定することによって、離型処理剤が欠損しているモールド表面の空間分布に関する情報を取得することを特徴とするパターン形成用モールドの離型剤濃度の評価方法。
- 請求項12に記載の評価方法であって、前記標識剤が磁性原子または磁性分子を含む物質であり、前記磁性原子もしくは磁性分子の磁気を検出することを特徴とするパターン形成用モールドの離型剤濃度の評価方法。
- 表面に凹凸パターンが形成されたパターン形成用モールドを被転写体に押し付けることで前記凹凸パターンを転写するパターン形成方法であって、
前記凹凸パターンを転写する前に請求項12記載の評価方法により前記パターン形成用モールド表面の離型剤の濃度を評価する工程を有することを特徴とするパターン形成方法。
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