JP2007285353A - 軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】軸箱や軸受での損傷の発生可能性を高めることなく、軸受と軸箱との接続部における摩耗の発生を抑制する。
【解決手段】軸受10は、外輪1と、外輪1の内周側に配置される内輪2と、複数の転動体としてのころ3と、耐摩耗性被膜としての被覆層5とを備える。ころ3は外輪1と内輪2との間に配置される。被覆層5は、外輪1の外周面上に形成される。
【選択図】図1
【解決手段】軸受10は、外輪1と、外輪1の内周側に配置される内輪2と、複数の転動体としてのころ3と、耐摩耗性被膜としての被覆層5とを備える。ころ3は外輪1と内輪2との間に配置される。被覆層5は、外輪1の外周面上に形成される。
【選択図】図1
Description
この発明は、軸受に関し、より特定的には、当該軸受を用いた機器の軸受固定用フレーム(軸箱)に外輪を固定された状態で使用される軸受に関する。
従来、鉄道車両などに設置されて使用される軸受が知られている(たとえば、特許文献1参照)。このような軸受は、一般に軸受固定用フレーム(いわゆる軸箱)に外輪を固定された状態で使用される。このような軸箱に対する軸受(の外輪)の固定方法は、作業性などを考慮していわゆるすきまばめにより行なわれることが多い。
特開2004−332905号公報
上述のように軸箱に軸受の外輪をすきまばめにより固定した場合、軸受の使用条件によっては当該すきまばめした部分においてクリープが発生する。この場合、軸受の外輪と軸箱との接触部において摩耗が発生する。この摩耗に起因する摩耗粉が、軸受の内部に侵入した結果、当該摩耗粉が軸受の外輪または内輪と転動体との間に噛みこむことにより、軸受が損傷することがあった。
このような摩耗粉の発生を抑制するため、たとえば軸箱に対する軸受の固定方法を締りばめ(穴と軸(ここでは軸受の外輪)との間に締め代があるもの)にすることも考えられる。しかし、固定方法として締りばめを用いる場合には、軸箱に軸受を固定する作業を行なうときに、軸箱または軸受に応力が加えられることになり、軸箱または軸受において重大な損傷を発生させる可能性がある。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の目的は、軸箱や軸受での損傷の発生可能性を高めることなく、軸受と軸箱との接続部における摩耗の発生を抑制することである。
この発明に従った軸受は、外輪と、外輪の内周側に配置される内輪と、複数の転動体と、耐摩耗性被膜とを備える。転動体は外輪と内輪との間に配置される。耐摩耗性被膜は、外輪の外周面上に形成される。
このようにすれば、本発明に従った軸受を軸箱に設置する場合、耐摩耗性被膜が存在することにより、軸箱と軸受の外輪との直接的な接触を避けることができる。このため、軸箱と軸受との接触部において、軸箱や軸受の外輪の一部が摩耗することにより摩耗粉が発生する可能性を低減できる。
また、軸受の外輪の外周面上に耐摩耗性被膜を形成するので、軸受と軸箱との寸法(はめあい)の条件を変更することなく、上述のように摩耗粉の発生を抑制できる。そのため、軸受と軸箱との寸法を変更して固定方法を締りばめにするといった対応は必要ない。このため、軸受を軸箱に設置する際の作業性が悪くなることを防止しつつ、摩耗粉の発生を抑制できる。
上記軸受において、耐摩耗性被膜が高分子化合物からなり、より好ましくは熱可塑性の高分子化合物からなっていてもよい。また、上記軸受において、高分子化合物としては、特に耐摩耗性の観点から、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂のうちのいずれか1つを用いることができる。また、機械的強度を確保する観点から、上記高分子化合物としてポリオレフィン系樹脂、PTFE系樹脂を用いることがより好ましい。また、軸受が比較的高温域で用いられる場合には、耐熱性があるPTFE系樹脂またはシリコーン系樹脂を用いることが好ましい。
この場合、軸受の外輪と軸箱との間に位置することになる耐摩耗性被膜が、軸受の使用条件によって摩耗し、耐摩耗性被膜を構成する高分子化合物の摩耗粉が発生しても、当該摩耗粉は軸受を構成する鋼などの材料より硬度が十分低いことになる。したがって、当該摩耗粉に起因して軸受が破損する可能性を低減できる。
本発明によれば、耐摩耗性被膜を形成することにより、軸箱と軸受の外輪との直接的な接触を避けることができる。このため、軸箱と軸受との接触部において、軸箱や軸受の外輪の一部が摩耗することにより摩耗粉が発生する可能性を低減できる。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
(実施の形態1)
図1は、本発明に従った軸受の実施の形態1を示す断面模式図である。図1を参照して、本発明に従った軸受の実施の形態1を説明する。
図1は、本発明に従った軸受の実施の形態1を示す断面模式図である。図1を参照して、本発明に従った軸受の実施の形態1を説明する。
図1に示した軸受10は、たとえば鉄道車両用の軸受として用いられる複列円筒ころ軸受であって、軌道部材としての外輪1および内輪2と、当該外輪1と内輪2との間に、保持器4により保持された複数の転動体としての円筒状のころ3とを備える。ころ3は外輪1と内輪2とに接触して配置される。ころ3は2列に並んだ状態で配置されている。外輪1および内輪2はそれぞれ筒状の形状を有している。外輪1は、内輪2の外周側に内輪2を囲むように配置されている。外輪1の内周側にはころ3を案内するための2列の溝が形成されている。複数のころ3は、互いに間隔を隔てた状態で保持器4により保持されている。
外輪1の外周面上には、ポリウレタン系樹脂からなる被覆層5が形成されている。軸受10は、点線で示す軸箱9の開口部に嵌め込まれた状態で固定される。そして、軸箱9に軸受10が設置された場合には、被覆層5が軸受10の外輪1と軸箱9の開口部の側壁との間に位置することになる。
このようにすれば、本発明に従った軸受10を軸箱9に設置する場合、耐摩耗性被膜としての被覆層5が存在することにより、軸箱9と軸受10の外輪1との直接的な接触を避けることができる。このため、軸箱9と軸受10との接触部において、軸箱9や軸受10の外輪1の一部が摩耗することにより摩耗粉が発生する可能性を低減できる。
また、軸受10の外輪1の外周面上に被覆層5を形成するので、軸受10と軸箱9との寸法(はめあい)の条件を変更することなく、上述のように摩耗粉の発生を抑制できる。そのため、軸受10と軸箱9との寸法を変更して固定方法を締りばめにするといった対応は必要ない。このため、軸受10を軸箱9に設置する際の作業性が悪くなることを防止しつつ、摩耗粉の発生を抑制できる。
上記軸受10において、被覆層5は高分子化合物からなり、より好ましくは熱可塑性の高分子化合物により構成される。また、上記軸受10において、被覆層5を構成する高分子化合物としては、特に耐摩耗性の観点から、上述したポリウレタン系樹脂以外にも、シリコーン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂のうちのいずれか1つを用いることができる。また、機械的強度を確保する観点から、上記高分子化合物としてポリオレフィン系樹脂、PTFE系樹脂を用いることがより好ましい。また、軸受10が比較的高温域で用いられる場合には、耐熱性があるPTFE系樹脂またはシリコーン系樹脂を用いることが好ましい。
この場合、軸受10の外輪1と軸箱9との間に位置することになる被覆層5が、軸受10の使用条件によって摩耗し、被覆層5を構成する高分子化合物の摩耗粉が発生しても、当該摩耗粉は軸受10を構成する鋼などの材料より硬度が十分低いことになる。そのため、摩耗粉が外輪1ところ3の間、または内輪2ところ3との間に噛みこんだ場合の、外輪1、内輪2またはころ3に損傷が発生する確率を低減できる。
また、被覆層5の厚みは、軸受10と軸箱9とのはめあいの条件などにもよるが、十分な耐摩耗性を確保する観点から、たとえば0.01mm以上2.0mm以下、より好ましくは0.01mm以上1.0mm以下とすることが好ましい。
図2は、図1に示した軸受の製造方法を説明するためのフローチャートである。図2を参照して、図1に示した軸受の製造方法を説明する。
図2に示すように、本発明に従った軸受の製造方法では、まず準備工程(S10)を実施する。準備工程(S10)では、軸受10を構成する外輪1の形状に成形された部材(基材)を準備する。基材を成形する方法としては、従来用いられていた任意の加工方法(プレス加工、切削加工、研磨加工など)を用いることができる。
次に、耐摩耗加工工程(S20)を実施する。この加工工程としての耐摩耗加工工程(S20)では、基材としての外輪1の表面の少なくとも一部(軸箱9の開口部の壁面と接触する可能性のある部分)に、固化後に耐摩耗性を有する液状の高分子化合物を配置することにより、高分子化合物からなる被覆層5を形成する。ここでは、外輪1(基材)の外周側面全体を均等に覆うように、刷毛やスプレーなどによって液状の高分子化合物を外輪1の外周側面上に塗布する。また、外輪1の全体を被覆層5で覆いたい場合には、基材としての外輪1を液状の高分子化合物に浸漬してもよい。この場合、外輪1の全体を覆うような被覆層5を簡単に形成することができる。
ここでは高分子化合物として上述したポリウレタン系樹脂を用いることができる。なお、ここで液状とは、樹脂などの高分子化合物が、外輪1の表面に塗布あるいは付着させることができる程度の粘度となっている状態を言い、一般的な液体状はもちろん、塗布可能な程度のゲル状の場合も含む。また、高分子化合物とは、たとえば一般的な樹脂(合成樹脂、ゴムなど)であって耐摩耗性を有するものであればよい。
このようにすれば、外輪1の表面に液状の高分子化合物を刷毛やスプレーで塗布する、あるいは外輪1の所定の部分を当該液状の高分子化合物に浸漬するといった簡単な手法により、外輪1の表面に被覆層5を形成できる。このため、低コストで被覆層5を有する外輪1を製造することが出来る。
次に、後処理工程(S30)を実施する。この後処理工程(S30)では、上述のように塗布された液状の高分子化合物からなる被覆層5を所定の硬度にするための固化工程を実施する。この固化工程では、使用した高分子化合物の種類に応じて任意の方法(たとえば加熱工程など)を用いることができる。この結果、図1に示した被覆層5が形成された外輪1を得ることができる。
その後、別途準備された内輪2、ころ3、保持器4と上述した外輪1とを組立てることにより、図1に示した軸受10を得ることができる。なお、内輪2、ころ3、および保持器の製造方法としては、従来用いられていた任意の方法を用いることができる。
上記軸受の製造方法において、耐摩耗加工工程(S20)では、上述のように外輪1の表面に液状の高分子化合物を塗布している。このようにすれば、外輪1の表面のうちの任意の箇所(図1に示した外周側の側面のみ)に高分子化合物を塗布することにより、外輪1の表面の任意の一部分のみに被覆層5を容易に配置できる。
(実施の形態2)
図3は、本発明に従った軸受の実施の形態2を示す断面模式図である。図3を参照して、本発明に従った軸受の実施の形態2を説明する。
図3は、本発明に従った軸受の実施の形態2を示す断面模式図である。図3を参照して、本発明に従った軸受の実施の形態2を説明する。
図3を参照して、本発明に従った軸受10は、4列円すいころ軸受であって、たとえば鉄鋼圧延用のワークロールに用いられる軸受である。図3に示した軸受10は、3列の外輪1a〜1cと、2列の内輪2a、2bと、4列の円すいころ3a〜3dと、保持器4a〜4dと、外輪間座11a、11bと、外輪1a〜1cの外周面上に形成された被覆層5とを備えている。外輪1a〜1cの各々は、被覆層5を介して軸箱9(ハウジング)に取り付けられている。被覆層5を構成する材料としては、当該軸受10の使用条件が比較的高温環境であることから、耐熱性を重視してシリコーン系樹脂を用いる。
外輪1a〜1cは、ラジアル平面で互いに分割されて回転軸A方向に並んでいる。内輪2a、2bの各々は、圧延機のロールネック20を支持している。内輪2a、2bの各々は、ラジアル平面で互いに分割されて回転軸A方向で互いに隣接している。円すいころ3a〜3dの各々は、内輪2aと外輪1aとの間、内輪2aと外輪1bとの間、内輪2bと外輪1bとの間、および内輪2bと外輪1cとの間にそれぞれ複数個配置されている。保持器4a〜4dの各々は円すいころ3a〜3dの各々を保持している。
外輪間座11aは外輪1aと外輪1bとの間に配置されており、外輪間座11bは外輪1bと外輪1cとの間に配置されている。外輪間座11a、11bの各々は、潤滑油を軸受10内部に供給するための溝25および孔21を有している。溝25は、外輪間座11a、11bの各々の外周面全面にわたって形成されている。また、溝25は、回転軸方向における外輪間座11a、11bの各々の中心部に形成されている。孔21は、溝25内の所定の位置に形成されており、外輪間座11a、11bの各々の外周面(溝25の内部)から内周面に達している。また、軸箱9は、その内周面に達し、上記溝25に対応する複数の潤滑油供給用孔(図示せず)を有している。潤滑油供給用孔の各々は外輪間座11a、11bの溝25の各々と連通している。これにより、軸箱9の外部から潤滑油供給用孔の各々に潤滑油(脂)が注入され、溝25および孔21を通って軸受10内部に当該潤滑油が供給される。
図3に示した軸受10が適用される圧延機では、被圧延部材(板)の厚さの精度を確保するために、ロールネックに大量の冷却水を供給することによって、ロールネックの形状制御を行なっている。そのため、冷却水が軸受10の内部へ侵入するのを防止するために、軸受10の端部には密封装置30が設けられている。密封装置30は、軸受10の両側、言い換えれば、ころ3aの図3中左側と、ころ3dの図3中右側とに配置されている。密封装置30は、冷却水などが軸受10の内部に侵入することを防止する。
図3に示した軸受10では、外輪1a〜1cの外周面上に被覆層5が配置されている。このようにすれば、図1に示した軸受10と同様の効果を得ることができる。また、図3に示した軸受10の製造方法は、基本的に図2に示した軸受の製造方法と同様である。
(実施の形態3)
図4は、本発明に従った軸受の実施の形態3を示す断面模式図である。図5は、本発明に従った軸受の実施の形態3の変形例を示す断面模式図である。図4および図5を参照して、本発明に従った軸受の実施の形態3を説明する。なお、図4および図5に示した軸受10は、それぞれ連続鋳造ロール支持用転がり軸受としての自動調心ころ軸受(スフェリカル軸受)および自動調心輪付円筒ころ軸受である。これらの軸受は、連続鋳造ロールの支持構造に適用される。
図4は、本発明に従った軸受の実施の形態3を示す断面模式図である。図5は、本発明に従った軸受の実施の形態3の変形例を示す断面模式図である。図4および図5を参照して、本発明に従った軸受の実施の形態3を説明する。なお、図4および図5に示した軸受10は、それぞれ連続鋳造ロール支持用転がり軸受としての自動調心ころ軸受(スフェリカル軸受)および自動調心輪付円筒ころ軸受である。これらの軸受は、連続鋳造ロールの支持構造に適用される。
図4を参照して、連続鋳造ロール支持用転がり軸受としての軸受10は、自動調心ころ軸受であって、転動部材としての環状の2つの外輪1と、内輪2と、複数のころ3a、3bと、保持器4と、外輪1の外周面上に形成された耐摩耗性被膜としての被覆層5とを備える。内輪2は外輪1の内側に配置され、環状の形状を有する。転動部材としての複数のころ3a、3bは、外輪1と内輪2との間に配置され、円環状の保持器4に保持される。複列に配置されたころ3a、3bは樽状の形状を有する。被覆層5は、軸受10の使用環境が比較的高温であり、また、酸性もしくはアルカリ性の水蒸気が存在する雰囲気であることを考慮して、耐久性の観点からPTFE系樹脂により構成した。
外輪1の内周面には外輪転走面17が形成されており、内輪2の外周面には内輪転走面18が形成されている。そして、内輪転走面18が、2つの外輪転走面17に対向するように、2つの外輪1と1つの内輪2とは配置されている。さらに、複数のころ3a、3bは、外輪転走面17のそれぞれに沿って、外輪転走面17と内輪転走面18とに接触するように配置される。また、複数のころ3a、3bは、保持器4に保持されて周方向に所定のピッチで配置されることにより2列の円環状の軌道上に転動自在に保持されている。以上の構成により、自動調心ころ軸受である軸受10の外輪1および内輪2は、互いに相対的に回転可能となっている。
また、外輪転走面17は、軸受中心C2を中心とする球面となっている。そのため、外輪1および内輪2は、ころ3a、3bの転走方向に垂直な断面において、軸受中心C2を中心として角度をなすことができる。その結果、当該軸受10が適用された連続鋳造ロールの支持構造において、当該支持構造が支持する連続鋳造ロールが鋳造物をガイドすることにより撓んだ場合であっても、当該軸受10は連続鋳造ロールを安定して回転自在に保持することができる。
そして、外輪1の外周面上に被覆層5が形成されているため、軸受10を連続鋳造ロールの支持構造を構成するハウジングなどの軸箱9に被覆層5を介して接続固定することができる。したがって、図4に示した軸受10においても、図1に示した軸受と同様の効果を得ることができる。
次に、図5を参照して、本発明に従った軸受の実施の形態3の変形例を説明する。図5に示した軸受10は、もう1つの連続鋳造ロール支持用転がり軸受としての自動調心輪付き円筒ころ軸受である。図5に示した軸受10は、転動部材としての環状の外輪1と、外輪1の内側に配置された環状の内輪2と、複数の円筒ころ3と、自動調心輪35と、被覆層5とを備える。転動部材としての円筒ころ3は、外輪1と内輪2との間に配置される。円筒ころ3は円筒状の形状を有する。自動調心輪35は、外輪1の外周側に配置され、その内周面37が外輪1の外周面36に接触する。自動調心輪35は環状の形状を有している。そして、自動調心輪35の外周面上に被覆層5が形成されている。被覆層5は、図4に示した軸受10と同様に、耐久性の観点からPTFE系樹脂により構成した。
外輪1の内周面には外輪転走面17が形成されており、内輪2の外周面には内輪転走面18が形成されている。そして、内輪転走面18と外輪転走面17とが対向するように、外輪1と内輪2とは配置されている。さらに、複数の円筒ころ3は、外輪転走面17と内輪転走面18とに接触し、周方向に並べて配置されることにより円環状の軌道上に転動自在に保持されている。以上の構成により、自動調心輪付き円筒ころ軸受である軸受10の外輪1および内輪2は、互いに相対的に回転可能となっている。
また、外輪1の外周面36と、自動調心輪35の内周面37とは、軸受中心C3を中心とする球面となっており、互いに摺動可能に構成されている。そのため、外輪1および自動調心輪35は、円筒ころ3の転走方向に垂直な断面において、軸受中心C3を中心として角度をなすことができる。その結果、図5に示した軸受10が適用された連続鋳造ロールの支持構造において、当該支持構造が支持する連続鋳造ロールが鋳造物をガイドすることにより撓んだ場合であっても、当該軸受10は連続鋳造ロールを安定して回転自在に保持することができる。
そして、外輪1の外周面上(具体的には、外輪1の外周側に位置する自動調心輪35の外周面上)に被覆層5が形成されているため、軸受10を連続鋳造ロールの支持構造を構成するハウジングなどの軸箱9に被覆層5を介して接続固定することができる。したがって、図5に示した軸受10においても、図1に示した軸受と同様の効果を得ることができる。
なお、図4および図5に示した軸受10は、たとえば連続鋳造用ガイドロールなどの連続鋳造ロールを支持する構造(連続鋳造ロール支持構造)において、たとえば以下のような構成で用いられる。すなわち、連続鋳造ロール支持構造は、円柱状のロール部と、当該ロール部の両端部にそれぞれ位置する固定端ロールネックおよび自由端ロールネックとを備える連続鋳造ロールを支持するものである。なお、自由端ロールネックとは、連続鋳造ロールの熱膨張による軸方向への伸びが吸収される側のロールネックである。
連続鋳造ロール支持構造は、連続鋳造ロールを保持するための一対のスタンドを備える。当該スタンドは、上述した連続鋳造ロールの固定端ロールネックおよび自由端ロールネック下にそれぞれ位置するように配置される。これらのスタンドは、円筒状の貫通穴が形成されたロール保持部を有している。そして、固定端ロールネックおよび自由端ロールネックがロール保持部の貫通穴を貫通するように、連続鋳造ロールおよび一対のスタンドは配置されている。さらに、固定端ロールネックの外周面とロール保持部の貫通穴の内周面との間には、図4に示した自動調心ころ軸受である軸受10が配置される。また、自由端ロールネックの外周面とロール保持部の貫通穴の内周面との間には、図5に示した自動調心輪付き円筒ころ軸受である軸受10が配置される。つまり、ロール保持部が上述した軸箱9に対応する。これにより、連続鋳造ロールは、スタンドに対して軸まわりに回転自在に保持され、連続鋳造される鋳造物をガイドすることができる。
なお、上述した実施の形態1〜3において、外輪1または自動調心輪35の表面において被覆層5を配置する部分について、被覆層5の付着性を向上させるために、表面粗度をRa(JIS B0601 に規定する算術平均粗さ)で0.05μm以上1.0μm以下、より好ましくは0.05μm以上0.7μm以下とする。
また、上述した実施の形態1〜3において、被覆層5を形成する場合に、一度液状の高分子化合物を外輪1または自動調心輪35の表面に配置した後、当該液状の高分子化合物を固化することで固体の被覆層(1層目の被覆層)を形成し、その後、再び1層目の被覆層上に液状の高分子化合物を配置してもよい。その後、当該液状の高分子化合物を固化する工程を行なうことにより、2層目の被覆層を形成する。このように、液状の高分子化合物を配置する工程と、液状の高分子化合物を固化する工程とを複数回繰り返すことにより、外輪1または自動調心輪35の表面上に複数層からなる被覆層5を形成してもよい。
また、被覆層5を構成する複数層について、異なる材質からなる層を配置してもよい。たとえば、外輪1や自動調心輪35と接触する層には外輪1などの表面との密着性に優れた高分子化合物を用い、被覆層5の最上層に位置する層については、耐摩耗性に優れた高分子化合物を用いるというように、被覆層5の内部においてその層ごとにより好ましい材料を用いることができる。この結果、被覆層5の耐久性を向上させることができる。
また、被覆層5を形成した後、その表面性状や外輪1または自動調心輪35の寸法を調整するため、被覆層5の表面に機械加工(たとえば研削や研磨など)を施してもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
この発明は、軸箱などの部材に固定されて用いられる軸受に用いることができ、特に、軸受の外周部(外輪や外輪の外周に設置された部材)を軸箱などに固定するような形態で使用される軸受に有利に適用される。
1,1a〜1c 外輪、2,2a,2b 内輪、3,3a〜3d ころ、4,4a〜4d 保持器、5 被覆層、9 軸箱、10 軸受、11a,11b 外輪間座、17 外輪転走面、18 内輪転走面、20 ロールネック、21 孔、25 溝、30 密封装置、35 自動調心輪、36 外周面、37 内周面。
Claims (2)
- 外輪と、
前記外輪の内周側に配置される内輪と、
前記外輪と前記内輪との間に配置される複数の転動体と、
前記外輪の外周面上に形成された耐摩耗性被膜とを備える、軸受。 - 前記耐摩耗性被膜が熱可塑性の高分子化合物からなる、請求項1に記載の軸受。
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