JP2007282581A - タンパク質をフォールディングさせる方法およびタグ融合タンパク質からタグを除去する方法ならびにそれらのためのキット - Google Patents

タンパク質をフォールディングさせる方法およびタグ融合タンパク質からタグを除去する方法ならびにそれらのためのキット Download PDF

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Abstract

【課題】 タンパク質の種類を問わず幅広いタンパク質に一般的に適用できる、タンパク質をフォールディングさせる方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 タンパク質をフォールディングさせる方法であって、第一の緩衝液中に変性状態にあるタンパク質を含むタンパク質溶液を供するステップと、第四級アンモニウム塩系界面活性剤のフォールディング補助剤を含む第二の緩衝液を供するステップと、前記タンパク質を前記フォールディング補助剤と接触させるステップとを含む方法、およびタグ融合タンパク質からタグを除去する方法ならびにそれらのためのキットが提供される。
【選択図】 なし

Description

本発明は、タンパク質をフォールディングさせる方法およびタグ融合タンパク質からタグを除去する方法ならびにそれらのためのキットに関し、特に、精製されたヒスチジンタグ融合タンパク質をフォールディングさせる方法、および当該方法により得られたヒスチジンタグ融合タンパク質からヒスチジンタグを除去する方法、ならびにそれらのためのキットに関する。
例えば、タンパク質医薬を製造するために、タンパク質を大量に生産することが必要とされる場合がある。このような場合、精製の容易さなどから、ヒスチジンタグ融合組換えタンパク質が広く用いられている。このようなタグ融合タンパク質としてタンパク質が産生された場合、ヒスチジンタグのような本来のタンパク質に存在しないアミノ酸残基を除去することが好ましい、または必要な場合がある。タグ融合タンパク質からタグを切断する技術の多くでは、エンドペプチダーゼの認識配列を予め導入したタンパク質が利用される。しかしながら、エンドペプチダーゼの切断効率は必ずしも高くなく、エンドペプチダーゼを用いた場合、産業利用に必要な数十mg単位のタンパク質を得ることは容易ではない。
タグ融合タンパク質を利用したタンパク質の精製、ならびにタグの切断および除去を効率的に行うために、様々なキットが開発されている。例えば、QIAGEN社から、ヒスチジンタグ融合タンパク質を利用したタンパク質の精製用キットとして、QIAexpressionist(商標)を入手することができる。また、QIAGEN社から、ヒスチジンタグをエキソヌクレアーゼにより切断および除去するための技術として、TAGZyme(商標)を入手することができる。詳細は、それぞれのマニュアルまたは特許文献を参照のこと(非特許文献1、「The QIAexpressionistTM A handbook for high-level expression and purification of 6xHis-tagged proteins」;非特許文献2、「The QIAexpressionist プロトコールとトラブルシューティング 6xHisタグ・タンパク質の高レベル発現および精製用」;非特許文献3、「The TAGZymeTM Handbook For Exoproteolytic cleavage of N-teminal His tags」;非特許文献4、「TAGZymeTM プロトコールとトラブルシューティング N末端Hisタグのエキソプロテアーゼ分解用」;特許文献1、特公平6-65318号公報;および特許文献2、米国特許第5783413号明細書)。
また、ヒスチジンタグ融合タンパク質は、変性条件下で効率的に精製を行えるという大きな利点を有する。変性条件下での精製では尿素などの変性剤が使用されるが、精製されたタンパク質にペプチダーゼを作用させるためには、一般に変性剤を除去する必要がある。しかしながら、変性剤を除去する過程では、組換えタンパク質の不溶化が高頻度で起き、これが目的のタンパク質の収量が大きく低下する要因となっている。
このようなタンパク質の不溶化を防ぎ、適切にフォールディングされた可溶化タンパク質を得るために、様々なタンパク質フォールディング補助剤が開発されている。例えば、環状糖質サイクロアミロースとポリオキシエチレン系界面活性剤とを用い、タンパク質のフォールディングを補助する技術が知られている(特許文献3、特開2001-261697号公報参照)。
特公平6-65318号公報/米国特許第5691169号明細書 米国特許第5783413号明細書/欧州特許第759931号明細書 特開2001-261697号公報 「The QIAexpressionistTM A handbook for high-level expression and purification of 6xHis-tagged proteins」、[online]、2003年6月、QIAGEN Inc.、[平成17年11月7日検索]、インターネット〈URL:www1.qiagen.com/HB/QIAexpressionist〉 「The QIAexpressionist プロトコールとトラブルシューティング 6xHisタグ・タンパク質の高レベル発現および精製用」、[online]、QIAGEN Inc.、[平成17年11月7日検索]、インターネット〈URL:http://www1.qiagen.com/JP/HB/QIAexpressionistCloning〉、〈URL:http://www1.qiagen.com/JP/HB/QIAexpressionistExpression〉、〈URL:http://www1.qiagen.com/JP/HB/QIAexpressionistPurification〉 「The TAGZymeTM Handbook For Exoproteolytic cleavage of N-teminal His tags」、[online]、2003年3月、QIAGEN Inc.、[平成17年11月7日検索]、インターネット〈URL:http://www1.qiagen.com/HB/TAGZyme〉 「TAGZymeTM プロトコールとトラブルシューティング N末端Hisタグのエキソプロテアーゼ分解用」、[online]、2001年6月、QIAGEN Inc.、[平成17年11月7日検索]、インターネット〈URL:http://www1.qiagen.com/JP/HB/TAGZyme〉 「PD-10 Desalting column」、[online]、Amersham Biosciences、[平成17年11月7日検索]、インターネット〈URL:http://www.chromatography.amershambiosciences.com/aptrix/upp01077.nsf/Content/Products?OpenDocument&parentid=42273&moduleid=42278&zone=Labsep〉
しかしながら、上記フォールディング補助剤を用いた場合であっても、必ずしも全ての場合にタンパク質が適切にフォールディングされるわけではなく、実際には個々の事例ごとに試行錯誤が行われていた。そこで、本発明は、タンパク質の種類を問わず幅広いタンパク質に一般的に適用できる、タンパク質をフォールディングさせる方法を提供すること、ひいては、幅広いタンパク質に一般的に適用できる、タグ融合タンパク質からタグを除去する方法を提供することを目的とする。
本発明の一の側面によると、タンパク質をフォールディングさせる方法であって、
変性剤を含む第一の緩衝液中にタンパク質を含むタンパク質溶液を供するステップと、
第四級アンモニウム塩系界面活性剤のフォールディング補助剤を含む第二の緩衝液を供するステップと、
前記タンパク質を前記フォールディング補助剤と接触させるステップと、
前記フォールディング補助剤と接触させるステップと同時またはその後に、前記変性剤の濃度を低下させるステップと
を含む方法、および当該方法により得られたタンパク質が提供される。
本発明の他の側面によると、タグ融合タンパク質からタグを除去する方法であって、
変性剤を含む第一の緩衝液中にタグ融合タンパク質を含むタンパク質溶液を供するステップと、
第四級アンモニウム塩系界面活性剤のフォールディング補助剤を含む第二の緩衝液を供するステップと、
前記タグ融合タンパク質を前記フォールディング補助剤と接触させるステップと、
前記フォールディング補助剤と接触させるステップと同時またはその後に、前記変性剤の濃度を低下させるステップと
前記変性剤の濃度を低下させるステップの後に、前記フォールディング補助剤と接触させた前記タグ融合タンパク質を、エキソペプチダーゼと接触させるステップと
を含む方法、および当該方法により得られたタンパク質が提供される。
本発明の他の側面によると、第四級アンモニウム塩系界面活性剤を含有するタンパク質フォールディング補助剤が提供される。
本発明の他の側面によると、上記フォールディング補助剤を有する、タンパク質をフォールディングさせるためのキットが提供される。また、本発明の他の側面によると、上記フォールディング補助剤とエキソペプチダーゼとを有する、タグ融合タンパク質からタグを除去するためのキットが提供される。
以下に詳細に説明するように、本発明によると、タンパク質の種類を問わず、幅広いタンパク質に一般的に適用できる、タンパク質をフォールディングさせる方法を提供すること、ひいては、幅広いタンパク質に一般的に適用できる、タグ融合タンパク質からタグを除去する方法が提供される。本発明によると、例えばヒスチジンタグを除去した天然型配列を持つことが必須となるタンパク質医薬や、天然型配列を持つタンパク質を利用した抗体製造用抗原などを効率的に供給することが可能となる。
以下に、本発明の実施の形態を説明する。もっとも、本発明は、以下に説明する実施の形態によって、限定されるものではない。
上記したように、本発明の一の側面によると、タンパク質をフォールディングさせる方法が提供される。また、本発明の他の側面によると、当該フォールディング方法により得られたタンパク質が提供される。
本発明にかかるフォールディング方法は、変性剤を含む第一の緩衝液中にタンパク質を含むタンパク質溶液を供するステップを含む。変性剤を含む第一の緩衝液中で、前記タンパク質は変性状態にある。本発明にかかるフォールディング方法は、変性状態にある任意のタンパク質に適用することができる。
本明細書において、「タンパク質」は、天然のアミノ酸配列を有するタンパク質、および人工的な(すなわち非天然の)アミノ酸配列を有するタンパク質を含む。人工的なアミノ酸配列を有するタンパク質は、天然のアミノ酸配列を有するタンパク質を改変したタンパク質、天然のアミノ酸配列を有するタンパク質の断片、および当該断片を改変したものを含む。改変は、1または複数のアミノ酸の置換、挿入および/または欠失、ならびに当該タンパク質と他のタンパク質および/またはペプチドとの融合を含む。また、本明細書において、「タンパク質」は、プロセッシングおよび/または他の翻訳後修飾等の天然のプロセスによって、または本技術分野で公知の化学的修飾技術によって、修飾されたタンパク質を含む。修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖、アミノ末端およびカルボキシル末端を含めたタンパク質の任意の部位に存在してもよい。修飾は、アセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、ホルミル化、ガンマ−カルボキシル化、グリコシル化、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、リン酸化、プレニル化、硫酸化、および糖鎖または脂質の付加を含む。また、修飾は、(分子内または分子間)架橋、環化、およびユビキチン化をさらに含む。
本明細書において「変性状態」は、タンパク質の高次構造が制御されておらず、期待される機能(タンパク質が複数の機能を有する場合には、少なくともその一部の機能)が失われている、または低下している状態をいう。例えば、変性状態の例として、塩酸グアニジン、尿素等の変性剤を含む溶液にタンパク質が可溶化されている状態が挙げられる。
本発明にかかるフォールディング方法は、前記タンパク質がタグ融合タンパク質であることが好ましい。タグ融合タンパク質は、標的タンパク質のN末端および/またはC末端にタグが融合したタンパク質である。以下に詳細に説明するように、タグ融合タンパク質を用い、タグを利用したタンパク質精製技術と、本発明にかかるフォールディング方法と、タグの切断技術とを組み合わせることで、標的タンパク質を効率的に生産することが可能となる。
本発明にかかるフォールディング方法は、任意のタグが融合したタンパク質に適用することができる。特に、タグは、アフィニティータグであることが好ましい。これにより、本発明にかかるフォールディング方法を、タンパク質精製技術と好適に組み合わせることができる。具体的には、アフィニティータグ融合タンパク質を当該アフィニティータグと特異的に結合可能な分離用物質と組み合わせて用いることで、好適に目的のタンパク質を精製することができる。アフィニティータグの例として、ヒスチジンタグ、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、チオレドキシン(TrxA)、セルロース結合ドメイン(CBD)、ストレプトアビジン結合ペプチド(例えば、StreptagTM)等が挙げられる。特に、前記タグ融合タンパク質がヒスチジンタグ融合タンパク質であることが好ましい。これにより、本発明にかかるフォールディング方法により得られたタンパク質に対して、エキソペプチダーゼを利用するタグの切断技術を好適に適用することができる。
ヒスチジンタグは、連続したまたは近傍に配置された複数の(好ましくは6個の)ヒスチジン残基を有するタグである。好ましくは、ヒスチジンタグは、連続した6個のヒスチジン残基を有する(6×ヒスチジン等とも記す。)。ヒスチジンタグが、直接またはアミノ酸配列を介して標的タンパク質に融合される。ヒスチジンタグは、二価の金属原子、特にニッケル原子と親和性が高い。そのためヒスチジンタグを有するタンパク質はニッケルアフィニティーマトリックス(例えば、Ni-NTA(QIAGEN))と特異的に結合し、容易に精製することができる。マトリックスと特異的に結合したヒスチジンタグ融合タンパク質は、カラムに流す溶出バッファーのpHを下げるか、イミダゾールの濃度を上げることによりマトリックスから遊離させ、溶出させることができる。例えば、ヒスチジンタグとして以下のアミノ酸配列を有するタグを標的タンパク質と融合することができる。
・Met-Lys-His-His-His-His-His-His(配列番号1)
・Met-Arg-His-His-His-His-His-His(配列番号2)
グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)は、グルタチオンと特異的に結合するタンパク質である。GST融合タンパク質は、例えばGlutathione Sepharose 4B(Amersham Biosciences)により精製することができる。
マルトース結合タンパク質(MBP)は、大腸菌のマルトース結合タンパク質である。MBP融合タンパク質は、アミロースやアガロースゲルに吸着させた後、過剰のマルトースで遊離することで精製できる。
チオレドキシン(TrxA)は、酸化還元反応を触媒する大腸菌のタンパク質である。チオレドキシン融合タンパク質は、機能性の一対のチオール基によって金属キレートアフィニティークロマトグラフィーで精製できる。このための担体として、例えばThioBondTMResin(Invitrogen社製)等が市販されている。
セルロース結合ドメイン(CBD)は、Clostridium cellulovoransとCellulomonas fimi由来のセルロース結合ドメイン配列であり、セルロースに特異的に結合する性質を有する。CBC融合タンパク質は、セルロースやキチンなどの不活性な担体に化学的な修飾を行うことなく固定させることができる。
ストレプトアビジン結合ペプチドとして、例えばStrep-tagIIと呼ばれる8個のアミノ酸からなるペプチドが知られており、StrepTactinTMやStreptavidineTMに選択的に結合させて精製することができる。
タグは、標的タンパク質のN末端およびC末端のいずれに融合していてもよく、それらの両方に融合していてもよい。特に、前記タグ融合タンパク質が、少なくともN末端に(好ましくはN末端のみに)タグが融合されたタンパク質であることが好ましい。これにより、本発明にかかるフォールディング方法により得られたタンパク質に対して、ジペプチジルアミノペプチダーゼを利用するタグの切断技術を好適に適用することができる。
なお、適当なペプチダーゼを用いることで、タグ融合タンパク質をタグと標的タンパク質とに分離し、さらには標的タンパク質のみを精製することができる。ペプチダーゼとして、ペプチド鎖の内部のペプチド結合に作用し、これを断片化するエンドペプチダーゼや、ペプチド鎖のN末端またはC末端に作用して、末端アミノ酸(またはジペプチド)を逐次遊離するエキソペプチダーゼを用いることができる。エンドペプチダーゼの例として、Factor Xa、トロンビン、プレシジョンプロテアーゼ、AcTEVプロテアーゼ、エンテロキナーゼ等が挙げられる。ペプチダーゼとしてエンドペプチダーゼを用いる場合、タグ融合タンパク質は、タグと標的タンパク質との間にペプチダーゼ認識配列を有することが好ましい。各ペプチダーゼの認識配列は、以下の通りである(矢印は切断部位を示す。)。ペプチダーゼとしてエキソペプチダーゼを用いる場合については後述する。
・Factor Xa:lle-Glu-Gly-Arg↓(配列番号3)
・トロンビン:P4-P3-Pro-Arg/Lys↓P1-P2(P3、P4:疎水性アミノ酸、P1、P2:酸性ではないアミノ酸)(配列番号4)
・プレシジョンプロテアーゼ:Leu-Glu-Val-Leu-Phe-Gln↓Gly-Pro(配列番号5)
・AcTEVプロテアーゼ:Glu-Asn-Leu-Tyr-Phe-Gln↓Gly(配列番号6)
・エンテロキナーゼ:Asp-Asp-Asp-Asp-Lys↓(配列番号7)
上記したように、タンパク質精製技術と、本発明にかかるフォールディング方法とを組み合わせることで、目的のタンパク質を効率的に生産することが可能となる。すなわち、本発明にかかるフォールディング方法を適用するタンパク質溶液は、精製されたタンパク質を含むタンパク質溶液であることが好ましい。
本明細書において「精製された」は、完全に(すなわち理想的に)純粋であることを意図するものではなく、目的のタンパク質がインビボまたはインビトロで産生された際と比べて、タンパク質溶液中のタンパク質の総量に対して目的のタンパク質の量の割合が増加している状態をいう。精製されたタンパク質を含むタンパク質溶液は、タンパク質溶液中のタンパク質の総量に対して、好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上の目的のタンパク質を含有する。
タンパク質精製技術は、特に限定されるものではなく、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー等のクロマトグラフィー、および、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動等の電気泳動等を含む。以下に詳細に説明するように、本発明にかかるフォールディング方法は、タグ切断技術と好適に組み合わせることができる。このため、本発明にかかるフォールディング方法は、タグを利用したアフィニティークロマトグラフィーによるタンパク質精製技術と好適に組み合わせることができる。
具体的には、本発明にかかるフォールディング方法を、タグを利用したアフィニティークロマトグラフィーによるタンパク質精製技術と組み合わせる場合、前記タンパク質溶液を供するステップが、
前記タグ融合タンパク質を産生する組換え生物から得られた試料を、当該タグと特異的に結合可能な分離用物質と接触させるステップと、
前記分離用物質と結合した前記タグ融合タンパク質を、前記試料に含まれるその他の成分から分離するステップと、
前記分離用物質と結合した前記タグ融合タンパク質を、前記分離用物質から分離し、前記前記精製されたタンパク質を含む前記タンパク質溶液を得るステップと
を含むことが好ましい。
本発明にかかるフォールディング方法は、任意の手段で産生されたタンパク質に適用することができる。例えば、タンパク質は、インビトロで産生することができ、また、大腸菌、昆虫細胞、哺乳動物細胞等の発現系を用いてインビボで産生することができる。特に、本発明にかかるフォールディング方法が、タグを用いた(または用いない)タンパク質精製技術やタグの切断技術と好適に組み合わせられることを考慮すると、本発明にかかるフォールディング方法は、大腸菌により産生したタンパク質に適用することが好ましい。換言すると、前記組換え生物が大腸菌であることが好ましい。昆虫細胞、哺乳動物細胞等の真核細胞により産生した場合と比べて、大腸菌等の原核細胞によりタンパク質を産生した場合、期待される立体構造を有さず、活性を有さないタンパク質が得られることが多い。特に、大腸菌によりタンパク質を産生した場合には、封入体(inclusion body)と呼ばれる、タンパク質が不溶性物質として細胞内に蓄積した構造体が形成されることがある。このような場合にも、本発明にかかるフォールディング方法により、タンパク質の立体構造を変換し、その活性を回復することができる。
タンパク質を精製する際に用いる緩衝液に用いることができるpH調整剤の例として、Tris HCl(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩)、HEPES(2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸)、酢酸、クエン酸、リン酸、MOPS等が挙げられる。pH調整剤の濃度は、好ましくは10〜50mMである。緩衝液のpHは、通常は4〜11、好ましくは6〜10である。
また、タンパク質を精製する際に用いる緩衝液が変性剤を含むことが好ましい。これにより、例えば大腸菌内で封入体が形成された場合のように、当初産生されたタンパク質の立体構造が期待されたものではなかった場合であっても、タンパク質の立体構造を開き、後に変性剤を希釈または除去することで、所望の立体構造に戻すことにより、タンパク質の機能を回復させることができる。変性剤の例として、尿素、塩酸グアニジン、界面活性剤等が挙げられる。変性剤として尿素を用いる場合、尿素の濃度は、通常は1〜10M、好ましくは6〜9M、より好ましくは8Mである。変性剤として塩酸グアニジンを用いる場合、塩酸グアニジンの濃度は、通常は1〜8M、好ましくは5〜7M、より好ましくは6Mである。
タグを利用したアフィニティークロマトグラフィーによるタンパク質精製は、公知の種々の方法で行うことができ、様々な方法に対応したキット等が販売されている。例えば、ヒスチジンタグ融合タンパク質をアフィニティークロマトグラフィーにより精製するためのキットとして、The QIAexpressionist(商標)(QIAGEN)が挙げられる。具体的には、当該キットのマニュアル(非特許文献1、「The QIAexpressionistTM A handbook for high-level expression and purification of 6xHis-tagged proteins」)によると、例えば、変性条件下での清澄化した大腸菌ライセートの調製、および変性条件下における大腸菌からの6×ヒスチジンタグ融合タンパク質のバッチ精製は、以下のように行うことができる。
〔材料〕
・目的のヒスチジンタグ融合タンパク質を発現した大腸菌の細胞ペレット
・バッファーB(1L中):
100 mM NaH2PO4 13.8 g NaH2PO4・H2O (MW 137.99 g/mol)
10 mM Tris・Cl 1.2 g Tris base (MW 121.1 g/mol)
8 M 尿素 480.5 g (MW 60.06 g/mol)
NaOHによりpHを8.0に調整する。
・バッファーC(1L中):
100 mM NaH2PO4 13.8 g NaH2PO4・H2O (MW 137.99 g/mol)
10 mM Tris・Cl 1.2 g Tris base (MW 121.1 g/mol)
8 M 尿素 480.5 g (MW 60.06 g/mol)
HClによりpHを6.3に調整する。
・バッファーD(1L中):
100 mM NaH2PO4 13.8 g NaH2PO4・H2O (MW 137.99 g/mol)
10 mM Tris・Cl 1.2 g Tris base (MW 121.1 g/mol)
8 M 尿素 480.5 g (MW 60.06 g/mol)
HClによりpHを5.9に調整する。
・バッファーE(1L中):
100 mM NaH2PO4 13.8 g NaH2PO4・H2O (MW 137.99 g/mol)
10 mM Tris・Cl 1.2 g Tris base (MW 121.1 g/mol)
8 M 尿素 480.5 g (MW 60.06 g/mol)
HClによりpHを4.5に調整する。
〔手順〕
(1)細胞ペレットを氷上で15分間解凍し、湿重量1gあたり5mLのバッファーBで細胞を再懸濁する。
(2)室温で細胞を15〜60分間撹拌するか、または泡だたないように注意しながら、静かにボルテックスして溶解する。
(3)ライセートを10,000×g、室温で20〜30分間遠心し、細胞破片をペレット化し、上清として清澄化したライセートを得る。
(4)1mLの50%Ni−NTA懸濁液を、清澄化したライセート4mLに添加し、室温で15〜60分間浸透しながら(ロータリー・シェーカーで200rpm)静かにミックスする。
(5)出口をキャップで閉じた空のカラムにライセート・Ni−NTAミックスを注意深くロードする。
(6)キャップを取り、フロースルーを収集する。
(7)4mLのバッファーCで2回洗浄する。
(8)0.5mLのバッファーDで4回、目的のタンパク質を溶出し、続いて0.5mLのバッファーEで4回溶出し、各フラクションを収集する。
本発明にかかるフォールディング方法は、変性剤の濃度を低下させるステップ(後述)の前に、タンパク質溶液にジスルフィド結合還元剤を添加するステップをさらに含むことが好ましい場合がある。大腸菌等でタンパク質を産生させた場合、目的のタンパク質の分子内または分子間にジスルフィド結合が形成されることがある。しかしながら、ジスルフィド結合還元剤により、そのようなジスルフィド結合を切断することができる。ジスルフィド結合の還元反応を進めるため、ジスルフィド結合還元剤を添加後、室温(通常4〜30℃)で、例えば5分間放置する。ジスルフィド結合還元剤は、2−メルカプトエタノール、ジチオスレイトール、シスチン、チオフェノール、グルタチオン等を含む。ジスルフィド結合還元剤の濃度は、好ましくは0.01〜10mMであるが、当業者であれば、目的のタンパク質の性質に応じて設定することができる。
また、本発明にかかるフォールディング方法は、変性剤の濃度を低下させるステップ(後述)の前に(好ましくは、ジスルフィド結合還元剤を添加するステップの後に)、タンパク質溶液にアセトンを添加するステップと、得られた溶液を冷却するステップと、冷却後の溶液を遠心するステップと、遠心により得られたタンパク質の沈殿を、変性剤を含む緩衝液に溶解するステップとをさらに含むことが好ましい。当該処理により試料中に混在する不純物が除去され、その後、より好適にフォールディング処理を行える場合があるためである。より具体的には、フォールディング反応開始前にタンパク質溶液に、好ましくは50〜95容量%、さらに好ましくは70〜80容量%のアセトンを添加し、好ましくは−196〜0℃、さらに好ましくは−80℃〜−20℃で、好ましくは5分〜1日、さらに好ましくは15分〜30分間処理し、その後、好ましくは0〜30℃、さらに好ましくは4℃、好ましくは1000〜20000rpm、さらに好ましくは3000〜9000rpmで遠心してタンパク質の沈殿を回収後、変性剤を含む緩衝液に再溶解することで、タンパク質の前処置を行うこともできる。
本発明にかかるフォールディング方法は、第四級アンモニウム塩系界面活性剤のフォールディング補助剤を含む第二の緩衝液を供するステップをさらに含む。なお、前記第四級アンモニウム塩系界面活性剤が、下式で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
−N−R または
Figure 2007282581
(式中、
およびXは、各々独立に、ハロゲンである。XおよびXは、ClまたはBrであることが好ましい。
およびRは、各々独立に、炭素数10〜30の直鎖状または分岐状のアルキル基である。但し、RおよびRは、エーテル結合を有してもよい。RおよびRは、炭素数が12〜25であることが好ましく、炭素数が14〜20であることがさらに好ましい。また、RおよびRは、直鎖状アルキルであることが好ましい。具体的には、RおよびRの例として、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、およびイコシルが挙げられる。また、RおよびRがエーテル結合を有する場合の例として、−(CH−O−(CH12CHが挙げられる。
およびRは、各々独立に、炭素数1〜5のアルキル基またはベンジル基である。RおよびRは、炭素数が好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜3のアルキル基である。具体的には、RおよびRの例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルおよびベンジル基が挙げられる。
nは、0〜5の整数である。nは、0〜3の整数であることが好ましく、0であることがさらに好ましい。nが1以上の整数である場合、Rは、ピリジニウム環の任意の位置に存在してよい。)
より具体的には、フォールディング補助剤の例として、ハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム(ハロゲン化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム等)およびハロゲン化アルキルピリジニウム(ハロゲン化ヘキサデシルピリジニウム等)が挙げられる。これらのフォールディング補助剤は、商業的に入手可能である。
なお、前記第二の緩衝液が、ペプチダーゼ反応に適した緩衝液であることが好ましい。以下に詳細に説明するように、タンパク質としてタグ融合タンパク質を用いる場合、本発明にかかるフォールディング方法により得られたタンパク質は、そのままペプチダーゼによるタグ切断反応に供することができる。ペプチダーゼ反応に適した緩衝液は、ペプチドの加水分解活性に関して、ペプチダーゼの最大活性の、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上の活性を発揮できることができる緩衝液である。ペプチダーゼの種類に応じて、最適化されたペプチダーゼ反応用緩衝液の組成が公開されており、また、各種ペプチダーゼ反応用緩衝液が商業的に入手可能である。
本発明にかかるフォールディング方法は、前記タンパク質を前記フォールディング補助剤と接触させるステップと、前記フォールディング補助剤と接触させるステップと同時またはその後に、前記変性剤の濃度を低下させるステップとをさらに含む。以下に詳細に説明するように、これにより、タンパク質を不溶化させることなくタンパク質の高次構造を復活させることができる。
上記したように、タンパク質を大量に生産する場合、タグ融合タンパク質を大腸菌により産生させ、変性剤を用いた変性条件下で精製することが行われる。この場合、精製後のタグ融合タンパク質からタグを除去することが望まれる場合がある。タグを除去するために、ペプチダーゼによるタグの切断が行われる。ペプチダーゼを作用させるためには、一般に、変性剤を除去することが必要になる。しかしながら、変性剤を除去する過程で、目的のタンパク質の不溶化が高頻度で起こる。目的のタンパク質の不溶化を阻止するために、界面活性剤等の種々のフォールディング補助剤を添加することが行われていた。しかしながら、これが必ずしも成功するわけでもなく、実際には個々の事例ごとに試行錯誤が行われていた。
例えば、ジペプチジルアミノペプチダーゼ(DAPase)を用いて、精製されたヒスチジンタグ融合タンパク質からタグを除去するための有用なキット「TAGZyme(商標)」(QIAGEN)のマニュアル(非特許文献3、「TAGZymeTMHandbook For Exoproteolytic cleavage of N-terminal His tags」、21頁)には、ジペプチジルアミノペプチダーゼの特性について以下のように記載されている。「DAPase酵素は、たとえ低濃度であっても、変性剤(塩酸グアニジンまたは尿素)の存在下では不活性である。DAPase酵素は、0.4%までのCHAPS,Tween(商標)20,Tween 80,およびTriton(商標)X-100の存在下で85〜100%の活性を有し、1%のこれらの界面活性剤の存在下で60〜70%の活性を有する。」
この記載からも、ジペプチジルアミノペプチダーゼを作用させるために変性剤を除去する必要があること、タンパク質の不溶化を阻止するために、ジペプチジルアミノペプチダーゼの活性を犠牲にしつつも界面活性剤を添加する必要があったこと、および界面活性剤の種類およびその濃度を検討する必要があったことが認められる。
一方で、驚くべきことに、本発明によると、上記フォールディング補助剤により、好適にタンパク質の不溶化を阻止することができること(すなわち、フォールディング時のタンパク質の収量が改善されること)、さらには、上記フォールディング補助剤が、タンパク質の種類を問わず、幅広いタンパク質に再現性よく適用できることを、本発明者等は見出した。また、驚くべきことに、上記フォールディング補助剤は、エキソペプチダーゼの活性を阻害することなく、タンパク質の不溶化を阻止することができることを、本発明者等は見出した。すなわち、上記フォールディング補助剤を用いることで、精製されたタグ融合タンパク質を不溶化させることなく変性剤を除去することが可能となり、変性剤を除去したタンパク質溶液をそのまま、エキソペプチダーゼによるタグ除去に供することができる。また、フォールディング反応後、直接ペプチダーゼを添加してタグ除去処理が可能であるので、フォールディングに用いた緩衝液系を酵素反応液系へ交換する過程を経る必要が無いため、標的タンパク質調整の再現性および効率が改善される。
なお、上記非特許文献3に記載されている界面活性剤のうち、CHAPSは、両イオン性の界面活性剤であり、その他のTween(商標)20,Tween 80,およびTriton(商標)X-100は、非イオン性の界面活性剤である。一方で、上記フォールディング補助剤は、陽イオン性の界面活性剤である。この点からも、本発明が、従来の技術と比べて異質な構成を有することが分かる。
なお、変性剤の濃度を低下させるステップは、タンパク質をフォールディング補助剤と接触させるステップと同時またはその後に行うことができる。変性剤の濃度を低下させるステップにおいて、変性剤の濃度を低下させる直前において、タンパク質の濃度は、好ましくは1〜10000μg/mLであり、さらに好ましくは1000〜5000μg/mLである。pHは、好ましくは2〜13であり、さらに好ましくは5〜8である。また、変性剤の濃度を低下させた後において、変性剤は実質的に完全に除かれていることが好ましい。具体的には、変性剤の最終的な濃度は、好ましくは100mM以下であり、さらに好ましくは1mM以下である。フォールディング補助剤の最終的な濃度は、好ましくは0.005〜2重量%であり、さらに好ましくは0.05〜1重量%である。目的のタンパク質の最終的な濃度は、好ましくは1〜10000μg/mLであり、さらに好ましくは100〜300μg/mLである。pHは、好ましくは3〜11であり、さらに好ましくは5〜8である。また、このステップは、4〜30℃で行うことができる。
より具体的には、前記変性剤の濃度を低下させるステップが、
前記タンパク質溶液と前記第二の緩衝液とを混合し、前記第一の緩衝液を希釈するステップ、および/または
前記タンパク質溶液の前記第一の緩衝液の少なくとも一部を、前記第二の緩衝液に交換するステップ
を含むことが好ましい。
タンパク質溶液と第二の緩衝液とを混合し、第一の緩衝液を希釈するステップは、例えば、上記フォールディング剤を含む第二の緩衝液(フォールディング液)を撹拌しながら、当該第二の緩衝液にタンパク質溶液を徐々に添加することで行うことができる。逆に、第一の緩衝液を希釈するステップは、タンパク質溶液を撹拌しながら、当該タンパク質溶液に上記フォールディング剤を含む第二の緩衝液(フォールディング液)を徐々に添加することで行うことができる。タンパク質溶液に第二の緩衝液を加え、第一の緩衝液を希釈した後に、さらに、第一の緩衝液の少なくとも一部を前記第二の緩衝液に交換することもできる。この場合、第一の緩衝液を希釈した段階における、目的のタンパク質の最終的な濃度は、好ましくは10〜1000μg/mLであり、さらに好ましくは50〜200μg/mLである。また、pHは、好ましくは3〜11であり、さらに好ましくは5〜8である。
上記したように、タンパク質溶液の第一の緩衝液の少なくとも一部を、第二の緩衝液に交換するステップは、タンパク質溶液と第二の緩衝液とを混合することで第一の緩衝液を希釈したタンパク質溶液に対して行うこともでき、また、精製により得られたタンパク質溶液に対して直接行うこともできる。前記第一の緩衝液の少なくとも一部を、前記第二の緩衝液に交換するステップは、ゲル濾過または透析により行うことができる。また、前記第一の緩衝液の少なくとも一部を、前記第二の緩衝液に交換するステップは、タンパク質溶液の濃縮および希釈により行うことができる。例えば、このような方法として、限外濾過法が挙げられる。限外濾過法においては、半透膜上にタンパク質溶液を添加し、遠心または気体やポンプによる加圧で、溶媒だけを透過させタンパク質溶液を濃縮した後、必要な緩衝液を添加することでタンパク質溶液を希釈することで、緩衝液を交換することができる。また、タンパク質溶液を半透膜チューブに封入後、半透膜を透過しない水分吸収性の物質(水溶性高分子ポリマーなど、例えばAquacide II(カルビオケム社))内にチューブを埋包し、チューブの外部へ溶媒のみを漏出させ、タンパク質溶液を濃縮した後、タンパク質溶液を希釈することで、緩衝液を交換することができる。タンパク質溶液の濃縮および希釈は繰り返し行うことができる。なお、当業者に明らかなように、緩衝液を交換するとは、溶液中の特定の成分を残しつつ、緩衝液の組成を変化させることをいう。
ゲル濾過は、溶液に含まれる溶質分子の大きさの違いを利用して溶質の分離を行う手法であり、これにより緩衝液を交換することができる。立体的網目構造をもつゲル担体中を大きさの異なったタンパク質が流れていくとき、その網目への入り込みやすさはそれぞれのタンパク質の大きさに依存し、大きな分子ほどゲルに引っ掛かりにくく、早くカラムから流れ出ることを利用して、溶質を分離する。ゲル濾過による緩衝液の交換は、公知の種々の方法で行うことができ、様々な方法に対応したキット等が販売されている。例えば、ゲル濾過により緩衝液を交換するためのキットとして、PD-10(Amersham Biosciences)が挙げられる。具体的には、当該キットのマニュアル(非特許文献5、「PD-10 Desalting column」)によると、ゲル濾過による緩衝液の交換は、以下のように行うことができる。
(1)所定のゲルが充填されたカラムを、カラム容量の10倍量のフォールディング液で平衡化する。
(2)カラム容量までのタンパク質溶液をカラムに添加する。タンパク質溶液がカラム容量に満たないときは、カラム容量となるまでフォールディング液を加える。
(3)カラム容量より多い適当量のフォールディング液により溶出し、フロースルーを収集する。
透析は、半透膜を利用して緩衝液を交換する手法である。半透膜を隔てて異なる組成の溶液を接触させることで、溶液中の特定の成分を交換することができる。透析による緩衝液の交換は、公知の種々の方法で行うことができ、様々な方法に対応したキット等が販売されている。
本発明にかかるフォールディング方法は、前記変性剤の濃度を低下させるステップにおいて、目的のタンパク質が不溶化してしまった場合、タンパク質溶液にアルカリ溶液を添加するステップをさらに含むことが好ましい場合がある。アルカリ溶液を加え、pHを調整することで、タンパク質を可溶化できる場合がある。アルカリ溶液の例として、例えば10Mの水酸化ナトリウム溶液等が挙げられる。タンパク質溶液の最終的なpHが、好ましくは11〜14、さらに好ましくは12〜14となるように、アルカリ溶液を添加する。
また、本発明の他の側面によると、タグ融合タンパク質からタグを除去する方法が提供される。また、本発明の他の側面によると、当該タグ除去方法により得られたタンパク質が提供される。すなわち、上記した本発明にかかるフォールディング方法により、変性状態にあるタグ融合タンパク質をフォールディングさせ、さらにフォールディングされたタグ融合タンパク質からタグを切断および除去することで、好適に標的タンパク質を生産することができる。
本発明にかかるタグ除去方法は、上記フォールディング方法により得られたタグ融合タンパク質(すなわち、前記フォールディング補助剤と接触させた前記タグ融合タンパク質)を、前記変性剤の濃度を低下させるステップの後に、エキソペプチダーゼと接触させるステップを有する。また、本発明にかかるタグ除去方法は、前記タグ融合タンパク質からタグが切断されて得られた標的タンパク質を、切断されたタグおよびエキソペプチダーゼから分離するステップを有することが好ましい。これにより、タグ融合タンパク質から除去されたタグを、標的タンパク質を含む溶液から除去することができる。
エキソペプチダーゼには、アミノペプチダーゼ、ジペプチジルアミノペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、ジペプチジルカルボキシペプチダーゼが含まれる。タグ融合タンパク質において、タグが標的タンパク質のN末端およびC末端のいずれに(または両方に)融合されているかに応じて、エキソペプチダーゼを選択することができる。例えば、タグ融合タンパク質が、少なくともN末端にタグが融合されたタンパク質である場合、前記エキソペプチダーゼがジペプチジルアミノペプチダーゼであることが好ましい。
標的タンパク質を、切断されたタグおよびエキソペプチダーゼから分離するステップは、公知の種々の方法により行うことができる。例えば、上記した種々のクロマトグラフィーにより標的タンパク質をタグ等から分離することができる。
エキソペプチダーゼによるタグの切断および除去は、公知の種々の方法で行うことができ、様々な方法に対応したキット等が販売されている。例えば、エキソペプチダーゼによりタグを切断および除去するためのキットとして、TAGZyme(商標)(QIAGEN)が挙げられる。具体的には、当該キットのマニュアル(非特許文献3、「TAGZymeTMHandbook For Exoproteolytic cleavage of N-terminal His tags」、8-11頁)によると、エキソペプチダーゼによるタグの切断、ならびにエキソペプチダーゼおよび切断されたタグの除去は、以下のように行うことができる。
〔材料〕
・標的タンパク質のN末端にヒスチジンタグを融合したN末ヒスチジンタグ融合タンパク質(ヒスチジンタグのアミノ酸残基の数は偶数とする。)(標的タンパク質が、ジペプチジルアミノペプチダーゼの停止点を有さない場合は、標的タンパク質のN末端にグルタミンを介してヒスチジンタグを融合したヒスチジンタグ融合タンパク質を用いる。)
・C末端にヒスチジンタグを融合したジペプチジルアミノペプチダーゼ
・C末端にヒスチジンタグを融合したグルタミンシクロトランスフェラーゼ(標的タンパク質が、ジペプチジルアミノペプチダーゼの停止点を有さない場合)
・C末端にヒスチジンタグを融合したピログルタミルアミノペプチダーゼ(標的タンパク質が、ジペプチジルアミノペプチダーゼの停止点を有さない場合)
〔手順〕
(1)N末ヒスチジンタグ融合タンパク質溶液にジペプチジルアミノペプチダーゼを添加し、ヒスチジンタグ融合タンパク質からヒスチジンタグを切断する。
(2)Ni−NTAマトリックスを充填したカラムに(1)で得られた反応液を添加し、当該マトリックスによりジペプチジルアミノペプチダーゼおよび切断されたヒスチジンタグを捕捉し、フロースルーを収集する。
標的タンパク質が、ジペプチジルアミノペプチダーゼの停止点を有さない場合は、上記手順のそれぞれを以下のように修正する。
(1)におけるヒスチジンタグの切断を、過剰量のグルタミンシクロトランスフェラーゼの存在下で行う。これにより、上記グルタミンの直前までヒスチジンタグが切断された段階で、グルタミンシクロトランスフェラーゼにより、N末端の当該グルタミンが環化され、ピログルタメートが形成される。N末端にピログルタメートを有するタンパク質は、ジペプチジルアミノペプチダーゼの基質になれず、ジペプチジルアミノペプチダーゼによるN末端の切断がピログルタメートの直前まで終了する。
(2)において、グルタミンシクロトランスフェラーゼもNi−NTAマトリックスに捕捉される。
(3)さらに、(2)で得られたフロースルーに、ピログルタミルアミノペプチダーゼを添加し、N末端のピログルタミル残基を切断する。
(4)さらに、Ni−NTAマトリックスを充填したカラムに(3)で得られた反応液を添加し、当該マトリックスによりピログルタミルアミノペプチダーゼを捕捉し、フロースルーを収集する。
また、本発明の他の側面によると、上記第四級アンモニウム塩系界面活性剤を含有するタンパク質フォールディング補助剤が提供される。また、本発明の他の側面によると、当該フォールディング補助剤を有する、タンパク質をフォールディングさせるためのキットが提供される。また、本発明の他の側面によると、当該フォールディング補助剤とエキソペプチダーゼとを有する、タグ融合タンパク質からタグを除去するためのキットが提供される。上記したように、上記フォールディング補助剤によりタンパク質の不溶化を阻止しつつ、タンパク質のフォールディングを促すことができる。また、当該フォールディング補助剤は、タンパク質をフォールディングさせるためのキットおよびタグ融合タンパク質からタグを除去するためのキットの構成要素として用いることができる。
また、本発明にかかるキットは、緩衝液を交換するための手段をさらに有することが好ましい。緩衝液を交換するための手段の例として、ゲル濾過を行うための手段(ゲル濾過用マトリックスが充填されたカラム等)や、透析を行うための手段(半透膜が設けられたチューブ等)が挙げられる。本発明にかかるキットは、緩衝液を交換するための手段を有することで、タンパク質のフォールディングをより好適に行うことができる。
本発明にかかるキットは、環状糖質サイクロアミロース、ポリオキシエチレン系界面活性剤等の他のフォールディング補助剤や、緩衝液等をさらに有することができる。
以下に、本発明の実施例を、添付図面を参照しながら説明する。もっとも、本発明は、以下に説明する実施例によって限定されるものではない。
[材料]
〔タンパク質および生物試料〕
・以下のヒスチジンタグ融合タンパク質を発現した大腸菌の細胞ペレット
・タンパク質A(配列番号8):
SARSコロナウイルス由来タンパク質(スパイクタンパク質)のヒスチジンタグ融合組換えタンパク質
・タンパク質B(配列番号9):
A群レンサ球菌由来タンパク質(SPE−L)のヒスチジンタグ融合組換えタンパク質
・タンパク質C(配列番号10):
C群レンサ球菌由来タンパク質(SDM)のヒスチジンタグ融合組換えタンパク質
・タンパク質D(配列番号11):
SARSコロナウイルス由来タンパク質(膜タンパク質)のヒスチジンタグ融合組換えタンパク質
・タンパク質D’(配列番号12):
SARSコロナウイルス由来タンパク質(膜タンパク質)のヒスチジンタグ融合組換えタンパク質(エンドペプチダーゼであるAcTEV(インビトロジェン)の認識配列を有する。)
〔精製用緩衝液〕
・精製用緩衝液I:
100mM NaHPO
10mM Tris・Cl
6M 塩酸グアニジン
NaOHによりpHを8.0に調整する。
・精製用緩衝液II:
100mM NaHPO
10mM Tris・Cl
8M 尿素
HClによりpHを6.3に調整する。
・精製用緩衝液III:
100mM NaHPO
10mM Tris・Cl
8M 尿素
0.5M イミダゾール
NaOHによりpHを8.0に調整する。
・精製用緩衝液IV:
6M 塩酸グアニジン
5mM イミダゾール
0.1M りん酸ナトリウム
pH8.0
・精製用緩衝液V:
8M 尿素
0.5M イミダゾール
0.1M りん酸ナトリウム
pH8.0
・精製用緩衝液VI:
20mM りん酸ナトリウム
8M 尿素
0.5M 塩化ナトリウム
0.5M イミダゾール
pH7.0
〔フォールディング液〕
・フォールディング液I(DAPase反応用緩衝液):
150mM 塩化ナトリウム
20mM りん酸ナトリウム
pH7.0
・フォールディング液II(AcTEV反応用緩衝液):
50mM Tric−HCl
0.5mM EDTA
pH6.0
・フォールディング液III:
フォールディング液I中、0.1重量%の臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(CH(CH15N(CH・Cl)を含む
・フォールディング液IV:
フォールディング液II中、0.1重量%の臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを含む
・フォールディング液V:
フォールディング液I中、1重量%の塩化ヘキサデシルピリジニウム(CH(CH15N・Cl)を含む
〔カラムおよび酵素〕
・Ni-Sepharose 6 Fast Flow(アマシャムバイオサイエンス社)
・Sephadex G-25カラム(アマシャムバイオサイエンス社、PD−10)
・DAPase(QIAGEN社)
・AcTEV(invitrogen社)
[実験例1:タンパク質溶液の調整]
実施例および比較例に供するために、以下の通り、上記タンパク質を含む精製タンパク質溶液を調製した。
(1)細胞ペレットを氷上で15分間解凍し、湿重量1gあたり10mLの精製用緩衝液Iで細胞を再懸濁した。
(2)室温で細胞を60分間撹拌するか、または泡だたないように注意しながら、静かにボルテックスして溶解した。
(3)ライセートを10,000×g、室温で10分間遠心し、細胞破片をペレット化し、上清として清澄化したライセートを得た。
(4)1mLの50% Ni-Sepharose 6 Fast Flow懸濁液を、清澄化したライセート4mLに添加し、室温で30分間震盪しながら(ロータリー・シェーカーで200rpm)静かにミックスした。
(5)出口をキャップで閉じた空のカラムにライセート・Ni-Sepharose6Fast Flowミックスを注意深くロードした。
(6)キャップを取り、フロースルーを収集した。
(7)200mLの精製用緩衝液IIで洗浄した。
(8)2.5mLの精製用緩衝液IIIで目的のタンパク質を溶出した。
(9)得られたタンパク質溶液に、終濃度3mMとなるように2−メルカプトエタノールを添加した。
(10)得られたタンパク質溶液に、4倍量のアセトンを添加した。
(11)得られたタンパク質溶液を−80℃に30分間冷却した。
(12)冷却後の溶液を4℃、3100rpmで10分間遠心した。
(13)遠心により得られたタンパク質の沈殿を、表1に示すように精製用緩衝液IV〜VIに溶解した。
[実施例1:タンパク質A]
実施例1として、本発明にかかるフォールディング方法およびタグ除去方法により、SARSコロナウイルス由来タンパク質のヒスチジンタグ融合組換えタンパク質のリフォールディングとその後のタグ除去を行った。
(1)5mLのタンパク質Aの精製タンパク質溶液を、撹拌している90mLのフォールディング液IIIに滴下した。
(2)Sephadex G-25カラムを予め25mlのフォールディング液IIIで平衡化後、これに2.5mlのタンパク質希釈液を添加した。タンパク質希釈液のカラムへの負荷完了後、3.5mlのフォールディング液IIIでフォールディング完了タンパク質液を得た。これにより、タンパク質Aの精製タンパク質溶液の緩衝液を完全にフォールディング液IIIに置換した。用いるカラム数はタンパク質希釈液の量に応じて変更した。
(3)得られた溶出液に、予め活性化したDAPaseを添加し、37℃で1時間ヒスチジンタグの切断処理を行った。DAPaseの活性化は、使用説明書に従い、以下の通りとした。タンパク質1mgあたり10mU(1μl)のDAPaseをキットに添付のシスタミン溶液の当量と混合し、室温で5分間放置後、溶出液に添加し、37℃で保温することで切断処理を行った。
[実施例2:タンパク質B]
タンパク質Aの精製タンパク質溶液の代わりに、前述の精製段階(9)までのみを実施したタンパク質Bの精製タンパク質溶液を用いたこと、および10mLのタンパク質Bの精製タンパク質溶液を90mLのフォールディング液IIIに滴下したこと以外は、実施例1と同様に、ヒスチジンタグ融合組換えタンパク質のリフォールディングとその後のタグ除去を行った。
[実施例3:タンパク質C]
タンパク質Bの精製タンパク質溶液の代わりに、タンパク質Cの精製タンパク質溶液を用いたこと以外は、実施例2と同様に、ヒスチジンタグ融合組換えタンパク質のリフォールディングとその後のタグ除去を行った。
[実施例4:タンパク質D]
2mg/mLのタンパク質Aの精製タンパク質溶液の代わりに、3mg/mLのタンパク質Dの精製タンパク質溶液を用いたこと、および1mLのタンパク質Dの精製タンパク質溶液を9mLのフォールディング液IIIに滴下したこと以外は、実施例1と同様に、ヒスチジンタグ融合組換えタンパク質のリフォールディングとその後のタグ除去を行った。
[比較例1:タンパク質D、フォールディング補助剤なし]
フォールディング液IIIの代わりに、フォールディング補助剤を含まないフォールディング液Iを用いたこと以外は、実施例4と同様に、ヒスチジンタグ融合組換えタンパク質のリフォールディングとその後のタグ除去を行った。
[実施例5:タンパク質D’、AcTEVによるタグ除去]
2mg/mLのタンパク質Aの精製タンパク質溶液の代わりに、3mg/mLのタンパク質D’の精製タンパク質溶液を用いたこと、フォールディング液IIIの代わりにフォールディング液IVを用いたこと、1mLのタンパク質D’の精製タンパク質溶液を9mLのフォールディング液IVに滴下したこと、およびDAPaseの代わりにエンドペプチダーゼによりタグを切断したこと以外は、実施例1と同様に、ヒスチジンタグ融合組換えタンパク質のリフォールディングとその後のタグ除去を行った。
エンドペプチダーゼによるタグの切断は以下のように行った。得られた溶出液に終濃度1mMとなるようにDTTを添加し、精製タンパク質D’の80μgに対して1ml(10U)のAcTEVプロテアーゼを添加して、30℃で1晩緩やかに転倒混和させつつ切断処理を行った。
[比較例2:タンパク質D’、AcTEVによるタグ除去、フォールディング補助剤なし]
フォールディング剤IVの代わりに、フォールディング補助剤を含まないフォールディング液IIを用いたこと以外は、実施例5と同様に、ヒスチジンタグ融合組換えタンパク質のリフォールディングとその後のタグ除去を行った。
[実施例6:タンパク質B、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム]
2mg/mLのタンパク質Aの精製タンパク質溶液の代わりに、5mg/mLのタンパク質Bの精製タンパク質溶液を用いたこと、および1mLのタンパク質Bの精製タンパク質溶液を4mLのフォールディング液IIIに滴下したこと以外は、実施例1と同様に、ヒスチジンタグ融合組換えタンパク質のリフォールディングとその後のタグ除去を行った。
[実施例7:タンパク質B、塩化ヘキサデシルピリジニウム]
臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを含むフォールディング液IIIの代わりに、塩化ヘキサデシルピリジニウムを含むフォールディング液Vを用いたこと以外は、実施例6と同様に、ヒスチジンタグ融合組換えタンパク質のリフォールディングとその後のタグ除去を行った。
[評価]
実施例1〜7および比較例1,2において、フォールディング後(ゲルろ過後)およびタグ除去後のタンパク質の収量を測定した。表1に、各実施例および比較例における、タンパク質と、用いた緩衝液およびタンパク質濃度との関係を示す。表2に、各実施例および比較例における、フォールディングおよびタグ切断の処理条件を示す。表3に、用いたタンパク質の量、フォールディング後(ゲルろ過後)のタンパク質の収量(および収率)、ならびにタグ除去後のタンパク質の収量(および収率)を示す。また、表3に、ペプチダーゼによるタグの切断率をさらに示す。
なお、各段階で、タンパク質の収量は、以下のように測定した。まずフォールディング処理前のタンパク質溶液のタンパク質濃度をプロテインアッセイCBB溶液キット(ナカライ・テスク)または280nmの吸収に基づく分光光度法で測定し、これに総タンパク質溶液量を乗じることで総タンパク質量を算出した。各処理後のタンパク質収率はSDS−PAGE後のデンシトメトリーにより各バンドの染色度から測定したタンパク質負荷量に基づき(図1参照)、フォールディング処理後の総溶液量中のタンパク質収量を算出した。さらに、フォールディング処理前のタンパク質の総量を100%とすることで、フォールディング処理後のタンパク質収率を算出した。
また、タグの切断率は、以下のように測定した。切断処理後のタンパク質溶液の一部をSDS−PAGEにより分画し、タグ切断を受けたタンパク質と未切断のタンパク質を分離し、それぞれのタンパク質量をデンシトメトリーにて測定した(図1参照)。両者の総和を100%とし、タグ切断を受けたタンパク質と未切断のタンパク質の割合を算出した。
Figure 2007282581
Figure 2007282581
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実施例1〜7ならびに比較例1および2におけるフォールディング後の収率から、本発明にかかるフォールディング補助剤を用いることで、種々のタンパク質を好適にフォールディングさせることができることが分かる。また、実施例4および実施例5から、本発明にかかるフォールディング補助剤は、エキソペプチダーゼの活性を阻害しないことが分かる。すなわち、本発明にかかるフォールディング補助剤は、エキソペプチダーゼと好適に組み合わせることができ、これにより、変性条件下で精製したタグ融合タンパク質を好適にフォールディングさせ、フォールディングしたタグ融合タンパク質からタグを好適に除去することができる。
図1に、実施例2の各段階におけるタンパク質溶液のSDS−PAGEによる分析結果を示す。各レーンは、左から、フォールディング前、フォールディング後、およびDAPaseによるタグ除去後の各サンプルを示す。各レーンにおけるサンプル負荷量は、各段階の総タンパク質溶液量と比例するように調整した。より具体的には、例えばフォールディング処理前のタンパク質溶液、処理後のタンパク質溶液、タグ切断処理後のタンパク質溶液のそれぞれの総量が100ml、140ml、および140mlであった場合、SDS−PAGE解析時の各サンプルの量を10、14および14μlとすることで、各段階における総タンパク質量とSDS−PAGEでのタンパク質の染色バンド量が比例するように調整した。

Claims (18)

  1. タンパク質をフォールディングさせる方法であって、
    変性剤を含む第一の緩衝液中にタンパク質を含むタンパク質溶液を供するステップと、
    第四級アンモニウム塩系界面活性剤のフォールディング補助剤を含む第二の緩衝液を供するステップと、
    前記タンパク質を前記フォールディング補助剤と接触させるステップと、
    前記フォールディング補助剤と接触させるステップと同時またはその後に、前記変性剤の濃度を低下させるステップと
    を含む方法。
  2. 前記第四級アンモニウム塩系界面活性剤が、下式で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
    −N−R または
    Figure 2007282581
    (式中、
    およびXは、各々独立に、ハロゲンである。
    およびRは、各々独立に、炭素数10〜30の直鎖状または分岐状のアルキル基である。但し、RおよびRは、エーテル結合を有してもよい。
    およびRは、各々独立に、炭素数1〜5のアルキル基またはベンジル基である。
    nは、0〜5の整数である。)
  3. 前記タンパク質がタグ融合タンパク質である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記タグ融合タンパク質がヒスチジンタグ融合タンパク質である、請求項3に記載の方法。
  5. 前記タンパク質溶液が、精製されたタンパク質を含むタンパク質溶液である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 前記タンパク質がタグ融合タンパク質であり、
    前記タンパク質溶液を供するステップが、
    前記タグ融合タンパク質を産生する組換え生物から得られた試料を、当該タグと特異的に結合可能な分離用物質と接触させるステップと、
    前記分離用物質と結合した前記タグ融合タンパク質を、前記試料に含まれるその他の成分から分離するステップと、
    前記分離用物質と結合した前記タグ融合タンパク質を、前記分離用物質から分離し、前記精製されたタンパク質を含む前記タンパク質溶液を得るステップと
    を含む、請求項5に記載の方法。
  7. 前記変性剤の濃度を低下させるステップが、
    前記タンパク質溶液と前記第二の緩衝液とを混合し、前記第一の緩衝液を希釈するステップ、および/または
    前記タンパク質溶液の前記第一の緩衝液の少なくとも一部を、前記第二の緩衝液に交換するステップ
    を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の方法
  8. 前記第一の緩衝液の少なくとも一部を、前記第二の緩衝液に交換するステップが、ゲル濾過もしくは透析により、またはタンパク質溶液の濃縮および希釈により行われる、請求項7に記載の方法。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の方法により得られたタンパク質。
  10. タグ融合タンパク質からタグを除去する方法であって、
    変性剤を含む第一の緩衝液中にタグ融合タンパク質を含むタンパク質溶液を供するステップと、
    第四級アンモニウム塩系界面活性剤のフォールディング補助剤を含む第二の緩衝液を供するステップと、
    前記タグ融合タンパク質を前記フォールディング補助剤と接触させるステップと、
    前記フォールディング補助剤と接触させるステップと同時またはその後に、前記変性剤の濃度を低下させるステップと
    前記変性剤の濃度を低下させるステップの後に、前記フォールディング補助剤と接触させた前記タグ融合タンパク質を、エキソペプチダーゼと接触させるステップと
    を含む方法。
  11. 前記第四級アンモニウム塩系界面活性剤が、下式で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項10に記載の方法。
    −N−R または
    Figure 2007282581
    (式中、
    およびXは、各々独立に、ハロゲンである。
    およびRは、各々独立に、炭素数10〜30の直鎖状または分岐状のアルキル基である。但し、RおよびRは、エーテル結合を有してもよい。
    およびRは、各々独立に、炭素数1〜5のアルキル基またはベンジル基である。
    nは、0〜5の整数である。)
  12. 前記タグ融合タンパク質が、少なくともN末端にタグが融合されたタンパク質であり、前記エキソペプチダーゼがジペプチジルアミノペプチダーゼである、請求項10または11に記載の方法。
  13. 前記第二の緩衝液が、ペプチダーゼ反応に適した緩衝液である、請求項10〜12のいずれかに記載の方法。
  14. 請求項10〜13のいずれかに記載の方法により得られたタンパク質。
  15. 第四級アンモニウム塩系界面活性剤を含有するタンパク質フォールディング補助剤。
  16. 前記第四級アンモニウム塩系界面活性剤が、下式で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項15に記載のフォールディング補助剤。
    −N−R または
    Figure 2007282581
    (式中、
    およびXは、各々独立に、ハロゲンである。
    およびRは、各々独立に、炭素数10〜30の直鎖状または分岐状のアルキル基である。但し、RおよびRは、エーテル結合を有してもよい。
    およびRは、各々独立に、炭素数1〜5のアルキル基またはベンジル基である。
    nは、0〜5の整数である。)
  17. 請求項15または16に記載のフォールディング補助剤を有する、タンパク質をフォールディングさせるためのキット。
  18. 請求項15または16に記載のフォールディング補助剤とエキソペプチダーゼとを有する、タグ融合タンパク質からタグを除去するためのキット。
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