JP2007281860A - 適応信号処理装置およびその適応信号処理方法 - Google Patents
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Abstract
【構成】周波数領域LMSアルゴリズムを採用する適応信号処理装置は、周波数毎に、入力信号の周波数信号成分と適応フィルタの各周波数タップのフィルタ係数とステップサイズパラメータとを用いて、周波数領域の適応信号処理を行って次の演算サイクルにおける各周波数タップのフィルタ係数を算出する。かかるフィルタ係数の算出に際して、適応信号処理装置は、各周波数のステップサイズパラメータ値をフィルタ係数の演算サイクル毎に制御する。この場合、低域の周波数帯域に属する周波数に応じたステップサイズパラメータ値が0になる回数を多くし、高域の周波数帯域に属する周波数に応じたステップサイズパラメータ値が0になる回数を少なくする。
【選択図】図2
Description
図10はかかるオーディオサウンドキャンセレーション(ASC)システムの構成図である。オーディオソース1はオーディオ信号ASをDA変換器2a及びアンプ2bを介してスピーカ3に入力し、該スピーカより車室内音響空間に放射する。マイクロホン4は放射されたオーディオ音を検出し、アンプ5、AD変換器6及び遅延部7を介して誤差演算部8に入力する。又、オーディオソース1は前記オーディオ信号ASをオーディオ音キャンセルコントローラ10に入力する。オーディオ音キャンセルコントローラ10は、入力するオーディオ信号x(n)にフィルタリング処理を施して出力する適応フィルタ10aと、オーディオ信号x(n)を参照信号として入力され、誤差演算部8から出力する誤差信号e(n)のパワーが最小となるように適応信号処理を行って適応フィルタの10aの各タップのフィルタ係数を決定するLMS演算部(係数更新部)10bを備えている。
適応フィルタ10aは図11に示すように、NタップのFIR型デジタルフィルタで構成され、例えば、(1)入力信号を順次1サンプリング時間遅延する(N-1)個の遅延要素DL,DL・・・と、(2)各延要素出力に係数w0(n),w1(n),w2(n),・・・wN-1(n)を乗算するN個の乗算部ML,ML,・・・と、(3)各乗算部出力を順次加算する加算部AD,AD・・・で実現される。すなわち、現時刻n・Tsにおける参照信号をx(n)、その時の各乗算部の係数をw0(n),w1(n),w2(n),・・・,wN-1(n)、出力(オーディオ音キャンセル信号)をynとすれば、適応フィルタ10aは次式
y(n)=Σiwi(n)・x(n-i) (i=0〜N-1) ・・(1)
の演算を実行し、オーディオ音キャンセル信号y(n)を出力する。
図10のオーディオキャンセルシステムによれば、スピーカからマイクロホンまでの伝達特性を模擬するように、換言すれば、オーディオ音をキャンセルするように適応フィルタ10aの係数が決定される。この結果、オーディオ音が出力されている状態において話者が音声を発声すると、マイクロホン4により該オーディオ音と発話音声の合成音が検出され、誤差発生部8は該合成音信号d(n)よりオーディオ音キャンセル信号y(n)を除いた誤差信号e(n)を話者の発話音声信号として音声認識装置SRUに入力し、音声認識装置SRUは入力音声を認識する。
遅延部110〜11N-1は参照信号であるオーディオ信号x(n)を1サンプル時間づつ順次遅延してN個の離散オーディオデータを発生し、離散フーリエ変換部(DFT)12は該離散オーディオデータに離散フーリエ変換処理を施してN個の周波数サンプル(周数成分)X(0,n),X(1,n),….,X(N-2,n),X(N-1,n)を出力する。適応フィルタ13は、N個の乗算器MLPと(N-1)個の加算器ADDを備え、後述する適応処理により決定されたN個の周波数に応じたフィルタ係数W(0,n),W(1,n),….,W(N-2,n),W(N-1,n)を対応するNタップの周波数成分X(0,n),X(1,n),….,X(N-2,n),X(N-1,n)に乗算し、乗算結果を合成してオーディオ音キャンセル信号y(n)を出力する。すなわち、適応フィルタ13は次式、
係数更新部14は、N個の周波数成分毎に、各周波数成分X(n)と適応フィルタの各周波数タップのフィルタ係数W(n)と誤差信号e(n)とステップサイズパラメータμを用いて次式
以上から、本発明の目的は、周波数領域LMSアルゴリズムにおける演算処理量を減少することである。
本発明は、適応フィルタの各周波数タップのフィルタ係数を周波数領域適応信号処理により算出する適応信号処理装置であり、離散的な時系列の入力信号に離散フーリエ変換処理を施して複数の周波数信号成分を出力する離散フーリエ変換処理部、周波数毎にフィルタ係数が設定され、該フィルタ係数を対応する周波数の信号成分に乗算し、乗算結果を合成して出力する適応フィルタ、該適応フィルタ出力信号と希望信号との差分である誤差信号を発生する誤差信号発生部、周波数毎に、前記周波数信号成分と適応フィルタの各周波数タップのフィルタ係数と前記誤差信号とステップサイズパラメータを用いて周波数領域適応信号処理により次の演算サイクルにおける各周波数タップのフィルタ係数を算出して適応フィルタに設定する係数更新部を備え、前記係数更新部は、各周波数のステップサイズパラメータ値をフィルタ係数演算サイクル毎に制御し、該ステップサイズパラメータ値を用いて周波数毎に次の演算サイクルにおけるフィルタ係数を決定する。
前記係数更新部は、低域の周波数帯域に属する周波数に応じた前記ステップサイズパラメータ値が0になる回数を多くし、高域の周波数帯域に属する周波数に応じたステップサイズパラメータ値が0になる回数を少なくする。
前記係数更新部は、車室内のスピーカからマイクロホンまでの伝達特性を模擬するフィルタ係数を算出して適応フィルタに設定する場合、低域の周波数帯域に属する周波数に応じたステップサイズパラメータ値が0になる回数を多くし、中域の周波数帯域に属する周波数に応じたステップサイズパラメータ値が0になる回数を少なく、高域の周波数帯域に属する周波数に応じたステップサイズパラメータ値が0とならないようにする。
前記係数更新部は、車室内のスピーカからマイクロホンまでの伝達特性を模擬するフィルタ係数を算出して適応フィルタに設定する場合、前記高域以外の周波数におけるステップサイズパラメータ値が0になる回数を周波数が低くなるにつれて多くする。
本発明は、周波数毎に、入力信号の周波数信号成分と適応フィルタの各周波数タップのフィルタ係数とステップサイズパラメータとを用いて、周波数領域の適応信号処理を行って該適応フィルタの次の演算サイクルにおけるフィルタ係数を算出する適応信号処理装置における適応信号処理方法であり、各周波数のステップサイズパラメータ値をフィルタ係数の演算サイクル毎に制御するステップ、該ステップサイズパラメータ値を用いて周波数領域の適応信号処理を行って周波数毎に次の演算サイクルにおける各周波数タップのフィルタ係数を決定するステップを有している。
上記適応信号処理方法は、車室内のスピーカからマイクロホンまでの伝達特性を模擬するフィルタ係数を算出して適応フィルタに設定する場合、低域の周波数帯域に属する周波数に応じた前記ステップサイズパラメータ値が0になる回数を多くし、高域の周波数帯域に属する周波数に応じたステップサイズパラメータ値が0になる回数を少なくするステップを有している。
上記適応信号処理方法は、車室内のスピーカからマイクロホンまでの伝達特性を模擬するフィルタ係数を算出して適応フィルタに設定する場合、低域の周波数帯域に属する周波数に応じたステップサイズパラメータ値が0になる回数を多くし、中域の周波数帯域に属する周波数に応じたステップサイズパラメータ値が0になる回数を少なく、高域の周波数帯域に属する周波数に応じたステップサイズパラメータ値が0とならないようにするステップを有している。この場合、前記高域以外の周波数におけるステップサイズパラメータ値が0になる回数を周波数が低くなるにつれて多くする。
また、本発明によれば、車室内のスピーカからマイクロホンまでの伝達特性を模擬するフィルタ係数を算出して適応フィルタに設定する場合、(1)低域の周波数帯域に属する周波数に応じた前記ステップサイズパラメータ値が0になる回数を多くし、高域の周波数帯域に属する周波数に応じたステップサイズパラメータ値が0になる回数を少なくするようにしたから、あるいは(2) 低域の周波数帯域に属する周波数に応じたステップサイズパラメータ値が0になる回数を多くし、中域の周波数帯域に属する周波数に応じたステップサイズパラメータ値が0になる回数を少なく、高域の周波数帯域に属する周波数に応じたステップサイズパラメータ値が0とならないようにしたから、周波数領域LMSアルゴリズムにおける演算処理量を減少することができ、必要なデバイスコストを下げることができる。また、フィルタ係数の収束を高速に行なえ、しかも、エラー量も収束状態において小さくすることができる。
本発明は、周波数領域LMSアルゴリズムを用いる適応フィルタの係数更新において、車室内伝達特性を考慮してフィルタ係数更新制御を行うものである。周波数領域LMSアルゴリズムは前出の(5)式((6)式として以下に示す)フィルタ係数更新式
車室内のオーディオキャンセルシステムでは、図10で説明したようにスピーカからマイクロホンまでの伝達特性を模擬するようにフィルタ係数を算出して適応フィルタに設定する。かかる車室内の伝達特性は、高域ほど変化しやすいが、低域の伝達特性の変化は緩慢である。そこで、高周波帯域の各周波数タップの係数更新処理を行う頻度を高くし、低周波帯域の各周波数タップの係数更新処理を行う頻度を少なくする。すなわち、周波数領域LMSアルゴリズムを用いる適応フィルタの係数更新において、低周波帯域の各周波数に応じたステップサイズパラメータ値が0になる回数を多くし、高周波帯域の各周波数に応じたステップサイズパラメータ値が0になる回数を少なくする。このようにすることにより、周波数領域LMSアルゴリズムを用いる車室内のオーディオキャンセルシステムにおける算処理量を減少することができ、必要なデバイスコストを下げることができる。
図2は図1に従って周波数領域LMSアルゴリズムを用いて適応フィルタの各周波数タップの係数更新を行なう第1実施例の適応信号処理装置の構成図である。この適応信号処理装置は、一例として図示しないマイクロホンで検出した検出信号d(n)に含まれるオーディオ音をキャンセルするオーディオ音キャンセル信号y(n)を発生するように適応フィルタの各周波数タップの係数を周波数領域LMSアルゴリズムを用いて算出する例を示している。すなわち、適応信号処理装置は、スピーカからマイクロホンまでの伝達特性を模擬するフィルタ係数を算出して適応フィルタに設定する。
適応フィルタ13は、低周波帯域の適応フィルタ部13Lと高周波帯域の適応フィルタ部13H1,13H2に分かれており、全体としてN個の乗算器MLP〜MLPと(N-1)個の加算器ADDを備えている。低周波帯域の適応フィルタ部13Lは、低周波数F0〜FM-1のM個の周波数タップに応じた部分で、フィルタ係数W(0,n)〜W(M-1,n)が設定される。高周波帯域の第1の適応フィルタ部13H1は高周波数FM〜FN/2-1の(N/2−M)個の周波数タップに応じた部分で、フィルタ係数W(M,n)〜W(N/2-1,n)が設定される。高周波帯域の第2の適応フィルタ部13H2は高周波数FN/2〜FN-1のN/2個の周波数タップに応じた部分で、フィルタ係数W(N/2,n)〜W(N-1,n)が設定される。なお、W(N/2,n)〜W(N-1,n)はW(N/2,n)を軸とした鏡像の対応により設定される。すなわち、次式
適応フィルタ13は、周波数LMSアルゴリズムにより決定されたフィルタ係数W(0,n),W (1,n),….,W (N-2,n),W(N-1,n)を対応するN個の周波数信号成分X(0,n),X(1,n),….,X(N-2,n),X(N-1,n)に乗算し、乗算結果を合成してオーディオ音キャンセル信号y(n)を出力する。
図1の場合、係数更新部14は演算タイミング0,1において、高周波帯域の周波数FM〜FN-1のステップサイズパラメータ値をμ0にし、低周波帯域の周波数F0〜FM-1のステップサイズパラメータ値を0にして(8)式の係数更新演算を行なって、演算結果を適応フィルタ13に設定する。すなわち、係数更新部14は演算タイミング0,1において、(8)式により高周波帯域の周波数FM〜FN/2-1の周波数タップのフィルタ係数W(M,n+1)〜W (N/2-1,n+1)のみ演算して高周波帯域の適応フィルタ部13H1に設定し、低周波帯域の周波数F0〜FM-1の周波数タップのフィルタ係数W(0,n+1)〜W (M-1,n+1)は演算せず、W(0,n+1)=W(0,n)〜W (M-1,n+1)=W(M-1,n)とする。なお、フィルタ係数W(N/2,n+1)〜W(N-1,n+1)は(9)式の関係を利用して高周波帯域の適応フィルタ部13H2に設定する。
また、係数更新部14は演算タイミング2において、低周波帯域の周波数F0〜FM-1のステップサイズパラメータ値をμ0にし、高周波帯域の周波数FM〜FN/2-1のステップサイズパラメータ値を0にして(8)式の係数更新演算を行なって、演算結果を適応フィルタ13に設定する。すなわち、係数更新部14は演算タイミング2において、(8)式により低周波帯域の周波数F0〜FM-1の周波数タップのフィルタ係数W(0,n+1)〜W (M-1,n+1)のみ演算して低周波帯域の適応フィルタ部13Lに設定し、高周波帯域の周波数FM〜FN/2-1の周波数タップのフィルタ係数W(M,n+1)〜W(N/2-1,n+1)は演算せず、W(M,n+1)=W(M,n)〜W (N/2-1,n+1)=W(N/2-1,n)とする。また、W(N/2,n+1)=W(N/2,n)〜W(N-1,n+1)=W(N-1,n)である。
この結果、最終的に適応フィルタ13にスピーカからマイクロホンまでの伝達特性を模擬するフィルタ係数が設定され、該適応フィルタ13からマイクロホン検出信号d(n)に含まれるオーディオ音をキャンセルするオーディオ音キャンセル信号y(n)が出力する。このため、音声認識時に話者が発話すると、マイクロホン検出信号(話者の発話音声とオーディオ音との合成音検出信号)d(n)からオーディオ音キャンセル信号y (n)を除いた発話音声のみが誤差信号発生部15から図示しない音声認識装置に入力する。
iの初期値を0とし、i=2であるかチェックする(ステップ101)。i=2でないから以後、係数更新部14は高周波帯域の各周波数タップのフィルタ係数の更新処理を行う。すなわち、k=Mとし(ステップ102)、k≦N/2であるかチェックし(ステップ103)、k≦N/2であれば、低周波帯域のステップサイズパラメータμを0とし、高周波帯域のステップサイズパラメータμをμ1として、高周波帯域における周波数Fkの周波数タップのフィルタ係数W(k,n+1)を(8)式により演算する。又、係数更新部14は
ついで、k+1=kによりkを更新し(ステップ105)、ステップ103以降の処理を繰り返す。(N/2-M)回ステップ103以降の処理を繰り返して高周波帯域の全周波数FM〜FN-1に応じた周波数タップのフィルタ係数W(M,n+1)〜W(N-1,n+1)の演算が終了すれば、k=N/2となりステップ103において「NO」となる。これにより、i+1=iによりiを歩進し(ステップ106)、1演算サイクルの係数更新処理が終了し、始めに戻る。このとき、i=1になっている。
次の係数演算サイクルにおいて、i=1になっているから、ステップ101において「NO」となり、再びステップ102以降の高周波帯域における(N-M)個の周波数タップのフィルタ係数更新処理が行われ、i=2となって1演算サイクルの係数更新処理が終了し、始めに戻る。
ついで、k+1=kによりkを更新し(ステップ114)、ステップ112以降の処理を繰り返す。M回ステップ112以降の処理を繰り返して低周波帯域の全周波数F0〜FM-1に応じた周波数タップのフィルタ係数W(0,n+1)〜W(M-1,n+1)の演算が終了すれば、k=Mとなりステップ112において「NO」となる。これによりi=0によりiを初期化し(ステップ115)、1演算サイクルの係数更新処理が終了し、始めに戻る。
以後、上記処理が繰り返される。この結果、低周波帯域の周波数のステップサイズパラメータ値を3演算サイクルのうち1回だけμ0にし、残りの2回を0にし、また、高周波帯域の周波数のステップサイズパラメータ値を3演算サイクルのうち2回μ1にし、残りの1回を0にして(8)式により係数更新を行なう。
第1実施例では一般に、車室内のスピーカからマイクロホンまでの伝達特性を模擬するフィルタ係数を算出して適応フィルタに設定する場合、低周波帯域に属する周波数に応じたステップサイズパラメータ値が0になる回数を多くし、高周波帯域に属する周波数に応じたステップサイズパラメータ値が0になる回数を少なくする。
図4は第2実施例の係数更新処理方法の説明図である。第1実施例では周波帯域を低周波帯域と、高周波帯域の2つの帯域に分割したが、第2実施例では周波帯域を低周波帯域、中周波帯域、高周波帯域の3つの帯域に分割し、低周波帯域の周波数のステップサイズパラメータ値をA回の演算サイクルのうち1回だけμ0にし、残りの(A-1)回を0にし、また、中周波帯域の周波数のステップサイズパラメータ値をA回の演算サイクルのうち(A-1)回μ1にし、残りの1回を0にし、高周波帯域の周波数のステップサイズパラメータ値をA演算サイクルすべてにおいてμ2にし、0にしない。図5はA=3とした例であり、低周波、中周波帯域でステップサイズパラメータ値が同時にμ0、μ1にならないようにしている。
また、係数更新部14は演算タイミング2において、低周波帯域の周波数F0〜FM-1のステップサイズパラメータ値をμ0にし、高周波帯域の周波数FH〜FN-1のステップサイズパラメータ値をμ2にし、中周波帯域の周波数FM〜FH/2-1のステップサイズパラメータ値を0にして(8)式の係数更新演算を行なって、演算結果を適応フィルタ13に設定する。すなわち、係数更新部14は演算タイミング2において、(8)式により、低周波帯域及び高周波帯域の周波数F0〜FM-1、FH〜FN/2-1に応じた周波数タップのフィルタ係数W(0,n+1)〜W (M-1,n+1)、W(H,n+1)〜W (N/2-1,n+1)を演算して低周波帯域、高周波帯域の適応フィルタ部13L,13Hに設定する。又、(10)式の関係を利用してW(N/2,n+1)〜W(N-1,n+1)を適応フィルタ部13Hに設定する。
この結果、最終的に適応フィルタ13にスピーカからマイクロホンまでの伝達特性を模擬するフィルタ係数が設定され、該適応フィルタ13からマイクロホン検出信号d(n)に含まれるオーディオ音をキャンセルするオーディオ音キャンセル信号y(n)が出力する。このため、音声認識時に話者が発話すると、マイクロホン検出信号(話者の発話音声とオーディオ音との合成音検出信号)d(n)からオーディオ音キャンセル信号y(n)を除いた発話音声のみが誤差信号発生部15から図示しない音声認識装置に入力する。
iの初期値を0とし、i=2であるかチェックする(ステップ101)。i=2でないから以後、係数更新部14は中周波帯域のフィルタ係数の更新処理を行う。すなわち、k=Mとし(ステップ102)、k<Hであるかチェックし(ステップ103)、k<Hでなければ、中周波帯域のステップサイズパラメータμをμ1として、中周波帯域の周波数Fkに応じた周波数タップのフィルタ係数W(k,n+1)を(8)式により演算する(ステップ104)。ついで、k+1=kによりkを更新し(ステップ105)、ステップ103以降の処理を繰り返す。(H-M)回ステップ103以降の処理を繰り返して中周波帯域の全周波数FM〜FH-1に応じた周波数タップのフィルタ係数W(M,n+1)〜W(H-1,n+1)の演算が終了すれば、k=Hとなりステップ103において「NO」となる。これにより、係数更新部14は高周波帯域のステップサイズパラメータμをμ2として高周波帯域の周波数FH〜FN/2-1に応じた周波数タップのフィルタ係数W(H,n+1)〜W(N/2-1,n+1)を(8)式により演算する。また、(10)式の関係を利用してW(N/2,n+1)〜W(N-1,n+1)を演算する(ステップ201)。ついで、i+1=iによりiを歩進し(ステップ106)、1演算サイクルの係数更新処理が終了し、始めに戻る。このとき、i=1になっている。
次の係数演算サイクルにおいて、i=1になっているから、ステップ101において「NO」となり、再びステップ102以降の中周波帯域の各周波数タップのフィルタ係数の更新処理及び高周波帯域の各周波数タップのフィルタ係数の更新処理が行われ、i=2となって1演算サイクルの係数更新処理が終了し、始めに戻る。
以後、上記処理が繰り返される。この結果、低周波帯域の周波数のステップサイズパラメータ値を3演算サイクルのうち1回だけμ0にし、残りの2回を0にし、また、中周波帯域の周波数のステップサイズパラメータ値を3演算サイクルのうち2回μ1にし、残りの1回を0にして(8)式により係数更新を行なう。
第2実施例では一般に、車室内のスピーカからマイクロホンまでの伝達特性を模擬するフィルタ係数を算出して適応フィルタに設定する場合、低周波帯域に属する周波数に応じたステップサイズパラメータ値が0になる回数を多くし、中域の周波帯域に属する周波数に応じたステップサイズパラメータ値が0になる回数を少なく、高周波帯域に属する周波数に応じたステップサイズパラメータ値が0とならないようにする。
第2実施例では周波帯域を低周波帯域、中周波帯域、高周波帯域の3つの帯域に分割したが、図8に示すように周波帯域を高周波帯域とそれ以外の帯域(非高周波帯域)に分け、非高周波帯域の周波数のステップサイズパラメータ値が0になる回数を周波数が低くなるにつれて多くする。この場合、A回の演算サイクルにおける帯域aと帯域zにおける更新回数の和がAとなるように、かつ、各帯域a,zのステップサイズパラメータが同時にアクティブにならないようにμ=0となる演算サイクルを決定する。同様に、帯域bと帯域y,帯域cと帯域x、…でそれぞれ更新回数の和がAとなるように、かつ、各帯域のステップサイズパラメータμが同時にアクティブにならないようにμ=0となる演算サイクルを決定する。このようにすれば、高周波帯域の周波数タップ数を(M−2H),非高周波帯域の周波数タップを2Hとすれば、1回の演算サイクルにおいて(M−H)個のフィルタ係数を演算するだけでよく演算量を減少することができる。
以上では、車室内における伝達関数の変動が高域において大きく、逆に低域において変動が微小であることを利用しているが、音声認識に特化して音韻情報を区別する子音部分を重視し、子音部分が1000Hz以上に存在するとすれば、FHを1000Hzとして図8に示す方法で各帯域におけるμ=0になる演算サイクルを決定する。
図9は本発明の収束特性(8tap,白色雑音をリファレンス)を従来方法の収束特性と対比させて示す図であり、縦軸は誤差信号、横軸はフィルタ係数の繰り返し演算回数である。又、(A)は本発明の収束特性、(B)は毎回全周波数タップのフィルタ係数を演算する場合の収束特性、(C)は時間領域のLMSアルゴリズムによる収束特性である。本発明によれば、(B)の従来法と比べて若干の収束遅れを示すが、(C)の時間領域LMSの場合と比べ依然高速であり,また,リダクション量も収束状態では従来法と同等値を示している。
以上、発明によれば、1秒当りの積和演算回数を減少できると共に、従来例と同等の性能を達成することができ、処理量およびそれに必要なデバイスコストを下げることができる。
12 離散フーリエ変換部
13 適応フィルタ
13L 低周波帯域の適応フィルタ部
13H 高周波帯域の適応フィルタ部
14 周波数領域のLMS演算部(係数更新部)
15 誤差発生部
Claims (8)
- 入力信号の各周波数信号成分を用いて適応フィルタの各周波数タップのフィルタ係数を周波数領域の適応信号処理により演算する適応信号処理装置において、
離散的な時系列の入力信号に離散フーリエ変換処理を施して複数の周波数信号成分を出力する離散フーリエ変換処理部、
周波数毎にフィルタ係数が設定され、該フィルタ係数を対応する周波数の信号成分に乗算し、乗算結果を合成して出力する適応フィルタ、
該適応フィルタ出力信号と希望信号との差分である誤差信号を発生する誤差信号発生部、
周波数毎に、前記周波数信号成分と適応フィルタの各周波数タップのフィルタ係数と前記誤差信号とステップサイズパラメータを用いて周波数領域の適応信号処理を行って次の演算サイクルにおける各周波数タップのフィルタ係数を算出して適応フィルタに設定する係数更新部を備え、
前記係数更新部は、各周波数のステップサイズパラメータ値をフィルタ係数演算サイクル毎に制御し、該ステップサイズパラメータ値を用いて周波数毎に次の演算サイクルにおけるフィルタ係数を決定する、
ことを特徴とする適応信号処理装置。 - 前記係数更新部は、車室内のスピーカからマイクロホンまでの伝達特性を模擬するフィルタ係数を算出して適応フィルタに設定する場合、低域の周波数帯域に属する周波数に応じた前記ステップサイズパラメータ値が0になる回数を多くし、高域の周波数帯域に属する周波数に応じたステップサイズパラメータ値が0になる回数を少なくする、
ことを特徴とする請求項1記載の適応信号処理装置。 - 前記係数更新部は、車室内のスピーカからマイクロホンまでの伝達特性を模擬するフィルタ係数を算出して適応フィルタに設定する場合、低域の周波数帯域に属する周波数に応じたステップサイズパラメータ値が0になる回数を多くし、中域の周波数帯域に属する周波数に応じたステップサイズパラメータ値が0になる回数を少なく、高域の周波数帯域に属する周波数に応じたステップサイズパラメータ値が0とならないようにする、
ことを特徴とする請求項1記載の適応信号処理装置。 - 前記係数更新部は、前記高域以外の周波数におけるステップサイズパラメータ値が0になる回数を周波数が低くなるにつれて多くする、
ことを特徴とする請求項3記載の適応信号処理装置。 - 周波数毎に、入力信号の周波数信号成分と適応フィルタの各周波数タップのフィルタ係数とステップサイズパラメータとを用いて、周波数領域の適応信号処理を行って該適応フィルタの次の演算サイクルにおけるフィルタ係数を算出する適応信号処理装置における適応信号処理方法において
各周波数のステップサイズパラメータ値をフィルタ係数の演算サイクル毎に制御し、
該ステップサイズパラメータ値を用いて周波数領域の適応信号処理を行って周波数毎に次の演算サイクルにおける各周波数タップのフィルタ係数を算出する、
ことを特徴とする適応信号処理方法。 - 車室内のスピーカからマイクロホンまでの伝達特性を模擬するフィルタ係数を算出して適応フィルタに設定する場合、低域の周波数帯域に属する周波数に応じた前記ステップサイズパラメータ値が0になる回数を多くし、高域の周波数帯域に属する周波数に応じたステップサイズパラメータ値が0になる回数を少なくする、
ことを特徴とする請求項5記載の適応信号処理方法。 - 車室内のスピーカからマイクロホンまでの伝達特性を模擬するフィルタ係数を算出して適応フィルタに設定する場合、低域の周波数帯域に属する周波数に応じたステップサイズパラメータ値が0になる回数を多くし、中域の周波数帯域に属する周波数に応じたステップサイズパラメータ値が0になる回数を少なく、高域の周波数帯域に属する周波数に応じたステップサイズパラメータ値が0とならないようにする、
ことを特徴とする請求項5記載の適応信号処理方法。 - 前記高域以外の周波数におけるステップサイズパラメータ値が0になる回数を周波数が低くなるにつれて多くする、
ことを特徴とする請求項7記載の適応信号処理方法。
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