以下、本発明による電動ブレーキ装置の実施例を図面を用いて説明をする。
《自動車に搭載された電動ブレーキ装置》
図2は、本発明による電動ブレーキ装置をたとえば自動車に適用させた場合の一実施例を示す概略構成図である。
図2において、前輪の車軸10に近接して右側の車輪11R側には第1電動ブレーキ装置EMB(1)が左側の車輪11L側には第2電動ブレーキ装置EMB(2)が配置されている。同様に、後輪の車軸12に近接して右側の車輪13R側には第3電動ブレーキ装置EMB(3)が左側の車輪13L側には第4ブレーキ装置EMB(4)が配置されている。
第1ないし第4電動ブレーキ装置EMB(1)ないし(4)はいずれも同様の構成からなっており、それら一部において、車軸10、12とともに回転するディスクロータDL(1)、DL(2)、DL(3)、DL(4)を挟持するように配置されている。
図2では図示されていないが、各電動ブレーキ装置EMBは、前記ディスクロータDLの各面側に対向する一対のブレーキパッドを備え、電動モータを原動力とする駆動機構部DMPの駆動によって前記ブレーキパッドをそれぞれをディスクロータDLに押圧することによって制動力を得ている。
また、該電動ブレーキ装置EMBは、前記電動モータに電源を供給し該電動モータに印加する電圧等を制御するための駆動回路部DCPが一体化されて構成されている。すなわち、該駆動回路部DCPは前記駆動機構部DMPのたとえば前記ブレーキパッド側とは反対側の面に取り付けられている。
前輪側の第1電動ブレーキ装置EMB(1)および第2電動ブレーキ装置EMB(2)には第1バッテリVT(1)から第1電源ラインPWL(1)を介して電源が供給されるようになっており、後輪側の第3電動ブレーキ装置EMB(3)および第4電動ブレーキ装置EMB(4)には第2バッテリVT(2)から第2電源ラインPWL(2)を介して電源が供給されるようになっている。
また、右前輪の第1電動ブレーキ装置EMB(1)および左後輪の第4電動ブレーキ装置(4)には第1のバッテリから電源を供給し、一方、左前輪の第2電動ブレーキ装置EMB(2)および右後輪の第3電動ブレーキ装置EMB(3)には前述の第1のバッテリとは異なる第2のバッテリから電源を供給するようにしてもよい。なお、各電動ブレーキ装置EMBに電源を供給するバッテリVTは、上述のように2個に限定されることはなく、1個であっても、また2個以上の複数であってもよいことはいうまでもない。
一方、ブレーキペダル15を備え、このブレーキペダル15の踏力量等は検出器16により検出され、該踏力量等に対応する検出器16からの出力はデータ信号線DL(0)を介して上位制御回路ECU(1)に入力されるようになっている。
上位制御回路ECU(1)は、たとえば車室に配置され、前記第1ないし第4の各電動ブレーキ装置EMBから、それぞれデータ信号線DL(1)ないしDL(4)を介して、たとえば電動モータの現時点の回転角の情報等を受信して該電動モータの状況を監視しながら、ブレーキペダル15の踏力量に応じた適切な制御信号を、前記データ信号線DL(1)ないしDL(4)を介して、該第1ないし第4の各電動ブレーキ装置EMBに送信し、これら第1ないし第4の各ブレーキ装置EMBを適切に作動させるようになっているとともに、他にたとえばフェールセーフ等の制御も行うようになっている。
なお、この場合の各電動ブレーキ装置EMBの制御として、それぞれ単独に、あるいは、前輪側の第1電動ブレーキ装置EMB(1)と第2ブレーキ装置EMB(2)を一グループとし後輪側の第3電動ブレーキ装置EMB(3)と第4ブレーキ装置EMB(4)を他のグループとして、あるいは、前輪側の第1電動ブレーキ装置EMB(1)と後輪側の第4電動ブレーキ装置EMB(4)を一グループとし前輪側の第2電動ブレーキ装置EMB(2)と後輪側の第3電動ブレーキ装置EMB(3)を他のグループとして、それぞれグループ毎に行うようにしてもよい。
このような構成からなる自動車の電動ブレーキ装置EMBは、たとえばサスペンション等を介することなく車体に直接取り付けられることから振動による影響を受けやすく、また、雨天時の走行によって水分が内部に侵入し易いという環境下で使用されることになる。
また、前記電動ブレーキ装置EMBは、上述したように駆動機構部DMPに制御回路を含む駆動回路部DCPを一体化して構成され、該制御回路には多数の半導体装置が備えられている。半導体装置は熱によって特性が変化する性質を有することから、車輪と共に回転するディスクロータDLに対する前記駆動機構部DMP内のブレーキパッドの押圧によって発生する高熱の摩擦熱が該駆動回路部DCPへ伝導されるのを極力抑制させる必要が生じ、また、半導体装置がそれ自体で発生する熱においても効率よく放散させる必要が生じる。
《電動ブレーキ装置EMBの概念的構成》
図3は、本発明による前記電動ブレーキ装置EMBの一実施例を示す概念図である。
該電動ブレーキ装置EMBは、キャリパを含む筐体100の内部に互いに対向して配置される一対のブレーキパッド40A、40Bを具備し、車軸に取り付けられ該車軸の回転に伴って回転するディスクロータDLの周辺の一部が前記各ブレーキパッド40A、40Bの間に位置づけられるようにして、車体に支持されるようになっている。
そして、この電動ブレーキ装置EMBは、駆動機構部DMPと駆動回路部DCPとが互いに一体化されて構成されている。これら駆動機構部DMPと駆動回路部DCPは領域的に別個となっており、これにより、該駆動機構部DMPと駆動回路部DCPを構造的に分離させることも可能となっている。
まず、電動ブレーキ装置EMBの駆動機構部DMPは、前記筐体100内に、たとえば三相モータからなる電動モータ42と、電動モータ42の回転を減速する減速機44と、この減速機44によって減速された電動モータ42の回転運動を直線運動に変換し、ピストン48を進退動させる回転直動機構46が備えられている。
前記ピストン48にはブレーキパッド40Bが取り付けられ、このブレーキパッド40Bは前記ピストン48の推力により前記ディスクロータDLを一方の面側から押圧し、この際に、該押圧力を反力としてキャリパが図中矢印α方向に移動し、ブレーキパッド40Aが該ディスクロータDLを他方の面側から押圧するようになっている。
また、電動モータ42の部分にはパーキングブレーキ機構(PKB)50が備えられ、このパーキングブレーキ機構50によって、前記ピストン48に推力を供給している状態のまま電動モータ42の回転を止めることができるようになっている。
さらに、電動モータ42の近傍には、該電動モータ42の回転角を検出する回転角検出センサ52、前記電動モータの駆動によって生じる推力を検出する推力センサ54、前記電動モータ42の温度を検出するモータ温度センサ56が配置されている。これら回転角検出センサ52、推力センサ54、およびモータ温度センサ56の出力は駆動回路部DCP内に配置される下位制御回路ECU(2)に出力されるようになっている。
また、電動ブレーキ装置EMBの駆動回路部DCPには、該電動ブレーキ装置EMBの外部に配置されるバッテリVTから電源が供給され、また、エンジンコントロールユニット62、ATコントロールユニット64、前記ブレーキペダル15の踏力を検出する検出器16等が接続されたLAN(Local Area Network)を直接介し、あるいは該LANから前記上位制御回路ECU(1)を介して制御信号が供給されるようになっている。
前記駆動回路部DCPには前記下位制御装置ECU(2)およびインバータ回路IVCが備えられている。インバータ回路IVCは前記電動モータ42に印加する電圧等を制御するための回路である。前記電源および制御信号は前記下位制御回路ECU(2)に入力され、この下位制御回路ECU(2)は、前記回転角検出センサ52、推力センサ54、およびモータ温度センサ56等からの出力情報に基づいて、前記インバータ回路IVCを制御するようになっている。そして、該インバータ回路IVCからの出力は前記電動モータ42に入力されるようになっている。これにより、該電動モータ42は前記ピストン48に所定の推力を発生させるようにして駆動されるようになっている。なお、図中符号61は車両側の構造物を示している。
《電動ブレーキ装置EMBの具体的構成の断面》
図4は、本発明による前記電動ブレーキ装置EMBの具体的な内部構成の一実施例を示す断面図である。
図4において、電動ブレーキ装置EMBの駆動機構部DMPと駆動回路部DCPの境界は図中線分X−Xの部分に相当し、該線分X−Xの図中左側は駆動機構部DMPを図中右側は駆動回路部DCPを示している。
図3に示すパーキングブレーキ機構50は図4において太線枠50内の構成に相当し、図3に示す減速機44は図4において太線枠44内の構成に相当し、図3に示す回転直動機構46は図4において太線枠46内の構成に相当する。
また、図4において、図3において付した符号と同一の符号の部分は、図3で示した部材と同一の部材を示している。
電動モータ42は、たとえば、キャリアを含む筐体100に固定されたステータとこのステータ内に配置されるロータとを備えるブラシレスの三相モータから構成されている。この電動モータ42は、前記上位制御装置ECU(1)からの指令で前記ロータを所望トルクで所望角度だけ回転させるように作動し、その回転角は前記回転角度センサ52によって検出されるようになっている。
また、前記減速機44は、上述したように前記電動モータ42の回転を減速させ、これにより該電動モータ42のトルクを増大させるようにしている。これにより、前記電動モータ42として小型のものを用いることができる。
駆動機構部DMPの各構成において、図3で示されていないものとして、駆動回路部DCP側に配置されたスラストプレート66を備えている。このスラストプレート66は、前記ピストン48の推力を反力として受ける板材から構成され、その中央部には前記推力センサ54が配置されている。
この場合、前記スラストプレート66は、駆動回路部DCPが取り付けられる駆動機構部DMPの筐体100の端面(図中線分X−Xの部分)に対して、前記パッド部側へ若干奥まった箇所に配置されている。これに対し、前記推力センサ54は駆動機構部DMPの筐体100の前記端面を越えて駆動回路部DCP側に若干突出しているが、この推力センサ54との干渉を回避するようにして、駆動回路部DCPの構成部材(たとえば後に説明で明らかとなるインターフェースモジュール200)には凹陥部が形成されている。このことから、筐体100を除いた駆動機構部DMPの構成部材と駆動回路部DCPの構成部材の間には、隙間(空間)が形成された構成となっている。
このような駆動機構部DMPの各構成部材の大部分は、筐体100とともに金属で構成され、このため、熱の伝導効率が良好なものとして構成されている。このため、熱源であるパッド部(ブレーキパッド40A、40Bおよびその周辺部)からの熱はその周辺の駆動機構部DMPに伝達され、この駆動機構部DMPの外方の筐体100を介して放熱され易くなっている。
この場合、前記駆動回路部DCPは、駆動機構部DMPを間にしてたとえば前記パッド部と反対側の面に形成されているため、前記熱の該駆動回路部DCPへ伝達させる分を極力少なくさせる構成となっている。そして、駆動機構部DMPと駆動回路部DCPの間には上述した隙間(空間)が形成されており、この隙間(空間)によって、駆動機構部DMPから駆動回路部DCPへの熱の伝導をさらに少なくさせる構成となっている。
《駆動回路部DCPの具体的回路》
図5は、本発明による電動ブレーキ装置EMBの前記駆動回路部DCPの回路の詳細な一実施例を前記駆動機構部DMP内に配置される電動モータ42、推力センサ54、回転角検出センサ52等との関係で示した構成図である。
駆動回路部DCPの回路は図中太線枠Aで示し、そのうち一点鎖線枠Bの内部の回路は図2に示したインバータ回路IVCに相当し、その余りの回路は図3に示した下位制御回路ECU(2)に相当する。そして、駆動機構部DMPの回路は図中点線枠Cで示している。
ここで、図5に示す回路は、図示していないが、少なくとも電動ブレーキ装置EMBの筐体100を構成する金属で被われているようになっており、これにより外的傷害から保護されるとともに、前記各回路等から発生する熱の放熱を図り、また電磁波等に対するシールド効果を備えるようになっている。
まず、太線枠Aで囲まれた駆動回路部DCPの回路において、車両内の電源ラインPWLを介して供給される電源が電源回路110に入力されるようになっている。そして、この電源回路110によって得られる安定した電源(Vcc、Vdd)は中央制御回路(CPU)112に供給されるようになっている。
また、前記電源回路110からの電源(Vcc、Vdd)はVCC高電圧検知回路114によって検知されており、このVCC高電圧検知回路114によって高電圧が検知された場合にはフェールセーフ回路116を動作させるようにしている。
該フェールセーフ回路116は後述の三相モータインバータ回路118に供給する電源をスイッチングするリレー制御回路120を動作させるようになっており、前記VCC高電圧検知回路114によって高電圧が検知された場合には該電源の供給をOFF状態にするようになっている。
前記リレー制御回路120を介して駆動回路部DCP内に供給される電源はフィルタ回路122を介することによってノイズが除去され、前記三相モータインバータ回路118に供給されるようになっている。
前記中央制御回路112には前記上位制御回路ECU(1)(図2参照)からの制御信号がCAN通信インターフェース回路124を介して入力されるようになっているとともに、前記駆動機構部DMP側に配置された推力センサ54、回転角検出センサ52、およびモータ温度センサ56からの出力が、それぞれ、推力センサインターフェース回路126、回転角検出センサインターフェース回路128、およびモータ温度センサインターフェース回路130を介して、入力されるようになっている。現時点における前記電動モータ42の状況等に関する情報を入力し、前記上位制御回路ECU(1)からの制御信号に基づき、フィードバック制御をすることにより、該電動モータ42に適切な推力が得られるようにするためである。
すなわち、前記中央制御回路112は、前記上位制御回路ECU(1)からの制御信号、および前記各センサの検出値に基づいて、三相モータプリドライバ回路132に適切な信号を出力させ、この三相モータプリドライバ回路132は前記三相モータインバータ回路118を制御するようになっている。この場合、三相モータインバータ回路118には相電流モニタ回路134および相電圧モニタ回路136が具備されており、これら相電流モニタ回路134および相電圧モニタ回路136によって、それぞれ相電流および相電圧を監視し、それらの出力は前記中央制御回路112を介して前記三相モータプリドライバ回路132を適切に動作させるようにしている。前記三相モータインバータ回路118は駆動機構部DMP内の前記電動モータ42に接続されて前記中央制御回路112による制御に応じた駆動がなされるようになっている。
なお、このように前記三相モータインバータ回路118は、電動モータ42を駆動させる電流および電圧を制御するように構成されることから、それを構成する回路において出力が比較的大きな半導体装置が用いられることになる。このため、その動作において高熱が発生することになるが、後に詳述する構成によってその対策がなされている。
また、前記中央制御回路112は、前記上位制御回路ECU(1)からの制御信号、および前記各センサの検出値等に基づいて、PKB(パーキングブレーキ)ソレノイドドライバ回路138を介して、駆動機構部DMP内のPKBソレノイド50’を動作させてパーキングブレーキを行うことができるようになっている。なお、前記PKBソレノイドドライバ回路138には前記三相モータインバータ回路118に供給される電源が供給されるようになっている。
また、駆動回路部DCPには、前記中央制御回路112との間で信号の送受がなされる監視用制御回路140、たとえば故障情報等が格納されたEEPROMからなる記憶回路142が備えられており、前記中央制御回路112は、これら監視用制御回路140および記憶回路142からの情報に基づき前記電動モータ42の駆動において適切な推力を得るための制御を行っている。
そして、このように構成される駆動回路部DCPは、駆動機構部DMPとの間での結線は多くなっているのに対し、該駆動機構部DMP以外の回路(バッテリVT、上位制御装置ECU(1))との間の結線は極めて少なく構成されている。このことは、駆動機構部DMPと駆動回路部DCPとの一体構造からなる電動ブレーキ装置EMBにおいて、該駆動機構部DMPと駆動回路部DCPとの間の複雑な結線を容易にできるとともに、該電動ブレーキ装置EMBとバッテリVTあるいは上位制御装置ECU(1)との間の結線自体を極めて容易にできることを意味する。
《駆動回路部DCPの分解構成図》
図1は、前記駆動回路部DCPの各構成部材を分解して示した斜視図である。
以下、各構成部材を他の構成部材との関係で概略的に示す。
まず、前記駆動機構部DMPの筐体に取り付けられるインターフェースモジュール200がある。このインターフェースモジュール200はたとえばPPS等の合成樹脂で構成されている。
インターフェースモジュール200の前記駆動機構部DMPの側の面の周辺には該周辺を除く中央部を囲むようにしてたとえばシール202が配置され、このシール202を介して該インターフェースモジュール200が前記駆動機構部DMPの筐体に取り付けられるようになっている。
このシールに202よって、前記駆動機構部DMPとインターフェースモジュール200との間からの水分の侵入を阻止するようになっている。
このインターフェースモジュール200は前記駆動機構部DMPの側に配置された端子(図示せず)を該駆動機構部DMPと反対側の面にまで電気的に引き出すための配線基板としての機能を有する。インターフェースモジュール200の該駆動機構部DMPと反対側の面には後述のインナーケース300に形成される配線との関係で位置的に定まる端子(図示せず)が植設されている。
そして、前記インターフェースモジュール200に取り付けられるインナーケース300がある。このインナーケース300はたとえばPPS等からなる合成樹脂で構成されている。インナーケース300の前記インターフェースモジュール200の側の面の周辺には該周辺を除く中央部を囲むようにしてシール302が配置され、このシール302を介して該インナーケース300が前記インターフェースモジュール200に取り付けられるようになっている。このシール300によって、前記インターフェースモジュール200とインナーケース300の間からの水分の侵入を阻止するようになっている。
このインナーケース300は電子部品搭載基板としての機能を有し、そのインターフェースモジュール200の側の面にはたとえばアルミプレートからなる金属板402および制御回路基板402が順次重ね合わされて搭載されている。前記制御回路基板402はその基板がたとえばセラミックで構成され、前記金属板402は該制御回路基板402のたとえば捻り等による損傷を回避するために備えられている。この制御回路基板402は図5に示す三相モータプリドライバ回路132に相当するものである。
この場合、インナーケース300と前記インターフェースモジュール200の互いに対向する面には、前記シール302を含む周辺部を除く部分に凹陥部(図示せず)が形成され、金属板402および制御回路基板404はこの凹陥部内に配置されてインナーケース300とインターフェースモジュール200との間に収納されるようになっている。
また、インナーケース300のインターフェースモジュール200と反対側の面には、その領域を二分割した一方の領域において、該領域を囲むようにして壁部304が形成され、この壁部304の内部にはたとえばコンデンサあるいはリアクタンス等からなる比較的大型の電子部品406が搭載されるようになっており、他方の領域において、該領域の一部に比較的面積の大きな透孔306が形成され、この透孔306の内部にパワーモジュール408が配置されるようになっている。このパワーモジュール408は図5に示す三相モータインバータ回路118、相電流モニタ回路134、および相電圧モニタ回路136に相当するもので、それらの回路をモールド化して構成したものである。
さらに、インナーケース300のインターフェースモジュール200と反対側の面には、アウターケース500が取り付けられるようになっている。このアウターケース500は、前記インナーケース300の前記壁部304の内部の電子部品搭載領域を開口部504によって開口させ、残りの他の領域、すなわち、前記インナーケース300の周側面、該インナーケース300の前記壁部304の周側面、および前記パワーモジュール408が配置された前記透孔306およびその周囲をそれぞれ被うようにして取り付けられるようになっている。
アウターケース500はたとえばアルミ合金等の金属で構成され、このアウターケース500によって、駆動回路部DCPの外周面の大部分を被い、外部からの衝撃に対して機械的に保護するようになっている。
なお、アウターケース500のインナーケース300側の面であって該インナーケース300の前記透孔306およびその周囲に対向する部分には、該透孔306を囲むようにしてシール502が配置されるようになっている。このシール502は、たとえば、アウターケース500の前記開口部504から、該インナーケース300の前記透孔306を通して該インナーケース300の前記インターフェースモジュール200側の面に水分が侵入してしまうのを阻止するために設けられている。
そして、アウターケース500には、電動ブレーキ装置の外部側から電源あるいは制御信号等を供給するためのハーネス600がハーネスストッパ602によって固定されるようになっており、該ハーネス600内の各配線(図示せず)はインナーケース300の壁部304に形成される透孔(図示せず)を通して該壁部304内の電子部品搭載領域に導かれるようになっている。
このように構成される前記インターフェースモジュール200、インナーケース300、アウターケース500は、それぞれの四隅に形成されたねじ孔に前記アウターケース500側から挿入されるボルト700a、700b(図示せず)、700c、700dによって一体化されるとともに、前記駆動機構部DMPに取り付けられるようになっている。
また、アウターケース500の前記開口部504は、該アウターケース500にねじ止めされるカバー800によって被われるようになっている。該カバー800はたとえばアウターケース500と同様にアルミ合金等の金属で形成されている。
以下、前記インターフェースモジュール200、インナーケース300、アウターケース504等の各構成部材について詳細に説明する。
〈インターフェースモジュール200〉
まず、インターフェースモジュール200は、図6に示すように、駆動機構部DMPのキャリパ等を含む筐体100に直接に取り付けられて配置されるようになっている。
図6(a)は、駆動機構部DMPの斜視図であり、該インターフェースモジュール200が取り付けられる面が示されている。また、図6(b)は、該インターフェースモジュール200の斜視図であり、前記駆動機構部DMPに取り付けられる面と反対側の面(後述のインナーケース300と対向する側の面)が示されている。さらに、図6(c)は、該インターフェースモジュール200を前記駆動機構部DMPに取り付けた場合の斜視図であり、その大部分において、該インターフェースモジュール200の後述のインナーケース300と対向する側の面が示されている。
ここで、図6(a)に示すように、駆動機構部DMPのインターフェースモジュール200が取り付けられる面側には、前記筐体100の一部を構成し駆動回路部DCP側に設けられる枠体100aの内部にたとえばスラストプレート102が目視できるようになっている。このスラストプレート102は前記ピストン48の直動運動による反力を受けるもので、その中央部には推力センサ104が配置されている。スラストプレート102および推力センサ104はいずれも円形をなす形状となっており、前記枠体100aはたとえばほぼ矩形状となっている。
前記枠体100aはスラストプレート102よりもインターフェースモジュール200の側へ若干突出するように形成され、これにより、前記スラストプレート102は前記枠体100aの端面(インターフェースモジュール200と当接する面)よりも奥まった個所に配置される。このように構成する理由は、スラストプレート102(および推力センサ104)とインターフェースモジュール200との間に積極的に隙間(空気層)を形成するためであり、前記パッド部を熱源とする熱が駆動機構部DMP内を伝導した後、前記隙間によって駆動回路部DCPの側へ伝導するのを抑制するようにしている。
駆動機構部DMPには、そのスラストプレート102の周囲の一部に駆動回路部DCPから電源あるいは信号を供給するための端子TMが植設されている。これら端子TMは、該スラストプレート102を目視できる側から観た場合に、図中上側に配置されたパーキングブレーキ用ソレノイドの端子TM10、図中右上側に配置された三相端子TM12と温度センサの端子TM14、図中下側に配置された回転角センサの端子TM16等から構成されている。また、前記推力センサ104にはその電極である端子TM18が備えられている。
これら各端子TMはそれぞれ平板状の導体から構成され、その先端は前記枠体100aの端面(インターフェースモジュール200と当接する面)を充分に超えて伸張したものとして形成されている。
このように各端子TMをインターフェースモジュール200の側へ充分に伸張させる理由は、該各端子TMの先端部を、該インターフェースモジュール200に形成された透孔THを通して挿入させ、該インターフェースモジュール200の後述のインナーケース300の側の面に至るまで突出させるためである。
図6(b)に示すインターフェースモジュール200には、前記パーキングブレーキ用ソレノイドの端子TM10が挿通される透孔TH10、三相端子TM12が挿通される透孔TH12と温度センサの端子TM14が挿通される透孔TH14を共通に形成した透孔、回転角センサの端子TM16が挿通される透孔TH16、推力センサ104の端子TM18が挿通される透孔TH18が形成されている。また、インターフェースモジュール200の駆動機構部DMPへの取り付け構造を示す図6(c)には、前記透孔TH10からはパーキングブレーキ用ソレノイドの端子TM10が突出している状態が、共通の透孔からなる透孔TH12および透孔TM14からはそれぞれ三相端子TM12と温度センサの端子TM14が突出している状態が、透孔TH16からは回転角センサの端子TM16が突出している状態が、前記透孔からは推力センサ104の端子TM18が突出している状態が示されている。
なお、インターフェースモジュール200の前記各透孔THは、それに挿通される端子TMの周りに充分な隙間を有する程度に大きく形成されている。これら各透孔TMは電動ブレーキ装置EMB内において空気の出入り孔として機能させ、後述するように電動ブレーキ装置EMB内において水分の侵入を防ぎつつ外気の変化に追随させた圧力調整を行うためである。
図7は、前記インターフェースモジュール200のさらなる詳細な構成を示す図で、図7(a)は、該インターフェースモジュール200の後述のインナーケース300と対向する側の面(外側面)から観た斜視図、図7(b)は、図7(a)に示した面と反対側の面(内側面)から見た斜視図で、前記駆動機構部DMPに取り付けられる側の面から観た図に相当する。
このインターフェースモジュール200は、配線とこの配線に接続された端子を有する配線回路基板からなり、その基板としては上述したようにたとえば合成樹脂から構成されている。合成樹脂は一般的に熱伝導率が小さく、前記駆動機構部DMPからの熱の伝導をこのインターフェースモジュール200によって抑制することができる。
図7(a)に示すように、インターフェースモジュール200の外側面において、周辺部の肉厚が該周辺部を除く中央部の肉厚よりも大きく形成され、これにより、インターフェースモジュール200の外輪郭から若干内側に至る部分において前記各肉厚の差によって形成される段差部202を有する。
インターフェースモジュール200の四隅のそれぞれの肉厚の周辺部に形成された大径孔204a、204b、204c、204dと、この大径孔204a、204b、204c、204dにそれぞれ隣接されて肉薄の部分に形成された小径孔206a、206b、206c、206dを備えている。前記大径孔204a、204b、204c、204dは、該インターフェースモジュール200を後述のインナーケース300、アウターケース500とともに駆動機構部DMPへ固定するためのねじ孔であるのに対し、小径孔206a、206b、206c、206dは、該インターフェースモジュール200を前記駆動機構部DMPへ仮固定するためのねじ孔である。
また、4つの前記大径孔のうちたとえば2つの大径孔204a、204bに近接した部分に突柱体208a、208bが突出されて形成されている。この突柱体208a、208bは、該インターフェースモジュール200に対して後述のインナーケース300を対向配置させる場合において、該インナーケース300に形成された孔(図8(a)において符号308a、308bで示す)に挿入されて、相互の位置合わせができるためである。
そして、インターフェースモジュール200には、その内部に配線層WLがたとえば埋設されて形成され(図7(a)に示される配線層WLは透視して示したものである)、これら配線層WLの端部あるいは中途部には該インターフェースモジュール200に植設された端子が接続されている。なお、これら配線層WLとしてはインターフェースモジュール200の表面に形成されている場合であってもよく、必ずしもインターフェースモジュール200内に埋設されていなくてもよい。
これら各配線WLは、駆動機構部DMPに取り付けられた前記端子TMを、後述のインナーケース300に形成される端子の近傍部にまで電気的に引き出すように形成されている。
すなわち、前記回転角センサの端子TM16が突出される透孔TH16に近接して配置される端子TMI16が植設され、これら端子TMI16はそれぞれ配線層WL1を介して図中中央右側の辺部にまで引き出され、この部分に植設された二股端子Tmi16に接続されている。また、推力センサの端子TM18が突出される透孔TH18に近接して配置される端子TMI18が植設され、これら端子TMI18はそれぞれ配線層WL2を介して図中中央左側の辺部にまで引き出され、この部分に植設された二股端子Tmi18に接続されている。また、パーキングブレーキ用ソレノイドの端子TM10が突出される透孔TH10に近接して配置される端子TMI10が植設され、これら端子TMI10はそれぞれ配線層WL3を介して前記二股端子Tmi18に近接する部分に植設された他の二股端子tmi10に接続されている。また、温度センサの端子TM14が突出される透孔TH14に近接して配置される端子TMI14が植設され、これら端子TMI14はそれぞれ配線層(図示せず)を介して前記二股端子Tmi16に近接する部分に植設された他の二股端子Tmi14に接続されている。また、三相端子TM12が突出される透孔TH12に近接して配置される端子TMI12が植設され、これら端子TMI12はそれぞれ配線層WL4を介して図中中央上側の部分にまで引き出され、この部分に植設された端子TMI’12に接続されている。
この配線層WL4は他の前記配線層WL1、WL2、WL3等と比較してその線幅が太く形成されている。前記配線層WL1、WL2、WL3等は信号の送受を行うのに対して、配線層WL4は電源の供給を行うパワー系バスとして形成されているからである。そして、前記端子TMI’12は高さが比較的大きく形成されている。後述するインナーケース300に形成された透孔(図8(a)の符号THA12で示す)に挿入させ該インナーケース300の反対側の表面にまで突出させるように構成するためである。
このインターフェースモジュール200を、図6(c)に示すように駆動機構部DMPの定位置に配置させた場合、前記回転角センサの各端子TM16が突出される透孔TH16に近接して配置される各端子TMI16は該回転角センサの対応する各端子TM16と近接して対向され、これらはたとえば溶接によって電気的に接続されるようになっている。また、パーキングブレーキ用ソレノイドの各端子TM10が突出される透孔TH10に近接して配置される各端子TMI10は該パーキングブレーキ用ソレノイドの対応する各端子TM10と近接して対向され、これらはたとえば溶接によって電気的に接続されるようになっている。 また、三相端子TM12が突出される透孔TH12に近接して配置される各端子TMI12は該三相端子TM12と近接して対向され、これらはたとえば溶接によって電気的に接続されるようになっている。また、温度センサの端子TM14が突出される透孔TH14に近接して配置される各端子TMI14は該温度センサの端子TM14と近接して対向され、これらはたとえば溶接によって電気的に接続されるようになっている。さらに、推力センサの端子TM18が突出される透孔TH18に近接して配置される各端子TMI18は該推力センサの各端子TM18と近接して対向され、これらはたとえば半田によって電気的に接続されるようになっている。
ここで、前記二股端子Tmiを除く前記端子TMおよび該端子TMと溶接等によって電気的に接続される他方の端子TMIは、いずれも平板状の形状をなし、それらの比較的面積の広い主表面(側面を除く面)同士が互いに対向するようになっており、これら互いに対向する面が接続されて電気的接続の確実性を図っている。
なお、インターフェースモジュール200は、図7(a)に示すように、推力センサ54に対向する部分において、突起部PRJ1が形成されている。この突起部PRJ1はその高さがインターフェースモジュール200の肉厚よりも大きく形成されていることから、図7(b)に示すように、該インターフェースモジュール200の裏面においては凹陥部DNT1として形成されるようになっている。これにより、駆動機構部DMP側に設けられた前記推力センサ54が該駆動機構部DMPの前記枠体100aの端面から若干突出して配置されてインターフェースモジュール200と干渉が生じるのを、該凹陥部DMNT1によって回避させた構成としている。また、前記突起部PRJ1の部分の周囲に該部分を中心とした円弧状の凹陥部DNT2が形成されている。この凹陥部DNT2は、後述のインナーケース300に搭載されている電子部品等と対向する部分となり、該電子部品等がインターフェースモジュール200に干渉してしまうのを回避させ、該電子部品等が収納できるように設けられている。そして、この凹陥部DNT2はその深さがインターフェースモジュール200の肉厚よりも大きく形成されていることから、図7(b)に示すように、該インターフェースモジュール200の裏面においては突起部PRJ2として形成されるようになっている。
図7(b)に示すように、インターフェースモジュール200の前記駆動機構部DNPに取り付けられる側の面の周辺において、前記大径孔204a、204b、204c、204dを外側に配置するようにして該周辺を除く中央部を囲むようにして溝202aが形成され、この溝202aには前記シール202(図示せず)が組み込まれるようになっている。インターフェースモジュール200を駆動機構部DMPの前記枠体100aに当接させて配置させた場合、該枠体100aとインターフェースモジュール200との界面に該シールが介在する構成となって、該界面を通した水分の侵入を阻止するためである。
また、前記溝202aの内側において部分的に突起体PRが形成されている。この突起体PRは、インターフェースモジュール200を駆動機構部DMPの前記枠体100aに当接させて配置させた場合、駆動機構部DMPの枠体100aの内側面側に当接して配置され、該枠体100aに対するインターフェースモジュール200の位置決めができるようになっている。
〈インナーケース300〉
図8は、インナーケース300の一実施例を示す構成図で、図8(a)は、該インナーケース300の前記インタフェースモジュール200と対向する側の面(内側面)から観た斜視図、図8(b)は、図8(a)に示した面と反対側の面(外側面)を示している。
インナーケース300は、後述の説明から明らかとなるように、電子部品を搭載する電子部品搭載基板として構成されるが、図8(a)、(b)に示した構成図は、該電子部品を搭載する前の状態を示すもので、内部に埋設された配線とこの配線に接続される端子を有する基板として描かれているものである。この基板は上述したようにたとえば合成樹脂から構成されている。前記インターフェースモジュール200の場合と同様に前記駆動機構部DMPからの熱の伝導をこのインナーケース300によって抑制するためである。
まず、インナーケース300は、図8(a)に示すように、その外輪郭は前記インターフェースモジュール200の外輪郭とほぼ同様の形状をなし、その四隅のそれぞれに大径孔304a、304b、304c、304dが形成されている。いずれも前記ボルト700a、700b、700c、700dを用いてこのインナーケース300を含む駆動回路部DCPを前記駆動機構部DMPへ固定させるものである。また、4つの前記大径孔のうち2つの大径孔304a、304bに近接した部分に前記インターフェースモジュール200に形成された突注体208a、208bがそれぞれ挿入される孔308a、308bが形成されている。
また、前記大径孔304a、304b、304c、304dが形成されている部分を含むインナーケース300の周辺部とこの周辺部から若干内側に及んだ中央部との間に段差部310が形成され、該中央部に凹陥部が形成された状態となっている。この凹陥部は前記インターフェースモジュール200との間に後述の制御回路基板404等を配置させる空間部を形成するためである。
前記段差部310によって中央部よりも肉厚となる周辺部には、前記大径孔304a、304b、304c、304dを外側に配置するように、かつ該周辺部を除く中央部を囲むようにして溝302aが形成され、この溝302aには前記シール302(図示せず)が組み込まれるようになっている。インナーケース300を前記インターフェースモジュール200に当接させて配置させた場合、該インターフェースモジュール200とインナーケース300との界面に該シール302が介在する構成となって、該界面を通した水分の侵入を阻止するためである。
インナーケース300には、その中央部から若干ずれた位置において、矩形状の比較的大きな透孔306が形成されている。この透孔306には後述のパワーモジュール408が配置される個所となっている。
このため、この透孔306の各周辺のうち対辺関係にある二辺のそれぞれに該パワーモジュール408から突出して形成されている電極(端子)とたとえば溶接によって電気的に接続される端子TMA10が並設されて形成されている。また、前記透孔306から比較的遠くに位置する個所であって前記部品搭載領域EPLの裏面側に相当する個所に端子TMA20が形成されている。この端子TMA20が形成された部分と隣接する部分には比較的小型の電子部品等が配置されその電極は該端子TMA20と電気的に接続されるようになっている。
さらに、該透孔306の周辺のうち前記端子TMA10が並設された部分を除いた残りの対辺関係にある各二辺の一部に透孔310a、310bが形成されている。この透孔310a、310bは、アウターケース500に、インナーケース300及びパワーモジュール408を固定させる際のねじ孔として用いられるものである。
さらに、このインターケース300を前記インターフェースモジュール300と対向させて定位置に配置させた場合、該インターフェースモジュール300に形成された前記二股端子Tmi14、Tmi16がそれぞれ挿入される端子孔群THG14、THG15、および前記二股端子Tmi10、Tmi18がそれぞれ挿入される端子孔群THG10、THG18が形成され、これらの各端子孔には前記各二股端子の二股部に当接される端子が内蔵されている。
また、該インナーケース300を前記インターフェースモジュール200と対向させて定位置に配置させた場合、前記インターフェースモジュール200に形成された端子TMI’12が挿入される透孔THA12が形成され、この透孔THA12を等して前記端子TMI’12の先端はインターフェースモジュール200の外側面に突出するようになっている。また、該透孔THA12は、それに挿通される端子TMI’12の周りに充分な隙間を有する程度に大きく形成されている。これら各透孔THA12は電動ブレーキ装置内において空気の出入り孔として機能させ、後述するように電動ブレーキ装置内において水分の侵入を防ぎつつ外気の変化に追随させた圧力調整を行うためである。
インナーケース300の外側面は、図8(b)に示すように、その面をほぼ二分した領域のうち前記透孔306が形成されている側と反対側の面に部品搭載領域EPLが設けられ、この部品搭載領域EPLは壁部305によって囲まれるようにして形成されている。
このように壁部305によって囲まれた部品搭載領域EPLには、たとえばコンデンサ等の電子部品が配置される個所が該電子部品の形状に合わせた凹陥部DNT1として形成されることによって予め設定され、その個所の近傍には該電子部品の電極と接続されるべく端子TMC20が植設して形成されている。各電子部品をその定位置に配置し、該電子部品の近傍に形成されている端子TMC20を介してインナーケース300に埋設させた配線層と誤りなく電気的に接続させるためである。
また、前記配線層として、信号の送受を行う比較的線幅の小さい配線層とともに、高電圧となる電源が供給される線幅の大きな配線層(パワー系バス)が形成され、この配線層は、前記透孔THA12を通して突出される前記端子TMI’12に電気的に接続されるべく端子(図示せず)に接続されている。なお、この端子と前記端子TMI’12の接続については後述する。
なお、図10に示すように、部品搭載領域EPLを囲んで形成される前記壁部305であって、前記透孔306に対向する部分において、該壁部305の肉厚自体を大きくし、その中央に該透孔306側から部品搭載領域EPL側へ貫通された透孔305bを備える突壁部305aが形成されている。この突壁部305aは、後の説明で明らかとなるようにハーネス600の先端部を固定させ、該ハーネス600内の各配線を前記透孔305bを通して前記部品搭載領域ELPに導かせる機能を有する。
〈アウターケース500〉
また、図9は、アウターケース500の詳細な構成を示す図で、図9(a)はインナーケース300と対向して配置される側の面(内側面)から観た斜視図、図9(b)はインナーケース300と対向して配置される側と反対側の面(外側面)から観た斜視図を示している。
該アウターケース500は、たとえば、表面にアルマイト処理がなされたアルミ合金からなる金属で構成されている。後の説明で明らかとなるように、このアウターケース500にはパワーモジュール408が当接されて固定され、このアウターケース500を通して放熱特性を良好にせんがためである。また、ハーネス600が固定されることから機械的強度を増大させんがためである。さらに、駆動回路部DCPの筐体として比較的大きな表面積を占めることから外的な障害(たとえば飛び石)に対する損傷の防止を図るためである。
まず、アウターケース500において、その外輪郭は前記インナーケース300の外輪郭とほぼ同様の形状をなし、その四隅のそれぞれに大径孔512a、512b、512c、512dが形成されている。いずれも前記ボルト700a、700b、700c、700dを用いてこのアウターケース500を含む駆動回路部DCPを前記駆動機構部DMPへ固定させるためである。
図9(a)に示すアウターケース500の内側面の開口部504を除く下部側の面にはほぼ矩形状の溝502aが形成されている。後述で明らかとなるように該溝502aには前記シール502(図示せず)が埋め込まれるためである。また、該溝502aで囲まれる領域内には後述のパワーモジュール408を固定させるためのねじ孔510a、510bが形成されている。また、このねじ孔510a、510bにそれぞれ近接しかつ外側に配置されるねじ孔511a、511bが形成されている。前記溝502aはこれらねじ孔511a、511bを内側に位置づけるためねじ孔511a、511bの個所で迂回したパターンとして形成されている。これらねじ孔511a、511bは、それぞれ図8に示したインナーケース300のねじ孔310a、310bと同軸配置される関係にあり、後述するねじ320a、320b(図11(d)参照)によって、インナーケース300に対するアウターケース500の固定がなされるようになっている。
また、図9(b)に示すアウターケース500の外側面における開口部504を除く他の面にはハーネス固定部506が形成されている。このハーネス固定部506は図示しないハーネスストッパ602とともにハーネス600(図示せず)を固定させるようになっている。該ハーネス固定部506は突出した台部の中央に前記開口部504側に指向する方向に溝506aが形成されることによって構成されている。また、ハーネス固定部506には前記溝506aを間にした両脇に前記ハーネスストッパ602を固定させるためのねじ孔507a、507bが形成されている。
なお、このハーネス固定部506の近傍において、たとえば4個の突出体508が形成され、これによりアウターケース500の表面積の増大を図って放熱効果の増大を図っている。
アウターケース500の前記開口部504は、その周囲において、インナーケース300の前記壁部305の外方に該壁部305と当接して配置される壁部505を備えて形成されている。インナーケース300の壁部305とともに部品搭載領域EPLの外枠として機能させるとともに、その機械的強度の向上を図るためである。
また、この壁部305であって、前記ハーネス固定部506に対向する部分において、上端面が連結されて開口部505bを有するブリッジ505aを有する構成となっている。アウターケース500をインナーケース300に組み込んだ場合、該アウターケース500の壁部305の開口部505b内にインナーケース300の前記突壁部304aが位置づけられ、かつ、前記ブリッジ505aが該突壁部304aの周側面を被うようになっている。
そして、アウターケース500の外側面においてその壁部505の周囲の一部にはカバー800をねじ止めするためのねじ孔512a、512b、512cが形成されている。
〈ハーネス600の取り付け構造〉
図16(a)は、前記アウターケース500に対するハーネス600の取り付け構造の一実施例を該ハーネス600の側から観た斜視図である。なお、図16(a)では、該ハーネス600がインナーケース300の前記部品搭載領域EPLにおける電子回路と電気的に接続されている様子も示すため前記アウターケース500はインナーケース300に嵌合された状態で示している。
ここで、ハーネス600は、前述した上位制御装置ECU(1)の信号およびバッテリVTからの電源を前記部品搭載領域EPLの電子回路に供給するための配線ケーブルであり、たとえばチューブ状の外皮に複数の配線を束状にして内包して形成されている。
まず、図16(a)において、ハーネス600はその前記部品搭載領域EPLにおける電子回路と接続される側においてフランジ606を備えた構成となっている。フランジ606はその中央部に該フランジ606の主表面と垂直方向に突出する筒体606aが一体的に形成され該筒体606aの孔はそのままフランジ606に至って貫通されて構成されている。また、ハーネス600は該フランジ606の筒体606aの側からその孔に挿入された状態でその外皮の外周面が前記孔の内周面に固定されることによって取り付けられ、該フランジ606の筒体606aが形成された側と反対側において前記外皮に内包されている束状の配線のみが延在されるように構成されている。
そして、前記フランジ606は、ハーネス600の軸方向と直交する面内において長円状(長方形状であっても可)をなし、前記孔の両側にそれぞれ一対のねじ孔が設けられている。換言すれば、該フランジ606のハーネス600の軸方向と直交する面内の形状は前記筒体606aの孔および前記ねじ孔の並設方向に比較的大きな幅を有するようにし該幅に直交する高さ方向の長さを小さくするように形成されている。
図16(a)に示す実施例では、フランジ606の高さ方向の長さはハーネス600の直径より僅かに大きな程度で形成されている。フランジ606をこのような形状としたのは、インナーケース300の部品搭載領域EPLを囲む壁部305の高さを可能な限り小さく構成しようとする場合において、該壁部305にハーネス600の先端部を前記フランジ606を介して信頼性よく固定させんがためである。また、前記壁部305の高さを可能な限り小さく構成するのは、前記駆動回路部DCPの厚さ方向の幅を小さくさせるためであり、ひいては電動ブレーキ装置をキャリアの移動方向において長さを小さくしようとする趣旨である。
なお、図16(a)に示す実施例では、フランジ606の高さ方向の長さは、前記壁部305(フランジ606の固定部以外の部分の壁部305)の高さよりも大きく形成されている。このため、前記壁部305のうち前記フランジ606が固定される部分において、前記壁部305よりも大きな高さ(フランジ606の高さ方向の長さよりも大きな高さ)を有する突壁部305aを形成することにより対処している。
そして、前記ハーネス600のフランジ606の前記突壁部305aに対する固定の個所は、平面的に観たアウターケース500のほぼ中央に位置するように構成されている。すなわち、図16に示すように、該アウターケースの幅をW、高さをHとした場合、前記幅Wの約半分、前記高さHの約半分の位置に前記ハーネス600のフランジ606が位置づけられているようになっている。電動ブレーキ装置を全体的に観た場合にもその幅はほぼW、高さはほぼHであり、該電動ブレーキ装置が振動した場合にその中心軸周りの振動(図10(a)において矢印T方向の振動)が最も小さい個所は前記ハーネス600のフランジ606の取り付け位置になる。(ちなみに、電動ブレーキ装置の中心軸周りの振動は前記ハーネス600のフランジ606の取り付け位置を中心として外側にいく程大きくなる。)このため、ハーネス600のフランジ606の前記突壁部305aに対する取り付けは電動ブレーキ装置の振動によって悪化され難くなるという効果を奏するようになる。
さらに、フランジ606によって前記突壁部305aに固定されたハーネス600は、該フランジ606から僅かに離間した位置において、アウターケース500と一体に形成されたハーネス固定部506とこのハーネス固定部506とは別体として形成されたハーネスストッパ602によって挟持されることによって固定された構成となっている。すなわち、前記ハーネス固定部506とハーネスストッパ602は、それらの対向面にそれぞれハーネス600が位置づけられる断面が半円の溝が形成され、前記ハーネス600が前記溝内に配置された状態で、前記溝の両脇においてハーネスストッパ602側からハーネス固定部506にかけて螺入されるボルト612a、612bによって該ハーネスストッパ602がハーネス固定部506に対して固定されている。
ハーネス600のアウターケース500に対する固定を前記ハーネス固定部506とハーネスストッパ602によって担当させ、これにより該ハーネス固定部506とハーネスストッパ602以降において延在する該ハーネス600において加わる力が前記突壁部305aに固定されたフランジ606に伝達されないように構成している。ハーネス600のフランジ606の前記突壁部305aに対する取り付けが該ハーネス600に加わる力によって悪化されるのを防止する趣旨である。
図16(b)は、フランジ606が突壁部305aに取り付けられるとともにハーネス固定部506とハーネスストッパ602によって固定されたハーネス600を側面から観た図である。
ハーネス600は、アウターケース500の表面に対して高さh1を保持するように、そのフランジ606が突壁部305aに取り付けられるとともにハーネス固定部506とハーネスストッパ602に固定されている。ハーネス600のアウターケース500の表面の接触を回避させて該ハーネス600の該アウターケース500との摩耗による損傷を防止するためである。
また、図16(b)から明らかとなるように、ハーネス固定部506に取り付けたハーネスストッパ602の高さh2は突壁部305aの高さh2とほぼ等しく設定されている。ハーネス固定部506およびハーネスストッパ602によるハーネス600への固定の信頼性を向上させるとともに、アウターケース500の厚み(駆動回路部DCPの厚み)が大きくなるのを回避するためである。この場合、アウターケース500の厚み(駆動回路部DCPの厚み)が大きくなるのを回避することを優先させて、ハーネス固定部506に取り付けたハーネスストッパ602の高さを突壁部305aの高さよりも低くなるように構成するようにしてもよい。
なお、ハーネス600を固定するハーネス固定部506とハーネスストッパ602はそれぞれその対向面において該ハーネス600を定位置に配置させる溝が形成されて構成したものである。これにより、該ハーネス600をその中心軸がハーネス固定部506とハーネスストッパ602の境界面内にほぼ含まれるように配置させることができる。したがって、ハーネス固定部506とハーネスストッパ602のそれぞれの高さをたとえば等しく構成でき、結果としてハーネス固定部506の高さを比較的小さく形成することができる。
このことは、後においても詳述するが、ハーネス600をハーネス固定部506の溝に配置させ、そのフランジ606を前記突壁部305aに当接させた後に(図12(b)参照)、ボルト614c、614dを用いて該フランジ606の該突壁部305aへの固定を極めて容易にすることができる効果を奏する。前記フランジ606とハーネス固定部506との間の距離は極めて狭いにも拘わらず、該ハーネス固定部506は、その高さが比較的小さいことから、前記ボルト614c、614dの前記突壁部305aへの螺入の際にあって邪魔となることがないからである。
さらに、図17は、フランジ606が突壁部305aに取り付けられるとともにハーネス固定部506とハーネスストッパ602によって固定されたハーネス600を上面から観た図である。
この図17において、前記ハーネス固定部506およびハーネスストッパ602は、それらの対向面においてハーネス600が配置されるようにして形成される溝506aの他に、前記突壁部305aと反対の側において該溝506aよりも径の大きな溝506bが形成された構成となっている。該ハーネス固定部506とハーネスストッパ602の以降において延在する該ハーネス600が該ハーネス固定部506とハーネスストッパ602に影響されることなくほぼ自由に屈曲できるようにして、所望の方向へ引き回しできるようにするためである。図中、屈曲させたハーネス600の一態様を一点鎖線によって示している。
〈カバー800〉
アウターケース500の開口部から露出されている部品搭載領域EPLはカバー800によって閉塞されるようになっている(図14(i)参照)。このカバー800は、たとえば、表面にアルマイト処理がなされたアルミ合金からなる金属によって構成されている。このカバー800は、アウターケース500に取り付けられることから、アウターケース500と同様に放熱特性が良好になっている。また、駆動回路部DCPの筐体として比較的大きな表面積を占めることから外的な障害(たとえば飛び石)に対する損傷の防止を図るためである。
図1に示したように、該カバー800はその周辺から突出したたとえば3つの舌辺部を有し、その舌辺部にねじ貫通孔が形成されている。該カバー800をアウターケース500に取り付ける場合、前記ねじ貫通孔に挿入され該アウターケース500に螺入されるねじによってなされるようになっている。また、該カバー800は、インナーケース300の壁部305に当接して位置づけることにより、カバー800とインナーケース300とが嵌合された状態とすることができる。これにより、インナーケース300内の機密を確保することができる。
また、前記カバー800の内側面の周辺を走行する環状の突起からなる段差部800aが形成されている。この段差部800aは、該カバー800をアウターケース500の定位置に配置させた場合、アウターケース500の前記壁部505の内側面に当接して位置づけられ、これにより、該カバー800がアウターケース500に嵌合された状態とするようにして、該カバー800のアウターケース500に対する位置決めがなされるようになっている。
《電動ブレーキ装置EMBの組み立て》
上述した各構成部材からなる電動ブレーキ装置EMBの組み立てにおける行程の一実施例を以下説明する。
〈インナーケース300への電子部品搭載とアウターケース500の組み立て〉
図10(a)ないし(d)は、インナーケース300に電子部品を搭載し、該電子部品とインナーケース300内の配線との電気接続を行った後に、アウターケース500を組み込む行程を示した図である。
まず、図10(a)に示すように、インナーケース300を用意する。上述したように、該インナーケース300の外側面には壁部305によって囲まれている部品搭載領域EPLが形成されている。この部品搭載領域EPLにはたとえばコンデンサあるいはリアクタンス等の電子部品が搭載されるようになっており、該領域の底面には前記各電子部品の配置にあってそれが定位置に位置づけられるための凹陥部DNT1’が形成されている。
また、前記壁部305のうち前記透孔306が形成された部分側の中央部に、比較的肉厚の大きな突壁部305aが前記壁部305と一体化されて形成されている。この突壁部305aは、後述するハーネス600の先端に取り付けられたフランジ606を固定させ、かつハーネス600内の各配線608を前記部品搭載領域EPLに導くための機能を有する。
このため、該突壁部305aには、透孔305bが形成されているとともに、該透孔305bの両側には前記ハーネス600のフランジ606を固定させるためのねじ孔305c、305dが形成されている。
なお、前記透孔305bの周辺には該透孔305bを囲んでリング状のシール305Sが配置されている。後述するハーネス600のフランジ606を前記突壁部305aに当接して配置させた場合、該突壁部305aとフランジ606との界面からの水分の侵入を阻止するためである。
そして、図10(b)に示すように、前記部品搭載領域EPLの前記凹陥部DNT1に所定の電子部品EP1、EP2、EP3、EP4を配置させ、これら電子部品EP1、EP2、EP3、EP4の近傍に植設されている端子TM7であって該電子部品の端子と接続されるべく端子とをたとえば溶接によって、互いに電気的に接続させる。
次に、図10(c)に示すように、アウターケース500を用意する。このアウターケース500は、上述したように、そのインナーケース300に対向する面に形成された溝502a内にシール502が配置されている。このシール502はアウタケース500をインナーケース300に組み込んだ際に、インナーケース300の前記透孔306の周りを囲むように配置されるようになっている。
そして、図10(d)に示すように、アウターケース500をインナーケース300に組み込む。アウターケース500は、その開口部504によってインナーケース300の部品搭載領域EPLを露呈させ、その他の領域を被うようにしてインナーケース300に組み込まれるようになる。すなわち、アウタケース500の壁部505はインナーケース300の壁部305の外壁面側に位置づけられるように配置され、この際、インナーケース300の前記突壁部305aはアウターケース500の壁部505に形成されたブリッジ505aによって囲まれるように配置されるとともに、該突壁部305aのハーネス固定台506の側の面とアウターケース500の前記壁部505のハーネス固定台506の側の面とがほぼ面一となるようになっている。
図11(a)ないし(d)は、前述したインナーケース300への電子部品搭載とアウターケース500の組み立てに際して、インナーケース300の内側面において電子部品を搭載する場合の行程を示した図である。
図11(a)ないし(b)は、それぞれ、前述した図10において、インナーケース300を用意し(a)、電子部品を搭載し(b)、アウターケース500を組み込み(c)、インナーケース300とアウターケース500との一体化を図る(d)場合の各行程に対応させて描いている。
図11(a)に示すように、インナーケース300は、前述したように配線(図示せず)がたとえば埋設されており、その配線の必要な個所においてたとえば端子TMA10、TMA20が形成されている。前記端子TMA10はインナーケース300の透孔306の周囲にの一部に形成されている。この透孔306の部分にパワーモジュール408が配置され、このパワーモジュール408の端子と前記端子TMA10との電気的接続が図られるからである。また、端子TMA20は前記透孔306から比較的遠くに位置する個所(前記部品搭載領域EPLの裏面側に相当する)に形成され、次の行程で電子部品が該端子TMA20に接続されて搭載される。
次に、図11(b)に示すように、インナーケース300の外側面においてコンデンサあるいはリアクタンス等の電子部品EP1、EP2、EP3、EP4を搭載する際に、該インナーケース300の内側面においても、比較的小型の電子部品EP6、EP7を配置させ、その端子とこの端子に近接して配置される前記端子TMA20とたとえば溶接を行うことにより接続する。
図11(c)はインナーケース300にアウターケース500を組み込んだ状態を示す図であり、インナーケース300に形成されている透孔306は、該アウターケース500によって塞がれることになる。
そして、図11(d)に示すように、インナーケース300に対するアウターケース500の固定は、該インナーケース300の内側面から前記ねじ孔310a、310bを通してアウターケース500に螺入されるねじ320a、320bによって行う。このねじ320a、320bは、アウターケース500に形成された前記ねじ孔511a、511b(図9(a)参照)に螺入される。このようなインナーケース300に対するアウターケース500の固定は、次に説明するハーネス600の取り付けおよびハーネス600と部品搭載領域EPLにおける電子部品との溶接等による接続を容易にすることができる。
〈ハーネス600の取り付け〉
図12(a)ないし(b)は、インナーケース300とアウターケース500の組み合わせからなる前記電子部品搭載基板900に前記ハーネスを取り付ける際の行程を示した図である。
まず、図12(a)に示すように、電子部品搭載基板900を用意する。この電子部品搭載基板900は、上述したように、そのインナーケース300に形成された前記突壁部304aにその透孔304bの周囲を囲むようにしてリング状のシール304sが形成されている。
次に、図12(b)に示すように、該電子部品搭載基板900の定位置にハーネス600を配置させる。
ハーネス600はそのフランジ606が前記突壁部304aに当接して配置され、該フランジの透孔(図示せず)および該透孔を間にして形成されるねじ孔610c、610dが、それぞれ該突壁部304aの対応する透孔304bおよびねじ孔304c、304dに対してそれぞれの中心軸を一致させて対向するようになる。また、ハーネス600は、フランジ606の側の端部(先端部)から若干離間した個所において、インナーケース300に形成されたハーネス固定部506の溝506a内に配置され、この溝506aは該ハーネス600の長手方向に交叉する方向の移動を規制するようになっている。このため、該ハーネス600を該ハーネス固定部506の溝506aに配置させた段階でフランジ606の突壁部304aに対する位置合わせがなされるようになっている。
次に、図12(c)に示すように、ボルト614c、614dを用いてハーネス600のフランジ606をインナーケース300の突壁部304aに固定させる。前記ボルト614c、614dは前記フランジ606のねじ孔610c、610dから突壁部304aの対応するねじ孔304c、304dに螺入される。この場合、ハーネス600のフランジ606は前記シール304sを介して突壁部304aに密着され、該シール304sによって、水分が前記突壁部304aとフランジ606の界面を通して壁部304の内部の部品搭載領域EPLに浸透してしまうのを防止できる。なお、これらボルト614c、614dの螺入にあっては、前述したように、前記フランジ606に対してハーネス固定部506(いまだハーネスストッパ602は取り付けられていない)が近接した位置に配置されているにも拘わらず、該ハーネス固定部506の高さが比較的小さく形成されていることから、該ハーネス固定部506が邪魔となることはない。
そして、図12(c)では、インナーケース300のハーネス固定部506の上方に前記ハーネス600を挟持するようにしてハーネスストッパ602を載置させている。次の行程で、該ハーネスストッパ602をハーネス固定部506に固定させるためである。ハーネスストッパ602は、たとえば、ハーネス600を跨ぐようにしてハーネス固定部506に載置されるほぼ平板形状からなり、該ハーネス600を間にした各両端部にねじ孔610a、610bが形成されて構成されている。
次に、図12(d)に示すように、ボルト612a、612bを用いて前記ハーネスストッパ602をハーネス固定部506に固定させる。前記ボルト612a、612bは前記ハーネスストッパ602のねじ孔610a、610bからハーネス固定部506の対応するねじ孔に螺入されて固定される。これにより、ハーネス600は、ハーネス固定部506とハーネスストッパ602との間に挟持され、この挟持による押圧力によって、その軸方向の移動が規制される。
そして、図12(e)に示すように、前記ハーネス600からインナーケース300の壁部304内の部品搭載領域EPLに引き出された各配線608を、それと接続されるべく各端子TM10にたとえば溶接により接続する。上述したように、インナーケース300には配線層がたとえば埋設され、該配線層の途中に設けられる端子TM10は該部品搭載領域EPLの表面に突出して形成されている。
なお、このようにしてアウターケース500に取り付けられるハーネス600の装置本体からの引き出しは、キャリパの移動におけるその方向に対して、一旦は直角方向に延在され、その後は自由な方向に延在させるようにして行うようにできる。このことは、キャリパの移動が伴った状況にあって、ハーネス600に常時遊びを有するようにして該ハーネス600の引き回しを行うことができるようになる。これにより、該ハーネス600に断線をともなう緊張状態をもたらすことを防止することができる。
上述した実施例では、ハーネス600の各配線608をインナーケース300の壁部304の内部に引き出す構成において、該ハーネス600の先端をフランジ606を介してインナーケース300の前記壁部304(突壁部304a)に固定したものである。しかし、該フランジ600に替えてコネクタを用いるようにしてもよい。たとえば、該コネクタとしては着脱自在に電気的に接続される一対のコネクタを用いる。そして、一方のコネクタはインナーケース300のたとえば壁部305に固定されて取り付けられ、該一方のコネクタの各端子に接続された配線は該壁部304内の部品搭載領域EPL内に引き出されて対応する端子に接続される。他方のコネクタはハーネス600の先端に取り付けられ、該ハーネス600の各配線は該他方のコネクタの端子に接続される。このようにした場合でも、他方のコネクタを一方のコネクタに嵌合させることにより、図12に示したと同様の効果を得ることができる。
〈インナーケース300へのパワーモジュール408等の取り付け〉
図13(a)ないし(d)は、インナーケース300へパワーモジュール408、金属板402、および制御回路基板404を取り付ける際の行程を示した図である。
まず、図13(a)に示すように、ハーネス600を取り付けた電子部品搭載基板900を用意し、その内側面の前記透孔306の部分に前記パワーモジュール408を配置し、該パワーモジュール408に形成されたねじ孔(図示せず)を通してアウターケース500に形成されているねじ孔510a、510b(図示せず)に螺入されるねじ410a、410bによって固定させる。
なお、このパワーモジュール408を搭載する前のインナーケース300の裏面の構成は図11(d)に示すようになっており、アウターケース500によって閉塞されたインナーケース300の透孔306が凹陥部として形成され、この凹陥部に前記パワーモジュール408が収納されるようになっている。
この場合、前記凹陥部の底面に相当する部分が金属で形成されたアウターケース500の一部であり、前記パワーモジュール408はこのアウターケース500に接触されるようにして配置される。パワーモジュール408からの熱を該アウターケース500を介して放熱させるためである。そして、図示していないが、前記アウターケース500とパワーモジュール408との間には放熱グリスあるいは放熱シートを介在させることによって、パワーモジュールからアウターケースへの熱伝導の効率向上を図るようにしている。
また、このパワーモジュール408の側面には該パワーモジュール408の電極となる端子が突出されて構成され、該パワーモジュール408をインナーケース300上の定位置に配置させた場合、前記端子に接続されるべく端子TMA10がインナーケース300面に露出されて形成されている。この端子TMA10はインナーケース300にたとえば埋設されている配線層に接続されたものである。パワーモジュール408の端子とインナーケース300面の端子はたとえば溶接によって互いに電気的に接続される。
次に、図13(b)に示すように、前記パワーモジュール408の上面(インターフェースモジュール200側の面)に絶縁シート400を配置する。
この絶縁シート400は、パワーモジュール408の各端子部と次に説明する金属板402との電気的な絶縁を図るために該金属板402との間に介在されるようになっている。該絶縁シート400の材料としてはたとえばポリイミド樹脂が用いられ、これにより150℃以上の耐熱性を有し、かつ200kV/mmの絶縁性を有するようになっている。また、該絶縁シート400は、該パワーモジュール408の端子部を被うようして延在されて該パワーモジュール408の上面に接着されている。なお、絶縁シート400は、パワーモジュール408をアウターケース500に固定させたねじ410a、410bの頭部を被うことなく該頭部を回避させた切り欠き400aを有するパターンとして形成されている。
次に、図13(c)に示すように、前記絶縁シート400の上面(インターフェースモジュール200側の面)にたとえばアルミプレートからなる金属板402を配置する。この金属板402は、前記絶縁シート400によってパワーモジュール408の端子と接触してしまうのを回避して配置される。そして、この金属板402は、この上面(インターフェースモジュール200側の面)に配置される前記パワーモジュール408の制御回路基板404を機械的に補強させる効果と、該制御回路基板404からの放熱効果を図らんがためである。また、この金属板402は、前記パワーモジュール408および絶縁シート400のいずれをも充分に被う大きさとなっており、該金属板402に形成した透孔408a、408bからパワーモジュール408のアウターケース500への固定用のねじ410a、410bの頭部を該透孔408a、408bから突出することなく露出されている。この金属板402の該透孔408a、408bによって、該金属板402を絶縁シート400に密着させて配置でき、かつ、該金属板402の上面に後述の制御回路基板404を密着させて配置させることができる。
なお、この金属板402は後述の制御回路基板404と対向する面において、パターン化された凹部402dが形成されている。前記制御回路基板404はその金属板402と対向する面においてたとえば検査チェック用の端子(図示せず)が露出している場合があり、それらの端子が前記金属板402の凹部402dの形成領域内に対向するようにして、該金属板402との直接の接触を回避させている。これにより、前記制御回路基板404の検査チェック用の各端子が電気的に接続されるのを防止している。また、前記凹部402dは、金属板402の上面に該制御回路基板404を接着材を用いて接着させる場合、該接着剤の逃しの機能をも有するようになっている。
そして、図13(d)に示すように、前記金属板402の上面(インターフェースモジュール200側の面)に前記制御回路基板404を配置する。該制御回路基板404は、その基板がたとえばセラミックで形成され、その上面(金属板402と反対側の面)にはたとえば比較的大きなの電子部品EP10が搭載されている。この制御回路基板404の基板としてセラミックを用いているのはたとえばそれが耐熱性を有するとともに耐振動性を有するからである。この制御回路基板404は金属板404の上面に配置されることから、何らかの原因によって、たとえばインナーケース300等に歪みが生じた場合でも、その歪みは前記金属板402によって該制御回路基板404に伝達されることを抑制でき、該制御回路基板404の破損を防止することができる。
制御回路基板404は、各電子部品EP10を電気的に接続させる配線層が基板表面にあるいは基板内に埋設されて形成され、これら配線層と接続された端子TM13が該基板の周辺の一部に並列されて形成されている。制御回路基板404を配置させたインナーケース300には該制御回路基板404の周囲において、該制御回路基板404の端子TM12と接続されるべく端子TM13が対応づけられて形成されている。これら対応する各端子TM12、TM13はたとえばアルミニュウムからなるワイヤのボンディングによって互いに電気的に接続される。
そして、このように、パワーモジュール408、絶縁シート400、金属板402、および制御回路基板404のそれぞれ搭載が完了したインナーケース300内にはゲル状の部材(図示しない)が充填されるようになっている。このゲル状の部材によって振動の上記各部材への伝達を緩和させるためである。
〈アセンブリ同士の組み立て〉
図14は、すでに構成された駆動機構部DMPとインターフェースモジュール200の一体化からなるアセンブリ(以下の説明でアセンブリASAと称す)と、インナーケース300、アウターケース500、およびハーネス600の一体化からなるアセンブリ(以下の説明でアセンブリASBと称す)を組み立てる際の行程を示した図である。
まず、図14(a)に示すように、アセンブリASAとアセンブリASBを用意する。アセンブリASAは図6(c)に示したものと同様であり、アセンブリASBは図13(d)に示したものと同様のものである。
この場合、前記アセンブリASAとアセンブリASBとをそれらの対向すべく各面を接触させた場合に、図14(a)に示すように、インターフェースモジュール200側にて植設されている各端子とインナーケース側に形成されている端子は次に示す関係となっている。
まず、インターフェースモジュール200には比較的大きく突出した3本のリード状の端子TMI’12が植設されている。3本の前記端子のうち2本の端子は互いに隣接され、残りの1本は離間されて配置されている。インナーケース300の部品搭載領域EPLにおいて所定の個所に突出させるためである。これらの3本の前記端子TMI’12は、その拡大図である図14(b)に示すように、インターフェースモジュール200にたとえば埋設された配線層WL4と一体に形成され、たとえば該配線層WL4がインターフェースモジュール200内で屈曲されることにより、インターフェースモジュール200の表面に突出されて形成されるようになっている。そして、これら各端子TMI’12と対向するアセンブリASB側のインナーケース300には、拡大図である図14(c)に示すように、前記端子TMI’12が挿入される透孔THA12が形成され、該各端子TMI’12はこの透孔THA12を通して該インナーケース300の反対側の面に形成される前記部品搭載領域EPLにまで突出されるようになっている。すなわち、これら各端子TMI’12は、前記部品搭載領域EPLにおいて他の端子と接続されるようになっている。
また、アセンブリASAのインターフェースモジュール200には並設して設けられる複数の二股端子Tmi14、Tim16が植設されている。この二股端子Tmi14、Tmi16においても、その拡大図である図14(d)に示すように、インターフェースモジュール200内にたとえば埋設された配線層と一体に形成され、この配線層は信号の送受を担当させていることから比較的細く形成され、該インターフェースモジュール200内であって該二股端子Tmi14、Tim16に至る部分で太く形成され、該部分で屈曲されることにより、インターフェースモジュール200の表面に突出されて形成されている。そして、これら各二股端子Tmi14、Tmi16と対向するインナーケース300には、拡大図である図14(e)に示すように、該各二股端子Tmi14、Tmi16が挿入される溝GTTが形成されているとともに該溝GTT内には対応する各二股端子Tmi14、Tmi16の各分岐部の間に挟持される端子TM30が並設されて配置されている。この端子TM30はインナーケース300にたとえば埋設されている配線に接続されている。
これらの説明から明らかとなるように、アセンブリASAに対してアセンブリASBを対向接触させて組み立てた場合、インターフェースモジュール200側の端子TMI’12等にあってはインナーケース300の部品搭載領域EPLに現出させることができ、二股端子Tmi14、Tmi16等にあっては前記端子を介してインナーケース内の配線に接続がなされるようになる。
次に、図14(f)に示すように、アセンブリASAに対してアセンブリASBを対向接触させて組み立てる。この場合、アセンブリASAとアセンブリASBは、インターフェースモジュール200の側に突出して形成された突注体208a、208bは、インナーケース300の側に形成された孔308a、308bに挿入されて、位置決めがなされるようになる。
そして、アセンブリASBの四隅に形成されているねじ孔を通してアセンブリASAのねじ孔に螺入させるボルト700a、700b、700c、700dによって互いに固定させる。
この場合、インナーケース300の部品搭載領域EPLの一部を拡大させた図14(g)に示すように、前記端子TMI’12が前記透孔THA12を通して該部品搭載領域EPL内に突出しており、これら各端子TMI’12は、これら各端子TMI"12と電気的に接続すべく端子であって、インナーケースに予め植設されて形成された端子TMI”12とそれらの表面(側面を除く)において互いに近接して対向するようになる。したがって、この段階で、前記端子TMI’12と端子TMI”12とをたとえば溶接によって互いに電気的に接続する。なお、図14(h)は、アセンブリASAとアセンブリASBの組み立てによって、インターフェースモジュール200側のたとえば前記二股端子Tmi14とインナーケース300側の前記端子TM30との接続状態を示す図で、該二股端子Tmi14の各分岐部の間に端子TM30が挟持されて電気的な接続がなされていることを示している。
そして、図14(i)に示すように、露出されている前記部品搭載領域EPLをカバー800で被い、該カバー800を、それに形成されているねじ孔を通してアウターケース500に形成されているねじ孔に螺入させるねじ804a、804b、804cによって固定させる。
これにより、電動ブレーキ装置EMBの組み立てが完了する。ここで、図14(i)に示すように、駆動機構部DMPの金属からなる筐体100と駆動回路部DCPの金属からなるアウターケース500とカバー800は互いに接続されることはなく、合成樹脂からなるインターフェースモジュール200を間にして互いに分離された構成となっている。すなわち、駆動機構部DMP側で発生した熱の伝導は、前記インターフェースモジュールによって阻止され、アウターケース500側へ伝導し難い構成となっている。このことは、駆動機構部DMP内で発生した熱は該駆動機構部DMPの筐体100を通して大気側に放散され、駆動回路部DCP内で発生した熱は該駆動機構部DCPのアウターケース500およびカバー800を通して大気側に放散されることを意味し、これにより、前記駆動機構部DMPと駆動回路部DCPを熱的にほぼ独立させた構成とすることができる。
《駆動回路部の断面構成》
図15(a)は駆動回路部を抽出して示した断面図であり、図15(b)に示すインターフェースモジュール(駆動回路部に対向する側の面)200において図中a−a線に沿った断面を示す図である。そして、この図は図4における駆動回路部の断面図に相当する。
図15(a)から明らかとなるように、まず、パワーモジュール408の一方の面にはたとえばアルミプレートからなる金属板402を介して該パワーモジュール408と背中合わせに制御回路基板404が配置されている。該制御回路基板404はパワーモジュール408内の回路を制御する回路を備え該パワーモジュール408と接続される端子を多く有することから、これらの接続を容易にすることができる。
また、前記制御回路基板404はたとえば上述したようにセラミックで形成され、その捻り等による破損を該制御回路基板404に当接して配置される金属板402によって防止することができる。
このように一方の面において前記金属板402と当接される前記パワーモジュール408は、他方の面において、放熱グリスあるいは放熱シートを介して(これらは必要に応じて介在させなくてもよい)アウターケース500に当接される構成となっている。このアウターケース500は金属(たとえばアルミ合金)で構成されているとともに、その表面の大部分は外気に露呈されているため、パワーモジュール408で発生する熱の放散効果を向上させた構成となっている。
なお、前記制御回路基板404は前記金属板402と反対側の面において比較的大きな電子部品EP10が搭載されており、インターフェースモジュール200には該電子部品EP10との干渉を回避させるための凹陥部DNTが形成されている。この凹陥部DNTは、該インターフェースモジュール200を前記駆動機構部DMPから観た場合、同じ部位において突起部PRJとして構成される。この場合、前記突起部PRJは駆動機構部DMP側へ突出するようになるが、該駆動機構部DMP内の構成部材(たとえばスラストプレート)との間に充分な隙間(空気層)があることから、該構成部材との干渉を回避することができる。
また、図15(a)に示すように、インターフェースモジュール200に植設された平板状の端子TMI’12は、インナーケース300に形成された透孔THA12を通して該インナーケース300の部品搭載領域EPLにまで突出して延在され、この端子TMI’12と接続されるべく他の平板状の端子であって該インナーケース300に植設された他の端子TMI”12と互いに近接かつ対向して配置できることになる。したがって、これら各端子TMI’12、TMI”12の溶接等による電気的接続を容易にでき、また、各端子TMI’12、TMI”12の主表面(側面を除く)同士で接続させることによってその接続に信頼性をもたせることができる。
また、インターフェースモジュール200には二股端子Tmi14が植設されており、この二股端子Tmi14は、インナーケース300に設けられた孔の内部に位置づけられ、該孔の内部に配置された端子TM30が該二股端子Tmi14の各分岐部の間に挟持されて位置づけられるようになっている。
《電動ブレーキ装置の圧力調整機構》
電動ブレーキ装置に接続されるハーネス600の端部はたとえば車室内に配置される上位制御装置ECU(1)(図2参照)にまで引き出されることにより、該ハーネス600を通して該電動ブレーキ装置EMB内の圧力が外気の圧力とほぼ等しく調整されるようになっている。
換言すれば、電動ブレーキ装置EMBの内部に水分の侵入がなされるのを防止するため、シール202、302、502を介して、それぞれ、駆動機構部DMPとインターフェースモジュール200の接合、インターフェースモジュール200とインナーケース300の接合、インナーケース300とアウターケース500の接合を行う結果、電気ブレーキ装置の内部が密閉状態になってしまうのを回避するようになっている。
すなわち、図12に示すように、駆動機構部DMPに配置されているたとえば端子TM10、TM12、TM14、TM16がそれぞれ挿入されて突出されるインターフェースモジュール200の透孔TH10、TH12、TH14、TH16は、該端子TM10、TM12、TM14、TM16の周りに充分な隙間を有するように大きく形成されている。また、図13に示すように、インターフェースモジュール200に植設されている端子TMI’12が挿入されて突出されるインナーケース300の透孔THA12は、該端子TM’12の周りに充分な隙間を有するように大きく形成されている。
このことから、駆動機構部DMPの筐体100の内部、インターフェースモジュール200とインナーケース300の間に形成される空間部、インナーケース300とアウターケース500(カバー800付き)の間に形成されの空間部は、それぞれ、インターフェースモジュール200の前記透孔TH10、TH12、TH14、TH16等、インナーケース300の前記透孔THA12等を通して連結され、インナーケース300とアウターケース500(カバー800付き)の間に形成されの空間部はハーネス600内の配線間の隙間を通して大気と連結されるようになる。
したがって、たとえ車両が高山のように気圧が低い場所を走行するようなことがあっても、電動ブレーキ装置の内部の圧力もそれに追随できるようになる。
《他の実施例》
上述した実施例において、部品搭載領域EPLを囲む壁部305は、ハーネス600のフランジ606が取り付けられる部分において、該壁部305よりも若干高さの大きな突壁部304aとして構成されている。このように構成した理由は、ハーネス600のフランジ606の突壁部304aに対する取り付けを強固なものとするとともに、該部品搭載領域EPLの全体的な高さを小さく抑え、ひいては前述した駆動回路部DCPの厚みを小さくさせる趣旨からである。
しかし、前記アウターケース500を簡略的に示した図18のように、前記壁部305の高さを突壁部304aの高さに一致づけ、結果として壁部305に対して突壁部304aの区別がない均一な高さを有する壁部305のみを有する構成としてもよいことはいうまでもない。これにより部品搭載領域EPLの全体的な高さは若干大きくなるが、該部品搭載領域EPLに大型の電子部品を搭載せざるを得ない場合等において有効となる。
また、上述した実施例では、インナーケース300にあって、そのほぼ半分を占める領域を部品搭載領域EPLとし、この部品搭載領域EPLをそれ以外の領域よりも突出させて、すなわち、該部品搭載領域EPLを囲んだ壁部305(突壁部304a)を備え、該部品搭載領域EPLとそれ以外の領域とが段差を有して構成されたものである。
しかし、他の実施例となるアウターケース500を簡略的に示す図19のように、その主表面において殆ど段差を有さない構成とするようにしてもよい。この場合、図示しないインナーケース300にあっては、その周側面における壁部よりも高くなる壁部を設けることなく構成することによって、このインナーケース300を被うアウターケース500は図19に示すような形状に構成することができる。
この場合、アウターケース500を通してインナーケース300上の電子部品(図示せず)と接続されるべくハーネス600は、その先端部においてケース状部材610を備え、このケース状部材610は該アウターケース500にたとえばねじ611a、611bを介して取り付けられている。すなわち、ハーネス600の先端は前記ケース状部材610の側面を通して該ケース状部材610内に導かれ、このケース状部材610内において、該ハーネス600の各配線は直接にあるいは端子等を介してアウターケース500内に至り、インナーケース300上の電子部品に接続されるようになっている。
また、該ハーネス600は、その前記ケース状部材610の取り付け部に近接した箇所において、アウターケース500に形成されたハーネス固定台506とこのハーネス固定台506に取り付けられるハーネスストッパ602の間に挟持されて構成されていることは図16(a)に示した実施例の場合と同様である。
しかし、図19に示すハーネス固定台506およびハーネスストッパ602は、たとえば、その構成を簡易なものとするため、該ハーネス固定台506の表面は溝を有することなく平坦となっており、ハーネスストッパ602は該ハーネス600の大部分の周面を被って湾曲された板材で形成されている。
また、上述した実施例では、アウターケース500に取り付けられるハーネス600は、該アウターケース500の主表面に対してほぼ平行に一致づけられるように、換言すれば、駆動機構部DMPから駆動回路部DCPへの方向に対して直交する方向に一致づけられるように取り付けたものである。しかし、電動ブレーキ装置を簡略的に示す図20に示すように、該ハーネス600を駆動機構部DMPから駆動回路部DCPへの方向(図中矢印A方向)に対してほぼ平行に一致づけられるように取り付けるようにしてもよい。図12の場合、アウターケース500は、その周側面の一部において段差部620を有し、この段差部620によって形成される空間部にハーネス600が図中矢印A方向に対してほぼ平行に一致づけられるように配置されるようになっている。ハーネス600の先端は、アウターケース500の主表面の一部が対向しており、この対向部において図示しないフランジ等を介して該アウターケース500に取り付けられるとともに、ハーネス600内の各配線はアウターケース500内であって図示しないインナーケース300上の電子部品にまで導かれるようになっている。また、前記段差部620によって形成される空間部の壁面にハーネス固定部506が形成され、このハーネス固定部506はハーネスストッパ602とともに前記ハーネス600を挟持している。
また、上述した実施例では、ハーネス600のハーネス固定部506およびハーネスストッパ602以降の延在部において、自由な方向に引き回しができるように、前記ハーネス固定部506およびハーネスストッパ602に該ハーネス600を挟持する溝506aの他に該溝506aよりも大きな径を有する溝506bを形成するようにしたものである(図17参照)。しかし、ハーネス600の引き回し方向が予め確定しているような場合には、たとえば、簡略的に示す図21のように、ハーネス固定部506およびハーネスストッパ602の該ハーネス600を挟持させる溝として該ハーネス600の引き回し方向に一致した指向性をもたせた溝506cを形成するようにしてもよい。
この場合、図16にて説明したように、アウターケース500に固定されるフランジ606の部分と前記ハーネス固定部506(ハーネスストッパ602)の間のハーネス600はアウターケース500の表面から高さh1が確保されて離間されていることに変わりはない。アウターケース500とハーネス600との摩擦を防ぐためである。
また、上述した実施例では、ハーネス600を保持するハーネス固定部506およびハーネスストッパ602は電動ブレーキ装置(アウターケース500)に形成したものである。しかし、前記電動ブレーキ装置とは別個の機構であって該電動ブレーキ装置と位置的に固定された関係にある機構に形成するようにしてもよい。たとえば、簡略的に示す図22のように、電動ブレーキ装置に近接して配置されたたとえばサスペンション部品630に前記ハーネス固定部506を形成し、該電動ブレーキ装置のアウターケース500から引き回わされるハーネス600を該ハーネス固定部506の個所でハーネスストッパ602によって挟持させるように構成するようにしてもよい。
また、上述した実施例において、ハーネス600を固定するハーネス固定部506とハーネスストッパ602は、それらの対向面にそれぞれハーネス600を配置させる溝を形成して構成したものである(図16参照)。しかし、たとえば図23に示すように、ハーネス固定部506側のみに溝を形成しハーネスストッパ602側には該溝を形成しないように構成してもよい。この場合、ハーネスストッパ602は簡易な平板状の部材として構成できる効果を奏する。
また、たとえば、図24、および図25に示すように、ハーネス600に予めハーネス被固定部を取り付けた状態で形成しておき、該ハーネス被固定部をアウターケース500に形成されたハーネス固定部506に固定させることによって、図16に示したハーネス固定部506とハーネスストッパ602と同様な機能をもたせるようにしてもよい。
ここで、図24、および図25は、たとえば、いずれもハーネス固定部506の高さを最小限に抑えた構成としたものとなっている。上述したように、ハーネス600に取り付けられたフランジ606の前記突壁部305aへのボルト614c、614dによる固定を容易にさせるためである。
図24に示すハーネス被固定部640a、640bは、一方のハーネス被固定部640aが平板状の部材、他方のハーネス被固定部640bがハーネス600の周囲の大部分を囲む円弧形状の部材からなり、それぞれの各端部で互いに接合されているとともに、これら接合部においてねじ孔を有して構成されている。なお、ハーネス600はハーネス被固定部640a、640bに対してその軸方向に摺動できない程度に該ハーネス被固定部640a、640bによって押圧されている。このハーネス被固定部640a、640bは、その平板状の部材640aが該ハーネス固定部506に直接対向して配置されることによって、ハーネス固定部506に取り付けられるようになっている。該ハーネス被固定部640a、640bのハーネス固定部506への固定はたとえばねじ612a、612bによってなされるようになっている。
また、図25に示すハーネス被固定部640a、640bは、ハーネス600の周囲の一方の半分を囲む円弧状の部材640aと、他方の半分を囲む円弧状の部材640bからなり、それぞれの各端部で接合されているとともに、これら接合部においてねじ孔を有して構成されている。この場合、ハーネス固定部506は、前記ハーネス被固定部640a、640bとの固定部(ネジ孔部)の間の領域にあって該ハーネス600が位置づけられる凹陥部650が形成されて構成されている。その他の構成は、図24に示した構成の場合と同様である。
上述した各実施例はそれぞれ単独に、あるいは組み合わせて用いても良い。それぞれの実施例での効果を単独であるいは相乗して奏することができるからである。
EMB……電動ブレーキ装置、DL……ディスクロータ、DMP……駆動機構部、DCP……駆動回路部、VT……バッテリ、ECU(1)……上位制御回路、ECU(2)……下位制御回路、PWL……電源ライン、DL……データ信号線、IVC……インバータ回路、TM……端子、TM10……パーキングブレーキ用ソレノイドの端子、TM12……三相端子、TM14……温度センサの端子、TM16……回転角センサの端子、TM18……推力センサの端子、TH……透孔、TH10……端子TM10が挿通される透孔、TH12……端子TM12が挿通される透孔、TH14……端子TM14が挿通される透孔、TH16……端子TM16が挿通される透孔、TH18……端子TM18が挿通される透孔、TMI……端子、WL……配線層、PR……突起体、DNT……凹陥部、PRJ……突起部、EPL……部品搭載領域、TMA10……端子、THA12……透孔、THG10、THG14、THG15、THG18……端子孔群、EP……電子部品、ASA、ASB……アセンブリ、10、12……車軸、15……ブレーキペダル、42……電動モータ、44……減速機、46……回転直動機構、48……ピストン、50……パーキングブレーキ機構(PKB)、50’……PKBソレノイド、52……回転角検出センサ、54……推力センサ、56……モータ温度センサ、66……スラストプレート、100……筐体、100a……枠体、102……スラストプレート、104……推力センサ、110……電源回路、112……中央制御回路(CPU)、114……VCC高電圧検知回路、116……フェールセーフ回路、118……三相モータインバータ回路、120……リレー制御回路、122……フィルタ回路、124……CAN通信インターフェース回路、126……推力センサインターフェース回路、128……回転角検出センサインターフェース回路、130……温度センサインターフェース回路、132……三相モータプリドライバ回路、134……相電流モニタ回路、136……相電圧モニタ回路、138……PKBソレノイドドライバ回路、140……監視用制御回路、142……記憶回路、200……インターフェースモジュール、202……シール、202a……溝、204a、204b、204c、204d……大径孔、206a、206b、206c、206d……小径孔、208a、208b……突柱体、210……段差部、300……インナーケース、302……シール、304a……突壁部、304a、304b、304c、304d……大径孔、305……壁部、305a……突壁部、306……透孔、301a、301b……ねじ孔、400……絶縁シート、402……金属板、404……制御回路基板、406……電子部品、408……パワーモジュール、500……アウターケース、502……シール、502a……溝、504……開口部、505……壁部、506……ハーネス固定台、506a、506b……溝、507a、507b……ねじ孔、508……突出体、502a、502b、502c、502d……大径孔、600……ハーネス、602……ハーネスストッパ、606……フランジ、606a……筒体、610……ケース状部材、611a、611b……ねじ、620……段差部、630……サスペンション部品、640a、640b……ハーネス被固定部、650……凹陥部、700a〜700d……ボルト、800……カバー。