JP2007269793A - 安定化されたインターフェロン−γ組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 温血動物由来の血清アルブミンを含有せず、少なくともインターフェロン−γ、糖および/または糖アルコール、SH基を有する化合物またはその薬学的に許容される塩、および親水性高分子を含むインターフェロン−γの組成物。
【選択図】 なし
Description
インターフェロン−γをはじめとするタンパク質成分は、通常の保存状態では不安定な物質であり、インターフェロン−γは特に凝集を起こし易いという問題を有するために、種々の安定化方法が試みられている。例えば、特許文献1には、安定化剤としてタンパク質の凝集抑制作用等を有するヒト血清アルブミン(以下、HSA)を配合することで、安定なインターフェロン−γ組成物が得られることが記載されている。特許文献2には、糖および/または糖アルコールならびにアミノ酸を組み合わせて配合することで、安定なインターフェロン−γ組成物が得られることが記載されている。特許文献3には、糖類および疎水性アミノ酸、要すれば界面活性剤を配合することで着色を防止したインターフェロン−γ組成物が開示されている。特許文献4には、インターフェロン−γ以外の生理活性タンパク質を含む医薬組成物として、ポリエチレングリコールならびに、糖、糖アルコール、アミノ酸、およびメチルアミンから選択されるいずれかを組み合わせて配合した、安定な乳酸デヒドロゲナーゼ組成物が開示されている。
(1)温血動物由来の血清アルブミンを含有せず、かつ少なくとも以下の成分
1)インターフェロン−γ、
2)糖および/または糖アルコール、
3)SH基を有する化合物またはその薬学的に許容される塩、ならびに、
4)親水性高分子
を含んだ医薬組成物。
(2)糖および/または糖アルコールがグルコース、マンノース、ソルボース、キシロース、マルトース、ラクトース、フルクトース、スクロース、デキストラン、プルラン、デキストリン、シクロデキストリン、可溶性デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、カルボキシメチルセルロース−Na、マンニトール、イノシトール、ズルシトール、キシリトール、アラビトール、ラフィノース、エリスリトール、マルチトール、ラクチトール、パラチニット、またはトレハロースである(1)に記載の医薬組成物。
(3)糖および/または糖アルコールがマルトース、マンニトール、ラクトース、スクロース、またはラフィノースである(1)または(2)に記載の医薬組成物。
(4)糖および/または糖アルコールがマルトース、スクロース、またはラフィノースである(1)〜(3)のいずれかに記載の医薬組成物。
(5)糖および/または糖アルコールがマルトースである(1)〜(4)のいずれかに記載の医薬組成物。
(6)SH基を有する化合物がシステイン、チオグリコール酸、チオシアン酸、チオ硫酸、チオリンゴ酸、2−メルカプトベンゾイミダゾール、アリルメルカプタン、ベンゼンチオール、ベンジルメルカプタン、2,3−ブタンジチオール、1−ブタンチオール、2−ブタンチオール、シクロヘキシルメルカプタン、シクロペンタンチオール、1,2−ジメルカプトエタン、2,3−ジメルカプトプロパノール、2,5−ジメチル−3−フランチオール、3,3−ジメチルブタンチオール、ドデシルメルカプタン、エタンチオール、フルフリルメルカプタン、ヘプチルメルカプタン、ヘキサデカンチオール、1,6−ヘキサンジチオール、イソアミルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、3−((メルカプト−1−メチルプロピル)チオ)2−ブタノール、3−メルカプト−2−ブタノール、4−メルカプト−4−メチル−2−ペンタノン、2−メルカプトエタノール、2−メルカプトメチルピラジン、メルカプトピナン、4−メトキシ−2−メチルブタン−2−チオール、メチルメルカプタン、2−メチル−3−フランチオール、2−メチル−3−テトラヒドロフランチオール、2−メチル−4,5−ジヒドロ−3−フランチオール、p−メチルベンジルメルカプタン、3−メチル−2−ブタンチオール、2−メチルブタンチオール、2−メチルプロパン−2−チオール、2−ナフタレンチオール、1,9−ノナンジチオール、1,8−オクタンジチオール、オクチルメルカプタン、2,4,4,6,6−ペンタメチル−2−ヘプタンチオール、ペンタン−2−チオール、ペンタン−1−チオール、2−フェニルエタン−1−チオール、1−p−メンテン−8−チオール、1,2−プロパンジチオール、プロピルメルカプタン、ピラジンエタンチオール、2−メルカプトメチルピリジン、ターピニルメルカプタン、2−テニルメルカプタン、1−(2−チエニル)エチルメルカプタン、チオゲラニオール、チオリナロール、o−トルエンチオール、1,4−ブタンジチオール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メチル−3−(2−メチル−2(4),5−ジヒドロ−3−フラニルチオ)−3−テトラヒドロフランチオール、2−メチル−4,5−ジヒドロフラン−3−チオール、2−チアゾリン−2−チオール、3−メルカプト−1−ヘキサノール、メルカプトメチルブタノール、3−メルカプト−2−メチルペンタノール、3−メルカプト−3−メチルブタノール、4−エトキシ−2−メチル−2−ブタンチオール、エタンジチオール、ヘキサンチオール、イソブチルチオール、メルカプトアセトアルデヒドジエチルアセタール、プレニルメルカプタン、1,1−ジメチルヘプタンチオール、ジメチルチオフェノール、または(S)−1−メトキシ−3−ヘプタンチオールである(1)〜(5)のいずれかに記載の医薬組成物。
(7)SH基を有する化合物がシステイン、チオグリコール酸、チオシアン酸、チオ硫酸、チオリンゴ酸、または2−メルカプトベンゾイミダゾールである(1)〜(6)のいずれかに記載の医薬組成物。
(8)SH基を有する化合物またはその薬学的に許容される塩がL−システイン、L−システイン塩酸塩、チオグリコール酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、チオ硫酸ナトリウム、チオリンゴ酸ナトリウム、または2−メルカプトベンゾイミダゾールである(1)〜(7)のいずれかに記載の医薬組成物。
(9)SH基を有する化合物がシステインである(1)〜(7)のいずれかに記載の医薬組成物。
(10)親水性高分子がポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、またはポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールである(1)〜(9)のいずれかに記載の医薬組成物。
(11)親水性高分子が平均分子量380〜10000のポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、酸化エチレンの平均付加モル数45〜65のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、または酸化エチレンおよび酸化プロピレンの平均重合度がそれぞれ150〜170、25〜35のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールである(1)〜(10)のいずれかに記載の医薬組成物。
(12)親水性高分子が平均分子量380〜3800のポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、酸化エチレンの平均付加モル数45〜65のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、または酸化エチレンおよび酸化プロピレンの平均重合度がそれぞれ150〜170、25〜35のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールである(1)〜(11)のいずれかに記載の医薬組成物。
(13)親水性高分子がポリエチレングリコールである(1)〜(10)のいずれかに記載の医薬組成物。
(14)親水性高分子が平均分子量380〜3800のポリエチレングリコールである(1)〜(13)のいずれかに記載の医薬組成物。
(15)親水性高分子が平均分子量2600〜3800のポリエチレングリコールである(1)〜(14)のいずれかに記載の医薬組成物。
(16)凍結乾燥製剤である(1)〜(15)のいずれかに記載の医薬組成物。
(10’)親水性高分子がポリエチレングリコールまたはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルである(1)〜(9)のいずれかに記載の医薬組成物。
(11’)親水性高分子が平均分子量380〜10000のポリエチレングリコール、またはモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンである(1)〜(9)および(10’)のいずれかに記載の医薬組成物。
(12’)親水性高分子が平均分子量380〜3800のポリエチレングリコール、またはモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンである(1)〜(9)、(10’)、および(11’)のいずれかに記載の医薬組成物。
(13’)親水性高分子がポリエチレングリコールである(1)〜(9)および(10’)〜(12’)のいずれかに記載の医薬組成物。
(14’)親水性高分子が平均分子量380〜3800のポリエチレングリコールである(1)〜(9)および(10’)〜(13’)のいずれかに記載の医薬組成物。
(15’)親水性高分子が平均分子量2600〜3800のポリエチレングリコールである(1)〜(9)および(10’)〜(14’)のいずれかに記載の医薬組成物。
(16’)凍結乾燥製剤である(1)〜(9)および(10’)〜(15’)のいずれかに記載の医薬組成物。
(17)温血動物由来の血清アルブミンを含有せず、かつ少なくとも以下の成分
1)インターフェロン−γ、
2)糖および/または糖アルコール、
3)SH基を有する化合物またはその薬学的に許容される塩、ならびに、
4)親水性高分子
を含んだ溶液を凍結乾燥する工程を含むことを特徴とする、医薬組成物の製造方法。
(18)温血動物由来の血清アルブミンの非存在下に、少なくとも糖および/または糖アルコール、SH基を有する化合物またはその薬学的に許容される塩、ならびに親水性高分子を共存させることを特徴とする、インターフェロン−γの凝集化抑制方法。
本発明のインターフェロン−γは、天然由来または遺伝子組換えヒトインターフェロン−γの全てを用いることができるが、遺伝子組換えヒトインターフェロン−γが好ましい。特に組換えヒトインターフェロン−γ1aが好ましい。
本発明の医薬組成物を溶液として使用する場合、溶液1mL中にインターフェロン−γは、1〜3000μg、好ましくは10〜2000μg、より好ましくは50〜1200μg含有すればよい。また、本発明の医薬組成物を固形剤として使用する場合、固形剤全量に対しインターフェロン−γは、0.001〜3w/w%、好ましくは0.01〜2w/w%、より好ましくは0.05〜1.2w/w%含有すればよい。インターフェロン−γ含有量が前記含有量よりも少なければ、薬効が十分に発揮されない可能性があり、また、前記含有量よりも多ければ、溶液中にインターフェロン−γが完全に溶解しない恐れがあるが、本発明の効果を損なわない限りはこれらの範囲に限定されない。
前記の糖および/または糖アルコールは、単独または混合物で用いることができる。含有量は特に限定されるものではなく、組成物の溶液に溶解可能でインターフェロン−γの安定性を高める量であればよい。インターフェロン−γに対する糖および/または糖アルコールの含有割合は重量比で1〜2000倍、好ましくは5〜1750倍、より好ましくは20〜1500倍であればよい。また、本発明の医薬組成物を溶液として使用する場合、組成物の溶液1mL中に糖および/または糖アルコールを5〜500mg、好ましくは10〜250mg、より好ましくは20〜200mg添加すればよい。前記含有量よりも少なければ、インターフェロン−γを安定化することができない恐れがあり、多ければ、組成物全量に対するインターフェロン−γ含量が相対的に低下し、多量のインターフェロン−γの組成物を投与しなければ、薬効が生じない可能性がある。
本発明において、薬学的に許容される塩とは、例えば塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、フッ化水素酸、臭化水素酸等の鉱酸の塩;ギ酸、酢酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、フマール酸、マレイン酸、コハク酸等の有機酸の塩;アンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム等の有機塩基の塩;ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の塩またはカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の塩等を挙げることができる。好ましくは塩酸塩である。
前記のSH基を有する化合物またはその薬学的に許容される塩の添加量は特に限定されるものではなく、組成物の溶液に溶解可能でインターフェロン−γの安定性を高める量であればよい。インターフェロン−γに対するSH基を有する化合物の含有割合は重量比で0.001〜2000倍、好ましくは0.01〜1500倍、より好ましくは0.02〜1000倍であればよい。また、本発明の医薬組成物を溶液として使用する場合、組成物の溶液1mL中にSH基を有する化合物またはその薬学的に許容される塩を0.001〜250mg、好ましくは0.005〜125mg、より好ましくは0.01〜100mg添加すればよい。前記添加量よりも少なければ、インターフェロン−γを安定化できない恐れがあり、多ければ、組成物全量に対するインターフェロン−γの含量が相対的に低下し、多量のインターフェロン−γを含有する組成物を投与しなければ、薬効が生じない可能性があるが、本発明の効果を損なわない限りはこれらの範囲に限定されない。
上記、糖および/または糖アルコールとSH基を有する化合物またはその薬学的に許容される塩の含量の比率は、SH基を有する化合物に対し、重量比で糖および/または糖アルコールが1〜10000倍、好ましくは5〜5000倍、より好ましくは10〜2000倍である。
緩衝剤の添加量は用いる緩衝剤の種類によっても異なるが、インターフェロン−γが安定に存在できるpH、すなわち、組成物の溶液のpHを5.5〜8に保持するのに必要な量を用いればよい。具体的には、インターフェロン−γに対する緩衝剤の含有割合は重量比で10〜5000倍、好ましくは20〜2000倍、より好ましくは50〜1000倍あればよい。本発明の医薬組成物を溶液として使用する場合、組成物の溶液1mL中に緩衝剤を1〜200mg、好ましくは2.5〜150mg、より好ましくは5〜100mg添加すればよい。前記量よりも少なければ、組成物溶液製造時または固形剤を蒸留水に再溶解する時のpH変動が大きくなる恐れがあり、多ければ、組成物全量に対するインターフェロン−γの含量が相対的に低下し、多量のインターフェロン−γの組成物を投与しなければ、薬効が生じない可能性があるが、本発明の効果を損なわない限りはこれらの範囲に限定されない。
本発明の医薬組成物は、その形態に応じ、製剤学上許容される添加物を含有しうる。例えば、注射剤の場合、フェノール、クレゾール等の保存剤、亜硫酸塩、ピロ亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等の酸化防止剤、ベンジルアルコール、クロロブタノール等の無痛化剤、塩化ナトリウム、グリセリン等の等張化剤を添加してもよい。
安定化剤として、温血動物由来の血清アルブミン、例えばヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ブタ血清アルブミン等を含有した場合、前述した様に副作用を生じる可能性があるが、アルブミンであっても遺伝子組換えアルブミンであれば、上記副作用を生じる可能性が低く、組成物の添加剤として含有する場合もありうる。遺伝子組換えアルブミンの添加は、インターフェロン−γの安定性低下の防止に有用である。インターフェロン−γに対する遺伝子組換えアルブミンの含有割合は、重量比で0.5〜500倍、好ましくは1〜200倍、より好ましくは2〜100倍であればよい。本発明の医薬組成物を溶液として使用する場合、組成物の溶液1mL中に0.1mg〜100mg、好ましくは0.25mg〜50mg、より好ましくは0.5mg〜25mgを添加すればよい。
本発明の医薬組成物の含有成分の好ましい組合せとして、1)インターフェロン−γ、マルトース、L−システインまたはその薬学的に許容される塩、マクロゴール4000、要すればリン酸緩衝液、2)インターフェロン−γ、スクロース、L−システインまたはその薬学的に許容される塩、マクロゴール4000、要すればリン酸緩衝液、3)インターフェロン−γ、マルトース、L−システインまたはその薬学的に許容される塩、マクロゴール400、要すればリン酸緩衝液、4)インターフェロン−γ、スクロース、L−システインまたはその薬学的に許容される塩、マクロゴール400、要すればリン酸緩衝液、5)インターフェロン−γ、マルトース、L−システインまたはその薬学的に許容される塩、ポリソルベート80、要すればリン酸緩衝液、6)インターフェロン−γ、スクロース、L−システインまたはその薬学的に許容される塩、ポリソルベート80、要すればリン酸緩衝液の組合せの医薬組成物、7)インターフェロン−γ、マルトース、L−システインまたはその薬学的に許容される塩、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、要すればリン酸緩衝液、8)インターフェロン−γ、スクロース、L−システインまたはその薬学的に許容される塩、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、要すればリン酸緩衝液、9)インターフェロン−γ、マルトース、L−システインまたはその薬学的に許容される塩、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、要すればリン酸緩衝液、10)インターフェロン−γ、スクロース、L−システインまたはその薬学的に許容される塩、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、要すればリン酸緩衝液、11)インターフェロン−γ、マルトース、L−システインまたはその薬学的に許容される塩、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、要すればリン酸緩衝液、12)インターフェロン−γ、スクロース、L−システインまたはその薬学的に許容される塩、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、要すればリン酸緩衝液である。これら好ましい組合せの含有成分の含有量について、インターフェロン−γは、固形剤全量に対し0.001〜3w/w%、好ましくは0.01〜2w/w%、より好ましくは0.05〜1.2w/w%、インターフェロン−γに対するマルトースまたはスクロースの含有割合は重量比で1〜2000倍、好ましくは5〜1750倍、より好ましくは20〜1500倍、インターフェロン−γに対するL−システインまたはその薬学的に許容される塩の含有割合は重量比で0.01〜2000倍、好ましくは0.1〜1500倍、より好ましくは0.2〜1000倍、インターフェロン−γに対するマクロゴール4000、マクロゴール400、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、またはポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコールの含有割合は、重量比で0.01〜300倍、好ましくは0.05〜200倍、より好ましくは0.1〜100倍、リン酸緩衝液を添加するならば、pH5.5〜8に保持するのに必要な含有割合で添加すればよいが、具体的にはインターフェロン−γに対する緩衝液の含有割合は、重量比で10〜5000倍、好ましくは20〜2000倍、より好ましくは50〜1000倍であればよい。本発明の医薬組成物を溶液として使用する場合、インターフェロン−γは、組成物の溶液1mL中に1〜3000μg、好ましくは10〜2000μg、より好ましくは50〜1200μg、マルトースまたはスクロースは、組成物の溶液1mL中に5〜500mg、好ましくは10〜250mg、より好ましくは20〜200mg、L−システインまたはその薬学的に許容される塩は、組成物の溶液1mL中に0.01〜250mg、好ましくは0.05〜125mg、より好ましくは0.1〜100mg、マクロゴール4000、マクロゴール400、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、またはポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコールは、組成物の溶液1mL中に0.02mg〜50mg、好ましくは0.05mg〜20mg、より好ましくは0.1mg〜10mg、リン酸緩衝液を添加するならば、pH5.5〜8に保持するのに必要な含有割合で添加すればよいが、具体的には組成物の溶液1mL中に1〜200mg、好ましくは2.5〜150mg、より好ましくは5〜100mg添加すればよい。
本発明の医薬組成物は、インターフェロン−γの分解、およびインターフェロン−γの凝集を抑制する。また、組成物製造直後のインターフェロン−γの含量は経時保存後、例えば40℃、3か月間程度保存してもほとんど低下しない。
本発明のインターフェロン-γ含有医薬組成物の製造方法は、特に限定されないが、好ましくは以下のような方法で製造する。糖および/または糖アルコール、SH基を有する化合物またはその薬学的に許容される塩、ならびに親水性高分子の必要量を蒸留水に溶解した溶液に、インターフェロン−γ原液の適当量を加える。残りの蒸留水を加えて液量を調節し、組成物の溶液を製造後、無菌濾過、容器へ分注、次いで凍結乾燥させる。凍結乾燥は、上記調製した組成物の溶液を約−60℃〜約−10℃、好ましくは約−50℃〜約−40℃で急速凍結した後、要すれば、昇華熱を供給しながら、好ましくは48〜72時間、0.005〜1mbに保って所定含水量になるまで水分を昇華、除去し、要すれば窒素など不活性気体または乾燥空気を充填して、密栓する。
本発明の医薬組成物の使用方法は特に限定されるものではないが、非経口的に用いることが好ましい。注射剤として用いる際には、凍結乾燥された該組成物を注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖液、適当な点滴用輸液等に用時溶解して静脈内、筋肉内、皮下または皮内に投与する。また、本組成物に適当な担体、賦形剤等を加えて口、鼻、耳腔内投与等の局所投与製剤としてもよい。投与量としては、インターフェロン−γとして例えば一日あたり、25万〜1000万JRU(国内標準単位)/体表面積(m2)である。
以下に示す製造方法に準じて、表1に示す成分の組成物を製造し、インターフェロン−γ1aの凝集化の抑制効果を評価した。
(実施例1製剤の製造方法)
表1に本組成物の配合成分を示す。糖および/または糖アルコールとしては、マルトース、SH基を有する化合物としてはL−システイン塩酸塩、親水性高分子としてはポリソルベート80(モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.))、緩衝液としてはリン酸緩衝液を用いた。
所定量のマルトース一水和物、L−システイン塩酸塩一水和物、ポリソルベート80、リン酸一ナトリウム2水和物およびリン酸二ナトリウム12水和物を適量の注射用蒸留水に溶解した後、インターフェロン−γ1aを添加し、表記の濃度まで注射用蒸留水で希釈後,0.22μmのポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルターでろ過を行い,製剤溶液を調製した。
(単位:mg/mL)
(試験方法)
調製した製剤溶液2mLを分取し、振とうすることによりインターフェロン−γ1a凝集体を発生させた。この溶液を孔径0.22μmのPVDFフィルターでろ過を行い、凝集体を取り除いたものを検体Aとした。また、調製した製剤溶液2mLを分取し、振とうを行わずに孔径0.22μmのPVDFフィルターでろ過を行ったものを検体Bとした。
各検体について下記の条件で検体を調製し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分析を行い、インターフェロン−γ1aの含量を測定した。
含量測定検体(HPLC)調製方法
製剤溶液450μLにリン酸塩塩化物溶液を25μL、50mmol/L ジチオスレイトール溶液25μL加えて含量測定検体とする。
含量測定(HPLC)条件
装置 :Waters社製 2960 Alliance
カラム :(株)資生堂製 CAPCELL PAK C1 SG300 5μm
4.6mm×250mm
カラム温度 :30度
移動相A液 :水/トリフルオロ酢酸(1000/1)
移動相B液 :2−プロパノール/アセトニトリル/トリフルオロ酢酸
(900/100/1)
移動相A、移動相Bを用いて、表2に示すグラジエント法を実施
流速 :0.5mL/分
注入量 :20μL
サンプル温度:6度
検出波長 :220nm
測定時間 :70分
解析 :Waters社製 ミレニアム
測定対象 :インターフェロン−γ1a量
凝集体を除いたインターフェロン−γ1aの残存率%は以下の式で算出した。
残存率(%)=Pa/Pb×100
Pa:検体Aのインターフェロン−γ1a由来ピーク面積
Pb:検体Bのインターフェロン−γ1a由来ピーク面積
(試験結果)
評価、解析した結果を表3に示す。その結果、ポリソルベート80の添加によってインターフェロン−γ1a凝集体の発生を良好に抑制することが見出された。
以下に示す製造方法に準じて、表4に示す成分の組成物を製造し、インターフェロン−γ1aの凝集化の抑制効果を評価した。
(実施例2製剤の製造方法)
表4に本組成物の配合成分を示す。糖および/または糖アルコールとしては、マルトース、SH基を有する化合物としてはL−システイン塩酸塩、親水性高分子としてはマクロゴール4000(平均分子量2600〜3800のポリエチレングリコール)、緩衝液としてはリン酸緩衝液を用いた。
所定量のマルトース一水和物、L−システイン塩酸塩一水和物、マクロゴール4000、リン酸一ナトリウム2水和物およびリン酸二ナトリウム12水和物を適量の注射用蒸留水に溶解した後、インターフェロン−γ1aを添加し、表記の濃度まで注射用蒸留水で希釈後,0.22μmのPVDFフィルターでろ過を行い,製剤溶液を調製した。
(単位:mg/mL)
(試験方法)
実施例1の場合と同様に試験を行った。
(試験結果)
評価、解析した結果を表5に示す。その結果、マクロゴール4000の添加によってインターフェロン−γ1a凝集体の発生を良好に抑制することが見出された。
以下に示す製造方法に準じて、表4に示す成分の組成物を製造し、インターフェロン−γ1aの凝集化の抑制効果を評価した。
(実施例3製剤の製造方法)
表6および表7に本組成物の配合成分を示す。糖および/または糖アルコールとしては、マルトース、SH基を有する化合物としてはL−システイン塩酸塩、親水性高分子としてはマクロゴール400(平均分子量380〜420のポリエチレングリコール)、緩衝液としてはリン酸緩衝液を用いた。
所定量のマルトース一水和物、L−システイン塩酸塩一水和物、マクロゴール400、リン酸一ナトリウム2水和物およびリン酸二ナトリウム12水和物を適量の注射用蒸留水に溶解した後、インターフェロン−γ1aを添加し、表記の濃度まで注射用蒸留水で希釈後,0.22μmのPVDFフィルターでろ過を行い,製剤溶液を調製した。
(単位:mg/mL)
(単位:mg/mL)
(試験方法)
実施例1の場合と同様に試験を行った。
(試験結果)
評価、解析した結果を表8および表9に示す。その結果、マクロゴール400の添加によってインターフェロン−γ1a凝集体の発生を良好に抑制することが見出された。
以下に示す製造方法に準じて、表10に示す成分の組成物を製造し、インターフェロン−γ1aの凝集化の抑制効果を評価した。
(実施例4製剤の製造方法)
表10に本組成物の配合成分を示す。糖および/または糖アルコールとしては、マルトース、SH基を有する化合物としてはL−システイン塩酸塩、親水性高分子としてはポリエチレングリコール4000、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、またはポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、緩衝液としてはリン酸緩衝液を用いた。また上記組成物から親水性高分子を除いた物を比較例とした。
所定量のマルトース一水和物、L−システイン塩酸塩一水和物、上記のいずれかの親水性高分子、リン酸一ナトリウム2水和物およびリン酸二ナトリウム12水和物を適量の注射用蒸留水に溶解した後、インターフェロン−γ1aを添加し、表記の濃度まで注射用蒸留水で希釈後,0.22μmのポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルターでろ過を行い,製剤溶液を調製した。
(単位:mg/mL)
(試験方法)
調製した製剤溶液2mLをバイアルへ分取し、打栓を行った。インターフェロン−γ1a凝集体はバイアルを振とうすることにより発生させた。その後,各検体を目視により濁りの程度を確認した。
(試験結果)
目視の結果、親水性高分子を含まない比較例の製剤溶液はインターフェロン−γ1aの凝集に起因する濁りが確認された。一方、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、およびポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコールのいずれかを含む実験例の製剤溶液はいずれも濁りが認められず、実施例2で凝集抑制効果を確認したマクロゴール4000を含む製剤溶液と同程度に澄明が保たれた。すなわち、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、またはポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコールの添加によってインターフェロン−γ1a凝集体の発生を良好に抑制することが見出された。
以下に示す製造方法に準じて表6に示す成分の凍結乾燥製剤を製造し、インターフェロン−γ1a凍結乾燥製剤安定性について評価を行った。
(実施例5製剤の製造方法)
表11に本組成物の配合成分を示す。糖および/または糖アルコールとしては、マルトース、SH基を有する化合物としてはL−システイン塩酸塩、親水性高分子としてはマクロゴール4000、緩衝液としてはリン酸緩衝液を用いた。
所定量のマルトース一水和物、L−システイン塩酸塩一水和物、マクロゴール4000、リン酸一ナトリウム2水和物およびリン酸二ナトリウム12水和物を適量の注射用蒸留水に溶解した後、インターフェロン−γ1aを添加し、表記の濃度まで注射用蒸留水で希釈後,0.22μmのPVDFフィルターでろ過を行い,製剤溶液を調製した。各製剤溶液を3mL容量のガラスバイアルに分注し、表12に示す凍結乾燥条件によって凍結乾燥を行った。
(単位:mg/mL)
(試験方法)
凍結乾燥直後の凍結乾燥品および40℃/75%RHで一定期間保存した検体について,注射用蒸留水で再溶解した後,実施例1と同様の含量測定検体(HPLC)調製方法、含量測定(HPLC)条件で測定を行い、経時的な含量変化について試験を行った。
なお、経時的な含量変化については以下に示す式でイニシャルに対する残存率(%)として評価した。
対イニシャル残存率(%)
対イニシャル残存率(%)=Pc/Pd×100
Pc:イニシャル凍結乾燥製剤におけるインターフェロン−γ1a由来ピーク面積
Pd:保存後凍結乾燥製剤におけるインターフェロン−γ1a由来ピーク面積
(試験結果)
評価、解析した結果を表13に示す。その結果、経時的に安定な凍結乾燥製剤を製することができた。
Claims (9)
- 温血動物由来の血清アルブミンを含有せず、かつ少なくとも以下の成分
1)インターフェロン−γ、
2)糖および/または糖アルコール、
3)SH基を有する化合物またはその薬学的に許容される塩、ならびに、
4)親水性高分子
を含んだ医薬組成物。 - 糖および/または糖アルコールがマルトースまたはスクロースである請求項1記載の医薬組成物。
- SH基を有する化合物がシステインである請求項1記載の医薬組成物。
- 親水性高分子がポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、またはポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールである請求項1記載の医薬組成物。
- 親水性高分子が平均分子量380〜3800のポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、酸化エチレンの平均付加モル数45〜65のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、または酸化エチレンおよび酸化プロピレンの平均重合度がそれぞれ150〜170、25〜35のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールである請求項4記載の医薬組成物。
- 糖および/または糖アルコールがマルトースまたはスクロースであり、SH基を有する化合物がシステインであり、親水性高分子が平均分子量380〜3800のポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、酸化エチレンの平均付加モル数45〜65のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、または酸化エチレンおよび酸化プロピレンの平均重合度がそれぞれ150〜170、25〜35のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールである請求項1記載の医薬組成物。
- 凍結乾燥された請求項1〜6のいずれかに記載の医薬組成物。
- 温血動物由来の血清アルブミンを含有せず、かつ少なくとも以下の成分
1)インターフェロン−γ、
2)糖および/または糖アルコール、
3)SH基を有する化合物またはその薬学的に許容される塩、ならびに、
4)親水性高分子
を含んだ溶液を凍結乾燥する工程を含むことを特徴とする、医薬組成物の製造方法。 - 温血動物由来の血清アルブミンの非存在下に、少なくとも糖および/または糖アルコール、SH基を有する化合物またはその薬学的に許容される塩、ならびに親水性高分子を共存させることを特徴とする、インターフェロン−γの凝集化抑制方法。
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