JP2007269535A - 溶融スラグの処理方法及び当該処理方法により得られた溶融スラグを骨材として用いたモルタルまたはコンクリート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 溶融スラグの処理方法は、溶融スラグに、生コンスラッジ水を散水し、溶融スラグに含有される金属アルミニウムを反応処理する方法である。前記生コンスラッジ水は、生コン工場またはコンクリート二次製品工場から発生する生コンスラッジ水が利用できる。
【選択図】 図1
Description
しかし、溶融スラグを前処理せずにそのまま骨材として使用すると、発生した気泡が混入し、モルタルまたはコンクリートの強度低下や美観低下を招くため、従来の再利用システムでは、モルタルまたはコンクリート用骨材として溶融スラグを粉砕して得られた骨材のみを使用することはできなかった。
このような使用では、溶融スラグの十分な再利用が図れず、更には、通常の骨材に溶融スラグの骨材を混合使用したとしても、モルタルやコンクリートの十分な強度を確保することは困難で、またコンクリート二次製品の側面に発現した孔(アバタ)により美観の低下を招いていた。
溶融スラグをモルタルまたはコンクリート用骨材として使用する場合には、溶融スラグ中の金属アルミニウムが、モルタルまたはコンクリート中の水酸化カルシウムおよび水と反応して水素ガスを発生する恐れがあるからである。
その結果、モルタルまたはコンクリート中に、水素ガス発生に因る不必要な孔が生じ、品質が均一とならず、硬化後の強度を低下させ、またコンクリート二次製品の美観の低下を招いていた。
すなわち、消石灰水溶液に溶融スラグを混合し、次の化学式;
2Al+2Ca(OH)2+2H2O→CaO・Al2O3+3H2
による反応を起こさせて、予め金属アルミニウムの不動体化を図るものであり、しかる後、当該処理が終了した溶融スラグをモルタルまたはコンクリート用骨材として使用するものである。
具体的には、溶融スラグをモルタルまたはコンクリート用骨材として使用する前に、溶融スラグにリン酸ソーダを加えて金属アルミニウムの表面に可溶性錯体を形成させてアルミニウムイオンを封鎖し、金属アルミニウムを不動態化することによって水素ガスの発生を抑制する処理方法である。
更に、リン酸ソーダによる前処理を実施する上記処理方法では、処理済みの金属アルミニウムに未反応のリン酸が付着し、モルタルまたはコンクリート中に骨材としての溶融スラグとともにリン酸が混入するおそれがあり、かかるリン酸がモルタルまたはコンクリート中に混入すると、リン酸の存在により、モルタルまたはコンクリートの強度低下を招くという問題点がある。
好適には、前記本発明の溶融スラグの処理方法において、前記生コンスラッジ水は生コンクリート(生コン)工場またはコンクリート二次製品工場から発生する生コンスラッジ水であることを特徴とする。
更に好適には、前記本発明の溶融スラグの処理方法において、前記生コンスラッジ水は生コンスラッジ水の上澄み水であることを特徴とする。
また、本発明のモルタルまたはコンクリートは、上記本発明の溶融スラグ処理方法により得られた溶融スラグを骨材として用いていることを特徴とする。
しかし、本発明の溶融スラグ処理方法は、溶融スラグをモルタルまたはコンクリート用骨材として使用する前に、溶融スラグに生コンスラッジ水を散水し、予め金属アルミニウムをスラッジ水中の水酸化カルシウムおよび水と反応させることにより不動態化させて、モルタルまたはコンクリート中で水素ガスが発生することを予防することができるので、極めて簡便で有効に溶融スラグの処理を可能とするものである。
一方、本発明の溶融スラグ処理方法では、かかる溶融スラグの前処理を、溶融スラグを骨材として使用するモルタルまたはコンクリート製造工場には必然的に発生する生コンスラッジ水、好適にはその上澄み水によって行うため、予め敢えて処理溶液を準備する必要がなく、従って、本発明においては、生産性も良好で経済性的に、溶融スラグを前処理して、モルタルまたはコンクリート用骨材として利用することが可能となる。
本発明の溶融スラグ処理方法は、溶融スラグに、生コンスラッジ水を散水して、溶融スラグに含有される金属アルミニウムを反応させて処理するものである。
本発明の溶融スラグ処理方法は、溶融スラグを、モルタルまたはコンクリート用骨材として使用する前に、従来のような別途準備される消石灰水溶液にて溶融スラグを前処理する代わりに、また、生コンスラッジ水に溶融スラグを浸漬する代わりに、溶融スラグに生コンスラッジ水の上澄み水を散水することにより、含有される金属アルミニウムを反応させて不動態化を図り、モルタルまたはコンクリート中での水素ガスの発生を予防するものである。
溶融スラグは、産業廃棄物または固体廃棄物(例、都市ごみや下水汚泥)等を焼却して得られるものや、石炭火力発電からの溶融スラグ等が使用でき、特に限定されるものではない。
従って、溶融スラグの種類は問われず、金属アルミニウムが含有されれば、任意の溶融スラグを対象とするものであり、1種のみならず、2種以上の種類の溶融スラグを混合して用いることもできる。
したがって、かかる生コンスラッジ水、特にその上澄み液には、溶融スラグ中の金属アルミニウムを不動態化するのに十分な水酸化カルシウムが(Ca(OH)2)が溶解している。
更に好適には、前記生コンスラッジ水として、水酸化カルシウムが溶解している生コンスラッジ水の上澄み水を用いることができる。
2Al+2Ca(OH)2+2H2O→CaO・Al2O3+3H2
を、十分におこさせる。
溶融スラグに生コンスラッジ水を散水する時間や散水量比は、特に限定されず、適宜条件に応じて任意に決定することができるものである。
このような処理済み溶融スラグを骨材として用いて、モルタルまたはコンクリートを製造しても、金属アルミニウムが既に反応しており、アルカリ雰囲気下においても水素が発生することはない。
従って、モルタルまたはコンクリート中に不必要な水素発生痕である孔(アバタ)を生ぜず、均一な品質のモルタルまたはコンクリートを得ることができる。
また、本発明の方法は、廃棄物であった溶融スラグを大量かつ安定的に使用することができ、有効な廃棄物の再利用を図ることを可能とするものである。
溶融スラグをモルタル用骨材として用いる前処理方法の比較をするために、モルタル中での水素ガスの発生度合いを測定した。かかる水素ガスの発生の度合いの測定は、日本工業標準調査会のTR A 0016「コンクリート用溶融スラグ細骨材(案)」の附属書1に規定されている「溶融スラグ細骨材を用いたモルタルの膨張率試験方法」により、モルタルの膨張率を測定することにより実施した。
なお、当該試験には、粗粒率(F.M)が3.42で表1に示す化学成分を有する溶融スラグを用いた。
前処理方法は、以下の3種類とした。
(1) 溶融スラグを前処理しない
(2) 溶融スラグを1日間生コンスラッジ水の上澄み水中に浸漬(液固比で、10:1)
(3) 溶融スラグに、毎日、溶融スラグと等重量の生コンスラッジ水を7日間散水
なお、生コンスラッジ水は表2に示す化学成分及びpHを有するものを用いた。
上記各処理済み溶融スラグを骨材として用いて、各モルタルを調製した。当該各モルタルの調製方法は、上記日本工業標準調査会のTR A 0016「コンクリート用溶融スラグ細骨材(案)」の附属書1に規定されている「溶融スラグ細骨材を用いたモルタルの膨張率試験方法」によるモルタルの調製方法に準じて製造した。
図1に、前処理しない(前処理方法(1))溶融スラグを骨材として用いたモルタル、1日間生コンスラッジ水の上澄み水中に浸漬(液固比で、10:1)(前処理方法(2))させた溶融スラグを骨材として用いたモルタル、毎日、溶融スラグと等重量の生コンスラッジ水を7日間散水(前処理方法(3))した溶融スラグを骨材として用いたモルタルの各膨張率を示す。
モルタルの膨張率が大きいほど、水素ガスの発生量が多いことを表す。
また、溶融スラグを生コンスラッジ上澄み水中に浸漬させた場合と、溶融スラグに生コンスラッジ上澄み水を散水した場合とでは、ほぼ同等に、モルタルの膨張率が十分に小さく、水素ガスの発生を抑制できることが明らかである。
すなわち、溶融スラグに生コンスラッジ上澄み水を散水することによって、生コンスラッジ水をプールしたり付帯設備を設ける必要なく、モルタル中における溶融スラグからの水素ガスの発生を有効に防止できたことが明らかである。
また、従来廃棄物であった溶融スラグを大量かつ安定的に使用することができるため、廃棄物の有効な再利用が図れる。
Claims (4)
- 溶融スラグに生コンスラッジ水を散水し、溶融スラグに含有される金属アルミニウムを反応処理することを特徴とする、溶融スラグの処理方法。
- 請求項1記載の溶融スラグの処理方法において、前記生コンスラッジ水は、生コン工場またはコンクリート二次製品工場から発生する生コンスラッジ水であることを特徴とする、溶融スラグの処理方法。
- 請求項1または2記載の溶融スラグの処理方法において、前記生コンスラッジ水は生コンスラッジ水の上澄み水であることを特徴とする、溶融スラグの処理方法。
- 請求項1〜3記載の溶融スラグの処理方法によって得られた溶融スラグを骨材として用いたモルタルまたはコンクリート。
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JP2006096546A JP2007269535A (ja) | 2006-03-31 | 2006-03-31 | 溶融スラグの処理方法及び当該処理方法により得られた溶融スラグを骨材として用いたモルタルまたはコンクリート |
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JPH1036180A (ja) * | 1996-07-22 | 1998-02-10 | Taisuke Matsufuji | 軽量コンクリートおよびその製造方法 |
JP2003260438A (ja) * | 2002-03-11 | 2003-09-16 | National Institute Of Advanced Industrial & Technology | 溶融スラグの処理方法、その装置及び無機構造材料 |
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