JP2007264370A - ボコーダ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡単な構成で楽音信号発生手段が発生する複数の楽音信号をそれぞれ変調することができるボコーダ装置を提供する。
【解決手段】合成フィルタバンク8dでは、L用の複数のバントパスフィルタとR用の複数バンドパスフィルタが形成され、L用の各バンドパスフィルタの中心周波数は、分析フィルタバンク8aを形成する複数のバンドパスフィルタの1,3,5,7番目のバンドパスフィルタの中心周波数と同じである。一方、R用の各バンドパスフィルタの中心周波数は、分析フィルタバンク8aを形成する複数のバンドパスフィルタの2,4,6,8番目のバンドパスフィルタの中心周波数と同じである。また、L用の各バンドパスフィルタおよびR用の各バンドパスフィルタのバンド幅は、分析フィルタバンク8aを形成するバンドパスフィルタのバンド幅と同一である。
【選択図】図3

Description

本発明は、ボコーダ装置に関し、特に音源が複数の楽音信号を発生し、それぞれの楽音信号を変調することができるボコーダ装置に関するものである。
従来、入力される音声などの楽音信号のフォルマント特性(周波数特性)を検出し、鍵盤などの演奏操作により発生された楽音の周波数特性を検出されたフォルマント特性に応じて変調するボコーダ装置が知られている。
特開2004−287171号公報
しかしながら、特許文献1に開示されているボコーダ装置は、鍵盤により一つの楽音信号の発生が指示されると、一つの楽音信号を発生し、その周波数特性が変調されるものであった。このため、一つの楽音信号の発生が指示された場合に、複数の楽音信号を発生する場合において適用されず、豊かな音響効果を有する楽音を形成できないという問題点があった。
また、発生される複数の楽音信号の周波数特性をそれぞれ変調する場合に、入力される楽音信号の周波数特性を検出する手段をそれぞれに備えると構成が複雑になるという問題点があった。
さらに、一つの楽音の変調を行うのと同じ規模で複数の楽音の変調を行う変調手段を備えると、規模が大きくなり複雑化するという問題点もある。
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、簡単な構成で入力される複数の楽音信号をそれぞれ変調することができるボコーダ装置を提供することを目的とする。
この目的を達成するために、請求項1記載のボコーダ装置は、第1の楽音信号を入力する第1の楽音信号入力手段と、その入力手段に入力された楽音信号の周波数特性を検出する周波数特性検出手段と、前記第1の楽音信号とは異なる第2の楽音信号を入力する第2の楽音信号入力手段と、その楽音信号入力手段により入力された第2の楽音信号の周波数特性を前記周波数特性検出手段により検出された周波数特性に応じて変調する周波数特性変調手段とを備えたものであって、前記第2楽音信号入力手段は、複数の互いに異なる第2の楽音信号を入力し、前記周波数特性変調手段は、前記第2の楽音信号入力手段により入力された複数の第2の楽音信号のそれぞれについて周波数特性を変調する複数の変調手段と、前記周波数特性検出手段により検出された周波数特性に基づいて、前記複数の変調手段のそれぞれに変調信号を供給する変調信号供給手段とを備えている。
請求項2記載のボコーダ装置は、請求項1記載のボコーダ装置において、前記変調信号供給手段は、前記周波数特性検出手段により検出された周波数特性に基づいて前記複数の変調手段に互いに異なる変調信号を供給する。
請求項3記載のボコーダ装置は、請求項1または2記載のボコーダ装置において、前記周波数特性検出手段は、前記第1の楽音信号入力手段に入力された第1の楽音信号を複数の周波数帯域に分割し、その周波数帯域毎にレベルを検出するものであり、前記複数の変調手段は、前記第2の楽音信号入力手段に入力された第2の楽音信号を複数の周波数帯域に分割し、それぞれの周波数帯域のレベルを前記変調信号供給手段により供給された変調信号に基づいて変調するものであって、前記複数の変調手段のうちのいずれかの変調手段が分割する周波数帯域の数は、前記周波数特性検出手段が分割する周波数帯域の数より少ない。
請求項4記載のボコーダ装置は、請求項3記載のボコーダ装置において、前記変調信号供給手段は、前記周波数特性検出手段により検出された複数の周波数帯域毎のレベルのうち、少なくとも一部の周波数帯域については、互いに異なる周波数帯域のレベルに基づく変調信号を前記複数の変調手段のそれぞれに供給する。
請求項5記載のボコーダ装置は、請求項3または4記載のボコーダ装置において、前記変調信号供給手段は、前記周波数特性検出手段が検出した複数の周波数帯域毎のレベルのうち、2以上の周波数帯域のレベルを平均化したレベルに基づく変調信号を前記複数の変調手段のうちのいずれかの変調手段に供給する。
請求項6記載のボコーダ装置は、請求項1から5のいずれかに記載のボコーダ装置において、前記第2の楽音信号入力手段により入力される複数の第2の楽音信号は、左右の出力手段からそれぞれ出力されるステレオ信号である。
請求項7記載のボコーダ装置は、請求項6記載のボコーダ装置において、前記変調手段は、所定の周波数帯域について、それぞれの第2の楽音信号を変調するものであり、前記第2の楽音信号入力手段により入力された複数の第2の楽音信号を合成する第1の合成手段と、その合成手段により合成された楽音信号の前記所定の周波数帯域とは異なる周波数帯域を変調するモノーラル変調手段と、そのモノーラル変調手段により変調された楽音信号を、前記変調手段により変調された楽音信号と合成する第2の合成手段とを備え、前記変調信号供給手段は、前記変調手段と前記モノーラル変調手段に、それぞれ変調信号を供給する。
請求項8記載のボコーダ装置は、請求項7記載のボコーダ装置において、前記モノーラル変調手段により変調された楽音信号を擬似ステレオ信号に変換する擬似ステレオ手段を備えている。
請求項9記載のボコーダ装置は、請求項1から8のいずれかに記載のボコーダ装置において、前記第2の楽音信号入力手段により入力される第2の楽音の音色を設定する音色設定手段とを備え、前記変調信号供給手段は、前記周波数特性検出手段により検出された周波数特性に基づいて、前記音色設定手段により設定された音色に対応する変調信号を前記変調手段に供給する。
請求項1記載のボコーダ装置によれば、第2楽音信号入力手段は、複数の互いに異なる第2の楽音信号を入力し、周波数特性変調手段は、第2の楽音信号入力手段により入力された複数の第2の楽音信号のそれぞれについて周波数特性を変調する複数の変調手段と、周波数特性検出手段により検出された周波数特性に基づいて、複数の変調手段のそれぞれに変調信号を供給する変調信号供給手段とを備えているので、周波数特性検出手段は、複数の変調手段について共通に一つ形成すればよく、簡単な構成で楽音信号入力手段により入力される複数の楽音信号をそれぞれ変調することができるという効果がある。
請求項2記載のボコーダ装置によれば、請求項1記載のボコーダ装置の奏する効果に加え、変調信号供給手段は、周波数特性検出手段により検出された周波数特性に基づいて複数の変調手段に互いに異なる変調信号を供給するので、楽音信号入力手段により入力される複数の楽音信号のそれぞれに応じた変調を行うことができるという効果がある。
請求項3記載のボコーダ装置によれば、請求項1または2記載のボコーダ装置の奏する効果に加え、周波数特性検出手段は、第1の楽音信号入力手段に入力された第1の楽音信号を複数の周波数帯域に分割し、その周波数帯域毎にレベルを検出するものであり、複数の変調手段は、第2の楽音信号入力手段に入力された第2の楽音信号を複数の周波数帯域に分割し、それぞれの周波数帯域のレベルを変調信号供給手段により供給された変調信号に基づいて変調するものであって、複数の変調手段のうちのいずれかの変調手段が分割する周波数帯域の数は、周波数特性検出手段が分割する周波数帯域の数より少ないので、入力される第1の楽音信号の周波数特性を精度良く分析することができるとともに、合成側の構成を簡単にすることができるという効果がある。
請求項4記載のボコーダ装置によれば、請求項3記載のボコーダ装置の奏する効果に加え、変調信号供給手段は、周波数特性検出手段により検出された複数の周波数帯域毎のレベルのうち、少なくとも一部の周波数帯域については、互いに異なる周波数帯域のレベルに基づく変調信号を前記複数の変調手段のそれぞれに供給するので、入力される楽音信号の周波数特性を検出する側(分析側)では、細かく周波数分割してレベルを検出し、変調を行う側(合成側)では、分析された複数のレベルを複数の変調手段に分散して合成を行う。よって、分析の精度を高めると共に、合成側では、少ない帯域に分けて変調を行うので、構成が簡単になるという効果がある。
請求項5記載のボコーダ装置によれば、請求項3または4記載のボコーダ装置の奏する効果に加え、変調信号供給手段は、周波数特性検出手段が検出した複数の周波数帯域毎のレベルのうち、2以上の周波数帯域のレベルを平均化したレベルに基づく変調信号を複数の変調手段のうちのいずれかの変調手段に供給するので、分析側で検出された複数のレベルをまとめることにより合成側の構成を簡単にすることができるという効果がある。
請求項6記載のボコーダ装置によれば、請求項1から5のいずれかに記載のボコーダ装置の奏する効果に加え、第2の楽音信号入力手段により入力された複数の第2の楽音信号は、左右の出力手段からそれぞれ出力されるステレオ信号であるので、楽音信号入力手段がステレオ信号を入力する場合に、音像の定位を維持したまま、ボコーダによる効果を付与することができる。
請求項7記載のボコーダ装置によれば、請求項6記載のボコーダ装置の奏する効果に加え、変調手段は、所定の周波数帯域について、それぞれの第2の楽音信号を変調するものであり、前記第2の楽音信号入力手段により入力された複数の第2の楽音信号を合成する第1の合成手段と、その合成手段により合成された楽音信号の前記所定の周波数帯域とは異なる周波数帯域を変調するモノーラル変調手段と、そのモノーラル変調手段により変調された楽音信号を、前記変調手段により変調された楽音信号と合成する第2の合成手段とを備え、前記変調信号供給手段は、前記変調手段と前記モノーラル変調手段に、それぞれ変調信号を供給するので、第2の楽音信号の特徴的な周波数帯域は、それぞれで変調を行い、そうではない周波数帯域は、モノーラルに合成して変調を行うことにより、合成側の構成を簡単にすることができるという効果がある。
請求項8記載のボコーダ装置によれば、請求項7記載のボコーダ装置の奏する効果に加え、モノーラル変調手段により変調された楽音信号を擬似ステレオ信号に変換する擬似ステレオ手段を備えているので、第1の合成手段によりモノーラル化した部分を擬似的にステレオ化するので立体感を損なうことを防止することができるという効果がある。
請求項9記載のボコーダ装置によれば、請求項1から8のいずれかに記載のボコーダ装置の奏する効果に加え、第2の楽音信号入力手段により入力される第2の楽音の音色を設定する音色設定手段とを備え、前記変調信号供給手段は、前記周波数特性検出手段により検出された周波数特性に基づいて、前記音色設定手段により設定された音色に対応する変調信号を前記変調手段に供給するので、楽音信号入力手段により入力される楽音信号の音色に応じた変調を行うことができる。
例えば、楽音信号入力手段により入力される楽音が男性の声である場合には、男性の声を特徴付ける周波数帯域は、女性の声を特徴付ける周波数帯域より低いので、その低い周波数帯域は、細かく周波数分割を行い、他の帯域は粗く周波数分割を行って変調を行うことができる。
また、楽音信号入力手段により男性の声と女性の声とがそれぞれ入力される場合には、男性の声は、低い周波数帯域では、細かく周波数分割を行い、女性の声については、高い周波数帯域で細かく周波数分割を行い、その他の周波数帯域では、粗く周波数分割を行って変調を行うことができる。
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態であるボコーダ装置1の電気的構成を示したブロック図である。
ボコーダ装置1は、CPU2と、ROM3と、RAM4と、操作子5と、鍵盤6と、音源7と、DSP8と、A/D変換器9と、D/A変換器11と、アンプ12と、スピーカ13とを備えている。CPU2と、ROM3と、RAM4と、操作子5と、鍵盤6と、音源7と、DSP8とはバスラインにより相互に接続されている。
CPU2は、演算処理装置でありROM3には、このCPU2により実行される各種の制御プログラムやその実行の際に参照される固定値データが記憶される。RAM4は、ROM3等に記憶される制御プログラムの実行に当たって各種のデータ等を一時的に記憶するためのメモリであり、書き換え可能に構成される。
操作子5は、各種ボリュームやスイッチなどを有し、ユーザにより操作されることにより、パラメータや演奏モードなどが設定される。鍵盤6は、複数の白鍵および黒鍵を有し、演奏操作が行われるもので、各鍵には半音ごとの音高が割り当てられている。
音源7は、複数の楽音波形を表すサンプリング周期毎の振幅値を記憶する波形メモリ(図示なし)を有し、図示しない音色選択スイッチによりいずれかの楽音波形が選択されるとCPU2により、その波形のアドレスが指示される。また、CPU2により発生する楽音の音高やレベルが指示されて選択された波形メモリから振幅値を順次読出してデジタル楽音信号を発生し、DSP8に供給する。
鍵盤6の一つの鍵が押下された場合に、その押下された鍵に応じて複数の楽音信号を同時に出力することができる。例えば、ピアノ音を左右2つのマイクロフォンで収音してそれぞれを録音し、一つの鍵が押下された場合に、左右の波形をそれぞれ読み出して出力し、それぞれを左右に配置したスピーカ13で再生することにより音像が定位した立体感のある楽音を再生することができる(この動作モードを、ステレオモードという)。
また、一つの押鍵に対して、女性の声と男性の声とを別々に出力したり、弦楽器の音と管楽器の音とを出力することもできる(この動作モードを、デュアルモードという)。
DSP8は、デジタル信号処理装置(Digital Signal Processor)であり、A/D変換器9により変換されたデジタル楽音信号と、音源7により発生されたデジタル楽音信号とを入力し処理を行う。DSP8により行われる処理の概略について、図2を参照して後述する。
A/D変換器9は、入力端子10に接続されるマイクロフォンから入力されるアナログ電気信号を、所定のサンプリング周波数(例えば44.1kHz)でサンプリングし、所定のビット数(例えば16ビット)に量子化するものである。
D/A変換器11は、DSP8により処理された複数のデジタル信号をそれぞれアナログ電気信号に変換するもので、変換されたアナログ信号は、アンプ12によりそれぞれ増幅され、複数のスピーカ13によりそれぞれ放音される。
次に、図2を参照してDSP8等が行う処理の概略について説明する。図2は、DSP8等が行う処理の概略を示すブロック図である。DSP8は、分析フィルタバンク8aと、分析信号再編成部8bと、キャリア信号制御部8cと、合成フィルタバンク8dと、ミキサ部8eとを主に備えている。
A/D変換器9により変換されたデジタル信号は、分析フィルタバンク8aに供給される。分析フィルタバンクは、複数のバンドパスフィルタを備え、各バンドパスフィルタには、変換されたデジタル信号が入力され、各バンドパスフィルタが出力する楽音信号のレベルが検出される。このレベルの検出は、所定の時間間隔(例えば、1msec)で行われる。
分析信号再編成部8bは、分析フィルタバンク8aにより検出された各周波数帯域毎のレベルを再編成し、変調信号として合成フィルタバンク8dに供給する。この場合、再編成の仕方は、CPU2に構成される動作モード設定部2aが指示する。
音源7から出力された複数の楽音信号は、キャリア信号制御部8cに入力される。なお、請求項に記載の第2の楽音信号入力手段は、このキャリア信号制御部8cにおける入力手段に該当する。
キャリア信号制御部8cは、音源7から入力した複数の楽音信号を動作モードに応じてそのまま合成フィルタバンク8dへ出力したり、合成して出力したりする。
合成フィルタバンク8dは、分析フィルタバンク8aと同様に周波数帯域が異なる複数のバンドパスフィルタにより構成され、キャリア信号制御部8cから出力された楽音信号を複数の周波数帯に分割し、各周波数帯のレベルは、分析信号再編成部8bにより供給される変調信号に応じて振幅変調される。
このようにして各周波数帯により振幅変調された楽音信号は、合成されてミキサ部8eに出力される。ミキサ部8eにおいては、動作モードに応じて入力される楽音信号をそのまま出力したり、合成したりして出力する。
動作モード設定部2aは、CPU2により行われる処理であり、動作モードに応じて、各部の設定を行う。動作モードは、演奏者により任意に設定されるようにしてもよいし、予めいずれかのモードに固定するようにしてもよい。演奏者により任意に設定されるようにする場合には、操作子5の一つとして、動作モードを任意に設定する操作子を備え、その操作子の状態を検出して、任意に設定された動作モードに設定する。また、予めいずれかのモードに設定する場合には、ROM3にその動作モードに設定するための情報を記憶し、電源が投入されたとき、その動作モードに設定する。
動作モード設定部2aは、分析フィルタバンク8aについては、動作モードに応じて、複数のバンドパスフィルタの数や、各バンドパスフィルタの中心周波数と帯域幅を設定し、分析信号再編成部8bについては、分析フィルタバンクで検出された各周波数帯域のレレベルを、いずれの合成フィルタバンク8dに供給するか、あるいは、複数の周波数帯域で検出されたレベルの平均をとっていずれの合成フィルタバンク8dへ供給するかを指示する。
また、音源7に対しては、動作モードに応じてステレオモードで再生するか、デュアルモードで再生するかを設定し、キャリア信号制御部8cについては、動作モードに応じて、音源7から入力する楽音信号をそのまま出力するか、合成して出力するかを設定し、合成フィルタバンク8dについては、動作モードに応じて、各合成フィルタバンク8dを構成するバンドパスフィルタの中心周波数とバンド幅を設定し、ミキサ部8eについては、合成フィルタバンク8dから入力する楽音信号をそのまま出力するか、合成して出力するかを設定する。
次に、図3〜図5を参照して各動作モードについて具体的に説明する。図3は、動作モードがステレオモード1、図4は、ステレオモード2、図5は、デュアルモードである場合をそれぞれ示すブロック図である。
なお、これらの図において、理解を容易にするために分析フィルタバンク8aは、8つのバンドパスフィルタを備え、これらの各バンドパスフィルタの中心周波数およびバンド幅は、いずれの動作モードでも同一であるものとする。これらのバンドパスフィルタは、低域側から順番に、1,2,3・・・8というように番号を付して示す。
まず、図3を参照してステレオモード1について説明する。このステレオモード1では、音源7は、一つの鍵が押下されると、その鍵により指示される音高の左(L)、右(R)の楽音信号を出力する。このL、Rの楽音信号は、一つの音源が発生する楽音を、左右に配置されたマイクロフォンで録音したものである。これらの音源7から出力された楽音信号は、キャリア信号制御部8cでは、なにも処理されずにそのまま、合成フィルタバンク8dに形成された二組のバンドパスフィルタにそれぞれ出力される。
合成フィルタバンク8dでは、L用の複数のバントパスフィルタとR用の複数バンドパスフィルタが形成され、L用の各バンドパスフィルタの中心周波数は、分析フィルタバンク8aを形成する複数のバンドパスフィルタの1,3,5,7番目のバンドパスフィルタの中心周波数と同じである。一方、R用の各バンドパスフィルタの中心周波数は、分析フィルタバンク8aを形成する複数のバンドパスフィルタの2,4,6,8番目のバンドパスフィルタの中心周波数と同じである。また、L用の各バンドパスフィルタおよびR用の各バンドパスフィルタのバンド幅は、分析フィルタバンク8aを形成するバンドパスフィルタのバンド幅と同一である。なお、この合成フィルタバンク8dのバンドパスフィルタバンド幅を分析フィルタバンク8aのバンドパスフィルタのバンド幅のほぼ2倍としてもよいが、その場合には、対応する周波数帯域の分析フィルタバンク8aのバンドパスフィルタのレベルだけでなく、隣り合うバンドパスフィルタのレベルを加味したレベル(例えば平均)により変調信号を設定することが好ましい。
分析フィルタバンク8aにより検出された各帯域毎のレベルは、分析信号再編成部8bに入力され、分析信号再編成部8bは、これらのレベルの値のうち、1,3,5,7番目のバンドパスフィルタにより検出されたレベルをそれぞれL用のフィルタバンクの変調信号に再編成を行い、分析フィルタバンク8dに出力し、2,4,6,8番目のバンドパスフィルタにより検出されたレベルをそれぞれR用のフィルタバンクの変調信号に再編成を行い、分析フィルタバンク8dに出力する。
L用のフィルタバンクにより変調された楽音信号およびR用のフィルタバンクにより変調された楽音信号は、ミキサ部8eでは何も処理されずにそのまま、それぞれの出力端子から出力される。
このステレオモード1では、以上のように構成されるので、分析側では、入力される楽音信号は、細かい周波数帯域に分割されて、それぞれの帯域でのレベルが検出される。従って、分析を高精度で行うことができる。一方、合成側では、ステレオ信号で発生されたそれぞれの楽音信号を、分析側より少ない周波数帯域の数(上記例では、半数)で分割し、分析側で分析された周波数帯域毎のレベルに基づいて変調されるので、構成が簡単になるとともに、分析側で検出された周波数帯域毎のレベルは、交互にL側とR側に振り分けられるので、分析側で検出された周波数特性は、ステレオ信号が空間的に合成された際に再現される。
次に、図4を参照してステレオモード2について説明する。このステレオモード2では、ステレオモード1と同様に音源7は、一つの鍵が押下されると、その鍵により指示される音高の左(L)、右(R)の楽音信号を出力する。
これらの楽音信号は、キャリア信号制御部8cに入力され、そのまま合成フィルタバンク8dに形成されるフィルタバンク8d1、8d2にそれぞれ出力されるとともに、合成されてモノーラル信号が形成され、合成フィルタバンク8dに形成されるモノーラル信号用のフィルタバンク8d3に出力される。
フィルタバンク8d1,8d2,8d3それぞれには、バンドパスフィルタが形成され、フィルタバンク8d1に形成されるL用のバンドパスフィルタの中心周波数は、分析フィルタバンク8aを形成する複数のバンドパスフィルタの3,4,5,6番目のバンドパスフィルタの中心周波数と同じである。また、フィルタバンク8d2に形成されるR用の各バンドパスフィルタの中心周波数も同様に、分析フィルタバンク8aを形成する複数のバンドパスフィルタの3,4,5,6番目のバンドパスフィルタの中心周波数と同じであり、各バンドパスフィルタのバンド幅は、分析フィルタバンク8aを形成するバンドパスフィルタのバンド幅と同じである。
一方、フィルタバンク8d3に形成されるモノーラル用の合成フィルタバンクとしては、低域側に、分析フィルタバンク8aの1,2番目のバンドパスフィルタと同じ中心周波数とバンド幅を有するバンドパスフィルタを形成し、高域側には、分析フィルタバンク8aの7,8番目のバンドパスフィルタの中心周波数を平均した中心周波数で、7,8番目のバンドパスフィルタのバンド幅を加算したバンド幅を有するバンドパスフィルタを形成する。
分析フィルタバンク8aにより検出された各帯域毎のレベルは、分析信号再編成部8bに入力され、分析信号再編成部8bは、これらのレベルの値のうち、3,4,5,6番目のバンドパスフィルタにより検出されたレベルに基づいてL用のフィルタバンク8d1とR用のフィルタバンク8d2の変調信号に再編成を行い、分析フィルタバンク8dに出力し、1,2番目のバンドパスフィルタにより検出されたレベルと、7,8番目のバンドパスフィルタにより検出されたレベルを平均したレベルに基づいてモノーラル用のフィルタバンク8d3の変調信号に再編成を行い、分析フィルタバンク8dに出力する。
モノーラル用のフィルタバンク8d3により変調された楽音信号は、擬似ステレオ処理部8fによりステレオ化されて、ミキサ部8eに出力される。擬似ステレオ処理部8fは、モノーラル信号をディレイなどの処理により擬似的にステレオ化する公知の処理を行うものである。
ミキサ部8eにおいて、L用のフィルタバンク8d1により変調された楽音信号は、擬似ステレオ処理部8fによりステレオ化されたL信号と合成され、R用のフィルタバンク8d2により変調された楽音信号は、擬似ステレオ処理部8fによりステレオ化されたR信号と合成され、それぞれの出力端子から出力される。
このステレオモード2では、合成側において、ステレオ信号で発生されたそれぞれの楽音信号を、中域では、細かい周波数帯域で分割して変調を行い、その中域より低い低域や高域は、モノーラル信号にして変調を行う。このことにより、楽音信号入力手段により入力される楽音信号の中域に特徴がある場合に、忠実に入力する楽音信号の周波数特性により変調を行うことができるとともに、あまり重要ではない低域や、高域ではモノーラル信号で変調を行うので、重要な帯域でのステレオ感を損なうことなく、構成を簡単にすることができる。
次に、図5を参照してデュアルモードについて説明する。このデュアルモードでは、音源7は、一つの鍵が押下されると、その鍵により指示される音高で異なる音色の2つの楽音を発生する。例えば、一方(1側)は、男性の声で、他方(2側)は女性の声であったり、一方がトランペットであって、他方がストリングスであるというような場合である。
これらの楽音信号は、キャリア信号制御部8cに入力され、そのまま合成フィルタバンク8dに出力される。
ROM3には、合成フィルタバンク8dに入力される各音色に対応して、合成フィルタバンク8dを構成する複数のバンドパスフィルタの中心周波数および帯域幅がテーブルとして記憶され、音色が設定された場合に、CPU2は、ROM3に記憶されたテーブルを参照してDSP8に複数のバンドパスフィルタを形成するための情報を送信する。
DSP8は、この情報を入力し、1側の複数のバントパスフィルタと2側の複数バンドパスフィルタを形成する。
この実施形態では、一例として、1側の合成フィルタバンク8dは、分析フィルタバンク8aを形成する複数のバンドパスフィルタの1,2,6,7、8番目のバンドパスフィルタの中心周波数およびバンド幅とするバンドパスフィルタと、分析フィルタバンク8aの3,4,5番目のバンドパスフィルタの中心周波数を平均した周波数を中心周波数とし、これらの3つのバンドパスフィルタのバンド幅を合計したバンド幅を有するバンドパスフィルタにより形成され、2側の合成フィルタバンク8dは、分析フィルタバンク8aを形成する1,2,3,4番目のバンドパスフィルタの中心周波数とバンド幅を有するバンドパスフィルタと、分析フィルタバンク8aを形成する5,6,7,8番目のバンドパスフィルタの中心周波数を平均した周波数を中心周波数とし、れらの4つのバンドパスフィルタのバンド幅を合計したバンド幅を有するバンドパスフィルタにより形成されるものとする。
分析フィルタバンク8aにより検出された各帯域毎のレベルは、分析信号再編成部8bに入力され、分析信号再編成部8bは、これらのレベルの値のうち、1,2,6,7,8番目のバンドパスフィルタにより検出されたレベルと3,4,5番目のフィルタバンクにより検出されたレベルを平均した値とに基づいて1側のフィルタバンクの各バンドパスフィルタの変調信号に再編成を行い、1,2,3,4番目のバンドパスフィルタにより検出されたレベルと、5,6,7,8番目のバンドパスフィルタにより検出されたレベルを平均した値とに基づいて2側のフィルタバンクの各バンドパスフィルタの変調信号に再編成を行い、合成フィルタバンク8dに供給する。
ミキサ部8eにおいて、1側のフィルタバンクにより変調された楽音信号と2側のフィルタバンクにより変調された楽音信号は、それぞれ1,2の出力端子から出力される。
このデュアルモードでは、合成側において、1側の楽音信号は、高域および低域では細かい周波数帯域で分割して変調を行い、中域では、まとめた帯域で変調を行う。一方、2側の楽音信号は、低域側では、細かい周波数帯域で分割して変調を行い、高域では、まとめた帯域で変調を行う。このことにより、楽音信号入力手段により入力される楽音信号の特徴がある周波数帯域は、細かく分割し、あまり特徴のない重要ではない帯域は、まとめて変調を行うので、楽音の特徴を維持したまま簡単な構成により変調を行うことができる。
以上説明したように、本実施形態のボコーダ装置によれば、マイクロフォンなどにより入力された楽音信号の周波数特性を検出し、音源7により発生された複数の楽音のそれぞれは、複数の合成側フィルタバンクにより周波数特性が変調される。したがって、音源7が発生する楽音がステレオ信号である場合には、音像の定位などの立体感を維持したまま、ボコーダの効果を付与することができる。
また、その場合に、分析側のフィルタバンクは、複数の合成側のフィルタバンクに共通に形成されるので、構成が簡単である。また、分析側のフィルタバンクは、多数のバンドパスフィルタを形成し、合成側のフィルタバンクは、分析側のバンドパスフィルタの数より少ない数で構成するので、全体の構成が簡単になるとともに、分析側で精度良く分析を行い、その分析を忠実に反映した効果を付与することができる。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、上記実施形態では、ボコーダ装置1に鍵盤6が組み込まれているものとしたが、鍵盤6がなくてもよいし、鍵盤6に代えて電子ギターや電子管楽器などのように演奏操作子を備え、演奏データが検出されるものや、シーケンサのように予め曲の進行に合わせて音高情報を発生するものでもよい。
また、上記実施形態では、音源7が発生する楽音を変調するものとしたが、外部から入力した楽音を変調するようにしてもよい。
また、上記実施形態のボコーダ装置1では、分析フィルタバンクおよび合成フィルタバンク8dを構成する複数のバンドパスフィルタは、DSP8により形成されるデジタルフィルタとしたが、DSP8によりバンドパスフィルタを形成する方法は、公知の各種の手法を用いることができる。
また、各バンドパスフィルタをアナログ回路により形成するようにしてもよい。分析側のバンドパスフィルタをアナログフィルタで形成する場合には、各バンドパスフィルタの出力にエンベロープ検出回路をそれぞれ備え、各帯域の出力を検出し、合成側の各バンドパスフィルタをアナログフィルタで形成する場合には、各アナログフィルタの出力に電圧増幅器(VCA)をそれぞれ備え、分析信号再編成部8bから変調信号として制御電圧を供給するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、分析フィルタバンク8aの各バンドパスフィルタの中心周波数と、合成フィルタバンク8dの各バンドパスフィルタの中心周波数とは、対応するものとしたが、その対応関係を変更したり、全体的にずらす(シフト)ようにしてもよい。また、これらの対応関係やずらし方を演奏者が任意に設定するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、マイクロフォンなどにより変換された楽音信号がA/D変換器9によりデジタル信号に変換されるものとしたが、音声などを記録したメモリから読み出し、A/D変換器9を介さずに入力するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、分析フィルタバンク8aを構成する複数のバンドパスフィルタは、動作モードについて同一のものとしたが、動作モードや、入力される楽音信号に応じて、各バンドパスフィルタの中心周波数やバンド幅を変え、少ないバンド数で、精度の高い分析を行うように構成するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、分析フィルタバンク8aは、複数のバンドパスフィルタにより構成されるものとしたが、FFT(fast fourier transform)などの周波数特性を検出するものでもよい。
本発明の実施形態におけるボコーダ装置の電気的な構成を示すブロック図である。 DSPの概略構成を示すブロック図である。 ステレオモード1における構成を示すブロック図である。 ステレオモード2における構成を示すブロック図である。 デュアルモードにおける構成を示すブロック図である。
符号の説明
1 ボコーダ装置
2 CPU
6 鍵盤
7 音源
8 DSP
8a 分析フィルタバンク(周波数特性検出手段)
8b 分析信号再編成部(変調信号供給手段)
8c
キャリア信号制御部(第1の合成手段)
8d 合成フィルタバンク(周波数特性変調手段)
8f 擬似ステレオ処理部(擬似ステレオ手段)
8e ミキサ部(第2の合成手段)
9 A/D変換器(第1の楽音信号入力手段)

Claims (9)

  1. 第1の楽音信号を入力する第1の楽音信号入力手段と、その入力手段に入力された楽音信号の周波数特性を検出する周波数特性検出手段と、前記第1の楽音信号とは異なる第2の楽音信号を入力する第2の楽音信号入力手段と、その楽音信号入力手段により入力された第2の楽音信号の周波数特性を前記周波数特性検出手段により検出された周波数特性に応じて変調する周波数特性変調手段とを備えたボコーダ装置において、
    前記第2楽音信号入力手段は、複数の互いに異なる第2の楽音信号を入力するものであり、
    前記周波数特性変調手段は、前記第2の楽音信号入力手段により入力された複数の第2の楽音信号のそれぞれについて周波数特性を変調する複数の変調手段と、
    前記周波数特性検出手段により検出された周波数特性に基づいて、前記複数の変調手段のそれぞれに変調信号を供給する変調信号供給手段とを備えていることを特徴とするボコーダ装置。
  2. 前記変調信号供給手段は、前記周波数特性検出手段により検出された周波数特性に基づいて前記複数の変調手段に互いに異なる変調信号を供給することを特徴とする請求項1記載のボコーダ装置。
  3. 前記周波数特性検出手段は、前記第1の楽音信号入力手段に入力された第1の楽音信号を複数の周波数帯域に分割し、その周波数帯域毎にレベルを検出するものであり、前記複数の変調手段は、前記第2の楽音信号入力手段に入力された第2の楽音信号を複数の周波数帯域に分割し、それぞれの周波数帯域のレベルを前記変調信号供給手段により供給された変調信号に基づいて変調するものであって、前記複数の変調手段のうちのいずれかの変調手段が分割する周波数帯域の数は、前記周波数特性検出手段が分割する周波数帯域の数より少ないことを特徴とする請求項1または2記載のボコーダ装置。
  4. 前記変調信号供給手段は、前記周波数特性検出手段により検出された複数の周波数帯域毎のレベルのうち、少なくとも一部の周波数帯域については、互いに異なる周波数帯域のレベルに基づく変調信号を前記複数の変調手段のそれぞれに供給することを特徴とする請求項3記載のボコーダ装置。
  5. 前記変調信号供給手段は、前記周波数特性検出手段が検出した複数の周波数帯域毎のレベルのうち、2以上の周波数帯域のレベルを平均化したレベルに基づく変調信号を前記複数の変調手段のうちのいずれかの変調手段に供給することを特徴とする請求項3または4記載のボコーダ装置。
  6. 前記第2の楽音信号入力手段により入力される複数の第2の楽音信号は、左右の出力手段からそれぞれ出力されるステレオ信号であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のボコーダ装置。
  7. 前記変調手段は、所定の周波数帯域について、それぞれの第2の楽音信号を変調するものであり、
    前記第2の楽音信号入力手段により入力された複数の第2の楽音信号を合成する第1の合成手段と、
    その合成手段により合成された楽音信号の前記所定の周波数帯域とは異なる周波数帯域を変調するモノーラル変調手段と、
    そのモノーラル変調手段により変調された楽音信号を、前記変調手段により変調された楽音信号と合成する第2の合成手段とを備え、
    前記変調信号供給手段は、前記変調手段と前記モノーラル変調手段に、それぞれ変調信号を供給することを特徴とする請求項6記載のボコーダ装置。
  8. 前記モノーラル変調手段により変調された楽音信号を擬似ステレオ信号に変換する擬似ステレオ手段を備えていることを特徴とする請求項7記載のボコーダ装置。
  9. 前記第2の楽音信号入力手段により入力される第2の楽音の音色を設定する音色設定手段を備え、
    前記変調信号供給手段は、前記周波数特性検出手段により検出された周波数特性に基づいて、前記音色設定手段により設定された音色に対応する変調信号を前記変調手段に供給することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のボコーダ装置。
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