JP2007263969A - 放射線遮蔽物品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【目的】環境汚染を引き起こすことなく、キズがつきにくく、ガラスが割れてもその破片が飛散しない放射線遮蔽物品の製造方法を提供することである。
【構成】本発明は、バッチ原料を調製し、溶融した後、フロート法により板状に成形して、本質的にPbを含有せず、100kVのX線に対する鉛当量が0.03mmPb/mm以上であるガラスからなるガラス板11を作製する工程と、複数枚のガラス板11を樹脂フィルム12によって貼り合わせる工程とを有する放射線遮蔽物品10の製造方法である。
【選択図】図1
【構成】本発明は、バッチ原料を調製し、溶融した後、フロート法により板状に成形して、本質的にPbを含有せず、100kVのX線に対する鉛当量が0.03mmPb/mm以上であるガラスからなるガラス板11を作製する工程と、複数枚のガラス板11を樹脂フィルム12によって貼り合わせる工程とを有する放射線遮蔽物品10の製造方法である。
【選択図】図1
Description
本発明は、主に、100kV以下の低エネルギーの放射線を取り扱う施設における放射線遮蔽窓、放射線遮蔽防護衝立等の放射線遮蔽物品の製造方法に関するものである。
放射線診断設備等の低エネルギーの放射線を取り扱う施設において、放射線遮蔽窓、放射線遮蔽防護衝立等の放射線遮蔽物品には、放射線源からの放射線を遮蔽する能力、いわゆる放射線遮蔽能力と、この材料を通して被検体を視認する高い透明性が要求される。そのため、従来は、Pbを多量に含むガラスや合成樹脂が単板で放射線遮蔽物品として使用されていた。
また、特許文献1〜3には、X線吸収能を有するPbを含有しないガラスから成るディスプレイ用ガラス容器に関する記載がある。さらに、特許文献4には、樹脂フィルムによって複数のガラス板を貼り合わせた建築用または自動車用の合わせガラスの開示がある。
特開2000−357477号公報
特開2001−302278号公報
特開2001−348248号公報
特開2001−302289号公報
ところが、Pbは有害物質であるため、Pbを多量に含む放射線遮蔽物品は、その生産において、Pbを含む原料がこぼれたり、飛散することによって環境汚染を引き起こしやすいという問題を有していた。
また、Pbを多量に含むガラスは、表面硬度が低いため、研磨や切断等の加工工程において、表面にキズがつきやすく、キズをオリジンとしてガラスが割れることがあった。また、ガラスが割れた場合には、その破片が散乱し非常に危険であった。
また、Pbを多量に含む合成樹脂は、キズが発生しても、割れにくいが、表面硬度が非常に低いため、キズが入りやすく、そのキズによって透明性が低下しやすい。
本発明の目的は、環境汚染を引き起こすことなく、キズがつきにくく、ガラスが割れてもその破片が飛散しない放射線遮蔽物品の製造方法を提供することである。
本発明に係る放射線遮蔽物品の製造方法は、複数枚のガラス板が樹脂フィルムによって貼り合わされてなる放射線遮蔽窓用または放射線遮蔽防護衝立用に好適な放射線遮蔽物品の製造方法であって、バッチ原料を調製し、溶融した後、フロート法により板状に成形して、本質的にPbを含有せず、100kVのX線に対する鉛当量が0.03mmPb/mm以上であるガラスからなるガラス板を作製する工程と、複数枚のガラス板を樹脂フィルムよって貼り合わせる工程とを有するものである。また、本発明の放射線遮蔽物品の製造方法では、複数枚のガラス板を樹脂フィルムによって貼り合わせる工程が、ガラス板の間に樹脂フィルムを挿置した後、熱圧着するものであることが好ましい。
さらに、本発明で製造する放射線遮蔽物品のガラスは、質量%でSiO2 50〜65%、Al2O3 5〜15%、ZrO2 0.1〜9%、CaO 0〜4%、SrO 3〜12%、MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO 15〜25%、Li2O+Na2O+K2O 7〜15%の組成を有することが好ましい。
また、本発明で製造する放射線遮蔽物品のガラス板は、表面のヌープ硬度が4.90GPaを超え、且つ3質量%HCl水溶液に25℃で30分間浸漬した後、及び3質量%NaOH水溶液に25℃で30分間浸漬した後、表面の状態を観察した際に、表面に光沢があり、ヤケが発生しないものであることが好ましい。
本発明による放射線遮蔽物品は、複数枚のガラス板が樹脂フィルムによって貼り合わされてなるため、ガラス板が割れてもその破片が飛散せず、またX線やγ線以外にも、中性子線を遮蔽する能力を有する。すなわち、ガラス板が割れた場合、樹脂フィルムによって、ガラスが保持され、また、樹脂フィルムは、水素を大量に含み、その水素によって、中性子が捕獲されるからである。
また、複数枚のガラス板が、本質的にPbを含有しないガラスからなるため、ガラスの生産において、Pbを含む原料がこぼれたり、飛散することによって環境汚染を引き起こすことがない。
複数枚のガラス板が、100kVのX線に対する鉛当量が0.03mmPb/mm以上のガラスからなるため、100kV以下の低エネルギーの放射線を防護する放射線遮蔽窓や放射線遮蔽防護衝立として好適である。尚、鉛当量とは、X線の減衰能力が等しい鉛板の肉厚を示し、この値が大きいほど放射線遮蔽能力が優れていることを表す。
ガラス板の1枚の肉厚は、必要とされる放射線遮蔽能力や使用枚数によって変わるが、1〜10mmである。
また、本発明の放射線遮蔽物品に使用する樹脂フィルムとしては、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、フッ素樹脂(THV)等が使用可能である。尚、樹脂フィルムの膜厚は、50〜2000μmである。
また、本発明の放射線遮蔽物品に使用するガラスが、SiO2を40〜70質量%、Al2O3を4.1〜15質量%含有すると、表面をクリーニングしても透明性が低下しにくく、吸水による変形や変色を起こすことがない。また、ガラスの硬度が高いため、キズがつきにくく、キズによる割れや透明性の低下が起こりにくい。すなわち、SiO2が40質量%より少ないと、化学的耐久性が低いため、ガラス表面をクリーニングした後に、「ヤケ」が発生して、透明性が低下しやすく、70質量%よりも多いと溶融性が悪化しやすいため好ましくない。また、Al2O3は、ガラスの表面硬度を向上させるとともに、ガラスの化学的耐久性を向上させる成分であり、その含有量が4.1質量%よりも少ないと、ガラスの硬度が低くなってキズがつきやすく、割れが発生しやすい。また化学的耐久性が低くなるため、ガラス表面をクリーニングした後に、「ヤケ」が発生して、透明性が低下しやすい。Al2O3が、15質量%よりも多いと、溶融性が悪化するとともに、液相温度が高くなりやすいため好ましくない。
また、本発明において使用可能なガラスの具体的組成は、質量%で、SiO250〜65%、Al2O3 5〜15%、ZrO2 0.1〜9%、MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO 10〜27%、Li2O+Na2O+K2O 7〜15%である。
ZrO2は、放射線遮蔽能力及びガラスの化学的耐久性を向上させる成分であり、その含有量は、0.1〜9%、好ましくは、0.1〜8%である。ZrO2が0.1%よりも少ないと、放射線遮蔽能力が低く、また、ガラスの化学的耐久性が低下しやすく、9%よりも多いと、ガラスの成形時に失透物が生成しやすく、成形が困難となるため好ましくない。
MgO、CaO、SrO、BaO及びZnOは、ガラスの溶融性を向上させる成分であり、特にSrO及びBaOは、放射線遮蔽能力を高める効果に優れた成分であり、MgO、CaO、SrO、BaO及びZnOの合量が10〜27%、好ましくは、15〜25%である。これらの成分の合量が10%よりも少ないと、放射線遮蔽能力が低下するとともに、溶融性が悪化しやすい。27%よりも多いと、ガラスが失透しやすくなる。
MgO、CaO及びZnOの好適な含有量は、いずれも0〜4%である。また、BaO及びSrOの好適な含有量は、いずれも3〜12%である。
Li2O、Na2O及びK2Oは、ガラスの溶融性を向上させる成分であり、これらの成分の合量が7〜15%である。これらの成分の合量が7%よりも少ないと、溶融性が困難になり、15%よりも多いと、化学的耐久性が低下する。
また、Li2O、Na2O及びK2Oの好ましい含有量は、それぞれ0〜1%、2〜10%、2〜13%である。
上記した成分の他にも、TiO2を5%まで、P2O5を3%まで、Sb2O3及びAs2O3を1%まで添加しても構わない。
また、本発明で放射線遮蔽物品に使用するガラス板は、既存の成形法によって製板することが可能であるが、特にフロート法によって製板すると、平滑性に優れるため、研磨する必要がなく、研磨によるキズが入ることがない。
以上説明したように、本発明により作製した放射線遮蔽物品は、環境汚染を引き起こすことなく、表面をクリーニングしても透明性が低下しにくく、またキズがつきにくく、ガラスが割れてもその破片が飛散しないため、100kV以下の低エネルギーの放射線を遮蔽するための放射線遮蔽窓や放射線遮蔽防護衝立として好適である。
本発明の放射線遮蔽物品を実施例に基づいて説明する。
表1に本発明の実施例1〜4を、表2に比較例5〜8を示す。図1は、本発明の放射線遮蔽物品の説明図である。
まず、実施例1〜4は、表1に示した組成となるように、バッチ原料を調製し、溶融した後、フロート法によって肉厚3mmの板状に成形し、2000×900の寸法に切断した後、徐冷炉で冷却して、ガラス板を作製した。
次いで、図1に示すように、3枚のガラス板11の間に肉厚200μmのPVB樹脂フィルム12を挿置した後、熱圧着することによって放射線遮蔽物品10を作製した。
比較例5〜7は、表2に示した組成となるように、バッチ原料を調製し、溶融した後、ロールアウト法によって肉厚9.5mmの板状に成形し、2000×900の寸法に切断した後、徐冷炉で冷却して、ガラス板を作製した。
次いで、このガラス板の両面を光学研磨して、肉厚9mmの放射線遮蔽物品を作製した。
比較例8は、アクリル酸を20質量%含有したアクリル酸−メタクリル酸共重合体100質量部と酸化鉛50質量部を混合後、シート状に成形し、得られたシートを熱プレスして、肉厚9mmの透明樹脂板を作製した。
尚、30〜380℃における熱膨張係数α30−380は、ディラトメーター(マックサイエンス製、TD−5000)によって測定した。また、100kVのX線に対する肉厚1mmでの鉛当量は、JIS Z 4501に基づいて測定した鉛当量を肉厚1mmに換算して求めた。
表面硬度(ヌープ硬度:Hk)は、ヌープ硬度計を用いて、荷重10gで30秒間、ダイヤモンド圧子で押圧し、菱形の圧痕の対角長さを測定することによって求めた。
化学耐久性は、耐酸性と耐アルカリ性で評価し、耐酸性は、3質量%HCl水溶液に、耐アルカリ性は、3質量%NaOH水溶液に、ガラス板及び樹脂板をそれぞれ25℃で30分間浸漬した後、表面の状態を観察し、表面に光沢があり、ヤケが発生していないものを「○」、少しヤケが発生し、表面が少し曇っているものを「△」、ヤケが発生し、表面が白く濁っているものを「×」とした。
表1に示すように、実施例1〜4は、表面硬度が高く、化学耐久性に優れていた。
一方、表2に示すように、比較例5〜8は、表面硬度が低く、また、化学耐久性も低かった。尚、比較例8のヌープ硬度は、表面硬度が非常に低いため、測定不能であった。
10 放射線遮蔽物品
11 ガラス板
12 PVB樹脂フィルム
11 ガラス板
12 PVB樹脂フィルム
Claims (4)
- 複数枚のガラス板が樹脂フィルムによって貼り合わされてなる放射線遮蔽物品の製造方法であって、
バッチ原料を調製し、溶融した後、フロート法により板状に成形して、本質的にPbを含有せず、100kVのX線に対する鉛当量が0.03mmPb/mm以上であるガラスからなるガラス板を作製する工程と、複数枚のガラス板を樹脂フィルムによって貼り合わせる工程とを有する放射線遮蔽物品の製造方法。 - 複数枚のガラス板を樹脂フィルムによって貼り合わせる工程が、ガラス板の間に樹脂フィルムを挿置した後、熱圧着するものであることを特徴とする請求項1に記載の放射線遮蔽物品の製造方法。
- ガラスが、質量%でSiO2 50〜65%、Al2O3 5〜15%、ZrO2 0.1〜9%、CaO 0〜4%、SrO 3〜12%、MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO 15〜25%、Li2O+Na2O+K2O 7〜15%の組成を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放射線遮蔽物品の製造方法。
- ガラス板は、表面のヌープ硬度が4.90GPaを超え、且つ3質量%HCl水溶液に25℃で30分間浸漬した後、及び3質量%NaOH水溶液に25℃で30分間浸漬した後、表面の状態を観察した際に、表面に光沢があり、ヤケが発生しないものであることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の放射線遮蔽物品の製造方法。
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JP2007130200A JP2007263969A (ja) | 2007-05-16 | 2007-05-16 | 放射線遮蔽物品の製造方法 |
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JP2012057952A (ja) * | 2010-09-06 | 2012-03-22 | Nippon Electric Glass Co Ltd | 放射線遮蔽安全ガラスとその製造方法 |
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