JP2007263959A - 多孔質カバー及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 内側に配した部位を保護し、水分の多い環境でも使用可能にするとともに、目詰まりやガス透過率の低下を防止して検出精度の維持及び信頼性の確保を図る。
【解決手段】 所定のガス透過率を有する多孔質カバー1であって、多孔質セラミックスCにより所定の厚さDcに形成した多孔質カバー本体2の少なくとも表面2fに、撥水性材料による所定の膜厚Dsを有する撥水膜3を形成するとともに、ガス透過率を所定の範囲に選定する。撥水膜3の膜厚Dsは、0.3〜1.0〔μm〕の範囲に選定するとともに、ガス透過率は、50〜80〔%〕の範囲に選定する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ガスセンサのセンサ素子を覆う所定のガス透過率を有するセンサ用カバー等に用いて好適な多孔質カバー及びその製造方法に関する。
従来、ガス漏れ等を検知するガスセンサ(特開2002−243684号公報等参照)は知られており、通常、この種のガスセンサは、ガスの存在に反応するセンサ素子と、このセンサ素子を機械的に保護するとともにガス以外の無用な異物侵入を阻止する脱塵機能を有するセンサ用カバーを備えている。
この場合、センサ用カバーは、所定のガス透過率、例えば50〔%〕以上のガス透過率の確保が要求されるとともに、所要の脱塵機能が要求される。したがって、通常、この種のセンサ用カバーには、ガス透過率及び脱塵機能の双方の要請に応えることができる多孔質セラミックスが使用されており、上記例示の公報にも、ガス検知能を有し、1300℃までの高温下で構造が安定でかつ電極を取付けることにより高温脱塵とガス検知を同時に機能させるようにしたバルク状の多孔質セラミックスが開示されている。
特開2002−243684号
ところで、センサ用カバーに使用する多孔質セラミックスの製造方法としては、一般に、造孔剤材料を利用する造孔剤法及び造粒体材料を利用する焼結法が知られている。造孔剤法の場合、十分なガス透過率を確保するには、造孔剤の配合比率を高くする必要があるため、機械的強度(特に曲げ強さ)の低下を招いてしまう。したがって、機械的強度の要求されるセンサ用カバーには適用できない。また、焼結法の場合、所要の機械的強度は確保できるものの、連続した気孔を十分に形成できないため、必要なガス透過率を確保できない。結局、多孔質セラミックスに係わる従来の製造方法では一長一短があり、ガス透過率及び機械的強度(曲げ強さ)の双方を十分に満足し得る多孔質セラミックスを得れない問題がある。
一方、50〔%〕以上のガス透過率を確保する必要があるため、防水性の確保も問題となる。即ち、基本的に多孔質セラミックスを用いることから、水分がセンサ用カバーに浸透する虞れがあり、水分の多い環境では使用できないとともに、何らかの原因により水分が付着した場合、内側に配したセンサ素子や接続部等に悪影響を及ぼす虞れがあり、動作不良や故障の原因となる。また、水分と一緒に塵等が侵入した場合、目詰まりによりガス透過率の低下(劣化)を招き、検出精度の維持或いは信頼性の確保が難しくなる。
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した多孔質カバー及びその製造方法の提供を目的とするものである。
本発明に係る多孔質カバー1は、上述した課題を解決するため、所定のガス透過率を有する多孔質カバーであって、多孔質セラミックスCにより所定の厚さDcに形成した多孔質カバー本体2の少なくとも表面2fに、撥水性材料による所定の膜厚Dsを有する撥水膜3を形成するとともに、ガス透過率を所定の範囲に選定してなることを特徴とする。
この場合、発明の好適な形態により、撥水膜3の膜厚Dsは、0.3〜1.0〔μm〕の範囲に選定できるとともに、ガス透過率は、50〜80〔%〕の範囲に選定することができる。また、撥水性材料は、主材料としてフッソ系樹脂を用いることが望ましい。なお、多孔質カバー1としては、ガスを感知するガスセンサ10のセンサ素子11…を覆うセンサ用カバー1sに最適である。
一方、本発明に係る多孔質カバー1の製造方法は、上述した課題を解決するため、所定のガス透過率を有する多孔質セラミックスCを用いた多孔質カバーを製造するに際し、多孔質セラミックスCにより所定の厚さDcを有する多孔質カバー本体2を形成するカバー本体製作工程Sxと、この多孔質カバー本体2の少なくとも表面2fに、撥水性材料による所定の膜厚Dsを有する撥水膜3を形成する撥水膜形成工程Syを備えることを特徴とする。
この場合、発明の好適な態様により、撥水膜形成工程Syには、多孔質カバー本体2を撥水性材料を用いた撥水処理液に所定の設定時間Tsだけ浸漬する浸漬工程(S22)を含ませることができるとともに、この撥水処理液には、フッソ系樹脂:水:希釈リン酸系液の容積比を、(0.7〜1.3):(7〜13):(0.07〜0.13)に選定した処理液を用いることができる。また、多孔質セラミックスCは、セラミックス粉末原料と一又は二以上の添加剤を調合し、所定の粒度を有する造粒体材料Poを造粒するとともに、この造粒体材料Poを所定の一次加圧力Ffにより一次成形した後、所定の一次加熱温度Tfにより一次焼成することにより粒子k…の大きさが0.1〜1.0〔mm〕の範囲となる圧粉体材料Ppを得、この圧粉体材料Ppを所定の二次加圧力Fsにより二次成形した後、所定の二次加熱温度Tsにより二次焼成することができる。この際、一次焼成により成形圧粉体Caを得るとともに、この成形圧粉体Caを粉砕し、かつ粉砕した粒子k…を分級することにより、粒子の大きさが0.1〜1.0〔mm〕の範囲となる圧粉体材料Ppを得ることができる。なお、造粒体材料Poにおける粒子の大きさは、60〜120〔μm〕の範囲に選定することが望ましい。
このような本発明に係る多孔質カバー1及びその製造方法によれば、次のような顕著な効果を奏する。
(1) 多孔質セラミックスCにより所定の厚さDcに形成した多孔質カバー本体2の少なくとも表面2fに、撥水性材料による所定の膜厚Dsを有する撥水膜3を形成するとともに、ガス透過率を所定の範囲に選定したため、多孔質カバー1への水分の浸透を有効に阻止することができる。この結果、水分の多い環境でも使用可能になるとともに、何らかの原因により水分が付着した場合であっても、内側に配した部位(電子部品や接続部等)を保護することができる。また、塵等も侵入しにくくなり、目詰まり、更にはガス透過率の低下(劣化)を防止できるため、検出精度の維持及び信頼性の確保を実現できる。
(2) 好適な態様により、撥水膜3の膜厚Dsを、0.3〜1.0〔μm〕の範囲に選定すれば、撥水性の確保とガス透過率の確保をバランス良く両立させることができる。即ち、膜厚Dsが薄すぎた場合、ガス透過率の確保は容易となる反面、十分な撥水性を確保できないとともに、膜厚Dsが厚すぎた場合、撥水性の確保は容易となる反面、ガス透過率を確保しにくくなるが、膜厚Dsの範囲を、0.3〜1.0〔μm〕に選定することにより、これらを両立させることができる。
(3) 好適な態様により、ガス透過率を、50〜80〔%〕の範囲に選定すれば、特に、ガスセンサ10のセンサ素子11…を覆うセンサ用カバー1sに要請されるガス透過率を十分に確保できる。
(4) 好適な態様により、撥水性材料に、主材料としてフッソ系樹脂を用いれば、望ましい撥水性能及び製作容易性を実現できる。
(5) 好適な態様により、ガスを感知するガスセンサ10のセンサ素子11…を覆うセンサ用カバー1sに適用すれば、ガスセンサ10の使用環境の拡大及び信頼性の向上に寄与できる。
(6) 好適な態様により、撥水膜形成工程Syに、多孔質カバー本体2を撥水性材料を用いた撥水処理液に所定の設定時間Tsだけ浸漬する浸漬工程を含ませれば、撥水膜3として望ましい0.3〜1.0〔μm〕の膜厚Dsを容易かつ確実に形成することができる。
(7) 好適な態様により、撥水処理液に、フッソ系樹脂:水:希釈リン酸系液の容積比を、(0.7〜1.3):(7〜13):(0.07〜0.13)に選定した処理液を用いれば、撥水膜3を形成するための最適な粘度を得ることができる。
(8) 好適な態様により、多孔質セラミックスCを、セラミックス粉末原料と一又は二以上の添加剤を調合し、所定の粒度を有する造粒体材料Poを造粒するとともに、この造粒体材料Poを所定の一次加圧力Ffにより一次成形した後、所定の一次加熱温度Tfにより一次焼成することにより粒子k…の大きさが0.1〜1.0〔mm〕の範囲となる圧粉体材料Ppを得、この圧粉体材料Ppを所定の二次加圧力Fsにより二次成形した後、所定の二次加熱温度Tsにより二次焼成するようにすれば、ガスセンサ10のセンサ用カバー1s等における所要のガス透過率及び所要の機械的強度(曲げ強さ)の双方を十分に確保することができる。
(9) 好適な態様により、一次焼成により成形圧粉体Caを得るとともに、この成形圧粉体Caを粉砕し、かつ粉砕した粒子k…を分級することにより、粒子の大きさが0.1〜1.0〔mm〕の範囲となる圧粉体材料Ppを得るようにすれば、成形時における接触面積を小さくでき、よりガス透過率を高めることができる。
(10) 好適な態様により、造粒体材料Poにおける粒子の大きさを、60〜120〔μm〕の範囲に選定すれば、上記(8)の効果を十分に引出すことができる最適な多孔質セラミックスCを得ることができる。
次に、本発明に係る最良の実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
図2は、本実施形態に係る多孔質カバー1(センサ用カバー1s)の製造方法を順を追って示す工程図である。以下、同工程図に従って順次説明する。
多孔質カバー1を製造する製造工程は、大別してカバー本体製作工程Sxと撥水膜形成工程Syを備える。
最初に、カバー本体製作工程Sxにより多孔質カバー本体2を製作する。まず、第一材料製造工程Saにより造粒体材料Poの造粒を行う。第一材料製造工程Saでは、まず、調合工程によりセラミックス粉末原料と所要の添加剤を調合する(ステップS1)。この場合、セラミックス粉末原料には、粉末粒径が概ね0.3〔μm〕程度のアルミナ粉末(Al23)を用いる。また、添加剤には、助剤,バインダ及び純水を適量用いる。なお、助剤には、ポリアクリル酸塩等を利用できるとともに、バインダには、アクリル,PVA(ポリビニルアルコール),PEO(ポリエチレンオキサイド)等を利用できる。
セラミックス粉末原料と所要の添加剤を調合したなら、混合工程により全体を均一に混合する(ステップS2)。この場合、ボールミル装置等を使用し、所定時間にわたり機械的に撹拌することにより十分に混合する。混合工程が終了したなら造粒工程に移行する。造粒工程では、所定の粒度を有する造粒体材料Poを造粒する(ステップS3)。具体的には、噴霧乾燥装置(スプレードドライヤ装置)等を使用し、造粒体材料Poにおける粒子(顆粒)の平均径が60〜120〔μm〕の範囲、望ましくは80〔μm〕程度となるように製造する。なお、粒子の平均径が60〔μm〕未満では、成形体寸法のバラツキが大きくなるとともに、120〔μm〕を超える場合は、成形時における材料の流れが悪くなり成形が困難になる。したがって、粒子の平均径は、少なくとも60〜120〔μm〕の範囲に選定することが望ましい。以上が第一材料製造工程Saとなる。
次いで、第二材料製造工程Sbに移行する。第二材料製造工程Sbでは、まず、一次成形工程により、第一材料製造工程Saで得た造粒体材料Poを所定の一次加圧力Ffにより加圧して一次成形を行う(ステップS4)。図4は、一次成形に用いる一次成形機20を示す。一次成形では、一次成形機20のシリンダ21に、第一材料製造工程Saで得た造粒体材料Poを収容し、ラム22を一次加圧力Ffにより加圧して押出成形を行う。これにより、型盤23から矢印Ho方向に一次成形体Mfが押し出され、丸パイプ形状を有する一次成形体Mfが成形される。この場合、一次加圧力Ffは、70〜130〔MPa〕の範囲、望ましくは100〔MPa〕程度に選定する。一次成形体Mfをこのような丸パイプ形状に成形すれば、一次成形体Mfを平面形状に成形する場合に比べ、後述する二次成形時における粒子k…同士の接触面の面積を小さくできるため、よりガス透過率を高めることができる。なお、一次成形として押出成形を例示したが、プレス成形により同様の形状を成形してもよい。
そして、一次成形体Mfが得られたなら、一次焼成工程により、当該一次成形体Mfを所定の一次加熱温度Tfにより一次焼成(仮焼成)して成形圧粉体Caを得る(ステップS5)。この場合、一次加熱温度Tfは、900〜1200〔℃〕の範囲、望ましくは1000〜1100〔℃〕程度に選定する。この成形圧粉体Caを図5(a)に示す。同図(a)において、Doは成形圧粉体Caの外径を示すとともに、Diは同内径を示し、本実施形態では、Doを1.9〔mm〕、Diを1.3〔mm〕になるように選定した。なお、一次焼成は、後述する二次成形時における圧粉体材料Ppの潰れを防止するために行うものであり、一次焼成を行わない場合には、二次成形時の二次加圧力Fsを十分に高くすることができなくなり、良好な二次成形を行うことができない。
一次焼成工程により成形圧粉体Caが得られたなら、粉砕工程により成形圧粉体Caを粉砕する(ステップS6)。また、粉砕したなら分級工程により、得られた粒子k…の大きさを0.1〜1.0〔mm〕の範囲、望ましくは0.35〜0.70〔mm〕の範囲に分級する(ステップS7)。分級は、後述する金型キャビティAへの充填を可能にするためであり、充填可能なサイズを取り出すとともに、微粉末は除去することにより、製造した多孔質セラミックスCにおける気孔R…(図8参照)の閉塞を回避する。これにより、図5(b)に示す圧粉体材料Ppを得る。この圧粉体材料Ppは、丸パイプ形状を有する成形圧粉体Caを粉砕して得るため、圧粉体材料Ppにおける粒子k…同士の接触面積が小さくなり、実質的な気孔R…の開口面積を大きくすることができる。以上が第二材料製造工程Sbとなる。なお、上述した第二材料製造工程Sbでは、圧粉体材料Ppとしてランダム形状となる粒子k…を有する圧粉体材料Ppを用いたが、粒子k…の形状は、必ずしもランダム形状であることを要せず、形の揃った球形状の圧粉体材料Ppなどを用いてもよい。
他方、第二材料製造工程Sbが終了したなら主成形工程Scに移行する。主成形工程Scでは、まず、二次成形工程により、第二材料製造工程Sbで得た圧粉体材料Ppを所定の二次加圧力Fsにより加圧して二次成形を行う(ステップS8)。図6は、二次成形に用いる二次成形機30を示す。二次成形では、二次成形機30の金型キャビティAに圧粉体材料Ppを充填するとともに、可動型31を二次加圧力Fsにより加圧してプレス成形を行う。これにより、所要の形状を有する二次成形体Msが得られる。この場合、二次加圧力Fsは、8〜30〔MPa〕の範囲に選定する。このような主成形工程Scを用いれば、成形条件を設定した一般的なセラミックス成形法をそのまま利用できるため、製造コストの低減及び量産性の向上に寄与できる。
そして、二次成形体Msが得られたなら、二次焼成工程により、当該二次成形体Msを所定の二次加熱温度Tsにより二次焼成(本焼成)する(ステップS9)。この場合、二次加熱温度Tsは、1200〜1600〔℃〕の範囲に選定する。二次加熱温度Tsは、使用するセラミックス粉末原料に対応した温度を適宜設定することができる。これにより、多孔質セラミックスCによる多孔質カバー本体2を得ることができ、この多孔質カバー本体2の全体形状は、図1に示す多孔質カバー1(センサ用カバー1s)にほぼ一致する。例示する多孔質カバー本体2の寸法は、直径12〔mm〕,高さ6〔mm〕,厚さDcが1〔mm〕である。多孔質カバー本体2が得られたなら、第一検査工程により必要な検査を行う(ステップS10)。検査項目としては、多孔質カバー本体2の外径寸法,厚み寸法,高さ寸法,外観等が適用される。
このように、多孔質セラミックスCを、セラミックス粉末原料と一又は二以上の添加剤を調合し、所定の粒度を有する造粒体材料Poを造粒するとともに、この造粒体材料Poを所定の一次加圧力Ffにより一次成形した後、所定の一次加熱温度Tfにより一次焼成することにより粒子k…の大きさが0.1〜1.0〔mm〕の範囲となる圧粉体材料Ppを得、この圧粉体材料Ppを所定の二次加圧力Fsにより二次成形した後、所定の二次加熱温度Tsにより二次焼成するようにすれば、後述するガスセンサ10のセンサ用カバー1s等における所要のガス透過率及び所要の機械的強度(曲げ強さ)の双方を十分に確保することができる。特に、造粒体材料Poにおける粒子の大きさを、60〜120〔μm〕の範囲に選定すれば、これらの効果を十分に引出すことができる最適な多孔質セラミックスCを得ることができる。
この後、撥水膜形成工程Syに移行する。撥水膜形成工程Syでは、まず、撥水処理工程により、カバー本体製作工程Sxで得られた多孔質カバー本体2の少なくとも表面2fに、撥水性材料による所定の膜厚Dsを有する撥水膜3を形成する(ステップS11)。以下、撥水処理工程の具体的な処理手順について、図3に示すフローチャートに従って説明する。
カバー本体製作工程Sxで得られた多孔質カバー本体2…は、所定のバスケットに所定数量収容する(ステップS21)。そして、多孔質カバー本体2…を撥水性材料を用いた撥水処理液に設定時間Ts(例えば、20〔秒〕程度)だけ浸漬する浸漬工程を行う(ステップS22,S23)。即ち、所定数量の多孔質カバー本体2…を収容したバスケットを、所定の撥水処理液を収容した処理槽に設定時間Tsだけ浸漬する。撥水処理液には、フッソ系樹脂:水:希釈リン酸系液の容積比を、(0.7〜1.3):(7〜13):(0.07〜0.13)に選定した処理液を用いる。処理液としては粘度が重要である。粘度が小さ過ぎたり大き過ぎるときは、撥水膜3の望ましい膜厚Ds、即ち、0.3〜1.0〔μm〕の範囲の膜厚Dsが得られないとともに、多孔質カバー1の望ましいガス透過率、即ち、50〜80〔%〕のガス透過率を得れない。例示の処理液は、撥水膜3を形成するための最適な粘度を得ることができる。また、撥水性材料に、主材料としてフッソ系樹脂を用いれば、望ましい撥水性能及び製作容易性を実現できる利点がある。
一方、浸漬後、設定時間Tsが経過したなら、バスケットを撥水処理液から取出す。この場合、設定時間Tsの長さも撥水処理液と同様に重要となる。即ち、設定時間Tsの長さは撥水膜3の膜厚Ds及びガス透過率に大きく影響するため、この設定時間Tsの長さは、実験等により適宜設定し、特に、撥水膜3の望ましい膜厚Ds(0.3〜1.0〔μm〕の範囲)を得るとともに、多孔質カバー1の望ましいガス透過率(50〜80〔%〕の範囲)を得ることができるように適宜設定する。撥水膜3の膜厚Dsを、0.3〜1.0〔μm〕の範囲に選定することにより、撥水性の確保とガス透過率の確保をバランス良く両立させることができる。即ち、膜厚Dsが薄すぎた場合、ガス透過率の確保は容易となる反面、十分な撥水性を確保できないとともに、膜厚Dsが厚すぎた場合、撥水性の確保は容易となる反面、ガス透過率を確保しにくくなるが、膜厚Dsの範囲を、0.3〜1.0〔μm〕に選定することにより、これらを両立させることができる。本実施形態に係る製造方法では、撥水膜形成工程Syに、多孔質カバー本体2を撥水性材料を用いた撥水処理液に所定の設定時間Tsだけ浸漬する浸漬工程を含ませたため、撥水膜3として望ましい0.3〜1.0〔μm〕の膜厚Dsを容易かつ確実に形成することができる。さらに、ガス透過率を、50〜80〔%〕の範囲に選定することにより、後述するガスセンサ10のセンサ素子11…を覆うセンサ用カバー1sに要請されるガス透過率を十分に確保できる。
他方、撥水処理液の付着した多孔質カバー本体2…は、バスケットに収容した状態で液切りを行い、この後、設定時間Tx(例えば、10〔分〕間)にわたって常温乾燥を行う(ステップS24,S25)。そして、設定時間Txにわたって常温乾燥したなら、専用炉に収容し、設定時間Th(例えば、25〔分〕間)にわたって焼付処理を行う(ステップS26,S27)。専用炉の温度は、300〔℃〕前後に設定することが望ましい。設定時間Thにわたって焼付処理を行ったなら、専用炉から取出して常温冷却する(ステップS28)。これにより、図1に示す多孔質カバー1を得ることができる。得られた多孔質カバー1は、第二検査工程により必要な検査を行う(ステップS12)。検査項目としては、多孔質カバー1のガス透過率や撥水性能等が適用される。
このように製作される多孔質カバー1は、図1に示す抽出拡大図のように、多孔質セラミックスCにより形成された多孔質カバー本体2の表面2fに、膜厚Dsが、0.3〜1.0〔μm〕の撥水膜3が形成(コーティング)される。この場合、多孔質セラミックスCは、図8に示すように、圧粉体材料Ppの粒子k…同士の結合により成立しており、粒界となる接触面の周囲における空間により気孔R…が形成されているため、撥水膜3は、粒子k…の表面における全部又は一部にコーティングされる。しかし、気孔R…が埋まることはなく、この気孔R…に沿ったガス通路により所定のガス透過率が確保される。この際、気孔R…の幅は、500〔μm〕未満であり、水分が付着しても撥水膜3による撥水性(非濡性)が確保されるため、気孔R…に対する水分の侵入、更にはガス以外の無用な異物侵入が阻止される。図8にガス通路を点線矢印Hs…で示す。
例示の多孔質カバー1は、図7に示すように、ガスを感知するガスセンサ10のセンサ素子11…を覆うセンサ用カバー1sとして用いられる。このガスセンサ10は、ベース12の上下面に四本のリード13…が貫通し、ベース12の上面側に位置するリード13…にセンサ素子11,11を接続する。センサ用カバー1sは、図1に示すように、円筒部1sfとこの円筒部1sfの上端を閉塞する天面部1suによりカップ状に形成するため、このセンサ用カバー1sをベース12に装着してセンサ素子11…を覆うことができる。多孔質カバー1を、このようなセンサ用カバー1sに適用することにより、ガスセンサ10の使用環境の拡大及び信頼性の向上に寄与できる利点がある。
次に、図9及び図10を参照し、本実施形態に係る多孔質カバー1の特性(ガス透過率)について説明する。
図10に、多孔質カバー1のガス透過率に係わるデータ(実験結果)を示す。なお、ガス透過率は、図9に示す測定装置40により測定した。図9に示す測定装置40は、多孔質カバー1の一部を用いた試料片1tを挟んだ状態で密閉する一対の試料ホルダ41a,41bを備え、一方の試料ホルダ41aに試料片1tの一方の面に臨むガス供給管42uを接続するとともに、他方の試料ホルダ41bに試料片1tの他方の面に臨むガス排出管42dを接続する。そして、ガス供給管42uの始端に窒素ボンベ43を接続し、さらに、ガス供給管42uの中途に、減圧器(レギュレータ)44及びバルブ45を接続するとともに、ガス排出管42dの終端にデジタル流量計46を接続した構成を有する。これにより、ガス透過率を測定する際は、試料片1tをセットしない空状態で減圧器44とバルブ45を調整し、ガス流量を9〔リットル/min〕(=Qa)に、また、ガス圧を0.03〔MPa〕にそれぞれ設定するとともに、この後、図9に示すように、試料片1tを一対の試料ホルダ41a,41bの間にセットし、流量計46により流量Qbを計測すれば、(Qb/Qa)×100によりガス透過率〔%〕を求めることができる。
図10に示すデータにおいて、試験片1tのタイプ名「T70」,「T60」,「T50」,「T40」は、それぞれガス透過率が、70〔%〕,60〔%〕,50〔%〕,40〔%〕タイプの多孔質カバー1…の一部(平坦部位)を用いたサンプルである。サンプルは、それぞれ5個ずつ用意し、撥水膜3を形成する前(処理前)のサンプル(多孔質カバー本体2)の流量(ガス流量)〔リットル/min〕及び透過率(ガス透過率)〔%〕を測定するとともに、撥水膜3を形成した後(処理後)のサンプル(多孔質カバー1)の流量(ガス流量)〔リットル/min〕及び透過率(ガス透過率)〔%〕を測定したものである。
同図に示すデータから明らかなように、多孔質カバー本体2に撥水膜3を形成した場合であっても、ガス透過率の変化(低下)は僅かである。具体的には、T70タイプで1.1〔%〕の低下、T60タイプで0.7〔%〕の低下、T50タイプで0.7〔%〕の低下、T40タイプで0.2〔%〕の低下であり、基本的には、撥水膜3を形成した場合であっても撥水膜3の無い多孔質カバー本体2に比べ、ガス透過率〔%〕はほとんど低下しないことが確認できた。
一方、図11〜図15には、本実施形態に係る多孔質カバー1を製造する際に選定した諸条件の検証結果を示す。
まず、図11は、膜厚Dsの範囲0.3〜1.0〔μm〕の選定に対する検証結果を示す。膜厚Dsの範囲を、0.3〜1.0〔μm〕に選定する基本的な理由は前述したが、加えて、このような条件に選定することにより、十分な撥水効果を確保しつつ作業時間(製造工数)及び材料費を削減することができ、良好なコストパフォーマンスを得ることができる。検証には、撥水処理液による処理時間を異ならせることにより異なる膜厚Dsを設けた複数のサンプルを用いた。撥水効果については、各サンプルの表面に水滴を付着させ、10分間放置した後、水滴の接触角に変化が無い場合を撥水効果に対する合格判定(丸印)とした。
図11から明らかなように、撥水膜厚(膜厚Ds)が0.21〔μm〕を下回る場合は撥水効果が不十分となる。したがって、膜厚Dsの下限値は、十分な撥水効果を確保する観点及び余裕度を考慮し、0.3〔μm〕以上に選定した。他方、撥水処理液による処理時間が300〔秒〕を超える場合、作業効率の悪化を招くとともに、膜厚Dsも厚くなり過ぎることから材料費(コストアップ)も無視できない。図11から明らかなように、撥水膜厚が1.0〔μm〕を超える場合、処理時間が300〔秒〕を超え、しかも、ガス透過率も低下する。したがって、膜厚Dsの上限値は、1.0〔μm〕以下を選定した。図11における符号Aaで示す範囲が選定した膜厚Dsの範囲を示す。
また、図12及び図13は、ガス透過率50〜80〔%〕の選定に対する検証結果を示す。なお、ガス透過率の測定は、図9に示す測定装置40を用いた。ところで、ガスセンサの性能評価は、実用されている可燃性ガスを使用する必要があることから、一般にはLPガスの検出ガスであるイソブタンガスが用いられる。一方、「高圧ガス保安協会」における液化石油ガス用ガス漏れ警報器検定規定には、LPガス警報器の応答時間として30秒以内が定められている。したがって、市場の警報器の大半は応答時間が30秒以内である。これらの点を考慮し、検証では、2000〔ppm〕のイソブタンガスがサンプルを90〔%〕透過する時間を応答時間とし、この応答時間が30秒以内の場合を合格判定(丸印)とした。
図12及び図13から明らかなように、応答時間30秒以内の条件を満たすガス透過率は50〔%〕以上である。したがって、応答性能の要請に基づき、ガス透過率の下限値は、50〔%〕以上を選定した。他方、多孔質カバー1は、気孔率が高くなるほど、即ち、ガス透過率が高くなるほど、機械的強度は小さくなる。本実施形態に係る多孔質カバー1では、構造上、機械的強度が1.50〔kN〕以下の場合、組立工程或いは実際の使用環境等で破損しやすいことが確認されている。図12及び図13から明らかなように、機械的強度が1.50〔kN〕を超える条件を満たすガス透過率は80〔%〕以下である。したがって、強度性能の要請に基づき、ガス透過率の上限値は、80〔%〕以下を選定した。図12及び図13における符号Abで示す範囲が選定したガス透過率の範囲を示す。なお、機械的強度は、多孔質カバー1を圧縮して破壊されるときの圧縮強度を求め、この圧縮強度により機械的強度を判定した。
さらに、図14及び図15は、圧粉体材料の粒子の大きさ0.1〜1.0〔mm〕の選定に対する検証結果を示す。圧粉体材料の粒子の大きさは、ガス透過率及び機械的強度に直接影響するため、粒子の大きさの選定は、所要のガス透過率及び所要の機械的強度(曲げ強さ)の双方の性能を確保する上で重要である。上述したように、ガス透過率は、50〜80〔%〕の範囲を確保する必要があるとともに、機械的強度は、1.50〔kN〕を超える強さを確保する必要がある。図14及び図15から明らかなように、必要なガス透過率50〔%〕以上を確保するには、粒子の大きさが0.1〔mm〕以上であることが必要となり、0.1〔mm〕未満では、必要なガス透過率を確保できない。したがって、圧粉体材料の粒子の大きさの下限値は、0.1〔mm〕以上を選定した。他方、必要な機械的強度(圧縮強度)1.50〔kN〕を超える強さを確保するには、粒子の大きさが1.0〔mm〕以下であることが必要となり、1.0〔mm〕を超える場合には、必要な機械的強度を確保できない。したがって、圧粉体材料の粒子の大きさの上限値は、1.0〔mm〕以下を選定した。図14及び図15における符号Acで示す範囲が選定した粒子の大きさの範囲を示す。
よって、このような本実施形態に係るセンサ用カバー1s(多孔質カバー1)及びその製造方法によれば、多孔質セラミックスCにより所定の厚さDcに形成した多孔質カバー本体2の少なくとも表面2fに、撥水性材料による所定の膜厚Dsを有する撥水膜3を形成するとともに、ガス透過率を所定の範囲に選定したため、多孔質カバー1への水分の浸透を有効に阻止することができる。この結果、水分の多い環境でも使用可能になるとともに、何らかの原因により水分が付着した場合であっても、内側に配した部位(センサ素子11…や接続部等)を保護することができる。また、塵等も侵入しにくくなり、目詰まり、更にはガス透過率の低下(劣化)を防止できるため、検出精度の維持及び信頼性の確保を実現できる。
以上、最良の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。例えば、撥水性材料として、フッソ系樹脂を例示したが、シリコーン系樹脂など、各種撥水性材料を用いることが可能である。一方、セラミックス粉末原料としてアルミナ粉末を例示したが、ジルコニア粉末等の一般的なセラミックス材料を含む他の各種セラミックス材料(粉末原料)を用いることができる。また、一次成形及び二次成形も必要に応じて例示以外の各種成形法を用いることができるとともに、撥水性材料による所定の膜厚Dsを有する撥水膜3を形成する方法も例示以外の形成方法を排除するものではない。なお、多孔質カバー1として、ガスセンサ10のセンサ素子11…を覆うセンサ用カバー1sに適用した場合を例示したが、同様の目的で使用する各種用途、即ち、気体を通過するも水分の通過を阻止する各種フィルタ類や同種の類似部材に利用することができる。したがって、本発明におけるガスとは、水素ガス,都市ガス,LPガス,排気ガス等の各種ガスをはじめ、空気等の各種気体を含む概念である。
本発明の最良の実施形態に係る多孔質カバーの抽出拡大図を含む一部断面正面図、 同多孔質カバーの製造方法を順を追って示す工程図、 同多孔質カバーの製造方法における撥水処理工程を順を追って示すフローチャート、 同製造方法に用いる一次成形機の模式的構成図、 同製造方法により製造された成形圧粉体の一部を示す斜視図及び圧粉体材料の一部を示す拡大図、 同製造方法に用いる二次成形機の模式的構成図、 同製造方法により製造された多孔質カバー(センサ用カバー)を用いたガスセンサの内部構造を示す斜視図、 同製造方法により製造された多孔質カバーの内部構造図、 同製造方法により製造された多孔質カバーのガス透過率を測定する測定装置の構成図、 同製造方法により製造された多孔質カバーのデータ表、 同多孔質カバーを製造する際に選定した膜厚の範囲の検証結果を示すデータ表、 同多孔質カバーを製造する際に選定したガス透過率の範囲の検証結果を示すデータ表、 図12に示すデータ表を書換えたデータグラフ、 同多孔質カバーを製造する際に選定した圧粉体材料の粒子の大きさの範囲の検証結果を示すデータ表、 図14に示すデータ表を書換えたデータグラフ、
符号の説明
1:多孔質カバー,1s:センサ用カバー,2:多孔質カバー本体,2f:表面,3:撥水膜,10:ガスセンサ,11…:センサ素子,C:多孔質セラミックス,Ca:成形圧粉体,Dc:厚さ,Ds:膜厚,Sx:カバー本体製作工程,Sy:撥水膜形成工程,Po:造粒体材料,Pp:圧粉体材料,k…:粒子,Ff:一次加圧力,Fs:二次加圧力

Claims (11)

  1. 所定のガス透過率を有する多孔質カバーにおいて、多孔質セラミックスにより所定の厚さに形成した多孔質カバー本体の少なくとも表面に、撥水性材料による所定の膜厚を有する撥水膜を形成するとともに、前記ガス透過率を所定の範囲に選定してなることを特徴とする多孔質カバー。
  2. 前記撥水膜の膜厚は、0.3〜1.0〔μm〕の範囲に選定することを特徴とする請求項1記載の多孔質カバー。
  3. 前記ガス透過率は、50〜80〔%〕の範囲に選定することを特徴とする請求項1記載の多孔質カバー。
  4. 前記撥水性材料は、主材料としてフッソ系樹脂を用いることを特徴とする請求項1記載の多孔質カバー。
  5. ガスを感知するガスセンサのセンサ素子を覆うセンサ用カバーに適用したことを特徴とする請求項1記載の多孔質カバー。
  6. 所定のガス透過率を有する多孔質カバーの製造方法において、多孔質セラミックスにより所定の厚さを有する多孔質カバー本体を形成するカバー本体製作工程と、この多孔質カバー本体の少なくとも表面に、撥水性材料による所定の膜厚を有する撥水膜を形成する撥水膜形成工程を備えることを特徴とする多孔質カバーの製造方法。
  7. 前記撥水膜形成工程には、前記多孔質カバー本体を前記撥水性材料を用いた撥水処理液に所定の設定時間だけ浸漬する浸漬工程を含むことを特徴とする請求項6記載の多孔質カバーの製造方法。
  8. 前記撥水処理液には、フッソ系樹脂:水:希釈リン酸系液の容積比を、(0.7〜1.3):(7〜13):(0.07〜0.13)に選定した処理液を用いることを特徴とする請求項6記載の多孔質カバーの製造方法。
  9. 前記多孔質セラミックスは、セラミックス粉末原料と一又は二以上の添加剤を調合し、所定の粒度を有する造粒体材料を造粒するとともに、この造粒体材料を所定の一次加圧力により一次成形した後、所定の一次加熱温度により一次焼成することにより粒子の大きさが0.1〜1.0〔mm〕の範囲となる圧粉体材料を得、この圧粉体材料を所定の二次加圧力により二次成形した後、所定の二次加熱温度により二次焼成することを特徴とする請求項6記載の多孔質カバーの製造方法。
  10. 前記一次焼成により成形圧粉体を得るとともに、この成形圧粉体を粉砕し、かつ粉砕した粒子を分級することにより、粒子の大きさが0.1〜1.0〔mm〕の範囲となる圧粉体材料を得ることを特徴とする請求項9記載の多孔質カバーの製造方法。
  11. 前記造粒体材料における粒子の大きさは、60〜120〔μm〕の範囲に選定することを特徴とする請求項9記載の多孔質カバーの製造方法。
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