JP2007261838A - 層間架橋粘土多孔体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】炭素数11〜17の炭化水素鎖を疎水基とするカルボン酸塩又はベンゼン若しくはベンゼン誘導体を疎水基とするカルボン酸塩とポリ塩化アルミニウムとの反応物をピラー材として、水溶性高分子溶液に分散させた膨潤性粘土鉱物の層間に挿入した状態とし、その後にピーク材にて粘土鉱物の層と層とを架橋反応させて層間架橋粘土多孔体を得る。
【選択図】 図1
Description
これら多孔体のうち、メソポーラス多孔体は高分子物質に対する吸着能を有し、ガス凝縮吸着や溶液中の不純物除去といった利用目的に開発が進められている。
その応用分野は材料分野に限らず、環境エンジニアリング,食品工業,農業分野等多岐にわたる。
(a)醸造製品の滓下げ剤
(b)調湿材料,結露防止材,除湿材
(c)排水の浄化材用酵素担体
(d)肥料,防虫剤,農薬などの徐放材
等、2〜15nm程度の細孔を要する用途への好適な材料として期待されている。
排水の浄化材用酵素担体は、酵素担持によって排水中の汚れを酵素により分解するもので、徐放材は肥料とか農薬を事前に含ませておいてそれを徐々に放出するものである。
尤もシリカゲルにはメソポーラス多孔体も知られているが、シリカゲルの場合耐水性が無く、メソポーラスではあっても上記の用途には使用することができない。
しかしながら従来の層間架橋粘土多孔体はミクロポーラス多孔体であり、上記用途の材料として使用することができない。
そこで層間架橋粘土多孔体において孔径を大きくするための研究が行われている。
例えば、溶媒に分散させた膨潤性粘土鉱物にPVA(ポリビニルアルコール)等の水溶性高分子を架橋補助材として加えてこれを粘土鉱物の層間に介挿することで層間隔を広く保持し、そして膨潤状態にある粘土鉱物の層間を無機質材で架橋して層間架橋粘土多孔体を得る製造方法が開発されている(下記特許文献1,特許文献2,特許文献3,特許文献4,特許文献5)。
前者の遠心分離にて目的物を回収する場合、遠心分離による目的物の回収自体に非常に手間がかかる問題がある他、遠心分離によって、層間の間隔を保っていた水溶性高分子が層間から強制的に除去されてしまうために、その後これを焼成したときに層間が縮まって層間隔が小さくなり、得られる多孔体の孔径が小さくなってしまう。
図において10は膨潤性粘土鉱物を表しており、SiO4の4面体より構成された層と、Al又はMgとO及びOHにより構成される8面体層とが上下に結合したものを1つの単位とする層12と12とが積層している。
各層12はAl→Mg置換や格子欠陥により負の電荷を有しており、層間にはNa+,K+,Ca2+,Mg2+(以下Na+で代表する)等の交換性陽イオン14が周りを水分子で囲まれて入り込んでいる。
図1中22はその水溶性高分子を表している。
そのようにして間隔が広く保持された層12と12との間に上記の反応物20が取り込まれ、層12間に挿入される。
また反応物20は、カルボン酸陰イオンが付加することで全体として疎水性が付与されている。
即ち先ず膨潤性粘土鉱物10を、水溶性高分子22を水溶媒に溶解した水溶性高分子溶液に混合分散させる。
(II)はこのときの状態を表しており、PVA等の水溶性高分子22は、水が層12と12との間に取り込まれるのと同じ原理で層12と12との間に取り込まれる。そして層12と12との間に取り込まれた高分子22が突っ支い棒としての働きをなして、層12と12との間を広げ且つその広い間隔にこれを保持する。
そしてその後にカルボン酸塩を溶液中に加えて、カルボン酸塩とポリ塩化アルミニウムとを反応させる。
このようにして(IV)に示しているようにその反応物20を層12と12との間に挿入、即ち層間挿入させた状態とすることができる。
それ故工程(IV)の膨潤性粘土鉱物10は、遠心分離その他の分離方法で容易に回収することができるが、本発明では好適には工程(IV)の膨潤性粘土鉱物10を濾過による分離によってこれを回収する。
ところがこの遠心分離は何回も操作が必要で非常に面倒な操作となり、最終的な層間架橋粘土多孔体を大量生産しようとすると実際には採用困難な方法である。即ちこの方法は量産には適していない。
またこのような遠心分離を施した場合、層12と12との間に存在して、層間の距離を広く保っていた水溶性高分子22の多くないしは一部が水とともに層12間から除去されるため、層12と12との間は縮まって層間隔が狭くなり((V)´参照)、その後の焼成によって得られる層間架橋粘土多孔体15の孔隙(孔径)も小さくなってしまう。
このとき層間に存在している水溶性高分子22もまた一部が層間の水とともに層12と12との間から除去されるが、層12と12との間には嵩高い反応物20が依然として存在しているため、層12と12との間は依然として広い間隔に保持される。
そのため本発明によれば、その後の焼成によって従来に増して孔径の大きなメソポーラスの層間架橋粘土多孔体15が得られるのである。
尚その焼成に際してはポリ塩化アルミニウムがアルミナの柱となって層12と12とを架橋し、層間架橋粘土多孔体を形成する。
また製造過程で目的の粘土鉱物を回収したときに余分な成分を除去できるため、層間架橋粘土多孔体の特性も良好で、優れた品質の層間架橋粘土多孔体を得ることができる。
尚本発明では炭素数11〜17の炭化水素鎖を疎水基とするカルボン酸塩としてラウリン酸ナトリウム,ミリスチン酸ナトリウム,パルミチン酸ナトリウム,ステアリン酸ナトリウム,オレイン酸ナトリウムを好適に用いることができる。
一方ベンゼン若しくはベンゼン誘導体を疎水基とするカルボン酸塩として安息香酸ナトリウム,サリチル酸ナトリウムを好適に用いることができる。
また本発明では、水溶性高分子としてPVA,PEO(ポリエチレンオキサイド)PEG(ポリエチレングリコール)の何れか1種若しくは2種以上を好適に用いることができ(請求項2)、また膨潤性粘土鉱物としてスメクタイト又は膨潤性雲母鉱物を好適に用いることができる(請求項3)。
(原料液調整)
膨潤性粘土鉱物である合成ヘクトライト(トピー工業株式会社製,NHT-70B,C.E.C:0.7meq/g)を蒸留水に分散させ、6.6mass%粘土懸濁液とした。また水溶性高分子であるポリビニルアルコール(和光純薬株式会社製、完全けん化型、平均重合度900〜1100)を蒸留水に加熱溶解させ、10mass%PVA溶液とした。そして6.6mass%粘土懸濁液と10mass%PVA溶液とを重量比3:1の比率で混合し、粘土5.0mass%-PVA2.5mass%溶液(以下粘土溶液H)とした。
塩素含有ポリカチオンであるポリ塩化アルミニウム溶液(多木化学株式会社製、タキバイン#1500)を溶液100gに対してAlが0.1molとなるように希釈し、Al 0.1mol/100g溶液(以下Al溶液)とした。
(インターカレーション)
粘土溶液H200gにAl溶液210g(粘土溶液中の粘土分に対して、Al2O3換算で重量比1)を加え、1時間撹拌した後、80℃の恒温槽中で36時間保持してインターカレーションを行った。
(疎水性の付与)
インターカレーション後の溶液に、脂肪酸塩溶液(ラウリン酸ナトリウム21.79gを蒸留水200gに加熱溶解させたもの)を加え、1時間撹拌した後、80℃の恒温槽中で24時間保持して疎水性の付与を行った。
(固液分離・焼成)
疎水性を付与した溶液を濾過洗浄し、室温で乾燥後、320℃で4時間、600℃で4時間の加熱焼成処理を行って層間架橋粘土多孔体を得た。
実施例1の(疎水性の付与)において、芳香族カルボン酸塩溶液(サリチル酸ナトリウム15.69gを蒸留水200gに溶解させたもの)を脂肪酸塩溶液の代わりに用いた以外は、実施例1と同様の工程で層間架橋粘土多孔体を得た。
実施例1の(インターカレーション)において、Al溶液を105g(粘土溶液中の粘土分に対して、Al2O3換算で重量比0.5)とした以外は、実施例1と同様の工程で層間架橋粘土多孔体を得た。
(原料液調整)
膨潤性粘土鉱物であるモンモリロナイト(クニミネ工業株式会社製、クニピアF,C.E.C:1.15meq/g)を蒸留水に分散させ、2.2mass%粘土懸濁液とした。そして、この粘土懸濁液と実施例1記載の10mass%PVA溶液を、重量比9:1の比率で混合し、粘土2.0mass%-PVA1.0mass%溶液(以下粘土溶液M)とした。
実施例1記載のポリ塩化アルミニウム溶液を原液のまま用い、Al0.46mol/100g溶液(以下Al原溶液)とした。
(インターカレーション)
粘土溶液M500gにAl原溶液45g(粘土溶液中の粘土分に対して、Al2O3換算で重量比1)を加え、1時間撹拌した後、80℃の恒温槽中で36時間保持してインターカレーションを行った。
(疎水性の付与),(固液分離・焼成)共に実施例1と同様の工程で層間架橋粘土多孔体を得た。
実施例4の(インターカレーション)において、Al原溶液を23g(粘土溶液中の粘土分に対して、Al2O3換算で重量比0.5)とした以外は実施例4と同様の工程で層間架橋粘土多孔体を得た。
実施例1の(疎水性の付与)において、ラウリン酸ナトリウムを加えずに蒸留水200gのみを加え、1時間撹拌した後、80℃の恒温槽中で24時間保持したものを比較例1とし、実施例1との濾過性の比較を行った。
各溶液を100ml採取して吸引濾過を行ったところ、実施例1の溶液は4分半で濾過が完了したのに対し、比較例1では30分経過後でも6mlしか固液の分離ができなかった。(濾過条件:φ90mmNo.5B濾紙、水流アスピレーター使用)
そのため、比較例1の溶液は全量遠心分離で固液を分離し、実施例1と同様の焼成を行って層間架橋粘土多孔体を得た。
これら実施例と比較例で得られた層間架橋粘土多孔体の比表面積、細孔径分布のピーク値を表1及び図2に示した。ここで比表面積,細孔径分布の測定は窒素吸着で行った。
更に比較例1では目的物である粘土鉱物を吸引濾過にては分離回収することができなかったのに対し、各実施例のものは何れも簡単に吸引濾過によって目的とする粘土鉱物を簡単に分離回収することができた。
12 層
16 カルボン酸塩
18 ポリ塩化アルミニウム
20 反応物
15 層間架橋粘土多孔体
Claims (4)
- 炭素数11〜17の炭化水素鎖を疎水基とするカルボン酸塩又はベンゼン若しくはベンゼン誘導体を疎水基とするカルボン酸塩とポリ塩化アルミニウムとの反応物をピラー材として、水溶性高分子溶液に分散させた膨潤性粘土鉱物の層間に挿入した状態とし、その後に該ピラー材にて該粘土鉱物の層と層とを架橋反応させることを特徴とする層間架橋粘土多孔体の製造方法。
- 請求項1において、前記水溶性高分子がPVA,PEO,PEGの何れか1種若しくは2種以上であることを特徴とする層間架橋粘土多孔体の製造方法。
- 請求項1,2の何れかにおいて、前記膨潤性粘土鉱物がスメクタイト又は膨潤性雲母鉱物であることを特徴とする層間架橋粘土多孔体の製造方法。
- 請求項1〜3の何れかにおいて、前記ピラー材を層間に挿入した前記粘土鉱物を溶媒から濾過により分離回収した後450〜950℃で加熱処理することを特徴とする層間架橋粘土多孔体の製造方法。
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