以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(第1の実施の形態)
図1ないし図18は本発明の第1の実施の形態に係り、図1及び図2は第1の実施の形態のカプセル型医療装置誘導システムの全体構成を示し、図3はカプセル本体の側面図及び正面図を示し、図4(A)及び(B)は操作入力装置の構成及びその操作に対応した情報を表示する画像表示画面を示し、図5は回転磁界を印加する時の回転磁界の変化の様子等を示し、図6は振動磁界を印加した場合のカプセル型医療装置が受ける偶力の様子を示し、図7は回転磁界と振動磁界の周波数や強度を変化させた場合のカプセル型医療装置の先端が描く軌跡を示し、図8は回転磁界の周波数と振動磁界の周波数を等しくした場合等における軌跡を示し、図9はサンプルを用いて回転磁界と振動磁界を印加した場合の推進速度の測定結果等を示し、図10は屈曲した管腔臓器や広い管腔臓器内を推進させる場合の動作説明図を示し、図11はカプセル型医療装置の中心軸をx′方向に設定した座標系で回転磁界などを印加する場合の説明図を示し、図12はカプセル型医療装置の向きを変更する方向入力の指示がされた場合におけるカプセルの向き及び回転磁界の方向の計算の説明図を示し、図13はカプセル型医療装置の新しい向きを極座標系で示した説明図を示し、図14はカプセル型医療装置の内部構造の配置図を示し、図15は図14において、マグネットを後端側に配置した変形例の配置図を示し、図16は図14において、マグネットを観察窓側に配置した変形例の配置図を示し、図17は図15の配置の場合に対して振動磁界を印加した場合の動作の説明図を示し、図18はマグネットをカプセル型医療装置本体の中心付近と端部付近とにそれぞれ配置した場合における誘導を行った際の運動の違いを示す。
図1及び図2に示すように、本発明の医療装置誘導システムの第1の実施の形態のカプセル型医療装置誘導システム1は、図示しない患者の体腔内に挿入(導入)され、体腔内を撮像するカプセル型内視鏡として機能するカプセル型医療装置3(以下、カプセルと略記)と、患者の周囲、つまり体外に配置され、カプセル3に回転磁界及び偶力発生用磁界(又は振動磁界)を印加する回転磁界発生装置4と、この回転磁界発生装置4に回転磁界を発生させる駆動電流の供給制御を行う磁界制御装置(或いは電源制御装置)5と、患者の体外に配置され、カプセル3と無線通信を行い画像処理を行うと共に、操作者の操作に応じて磁界制御装置5を制御して、カプセル3に印加される回転磁界の方向や大きさ等を制御する処理を行うパーソナルコンピュータ等で構成される処理装置6と、この処理装置6に接続され、カプセル3により撮像した画像等を表示する表示装置7と、処理装置6に接続され、術者などの操作者が操作することにより、操作に対応した指示信号を指示入力する操作入力部8とを有する。
図4(A)に示すようにこの操作入力部8は、体内に挿入されたカプセル3を推進させようとする方向の入力指示を行う方向入力装置8a、操作に対応した回転周波数の回転磁界の指示信号を発生する回転周波数入力装置8b、回転磁界の強度の強度の調整操作する回転磁界の強度調整装置8c、振動(或いは偶力発生用)磁界の強度調整装置8d、振動(偶力発生用)磁界の周波数調整装置8e、方向入力装置8aを構成するジョイスティック9の例えば頂部に設けられ、振動(或いは偶力発生用)磁界の印加のON/OFFを行う振動(或いは偶力発生用)ON/OFFスイッチ(振動スイッチと略記)8fとを備えている。なお、以下では、振動(偶力発生用)磁界を振動磁界として(殆ど)表記する。
図3に示すように、カプセル3は略円筒形状ないしはカプセル形状にして体内への挿入部ともなる外装容器11の外周面に回転を推力(推進力)に変換する推力発生構造部となる螺旋状突起(或いはスクリュウ部)12が螺旋状に設けてある。
この螺旋状突起12は、外装容器11の外周面に丸みを設けた略半球状等の断面構造にして、体内の内壁面に滑らかに接触する。
また、この外装容器11で密閉された内部には、対物レンズ13及びその結像位置に配置された撮像素子14とからなる撮像手段を収納している。また、この外装容器11内には、撮像を行うために必要となる照明する照明素子15(図2参照)等の他に、カプセル3をより円滑に推進させるのに利用するマグネット(永久磁石)16が収納されている。
図3に示すように対物レンズ13は、円筒状のカプセル3における挿入軸とも言える中心軸C上にその光軸が一致するようにして、例えば外装容器11における半球状で透明にされた先端カバー11aの内側に配置されており、先端カバー11aの中央部分が図3(B)に示すように観察窓17となる。なお、図3では示していないが、照明素子15は対物レンズ13の周囲に配置されている。
従って、この場合には、対物レンズ13視野方向は対物レンズ13の光軸方向、つまり、カプセル3の円筒状の中心軸Cに沿った方向となる。
また、カプセル3内の長手方向の中央付近に配置されたマグネット16は、図3に示すように中心軸Cと直交する方向にN極及びS極が形成されるように配置されている。この場合、マグネット16の中心は、このカプセル3の重心位置に一致するように配置され、外部から磁界を印加した場合にマグネット16に作用する磁気的な力の中心がカプセル3の重心位置となり、磁気的にカプセル3を円滑に推進させやすい構成にしている。
また、図3(B)に示すように、マグネット16の着磁の方向、つまり双極子の方向が撮像素子14の特定の配置方向に一致するように配置している。
つまり、撮像素子14により撮像された画像が表示される場合の上方向が、マグネット16のS極からN極に向かう方向に設定されている。
そして、回転磁界発生装置4により回転磁界をカプセル3に印加することにより、マグネット16を磁気的に回転させ、このマグネット16を内部に固定したカプセル3をマグネット16と共に回転させ、その際カプセル3の外周面に設けた螺旋状突起12は体腔内壁に接触して回転され、カプセル3を推進させることができるようにしている。
また、本実施の形態では図6(A)及び図6(B)にその基本的な機能(作用)の概略を示すように(振動スイッチ8fをONにする操作を行うことにより)回転磁界発生装置4によりカプセル3の中心軸C方向に磁界方向が変化する振動磁界(偶力発生用磁界)Hmをカプセル3に印加できるようにして、このカプセル3に内蔵したマグネット16に対して、図6(A)及び図6(B)の矢印で示すように中心軸Cと平行で、かつ逆方向に等しい力(つまり偶力)を作用できるようにしていることが特徴となっている。
この場合、偶力はマグネット16の両磁極を結ぶ線上で両磁極の各位置において、中心軸Cと平行で、力の大きさが等しく、かつその向きが互いに逆となり、カプセル3を回転させるように作用する。
本実施の形態では、外部からの磁界によりマグネット16に対して偶力が働くようにしているが、後述する第2の実施の形態等で説明するようにカプセル3をその長手方向の挿入軸の向きを首振り的に振動或いは傾動等させるようにする傾動(揺動)機構或いは重心位置を変更するような擬似的な偶力発生手段の構造にしても良い(偶力を形成する一方に相当するような力を発生或いは作用させるようにしても良い)。
また、本実施の形態では、外部磁界によりマグネット16を内蔵したカプセル3を制御するようにした場合には、外部磁界の方向からカプセル3により撮像された画像の上方向がどの方向であるかを知ることができるようにしている。
カプセル3内には、上述した対物レンズ13、撮像素子14、照明素子15、マグネット16の他に図2に示すように、撮像素子14で撮像された信号に対する信号処理を行う信号処理回路20と、信号処理回路20により生成されたデジタル映像信号を一時記憶するメモリ21と、メモリ21から読み出した映像信号を高周波信号で変調して無線送信する信号に変換したり、処理装置6から送信される制御信号を復調等する無線回路22と、信号処理回路20等カプセル3を制御するカプセル制御回路23と、信号処理回路20等カプセル3内部の電気系に動作用の電源を供給する電池24とが収納されている。
また、このカプセル3と無線通信を行う処理装置6は、前記無線回路22と無線通信を行う無線回路25と、無線回路25と接続され、カプセル3から送られた画像データに対する画像表示等のデータ処理等を行うデータ処理回路26と、データ処理回路26や電源制御装置5等を制御する制御回路27と、前記電源制御装置5を介して回転磁界発生装置4により発生される回転磁界の状態の情報と方向入力装置8a等による設定の情報を記憶する記憶回路28とを有する。
データ処理回路26には、表示装置7が接続され、撮像素子14で撮像され、無線回路22、25を経てデータ処理回路26により処理された画像等が表示される。また、このデータ処理回路26はカプセル3が回転されながら画像を撮像するので、表示装置7に表示される際の画像の向きを一定の方向に補正する処理を行い、術者が見やすい画像を表示できるように画像処理を行う(特願2002−105493号に記載)。
制御回路27には、操作入力装置8を構成する方向入力装置8a、回転周波数入力装置8b等から操作に対応した指示信号が入力され、制御回路27は指示信号に対応した制御動作を行う。
また、制御回路27は記憶回路28と接続され、記憶回路28に磁界制御装置5を介して回転磁界発生装置4により発生する回転磁界の向き及び磁界の向きの情報を常時記憶するようにしている。そして、その後に、回転磁界の向きや磁界の向きを変化させる操作が行われた場合にも、回転磁界の向きや磁界の向きを連続的に変化させ、円滑に変化させることができるようにしている。なお、記憶回路28を、制御回路27内部に設けるようにしても良い。
また、制御回路27と接続された磁界制御装置5は、交流電流を発生すると共に、その周波数や位相を制御する3個の交流電流発生&制御回路からなる交流電流発生&制御部31と、各交流電流をそれぞれ増幅する3個のドライバからなるドライバ部32とを有し、3個のドライバの出力電流は回転磁界発生装置4を構成する3個の電磁石33a、33b、33cにそれぞれ供給される。
この場合、電磁石33a、33b、33cは、直交する3軸方向の磁界を発生するように配置されている。回転磁界発生装置4の例としては33a、33b、33cがそれぞれヘルムホルツコイルで、それぞれの磁界発生方向が直交している3軸ヘルムホルツコイル等が考えられる。
そして、図4(A)に示す操作入力装置8を構成する方向入力装置8aを操作することにより、磁界方向の指示信号を発生したり、回転周波数入力装置8bを操作することにより操作に対応した回転周波数の回転磁界の指示信号を発生したり、振動(ON/OFF)スイッチ8fを操作することにより振動磁界の強度調整装置8d等で設定した(交流の或いは周期的な)振動磁界を発生するにより、カプセル3のマグネット16に対して、カプセル3の長手方向の中心軸Cの中心点の回りでその中心軸C自体を回転させるような偶力を発生させることができるようにしている。この場合、中心軸C自体を完全に回転させる前に振動磁界(偶力として作用)の向きを逆方向に変更するように交流ないしは周期的に印加するため、カプセル3は傾動或いは振動させられるようになる。
なお、図4(A)において、方向入力装置8aではジョイスティック9を進行させたいと望む方向に傾動することにより、その方向にカプセル3を移動させるように回転磁界を発生させるようになる。
図5は例えば回転磁界の印加時の様子を示しており、カプセル3に対して、回転磁界を印加することによりカプセル3に内蔵されたマグネット16を回転させることができ、この回転によりカプセル3を前進或いは後退させることができる。
そして、図5に示すように、カプセル3の長手方向の中心軸Cの方向(図5ではy′)に垂直な回転磁界平面でその回転磁界の極の向きが変化する回転磁界を印加し、カプセル3内にその長手方向に垂直な方向に固定されたマグネット16と共にカプセル3をその長手方向の回りで回転させ、その回転方向に応じて図3に示した螺旋状突起12により体腔内壁と係合させて前進或いは後退させることができるようにしている。
また、本実施の形態では、図5における長手方向の中心軸Cの方向y′の回りでマグネット16を揺動(振動)させるように働く振動磁界(偶力発生用磁界)をカプセル3に印加できるようにしている。そして振動磁界印加時には実線で示す状態から例えば点線で示す状態(その中心軸方向をyz′で示す)に長手方向を変化(振動)させることができる。
これらにより、カプセル3はその長手方向の中心軸Cの回りで回転されると共に、その回転の中心軸Cの方向が傾くように偏心される。つまり、回転する独楽の回転トルクが小さくなり、重力の作用で心棒が揺れるような動作(以下この動作をジグリング動作と呼ぶ)を行うような状態にできるようにしている。
このようにして、カプセル3をそのカプセル3の直径と略同じ程度の管腔内でその管腔の長手方向に沿って進行或いは後退させるような場合には、カプセル3をその長手方向の回りで回転させる回転磁界を印加することにより、スムーズに移動させることができる。
これに対して、管腔の曲がっているような部分(図10(A)参照)で、カプセル3が曲がり部分に当たり、単に長手方向の回りで回転させた場合には屈曲している方向にスムーズに移動させにくい場合がある。
そのような場合には、上述のようにカプセル3の長手方向の中心軸Cに沿ってその中心の周りで、かつ中心軸Cを回転させるような力が作用するように振動磁界を印加することにより、カプセル3をジグリング動作をさせ、ジグリング動作の際の長手方向が管腔の屈曲方向の状態になった場合にその方向にスムーズにカプセル3を移動させることができるようにしている(図10(A)を参照して後述)。
なお、ジョイスティック9を傾動させることにより、現在の進行方向から所望とする任意の方向に回転磁界の向きを制御できるように、カプセル3の状態或いは回転磁界の状態を常時把握している。本実施の形態では、回転磁界の状態(具体的には、回転磁界の向き及び磁界の向き)を記憶回路28に常時記憶するようにしている。
具体的には、図2における操作入力部8における操作の指示信号は制御回路27に入力され、制御回路27は指示信号に対応した回転磁界を発生させる制御信号を磁界制御装置5に出力すると共に、その回転磁界の向き及び磁界の向きの情報を記憶回路28に記憶する。
従って、記憶回路28には、回転磁界発生装置4により発生される回転磁界及びその回転磁界を形成する周期的に変化する磁界の向きの情報が常時記憶されるようになっている。
なお、記憶回路28は制御回路27からの回転磁界の向き及び磁界の向きの制御信号に対応する情報を記憶する場合に限定されるものでなく、制御回路27から磁界制御装置5に出力された制御信号により、磁界制御装置5における交流電流発生&制御部31及びドライバ部32を経て回転磁界発生装置4に実際に出力される回転磁界の向き及び磁界の向きを決定する情報を磁界制御装置5側から制御回路27に送り、記憶回路28に記憶するようにしても良い。
また、本実施の形態では、回転磁界の印加開始時及び印加停止時や回転磁界の向き(換言するとカプセルの進行方向の向き)等を変更する場合には、カプセル3に急激な力が作用することなく円滑に作用するように回転磁界を連続的に変化させるように制御するようにしている。
また、本実施の形態では、カプセル3の回転により、撮像素子14で撮像された画像も回転することになるので、これをそのまま表示装置7に表示すると、表示される画像も回転した画像となってしまい、方向入力装置8bによる所望の向きへの指示操作の操作性が低下するため表示画像の回転を静止させることが望まれる。
そこで、本実施の形態では、特願2002−105493号で説明しているように回転画像を回転が静止した画像に補正する処理をデータ処理回路26及び制御回路27で行うようにしている。
なお、磁界の向き情報を元に、画像を回転させ、カプセル3の回転をキャンセルさせて表示させるようにしても良い(また、画像の相関処理等を行って、所定の向きの静止画を表示するようにしてもよい)。
そして、図4(B)に示すように表示装置7の表示画面7aにおいて、例えば円形の表示エリア7bに撮像素子14で撮像した静止画像を表示すると共に、矢印7cにより、ジョイスティック9の操作方向及び矢印7cの大きさで操作量を表す。また、矢印7cの表示色により、前進/後進を表すようにしている。
また、表示画面7aの例えば下方の隅の回転磁界の周波数表示エリア7dに回転磁界の周波数を表示するようにしている。
このような構成による本実施の形態における特徴となっている回転磁界や振動磁界による代表的な作用をまず説明する。
図6(A)及び図6(B)は、振動磁界Hmを印加した様子を示す。図6(A)では振動磁界Hmにより、カプセル3の内部に固定されたマグネット16を反時計回り方向に回転させる偶力が矢印で示す作用線のように働く。この偶力はカプセル3の中心軸Cと平行な方向に作用する。
このように振動磁界Hmにより、カプセル3は実線で示す状態から2点鎖線で示すような方向に回転させられるような力(偶力)を受ける。
また、図6(A)と逆向きの振動磁界Hmを発生することにより、図6(B)に示すようにカプセル3の内部に固定されたマグネット16を時計回り方向に回転させる偶力が働き、カプセル3は実線で示す状態から2点鎖線で示すような方向に回転させられる。
また、図7(A)は、回転磁界Hrの周波数frと振動磁界Hmの周波数fmの関係をfr<fmとして、回転磁界Hrと振動磁界Hmとを印加した状態でのカプセル3の先端面側から見た場合の(カプセル先端中心位置の)軌跡Trを示す。
また、図7(B)は、図7(A)において、さらに回転磁界Hrの強度に対して振動磁界Hmの強度をその1/2にした状態でのカプセル3の軌跡Trを示しており、図7(A)の場合に対して、回転中心から首振りする角度がその1/2になっている。
また、図8(A)は図7(A)において、回転磁界Hrの周波数frと振動磁界Hmの周波数fmと等しくした状態、つまりfr=fmにした状態でのカプセル3の軌跡Trを示している。
この条件では、一方(図8(A)では左側)に偏心して首振りするような動作状態(軌跡Tr)となる。
このため、片側に押し広げたいような場合に有効となる。
また、図8(B)は図7(A)において、回転磁界Hrの周波数frを振動発生用磁界Hmの周波数fmの1/2にした状態、つまりfr=fm/2にした状態でのカプセル3の軌跡Trを示している。
また、本実施の形態では、図9(A)に示すように容器31内に水32を充満し、その底部側にシリコンチューブ33内にカプセル3を挿入して、体腔内の管路にカプセル3を挿入した状態を模擬した状態を設定している。
そして、この容器31を図1に示した回転磁界発生装置4内に配置し、この回転磁界発生装置4によりシリコンチューブ33の長手方向(図9(A)において左右方向)の右側に進行(前進)及び左側に進行(後進)させるような回転磁界を印加すると共に、振動磁界をその周波数を変化させて印加し、カプセル3が2cm移動した場合の時間を測定してその移動速度を算出した。
この場合、回転磁界の周波数は1Hz、その磁界強度は100Oe、振動磁界の強度は50Oe、水位20cm、カプセル3の螺旋状突起12の形成角度は45°で2条に形成したものを採用した。また、本実施の形態では、シリコンチューブ43を少し右下がり(つまり、左側が高くなるよう)に傾斜する状態で行った。つまり、右側が前進(下り)、左側が後進(上り)となる。
その測定結果は、後進の場合には図9(B)となり、前進の場合には図9(C)のようになった。図9(B)及び図9(C)の結果からは回転磁界の周波数よりも振動磁界の周波数を高くした場合、特に後進させて登る方向に移動させる場合に有効となる。
また、本実施の形態の条件では、振動磁界の周波数としては、略2〜10Hzが推進速度に有効と考えられるデータとなっている。また、回転磁界の周波数に対しては略2〜10倍の振動周波数が推進速度に有効と考えられるデータとなっている。
次に本実施の形態の全体的な作用を説明する。
カプセル3により体腔内を検査する場合、患者はこのカプセル3を飲み込む。体腔内に挿入されたカプセル3は食道等を通過する際に、照明素子15で照明し、撮像素子14で撮像した画像を無線回路22を経て体外の処理装置6に無線で送る。
処理装置6は、無線回路25で受信し、復調された画像データをデータ処理回路26内部などに設けた(ハードディスク等の)画像記憶デバイスに蓄積すると共に、表示用の処理を行い、表示装置7に出力してカプセル3により順次撮像された画像を表示する。
表示装置7に表示される画像から術者はカプセル3が現在の体腔内における概略の位置を推測することができる。例えば、食道を撮像している状態であると判断し、検査対象とする部位が例えば小腸等のより深部側である場合には、途中の部位をより速やかに進行させた方が良く、この場合には回転磁界発生装置4で発生する回転磁界の向き(法線方向の向き)を患者の身長に沿った下側となるように初期設定を行う。なお、この場合におけるカプセル3に設けた螺旋状突起12は撮像素子14で撮像する視野方向を前側として例えば右ネジ状に形成されているとする。
回転磁界を発生させるべく、例えば、方向入力装置8a等を最初に操作した場合には、記憶回路28にはその直前の回転磁界の状態に対応する情報が記憶されていないので、制御回路27は設定回路29を起動して初期設定の設定画面を表示装置7等に表示し、初期設定で発生する回転磁界の向きを術者に選択設定できるようにする。そして、術者は最初に回転磁界を発生する向きを患者の身長に沿った下側に発生する指示操作を行うことにより、回転磁界の初期発生情報が記憶回路28に記憶される。
また、設定回路29により、回転磁界の大きさ(振幅)を予め設定し、この値以上の回転磁界を発生しないように設定することもできる。この設定回路29による設定情報は記憶回路28に記憶される。
そして、操作入力装置8の図4(A)のジョイスティック9および操作レバー8bを傾動するような操作を行うことにより、患者の身長に沿った下側が回転磁界の向きとなるように回転磁界が発生するように制御回路27は記憶回路28に記憶された情報を読み出して制御する。つまり記憶回路28から読み出した情報に基づいて磁界制御装置5を介して回転磁界発生装置4により前記回転磁界を発生させる。
このようにして、体外から回転磁界を印加することにより、体腔内に挿入されたカプセル3に内蔵されたマグネット16に磁気トルクを作用させ、カプセル3を回転させ、その際カプセル3の外周面に設けた螺旋状突起12を体腔内の内壁に接触させた状態でネジを回転させるようにして速やかに推進させることができる。
また、記憶回路28には回転磁界の状態(回転磁界の向き及び磁界の向き)の情報が常時記憶され、回転磁界の印加を停止した状態での回転磁界の状態の情報も記憶される。
そして、次に再度回転磁界を印加する操作が行われた場合には、記憶回路28に記憶された情報により、回転磁界を停止した場合と同様の回転磁界を発生する。
このようにして、カプセル3を体腔内の管路に沿って推進させることができるが、例えば図10(A)に示すように比較的狭い管腔41内において、より狭くなった屈曲部42が存在して屈曲している場合には、単に回転磁界のみでは屈曲部42に沿って効率良く進行させにくくなる場合がある。
このような場合には、図7(A)等に示したように回転磁界と共に振動磁界を印加してカプセル3にはさらに偶力を作用させることにより、カプセル3をその長手方向の軸の回りで首振り的なジグリング動作をさせることができる。
その首振り的な作用により図10(A)の点線で示すように屈曲部42の管腔部分を押し広げると共に、屈曲部42の屈曲方向を向いた状態の時にその方向に推進させることができる。
また、図10(B)はカプセル3の外径よりも広い管腔41を効率的に推進させる場合の作用を示す。
図10(B)に示すようにカプセル3の外径よりも広い管腔41内においてカプセル3を推進させようとした場合、単にカプセル3に回転磁界を印加しただけでは、図10(C)或いは図10(D)のようにカプセル3の外周面(に設けた螺旋状突起12)は管腔41内面との係合部分(引っかかり部分)が少ないため、空回りし易く進行速度が遅くなり易い。なお、図10(D)は図10(C)における矢視Aから見た様子を示し、単に回転させた場合にその姿勢の変化が少なく、空回りして進行させる機能が低下する。
このような場合に図7(A)等に示したように、回転磁界と共に振動磁界も印加することにより、図10(B)に示すようにカプセル3を首振り的な運動をさせることにより、首振り的な動作状態におけるカプセル3の実効的な外径を大きくすると共に、進行方向も周期的等に変化させるようにして広い管腔41の場合にもその内壁との係合部分を拡大して、効率良く推進させることができる。
また、図10(B)のように首振り動作(ジグリング動作)させることにより、カプセル3の外径よりも大きな内径の管腔41部分を安定してカプセル3を効率良く推進させることができると共に、ジグリング動作により、撮像範囲を実質的に広くして管腔41内壁をより広範囲に撮像することもできる。
また、上述したように本実施の形態では、図4(B)に示すようにジョイスティック9の操作方向等を矢印7cで表示し、撮像した画像においてカプセル3をどの方向に進行させるかの指示を行えるようにしている。そして、この指示方向に対応して、その方向にカプセル3を進行させるような回転磁界を回転磁界発生装置4は発生する。
この場合の回転磁界の発生方向を算出する処理を制御回路27が行い、磁界制御回路5を介して回転磁界発生装置4は指示方向に対応する回転磁界を発生する。
この場合の回転磁界の発生の動作を以下に詳細に説明する。
ここで、以下のように入力される時間tに依存する回転磁界強度、振動磁界強度等をHr(t)、Hm(t)等で表す。
回転磁界強度:Hr(t) →8cにより設定される
振動磁界強度:Hm(t) →8dにより設定される
回転磁界の周波数:fr(t) →8bにより設定される
振動磁界の周波数:fm(t) →8eにより設定される
サンプリング周期:Ts →システムが磁界強度を切り換えたり、ジョイスティ ック等の入力量の読み込み時間間隔
現在の回転の位相:β(t)
現在の偶力の位相:α(t)
向きの変更量を決めるパラメータ:C
Vy′(t):時間tにおけるジョイスティック8aのy′方向の入力量
Vz′(t):時間tにおけるジョイスティック8aのz′方向の入力量
図11はカプセル3の中心軸方向をx′に設定した座標系(x′、y′、z′)を示す。この座標系(x′、y′、z′)においては、カプセル3の中心軸方向をx′に設定しているので、カプセル3をその中心軸x′の方向に進行させ、また中心軸x′方向に振動磁界を印加した状態での磁界は以下のようになる。
Hx′(t+Ts)=Hm(t)cos(α(t)+2πTsfm(t))
Hy′(t+Ts)=Hr(t)cos(β(t)+2πTsfr(t))
Hz′(t+Ts)=Hr(t)sin(β(t)+2πTsfr(t))
Hy′、Hz′が回転磁界であり、Hx′が振動磁界に相当する。
ここで、三角関数内の現在の位相を以下のように表し、以下ではこれを利用する。
α(t+Ts)=α(t)+2πTsfm(t)
β(t+Ts)=β(t)+2πTsfr(t)
図12はカプセル3の方向指示が入力された場合のカプセル3の新しい向きの計算の説明図を示す。
図12に示す状態において、矢印で示すように(中心軸方向がx′の)カプセル3に対して、その進行方向を変更するカプセル指示方向(y′軸と角γなす角度方向)がされたとする。
この場合、カプセル指示方向と直交する回転中心軸pで座標系を回転させたときの新し
いx′軸の方向が回転磁界の方向となる。
この回転計算は、
(1)x′軸を中心に−γの回転(図12の(1)の矢印)
(2)z′軸を中心にδの回転(図12の(2)の矢印)
(3)x′軸を中心にγの回転(図12の(3)の矢印)
で実現される。
ここではδは、ジョイスティック9の入力量Vy′(t),Vz′(t)
V(t)=((Vy′(t)2+(Vz′(t)2)1/2
δ(t)=C×V(t)
γ=sin−1(Vz′(t)/V(t))
よって回転中心軸pまわりにδ(t)回転される変換行列は、(1)、(2)、(3)の操作に対応する回転行列Rγ x′、Rδ(t) z′、R−γ x′ を用いて、
Rδ(t) p=Rγ x′Rδ(t) z′R−γ x′
となる。
ここで、
[式1]
となり各軸周りでの回転行列である。
よって、新しく付加する磁界は、これらの回転行列を用いることにより、
[式2]
となる。但し、Hx′(t+Ts)|
V(t)=0,Hy′(t+Ts)|
V(t)=0,Hz′(t+Ts)|
V(t)=0 はV(t)=0 とした場合のt+Tsにおけるx′y′z′方向それぞれの磁界である。
一方で、3軸ヘルムホルツコイルにより発生している磁界は時刻tにおいて、
(Hx(t) Hy(t) Hz(t))
となる。
また、カプセル3の向きをψ(t),θ(t)を用いて表すと図13のようになる。また、磁界側もx′、y′、z′からこのx、y、z座標系に変換すると、時刻t+Tsにおいて
[式3]
となる。ここで、式3におけるR
ψ(t) z、R
θ(t) yは図13のz軸の回りの角ψ
(t)、y軸の回りの角θ(t)の回転操作に対応する回転行列を示す。
これらの演算を繰り返すことにより外から発生させる磁界を算出できる。
一般にコイルによる磁界は、
H=I/N
H:磁界 N:係数 I:電流
で表されるから、電流I、つまり
I=NH
制御すればよい。
3軸ヘルムホルツコイルの係数NをそれぞれNx,Ny,Nzとすると、コイルに流す電流Ix(t),Iy(t),Iz(t)は、
[式4]
で表せる。
カプセルの向きの情報に関しては、
(1)位置方向検出手段がある場合には、位置検出手段による検出結果によりθ(t)、ψ(t)を使用する。この時の位置方向手段(センサ)としては、NDI社製AURORA等を使用することができる。
(2)位置検出がない場合には、
θ(0)、ψ(0)(初期値)を入力して行う。
その後のカプセル3の向き、X(t),Y(t),Z(t)を求めると
[式5]
をカプセル3の向きとして規定すれば良い。
また、図3に示したカプセル(医療装置)3は、この医療装置本体となるその中心部にマグネット16が配置されている。図14はカプセル3の内部配置図を示す。
観察窓端部には、(対物レンズ枠51)に取り付けられた対物レンズ13、照明素子15、撮像素子14が配置されている。さらに、信号処理回路20(ここではメモリ21は内蔵されている)、無線回路22が配置され、その奥にマグネット16が配置されている。マグネット16をはさみ観察窓側の反対側には電池24と、スイッチ回路71が配置されている。各ユニットは配線手段としてのフレキシブル基板56で配線されており先に説明したような動作を実現するカプセル型医療装置3を構成している。このように配置することにより、マグネット16をカプセル型医療装置3本体の中心部分に配置することができる。また、この配置ではマグネット16の位置はカプセル型医療装置3の重心位置に近い。
これにより、外部から磁界を加えることにより発生するカプセル型医療装置3本体の回転駆動力等はカプセル型医療装置3本体の重心付近で発生する。
このため、カプセル型医療装置3を安定したコントロールをすることができる。 ただし、以下のような場合においては、カプセル型医療装置の中心付近にマグネット16を配置しない方が、コントロール性があがる場合がある。
図15は、図14に対してマグネット16と、電池24、スイッチ回路71の配置を入れ替えマグネット16を観察窓側と反対側の端部に配置した変形例のカプセル3′である。
この構成においては、大腸等の比較的広い管腔の内部を誘導する際に有利になる。
図18(B)に示した動作をさせる場合、図3または図14に示したようにマグネット16をカプセル3の中心近傍に配置すると、振動磁界を加えるとカプセル3本体は、図6(A)、図6(B)に示すように振動する。
これに対し、図15のようにマグネット16を配置した場合、振動磁界を加えると、図17に示すようにカプセル本体の観察窓側の端部の振幅が大きくなるように振動する。このように動作させることができるため、より大きな管腔内でも管腔内壁とカプセル3′の係合する部分を確保(増大)することができる。
従って、より大きな管腔でもカプセル3′を誘導することができる効果を有することになる。
また、図16においては、マグネット16を中空構造にし、対物レンズ枠51に挿通されて固定されている。このような構造にすることで、マグネット16をカプセル3″の観察窓側の端部近傍に配置することができる。
図16のカプセル3″を誘導(向きを変える動作)を行った場合の運動の違いを図3、図14のカプセル3と比較して説明する。
図18(A)に示すように、図3または図14のカプセル3ではこのカプセル3の中心付近(マグネット16の位置)を中心に向きを変える動作を行う。管腔の走行が急に曲がっていた場合には、管腔に沿って回転は半径が確保しにくい場合が存在し、この場合誘導性が低下する場合がある。
これに対して、図16のカプセル″では以下のように作用する。
つまり、図18(B)に示されるようにカプセル3″の観察窓近傍を中心にカプセル3″が向きを変えるため、回転半径が確保しやすい。
従って、カプセル3″の誘導性を向上させることができる効果を有する。
以上説明した本実施の形態によれば、カプセル3等を通したい管腔が、カプセル3等の外径より広いような場合や、狭くなっていたり、折れ曲っていたりした場合においても、カプセル3等を円滑に通過できる様になり、短い時間でカプセル3等を目的部位側に誘導することができる。
また、従来例に比べ高速に管腔内をカプセル3等を移動させることができるため、短い時間でカプセル3等を目的部位側に誘導することができる。
(第2の実施の形態)
次に、図19を参照して本発明の第2の実施の形態を説明する。図19は本発明の第2の実施の形態のカプセル3Bを示す。図19(A)はカプセル3Bの内部構成を示し、図19(B)は後端側から見たページャモータ57部分を示す。 第1の実施の形態ではカプセル3にはマグネット16を内蔵し、外部からの回転磁界と共に、回転磁界と直交する方向の振動磁界が印加されることにより、カプセル3は受動的にカプセル3の中心軸Cを傾けるような偶力が作用するようにしていたが、本実施の形態ではカプセル3Bに能動的にカプセル3Bの中心軸Cを傾けるような傾動力ないしは振動力が作用するようにしたものである。
図19に示すカプセル3Bは、図3(A)のカプセル3と同様に、カプセル状の外装容器11における外周面には螺旋状突起12が設けてある。また外装容器11の先端側は透明部材で形成された観察窓17が設けられている。
この観察窓17に対向する内側には、対物レンズ13が取り付けられた円筒状のレンズ枠51が配置され、その結像位置には撮像素子14を取り付けた撮像素子基板52が配置され、レンズ枠51の周囲に照明素子15が配置されている。
撮像素子基板52に隣接して信号処理や制御を行う制御基板53と無線回路22等の機能を備えた通信基板54が配置され、通信基板54にはアンテナ55が接続されている。また、照明素子15、撮像素子基板52等はフレキシブル基板56により電気的に接続されている。
また、このカプセル3Bの長手方向の中心軸C上でその中心位置にはこの中心軸Cと直交する方向が長手方向となるようにしてマグネット16が配置され、図示しない接着剤等で固定されている。
また、このマグネット16に隣接して電池24が収納され、フレキシブル基板56と図示しないスイッチを介して接続されている。さらにこの電池24に隣接するカプセル3Bの後端部付近の収納部には、このカプセル3Bを中心軸Cの方向から偏心或いは首振り的に振動させるためのページャモータ57が収納され、フレキシブル基板56を介して制御基板53等と接続されている。
このページャモータ57は例えば超音波モータ58とこの超音波モータ58に設けた重り59とにより構成されている。
図19(B)に示すように、超音波モータ58の回転軸58aには略円錐ないしは扇形状の重り59が取り付けてあり、超音波モータ58のロータ側の回転と共に、重り59が回転し、この重り59の位置により重心位置が変化する重心位置変更機構が形成されることにより重り59の回転と共にカプセル3Bは首振り運動(振動)する。
また、カプセル3Bは、第1の実施の形態で説明したのと同様に、体外の処理装置6と通信を行う通信手段を有している。
第1の実施の形態では、操作入力装置8の振動スイッチ8fをONする操作した場合には、処理装置6内の制御回路27は磁界発生装置4を制御して振動磁界を発生させるようにしていたが、本実施の形態では制御回路27はその指示信号を無線回路25を介してカプセル3B側に送信する。
そして、カプセル3Bは、その指示信号を受け取り、その命令を解読すると、カプセル制御回路23(図2参照、図19では制御基板53)はページャモータ57を動作させるようにしている。また、振動スイッチ8fをOFFにする操作を行うと、カプセル3Bはページャモータ57の動作を停止させるようにする。なお、回転磁界に関しては第1の実施の形態と同様の作用となる。
このような構成による本実施の形態の動作を説明する。
本実施の形態において、カプセル3Bを回転させる場合の操作は第1の実施の形態と同様である。そして、例えば屈曲した管腔臓器内をより円滑に推進させようと望む場合には図2に示したように操作入力装置8に設けられた振動スイッチ8fを押す。すると、制御回路27を通して無線回路25に振動ONの情報が伝達される。
振動ONの情報は、無線通信にてカプセル3Bに伝達される。カプセル3Bのカプセル制御回路23は、この信号を受けページャモータ57の回転をONする。
これにより、カプセル3Bは、能動的に擬似的な偶力(つまり、偶力を形成するその一方の力に相当した力)によりカプセル3Bをその中心軸Cを傾ける或いは揺動させるような力(擬似偶力)を発生し、カプセル3Bを振動ないしは首振り的動作をさせることができる。回転磁界を付加し推進力を得る方法は、第1の実施の形態と同様である。
なお、ページャモータ57の回転数を指示する信号は無線通信で設定すれば、振動の周波数を変更することができる。
本実施の形態によれば、外部から振動磁界を印加しないでも簡単な操作でカプセル3Bを振動ないしは首振り的な動作をさせることができる。
また、カプセル3Bに回転磁界を印加しない状態でも、カプセル3Bに設けた螺旋状突起43Bにより体内の管腔臓器の蠕動運動で回転させながらカプセル3Bを推進させるようにしても良く、従って回転磁界を発生させる磁界発生装置4を用いない小規模のシステム構成の場合でも、本実施の形態によれば振動させることができ、円滑に屈曲した部位の通過等が可能となる。
(第3の実施の形態)
次に本発明の第3の実施の形態を図20及び図21を参照して説明する。図20は本発明の第3の実施の形態のカプセル3Cを示し、図21は電磁ソレノイド装置部分を示す。
図20に示すカプセル3Cは、図19(A)のカプセル3Bにおいて、ベージャモータ57の代わりに重り66を電磁的に移動する電磁ソレノイド装置64を内蔵したものである。
図20に示すように、電池24に隣接するカプセル3Cの後端部付近の収納部には、このカプセル3Cを中心軸Cの方向と直交する方向に着磁可能とする電磁ソレノイド61等を内蔵し、外部からの磁界に影響を受けないように覆う磁気シールド枠体62と、電磁ソレノイド61を駆動する発振器63とからなる電磁ソレノイド装置64が収納されている。
そして、図19で説明したのと同様に、外部の操作入力装置8の振動スイッチ8fの操作による振動ON/OFF信号がカプセル3Cに送られると、その信号を受信して制御基板53のカプセル制御回路23はON/OFF信号を復調して発振器63に送り、発振器63を発振させる。この発振器63は、直流から数十Hz程度の周波数範囲で電磁ソレノイド61を駆動させる電流を発生する。
なお、発振器63の発振周波数の駆動条件は、予めプリセットしておいてもよいし、ON/OFF信号のほかに周波数信号を入力できる構成にし、外部からコントロールできる様にしてもよい。
上記発振器63の出力信号が駆動信号として電磁ソレノイド61に通電されると、電磁ソレノイド61は着磁する(磁界を発生する)。
そして、電磁ソレノイド61の着磁の方向に応じて、ガイド部材65により移動可能に保持された例えばマグネットで構成された重り66を、ガイド部材65の一端(図20及び図21では上方)に付勢するバネ67の弾性力に抗して重り66をガイド部材65の軸方向に往復移動させることができるようにしている。この重り66の往復移動と共に、カプセル3Cはガイド部材65の軸方向に振動させられるようになる。
図21は、電磁ソレノイド装置64部分のより詳細な構造を拡大して示す。電磁ソレノイド61とこの電磁ソレノイド61に平行に配置したガイド部材65とはそれぞれ抑え部材68a、68bで連結して固定されている。
ガイド部材65には、ガイド部材65を通す孔を設けた重り66がこのガイド部材65の軸方向に移動自在に取り付けられ、さらにその下方側に配置したコイル状のバネ67により重り66を上方に付勢している。
なお、抑え部材68b側にはストッパ69が設けてあり、重り66はこのストッパ69によって所定位置よりさらに下方へ移動することが規制されるようにしている。
また、本実施の形態では、抑え部材68aは非磁性体、抑え部材68bは磁性体で形成している。なお、電磁ソレノイド61は、カプセル3C内のカプセル制御回路によりコントロールされる。
また、電磁ソレノイド61の動作のコントロールを体外の処置装置6の操作入力装置9により行うことができる。
図19の場合と同様に操作入力装置8からの操作入力による信号は、無線回路25を通してカプセル3Cに伝達され、カプセル制御回路23に伝達される。この信号に基づき電磁ソレノイド61をカプセル制御回路23がコントロールする。
電磁ソレノイド61に交流の駆動信号で通電するとその着磁方向が変化することにより、マグネットで形成された重り66が上下方向に往復移動する。
このため、カプセル3Cの重心がずれ、カプセル3Cを長手方向の軸を回転させる(或いは傾動させる)力が働くことになる。
これにより、カプセル3Cの推進が困難な場合等に、通過性を向上させることができる。
なお、電磁ソレノイド61を発振器63の出力で交流的に駆動する代わりに通電のON/OFFを繰り返すようにしても良い。この場合には重り66としてはマグネットで形成しなくても磁性体で形成することができる。つまり、ON時には下方に移動させ、OFF時にはバネ67の弾性力で上方に移動(復帰)させる動作が繰り返される。
つまり、発振器63の出力で駆動するのと同様に周期的に首振りさせる力を発生することができる。この場合の効果は、ページャモータ57の場合とほぼ同様である。
また、本実施の形態では、重り66を電磁ソレノイド61で移動させる構造としたが、例えば超音波リニアモータを、カプセル型医療装置の挿入軸方向に垂直になるように配置して、超音波リニアモータの駆動部に重りを付ける構成にしてもよい。
なお、上述した各実施の形態等を部分的に組み合わせる等して構成される実施の形態等も本発明に属する。
[付記]
1.体腔内に導入される挿入部を有する医療装置において、挿入軸と平行な作用線を有する偶力を発生させる偶力発生手段を有することを特徴とした医療装置。
2.前記偶力発生手段で発生する偶力が周期的変化をすることを特徴とする付記1の医療装置。
3.前記挿入軸を中心軸とし、前記作用線が回転することを特徴とする偶力発生手段を有することを特徴とする付記1、2の医療装置。
4.前記挿入軸方向に推進力を発生させる推力発生部を有することを特徴とする付記1、2、3の医療装置。
5.略円筒外形を持つ体腔内に挿入される挿入部を有する医療装置と、
前記医療装置本体の側面に設けられた螺旋状構造部と、前記螺旋状構造部を医療装置本体の円筒軸周りに回転させる回転駆動手段からなる円筒軸方向に推力を発生させる推力発生機構と、
前記円筒軸と平行な作用線を有する偶力を発生させる偶力発生手段からなることを特徴とする医療装置。
6.前記偶力発生手段で発生する偶力が周期的変化をすることを特徴とする付記5の医療装置。
7.前記医療装置の内部に、前記推力発生機構の推力発生方向と垂直に磁極の向きが配置された磁石が配置されていることを特徴とする付記5の医療装置。
8.回転磁界と、回転磁界の回転平面に垂直な方向の磁界を発生する磁界発生装置と、 体腔内に挿入される挿入部を有する医療装置本体と
前記医療装置本体に設けられた推力発生構造部と、
前記医療装置本体に設けられ、前記推力発生構造部の推力発生方向と略直交する方向に磁極方向を向けて配置された磁石とを有することを特徴とする医療装置誘導システム。
9.前記推力発生構造部が、前記医療装置本体の外周に設けられた螺旋構造部であることを特徴とする付記8の医療装置誘導システム。
10.前記回転磁界の回転平面に垂直な方向の磁界が交流磁界であることを特徴とする付記8、9の医療装置誘導システム。
11.前記磁界発生装置をコントロールする制御手段を有することを特徴とする付記8、9、10の医療装置誘導システム。
12.前記制御手段が、前記回転磁界の回転平面に垂直な方向の磁界の有無を切り替える機能を有することを特徴とする付記11の医療装置誘導システム。
13.前記制御手段が、前記回転磁界の回転平面に垂直な方向の磁界の強度を可変にする機能を有することを特徴とする付記11の医療装置誘導システム。
14.前記制御手段が、前記回転磁界の回転平面に垂直な方向の磁界の周波数を可変にする機能を有することを特徴とする付記11の医療装置誘導システム。
15.前記回転磁界の回転平面に垂直な方向の磁界が交流磁界であり、前記交流磁界の周波数が2Hz以上10Hz以下であることを特徴とする付記10、14の医療装置誘導システム。
16.前記回転磁界の回転周波数に対し、回転磁界の回転平面に垂直な方向の交流磁界の周波数が高いことを特徴とする付記10、14の医療装置誘導システム。
17.前記回転磁界の回転周波数に対し、回転磁界の回転平面に垂直な方向の交流磁界の周波数が2倍〜10倍の周波数であることを特徴とする付記16の医療装置誘導システム。
18.前記回転磁界の磁場強度に対し、回転磁界の回転平面に垂直な方向の磁界の磁場強度が、小さいことを特徴とする付記8、10、13の医療装置誘導システム。
19.体腔内に導入される挿入部を有する医療装置において、挿入軸の向きを周期的に変化させる振動発生手段を有することを特徴とする医療装置。
20.前記振動発生手段が、重心位置変更機構である付記19の医療装置。
21.偶力を発生させる手段が、医療装置の重心位置を医療装置の挿入軸に対して移動させる重心位置変更機構であることを特徴とした付記1の医療装置。
22.前記重心位置変更機構が、ページャモータであることを特徴とする付記20の医療装置。
23.前記重心位置変更機構が、リニア駆動機構と、おもりで構成されていることを特徴とした付記20の医療装置。
24.回転磁界を発生する磁界発生装置と、
体腔内の挿入される挿入部を有する医療装置本体と、
前記医療装置本体に設けられた推力発生構造部と、
前記医療装置本体に設けられた医療装置の重心位置を医療装置の挿入軸に対して移動させる重心位置変更機構と、
前記医療装置本体に設けられ、前記推力発生構造部の推力発生方向と略直交する方向に磁極方向を向けて配置された磁石と、
前記重心位置変更機構を制御する制御信号を医療装置本体に伝達する伝達手段と、
を有することを特徴とした医療装置誘導システム。
25.前記重心位置変更機構が、ページャモータであることを特徴とする付記24の医療装置誘導システム。
26.前記重心位置変更機構が、リニア駆動機構と、おもりで構成されていることを特徴とする付記24の医療装置誘導システム。
27.前記回転磁界発生装置、前記重心位置変更機構の少なくともいずれか一方を制御する制御手段が医療装置と別体に設けられていることを特徴とする付記24、25、26の医療装置誘導システム。
28.前記制御手段が、前記重心位置変更機構動作の有無を切り替える機能を有することを特徴とする付記27の医療装置誘導システム。
29.前記制御手段が、前記重心位置変更機構の動作周波数を可変にする機能を有することを特徴とする付記27の医療装置誘導システム。
30.前記重心位置変更機構の動作周波数が2Hz以上10Hz以下であることを特徴とする付記24、27の医療装置誘導システム。
31.前記回転磁界発生装置で発生される回転磁界の周波数より、前記重心位置変更機構の動作周波数が高いことを特徴とする付記24、付記7の医療装置誘導システム。
32.前記回転磁界発生装置で発生される回転磁界の周波数に対して、前記重心位置変更機構の動作周波数が2倍〜10倍の周波数であることを特徴とする付記31の医療装置誘導システム。
33.体腔内に挿入される挿入部を有するカプセル型医療装置本体と、
前記医療装置本体に設けられた推力発生構造部と、
前記医療装置本体に設けられ、前記推力発生構造部の推力発生方向と略直行する方向に磁極方向を向け、前記カプセル医療装置本体の推力発生方向における中心付近に配置された磁石とを有することを特徴としたカプセル型医療装置。
34.体腔内に挿入される挿入部を有するカプセル型医療装置本体と、
前記医療装置本体に設けられた推力発生構造部と、
前記医療装置本体に設けられ、前記推力発生構造部の推力発生方向と略直行する方向に磁極方向を向け、前記カプセル医療装置本体の推力発生方向における端部付近に配置された磁石とを有することを特徴とするカプセル型医療装置。
35.前記医療装置本体に、体腔内の画像を取得する撮像システムを有し、前記撮像システムが前記カプセル型医療装置本体の推力発生方向の一端の端部付近に設けられており、前記磁石が前記撮像システム近傍に配置されていることを特徴とする付記34のカプセル型医療装置。
36.前記医療装置本体に、体腔内の画像を取得する撮像システムを有し、前記撮像システムが前記カプセル型医療装置本体の推力発生方向の一端の端部付近に設けられており、前記磁石が前記撮像システムと反対側の端部近傍に配置されていることを特徴とする付記34のカプセル型医療装置。
37.付記33から追加付記36のカプセル型医療装置と、回転磁界と、回転磁界の回転平面に垂直な方向の磁界を発生させる磁界発生手段とからなる医療装置誘導システム。