JP2007259635A - 動力伝達装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】動力伝達装置の大型化を招くことなく動力伝達装置から出力可能なトルクを増大させる。
【解決手段】入力軸16よりも低い回転速度で入力軸16と連動するリングローラ22にロータ62が組み込まれた電動機60が設けられている。遊星ローラ機構12は、サンローラ21から各ピニオンローラ23へ減速されて伝達された電動機10からの動力に電動機60のロータ62で発生した動力を各ピニオンローラ23で合成して出力軸18へ伝達することが可能である。これによって、遊星ローラ機構12のトルク伝達容量を増大させることなく、遊星ローラ機構12から出力可能なトルクを増大させることができる。
【選択図】図1
【解決手段】入力軸16よりも低い回転速度で入力軸16と連動するリングローラ22にロータ62が組み込まれた電動機60が設けられている。遊星ローラ機構12は、サンローラ21から各ピニオンローラ23へ減速されて伝達された電動機10からの動力に電動機60のロータ62で発生した動力を各ピニオンローラ23で合成して出力軸18へ伝達することが可能である。これによって、遊星ローラ機構12のトルク伝達容量を増大させることなく、遊星ローラ機構12から出力可能なトルクを増大させることができる。
【選択図】図1
Description
本発明は、入力軸に入力された動力源からの動力を変速して出力軸へ伝達する動力伝達装置に関する。
電動機等の動力源からの動力を変速して伝達するために、歯車伝動機構が用いられている(例えば下記特許文献1)。また、ローラ同士の油膜を介した接触部に生じる油膜のせん断力(トラクション力)によって動力伝達を行うトラクションドライブ機構も、動力を変速して伝達するために用いられている。さらに、歯車伝動機構及びトラクションドライブ機構の両方を用いた動力伝達装置も提案されている(例えば下記特許文献2)。
動力伝達装置のトルク伝達容量については、動力伝達装置が動力源の最大トルクを変速して出力することができるようにする必要があるため、その制約からトルク伝達容量が設定される。ただし、動力伝達装置から出力可能なトルクを増大させるために、そのトルク伝達容量を増大させると、動力伝達装置の大型化を招くことになる。一方、動力伝達装置を小型化すると、そのトルク伝達容量が低下するため、動力伝達装置から出力可能なトルクも減少する。このように、動力伝達装置のトルク伝達容量の増大及び小型化は、相反する性能にある。
本発明は、動力伝達装置の大型化を招くことなく動力伝達装置から出力可能なトルクを増大させることを目的とする。
本発明に係る動力伝達装置は、上述した目的を達成するために以下の手段を採った。
本発明に係る動力伝達装置は、入力軸とともに連動する複数の変速用回転部材であって、入力軸に入力された第1電動機からの動力を変速して出力軸へ伝達するための複数の変速用回転部材を有する変速機構と、ステータ及びロータが対向配置され、入力軸と異なる回転速度で連動する変速用回転部材に該ロータが組み込まれた第2電動機と、を備え、変速機構は、第1電動機からの動力に第2電動機のロータで発生した動力を合成して出力軸へ伝達することが可能な機構であることを要旨とする。
本発明においては、入力軸と異なる回転速度で連動する変速用回転部材に第2電動機のロータを組み込むことで、変速されて伝達された第1電動機からの動力に第2電動機のロータで発生した動力を合成して出力軸へ伝達することができる。これによって、変速機構のトルク伝達容量を増大させることなく変速機構から出力可能なトルクを増大させることができる。したがって、本発明によれば、動力伝達装置の大型化を招くことなく動力伝達装置から出力可能なトルクを増大させることができる。
本発明の一態様では、第2電動機と第1電動機の極数比が、第1電動機と第2電動機の理論回転速度比に等しく設定されていることで、第1電動機及び第2電動機を共通の駆動回路で駆動することができる。この態様では、第1電動機及び第2電動機へ電力供給する電力供給部と、電力供給部から第1電動機及び第2電動機へ供給する電力の配分を調整する電力配分調整部と、を備えることで、第1電動機と第2電動機のトルク配分を調整することができる。さらに、第1電動機または出力軸の回転速度を検出する回転速度検出部を備え、電力配分調整部は、回転速度検出部で検出された回転速度に基づいて、電力供給部から第1電動機及び第2電動機へ供給する電力の配分を調整することで、第1電動機と第2電動機のトルク配分を第1電動機または出力軸の回転速度に応じて調整することができる。さらに、電力配分調整部は、回転速度検出部で検出された回転速度が所定値以下の場合は、該回転速度が所定値を超える場合よりも第2電動機へ供給する電力の配分を増大させることで、低速回転時に動力伝達装置から出力されるトルクを増大させることができる。
本発明の一態様では、変速機構は、トラクション伝動により動力を変速して伝達する複数のトラクション伝動部材を前記複数の変速用回転部材として有し、前記ロータが、入力軸と異なる回転速度で連動するトラクション伝動部材に組み込まれていることが好適である。また、本発明の一態様では、変速機構は、歯車伝動により動力を変速して伝達する複数の歯車伝動部材を前記複数の変速用回転部材として有し、前記ロータが、入力軸と異なる回転速度で連動する歯車伝動部材に組み込まれていることが好適である。
本発明の一態様では、変速機構は、第1電動機からの動力が入力されるサン回転部材と、サン回転部材の外周を取り囲むリング回転部材と、サン回転部材とリング回転部材との間に配置されたピニオン回転部材とを、前記複数の変速用回転部材として有する遊星機構を含み、前記ロータが、リング回転部材に組み込まれており、遊星機構は、サン回転部材に入力された第1電動機からの動力に第2電動機のロータで発生した動力をピニオン回転部材またはリング回転部材で合成して出力軸へ伝達することが可能な機構であることが好適である。こうすれば、第2電動機のロータに発生させるトルクを増大させることができる。
また、本発明に係る動力伝達装置は、入力軸とともに連動する複数の変速用回転部材であって、入力軸に入力された動力源からの動力を変速して出力軸へ伝達するための複数の変速用回転部材を有する変速機構と、ステータ及びロータが対向配置され、入力軸と異なる回転速度で連動する変速用回転部材に該ロータが組み込まれた電動機と、を備え、変速機構は、動力源からの動力に電動機のロータで発生した動力を合成して出力軸へ伝達することが可能な機構であることを要旨とする。
以下、本発明を実施するための形態(以下実施形態という)を図面に従って説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る動力伝達装置の概略構成を示す図であり、その軸線方向と直交する方向から見た図を示す。本実施形態に係る動力伝達装置においては、入力軸16が動力源として設けられた電動機10に連結されており、変速機構として設けられた遊星ローラ機構12及び変速用歯車機構14が入力軸16と出力軸18との間で直列に接続されている。そして、電動機10からの動力が入力軸16に入力され、この入力された動力が遊星ローラ機構12及び変速用歯車機構14でそれぞれ変速(減速)されてから出力軸18に伝達される。出力軸18に伝達された動力は、出力軸18と連結された負荷の駆動に用いられる。
電動機10は、その径方向において互いに対向配置されたステータ51及びロータ52を含む。ステータ51には、コイルが周方向に配列されており、コイルに電流を流すことで磁極が構成される。一方、ロータ52には、磁極として永久磁石が周方向に配列されている。電動機10においては、ステータ51のコイルに順次電流を流すことで回転磁界が形成される。そして、ロータ52の永久磁石がこの回転磁界と相互作用して、吸引および反発作用が生じロータ52が回転駆動することで、ロータ52に動力を発生させることができる。
遊星ローラ機構12は、入力軸16に連結されたサンローラ21と、サンローラ21の外周を取り囲むリングローラ22と、サンローラ21とリングローラ22との間にこれらと接触して挟持(挟圧保持)された複数のピニオンローラ(遊星ローラ)23とを、入力軸16とともに連動する変速用回転部材として有する。図1は、遊星ローラ機構12がシングルピニオン遊星ローラ機構である例を示している。各ピニオンローラ23は、キャリア24に回転自在に支持されている。そして、各ピニオンローラ23の外径(ピッチ円直径)は、サンローラ21の外径(ピッチ円直径)よりも大きく設定されている。ここでの遊星ローラ機構12は、回転するローラ同士の油膜を介した接触部に押圧力(法線方向の力)を作用させることで生じる油膜のせん断力(接線方向のトラクション力)によって動力伝達を行うトラクションドライブ機構であり、トラクション伝動により動力を変速して伝達するためのトラクション伝動部材として、サンローラ21、リングローラ22、及びピニオンローラ23が設けられている。例えば遊星ローラ機構12を焼き嵌め方式で組み立てることにより、サンローラ21と各ピニオンローラ23との接触部(接触面)、及び各ピニオンローラ23とリングローラ22との接触部(接触面)に押圧力(法線力)を作用させることが可能となる。また、サンローラ21と各ピニオンローラ23との接触部、及び各ピニオンローラ23とリングローラ22との接触部に押圧力(法線力)を作用させる既知の押圧機構を設けることもできる。このように、接触部に法線力を作用させることで、接触部に接線方向のトラクション力を発生させることができる。
変速用歯車機構14は、複数のピニオンギア33と、出力軸18に連結され且つ各ピニオンギア33と噛み合わされたリングギア(内歯車)32とを、入力軸16とともに連動する変速用回転部材として有する。各ピニオンギア33は、キャリア34に回転自在に支持されている。リングギア32の内径(ピッチ円直径)は、各ピニオンギア33の外径(ピッチ円直径)よりも大きく設定されており、リングギア32は、その内周に設けられた歯により各ピニオンギア33と噛み合っている。このように、変速用歯車機構14においては、歯車伝動により動力を変速して伝達するための歯車伝動部材として、ピニオンギア33及びリングギア32が設けられている。なお、リングギア32の内径(ピッチ円直径)は、リングローラ22の内径(ピッチ円直径)よりも小さく設定されており、各ピニオンギア33の外径は、各ピニオンローラ23の外径よりも小さく設定されている。
本実施形態では、キャリア24,34同士が連結されており、ピニオンローラ23及びピニオンギア33がキャリア24,34に回転自在に支持された共通のピニオン回転部材43に備えられている。つまり、ピニオンローラ23及びピニオンギア33が一体化されている。キャリア24,34は、ケーシングに固定されていることで、その回転がロックされている。そのため、各ピニオン回転部材43(ピニオンローラ23及びピニオンギア33)については、キャリア24,34の中心軸まわりの回転である公転がロックされており、自軸まわりの回転である自転のみが許容されている。なお、キャリア24,34の一方を省略し、各ピニオン回転部材43(ピニオンローラ23及びピニオンギア33)をキャリア24,34の他方に回転自在に支持することもできる。
入力軸16に入力された電動機10からの動力は、サンローラ21と各ピニオンローラ23との接触部に生じる接線方向のトラクション力によって、サンローラ21から各ピニオン回転部材43(ピニオンローラ23)に伝達されることで減速される。各ピニオン回転部材43に伝達された動力は、各ピニオンギア33とリングギア32との噛み合いによって、各ピニオンギア33からリングギア32に伝達されることで減速される。そして、リングギア32に伝達された動力が出力軸18から出力される。このように、本実施形態に係る動力伝達装置は減速装置として機能し、入力軸16に入力された電動機10からの動力は、遊星ローラ機構12でのトラクション伝動により減速され、変速用歯車機構14での歯車伝動によりさらに減速される。したがって、動力伝達装置全体での変速比(減速比)を増大させることができる。なお、入力軸16(サンローラ21)から出力軸18(リングギア32)への動力伝達においては、各ピニオン回転部材43の公転は行われずに、各ピニオン回転部材43の自転のみが行われる。そして、各ピニオン回転部材43、リングギア32、及びリングローラ22は、入力軸16よりも低い回転速度(入力軸16と異なる回転速度)で入力軸16と連動する。
変速用歯車機構14は、歯の噛み合いによってトルク伝達を行うため、トラクション力によってトルク伝達を行う遊星ローラ機構12よりも、そのトルク伝達容量を大きくすることが容易である。しかし、変速用歯車機構14は、高速回転時にはその摩擦トルクが増大し、さらに歯の噛み合いによる振動・騒音も増大する。一方、遊星ローラ機構12は、その摩擦トルクが変速用歯車機構14より小さく、高速回転時の振動・騒音も変速用歯車機構14より小さい。そこで、入力軸16に入力された動力を減速して出力軸18へ伝達する場合は、遊星ローラ機構12を入力軸16側、変速用歯車機構14を出力軸18側に配置することで、遊星ローラ機構12で伝達されるトルクを減少させることができるとともに、変速用歯車機構14の各ギア(ピニオンギア33及びリングギア32)の回転速度を減少させることができる。したがって、動力伝達装置(減速装置)の高速化、高効率化、及び低騒音化を実現することができる。
ただし、遊星ローラ機構12のトルク伝達容量については、遊星ローラ機構12が電動機10の最大トルクを変速(減速)して出力することができるようにする必要があるため、その制約からトルク伝達容量が設定される。遊星ローラ機構12から出力可能なトルクを増大させるために、そのトルク伝達容量を増大させると、遊星ローラ機構12の大型化を招き、動力伝達装置の大型化を招くことになる。一方、遊星ローラ機構12を小型化すると、そのトルク伝達容量が低下するため、遊星ローラ機構12から出力可能なトルクも減少する。
そこで、本実施形態では、電動機10の他に、ステータ61及びロータ62が対向配置され、入力軸16よりも低い回転速度(入力軸16と異なる回転速度)で入力軸16と連動するリングローラ22(トラクション伝動部材)にロータ62が組み込まれた電動機60がさらに設けられている。ステータ61には、コイルが周方向に配列されており、コイルに電流を流すことで磁極が構成される。一方、ロータ62には、磁極として永久磁石64が周方向に配列されている。図1は、リングローラ22の外周部にロータ62が組み込まれ(永久磁石64が配設され)、リングローラ22の径方向においてステータ61及びロータ62が対向配置されたラジアルギャップ型電動機の例を示している。そして、永久磁石64は、ロータ62内に完全に埋設されてもよく、またその表面がロータ62の表面の一部となるように配置されてもよい。
電動機60においては、ステータ61のコイルに順次電流を流すことで回転磁界が形成される。ロータ62の永久磁石64がこの回転磁界と相互作用して、吸引および反発作用が生じロータ62(リングローラ22)が回転駆動することで、ロータ62(リングローラ22)に動力を発生させることができる。そして、遊星ローラ機構12は、サンローラ21から各ピニオンローラ23へ変速(減速)されて伝達された電動機10からの動力に電動機60のロータ62で発生した動力を各ピニオンローラ23で合成することが可能である。各ピニオンローラ23で合成された動力は、各ピニオンギア33からリングギア32へ減速されて伝達され、出力軸18から出力される。
さらに、本実施形態では、電動機60の極数P2と電動機10の極数P1との比(極数比)P2/P1が、電動機10と電動機60の理論回転速度比N1/N2に等しく(あるいはほぼ等しく)設定されている。ここでの理論回転速度比N1/N2は、サンローラ21と各ピニオンローラ23との接触部、及び各ピニオンローラ23とリングローラ22との接触部に滑りが発生していないとした場合における電動機10(サンローラ21)の回転速度N1と電動機60(リングローラ22)の回転速度N2との比N1/N2であり、リングローラ22の内径とサンローラ21の外径との比に等しい。この極数比P2/P1の設定により、電動機10,60を共通の(1つの)駆動回路(インバータ)で駆動することができる。
図1に示すように、電動機10,60へ電力供給するために、直流電力を出力する二次電池等の電源56と、電源56からの直流電力を交流電力に変換するインバータ57と、が設けられている。さらに、インバータ57(電源56)から電動機10,60へ供給する電力の配分を調整する電力配分調整回路58が設けられている。また、電動機10のロータ52(入力軸16)の回転速度N1を検出する回転速度センサ(図示せず)も設けられている。以下、電力配分調整回路58により電動機10,60へ供給する電力の配分を調整する方法の具体例について説明する。
ここでの電力配分調整回路58は、回転速度センサで検出された電動機10のロータ52(入力軸16)の回転速度N1に基づいて、インバータ57から電動機10,60のステータ51,61の各コイルへ供給する電力の配分を調整することができる。より具体的には、電力配分調整回路58は、ロータ52の回転速度N1が所定値N0以下の場合は、ロータ52の回転速度N1が所定値N0を超える場合よりも電動機60のステータ61のコイルへ供給する電力の配分を増大させる(電動機10のステータ51のコイルへ供給する電力の配分を減少させる)ことができる。例えば図2に示すように、ロータ52の回転速度N1が所定値N0以下の場合は、ステータ51,61の各コイルへ電力供給することで、電動機10,60のロータ52,62の両方にトルクを発生させる。一方、ロータ52の回転速度N1が所定値N0を超える場合は、ステータ61のコイルへの電力供給を停止する(ステータ51のコイルのみへ電力供給する)ことで、電動機60のロータ62に発生させるトルクを0に制御する(電動機10のロータ52のみにトルクを発生させる)。また、電力配分調整回路58は、ロータ52の回転速度N1が減少するほど、電動機60のステータ61のコイルへ供給する電力の配分を増大させる(電動機10のステータ51のコイルへ供給する電力の配分を減少させる)こともできる。
また、出力軸18の回転速度Noutを検出する回転速度センサ(図示せず)を設け、電力配分調整回路58は、出力軸18の回転速度Noutに基づいてインバータ57から電動機10,60のステータ51,61の各コイルへ供給する電力の配分を調整することもできる。その場合は、上記の説明においてロータ52の回転速度N1を出力軸18の回転速度Noutに置き換えた場合を考えればよい。つまり、電力配分調整回路58は、出力軸18の回転速度Noutが所定値N3以下の場合は、出力軸18の回転速度Noutが所定値N3を超える場合よりも電動機60のステータ61のコイルへ供給する電力の配分を増大させることができる。
以上説明した本実施形態では、入力軸16よりも低い回転速度で入力軸16と連動するリングローラ22に電動機60のロータ62を組み込むことで、サンローラ21に入力された電動機10からのトルクに電動機60のロータ62(リングローラ22)で発生したトルクを各ピニオンローラ23で合成して出力軸18へ伝達することができる。これによって、遊星ローラ機構12のトルク伝達容量を増大させることなく(遊星ローラ機構12の外径や軸線方向の長さを増大させることなく)、遊星ローラ機構12から出力可能なトルクを増大させることができ、動力伝達装置から出力可能なトルクを増大させることができる。さらに、遊星ローラ機構12のリングローラ22を電動機60のロータ62とすることで、電動機60を設けることによる動力伝達装置の大型化を抑えることができる。したがって、本実施形態によれば、動力伝達装置の大型化を招くことなく、動力伝達装置から出力可能なトルクを増大させることができる。さらに、本実施形態では、遊星ローラ機構12の最も外径側に位置するリングローラ22を電動機60のロータ62として用いることで、電動機60のトルクを増大させることができる。そして、電動機60のロータ62をリングローラ22の外周部に配設し、電動機60のステータ61をリングローラ22の外周部と対向配置させることで、動力伝達装置の軸線方向の長さを抑えることができる。
また、本実施形態では、電動機60と電動機10の極数比P2/P1を、電動機10と電動機60の理論回転速度比N1/N2に等しく(あるいはほぼ等しく)設定することで、電動機10,60を共通の(1つの)インバータ57で駆動することができる。したがって、動力伝達装置の大型化を抑えることができる。さらに、電動機10の回転速度N1が所定値N0以下(出力軸18の回転速度Noutが所定値N3以下)の場合は、回転速度N1が所定値N0を超える(回転速度Noutが所定値N3を超える)場合よりも電動機60へ供給する電力の配分を増大させることで、電動機10(出力軸18)の低速回転時に出力軸18から出力されるトルクを増大させることができる。
次に、本実施形態の他の構成例について説明する。
本実施形態では、電動機60は、図3に示すようにリングローラ22の回転軸に平行な方向においてステータ61及びロータ62が対向配置されたアキシャルギャップ型電動機であってもよい。その場合は、リングローラ22の側面にロータ62を組み込む(永久磁石64を配設する)ことができる。図3に示す構成例によれば、動力伝達装置の外径を抑えることができる。
また、本実施形態では、電動機60のロータ62を、図4に示すように入力軸16よりも低い回転速度(入力軸16と異なる回転速度)で入力軸16と連動するリングギア32(歯車伝動部材)に組み込むこともできる。図4は、リングギア32の外周部にロータ62が組み込まれ(永久磁石64が配設され)、リングギア32の径方向においてステータ61及びロータ62が対向配置されたラジアルギャップ型電動機の例を示している。ただし、電動機60をアキシャルギャップ型電動機とすることもできる。
図4に示す構成例では、変速用歯車機構14は、遊星ローラ機構12及び変速用歯車機構14で変速(減速)された電動機10からの動力に電動機60のロータ62で発生した動力をリングギア32で合成して出力軸18へ伝達することができる。これによって、遊星ローラ機構12及び変速用歯車機構14のトルク伝達容量を増大させることなく(遊星ローラ機構12及び変速用歯車機構14の外径や軸線方向の長さを増大させることなく)、動力伝達装置から出力可能なトルクを増大させることができる。
さらに、図4に示す構成例では、電動機60と電動機10の極数比P2/P1を、動力伝達装置の理論変速比(電動機10と電動機60の理論回転速度比)N1/N2に等しく(あるいはほぼ等しく)設定することで、電動機10,60を共通の(1つの)インバータ57で駆動することができる。ここでの理論変速比(理論減速比)は、サンローラ21と各ピニオンローラ23との接触部、及び各ピニオンローラ23とリングローラ22との接触部に滑りが発生していないとした場合における入力軸16(サンローラ21)の回転速度N1と出力軸18(リングローラ22)の回転速度N2との比N1/N2である。そして、この比N1/N2は、リングローラ22の内径とサンローラ21の外径との比、及びリングギア32の内径とピニオンギア33の外径との比から設定される。
なお、図1,3,4に示す構成例では、各ピニオンギア33と噛み合うサンギアを変速用歯車機構14に設けることもできる。この場合の変速用歯車機構14は、サンギア及びリングギア32と噛み合うピニオンギア(遊星ギア)33がキャリア34に回転自在に支持された遊星歯車機構により構成される。トルク伝達時には、各ピニオンギア33は、リングギア32からの反力によってラジアル方向の力を受け、各ピニオンギア33を回転支持するピニオンシャフトにもラジアル方向の力が作用する。そこで、各ピニオンギア33と噛み合うサンギアを設けることで、各ピニオンギア33に作用するラジアル方向の力をサンギアによって受けることができ、サンギアに作用するラジアル方向の力は全体で釣り合う。その結果、ピニオンシャフトに作用するラジアル方向の力を低減することができる。
また、図5に示す構成例では、変速用歯車機構14は、遊星ローラ機構12のリングローラ22に連結されたサンギア31と、出力軸18に連結されたリングギア32と、サンギア31とリングギア32との間にこれらと噛み合わされて配置された複数のピニオンギア(遊星ギア)33とを、入力軸16とともに連動する変速用回転部材として有する遊星歯車機構である。図5は、変速用歯車機構14(遊星歯車機構)がシングルピニオン遊星歯車機構である例を示している。各ピニオンギア33は、ケーシングに固定された(回転がロックされた)キャリア34に回転自在に支持されている。このように、変速用歯車機構14においては、歯車伝動により動力を変速して伝達するための歯車伝動部材として、サンギア31、ピニオンギア33、及びリングギア32が設けられている。
入力軸16(サンローラ21)に入力された電動機10からの動力は、各ピニオンローラ23を介してリングローラ22(サンギア31)へ減速されて伝達される。サンギア31へ伝達された動力は、各ピニオンギア33を介してリングギア32(出力軸18)へ減速されて伝達される。なお、入力軸16(サンローラ21)から出力軸18(リングギア32)への動力伝達においては、各ピニオンローラ23、リングローラ22(サンギア31)、各ピニオンギア33、及びリングギア32が、入力軸16よりも低い回転速度(入力軸16と異なる回転速度)で入力軸16と連動する。
そして、図5に示す構成例では、入力軸16よりも低い回転速度で入力軸16と連動するリングローラ22(トラクション伝動部材)に電動機60のロータ62が組み込まれている。遊星ローラ機構12は、サンローラ21からリングローラ22へ変速(減速)されて伝達された電動機10からの動力に電動機60のロータ62で発生した動力をリングローラ22で合成することが可能である。リングローラ22で合成された動力は、サンギア31からリングギア32へ減速されて伝達され、出力軸18から出力される。図5に示す構成例でも、遊星ローラ機構12のトルク伝達容量を増大させることなく、動力伝達装置から出力可能なトルクを増大させることができる。さらに、電動機60と電動機10の極数比P2/P1を、遊星ローラ機構12の理論変速比(電動機10と電動機60の理論回転速度比)N1/N2に等しく(あるいはほぼ等しく)設定することで、電動機10,60を共通の(1つの)インバータ57で駆動することができる。ここでの理論変速比(理論減速比)は、サンローラ21と各ピニオンローラ23との接触部、及び各ピニオンローラ23とリングローラ22との接触部に滑りが発生していないとした場合におけるサンローラ21の回転速度N1とリングローラ22の回転速度N2との比N1/N2であり、リングローラ22の内径とサンローラ21の外径との比に等しい。なお、図5は、リングローラ22の外周部にロータ62が組み込まれ(永久磁石64が配設され)、リングローラ22の径方向においてステータ61及びロータ62が対向配置されたラジアルギャップ型電動機の例を示している。ただし、電動機60をアキシャルギャップ型電動機とすることもできる。
また、図6に示す構成例では、入力軸16よりも低い回転速度で入力軸16と連動するリングギア32(歯車伝動部材)に電動機60のロータ62が組み込まれている。変速用歯車機構14は、遊星ローラ機構12及び変速用歯車機構14で変速(減速)された電動機10からの動力に電動機60のロータ62で発生した動力をリングギア32で合成して出力軸18へ伝達することができる。これによって、遊星ローラ機構12及び変速用歯車機構14のトルク伝達容量を増大させることなく、動力伝達装置から出力可能なトルクを増大させることができる。さらに、電動機60と電動機10の極数比P2/P1を、動力伝達装置の理論変速比(電動機10と電動機60の理論回転速度比)N1/N2に等しく(あるいはほぼ等しく)設定することで、電動機10,60を共通の(1つの)インバータ57で駆動することができる。なお、図6は、リングギア32の外周部にロータ62が組み込まれ(永久磁石64が配設され)、リングギア32の径方向においてステータ61及びロータ62が対向配置されたラジアルギャップ型電動機の例を示している。ただし、電動機60をアキシャルギャップ型電動機とすることもできる。
以上の本実施形態の説明では、入力軸16と出力軸18との間に、変速機構として遊星ローラ機構12及び変速用歯車機構14が直列に接続されているものとした。ただし、本実施形態では、変速機構として遊星ローラ機構12及び変速用歯車機構(遊星歯車機構)14のいずれか1つを入力軸16と出力軸18との間に設けることもできる。以下の説明では、遊星ローラ機構12を入力軸16と出力軸18との間に設けるものとするが、変速用歯車機構(遊星歯車機構)14を入力軸16と出力軸18との間に設ける場合も同様に考えることができる。
図7に示す構成例では、サンローラ21及びリングローラ22が入力軸16及び出力軸18にそれぞれ連結されており、キャリア24の回転が固定されている。入力軸16(サンローラ21)に入力された電動機10からの動力は、各ピニオンローラ23を介してリングローラ22(出力軸18)へ減速されて伝達される。そして、入力軸16よりも低い回転速度で入力軸16と連動するリングローラ22に電動機60のロータ62が組み込まれている。遊星ローラ機構12は、サンローラ21からリングローラ22へ変速(減速)されて伝達された電動機10からの動力に電動機60のロータ62で発生した動力をリングローラ22で合成して出力軸18へ伝達することが可能である。
また、図8に示す構成例では、サンローラ21及びキャリア24が入力軸16及び出力軸18にそれぞれ連結されており、リングローラ22の回転が固定されている。入力軸16(サンローラ21)に入力された電動機10からの動力は、キャリア24(出力軸18)へ減速されて伝達される。そして、入力軸16よりも低い回転速度で入力軸16と連動するキャリア24に電動機60のロータ62が組み込まれている。遊星ローラ機構12は、サンローラ21からキャリア24へ変速(減速)されて伝達された電動機10からの動力に電動機60のロータ62で発生した動力をキャリア24で合成して出力軸18へ伝達することが可能である。
図7,8に示す構成例でも、遊星ローラ機構12のトルク伝達容量を増大させることなく、動力伝達装置(遊星ローラ機構12)から出力可能なトルクを増大させることができる。さらに、電動機60と電動機10の極数比P2/P1を、遊星ローラ機構12の理論変速比(電動機10と電動機60の理論回転速度比)N1/N2に等しく(あるいはほぼ等しく)設定することで、電動機10,60を共通の(1つの)インバータ57で駆動することができる。なお、図7,8は、電動機60がラジアルギャップ型電動機である例を示しているが、電動機60をアキシャルギャップ型電動機とすることもできる。
以上の本実施形態の説明では、電動機10,60を共通の駆動回路(インバータ57)で駆動するものとしたが、電動機10,60を別々の駆動回路(インバータ)で駆動することもできる。
以上の本実施形態の説明では、電動機60のロータ62に磁極として永久磁石64を配設して磁石トルクを得るものとしたが、電動機60の構成はロータ62に永久磁石64を配設した構成に限るものではなく、例えば電動機60のロータ62にリラクタンストルクを得るための突極を形成することもできる。
また、本実施形態では、入力軸16に動力を伝達する動力源が電動機10以外であってもよく、例えばエンジン(内燃機関)であってもよい。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
10,60 電動機、12 遊星ローラ機構、14 変速用歯車機構、16 入力軸、18 出力軸、21 サンローラ、22 リングローラ、23 ピニオンローラ、24,34 キャリア、31 サンギア、32 リングギア、33 ピニオンギア、43 ピニオン回転部材、51,61 ステータ、52,62 ロータ、56 電源、57 インバータ、58 電力配分調整回路、64 永久磁石。
Claims (9)
- 入力軸とともに連動する複数の変速用回転部材であって、入力軸に入力された第1電動機からの動力を変速して出力軸へ伝達するための複数の変速用回転部材を有する変速機構と、
ステータ及びロータが対向配置され、入力軸と異なる回転速度で連動する変速用回転部材に該ロータが組み込まれた第2電動機と、
を備え、
変速機構は、第1電動機からの動力に第2電動機のロータで発生した動力を合成して出力軸へ伝達することが可能な機構である、動力伝達装置。 - 請求項1に記載の動力伝達装置であって、
第2電動機と第1電動機の極数比が、第1電動機と第2電動機の理論回転速度比に等しく設定されている、動力伝達装置。 - 請求項2に記載の動力伝達装置であって、
第1電動機及び第2電動機へ電力供給する電力供給部と、
電力供給部から第1電動機及び第2電動機へ供給する電力の配分を調整する電力配分調整部と、
を備える、動力伝達装置。 - 請求項3に記載の動力伝達装置であって、
第1電動機または出力軸の回転速度を検出する回転速度検出部を備え、
電力配分調整部は、回転速度検出部で検出された回転速度に基づいて、電力供給部から第1電動機及び第2電動機へ供給する電力の配分を調整する、動力伝達装置。 - 請求項4に記載の動力伝達装置であって、
電力配分調整部は、回転速度検出部で検出された回転速度が所定値以下の場合は、該回転速度が所定値を超える場合よりも第2電動機へ供給する電力の配分を増大させる、動力伝達装置。 - 請求項1〜5のいずれか1に記載の動力伝達装置であって、
変速機構は、トラクション伝動により動力を変速して伝達する複数のトラクション伝動部材を前記複数の変速用回転部材として有し、
前記ロータが、入力軸と異なる回転速度で連動するトラクション伝動部材に組み込まれている、動力伝達装置。 - 請求項1〜5のいずれか1に記載の動力伝達装置であって、
変速機構は、歯車伝動により動力を変速して伝達する複数の歯車伝動部材を前記複数の変速用回転部材として有し、
前記ロータが、入力軸と異なる回転速度で連動する歯車伝動部材に組み込まれている、動力伝達装置。 - 請求項1〜7のいずれか1に記載の動力伝達装置であって、
変速機構は、第1電動機からの動力が入力されるサン回転部材と、サン回転部材の外周を取り囲むリング回転部材と、サン回転部材とリング回転部材との間に配置されたピニオン回転部材とを、前記複数の変速用回転部材として有する遊星機構を含み、
前記ロータが、リング回転部材に組み込まれており、
遊星機構は、サン回転部材に入力された第1電動機からの動力に第2電動機のロータで発生した動力をピニオン回転部材またはリング回転部材で合成して出力軸へ伝達することが可能な機構である、動力伝達装置。 - 入力軸とともに連動する複数の変速用回転部材であって、入力軸に入力された動力源からの動力を変速して出力軸へ伝達するための複数の変速用回転部材を有する変速機構と、
ステータ及びロータが対向配置され、入力軸と異なる回転速度で連動する変速用回転部材に該ロータが組み込まれた電動機と、
を備え、
変速機構は、動力源からの動力に電動機のロータで発生した動力を合成して出力軸へ伝達することが可能な機構である、動力伝達装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006082944A JP2007259635A (ja) | 2006-03-24 | 2006-03-24 | 動力伝達装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2006082944A JP2007259635A (ja) | 2006-03-24 | 2006-03-24 | 動力伝達装置 |
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JP2007259635A true JP2007259635A (ja) | 2007-10-04 |
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ID=38633274
Family Applications (1)
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JP2006082944A Pending JP2007259635A (ja) | 2006-03-24 | 2006-03-24 | 動力伝達装置 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2007259635A (ja) |
-
2006
- 2006-03-24 JP JP2006082944A patent/JP2007259635A/ja active Pending
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