JP2007245495A - 平版印刷版原版 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】支持体上に、画像様露光後、印刷機上で油性インキと水性成分とを供給して未露光部分を除去することにより画像形成可能な画像記録層、および、保護層を有する平版印刷版原版において、該画像記録層および/または保護層にホスホニウム化合物を含有し、かつ、該保護層に無機質層状化合物およびアニオン性ポリビニルアルコール樹脂を含有することを特徴とする平版印刷版原版。
【選択図】なし
Description
この平版印刷版を作製するため、従来、親水性の支持体上に親油性の感光性樹脂層(画像記録層)を設けてなる平版印刷版原版(PS版)が広く用いられている。通常は、平版印刷版原版を、リスフィルム等の原画を通した露光を行った後、画像部の画像記録層を残存させ、非画像部の画像記録層をアルカリ性現像液または有機溶剤によって溶解して除去し親水性の支持体の表面を露出させる方法により製版を行って、平版印刷版を得ている。
機上現像の具体的方法としては、例えば、湿し水、インキ溶剤または湿し水とインキとの乳化物に溶解しまたは分散することが可能な画像記録層を有する平版印刷版原版を用いる方法、印刷機のローラー類やブランケット胴との接触により、画像記録層の力学的除去を行う方法、湿し水、インキ溶剤等の浸透によって画像記録層の凝集力または画像記録層と支持体との接着力を弱めた後、ローラー類やブランケット胴との接触により、画像記録層の力学的除去を行う方法が挙げられる。
なお、本発明においては、特別な説明がない限り、「現像処理工程」とは、印刷機以外の装置(通常は自動現像機)を使用し、液体(通常はアルカリ性現像液)を接触させることにより、平版印刷版原版の赤外線レーザー未露光部分を除去し、親水性支持体表面を露出させる工程を指し、「機上現像」とは、印刷機を用いて、液体(通常は印刷インキおよび/または湿し水)を接触させることにより、平版印刷版原版の赤外線レーザー未露光部分を除去し、親水性支持体表面を露出させる方法および工程を指す。
従来の製版方法では、感光性の平版印刷版原版に対して、低照度から中照度で像様露光を行い、画像記録層における光化学反応による像様の物性変化によって画像記録を行う。これに対して、上述した高出力レーザーを用いる方法では、露光領域に極短時間に大量の光エネルギーを照射して、光エネルギーを効率的に熱エネルギーに変換させ、その熱により、画像記録層において化学変化、相変化、形態または構造の変化などの熱変化を起させ、その変化を画像記録に利用する。従って、画像情報はレーザー光などの光エネルギーによって入力されるが、画像記録は光エネルギーに加えて熱エネルギーによる反応も加味された状態で行われる。通常、このような高パワー密度露光による発熱を利用した記録方式はヒートモード記録と呼ばれ、光エネルギーを熱エネルギーに変えることは光熱変換と呼ばれる。
このように微粒子の単なる熱融着による合体で画像を形成させる方法は、良好な機上現像性を示すものの、画像強度(支持体との密着性)が極めて弱く、耐刷性が不十分であるという問題を有していた。
さらに、特許文献4には、支持体上に、赤外線吸収剤とラジカル重合開始剤と重合性化合物とを含有する感光層を設けた平版印刷版原版が記載されている。
このように重合反応を用いる方法は、重合体微粒子の熱融着により形成される画像部に比べ、画像部の化学結合密度が高いため画像強度が比較的良好であるという特徴を有するが、実用的な観点から見ると、機上現像性、耐刷性および重合効率(感度)のいずれも未だ不十分である。
2.上記ホスホニウム化合物が下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする前記1記載の平版印刷版原版。
この作用機構は明確ではないが、ホスホニウムで表面被覆された雲母含有塗布液の安定性が向上したことによって、保護層の皮膜形成時の層構造が緻密になることが寄与しており、同時に、アニオン性ポリビニルアルコール樹脂の高い水溶性が機上現像性の劣化を防いでいると推測される。
以下では、本発明の平版印刷版原版の構成要素および成分について詳細に説明する。
本発明の画像記録層および/または保護層はホスホニウム化合物を含有する。該ホスホニウム化合物としては、下記一般式(1)または(2)で表されるホスホニウム化合物が好ましい。なかでも、一般式(1)で表されるホスホニウム化合物が好ましい。
ここで、R1〜R4がアルキル基、アルコキシ基またはアルキルチオ基であるときの炭素数は通常1〜20、アルケニル基またはアルキニル基であるときの炭素数は通常2〜15、シクロアルキル基であるときの炭素数は通常3〜8であり、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基等が、アリールオキシ基としてはフェノキシ基、ナフチルオキシ基等が、アリールチオ基としてはフェニルチオ基等が、複素環基としてはフリル基、チエニル基等が、それぞれ挙げられる。また、これらの有してもよい置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、スルフィノ基、スルホ基、ホスフィノ基、ホスホリル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基およびハロゲン原子等が挙げられる。なお、これらの置換基はさらに置換基を有していてもよい。
X - の表すアニオンとしては、Cl−、Br−、I−などのハロゲン化物イオン、ClO4 -、PF6 -、SO4 −2などの無機酸アニオン、有機カルボン酸アニオン、有機スルホン酸アニオンが挙げられる。有機カルボン酸アニオン、有機スルホン酸アニオンの有機基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、メトキシフェニル、ナフチル、フルオロフェニル、ジフルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、チエニル、ピロリル等が挙げられる。これらの中で、Cl- 、Br- 、I- 、ClO4 - 、PF6 - 等が好ましい。本発明において好適なホスホニウム化合物の具体例を以下に示す。
本発明において用いられる無機質層状化合物とは、薄い平板状の形状を有する粒子であり、例えば、一般式 A(B,C)2-5 D4 O10(OH,F,O)2
〔ただし、AはLi,K,Na,Ca,Mg,有機カチオンの何れか、BおよびCはFe(II),Fe(III),Mn,Al,Mg,Vの何れかであり、DはSiまたはAlである。〕で表される天然雲母、合成雲母等の雲母群、式3MgO・4SiO・H2Oで表されるタルク、テニオライト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、リン酸ジルコニウムなどが挙げられる。
このようにアスペクト比が大きい無機質層状化合物の粒子を保護層に含有させると、塗膜強度が向上し、また、酸素や水分の透過を効果的に防止しうるため、変形などによる保護層の劣化を防止し、高湿条件下において長期間保存しても、湿度の変化による平版印刷版原版における画像形成性の低下もなく保存安定性に優れる。
本発明においては保護層のバインダーとしてアニオン性ポリビニルアルコール樹脂が用いられる。該アニオン性ポリビニルアルコール樹脂としては、カルボキシル基、スルホ基等のアニオン性基で変性されたアニオン変性部位をランダムに有す各種重合度のポリビニルアルコールが用いられる。
これら化合物は、カルボン酸変性ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコールなどとして市販されており、カルボン酸変性ポリビニルアルコールとしては、KL−504、KL−506、KM−318、KL−118、KM−618、KM−118、KM−106((株)クラレ)、ゴーセナール (日本合成化学(株))などが挙げられ、スルホン酸変性ポリビニルアルコールとしては、SK-5102((株)クラレ)、CKS-50(日本合成化学(株))などが挙げられる。
本発明の平版印刷版原版には、酸素遮断性付与、画像記録層での傷等の発生防止、高照度レーザー露光時に生じるアブレーション防止等のために、画像記録層の上に保護層(オーバーコート層)を有する。
通常、平版印刷版の露光処理は大気中で実施する。露光処理によって生じる画像記録層中での画像形成反応は、大気中に存在する酸素、塩基性物質等の低分子化合物によって阻害され得る。保護層は、この酸素、塩基性物質等の低分子化合物が画像記録層へ混入することを防止し、結果として大気中での画像形成阻害反応を抑制する。従って、保護層に望まれる特性は、酸素等の低分子化合物の透過性を低くすることであり、さらに、露光に用いられる光の透過性が良好で、画像記録層との密着性に優れ、かつ、露光後の機上現像処理工程で容易に除去することができるものである。このような特性を有する保護層については、例えば、米国特許第3,458,311号明細書および特公昭55−49729号公報に記載されている。
これらは、必要に応じて2種以上を併用して用いることもできる。
本発明画像記録層は、露光後なんらの現像処理工程を経ることなく、印刷機上で油性インキと水性成分とを供給して未露光部分を除去することにより画像形成可能な画像記録層である。このような画像記録層は、上述のホスホニウム化合物以外に、(A)赤外線吸収剤と、(B)重合開始剤と、(C)重合性化合物と、(D)バインダーポリマーを含有することが好ましい。これらの成分を含有することにより、赤外線の照射により画像記録層の露光部が硬化して疎水性(親油性)領域を形成し、かつ、印刷開始時に未露光部が湿し水、インキまたは湿し水とインキとの乳化物によって支持体上から速やかに除去される。すなわち、上記画像記録層は、印刷インキおよび/または湿し水により除去可能な画像記録層である。以下、画像記録層の各構成成分について説明する。
本発明の平版印刷版原版を、760〜1200nmの赤外線を発するレーザーを光源により画像形成する場合には、通常、赤外線吸収剤を用いることが必須である。赤外線吸収剤は、吸収した赤外線を熱に変換する機能と赤外線により励起して後述する重合開始剤(ラジカル発生剤)に電子移動/エネルギー移動する機能を有する。本発明において使用される赤外線吸収剤は、波長760〜1200nmに吸収極大を有する染料または顔料である。
また、本発明の赤外線吸収色素の好ましい他の例としては、以下に例示するような特開2002−278057号公報記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
また、特に好ましい他の例としてさらに、前記した特開2002−278057号公報に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレンおよびペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
本発明に用いられる重合開始剤は、光、熱あるいはその両方のエネルギーによりラジカルを発生し、重合性の不飽和基を有する化合物の重合を開始、促進する化合物である。本発明に使用できる重合開始剤としては、公知の熱重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物、光重合開始剤などが挙げられる。なかでも、本発明において好適に用いられる重合開始剤は、熱エネルギーによりラジカルを発生し、重合性の不飽和基を有する化合物の重合を、開始、促進させる化合物である。
以下、本発明で用いる重合開始剤についてより具体的に説明するが、かかる重合開始剤は、単独または2種以上を併用して用いることができる。
本発明に用いることができる重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体およびオリゴマー、またはそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。モノマーおよびその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能もしくは多官能イソシアネート類あるいはエポキシ類との付加反応物、および単官能もしくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、さらにハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
(ただし、R4およびR5は、HまたはCH3を示す。)
感度の点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、画像部すなわち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、さらに、異なる官能数・異なる重合性基(例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感度と強度の両方を調節する方法も有効である。
また、画像記録層中の他の成分(例えばバインダーポリマー、開始剤、着色剤など)との相溶性、分散性に対しても、付加重合化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させうることがある。また、基板や後述の保護層などの密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。
本発明に用いることができるバインダーポリマーは、従来公知のものを制限なく使用でき、皮膜性を有するポリマーが好ましい。このようなバインダーポリマーの例としては、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノボラック型フェノール系樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、天然ゴムが挙げられる。
バインダーポリマーは、画像部の皮膜強度を向上するために、架橋性を有していてもよい。バインダーポリマーに架橋性を持たせるためには、エチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を高分子の主鎖中または側鎖中に導入すればよい。架橋性官能基は、共重合により導入してもよい。
分子の主鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、ポリ−1,4−ブタジエン、ポリ−1,4−イソプレン等が挙げられる。
分子の側鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、アクリル酸またはメタクリル酸のエステルまたはアミドのポリマーであって、エステルまたはアミドの残基(−COORまたは−CONHRのR)がエチレン性不飽和結合を有するポリマーを挙げることができる。
インキに対する溶解性または分散性を向上させるためには、バインダーポリマーは、親油的な方が好ましく、湿し水に対する溶解性または分散性を向上させるためには、バインダーポリマーは、親水的な方が好ましい。このため、本発明においては、親油的なバインダーポリマーと親水的なバインダーポリマーを併用することも有効である。
また、(C)重合性化合物と(D)バインダーポリマーは、質量比で0.5/1〜4/1となる量で用いるのが好ましい。
本発明においては、上記の画像記録層構成成分(A)〜(D)および後述のその他構成成分を画像記録層に含有させる方法として、いくつかの態様を用いることができる。一つは、例えば、特開2002−287334号公報に記載のごとく、該構成成分を適当な溶媒に溶解して塗布する分子分散型画像記録層である。他の一つの態様は、例えば、特開2001−277740号公報、特開2001−277742号公報に記載のごとく、該構成成分の全てまたは一部をマイクロカプセルに内包させて画像記録層に含有させるマイクロカプセル型画像記録層である。さらに、マイクロカプセル型画像記録層において、該構成成分は、マイクロカプセル外にも含有させることもできる。ここで、マイクロカプセル型画像記録層は、疎水性の構成成分をマイクロカプセルに内包し、親水性構成成分をマイクロカプセル外に含有することが好ましい態様である。
さらに他の態様として、画像記録層に架橋樹脂粒子、すなわちミクロゲルを含有する態様が挙げられる。該ミクロゲルは、その中および/または表面に該構成成分(A)〜(C)の一部を含有することが出来る。特に(C)重合性化合物をその表面に有することによって反応性ミクロゲルとした態様が、画像形成感度や耐刷性の観点から特に好ましい。
より良好な機上現像性を得るためには、画像記録層は、マイクロカプセル型もしくはミクロゲル型画像記録層であることが好ましい。
上記界面重合を利用する方法としては、上述した公知のマイクロカプセル製造方法を応用することができる。
本発明の画像記録層には、印刷開始時の機上現像性を促進させるため、および、塗布面状を向上させるために界面活性剤を用いるのが好ましい。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に用いられる両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミタゾリン類が挙げられる。
界面活性剤の含有量は、画像記録層の全固形分に対して、0.001〜10質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましい。
本発明では、さらに必要に応じてこれら以外に種々の化合物を添加してもよい。例えば、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として使用することができる。具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)等、および特開昭62−293247号に記載されている染料を挙げることができる。また、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料も好適に用いることができる。
着色剤の添加量は、画像記録層全固形分に対し、0.01〜10質量%の割合である。
本発明の画像記録層には、焼き出し画像生成のため、酸またはラジカルによって変色する化合物を添加することができる。このような化合物としては、例えばジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、チアジン系、オキサジン系、キサンテン系、アンスラキノン系、イミノキノン系、アゾ系、アゾメチン系等の各種色素が有効に用いられる。
本発明の画像記録層には、画像記録層の製造中または保存中において(C)ラジカル重合性化合物の不要な熱重合を防止するために、少量の熱重合防止剤を添加するのが好ましい。
熱重合防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩が好適に挙げられる。
熱重合防止剤の添加量は、画像記録層の全固形分に対して、約0.01〜約5質量%であるのが好ましい。
本発明の画像記録層には、酸素による重合阻害を防止するために、ベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で画像記録層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、画像記録層の全固形分に対して、約0.1〜約10質量%であるのが好ましい。
本発明の画像記録層は、機上現像性を向上させるために、可塑剤を含有してもよい。
可塑剤としては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジオクチルフタレート、オクチルカプリルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジアリルフタレート等のフタル酸エステル類;ジメチルグリコールフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、トリエチレングリコールジカプリル酸エステル等のグリコールエステル類;トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類;ジイソブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジメチルセバケート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルマレエート等の脂肪族二塩基酸エステル類;ポリグリシジルメタクリレート、クエン酸トリエチル、グリセリントリアセチルエステル、ラウリン酸ブチル等が好適に挙げられる。
可塑剤の含有量は、画像記録層の全固形分に対して、約30質量%以下であるのが好ましい。
本発明の画像記録層は、画像部の硬化皮膜強度向上および非画像部の機上現像性向上のために、無機微粒子を含有してもよい。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウムまたはこれらの混合物が好適に挙げられる。これらは光熱変換性でなくても、皮膜の強化、表面粗面化による界面接着性の強化等に用いることができる。
無機微粒子は、平均粒径が5nm〜10μmであるのが好ましく、0.5μm〜3μmであるのがより好ましい。上記範囲であると、画像記録層中に安定に分散して、画像記録層の膜強度を十分に保持し、印刷時の汚れを生じにくい親水性に優れる非画像部を形成することができる。
上述したような無機微粒子は、コロイダルシリカ分散物等の市販品として容易に入手することができる。無機微粒子の含有量は、画像記録層の全固形分に対して、40質量%以下であるのが好ましく、30質量%以下であるのがより好ましい。
本発明の画像記録層は、必要な上記各成分を溶剤に分散、または溶かして塗布液を調製し、塗布される。ここで使用する溶剤としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエン、水等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらの溶剤は、単独または混合して使用される。塗布液の固形分濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
本発明の画像記録層は、同一または異なる上記各成分を同一または異なる溶剤に分散、または溶かした塗布液を複数調製し、複数回の塗布、乾燥を繰り返して形成することも可能である。
本発明の平版印刷版原版に用いられる支持体は、特に限定されず、寸度的に安定な板状物であればよい。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされまたは蒸着された紙またはプラスチックフィルム等が挙げられる。好ましい支持体としては、ポリエステルフィルムおよびアルミニウム板が挙げられる。なかでも、寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板が好ましい。
機械的粗面化処理の方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法等の公知の方法を用いることができる。また、アルミニウムの圧延段階において凹凸を設けたロールで凹凸形状を転写する転写法も用いてもかまわない。
電気化学的粗面化処理の方法としては、例えば、塩酸、硝酸等の酸を含有する電解液中で交流または直流により行う方法が挙げられる。また、特開昭54−63902号公報に記載されているような混合酸を用いる方法も挙げられる。
陽極酸化処理の条件は、用いられる電解質により種々変わるので一概に特定することはできないが、一般的には、電解質濃度1〜80質量%溶液、液温5〜70℃、電流密度5〜60A/d m2 、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分であるのが好ましい。形成される陽極酸化皮膜の量は、1.0〜5.0g/m2であるのが好ましく、1.5〜4.0g/m2 であるのがより好ましい。この範囲で、良好な耐刷性と平版印刷版の非画像部の良好な耐傷性が得られる。
たとえば封孔処理としては、蒸気封孔のほかフッ化ジルコン酸の単独処理、フッ化ナトリウムによる処理、塩化リチウムを添加した蒸気封孔でも可能である。
無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理に用いられる無機フッ素化合物としては、金属フッ化物が好適に挙げられる。
具体的には、例えば、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化ジルコン酸カリウム、フッ化チタン酸ナトリウム、フッ化チタン酸カリウム、フッ化ジルコン酸アンモニウム、フッ化チタン酸アンモニウム、フッ化チタン酸カリウム、フッ化ジルコン酸、フッ化チタン酸、ヘキサフルオロケイ酸、フッ化ニッケル、フッ化鉄、フッ化リン酸、フッ化リン酸アンモニウムが挙げられる。なかでも、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化チタン酸ナトリウム、フッ化ジルコン酸、フッ化チタン酸が好ましい。
具体的には、例えば、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸一アンモニウム、リン酸一カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸カルシウム、リン酸水素アンモニウムナトリウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸第一鉄、リン酸第二鉄、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸鉛、リン酸二アンモニウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸リチウム、リンタングステン酸、リンタングステン酸アンモニウム、リンタングステン酸ナトリウム、リンモリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムが挙げられる。なかでも、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウムが好ましい。
無機フッ素化合物とリン酸塩化合物の組み合わせは、特に限定されないが、水溶液が、無機フッ素化合物として、少なくともフッ化ジルコン酸ナトリウムを含有し、リン酸塩化合物として、少なくともリン酸二水素ナトリウムを含有するのが好ましい。
また、水溶液の温度は、20℃以上であるのが好ましく、40℃以上であるのがより好ましく、また、100℃以下であるのが好ましく、80℃以下であるのがより好ましい。
また、水溶液は、pH1以上であるのが好ましく、pH2以上であるのがより好ましく、また、pH11以下であるのが好ましく、pH5以下であるのがより好ましい。
なかでも、浸漬法が好ましい。浸漬法を用いて処理する場合、処理時間は、1秒以上であるのが好ましく、3秒以上であるのがより好ましく、また、100秒以下であるのが好ましく、20秒以下であるのがより好ましい。
水蒸気による封孔処理は、例えば、加圧または常圧の水蒸気を連続的にまたは非連続的に、陽極酸化皮膜に接触させる方法が挙げられる。
水蒸気の温度は、80℃以上であるのが好ましく、95℃以上であるのがより好ましく、また、105℃以下であるのが好ましい。
水蒸気の圧力は、(大気圧−50mmAq)から(大気圧+300mmAq)までの範囲(1.008×105 〜1.043×105 Pa)であるのが好ましい。
また、水蒸気を接触させる時間は、1秒以上であるのが好ましく、3秒以上であるのがより好ましく、また、100秒以下であるのが好ましく、20秒以下であるのがより好ましい。
水蒸気による封孔処理は、例えば、陽極酸化皮膜を形成させたアルミニウム板を熱水に浸漬させる方法が挙げられる。
熱水は、無機塩(例えば、リン酸塩)または有機塩を含有していてもよい。
熱水の温度は、80℃以上であるのが好ましく、95℃以上であるのがより好ましく、また、100℃以下であるのが好ましい。
また、熱水に浸漬させる時間は、1秒以上であるのが好ましく、3秒以上であるのがより好ましく、また、100秒以下であるのが好ましく、20秒以下であるのがより好ましい。
親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号および同第3,902,734号の各明細書に記載されているようなアルカリ金属シリケート法がある。この方法においては、支持体をケイ酸ナトリウム等の水溶液で浸漬処理し、または電解処理する。そのほかに、特公昭36−22063号公報に記載されているフッ化ジルコン酸カリウムで処理する方法、米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号および同第4,689,272号の各明細書に記載されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法等が挙げられる。
支持体に表面処理を施した後または下塗り層を形成させた後、必要に応じて、支持体の裏面にバックコートを設けることができる。
バックコートとしては、例えば、特開平5−45885号公報に記載されている有機高分子化合物、特開平6−35174号公報に記載されている有機金属化合物または無機金属化合物を加水分解および重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好適に挙げられる。なかでも、Si(OCH3)4 、Si(OC2 H5 )4 、Si(OC3H7 )4 、Si(OC4 H9 )4 等のケイ素のアルコキシ化合物を用いるのが、原料が安価で入手しやすい点で好ましい。
本発明の平版印刷版原版においては、必要に応じて、画像記録層と支持体との間に下塗り層を設けることができる。下塗り層が断熱層として機能することにより、赤外線レーザーによる露光により発生した熱が支持体に拡散せず、効率よく利用されるようになるため、高感度化が図れるという利点がある。また、未露光部においては、画像記録層の支持体からのはく離を生じやすくさせるため、機上現像性が向上する。
下塗り層としては、具体的には、特開平10−282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、エチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物等が好適に挙げられる。
もっとも好ましい下塗り層としては、吸着性基/親水性基/架橋性基を共重合した高分子樹脂が挙げられる。
親水性支持体表面への吸着性の有無に関しては、例えば以下のような方法で判断できる。
試験化合物を易溶性の溶媒に溶解させた塗布液を作製し、その塗布液を乾燥後の塗布量が30mg/m2となるように支持体上に塗布・乾燥させる。試験化合物を塗布した支持体を、易溶性溶媒を用いて十分に洗浄した後、洗浄除去されなかった試験化合物の残存量を測定して支持体吸着量を算出する。ここで残存量の測定は、残存化合物量を直接定量してもよいし、洗浄液中に溶解した試験化合物量を定量して算出してもよい。化合物の定量法としては、例えば蛍光X線測定、反射分光吸光度測定、液体クロマトグラフィー測定で実施できる。支持体吸着性がある化合物は、上記のような洗浄処理を行っても1mg/m2以上残存する化合物である。
酸基は、酸解離定数(pKa)が7以下であることが好ましい。酸基の例は、フェノール性水酸基、カルボキシル基、−SO3H、−OSO3H、−PO3H2、−OPO3H2、−CONHSO2−、−SO2NHSO2−および−COCH2COCH3を含む。リン酸基(−OPO3H2、−PO3H2)が特に好ましい。またこれら酸基は、金属塩であっても構わない。
カチオン性基は、オニウム基であることが好ましい。オニウム基の例は、アンモニウム基、ホスホニウム基、アルソニウム基、スチボニウム基、オキソニウム基、スルホニウム基、セレノニウム基、スタンノニウム基、ヨードニウム基を含む。アンモニウム基、ホスホニウム基およびスルホニウム基が好ましく、アンモニウム基およびホスホニウム基がさらに好ましく、アンモニウム基が最も好ましい。
式(I)において、Xは、酸素原子(−O−)またはイミノ(−NH−)である。Xは、酸素原子であることがさらに好ましい。 式(I)において、Lは、2価の連結基である。Lは、2価の脂肪族基(アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基、置換アルキニレン基)、2価の芳香族基(アリレン基、置換アリレン基)または2価の複素環基であるか、あるいはそれらと、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、イミノ(−NH−)、置換イミノ(−NR−、Rは脂肪族基、芳香族基または複素環基)またはカルボニル(−CO−)との組み合わせであることが好ましい。
芳香族基の炭素原子数は、6乃至20が好ましく、6乃至15がさらに好ましく、6乃至10が最も好ましい。芳香族基は、置換基を有していてもよい。置換基の例は、ハロゲン原子、ヒドロキシル、脂肪族基、芳香族基および複素環基を含む。
Lは、複数のポリオキシアルキレン構造を含む二価の連結基であることが好ましい。ポリオキシアルキレン構造は、ポリオキシエチレン構造であることがさらに好ましい。言い換えると、Lは、−(OCH2CH2)n−(nは、2以上の整数)を含むことが好ましい。
以下に、式(I)および(II)で表される代表的な化合物の例を示す。
エステル残基の具体例としては、−CH2CH=CH2(特公平7−21633号公報に記載されている。)、−CH2CH2O−CH2CH=CH2、−CH2C(CH3)=CH2、−CH2CH=CH−C6H5、−CH2CH2OCOCH=CH−C6H5、−CH2CH2NHCOO−CH2CH=CH2、および−CH2CH2O−X(式中、Xはジシクロペンタジエニル残基を表す。)が挙げられる。
アミド残基の具体例としては、−CH2CH=CH2、−CH2CH2O−Y(式中、Yはシクロヘキセン残基を表す。)、−CH2CH2OCO−CH=CH2が挙げられる。
下塗り層用高分子樹脂の架橋性基を有するモノマーとしては、上記架橋性基を有するアクリル酸またはメタクリル酸のエステルまたはアミドが好適である。
下塗り層用の高分子樹脂は、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等のいずれでもよいが、ランダムポリマーであるのが好ましい。
下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1〜100mg/m2であるのが好ましく、1〜30mg/m2であるのがより好ましい。
本発明の平版印刷方法においては、上述した本発明の平版印刷版原版を、赤外線レーザーで画像様に露光する。
本発明に用いられる赤外線レーザーは、特に限定されないが、波長760〜1200nmの赤外線を放射する固体レーザーおよび半導体レーザーが好適である。赤外線レーザーの出力は、100mW以上であるのが好ましい。また、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザーデバイスを用いるのが好ましい。
1画素あたりの露光時間は、20μs以内であるのが好ましい。また、照射エネルギー量は、10〜300mJ/cm2 であるのが好ましい。
具体的には、平版印刷版原版を赤外線レーザーで露光した後、現像処理工程を経ることなく印刷機に装着して印刷する方法、平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上において赤外線レーザーで露光し、現像処理工程を経ることなく印刷する方法等が挙げられる。
その結果、水性成分は露出した親水性の表面に付着し、油性インキは露光領域の画像記録層に着肉し、印刷が開始される。ここで、最初に版面に供給されるのは、水性成分でもよく、油性インキでもよいが、水性成分が未露光部の画像記録層により汚染されることを防止する点で、最初に油性インキを供給するのが好ましい。水性成分および油性インキとしては、通常の平版印刷用の、湿し水と印刷インキが用いられる。
このようにして、平版印刷版原版はオフセット印刷機上で機上現像され、そのまま多数枚の印刷に用いられる。
(1)支持体の作製
厚み0.3mmのアルミニウム板(材質1050)の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間、脱脂処理を施した後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径25μmのパミス−水懸濁液(比重1.1g/cm3)を用いアルミ表面を砂目立てして、水でよく洗浄した。この板を45℃の25質量%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、さらに60℃で20質量%硝酸に20秒間浸漬し、水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/m2であった。
さらに、支持体A上に下記下塗り液(1)を乾燥塗布量が6mg/m2になるよう塗布し、以下の実験で用いる下塗り層付き支持体を作製した。
・下塗り化合物(1) 0.017g
・メタノール 9.00g
・水 1.00g
上記下塗り層上に、下記組成の画像記録層塗布液(1)をバー塗布した後、100℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量1.35g/m2の画像記録層を形成して平版印刷版原版を得た。画像記録層塗布液(1)は下記感光液(1)およびマイクロカプセル液(1)を塗布直前に混合し攪拌することにより得た。
・バインダーポリマー(1) 0.147g
・重合開始剤(1) 0.160g
・発色剤(2) 0.194g
・赤外線吸収剤(1) 0.031g
・重合性モノマー、アロニックスM-215(東亜合成(株)製) 0.350g
・フッ素系界面活性剤(1) 0.004g
・メチルエチルケトン 2.639g
・1−メトキシ−2−プロパノール 7.256g
・表1記載の化合物(A) 表1記載
マイクロカプセル液(1)
・下記の通り合成したマイクロカプセル(1) 2.640g
・水 2.425g
油相成分として、トリメチロールプロパンとキシレンジイソシアナート付加体(三井武田ケミカル(株)製、タケネートD−110N、75質量%酢酸エチル溶液)10g、アロニックスSR−399(東亞合成(株)製)6.00g、パイオニンA−41C(竹本油脂(株)製)0.12gを酢酸エチル16.67gに溶解した。水相成分としてPVA−205の4質量%水溶液37.5gを調製した。油相成分および水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を、蒸留水25gに添加し、室温で30分攪拌後、40℃で2時間攪拌した。このようにして得られたマイクロカプセル液の固形分濃度を、15質量%になるように蒸留水を用いて希釈した。平均粒径は0.2μmであった。
画像記録層上に下記保護層塗布液(1)を液量7.5mL/m2でバー塗布した後、125℃40秒条件でオーブン乾燥して保護層を形成して平版印刷版原版を得た。
・ポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製CKS50、
スルホン酸変性、ケン化度99モル%以上、 重合度300)6質量%水溶液 0.55g
・ポリビニルアルコール((株)クラレ製PVA-405、ケン化度81.5モル% 、
重合度500)6質量%水溶液 0.18g
・日本エマルジョン(株)製界面活性剤(エマレックス710) 1質量%水溶液 8.6g
・鱗状合成雲母(UNICOO(株)製 ソマシフMEB-3L、平均粒径1〜5μmΦ )
3.4質量%水分散物 1.50g
・蒸留水 2.85g
保護層塗布液(1)の代わりに下記保護層塗布液(2)を用いた以外は実施例1〜6と同様にして平版印刷版原版を得た。
・ポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製CKS50、
スルホン酸変性、ケン化度99モル%以上、 重合度300)6質量%水溶液 0.55g
・ポリビニルアルコール((株)クラレ製PVA-405、ケン化度81.5モル% 、
重合度500)6質量%水溶液 0.18g
・日本エマルジョン(株)製界面活性剤(エマレックス710)1質量%水溶液 8.6g
・鱗状合成雲母(UNICOO(株)製 ソマシフMEB-3L、平均粒径1〜5μmΦ )
3.4質量%水分散物 1.50g
・蒸留水 2.85g
・表1記載の化合物(A) 表1記載量
保護層塗布液(1)のCSK50の代わりにクラレ(株)製KM−106 (カルボン変性PVA、ケン化度99モル%以上、 重合度600)を用いた以外は実施例1と同様にして平版印刷版原版を得た。
実施例1の画像記録層において化合物(A)を無添加にした以外は実施例1と同様にして比較例1の平版印刷版原版を得た。
実施例1の保護層塗布液(1)の日本合成化学工業(株)製CKS50の代わりに(株)クラレ製完全ケン化ポリビニルアルコール(PVA-105、ケン化度98.5モル% 、重合度500)を用いた保護層塗布液(3)を用いた以外は実施例1と同様にして比較例2の平版印刷版原版を得た。
実施例7の保護層塗布液(2)の日本合成化学工業(株)製CKS50の代わりに(株)クラレ製完全ケン化ポリビニルアルコール(PVA-105、ケン化度98.5モル% 、重合度500)を用いた保護層塗布液(4)を用いた以外は実施例7と同様にして比較例3の平版印刷版原版を得た。
実施例1の保護層塗布液(1)の鱗状合成雲母を無添加にした保護層塗布液(5)を用いた以外は実施例1と同様にして比較例4の平版印刷版原版を得た。
得られた平版印刷版原版の機上現像性、耐刷性、経時安定性および感度を下記のようにして評価した。結果を第1表に示す。
得られた平版印刷版原版を水冷式40W赤外線半導体レーザー搭載のCreo社製Trendsetter3244VXにて、出力9W、外面ドラム回転数210rpm、解像度2400dpiの条件で露光した。露光画像には細線チャートを含むようにした。
得られた露光済み原版を現像処理することなく、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mのシリンダーに取り付けた。湿し水〔IF102(富士写真フイルム(株)製エッチ液)/水=4/96(容量比)〕とTRANS−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業(株)製)とを用い、湿し水とインキを供給し、毎時6000枚の印刷速度で印刷を100枚行った。画像記録層の未露光部の印刷機上での除去(機上現像)が完了し、非画像部において印刷用紙にインキが転写しない状態になるまでに要した印刷用紙の枚数を機上現像性として計測した。また、画像部のインキ濃度が安定化して一定となるまでに要した印刷用紙の枚数を着肉性として計測した。
その後、さらに印刷枚数を増やしていくと徐々に画像記録層が磨耗しインキ受容性が低下するため、印刷用紙におけるインキ濃度が低下した。インキ濃度(反射濃度)が印刷開始時よりも0.1低下したときの印刷枚数を耐刷性とした。
得られた平版印刷版原版を、60℃相対湿度40%に設定したサーモセルの中に2日間放置した後、上記と同様にして露光し印刷して機上現像性を求めた。
上記(A)の強制経時しない場合の機上現像枚数に近い枚数であるほど経時安定性が良好であると判断できる。
赤外線半導体レーザー搭載のCreo社製Trendsetter3244VXにて、出力3.2W、4.5W、6.4W、9.6Wと出力を変化させて外面ドラム回転数150rpm、解像度2400dpiの条件で、得られた平版印刷版原版に10μmの細線を露光した。露光済み原版をハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mのシリンダーに取り付け、湿し水〔IF102(富士写真フイルム(株)製エッチ液)/水=3/97(容量比)〕とTRANS−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業(株)製)とを用い、湿し水とインキを供給した後、毎時6000枚の印刷速度で印刷を100枚行った。
機上現像完了後の印刷物に10μmの細線が途切れることなく再現できたレーザー最小出力を感度として評価した。
保護層塗布液を調液後8℃24時間静置した後、沈降具合を下記3段階に官能評価した。
1:完全沈降 上澄み透明、
2:一部沈降 上澄み濃度 濃淡有り、
3:沈降無し 上澄み濃度 変化無し
耐傷性(塗布膜強度)の評価は、直径5.0mmΦのゴム針を持つ引掻き試験機にて荷重を変えて引掻きを行い、機上現像後、印刷物上で引掻いた部分で傷が付かなかった最大荷重を求めて行った。
一方、アニオン性ポリビニルアルコール樹脂なしでホスホニウム化合物を加えた比較例2および3は、着肉性は改良されるが、雲母の分散性が低下して保護層塗布液の経時安定性が劣化すると同時に、機上現像性、耐刷性、耐傷性などすべての性能が低下することが分かる。
さらに、雲母を含有しない比較例4は、画像記録層と保護層の相間混合による酸素遮断性低下等に起因する感度不足のため画像形成不良が発生し、著しく印刷版としての性能を損なうことが分かる。
Claims (3)
- 支持体上に、画像様露光後、印刷機上で油性インキと水性成分とを供給して未露光部分を除去することにより画像形成可能な画像記録層、および、保護層を有する平版印刷版原版において、該画像記録層および/または保護層にホスホニウム化合物を含有し、かつ、該保護層に無機質層状化合物およびアニオン性ポリビニルアルコール樹脂を含有することを特徴とする平版印刷版原版。
- 上記アニオン性ポリビニルアルコール樹脂が、カルボン酸またはスルホン酸変性ポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1または2記載の平版印刷版原版。
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