JP2007235848A - 適応フィルタの制御装置及び適応フィルタの制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】外乱に対する安定性の低下を抑え、更に入力信号が有色であっても収束速度が低下しない適応フィルタの制御装置及び制御方法を提供する。
【解決手段】フィルタ部20の希望応答とする信号或いはその希望応答に外乱の重畳された信号である希望応答信号「d(t)」と同フィルタの出力信号「y(t)」との偏差「e(t)」に基づいてフィルタ係数「w(t)」を周期的に更新する適応フィルタ10の制御装置30として、フィルタ部20の入力信号「x(t)」に基づきそれぞれ生成されたP個のベクトルを要素とするベクトル系列を生成して出力するベクトル系列出力部31と、過去P点の偏差「e(t)」の非線形変換値のそれぞれを要素とするスカラ系列を生成して出力するスカラ系列出力部32と、ベクトル系列及びスカラ系列に基づき更新量を算出してフィルタ係数「w*(t)」の更新を行うフィルタ係数更新部33と、を備える。
【選択図】図1

Description

この発明は、状況に応じて自身のフィルタ特性を自動的に制御する適応フィルタの制御装置及び制御方法に関する。
例えば音響システムのノイズフィルタとして、状況に応じて自身のフィルタ特性を自動的に制御する適応フィルタ(Adaptive Digital Filter)が知られている。こうした適応フィルタでは、信号、雑音、システム関数などに関する先験的な情報が十分でない場合においても、学習を通じて適切なフィルタ特性を得ることができる。こうした適応フィルタの制御アルゴリズムとしては、例えば非特許文献1に記載の学習同定法や射影法等の様々なアルゴリズムが提案されている。
学習同定法は、フィルタ出力と最適応答との二乗平均誤差を最小にするアルゴリズムであり、安定性があり、演算量が少ないという利点がある。具体的には、学習同定法では、離散時刻「t」におけるフィルタ係数「w*(t)」を下式(19)にて更新するとともに、その更新量「Δw*(t)」を下式(20)に基づき求めるようにしている。ただし、フィルタの入力信号ベクトル「x*(t)」が有色の場合、収束速度が著しく低下するという欠点を有している。なお、下式(20)中の入力信号ベクトル「x*(t)」は、離散時刻「t」におけるフィルタの入力信号を「x(t)」とするとき、その離散時刻「t」を基準とした過去L点の入力信号「x(t)」、「x(t−1)」、・・・、「x(t−L+1)」を成分とするベクトルを表す。また、下式(20)中の「e(t)」は、フィルタの希望応答とする信号或いはその希望応答に外乱の重畳された信号である希望応答信号と同フィルタの出力信号との偏差を表し、同じく「μ」は、係数修正の大きさを制御する定数であるステップサイズパラメータを表す。
Figure 2007235848
一方、射影法は、アフィン射影アルゴリズムとも呼ばれるアルゴリズムであり、過去の複数点のフィルタ入力を用いることで、より高速に適応(学習)を行うアルゴリズムとなっている。具体的には、射影法では、フィルタ係数の更新量「Δw*(t)」を下式(21)に基づき求めるようにしている。こうした射影法では、フィルタの入力信号が有色である場合にも、高速に適応を行うことが可能であるが、過去の複数点の入力を用いる以上、演算量は多くなる。なお、下式(21)中の偏差系列「e’*(t)」は、下式(22)にて示されるように、次数を「P」としたときのステップサイズパラメータμを用いて重み付けを付与した、フィルタの希望応答とする信号或いはその希望応答に外乱の重畳された信号である希望応答信号と同フィルタの出力信号との偏差系列を表す。また、同じく「Xp*(t)」は、下式(23)に示されるように、離散時刻「t」を基準とした過去P点における入力信号ベクトル「x*(t)」、「x*(t−1)」、・・・、「x*(t−P+1)」を要素とするベクトル系列を表す。
Figure 2007235848
こうした学習同定法及び射影法はいずれも、フィルタの希望応答に外乱が重畳されないことを前提としており、外乱が重畳される場合には、安定性が著しく低下してしまうという問題がある。そこで従来、発明者らは、特許文献1に見られるような、統計的独立性を用いた学習同定法の改良方式を提案している。この方式では、下式(24)にてフィルタ係数の更新量を求めるようにしており、非線形変換処理を加えることで、外乱に対する安定性の低下の抑制が図られている。なお、下式(24)中の「F(e(t))」は、上記偏差「e(t)」の非線形変換値を算出する非線形関数を表す。
Figure 2007235848
特開2005−195895号公報 大賀寿郎、外2名、「音響システムとディジタル処理」、電子情報通信学会編、1995
このように、上記のような統計的独立性を用いた学習同定法の改良方式では、外乱に対する安定性は確かに優れたものとなっている。しかしながら、その基礎となった学習同定法の持つ、有色入力信号に対する収束速度の低下という欠点は、そのまま踏襲されており、未だ改善の余地はある。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、外乱に対する安定性の低下を抑え、更に入力信号が有色であっても収束速度が低下しない適応フィルタの制御装置及び制御方法を提供することにある。
こうした目的を達成するため、請求項1或いは請求項19に記載の発明では、フィルタの希望応答とする信号或いはその希望応答に外乱の重畳された信号である希望応答信号と同フィルタの出力信号との偏差に基づいてフィルタ係数を周期的に更新する適応フィルタの制御装置或いは適応フィルタの制御方法として、「P」を2以上の整数としたとき、前記フィルタの入力信号に基づきそれぞれ算出されたP個のベクトルを要素とするベクトル系列を生成して出力するベクトル系列出力部と、過去P点の前記偏差の非線形変換値のそれぞれを要素とするスカラ系列を生成して出力するスカラ系列出力部と、前記ベクトル系列と前記スカラ系列とに基づいて更新量を算出して前記フィルタ係数の更新を行うフィルタ係数更新部と、を備えることとした。
上記過去P点の上記偏差を非線形関数にて変換することによって得られる非線形変換値のそれぞれを要素とする上記スカラ系列を上記フィルタ係数の更新に用いるということは、上記入力信号と上記偏差とがより統計的に独立になるように上記フィルタを学習するということである。すなわち、上記偏差のうち上記入力信号に従属な成分を除去するように上記フィルタ係数の更新を行うため、上記フィルタの希望応答に外乱が重畳される場合であれ、適切にフィルタ係数を更新することができるようになる。また、過去P点の上記入力信号ベクトルに基づき生成されたベクトルを要素とするベクトル系列を用いるため、上記フィルタの入力信号が有色であれ、フィルタ係数の収束速度は低下しなくなる。
そもそも、フィルタ係数の収束速度を決定するパラメータは、上記フィルタ係数の更新量「Δw*(t)」である。この更新量「Δw*(t)」の各要素の絶対値が小さいと、フィルタ係数の学習に時間を要するものの安定して学習をすることができる。逆にこの更新量「Δw*(t)」の各要素の絶対値が大きいと、フィルタ係数の学習を短時間で行うことができるものの不安定となるおそれがある。したがって、フィルタ係数の学習の高速化に対する要求及びフィルタ係数の学習の安定性に対する要求の双方に対処する上記フィルタ係数の更新量「Δw*(t)」としての望ましい範囲が存在する。
その点、例えば請求項2或いは請求項20に記載の発明では、離散時刻「t」における、前記ベクトル系列出力手段の出力するベクトル系列を構成するP個のベクトル要素を「u*k(t)」(k=1,2,・・・,P)で、前記偏差を「e(t)」で、その非線形変換値を「F(e(t))」でそれぞれ表し、更に「αk」を定数、「N(u*k(t))」を前記ベクトル要素「u*k(t)」に対してスカラ値を返す関数としたとき、前記更新部は、離散時刻「t」における前記フィルタ係数「w*(t)」を下式(25)にて更新するとともに、
Figure 2007235848
その更新量「Δw*(t)」を、下式(26)にて算出することとした。
Figure 2007235848
こうした請求項2或いは請求項20に記載の構成或いは方法によれば、上記定数「αk」及び上記関数「N(u*k(t))」を適切に選択することで、フィルタ係数の更新量「Δw*(t)」の各要素の絶対値を望ましい範囲に設定することが可能となる。
そうした関数「N(u*k(t))」として具体的には、例えば請求項3或いは請求項21に記載の発明によるように、
(A1)上記ベクトル要素「u*k(t)」のL1ノルムの値を返す関数。
また、例えば請求項4或いは請求項22に記載の発明によるように、
(A2)上記ベクトル要素「u*k(t)」のL2ノルムの値を返す関数。
また、例えば請求項5或いは請求項23に記載の発明によるように、
(A3)上記ベクトル要素「u*k(t)」に依らず、常に一律の値を返す関数。
等々を採用することができる。
特に上記(A1)構成或いは方法(請求項3、請求項21)によれば、下式(27)にて表されるL1ノルムによって上記ベクトル要素「u*k(t)」が正規化されるため、上記ベクトル要素「u*k(t)」の各成分がどのような値であれ、フィルタ係数の更新量「Δw*(t)」の各要素の絶対値を望ましい範囲に容易に収めることができるようになる。
Figure 2007235848
また上記(A1)の構成或いは方法と同様に、上記(A2)の構成或いは方法(請求項4、請求項22)によっても、下式(28)にて表されるL2ノルムによって上記ベクトル要素「u*k(t)」を正規化するため、上記ベクトル要素「u*k(t)」の各成分がどのような値であれ、フィルタ係数の更新量「Δw*(t)」の各要素の絶対値を望ましい範囲に容易に収めることができるようになる。
Figure 2007235848
また、上記フィルタ係数の更新量「Δw*(t)」の算出に際しては、変数「k」の値が大きいベクトル要素「u*k(t)」よりも変数「k」の値が小さいベクトル要素「u*k(t)」を重視することが、上記フィルタの出力信号をその希望応答信号に近づける、すなわち、上記偏差のうち上記入力信号に従属な成分を除去する上で望ましい。
その点、例えば請求項6或いは請求項24に記載の発明によるように、変数「k」の値が小さいものほど上記定数「αk」を大きい値に設定することとすれば、変数「k」の値が小さいベクトル要素「u*k(t)」がより反映された上記フィルタ係数の更新量「Δw*(t)」を算出することができるようになる。
具体的には、例えば請求項7或いは請求項25に記載の発明によるように、上記定数「αk」を、0より大きく且つ1以下の値に設定された定数「μ」を用いた下式(29)にて算出するようにすれば、定数「μ」の値を設定するだけで、取得時刻の遅いベクトル成分「u*k(t)」がより反映された上記フィルタ係数の更新量「Δw*(t)」を算出することができるようになる。
Figure 2007235848
ところで、従来のP次射影法にあっては基本的に、上記過去P点における入力信号ベクトル「x*(t)」、「x*(t−1)」、・・・、「x*(t−P+1)」をそのまま用いて上記フィルタ係数を更新する。そして、その1回当たりの更新には、おおよそ「(P+1)×L」の演算ステップが必要とされる。
その点、例えば請求項8或いは請求項26に記載の発明では、上記ベクトル系列出力部は、離散時刻「t」における上記フィルタの入力信号を「x(t)」で表し、その離散時刻「t」の過去L点の入力信号「x(t)」、「x(t−1)」、・・・、「x(t−L+1)」を成分とする入力信号ベクトルを「x*(t)」で表したとき、過去P点における入力信号ベクトル「x*(t)」、「x*(t−1)」、・・・、「x*(t−P+1)」のそれぞれについて、他の(P−1)個の入力信号ベクトルのすべてに対して直交するベクトルを求めるとともに、それらの求められたP個のベクトルを要素とするベクトル系列を生成して出力することとした。
適応フィルタの制御装置或いは制御方法としてのこのような構成或いは方法によれば、過去P点における入力信号ベクトル「x*(t)」、「x*(t−1)」、・・・、「x*(t−P+1)」のそれぞれについて、他の(P−1)個の入力信号ベクトルのすべてに対して直交するベクトルを求めることから、1回当たりの更新には、おおよそ「(P×P+P+1)×L」の演算ステップが必要とされ、その演算量は増加することとなる。しかしながら、そうして求められたP個のベクトルを要素とするベクトル系列に基づきフィルタ係数を更新することは、上記過去P点における入力信号ベクトル「x*(t)」、「x*(t−1)」、・・・、「x*(t−P+1)」中に含まれる重複する情報を予め排除した上でフィルタ係数を更新することになるため、学習効率の良いフィルタ係数の更新を行うことができるようになる。したがって、上記フィルタの入力信号が有色であれ、高速なフィルタ学習を行うことができるようになる。
具体的には、例えば請求項9或いは請求項27に記載の発明では、上記過去P点における入力信号ベクトル「x*(t)」、「x*(t−1)」、・・・、「x*(t−P+1)」を要素とするベクトル系列を「X*p(t)」とし、「Cij」をベクトル系列「X*p(t)」の転置行列「X*p(t)T」と同ベクトル系列「X*p(t)」との積のi行j列の余因子としたとき、上記ベクトル系列出力部は、上記ベクトル系列を構成するP個のベクトル要素「u*k(t)」(k=1,2,・・・,P)を、下式(30)にて算出することとした。これにより、上記フィルタの入力信号が有色であっても高速なフィルタ学習を行うことのできる適応フィルタの制御装置或いは制御方法を容易に実現することができる。
Figure 2007235848
特に、請求項9或いは請求項27に記載の構成或いは方法において、請求項10或いは請求項28に記載の発明では、上記ベクトル系列出力部は、離散時刻「t」におけるベクトル要素「u*k(t)」の2番目からL番目の成分「uk,2(t)」、「uk,3(t)」、・・・、「uk,L(t)」を、離散時刻「t−1」におけるベクトル要素「u*k(t−1)」を用いて、下式(31)の近似式にて算出することとした。
Figure 2007235848
適応フィルタの制御装置或いは制御方法としてのこのような構成或いは方法によれば、各ベクトル要素「u*k(t)」につき新規に算出する成分を一つに削減することができるようになるため、上記フィルタ係数の更新に際し必要とされる演算ステップは、1回当たり、おおよそ「(P+1)×L」の演算ステップとなる。すなわち、上記フィルタ係数の更新に際し必要とされる演算ステップを従来のP次射影法と同程度に抑制することができるようになる。しかもこの場合、上式(31)のような近似化に伴う安定性や収束速度の低下は、実用上、問題の無い程度にとどまることが発明者らによって確認されている。
また一方、例えば請求項11或いは請求項29に記載の発明では、前記ベクトル系列出力部は、前記過去P点における入力信号ベクトル「x*(t)」、「x*(t−1)」、・・・、「x*(t−P+1)」を用いて、前記ベクトル系列を構成するP個のベクトル要素「u*k(t)」(k=1,2,・・・,P)を、下式(32)及び(33)にて算出することとした。これによっても、上記フィルタの入力信号が有色であれ高速なフィルタ学習を行うことのできる適応フィルタの制御装置或いは制御方法を容易に実現することができる。
Figure 2007235848
このような制御装置或いは制御方法において、例えば請求項12或いは請求項30に記載の発明では、上記偏差の非線形変換値として、上記偏差が零であるときはその値が零となり、零からの上記偏差の増大に応じてその値が正の所定値に収束し、零からの上記偏差の減少に応じてその値が負の所定値に収束するように設定された非線形関数を用いて求めることとした。これにより、上記入力信号と上記偏差とが互いに統計的に独立となるように上記フィルタを学習する効果が得られ、上記フィルタ係数の更新に対し上記偏差に含まれる外乱が与える影響を抑制することが可能となる。
そうした上記偏差「e(t)」の非線形変換値を算出する非線形関数「F(e(t))」として具体的には、例えば請求項13或いは請求項31に記載の発明によるように、
(B1)定数「m」を用いて下式(34)にて表される非線形関数「F(e(t))」。
Figure 2007235848
また、例えば請求項14或いは請求項32に記載の発明によるように、
(B2)双曲線正接関数。
また、例えば請求項15或いは請求項33に記載の発明によるように、
(B3)下式(35)にて表される非線形関数「F(e(t))」。
Figure 2007235848
等々を採用することができる。
ちなみに、上記(B1)の構成或いは方法(請求項13、請求項31)によれば、上記非線形変換値の算出にかかる負荷を低減しつつ、上記フィルタ係数の更新に対し上記偏差に含まれる外乱が与える影響を抑制することができるようになる。また、上記(B2)の構成或いは方法(請求項14、請求項32)によれば、先の(B1)の構成或いは方法に比して、上記非線形変換値の算出にかかる負荷が増加するものの、上記フィルタ係数の更新に対し上記偏差に含まれる外乱が与える影響についてはこれを、十分に抑制することができるようになる。さらに、上記(B3)の構成或いは方法(請求項15、請求項33)によれば、先の(B1)の構成或いは方法に比して、上記非線形変換値の算出にかかる負荷は大きく減少するとともに、上記フィルタ係数の更新に対し上記偏差に含まれる外乱が与える影響についてはこれを、同程度、抑制することができるようになる。
また、こうした制御装置或いは制御方法は、例えば請求項16或いは請求項34に記載の発明によるように、
(C1)音声信号を音声に変換して再生出力する音声出力手段と、その音声出力手段によって再生出力された雑音を含む音声を電気信号に変換して出力する集音手段と、を備える音響システム。
また、例えば請求項17或いは請求項35に記載の発明によるように、
(C2)音声を送話音声信号に変換して送話回線を通じて送信する送話手段と、受話回線を通じて受信した受話音声信号を音声に変換して出力する受話手段と、を備える音声回線システム。
また、例えば請求項18或いは請求項36に記載の発明によるように、
(C3)騒音源の発生する騒音を電気信号に変換する騒音集音手段と、上記騒音と逆位相の制御音を発生して出力する制御音発生手段と、騒音制御を行う場の音を電気信号に変換する評価音集音手段と、を備えるアクティブ騒音制御システム。
等々に適用することができる。
ちなみに、上記(C1)の適用例(請求項16、請求項34)では、上記音声出力手段により音声変換される音声信号を上記フィルタの入力信号とし、上記集音手段により出力される電気信号を上記希望応答信号(特に、フィルタの希望応答に外乱の重畳された信号)とする。これにより、上記偏差のうち上記入力信号に従属な成分を除去するかたちで上記フィルタのフィルタ係数を更新することとすれば、除去対象である希望応答、例えば音響エコー分を除去することができるようになる。
一方、上記(C2)の適用例(請求項17、請求項35)では、上記受話音声信号及び上記送話音声信号の一方を前記フィルタの入力信号とし、他方を上記希望応答信号(特に、フィルタの希望応答に外乱の重畳された信号)とする。これにより、上記偏差のうち上記入力信号に従属な成分を除去するかたちで上記フィルタのフィルタ係数を更新することとすれば、除去対象である希望応答、例えば回線エコー分を除去することができるようになる。
他方、上記(C3)の適用例(請求項18、請求項36)では、上記騒音集音手段により変換された電気信号を上記フィルタの入力信号とし、上記評価音集音手段により変換された電気信号を上記偏差とするとともに、上記制御音発生手段は、上記フィルタの出力信号を上記制御音に変換して出力する。これにより、上記偏差のうち上記入力信号に従属な成分を除去するかたちで上記フィルタのフィルタ係数を更新することとすれば、上記騒音を低減することができるようになる。
(第1の実施の形態)
以下、この発明にかかる適応フィルタの制御装置及び適応フィルタの制御方法の第1の実施の形態について、図1及び図2に基づき説明する。
図1は、この実施の形態の適応フィルタの制御装置について、適応フィルタも含めてその全体構成を示したものである。同図1に示されるように、この適応フィルタ10は、基本的に、
・FIR(Finite Impulse Response:有限インパルス応答)フィルタで構成されるとともに、離散時刻「t」における入力信号「x(t)」を濾波して出力信号「y(t)」を出力するフィルタ部20。
・下式(36)にて表される、上記フィルタ部20の希望応答とする信号或いはその希望応答に外乱の重畳された信号である希望応答信号「d(t)」と、同フィルタ部20の出力信号「y(t)」と、の偏差「e(t)」を用いて、下式(37)にて表される上記フィルタ部20のフィルタ係数「w*(t)」を周期的に更新する制御装置30。
等々を備えて構成されている。
Figure 2007235848
ちなみに上記フィルタ部20は、離散時刻「t」を基準とした過去L点のフィルタ部20の入力信号「x(t)」、「x(t−1)」、・・・、「x(t−L+1)」を成分とする入力信号ベクトル「x*(t)」を下式(38)にて表すと、この入力信号ベクトル「x*(t)」及び上式(37)にて表されるフィルタ係数「w*(t)」を用いて、出力信号「y(t)」を下式(39)にて算出する。
Figure 2007235848
また、同図1に示すように、制御装置30は、基本的に、
・上記フィルタ部20の上記入力信号ベクトル「x*(t)」に基づきP個のベクトル「u*k(t)」をそれぞれ算出してこれらのベクトル「u*k(t)」を要素とするベクトル系列を生成するとともに、後述するフィルタ係数更新部33にこのベクトル系列を出力するベクトル系列出力部31。
・過去P点の上記偏差「e(t)」の非線形変換値のそれぞれを要素とするスカラ系列「e’(t)」を生成するとともに、後述するフィルタ係数更新部33にこのスカラ系列「e’(t)」を出力するスカラ系列出力部32。
・上記ベクトル系列出力部31から出力された上記ベクトル系列及び上記スカラ系列出力部32から出力された上記スカラ系列に基づき上記フィルタ係数の更新量「Δw*(t)」を算出するとともに、上記フィルタ部20のフィルタ係数「w*(t)」を更新するフィルタ係数更新部33。
を有して構成されている。なお、「P」は2以上の整数とする。
詳しくは、ベクトル系列出力部31は、上記ベクトル系列を構成するP個のベクトル要素「u*k(t)」(k=1,2,・・・,P)を下式(40)に基づき算出する。ここで、下式(40)中の「Cij」は、過去P点における上記入力信号ベクトル「x*(t)」、「x*(t−1)」、・・・、「x*(t−P+1)」を要素とした下式(41)にて表されるベクトル系列「X*p(t)」の転置行列「X*p(t)T」と同ベクトル系列「X*p(t)」との積にて求められる行列のi行j列の余因子である。そしてベクトル系列出力部31は、このようにして求めたベクトル系列を構成するP個のベクトル要素「u*k(t)」を、上記フィルタ係数更新部33へ出力する。
Figure 2007235848
上式(40)に鑑みれば、上記P個のベクトル要素「u*k(t)」は、離散時刻(t−P+1)から離散時刻「t」までのうち離散時刻(t−k)を除く入力信号ベクトル「x*(t)」、「x*(t−1)」、・・・、「x*(t−(k−1))」、「x*(t−(k+1))」、・・・、「x*(t−P+1)」によって、離散時刻(t−k)における入力信号ベクトル「x*(t−k)」を最小二乗近似した際の残差とみなすことができる。すなわち、上記ベクトル系列出力部31は、離散時刻「t」を基準とした過去P点における入力信号ベクトル「x*(t)」、「x*(t−1)」、・・・、「x*(t−P+1)」のそれぞれについて、他の(P−1)個の入力信号ベクトルのすべてに対して直交するベクトルを求め、それらの求められたP個のベクトルを要素とするベクトル系列を生成している。
一方、上記スカラ系列出力部32は、上述のように、過去P点の上記偏差「e*(t)」の非線形変換値のそれぞれを要素とするスカラ系列「e’*(t)」を下式(42)に基づき生成する。ここで下式(42)中の「F(e(t))」は、下式(43)にて表される符号関数である。そしてスカラ系列出力部32は、このようにして求めたスカラ系列「e’*(t)」を上記フィルタ係数更新部33へ出力する。
Figure 2007235848
なお、過去P点の上記偏差「e*(t)」を非線形関数「F(e(t))」にて変換した上記スカラ系列「e’*(t)」を用いて上記フィルタ係数を更新することにより、上記入力信号と上記偏差が互いに統計的に独立となるように上記フィルタを学習する効果が得られ、上記偏差のうち上記入力信号に従属な成分が除去されるように上記フィルタ係数を更新することができる。
他方、上記フィルタ係数更新部33は、上述のようにして得られた上記ベクトル系列及び上記スカラ系列を用いて、下式(44)に基づき上記更新量「Δw*(t)」を算出する。ここで、下式(44)中の「αk」は、「0」より大きく且つ「1」以下の値に設定された定数「μ」を用いて下式(45)に基づき算出される定数であり、同じく下式(44)中の「N(u*k(t))」は、上記ベクトル要素「u*k(t)」に対して下式(46)にて表されるスカラ値を返す関数である。
Figure 2007235848
そして上記フィルタ係数更新部33は、上式(44)に基づき算出した上記更新量「Δw*(t)」を用い、下式(47)に基づいて上記フィルタ部20のフィルタ係数「w*(t)」の更新を周期的に行っている。
Figure 2007235848
なお、上式(47)から明らかなように、上記フィルタ係数「w*(t)」の収束速度を決定するパラメータは、上記フィルタ係数の更新量「Δw*(t)」である。この更新量「Δw*(t)」の各要素の絶対値が小さいと、フィルタ係数の学習に時間を要するものの安定して学習をすることができる。逆にこの更新量「Δw*(t)」の各要素の絶対値が大きいと、上記フィルタ係数「w*(t)」の学習を短時間で行うことができるものの不安定となるおそれがある。したがって、上記フィルタ係数「w*(t)」の学習の高速化に対する要求及び上記フィルタ係数「w*(t)」の学習の安定性に対する要求の双方に対処する上記フィルタ係数の更新量「Δw*(t)」としての望ましい範囲が存在する。
その点、この実施の形態では、上式(44)中の「N(u*k(t))」として上式(46)にて示すL1ノルムを採用し、このL1ノルムによって上記ベクトル要素「u*k(t)」を正規化する。このように正規化することで、上記ベクトル要素「u*k(t)」内の各成分がどのような値であれ、上記フィルタ係数の更新量「Δw*(t)」の各要素の絶対値を望ましい範囲に収めるようにしている。
また、上記フィルタ係数の更新量「Δw*(t)」の算出に際しては、変数「k」の値が大きい上記ベクトル要素よりも変数「k」の値が小さい上記ベクトル要素を重視することが、上記フィルタ部20の出力信号「y(t)」をその希望応答信号「d(t)」に近づける上で、すなわち、上記偏差「e(t)」のうち上記入力信号に従属な成分を除去する上で望ましい。
その点、この実施の形態では、上式(44)中の「αk」として上式(45)にて示す定数を採用し、変数「k」の値が小さいものほど定数「αk」を大きい値に設定している。これにより、変数「k」の値が小さいベクトル要素「u*k(t)」がより反映された上記フィルタ係数の更新量「Δw*(t)」を容易に算出することができるようになる。
図2(a)は、この実施の形態の制御方法にて周期的に実行されるフィルタ処理の処理手順を示したものであり、図2(b)は、同フィルタ処理中に実行されるフィルタ係数の学習処理の処理手順を示したものである。次に、この図2(a)及び(b)を併せ参照して、この実施の形態の適応フィルタの制御方法について説明する。
図2(a)に示されるように、上記フィルタ部20は、該フィルタ部20のフィルタ係数「w*(t)」の更新に際してまず、ステップS10の処理としてフィルタ係数「w*(t)」を初期化する。すなわち、上記フィルタ部20のフィルタ係数「w*(t)」を、予め実験等で求められた初期値、或いは零に設定する。そうした初期化処理を終えるとフィルタ部20は、次のステップS11の処理として、上記フィルタ部20の希望応答に外乱の重畳された希望応答信号「d(t)」を適応フィルタ10に、入力信号「x(t)」をフィルタ部20にそれぞれ取り込む。なお、このフィルタ処理の際には、過去の(L+P−1)点の入力信号が必要となるため、このステップS11の処理において取り込む入力信号「x(t)」については、適宜の保持手段によってその値を保持するようにしている。こうして各信号を取り込んだ後、フィルタ部20は、ステップS12の処理として、フィルタ係数「w*(t)」及び入力信号「x(t)」から上式(39)に基づき出力信号「y(t)」を算出する。出力信号「y(t)」が算出されると、上記スカラ系列出力部32は、ステップS13の処理として、先のステップS11の処理において取り込んだ希望応答信号「d(t)」と上記出力信号「y(t)」との偏差「e(t)」を上式(36)に基づき算出する。なお、フィルタ係数の学習処理の際には過去P点の偏差が必要となるため、ステップS13で算出した偏差についても、適宜の保持手段によってその値を保持するようにしている。こうして偏差「e(t)」を算出した後、フィルタ部20は、ステップS14の処理として、図2(b)に示す一連のフィルタ係数の学習処理に移行する。
フィルタ係数の学習処理にあってはまず、図2(b)に示すように、上記スカラ系列出力部32は、ステップS141の処理として、先のステップS13の処理で算出した偏差「e(t)」を用いて上式(42)及び(43)に基づきスカラ系列を生成し、これを上記フィルタ係数更新部33へ出力する。一方、ベクトル系列出力部31は、次のステップS142の処理として、先のステップS11の処理において取り込んだ入力信号「x(t)」及び上記保持手段に保持されている過去(L+P−1)点の値から上式(40)及び(41)に基づき上記ベクトル系列を生成し、これを上記フィルタ係数更新部33へ出力する。このようにして上記スカラ系列及び上記ベクトル系列が生成・出力されると、ステップS143の処理として、上記フィルタ係数更新部33は、上式(44)〜(46)に基づき上記フィルタ係数の更新量「Δw*(t)」を算出する。そして続くステップS144の処理として、上記フィルタ係数更新部33は、先のステップS143の処理で算出された上記フィルタ係数の更新量「Δw*(t)」から、上式(47)に基づきフィルタ係数を更新し、先の図2(a)に示すステップS15の処理へ移行する。
このフィルタ係数の学習処理を終えるとフィルタ部20は、ステップS15の判断処理において終了指令信号を受けているか否かを判断し、終了指令信号を受けていると判断されるまで、先のステップS11〜S15の処理を繰返し実行する。このようにして、上記フィルタ部20の出力信号「y(t)」と上記希望応答信号(特に、フィルタ部20の希望応答に外乱の重畳された信号)「d(t)」との偏差「e(t)」のうち上記入力信号「x(t)」に従属な成分を除去するかたちでフィルタ部20のフィルタ係数「w*(t)」を更新している。
以上説明したように、この第1の実施の形態によれば、以下に列記する多くの効果が得られるようになる。
(1)上記ベクトル系列を構成するP個のベクトル要素「u*k(t)」を上式(40)にて算出することとした。これにより、学習効率の良いフィルタ係数の更新を行うことができ、ひいては、上記フィルタの入力信号が有色であれ、高速なフィルタ学習を行うことができるようになる。
(2)上式(43)にて表される符号関数に基づき、過去P点の上記偏差「e*(t)」の非線形変換値のそれぞれを要素とする上記スカラ系列「e’*(t)」を生成することとした。非線形変換値のそれぞれを要素とする上記スカラ系列「e’*(t)」を用いてフィルタ係数の更新を行うということは、上記入力信号と上記偏差がより統計的に独立になるように上記フィルタを学習するということである。すなわち、上記偏差のうち上記入力信号に従属な成分を除去するように上記フィルタ係数の更新を行うため、上記フィルタの希望応答に外乱が重畳される場合であれ、適切にフィルタ係数を更新することができるようになる。
(3)上記定数「αk」を、「0」より大きく且つ「1」以下の値に設定された定数「μ」を用いた上式(45)にて算出するようにした。これにより、上記定数「μ」の値を設定するだけで、変数「k」の値が小さいベクトル要素「u*k(t)」がより反映された上記フィルタ係数の更新量「Δw*(t)」を算出することができるようになる。
(4)上式(46)にて表されるL1ノルムによって上記ベクトル要素「u*k(t)」を正規化することとした。これにより、上記ベクトル要素「u*k(t)」の各成分がどのような値であれ、フィルタ係数の更新量「Δw*(t)」の各要素の絶対値を望ましい範囲に容易に収めることができるようになる。
(第2の実施の形態)
次に、この発明にかかる適応フィルタの制御装置及び適応フィルタの制御方法の第2の実施の形態について、図3及び図4を参照して、先の第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。なお、図3は、この発明にかかる適応フィルタの制御装置の第2の実施の形態について、適応フィルタも含めてその適用される音響システムの全体構成を示したものである。また、同図3において、先の図1に示した要素と同一の要素にはそれぞれ同一の符号を付して示し、それら各要素についての重複する説明は割愛する。
同図3に示されるように、この実施の形態の適応フィルタの制御装置及び適応フィルタの制御方法も、基本的には図1及び図2に示した先の第1の実施の形態に準じた構成及び方法となっている。ただし、この実施の形態の適応フィルタの制御装置は、図3に示すように、入力端子41から入力された音声信号を音声に変換して再生出力するスピーカ(音声出力手段)42と、該スピーカ42によって再生出力された雑音を含む音声を電気信号に変換して出力するマイクロフォン43(集音手段)と、を備える音響システム40に適用されている。
詳しくは、図3に示すように、離散時刻「t」において入力端子41から入力された音声信号「x’(t)」は、A/D(アナログ−デジタル)変換器44bを通じて音声信号「x(t)」に離散化されて適応フィルタ10(正確にはフィルタ部20及び制御装置30)に出力されるとともに、上記スピーカ42にて音声に変換されて再生出力される。このようにして再生出力された音声信号「x’(t)」は、その伝達特性が例えば下式(48)にて表される伝達経路を伝播し、音響エコーとして上記マイクロフォン43にて集音されて電気信号「d’(t)」に変換される。なおこの際、マイクロフォン43にて集音される音声には、除去対象とする(すなわちフィルタ部20の希望応答とする)音響エコーの他に、除去対象としないその他の周囲の音(すなわちフィルタ部20の希望応答に重畳された信号)である外乱「n(t)」も含まれている。したがって、離散時刻「t」を基準とした過去L点の離散化された音声信号「x(t)」、「x(t−1)」、・・・、「x(t−L+1)」を成分とする下式(49)で表される音声信号ベクトル「x*(t)」を用いて、A/D(アナログ−デジタル)変換器44a(集音手段)を通じて離散化されたマイク信号「d(t)」は、下式(50)にて表され、適応フィルタ10に出力される。
Figure 2007235848
そして、この適応フィルタの制御装置及び適応フィルタの制御方法では、上記離散化されたマイク信号「d(t)」を、上記フィルタ部20の希望応答とする信号に外乱「n(t)」の重畳された信号である希望応答信号とし、上記音声信号「x(t)」を上記フィルタ部20の入力信号とすることで、上記離散化されたマイク信号「d(t)」中に含まれる除去対象とする音響エコー分を除去しようとしている。具体的には、適応フィルタ10の制御装置30は、上記フィルタ部20の上記フィルタ係数「w*(t)」を上記伝達経路の伝達特性「h*」に一致させるべく、上記フィルタ係数の更新量「Δw*(t)」を算出してフィルタ係数「w*(t)」を周期的に更新する。
図4(a)は、この実施の形態の適応フィルタの制御方法について、音響エコー除去処理の処理手順を示したものであり、図4(b)は、同音響エコー除去処理中に実行されるフィルタ係数の学習処理の処理手順を示したものである。次に、これら図4(a)及び(b)を併せ参照して、この実施の形態の適応フィルタの制御方法を説明する。
図4(a)に示されるように、上記フィルタ部20は、先の第1の実施の形態と同様に、上記フィルタ部20のフィルタ係数「w*(t)」の更新に際してまず、ステップS20の処理としてフィルタ係数「w*(t)」を初期化する。すなわち、上記フィルタ部20のフィルタ係数「w*(t)」を、予め実験等で求められた初期値、或いは零に設定する。そうした初期化処理を終えるとフィルタ部20は、次のステップS21の処理として、上記離散化されたマイク信号「d(t)」を適応フィルタ10に、上記音声信号「x(t)」をフィルタ部20にそれぞれ取り込む。なお、このフィルタ処理の際に、過去の(L+P−1)点の上記音声信号が必要となるため、このステップS21の処理において取り込む上記音声信号「x(t)」については、適宜の保持手段によってその値を保持するようにしている。こうして各信号を取り込んだ後、フィルタ部20は、ステップS22の処理として、フィルタ係数「w*(t)」及び音声信号「x(t)」から上式(39)に基づき出力信号「y(t)」を算出する。出力信号「y(t)」が算出されると、上記スカラ系列出力部32は、ステップS23の処理として、先のステップS21の処理において取り込んだ前記離散化されたマイク信号「d(t)」と上記出力信号「y(t)」との偏差「e(t)」を上式(36)に基づき算出する。なお、フィルタ係数の学習処理の際には過去P点の偏差が必要となるため、ステップS23で算出した偏差についても、適宜の保持手段によってその値を保持するようにしている。こうして偏差「e(t)」を算出した後、フィルタ部20は、ステップS24の処理として、図4(b)に示す一連のフィルタ係数の学習処理に移行する。
また、フィルタ係数の学習処理にあっては、図4(b)に示すように、上記スカラ系列出力部32は、ステップS241の処理として、先のステップS23の処理で算出した偏差「e(t)」から上式(42)及び(43)に基づきスカラ系列を生成し、これを上記フィルタ係数更新部33へ出力する。一方、ベクトル系列出力部31は、次のステップS242の処理として、先のステップS21の処理において取り込んだ音声信号「x(t)」及び上記保持手段に保持されている過去(L+P−1)点の値から上式(40)及び(41)に基づき上記ベクトル系列を生成し、これを上記フィルタ係数更新部33へ出力する。このようにして上記スカラ系列及び上記ベクトル系列が生成・出力されると、ステップS243の処理として、上記フィルタ係数更新部33は、上式(44)〜(46)に基づき上記フィルタ係数の更新量「Δw*(t)」を算出する。そして続くステップS244の処理として、上記フィルタ係数更新部33は、先のステップS243の処理で算出された上記フィルタ係数の更新量「Δw*(t)」から、上式(47)に基づきフィルタ係数を更新し、先の図4(a)に示すステップS25の処理へ移行する。
このフィルタ係数の学習処理を終えるとフィルタ部20は、ステップS25の判断処理において終了指令信号を受けているか否かを判断し、終了指令信号を受けていると判断されるまで、先のステップS21〜S25の処理を繰返し実行する。このようにして、フィルタ部20のフィルタ係数「w*(t)」を更新し、上記フィルタ部20の出力信号「y(t)」と上記離散化されたマイク信号「d(t)」との偏差「e(t)」のうち上記音声信号「x(t)」に従属な成分、すなわち、音響エコー分を除去するようにしている。
以上説明したこの第2の実施の形態によれば、先の第1の実施の形態の上記(1)〜(4)に準じた効果に加え、以下に記載する効果が得られるようになる。
(5)入力端子41から入力された音声信号を音声に変換して再生出力するスピーカ42と、該スピーカ42によって再生出力された雑音を含む音声を電気信号に変換して出力するマイクロフォン43とを備える音響システム40に対し、当該適応フィルタの制御装置及び制御方法を適用した。これにより、上記偏差「e(t)」のうち上記音声信号「x(t)」に従属な成分、すなわち、音響エコー分を除去することのできる音響システムを実現することができるようになる。
(第3の実施の形態)
次に、この発明にかかる適応フィルタの制御装置及び適応フィルタの制御方法の第3の実施の形態について、図5及び図6を参照して、先の第1及び第2の実施の形態との相違点を中心に説明する。なお、図5は、この発明にかかる適応フィルタの制御装置の第3の実施の形態について、適応フィルタも含めてその適用される音響システムの全体構成を示したものである。また、同図5において、先の図1〜図4に示した要素と同一の要素にはそれぞれ同一の符号を付して示し、それら各要素についての重複する説明は割愛する。
同図5に示されるように、この実施の形態の適応フィルタの制御装置及び適応フィルタの制御方法も、基本的には図1及び図2に示した先の第1の実施の形態に準じた構成及び方法となっている。ただし、この実施の形態の適応フィルタの制御装置は、図5に示すように、アナウンス生成部41aから入力された音声信号を音声に変換して再生出力するスピーカ(音声出力手段)42と、該スピーカ42によって再生出力された雑音を含む音声を電気信号に変換して出力するマイクロフォン43(集音手段)と、該マイクロフォン43から出力された電気信号に基づき音声を認識する音声認識部(認識手段)45aと、を備える音声認識システム40aに適用されている。
詳しくは、図5に示すように、離散時刻「t」においてアナウンス生成部41aから入力された音声信号「x’(t)」は、A/D(アナログ−デジタル)変換器44bを通じて音声信号「x(t)」に離散化されて適応フィルタ10(正確にはフィルタ部20及び制御装置30)に出力されるとともに、上記スピーカ42にて音声に変換されて再生出力される。このようにして再生出力された音声信号「x’(t)」は、その伝達特性が例えば上式(48)にて表される伝達経路を伝播し、アナウンス音声の回り込みとして上記マイクロフォン43にて集音されて電気信号「d’(t)」に変換される。なおこの際、マイクロフォン43にて集音される音声には、除去対象とする(すなわちフィルタ部20の希望応答とする)アナウンス音声の回り込みの他に、除去対象としない(すなわちフィルタ部20の希望応答に重畳された)当該音声認識システム40aの使用者の発話音声等の外乱「n(t)」も含まれている。したがって、離散時刻「t」を基準とした過去L点の離散化された音声信号「x(t)」、「x(t−1)」、・・・、「x(t−L+1)」を成分とする上式(49)で表される音声信号ベクトル「x*(t)」を用いて、A/D(アナログ−デジタル)変換器44a(集音手段)を通じて離散化されたマイク信号「d(t)」は、上式(50)にて表され、適応フィルタ10に出力される。
そして、この適応フィルタの制御装置及び適応フィルタの制御方法では、上記離散化されたマイク信号「d(t)」を、上記フィルタ部20の希望応答とする信号に外乱「n(t)」の重畳された信号である希望応答信号とし、上記音声信号「x(t)」を上記フィルタ部20の入力信号とすることで、上記離散化されたマイク信号「d(t)」中に含まれる除去対象とするアナウンス音声の回り込み分を除去しようとしている。具体的には、適応フィルタ10の制御装置30は、上記フィルタ部20の上記フィルタ係数「w*(t)」を上記伝達経路の伝達特性「h*」に一致させるべく、上記フィルタ係数の更新量「Δw*(t)」を算出してフィルタ係数「w*(t)」を周期的に更新する。
図6(a)は、この実施の形態の適応フィルタの制御方法について、雑音除去処理の処理手順を示したものであり、図6(b)は、同雑音除去処理中に実行されるフィルタ係数の学習処理の処理手順を示したものである。次に、これら図6(a)及び(b)を併せ参照して、この実施の形態の適応フィルタの制御方法を説明する。
図6(a)に示されるように、上記フィルタ部20は、先の第1の実施の形態と同様に、上記フィルタ部20のフィルタ係数「w*(t)」の更新に際してまず、ステップS30の処理としてフィルタ係数「w*(t)」を初期化する。すなわち、上記フィルタ部20のフィルタ係数「w*(t)」を、予め実験等で求められた初期値、或いは零に設定する。そうした初期化処理を終えるとフィルタ部20は、次のステップS31の処理として、上記離散化されたマイク信号「d(t)」を適応フィルタ10に、上記音声信号「x(t)」をフィルタ部20にそれぞれ取り込む。なお、このフィルタ処理の際に、過去の(L+P−1)点の上記音声信号が必要となるため、このステップS31の処理において取り込む上記音声信号「x(t)」については、適宜の保持手段によってその値を保持するようにしている。こうして各信号を取り込んだ後、フィルタ部20は、ステップS32の処理として、フィルタ係数「w*(t)」及び音声信号「x(t)」から上式(39)に基づき出力信号「y(t)」を算出する。出力信号「y(t)」が算出されると、上記スカラ系列出力部32は、ステップS33の処理として、先のステップS31の処理において取り込んだ前記離散化されたマイク信号「d(t)」と上記出力信号「y(t)」との偏差「e(t)」を上式(36)に基づき算出する。なお、フィルタ係数の学習処理の際には過去P点の偏差が必要となるため、ステップS33で算出した偏差についても、適宜の保持手段によってその値を保持するようにしている。こうして偏差「e(t)」を算出した後、フィルタ部20は、ステップS34の処理として、図6(b)に示す一連のフィルタ係数の学習処理に移行する。
また、フィルタ係数の学習処理にあっては、図6(b)に示すように、上記スカラ系列出力部32は、ステップS341の処理として、先のステップS33の処理で算出した偏差「e(t)」から上式(42)及び(43)に基づきスカラ系列を生成し、これを上記フィルタ係数更新部33へ出力する。一方、ベクトル系列出力部31は、次のステップS342の処理として、先のステップS31の処理において取り込んだ音声信号「x(t)」及び上記保持手段に保持されている過去(L+P−1)点の値から上式(40)及び(41)に基づき上記ベクトル系列を生成し、これを上記フィルタ係数更新部33へ出力する。このようにして上記スカラ系列及び上記ベクトル系列が生成・出力されると、ステップS343の処理として、上記フィルタ係数更新部33は、上式(44)〜(46)に基づき上記フィルタ係数の更新量「Δw*(t)」を算出する。そして続くステップS344の処理として、上記フィルタ係数更新部33は、先のステップS343の処理で算出された上記フィルタ係数の更新量「Δw*(t)」から、上式(47)に基づきフィルタ係数を更新し、先の図6(a)に示すステップS35の処理へ移行する。
このフィルタ係数の学習処理を終えるとフィルタ部20は、ステップS35の判断処理において終了指令信号を受けているか否かを判断し、終了指令信号を受けていると判断されるまで、先のステップS31〜S35の処理を繰返し実行する。このようにして、上記偏差のうち上記音声信号「x(t)」に従属な成分を除去するかたちでフィルタ部20のフィルタ係数「w*(t)」を更新し、上記離散化されたマイク信号「d(t)」中に含まれる除去対象とするアナウンス音声の回り込み分のみを除去している。そのため、上記音声認識部45aは、アナウンス音声の再生中であれ、このアナウンス音声の影響をほとんど受けることなく、高い認識率をもって、音声認識処理を行うことができるようになる。
以上説明したこの第3の実施の形態によれば、先の第1の実施の形態の上記(1)〜(4)に準じた効果に加え、以下に記載する効果が得られるようになる。
(6)アナウンス生成部41aから入力された音声信号を音声に変換して再生出力するスピーカ(音声出力手段)42と、該スピーカ42によって再生出力された除去対象の雑音を含む音声を電気信号に変換して出力するマイクロフォン43と、該マイクロフォン43から出力された電気信号に基づき音声を認識する音声認識部45aと、を備える音声認識システム40aに対し、当該適応フィルタの制御装置及び制御方法を適用することとした。これにより、上記偏差「e(t)」のうち上記入力信号「x(t)」に従属な成分を除去するかたちで上記フィルタ部20のフィルタ係数「w*(t)」を更新するため、上記離散化されたマイク信号「d(t)」中に含まれる除去対象とする上記アナウンス音声の回り込み分のみを除去することができるようになる。そしてひいては、上記アナウンス生成部41aから入力されるアナウンス音声が上記スピーカ42を通して再生されている途中に当該音声認識システムの使用者が割り込んで発話した場合であれ、高い認識率をもって音声認識をすることのできる機能、いわゆるバージイン機能を有する音声認識システムを実現することができる。
なお、以上説明した第3の実施の形態は、例えば以下の形態で適宜変更して実施することができる。
・この実施の形態では、アナウンス生成部41aから入力された音声信号を音声に変換して再生出力するスピーカ42と、該スピーカ42によって再生出力された雑音を含む音声を電気信号に変換して出力するマイクロフォン43と、該マイクロフォン43から出力された電気信号に基づき音声を認識する音声認識部45aと、を備える音声認識システム40aに対し、当該適応フィルタの制御装置及び制御方法を適用していたが、音声認識システム40aの構成についてはこれに限られない。他に例えば、上記アナウンス生成部41aから入力される音声信号の有無を監視するアナウンス監視手段と、先の図6(a)及び(b)にて示した雑音除去処理の実行を制御する雑音除去処理制御手段とを更に備える構成とする。そして上記雑音除去処理制御手段は、上記アナウンス監視手段を通じて上記アナウンス生成部41aから音声信号が入力されていないと判断されるとき当該雑音除去処理を実行せず、上記アナウンス監視手段を通じて上記アナウンス生成部41aから音声信号が入力されていると判断されるとき当該雑音除去処理を実行することとしてもよい。
・他にも例えば、上記音声認識部45aにおける音声認識処理を制御する適宜の音声認識処理制御手段を更に備える構成とする。そして、上記雑音除去処理制御手段は、上記アナウンス監視手段を通じて上記アナウンス生成部41aから音声信号が入力されていると判断されるとき上記雑音除去処理に含まれるフィルタ係数の学習処理を所定期間だけ実行するとともに、音声認識処理制御手段はこのフィルタ係数の学習処理が実行されたと判断されるとき当該音声認識処理を実行することとしてもよい。
(第4の実施の形態)
次に、この発明にかかる適応フィルタの制御装置及び適応フィルタの制御方法の第4の実施の形態について、図7及び図8を参照して、先の第1〜第3の実施の形態との相違点を中心に説明する。なお、図7は、この発明にかかる適応フィルタの制御装置の第4の実施の形態について、適応フィルタも含めてその適用される拡声システム(音響システム)の全体構成を示したものである。また、同図7において、先の図1〜図6に示した要素と同一の要素にはそれぞれ同一の符号を付して示し、それら各要素についての重複する説明は割愛する。
同図7に示すように、この実施の形態の適応フィルタの制御装置及び適応フィルタの制御方法も、基本的には図1〜図6に示した第1〜第3の実施の形態に準じた構成及び方法となっている。ただし、この実施の形態の適応フィルタの制御装置は、図7に示すように、音声信号を音声に変換して再生出力するスピーカ(音声出力手段)42と該スピーカ42によって再生出力された除去対象の雑音を含む音声を電気信号に変換して出力するマイクロフォン43(集音手段)とを備える拡声システム40bに適用されている。
詳しくは、図7に示すように、当該拡声システム40bの使用者が離散時刻「t」において発した発話「n(t)」は、上記マイクロフォン43にて集音されて電気信号「d’(t)」に変換される。そしてこの電気信号「d’(t)」は、A/D(アナログ−デジタル)変換器44aを通じて離散化され、離散化されたマイク信号「d(t)」として適応フィルタ10aに取り込まれる。こうして適応フィルタ10aに取り込まれた上記離散化されたマイク信号「d(t)」は同フィルタ10aにて適宜に処理された後、図7に示すように、音声信号「x(t)」、正確には、離散時刻「t」を基準とした過去L点の適応フィルタ10aから入力された音声信号「x(t)」、「x(t−1)」、・・・、「x(t−L+1)」を成分とする上式(49)式に表される音声信号ベクトル「x*(t)」として出力される。
一方、この適応フィルタ10aから出力される音声信号ベクトル「x*(t)」は、D/A(デジタル−アナログ)変換器46にてアナログ信号に変換され音声信号「x’(t)」として上記スピーカ42に出力される。そして音声信号「x’(t)」は、スピーカ42にて音声に変換されて再生出力される。
こうした拡声システム40bにあっては、拡声対象とする(したがって除去対象としない)当該拡声システム40bの使用者の発話「n(t)」はもとより、既に拡声されて上記スピーカ42から再生出力された音声も除去対象であるエコーとして上記マイクロフォン43にて集音される。なお、上記スピーカ42から上記マイクロフォン43に至る伝達経路の伝達特性を例えば上式(48)にて表すと、上記マイクロフォン43にて集音された後、A/D変換器44aで離散化されたマイク信号「d(t)」は、上式(50)にて表される。
したがって、図7に示すように、この実施の形態の拡声システム40bには、「マイクロフォン43→A/D変換器44a→適応フィルタ10a→D/A変換器46→スピーカ42→マイクロフォン43」といった閉ループが存在し、この閉ループのゲインが「1」以上となると、ハウリング(発振現象)が生じるおそれがある。そのため、ハウリングの発生要因である上記エコーを除去すべく、上記離散化されたマイク信号「d(t)」に対し適応フィルタ10aにて適宜の処理がなされる。以下、そうした適応フィルタ10aについて説明する。
同図7に示すように、この実施の形態の適応フィルタ10aも、先の第1〜第3の実施の形態の適応フィルタ10に準じた構成を有しており、基本的には、上記フィルタ部20及び上記制御装置30を備えて構成されている。ただし、この実施の形態では、上記フィルタ部20の前段、上記制御装置30を構成する上記ベクトル系列出力部31の前段、及び同じく上記制御装置30を構成する上記スカラ系列出力部32の前段にそれぞれ、遅延回路47a〜47cが配設されている。なお、これら遅延回路47a〜47cは、当該拡声システム40bの使用者の発話自体を当該拡声システム40bが除去することを防ぐため、必要に応じて配設する。また、上述のごとく、この適応フィルタ10aには上記閉ループが存在する。したがって、この適応フィルタ10aから出力される上記音声信号ベクトル「x*(t)」は、実際には、上記離散化されたマイク信号「d(t)」から上記フィルタ部20の出力を差し引いて得られる偏差「e(t)」、正確には、離散時刻「t」を基準とした過去L点の偏差「e(t)」、「e(t−1)」、・・・、「e(t−L+1)」を成分とする偏差ベクトル「e*(t)」となっている。
ここで例えば、上記遅延回路47a〜47cが、それら遅延回路47a〜47cに入力される各種信号を1時刻分だけ遅延させて出力することとすれば、上記フィルタ部20は、上式(37)にて表されるフィルタ係数「w*(t)」及び下式(51)にて表される偏差ベクトル「e*(t−1)」を用いて、その出力信号「y(t)」を下式(52)にて算出する。
Figure 2007235848
一方、同図7に示すように、制御装置30は、基本的に、
・偏差ベクトル「e*(t−1)」に基づきP個のベクトル「u*k(t−1)」をそれぞれ算出してこれらベクトル「u*k(t−1)」を要素とするベクトル系列を生成するとともに、フィルタ係数更新部33にこのベクトル系列を出力するベクトル系列出力部31。
・過去P点の上記偏差の非線形変換値のそれぞれを要素とするスカラ系列を生成するとともに、フィルタ係数更新部33にこのスカラ系列を出力するスカラ系列出力部32。
・上記ベクトル系列出力部31から出力された上記ベクトル系列、及び上記スカラ系列出力部32から出力された上記スカラ系列に基づき上記フィルタ係数の更新量「Δw*(t)」を算出するとともに、上記フィルタ部20のフィルタ係数「w*(t)」の更新を行うフィルタ係数更新部33。
から構成されている。
詳しくは、ベクトル系列出力部31は、上記ベクトル系列を構成するP個のベクトル要素「u*k(t−1)」(k=1,2,・・・,P)を、上式(40)に準じた下式(53)に基づき算出する。ここで、下式(55)中の「Dij」は、上式(41)に準じた、過去P点における上記偏差ベクトル「e*(t−1)」、「e*(t−2)」、・・・、「e*(t−P)」を要素とした下式(54)にて表されるベクトル系列「E*p(t−1)」の転置行列「E*p(t−1)T」と同ベクトル系列「E*p(t−1)」との積にて求められる行列のi行j列の余因子である。そしてベクトル系列出力部31は、このようにして求めたベクトル系列を構成するP個のベクトル要素「u*k(t−1)」を、上記フィルタ係数更新部33へ出力する。
Figure 2007235848
一方、上記スカラ系列出力部32は、上述のように、過去P点の上記偏差ベクトル「e*(t−1)」の非線形変換値のそれぞれを要素とするスカラ系列「e’*(t−1)」を上式(42)に準じた下式(55)に基づき生成する。ここで下式(55)中の「F(e(t−1))」は、上式(43)に準じた下式(56)にて表される符号関数である。そしてスカラ系列出力部32は、このようにして求めたスカラ系列「e’*(t−1)」を上記フィルタ係数更新部33へ出力する。
Figure 2007235848
他方、上記フィルタ係数更新部33は、上述のようにして得られた上記ベクトル系列及び上記スカラ系列を用いて、上式(44)に準じた下式(57)に基づき上記更新量「Δw*(t)」を算出する。ここで、下式(57)中の「αk」は、「0」より大きく且つ「1」以下の値に設定された定数「μ」を用いて下式(58)に基づき算出される定数であり、同じく下式(57)中の「N(u*k(t−1))」は、上記ベクトル要素「u*k(t−1)」に対して下式(59)にて表されるスカラ値を返す関数である。
Figure 2007235848
そして上記フィルタ係数更新部33は、上式(57)に基づき算出した上記更新量「Δw*(t)」を用い、下式(60)に基づいて上記フィルタ部20のフィルタ係数「w*(t)」の更新を周期的に行っている。
Figure 2007235848
このように、この実施の形態では、上記離散化されたマイク信号「d(t)」を、上記フィルタ部20の希望応答とする信号に外乱「n(t)」の重畳された信号である希望応答信号とし、上記偏差「e(t−1)」を上記フィルタ部20の入力信号とすることで、離散化されたマイク信号中に含まれる除去対象とする上記エコー分を除去しようとしている。具体的には、適応フィルタ10の制御装置30は、上記フィルタ部20の上記フィルタ係数「w*(t)」を上記伝達経路の伝達特性「h*」に一致させるべく、上記フィルタ係数の更新量「Δw*(t)」を算出してフィルタ係数「w*(t)」を周期的に更新する。
図8(a)は、この実施の形態の適応フィルタの制御方法について、ハウリング除去処理の処理手順を示したものであり、図8(b)は、同ハウリング除去処理中に実行されるフィルタ係数の学習処理の処理手順を示したものである。次に、これら図8(a)及び(b)を併せ参照して、この実施の形態の適応フィルタの制御方法を説明する。
図8(a)に示されるように、上記フィルタ部20は、先の第1の実施の形態と同様に、上記フィルタ部20のフィルタ係数「w*(t)」の更新に際してまず、ステップS40の処理としてフィルタ係数「w*(t)」を初期化する。すなわち、上記フィルタ部20のフィルタ係数「w*(t)」を、予め実験等で求められた初期値、或いは零に設定する。そうした初期化処理を終えると上記フィルタ部20は、次のステップS41の処理として、上記離散化されたマイク信号「d(t)」を適応フィルタ10aに取り込むとともに、遅延回路47aを介して1時刻分だけ遅延された上記偏差「e(t−1)」をフィルタ部20に取り込む。なお、このフィルタ処理の際に、過去の(L+P−1)点の上記偏差が必要となるため、このステップS41の処理において取り込む上記偏差「e(t−1)」については、適宜の保持手段によってその値を保持するようにしている。こうして各信号を取り込んだ後、フィルタ部20は、ステップS42の処理として、フィルタ係数「w*(t)」及び上記偏差「e(t−1)」から上式(52)に基づき出力信号「y(t)」を算出する。出力信号「y(t)」が算出されると、上記スカラ系列出力部32は、ステップS43の処理として、先のステップS41の処理において取り込んだ前記離散化されたマイク信号「d(t)」と上記出力信号「y(t)」との偏差「e(t)」を上式(36)に基づき算出する。こうして偏差「e(t)」を算出した後、フィルタ部20は、ステップS44の処理として、図8(b)に示す一連のフィルタ係数の学習処理に移行する。
また、フィルタ係数の学習処理にあっては、図8(b)に示すように、上記スカラ系列出力部32は、ステップS441の処理として、遅延回路47bを介して1時刻分だけ遅延された上記偏差「e(t−1)」を用いて上式(55)及び(56)に基づきスカラ系列を生成し、これを上記フィルタ係数更新部33へ出力する。一方、ベクトル系列出力部31は、次のステップS442の処理として、遅延回路47cを介して1時刻分だけ遅延された上記偏差「e(t−1)」及び上記保持手段に保持されている過去(L+P−1)点の値から上式(53)及び(54)に基づき上記ベクトル系列を生成し、これを上記フィルタ係数更新部33へ出力する。このようにして上記スカラ系列及び上記ベクトル系列が生成・出力されると、ステップS443の処理として上記フィルタ係数更新部33は、上式(57)〜(59)に基づき上記フィルタ係数の更新量「Δw*(t)」を算出する。そして続くステップS444の処理として上記フィルタ係数更新部33は、先のステップS424の処理で算出された上記フィルタ係数の更新量「Δw*(t)」を用いて上式(60)に基づきフィルタ係数「w*(t)」を更新し、先の図8(a)に示すステップS45の処理へ移行する。
このフィルタ係数の学習処理を終えるとフィルタ部20は、ステップS45の判断処理において終了指令信号を受けているか否かを判断し、終了指令信号を受けていると判断されるまで、先のステップS41〜S45の処理を繰返し実行する。このようにして、上記フィルタ部20の出力信号「y(t)」と上記離散化されたマイク信号「d(t)」との偏差のうち1時刻分だけ遅延された上記偏差「e(t−1)」に従属な成分を除去するかたちでフィルタ部20のフィルタ係数「w*(t)」を更新し、上記離散化されたマイク信号「d(t)」中に含まれる除去対象とする上記エコー分を除去している。そのため、拡声システム40b中の上記閉ループのゲインは「1」未満となり、ハウリング(発振現象)の発生を抑制することができるようになる。
以上説明したこの第4の実施の形態によれば、先の第1の実施の形態の上記(1)〜(4)に準じた効果に加え、以下に記載する効果が得られるようになる。
(7)音声信号を音声に変換して再生出力するスピーカ42と、該スピーカ42によって再生出力された当該システムの使用者の発話を含む音声を電気信号に変換して出力するマイクロフォン43と、を備える拡声システム40bに対し、当該適応フィルタの制御装置及び制御方法を適用することとした。これにより、上記偏差「e(t)」のうち1時刻分だけ遅延された上記偏差「e(t−1)」に従属な成分を除去するかたちで上記フィルタ部20のフィルタ係数「w*(t)」を更新するため、上記離散化されたマイク信号「d(t)」中に含まれる除去対象とする上記エコー分を除去することができるようになる。そしてひいては、拡声システム40b中に存在する閉ループのゲインは「1」未満とされ、ハウリング(発振現象)の発生を抑制することができるようになる。
(第5の実施の形態)
次に、この発明にかかる適応フィルタの制御装置及び適応フィルタの制御方法の第5の実施の形態について、図9及び図10を参照して、先の第1〜第4の実施の形態との相違点を中心に説明する。なお図9は、この発明にかかる適応フィルタの制御装置の第5の実施の形態について、適応フィルタも含めてその適用される音声回線システムの全体構成を示したものである。また、同図9において、先の図1〜図8に示した要素と同一の要素にはそれぞれ同一の符号を付して示し、それら各要素についての重複する説明を割愛する。
同図9に示されるように、この実施の形態の適応フィルタの制御装置及び適応フィルタの制御方法も、基本的には図1及び図2に示した先の第1の実施の形態に準じた構成及び方法となっている。ただし、この実施の形態の適応フィルタの制御装置及び適応フィルタの制御方法は、例えば電話回線網を介した電話端末間での音声信号の送受信の際に発生する回線エコーを除去するための音声回線システムに適用されている。
図9に示されるように、この音声回線システム50は、上記適応フィルタ10に加え、
・4線式である電話回線網51を構成する受話端子(受話手段)51a及び送話端子51b(送話手段)。
・受話端子51aから入力されるデジタル信号である受話音声信号「x(t)」をアナログ信号に変換するD/A(デジタル−アナログ)変換器52a。
・上記電話回線網51と図示しない電話端末に接続される2線式の加入者回線54との間で送受信される音声信号の方向制御を行うハイブリッドトランス53。
・上記加入者回線54から上記ハイブリッドトランス53を介して入力されるアナログ信号をデジタル信号である送話音声信号「d(t)」に変換するA/D(アナログ−デジタル)変換器52b。
等々を備えて構成されている。
このように構成された音声回線システム50にあって、遠端話者によって上記受話端子51aに受話音声信号「x(t)」が入力されると、該受話音声信号「x(t)」は基本的に、「D/A変換器52a→ハイブリッドトランス53→加入者回線54→電話端末(図示略)」といった受話回線を順次伝播する。一方、近端話者によって電話端末(図示略)から送話音声信号が入力されると、該送話音声信号は基本的に、「加入者回線54→ハイブリッドトランス53→A/D変換器52b→電話回線網51(送話端子51b)」といった送話回線を順次伝播する。この際、図9に示すように、4線式回線と2線式回線とが接続される上記ハイブリッドトランス53では、両者の電気的特性の違いによって回線エコ−が生じることとなる。
詳しくは、図9に示すように、離散時刻「t」において受話端子51aから入力された受話音声信号「x(t)」、正確には、離散時刻「t」を基準とした過去L点の受話端子51aから入力された受話音声信号「x(t)」、「x(t−1)」、・・・、「x(t−L+1)」を成分とする下式(61)にて表される受話音声信号ベクトル「x*(t)」は、上記D/A変換器52aによってアナログ信号に変換されて上記ハイブリッドトランス53に出力される。このようにして出力された受話音声信号は、その伝達特性が例えば下式(62)にて表される伝達経路を伝播し、上記加入者回線54から入力されるアナログ信号「n(t)」に上記回線エコーとして重畳された上で、上記A/D変換器52bにて送話音声信号「d(t)」に変換される。すなわち、送話音声信号「d(t)」は、下式(63)にて表される。
Figure 2007235848
したがって、この適応フィルタの制御装置及び適応フィルタの制御方法では、上記送話信号「d(t)」を、上記フィルタ部20の希望応答とする信号に上記加入者回線54から入力されるアナログ信号(外乱)「n(t)」の重畳された信号である希望応答信号とし、上記受話音声信号「x(t)」を上記フィルタ部20の入力信号とすることで、送話音声信号「d(t)」中に含まれる除去対象とする回線エコー分を除去しようとしている。具体的には、適応フィルタ10の制御装置30は、上記フィルタ部20の上記フィルタ係数「w*(t)」を上記伝達経路の伝達特性「h*」に一致させるべく、上記フィルタ係数の更新量「Δw*(t)」を算出してフィルタ係数「w*(t)」を周期的に更新する。
図10(a)は、この実施の形態の適応フィルタの制御方法について、回線エコー除去処理の処理手順を示したものであり、図10(b)は、同回線エコー除去処理中に実行されるフィルタ係数の学習処理の処理手順を示したものである。次に、これら図10(a)及び(b)を併せ参照して、この実施の形態の適応フィルタの制御方法を説明する。
図10(a)に示されるように、上記フィルタ部20は、先の第1〜第4の実施の形態と同様に、上記フィルタ部20のフィルタ係数「w*(t)」の更新に際してまず、ステップS50の処理としてフィルタ係数「w*(t)」を初期化する。すなわち、上記フィルタ部20のフィルタ係数「w*(t)」を、予め実験等で求められた初期値、或いは零に設定する。そうした初期化処理を終えるとフィルタ部20は、次のステップS51の処理として、上記送話音声信号「d(t)」を適応フィルタ10に、上記受話音声信号「x(t)」をフィルタ部20にそれぞれ取り込む。なお、このフィルタ処理の際に、過去の(L+P−1)点の上記受話音声信号が必要となるため、このステップS51の処理において取り込む上記受話音声信号「x(t)」については、適宜の保持手段によってその値を保持するようにしている。こうして各信号を取り込んだ後、フィルタ部20は、ステップS52の処理として、フィルタ係数「w*(t)」及び受話音声信号「x(t)」から上式(39)に基づき出力信号「y(t)」を算出する。出力信号「y(t)」が算出されると、上記スカラ系列出力部32は、ステップS53の処理として、先のステップS51の処理において取り込んだ上記送話音声信号「d(t)」と上記出力信号「y(t)」との偏差「e(t)」を上式(36)に基づき算出する。なお、フィルタ係数の学習処理の際には過去P点の偏差が必要となるため、ステップS53で算出した偏差「e(t)」についても、適宜の保持手段によってその値を保持するようにしている。こうして偏差「e(t)」を算出した後、フィルタ部20は、ステップS54の処理として、図10(b)に示す一連のフィルタ係数の学習処理に移行する。
また、フィルタ係数の学習処理にあっては、図10(b)に示すように、上記スカラ系列出力部32は、ステップS541の処理として、先のステップS53の処理で算出した偏差「e(t)」から上式(42)及び(43)に基づきスカラ系列を生成し、これを上記フィルタ係数更新部33へ出力する。一方、ベクトル系列出力部31は、次のステップS542の処理として、先のステップS51の処理において取り込んだ受話音声信号「x(t)」及び上記保持手段に保持されている過去(L+P−1)点の値から上式(40)及び(41)に基づき上記ベクトル系列を生成し、これを上記フィルタ係数更新部33へ出力する。このようにして上記スカラ系列及び上記ベクトル系列が生成・出力されると、ステップS543の処理として、上記フィルタ係数更新部33は、上式(44)〜(46)に基づき上記フィルタ係数の更新量「Δw*(t)」を算出する。そして続くステップS544の処理として、上記フィルタ係数更新部33は、先のステップS543の処理で算出された上記フィルタ係数の更新量「Δw*(t)」から、上式(47)に基づきフィルタ係数を更新し、先の図10(a)に示すステップS55の処理へ移行する。
このフィルタ係数の学習処理を終えるとフィルタ部20は、ステップS55の判断処理において終了指令信号を受けているか否かを判断し、終了指令信号を受けていると判断されるまで、先のステップS51〜S55の処理を繰返し実行する。このようにして、フィルタ部20のフィルタ係数「w*(t)」を更新し、上記フィルタ部20の出力信号「y(t)」と上記送話音声信号「d(t)」との偏差「e(t)」のうちの上記受話音声信号「x(t)」に従属な成分、すなわち、回線エコー分を除去するようにしている。
以上説明したこの第5の実施の形態によれば、先の第1の実施の形態の上記(1)〜(4)に準じた効果に加え、以下に記載する効果が得られるようになる。
(8)音声を送話音声信号「d(t)」に変換して上記送話回線を通じて送信する送話端子51bと、上記受話回線を通じて受信した受話音声信号「x(t)」を音声に変換して出力する受話端子51aと、を備える音声回線システム50に対し、当該適応フィルタの制御装置及び制御方法を適用した。これにより、上記偏差のうち上記受話音声信号「x(t)」に従属な成分、すなわち、回線エコー分を除去することのできる音声回線システムを実現することができるようになる。
なお、以上説明した第5の実施の形態は、例えば以下の形態で適宜変更して実施することができる。
・この実施の形態では、音声を送話音声信号「d(t)」に変換して上記送話回線を通じて送信する送話端子51bと、上記受話回線を通じて受信した受話音声信号「x(t)」を音声に変換して出力する受話端子51aと、を備える音声回線システム50の上記送話音声信号「d(t)」を、上記フィルタ部20の希望応答とする信号に外乱「n(t)」の重畳された信号である希望応答信号とし、上記受話音声信号「x(t)」を上記フィルタ部20の入力信号としていたがこれに限られない。逆に、上記受話音声信号「x(t)」を、上記フィルタ部20の希望応答とする信号に外乱「n(t)」の重畳された信号である希望応答信号とし、上記送話音声信号「d(t)」を上記フィルタ部20の入力信号とする構成に変更しても、上記(8)に準じた効果を得ることはできる。
(第6の実施の形態)
次に、この発明にかかる適応フィルタの制御装置及び適応フィルタの制御方法の第6の実施の形態について、図11及び図12を参照して説明する。なお、図11は、この発明にかかる適応フィルタの制御装置の第6の実施の形態について、適応フィルタも含めてその適用されるアクティブ騒音制御システムの全体構成を示したものである。
同図11に示されるように、この実施の形態の適応フィルタの制御装置及び適応フィルタの制御方法も、基本的には図1及び図2に示した先の第1の実施の形態に準じた構成及び方法となっている。ただし、この実施の形態の適応フィルタの制御装置及び適応フィルタの制御方法は、除去対象とする騒音に対して該騒音と逆位相の音をスピーカから出力して干渉させることにより騒音を低減するアクティブ騒音制御システムに適用されている。
同図11に示されるように、このアクティブ騒音制御システム60は、基本的には、
・騒音源の発生する騒音を電気信号に変換するマイクロフォン61(騒音集音手段)。 ・上記マイクロフォン61から出力されるアナログ信号である電気信号をデジタル信号である離散化されたマイク信号「d2(t)」に変換するA/D(アナログ−デジタル)変換器62。
・上記A/D変換器62から上記離散化されたマイク信号「d2(t)」を取り込んで所要の処理を加えた上で後述する適応フィルタ10cに偏差「e2(t)」として出力するとともに、この偏差「e2(t)」及び同適応フィルタ10cから取り込む制御音信号「x2(t)」に基づきフィルタ係数「w2(t)」を更新する適応フィルタ10d。
・上記適応フィルタ10d及び後述するA/D(アナログ−デジタル)変換器68から上記偏差「e2(t)」及び評価音信号「e1(t)」をそれぞれ取り込むとともに、これら偏差「e2(t)」及び評価音信号「e1(t)」に基づいて騒音と逆位相の音を生成するための制御音信号「x2(t)」を生成・出力する適応フィルタ10c。
・デジタル信号である上記制御音信号「x2(t)」をアナログ信号である電気信号に変換するD/A(デジタルーアナログ)変換器65。
・上記制御音信号「x2(t)」がアナログ信号に変換された信号である電気信号に基づき上記騒音と逆位相の制御音を発生して出力するスピーカ66(制御音発生手段)。
・騒音制御を行う場の音を電気信号に変換するマイクロフォン67(評価音集音手段)。
・上記マイクロフォン67から出力されるアナログ信号である電気信号をデジタル信号である評価音信号「e1(t)」に変換した上で上記適応フィルタ10cに出力するA/D(アナログーデジタル)変換器68。
等々を備えて構成されている。
ここで、このように構成されたアクティブ騒音制御システム60にあって、騒音源の発生する騒音は、
(い)「騒音源→マイクロフォン67」からなる伝達経路。
(ろ)「騒音源→マイクロフォン61→A/D変換器62→フィルタ部20a→符号反転器64→D/A変換器65→スピーカ66→マイクロフォン67」からなる伝達経路。
をたどってそれぞれ伝播する。
一方、上記騒音源の発生する騒音と逆位相の制御音のマイクロフォン61への回り込みは、
(は)「A点→D/A変換器65→スピーカ66→マイクロフォン61→A/D変換器62→B点」からなる伝達経路。
(に)「A点→フィルタ部20b→B点」からなる伝達経路。
をたどってそれぞれ伝播する。
このうち、上記伝達経路(ろ)の伝達特性にかかる上記適応フィルタ10cは、基本的に、
・タップ数「L1」とした下式(64)にてその伝達特性を定めるフィルタ係数「w1*(t)」が表されるとともに、上記適応フィルタ10dから取り込まれる上記偏差「e2(t)」及びこのフィルタ係数「w1*(t)」を用いて下式(65)にて出力信号「x2’(t)」を算出するフィルタ部20a。
・上記フィルタ部20aから取り込まれる上記出力信号「x2’(t)」の符号を下式(66)に基づき反転して制御音信号「x2(t)」を上記D/A変換器65に出力する符号反転器64。
・タップ数「L3」とした下式(67)にてその伝達特性を定める伝達係数「J2’*」が表されるとともに、上記適応フィルタ10dから取り込まれる上記偏差「e2(t)」及び該伝達係数「J2’*」を用いて下式(68)にて濾波信号「x1’(t)」を算出し、これをベクトル系列出力部31aに出力する濾波器63。
・上記濾波器63の出力する上記濾波信号「x1’(t)」に基づきP個のベクトル「u1*k(t)」をそれぞれ算出してこれらベクトル「u1*k(t)」を要素とするベクトル系列を生成するとともに、後述するフィルタ係数更新部33aにこのベクトル系列を出力するベクトル系列出力部31a。
・上記A/D変換器68から取り込まれる過去P点の上記評価音信号「e1(t)」の非線形変換値のそれぞれを要素とするスカラ系列「e1’(t)」を生成するとともに、後述するフィルタ係数更新部33aにこのスカラ系列「e1’(t)」を出力するスカラ系列出力部32a。
・上記ベクトル系列出力部31aから出力された上記ベクトル系列及び上記スカラ系列出力部32aから出力された上記スカラ系列に基づき更新量「Δw1*(t)」を算出するとともに、上記フィルタ部20aのフィルタ係数「w1*(t)」を更新するフィルタ係数更新部33a。
を有して構成されている。なお、「P」を2以上の整数とする。
Figure 2007235848
詳しくは、ベクトル系列出力部31aは、上記ベクトル系列を構成するP個のベクトル要素「u1*k(t)」(k=1,2,・・・,P)を下式(69)に基づき算出する。ここで、下式(69)中の「C1ij」は、過去P点における上記濾波信号ベクトル「x1’*(t)」、「x1’*(t−1)」、・・・、「x1’*(t−P+1)」を要素とした下式(70)にて表されるベクトル系列「X1p*(t)」の転置行列「X1p*(t)T」と同ベクトル系列「X1p*(t)」との積にて求められる行列のi行j列の余因子である。そしてベクトル系列出力部31aは、このようにして求めたベクトル系列を構成するP個のベクトル要素「u1*k(t)」を、上記フィルタ係数更新部33aへ出力する。
Figure 2007235848
一方、上記スカラ系列出力部32aは、上述のように、過去P点の上記評価音信号ベクトル「e1*(t)」の非線形変換値のそれぞれを要素とするスカラ系列「e1’*(t)」を下式(71)に基づき生成する。ここで下式(71)中の「F(e1(t))」は、下式(72)にて表される符号関数である。そしてスカラ系列出力部32aは、このようにして求めたスカラ系列「e1’*(t)」を上記フィルタ係数更新部33aへ出力する。
Figure 2007235848
他方、上記フィルタ係数更新部33aは、上述のようにして得られた上記ベクトル系列及び上記スカラ系列を用いて、下式(73)に基づき上記更新量「Δw1*(t)」を算出する。ここで、下式(73)中の「α1k」は、「0」より大きく且つ「1」以下の値に設定された定数「μ1」を用いて下式(74)に基づき算出される定数であり、同じく下式(73)中の「N(u1*k(t))」は、上記ベクトル要素「u1*k(t)」に対して下式(75)にて表されるスカラ値を返す関数である。
Figure 2007235848
そして上記フィルタ係数更新部33aは、上式(73)に基づき算出した上記更新量「Δw1*(t)」を用い、下式(76)に基づいて上記フィルタ部20aのフィルタ係数「w1*(t)」の更新を周期的に行っている。
Figure 2007235848
なお、こうしたフィルタ部20aのフィルタ係数「w1*(t)」の周期的な更新は、上記伝達経路(い)の伝達特性である「S*」が、伝達特性「J1*」、フィルタ部20aのフィルタ係数「w1*(t)」、及び伝達特性「J2*(t)」を順次たどる上記伝達経路(ろ)の伝達特性に一致するように行われる。
また、上記伝達経路(に)の伝達特性にかかる上記適応フィルタ10dは、基本的に、
・タップ数「L2」とした下式(77)にてその伝達特性を定めるフィルタ係数「w2*(t)」が表されるとともに、上記適応フィルタ10cから取り込まれる上記制御音信号「x2(t)」及びこのフィルタ係数「w2*(t)」を用いて下式(78)にて出力信号「y2(t)」を算出するフィルタ部20b。
・上記適応フィルタ10cの出力する上記制御音信号「x2(t)」に基づきP個のベクトル「u2*k(t)」をそれぞれ算出してこれらベクトル「u2*k(t)」を要素とするベクトル系列を生成するとともに、後述するフィルタ係数更新部33bにこのベクトル系列を出力するベクトル系列出力部31b。
・上記A/D変換器62から取り込まれる離散化されたマイク信号「d2(t)」及び上記フィルタ部20bから出力される上記出力信号「y2(t)」を用いて下式(79)で求められる過去P点の偏差「e2(t)」の非線形変換値のそれぞれを要素とするスカラ系列「e2*(t)」を生成するとともに、後述するフィルタ係数更新部33bにこのスカラ系列「e2*(t)」を出力するスカラ系列出力部32b。
・上記ベクトル系列出力部31bから出力された上記ベクトル系列及び上記スカラ系列出力部32bから出力された上記スカラ系列に基づき更新量「Δw2*(t)」を算出するとともに、上記フィルタ部20bのフィルタ係数「w2*(t)」を更新するフィルタ係数更新部33。
を有して構成されている。なお、「P」を2以上の整数とする。
Figure 2007235848
詳しくは、ベクトル系列出力部31bは、上記ベクトル系列を構成するP個のベクトル要素「u2*k(t)」(k=1,2,・・・,P)を下式(80)に基づき算出する。ここで、下式(80)中の「C2ij」は、過去P点における上記制御音信号ベクトル「x2*(t)」、「x2*(t−1)」、・・・、「x2*(t−P+1)」を要素とした下式(81)にて表されるベクトル系列「X2p*(t)」の転置行列「X2p*(t)T」と同ベクトル系列「X2p*(t)」との積にて求められる行列のi行j列の余因子である。そしてベクトル系列出力部31bは、このようにして求めたベクトル系列を構成するP個のベクトル要素「u2*k(t)」を、上記フィルタ係数更新部33bへ出力する。
Figure 2007235848
一方、上記スカラ系列出力部32bは、上述のように、過去P点の上記偏差「e2(t)」の非線形変換値のそれぞれを要素とするスカラ系列「e2’*(t)」を下式(82)に基づき生成する。ここで下式(82)中の「F(e2(t))」は、下式(83)にて表される符号関数である。そしてスカラ系列出力部32bは、このようにして求めたスカラ系列「e2’*(t)」を上記フィルタ係数更新部33bへ出力する。
Figure 2007235848
他方、上記フィルタ係数更新部33bは、上述のようにして得られた上記ベクトル系列及び上記スカラ系列を用いて、下式(84)に基づき上記更新量「Δw2*(t)」を算出する。ここで、下式(84)中の「α2k」は、「0」より大きく且つ「1」以下の値に設定された定数「μ2」を用いて下式(85)に基づき算出される定数であり、同じく下式(84)中の「N(u2*k(t))」は、上記ベクトル要素「u2*k(t)」に対して下式(86)にて表されるスカラ値を返す関数である。
Figure 2007235848
そして上記フィルタ係数更新部33bは、上式(84)に基づき算出した上記更新量「Δw2*(t)」を用い、下式(87)に基づいて上記フィルタ部20bのフィルタ係数「w2*(t)」の更新を周期的に行っている。
Figure 2007235848
なお、こうしたフィルタ部20bのフィルタ係数「w2*(t)」の周期的な更新は、上記伝達経路(は)の伝達特性である「h*」が、フィルタ部20bのフィルタ係数「w2*(t)」の伝達特性である上記伝達経路(に)の伝達特性に一致するように行われる。
図12(a)は、この実施の形態の適応フィルタの制御方法について、騒音制御処理の処理手順を示したものであり、図12(b)は、同騒音制御処理中に実行されるフィルタ係数の学習処理の処理手順を示したものである。次に、これら図12(a)及び(b)を併せ参照して、この実施の形態の適応フィルタの制御方法を説明する。
図12(a)に示されるように、上記フィルタ部20aは、上記フィルタ部20aのフィルタ係数「w1*(t)」の更新に際してまず、ステップS60の処理としてフィルタ係数「w1*(t)」を初期化する。すなわち、上記フィルタ部20aのフィルタ係数「w1*(t)」を、予め実験等で求められた初期値、或いは零に設定する。そうした初期化処理を終えるとフィルタ部20aは、次のステップS61の処理として、上記偏差「e2(t)」及び上記評価音信号「e1(t)」を上記適応フィルタ10cにそれぞれ取り込む。なお、このフィルタ処理の際に、過去の(L+P−1)点の上記偏差「e2(t)」及びP点の評価音信号「e1(t)」が必要となるため、このステップS61の処理において取り込む上記偏差「e2(t)」及び評価音信号「e1(t)」については、適宜の保持手段によってその値を保持するようにしている。こうして各信号を取り込んだ後、フィルタ部20aは、ステップS62の処理として、フィルタ係数「w1*(t)」及び上記偏差「e2(t)」から上式(65)に基づき上記出力信号「x2’(t)」を算出する。そして上記フィルタ部20aは、その後段に接続された上記符号反転器64を通じて上記出力信号「x2’(t)」を変換することで上記制御音信号「x2(t)」を生成するとともに、さらに後段に接続された上記D/A変換器65及び上記スピーカ66を通じてこれを音場に出力する。この後、フィルタ部20aは、ステップS63の処理として、図12(b)に示す一連のフィルタ係数の学習処理に移行する。
また、フィルタ係数の学習処理にあっては、図12(b)に示すように、上記濾波器63は、ステップS631の処理として、先のステップS61の処理において取り込んだ上記偏差「e2(t)」を用いて、上記濾波信号「x1’(t)」を上式(68)に基づき算出する。そして、ベクトル系列出力部31aは、次のステップS632の処理として、先のステップS631の処理において算出した上記濾波信号「x1’(t)」を用いて、上式(69)及び(70)に基づき上記ベクトル系列を生成し、これを上記フィルタ係数更新部33aへ出力する。一方、スカラ系列出力部32aは、ステップS633の処理として、先のステップS61の処理で取り込んだ上記評価音信号「e1(t)」から上式(71)及び(72)に基づきスカラ系列を生成し、これを上記フィルタ係数更新部33aへ出力する。このようにして上記スカラ系列及び上記ベクトル系列が生成・出力されると、ステップS634の処理として、上記フィルタ係数更新部33aは、上式(73)〜(75)に基づき上記フィルタ係数の更新量「Δw1*(t)」を算出する。そして続くステップS635の処理として、上記フィルタ係数更新部33aは、先のステップS634の処理で算出された上記フィルタ係数の更新量「Δw1*(t)」から、上式(76)に基づきフィルタ係数を更新し、先の図12(a)に示すステップS64の処理へ移行する。
すなわち、上記フィルタ部20aは、ステップS64の判断処理において終了指令信号を受けているか否かを判断し、終了指令信号を受けていると判断されるまで、先のステップS61〜S64の処理を繰返し実行する。このようにして、フィルタ部20aのフィルタ係数「w1*(t)」を更新し、上記評価音「e1(t)」のうち上記偏差「e2(t)」に従属な成分を除去するようにしている。すなわち、騒音源から出力される騒音を低減するようにしている。
以上説明したこの第6の実施の形態によれば、先の第1の実施の形態の上記(1)〜(4)に準じた効果に加え、以下に記載する効果が得られるようになる。
(9)騒音源の発生する騒音を電気信号に変換するマイクロフォン61と、この騒音と逆位相の制御音を発生して出力するスピーカ66と、騒音制御を行う場の音を電気信号に変換するマイクロフォン67と、を備えるアクティブ騒音制御システム60に対し、当該適応フィルタの制御装置及び方法を適用することとした。これにより、上記評価音「e1(t)」のうち上記偏差「e2(t)」に従属な成分を除去するかたちで上記フィルタ部20aのフィルタ係数「w1*(t)」を更新することができ、ひいては、騒音源から出力される騒音を低減することのできるアクティブ騒音制御システム60を実現することができるようになる。
なお、以上説明した第6の実施の形態は、例えば以下の形態で適宜変更して実施することができる。
・この実施の形態では、上式(67)にて表される上記濾波器63の伝達特性を定める伝達係数「J2’*」を実験等で予め求められた値とし、上記スピーカ66と上記マイクロフォン67との間の伝達特性である伝達係数「J2*」に一致するようにこれを設定することとした。上記濾波器63の伝達係数「J2’*」の設定方法については、例えば上記騒音制御処理中にオンラインで逐次同定することとしてもよい。また、上記スピーカ66と上記マイクロフォン67との間の伝達特性、特に信号遅延が問題とならないのであれば、そうした濾波器63を割愛した構成としてもよい。さらには、上記スピーカ66と上記マイクロフォン61との距離が長く、このスピーカ66から発せられる制御音の回り込みが上記離散化されたマイク信号「d2(t)」に大きな影響を与えないのであれば、上記適応フィルタ10d自体を割愛した構成としてもよい。
また、この発明にかかる適応フィルタの制御装置及び適応フィルタの制御方法は、上記第1〜第6の実施の形態にて例示した構成及び方法に限定されるものではなく、これら各実施の形態を適宜変更した例えば次のような形態として実施することもできる。
・上記各実施の形態では、上記定数「αk」、「α1k」、及び「α2k」をそれぞれ、「0」より大きく且つ「1」以下の値に設定された定数「μ」を用いた上式(45)並びに(58)、「0」より大きく且つ「1」以下の値に設定された定数「μ1」を用いた上式(74)、及び「0」より大きく且つ「1」以下の値に設定された定数「μ2」を用いた上式(85)にてそれぞれ算出していたが、これら定数の設定態様はこれに限られない。要は、変数「k」の値が小さいものほど上記定数「αk」、「α1k」、及び「α2k」を大きい値に設定すればよい。これにより、変数「k」の値が小さいベクトル要素「u*k(t)」、「u1*k(t)」、及び「u2*k(t)」がより反映された上記フィルタ係数の更新量「Δw*(t)」、「Δw1*(t)」、及び「Δw2*(t)」をそれぞれ算出することができるようになる。
・上記各実施の形態では、上式(43)、(56)、(72)及び(83)にて表される符号関数に基づき、上記スカラ系列「e’*(t)」、「e’*(t−1)」、「e1’*(t)」、及び「e2’*(t)」をそれぞれ生成することとしたが、他にも、例えば双曲線正接関数、或いは下式(88)にて表される非線形関数に基づき、上記スカラ系列「e’*(t)」、「e’*(t−1)」、「e1’*(t)」、及び「e2’*(t)」をそれぞれ生成することとしてもよい。
Figure 2007235848
・また、上記スカラ系列「e’*(t)」、「e’*(t−1)」、「e1’*(t)」、及び「e2’*(t)」の生成方法は、上式(43)、(56)、(72)及び(83)にて表される符号関数、上記双曲線正接関数、上式(88)にて表される非線形関数にも限られない。要は、偏差が零であるときはその値が零となり、零からの上記偏差の増大に応じてその値が正の所定値に収束し、零からの上記偏差の減少に応じてその値が負の所定値に収束するように設定された非線形関数を用いて上記偏差の非線形変換値を求めればよい。非線形変換値のそれぞれを要素とする上記スカラ系列を上記フィルタ係数の更新に用いるということは、上記入力信号と上記偏差がより統計的に独立になるように上記フィルタを学習するということである。すなわち、上記偏差のうち上記入力信号に従属な成分を除去するように上記フィルタの更新を行うため、上記フィルタ係数の更新に対し上記偏差に含まれる外乱が与える影響を抑制することが可能となる。
・上記各実施の形態では、上記ベクトル系列を構成するベクトル要素「u*k(t)」、「u*k(t−1)」、「u1*k(t)」、及び「u2*k(t)」を上式(40)、(53)、(69)、及び(80)にてそれぞれ生成することとした。この生成方法に限られず、他にも例えば、離散時刻「t」におけるベクトル要素「u*k(t)」の2番目からL番目の成分「uk,2(t)」、「uk,3(t)」、・・・、「uk,L(t)」を、離散時刻「t−1」におけるベクトル要素「u*k(t−1)」を用いて、下式(89)の近似式にて生成することとしてもよい。これにより、各ベクトル要素につき新規に算出する成分を一つに削減することができるようになるため、フィルタ係数の更新に際し必要とされる演算ステップを、従来のP次射影法と同程度に抑制することができるようになる。
Figure 2007235848
・上記各実施の形態では、ベクトル要素「u*k(t)」、「u*k(t−1)」、「u1*k(t)」、及び「u2*k(t)」を上式(40)、(53)、(69)、及び(80)にてそれぞれ生成することとした。その他にも、例えば下式(90)及び(91)にて表されるグラムシュミットの正規直交化を用いてベクトル要素「u*k(t)」を生成してもよい。これによっても、学習効率の良いフィルタ係数の更新を行うことができ、ひいては、上記フィルタ部の入力信号が有色であれ、高速なフィルタ学習を行うことができるようになる。
Figure 2007235848
・そうした上記ベクトル要素「u*k(t)」の生成方法も、上式(90)及び(91)にも限られない。要は、離散時刻「t」における上記フィルタ部20の入力信号を「x(t)」で表し、その離散時刻「t」の過去L点の入力信号「x(t)」、「x(t−1)」、・・・、「x(t−L+1)」を成分とする入力信号ベクトルを「x*(t)」で表したとき、過去P点における入力信号ベクトル「x*(t)」、「x*(t−1)」、・・・、「x*(t−P+1)」のそれぞれについて、他の(P−1)個の入力信号ベクトルのすべてに対して直交するベクトルを求めることで生成すればよい。これによっても、学習効率の良いフィルタ係数の更新を行うことができるようになり、ひいては、上記フィルタ部の入力信号が有色であれ、高速なフィルタ学習を行うことができるようになる。
・上記各実施の形態では、上式(46)、(59)、(75)、及び(86)にて表されるL1ノルムによって上記ベクトル要素をそれぞれ正規化することとしたが、他にも例えば、下式(92)にて表されるL2ノルムによって上記ベクトル要素をそれぞれ正規化してもよい。これによっても、上記ベクトル要素の各成分がどのような値であれ、フィルタ係数の更新量の各要素の絶対値を望ましい範囲に容易に収めることができるようになる。
Figure 2007235848
・また、フィルタ係数の更新量の各要素の絶対値を望ましい範囲に収めることができるのであれば、そうした関数「N(u*k(t))」として、上記ベクトル要素に依らず、常に一律の値を返す関数を用いることとしてもよい。
・上記各実施の形態では、上式(44)及び(47)、(57)及び(60)、(73)及び(76)、並びに(84)及び(87)に基づく更新態様にてフィルタ係数を周期的に更新していた。そうした更新態様もこれらに限られない。要は、ベクトル系列出力部により出力されるベクトル系列及びスカラ系列出力部により出力されるスカラ系列に基づき更新量を算出してフィルタ係数を周期的に更新すれば、その更新態様は任意である。
・上記各実施の形態では、P次射影法に基づくアルゴリズムを用いて、上記ベクトル系列を構成する複数のベクトル要素を生成したが、他にRLS法等の適応フィルタのアルゴリズムにこの発明を適用することもできる。
・上記各実施の形態においては、音響システム、音声認識システム、拡声システム、音声回線システム、及びアクティブ騒音制御システムに対してこの発明を適用していたが、これに限られることなく適応フィルタを適用することのできる装置或いは方法にもこの発明を同様に適用することができる。
この発明にかかる適応フィルタの制御装置の第1の実施の形態について、適応フィルタも含めてその全体構成を示したブロック図。 同実施の形態の適応フィルタの制御方法について、(a)は、フィルタ処理の処理手順を示すフローチャート。(b)は、同フィルタ処理中に実行されるフィルタ係数の学習処理の処理手順を示すフローチャート。 この発明にかかる適応フィルタの制御装置の第2の実施の形態について、適応フィルタも含めてその適用される音響システムの全体構成を示したブロック図。 同実施の形態の適応フィルタの制御方法について、(a)は、音響エコー除去処理の処理手順を示すフローチャート。(b)は、同音響エコー除去処理中に実行されるフィルタ係数の学習処理の処理手順を示すフローチャート。 この発明にかかる適応フィルタの制御装置の第3の実施の形態について、適応フィルタも含めてその適用される音声認識システムの全体構成を示したブロック図。 同実施の形態の適応フィルタの制御方法について、(a)は、雑音除去処理の処理手順を示すフローチャート。(b)は、同雑音除去処理中に実行されるフィルタ係数の学習処理の処理手順を示すフローチャート。 この発明にかかる適応フィルタの制御装置の第4の実施の形態について、適応フィルタも含めてその適用される拡声システムの全体構成を示したブロック図。 同実施の形態の適応フィルタの制御方法について、(a)は、ハウリング除去処理の処理手順を示すフローチャート。(b)は、同ハウリング除去処理中に実行されるフィルタ係数の学習処理の処理手順を示すフローチャート。 この発明にかかる適応フィルタの制御装置の第5の実施の形態について、適応フィルタも含めてその適用される音声回線システムの全体構成を示したブロック図。 同実施の形態の適応フィルタの制御方法について、(a)は、回線エコー除去処理の処理手順を示すフローチャート。(b)は、同回線エコー除去処理中に実行されるフィルタ係数の学習処理の処理手順を示すフローチャート。 この発明にかかる適応フィルタの制御装置の第6の実施の形態について、適応フィルタも含めてその適用されるアクティブ騒音制御システムの全体構成を示したブロック図。 同実施の形態の適応フィルタの制御方法について、(a)は、騒音制御処理の処理手順を示すフローチャート。(b)は、同騒音制御処理中に実行されるフィルタ係数の学習処理の処理手順を示すフローチャート。
符号の説明
10、10a、10c、10d…適応フィルタ、20、20a、20b…フィルタ部、30…制御装置、31、31a、31b…ベクトル系列出力部、32、32a、32b…スカラ系列出力部、33、33a、33b…フィルタ係数更新部、40…音響システム、40a…音声認識システム、40b…拡声システム、41…入力端子、41a…アナウンス生成部、42…スピーカ(音声出力手段)、43…マイクロフォン(集音手段)、44a、44b、52b、62、68…A/D(アナログ−デジタル)変換器、45a…音声認識部、46、52a、65…D/A(デジタル−アナログ)変換器、47a〜47c…遅延回路、50…音声回線システム、51…電話回線網、51a…受話端子(受話手段)、51b…送話端子(送話手段)、53…ハイブリッドトランス、54…加入者用回線、60…アクティブ騒音制御システム、61…マイクロフォン(騒音集音手段)、63…濾波器、64…符号反転器、66…スピーカ(制御音発生手段)、67…マイクロフォン(評価音集音手段)。

Claims (36)

  1. フィルタの希望応答とする信号或いはその希望応答に外乱の重畳された信号である希望応答信号と同フィルタの出力信号との偏差に基づいてフィルタ係数を周期的に更新する適応フィルタの制御装置において、
    「P」を2以上の整数としたとき、前記フィルタの入力信号に基づきそれぞれ生成されたP個のベクトルを要素とするベクトル系列を生成して出力するベクトル系列出力部と、
    過去P点の前記偏差の非線形変換値のそれぞれを要素とするスカラ系列を生成して出力するスカラ系列出力部と、
    前記ベクトル系列と前記スカラ系列とに基づいて更新量を算出して前記フィルタ係数の更新を行うフィルタ係数更新部と、
    を備えることを特徴とする適応フィルタの制御装置。
  2. 離散時刻「t」における、前記ベクトル系列出力部の出力するベクトル系列を構成するP個のベクトル要素を「u*k(t)」(k=1,2,・・・,P)で、前記偏差を「e(t)」で、その非線形変換値を「F(e(t))」でそれぞれ表し、更に「αk」を定数、「N(u*k(t))」を前記ベクトル要素「u*k(t)」に対してスカラ値を返す関数としたとき、
    前記フィルタ係数更新部は、離散時刻「t」における前記フィルタ係数「w*(t)」を下式(1)にて更新するとともに、
    Figure 2007235848
    その更新量「Δw*(t)」を、下式(2)にて算出する
    Figure 2007235848
    ことを特徴とする請求項1に記載の適応フィルタの制御装置。
  3. 前記関数「N(u*k(t))」は、前記ベクトル要素「u*k(t)」のL1ノルムの値を返す関数である
    請求項2に記載の適応フィルタの制御装置。
  4. 前記関数「N(u*k(t))」は、前記ベクトル要素「u*k(t)」のL2ノルムの値を返す関数である
    請求項2に記載の適応フィルタの制御装置。
  5. 前記関数「N(u*k(t))」は、前記ベクトル要素「u*k(t)」に依らず、常に一律の値を返す関数である
    請求項2に記載の適応フィルタの制御装置。
  6. 前記定数「αk」は、変数「k」の値が小さいものほど、大きい値に設定される
    請求項2〜5のいずれか1項に記載の適応フィルタの制御装置。
  7. 前記定数「αk」は、0より大きく、且つ1以下の値に設定された定数「μ」を用いた下式(3)にて算出される
    Figure 2007235848
    ことを特徴とする請求項6に記載の適応フィルタの制御装置。
  8. 前記ベクトル系列出力部は、
    離散時刻「t」における前記フィルタの入力信号を「x(t)」で表し、その離散時刻「t」の過去L点の入力信号「x(t)」、「x(t−1)」、・・・、「x(t−L+1)」を成分とする入力信号ベクトルを「x*(t)」で表したとき、
    過去P点における入力信号ベクトル「x*(t)」、「x*(t−1)」、・・・、「x*(t−P+1)」のそれぞれについて、他の(P−1)個の入力信号ベクトルのすべてに対して直交するベクトルを求めるとともに、それらの求められたP個のベクトルを要素とするベクトル系列を生成して出力する
    ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の適応フィルタの制御装置。
  9. 前記ベクトル系列出力部は、
    前記過去P点における入力信号ベクトル「x*(t)」、「x*(t−1)」、・・・、「x*(t−P+1)」を要素とするベクトル系列を「X*p(t)」とし、
    「Cij」をベクトル系列「X*p(t)」の転置行列「X*p(t)T」と同ベクトル系列「X*p(t)」との積のi行j列の余因子としたとき、
    前記ベクトル系列を構成するP個のベクトル要素「u*k(t)」(k=1,2,・・・,P)を、下式(4)にて算出する
    Figure 2007235848
    ことを特徴とする請求項8に記載の適応フィルタの制御装置。
  10. 前記ベクトル系列出力部は、
    離散時刻「t」におけるベクトル要素「u*k(t)」の2番目からL番目の成分「uk,2(t)」、「uk,3(t)」、・・・、「uk,L(t)」を、離散時刻「t−1」におけるベクトル要素「u*k(t−1)」を用いて、下式(5)の近似式にて算出する
    Figure 2007235848
    ことを特徴とする請求項9に記載の適応フィルタの制御装置。
  11. 前記ベクトル系列出力部は、
    前記過去P点における入力信号ベクトル「x*(t)」、「x*(t−1)」、・・・、「x*(t−P+1)」を用いて、前記ベクトル系列を構成するP個のベクトル要素「u*k(t)」(k=1,2,・・・,P)を、下式(6)及び(7)にて算出する
    Figure 2007235848
    ことを特徴とする請求項8に記載の適応フィルタの制御装置。
  12. 前記偏差の非線形変換値は、前記偏差が零であるときはその値が零となり、零からの前記偏差の増大に応じてその値が正の所定値に収束し、零からの前記偏差の減少に応じてその値が負の所定値に収束するように設定された非線形関数を用いて求められる
    ことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の適応フィルタの制御装置。
  13. 前記偏差「e(t)」の非線形変換値を算出する非線形関数「F(e(t))」は、定数「m」を用いて下式(8)にて表される
    Figure 2007235848
    ことを特徴とする請求項12に記載の適応フィルタの制御装置。
  14. 前記非線形関数は、双曲線正接関数である
    ことを特徴とする請求項12に記載の適応フィルタの制御装置。
  15. 前記偏差「e(t)」の非線形変換値を算出する非線形関数「F(e(t))」は、下式(9)にて表される
    Figure 2007235848
    ことを特徴とする請求項12に記載の適応フィルタの制御装置。
  16. 音声信号を音声に変換して再生出力する音声出力手段と、その音声出力手段によって再生出力された雑音を含む音声を電気信号に変換して出力する集音手段と、を備える音響システムにおける前記音声出力手段により音声変換される音声信号を前記フィルタの入力信号とし、前記集音手段により出力される電気信号を前記希望応答信号とする
    ことを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の適応フィルタの制御装置。
  17. 音声を送話音声信号に変換して送話回線を通じて送信する送話手段と、受話回線を通じて受信した受話音声信号を音声に変換して出力する受話手段と、を備える音声回線システムにおける前記受話音声信号及び前記送話音声信号の一方を前記フィルタの入力信号とし、他方を前記希望応答信号とする
    ことを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の適応フィルタの制御装置。
  18. 騒音源の発生する騒音を電気信号に変換する騒音集音手段と、前記騒音と逆位相の制御音を発生して出力する制御音発生手段と、騒音制御を行う場の音を電気信号に変換する評価音集音手段と、を備えるアクティブ騒音制御システムにおける前記騒音集音手段により変換された電気信号を前記フィルタの入力信号とし、前記評価音集音手段により変換された電気信号を前記偏差とするとともに、前記制御音発生手段は、前記フィルタの出力信号を前記制御音に変換して出力する
    ことを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の適応フィルタの制御装置。
  19. フィルタの希望応答とする信号或いはその希望応答に外乱の重畳された信号である希望応答信号との偏差に基づいてフィルタ係数を周期的に更新するように適応フィルタを制御する方法であって、
    「P」を2以上の整数としたとき、前記フィルタの入力信号に基づきそれぞれ算出されたP個のベクトルを要素とするベクトル系列を生成するとともに、過去P点の前記偏差の非線形変換値のそれぞれを要素とするスカラ系列を生成し、更にそれら前記ベクトル系列と前記スカラ系列とに基づいて更新量を算出して前記フィルタ係数の更新を行う
    ことを特徴とする適応フィルタの制御方法。
  20. 離散時刻「t」における、前記ベクトル系列を構成するP個のベクトル要素を「u*k(t)」(k=1,2,・・・,P)で、前記偏差を「e(t)」で、その非線形変換値を「F(e(t))」でそれぞれ表し、更に「αk」を定数、「N(u*k(t))」を前記ベクトル要素「u*k(t)」に対してスカラ値を返す関数としたとき、
    離散時刻「t」における前記フィルタ係数「w*(t)」を下式(10)にて更新するとともに、
    Figure 2007235848
    その更新量「Δw*(t)」を、下式(11)にて算出する
    Figure 2007235848
    ことを特徴とする請求項19に記載の適応フィルタの制御方法。
  21. 前記関数「N(u*k(t))」を、前記ベクトル要素「u*k(t)」のL1ノルムの値を返す関数とした
    請求項20に記載の適応フィルタの制御方法。
  22. 前記関数「N(u*k(t))」を、前記ベクトル要素「u*k(t)」のL2ノルムの値を返す関数とした
    請求項20に記載の適応フィルタの制御方法。
  23. 前記関数「N(u*k(t))」を、前記ベクトル要素「u*k(t)」に依らず、常に一律の値を返す関数とした
    請求項20に記載の適応フィルタの制御方法。
  24. 前記定数「αk」を、変数「k」の値が小さいものほど、大きい値に設定した
    請求項20〜23のいずれか1項に記載の適応フィルタの制御方法。
  25. 前記定数「αk」を、0より大きく、且つ1以下の値に設定された定数「μ」を用いた下式(12)にて算出する
    Figure 2007235848
    ことを特徴とする請求項24に記載の適応フィルタの制御方法。
  26. 離散時刻「t」における前記フィルタの入力信号を「x(t)」で表し、その離散時刻「t」の過去L点の入力信号「x(t)」、「x(t−1)」、・・・、「x(t−L+1)」を成分とする入力信号ベクトルを「x*(t)」で表したとき、
    過去P点における入力信号ベクトル「x*(t)」、「x*(t−1)」、・・・、「x*(t−P+1)」のそれぞれについて、他の(P−1)個の入力信号ベクトルのすべてに対して直交するベクトルを求めるとともに、それらの求められたP個のベクトルを要素とするベクトル系列を、前記フィルタの入力信号に基づき生成する
    請求項19〜25のいずれか1項に記載の適応フィルタの制御方法。
  27. 前記過去P点における入力信号ベクトル「x*(t)」、「x*(t−1)」、・・・、「x*(t−P+1)」を要素とするベクトル系列を「X*p(t)」とし、
    「Cij」をベクトル系列「X*p(t)」の転置行列「X*p(t)T」と同ベクトル系列「X*p(t)」との積のi行j列の余因子としたとき、
    前記ベクトル系列を構成するP個のベクトル要素「u*k(t)」(k=1,2,・・・,P)を、下式(13)にて算出する
    Figure 2007235848
    ことを特徴とする請求項26に記載の適応フィルタの制御方法。
  28. 離散時刻「t」におけるベクトル要素「u*k(t)」の2番目からL番目の成分「uk,2(t)」、「uk,3(t)」、・・・、「uk,L(t)」を、離散時刻「t−1」におけるベクトル要素「u*k(t−1)」を用いて、下式(14)の近似式にて算出する
    Figure 2007235848
    ことを特徴とする請求項27に記載の適応フィルタの制御方法。
  29. 前記過去P点における入力信号ベクトル「x*(t)」、「x*(t−1)」、・・・、「x*(t−P+1)」を用いて、前記ベクトル系列を構成するP個のベクトル要素「u*k(t)」(k=1,2,・・・,P)を、下式(15)及び(16)にて算出する
    Figure 2007235848
    ことを特徴とする請求項26に記載の適応フィルタの制御方法。
  30. 前記偏差の非線形変換値を、前記偏差が零であるときはその値が零となり、零からの前記偏差の増大に応じてその値が正の所定値に収束し、零からの前記偏差の減少に応じてその値が負の所定値に収束するように設定された非線形関数を用いて求める
    ことを特徴とする請求項19〜29のいずれか1項に記載の適応フィルタの制御方法。
  31. 前記偏差「e(t)」の非線形変換値を算出する非線形関数「F(e(t))」は、下式(17)にて表される
    Figure 2007235848
    ことを特徴とする請求項30に記載の適応フィルタの制御方法。
  32. 前記非線形関数を、双曲線正接関数とした
    ことを特徴とする請求項30に記載の適応フィルタの制御方法。
  33. 前記偏差「e(t)」の非線形変換値を算出する非線形関数「F(e(t))」は、下式(18)にて表される
    Figure 2007235848
    ことを特徴とする請求項30に記載の適応フィルタの制御方法。
  34. 音声信号を音声に変換して再生出力する音声出力手段と、その音声出力手段によって再生出力された雑音を含む音声を電気信号に変換して出力する集音手段と、を備える音響システムにおける前記音声出力手段により音声変換される音声信号を前記フィルタの入力信号とし、前記集音手段により出力される電気信号を前記希望応答信号とする
    ことを特徴とする請求項19〜33のいずれか1項に記載の適応フィルタの制御方法。
  35. 音声を送話音声信号に変換して送話回線を通じて送信する送話手段と、受話回線を通じて受信した受話音声信号を音声に変換して出力する受話手段と、を備える音声回線システムにおける前記受話音声信号及び前記送話音声信号の一方を前記フィルタの入力信号とし、他方を前記希望応答信号とする
    ことを特徴とする請求項19〜33のいずれか1項に記載の適応フィルタの制御方法。
  36. 騒音源の発生する騒音を電気信号に変換する騒音集音手段と、前記騒音と逆位相の制御音を発生して出力する制御音発生手段と、騒音制御を行う場の音を電気信号に変換する評価音集音手段と、を備えるアクティブ騒音制御システムにおける前記騒音集音手段により変換された電気信号を前記フィルタの入力信号とし、前記評価音集音手段により変換された電気信号を前記偏差とするとともに、前記制御音発生手段は、前記フィルタの出力信号を前記制御音に変換して出力する
    ことを特徴とする請求項19〜33のいずれか1項に記載の適応フィルタの制御方法。
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