JP2007222155A - ヒトリンパ管由来細胞株およびそれを用いた診断キット - Google Patents

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Abstract

【課題】簡便にヒトリンパ管から直接分離、培養できる高品質の内皮細胞であるヒトリンパ管由来細胞株、およびそれを用いたリンパ系疾患等の診断キットを提供する。
【解決手段】ヒトリンパ管由来細胞株は、摘出されたヒトリンパ管の内腔にコラゲナーゼ液を灌流することにより、剥離させて採取した内皮細胞である。前記内皮細胞が、前記採取の後、低酸素環境下で培養したものであってもよい。診断キットは、前記のヒトリンパ管由来細胞株が基材上に播種されたものである。

Description

本発明は、リンパ系疾患の生物学的解析のためや、リンパ系疾患用の医薬品の開発のために用いられるヒトリンパ管由来細胞株、およびそれを用いたこの疾患の診断キットに関するものである。
リンパ系は、炎症、免疫、癌転移等に携わるリンパが流れる組織・器官である。リンパ系は、組織間隙のリンパ液を、毛細リンパ管、微小リンパ管、集合リンパ管、リンパ節、主幹リンパ管、胸管の順で血管系へ送るものである。
このリンパ管に由来する細胞株は、炎症発症・免疫不全・癌転移等のリンパ系疾患の生物学的解析の研究のためや、抗炎症剤・抗癌剤のような医薬品の開発の際のスクリーニングのために、重要なものである。
このような細胞株のうちヒトリンパ管由来細胞株として、リンパ管内腔壁で内皮細胞を有するが平滑筋を有しない毛細リンパ管に由来するものが、コスモバイオ社から市販されている。このヒト毛細リンパ管由来細胞株は、リンパ管に特異的な表面マーカーを用いて選択された細胞であるが、ヒトリンパ管から直接分離されたものではない。
一方、ヒトリンパ管、中でも特に重要な機能であるポンプ作用を発現し平滑筋細胞と内皮細胞とのいずれもが存在するヒト集合リンパ管に由来した細胞株は、分離、培養された例がない。
そこで従来は、特許文献1に記載されているようなラットのリンパ管からトリプシン消化酵素により分離し、培養した内皮細胞を用いて、リンパ系疾患についてin vitroでの解析研究や医薬品の開発をしなければならなかった。
このラットリンパ管由来内皮細胞は、単にトリプシン消化酵素により分離したものであるから平滑筋細胞も多量に含んでいるため、いずれかの細胞のみを用いるべきリンパ系疾患の生物学的解析の研究や医薬品の開発に向いていない。さらに、ラットとヒトとでは種差があるため、患者に対する高感度で正確なリンパ系疾患診断キット等への応用ができないという問題がある。
そのため、ヒトリンパ管から直接分離、培養された内皮細胞である細胞株が望まれていた。
特開2004−248577号公報
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、簡便にヒトリンパ管から効率よく直接分離、培養でき高品質であって内皮細胞であるヒトリンパ管由来細胞株、およびそれを用いたリンパ系疾患等の診断キットを提供することを目的とする。
前記の目的を達成するためになされた特許請求の範囲の請求項1に記載されたヒトリンパ管由来細胞株は、摘出されたヒトリンパ管の内腔にコラゲナーゼ液を灌流することにより、剥離させて採取した内皮細胞であることを特徴とする。
ヒト集合リンパ管由来内皮細胞株を分離する際に用いるコラゲナーゼ液は、コラゲナーゼII液(Worthingron社製;品番S2B5456)が挙げられる。それの濃度は0.01〜0.1%が好ましく、0.05%が特に好ましい。ヒト集合リンパ管内腔を灌流する速度は、コラゲナーゼII液の場合、少なくともコラゲナーゼIIの酵素作用が発現できさえすれば如何なる速度でもよく、灌流を一旦停止させて内皮細胞を剥離させることも可能であるし、灌流をしたまま内皮細胞を剥離させていくことも可能である。コラゲナーゼII液の組成はコラゲナーゼIIが前述の濃度で含有されていれば特に限定されるものではない。
請求項2に記載されたヒトリンパ管由来細胞株は、前記内皮細胞が、前記採取の後、低酸素環境下で培養したものであることを特徴とする。
このヒトリンパ管は、ヒト集合リンパ管であることが好ましい。中でもヒト腋窩リンパ節輸入リンパ管であるとなお好ましい。
この低酸素環境下は、酸素濃度が1〜10%であることが好ましく、3〜7%であることが一層好ましく、5%であることが特に好ましい。ヒト生体内のリンパ液中の酸素濃度が血液中の酸素濃度に比べ格段に低いことから、このような低酸素環境下での培養条件は、ヒトリンパ管由来細胞株の培養に最適なものであると考えられる。
請求項3に記載されたヒトリンパ管由来細胞株は、請求項1又は2に記載の内皮細胞に、マイコプラズマ除去剤を添加して、マイコプラズマ陰転化した後、精製したものであることを特徴とする。
このマイコプラズマ除去は、いかなる継代目に行ってもよいが、好ましくは2〜5継代目、特に好ましいのは2継代目である。マイコプラズマの除去には、例えば培養細胞用マイコプラズマ除去剤であるMynox (Minerva biolabs社製;商品名)15倍希釈液やMC-210(大日本製薬株式会社製;商品名)が用いられるが、特に限定されるものではない。少なくともマイコプラズマの除去が可能であれば如何なる方法や物質を用いてもよく、マイコプラズマ除去剤の濃度も特に限定されるものではなく、複数の手法を併用してもよい。
マイコプラズマ除去の前に、マイコプラズマ感染の有無を計測してもよく、マイコプラズマ除去の前であればいかなる継代目に計測してもよいが、好ましくは2〜5継代目、特に好ましいのは2継代目である。マイコプラズマ感染の有無の計測は、マイコプラズマ感染測定キットMycoplasma Plus PCR Primer Set (Stratagene社製;商品名)を使用してもよいが、少なくともマイコプラズマ感染の有無が計測出来さえすれば如何なる方法や物質を用いても良く、複数の手法を併用してもよい。
請求項4に記載された診断キットは、請求項1〜2のいずれかに記載のヒトリンパ管由来細胞株が基材上に播種されていることを特徴とする。
請求項5に記載された診断キットは、半透膜を有する前記基材上に、前記ヒトリンパ管由来細胞株が、播種されていることを特徴とする。
この診断キットは、少なくともヒトリンパ管由来細胞株である内皮細胞株が生育できさえすれば、如何なる培養用プレート、培養用スライドガラス、半透膜を用いてもよく、その形状や、培養表面の修飾状態などは、如何なるものであってもかまわない。診断キットに用いる培養液は少なくとも該細胞株が増殖できる培養液であれば如何なる成分組成であってもよいが、血管内皮細胞用培地であるEGM−2(三光純薬社製)が特に好ましく、hFGFやVEGFやR3-IGF-1やhEGFやVFGF-CやVEGF-DやPDGF-BBといったサイトカイン、アスコルビン酸などの各種ビタミン、hydrocortisoneといったステロイド、血清など如何なる添加物が含まれていてもよい。また、細胞数は播種基材の面積によるが、1×10〜1×10個/平方センチメートルであることが好ましい。
これらの細胞株は、現在市販されているHUVEC(human umbilical vein endothelial cells: Takara #CC-2517)やヒト皮下組織から採取したHMVEC(human microvascular endothelial cells:Takara #CC-2505)と同様に、単一細胞由来ではなく、可能継代数も10継代程度という性質を有する。
このヒトリンパ管由来内皮細胞株は、平成18年1月18日に独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305−8566茨城県つくば市東1−1−1)で受領され、受託番号FERM P−20768が付されたものである。
本発明のヒトリンパ管由来細胞株は、ヒトリンパ管から、簡便な灌流工程を経て内皮細胞を、高品質で採取したもので、また効率よく確実に培養できるものである。
このような樹立されたヒトリンパ管由来細胞株は、ヒトリンパ管に由来しているから動物種差を考慮することなく、患者のリンパ系疾患の生物学的解析の研究、薬物輸送剤のような医薬品の開発、診断キットの製造に使用できるものである。
この細胞株やそれが播種された診断キットは、癌細胞の粘着・接着性、リンパ管内皮細胞への薬剤の透過性機能等について、生物学的特性、物理学的特性、化学的特性の差によるin vitro の定量的な評価をしたり、炎症時のアルブミン透過性変化、癌のリンパ管浸潤、癌のリンパ節転移等のメカニズムを解明したりするのに有用である。
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
ヒトリンパ管由来細胞株の一例として、ヒト集合リンパ管から分離、培養したヒト集合リンパ管由来内皮細胞株について順次説明する。
以下のようにしてヒト集合リンパ管由来内皮細胞株を分離した。
信州大学医学部乳腺外科内での乳癌患者の乳腺内分泌外科手術によるセンチネルリンパ節生検症例のうち、その手術前に同意が得られた患者から、手術時に摘出された周囲組織が付着したままヒト腋窩リンパ節輸入リンパ管であるヒト集合リンパ管の提供を受けた。
ヒト集合リンパ管由来の細胞以外の混入を避けるため、実体顕微鏡下で、このリンパ管外周の脂肪、毛細血管などの組織を剥離した。灌流、洗浄、細胞採取を行うために細いポリエチレンチューブを、ヒト集合リンパ管内腔に挿入して留置した。この内腔を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS溶液)で灌流して洗浄した。この内腔に、0.05%のコラゲナーゼII液(Worthington社製;品番S2B5456)を充填した。それを37℃の培養器内で内皮細胞の剥離が認められる時間、主に10分間静置した。
培地および培地添加物として、血管内皮細胞用増殖培地ブレットキットEGM−2(三光純薬社;品番CC−3162)500ml、および牛胎児血清(Fetal Bovine Serum:FBS)(Japan Bioserum社製;品番S1560)40mlを用いる。
ヒト集合リンパ管内腔を10%FBS添加EGM−2の1mlで灌流し、この内腔に剥離した内皮細胞を回収した。この内皮細胞の回収液をチューブに入れ、2000r.p.m.で5分間遠心し、内皮細胞成分を採取した。これによりヒト集合リンパ管由来内皮細胞株が分離できた。
ヒトリンパ管由来内皮細胞株を以下のようにして培養した。
細胞の接着を向上させるためI型コラーゲン(新田ゼラチン社製;品番I-P)を塗布した35mm細胞培養用プレートに、採取したうちの1×10個の内皮細胞を播種し、培地として1.5mlの10%FBS添加EGM−2を入れて、37℃で、5%酸素、5%二酸化炭素および90%窒素の低酸素環境下で培養した。ダブリングタイムは、約48時間であった。コンフルエントになったらそれを、PBS溶液で洗浄し、0.25%トリプシン液により37℃で3分間処理した後、細胞を回収して2000r.p.m.で5分間遠心し、I型コラーゲンを塗布した3〜4枚の新しい35mm細胞培養用プレートに播種した。またコンフルエントになったら適宜継代培養を施行した。
これらの細胞は、患者由来の細胞のためか初代継続代時すでにマイコプラズマ感染を認める症例もあるため、2継代目にまずマイコプラズマ感染測定キットMycoplasma Plus PCR Primer Set (Stratagene社製;商品名)を用いて感染の有無を計測した。計測の結果、マイコプラズマ陽性である場合には、培養細胞用マイコプラズマ除去剤であるMynox (Minerva biolabs社製;商品名)15倍希釈液およびMC-210(大日本製薬株式会社製;商品名)0.5μg/mlの単独もしくは併用方法にてマイコプラズマ除去を行った。
マイコプラズマが陰転した後も、適時(2継代毎程度)マイコプラズマ感染状況を上記感染測定キットにて確認し、マイコプラズマ陰性の細胞株を樹立した。
(ヒトリンパ管由来内皮細胞株の増殖能評価)
酸素5%という低酸素環境下と酸素20%という通常の酸素環境下とでそれぞれ96時間かけてこのヒトリンパ管由来内皮細胞株を培養した場合に、顕微鏡でそれぞれの1視野の細胞数を数えることにより、酸素濃度毎の内皮細胞株の増殖能の相違を検討した。その結果、通常の酸素環境下での内皮細胞株の培養よりも低酸素環境下での内皮細胞株の培養の方が、一層優れた増殖能を示していた。
(ヒトリンパ管由来内皮細胞株の保存)
ヒトリンパ管由来内皮細胞株の保存条件は、0.25%トリプシン液で内皮細胞株を回収し、10%ジメチルスルホキシド(DMSO)および90%FBSからなる凍結保存液を用いて細胞懸濁液を調製した後、凍結チューブに入れ、バイセルを用いて段階的に冷却し、最終的に液体窒素内で保存するというものである。その融解条件および融解時培養条件は、凍結チューブを37℃の恒温槽で融解させ、2000r.p.m.で5分間遠心して内皮細胞株を回収し、細胞培養液として10%FBS添加EGM−2を用いて細胞懸濁液を調製し、前記の内皮細胞株の培養の条件と同様にして培養するというものである。
次に、ヒトリンパ管由来内皮細胞株の生物学的特性について調べた結果を示す。
(ヒトリンパ管由来内皮細胞株の生物学的特性)
A. CD31(platelet endothelial cell adhesion molecule:PECAM)による免疫染色観察
培養系に移行したヒト集合リンパ管由来内皮細胞株をスライドガラス上に播種した。培養を継続し、コンフルエントになったところで、これを10%ホルマリンにて固定した。0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)添加PBS溶液にてブロッキングした後、一次抗体として内皮細胞のマーカーであるCD31(Santa Cruz社製;品番sc-8306)を1:100に0.1%BSA添加PBS溶液で希釈して加え、4℃で一晩静置した。その一次抗体をPBS溶液で洗浄した後に、この一次抗体に見合う二次抗体として色素で蛍光標識してあるgoat anti-rabbit IgG-FITC(Santa Cruz社製;品番sc-2012)を0.1%BSA添加PBS溶液で1:100に希釈して加え、室温で1時間静置した。その二次抗体をPBS溶液で洗浄した後、Mobi GLOW Mounting Medium(Mo Bi Tec社;品番MGM01)に封入して蛍光顕微鏡で観察したところ、この内皮細胞株は、緑の蛍光色を示し、CD31に対して陽性であることが確認された。
B. VEGF−R3(vascular endothelial growth factor receptor 3)による免疫染色観察
培養系に移行したヒト集合リンパ管由来内皮細胞株をスライドガラス上に播種した。培養を継続し、コンフルエントになったところで、これを10%ホルマリンにて固定した。0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)添加PBS溶液にてブロッキングした後、一次抗体としてリンパ管内皮細胞の特異的なマーカーであるVEGF−R3(Santa Cruz社製;品番sc-637)を1:100に0.1%BSA添加PBS溶液で希釈して加え、4℃で一晩静置した。その一次抗体をPBS溶液で洗浄した後に、この一次抗体に見合う二次抗体として蛍光標識してあるgoat anti-rabbit IgG-FITC(Santa Cruz社製;品番sc-2012)を0.1%BSA添加PBS溶液で1:100に希釈して加え、室温で1時間静置した。その二次抗体をPBS溶液で洗浄した後、Mobi GLOW Mounting Medium(Mo Bi Tec社;品番MGM01)に封入し、蛍光顕微鏡で観察したところ、この内皮細胞株は、緑の蛍光色を示し、VEGF−R3に対して陽性であることが確認された。
C. LYVE−1(lymphatic vessel endothelial hyaluronan receptor-1)による免疫染色観察
一次抗体としてリンパ管内皮細胞の特異的な別のマーカーであるLYVE−1(Santa Cruz社製;品番sc-19316)を用い、二次抗体として蛍光標識であるdonkey anti-goat IgG-FITC(Santa Cruz社製;品番sc-2024)を用いたこと以外は、VEGF−R3による免疫染色と同様に観察したところ、この内皮細胞株は、緑の蛍光色を示し、LYVE−1に対して陽性であることが確認された。
これらのCD31、VEGF−R3およびLYVE−1の免疫染色の観察の結果から明らかなように、リンパ管由来内皮細胞株は培養系に移行させても、CD31、VEGF−R3およびLYVE−1の発現が認められ、内皮細胞の生物学的特性が維持されていた。したがって、リンパ管由来内皮細胞株の分離・培養が樹立できたと確認された。
D. 細胞骨格蛋白F−actinによる染色観察
培養系に移行したヒト集合リンパ管由来内皮細胞株をスライドガラス上に播種した。培養を継続し、コンフルエントになったところで、刺激因子として腫瘍壊死因子−α(TNF−α)(SIGMA社製;品番T-0157)の10ng/ml、インターロイキン−1β(IL−1β)(Pepro Tech社製;品番200-01B)の1ng/mlおよび10ng/mlのそれぞれを3%FBS添加EBM−2(三光純薬社;品番CC-3156)にて溶解して細胞上に付加し、2時間37℃で培養した。これを、3.7%ホルマリンにて固定した。これをPBS溶液にて洗浄し、0.1% Triton X−100(SIGMA社製;品番X-100)添加PBS溶液内で5分間静置した。PBS溶液にて洗浄し、phalloidin−FITC 抗体(SIGMA社製;品番P-5282)を0.1%BSA添加PBS溶液で1:500に希釈して加え、室温で2時間静置した。PBS溶液にて洗浄した後、Mobi GLOW Mounting Mediumに封入した。また、刺激因子を用いないこと以外は同様にしてネガティブコントロールを調製した。これらを蛍光顕微鏡で観察し比較したところ、刺激因子がないネガティブコントロールは不明瞭な緑の蛍光色を示しF−actinの発現が少なかったのに対し、TNF−αやIL−1βで刺激されたものは明瞭な緑の蛍光色を示しF−actinの発現の増加が確認された。
このF−actinによる染色の観察の結果から明らかなように、ヒト集合リンパ管由来内皮細胞株は、炎症性サイトカインによってこの内皮細胞株の骨格変化がおこり、炎症時に発生する浮腫が誘発されるものである。したがって、この内皮細胞株は、サイトカインによる骨格変化を抑制する抗炎症剤のような医薬品のスクリーニングに有用であることが示された。またリンパ系疾患の患者からリンパ球を含む末梢血を採取しそのリンパ球の接着能を評価したり、また患者から生検、採取した癌細胞の転移能を定量的に評価したりするためにも有用であることが示された。
さらにこのヒト集合リンパ管由来内皮細胞株は、癌細胞との接着性を有することを利用して、細胞質染色用蛍光色素CFSEで蛍光標識したメラノーマ細胞のリンパ節への灌流をin vitroで観察するのに用いることもできる。また制癌剤をヒト集合リンパ管由来内皮細胞株に吸着もしくは修飾もしくは細胞内に取り込ませて、癌細胞を有するリンパ節にこの制癌剤を選択的に到達させるドラッグデリバリーシステム(DDS)に用いることもできる。
次に、ヒトリンパ管由来内皮細胞株が播種された診断キットの一例について説明する。
(内皮細胞株播種診断キットの作製およびそれを用いた評価)
前記のようにして分離、培養されたリンパ管由来内皮細胞株を、直径35mm細胞培養用プレートに播種し、リンパ管由来内皮細胞株が生育可能な培地で培養し、コンフルエントになるまで培養し、内皮細胞株播種診断キットを作製した。
それを用いて、リンパ管由来内皮細胞株とヒト胃癌細胞との接着性について以下のようにして評価した。リンパ管由来内皮細胞株をIL−1βの1ng/mlで5時間刺激した。これに、アセチルグルコースアミンα(GlcNAcα)発現株であるヒト胃癌細胞株AGS(大日本製薬社製;品番09-1739)をトリプシンで剥離した後に培養液で希釈して細胞懸濁液を作成し、各プレートに5×10個を加え、30分静置した。それを顕微鏡で観察した。一方、対照群として、リンパ管由来内皮細胞株をIL−1βで刺激せずにGlcNAcα発現株および非発現株であるヒト胃癌細胞株を用いて同様に調製したものを、顕微鏡で観察した。その結果、炎症系サイトカインであるIL−1β刺激でリンパ管内皮細胞と胃癌細胞の接着が亢進することが観察され、胃癌で高頻度に発現する糖鎖であるGlcNAcαは、ヒトリンパ管由来内皮細胞株との接着に関与していることが分った。これにより、胃癌細胞の接着抑制評価をすることができ、胃癌の転移能、特にリンパ節への転移能を診断することができる。
(別な内皮細胞株播種診断キットの作製およびそれを用いた評価)
先ず、前記のようにして分離、培養されたヒトリンパ管由来内皮細胞株を調製した。次いで、市販の血管内皮細胞用透過性評価キットin vitro Vascular Permeability Assay Kit(CHEMICON社製:商品名)の2層チャンバー上室に形成された半透膜上へコラーゲンを塗布し、その上層に、血管内皮細胞を播種する代わりにヒト由来リンパ管内皮細胞株を2.0×10個ずつ播種した。一方そのキットのプレートウェルを形成する2層チャンバー下室に細胞増殖培地(10%FBS添加EGM−2)を投与した。細胞が単層でコンフルエントなるまで、48時間培養器内で培養し、別な態様の内皮細胞株播種診断キットを作製した。
それを用いて、リンパ管由来内皮細胞株透過性について、以下のようにして評価した。リンパ管由来内皮細胞株を、細胞刺激因子として10ng/mlのTNF−αで一晩刺激した。内皮細胞株播種診断キットの2層チャンバー上室へ、透過性物質として血管内皮細胞透過性評価キットに添付のFITC−デキストランを加え、上室から下室へのそれの透過性を測定した。その相対蛍光ユニット(Relative Fluorescence Units:RFUs)は、約1300RFUsであった。TNF−αで刺激しなかったこと以外は同様にした対照での相対蛍光ユニットは約300RFUsであった。その結果、ヒトリンパ管由来内皮細胞株をTNF−αで刺激することにより、FITC−デキストランの透過性が亢進することが確認された。
また、透過性物質として4KDa、12KDa、77KDaなどのように分子サイズが異なるFITC−デキストラン、およびFITCでラベルされ77KDaのデキストランとほぼ同じ分子サイズのアルブミンについても、同様にして透過性を測定した。その結果、透過性は、デキストランの分子サイズに依存し、また、ほぼ同じ分子サイズのデキストランとアルブミンとで相違する性質にも依存していることが分かった。このようにして、ヒトリンパ管由来内皮細胞株による透過性評価をすることができ、透過性を制御するメカニズムや内皮機能の研究、内皮細胞の薬剤の透過の影響の診断をすることができる。なお、細胞刺激因子としてTNF−αを用いた例を示したが、IL−1βを用いても同様に透過性を測定できる。
本発明のヒトリンパ管由来細胞株は、リンパ系の疾患の病態研究や医薬品開発の際のスクリーニングのツールとして用いられるものである。またこの細胞株を播種したキットは、サイトカインにより炎症を抑制するような抗炎症剤や抗癌剤の有効性の確認、患者の癌転移能評価や浮腫誘発評価や末梢血のリンパ球の接着能評価などリンパ系の疾患の臨床での診断のために用いられる。

Claims (5)

  1. 摘出されたヒトリンパ管の内腔にコラゲナーゼ液を灌流することにより、剥離させて採取した内皮細胞であることを特徴とするヒトリンパ管由来細胞株。
  2. 前記内皮細胞が、前記採取の後、低酸素環境下で培養したものであることを特徴とする請求項1に記載のヒトリンパ管由来細胞株。
  3. 請求項1又は2に記載の内皮細胞に、マイコプラズマ除去剤を添加して、マイコプラズマ陰転化した後、精製したものであることを特徴とするヒトリンパ管由来細胞株。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のヒトリンパ管由来細胞株が基材上に播種されていることを特徴とする診断キット。
  5. 半透膜を有する前記基材上に、前記ヒトリンパ管由来細胞株が、播種されていることを特徴とする請求項4に記載の診断キット。
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