JP2007217311A - 神経細胞分化誘導剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、脳室内に移行しやすく経口投与が可能であり、かつ容易に入手できる低分子量の神経栄養物質であり、プロスタグランジンやロイコトリエンなどのケミカルメディエーターの産生による影響を殆ど受けることなく、効果的に神経細胞の神経突起を形成し、神経網の形成促進作用を示す物質を有効成分として含有する神経細胞分化誘導剤を提供することである。
【解決手段】炭素数6〜10の直鎖中鎖脂肪酸を有効成分として含有する神経細胞分化誘導剤による。直鎖中鎖脂肪酸には、各脂肪酸の他、各脂肪酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、n−ブチルエステル等の化合物および上記各脂肪酸の薬学上許容しうる塩などをも含む。
【選択図】なし

Description

本発明は炭素数6〜10の中鎖脂肪酸を有効成分として含有する神経細胞分化誘導剤に関する。
脳機能の改善薬として実用化されているものには、脳代謝改善薬、脳循環改善薬、脳保護薬、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬などがあるが、その効果は限定的であり、脳機能を積極的に亢進させるものではない。脳機能亢進物質としては、神経網の形成を促す神経栄養因子である神経成長因子(以下「NGF」という。)がよく知られている。しかし、NGFは分子量がモノマーで13,000、ダイマーで26,000の大きさのタンパク質であり、NGFを脳室内へ注入すると有効であるが、血液脳関門を通過しないため末梢からの投与や経口投与では効果がない。
神経系が正常に機能するには、ニューロン細胞の成熟と保持が必要である。また、シナプス接合が適正に確立されることによって、異なるニューロン間での連絡が可能となる。また、神経疾患の多くは、ニューロン細胞の特定のクラスの消失、または変性と関連している。神経変性および増殖性疾患の予防および/または治療に有効な方法、並びに使用される化合物として、バルプロ酸誘導体で側鎖を有するカルボン酸を用いる方法が特許文献1に開示されている(特許文献1)。
脳内に移行しやすく経口投与が可能、かつ容易に入手できる低分子量の神経栄養物質が望まれている。このような物質として、6個の二重結合をもつ炭素数22の直鎖不飽和脂肪酸であるドコサヘキサエン酸(DHA)が注目されている。マウス結合組織由来の繊維芽細胞樹立株L−M細胞に、EPAおよび/またはDHAを添加したときにNGFの産生能が増強することが報告されている(特許文献2)。さらに、マウス結合組織由来の繊維芽細胞樹立株L−M細胞に、ジアシル型グリセロリン脂質を添加した場合にもNGFを産生することが報告されている(特許文献3)。また、DHAはNGFなどの作用を増強するものの、単独では効果が弱い(非特許文献1)。
中鎖脂肪酸またはこれを含むトリグリセリドを使用する、アルツハイマー病およびその他の脳疾患の治療方法が報告されている(特許文献4)。特許文献4では、アルツハイマー病でのエネルギー源としてのグルコース利用が低下していることに着目している。中鎖脂肪酸またはこれを含むトリグリセリドの投与により、中鎖脂肪酸が代謝されて生成されるケトン体をエネルギー源として利用しうることによるアルツハイマー病等の改善について言及されているが、中鎖脂肪酸またはこれを含むトリグリセリドが、直接神経細胞に作用することは全く記載されていない。
炭素数12〜26の脂肪酸のコリンエステルを脳卒中の治療に用いることが報告されている(特許文献5)。しかしながら、コリンエステルが神経細胞に作用することは開示されていない。さらに、特許文献5において、炭素数4〜30の天然物由来脂肪酸を薬剤に複合させて、薬物の親油性を増強させることについて言及しているが、上記脂肪酸について、神経細胞に作用することも、脳卒中の治療に使用することも全く開示がない。
その他の脂肪酸としては短鎖脂肪酸に属し、炭素数4の直鎖飽和脂肪酸である酪酸がNGFなどの作用を増強することが報告されているが、これも単独の作用は殆ど認められない(非特許文献2)。
脳機能の低下に起因する症状あるいは疾患の予防又は改善作用を有する組成物として、構成脂肪酸について開示がある(特許文献6)。特許文献6では構成脂肪酸ではアラキドン酸を含むものに限定されている。しかし、アラキドン酸は、NGFと併用するとNGFの効果を抑制するとの報告があり(非特許文献1)、またアラキドン酸からプロスタグランジンやロイコトリエンなどのケミカルメディエーターが産生されると、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症などのアレルギー症状の悪化につながる危険性がある。
特表平10-505064号公報 特開平8-143454号公報 特開平6-157338号公報 特表2003-531857号公報 特表2001-523715号公報 特開2003-48831号公報 Ikemoto et al., Neurochem. Res. 22, 671-678, 1997 Suzuki-Mizushima et al., Brain Res. 951, 209-217, 2002
本発明の課題は、脳室内に移行しやすく経口投与が可能であり、かつ容易に入手できる低分子量の神経栄養物質であり、プロスタグランジンやロイコトリエンなどのケミカルメディエーターの産生による影響を殆ど受けることなく、効果的に神経細胞の神経突起を形成し、神経網の形成促進作用を示す物質を有効成分として含有する神経細胞分化誘導剤を提供することである。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、炭素数6〜10の中鎖脂肪酸を培養神経細胞に添加すると、神経細胞の神経突起を形成し、神経網の形成促進作用を有することを見出し、本発明の神経細胞分化誘導剤を完成した。
本発明は、すなわち以下よりなる。
1.炭素数6〜10の中鎖脂肪酸を有効成分として含有する神経細胞分化誘導剤。
2.炭素数6〜10の中鎖脂肪酸が、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸およびデカン酸ならびにこれらの脂肪酸の各メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステルおよびn−ブチルエステル化合物と上記各脂肪酸の薬学上許容しうる塩から選択される前項1に記載の神経細胞分化誘導剤。
3.神経細胞分化誘導剤が、前項2に記載の化合物のうち、1種または複数種を含む神経細胞分化誘導剤。
4.神経成長因子(NGF)産生増強剤および/またはサイクリックAMP(cAMP)産生誘導剤との併用で使用する前項1〜3のいずれか1に記載の神経細胞分化誘導剤。
5.前項1〜4のいずれか1に記載の神経細胞分化誘導剤を含む医薬組成物。
6.前項1〜4のいずれか1に記載の神経細胞分化誘導剤を含む食品。
本発明の神経細胞分化誘導剤に含有される有効成分としての中鎖脂肪酸は、培養神経細胞に直接作用し、神経突起をNGFに匹敵するほど強く伸長させた。中鎖脂肪酸は、血液脳関門を通過しうる大きさであり、経口投与が可能であり、かつ容易に入手できる低分子量の神経栄養物質として機能しうる。中鎖脂肪酸は、母乳、牛乳、乳製品の脂肪分に3〜5%、ヤシ油、パーム核油に5〜10%含まれており、安全性の高いものであり、プロスタグランジンやロイコトリエンなどのケミカルメディエーターの産生による影響を殆ど受けることなく、効果的に神経細胞の神経突起を形成し、神経網の形成促進作用を示す。
本発明の神経細胞分化誘導剤は、脳賦活剤、神経機能活性化剤としての利用が考えられる。中鎖脂肪酸は、同じく神経突起伸長作用を持つことが知られているNGFやジブチリルサイクリックAMP(以下、「ジブチリルcAMP」という。)と併用すると併用効果を示したことから、多剤との併用効果も期待できる。
本発明において神経細胞分化誘導作用とは、未分化の神経細胞を神経細胞に分化させる作用のほか、神経細胞の神経突起を形成し、伸長させ、神経細胞を直接活性化させ、分化誘導させ、神経網の形成を促す作用をいい、あるいは神経細胞の機能維持にかかる作用などを意味する。このような作用を有する物質として、一般にはNGFがよく知られている。NGFは、神経組織の成長や機能維持に必要な栄養、成長因子のひとつであり、末梢神経系では、知覚、交感神経または中枢神経系では大細胞性コリン作動性ニューロンの成熟、分化、生命維持に不可欠なものと考えられている。
本発明の神経細胞分化誘導剤は、神経細胞分化誘導作用を有する物質であり、炭素数6〜10の中鎖脂肪酸、好ましくは炭素数6〜8の直鎖中鎖脂肪酸を有効成分として含有する。炭素数6〜10の直鎖中鎖脂肪酸とは、ヘキサン酸(カプロン酸、C6)、ヘプタン酸(エナント酸、C7)、オクタン酸(カプリル酸、C8)、ノナン酸(ペラルゴン酸、C9)およびデカン酸(カプリン酸、C10)が挙げられる。さらに、本発明の有効成分としての中鎖脂肪酸とは、各脂肪酸の他、各脂肪酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、n−ブチルエステル等の化合物および上記各脂肪酸の薬学上許容しうる塩などをも含む概念で用いられる。本発明の神経細胞分化誘導剤は、上記に列挙した化合物のうち、1または複数種を含んでいても良い。
中鎖脂肪酸は、単独でNGFによる神経細胞分化誘導能と同程度の神経細胞分化誘導能が認められる。中鎖脂肪酸のうち、特に、ヘキサン酸(カプロン酸、C6)、ヘプタン酸(エナント酸、C7)、オクタン酸(カプリル酸C8)、ノナン酸(ペラルゴン酸、C9)およびデカン酸(カプリン酸、C10)などの直鎖中鎖脂肪酸について、単独でPC12細胞の神経突起伸長作用が確認される。
中鎖脂肪酸は、NGFまたはジブチリルcAMPとの併用により、より効果的にその機能を発揮しうる。
しかし、NGFやジブチリルcAMPは、そのままでは血液脳関門を通過しないため、末梢からの投与や経口投与では効果が得られない。したがって、中鎖脂肪酸と併用可能な薬剤は、末梢からの投与や経口投与が可能であり、NGFの産生を増強しうる物質、サイクリックAMP(以下、「cAMP」という。)産生を誘導しうる物質であることが必要である。そこで、強力な分化誘導能を発揮させるために、本発明の神経分化誘導剤は、上記有効成分である中鎖脂肪酸の他、NGF産生増強剤および/またはcAMP産生誘導剤を含んでいても良いし、含まない場合であっても、併用して使用してもよい。
本発明においてNGF産生増強剤とは、NGFの産生を増強しうる物質であれば良く、特に限定されない。例えば、背景技術の欄で説明した特許文献2および3に例示される物質、具体的にはEPA、DHA、ジアシル型グリセロリン脂質などが例示される。NGFの産生を増強しうる物質であれば、自体公知の物質であってもよく、また今後開発される物質でもよく、市販されている物質に限定されることはない。
cAMP産生誘導剤としては、cAMPの産生を増強しうる物質であれば良く、特に限定されない。例えば、脳循環改善薬として用いられるアデノシン三リン酸二ナトリウムが例示され、このものから生成するアデノシンを介してcAMP産生を誘導するものが挙げられる。cAMPの産生を増強しうる物質であれば、自体公知の物質であってもよく、また今後開発される物質でもよく、市販されている物質に限定されることはない。
本発明の神経細胞分化誘導剤は、経口または非経口のいずれの投与形態でも可能である。経口投与の場合は、カプセル剤、錠剤、粉剤、液剤などの方法で使用することができ、また吸引剤、スプレー剤のような形態でも使用することができる。さらには、食品に添加して機能性食品のような形態とすることもできる。また非経口投与の場合は、注射剤、輸液剤などの剤型で使用することも可能である。本発明の神経細胞分化誘導剤は、製剤化または食品化のために、薬学上あるいは食品学上許容しうる賦形剤、着色剤、保存剤を添加することもできる。
以下に本発明の理解をより深めるために、実施例を示して本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではないことは明らかである。
(実施例1)各種脂肪酸の神経突起形成作用について(1)
中鎖脂肪酸であるヘキサン酸(カプロン酸、C6)と、短鎖脂肪酸である酪酸、プロピオン酸、ペンタン酸(吉草酸、C5)を、神経細胞分化のモデルとして繁用されるラット副腎髄質由来株化細胞PC12細胞に添加した時の、神経突起形成能を調べた。
1)培養容器
PC12細胞(理化学研究所バイオリソースセンター細胞材料開発室)の継代培養にはフラスコ(25cm、Nunc社)を、神経突起形成実験には96穴平底カルチャープレート(Nunc社)を用いた。96穴平底カルチャープレートはあらかじめ以下の方法でコラーゲンによる表面のコーティングを行い使用した。細胞培養用コラーゲン(Cellmatrix(R),type−1コラーゲン、新田ゼラチン)を1mM HClで希釈し0.4mg/mlとし、これを96穴平底カルチャープレートの各穴に0.075mlずつ分注した。室温で15分間静置し、余剰のコラーゲンを回収後、無菌的に風乾してコラーゲンをプレートにコートした。細胞を蒔く前にこれをリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で2回洗浄して用いた。
2)培養開始時期の細胞濃度
継代細胞を0.05%トリプシン溶液(ナカライテスク)でフラスコから剥離し、洗浄した後、4000細胞/0.1ml/穴 で播種し、培養を開始した。
3)培養液(培地、添加物等)
10% ウマ血清(Gibco社)、5%ウシ胎児血清(Sigma社)、100U/ml ペニシリンG(万有製薬)及び0.1mg/ml ストレプトマイシン(明治製菓)を含有するRPMI−1640培地(ICN Biomedicals社)を用いた。
4)各種脂肪酸の添加濃度
PC12細胞の培養開始22時間後に培養液の交換を行い、その2時間後に以下の各種脂肪酸のナトリウム塩(和光純薬、東京化成または関東化学)の最終濃度が以下となるように培養液に添加した。
酪酸:0、0.5、1、2、3、5mM、
プロピオン酸:0、3、5、7.5、10、15、20mM、
ペンタン酸:0、3、5、7.5、10、15、20mM、
ヘキサン酸:0、3、5、7.5、10、15、20mM、
ヘプタン酸:0、0.5、1、2、3、4、5、7.5、10、12.5mM
5)培養条件
培養は、各脂肪酸添加後、37±1℃で48時間、95%空気と5%COの気相のインキュベーター内で培養した。
6)PC12細胞の神経突起形成率の判定方法
細胞を5%グルタルアルデヒド(和光純薬)で固定し、ギムザ(Merck社)染色後に顕微鏡下にて観察を行った。細胞体の長径よりも長く伸びた神経様突起をもつ細胞を陽性細胞と判定し、1穴あたり300〜400個の細胞について評価した。陽性細胞数の全細胞数に対する百分率を神経突起形成率とした。結果は3穴の平均値±標準偏差で表わした。
その結果、図1に示すように、中鎖脂肪酸であるヘキサン酸(カプロン酸、C6)は、添加濃度7.5〜20mMでPC12細胞に対する強い神経突起形成作用を認め、その効果が短鎖脂肪酸を添加した場合に比べて明らかに優れていた。かかるヘキサン酸の神経突起形成作用は、NGFに匹敵するほど強いものであった。NGF単独での効果は、後述の実施例3においてオクタン酸およびNGFの併用効果を調べたときのNGF添加量が10ng/mlであり、オクタン酸濃度が0の時の結果(図3)を参照することができる。
(実施例2)各種脂肪酸の神経突起形成作用について(2)
中鎖脂肪酸であるヘプタン酸(エナント酸、C7)、オクタン酸(カプリル酸C8)、ノナン酸(ペラルゴン酸、C9)、デカン酸(カプリン酸、C10)およびドデカン酸(ラウリン酸、C12)について、実施例1に記載の方法と同手法により、PC12細胞を培養し、同様に神経突起形成率を調べた。
各脂肪酸のナトリウム塩(和光純薬または東京化成)は、最終濃度が以下になるように培養液に添加した。
ヘプタン酸:0、0.5、1、2、3、4、5、7.5、10、12.5mM、
オクタン酸:0、0.5、1、2、3、4mM、
ノナン酸:0、0.5、1mM、
デカン酸:0、0.5mM、
ドデカン酸:0、0.5mM
その結果、図2に示すように、炭素数7〜10の中鎖脂肪酸である上記各種脂肪酸については、PC12細胞に対して強い神経突起形成作用を認めた。具体的には、ヘプタン酸では4〜12.5mM、オクタン酸では2〜4mMで使用したときに神経突起形成作用を認め、それらの効果は、NGFに匹敵するほど強いものであった。一方、炭素数12のドデカン酸の神経突起形成作用は弱かった。
(実施例3)オクタン酸およびNGFの併用効果について
オクタン酸およびNGFを併用した場合と、オクタン酸単独で使用した場合の神経突起形成作用を比較した。
オクタン酸の最終濃度が、0、0.5、1、2、3、4、5mMであり、およびNGF(和光純薬)の最終濃度が10ng/mlとなるように培養液に添加し、実施例1に記載の方法と同手法にてPC12細胞を48時間培養した。一方、オクタン酸単独で使用した場合についても同様にPC12細胞を培養した。上記培養した系について、実施例1に記載の方法と同手法により神経突起形成率を調べ、図3に示した。さらに、培養後のPC12細胞を固定し、ギムザ染色したものについて顕微鏡観察し、図4に示した。
その結果、オクタン酸とNGFを併用した系では、オクタン酸を単独で使用した場合に比べ、高い神経突起形成率を認め、さらに、顕微鏡観察においてもオクタン酸とNGFを併用した場合に、強い神経突起伸長作用を認めた。
(実施例4)オクタン酸およびジブチリルcAMPの併用効果について
オクタン酸およびジブチリルcAMPを併用した場合と、オクタン酸単独で使用した場合の神経突起形成作用を比較した。
オクタン酸の最終濃度が、0、0.5、1、2、3、4、5mMであり、ジブチリルcAMPのナトリウム塩(Sigma社)の最終濃度が、0.0625mMとなるように培養液に添加し、実施例1に記載の方法と同手法にてPC12細胞を24時間培養した。一方、オクタン酸単独で使用した場合についても同様にPC12細胞を培養した。上記培養した系について、実施例1に記載の方法と同手法により神経突起形成率を調べ、図5に示した。
その結果、オクタン酸とジブチリルcAMPを併用した系では、オクタン酸を単独で使用した場合に比べ、高い神経突起形成率を認めた。
(比較例1)バルプロ酸の神経突起形成作用について
特許文献1に記載のバルプロ酸のナトリウム塩((CH3CH2CH2)2CHCOONa、Sigma社)について、実施例1に記載の方法と同手法により、PC12細胞を培養し、同様に神経突起形成率を調べた。
バルプロ酸の最終濃度が、0、0.5、1、2、3、4、5、10mMとなるように培養液に添加し、実施例1に記載の方法と同手法にてPC12細胞を48時間培養した。
その結果、図6に示すように、バルプロ酸については、PC12細胞に対する神経突起形成率は10%より低く、神経突起形成誘導作用を殆ど示さず、10mMではむしろ低下傾向を示した。
以上詳述したように、本発明の神経細胞分化誘導剤の有効成分である中鎖脂肪酸は、PC12細胞に直接作用し、神経突起をNGFに匹敵するほど強く伸長させた。本発明の神経細胞分化誘導剤に含有される有効成分としての中鎖脂肪酸は、血液脳関門を通過しうる大きさであり、経口投与が可能であり、かつ容易に入手できる低分子量の神経栄養物質として機能しうる。かかる神経細胞分化誘導剤は、脳賦活剤、神経機能活性化剤としての利用が考えられる。中鎖脂肪酸は、神経突起伸長作用を持つことが知られている他の物質、具体的にはNGFやジブチリルcAMPと併用すると強い作用を示したことから、多剤との併用効果も期待できる。
本発明の神経細胞分化誘導剤の有効成分である中鎖脂肪酸は、母乳、牛乳、乳製品の脂肪分に3〜5%、ヤシ油、パーム核油に5〜10%含まれており、安全性の高いものである。一方、NGFと同様な作用を有するものとしては塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)が知られている。bFGFは床ずれなどの治療薬としてスプレー剤で使用されている。中鎖脂肪酸は安定な液体または固体であり、容易にスプレー中にbFGFと共に混合でき、ねたきり老人等に多い痴呆症状の進行抑制に利用することが期待できる。
本発明の神経細胞分化誘導剤は、脳神経細胞に対する分化誘導作用、神経網の形成促進作用に基づき、脳神経細胞機能の低下に起因する疾患および症状の予防および改善への利用が期待され、さらに特定保健用食品、健康食品、栄養機能食品、サプリメント、食用油への利用も期待できる。
中鎖脂肪酸および短鎖脂肪酸の、PC12細胞の神経突起形成に対する作用を神経突起形成率にて示す図である。(実施例1) 中鎖脂肪酸の、PC12細胞の神経突起形成に対する作用を神経突起形成率にて示す図である。(実施例2) オクタン酸およびNGFの、PC12細胞の神経突起形成に対する併用効果を神経突起形成率にて示す図である。(実施例3) オクタン酸およびNGFの、PC12細胞の神経突起形成に対する併用効果を顕微鏡写真にて示す図である。(実施例3) オクタン酸およびジブチリルcAMPの、PC12細胞の神経突起形成に対する併用効果を神経突起形成率にて示す図である。(実施例4) バルプロ酸の、PC12細胞の神経突起形成に対する作用を神経突起形成率にて示す図である。(比較例1)

Claims (6)

  1. 炭素数6〜10の中鎖脂肪酸を有効成分として含有する神経細胞分化誘導剤。
  2. 炭素数6〜10の中鎖脂肪酸が、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸およびデカン酸ならびにこれらの脂肪酸の各メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステルおよびn−ブチルエステル化合物と上記各脂肪酸の薬学上許容しうる塩から選択される請求項1に記載の神経細胞分化誘導剤。
  3. 神経細胞分化誘導剤が、請求項2に記載の化合物のうち、1種または複数種を含む神経細胞分化誘導剤。
  4. 神経成長因子(NGF)産生増強剤および/またはサイクリックAMP(cyclic adenosine 3’,5’−monophosphate:cAMP)産生誘導剤との併用で使用する請求項1〜3のいずれか1に記載の神経細胞分化誘導剤。
  5. 請求項1〜4のいずれか1に記載の神経細胞分化誘導剤を含む医薬組成物。
  6. 請求項1〜4のいずれか1に記載の神経細胞分化誘導剤を含む食品。
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