JP2007216017A - 複数の合焦能力/オプティクスを有する眼内装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】AMD患者のニーズを満足可能な眼内レンズ装置を得る。
【解決手段】1つは、近見視力の能力であり、他方は遠見視力の能力である少なくとも2つの拡大能力を提供する眼内レンズオプティクスを含む眼内レンズ装置である。このレンズオプティクスは、近見視力の能力を提供する責任を担う表面変調を具備している。ゾーン構造が、6ジオプトリーを上回る付加能力を提供している。この付加能力は、近見視力の合焦能力が遠見視力の合焦能力を上回る程度を有している。
【選択図】図2

Description

本発明は、加齢黄斑変性症(Age−related Macular Degeneration:AMD)又はその他の低視力状態を有する患者を含む、弱視の人々のための視力補助装置に関するものである。この視力補助装置は、複数の合焦能力又はオプティクスを具備した眼内レンズ(Intra−Ocular Lens:IOL)である。
加齢黄斑変性症(AMD)の患者は、通常、中心視野が損なわれており、多くの場合に、日常生活のために周辺視力に大きく依存している。周辺網膜は、受容体(錐状体及び棹状体)の密度が低く、これがその乏しい分解能に結び付いている。又、弱視の人々などの低視力患者も、乏しい網膜分解能を有している。これらの患者における視覚分解能のボトルネックは、網膜分解能に起因するものであり、光学的な画像を詳細に改善しても、乏しい視覚分解能の問題を解決することにはならない。
AMD患者は、多くの場合に、機能不全の中心窩を有している。但し、機能不全の受容体を取り囲む依然として機能可能な網膜受容体が存在している。これらの機能可能な網膜受容体は、多くの場合に、周辺に配置されており、相対的に大きな間隔を互いの間に有している。この増大した間隔が、網膜の画像分解能の低下に結び付いている。例えば、3度の鼻側網膜(nasal retina)においては、視力は、0度における1.0の視力に対して0.4に低下し、5度の鼻側網膜においては、視力は、0度における1.0の視力に対して0.34に低下する(Millodot、1966年)。
個別に又は組み合わせのいずれかとして利用可能な視力補助装置の基本的なタイプには、従来、3つのものが存在している。
第1のタイプは、視力補助装置としての単体望遠鏡である。これらの望遠鏡は、多くの場合に、眼鏡に取り付けられており、これらは、重いだけでなく、美的にも魅力的なものではない。埋植型の望遠鏡は、多くの場合に、埋植するために、手術の際に非常に大きな切開を必要としている。望遠鏡システムを単独で使用する場合の主な欠点は、結果的に得られる視界の視野が狭いことと、全体的に貧弱な画像の品質にあり、この結果、動作の際の安全性面における懸念が生じる可能性があろう。
視力補助装置の第2のタイプは、プリズムである。プリズムは、視野方向を周辺網膜に対してアライメントするためのものである。このアプリケーションにおいては、二重像を回避するべく、両眼融合の問題を克服する必要がある。又、プリズムでは、網膜の画像が拡大されない。従って、相対的に大きい周辺網膜受容体の間隔に起因した低視覚分解能の問題が解決されない。
視力補助装置の第3のタイプは、拡大鏡であり、これは、多くの場合に、プリズムと組み合わせられている。この視力補助装置は、多くの場合に、卓上取付型の装置として使用されており、この結果、患者の適用範囲が制限されている。この視力支援装置の携帯型のものは、手の震えを有する患者における視力の不安定性と合焦の問題を有している。
従って、(1)視界の相対的に大きな視野を維持し、(2)適用のための携帯性を向上させ、(3)美観を改善し、且つ(4)視力の質と適用の安定性を向上させるというニーズが存在している。
図1は、Bennett及びRabbettsによる周辺視力を示している(「Clinical Visual Optics」、37頁、Butterworth、Bonston、1984年)。
周辺視力は、十分な分解能を依然として提供可能であることが知られている。しかしながら、分解能は次第に低下している(図1)。図1に示されているように、視力は、0度における1.0の視力に対して、鼻方向の2度においては、0.5に低下し、鼻方向の3度においては、0.4に低下し、鼻方向の5度においては、0.34に低下している。上外側又は下外側の周辺網膜も、軸からずれた類似の小さな角度範囲において類似した振る舞いを有するものと予想される。従って、14インチの判読距離に関連付けられたサイズに対して網膜画像のサイズを増大又は拡大することにより、周辺網膜は、中心の0度の網膜によって正常な眼が実行可能なものに匹敵するだけの小さなテキスト及び物体を効果的に分解可能となろう。具体的には、この拡大は、2度の周辺網膜を使用する場合には、2倍、3度の周辺網膜を使用する場合には、2.5倍、そして、5度の周辺網膜を使用する場合には、3倍とすることができよう。
眼科光学の分野においては、二重焦点又は多焦点オプティクスが周知である。Alcon社のReSTOR(登録商標)レンズオプティクスが、この一例である。しかしながら、既存の眼科の二重焦点又は多焦点オプティクスは、様々な患者のニーズに対して適合する必要性に起因し、設計による付加能力が格段に低いものになっている。ReSTOR(登録商標)レンズは、4DのIOL付加能力を有しており、これは、恐らくは、市販の製品において知られている最高の付加能力であろう。表1は、4Dの付加能力による拡大が、わずかに1.2倍であることを示している。この1.2倍という値は、図1に示されているニーズによれば、AMDに対して適用するには、十分なものではないであろう。即ち、1.2倍の拡大が有用であるのは、0.5度の網膜がAMDによって損傷されていない場合のみしかないからである。
本発明の一態様は、少なくとも2つの合焦能力又はオプティクスシステムを提供する二重焦点又は多焦点IOL又はシステムに関するものである。本発明のIOLは、AMD及びその他の低視力患者の正常な広視野に対するニーズのための遠見能力を提供しつつ、この種の患者が、ゾーン構造内の表面変調を利用することにより、近距離において読み物に対して合焦できるようにしており、好ましくは、この変調は、直径が増大している一連のリング構成に似た回折ゾーン構造である。
このような近距離は、約14インチの判読距離と関連した正常な判読網膜画像の1.2倍を上回って拡大された明瞭な網膜画像に結びついている。好ましくは、この近距離能力は、正常な判読網膜画像の2〜3倍に拡大された明瞭な網膜画像に結びついている。
本発明によれば、好ましくは、患者が通常の判読テキストを近距離能力によって合焦されるように配置した際に、拡大及び合焦された網膜画像を周辺網膜の受容体に導くことにより、AMD患者の判読に対するニーズを満足可能である。又、本発明は、AMD及びその他の低視力患者に対して使用されている望遠鏡装置によっては提供されない視界の正常な視野に対するニーズをも提供している。これは、遠見合焦能力を内蔵することによって実現されている。更には、安定したIOLの配置により、手の震えを有する患者に対して安定した視力を提供している。
以下の説明及び添付の図面を参照することにより、本発明について更に十分に理解することができよう。尚、本発明の範囲は、添付の請求項に記述されているとおりである。
本発明の発明者らは、AMD又は低視力を有する患者が直面している視力の問題について承知しており、且つ、そのような患者が拡大鏡の付加能力を使用して自身の視力の改善に役立てていることについても承知している。
拡大鏡内に強力な付加能力を配置した場合には、相対的に大きな拡大された画像が提供されるが、この場合に付与される1つの受容体当たりの光子は、同一の強力な付加能力を眼内レンズ内に配置した場合と比べて少ない。又、眼内レンズ内に強力な付加能力を配置した場合には、その強力な付加能力が拡大鏡内に存在している場合と比べて、AMD又は低視力障害を有する患者に対して良好なコントラスト感度が提供され、この違いの理由は、光学に起因したものである。
強力な付加能力を眼内レンズ内に配置することにより、拡大鏡内に強力な付加能力が存在している場合と比べて、1つの受容体当たりの光子の相対的に大きな濃縮が提供される。本発明者らは、このレンズ埋植物の付加能力が、レンズ自体の4ジオプトリーという現時点における従来のレベル(患者の視力に対する効果は約2.75ジオプトリーである)を上回っているものと判断している。好ましくは、これらの付加能力を、例えば、5、7.5、及び10ジオプトリーだけ、或いは、これらを更に上回るべく、患者の視力が向上することになる更に強力な付加能力に増大させる必要がある。
本発明から潜在的に利益を享受可能な患者の種類には、(種類1)AMDを発症しているIOL患者、(種類2)AMDを発症している非白内障老眼患者、及び(種類3)AMDを発症している非白内障非老眼患者又は低視力患者(弱視の人々)という少なくとも3つのものが存在している。
種類1に対する装置の方式:図2に示されているように、溝固定IOLキャリア上における二重焦点/多焦点IOL10を使用する。遠見能力は、患者の遠見視力及び正常な視野サイズのために、度が付いていないか又はほとんど付いていない。近見付加能力により、患者は、十分近くにおいて(例えば、6〜7インチにおいて)見ることが可能となり、この結果、正常な網膜受容体のアレイによる通常の判読テキストの網膜画像サイズの分解が可能となる。尚、配置の代替肢として、この二重焦点/多焦点IOLを前眼房IOLキャリア上に配置したり、眼の前眼房内に挿入することも可能である。
種類2に対する装置の方式:図3に示されているように、包袋(capsular bag)内において二重焦点/多焦点IOL10を使用する。遠見視力の能力を患者の遠見視力のニーズと正常な視野のサイズについて選択する。近見視力の能力により、患者は、十分近くにおいて(例えば、6〜7インチにおいて)見ることが可能となり、この結果、正常な網膜受容体のアレイによる通常の判読テキストの網膜画像サイズの分解が可能となる。
種類3に対する装置の方式:図4に示されているように、前眼房又は溝固定IOLキャリア内の二重焦点/多焦点IOL10と、包袋内のIOL12と、を使用する。このマルチレンズ多焦点システムは、少なくとも1つの望遠観察システム(例えば、IOL10)と、非望遠観察システム(例えば、IOL12)と、を具備している。望遠システムは、視力の改善のために、拡大された網膜画像を提供している。非望遠観察システムは、視界の正常な視野を提供している。水晶体をそのまま保持する必要がある場合には、前眼房又は溝固定IOLキャリア内において二重焦点/多焦点IOLと協働するように水晶体を維持している別の実施例を使用可能である。このようなケースにおいては、二重焦点/多焦点IOLの相対的に大きな付加能力により、拡大された網膜画像が提供される。
本発明者らは、これらの3種類のいずれかに対する3つの方式のその他の組み合わせによる適用も予想している。又、虹彩固定型のIOLキャリアなど、二重焦点/多焦点IOL用のIOLレンズキャリアのその他の形態も考えられる。又、この視力補助装置は、市販のADM薬及び/又はコンタクトレンズ及び屈折アブレーションと共に使用することも可能であろう。薬剤は、視力を落ち着かせて安定化させることにより、装置が患者の視力を改善するのを補助し、手術又は装置は、患者の視力の改善を補助可能である。
図2〜図4の図において、本発明は、二重焦点又は多焦点オプティクスを使用することにより、従来から利用可能である前述の視力補助装置の3つの基本的なタイプによって提供されているものを上回る視界の相対的に大きな視野を維持するというニーズを解決している。又、本発明は、従来の最小限に侵襲的な外科手順によって眼の内部にオプティクスを埋植することにより、埋植型の望遠鏡とは異なり、このような従来の基本的なタイプと比べて、適用のための携帯性の向上と美的な面における改善に対するニーズをも解決している。
本発明の二重焦点又は多焦点装置又はIOLは、少なくとも1つの合焦能力を提供している。患者の正常な広い視野に対するニーズは、装置の遠見能力によって満足されている。患者の判読に対するニーズは、患者が、近距離用の通常の4インチよりも近い視距離において合焦画像を観察できるようにすることにより、満足されている。又、画像品質も、患者が自身の頭又は眼を向ける必要性のない合焦画像に基づいたものになっている。
1次光学推定によれば、IOL能力の関数としての網膜画像サイズの倍率は、次の式1を使用することにより、見出すことができる。
β=f1xf2÷(f1xf1’−x1xΔ) 式(1)
ここで、βは、光学システムの画像の倍率であり、f1は、このシステムの第1光学レンズの物体空間焦点距離であり、f2は、このシステムの第2光学レンズの物体空間焦点距離であり、f’は、このシステムの第1光学レンズの像空間焦点距離であり、x1は、物体空間焦点からの物体距離であり、Δは、第1レンズの主平面と第2レンズの主平面間の離隔距離である。
第1レンズが、角膜であって、43ジオプトリーの能力を具備していると仮定した場合には、Δは4.3mmであり、像空間内の屈折率は1.336であり、IOLの遠見能力は、約+18ジオプトリーである。物体の光の広がりの距離を低減することにより、IOL付加能力が増大することになる。式(1)を使用した模範的な計算結果が表として表1に纏められている。
表1は、IOL能力の関数として網膜画像のサイズの変化を示している。
この表中におけるテキストフォントサイズの推定は、図5に基づいていることに留意されたい。
画像サイズの十分な拡大が完了した後に、対応する合焦能力又は画像化能力により、合焦した明瞭な画像が網膜にもたらされることになる。正常な眼のオプティクスは、非常に若い子供の眼を除外して、このような近距離において、合焦した明瞭な画像を網膜にもたらす画像化能力を提供してはいない。
光線追跡によって正確な計算を実行可能であるが、前述の近似により、この概念が例示されている。本発明による装置によれば、AMD患者は、中心暗点によるものを除いて、動作の際に、視界の正常な視野を具備可能であろう。彼らがテキストを判読する必要がある場合には、テキストを近くに持ってきて明瞭に合焦された画像を得ることにより、判読能力がトリガされる。N4又はN5のTimes New Romanフォントは、非常に小さいが、患者は、中心窩に隣接した網膜により、(彼らの暗点サイズに応じて)8〜5.5インチにおいて、これらのテキストを判読可能であろう。
従って、本発明は、二重焦点及び多焦点オプティクスを変更することにより、IOLプレーン内において、+6ジオプトリーを上回る「付加」能力を提供している。好ましい「付加」能力は、判読距離に対するニーズに応じて、+6超〜+8ジオプトリーであるが、9ジオプトリー又は10ジオプトリーなどの任意の更に大きな能力も考えられる。尚、この「付加」能力とは、二重焦点又は多焦点IOLの近見視力の能力と遠見視力の能力間の差のことである。
本発明の二重焦点/多焦点オプティクスの構造は、従来から利用可能である構造の一変形である。このような従来の構造において提供されている近見視力の能力と遠見視力の能力間の差は、6ジオプトリーを下回っている。従来の構造のいくつかの例には、米国特許第5,217,489号のものが含まれており、これには、近見視力の能力が2.0〜5.0ジオプトリーだけ遠見視力の能力を上回っていると記述されており、この内容は、その二重焦点眼内レンズ構造に関連した引用により、本明細書に包含される。
米国特許第4,888,012号は、少なくとも、次の2つの側面において本発明とは異なる適応型のレンズを開示している。第1に、この適応型レンズは、既定の多焦点レンズの代わりに、毛様筋によって圧縮されるのに伴って理論的にその能力を変化させるレンズである。第2に、この適応型レンズは、同時には、多数の焦点ではなく、単一の焦点を具備しているのみである。従って、米国特許第4,888,012号は、本発明において参照されている多数の焦点を同時に具備した多焦点レンズにおける大きな付加能力値について開示してはいない。
米国特許第6,432,246B1号は、プログレッシブ多焦点レンズと呼ばれる多焦点レンズのタイプについて開示している。このようなレンズは、表面の曲率半径を変化させることにより、レンズオプティクスに跨った能力の変動を実現している。これは、回折光学の原理ではなく、幾何光学の原理に基づいている。プログレッシブ多焦点レンズの場合には、広範囲の焦点上に光を供給しなければならず、従って、個々の焦点において利用可能な光エネルギーが減少する。このため、この観点において、これは、回折光学の多焦点IOLほどに効率的ではない。従って、米国特許第6,432,246B1号は、本発明において参照されている個別で高効率の多焦点を生成する回折光学の原理に基づいた多焦点レンズにおける大きな付加能力値について開示してはいない。
その他の従来の構造には、米国特許第6,969,403B2号、米国特許第6,695,881B2号、米国公開特許出願第US2005/0209692A1号のものが含まれており、これらは、いずれも、眼内レンズ及びそのキャリアの構造に関連した引用により、本明細書に包含される。
低視力患者に対して近見判読能力と正常な視野を提供するという目的が付与された場合には、光エネルギーが、遠見焦点や近見焦点などの明確に定義された特定の(即ち、個別の)焦点に集中されることが好ましい(これには、場合によって、中間焦点も含まれる)。回折多焦点レンズは、この観点において相対的に効率的である。
回折多焦点レンズは、しばしば、焦点生成のための光の干渉を実現するべく、表面変調を有するように製造されている。このようなレンズの付加能力は、表面変調構造の同心リングのサイズに関係している。一例として、図6に示されているように、回折二重焦点レンズ20は、鋸歯形状の表面変調22を具備可能である。図7には、このリング構造24(これは、回折ゾーン構造とも呼ばれている)が明瞭に示されている。このリング構造は、次の式2によって必要とされる付加能力の関数として定義可能である。
i 2=(2i+1)λf 式(2)
ここで、riは、リングパターン内のそれぞれの回折ゾーンの半径距離を表しており、iは、ゾーン番号を表しており(i=0は、中心ゾーンを表している)、λは、設計波長を表しており、fは、付加能力を表している。
図6に示されているように、鋸歯形状は、階段高さ26という特徴を具備している。この二重焦点回折パターンのそれぞれのゾーン境界における階段高さ26は、次の式(3)によって定義可能である。
階段高さ=(λ/(α(n2−n1)))fapodize 式(3)
ここで、λは、設計波長(例えば、550nm)を表しており、αは、様々な次数と関連した回折効率を制御するべく調節可能なパラメータを表しており(例えば、αは、2となるように選択可能である)、n2は、オプティクスの屈折率を表しており、n1は、レンズがその内部に配置される媒質の屈折率を示しており(取り囲んでいる媒質が1.336の屈折率を具備した眼房水である実施例においては、オプティクスの屈折率(n2)は、1.55になるように選択可能である)、fapodizeは、スケーリング関数を表しており、これは、光軸とレンズの前方表面との交点からの増大する半径距離の関数としてその値が減少している。
一例として、スケーリング関数fapodizeは、次の式(4)によって定義可能である。
apodize=1−(ri/rout 式(4)
この場合に、riは、i番目のゾーンの半径距離を表しており、routは、最後の二重焦点屈折ゾーンの外部半径を示している。なお、近焦点光エネルギーに対するニーズが高い実施例においては、スケーリング関数fapodizeに対して、その他の値を割り当て可能である。例えば、fapodizeは、1.0の定数であってよい。
前述の式によって提供される階段高さ26は、1例に過ぎず、その他の階段高さを利用することも可能である。
近見視力の合焦能力は、回折ゾーン構造24によって提供されており、遠見視力の合焦能力は、回折ゾーン構造24の外の領域28と回折ゾーン構造24によって提供されている。AMD及び低視力患者のための最適な中間焦点に対するニーズが存在している場合には、大きな付加能力値による低視力の補助に使用するべく、3焦点スタイルの多焦点レンズを適用することも可能である。
本発明者らによって予想されているように、米国特許第5,217,489号に開示されているものなどの屈折多焦点レンズは、更に高い付加能力及び遠見焦点及び近見焦点における改善された光エネルギーの凝縮が要求された際に変更可能である。本発明は、米国特許第5,217,489号に開示されているものと同程度の回折性及び屈折性を有する(但し、これよりも大きな回折性及び屈折性を有している)個別の焦点を有する二重焦点又は多焦点レンズを具備してはいるが、米国特許6,432,246B1号の方式におけるプログレッシブ多焦点レンズを利用してはいない。
次に、図8の(a)及び(b)を参照すれば、画像30を機能可能な網膜32に対して偏向させることによって視野内において暗点を回避する概念を示す更なる実施例が示されている。眼内レンズ34は、図示のように偏向を実現するべく構成されており、これは、AMDを有する患者及び黄斑移動手術を受けた患者などの低視力患者にとって有用である。
黄斑移動手術は、微細視力を担当している網膜の領域(黄斑)を病的な下層(網膜色素上皮及び脈絡膜)から移動させるべく設計された外科的技法である。黄斑は、これらの下層組織が健全である領域に移動される。この結果、中心視力を害することなしに、例えば、レーザー治療により、病気の血管の安全な治療(脈絡膜の新血管形成(CNV))を実行可能である。
黄斑移動手術を受けた患者の場合には、正常な視野方向が、もはや、その黄斑とアライメントされた状態にはない。この結果、黄斑移動治療が施された眼は、「内斜視」又は「外斜視」などの望ましくない「斜視」の外観を有している可能性があろう。更には、両方の眼に黄斑移動手術による治療を受けた患者の場合には、意図する視力機能に対する悪影響が存在する可能性もあろう。例えば、よく見るためには、左目を見上げる必要があり、且つ、よく見るためには、右目を見下げる必要がある場合には、このような両眼の眼の動きは非常に困難であることから、患者は、これを実行不能である。網膜における画像の場所をリダイレクトするこの実施例によれば、視野方向を新しい黄斑の場所に対して再配置することにより、「斜視」の外観を軽減又は矯正可能である。これは、両眼の黄斑を移動した場合に、更に有用であろう。
両眼の黄斑を移動した場合には、本発明によるこの実施例は、両眼の加算を実現可能であり、これは、単眼視力よりも少なくとも40%だけ更に効果的である。この実施例のIOLを調節することにより、ペアをなしている眼の網膜の画像場所のシフト量を変更可能である。この結果、最良の神経機能を有する網膜の部分を利用可能である。神経の学習及び適合により、視覚経路が再構築され、更に良好な視力のために画像融合が形成される。
画像のリダイレクションを実現する本発明のこの実施例のオプティクスは、回折オプティクスに基づいており、この結果、このIOLを厚くする必要性がなく、且つ、埋植のための大きな切開も不要である。この回折オプティクスは、中心からずれた回折性の単一焦点オプティクスとして設計可能であり、中心を有するIOL上の非対称な回折リングとしての外観を具備可能であろう。視野方向が新しい機能可能なエリアに対してリダイレクトされており、且つ、このエリア内の網膜受容体の密度が低く、離隔が大きい場合には、図8(a)及び(b)の実施例の回折オプティクスは、良好且つ適切な光学画像を提供可能である。好ましくは、この実施例によって提供される網膜画像は、受容体によって適切に分解可能であるものを上回っておらず、従って、エイリアシングが回避される。エイリアシングは、患者に対して誤った移動方向を提供可能な偽りの画像信号を構成する。
図8(a)及び(b)の実施例を図2〜図4及び図6〜図7の実施例と組み合わせることにより、それぞれの特徴を提供可能である。即ち、レンズオプティクスは、適切な表面変調を有する図6〜図7に例示されているものなどの回折ゾーン構造を具備することにより、少なくとも6ジオプトリーの付加能力を提供し、且つ、図8(a)及び(b)の方式における回折オプティクスに基づいて画像を機能可能な網膜に向かって偏向又はリダイレクトすることにより、視野内の暗点を回避するべく構成されている。この結果、AMD患者は、物体を見るためにそっぽを向く必要性なしに、その物体の方向において見ることにより、それらを観察可能である。更には、このような眼内レンズを図2〜図4に示されている位置のいずれかに埋植することにより、物体の方向を見ている際に物体を観察する能力を改善可能である。
好ましくは、回折ゾーン構造24は、同一のレンズ材料から構成されており、且つ、均一な材料組成を有している。
AMDを有する患者を治療するべく、開示されている実施例のいずれかをAMD薬の投与と関連して使用することにより、AMDの更なる進行を停止又は遅延させることが可能である。AMD薬は、進行した黄斑変性症の治療のための眼科薬学的な準備作業であってよい。
以上の説明及び図面は、本発明の好適な実施例を示すものではあるが、本発明の範囲を逸脱することなしに、様々な変更及び変形を実施可能であることを理解されたい。
鼻側網膜内における偏心距離の関数として視力を示している従来のグラフィカルな図である。 本発明の一実施例による溝固定IOLキャリア上の二重焦点/多焦点IOLの概略図である。 本発明の更なる実施例による包袋内の二重焦点/多焦点IOLの概略図である。 本発明の別の実施例による前眼房又は溝内の二重焦点/多焦点IOLと、包袋内のIOLの概略図である。 様々な視力の尺度の従来の図であり、それらの間の関係を示している。 本発明の一実施例における鋸歯表面変調を有する回折多焦点レンズの概略正面図である。 図6の実施例の平面図であり、リング回折ゾーン構造を示している。 (a)は本発明の一実施例による眼内埋植物を有する眼の概略側面図、(b)は図(a)の眼内埋植物を有する眼の概略正面図である。

Claims (31)

  1. 1つは近見視力の能力であり、他方は遠見視力の能力である少なくとも2つの拡大能力を提供するオプティクスを有する眼内レンズにおいて、
    前記オプティクスは、前記オプティクスの前記近見視力の合焦能力が前記遠見視力の合焦能力を上回る程度を有する付加能力を生成するための光の干渉を実現するべく構成された回折ゾーン構造内の複数の表面変調を具備しており、
    前記回折ゾーン構造は、6ジオプトリーを上回るように前記付加能力を提供し、且つ、それぞれが前記複数の表面変調の少なくとも1つを有する互いに半径方向に離隔した複数の回折ゾーンを具備しており、
    前記回折ゾーン構造は、次式に従って前記付加能力の関数として定義されており、
    i 2=(2i+1)λf
    この場合に、riは、前記回折ゾーンのそれぞれの半径距離を表しており、iは、ゾーン番号であって、この場合に、i=0によって中心ゾーンを表しており、λは、設計波長を表しており、fは、付加能力を表している眼内レンズ。
  2. 前記オプティクスは、二重焦点又は多焦点のいずれかである請求項1記載のレンズ。
  3. 前記レンズは、溝固定されるように構築されている請求項1記載のレンズ。
  4. 前記レンズは、包袋内に埋植されるように構築されている請求項1記載のレンズ。
  5. 前記レンズは、溝固定されるように構築されている請求項2記載のレンズ。
  6. 前記レンズは、前眼房内に埋植されるように構築されている請求項1記載のレンズ。
  7. 前記表面変調は、鋸歯構成である請求項1記載のレンズ。
  8. 前記鋸歯構成は、(λ/(α(n2−n1)))fapodizeに等しい階段高さを具備しており、この場合に、λは、前記設計波長を表しており、αは、様々な次数と関連した回折効率を制御するべく調節可能なパラメータを表しており、n2は、前記オプティクスの屈折率を表しており、n1は、前記レンズオプティクスがその内部に配置される媒質の屈折率を表しており、fapodizeは、スケーリング関数を表しており、この値は、光学軸と前記レンズオプティクスの前方表面の交点からの増大する半径距離の関数として減少している請求項7記載のレンズ。
  9. 前記スケーリング関数fapodizeは、次式によるものであり、
    apodize=1−(ri/rout3
    この場合に、riは、i番目のゾーンの半径距離を表しており、routは、最後の回折ゾーンの外部半径を表している請求項8記載のレンズ。
  10. 前記fapodizeの値は1であり、αの値は2である請求項9記載のレンズ。
  11. 前記回折ゾーン構造は、異なる直径の一連のリング構成に似るように形成されている請求項9記載のレンズ。
  12. 前記回折ゾーン構造は、視野方向を機能可能な網膜とアライメントするべく、画像を中心からずれたところに導くように更に構成されている請求項1記載のレンズ。
  13. 前記オプティクスは、少なくとも2つの拡大を伴う能力に起因して望遠性を有しており、前記望遠オプティクスを非望遠オプティクスと光学的にアライメントする段階を更に有し、前記非望遠オプティクスは、複数の拡大能力を欠いている請求項1記載のレンズ。
  14. 加齢黄斑変性症(AMD)の影響を受けた視力を改善する方法において、
    1つは近見視力の能力であり、他方は遠見視力の能力である少なくとも2つの拡大能力を提供するオプティクスを有する眼内レンズを埋植する段階であって、前記オプティクスは、前記眼内レンズの前記近見視力の合焦能力が前記遠見視力の合焦能力を上回る程度を有する付加能力を生成するための光の干渉を実現するべく構成された回折ゾーン構造内の複数の表面変調を更に具備しており、前記回折ゾーン構造は、6ジオプトリーを上回る前記付加能力を提供し、且つ、それぞれが前記複数の表面変調の少なくとも1つを有する互いに半径方向に離隔した複数の回折ゾーンを具備しており、前記回折ゾーン構造は、次式に従って前記付加能力の関数として定義されており、
    i 2=(2i+1)λf
    この場合に、riは、前記回折ゾーンのそれぞれの半径距離を表しており、iは、ゾーン番号であって、この場合に、i=0によって中心ゾーンを表しており、λは、設計波長を表しており、fは、付加能力を表している、段階、
    を有する方法。
  15. 二重焦点又は多焦点のいずれかになるように前記オプティクスを形成する段階を更に有する請求項14記載の方法。
  16. 前記埋植段階は、前記眼内レンズオプティクスを溝内に固定する段階を含む請求項14記載の方法。
  17. 前記埋植段階は、前記眼内レンズを包袋内に固定する段階を含む請求項14記載の方法。
  18. 前記埋植段階は、前記眼内レンズを溝内に固定する段階を更に含む請求項15記載の方法。
  19. 前記埋植段階は、前記眼内レンズを前眼房内に固定する段階を更に含む請求項15記載の方法。
  20. 鋸歯構成を有するように前記表面変調を構成する段階を更に有する請求項14記載の方法。
  21. 前記構成段階は、(λ/(α(n2−n1)))fapodizeに等しい階段高さを有する鋸歯構成を提供する段階を含んでおり、この場合に、λは、前記設計波長を表しており、αは、様々な次数と関連した回折効率を制御するべく調節可能なパラメータを表しており、n2は、前記オプティクスの屈折率を表しており、n1は、前記レンズオプティクスがその内部に配置される媒質の屈折率を表しており、fapodizeは、スケーリング関数を表しており、この値は、光学軸と前記レンズオプティクスの前方表面の交点からの増大する半径距離の関数として減少している請求項20記載の方法。
  22. 前記スケーリング関数fapodizeは、次式によるものであり、
    apodize=1−(ri/rout3
    この場合に、riは、i番目のゾーンの半径距離を表しており、routは、最後の回折ゾーンの外部半径を表している請求項21記載の方法。
  23. 前記fapodizeの値は1であり、αの値は2である請求項22記載の方法。
  24. 異なる直径の一連のリング構成に似るように前記回折ゾーン構造を構成する段階を更に有する請求項14記載の方法。
  25. 視野方向を機能可能な網膜とアライメントするべく、画像を中心からずれたところに導くように前記回折ゾーン構造を構成する段階を更に有する請求項14記載の方法。
  26. 前記オプティクスは、望遠光学システムを形成している請求項14記載の方法。
  27. 黄斑移動手術を実行する段階を更に有する請求項14記載の方法。
  28. 前記埋植段階の後の時点においてAMDの更なる進行を少なくとも遅延させるのに適した眼科薬学的に有効な薬剤を投与する段階を更に有する請求項14記載の方法。
  29. 前記投与段階は、AMDの更なる進行を停止させるのに適した前記眼科薬学的に有効な薬剤を投与する段階を含む請求項28記載の方法。
  30. 1つは近見視力の能力であり、他方は遠見視力の能力である少なくとも2つの拡大能力を提供するオプティクスを有する眼内レンズにおいて、
    前記オプティクスは、前記オプティクスの前記近見視力の合焦能力が前記遠見視力の合焦能力を上回る程度を有する付加能力を実現するべく構成された複数の表面変調を具備しており、
    前記表面変調は、6ジオプトリーを上回るように前記付加能力を提供し、且つ、互いに半径方向に離隔した複数のゾーンを具備している眼内レンズ。
  31. 加齢黄斑変性症(AMD)の影響を受けた視力を改善する方法において、
    1つは近見視力の能力であり、他方は遠見視力の能力である少なくとも2つの拡大能力を提供するオプティクスを有する眼内レンズを埋植する段階であって、前記オプティクスは、前記眼内レンズの前記近見視力の合焦能力が前記遠見視力の合焦能力を上回る程度を有する付加能力を生成するための光の干渉を実現するべく構成された複数の表面変調を具備しており、前記表面変調は、6ジオプトリーを上回る前記付加能力を提供し、且つ、互いに半径方向に離隔した複数のゾーンを具備している、段階、
    を有する方法。
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