JP2007215479A - リジェクトから糖類を製造する方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】
製紙スラッジよりも不純物の含有量が少ない原料、つまり安価かつ安定に供給可能であり、リグニン含量および不純物量が低く、かつセルロース含量が高い原料からセルラーゼを利用して糖類を得ることができる製造方法の確立が課題である。
【解決手段】
上記課題に基づいて鋭意研究を行った結果、リグノセルロース材料を蒸解して得られる化学パルプの製造時に、パルプの精選工程において発生するリジェクトを採取し、これにセルラーゼを加えて加水分解を行う糖類の製造方法が、上記の課題を解決することを見出した。また、上記のリグノセルロース材料が木材であること、上記のリジェクトが、パルプ精選工程におけるリジェクトのテールであることが上記の課題を解決することを見出した。
【選択図】図1
製紙スラッジよりも不純物の含有量が少ない原料、つまり安価かつ安定に供給可能であり、リグニン含量および不純物量が低く、かつセルロース含量が高い原料からセルラーゼを利用して糖類を得ることができる製造方法の確立が課題である。
【解決手段】
上記課題に基づいて鋭意研究を行った結果、リグノセルロース材料を蒸解して得られる化学パルプの製造時に、パルプの精選工程において発生するリジェクトを採取し、これにセルラーゼを加えて加水分解を行う糖類の製造方法が、上記の課題を解決することを見出した。また、上記のリグノセルロース材料が木材であること、上記のリジェクトが、パルプ精選工程におけるリジェクトのテールであることが上記の課題を解決することを見出した。
【選択図】図1
Description
本発明は、バイオマスを原料とし、セルラーゼを用いて多糖類から糖類を安価に製造可能な方法に関する。
地球温暖化を防止するため、地球温暖化ガスの一つである二酸化炭素の削減の取り組みが、広く行われてきており、その一環として、カーボーンニュートラルであるバイオマスを原料にした、石油製品の代替品の生産が検討されている。その中でも、多糖類を加水分解することで得られるグルコースなどの糖類を出発物質にした有用物質の生産についての研究が多く行われている。(例えば、非特許文献1参照)
多糖類から糖類を得る方法の一つとして、酸を用いた加水分解法がある。例えば、濃硫酸を用いる方法は、185℃の水蒸気を用いた前加水分解処理によって、ヘミセルロースを分離回収し、次に、80%の硫酸を用いて、主加水分解を行う。その後、5-10%程度の希硫酸を用いて後加水分解を行うことで、グルコースを得るという方法である。(例えば非特許文献2 p.404〜408 参照)しかし、この方法はグルコースの二次分解が起きるため、グルコースの収率が低いことや、酸を高圧下で使用するために、耐酸耐圧の反応容器を必要とすることや、硫酸の回収をするためのコストが高くなるなどの問題点がある。
多糖類から糖類を得るためのもう一つの方法として、酵素を用いた加水分解法がある。その中でもセルラーゼを用いる方法が特に研究されている。この方法は、セルロースをセルラーゼで加水分解を行う方法であるが、グルコースの二次分解が生じないため、理論値通りの収率が得られる。反応条件が穏和であるために、耐酸耐圧の反応容器を必要としない。また、環境汚染の心配がない等の利点がある。(例えば非特許文献2 p.404〜408参照)セルラーゼは、セルロースのβ-1,4グリコシド結合を加水分解する酵素の総称であり、エンドグルカナーゼ(EC.3.2.1.4)、セロビオハイドロラーゼ(EC3.2.1.91)及びベータグルコシダーゼ(EC.3.2.1.21)からなる。また、セルラーゼを生産する微生物は、細菌類や糸状菌など広範に亘っている。(例えば非特許文献2 p.300〜316参照)上記のように、酵素による加水分解法は、酸加水分解法と比べて利点があるものの、製造コストのさらなる削減が求められており、このため安価な原料が求められている。また、この原料は、リグニン含量が低く、それに加えてセルロース含有量が高い原料が求められている。リグニン含量が低い原料が好ましい理由としては、リグニンはセルロースを被覆して、セルラーゼの反応性を低くするため、リグニン含量が高いと、リグニンを除去するための前処理工程が必要となるためである。(例えば非特許文献2 p.404〜408 参照)また、セルロース含量が高い原料が求められている理由としては、糖類の生産性をあげるためである。例えば、原料中のセルロース含量が低いと、同量の糖類を得るための投入エネルギー(反応時間、反応回数、反応容器など)を大きくしなければいけないため、コストが増加してしまい、好ましくない。
リグニン含量が低く、セルロース含量が高い原料として、化学パルプに由来する紙類があるが、その中でも古紙等は原料として適しており、古紙を原料とした糖化や発酵の研究が行われている(例えば、特許文献1, 特許文献2 参照)。しかし、古紙は多くの場合、紙の原料として再利用されているため、糖化原料として使用することは好ましくない。このため、リグニンの少ないセルロース資源で、紙としての再生利用と競合しない原料が望まれている。
製紙スラッジは、製紙工程から発生するパルプを含む廃棄物であり、パルプ化工程、抄紙工程などで、スクリーン、クリーナーなどにより微細繊維や他の異物を除去する際にリジェクトとして排出される。通常パルプ繊維分を多く含むが、繊維が紙として利用するには微細であるとか異物との分離に手間がかかるなどの理由で、紙として利用されていない。これらのスラッジは排水中に廃棄され、クラリファイアなどの排水処理工程で回収され、通常は、脱水あるいは燃焼させてから、堆肥、土壌改良材、あるいはセメントの原料などとして利用されている。
この製紙スラッジに含まれるパルプを糖質原料として利用する検討が行われている。(例えば、特許文献3、非特許文献3、 非特許文献4 参照)。しかし、一般に製紙スラッジを原料として利用する場合には、クラリファイアなどで沈殿として回収された濃縮物が回収、利用が容易であり、通常スラッジと呼ぶ場合、この沈殿槽からの回収物を指すことが一般的である。しかしながらクラリファイアなどの排水処理設備は工場の境界から排出される直前に設置され、パルプ製造工程や抄紙工程から離れた部分に設置されることが多く、排水の経路上で雨水や複数の工程の排水が統合されて導入されるため、これらの排水に由来する砂、ほこりを多く含み、またこれら他の工程に由来するSS分、時には酸性、アルカリ性の排水の混入、また懸濁物の分離を促進させるために添加される凝集沈澱剤など、パルプ繊維以外の有機分や無機分が多く含まれる。従ってこれを原料として糖類を製造する場合には、糖化に先立ってあるいは糖化後の糖からこれらの異物を除去する操作が必要である。従って、製紙スラッジよりも異物の含有量が少ない原料が求められている。
古紙からグルコン酸を製造する方法(特開2005-278602号公報)
乳酸の製造方法(特開2002-238590号公報)
製紙スラッジから乳酸を生産する方法(特開2004-89177号公報)
バイオマスエネルギーの特性とエネルギー変換・利用技術(2002年,(株)NTS p.253〜312)
セルロースの事典(2000年, 朝倉書店, セルロース学会編), pp.300-316, p.404-408.
Evaluation of paper sludge for amenability to enzymatic hydrolysis and conversion to ethanol. Lee R. Lynd et al., p.50, Tappi Journal, 2001.
Conversion of paper sludge to ethanol in a semicontinuous solids-fed reactor., Zhiliang Fan et. al, 26, pp. 93-101, Bioprocess Biosyst. Eng., 2003.
Methods for measuring cellulase activities, Thomas M. Wood and K. Mahalingeshwara Bhat, vol. 160, p.92, Methods in Enzymology.
製紙スラッジよりも不純物の含有量が少ない原料、つまり安価かつ安定に供給可能であり、リグニン含量および不純物量が少なく、かつセルロース含量が高い原料からセルラーゼを利用して糖類を得ることができる製造方法の確立が課題である。
本発明者らは、上記課題に基づいて鋭意研究を行った結果、リグノセルロース材料を蒸解して得られる化学パルプの製造時に、パルプの精選工程において発生するリジェクトを直接採取し、これにセルラーゼを加えて加水分解を行った結果、リジェクト中の異物は糖化に影響が無く、糖化が他の古紙類、スラッジに比べて容易で使用する酵素が少なくて済み、かつ糖化率が高いために残渣が少なく、糖化後の糖類の回収工程で異物を容易に分離できることを見出し、本発明に至った。すなわち本発明は、リグノセルロース材料を蒸解して得られる化学パルプの製造時に、パルプの精選工程において発生するリジェクトを採取し、これにセルラーゼを加えて加水分解を行うことによる糖類の製造方法に関する。また本発明はリグノセルロース材料が、木材である上記の糖類の製造方法に関する。更に上記のリジェクトが、パルプ精選工程におけるリジェクトのテールである糖類の製造方法に関する。
またリジェクトを他の一般排水と混ぜることなく直接的に採取し、そのまま、あるいはパルプ分を脱水した後に、反応容器に投入する上記の糖類の製造方法に関する。またこの際に凝集沈澱処理を行わずに直接採取し、そのまま、あるいはフィルターによりパルプ分を集めた後に、反応容器に投入する上記の糖類の製造方法に関する。
またリジェクトを他の一般排水と混ぜることなく直接的に採取し、そのまま、あるいはパルプ分を脱水した後に、反応容器に投入する上記の糖類の製造方法に関する。またこの際に凝集沈澱処理を行わずに直接採取し、そのまま、あるいはフィルターによりパルプ分を集めた後に、反応容器に投入する上記の糖類の製造方法に関する。
本発明により、糖化原料として良質なリグノセルロース材料を未利用の資源から安定に供給可能であり、不純物の少ない糖類を安価に生産することができた。
本発明に用いられるリグノセルロース材料としては、パルプの原料となるものであれば、どのようなものでも良く、木材、ケナフ、マニラ麻、タケ、バガス、麦わら、コットンリンター、アシ、亜麻、楮または三椏のいずれでも用いることができる。また、これらの材が、単独に使用されても複数の種類を使用しても良い。リグノセルロース材料としては、例えば、マツ、スギ、モミ、トウヒ、ダグラスファーまたはラジアータパイン等の針葉樹や、ブナ、カバ、ハンノキ、カエデ、ユーカリ、ポプラ、アカシア、ラワン、アスペンまたはゴム等の広葉樹の木材をあげることができる。
本発明で用いられる化学パルプは、化学的に脱リグニンを行う方法であれば、どのような方法でもよく、例えば、「紙パルプ製造技術シリーズ(1)クラフトパルプ」(紙パルプ技術協会編)に記載のアルカリパルプ法、サルファイトパルプ法またはクラフトパルプ法などを用いることができる。また、例えば「パルプの洗浄・精選・漂白」(紙パルプ技術協会編)に記載の酸素、オゾン、塩素、二酸化塩素、アルカリ抽出、次亜塩素酸、過酸化物、亜硫酸またはハイドロサルファイトを用いた漂白工程を用いることができる。一方サーモメカニカルパルプまたはメカニカルパルプなどの機械パルプや、機械パルプを含む古紙パルプはリグニンを含むため、好ましくない。
本発明におけるパルプの精選工程とは、蒸解後洗浄工程を経たパルプ繊維スラリーから製紙原料として好ましくない異物を除去する工程をさし、例えば形状、比重、固さなどの違いを利用して異物を除去する工程のことをさす。精選工程で使用される装置としては、良質パルプと異物を分離するものであれば、どのような装置でもよく、例えば、振動スクリーン、密閉加圧式スクリーン、遠心力型スクリーンまたは渦流クリーナーがあげられる。また、これらのスクリーンとクリーナーを、例えば「パルプの洗浄・精選・漂白」(紙パルプ技術協会編)に書かれているような多段方式、多重方式またはカスケード方式を用いて組み合わせて使用することもできる。
パルプの精選工程では、アクセプトパルプとリジェクトに分けられるが、スクリーンやクリーナーのリジェクトは、パルプ分を多く含むため、再度スクリーン、クリーナー処理を繰り返して、できる限り良質のパルプ分を回収している。しかしながら、それでもリジェクトにパルプが多く含まれている。
本発明におけるリジェクトのテールとは、複数のスクリーンやクリーナーなどを組み合わせたパルプの精製工程を行った際、その工程の最も後に発生するリジェクトのことを指す。このリジェクトのテールは、通常製品のチリとなる異物を含むため、古紙を原料として使用しない工場では、排水処理工程において、単純沈澱、あるいは凝集沈澱により回収される。この汚泥は、通常スラッジと呼ばれている。
本発明におけるリジェクトあるいはリジェクトのテールは、その排出口から直接接取し、糖化反応に用いる。また、採取したパルプは、そのまま糖化反応に供するか、あるいはエキストラクタ、シックナまたはプレス脱水等により脱水して、糖化反応に供することができる。また、本発明におけるセルラーゼ反応時のリジェクトあるいはリジェクトのテールの濃度は、高ければ生産される糖濃度も高くなるため好ましく、糖化槽で撹拌できる濃度であればいずれでも良い。リジェクトあるいはリジェクトのテールの濃度としては、バッチ式糖化においては、15質量%以下であるのが好ましく、連続式糖化においては、特に制限はない。
リジェクトあるいはリジェクトのテールにセルラーゼを加えて加水分解をさせる反応容器は、使用する酵素の最適条件にあったpH、温度に保つことができるものが好ましく、撹拌装置を具備するものが好ましい。反応容器には、リジェクトあるいはリジェクトのテールの添加装置と、反応後の糖類を含む溶液を回収できる装置を有していることが望ましい。また、反応容器が限外ろ過膜を有し、限外ろ過膜で反応液を処理することで、セルラーゼを反応容器内に保持しつつ、連続的に反応容器の外で糖類を回収できる装置も使用することができる。
本発明におけるリジェクトあるいはリジェクトのテールを所望する濃度に希釈するために添加する溶媒は、セルラーゼ反応を妨げるものや、反応後の精製を困難にする無機分やパルプ以外の有機分を多量に含まなければ、どのようなものでも使用できる。また、溶媒中にセルラーゼが含まれていても良い。
本発明におけるリジェクトあるいはリジェクトのテールの糖化反応容器への添加方法は、どのような方法でも構わないが、リジェクトあるいはリジェクトのテールを分散させた溶液を連続的に、あるいは非連続的に添加することができる。また、乾燥や脱水したリジェクトあるいはリジェクトのテールを連続的に、あるいは非連続的に添加することができる。
本発明におけるリジェクトあるいはリジェクトのテール中には、無機分やリジェクトあるいはリジェクトのテールのパルプ繊維以外の有機分が含まれてもよく、例えば、蒸解工程や漂白工程で添加される薬品類、原料であるリグノセルロースに由来する成分、原料であるリグノセルロースと薬品との反応物が含まれていてもよい。しかし、反応容器中に残留する不純物の除去に要する分画手段、また反応後の溶液中から、不純物を除去する工程を簡便にするためのコストを低くするために、不純物の存在比率は、少ない方が好ましい。不純物の定量は、例えば、反応後の溶液をろ紙を用いて、ろ過を行った後、Tappi法(T213 om-85)に従って夾雑物の大きさと数により測定することができる。
本発明におけるリジェクトあるいはリジェクトのテール中の多糖類の割合は、高反応後の糖濃度を高くするためには、高い方が好ましい。絶乾リジェクトあるいはリジェクトのテールに含まれる多糖類の含量は、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上である。
本発明に使用するセルラーゼは特に限定されないが、リジェクトあるいはリジェクトのテールの状況に応じて、それぞれのpHおよび温度条件に適した条件で作用するセルラーゼを選択するのが良い。例えば、反応溶液がpH4から5の酸性領域では、トリコデルマ(Trichoderma)属、アクレモニウム属(Acremonium)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ファネロケエテ(Phanerochaete)属またはトラメテス属(Trametes)などの由来のセルラーゼ製剤を使用することができ、pH6から7の中性域では、フーミコラ(Humicola)属等由来のセルラーゼを使用することができ、pH8以上のアルカリ域では、バチルス(Bacillus)属等の由来のセルラーゼ製剤を使用することができる。リジェクトあるいはリジェクトのテールの反応に使用するセルラーゼの種類は特に限定されず、通常の微生物の培養によって得たセルラーゼを用いることもできるし、市販のセルラーゼを用いることもできる。セルラーゼの添加量は、所望の時間使用する酵素の特性を勘案して、適量を加える。例えばトリコデルマ属由来の市販酵素の場合、濾紙崩壊活性で、0.01〜300単位のセルラーゼ、より好ましくは1〜300単位のセルラーゼを添加し、40〜60℃、より好ましくは50℃で糖化し、加水分解により生じたグルコースを分離、採取する。また、セルラーゼには、ポリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリビニルピロリドン、テトラヒドロフリルアルコール、グリセリンや水を含んでもよい。また、上記微生物を培養した際に生産される酵素や代謝産物、例えばセルラーゼ以外のヘミセルラーゼや、リグニン分解酵素などの酵素やタンパク質、あるいは有機酸などを含んでいても良い。
本発明における反応時のpHは、使用するセルラーゼが作用する範囲であれば、どのようなpHであっても良いが、所望するpHへの調製は、酸を用いる場合であれば、例えば硫酸、リン酸、塩酸、炭酸または有機酸などを添加することで調製することができる。また、アルカリを用いる場合であれば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウムなどを添加することで、所望するpHに調製して使用することができる。また、緩衝液を使用することで、所望とするpHに調製することができる。
本発明における反応温度は、使用するセルラーゼが作用する範囲であれば、どのような温度でも構わないが、5〜80℃が好ましい。
本発明における反応時間は、反応に使用するセルラーゼの種類、pH、反応温度、リジェクトあるいはリジェクトのテール濃度などの条件によるが、ある時点における糖化率が、それ以上の反応を行っても増加しない状態にまで、反応を行うことが望ましい。例えば、市販セルラーゼであるトリコデルマ由来のセルラーゼを、リジェクトの乾燥質量に対して1〜50質量%、pH4.0〜5.5、反応温度40〜60℃、リジェクト濃度1〜5質量%で攪拌下で反応を行ったところ、5〜20時間で90〜100%糖化されればよい。
本発明における反応後の溶液は、糖類以外の不純物を除去しない状態でも使用できるが、反応後の溶液を精製し、さらに純度の高い糖を作製することができる。反応液の精製に使用できる装置としては、上記のパルプの精製工程に使用する装置を単独で、あるいは組み合わせて使用することができる。また、エキストラクタ、シックナまたはプレス脱水機も使用することができる。また、遠心分離、イオン交換、限外ろ過または逆浸透膜などの方法を用いて反応後の糖類の精製を行うことができる。
以上に記述した条件で、リジェクトあるいはリジェクトのテールを原料として糖化反応を行い、製紙スラッジの糖化反応と比較検討したところ、リジェクトあるいは、リジェクトのテールを原料とした方が不純物がより少なく、また生成する糖の量も多く、糖化の原料として優れていることが明らかになった。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、もちろん本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、実施例1と比較例1の成分量を表1に、反応後の残渣重量量ならびに夾雑物量を表2に示す。
(実施例1)<リジェクトからの糖類の生産>
国内産広葉樹チップ70%、ユーカリ材30%からなる混合広葉樹チップを原料として、クラフトパルプを製造している工場より、白色度85のパルプを生産する際に、精選スクリーンで発生したリジェクトを採取した。リジェクト中の水分量の測定は、Japan Tappi紙パルプ試験方法No.56に従った。この結果、リジェクト中の水分量は、73.8%であった。また、リジェクト中に含まれる灰分量の測定は、Tappi法(T211 om-85)に従って測定した。この結果、絶乾リジェクト中の灰分量は、11.1%であった。また、リジェクト中のホロセルロース量の測定は、Japan Tappi 紙パルプ試験方法No.65 に従った。この結果、絶乾リジェクト中のホロセルロース量は、87.3%であった。また、リジェクト中のセルロース量は、Japan Tappi紙パルプ試験方法No.60に従った。この結果、絶乾リジェクト中のセルロース量は75.3%であった。リジェクト中のリグニン量は、Japan Tappi紙パルプ試験方法No.61に従って測定を行った。この結果、絶乾リジェクト中のリグニン量は0.1%であった。ホロセルロースが絶乾重量で100gにするために、リジェクトを有り姿で114.5g秤り取った。これに、1M 酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)を100mlと、最終重量が1000gになるように蒸留水を加え、標準離解機(熊谷理機工業(株)製)を用いて、離解を行った。離解後のリジェクト溶液は、5リッター容三角フラスコに移して、振とう培養機(高崎科学器械(株)製)を用いて、50℃、110rpmでプレインキュベーションを行った。20分後、リジェクト溶液の温度が、50℃に達したことを確認してから、セルラーゼGC220(ジェネンコア社製)を10g添加して、反応を開始した。サンプリングは、酵素添加直後と、5、24時間後に行った。三角フラスコから1mlマイクロチューブに分取し、100℃で10分間煮沸を行って酵素を失活させた。その後、13,000 rpm, 20分間、微量高速遠心機MX-301((株)トミー精工社製)を用いて遠心を行い、上清を非特許文献5に記載のフェノール-硫酸法を用いて全糖量の測定を行った。検量線の作製には、グルコースを用いた。リジェクトを反応させた際の全糖量の経時変化を図1に示す。この結果、5時間後にはリジェクト中のホロセルロースは全て加水分解されていることがわかった。24時間反応後の三角フラスコ中の反応液は、反応液と未反応物を分離するために、ブッフナー漏斗上においた乾燥重量を測定済の濾紙No.2(Advantec社製)を用いて、吸引ろ過を行った。吸引濾過後のろ紙は、105℃で恒量になるまで乾燥後、重量を測定することで残渣量を測定した。この結果残渣量は、13.9gであり、仕込んだリジェクト中に含まれる灰分量とほぼ同じであった。また、重量測定後のろ紙は、Tappi法(T213 om-85)に従って、パルプ中の夾雑物の測定を行った。この結果、夾雑物量は1.6 mm2/m2であった。
国内産広葉樹チップ70%、ユーカリ材30%からなる混合広葉樹チップを原料として、クラフトパルプを製造している工場より、白色度85のパルプを生産する際に、精選スクリーンで発生したリジェクトを採取した。リジェクト中の水分量の測定は、Japan Tappi紙パルプ試験方法No.56に従った。この結果、リジェクト中の水分量は、73.8%であった。また、リジェクト中に含まれる灰分量の測定は、Tappi法(T211 om-85)に従って測定した。この結果、絶乾リジェクト中の灰分量は、11.1%であった。また、リジェクト中のホロセルロース量の測定は、Japan Tappi 紙パルプ試験方法No.65 に従った。この結果、絶乾リジェクト中のホロセルロース量は、87.3%であった。また、リジェクト中のセルロース量は、Japan Tappi紙パルプ試験方法No.60に従った。この結果、絶乾リジェクト中のセルロース量は75.3%であった。リジェクト中のリグニン量は、Japan Tappi紙パルプ試験方法No.61に従って測定を行った。この結果、絶乾リジェクト中のリグニン量は0.1%であった。ホロセルロースが絶乾重量で100gにするために、リジェクトを有り姿で114.5g秤り取った。これに、1M 酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)を100mlと、最終重量が1000gになるように蒸留水を加え、標準離解機(熊谷理機工業(株)製)を用いて、離解を行った。離解後のリジェクト溶液は、5リッター容三角フラスコに移して、振とう培養機(高崎科学器械(株)製)を用いて、50℃、110rpmでプレインキュベーションを行った。20分後、リジェクト溶液の温度が、50℃に達したことを確認してから、セルラーゼGC220(ジェネンコア社製)を10g添加して、反応を開始した。サンプリングは、酵素添加直後と、5、24時間後に行った。三角フラスコから1mlマイクロチューブに分取し、100℃で10分間煮沸を行って酵素を失活させた。その後、13,000 rpm, 20分間、微量高速遠心機MX-301((株)トミー精工社製)を用いて遠心を行い、上清を非特許文献5に記載のフェノール-硫酸法を用いて全糖量の測定を行った。検量線の作製には、グルコースを用いた。リジェクトを反応させた際の全糖量の経時変化を図1に示す。この結果、5時間後にはリジェクト中のホロセルロースは全て加水分解されていることがわかった。24時間反応後の三角フラスコ中の反応液は、反応液と未反応物を分離するために、ブッフナー漏斗上においた乾燥重量を測定済の濾紙No.2(Advantec社製)を用いて、吸引ろ過を行った。吸引濾過後のろ紙は、105℃で恒量になるまで乾燥後、重量を測定することで残渣量を測定した。この結果残渣量は、13.9gであり、仕込んだリジェクト中に含まれる灰分量とほぼ同じであった。また、重量測定後のろ紙は、Tappi法(T213 om-85)に従って、パルプ中の夾雑物の測定を行った。この結果、夾雑物量は1.6 mm2/m2であった。
(比較例1)<ペーパースラッジから糖類の製造>
原料には、実施例1のリジェクトの代わりに、実施例1のリジェクトを得た工場の漂白排水を、凝集沈澱処理したクラリファイアより得たペーパースラッジを用いた。原料以外は、実施例1と同様に行った。この結果、ペーパースラッジの水分量は、72.0%であった。また、絶乾ペーパースラッジに対する灰分量は32.3%、ホロセルロース量は39.5%、セルロース量は25.6%、リグニン量は12%であった。実施例1と比較例1の成分の比較を表1に示すが、原料として好ましくない灰分量は、比較例1は約3倍高く、リグニン量は約120倍高かった。一方、原料として好ましいホロセルロースの含有量は、比較例1では実施例1の半分以下であった。また、セルロース量においても、比較例1は、実施例1の約30%であった。また、ペーパースラッジの全糖量の経時変化を図1に示す。実施例1と比較例1は共に同じ量のホロセルロースを反応に用いたが、比較例1の生成糖量は、実施例1の生成糖量の50%以下であった。また、残渣量は110.5gであり、実施例1と比べると約10倍量多く原料として好ましくなかった。夾雑物量は1528 mm2/m2であった。この量は、実施例1と比べると、約1000倍高く原料として好ましくなかった。
原料には、実施例1のリジェクトの代わりに、実施例1のリジェクトを得た工場の漂白排水を、凝集沈澱処理したクラリファイアより得たペーパースラッジを用いた。原料以外は、実施例1と同様に行った。この結果、ペーパースラッジの水分量は、72.0%であった。また、絶乾ペーパースラッジに対する灰分量は32.3%、ホロセルロース量は39.5%、セルロース量は25.6%、リグニン量は12%であった。実施例1と比較例1の成分の比較を表1に示すが、原料として好ましくない灰分量は、比較例1は約3倍高く、リグニン量は約120倍高かった。一方、原料として好ましいホロセルロースの含有量は、比較例1では実施例1の半分以下であった。また、セルロース量においても、比較例1は、実施例1の約30%であった。また、ペーパースラッジの全糖量の経時変化を図1に示す。実施例1と比較例1は共に同じ量のホロセルロースを反応に用いたが、比較例1の生成糖量は、実施例1の生成糖量の50%以下であった。また、残渣量は110.5gであり、実施例1と比べると約10倍量多く原料として好ましくなかった。夾雑物量は1528 mm2/m2であった。この量は、実施例1と比べると、約1000倍高く原料として好ましくなかった。
安価かつ安定に供給可能であり、リグニン含量および不純物含量が低く、かつセルロース含量が高い原料であり、通常廃棄されている化学パルプ製造工程のパルプ精選工程により発生するリジェクトを原料としたセルラーゼの加水分解反応により、不純物の少ない糖類を安価に生産することができる。
Claims (5)
- リグノセルロース材料を蒸解して得られる化学パルプの製造時に、パルプの精選工程において発生するリジェクトを採取し、これにセルラーゼを加えて加水分解を行うことを特徴とする糖類の製造方法。
- リグノセルロース材料が、木材である請求項1記載の糖類の製造方法。
- 請求項1、あるいは請求項2記載のリジェクトが、パルプ精選工程におけるリジェクトのテールである糖類の製造方法。
- リジェクトを含む排水を他の一般排水と混ぜることなく直接的に採取し、そのまま、あるいはパルプ分を脱水した後に、加水分解を行う請求項1〜3記載の糖類の製造方法。
- リジェクトを含む排水を他の一般排水と混ぜることなく、かつ凝集沈澱処理を行わず直接採取し、そのまま、あるいはフィルターによりパルプ分を集めた後に、加水分解を行う請求項1〜4記載の糖類の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2009232747A (ja) * | 2008-03-27 | 2009-10-15 | National Univ Corp Shizuoka Univ | ペーパースラッジ由来の水溶性糖類製造装置およびペーパースラッジ由来の水溶性糖類製造方法 |
CN108048504A (zh) * | 2017-12-08 | 2018-05-18 | 福建省农业科学院果树研究所 | 一种辣木多糖的提取方法 |
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- 2006-02-16 JP JP2006039638A patent/JP2007215479A/ja active Pending
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