JP2007215471A - セルラーゼ部分配列を有する融合タンパク質 - Google Patents
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Abstract
【課題】分泌タンパク質の分泌を促進するタグペプチドを提供する。
【解決手段】バチルス・エスピー(Bacillus sp.)KSM-S237株(FERM BP-7875)由来のアルカリセルラーゼのC末端領域を分析し、高親水性領域を同定する。
【選択図】なし
【解決手段】バチルス・エスピー(Bacillus sp.)KSM-S237株(FERM BP-7875)由来のアルカリセルラーゼのC末端領域を分析し、高親水性領域を同定する。
【選択図】なし
Description
本発明は、例えば分泌タンパク質の分泌を促進するタグペプチドに関する。
従来より、検出や精製を容易にするために、目的のタンパク質に酵素タンパク質やタグペプチドを融合させた融合タンパク質の作製が行われている。
例えば、目的のタンパク質に融合させる酵素タンパク質として、グルタチオンS-トランスフェラーゼが知られている(特許文献1)。グルタチオンS-トランスフェラーゼは、薬物や内因性の種々の求核性化合物にグルタチオンを転移し、グルタチオン抱合を行う酵素である。グルタチオンS-トランスフェラーゼは、グルタチオンと高い特異性で結合することから、グルタチオンS-トランスフェラーゼを有する融合タンパク質のグルタチオンカラム等による精製を容易にする。
また、目的のタンパク質の分泌性を促進する目的で、シグナルペプチドやタグペプチドを目的のタンパク質に融合する方法が開示されている(特許文献2及び3)。
特許文献2には、例えば、1又は2つの負に荷電したアミノ酸残基を含むタグを用い、細菌細胞において目的のタンパク質の分泌性を促進することが開示されている。
特許文献3には、アミノ末端側にα-へリックスを形成しやすいアミノ酸配列を有し、且つカルボキシル末端側に宿主においてプロセシングが起こる前駆体タンパク質のリーダー配列のカルボキシル末端の配列を有するキメラリーダーペプチドを使用して、目的の成熟タンパク質を分泌させることが開示されている。
さらに、特許文献4には、チオレドキシン様タンパク質を目的のタンパク質の融合相手として使用することで目的のタンパク質の安定性や溶解性が改善されることが開示されている。
しかしながら、これまでに、分泌タンパク質の分泌を強力に促進するタグペプチドは知られていなかった。
本発明は、上述した実情に鑑み、分泌タンパク質の分泌を促進するタグペプチドを提供することを目的とする。
上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、バチルス・エスピー(Bacillus sp.)KSM-S237株(FERM BP-7875)由来のアルカリセルラーゼ(以下、「S237セルラーゼ」という)のC末端領域をタグペプチドとして使用することで、当該タグペプチドを融合させた分泌タンパク質の分泌が促進されることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は以下を包含する。
(1)以下の(a)〜(c)のいずれか1記載のタグペプチドをコードするDNA。
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、C末端より20〜41アミノ酸から成るタグペプチド
(b)上記(a)のタグペプチドのアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列から成り、且つ分泌タンパク質の分泌を促進するタグペプチド
(c)N末端に1〜9個のグリシンから成るグリシンリンカーを付加した上記(a)又は(b)のタグペプチド
(1)以下の(a)〜(c)のいずれか1記載のタグペプチドをコードするDNA。
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、C末端より20〜41アミノ酸から成るタグペプチド
(b)上記(a)のタグペプチドのアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列から成り、且つ分泌タンパク質の分泌を促進するタグペプチド
(c)N末端に1〜9個のグリシンから成るグリシンリンカーを付加した上記(a)又は(b)のタグペプチド
(2)上記(a)又は(b)のタグペプチドの全長におけるHoop & Woods の親水性・疎水性パラメータの平均値が、2.00以上であることを特徴とする、(1)記載のDNA。
(3)上記タグペプチドの等電点が9以上であることを特徴とする、(1)又は(2)記載のDNA。
(4)上記(b)のタグペプチドにおいて、置換又は付加されるアミノ酸が親水性アミノ酸であることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれか1記載のDNA。
(5)上記(b)のタグペプチドにおいて、置換又は付加されるアミノ酸が塩基性アミノ酸であることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれか1記載のDNA。
(6)(1)〜(5)のいずれか1記載のタグペプチドをコードするDNAが分泌タンパク質をコードするDNAの3'末端側に連結した、融合タンパク質をコードするDNA。
(7)以下の(a)〜(c)のいずれか1記載のタグペプチド。
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、C末端より20〜41アミノ酸から成るタグペプチド
(b)上記(a)のタグペプチドのアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列から成り、且つ分泌タンパク質の分泌を促進するタグペプチド
(c)N末端に1〜9個のグリシンから成るグリシンリンカーを付加した上記(a)又は(b)のタグペプチド
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、C末端より20〜41アミノ酸から成るタグペプチド
(b)上記(a)のタグペプチドのアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列から成り、且つ分泌タンパク質の分泌を促進するタグペプチド
(c)N末端に1〜9個のグリシンから成るグリシンリンカーを付加した上記(a)又は(b)のタグペプチド
(8)上記(a)又は(b)のタグペプチドの全長におけるHoop & Woods の親水性・疎水性パラメータの平均値が、2.00以上であることを特徴とする、(7)記載のタグペプチド。
(9)上記タグペプチドの等電点が9以上であることを特徴とする、(7)又は(8)記載のタグペプチド。
(10)上記(b)のタグペプチドにおいて、置換又は付加されるアミノ酸が親水性アミノ酸であることを特徴とする、(7)〜(9)のいずれか1記載のタグペプチド。
(11)上記(b)のタグペプチドにおいて、置換又は付加されるアミノ酸が塩基性アミノ酸であることを特徴とする、(7)〜(9)のいずれか1記載のタグペプチド。
(12)(7)〜(11)のいずれか1記載のタグペプチドが分泌タンパク質のC末端に融合した融合タンパク質。
本発明により、分泌タンパク質の分泌を促進することができるタグペプチドが提供される。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係るDNAは、以下の(a)〜(c)のいずれか1記載のタグペプチドをコードするDNAである。
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、C末端より20〜41アミノ酸から成るタグペプチド。
(b)上記(a)のタグペプチドのアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列から成り、且つ分泌タンパク質の分泌を促進するタグペプチド。
(c)N末端に1〜9個のグリシンから成るグリシンリンカーを付加した上記(a)又は(b)のタグペプチド。
本発明に係るDNAは、以下の(a)〜(c)のいずれか1記載のタグペプチドをコードするDNAである。
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、C末端より20〜41アミノ酸から成るタグペプチド。
(b)上記(a)のタグペプチドのアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列から成り、且つ分泌タンパク質の分泌を促進するタグペプチド。
(c)N末端に1〜9個のグリシンから成るグリシンリンカーを付加した上記(a)又は(b)のタグペプチド。
(a)に記載のタグペプチドをコードするDNAは、S237セルラーゼタンパク質(遺伝子配列:配列番号2、アミノ酸配列:配列番号3)のC末端より41アミノ酸残基(配列番号1に記載のアミノ酸配列)において、C末端より20〜41アミノ酸から成るタグペプチドをコードするDNAである。(a)に記載のタグペプチドをコードするDNAとしては、例えば、配列番号1に記載のアミノ酸配列、配列番号4に記載のアミノ酸配列(S237セルラーゼタンパク質のC末端より30アミノ酸残基)又は配列番号5に記載のアミノ酸配列(S237セルラーゼタンパク質のC末端より20アミノ酸残基)から成るタグペプチドをコードするDNAが挙げられる。また、(a)に記載のタグペプチドをコードするDNAは、例えば、S237セルラーゼタンパク質のC末端より31、32アミノ酸残基から成るタグペプチドをコードするDNAであってもよい。
(b)に記載のタグペプチドをコードするDNAは、上記(a)のタグペプチドのアミノ酸配列において1又は数個(例えば1〜10個、好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜3個)のアミノ酸が置換、欠失または付加されたアミノ酸配列からなり、且つ分泌タンパク質の分泌を促進するタグペプチドをコードするDNAである。特に、置換又は付加されるアミノ酸は、タグペプチドの親水性を維持又は高くするように、親水性アミノ酸(例えば、リシン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、トレオニン、アスパラギン、アルギニン、セリンなど)であることが好ましい。あるいは、置換又は付加されるアミノ酸は、タグペプチドの等電点を維持又は高くするように、塩基性アミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジンなど)であることが好ましい。なお、分泌促進とは、本発明に係るタグペプチドを有しない分泌タンパク質と比較して、本発明に係るタグペプチドと融合した分泌タンパク質が宿主において、有意に高い割合で細胞膜外又は細胞壁外に分泌されることを意味する。分泌促進を測定する方法としては、例えば、分泌タンパク質をコードする遺伝子及び本発明に係るタグペプチドと融合した分泌タンパク質をコードするDNAをそれぞれ宿主に導入し、発現させ、細胞外(例えば、培養上清)中の分泌タンパク質量を測定する方法が挙げられる。分泌タンパク質量の測定は、例えば、ウエスタンブロット分析、フローサイトメトリー分析等を用いて行うことができる。また、分泌タンパク質が酵素である場合には、細胞外中の分泌タンパク質の酵素活性に基づいて、分泌タンパク質量を決定することができる。
(c)に記載のタグペプチドをコードするDNAは、上記(a)又は(b)のタグペプチドのN末端に1〜9個のグリシンから成るグリシンリンカーを付加したものをコードするDNAである。当該グリシンリンカーがタグペプチドに含まれると、融合タンパク質において、分泌タンパク質のC末端にグリシンリンカーを介して上記(a)又は(b)のタグペプチドが融合されることとなる。(c)に記載のタグペプチドをコードするDNAとしては、例えば、配列番号6〜9に記載のアミノ酸配列(それぞれグリシン3、5、7、9個から成るグリシンリンカーとS237セルラーゼタンパク質のC末端より41アミノ酸残基とから成るタグペプチド)、配列番号10に記載のアミノ酸配列(グリシン5個から成るグリシンリンカーとS237セルラーゼタンパク質のC末端より30アミノ酸残基とから成るタグペプチド)又は配列番号11に記載のアミノ酸配列(グリシン5個から成るグリシンリンカーとS237セルラーゼタンパク質のC末端より20アミノ酸残基とから成るタグペプチド)をコードするDNAが挙げられる。なお、グリシンリンカーのグリシン数は、好ましくは1〜9個、特に好ましくは5〜7個である。
また、本発明に係るDNAには、上記(a)に記載のタグペプチドをコードするDNAと相補的な塩基配列から成るDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ分泌タンパク質の分泌を促進するタグペプチドをコードするDNAも含まれる。
ここで、ストリンジェントな条件とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成される条件をいう。より具体的にストリンジェントな条件は、例えば、ナトリウム濃度が300〜2000mM、好ましくは600〜900mMであり、温度が40〜75℃、好ましくは55〜65℃での条件をいう。
図1は、S237セルラーゼタンパク質に関する疎水性/親水性プロットを示す。図1に示す疎水性/親水性プロットは、Hoop & Woods の親水性・疎水性パラメータ(Proc Natl Acad Sci U S A. 1981 Jun;78(6):3824-8)に基づき計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Win(ソフトウェア開発)の親水性・疎水性表示(Hydrophilicity / hydrophobicity Plot)プログラムを用いて作成されている。また、プロットは、連続する10アミノ酸残基の平均で示されている。図1において、高親水性領域が楕円形で囲まれている。図1に示すように、疎水性/親水性プロットによれば、S237セルラーゼタンパク質のC末端領域は、高親水性領域である。
一方、同様に計算されたバチルス・エスピーKSM-K38株(FERM BP-6946)由来のアルカリアミラーゼ(以下、「K38アミラーゼ」という)の親水性・疎水性プロットを図2に示す。図2に示すように、疎水性/親水性プロットによれば、K38アミラーゼタンパク質のC末端領域は高度に疎水性である(図2において、楕円形で囲まれた箇所)。
2×L-マルトース培地を用いた酵素生産培養において、S237セルラーゼは1.8g/Lが分泌生産されるのに対し、K38アミラーゼの分泌生産量は0.4g/Lにとどまる。一方、枯草菌を用いたアミラーゼの分泌生産は激しい分泌ストレスを引き起こすことが知られている(Darmon, E., Noone, D., Masson, A., Bron, S., Kuipers, O. P., Devine, K. M. and van Dijl, J. M. (2002) A novel class of heat and secretion stress-responsive genes is controlled by the autoregulated CssRS two-component system of Bacillus subtilis. J. Bacteriol., 184 (20) : 5661-71.)。
以上のことから、K38アミラーゼの分泌量がS237セルラーゼの分泌量に至らない原因として、C末端の高疎水性領域が分泌ストレスを引き起こす何らかの原因となっている可能性が考えられる。そこで、上述したS237セルラーゼのC末端領域の高親水性領域を、分泌を促進するタグペプチドとして使用することを見出した。
ここで、親水性・疎水性パラメータとは、タンパク質を構成するアミノ酸ごとにその親水性・疎水性を数値化した値を意味する。Hoop & Woods の親水性・疎水性パラメータにおいては、親水性アミノ酸において値が高く(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸、リジン、アルギニンは3.00)、疎水性アミノ酸において値が低い(例えば、フェニルアラニンは-2.50、トリプトファンは-3.40)ように設定されている。以下の表1にHoop & Woods の親水性・疎水性パラメータにおける各アミノ酸のパラメータ値を示す。
Hoop & Woods の親水性・疎水性パラメータによれば、配列番号1に記載のアミノ酸配列(S237セルラーゼタンパク質のC末端より41アミノ酸残基)、配列番号4に記載のアミノ酸配列(S237セルラーゼタンパク質のC末端より30アミノ酸残基)又は配列番号5に記載のアミノ酸配列(S237セルラーゼタンパク質のC末端より20アミノ酸残基)から成るタグペプチドの全長における親水性・疎水性パラメータの平均値は、それぞれ2.13、2.02、2.11である。上記(a)又は(b)に記載のタグペプチドの全長におけるHoop & Woods の親水性・疎水性パラメータの平均値は、好ましくは2.00以上、より好ましくは2.05以上、特に好ましくは2.10以上である。
図3には、S237セルラーゼタンパク質のC末端より64アミノ酸残基(配列番号12)についての二次構造予測、等電点及び疎水性/親水性プロット(各アミノ酸残基)、並びにS237セルラーゼタンパク質のNCBI Conserved Domain Searchの結果を示す。二次構造は、Chou-Fasmanの方法(Adv Enzymol Relat Areas Mol Biol. 1978;47:45-148.)に基づき、具体的には遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Win(ソフトウェア開発)のタンパク質二次構造予測(Chou-Fasman)プログラムを用いて予測した。また、等電点は、Skoog & Wichmanの方法(Trends Anal. Chem., 5, 82-83.)に基づき、具体的には遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Win(ソフトウェア開発)のタンパク質の等電点予測プログラムを用いて計算した。さらに疎水性/親水性プロットは、Hoop & Woods の親水性・疎水性パラメータ(Proc Natl Acad Sci U S A. 1981 Jun;78(6):3824-8)に基づき、具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Win(ソフトウェア開発)の親水性・疎水性表示(Hydrophilicity / hydrophobicity Plot)プログラムを用いて作成された。
図3のNCBI Conserved Domain Search(S237セルラーゼタンパク質(1〜824アミノ酸残基)において、Cellulaseとして示される領域は、Protein families database of alignments and HMMs (http://www.sanger.ac.uk/Software/Pfam/)にPfam00150として分類されているセルラーゼドメインと相同な領域である。また、BglCとして示される領域は、Clusters of Orthologous Groups of proteins (COGs) (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/COG/new/)にCOG2730として分類されているエンドグルカナーゼドメインと相同な領域である。さらに、CBM_17_28として示される領域は、Pfam03424として分類されているCarbohydrate binding domain (family 17/28) と相同な領域である。すなわちS237セルラーゼはglycosyl hydrolase family 5に属する活性ドメインと、それに続く2つのCarbohydrate binding domain (family 17/28)を含む。さらにその下流からC末端までの64残基は、グルタミン酸残基とリジン残基に富む付加的なlow-complexity regionとされる。当該low-complexity regionの領域は図1の高親水性領域に一致する。
また、図3に示すように、S237セルラーゼタンパク質のC末端より41アミノ酸残基(配列番号1)以下では、等電点が9以上である。従って、上記(a)〜(c)に記載のタグペプチドの等電点は、9以上であることが好ましい。
本発明に係るDNAは、例えば、バチルス・エスピーKSM-S237株のゲノムDNAを鋳型とし、特異的なプライマーセットを用いたPCRを行うことで、増幅し、単離することができる。なお、バチルス・エスピーKSM-S237株は、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)にブタペスト条約の規定下で2002年2月5日付で国際寄託され、受託番号FERM BP-7875が付与されている。
また、本発明に係るDNAが、上記(c)に記載のタグペプチドをコードするDNAである場合には、例えば、バチルス・エスピーKSM-S237株のゲノムDNAを鋳型とし、グリシンリンカーをコードするDNA断片を含むプライマーを用いてPCRを行うことで、上記(a)又は(b)のタグペプチドのN末端にグリシンリンカーを付加したものをコードするDNAを増幅し、単離することができる。
あるいは、一旦本発明に係るDNAの塩基配列が確定されると、その後は化学合成によって、又はクローニングされたプローブを鋳型としたPCRによって、あるいは該塩基配列を有するDNA断片をプローブとしてハイブリダイズさせることによって、本発明に係るDNAを得ることができる。さらに、部位特異的突然変異誘発法等によって本発明に係るDNAの変異型であって変異前のDNAによってコードされるタグペプチドと同等の機能を有するものをコードするDNAを合成することもできる。
なお、本発明に係るDNAに変異を導入するには、Kunkel法、Gapped duplex法等の公知の手法又はこれに準ずる方法を採用することができる。例えば部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット(例えばMutant-K(TAKARA社製)やMutant-G(TAKARA社製))などを用いて、あるいは、TAKARA社のLA PCR in vitro Mutagenesis シリーズキットを用いて変異の導入が行われる。
本発明に係るタグペプチドは、本発明に係るDNAによりコードされるペプチドである。本発明に係るタグペプチドは、分泌タンパク質のC末端に融合した融合タンパク質として得ることができる。
ここで、分泌タンパク質とは、細胞膜外又は細胞壁外へ分泌されるタンパク質を意味する。本発明において使用することができる分泌タンパク質としては、分泌シグナルペプチドを有するタンパク質であればよく、例えば、枯草菌168株が有する菌体外プロテアーゼ(AprE、Bpr、WprA)、菌体外アミラーゼ(AmyE)、菌体外リパーゼ(LipA、LipB)、菌体外フォスファターゼ(PhoA)、菌体外ペクチン酸リアーゼ(Pel)、並びにバチルス・エスピーKSM-K38株由来のK38アミラーゼ(遺伝子配列:配列番号13、アミノ酸配列:配列番号14)又はバチルス・エスピーKSM-N252株(FERM P-17474)由来のセルラーゼ(以下、「N252セルラーゼ」という)(遺伝子配列:配列番号15、アミノ酸配列:配列番号16)などが挙げられる。なお、バチルス・エスピーKSM-K38株は、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)にブタペスト条約の規定下で平成11年11月24日付で国際寄託され、受託番号FERM BP-6946が付与されている。また、バチルス・エスピーKSM-N252株は、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に平成11年7月16日付で寄託され、受託番号FERM P-17474が付与されている。
本発明においては、分泌タンパク質は、実際に細胞膜外又は細胞壁外に分泌される限り、分泌シグナルペプチドと非分泌タンパク質との融合タンパク質であってもよい。例えば、Staphylococcus aureusのプラスミドpC194に由来する抗生物質耐性遺伝子(chloramphenicol acetyltransferase)やオワンクラゲ由来の蛍光タンパク質(Green Fluorescence Protein)等の非分泌タンパク質に分泌シグナルペプチド(例えば、上述したS237セルラーゼの分泌シグナルペプチド(塩基配列:配列番号17、アミノ酸配列:配列番号18))を連結した融合タンパク質を、本発明における分泌タンパク質として使用することができる。
本発明に係るタグペプチドが分泌タンパク質のC末端に融合した融合タンパク質(以下、「本発明に係る融合タンパク質」という)をコードするDNA(すなわち、本発明に係るタグペプチドをコードするDNAが分泌タンパク質をコードするDNAの3'末端側に連結した、本発明に係る融合タンパク質をコードするDNA)は、例えば、SOE(splicing by overlap extension)-PCR法(Gene,77,61,1989)によって得ることができる。
図4に基づいて、SOE-PCR法による本発明に係る融合タンパク質をコードするDNAの調製を説明する。図4では、本発明における分泌タンパク質は、分泌シグナルペプチドと非分泌タンパク質又は成熟タンパク質とから成るものとする。
まず、例えば、1回目のPCRにおいて、非分泌タンパク質をコードする遺伝子の発現を制御するプロモーターと分泌シグナルペプチドをコードする領域とを含むDNA断片(A断片)、生産対象の非分泌タンパク質をコードする遺伝子を含むDNA断片(B断片)、並びに本発明に係るタグペプチドをコードするDNAとターミネーター配列とを含むDNA断片(C断片)を、それぞれ特異的なプライマーセットを用いたPCRによって増幅し、調製する。この際、A断片増幅のPCRでは、A断片の3'末端にB断片の5'末端の相同配列(例えば、10〜30塩基)を付加するように設計したプライマー(図4では、プライマー2)を用いる。同様に、C断片増幅のPCRでは、C断片の5'末端にB断片の3'末端の相同配列(例えば、10〜30塩基)を付加するように設計したプライマー(図4では、プライマー5)を用いる。なお、分泌シグナルペプチド、生産対象の非分泌タンパク質及び本発明に係るタグペプチドは、1本のペプチド鎖として転写翻訳されるものであるので、リーディングフレーム(読み枠)が合うように注意してプライマーを設計する。
次いで、1回目のPCRで調製した3種類のPCR産物(PCR産物A、B、C)を鋳型とし、A断片のPCR増幅に使用したフォワードプライマー(図4では、プライマー1)とC断片のPCR増幅に使用したリバースプライマー(図4では、プライマー6)を用いて2回目のPCR(SOE-PCR)を行うことによって、PCR産物Aの3'末端とPCR産物Bの5'末端との間にアニールが生じ、また同様にPCR産物Bの3'末端とPCR産物Cの5'末端との間にアニールが生じ、PCR増幅の結果、A断片-B断片-C断片の順に連結したPCR産物Dを得ることができる。このようにして、プロモーター、分泌シグナルペプチドをコードする領域、非分泌タンパク質をコードする遺伝子、本発明に係るタグペプチドをコードするDNA、ターミネーター配列が順に連結した、本発明に係る融合タンパク質をコードするDNAを得ることができる。なお、A断片増幅の際のフォワードプライマー(図4では、プライマー1)とC断片増幅の際のリバースプライマー(図4では、プライマー6)に適当な制限酵素認識部位を予め配しておくことで、PCR産物Dをベクターのクローニングサイトに挿入することができる。
本発明に係る融合タンパク質は、上述した本発明に係る融合タンパク質をコードするDNAを宿主に形質転換し、発現させることで得ることができる。
宿主への形質転換には、例えば、上述した本発明に係る融合タンパク質をコードするDNAを有するPCR産物等のDNA断片、当該DNA断片を含むゲノムの全体若しくはその一部、又は当該DNA断片を含むプラスミド、シャトルベクター、ヘルパープラスミド、ファージDNA、ウイルスベクター、BAC(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87, 8242(1990))若しくはYAC(Science 236, 806 (1987))、更にはプラスミド、シャトルベクター、ヘルパープラスミド、ファージDNA、ウイルスベクター、BAC及びYACなどにクローニングされたDNA断片やゲノムDNAの一部等を用いることができる。例えば、プラスミドとしては、大腸菌(Escherichia coli)由来のプラスミド(例えばpET30bなどのpET系、pBR322及びpBR325などのpBR系、pUC118、pUC119、pUC18及びpUC19などのpUC系、pBluescript等)、枯草菌(Bacillus subtilis)由来のプラスミド(例えばpUB110、pTP5等)、酵母由来のプラスミド(例えばYEp13などのYEp系、YCp50などのYCp系等)などが挙げられる。またファージDNAとしては、λファージ(Charon4A、Charon21A、EMBL3、EMBL4、λgt10、λgt11、λZAP等)やPBS1ファージ(J. Bacteriol. 90, 1575 (1965))が挙げられる。さらに、レトロウイルス又はワクシニアウイルスなどの動物ウイルスベクター、カリフラワーモザイクウイルスなどの植物ウイルスベクター、またはバキュロウイルスなどの昆虫ウイルスベクターを用いることもできる。あるいは、LP(lysis of protoplasts)形質転換方法(T. Akamatsu及びJ. Sekiguchi, Archives of Microbiology, 1987, 146, p.353-357;T. Akamatsu及びH. Taguchi, Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 2001, 65,4, p.823-829)を用いる場合には、例えば、本発明に係る融合タンパク質をコードするDNAを有する枯草菌等の微生物自体を使用することができる。
宿主としては、枯草菌等のバチルス属、大腸菌等のエッシェリヒア属及びシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)等のシュードモナス属に属する細菌、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)及びシゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等の酵母、COS細胞及びCHO細胞等の動物細胞、Sf9等の昆虫細胞、並びにイネ科(イネ(Oryza sativa)、トウモロコシ(Zea mays))、アブラナ科(シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana))、ナス科(タバコ(Nicotiana tabacum)及びマメ科(ダイズ(Glycine max))等の植物が挙げられる。
細菌へのDNA断片の導入方法は、細菌にDNAを導入する方法であれば特に限定されるものではない。例えば、カルシウムイオンを用いる方法、一般的なコンピテントセル形質転換方法(J. Bacterial. 93, 1925 (1967))、プロトプラスト形質転換法(Mol. Gen. Genet. 168, 111 (1979))、エレクトロポレーション法(FEMS Microbiol. Lett. 55, 135 (1990))又はLP形質転換方法(T. Akamatsu及びJ. Sekiguchi, Archives of Microbiology, 1987, 146, p.353-357;T. Akamatsu及びH. Taguchi, Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 2001, 65,4, p.823-829)を用いることができる。
酵母へのDNA断片の導入方法は、酵母にDNAを導入する方法であれば特に限定されず、例えば電気穿孔法(エレクトロポレーション法)、スフェロプラスト法及び酢酸リチウム法等が挙げられる。
動物細胞を宿主とする場合は、サル細胞COS-7、Vero、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)及びマウスL細胞などが用いられる。動物細胞へのDNA断片の導入方法としては、例えばエレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法及びリポフェクション法等が挙げられる。
昆虫細胞を宿主とする場合は、Sf9細胞などが用いられる。昆虫細胞へのDNA断片の導入方法としては、例えばリン酸カルシウム法、リポフェクション法及びエレクトロポレーション法等が挙げられる。
植物を宿主とする場合は、植物体全体、植物器官(例えば葉、花弁、茎、根、種子等)、植物組織(例えば表皮、師部、柔組織、木部、維管束等)及び植物培養細胞などが用いられる。植物へのDNA断片の導入方法としては、例えばエレクトロポレーション法、アグロバクテリウム法、パーティクルガン法及びPEG法等が挙げられる。
以上のようにして、本発明に係る融合タンパク質をコードするDNAを含むDNA断片を宿主に導入することができる。
DNA断片が宿主に組み込まれたか否かは、PCR法、サザンハイブリダイゼーション法及びノーザンハイブリダイゼーション法等により確認することができる。例えば、形質転換体からDNAを調製し、DNA特異的プライマーを設計してPCRを行う。その後は、増幅産物についてアガロースゲル電気泳動、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又はキャピラリー電気泳動等を行い、臭化エチジウム、SYBR Green液等により染色し、そして増幅産物をバンドとして検出することにより、形質転換されたことを確認する。また、予め蛍光色素等により標識したプライマーを用いてPCRを行い、増幅産物を検出することもできる。さらに、マイクロプレート等の固相に増幅産物を結合させ、蛍光又は酵素反応等により増幅産物を確認する方法を採用してもよい。
宿主が例えば微生物である場合には、得られた形質転換体を同化性の炭素源、窒素源、その他の必須成分を含む培地に接種し、通常の微生物培養法にて培養し、培養終了後、本発明に係る融合タンパク質を採取・精製することにより、本発明に係る融合タンパク質を生産することができる。本発明に係る融合タンパク質は分泌タンパク質であるので、培養終了後、培養上清から単離することができる。
本発明に係るタグペプチドを用いれば、分泌タンパク質の分泌を促進することができる。本発明に係るタグペプチドを融合した融合タンパク質は、細胞を破壊することなく、培養上清から高収量で得ることができる。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
以下の実施例におけるDNA断片増幅のためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)には、GeneAmp 9700 PCR System(アプライドバイオシステムズ)を使用し、Pyrobest DNA Polymerase(タカラバイオ)と付属の試薬類を用いてDNA増幅を行った。PCRの反応液組成は、適宜希釈した鋳型DNAを1μL、センス及びアンチセンスプライマーを各々20pmol及びPyrobest DNA Polymeraseを2.5U添加して、反応液総量を50μLとした。PCRの反応条件は、95℃で30秒間、60℃で1分間及び72℃で1〜5分間(目的増幅産物に応じて調整。目安は1kbあたり1分間)の3段階の温度変化を30回繰り返した後、72℃で5分間反応させることにより行った。なお、PCRにおいて用いたプライマーは、以下の表2に示すプライマーである。
また、図5には、以下の実施例において作製したプラスミド、当該プラスミドによってコードされるリンカー配列(グリシンリンカー)及びS237セルラーゼのC末端領域(アミノ酸配列、等電点及びアミノ酸残基数)が示されている。
〔実施例1〕 融合アミラーゼタンパク質発現ベクターの構築(S237セルラーゼのC末端領域(41アミノ酸残基:配列番号1)を使用)
1.アルカリアミラーゼ生産性評価用プラスミド(対照)の構築
グリシンリンカーとS237セルラーゼのC末端領域とを有しない対照プラスミドを、以下の操作により構築した。
1.アルカリアミラーゼ生産性評価用プラスミド(対照)の構築
グリシンリンカーとS237セルラーゼのC末端領域とを有しない対照プラスミドを、以下の操作により構築した。
バチルス・エスピーKSM-K38株(FERM BP-6946)より抽出したゲノムDNAを鋳型として、表2に示されるK38matu-F2(ALAA)(配列番号19)とSP64K38-R(XbaI)(配列番号20)とのプライマーセットを用いてPCRを行い、分泌シグナルペプチド(配列番号13の1番目〜63番目の塩基配列、配列番号14の1番目〜21番目のアミノ酸配列)を除く成熟型K38アミラーゼ(特開2000-184882号公報、Eur. J. Biochem., 268, 2974, 2001)をコードする遺伝子(配列番号13の64番目〜1506番目の塩基配列)を含む1.5kbのDNA断片を増幅した。
また、バチルス・エスピーKSM-S237株(FERM BP-7875)より抽出したゲノムDNAを鋳型として、表2に示されるS237ppp-F2(BamHI)(配列番号21)とS237ppp-R2(ALAA)(配列番号22)とのプライマーセットを用いてPCRを行い、S237セルラーゼ遺伝子(特開2000-210081号公報)の転写開始制御領域、翻訳開始制御プロモーター領域及び分泌シグナルペプチド(塩基配列:配列番号17)をコードする領域を含む0.7kbのDNA断片を増幅した。
次いで、得られた2つの上記DNA断片を混合して鋳型とし、表2に示されるS237ppp-F2(BamHI)(配列番号21)とSP64K38-R(XbaI)(配列番号20)とのプライマーセットを用いたSOE-PCRを行うことによって、S237セルラーゼ遺伝子の転写開始制御領域、翻訳開始制御プロモーター領域及び分泌シグナルペプチドをコードする領域の下流に成熟型K38アミラーゼ遺伝子が連結した、配列番号55で示される2.2kbのDNA断片を得た。
得られた2.2kbのDNA断片を、シャトルベクターpHY300PLK(ヤクルト社製)のBamHI-XbaI制限酵素切断点に挿入し、アルカリアミラーゼ生産性評価用プラスミドpHYK38(S237ps)を構築した。
2.融合アルカリアミラーゼ生産プラスミドの構築
グリシンリンカーとS237セルラーゼのC末端領域とを有するアルカリアミラーゼ生産プラスミドを、以下の操作により構築した。
グリシンリンカーとS237セルラーゼのC末端領域とを有するアルカリアミラーゼ生産プラスミドを、以下の操作により構築した。
バチルス・エスピーKSM-K38株(FERM BP-6946)より抽出したゲノムDNAを鋳型とし、表2に示されるK38matu-F2(ALAA)(配列番号19)とFA21-R(配列番号23)とのプライマーセットを用いてPCRを行い、分泌シグナルペプチド(配列番号13の1番目〜63番目の塩基配列、配列番号14の1番目〜21番目のアミノ酸配列)を除く成熟型K38アミラーゼ(特開2000-184882号公報、Eur. J. Biochem., 268, 2974, 2001)をコードする遺伝子(配列番号13の64番目〜1506番目の塩基配列)を含む1.5kbのDNA断片を増幅した。
またバチルス・エスピーKSM-S237株(FERM BP-7875)より抽出したゲノムDNAを鋳型とし、表2に示されるFA21-F(配列番号24)とS237ter-R(XbaI)(配列番号25)とのプライマーセットを用いてPCRを行い、グリシンリンカー(グリシン3残基相当)とアルカリセルラーゼC末端領域(41アミノ酸残基:配列番号1)とをコードする塩基配列を含む0.2kbのDNA断片を増幅した。
さらに、上述したように、S237セルラーゼ遺伝子(特開2000-210081号公報)の転写開始制御領域、翻訳開始制御プロモーター領域及び分泌シグナルペプチドをコードする領域を含む0.7kbのDNA断片を増幅した。
次いで、得られた3つの上記DNA断片を混合して鋳型とし、表2に示されるS237ppp-F2(BamHI)(配列番号21)とS237ter-R(XbaI)(配列番号25)とのプライマーセットを用いたSOE-PCRを行うことによって、S237セルラーゼ遺伝子の転写開始制御領域、S237セルラーゼ遺伝子の翻訳開始制御プロモーター領域、S237セルラーゼ遺伝子の分泌シグナルペプチドをコードする領域、成熟型K38アミラーゼ遺伝子、グリシンリンカー(グリシン3残基相当)とアルカリセルラーゼのC末端領域(41アミノ酸残基:配列番号1)とをコードする領域が、順に連結した、配列番号56で示される2.3kbのDNA断片を得た。
得られた2.3kbのDNA断片を、シャトルベクターpHY300PLK(ヤクルト社製)のBamHI-XbaI制限酵素切断点に挿入し、成熟型K38アミラーゼのC末端にグリシン3残基を介してS237セルラーゼのC末端領域(41アミノ酸残基)が融合した融合アミラーゼタンパク質を生産するプラスミドpHYK38FA21を構築した。
同様に、FA21-Rプライマー(配列番号23)及びFA21-Fプライマー(配列番号24)を、それぞれ下記の表3に示すプライマーに換えて、PCR、SOE-PCR、シャトルベクターへの挿入を行うことで、各融合アミラーゼタンパク質を生産するプラスミドを構築した。
pHYK38FA22は、成熟型K38アミラーゼのC末端にグリシン5残基を介してS237セルラーゼのC末端領域(41アミノ酸残基:配列番号1)が融合した融合アミラーゼタンパク質を生産するプラスミドである。SOE-PCRを行うことによって得られるDNA断片は、配列番号57に示される塩基配列を有する。
また、pHYK38FA23は、成熟型K38アミラーゼのC末端にグリシン7残基を介してS237セルラーゼのC末端領域(41アミノ酸残基:配列番号1)が融合した融合アミラーゼタンパク質を生産するプラスミドである。SOE-PCRを行うことによって得られるDNA断片は、配列番号58に示される塩基配列を有する。
さらに、pHYK38FA24は、成熟型K38アミラーゼのC末端にグリシン9残基を介してS237セルラーゼのC末端領域(41アミノ酸残基:配列番号1)が融合した融合アミラーゼタンパク質を生産するプラスミドである。SOE-PCRを行うことによって得られるDNA断片は、配列番号59に示される塩基配列である。
下記の表4に、各プラスミドによりコードされる成熟型K38アミラーゼC末端以下の融合アミノ酸配列を示す。
〔実施例2〕 融合アミラーゼタンパク質の生産性評価(S237セルラーゼのC末端領域(41アミノ酸残基:配列番号1)を使用)
実施例1において得られたプラスミドpHYK38(S237ps)、pHYK38FA21、pHYK38FA22、pHYK38FA23及びpHYK38FA24を、それぞれ枯草菌(Bacillus subtilis)168株にプロトプラスト形質転換法を用いて導入した。
実施例1において得られたプラスミドpHYK38(S237ps)、pHYK38FA21、pHYK38FA22、pHYK38FA23及びpHYK38FA24を、それぞれ枯草菌(Bacillus subtilis)168株にプロトプラスト形質転換法を用いて導入した。
形質転換によって得られた菌株を、10mLのLB培地で一夜30℃で振盪培養を行い、更にこの培養液0.05mLを50mLの2×L−マルトース培地(2%トリプトン、1%酵母エキス、1%NaCl、7.5%マルトース、7.5ppm硫酸マンガン4-5水和物、15ppmテトラサイクリン)に接種し、30℃で3日間、振盪培養を行った。
培養後、遠心分離によって菌体を除いた培養液上清の融合アルカリアミラーゼ活性を測定し、培養によって菌体外に分泌生産された融合アルカリアミラーゼの量を求めた。融合アルカリアミラーゼの活性測定は、可溶性デンプン(sigma potato starch)の分解によって生じる糖還元末端をDNS法(生物化学実験法1 還元糖の定量法、18頁−19頁;学会出版センター、1981年)によって定量することで行ない、30℃、pH10.0のもと1分間に1μmolのグルコースに相当する還元末端を生ずるアミラーゼ活性を1Uとして融合アルカリアミラーゼの量を測定した。
結果を表5に示す。表5では、対照プラスミドpHYK38(S237ps)を用いて形質転換した菌株より分泌生産されたK38アミラーゼの量を100%として、他のプラスミドを用いて形質転換した菌株より分泌生産された融合アルカリアミラーゼの量を相対的に表す。
表5に示すように、対照プラスミドpHYK38(S237ps)を用いて形質転換した菌株より生産された成熟型K38アミラーゼと比較して、各融合アルカリアミラーゼ生産プラスミドを用いて形質転換した菌株より生産された融合アルカリアミラーゼは、高い分泌生産性が認められた。またこの効果は、グリシンリンカーの長さによらないことが示された。
〔実施例3〕 融合アミラーゼタンパク質発現ベクターの構築(様々な長さのS237セルラーゼC末端領域を使用)
様々なアミノ酸残基数から成るS237セルラーゼC末端領域を用いて、グリシンリンカーとS237セルラーゼのC末端領域とを有するアルカリアミラーゼ生産プラスミドを、以下の操作により構築した。
様々なアミノ酸残基数から成るS237セルラーゼC末端領域を用いて、グリシンリンカーとS237セルラーゼのC末端領域とを有するアルカリアミラーゼ生産プラスミドを、以下の操作により構築した。
バチルス・エスピーKSM-K38株(FERM BP-6946)より抽出したゲノムDNAを鋳型とし、表2に示されるK38matu-F2(ALAA)(配列番号19)とFA72-R(配列番号32)とのプライマーセットを用いてPCRを行い、分泌シグナルペプチド(配列番号13の1番目〜63番目の塩基配列、配列番号14の1番目〜21番目のアミノ酸配列)を除く成熟型K38アミラーゼ(特開2000-184882号公報、Eur. J. Biochem., 268, 2974, 2001)をコードする遺伝子(配列番号13の64番目〜1506番目の塩基配列)を含む1.5kbのDNA断片を増幅した。
またバチルス・エスピー(Bacillus sp.)KSM-S237株(FERM BP-7875)より抽出したゲノムDNAを鋳型とし、表2に示されるFA72-F(配列番号33)とS237ter-R(XbaI)(配列番号25)とのプライマーセットを用いてPCRを行い、グリシンリンカー(グリシン5残基相当)とS237セルラーゼC末端領域(64アミノ酸残基:配列番号12)とをコードする塩基配列を含む0.2kbのDNA断片を増幅した。
さらに、実施例1に記載するように、S237セルラーゼ遺伝子(特開2000-210081号公報)の転写開始制御領域、翻訳開始制御プロモーター領域及び分泌シグナルペプチドをコードする領域を含む0.7kbのDNA断片を増幅した。
次いで、得られた3つの上記DNA断片を混合して鋳型とし、表2に示されるS237ppp-F2(BamHI)(配列番号21)とS237ter-R(XbaI)(配列番号25)とのプライマーセットを用いたSOE-PCRを行うことによって、S237セルラーゼ遺伝子の転写開始制御領域、S237セルラーゼ遺伝子の翻訳開始制御プロモーター領域、S237セルラーゼ遺伝子の分泌シグナルペプチドをコードする領域、成熟型K38アミラーゼ遺伝子、グリシンリンカー(グリシン5残基相当)とS237セルラーゼのC末端領域(64アミノ酸残基:配列番号12)とをコードする領域が、順に連結した、配列番号60で示される2.4kbのDNA断片を得た。
得られた2.4kbのDNA断片を、シャトルベクターpHY300PLK(ヤクルト社製)のBamHI-XbaI制限酵素切断点に挿入することで、成熟型K38アミラーゼのC末端にグリシン5残基を介してS237セルラーゼのC末端領域(64アミノ酸残基)が融合した融合アミラーゼタンパク質を生産するプラスミドpHYK38FA72を構築した。
同様に、FA72-Rプライマー(配列番号32)及びFA72-Fプライマー(配列番号33)を、それぞれ下記の表6に示すプライマーに換えて、PCR、SOE-PCR、シャトルベクターへの挿入を行うことで、各融合アミラーゼタンパク質を生産するプラスミドを構築した。
pHYK38FA82は、成熟型K38アミラーゼのC末端にグリシン5残基を介してS237セルラーゼのC末端領域(49アミノ酸残基:配列番号61)が融合した融合アミラーゼタンパク質を生産するプラスミドである。SOE-PCRを行うことによって得られるDNA断片は、配列番号62に示される塩基配列である。
また、pHYK38FA42は、成熟型K38アミラーゼのC末端にグリシン5残基を介してS237セルラーゼのC末端領域(30アミノ酸残基:配列番号4)が融合した融合アミラーゼタンパク質を生産するプラスミドである。SOE-PCRを行うことによって得られるDNA断片は、配列番号63に示される塩基配列である。
さらに、pHYK38FA52は、成熟型K38アミラーゼのC末端にグリシン5残基を介してS237セルラーゼのC末端領域(20アミノ酸残基:配列番号5)が融合した融合アミラーゼタンパク質を生産するプラスミドである。SOE-PCRを行うことによって得られるDNA断片は、配列番号64に示される塩基配列である。
pHYK38FA62は、成熟型K38アミラーゼのC末端にグリシン5残基を介してS237セルラーゼのC末端領域(10アミノ酸残基:配列番号65)が融合した融合アミラーゼタンパク質を生産するプラスミドである。SOE-PCRを行うことによって得られるDNA断片は、配列番号66に示される塩基配列である。
下記の表7に、各プラスミドによりコードされる成熟型K38アミラーゼC末端以下の融合アミノ酸配列を示す。
〔実施例4〕 融合アミラーゼタンパク質の生産性評価(様々な長さのS237セルラーゼC末端領域)
実施例2と同様にして、実施例1において得られたプラスミドpHYK38(S237ps)及びpHYK38FA22、並びに実施例3において得られたプラスミドpHYK38FA72、pHYK38FA82、pHYK38FA42、pHYK38FA52及びpHYK38FA62をそれぞれ用いて、枯草菌168株の形質転換、培養、融合アルカリアミラーゼの活性測定及び融合アルカリアミラーゼ量の計算を行った。
実施例2と同様にして、実施例1において得られたプラスミドpHYK38(S237ps)及びpHYK38FA22、並びに実施例3において得られたプラスミドpHYK38FA72、pHYK38FA82、pHYK38FA42、pHYK38FA52及びpHYK38FA62をそれぞれ用いて、枯草菌168株の形質転換、培養、融合アルカリアミラーゼの活性測定及び融合アルカリアミラーゼ量の計算を行った。
結果を表8に示す。表8では、対照プラスミドpHYK38(S237ps)を用いて形質転換した菌株より分泌生産された成熟型K38アミラーゼの量を100%として、他のプラスミドを用いて形質転換した菌株より分泌生産された融合アルカリアミラーゼの量を相対的に表す。
表8に示すように、対照プラスミドpHYK38(S237ps)を用いて形質転換した菌株より生産された成熟型K38アミラーゼと比較して、それぞれ41アミノ酸残基(配列番号1)、30アミノ酸残基(配列番号4)及び20アミノ酸残基(配列番号5)から成る各S237セルラーゼのC末端領域を融合した融合アルカリアミラーゼは、高い分泌生産性が認められた。
一方、S237セルラーゼのC末端領域の長さが10アミノ酸残基(配列番号65)である融合アルカリアミラーゼは、高生産化効果が認められなかった。また、親水性が高くない領域を含む49アミノ酸残基(配列番号61)から成るS237セルラーゼのC末端領域を融合した融合アルカリアミラーゼも効果が認められなかった。さらに、親水性が高くない領域をより長く含む64アミノ酸残基(配列番号12)から成るS237セルラーゼのC末端領域を融合した融合アルカリアミラーゼは、対照プラスミドpHYK38(S237ps)を用いて形質転換した菌株より生産された成熟型K38アミラーゼより生産性が低下した。
以上の結果から、グリシンリンカーとS237セルラーゼのC末端領域とを用いて成熟型K38アミラーゼの生産性を向上させるには、S237セルラーゼのC末端から20残基〜41残基のC末端領域を使用すればよいことが示された。
〔実施例5〕 融合セルラーゼタンパク質発現ベクターの構築(S237セルラーゼのC末端領域(41アミノ酸残基:配列番号1)を使用)
1.セルラーゼ生産性評価用プラスミド(対照)の構築
グリシンリンカーとS237セルラーゼのC末端領域とを有しない対照プラスミドを、以下の操作により構築した。
1.セルラーゼ生産性評価用プラスミド(対照)の構築
グリシンリンカーとS237セルラーゼのC末端領域とを有しない対照プラスミドを、以下の操作により構築した。
バチルス・エスピーKSM-N252株(FERM P-17474)より抽出したゲノムDNAを鋳型として、表2に示されるN252pre/S237P FW (配列番号42)とN252orfS237ter-R(配列番号43)とのプライマーセットを用いてPCRを行い、N252セルラーゼ自身の分泌シグナルペプチド(配列番号15の1番目〜87番目の塩基配列、配列番号16の1番目〜29番目のアミノ酸配列)を含むN252セルラーゼをコードする遺伝子(塩基配列:配列番号15)を含む1.5kbのDNA断片を増幅した。
また、バチルス・エスピーKSM-S237株(FERM BP-7875)より抽出したゲノムDNAを鋳型として、表2に示されるS237ppp-F2(BamHI)(配列番号21)とS237P RV (配列番号44)とのプライマーセットを用いてPCRを行い、S237セルラーゼ遺伝子(特開2000-210081号公報)の転写開始制御領域、翻訳開始制御プロモーター領域をコードする領域を含む0.6kbのDNA断片を増幅した。
さらに、バチルス・エスピーKSM-S237株(FERM BP-7875)より抽出したゲノムDNAを鋳型として、表2に示されるN252orfS237ter-F(配列番号45)とS237ter-R(BamHI)2(配列番号46)とのプライマーセットを用いてPCRを行い、S237セルラーゼ遺伝子(特開2000-210081号公報)のターミネーター領域をコードする領域を含む0.1kbのDNA断片を増幅した。
次いで、得られた3つの上記DNA断片を混合して鋳型とし、表2に示されるS237ppp-F2(BamHI)(配列番号21)とS237ter-R(BamHI)2 (配列番号46)とのプライマーセットを用いたSOE-PCRを行うことによって、S237セルラーゼ遺伝子の転写開始制御領域、翻訳開始制御プロモーター領域の下流にN252セルラーゼの分泌シグナルペプチドおよび成熟酵素領域が連結し、さらにその下流にS237セルラーゼのターミネーター領域が連結した、配列番号70で示される2.1kbのDNA断片を得た。
得られた2.1kbのDNA断片を、シャトルベクターpHY300PLK(ヤクルト社製)のBamHI制限酵素切断点に挿入し、アルカリアミラーゼ生産性評価用プラスミドpHYN252(S237pt)を構築した。
2.融合セルラーゼ生産プラスミドの構築
バチルス・エスピーKSM-N252株(FERM P-17474)より抽出したゲノムDNAを鋳型として、表2に示されるN252pre/S237P FW (配列番号42)とN252FA21-R (配列番号47)とのプライマーセットを用いてPCRを行い、N252セルラーゼをコードする遺伝子(塩基配列:配列番号15)を含む1.5kbのDNA断片を増幅した。
バチルス・エスピーKSM-N252株(FERM P-17474)より抽出したゲノムDNAを鋳型として、表2に示されるN252pre/S237P FW (配列番号42)とN252FA21-R (配列番号47)とのプライマーセットを用いてPCRを行い、N252セルラーゼをコードする遺伝子(塩基配列:配列番号15)を含む1.5kbのDNA断片を増幅した。
またバチルス・エスピーKSM-S237株(FERM BP-7875)より抽出したゲノムDNAを鋳型とし、表2に示されるN252FA21-F (配列番号48)とS237ter-R(XbaI) (配列番号25)とのプライマーセットを用いてPCRを行い、グリシンリンカー(グリシン3残基相当)とアルカリセルラーゼC末端領域(41アミノ酸残基:配列番号1)とをコードする塩基配列を含む0.2kbのDNA断片を増幅した。
さらに、上述したように、S237セルラーゼ遺伝子(特開2000-210081号公報)の転写開始制御領域、翻訳開始制御プロモーター領域をコードする領域を含む0.6kbのDNA断片を増幅した。
次いで、得られた3つの上記DNA断片を混合して鋳型とし、表2に示されるS237ppp-F2(BamHI)(配列番号21)とS237ter-R(XbaI)(配列番号25)とのプライマーセットを用いたSOE-PCRを行うことによって、S237セルラーゼ遺伝子の転写開始制御領域、S237セルラーゼ遺伝子の翻訳開始制御プロモーター領域、N252セルラーゼ遺伝子の分泌シグナルペプチドと成熟酵素領域をコードする領域、グリシンリンカー(グリシン3残基相当)とアルカリセルラーゼのC末端領域(41アミノ酸残基:配列番号1)とをコードする領域が、順に連結した、配列番号71で示される2.3kbのDNA断片を得た。
得られた2.3kbのDNA断片を、シャトルベクターpHY300PLK(ヤクルト社製)のBamHI-XbaI制限酵素切断点に挿入しN252セルラーゼのC末端にグリシン3残基を介してS237セルラーゼのC末端領域(41アミノ酸残基)が融合した融合セルラーゼタンパク質を生産するプラスミドpHYN252FA21を構築した。
同様に、N252FA21-Rプライマー(配列番号47)及びN252FA21-Fプライマー(配列番号48)を、それぞれ下記の表9に示すプライマーに換えて、PCR、SOE-PCR、シャトルベクターへの挿入を行うことで、各融合セルラーゼタンパク質を生産するプラスミドを構築した。
pHYN252FA22は、N252セルラーゼのC末端にグリシン5残基を介してS237セルラーゼのC末端領域(41アミノ酸残基:配列番号1)が融合した融合セルラーゼタンパク質を生産するプラスミドである。SOE-PCRを行うことによって得られるDNA断片は、配列番号72に示される塩基配列である。
また、pHYN252FA23は、N252セルラーゼのC末端にグリシン7残基を介してS237セルラーゼのC末端領域(41アミノ酸残基:配列番号1)が融合した融合セルラーゼタンパク質を生産するプラスミドである。SOE-PCRを行うことによって得られるDNA断片は、配列番号73に示される塩基配列である。
さらに、pHYN252FA24は、N252セルラーゼのC末端にグリシン9残基を介してS237セルラーゼのC末端領域(41アミノ酸残基:配列番号1)が融合した融合セルラーゼタンパク質を生産するプラスミドである。SOE-PCRを行うことによって得られるDNA断片は、配列番号74に示される塩基配列である。
下記の表10に、各プラスミドによりコードされるN252セルラーゼC末端以下の融合アミノ酸配列を示す。
〔実施例6〕 融合セルラーゼタンパク質の生産性評価(S237セルラーゼのC末端領域(41アミノ酸残基:配列番号1)を使用)
実施例5において得られたプラスミドpHYN252(237pt)、pHYN252FA21、pHYN252FA22、pHYN252FA23及びpHYN252FA24を、それぞれ枯草菌168株にプロトプラスト形質転換法を用いて導入した。
実施例5において得られたプラスミドpHYN252(237pt)、pHYN252FA21、pHYN252FA22、pHYN252FA23及びpHYN252FA24を、それぞれ枯草菌168株にプロトプラスト形質転換法を用いて導入した。
形質転換によって得られた菌株を、10mLのLB培地で一夜30℃で振盪培養を行い、更にこの培養液0.05mLを50mLの2×L−マルトース培地(2%トリプトン、1%酵母エキス、1%NaCl、7.5%マルトース、7.5ppm硫酸マンガン4-5水和物、15ppmテトラサイクリン)に接種し、30℃で5日間、振盪培養を行った。
培養後、遠心分離によって菌体を除いた培養液上清の融合セルラーゼ活性を測定し、培養によって菌体外に分泌生産された融合セルラーゼの量を求めた。融合セルラーゼの活性測定は、p-nitrophenyl-β-D-cellotrioside(生化学工業)の分解によって生じるp-nitrophenolを420nmの吸光によって定量することで行ない、30℃、pH7.4のもと1分間に1μmolのp-nitrophenolを生ずるセルラーゼ活性を1Uとして融合セルラーゼの量を測定した。
結果を表11に示す。表11では、対照プラスミドpHYN252(237pt)を用いて形質転換した菌株より分泌生産されたN252セルラーゼの量を100%として、他のプラスミドを用いて形質転換した菌株より分泌生産された融合セルラーゼの量を相対的に表す。
表11に示すように、対照プラスミドpHYN252(237pt)を用いて形質転換した菌株より生産されたN252セルラーゼと比較して、各融合セルラーゼ生産プラスミドを用いて形質転換した菌株より生産された融合セルラーゼは、高い分泌生産性が認められた。
Claims (12)
- 以下の(a)〜(c)のいずれか1記載のタグペプチドをコードするDNA。
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、C末端より20〜41アミノ酸から成るタグペプチド
(b)上記(a)のタグペプチドのアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列から成り、且つ分泌タンパク質の分泌を促進するタグペプチド
(c)N末端に1〜9個のグリシンから成るグリシンリンカーを付加した上記(a)又は(b)のタグペプチド - 上記(a)又は(b)のタグペプチドの全長におけるHoop & Woods の親水性・疎水性パラメータの平均値が、2.00以上であることを特徴とする、請求項1記載のDNA。
- 上記タグペプチドの等電点が9以上であることを特徴とする、請求項1又は2記載のDNA。
- 上記(b)のタグペプチドにおいて、置換又は付加されるアミノ酸が親水性アミノ酸であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載のDNA。
- 上記(b)のタグペプチドにおいて、置換又は付加されるアミノ酸が塩基性アミノ酸であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載のDNA。
- 請求項1〜5のいずれか1項記載のタグペプチドをコードするDNAが分泌タンパク質をコードするDNAの3'末端側に連結した、融合タンパク質をコードするDNA。
- 以下の(a)〜(c)のいずれか1記載のタグペプチド。
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、C末端より20〜41アミノ酸から成るタグペプチド
(b)上記(a)のタグペプチドのアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列から成り、且つ分泌タンパク質の分泌を促進するタグペプチド
(c)N末端に1〜9個のグリシンから成るグリシンリンカーを付加した上記(a)又は(b)のタグペプチド - 上記(a)又は(b)のタグペプチドの全長におけるHoop & Woods の親水性・疎水性パラメータの平均値が、2.00以上であることを特徴とする、請求項7記載のタグペプチド。
- 上記タグペプチドの等電点が9以上であることを特徴とする、請求項7又は8記載のタグペプチド。
- 上記(b)のタグペプチドにおいて、置換又は付加されるアミノ酸が親水性アミノ酸であることを特徴とする、請求項7〜9のいずれか1項記載のタグペプチド。
- 上記(b)のタグペプチドにおいて、置換又は付加されるアミノ酸が塩基性アミノ酸であることを特徴とする、請求項7〜9のいずれか1項記載のタグペプチド。
- 請求項7〜11のいずれか1項記載のタグペプチドが分泌タンパク質のC末端に融合した融合タンパク質。
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WO2014175164A1 (ja) * | 2013-04-25 | 2014-10-30 | 株式会社カネカ | Fab型抗体の分泌量を増大できるFd鎖遺伝子又はL鎖遺伝子 |
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2006
- 2006-02-16 JP JP2006039175A patent/JP2007215471A/ja active Pending
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