JP2007211188A - ポリエステルの分解方法および芳香族ジカルボン酸の回収方法 - Google Patents

ポリエステルの分解方法および芳香族ジカルボン酸の回収方法 Download PDF

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Abstract

【課題】エチレングリコールのような薬剤を必要とせず、常圧下、熱源を使用することなく、極めて短時間でポリエステル、とりわけポリエチレンテレフタレート(PET)を構成モノマー成分に分解(解重合)する方法および芳香族ジカルボン酸、例えばテレフタル酸を回収する方法を提供する。
【解決手段】ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート小片と含水リン酸シリカ系粒子混合物触媒との混合物にマイクロウエーブを照射して、テレフタル酸とアルキレングリコールに分解する。テレフタル酸とアルキレングリコールの混合物に、アルカリ金属水酸化物水溶液を添加してテレフタル酸アルカリ金属塩水溶液とし、濾過し、濾液に鉱酸を添加してテレフタル酸を析出させ、析出したテレフタル酸を濾別する。
【選択図】なし

Description

本発明は、アルキレングリコールと芳香族ジカルボン酸とからなるポリエステルの分解方法および芳香族ジカルボン酸の回収方法に関し、詳しくはポリエステル小片、例えばポリエチレンテレフタレート小片と含水リン酸シリカ系粒子混合物触媒の混合物にマイクロウエーブを照射することによるポリエステル小片、例えばポリエチレンテレフタレート小片の分解方法、および該分解物から芳香族ジカルボン酸、例えばテレフタル酸を回収する方法に関する。
アルキレングリコールと芳香族ジカルボン酸とからなるポリエステル、とりわけポリエチレンテレフタレート(PET)は、その機械的強度、透明性、化学的安定性が優れていることから、繊維、フィルム、樹脂成形品、容器、特には飲料用ボトルなどとして大量に生産され、使用されている。なお、これら繊維、フィルム、樹脂成形品、容器、特には飲料用ボトルは、重合してできたポリエチレンテレフタレート(PET)のペレット、粒状物または粉末を溶融成形することによって製造される。
しかしながら、生産量、使用量の増大に伴って大量に発生する廃棄物の処理は現在大きな社会問題となっており、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクルなどの種々のリサイクル方法が提案され、実施されている。
特にその廃棄物の中でも、PETボトルは嵩高いのでその処理は一層深刻になりつつある。そのリサイクル方法として、回収された使用済みPETボトルを再び溶融して繊維化又は樹脂成形品とするというマテリアルリサイクルが実施されている。ところが、単に溶融成形すると、その物性の低下により再びPETボトルとして使用することは不可能である。また、PETボトルを洗浄し再び再使用する方法は、外観の悪化、安全性、衛生性の観点などから、再使用回数に限度があり、最終的には廃棄されるので恒久的な対策とはなり得ない。
ケミカルリサイクル法は、近年多くの方法が提案されている。例えば、アルカリ化合物の存在下にポリエチレンテレフタレート廃棄物を加水分解し、テレフタル酸アルカリ塩を酸により中和してテレフタル酸を得る方法(特許文献1参照)、ポリアルキレンテレフタレートをアルキレングリコールにより解重合し、メタノールを用いて置換エステル化してテレフタル酸ジメチルとして回収する方法(特許文献2参照)、ポリエチレンテレフタレートをエチレングリコールと特定の触媒存在下で解重合し、メタノールを用いて置換エステル化してテレフタル酸ジメチルとして回収する方法(特許文献3参照)が提案されている。
PET樹脂ボトルの切断屑とホウ酸シリカゲルの混合物を加熱してテレフタル酸を回収する方法(非特許文献1参照)、PET樹脂ボトルの切断屑とリン酸シリカゲルもしくはホウ酸シリカゲルの混合物を加熱してテレフタル酸を回収する方法(非特許文献2参照)、さらには、PETペレットにエチレングリコールと酢酸亜鉛触媒を加え、マイクロ波照射することによりPETペレットを分解しビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートを得る方法が提案されている(非特許文献3参照)。
特開平11−21374号公報 特開2002−60369号公報 特開2003−160521号公報 井上正之、「ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂のクラッキングによるテレフタル酸の回収」化学と教育、45巻11号(1998)、735〜737頁 河本栄之助、笹川大善、富樫天馬、「熱分解によるPETのリサイクル」、東京工業大学附属科学技術高等学校 材料科学・環境化学・バイオ技術分野1999年度課題研究(同校のインターネットホームページ) 森一、野村英作、細田朝夫、谷口久次、「マイクロ波を利用したPETの分解反応」、和歌山県工業技術センター研究報告 Vol.2003,p,23
しかしながら、特許文献1の加水分解方法は、オートクレーブ中で加熱下長時間要するという問題がある。特許文献2で提案された方法は、分解に大量のエチレングリコールの併用を必要とし、加熱下長時間要するという問題がある。特許文献3で提案された方法は、解重合反応に有機リン化合物触媒を使用し、しかも加熱下長時間要するという問題がある。
非特許文献1で提案された方法は、テレフタル酸の回収率が最高60%弱であり局所加熱されタールが生成するという問題がある。非特許文献2で提案された方法は、テレフタル酸の回収率が27%弱であり低すぎる。非特許文献3で提案された方法は、大量のエチレングリコールの併用を必要とし、生成したビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートをさらに加水分解しないとテレフタル酸が得られないという問題がある。
本発明者らは、上記従来技術の問題点を解決すべく鋭意研究した検討した結果、エチレングリコールのような有機薬剤の併用を必要とせず、常圧下、熱源を使用することなく、極めて短時間でポリエステル、とりわけポリアルキレンテレフタレートやポリアルキレンナフタレート、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)を厚生モノマー成分に分解(解重合)する方法および芳香族ジカルボン酸、とりわけテレフタル酸やナフタレンジカルボン酸を収率よく回収する方法を発明するに至った。即ち、本発明の目的は、エチレングリコールのような有機薬剤の併用を必要とせず、常圧下、人為的に加熱することなく、極めて短時間でポリエステル、とりわけポリアルキレンテレフタレートやポリアルキレンナフタレート、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)を構成モノマー成分に分解(解重合)する方法および芳香族ジカルボン酸、とりわけテレフタル酸やナフタレンジカルボン酸を収率よく回収する方法を提供することにある。
本発明は、
「[1]アルキレングリコールと芳香族ジカルボン酸とからなるポリエステル小片と含水リン酸シリカ系粒子混合物触媒との混合物にマイクロウエーブを照射して、該ポリエステル小片をアルキレングリコールと芳香族ジカルボン酸に分解することを特徴とする、ポリエステルの分解方法。
[2]前記ポリエステルがポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートであり、前記アルキレングリコールがエチレングリコールであり、前記芳香族ジカルボン酸がテレフタル酸またはナフタレンジカルボン酸であることを特徴とする、[1]に記載の分解方法。
[3]前記小片が、ボトルの破砕物、粉砕物もしくは切断片;ペレット;粒状物;粉末;フィルムの切断片または繊維の切断片であることを特徴とする、[1]に記載の分解方法。
[4]前記含水リン酸シリカ系粒子混合触媒が、(a) 含水リン酸と(b) シリカゲル、珪藻土粉末、シリカ粉末、ガラス粉末または海砂粉末との混合物であることを特徴とする、[1]に記載の分解方法。
[5]前記ポリエステルと前記含水リン酸シリカ系粒子混合触媒中の水とのモル比が(1:1)〜(1:20)であることを特徴とする、[1]に記載の分解方法。
[6]リン酸とシリカ系粒子のモル比が、(1:1)〜(1:10)であることを特徴とする、[1]に記載の分解方法。
[7]前記ポリエステル小片と含水リン酸シリカ系粒子混合物触媒の配合重量比が、(100:150)〜(100:1500)であることを特徴とする、[1]に記載の分解方法。
[8]前記マイクロウエーブの周波数が300MHz〜300GHzであることを特徴とする、[1]に記載の分解方法。
[9]前記マイクロウエーブの周波数が800MHz〜20GHzであることを特徴とする、[8]に記載の分解方法。
[10]前記マイクロウエーブの照射時間が20分間〜5分間であることを特徴とする、[8]または[9]に記載の分解方法。
[11]アルキレングリコールと芳香族ジカルボン酸とからなるポリエステル小片と含水リン酸シリカ系粒子混合物触媒との混合物にマイクロウエーブを照射することによって生成した芳香族ジカルボン酸とアルキレングリコールの混合物に、アルカリ金属水酸化物水溶液を添加して芳香族ジカルボン酸を芳香族ジカルボン酸アルカリ金属塩水溶液とし、含水リン酸シリカ系粒子混合物触媒残渣を濾別し、濾液に鉱酸を添加して芳香族ジカルボン酸を析出させ、ついで析出した芳香族ジカルボン酸を濾別することを特徴とする、該ポリエステル小片から芳香族ジカルボン酸を回収する方法。
[12]前記ポリエステルがポリエチレンテレフタレートであり、前記芳香族ジカルボン酸がテレフタル酸であり、前記アルキレングリコールがエチレングリコールであり、前記アルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウムであり、前記鉱酸が塩酸であることを特徴とする[11]に記載の回収する方法。」
に関する。
なお、前記[3]では、「前記小片が、ボトルの破砕物、粉砕物もしくは切断片;ペレット;粒状物;粉末;フィルムの切断片または繊維の切断片であることを特徴とする、[2]に記載の分解方法」であってもよい。
前記[4]では、「前記含水リン酸シリカ系粒子混合触媒が、(a) 含水リン酸と(b) シリカゲル、珪藻土粉末、シリカ粉末、ガラス粉末または海砂粉末との混合物であることを特徴とする、[2]または[3]に記載の分解方法」であってもよい。
前記[5]では、「前記ポリエステルと前記含水リン酸シリカ系粒子混合触媒中の水とのモル比が(1:1)〜(1:20)であることを特徴とする、[2]〜[4]のいずれかに記載の分解方法。」であってもよい。
前記[6]では、「リン酸とシリカ系粒子のモル比が、(1:1)〜(1:10)であることを特徴とする、[2]〜[5]のいずれかに記載の分解方法」であってもよい。
前記[7]では、「前記ポリエステル小片と含水リン酸シリカ系粒子混合物触媒の配合重量比が、(100:150)〜(100:1500)であることを特徴とする、[2]〜[6]のいずれかに記載の分解方法」であってもよい。
前記[8]では、「前記マイクロウエーブの周波数が300MHz〜300GHzであることを特徴とする、[2]〜[7]のいずれかに記載の分解方法」であってもよい。
前記[10]では、「前記マイクロウエーブの照射時間が20〜5分間であることを特徴とする、[1]〜[7]のいずれかに記載の分解方法」であってもよい。」
本発明の分解方法によると、エチレングリコールのような有機薬剤の併用を必要とせず、常圧下、熱源を使用することなく、極めて短時間でポリエステル、とりわけポリアルキレンテレフタレートやポリアルキレンナフタレート、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)を構成モノマー成分に分解(解重合)することができる。
本発明の回収方法によると、ポリエステル、とりわけポリアルキレンテレフタレートやポリアルキレンナフタレート、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)から簡易に収率よくテレフタル酸やナフタレンジカルボン酸を回収することができる。
本発明の分解方法において分解対象とするアルキレングリコールと芳香族ジカルボン酸からなるポリエステルの代表例として、ポリアルキレンテレフタレートおよびポリアルキレンナフタレートがある。ポリアルキレンテレフタレートとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)が代表的であるが、エチレングリコール以外のアルキレングリコールとテレフタル酸からなるポリエステル、例えばポリブチレンテレフタレート;エチレングリコールとブチレングリコールとテレフタル酸からなるコポリエステル、エチレングリコールとテレフタル酸とその他のフタル酸とからなるコポリエステルであってもよい。ポリアルキレンテレナフタレートとしてポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレートが例示される。
本発明の分解方法において分解対象とするポリエステル小片の「小片」として、ボトルの破砕物、粉砕物もしくは切断片;ペレット;粒状物;粉末;フィルムの切断片または繊維の切断片が例示される。ここで、ペレット、粒状物、粉末は、前記ポリエステル、特にはポリアルキレンテレフタレートやポリアルキレンナフタレート、例えばポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートの重合工場における過剰生産品や規格外品、あるいは、ボトル、フィルム、繊維等のメーカに販売されたが、都合により溶融成形に供されることなく不要となったものなどである。上記小片は単独で分解、解重合に供してよく、2種以上を同時に分解、解重合に供してもよい。必要に応じて適宜選択され用いられる。
本発明の分解方法において使用される含水リン酸シリカ系粒子混合物触媒は、含水リン酸とシリカ系粒子の混合物が好ましいが、リン酸と含水シリカ系粒子の混合物、あるいは、リン酸とシリカ系粒子と水の混合物であってもよい。リン酸は、オルトリン酸が好ましいが、亜リン酸、ポリリン酸であってもよい。含水リン酸中の水分は特に制限されないが、水含有率は、10重量%〜30重量%の範囲が好ましく、より好ましくは、15重量%〜20重量%である。含水リン酸シリカ系粒子混合物触媒中の水含有量は、前記ポリエステル、例えばアルキレンテレフタレートやポリアルキレンナフタレートを構成モノマーに加水分解するのに十分な量以上が好ましい。前記ポリエステルと前記含水リン酸シリカ系粒子混合触媒中の水とのモル比は(1:1)〜(1:20)が好ましく、(1:1)〜(1:10)がより好ましい。後記する実施例では、1:3が多い。
含水リン酸シリカ系粒子混合物触媒におけるリン酸とシリカ系粒子、例えばシリカゲルとのモル比は、(1:1)〜(1:10)であることが好ましい。前記ポリエステル小片と含水リン酸シリカ系粒子混合物触媒の配合重量比は、(100:150)〜(100:1500)であることが好ましく、(100:200)〜(100:1000)がより好ましい。
シリカ系粒子は、シリカゲルが代表的であるが、石英粉末、乾式法シリカ(フュームドシリカ)、湿式法シリカ(沈降法シリカ)、コロイダルシリカのような純粋のシリカ粉末;珪藻土粉末、海砂粉末、ガラス粉末のようなシリカ含有量が多いシリカ系粒子ないし粉末であってもよい。本発明におけるシリカ系粒子は、保水性の点でμmオーダーからnmオーダーの微細なものやシリカゲル,珪藻土のように多孔質のものが好ましい。
含水リン酸シリカ系粒子混合物触媒は、含水リン酸とシリカ系粒子を単に混合すること、含水リン酸とシリカ系粒子含水物を単に混合すること、あるいは、含水リン酸とシリカ系粒子と水を単に混合することによって容易に製造することができる。また、含水リン酸を前記シリカ系粒子に含浸すること、含水リン酸を前記シリカ系粒子に噴霧することによっても製造することができる。含水リン酸シリカ系粒子混合物は、単なる混合物でだけでなく、シリカ系粒子表面に含水リン酸が付着したものや、シリカ系粒子中に含水リン酸が浸透したものを含む。このような混合物をそのまま分解反応の触媒として使用することが好ましい。このような混合物、組成物を加熱等して水分を除去すること(ドライアップ)は好ましくない。水を含有することによりマイクロウエーブ照射時に昇温し安くなり、分解反応、解重合反応が促進される。また、ポリエステル小片との混合時の粉塵爆発を回避しやすくなる。
本発明の分解方法では、前記ポリエステル小片と含水リン酸シリカ系粒子混合物触媒との混合物にマイクロウエーブを照射して、前記ポリエステル小片を芳香族ジカルボン酸、例えばテレフタル酸とアルキレングリコール、例えばエチレングリコールに分解する。
前記ポリエステル小片と含水リン酸シリカ系粒子混合物触媒との混合物は、前記ポリエステル小片と含水リン酸シリカ系粒子混合物触媒を単に混合することによって容易に調製することができる。混合方法として、撹拌羽根付きミキサー中での撹拌混合、V型ブレンダーのような振とう機中での振とうが例示される。混合中に静電気が発生するので、粉塵爆発を回避するために窒素ガス雰囲気下で混合することが好ましい。混合中に著しく昇温する場合は、冷やしながら混合するとよい。前記ポリエステル小片と含水リン酸シリカ系粒子混合物触媒との混合物は、必要に応じて第3成分を含有してもよい。
前記ポリエステル小片と含水リン酸シリカ系粒子混合物触媒との混合物へのマイクロウエーブの照射は、前記ポリエステル小片と含水リン酸シリカ系粒子混合物触媒との混合物を非金属製の容器に収納して、マイクロウエーブを照射することが好ましい。非金属製の容器は、誘電損率が低く、マイクロウエーブを透過させるものが好ましく、陶磁器製の容器、ガラス瓶、セラミック製の容器、石英製容器、アルミナ製容器が例示される。容器内の前記ポリエステル小片とリン酸シリカ系粒子混合物触媒との混合物へマイクロウエーブを均一に照射するために、該容器を回転させながら照射することが好ましい。
前記ポリエステル小片と含水リン酸シリカ系粒子混合物触媒との混合物へ照射するマイクロウエーブ(マイクロ波)は、前記ポリエステル小片を構成モノマーであるアルキレングリコールと芳香族ジカルボン酸に分解、解重合するのに十分な強度を有しておればよい。マイクロウエーブの周波数は、300MHz〜300GHzが好ましく、500MHz〜100GHzがより好ましく、800MHz〜20GHzがさらに好ましい。周波数が大きすぎると、前記容器自体が加熱され損傷することがあるからである。
マイクロウエーブの照射時間は、前記ポリエステル小片を構成モノマーであるアルキレングリコールと芳香族ジカルボン酸に分解、解重合するのに十分な時間であればよい。周波数が大きいほど照射時間は短くてよく、通常は20分間〜5分間である。前記ポリエステル小片のサイズ、前記ポリエステル小片と含水リン酸シリカ系粒子混合物触媒との配合比率、含水リン酸シリカ系粒子混合物触媒の触媒能、容器中の前記ポリエステル小片と含水リン酸シリカ系粒子混合物触媒との混合物の量などに応じて、分解率、解重合率ができるだけ100%に近づく時間を選択するとよい。
前記ポリエステル小片と含水リン酸シリカ系粒子混合物触媒との混合物へマイクロウエーブを照射することにより、前記ポリエステル小片を構成モノマーであるアルキレングリコールと芳香族ジカルボン酸に分解、解重合した後、芳香族ジカルボン酸を単離するには、マイクロウエーブ照射物に、アルカリ金属水酸化物(例えば苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)、苛性カリ(水酸化カリウム))の水溶液を添加し撹拌・混合して芳香族ジカルボン酸のアルカリ金属塩とする。濾過して固形物(例、ポリエステル小片残渣、シリカ系粒子)を分離し、濾液(芳香族ジカルボン酸のアルカリ金属塩水溶液)に鉱酸、例えば塩酸を加えて中和すると芳香族ジカルボン酸の結晶が析出する。それを濾別して芳香族ジカルボン酸の結晶を得る。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
実施例中、ポリエチレンテレフタレート小片またはポリエチレンナフタレート小片と含水リン酸シリカ系粒子混合物触媒の混合物へのマイクロウエーブ照射は、該混合物を磁器製ルツボに入れて、家庭用電子レンジ(松下電器産業株式会社製、出力600W、マイクロウエーブの周波数2450MHz、ターンテーブルの直径25cm)のプレート上に載置し、ターンテーブルを回転させつつマイクロウエーブを照射することによった。
磁器製るつぼ:アズワン株式会社製のカタログ番号AJ-0914-100-03の磁器製るつぼ(外形φ45X36h、内容積30ml、肉厚2.2mm、化学組成Al2O3/60%,SiO235%)。
クーゲルロール:柴田科学器械株式会社製GLASS TUBE OVEN GTO-350RD。350℃まで昇温可能である。
含水リン酸:オルトリン酸(試薬特級、水含有量15重量%)
シリカゲル:ナカライテスク株式会社発売のSilica Gel 60(230〜400mesh)
セライト:ナカライテスク株式会社発売のCelite-545(Celite Corp.の商標、平均粒径17μmの珪藻土粉末)
海砂:キシダ化学株式会社発売の海砂(30〜50mesh)を乳鉢にて粉体になるまで粉砕したもの。
PET樹脂:Sigma Aldrich Co.製ペレット状ポリエチレンテレフタレート樹脂、輸入元シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社、カタログ番号20,025-5(立方体状チップ、大きさ2 mm×2 mm×2 mm)
PEN樹脂:Sigma Aldrich Co.製ペレット状ポリエチレンテレナフタレート樹脂、輸入元シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社、カタログ番号43,531-7(立方体状チップ、大きさ2 mm×2 mm×2 mm)
[参考例1] 含水リン酸シリカゲル混合物(リン酸とシリカゲルのモル比1:3)触媒の調製
ビーカー中で、前記含水リン酸3.760gと前記シリカゲル5.760gを充分に撹拌し均一な粉末状混合物を調製した。
[参考例2] 含水リン酸シリカゲル混合物(リン酸とシリカゲルのモル比1:7)触媒の調製
ビーカー中で、前記含水リン酸1.562gと前記シリカゲル5.760gを充分に撹拌し均一な粉末状混合物を調製した。
[参考例3] 含水リン酸セライト混合物(リン酸とセライトのモル比1:3)触媒の調製
ビーカー中で、前記含水リン酸3.760gと前記セライト5.760gを充分に撹拌し均一な粉末状混合物を調製した。
[参考例4] 含水リン酸セライト混合物(リン酸とセライトのモル比1:7)触媒の調製
ビーカー中で、前記含水リン酸1.562gと前記セライト5.760gを充分に撹拌し均一な粉末状混合物を調製した。
[参考例5] 含水リン酸海砂混合物(リン酸と海砂のモル比1:3)触媒の調製
ビーカー中で、前記含水リン酸3.760gと前記海砂5.760gを充分に撹拌し均一な粉末状混合物を調製した。
[参考例6] 含水リン酸シリカゲル混合物(モル比1:3)触媒のドライアップ品の調製
参考例1の粉末状混合物を加熱して水分を除去した。
[参考例7] ホウ酸シリカゲル触媒の調製
50ml丸底フラスコに金属撹拌子、オルトケイ酸テトラエチル(8.922ml、40mmol)、1N HCl水溶液(20ml)を入れた後、撹拌しながらホウ酸(742mg、12mmol)を加えラバーセプタムをつけた。室温にて2時間撹拌後、80℃にて2時間撹拌し、さらに120℃で2日間保持した。析出した結晶を乳鉢で粉砕し、130℃のオーブン中に4日間保持して粉末状のホウ酸シリカゲル触媒を得た。
ポリエチレンテレフタレートの分解生成物である白色結晶の1H-NMRスペクトルは、400MHzでDMSOとCDCL3の混合液にて測定した。8.05ppm(s, 4H)によりテレフタル酸であることを確認した。分解生成物である白色結晶の赤外線吸収スペクトルは臭化カリウム錠剤法により試料を調製して測定した。3104cm-1、3064cm-1、2968cm-1、2568cm-1、2555cm-1、1692cm-1、1574cm-1、1510cm-1、1425cm-1、1286cm-1の吸収ピークによりテレフタル酸であることを確認した。2,6−ナフタレンジカルボン酸についてもほぼ同様に確認した。
[実施例1]
前記磁器製るつぼに、参考例1のリン酸シリカゲル混合物触媒3000mgと前記PET樹脂500mgを加え、前記電子レンジのターンテーブル上に載置して、ターンテーブルを回転させつつ10分間マイクロウエーブを照射した。照射後、水酸化ナトリウム水溶液(2mol/l=N,固形分約8重量%)20mlを添加してよく撹拌し、濾過し、さらに水30mlを用いて洗浄した。濾液に塩酸水溶液(3mol/l=N,塩酸約8重量%)50mlを添加してよく撹拌し、析出した白色結晶を桐山ロートにて吸引ろ過した。得られた白色結晶を熱風循環式オーブンにて乾燥した後、1H-NMRスペクトルと赤外線吸収スペクトルを測定してテレフタル酸であることを確認し、重さを測定することでテレフタル酸の収率を算出し、表1に示した。
[比較例1〜比較例5]
実施例1において、参考例1の含水リン酸シリカゲル混合物触媒無添加で照射時間30分間(比較例1)、シリカゲルのみ2000mgで照射時間20分間(比較例2)、含水リン酸のみ1000mgで照射時間1.5分間(比較例3)、参考例7のホウ酸シリカゲル触媒1000mgで照射時間15分間(比較例4)、または参考例6の含水リン酸シリカゲル混合物触媒のドライアップ品1000mgで10分間(比較例5)とした他は同一条件でマイクロウエーブ照射等をした。それらの結果を表1に示した。表1中の収率はテレフタル酸の収率である。
Figure 2007211188

※比較例3において、2分間のときは、るつぼが破損して回収できず、1.5分間(1分30秒間)のときの収率が25%である。
[実施例2](注:第六節のEntry 3)
実施例1において、照射時間を15分間とした他は同一条件でマイクロウエーブ照射等をした。テレフタル酸の率は81%であった。
[実施例3](注:第七節のEntry 2)
実施例1において、参考例1の含水リン酸シリカゲル混合物触媒を2000mgとした他は同一条件でマイクロウエーブ照射等をした。テレフタル酸の収率は73%であった。
[実施例4]
実施例1において、参考例1の含水リン酸シリカゲル混合物触媒の代わりに参考例2の含水リン酸シリカゲル混合物触媒2000mgを使用し、マイクロウエーブ照射時間を15分間、または20分間とした他は同一条件でマイクロウエーブ照射等をした。テレフタル酸の収率はそれぞれ61%、73%であった。
[実施例5]
実施例1において、参考例1の含水リン酸シリカゲル混合物触媒の代わりに、参考例3の含水リン酸セライト混合物触媒を使用した他は同一条件でマイクロウエーブ照射等をした。テレフタル酸の収率は70%であった。
[実施例6]
実施例1において、参考例1の含水リン酸シリカゲル混合物触媒の代わりに、参考例5の含水リン酸海砂混合物(モル比1:3)触媒を使用した他は同一条件でマイクロウエーブ照射等をした。テレフタル酸の収率は76%であった。
[実施例7]
市販のミネラルウオータがはいっていたペットボトルを洗浄し、厚さ0.40mm位の部分を切断して約0.5mm〜1mm四方の小片多数を作った。
実施例1において、PET樹脂ペレットの代わりに上記小片を使用し、参考例1の含水リン酸シリカゲル混合物触媒を2000mg、3000mg、または5000mgとした他は同一条件でマイクロウエーブ照射等をした。テレフタル酸の収率はそれぞれ73%、68%、76%であった。
[実施例8]
実施例1において、PET樹脂ペレットの代わりに市販のペットボトルの粉砕物500mgを使用し、参考例1の含水リン酸シリカゲル混合物触媒を1000mgとした他は同一条件でマイクロウエーブ照射等をした。テレフタル酸の収率は83%であった。
[実施例9]
実施例1において、PET樹脂ペレットの代わりに前記PEN樹脂500mgを使用し、照射時間を10分間または15分間とした他は同一条件でマイクロウエーブ照射等をした。2,6−ナフタレンジカルボン酸の収率はそれぞれ、81%、95%であった。
[実施例10]
実施例1において、参考例1の含水リン酸シリカゲル混合物触媒の代わりに、参考例4の含水リン酸セライト混合物触媒3000mgを使用し、照射時間を15分間とした他は同一条件でマイクロウエーブ照射等をした。テレフタル酸の収率は70%であった。
[実施例11]
実施例1において、参考例1の含水リン酸シリカゲル混合物触媒の代わりに、参考例4の含水リン酸セライト混合物触媒3278mgを使用し、照射時間を15分間とした他は同一条件でマイクロウエーブ照射等をした。テレフタル酸の収率は96%であった。
[実施例12]
実施例1において、参考例1の含水リン酸シリカゲル混合物触媒の代わりに、参考例4の含水リン酸セライト混合物触媒4117mgを使用し、照射時間を15分間とした他は同一条件でマイクロウエーブ照射等をした。テレフタル酸の収率は90%であった。
[比較例6]
アルミホイルで2cm四方の箱状反応容器を作った。市販のペットボトルの厚さ0.40mm位の部分を切断して0.5mm四方の小片多数を作った。該小片200mgと参考例7のホウ酸シリカゲル触媒200mgを均一に混合して前記反応容器に投入し、クーゲルロールを用いて350℃にて2時間加熱した。昇華して器壁に付着した白色結晶をDMFにて洗浄して回収し、加熱減圧下該DMFを留去して白色結晶を得た。該白色結晶の1H-NMRスペクトルと赤外線吸収スペクトルを測定してテレフタル酸であることを確認し、重さを測定することで収率を算出した。テレフタル酸の収率は17%であった。
[比較例7]
比較例6において、参考例7のホウ酸シリカゲル触媒200mgの代わりに参考例1の含水リン酸シリカゲル混合物触媒200mgを用いた他は同一の条件で加熱して白色結晶を回収した。該白色結晶の1H-NMRスペクトルと赤外線吸収スペクトルを測定してテレフタル酸であることを確認し、重さを測定することで収率を算出した。収率は13%であった。
[比較例8]
比較例6において、参考例7のホウ酸シリカゲル触媒200mgの代わりに参考例1の含水リン酸シリカゲル混合物触媒400mgを用いた他は同一の条件で加熱して白色結晶を回収した。該白色結晶の1H-NMRスペクトルと赤外線吸収スペクトルを測定してテレフタル酸であることを確認し、重さを測定することで収率を算出した。テレフタル酸の収率は27%であった。
[比較例9]
比較例6において、参考例7のホウ酸シリカゲル触媒200mgの代わりにシリカゲル200mgを用い、加熱時間を4時間とした他は同一の条件で加熱して白色結晶を回収した。該白色結晶の1H-NMRスペクトルと赤外線吸収スペクトルを測定してテレフタル酸であることを確認し、重さを測定することで収率を算出した。テレフタル酸の収率は7%であった。
[比較例10]
比較例6において、無触媒で、加熱時間を2時間とした他は同一の条件で加熱したが、白色結晶は生成しなかった。
Figure 2007211188
[比較例11]
アルミホイルで円筒状反応容器(大きさ:φ1.5cm×4cm(h))を作った。該反応容器に参考例1の含水リン酸シリカゲル混合物触媒1000mgと前記PET樹脂500mgの混合物を入れ、それをパイレックス(コ−ニング インコ−ポレ−テツドの登録商標)ガラス製試験管に入れ、該試験管の上部に綿を詰め、該試験管の底部をガスバーナにより6分間加熱した。該試験管の内壁に付着した白色結晶を回収した。しかし、白色結晶は、ところどころタールにより茶色く汚れていた。該白色結晶の1H-NMRスペクトルと赤外線吸収スペクトルを測定してテレフタル酸であることを確認し、重さを測定することで収率を算出した。テレフタル酸の収率は52%であった。
本発明のアルキレングリコールと芳香族ジカルボン酸からなるポリエステル小片の分解方法は、廃棄物であるポリエステル製、とりわけポリアルキレンテレフタレートやポリアルキレンナフタレート、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)製やポリエチレンナフタレート(PEN)製の容器、特には飲料用ボトル、繊維、フィルム、成形品等をエチレングリコールとテレフタル酸に分解、解重合するのに有用である。本発明の芳香族ジカルボン酸の回収方法は、廃棄物であるポリエステル製、とりわけポリアルキレンテレフタレートやポリアルキレンナフタレート、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)製やポリエチレンナフタレート(PEN)製の容器、特には飲料用ボトル、繊維、フィルム、成形品等から芳香族ジカルボン酸、とりわけテレフタル酸やナフタレンジカルボン酸を回収するのに有用である。回収した芳香族ジカルボン酸、とりわけテレフタル酸やナフタレンジカルボン酸は高純度であるので、ポリエステル、とりわけポリアルキレンテレフタレートやポリアルキレンナフタレート、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)の重合原料として有用である。

Claims (12)

  1. アルキレングリコールと芳香族ジカルボン酸とからなるポリエステル小片と含水リン酸シリカ系粒子混合物触媒との混合物にマイクロウエーブを照射して、該ポリエステル小片をアルキレングリコールと芳香族ジカルボン酸に分解することを特徴とする、ポリエステルの分解方法。
  2. 前記ポリエステルがポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートであり、前記アルキレングリコールがエチレングリコールであり、前記芳香族ジカルボン酸がテレフタル酸またはナフタレンジカルボン酸であることを特徴とする、請求項1に記載の分解方法。
  3. 前記小片が、ボトルの破砕物、粉砕物もしくは切断片;ペレット;粒状物;粉末;フィルムの切断片または繊維の切断片であることを特徴とする、請求項1に記載の分解方法。
  4. 前記含水リン酸シリカ系粒子混合触媒が、(a) 含水リン酸と(b) シリカゲル、珪藻土粉末、シリカ粉末、ガラス粉末または海砂粉末との混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の分解方法。
  5. 前記ポリエステルと前記含水リン酸シリカ系粒子混合触媒中の水とのモル比が(1:1)〜(1:20)であることを特徴とする、請求項1に記載の分解方法。
  6. リン酸とシリカ系粒子のモル比が、(1:1)〜(1:10)であることを特徴とする、請求項1に記載の分解方法。
  7. 前記ポリエステル小片と含水リン酸シリカ系粒子混合物触媒の配合重量比が、(100:150)〜(100:1500)であることを特徴とする、請求項1に記載の分解方法。
  8. 前記マイクロウエーブの周波数が300MHz〜300GHzであることを特徴とする、請求項1に記載の分解方法。
  9. 前記マイクロウエーブの周波数が800MHz〜20GHzであることを特徴とする、請求項8に記載の分解方法。
  10. 前記マイクロウエーブの照射時間が20分間〜5分間であることを特徴とする、請求項8または請求項9に記載の分解方法。
  11. アルキレングリコールと芳香族ジカルボン酸とからなるポリエステル小片と含水リン酸シリカ系粒子混合物触媒との混合物にマイクロウエーブを照射することによって生成した芳香族ジカルボン酸とアルキレングリコールの混合物に、アルカリ金属水酸化物水溶液を添加して芳香族ジカルボン酸を芳香族ジカルボン酸アルカリ金属塩水溶液とし、含水リン酸シリカ系粒子混合物触媒残渣を濾別し、濾液に鉱酸を添加して芳香族ジカルボン酸を析出させ、ついで析出した芳香族ジカルボン酸を濾別することを特徴とする、該ポリエステル小片から芳香族ジカルボン酸を回収する方法。
  12. 前記ポリエステルがポリエチレンテレフタレートであり、前記芳香族ジカルボン酸がテレフタル酸であり、前記アルキレングリコールがエチレングリコールであり、前記アルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウムであり、前記鉱酸が塩酸であることを特徴とする請求項11に記載の回収する方法。

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