JP2007204838A - 地下埋設構造物の電気防食方法と電気防食構造 - Google Patents
地下埋設構造物の電気防食方法と電気防食構造 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】本発明は、地下に埋設した防食被覆済みの鋼構造物21の周囲に外面被覆済みの鋼製ケーシング27を設け、前記鋼構造物21と前記鋼製ケーシング27との間に電解質の充填材28を充填した構成の地下埋設構造物の電気防食方法であって、直流電源の25正極側を前記鋼製ケーシング27に接続し、直流電源25の負極側を前記鋼構造物21に接続し、前記直流電源から前記鋼構造物21に通電することにより当該鋼構造物21の防食を行うものである。
【選択図】図1
Description
この鋼構造物の腐食を防止するため、鋼構造物の外面にポリエチレン等の熱可塑性樹脂の防食被覆を施す必要がある。しかしながら、上記樹脂の防食被覆が何等かの原因により損傷を受けた場合、防食被覆が損傷した部分の金属面が腐食することとなる。
このような地下埋設鋼構造物の金属面の腐食を防止するために、電気防食法を施すことが知られている。この電気防食法とは、鋼構造物を陰極として外部から直流電流を流入させる方法として知られており、このうち直流電流を用いて正極側に陽極を接続し、負極側に被防食体となる鋼構造物を接続して電圧を加える方式が外部電源方式と称されている。電気防食法に用いる陽極材料としては、消耗度が小さく、大きな電流に長期間に亘って安定して供給できる性能と耐久性が要求され、土壌中では、珪素鉄電極、磁性酸化鉄電極、金属酸化物被覆電極等が使用されている。
例えば図2に示すように鋼構造物1の周面と底面に塗装等により防食被覆2を形成したものが地下に埋設され、この鋼構造物1の周囲の土壌に鋼構造物1の周囲を囲むように鋼製ケーシング7が埋設され、鋼構造物1と鋼製ケーシング7との間にエアモルタル等の充填材8が充填された構造の地下埋設物Aに対し、これと若干離れた土壌中に陽極6を埋設し、先の鋼構造物1と陽極6を配線aを介して電源5に接続してなる地下埋設物の防食構造が知られている。
図2に示すように鋼製ケーシング7の外部の土壌中に陽極6を設置すると、鋼製ケーシング7の表面が無塗装の場合、陽極6から流れ出た防食電流4は、鋼製ケーシング7に流入した後、鋼製ケーシング7を通路としてその全体に流れ、鋼製ケーシング7において先の防食被覆2の被覆損傷部3の近くの部分から集中的に流れ出て充填材8を介して被覆損傷部3に到達し、防食効果を得ることができる。
この非特許文献1に記載技術によれば、二重構造のパイプラインの内管外管の電気防食方法として、金属製ケーシングの内部に陽極を配置して内管に防食電流を供給する実験を図3に示す実験回路を用いて行っている。
図3に示す実験回路は、鋼管からなる外管10の内部に塩化ビニル樹脂製の内管11を同心位置に配置して同心円筒管を構成し、内筒外周部に一定の間隔をあけて亜鉛のリング状の陽極12と陰極13とを配置し、陰極13を被覆損傷と見立て、陽極12と陰極13とを直流電源15に接続し、通電した際の電流の挙動を調査するための回路である。図3において直流電源15の陰極端子を前記陰極13に接続し、直流電源15の陽極端子を前記陽極12にタイマー16とスイッチ17を介して接続し、外筒10の外周部に電極18を配置するとともに、外筒10の両端開口部をアクリル板19で閉じ、内部に水を満たして構成してある。
また、図4に示す如く内挿管30と鞘管31からなる同心2重管を地盤32内に水平に埋設した構造において、内挿管30と鞘管31との間に充填材33を充填し、内挿管30と鞘管31のほぼ全長に亘るようにアノード線34を配置し、外部電源35の電極の一方を内挿管30に接続し、電極の他方を鞘管31に接続して通電する構成の地下埋設構造物の防食構造が知られている。(特許文献1参照)
「二重管における内管外面の陰極防食法」 (社)腐食防食協会’82 春期学術講演大会 Bー203
また、先に説明した図3の実験回路に基づく試験によれば、陽極12から流れ出た防食電流は、鋼製ケーシングである外筒10に流入した後、外筒10を電気の通路として、陰極13の付近において外筒10から集中的に流出し、陰極13に流れ込むことが確認されている。
上記のように、鋼製ケーシング7に囲まれた鋼構造物1を電気防食する場合、鋼構造物1への電気防食効果は鋼製ケーシング7の影響を大きく受けることとなり、陽極6の設置場所によっては施工が困難となり、鋼構造物1の防食に障害を与える危険性もある。
また、先の図4に示す如く特許文献1に記載された構造では、地下埋設物の全長に亘りアノード線34を埋設しなくてはならないので、施工コストが嵩む問題がある。特に、内挿管30と鞘管31との間の狭い間隙に充填材33に囲まれるように内挿管30と鞘管31のほぼ全長に亘りこれらに接触することなくアノード線34を埋設することは、施工上極めて煩雑な問題があり、また、仮に設計通りに埋設できたとしても、施工後の地盤沈下や地震などの影響により、防食性能に影響が出るおそれがあった。
(2)本発明の地下埋設構造物の電気防食方法は、前記鋼構造物として普通鋼からなる収容器を用い、前記鋼製ケーシングとして鋼管杭を用い、前記防食被覆としてポリエチレン系、ポリプロピレン系、アスファルト系、エポキシ系樹脂のいずれかを用いることを特徴とする。
(4)本発明の地下埋設構造物の電気防食構造は、前記鋼構造物が普通鋼からなる収容器であり、前記鋼製ケーシングが鋼管杭であり、前記防食被覆がポリエチレン系、ポリプロピレン系、アスファルト系、エポキシ系樹脂のいずれかからなることを特徴とする。
図1は本発明の地下埋設構造物の電気防食方法を実施するための地下埋設構造物の電気防食構造の一例を示すもので、この形態の構造において、上端部の一部を地表に出して地盤20に縦長の鋼構造物21がほぼ垂直に埋設されている。この鋼構造物21は、例えば天然ガスなどの貯蔵用のタンクとなり得る鋼(普通鋼)製のパイプであり、その周面と底面は樹脂の被覆層22によって覆われ、鋼構造物21の上端部には内容物の出し入れ用の図示略の開閉自在の出入口が形成されている。この鋼構造物21の外側の地盤20には鋼構造物21よりも若干深い位置まで到達し、鋼構造物21よりも径の大きな鋼管杭からなる鋼製ケーシング27がその上端部を地表部分に到達させてほぼ垂直に埋設され、鋼構造物21と鋼製ケーシング27との間の部分にエアモルタルなどからなる電解質の充填材28が充填されている。前記鋼製ケーシング27はパイプ状の鋼管杭を鋼製ケーシング27よりも若干深い位置まで埋め込んでなるので、鋼構造物21の周囲とその底部側は充填材28により覆われている。
前記鋼製ケーシング27は例えば普通鋼からなり、その内面には被覆層などが形成されていない状態とされ、その外面には前述した被覆層22と同様の被覆層が形成されていても、されていない状態でもいずれでも差し支えない。前記鋼製ケーシング27は例えばポリエチレン被覆鋼管などからなる。前記充填材28はエアモルタルなどのモルタル材からなることが好ましく、鋼構造物21周囲の土壌を改良して鋼構造物21が腐食し難い地盤構造となるように地盤に充填されている。
次に、直流電源25が地盤20上に設けられ、この直流電源25の正極側が鋼構造物21に負極側が鋼製ケーシング27に配線bにより接続され、前記直流電源25から前記鋼構造物21と鋼製ケーシング27に通電することができるように構成されている。この直流電源25の起電力は数V程度あればよい。
従って、直流電源25が鋼構造物21の直近に設けられている必要性はなく、離れた場所に設けられている電源装置から電線を介してこれらに接続されていても良く、また、直近あるいは離れた位置に設置されたバッテリなどから電気を供給できるように構成されていても良い。以上説明の如く本実施形態においては、鋼構造物21と充填材28と鋼製ケーシング27と配線bと直流電源25とを具備して地下埋設構造物の防食構造がなされている。
このように鋼構造物21と鋼製ケーシング27との間に直に直流電源25からの通電を行えば、従来地盤に設けていた陽極を別途埋設しなくとも損傷部23が発生した後において電気防食効果を発揮させることができ、鋼構造物21の防食状態に障害を与える危険性を無くすることができる。また、本実施形態の構成では従来構造において必要であった陽極を略することができるので、施工コストを削減できるとともに、損傷部23が鋼構造物21のいずれの部位に生じてもこれを囲む鋼製ケーシング27の一部から確実に防食電流を流すことができる結果として信頼性の高い電気防食構造と電気防食方法を実現することができる。
なお、防食電流24を長い間流し続けると、鋼製ケーシング27の金属部分が部分的に溶出して減少する減肉現象を生じるが、鋼製ケーシング27が犠牲陽極となって多少減肉しても鋼構造物21の腐食は生じないので、鋼構造物21の腐食防止効果を長期間維持することができ、従来の如く地盤に陽極を別途埋設していた構造に比べ、施工が容易であり、陽極交換などのメンテナンスが不要となり、設備の維持管理に有利な特徴を有する。
21 鋼構造物、
22 被覆層、
23 損傷部、
24 防食電流、
25 直流電源
27 鋼製ケーシング、
28 充填材、
b 配線、
Claims (4)
- 地下に埋設した防食被覆済みの鋼構造物の周囲に少なくとも内側が防食被覆されていない鋼製ケーシングを設け、前記鋼構造物と前記鋼製ケーシングとの間に電解質の充填材を充填した構成の地下埋設構造物の電気防食方法であって、直流電源の正極側を前記鋼製ケーシングに接続し、直流電源の負極側を前記鋼構造物に接続し、前記直流電源から前記鋼構造物に通電することにより当該鋼構造物の防食を行うことを特徴とする地下埋設構造物の電気防食方法。
- 前記鋼構造物として普通鋼からなる収容器を用い、前記鋼製ケーシングとして鋼管杭を用い、前記防食被覆としてポリエチレン系、ポリプロピレン系、アスファルト系、エポキシ系樹脂のいずれかを用いることを特徴とする請求項1に記載の地下埋設構造物の電気防食方法。
- 地下に埋設した防食被覆済みの鋼構造物の周囲に少なくとも内側が防食被覆されていない鋼製ケーシングが設けられ、前記鋼構造物と前記鋼製ケーシングとの間に電解質の充填材が充填された構成の地下埋設構造物の電気防食構造であって、直流電源の正極側が前記鋼製ケーシングに接続され、直流電源の負極側が前記鋼構造物に接続され、前記直流電源から前記鋼構造物に通電自在とされてなることを特徴とする地下埋設構造物の電気防食構造。
- 前記鋼構造物が普通鋼からなる収容器であり、前記鋼製ケーシングが鋼管杭であり、前記防食被覆がポリエチレン系、ポリプロピレン系、アスファルト系、エポキシ系樹脂のいずれかからなることを特徴とする請求項3に記載の地下埋設構造物の電気防食構造。
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