JP2007203719A - 射出成形用樹脂型及び射出成形用樹脂型の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 金属製の金型よりもコストが低く、離型性がよく、破損の生じ難い樹脂型を提供する。
【解決手段】 ASTMのD−648に規定された荷重1.820MPaでの熱変形温度が140℃以上300℃以下で、かつASTMのD−256に基づいて測定されるノッチ付きアイゾット衝撃値が40J/m以上230J/m以下を満たすMCナイロンからなる樹脂型1。この樹脂型1は、可動型2と固定型3とからなり、固定型3は複数に分割可能に成形されている。
【選択図】 図1
【解決手段】 ASTMのD−648に規定された荷重1.820MPaでの熱変形温度が140℃以上300℃以下で、かつASTMのD−256に基づいて測定されるノッチ付きアイゾット衝撃値が40J/m以上230J/m以下を満たすMCナイロンからなる樹脂型1。この樹脂型1は、可動型2と固定型3とからなり、固定型3は複数に分割可能に成形されている。
【選択図】 図1
Description
本発明は、射出成形用の樹脂型に関する。
従来、射出成形によって樹脂等の高分子材料からなる成形物を製造する場合は、一般的に、耐久性に優れ、大量生産に適する金属製の金型が用いられる(特許文献1)。
ところが、こうした金属製の金型は製造コストが高いために、試作や少量生産を行うような場合には適さない。一般に製品設計を短時間で行うには試作品によって早く結果が出したいのに、このような金属性金型の製造の手間は量産金型と同じであり、現在ではこの金型製作の過程での時間短縮はあきらめられている。しかし、この時間短縮のために金属製の金型に代わる樹脂製の金型の検討もなされており、その樹脂材料としては、射出成形される樹脂温度の関係から熱硬化性樹脂などが試されているが、成形品が細かな形状を有する場合は、射出時や成型品の取り出しの過程で型の一部が破損してしまう場合があった。このような場合、破損を生じ易い箇所に対して部分的に金属製の入れ子を嵌め込むことで解決を図ることができるが、結果として金属部材を用いることでコスト高となり、さらに製造工程も複雑となってあまりメリットがないのが実情であり、相変わらず試作においても金属製の金型が使われている。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、金属製の金型よりも短時間で設計・製造でき、コストが低く、離型性がよく、破損の生じ難い射出成形用樹脂型及びその製造方法を提供するものである。
上記課題を解決するために、本発明の射出成形用樹脂型は、ASTMのD−648に規定された荷重1.820MPaでの熱変形温度が140℃以上300℃以下で、かつASTMのD−256に基づいて測定されるノッチ付きアイゾット衝撃値が40J/m以上230J/m以下の樹脂材料からなることを特徴とする。
金属材料を利用することなく樹脂のみで製作される本発明の射出成形用樹脂型(以下、樹脂型ともいう)は、従来の金属製の金型よりも低コストで製作できるとともに、上記範囲の熱変形温度とアイゾット衝撃値を満たすことで金型での成形品と同等の成形品を成形することが可能となった。これにより、成形品の開発段階において、金型よりも低コストな樹脂型で成形品の試作を行うことが可能となる。さらに、従来の試作用の金属製金型は、設計したデータを基に外部に依頼して金型を製作するため試作の金型で実際の成形品の評価を行うまでに相当の時間がかかっていたが、金属よりも切削性の良い樹脂材料を用いることで、その製作時間を短縮できる。また、少数生産品を成形する場合、型には金属ほどの高い耐久性が必要ないため、金属製の金型よりも本発明の樹脂型を用いた方がコスト面において利点がある。
また、前記樹脂材料がMCナイロンからなるものであっても良い。また、前記樹脂材料がポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミドのうちのいずれか一つからなるものであってもよい。樹脂型は、金属製の金型に近い物性を備えさせるために、比較的高い硬度・強度を有し、かつ荷重たわみ温度の高いエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられることが多いが、逆に荷重たわみ温度の低い熱可塑性樹脂からなる樹脂型は存在しなかった。ところが、微細構造部分を備える成形品の成形において、エポキシ樹脂からなる樹脂型を用いる場合には、樹脂型の靭性が低いため、その微細構造部分においてクラックが生じるという課題があった。本発明は、上記のアイゾット衝撃値及び荷重たわみ温度を満たすMCナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、又はポリエーテルイミドで、微細構造部分のクラックが発生し難い樹脂型の製作を可能としたものであり、射出する樹脂の樹脂温度と融点(あるいは軟化点)さえ注意すれば、型が破損することなく、金属製の金型で成形した成形品と同等の成形品を成形することが可能となった。
また、これらの樹脂からなる樹脂型を作製したところ、抜き勾配を形成せずとも十分な成形品の離型性を有することが明らかとなった。これにより、抜き勾配のない理想的な形状の成形品の生産が可能となるとともに、抜き勾配の設計が不要となるため設計時間が大幅に短縮された。また、これらの樹脂型は、射出成型機に備えられるエジェクタ機構を利用しなくても、成形品を樹脂型から手で抜き取れることが明らかとなり、エジェクタ機構を必要としない成形品の生産が可能となった。少数生産品の場合は、より生産コストを抑えるために、成形品及び成形装置の双方に対して余計な機能や構造(例えば、樹脂型に設けられるエジェクトピンを通すための孔等)を設計して形成することは好ましくないため、離型が人の手でできることは大きな利点となる。また、エジェクタ機構におけるエジェクトピンが成形品に接触することがなくなるため、成形品にはエジェクトピンによる接触痕が形成されず、外観が損なわれない利点もある。
さらに、これらの樹脂型のうち、MCナイロンからなる樹脂型の場合は、その素材のコストが他の樹脂と比較すると極めて安価である。同種のナイロン製の成形品生産に適用することはできないが、それ以外の高分子材料の成形品であれば極めて安価に成形することが可能である。例え、使用に伴って樹脂型の耐久性が低下する、あるいは破損したとしても、代替の型を安価に製作することができる。また、切削性にも優れるため、MCナイロンからなるブロック体をマシニングセンタ等によって切削加工するだけで容易にかつ短時間で型を製作することができる。さらに、切削性に優れるため樹脂型成形後のバリ取りも容易となる。
また、前記樹脂材料がポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミドのうちのいずれか一つからなるものである場合は、MCナイロンよりも素材のコストは高いが、MCナイロンからなる樹脂型では処理できないナイロン性の樹脂、例えば、生産頻度の高いナイロン6やナイロン66等の成形品を、金属製の金型よりも低コストで生産することができる。
前記射出成形用樹脂型は、型締め状態で内部にキャビティを形成する第一の型と第二の型とからなり、前記第一の型と前記第二の型のうちの少なくとも一方は複数の分割型に分離可能とされていてもよい。上記構成によれば、分割された樹脂型は、成形品との接触面積が小さいため離型性がよく、成形品の取り外しが容易となる。上記のMCナイロンのような離型性に優れる樹脂型であっても、成形品の形状によっては離型が困難となるため、その場合には、型を予め分割して離型を容易とすることができる。
また、本発明の射出成形用樹脂型の製造方法は、MCナイロンからなる被切削体をマシニングセンタによる切削加工を行う射出成形用樹脂型の製造方法であって、前記マシニングセンタの主軸先端に刃部を有する切削工具を装着し、その刃部と前記被切削体とを接触させ、かつその刃部と前記被切削体との相対位置関係を変化させることで、前記被切削体を切削加工することを特徴とする。
本発明のMCナイロンからなる樹脂型は、所定の樹脂材料からなるブロック体をマシニングセンタのエンドミルやドリル等の回転工具で切削加工することで容易にかつ短時間で製作することが可能である。ところが、従来のエンドミル等の回転工具の場合は、強度上の制約からその長さには限界があり、このため回転工具の届く範囲以上の深い溝等を形成することはできなかった。ところが、MCナイロンからなる本発明の樹脂型の場合は、アクリルカッター等でも容易に切削できるほど切削性が良い。すなわち、少なくともアクリルよりも高い硬度を有する切削工具であれば切削可能となる。そのため、マシニングセンタの主軸先端にエンドミルに替わって刃部を有する切削工具を装着し、この切削工具を被切削体であるブロック体に接触させ、双方を相対的に移動させることで、刃部によるブロック体の切削が可能となる。この場合、回転工具とは異なり回転という制約を受けないため、その形状を剛性の高いものにすることができる。例えば、側面壁にリブ形成用の溝を形成する場合、刃部を主軸の軸線方向から外側に突出するように設けて、その突出した刃部を側面壁に対して横側から接触させ、この状態で刃部を上下に移動させることで切削することができる。この場合、刃部は側面壁の横側から接触するため、切削時に深さ方向の制約を受けない。また、こうした切削工具の移動は所定のプログラムによって制御可能であるため、CAD/CAMシステムからなる設計データに基づいて刃部に対して所定の動作を与える移動プログラムを構築することで、高能率高精度の切削加工が可能である。さらに、ナイフ形状や断面半円状等のような刃部の形状の異なる切削工具を用意しておくことで、様々な用途に応じた使い分けも可能となる。
本発明者は、試作・少数生産用に用いる射出成形用の型として、金属製の型(以下、金型という)よりもコストの低い高分子材料からなる型を作製することを目的として、実際に図1に示す形状の樹脂型1を作製し、その作製した樹脂型1を用いて射出成形処理を行って図2に示す成形品5を形成するとともに、その樹脂型1とその成形品5に対して評価を行った。この試験で用いた樹脂型は、エポキシ樹脂、アクリルニトリルブタジエンスチレン(以下、ABS樹脂という)、MCナイロン(日本ポリペンコ株式会社の登録商標)、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトンのそれぞれの樹脂からなる。
なお、これらの樹脂型の成形は、その型形状をCAD/CAMシステムによって設計し、その設計データに基づいて、それぞれの樹脂からなるブロック部材を、エンドミル等の所定の加工工具を装着したマシニングセンタによって切削加工して製造した。
また、本試験に用いる樹脂型1は可動型(第一の型)2と固定型(第二の型)3とからなるもので、そのうちの固定型3の方は、図1に示すように、複数に分割可能に成形されている。その固定型3が分割されてなる複数の分割型3a〜3gは、成形品との接触面積が小さいため成形品の離型が容易となっている。なお、本発明の樹脂型において、分割される型は、可動型、固定型のいずれかであっても、可動型と固定型との双方であっても良い。
表1は、このようにして作製したそれぞれの樹脂型から各試験方法に基づいて所定の試験片を取り出し、各種物性値の測定を行った結果を示すものである。なお、これらの測定は、表に示す各試験方法の規定に基づいて行った。
このような樹脂材料の異なる樹脂型を用いて、本発明者は、実際にポリプロピレン、ポリアセタール、ナイロン6、ナイロン66のそれぞれを射出する射出成形処理を行った。ただし、MCナイロンからなる樹脂型に対しては、同種の樹脂であるナイロン6及びナイロン66の射出成形処理を行うことは控えた。なお、下記に示す表2は、射出樹脂ごとの成形条件である。こうした樹脂型を用いる射出成形処理では、型の強度が金属製のものに比べて劣るため、射出速度を通常の金型の場合よりも80%以下とすることで局部に瞬間的な高荷重がかかることを防ぎ、かつガス逃げを容易とするとともに、他方で射出成型機におけるシリンダー温度の設定を通常の設定値よりも10℃以上、より好ましくは15℃以上高く設定することで射出される樹脂の流動性を確保し、射出速度の低下に起因する樹脂の固化を防いでいる。表3〜表5は、表2に示す成形条件に基づいて射出成形処理がなされた後の樹脂型の外観(表3)、物性値(表4)、寸法精度(表5)の評価結果、表6〜8は、それら樹脂型によって成形された成形品の外観(表6)、物性値(表7)、寸法精度(表8)の評価結果を示している。
表3に示す樹脂型の外観評価では、表記された各種樹脂を10回射出処理した後に、それぞれの樹脂型の表面観察を行い、そり、まがり、ねじれ、クラック等の変形や、変色等の外観異常の有無を確認し、これらの外観異常が確認された場合を「×」、これらの外観異常が確認されなかったものを「○」として示している。表4に示す樹脂型の物性評価は、射出成形処理10回行った後の樹脂型に対して、アイゾット衝撃値と荷重たわみ温度を、表1に示した各試験条件に基づいて測定し、表1に示す処理前の値からの変化量が±1%以上である場合を「×」、±1%以下である場合を「○」として示している。表5に示す樹脂型の寸法精度は、射出成形処理10回行った後の樹脂型に対して、寸法公差±0.2以下を「○」、寸法公差±0.2〜0.3の場合(0.2,0.3は含まない)を「△」、寸法公差±0.3以上を「×」としている。
表6に示す成形品の外観評価では、成形されたそれぞれの成形品の表面観察を行い、そり、まがり、ねじれ、クラック等の変形や、変色等の外観異常の有無を確認し、これらの外観異常が確認された場合を「×」、これらの外観異常が確認されなかったものを「○」として示している。表7に示す成形品の物性評価は、それぞれの成形品に対して、アイゾット衝撃値と荷重たわみ温度を、表1に示した各試験条件に基づいて測定し、表1に示す処理前の値からの変化量が±1%以上である場合を「×」、±1%以下である場合を「○」として示している。表8に示す成形品の寸法精度は、それぞれの樹脂型に対して、寸法公差±0.2以下を「○」、寸法公差±0.2〜0.3の場合(0.2,0.3は含まない)を「△」、寸法公差±0.3以上を「×」としている。
次にこれらの表3〜5に示す上記の結果について述べる。まず、外観評価において、エポキシ樹脂、ポリフェニレンサルファイドのそれぞれからなる樹脂型にクラックが確認された。また、ABS樹脂からなる樹脂型には、溶融樹脂射出後に樹脂型の一部の融解が確認され、さらに、ポリフェニレンサルファイドからなる樹脂型には、全ての溶融樹脂の射出処理後に、樹脂型の一部の融解・変形が確認された。
エポキシ樹脂、ポリフェニレンサルファイドのそれぞれからなる樹脂型の場合は、外観評価の結果(表3)、図1のAに示す肉厚2mm、深さ12mmの微細構造部分において複数のクラックが確認された。これは、樹脂型1の靭性に問題があるためと考えられ、ノッチ付きのアイゾット衝撃値が低いことに起因すると考えられる。ノッチ付きのアイゾット衝撃値が42J/m(ASTM D−256に基づく)のポリエーテルイミドには、こうしたクラック等の破損は見られず、さらにそれ以上の値を有する樹脂型1には外観評価においてクラックの発生は認められなかったことから、本発明の樹脂型は、ノッチ付きのアイゾット衝撃値(ASTM D−256に基づく)が少なくとも40J/m以上、さらに好ましくは42J/m以上、さらには50J/m以上であることが望ましい。ただし、このノッチ付きのアイゾット衝撃値は高いほど良いと考えられるが、本試験からは少なくとも230J/m以下までであればクラックの発生は生じないことといえる。なお、クラックを生じたエポキシ樹脂、ポリフェニレンサルファイドのそれぞれからなる樹脂型1については、クラックを生じたことで離型時に樹脂型1が破損し、これらの樹脂型1の寸法精度及び物性値の評価、さらにこれらの樹脂型1で形成される成形品の評価は行えなかった。
ABS樹脂及びポリフェニレンサルファイドに見られる樹脂型の一部の融解・変形は、樹脂型の荷重たわみ温度が低いことに起因すると考えられる。荷重たわみ温度(ASTM D−648に基づく)が121℃で連続使用温度(UL746Bに基づく)が220℃のポリフェニレンサルファイドの場合と、荷重たわみ温度(ASTM D−648に基づく)が155℃で連続使用温度(UL746Bに基づく)が250のポリエーテルエーテルケトンの場合には、全5種の全ての樹脂において射出処理時の融解による変形は見られなかった。さらにそれ以上の値を有する樹脂型には外観評価で融解による変形は認められなかった。従って、本発明の樹脂型は、荷重たわみ温度(ASTM D−648に基づく)が少なくとも140℃以上、さらに好ましくは155℃以上、さらには200℃以上であることが望ましい。さらに、ただし、この荷重たわみ温度と連続使用温度は高いほど良いと考えられるが、本試験からは少なくとも300℃以下までであれば樹脂熱による融解・変形は生じないことといえる。なお、ABS樹脂とポリフェニレンサルファイドのそれぞれからなる樹脂型については、融解等の外観異常を生じたことで離型不良が生じ、寸法精度及び物性値の評価、さらにこれらの樹脂型で形成される成形品の評価は行えなかった。
表4に示す樹脂型の物性値の評価、及び表5に示す樹脂型の寸法精度の評価については、評価可能であった全ての樹脂型において規格を満たしていた。
表6に示す成形品の外観評価、表7に示す成形品の物性評価、表8に示す成形品の寸法評価については、評価可能であった全ての成形品において規格を満たしていた。
これらの結果から、MCナイロン、ポリエーテルイミド、及びポリエーテルエーテルケトンの3種の樹脂型は、いずれの評価においても規格を満たしているため、樹脂型として十分に採用可能である。
なお、上記の試験において、MCナイロン、ポリエーテルイミド、及びポリエーテルエーテルケトンの3種の樹脂型は、抜き勾配が形成されていないにも関らず成形品の離型性に何の問題の無かったため、抜き勾配のない理想的な形状の成形品を成形可能である。従来は、図3の(a)のような形状を理想として可動型200及び固定型300をCAD設計し、その後、離型を容易とする目的で図3の(b)のように所定角度の抜き勾配201,301を有する可動型200´及び固定型300´をCAM設計して、型の最終形状としていた。このような抜き勾配がある場合、図3の(c)に示すように、成形品の側壁には、固定型の抜き勾配形状が反映された側壁51と可動型の抜き勾配形状が反映された側壁52とが連続して形成されて段差51a,52aが生じ、外観が損なわれる場合があったが、上記樹脂型によれば、CADで設計した抜き勾配のない理想的な形状の成形品を形成することができるため、段差が生じることはない。また、設計時には型の抜き勾配の検討・設計が不要となるため、設計時間の短縮も可能となる。
さらに、上記3種の樹脂型においては、エジェクタ機構を用いずとも、人間の手によって容易に成形品を離型することが可能であった。通常の金型の場合、特にエポキシ樹脂等においてクラックを生じるような微細形状部分(例えば、図1のA部分)については、エジェクタ機構を用いなければ成形品の離型は容易ではなかったが、上記の樹脂型の場合は離型性に優れ、人の手によって容易に取り出すことが可能であった。このため、上記3種の樹脂型においては、エジェクタ機構に関する構造部分、例えばエジェクタ機構のエジェクトピンの通過する孔等を設計・製作する必要がなく、設計・製作時間を短縮することができる。また、エジェクトピンの接触による転写痕が樹脂型に残ることも無いため、良好な外観を有する成形品を成形することもできる。従って、上記3種の樹脂型においては、エジェクタレスの樹脂型として作製することができ、樹脂型の製造コスト、ひいてはその樹脂型による成形品の生産コストを抑えることができる。
また、MCナイロン、ポリエーテルイミド、及びポリエーテルエーテルケトンの3種の樹脂型については、その高い離型性を受け、追加試験として上記試験の樹脂型における固定型3の分割を止めてこれらを全て一体の固定型として形成しその離型性を確認したところ、多少の抵抗が強くなったものの人間の手によって容易に離型できることが確認された。このため、これらの樹脂からなる樹脂型については、離型性が極めて良いため型を分割しなくともよいため、パーティングラインを減じてバリの発生を抑え、工程数を短縮することも可能であった。
また、上記3種の樹脂型のうち、MCナイロンからなる樹脂型については、その素材のコストが他の樹脂と比較すると極めて安価であるため採用するメリットが大きい。同種のナイロン製の成形品生産に適用することはできないが、それ以外の高分子材料の成形品であれば極めて安価に生産できる。例え、使用に伴って樹脂型の耐久性が低下する、あるいは破損したとしても、代替の型を安価に製作することができる。
また、このMCナイロンは、アクリルカッター等によって容易に加工できることから明らかなように切削性に優れる。従って、MCナイロンからなるブロック体から容易にかつ短時間で型の製作が可能となる。また、切削性が良いため樹脂型成形後のバリ取りも容易に行うことができる。少数生産品の製造を目的とする本発明の樹脂型においては、バリ取りは人の手作業によってなされてもよく、その場合、切削性が良いため作業者の負担となることがない。
本発明の樹脂型を製作する場合は、例えば図4の(b)に示すようなエンドミル17等の切削工具を備えるマシニングセンタ10を利用することで、切削加工によってブロック体(被切削体)からの樹脂型を容易に製作することができる。図4の(b)に示すマシニングセンタ10は縦型であり、加工機本体のベッド11の基台12上に、エンドミル17やその他ドリル等が装着可能な加工ヘッド13を備えて構成される。加工ヘッド13は、主軸15を回転駆動させるモータ16と、主軸15の下端に設けられた工具ホルダ19と、その工具ホルダ19に取り付けられた加工工具とを備えており、図4の(b)の場合は加工工具としてエンドミル17が取り付けられている。この加工ヘッド13は、基台12の水平面上を水平2軸方向に相対的に制御送り可能となるようにコラム14に支持されるとともに、鉛直方向(図の矢印方向)に加工送り及び位置決めすることも可能とされている。なお、工具ホルダ19には、エンドミル17の他、ドリル等の所定の加工工具を任意に取り付けることもできる。
ところが、図4の(a)に示すように、ブロック体100に凹部101を設け、その凹部101の内壁面102aに一定高さ以上の細い溝部(例えば、リブ溝等)110を形成する場合、図4の(b)に示すような縦型のマシニングセンタ10ではエンドミル17等の加工工具の刃長が強度によって制限されるため、最下面まで加工できない場合がある。また、凹部101の内壁面102a、102bに挟まれるため、横方向からの切削を行う横型のマシニングセンタ(図示なし)を用いて内壁面102aを加工しようとしても、他方の壁面102bに遮られて加工できない。ところが、MCナイロンの場合は、アクリルカッター等によって人の手で容易に加工できるように、その切削性に優れる。従って、図4の(c)に示すような刃部18aを備える切削工具18をマシニングセンタ10の工具ホルダ19に組み付け、その刃部18aを切削すべきリブ溝110に対して垂直あるいはそれ以下となるように食い込ませつつ、その切削工具18を動作させることで切削することができる。マシニングセンタ10には、CAD/CAMシステムの設計データに基づく型の形状データを入力することで、その形状データに基づいて加工ヘッド13が切削動作するプログラムを備えさせることで、切削加工を自動化することができ、寸法精度の高い樹脂型を再現良く製作することも可能となる。なお、図4の(c)に示す切削工具18は、その刃部18aが切削面101(100)に対して鋭角に接触させることで、より切削時間を短縮することができた。
以上、本発明の実施例を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
1 樹脂型
2 固定型
3 可動型
5 成形品
10 マシニングセンタ
11 基台
12 ベッド
13 加工ベッド
14 コラム
15 主軸
16 回転モータ
17 エンドミル
18 切削工具
18a 刃部
100 ブロック体(被切削体)
2 固定型
3 可動型
5 成形品
10 マシニングセンタ
11 基台
12 ベッド
13 加工ベッド
14 コラム
15 主軸
16 回転モータ
17 エンドミル
18 切削工具
18a 刃部
100 ブロック体(被切削体)
Claims (5)
- ASTMのD−648に規定された荷重1.820MPaでの荷重たわみ温度が140℃以上300℃以下で、かつASTMのD−256に基づいて測定されるノッチ付きアイゾット衝撃値が40J/m以上230J/m以下の樹脂材料からなることを特徴とする射出成形用樹脂型。
- 前記射出成形用樹脂型は、型締め状態で内部にキャビティを形成する第一の型と第二の型とからなり、前記第一の型と前記第二の型とのうち少なくとも一方は、複数に分割可能な分割型をなす請求項1記載の射出成形用樹脂型。
- 前記樹脂材料がMCナイロンからなる請求項1又は2に記載の射出成形用樹脂型。
- 前記樹脂材料がポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミドのうちのいずれか一つからなる請求項1又は2に記載の射出成形用樹脂型。
- 請求項3に記載の射出整形用樹脂型を形成するために、MCナイロンからなる被切削体をマシニングセンタによる切削加工を行う射出整形用樹脂型の製造方法であって、
前記マシニングセンタの主軸先端に刃部を有する切削工具を装着し、その刃部と前記被切削体とを接触させ、かつその刃部と前記被切削体との相対位置関係を変化させることで、前記被切削体を切削加工することを特徴とする射出整形用樹脂型の製造方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2022513582A (ja) * | 2018-10-25 | 2022-02-09 | ヒコング コング | ベンチレーテッド、スタッカブル、プレス型 |
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