JP2007200570A - 燃料電池装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】高分子電解質膜23の凍結を確実に回避しつつも、燃料消費を最小限に抑制して長期的、総合的な発電効率を高く維持できる燃料電池装置を提供する。
【解決手段】高分子電解質膜23を用いる発電セル20を積層してセルスタック2を形成する。発電セル20に接触させてセルスタック2に温度測定センサ5を設け、制御部8は、温度測定センサ5の検知温度が低下して0度C以下の下限値Tonまで低下すると、電気駆動部10を負荷として接続してセルスタック2に発電を開始させる。そして、発電に伴う発熱でセルスタック2を加温し、0度C以上の特定値Toffまで上昇すると、電気駆動部10を停止させてセルスタック2の発電を停止させる。
【選択図】図2

Description

本発明は、作動に適する温度範囲を定められた発電セルを有する燃料電池装置、詳しくは、寒冷地における長期間の出力停止に際しても、発電セルの温度が作動に適する温度範囲を下回らないようにする制御に関する。
高分子電解質膜を用いた発電セルで水素イオンを大気中の酸素と反応させて電力を取り出す小型の燃料電池装置が実用化されている。このような燃料電池装置は、携帯電話、ノート型パソコン、無線中継装置、カメラと言った小型の電子機器に搭載されることが期待されている。
電子機器に搭載された小型の燃料電池装置は、電子機器とともに持ち運ばれて、あるいは放置されて、戸外の酷暑、酷寒の環境に晒される機会が多い。また、大型の発電設備とは異なり、電子機器の動作状態に応じて変動する不規則な電力取り出しや長期間の出力停止を前提とした設計が必要である。
しかし、高分子電解質膜は水を含んでおり、氷点下を下回る環境に長時間放置すると、高分子電解質膜が凍結して発電セルを起動できなくなる。つまり、燃料供給しても発電が始まらないことがある。また、凍結/解凍を繰り返すと高分子電解質膜が劣化する可能性もある。
特許文献1には、高分子電解質膜を用いた発電セルを有する寒冷地仕様の燃料電池装置が示される。ここでは、発電セル周りの凍結事故を回避すべく、外気温度が氷点下になると発電セルに水素ガスを供給して発電を行わせ、発電に伴う発電セルの発熱を用いて発電セルとその周りを加温している。発電セルに発電を行わせる時間は、外気温に応じて調整されて、発電セルの過熱や加温不足を回避しており、加温に伴って発電された電力は発電セルの出力に直接接続された二次電池に充電される。
特許文献2には、固体高分子膜を用いた発電セルを有する燃料電池装置の出力に二次電池を接続したハイブリッド電源装置が示される。ここでは、環境温度が氷点下になると二次電池から取り出した電力でヒーターを作動させて発電セルを加温する。また、燃料電池装置と二次電池とは並列に接続されており、出力電流が増して発電セルの出力電圧が低下すると、電圧低下の比較的に少ない二次電池から自然に電力が取り出される。
特開平11−214025号公報 特開平10−144327号公報
特許文献1の燃料電池装置では、発電セルの一定時間の発電に伴う発熱を用いた加温によって、発電セルの温度が相当な高温に達することがある。電気機器を寒冷地で屋外へ持ち出して一時的な超低温によって長時間の加温が開始されると、暖かい屋内へ戻した後に発電セルが発熱し続けて異常な温度上昇をきたす可能性がある。異常な温度上昇は、燃料の無駄な消費を伴うので燃料の損失や、燃料電池装置の長期的な発電効率の低下を招く。
また、外気温に応じて加温の開始と加温時間とを制御するので、加温の開始時と加温時間の終了時とでは、高分子電解質膜の温度が大きく異なってしまう。
また、燃料電池装置の奥部に配置された高分子電解質膜の温度と外気温との間には大きな開きがあるので、高分子電解質膜の凍結を確実に回避しようとすると、発電セルはかなり高い温度(数10度)にまで加温されてしまう。そして、高分子電解質膜の温度が異なると、起動直後の発電性能に大きな差を生じてしまう。
また、高分子電解質膜の凍結防止に要する燃料消費は少ないことが望ましい。小容量の燃料タンクで長時間の出力を要求される小型の燃料電池装置では、出力される電力とは本来無関係な凍結防止対策に要する燃料消費は極力回避する必要がある。この点、発電セルの温度と連動性の希薄な外気温に頼る制御は、肝心の発電セルの温度を不必要に高めてしまい、高分子電解質膜の氷結を避けた狭い温度範囲に発電セルの温度を保つ制御には適さない。最小限の温度範囲を越えた部分の加温は、すべて無駄な燃料消費となって、燃料タンクの消耗を早めてしまう。
特許文献1の燃料電池装置では、また、発電セルの加温に伴う発生電力を二次電池に蓄積しているが、加温を頻繁に繰り返すと、短期間で二次電池が満充電となって、それ以上の充電を行えなくなる可能性がある。
特許文献2の燃料電池装置では、発電セルの出力電流が増したときでないと二次電池から放電がなされないため、二次電池は、稀に発生する短い期間以外は、満充電に保持されることとなる。従って、発電セルが冷えてしまうような小さな出力電流の状態では、二次電池にはそれ以上の電力を蓄積する余地が無く、発電セルを運転して加温する際の電力を蓄積することはできない。そのために、発電セルの加温に際しては、ヒーターを使用して、わざわざ二次電池から電力を取り出している。
本発明は、高分子電解質膜の凍結を確実に回避しつつも、燃料消費を最小限に抑制して長期的、総合的な発電効率を高く維持できる燃料電池装置を提供することを目的としている。
本発明の燃料電池装置は、水分を含む高分子電解質膜を用いた発電セルを有する燃料電池装置である。そして、前記発電セルの温度を検知する温度検知手段と、検知された前記温度が低下して0度Cを含む領域に定めた下限値に達すると前記発電セルの負荷を制御して前記発電セルを発熱させる制御手段とを備えるものである。
本発明の燃料電池装置は、発電セルの温度が温度範囲の下限に定めた下限値を割り込むと、発電セルの運転に伴う発熱を用いた発電セルの加温を開始する。従って、高分子電解質膜を含む発電セルの温度が下限値をずるずる割り込んで高分子電解質膜が凍結等の低温劣化を受ける心配が無い。
そして、外気温でも、燃料電池装置内でも、制御手段の位置でもない、発電に直接関与する肝心の部分の温度が直接反映された発電セルの温度を検知して加温を開始するので、低温劣化を回避できるぎりぎりの下限値を利用できる。
従って、高分子電解質膜の凍結と言った燃料電池の低温劣化を確実に回避しつつも、燃料消費を最小限に抑制して長期的、総合的な発電効率を高く維持できる。
ところで、加温の開始後は、発電セルの温度が下限値よりも少しだけ高く定めた特定値に達すると加温を抑制することが望ましい。何故なら、燃料電池装置の置かれた環境温度の違いや環境温度の急な変化に起因して高分子電解質膜が異常な高温に晒されることが無く、また、加温の開始から抑制に至るまでの高分子電解質膜の温度差が必要以上にばらつかないからである。
従って、加温が抑制された直後に発電開始した際の発電セルの性能がほぼ一定に確保され、過剰な加温に起因して無駄な燃料消費を引き起すこともない。高分子電解質膜の低温劣化を確実に回避しつつも、燃料消費をさらに抑制して長期的、総合的な発電効率をさらに高く維持できる。
以下、本発明の燃料電池装置の一実施形態である燃料電池装置91(デジタルカメラ)について、図面を参照して詳細に説明する。本発明の燃料電池装置は、以下に説明する燃料電池装置91の限定的な構成には限定されない。高分子電解質膜を採用して氷点下に晒される可能性がある限りにおいて、燃料電池装置91の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実現可能である。
本発明の燃料電池装置は、電気機器として、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、小型プロジェクタ、小型プリンタ、ノート型パソコン等の持ち運び可能な小型電気機器として実施できる。本実施形態では、燃料電池装置91の各部機構を制御する制御部8によって高分子電解質膜23の温度制御を行ったが、電子機器から着脱される交換可能な燃料電池ユニット内に制御部8に相当する制御回路を組み込んでもよい。
本実施形態では、燃料として水素を利用する例を説明するが、他の燃料、他の酸化剤を利用してもよい。水素ガスの供給は、燃料タンク3に代えて、改質装置を利用してメタノール等の液体燃料、その他の気体燃料、固体燃料から発生させてもよい。
本実施形態では、酸化剤として大気中の酸素を取り入れて利用する例を説明するが、酸化剤として、酸素に相当する別の酸化作用のある物質を利用してもよい。また、酸素を酸化剤として利用する場合には、大気から取り入れる代わりに、酸素ガスのボンベや酸素ガスの発生装置をセルスタック2に接続して、そこから酸素を供給させてもよい。
発電セルの発熱を用いた加温の抑制は、セルスタック2の発電の全面停止には限定されず、並列な負荷の選択的な切り離し等による負荷低減としてもよく、酸化剤供給の停止や制限としてもよい。
なお、特許文献1、特許文献2に示される燃料電池装置の構造、発電セルの材料と組み立て構造、動作原理、製造方法、運転条件等については、本発明の趣旨と隔たりがあるので、一部図示を省略して詳細な説明も省略する。
<第1実施形態>
図1は燃料電池装置としてのデジタルカメラの斜視図、図2は第1実施形態の燃料電池装置の構成を示すブロック図、図3は発電セルを積層したセルスタックの構成の説明図、図4は高分子電解質膜の凍結防止制御のフローチャートである。なお、図3は、構造を見易くするために、厚み方向に誇張して図示されており、実際には、発電セル20の1層当たりの厚みは3mm程度、発電セル20を9層重ねたセルスタック2は、図示しない両端の締結構造を含めて30mm程度である。これにより、温度検出素子5が配置されない発電セル20の高分子電解質膜23の温度も温度検出素子5によって精度高く検知される。
図1に示すように、燃料電池装置91は、ズームレンズとストロボ照明とを備えたデジタルカメラである。燃料電池装置91は、電池ユニット92を着脱自在に内蔵している。電池ユニット92の外寸法は、縦(a)30mm×横(b)50mm×高さ(c)10mmであり、通常コンパクトデジタルカメラで使用されているリチウムイオン電池の大きさとほぼ同じである。
小型電気機器の1つであるデジタルカメラである燃料電池装置91は、小型で一体化されているため、小型の電池ユニット92は、携帯機器のデジタルカメラに組み込みやすい形状となっている。また、電池ユニット92の薄型直方体形状は、厚みのある直方体や円筒形の形状に比べ、小型電気機器に組み込み易い。電池ユニット92には、内部に固定された温度測定センサ(5:図2)に接続する接点92aが配置される。燃料電池装置91は、接点92aに対応させて摺動端子91aを有する。
図2に示すように、燃料電池装置91の電気駆動部10は、デジタルカメラに搭載されたズームレンズ機構、ストロボ回路、撮像回路、メモリ、画像処理回路等である。制御部8は電気駆動部10を制御して、撮影、画像処理、保存、転送と言ったデジタルカメラとしての機能を発揮させる。
燃料電池装置91に装着された電池ユニット92は、発電セル20を積み重ねたセルスタック2と、セルスタック2に燃料の水素ガスを供給する燃料タンク3とを備えている。燃料タンク3の水素ガスは、減圧弁3aによって圧力調整され、供給弁3bによってセルスタック2への供給を制御される。複数の発電セル20は、不図示の締め付け機構を用いて積層方向に圧力をかけた状態でセルスタック2に組み立てられている。
燃料タンク3の内部には、チタン−鉄系合金やランタンーニッケル系合金等の水素吸蔵合金や、カーボンナノチューブ、グラファイトナノファイバー、カーボンナノホーン等の水素吸蔵材料(不図示)が充填されている。これらの材料は、0.4MPaの圧力において、水素を10wt%程度吸蔵可能である。
電池ユニット92の体積を考慮して、燃料タンク3の外寸法は2.5cm×3cm×1cmである。外壁にはチタン合金を使用し、燃料タンク3の肉厚は3mm、ランタンーニッケル系合金の水素吸蔵材料を含む燃料タンク3の総重量は15g程度となった。燃料タンク3の容積は5.2cmと小さいが、燃料タンク3に蓄えられるエネルギーは、上記圧力で約7.0W・hrとなり、従来のリチウムイオン電池の約2.5倍に達する。
図3に示すように、発電セル20内の触媒層22、24は、相互に絶縁された状態で組み立てられており、高分子電解質膜23によって隔てられて相互の電子移動を妨げられている。隣接する発電セル20の触媒層22と触媒層24とは、それぞれ導電性の拡散層21、セパレータ26、および拡散層25によって短絡されている。
拡散層21、25は、空孔率80%以上のスポンジ状組織の金属材料で形成される。拡散層21は、燃料ガス流路27を通じて供給された水素ガスを触媒層22の表面全体に行き渡らせる。拡散層25は、周囲が大気4に解放されていて、大気4中の酸素を触媒層24の表面全体に行き渡らせる。
セパレータ26は、拡散層21を拡散層25から遮断して、水素ガスを大気4側へ漏らさない。燃料ガス流路27は、絶縁部材を含む複数の部品を積み重ねて形成され、部品同志の接触部分には、拡散層21以外の部分で燃料ガス流路27を密封するために必要なシール処理が施されている。
触媒層22、24は、高分子電解質膜23に白金担持カーボン微粒子を分散して形成される。触媒層22は、拡散層21から供給された水素分子を触媒反応によって水素原子に分解し、水素イオン化して、高分子電解質膜23に送り込む。触媒層24は、拡散層25から供給された酸素ガスと、高分子電解質膜23から化学エネルギー的に拾い上げた水素イオンと、外部の負荷回路を通じてバイパス供給される電子とを触媒反応によって化合させて、水分子を生成する。
高分子電解質膜23は、フッ素樹脂の基材にスルホン酸基を保持させたフィルム材料であって、適性な湿潤状態に保たれた状態で、触媒層22、24と水素イオンの交換を行う。触媒層22から受け取った水素イオンは、結果的に、高分子電解質膜23の膜厚を移動して、触媒層24に受け渡される。
高分子電解質膜23は、それ自体の分子構造に水分子を含む上に湿潤状態で運転されるため、また、拡散層25には、発電に伴って生成された水分を含むため、発電セル20が長時間氷点下に晒されると、凍結して発電性能が損なわれる可能性がある。作動に適する温度範囲としては、0度C以下の任意の下限値Tonから90度Cまでと定められている。
そこで、図2に示すように、燃料電池装置91には、セルスタック2の中央部の発電セル20に接触させて、温度測定センサ5が取り付けられている。温度測定センサ5は、発電セル20に接しているので、燃料電池装置91の外気温や、燃料電池装置91内の他の部分の温度に影響を受けることなく、発電停止状態の高分子電解質膜(23)の温度を正確に検知できる。
温度測定センサ5は、セルスタック2の温度を測定する熱電対等の温度検知素子である。本実施形態における温度測定センサ5は、K型熱電対であり、熱電対の先端部は線径φ0.1mmであり、絶縁コートを施されて、セルスタック2の内部に挿入されている。
温度測定センサ5のケーブルは、温度測定部6に接続されている。温度測定部6は、熱電対測定計であり、燃料電池装置91が停止して制御部8が停止された状態でも、定期的に起動して温度測定センサ5を監視する。温度測定部6は、温度測定センサ5の起電力をセンサ信号7として受信し、セルスタック2の温度Tが0度C以下の任意の下限値Tonに達すると、発電セル内温度信号9を出力して、停止状態の制御部8を、高分子電解質膜の凍結防止制御のために起動する。
温度測定部6は、常時作動して温度制御を行う一般的なマイコン回路としてもよい。しかし、省電力を徹底すべく、温度測定センサ5の起電力を増幅する回路と、増幅された起電力を下限値Ton、特定値Toffに対応する2つの基準電圧に対してそれぞれ比較するコンパレータ回路と、比較結果の論理演算回路とを有している。
温度測定部6は、凍結防止制御によって温度Tが上昇し、セルスタック2の温度が0度Cを若干上回る特定値Toffに達するまで、駆動指令信号11を断続的に発信し続ける。
起動された制御部8は、発電セル内温度信号9が継続されている間、電気駆動部10に駆動指令信号11を出す。電気駆動部10は、高分子電解質膜の凍結防止制御のために選択された電力消費だけのための負荷である。燃料電池装置91がデジタルカメラである場合、液晶モニターバックライト等の動作音が無く、比較的安定的な電力を必要とする駆動機能であることが望ましい。もともとデジタルカメラに搭載された負荷を利用すれば、わざわざ凍結防止制御のための負荷を準備する必要が無いからである。
凍結防止制御の電力消費を節約するために、電気駆動部10は、発電セル20の加温に寄与できる負荷が望ましい。セルスタック2の出力を熱変換して発電セル20の加温に集中させる負荷も望ましい。この意味において、電池ユニットに加温用のヒーターを配置して電気駆動部10としてもよい。
電気駆動部10は、制御部8から駆動指令信号11を受信すると、スタックセル2の出力に接続されて電力を消費し、その駆動を開始する。
駆動指令信号11によって負荷が接続されたセルスタック2は、燃料タンク3から、水素ガスの供給を受けながら発電を開始し、電気駆動部10に必要な電力を供給する。セルスタック2が発電を開始すると、セルスタック2内部の触媒反応により、セルスタック2の温度Tが上昇して、発電セル20内の高分子電解質膜23に含まれる水の温度が上昇する。
セルスタック2が発電を開始すると、高分子電解質膜23の温度は、発電開始から数分を待たずに70度C近くまで上昇するため、10秒程度の短い時間でもセルスタック2の温度は0度Cを十分に上回ってくる。これにより、駆動指令信号11が停止した後、徐々にセルスタック2の温度Tが低下して、再び、温度測定センサ5が0度C以下の任意の下限値Tonに達する温度を計測するまで、確実に高分子電解質膜23の凍結が防止される。
第1実施形態の燃料電池装置91における温度測定部6と制御部8とによる凍結防止制御は図3に示すように実行される。温度制御部6は、電気駆動部10がOFF状態になると(S11のYES)、定期的に作動して、セルスタック2の温度Tが0度Cより高い特定値Toffを上回るか否かを判断する(S12)。
そして、温度Tが特定値Toff以上であれば(S12のYES)、制御部8が、セルスタック2からの電流取り出しを停止して発電を停止させる(S14)。しかし、温度Tが特定値Toffを下回れば(S12のNO)、温度測定部6が0度C以下の任意の下限値Tonを温度Tが下回るか否かを判定する(S13)。
そして、温度Tが下限値Ton以下の場合(S13のYES)、制御部8がセルスタック2に負荷を接続して電流を取り出すことにより発電を開始させる(S15)。しかし、温度Tが下限値Tonを越えていれば(S13のNO)、制御部8はセルスタック2からの電流取り出しを停止して発電を停止させる(S14)。
第1実施形態の燃料電池装置91では、燃料電池装置91が停止した状態で0度C以下の寒冷環境に放置されると、セルスタック2の温度が次第に低下し、温度測定センサ5の温度も低下して0度Cに近づく。温度測定センサ5の温度Tは、センサ信号7として温度測定部6に検知される。
燃料電池装置91が停止した状態でも、温度測定部6は、間歇的にセルスタック2の温度情報を判別している。そして、温度Tが0度C以下の任意の下限値Tonに到達すると、制御部8を通じて電気駆動部10へ駆動指令信号11を発信させ、燃料電池装置92の電気駆動部10の一部を作動させてセルスタック2から電流を取り出させる。
無負荷状態で発電を停止していたセルスタック2は、負荷を接続されることにより電圧低下して発電を開始し、発電で消費された分の水素ガスが燃料タンク3から補充される。
発電開始すると、質量の小さな高分子電解質膜23の温度は急上昇して発電セル20を加温し、セルスタック2の温度が0度Cを上回る。これにより、発電セル20の凍結が回避される。その後も温度上昇が継続して温度Tが特定値Toffに達すると、温度測定部6は、制御部8から電気駆動部10への駆動指令信号11の発信を停止させる。これにより、電気駆動部10は、セルスタック2からの電流取り出しを停止する。負荷を切り離されたセルスタック2は、理論値近傍まで端子電圧を上昇させて発電を停止させる。
その後、セルスタック2の温度が徐々に低下して温度測定センサ5の温度が低下すると、凍結防止制御のための発電が開始されて、再び一連の動作が繰り返される。このサイクルを繰り返すことにより、燃料電池装置91のセルスタック2の温度を0度C以上に保つことが可能となる。そして、外気温0度C以下の寒冷環境下でも、セルスタック2の高分子電解質膜23内に存在する水の凍結を防ぐことができる。よって、第1実施形態の構成を用いた燃料電池装置91は、外気温0度C以下の寒冷環境下でも動作可能である。
<第2実施形態>
図5は第2実施形態の燃料電池装置の構成を示すブロック図、図6は高分子電解質膜の凍結防止制御のフローチャートである。第2実施形態の燃料電池装置93は、発電させた電力を充電する蓄電部13が付加されて、蓄電部13の放電を優先させた電力供給を行う以外は、第1実施形態の燃料電池装置91と同様に構成されている。従って、図5中、図2と共通する構成には共通の符号を付して詳細な説明を省略する。
図5に示すように、燃料電池装置93は、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、小型プロジェクタ、小型プリンタ、ノート型パソコンなどの持ち運び可能な小型電気機器である。燃料電池装置93は、発電セル20を積層したセルスタック2が発電する電力によって駆動される。セルスタック2は、図3を参照して上述したとおりの構成である。
燃料タンク3は、セルスタック2に燃料である水素ガスを供給する。燃料タンク3の内部には、0.4MPaの圧力において、水素を2wt%程度吸蔵可能な水素吸蔵材料が充填されている。燃料タンク3の外寸法は2.5cm×3cm×1cm、外壁にはステンレス合金を使用して肉厚は3mm、燃料タンク3の重量は17g程度で容積は4.6cmである。この燃料タンク3に蓄えられているエネルギーは、約6.5W・hrであり、従来のリチウムイオン電池の約2.3倍にとなる。水素吸蔵材料には、ランタンーニッケル系合金を用いた。
温度測定センサ5は、セルスタック2の温度Tを測定するサーミスタ等の温度検出素子であって、第2実施形態ではK型熱電対を用いている。熱電対の先端部は線径φ0.5mmで、絶縁コートを施されて、セルスタック2の表面に接着されている。
温度測定センサ5のケーブルは、温度測定部6に接続されている。温度測定部6は熱電対測定計であり、温度測定センサ5の起電力をセンサ信号7として受信して、制御部8にセルスタック2の温度情報である発電セル内温度信号9を出力する。
制御部8は、温度測定部6から発電セル内温度信号9を受信すると起動して、凍結防止制御を開始する。発電セル内温度信号9は、セルスタック2の温度が下限値Tonに達すると、温度測定部6から発信開始され、その後、スタックセル2の温度Tが特定値Toffに達すると発信停止される。
制御部8は、負荷として電気駆動部10を接続する代わりに、蓄電部13を接続してセルスタック2から電流を取り出し、蓄電部13に充電させる。
ただし、制御部8は、蓄電部13が満充電で充電の余地が無ければ、第1実施形態と同様に電気駆動部10を負荷としてセルスタック2に接続して電力消費を担わせる。
すなわち、電気駆動部10は、温度Tが0度C以下の任意の下限値Ton以下となった際に制御部8が出す駆動指令信号11を受信し、駆動を開始する。駆動される電気駆動部10としては、デジタルカメラである場合、液晶モニターバックライト等の動作音が無く、比較的安定的な電力を必要とする負荷であることが望ましい。駆動指令信号11は、スタックセル2の温度Tが特定値Toffに達するまで継続的あるいは断続的に発信される。
駆動指令信号11に応答して接続された負荷によって、スタックセル2は、燃料タンク3から、水素ガスの供給を受けながら発電を開始し、電気駆動部10に必要な電力を供給する。発電が開始されると、セルスタック2内部の触媒反応により、セルスタック2の温度が上昇する。これにより、発電セル内の高分子電解質膜23に含まれる水の温度が上昇して凍結が防止される。
セルスタック2が発電を開始すると、高分子電解質膜23の温度は数分程度で70度C近くまで上昇するので、わずかな時間の発電でもセルスタック2の温度Tは、0度Cを越えて上昇する。そして、駆動指令信号11が停止した後、徐々にセルスタック2の温度が低下して、再び、温度センサ5が0度C以下の任意の下限値Tonに達するまで、高分子電解質膜23の凍結を防止できる。
一方、制御部8は、予め、セルスタック2から切り離された状態で蓄電部13の端子電圧を測定して、満充電か否かを判定している。そして、蓄電部13に充電の余地が有れば、電気駆動部10を用いた無益な電力消費の代わりに、蓄電部13へ電力を蓄積する。
蓄電部13は、リチウムイオン電池、Ni−Cd電池、鉛蓄電池等の二次電池、または、大容量電力キャパシタ等のコンデンサ素子である。
電力切替部14a、14bは、制御部8に制御されて、セルスタック2と蓄電部13と電気駆動部10との間で、このような電力供給の切り替えを行う。電力切替部14a、14bは、制御部8から送信された切替指令信号15a、15bに応じて、セルスタック2の発電した発電電力を、電気駆動部10または蓄電部13に振り分ける。
電力切替部14aによってセルスタック2の出力が蓄電部13に接続されると、セルスタック2の発電電力は、蓄電部13に充電される。電力切替部14a、14bによってセルスタック2の出力が電気駆動部10に接続されると、セルスタック2の発電電力は、電気駆動部10で消費される。しかし、電力切替部14bによって蓄電部13が電気駆動部10に接続されると、蓄電部13に蓄積された電力が電気駆動部10で消費される。
なお、第2実施形態では、以下に説明するように、蓄電部13の充電状態を電力測定信号で制御部8に送り、電気駆動部10の起動時に優先的に消費させて、蓄電部13に充電余地を積極的に確保させている。しかし、特許文献2に示されるように、セルスタック2と蓄電部13とを並列に接続する、または並列に接続/切り離しする切替部を設けることにより、電気駆動部10へ並列に電力供給可能とし、短期的に大きな電力を必要とする際に、蓄電部13の電力を利用してもよい。
第2実施形態における凍結防止制御では、図6に示すように、温度測定部6は、電気駆動部10がOFF状態になると(S21のYES)、定期的に作動して、セルスタック2の温度Tが0度Cより高い特定値Toffを上回るか否かを判断する(S22)。
そして、温度Tが特定値Toff以上であれば(S22のYES)、制御部8が蓄電部13をセルスタック2から切り離し、セルスタック2からの電流取り出しを停止させて発電を停止させる(S24)。しかし、温度Tが特定値Toffを下回れば(S22のNO)、温度測定部6が0度C以下の任意の下限値Tonを温度Tが下回るか否かを判定する(S23)。
そして、温度Tが下限値Ton以下の場合(S23のYES)、温度測定部6は制御部8を通じて蓄電部13をセルスタック2に接続して充電させ、セルスタック2から電流を取り出すことにより発電を開始させる(S25)。しかし、温度Tが下限値Tonを越えていれば(S23のNO)、制御部8は、セルスタック2からの電流取り出しを停止して発電を停止させる(S24)。
一方、燃料電池装置93が起動されて電気駆動部10がON状態に移行すると(S21のNO)、制御部8は、セルスタック2から切り離された蓄電部13の端子電圧Vが放電可能電圧Von以上か否かを判定する(S26)。そして、端子電圧Vが放電可能電圧Von以上であれば(S26のYES)、制御部8は、電力切替部14a、14bを制御して、放電可能電圧Vonを割り込むまで(S27)、蓄電部13から電気駆動部10へ電力供給する。しかし、端子電圧Vが放電可能電圧Von未満であれば(S26のNO)、制御部8は、セルスタック2を電気駆動部10へ接続して、セルスタック2の発電を開始させる。
このような制御を行う第2実施形態の燃料電池装置93では、燃料電池装置93が、停止した状態で気温0度C以下の寒冷環境に放置されると、スタックセル2の温度が低下して0度Cを割り込んで、発電セル20の高分子電解質膜23が凍結する可能性がある。そのため、燃料電池装置93が停止した状態でも、定期的に温度測定部6が起動して温度測定センサ5の出力を監視している。
そして、温度測定センサ5によって検知されるセルスタック2の温度Tが0度C以下の任意の下限値Tonに到達した場合、温度測定部6は、制御部8を起動させ、セルスタック2の出力に蓄電部13を接続して、セルスタック2に発電を開始させる。ただし、蓄電部13が満充電で充電の余地が無い場合には、制御部8は、第1実施形態と同様な電気駆動部10による電流取り出しによってセルスタック2の発電を開始させる。
いずれにせよ、セルスタック2の発電は、セルスタック2の温度Tが0度C以上に定めた特定値Toffに達すると、セルスタック2から負荷を切り離すことにより、セルスタック2の出力電圧が理論値近傍まで上昇させて自然に停止させる。
セルスタック2が発電を開始すると、セルスタック2で消費されただけ、水素ガスが燃料タンク3から供給されて、一定の発電状態が継続する。発電開始した発電セル20は、触媒反応により一定時間で70度C近くまで上昇する。これにより発電セル20の凍結が回避される。その後、発電停止されると、セルスタック2の温度Tが徐々に低下して温度測定センサ5の温度Tが下限値Ton以下となると、再び一連の加温制御が繰り返される。このサイクルにより燃料電池装置93の発電セル20の凍結を防ぐことができる。
蓄電部13は、制御部8に充電状況を伝達する電力測定信号を発信している。この加温サイクルが繰り返し行われて蓄電部13が十分に充電されると、制御部8は、電力切替部14a、14bを切り替えてセルスタック2の負荷を蓄電部13から電気駆動部10に変更する。
セルスタック2の加温制御によって蓄電部13に充電された電力は、制御部8の指令により、電気駆動部10の起動時に優先的に使用されることにより、蓄電部13には充電余力が確保される。また、蓄電部13に充電された電力は、短期的に大きな電力を必要とする際に、蓄電部13より電力切替部14bに送り、電気駆動部10に供給してもよい。
なお、温度測定部6が出力する発電セル内温度信号9により、燃料電池装置93が停止した状態でも、制御部8が起動し、燃料電池装置93の電力切替部14a、14bに切替指令信号15a、15bを発信する。通常時は、電気駆動部10にセルスタック2を接続する電力切替部14a、14bが、加温制御時には、蓄電部13にセルスタック2を接続する。このとき、特定値Toffによる制御とせず、セルスタック2を蓄電部13に一定時間接続するように制御してもよい。これにより、セルスタック2は、燃料タンク3から、水素ガスを導入してセルスタック2を発電状態に保ち、蓄電部13には、一定時間充電を行う。
また、電気駆動部10で電力消費を担わせる場合、制御部8は、電気駆動部10に駆動指令信号11を発信する。電気駆動部10は、一定時間だけセルスタック2に負荷を接続して、負荷の消費電力を発電電力としてセルスタック2に要求する。
蓄電部13が十分に充電された後も燃料電池装置93が停止した状態で気温0度C以下の寒冷環境下に置かれると、充電余地が無いので、制御部8が電気駆動部10の一部を起動して一定時間駆動させる。制御部8が起動し、燃料電池装置93の駆動部分の一部である電気駆動部10へ一定時間の駆動を開始させるように、駆動指令信号11を発信する。電気駆動部10は、一定時間の駆動のための電力をセルスタック2に要求する。セルスタック2は、燃料タンク3から、水素ガスを導入して、発電を継続し、必要な電力を電気駆動部10に供給する。
このサイクルにより燃料電池装置93のセルスタック2の温度を0度C以上に保つことが可能となり、外気温度0度C以下の寒冷環境下でもセルスタック2の高分子電解質膜23内に存在する水の凍結を防ぐことができる。よって第2実施形態の構成を用いた燃料電池装置を電源として用いる各種の小型電子装置は、外気温0度C以下の寒冷環境下でも動作可能である。
第1実施形態および第2実施形態の燃料電池装置は、持ち運んで使用できる小型電気機器に搭載可能で、かつ小型化で、大容量、高出力の燃料電池の制御方法として好適である。また、ここで説明した燃料電池装置の構成、制御方法、および制御装置を使用することにより、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、小型プロジェクタ、小型プリンタ、ノート型パソコンなどの持ち運び可能な小型電気機器に安定した電力を供給できる。
<比較例の燃料電池装置>
従来、小型の電気機器を持ち運んで使用するためには、種々の一次電池、二次電池が使用されてきた。しかし、最近の小型電気機器の高性能化に伴い、消費電力が大きくなり、一次電池では、小型軽量で、十分なエネルギーを供給できなくなっている。一方、二次電池においては、繰り返し充電して再利用できるという利点はあるものの、一回の充電で使用できるエネルギーは一次電池よりも更に少ない。そして、二次電池を充電するためには、別の電源が必要である上、充電には、通常、数十分から数時間かかり、いつでもどこでもすぐに使用できる様にするということは困難である。今後、電気機器のますますの小型、軽量化が進み、ワイヤレスのネットワーク環境が整うことにより、電気機器を持ち運んで使用する傾向が高まる中で、従来の一次電池、二次電池では電気機器の駆動に十分なエネルギーを供給できない。
このような問題の解決策として、小型の燃料電池が注目されている。燃料電池は従来、特許文献1に示されるような大型の発電設備、自動車用の駆動源として開発が進められてきた。これは、燃料電池が、従来の発電システムに比べて、発電効率が高く、しかも廃棄物がクリーンであることが主な理由である。
一方、燃料電池が小型電気機器の駆動源として有用な理由は、体積当たり、重量当たりの供給可能なエネルギー量が従来の電池に比べて、数倍から十倍近くあることが挙げられる。さらに、燃料のみを交換すれば連続して使用が可能であるため、他の二次電池の様に、充電に時間がかかることもない。
燃料電池には、様々な方式のものが実用化、あるいは提案されているが、小型電気機器、とりわけ持ち運んで使用する機器に対しては、固体高分子型燃料電池が適していると言われている。これは、常温に近い温度で使用でき、また、電解質が液体ではなく固体であるので、安全に持ち運べるという利点を有しているためである。
燃料電池は、燃料と酸化剤とを発電セルに供給することで発電する単純な原理であるが、最適な発電を行うためには、様々な制御が行われている。
小型電気機器用の燃料電池の燃料としては、従来メタノールが使用されてきた。これは、メタノールが保存しやすく、また入手しやすい燃料であることが主な理由であった。しかし、メタノールを使用したダイレクトメタノール型の燃料電池は、出力が小さいという原理的な欠点があり。さらに、ダイレクトメタノール型の燃料電池には、燃料のメタノールが高分子電解質膜を透過して酸化剤極側で酸素と直接反応してしまうクロスオーバー現象や、反応で生成する一酸化炭素が電極触媒を被毒してしまうという問題がある。このため、出力はさらに小さなものしか得られていない。
大きな出力を得るための燃料電池には、水素ガスを燃料に使用するのが最適である。しかし、水素ガスは常温で気体であり、小型の燃料タンクの中に高密度に水素ガスを貯蔵することは非常に困難であった。
水素ガスを貯蔵する第1の方法は、水素ガスを圧縮して高圧ガスとして保存する方法であるが、水素ガスの圧力を200気圧まで高めても体積水素密度は18mg/cm程度である。その上、高圧のガスタンクを安全に扱うためには、タンクの肉厚を大きくする必要があり、小型化には向かない。
第2の方法は、水素ガスを低温にして液体として貯蔵する方法である。この方法では、高密度な保存が可能であるが、水素を液化するためには、大きなエネルギーが必要であること、また、液体水素が自然気化して、漏れだしてしまうことが問題である。
第3の方法は、水素吸蔵合金を使用して水素を貯蔵する方法である。この方法では、体積ベースでの吸蔵量は大きいが、水素吸蔵合金の比重が大きいため、重量ベースでは、2wt%程度の水素しか吸蔵できず、燃料タンクが重たくなってしまうという欠点がある。
第4の方法は、メタノールやガソリンなどを燃料タンクに積み、改質して水素ガスに変換して使用するという方法である。しかし、改質反応は100度C以上の高温であること、改質器が必要となることから、小型電気機器用には向かないとされている。
そこで、水素ガスを高密度に貯蔵するために、炭素系材料を使用する方法が注目されている。炭素系材料には、カーボンナノチューブ、グラファイトナノファイバー、カーボンナノホーンなどがある。これらの炭素系材料では、重量当たり約10wt%の水素を吸蔵可能である。これにより、例えばデジタルカメラ用の電源として使用する場合、従来のリチウムイオン電池を用いた場合に比べ、3〜5倍程度の撮影が可能である。
また、水素ガスの吸蔵に炭素系材料を使用した場合、十分な吸蔵量を得るためには、燃料タンク内の圧力を数MPaにする必要がある。一方、酸化剤極側の酸化剤としては外気を利用するため、その圧力は約0.1Pa(1気圧)程度である。燃料電池の発電セルにおいて、酸化剤極側の酸化剤と燃料極側の燃料との間に圧力差があると、発電セルに応力が発生して破損し易くなる。従って、水素ガスは、発電セルに供給される際には、約0.1Pa(1気圧)程度まで減圧されている必要がある。
また、固体高分子型燃料電池の特性として、発電に適した温度は、室温から80度C程度で、中でも60度Cから80度Cまでが最も効率が良い。すなわち、燃料電池は、発電セルの温度によって出力が変化する。また、燃料電池は起動してから、安定した電力を供給できるまでに時間がかかる。従来の燃料電池においては、燃料電池の起動・停止を頻繁に行う必要がなく、定常状態で運転していたため、起動時や、温度のばらつきによる効率の変化はそれほど問題ではなかった。しかし、燃料電池を小型電気機器に搭載して用いる場合、常に電力を供給し続ける必要がないため、機器の状況に応じて燃料電池の起動・停止を頻繁に繰り返す必要がある。
ところで、固体高分子型燃料電池を搭載した、小型電気機器を、寒冷地屋外等の低温環境で一定時間以上停止した状態で放置した場合、発電セルの温度が0度C以下になってしまうことがある。このような場合、高分子電解質膜に含まれる水分が凍結してしまい、発電効率が著しく低下してしまうという問題があった。この問題に対して、特許文献1では、凍結防止モード時に外部気温がしきい値以下であると、燃料電池を駆動し、燃料電池とメインタンク間を循環する水を氷点より高温に維持するという方法が提案されている。
また、特許文献2には、燃料電池の出力を安定化するために二次電池またはキャパシタを併用したハイブリッド発電方法が示される。ここでは、大型の潜水艦向けのシステムではあるが、過負荷の場合の電力を補うために、燃料電池と二次電池とを併設して用いる方法が採られている。また、太陽電池発電においては、発電において得られた電力を蓄電しておき、太陽が出ていないときにも、電力を供給する方法が採られている。
しかし、特許文献1の燃料電池の構成では、発電セルとメインタンクとの間で水を循環する。このため、燃料電池の補機装置として、メインタンク、配管、ポンプ、ヒーター等が必要となり、小型の電気機器に搭載するための構成や、燃料電池を小型化するために必要な構成が考慮されていなかった。
さらに、循環水を加熱するために、燃料電池を駆動すると、この際、発電された、電力は、循環水の加熱ヒーターのエネルギーや、循環水を流すためのポンプ駆動エネルギーとなる。これにより、有効にエネルギーを活用できないため、見かけ上の燃料電池システムの効率が低下する要因となっていた。
特に、上記のような循環水を加熱する補機装置は、燃料電池電気機器や、燃料電池の寒冷地屋外での状況以外でも、燃料電池の出力を使用するため、見かけ上の燃料電池システムの効率が低下する要因となっていた。
さらに、水を循環するための補機装置は、定期的なメンテナンスを必要とし、燃料電池を搭載した電気機器や燃料電池システムの運転費、製造コスト上昇の要因となっていた。
また、特許文献2に示されるキャパシタや二次電池を併用して用いるハイブリッド発電においては、キャパシタや二次電池の蓄電量がなくならないように充電をしていくことが必要である。しかし、燃料電池を搭載した電気機器や燃料電池の寒冷地での凍結防止のための充電については、考慮されていなかった。
また、太陽電池発電システムでは、太陽光があれば、寒冷地でも発電が行われるので、周辺環境を考慮した、発電などを考慮する必要がなかった。
第1実施形態および第2実施形態の燃料電池装置は、この様な従来技術の問題点を解決しており、燃料電池を搭載した小型電気機器を、寒冷地屋外等の低温環境で一定時間以上停止した状態で放置できる。そして、発電セルの温度が0度C以下になってしまう場合でも、発電可能な装置で、安価な小型の燃料電池の制御方法および制御装置を提供できる。
すなわち、水素ガスを燃料に用いる燃料電池または、燃料電池から電力の供給を受けた電気機器において、燃料電池は発電セルに設置された温度測定センサ5と、温度測定センサ5の測定結果により、発電セル20を駆動し発電させる制御部8を備える。燃料電池、電気機器は、温度測定センサ5の情報から、発電セル20が0度C以下の下限値Tonになった際、制御部8が自動的に燃料電池を駆動し、発電セル20が0度C以上の特定値Tonになったところで停止する。
さらに、電気機器は、発電セル20が発電した電力を蓄電して電気駆動部10に放電する機能を持つ蓄電部13と、蓄電部13の出力電圧を測定する機能とを備える。加えて、発電セル20で発電した電力の供給先を、制御部8の指令により、蓄電部13または電気駆動部10に切り替える電力切替部14a、14bを備える。温度測定センサ5の情報から、発電セル20が0度C以下の下限値Tonになると、制御部8は、自動的に燃料電池を駆動し、制御された電力切替部14a、14bにより、自動的に燃料電池を一定時間駆動する。そして、発電した電力は蓄電部13に蓄電され、蓄電部13に蓄電された電力は、電気製品の電気駆動部10が起動する際に優先的に利用される。
これにより、寒冷地屋外等の低温環境で一定時間以上停止した状態で放置した場合でも、高分子電解質膜23に含まれる水分が凍結して発電効率が著しく低下する前に、自動的に発電開始し、発電に伴う触媒反応熱により、高分子電解質膜23の温度を上昇させる。そして、一定温度に達したのち、発電を停止する。この断続的なサイクル運転を繰り返すことで、寒冷地でも信頼性高く運転可能な燃料電池を実現できる。また、蓄電部13を燃料電池の補助的な電力供給源として利用することにより、燃料電池、電気機器の運転可能時間を長くすることが可能となった。
そして、頻繁に運転、停止を繰り返す固体高分子型燃料電池であっても、0度C以下の環境において長期間の放置が可能となり、起動時には最初から安定した電力で効率よく発電することができる。
<発明との対応>
燃料電池装置91は、水分を含む高分子電解質膜23を用いた発電セル20を有する。そして、発電セル20の温度を検知する温度測定センサ5と、検知された温度が低下して0度Cを含む領域に定めた下限値Tonに達すると発電セル20の負荷を制御して発電セル20を発熱させる温度測定部6、制御部8とを備える。
燃料電池装置91は、発電セル20の温度Tが下限値Tonを割り込むと、発電セル20の運転に伴う発熱を用いた発電セル20の加温を開始する。従って、高分子電解質膜23を含む発電セル20の温度が下限値Tonをずるずる割り込んで高分子電解質膜23が凍結等の低温劣化を受ける心配が無い。
そして、外気温でも、燃料電池装置91内でも、制御部8の位置でもない、肝心の高分子電解質膜23の温度が直接反映された発電セル20の温度を検知して加温を開始するので、低温劣化を回避できるぎりぎりの下限値Tonを利用できる。
従って、高分子電解質膜23の低温劣化を確実に回避しつつも、燃料消費を最小限に抑制して長期的、総合的な発電効率を高く維持できる。
ところで、加温の開始後は、発電セル20の温度が下限値Tonよりも少しだけ高く定めた特定値Toffに達すると加温を抑制することが望ましい。特許文献1に示されるような一定時間の発電を行う場合に比較して、燃料電池装置91の置かれた環境温度の違いや環境温度の急な変化に起因して、高分子電解質膜23が異常な高温に晒されることが無い。加温の開始から抑制に至るまでの高分子電解質膜23の温度差が必要以上にばらつくこともない。
従って、加温が抑制された直後に発電開始した際の発電セル20の性能がほぼ一定に確保され、過剰な加温に起因して無駄な燃料消費を引き起すこともない。高分子電解質膜23の低温被害を確実に回避しつつも、燃料消費をさらに抑制して長期的、総合的な発電効率をさらに高く維持できる。
なお、後述するように、発電セル20の発電開始させる場合、切り離されていた負荷を接続して電流を取り出す方法と、遮断されていた水素ガスの供給を再開させる方法とがある。しかし、負荷を接続し放しにして水素ガスの供給を停止させると、水素ガスの消費に伴って拡散層21側の圧力が低下し、外から漏れ込んだ外気や水蒸気が拡散層21を満たしてしまうかもしれない。その場合、水素ガスがすべての発電セル20に均等に行き渡らなくなり、発電再開に支障をきたす。従って、水素ガスの供給停止よりも負荷の切り離しによる発電停止が好ましく、発電再開に際しては負荷の再接続が好ましい。
燃料電池装置91の温度測定部6、制御部8は、発電セル20を発熱させて、下限値Tonよりも高く定めた特定値Toffに温度Tが達すると、前記負荷を、発熱量を増大させる以前の状態に復帰させる。
燃料電池装置93では、前記負荷は、発電セル20が発電した電力を蓄積する蓄電部13である。そして、発電セル20を発熱させる期間は、発電セル20の出力を蓄電部13に接続して電力を蓄積させる一方、外部へ電力が取り出される期間には、発電セル20による電力に優先させて蓄電部13から電力を取り出させる電力切換部14a、14bを備える。これにより、高分子電解質膜23の凍結防止制御に付随して発生する発電電力を有効利用でき、蓄電部13を充電可能な状態に保持して次回の凍結防止制御の充電に備える。
燃料電池装置91は、複数の発電セル20を積層して直列に接続したセルスタック2を備え、温度測定センサ5は、発電セル20に接触してセルスタック2に取り付けられている。発電セル20全体の熱容量を加温するため、高分子電解質膜23は、温度Tが特定値Toffに達するまでに、特定値Toff以上に加熱されてしまう。しかし、この熱容量の放熱によって発電停止後の温度低下は遅くなり、数分間以上温度Tは下限値Tonを割り込まないで済む。従って、温度測定部6による温度判定の時間間隔を拡大して、凍結防止制御の電力消費をさらに削減できる。
燃料電池装置91は、セルスタック2から電力供給される電気駆動部10と、電気駆動部10が停止状態になったことを判別する制御部8とを備える。そして、温度測定部6、制御部8は、停止状態が判別されると、温度測定センサ5と温度測定部6とによる温度Tの判断を開始する。
温度測定部6、制御部8は、電気駆動部10を制御して発電セル20を発熱させるとともに、停止状態では停止されている制御部8と、間歇的に動作して温度測定センサ5の出力が前記制御の開始に相当するか否かを判別する。そして、温度測定部6は、前記制御の開始に相当している場合に制御部8を起動する。これにより、制御部8の停止時間が増えて、温度Tの監視に要する電力を削減できる。
燃料電池装置91は、作動に適する温度範囲を定めた発電セル20を有する。発電セル20の温度Tを検知する温度測定センサ5と、検知された温度Tが低下して前記温度範囲の下限領域に定めた下限値Tonを割り込むと、発電セル20の負荷と燃料供給との少なくとも一方を変化させて、それまでよりも発電セル20を発熱させる温度測定部6、制御部8とを備える。燃料供給をOFFして発電セル20の発電を停止させている場合、燃料供給をONすることによって発電を開始させ、発電セルを発熱させることが可能である。
例えば、外気温に比較して負荷が過小なために温度Tが下限値Tonを割り込んだ場合には、負荷の追加や切り換えによって発電とそれに伴う発熱とを増大させる。また、負荷を一定にした場合、燃料供給を絞り込むことで、発電セル20の発電効率を低下させ、発熱量を増大させることもできる。
負荷としては、発電セル20を直接に加温するように配置したヒーターでもよいが、高分子電解質膜23を直接に発熱させるほうが、高分子電解質膜23の凍結防止という目的には合致する。
燃料電池装置91の温度測定部6、制御部8は、発電セル20を発熱させて、下限値Tonよりも高く定めた特定値Toffに温度Tが達すると、変化させた前記負荷と燃料供給との少なくとも一方を、発熱量を増大させる以前の状態に復帰させる。例えば、負荷の接続により発熱量を増大させた場合、負荷が切り離される。燃料供給を開始して発熱量を増大させた場合、燃料供給が再び遮断される。
燃料電池装置としてのデジタルカメラの斜視図である。 第1実施形態の燃料電池装置の構成を示すブロック図である。 発電セルを積層したセルスタックの構成の説明図である。 制御部における高分子電解質膜の凍結防止制御のフローチャートである。 第2実施形態の燃料電池装置の構成を示すブロック図である。 制御部における高分子電解質膜の凍結防止制御のフローチャートである。
符号の説明
2 セル積層体(セルスタック)
3 燃料タンク
5 温度検知手段(温度測定センサ)
6、8 制御手段、出力判別手段(温度測定部、制御部)
10 負荷、電気駆動手段(電気駆動部)
13 負荷、電力蓄積手段(蓄電部)
14a、14b 電力切替手段(電力切替部)
20 発電セル
23 電解質層(高分子電解質膜)
91、93 燃料電池装置
92 電池ユニット
Ton 下限値
Toff 特定値

Claims (8)

  1. 水分を含む高分子電解質膜を用いた発電セルを有する燃料電池装置において、
    前記発電セルの温度を検知する温度検知手段と、
    検知された前記温度が低下して0度Cを含む領域に定めた下限値に達すると、前記発電セルの負荷を制御して前記発電セルを発熱させる制御手段と、を備えることを特徴とする燃料電池装置。
  2. 前記制御手段は、前記発電セルを発熱させて、前記下限値よりも高く定めた特定値に前記温度が達すると、前記負荷を、前記発熱量を増大させる以前の状態に復帰させることを特徴とする請求項1記載の燃料電池装置。
  3. 前記負荷は、前記発電セルが発電した電力を蓄積する電力蓄積手段であって、
    前記発電セルを発熱させる期間は、前記発電セルの出力を前記電力蓄積手段に接続して電力を蓄積させる一方、外部へ電力が取り出される期間には、前記発電セルによる電力に優先させて前記電力蓄積手段から電力を取り出させる電力切替手段を備えたことを特徴とする請求項1または2記載の燃料電池装置。
  4. 前記温度検知手段は、前記発電セルに接触して取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の燃料電池装置。
  5. 前記発電セルから電力供給される電気駆動手段が停止状態になったことを判別する出力判別手段を備え、
    前記制御手段は、前記停止状態が判別されると、前記温度検知手段と前記制御手段とによる前記温度の判断を開始することを特徴とする請求項4記載の燃料電池装置。
  6. 前記電気駆動手段を制御して前記発電セルを発熱させるとともに、前記停止状態では停止されている駆動制御手段と、
    間歇的に動作して前記温度検知手段の出力が前記制御の開始に相当するか否かを判別し、相当している場合に前記駆動制御手段を起動する温度測定手段と、を前記制御手段が有することを特徴とする請求項5記載の燃料電池装置。
  7. 作動に適する温度範囲を定めた電解質層を用いた発電セルを有する燃料電池装置において、
    前記発電セルの温度を検知する温度検知手段と、
    検知された前記温度が低下して前記温度範囲の下限領域に定めた下限値を割り込むと、前記発電セルの負荷と燃料供給との少なくとも一方を変化させて、それまでよりも前記発電セルを発熱させる制御手段と、を備えることを特徴とする燃料電池装置。
  8. 前記制御手段は、前記発電セルを発熱させて、前記下限値よりも高く定めた特定値に前記温度が達すると、変化させた前記負荷と燃料供給との少なくとも一方を、前記発熱量を増大させる以前の状態に復帰させることを特徴とする請求項7記載の燃料電池装置。

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