JP2007197550A - 水系インクジェットインクの分散方法及び水系インクジェットインク - Google Patents

水系インクジェットインクの分散方法及び水系インクジェットインク Download PDF

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Abstract

【課題】安定した印字濃度を得ることができる水系インクジェットインクの分散方法の提供。
【解決手段】有機顔料を溶媒中にアニュラー型メディア型分散機を用いて分散する際、メディア型分散機のローターの回転と、それによるメディアの動きで規定される総せん断応力を下記σと規定した時、1000≦σ≦100000の範囲で分散条件を調整しながら、インク顔料を分散する水系インクジェットインクの分散方法。
Figure 2007197550

【選択図】図1

Description

本発明は新規の水系インクジェットインクの分散方法及び水系インクジェットインクに関する。
近年、インクジェット記録方式は簡便・安価に画像を作成出来るため、写真、各種印刷、マーキング、カラーフィルター等の特殊印刷など、様々な印刷分野に応用されてきている。特に、微細なドットを出射、制御するインクジェット記録装置や、色再現域、耐久性、出射適性等を改善したインク及びインクの吸収性、色材の発色性、表面光沢などを飛躍的に向上させた専用紙を用い、銀塩写真に匹敵する画質を得ることも可能となっている。
しかしながら、専用紙を必要とするインクジェット画像記録システムでは用いることのできる記録媒体が制限されること、記録媒体のコストアップ等が問題となる。
一方、オフィスにおいては、記録媒体(例えば、普通紙、コート紙、アート紙、普通紙両面印刷等)の制約を受けずに高速でフルカラー印字が行えるシステムのニーズが益々高まりつつある。
インクジェットインクの組成についても、高速で印字でき、普通紙での文字再現性がよく、印字の際の裏抜け(印字したインクが記録媒体を通過し、裏面にその画像が映る現象)、フェザリング、画像滲みの発生がなく、また紙への浸透が速く乾燥が速い等の観点で種々の検討が行われてきた。
その一つの方法として、インクジェット用インクとして、水の含有率を50質量%以上とした、所謂、水性(水系)インクジェットインク(以下、単にインクともいう)が広く用いられているが、この様な水性インクジェットインクを用いて、電子写真用コピー紙や上質紙、中質紙といった普通紙に画像記録を行った場合、画像の裏抜け、フェザリング等の浸透性に起因する問題に加え、画像記録した普通紙のカールやコックリングが大きな問題となる。
上記課題に対し、ブリストウ法における記録媒体への濡れ時間と吸収係数を規定し、浸透性を改良したインクを用いるインクジェット記録方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この方法では、インク中の色剤も同時に普通紙内部に浸透してしまうため、画像濃度の低下やインクの裏抜けが大きくなり、特に、両面印刷には適性を有していないという欠点を抱えている。
また、特定のアミド化合物、ピリジン誘導体、イミダゾリン化合物または尿素化合物をカール防止剤として含有するインクジェットインクが開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
しかしながら、この方法では、インク液の乾燥に伴い、記録ヘッドのノズル部で目詰まりを起こしやすいという問題を有している。また、上記カールを改良する方法として、画像印字面の裏面側に、水を含む溶液を付与してカールバランスを適正化するインクジェット記録法補が提案されている。(例えば、特許文献3参照。)。
しかしながら、この方法では、両面記録適性を有していないこと、普通紙へのインク及びカールバランス液の付着量の増加に伴い、普通紙の強度が低下し、搬送時にジャミング等を生じやすい欠点があった。また、水性インクジェットインクに代えて、高速で印字を行うことのできるソルベント系インクも検討されている。即ち、揮発性溶媒を含有して乾燥性を高めた溶剤インク(ソルベント系インクジェットインク)を用いることで、普通紙に印字しても、記録媒体への浸透が速く乾燥時間が短く、記録媒体のカール等が生じず、高速な印字が可能である。しかしながらソルベント系インクは、普通紙媒体への浸透性が高いため、文字再現性が悪いこと、および記録媒体での裏抜けを引き起こし、特に普通紙の両面に印字を行う場合の大きな障害となっていた。
このため印字時の出射性、デキャップ適性が改良され、普通紙に印字した際の裏抜け耐性、文字品質及びカール特性の優れたインクジェット用インクとそれを用いたインクジェット記録方法が開示されている。(例えば、特許文献4、5を参照)
この方法によれば溶媒を、インク全質量に対し50質量%以上、90質量%未満含有し、かつ水の含有量が10質量%
以上、45質量%未満の分散媒中に水不溶色材を分散させることで出射安定性、デキャップ耐性に優れ、かつ形成画像の文字品質、裏抜け耐性が良好で、かつ印字した記録材料のカール特性に優れたインクジェット用インクができることが公開されている。
しかし、上記インクでは水不溶性色材、すなわち顔料の分散安定性が悪い。つまり、時間経過とともに顔料粒子径が増大して、インク中の粒子が液と分離してしまい、インクとして出射する際にヘッドの目詰まりを起こしやすい。
このため、上記課題に対して、鋭意検討した結果以下の方法でインクを分散し、製造することで解決できることがわかった。
顔料製造段階で均一に微細化された有機顔料よりなる顔料インクに関し、インク化に際して顔料をメディアで分散
する際に、顔料の再凝集が増加することでインク液の顔料分散、停滞安定性が悪化しないようにする手段を提供し、しいてはインクヘッドからの出射時にヘッドノズル部に顔料の凝集塊が詰まって、出射できなくなることを防止する。
とりわけ、有機顔料は、メディア型分散装置で分散してインク化すると顔料の骨格に付着している官能基を損なうと推定され、前項溶媒リッチのインク系では顔料についている官能基と溶媒との相互作用重要であり、従来の水系インク分散の技術では解決ができなかった。また顔料の骨格が損なわれると色調がでなくなり、インクの液停滞性が悪くなるばかりではなく、印刷品質も悪化してしまうこともあった。
元来、水系インクジェットインクの顔料分散方法は、主剤である水に少々の溶剤、顔料、分散剤を配合して、予備混合したのちにメディア型分散装置などに通して、顔料を微細に液中に分散してインク化する方法が一般的に取られている。インクジェットインク用顔料は、一般的には有機顔料が多く使用されているが、中でも顔料表面に官能基をつけて、疎水性から親水性に顔料の表面を変えて、水への親和性を増加しようとする自己分散型顔料の開発が行われてきた。(例えば、特許文献6、7を参照)
その自己分散型顔料は、付与した官能基がメディア型分散機で分散する際にメディア間の磨砕で官能基が傷つく
ことがあり、それを防止する方法として、顔料の表面を樹脂で覆うようにしたマイクロカプセル化という技術も使用されている。(特許文献8参照)
しかし、このような方法では顔料を溶媒中に分散する前に樹脂を覆う工程に多大なコストが発生し、現実的ではない。
また顔料を覆う膜の厚さにばらつきが発生してしまい、顔料がメディア型分散時に全く無傷であるということでは
なかった。そこで、その解決策として特許文献9が提案されている。
この方法によればポリアルケニルエーテルを主鎖構造に有するブロックポリマー、溶剤及び顔料を少なくとも含有する組成物であって、前記ブロックポリマーと前記顔料とが粒子を形成し、該粒子の平均粒径が80nm以下であり、且つ前記組成物中の前記粒子の分散度指数が0.15以下であるインク組成物、または前記顔料が前記ブロックポリマーに内包されて粒子を形成し、該粒子の平均粒径が80nm以下であり、且つ前記組成物中の前記粒子の分散度指数が0.15以下であるインク組成物で解決される。この方法ではポリマーに内包された顔料分散体が提案されているが、この際、メディア型分散機を使用して分散する条件として、メディア型分散機で分散する時、分散力が弱すぎれば十分な平均粒径が得られず、逆に強すぎる場合では過分散状態となり再凝集による粒子の粗大化だけでなく、顔料を内包したブロックポリマー分散体が崩壊してしまう恐れもある。
従って、目的とする平均粒径と分散度指数を得るには、目的とする分散力を得ることが可能なメディア型分散機を用いて分散を行うことが好ましい。この条件として球形ビーズと分散機を用いたメディア分散を行うこと、さらに球形ビーズの平均粒径が40〜110μmの範囲にあり、密度が5.9×10-6g/m3以上であること8.0m/秒以下の周速度で、メディア分散を行うことで樹脂に覆われた顔料表面が損なわれずに分散できることが提案されている。
ここに使用されているビーズはジルコニアビーズ、アルミナビーズ、ジコルンビーズ、シリカビーズなどのセラミックビーズが例として開示されている。
しかし、このような条件を取ったとしても、処理に多大な人手ふと労力が発生することはまちがいなく、コスト面では実用的ではなかった。また分散過程で顔料は損なわれないかもしれないが、顔料を覆った樹脂膜が傷つき、ポリマーの分子鎖の一部がインク中に浮遊してしまい、インク中に大量に放置される。上記ポリマーは溶媒リッチのインク系では顔料と結合せず浮遊状態にある。このためインクヘッドから出射したインク中のポリマーがヘッドの撥水膜に吸着してしまい、ヘッドノズル周囲に汚れが堆積して、それが印刷物の汚れとなってしまうことが多々発生した。
さらにセラミックビーズでメディア分散する方法は、以下の公開事例にも詳細に記載されている。これらの公開事例ではセラミックビーズを0.3〜0.5mm程度のもので分散する方法が開示されている。(例えば、特許文献7,10,11を参照)
さらに上記公開事例以外に、かなり微小なセラミックビーズ(0.02mm〜0.2mm)を用いた公開事例が記載されている。(例えば、特許文献12を参照)
上記先行事例では、メディア径、メディア充填率、分散機のローター周速度についての情報は得られるが、それらの
値が実際、インク中の顔料にどのように作用して分散が進行していくかはあきらかにされていないため、特にマゼンタ顔料などのような顔料表面の官能基が損傷を受けやすいものについては、うまく分散できず最終的にインクを停滞させた時はその安定性がよくなかった。
さらにメディア型分散機では、分散装置にモータートルク値、消費電力値でどの程度分散装置自体がインクにエネルギーを与えたのかを分散の目安として記載したものがある。(例えば、特許文献13,14,15を参照)
しかし、上記方法ではインク全体にかかるエネルギーを指標としているため、本来インク中の顔料の分散に使用したエネルギーが明確に算出できず、エネルギーのほとんどが熱に変換されて分散に寄与していないことがわかった。このため、顔料表面中の官能基の破損がどの程度のエネルギーで破壊されるのかよくわからなかった。
特開平10−316915号公報 特開平9−176538号公報 特開平10−272828号公報 特開2005−220298号公報 特開2005−220297号公報 特開2004−26927号公報 特開2004−51777号公報 特開2002−105374号公報 特開2005−281691号公報 特開2002−306440号公報 特開2004−81945号公報 特開2005−240027号公報 特開2004−246300号公報 特開2004−233453号公報 特開2004−131664号公報
本発明の目的は、インクジェットインク中のマゼンタ顔料の分散安定性が確保でき、長期の液停滞でも顔料の凝集が発生しにくくなり、しいてはインクの出射時に凝集が目詰まりを起こしにくくなり、ブラックインクで表示する詳細な文字などの印字品質が画欠のない安定した印字濃度得ることができる水系インクジェットインクの分散方法及び水系インクジェットインクを提供することにある。
本発明の目的は以下の構成により達成することができる。
1.25℃での表面張力が25mN/m以上、40mN/m以下で、25℃での粘度が1mPa・s以上、50mPa・s以下で、かつ、25℃における蒸気圧が133Pa以下である溶剤を、インク全質量に対し50質量%以上、90質量%未満含有し、かつ、含有量が10質量%以上、45質量%未満である溶媒中に有機顔料、分散剤を分散してなる水系インクジェットインクの分散方法において、
上記有機顔料を前記溶媒中にアニュラー型メディア型分散機を用いて分散する際、メディア型分散機のローターの回転と、それによるメディアの動きで規定される総せん断応力を下記σと規定した時、1000≦σ≦100000の範囲で分散条件を調整しながら、インク顔料を分散することを特徴とする水系インクジェットインクの分散方法。
Figure 2007197550
(数1において、R=分散機ローター径(cm)、ρ=分散液の密度g/cm3)(、U=分散機ローターの最外周速度(cm/秒)ρd=メディアの密度(g/cm3)、D=メディア直径(cm)、hi=分散機ベッセルの内径(cm)、ε=メディア空隙率、f(ε)=空隙率補正係数(0.5≦ε≦0.8の時はf(ε)=0.123*ε/(1−ε)、ε≦0.45はf(ε)=0.02とした))
2.メディア型分散機に使用するビーズがジルコニアビーズであり直径0.3mm〜1.5mmのメディア径のものを使用したことを特徴とする前記1に記載の水系インクジェットインクの分散方法。
3.前記1又は2に記載の水系インクジェットインクの分散方法を用いて得られることを特徴とする水系インクジェットインク。
即ち、本発明者らは、上記従来技術の欠点を補うべく、鋭意検討した結果、以下の方法で溶剤リッチの中に顔料、とくに有機顔料を分散する際に以下の実施形態を取ることで、インク中の顔料の停滞安定性が向上することを見いだした。
また、前記溶剤リッチの水系インクジェットインクに使用する有機顔料を、メディア型分散機で分散して、顔料を一次粒子径近傍まで分散する際、顔料の表面に付与された官能基、たとえばスルホン酸基、カルボキシル基、水酸基などの官能基がメディア間で補足されて磨砕されてしまい、官能基が損失して溶媒との親和性がなくなり、顔料粒子同士が凝集しやすくなると考えられる。また一次粒子径以上に磨砕されてしまうこともあり、新しい界面が発生し、顔料の凝集力が増加することもあった。そこで本発明では、特にこの有機顔料の官能基と溶媒との親和性に着目し、メディア分散機のローターとメディアにより発生するせん断応力に着目し、その値をある範囲にすることで、顔料表面の官能基を損なうことなく、一次粒子径近傍までインク中に有機顔料を分散し、停滞安定性が向上することも見いだした。
本発明によって、インクジェットインク中のマゼンタ顔料の分散安定性が確保でき、長期の液停滞でも顔料の凝集が発生しにくくなり、しいてはインクの出射時に凝集が目詰まりを起こしにくくなり、ブラックインクで表示する詳細な文字などの印字品質が画欠のない安定した印字濃度を達成できる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、本発明で規定する特定の表面張力、粘度及び蒸気圧を有する溶剤をインク全質量に対し50質量%以上、90質量%未満含有し、かつ水の含有量が10質量%以上、45質量%未満である溶媒中に有機顔料、分散剤を分散してなる水系インクジェットインク液の分散方法において、
有機顔料を上記溶媒中にメディア型分散機を用いて分散する際、メディア型分散機のローターの回転と、それによるメディアの動きで規定される総せん断応力をσと規定した時、そのせん断応力が500≦σ≦150000の範囲でインク顔料を分散すること。さらにメデイア型分散機はアニュラー型分散機を使用し、使用するメディアは0.5mm〜1.5mmまでに範囲のものを使用すると効果が出ることがわかった。
はっきりした機構はわからないが、およそ以下のようであると推定している。
インク顔料が溶媒中で分散されるとき、顔料はその比表面積を拡大する方向にいくため、自由エネルギーが乱雑になる方向であり、その結果熱が発生する系になる。
この場合、熱は分散機の冷却ジャケットに冷却水をどう通させることで、その発熱を制御できるため、そこで発生した熱がどの程度エネルギーとして顔料の分散に使用されたのかということは正確にはわからないと考えられる。
そこで、エネルギーの出入りで顔料の分散機構を解明することはできないと考え、分散機のメディアの動きに着目した。特にメディア型分散機に分散機構についてはいくつかの成書があるが、どれも分散機構をメディアの動きで捕らえたものは少ない。その中で、色材,vol49(1976)、色材,vol55(1982)の文献がメディアの分散機内での動きをよく観察したものとして挙げられる。
これらの文献によれば、メディアを一連の集合体の運動としてとらえ、ローターが回転することでメディア集合体が重力沈降によりベッセル周辺部に飛ばされる。飛ばされたときのメディアの終末速度Umをベッセル間隙hiとメディアの影響を補正値εに換算し、せん断速度γを算出する方法が提案されている。つまりこのγに分散液の粘度μをかけることでせん断応力が算出できるのではないかと推定した。
この場合、メディアは終末速度でベッセル内の他のメディアと衝突してそこに顔料が補足されて、顔料が分散されていくと推定している。分散に使用される力をこの終末速度でメディア全体の動きを仮定してみて、メディアの補正計数値は、従来のメディア径で1.0mm〜3.0mmを適用範囲として考えられているが、それ以外でも適用可と考え、実際に実験で上記範囲以外のメディア(0.05mmまでも適用できる)でも適用できることがわかった。
以上の考え方で、テストした結果、やはりメディア分散は、ベッセル内壁とローターとの間隙でメディア同士の衝突による分散が顔料の力を左右する大事な機構であることがわかった。特にメディア型分散機としてはアニュラー型分散機がその分散機構には好適であるということもわかってきた。(図1は本発明に使用されるアニュラー型分散機の一例を示す断面図である)
図1において、入り口2から入った分散液がローター4とベッセル3面を通過する際には、メディアaがベッセル周辺に蜜充填された状態で終末速度Umで動いており、そこを通過する分散液の中の顔料がUmの速度で補足されていくと推定している。
その際、終末速度Umでメディアa同士が衝突する力は、本発明の前記数1で表されるせん断応力(σ)と考えられるため、その力がどの程度であれば、顔料表面の官能基が傷まないか検討し、結果として本発明においては、100≦σ≦50000までの力であれば、傷つくことがないと推定され、その結果、溶媒リッチな系では弱極性になっているため、顔料の官能基が損傷なけれぱ、官能基側と溶媒との間に親和性ができ、顔料が上記溶媒系で安定して存在できることがわかった。
5は出口配管、6はフィルターで7はシャフトを表す。
アニュラー型メディア分散機としては、上記事例以外に以下のものが使用できる。
シンマルエンタープライズ社製:ダイノミル
アシザワファインテック(株)製:スターミル(LMZ)
浅田鉄工(株)製:ナノグレンミル
コトブキ技研工業(株)製:ウルトラアペックスミル
(株)井上製作所製:KEYミル
図2は予備混合分散にもちいる分散機の一例を示す概略図である。
図3は循環式予備混合分散機の一例を示す概略図である。
本発明の水系インクジェット用インク(以下、単にインクともいう)においては、溶剤として25℃での表面張力が25mN/m以上40mN/m以下で、25℃での粘度が1mPa・s以上、50mPa・s以下で、かつ25℃における蒸気圧が133Pa以下である溶媒を、インク全質量に対し50質量%以上、90質量%未満含有せしめることが必要である。
上述のごとく、本発明に係る溶剤において、1つの要件として25℃での表面張力が25mN/m以上、40mN/m以下であることが特徴であるが、好ましくは25mN/m以上、32mN/m以下である。
また、25℃での粘度としては、1mPa・s以上、50mPa・s以下であることが特徴の1つであるが、好ましくは1mPa・s以上、30mPa・s以下である。
また、25℃における蒸気圧が133Pa以下であることが特徴の1つであるが、好ましくは1〜67Paである。
本発明で用いることのできる溶剤としては、上記で規定する3つの液特性をすべて満たすものであれば特に制限はないが、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコ
ールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロ
ピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル
、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピ
レングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコール
ジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート等を挙げることができる。
本発明で規定した溶剤の各特性値は、例えば、「新版溶剤ポケットブック」有機合成化学協会編、オームに記載のデ−タや、あるいは公知の測定方法に従って求めることができる。
本発明のインクにおいては、上記溶剤と共に水をインク全質量に対し10質量%以上、45質量%未満含有せしめることが特徴の1つであり、好ましくは10質量%以上、30質量%未満である。インク中の水含有量を、本発明で規定した範囲とすることにより、インクの普通紙への浸透速度とカール特性とを両特性を最適の条件に設定することができる。
本発明のインクに使用する顔料分散体の平均粒径は、50nm以上200nm以下であることが好ましい。顔料分散体の
平均粒径が200nmを越えると、分散が不安定となり。また、顔料分散体の平均粒径が50nm未満になっても顔料分散体の安定性が悪くなりやすく、インクの保存安定性が劣化しやすくなる。
本発明で使用したジルコニアビーズでは、例えばと東レ(株)製トレセラム、東ソー(株)製YTZボール、浅田鉄工(株)製セラミックビーズなどがある。例として東レ(株)トレセラムのジルコニアビーズの1.0mm径の元素材の構成を示すと以下のようになっている。
ZnO2:94.75±0.6質量%
23:4.90±0.5質量%
Al23:0.30±0.1質量%
Fe23:≦0.01質量%
SiO2:≦0.01質量%
Na23:≦0.01質量%
MgO:≦0.01質量%
メデイア径としては、通常0.03mm〜3.0mm程度のものが使用されている。
顔料分散体の粒径測定は、光散乱法、電気泳動法、レーザードップラー法等を用いた市販の粒径測定機器により求めることが出来る。また、透過型電子顕微鏡による粒子像撮影を少なくとも100粒子以上に対して行い、この像をImage−Pro(メディアサイバネティクス製)等の画像解析ソフトを用いて統計的処理を行うことによっても求めることが可能である。
本発明の請求項3に記載のインクは、本願の請求項1〜3の何れか1項に記載の水系インクジェット用インクの製造方法により製造される。
本発明のインクにおいて、分散時の添加剤として界面活性剤を用いることができる。本発明に用いられる界面活性剤としては陽イオン性、陰イオン性、両性、非イオン性のいずれも用いることができる。
陽イオン性界面活性剤としては、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、等が挙げられる。
陰イオン性界面活性剤としては、脂肪酸石鹸、N−アシル−N−メチルグリシン塩、N−アシル−N−メチル−β−アラニン塩、N−アシルグルタミン酸塩、アシル化ペプチド、アルキルスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルメチルタウリン、硫酸化油、高級アルコール硫酸エステル塩、第2級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、第2級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、モノグリサルフェート、脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。
非イオン活性剤としては、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル 、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンオキサイド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール等が挙げられる。
また、インク吐出後のインク液滴の普通紙中への浸透を加速するために界面活性剤を使用することが好ましく、そのような界面活性剤としては、インクに対して保存安定性等の悪影響を及ぼさないものであれば限られるものではなく、上記の分散時の添加剤として使用する界面活性剤と同様のものが用いることができる。
また、本発明のインク中には、インクの多価金属イオンであるカルシウムイオン、マグネシウムイオン及び鉄イオンの総含有量が、10ppm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5ppm、特に好ましくは0.1〜1ppmである。
インクジェットインク中の多価金属イオンの含有量を、上記で規定した量とすることにより、高い分散安定性を有するインクを得ることができる。本発明に係る多価金属イオンは、硫酸塩、塩化物、硝酸塩、酢酸塩、有機アンモニウム塩、EDTA塩等に含有されている。
本発明のインクでは、上記説明した以外に、必要に応じて、出射安定性、プリントヘッドやインクカートリッジ適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、公知の各種添加剤、例えば、多糖類、粘度調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防ばい剤、防錆剤等を適宜選択して用いることができ、例えば、流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコンオイル等の油滴微粒子、特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等に記載されている退色防止剤、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号及び特開平4−219266号等に記載されている蛍光増白剤等を挙げることができる。
上記構成からなる本発明のインクは、インクの表面張力としては、25℃で25〜40mN/mであることが好ましく、より好ましくは25〜35mN/mであり、更に好ましくは30〜35mN/mである。また、インク粘度としては、25℃で1〜40mPa・sであることが好ましく、より好ましくは5〜40mPa・sであり、更に好ましくは5〜15mPa・sである。また、本発明のインク中の溶存酸素濃度は、25℃で2ppm以下であることが好ましく、この溶存酸素濃度条件とすることにより、気泡の形成を抑制することができ、高速印字においても出射安定性に優れたインクジェット記録方法を実現することができる。インク中に溶存している溶存酸素を測定する方法としては、例えば、溶存酸素測定装置DO−14P(東亜電波(株)製)を用いて測定することができる。
本発明のインクジェットインクを用いた画像形成方法においては、例えば、インクジェットインクを装填したプリンター等により、デジタル信号に基づきインクジェットヘッドよりインクを液滴として吐出させ普通紙に付着させることでインクジェットプリントが得られる。
本発明のインクを吐出して画像形成を行う際に、使用するインクジェットヘッドはオンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。又吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)等など何れの吐出方式を用いても構わない。
その中でも、本発明のインクジェット記録方法においては、本発明のインクを30μm以下のノズル径を有するピエゾ型インクジェット記録ヘッドから吐出させて、普通紙に記録を行うこと、更に、30μm以下のノズル径を有するラインヘッド方式のピエゾ型インクジェット記録ヘッドから吐出させて、普通紙に記録を行うことを特徴とする。
インクジェットプリンターの印字方式として、シャトルヘッド方式の記録ヘッドに対し、ラインヘッド方式の記録ヘッドを用いて印字することにより、本発明のインクの印字特性を十分に引き出すことができ、その結果、インク液滴の普通紙への着弾時の極めて良好なドット形状(真円性)や印字精度を達成することができる。特に、本発明のインクジェット記録方式においては、普通紙の両面に画像印字を行うことを1つの特徴としている。
両面印字は、片面に印字した後に普通紙を裏返し、印字面を下にして搬送することが多いが、本発明のインクは前記特性を有しているため、両面に印字しても裏抜けや文字の滲みがないため、いずれの面でも高濃度で文字品質に優れ、また、搬送不良が生じたり搬送ベルトがインクで汚染されることがない。
本発明のインクジェット記録方法で用いる普通紙としては、特に制限はないが、非塗工紙、特殊印刷用紙、及び情報用紙の一部に属する80〜200μmの非コート紙が望ましい。本発明に係る普通紙の構成は、LBKP及びNBKPに代表される化学パルプ、サイズ剤及び填料を主体とし、その他の抄紙助剤を必要に応じて用い、常法により抄紙される。本発明に係る普通紙に使用されるパルプ材としては、機械パルプや古紙再生パルプを併用してもよいし、又、これらを主材としても何ら問題はない。
本発明に係る普通紙に内添されるサイズ剤としては、例えば、ロジンサイズ、AKD、アルニケル無水コハク酸、石油樹脂系サイズ、エピクロルヒドリン、カチオン澱粉及びアクリルアミド等が挙げられる。
また、本発明に係る普通紙に内添される填料としては、例えば微粉珪酸、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、カオリン、カオリナイト、ハロイサイト、ナクライト、ディッカイト、パイロフィライト、セリサイト、二酸化チタン、ベントナイト等が挙げられる。
また、本発明に係る普通紙には、本発明のインクの裏抜けや着色剤の定着性を高める観点から、水溶性多価金属塩を含有していてもよい。
本発明に係る普通紙に用いることのできる水溶性多価金属塩としては、特に制限はないが、例えば、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、ストロンチウム、バリウム、ニッケル、銅、スカンジウム、ガリウム、インジウム、チタン、ジルコニウム、スズ、鉛などの金属塩、硫酸塩、硝酸塩、ギ酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩、クロロ酢酸塩、p−トルエンスルホン酸塩といった塩として添加される。また、水溶性の多価金属イオンの塩として、ポリ塩化アルミニウムのような水溶性無機ポリマーを使用してもよい。水溶性は少なくとも0.1質量%を示すものが好ましく、より好ましくは1質量%を示すものである。中でも、アルミニウム、カルシウム、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛からなる水溶性塩はその金属イオンが無色なため好ましい。特に好ましいのは、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、酢酸亜鉛である。また使用するメディア型ミルとしては、以下のものが適用できる。
シンマルエンタープライズ社製:ダイノミル
アシザワファインテック(株)製:スターミル(ZRS)
浅田鉄工(株)製:グレンナノミル
コトブキ技研工業(株)製:ウルトラアペックスミル
(株)井上製作所製:KEYミル
さらに使用した有機顔料としては下記の表にあるものがよく使用されている。
Figure 2007197550
Figure 2007197550
以下に本発明の実施例を記載するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。
《作製方法》
マゼンタ顔料と溶剤、水、高分子分散剤とをディゾルバーで予備混合した後、ジルコニアビーズを充填したアニュラー型分散機(アシザワファインテック製MiniCer)で分散処理して各顔料分散液を調製した後、インクの濃度まで希釈し、この液を濾過及び中空糸膜を用いた膜脱気処理を行ってインクを調製した。なお溶剤、水、高分子分散剤の配合比率は以下の通りである。
有機顔料(大日本インキ化学製クロモファインマゼンタRG C.I NumberPR122) 4.0部
溶剤(トリプロピレングリコールモノメチルエーテル) 69.5部
水 25.0部
高分子分散剤(アクリル−スチレン共重合体ポリマー30質量%水溶液) 1.5部
また図1に示すアニュラー型分散機の装置条件は以下の内容で、可変した部分は以下のとうりである。
Figure 2007197550
*:アニュラー型分散機の有効容積は0.16Lで、その中にメディアaを見かけ充填したときの体積を、有効容積で割った値を充填率とした。
《評価方法》
表面張力が違う溶剤を使用して、上記分散液を調製した。評価方法として、インク液停滞安定性は、40℃、1ヶ月間恒温槽に入れて保存し、その後取り出してインクヘッドでの出射性を評価した。出射性は以下の方法、基準で実施し、出射性、印字品質がともに○以上を良好と判断した。
(出射性評価基準)
◎:全ノズルが最後まで安定に出射した
○:最終で、1〜20ノズルで曲がり欠射が発生した
△:最終的に21〜40のノズルで曲がり欠射が発生した
×:最終的に21〜40のノズルで曲がり欠射が発生した
(印字品質評価)
◎:3ポイントの文字画像が細部まで明瞭に記録されている
○:3ポイントの文字画像でも判読できる
△:3ポイントの文字画像の一部で潰れが見られるが、4ポインントの文字画像は判読できる
×:4ポイントの文字画像の一部で潰れが見られる
××:4ポイントの文字画像で明らかに潰れが見られ、判読が困難である
評価結果を以下に示す。
Figure 2007197550
Figure 2007197550
Figure 2007197550
Figure 2007197550
以上の結果から明らかなように、本発明の実施例の試料が比較の試料に比して優れていることが分かる。
本発明に用いられるアニュラー型分散機の一例を示す断面図である。 本発明の予備混合分散にもちいる分散機の一例を示す概略図である。 本発明の予備混合に用いられる循環式予備混合分散機の一例を示す概略図である。
符号の説明
1 ジャケット
8 ディゾルバー
9 ポンプ
10 予備混合液タンク
12 攪拌翼
11 メディア型分散機
a メディア

Claims (3)

  1. 25℃での表面張力が25mN/m以上、40mN/m以下で、25℃での粘度が1mPa・s以上、50mPa・s以下で、かつ、25℃における蒸気圧が133Pa以下である溶剤を、インク全質量に対し50質量%以上、90質量%未満含有し、かつ、含有量が10質量%以上、45質量%未満である溶媒中に有機顔料、分散剤を分散してなる水系インクジェットインクの分散方法において、
    前記有機顔料を前記溶媒中にアニュラー型メディア型分散機を用いて分散する際、メディア型分散機のローターの回転と、それによるメディアの動きで規定される総せん断応力を下記σと規定した時、1000≦σ≦100000の範囲で分散条件を調整しながら、インク顔料を分散することを特徴とする水系インクジェットインクの分散方法。
    Figure 2007197550
    (数1において、R=分散機ローター径(cm)、ρ=分散液の密度g/cm3)(、U=分散機ローターの最外周速度(cm/秒)ρd=メディアの密度(g/cm3)、D=メディア直径(cm)、hi=分散機ベッセルの内径(cm)、ε=メディア空隙率、f(ε)=空隙率補正係数(0.5≦ε≦0.8の時はf(ε)=0.123*ε/(1−ε)、ε≦0.45はf(ε)=0.02とした))
  2. メディア型分散機に使用するビーズがジルコニアビーズであり直径0.3mm〜1.5mmのメディア径のものを使用したことを特徴とする請求項1に記載の水系インクジェットインクの分散方法。
  3. 請求項1又は2に記載の水系インクジェットインクの分散方法を用いて得られることを特徴とする水系インクジェットインク。
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