JP2007191105A - 不整地走行車両 - Google Patents

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Abstract

【課題】潤滑系まわりを好適に配置構成し、車両の性能向上等を有効に実現する不整地走行車両を提供する。
【解決手段】前輪11を操舵するステアリングシャフト21を前輪11とエンジン14との間に配置する。ステアリングシャフト21をエンジン14側に傾斜させ、ステアリングシャフト21の後方にラジエータ35を近接配置する。車両側面視でラジエータ35とエンジン14との間にオイルタンク36とブリーザ装置のオイルキャッチタンク37とを配置する。
【選択図】図4

Description

本発明は、バギー車等と呼ばれている鞍乗型不整地走行車(ATV;All Terrain Vehicle)、特にオイル貯留装置(オイルタンク)等を含む潤滑系まわりに関するものである。
この種の車両はオンロードは勿論のこと、特にオフロードあるいは水辺等における過酷な走行条件でも優れた走行性能を有し、高い機動性を発揮する。その基本構成はたとえば、車体フレームの前後に4つの車輪を有し、前輪相互間に操舵装置を装備すると共に車体フレームにエンジンを搭載し、その上部に燃料タンクやシート等を載置するというものである。
特にレース志向のあるATVにあっては、操縦安定性を確保するためにエンジン質量の集中化や軽量化あるいは車両の低重心化が要求される。また、エンジン潤滑方式としてドライサンプエンジンを採用し、オイルタンクおよびブリーザタンク(オイルキャッチタンク)の別体化等によりエンジン下部、特にクランクケースを小型化することで最低地上高の確保とともにエンジンの低重心化が図られる。
具体的な例として、たとえば特許文献1には縦置きクランクシャフトを持つドライサンプ式ATVにおいて、オイルタンクをエンジン前方に配置し、エンジンのケースカバーに直接取り付けるものが開示されている。また、特許文献2にはエンジン前方にラジエータを配置し、ラジエータの下方(および操舵装置の下方)にオイルタンクを配置したものが開示されている。さらに、特許文献3にはブリーザタンクをエンジン後方に配置したものが開示されている。
特開2001−073737号公報 特開2003−300493号公報 特開2004−060531号公報
しかしながら、オイルタンクやブリーザタンク等の配置構成につき、それらが必ずしも適切でない場合があった。すなわち、たとえば特許文献2に記載のものにおいて、オイルタンクは重量物であるためエンジンから離間して配置すると、質量の集中化という点では好ましくない。また、左右の車体フレーム間にオイルタンクを収容するべく、車両幅方向の中央にオイルタンクを配置する必要があり、そのためにラジエータの前方にオイルタンクが位置することになり、その結果、走行風によるラジエータの冷却性能に影響する。
また、特許文献3に記載のものにおいて、ブリーザタンクをエアクリーナに近接配置することで、ブリーザタンクからエアクリーナへ至る還流配管は短縮化することができる。ところが、エンジンのシリンダヘッドからブリーザタンクへの配管は逆に長尺化してしまう。このようにブリーザタンクへの吸入側が長くなると、ホース内壁に接する気液分離前のガスが多量であることから、ブローバイガスに含まれる油分がホース内壁に付着して、オイルを効率よくオイルタンクへ還流することができない。逆に、ブリーザタンクからの排出側が長くても、ホース内は気液分離後のガスしか通過しないため特に問題となることはない。なお、前述の特許文献1には、ラジエータやオイルキャッチタンクについて何ら開示されていない。
本発明はかかる実情に鑑み、特に潤滑系まわりを好適に配置構成し、車両の性能向上等を有効に実現する不整地走行車両を提供することを目的とする。
本発明による不整地走行車両は、エンジンを車両の中央部に位置させて車体フレームに搭載し、前記車体フレームの前部に前輪を配置する一方、前記車体フレームの後部に後輪を配置する不整地走行車両であって、前記前輪を操舵するステアリングシャフトを該前輪と前記エンジンとの間に配置すると共に、前記ステアリングシャフトを前記エンジン側に傾斜させ、前記ステアリングシャフトの後方にラジエータを近接配置し、車両側面視でこのラジエータと前記エンジンとの間にオイルタンクとブリーザ装置のオイルキャッチタンクとを配置したことを特徴とする。
また、本発明による不整地走行車両において、前記オイルキャッチタンクを前記オイルタンクの上方に配置したことを特徴とする。
また、本発明による不整地走行車両において、前記オイルタンクを車両幅方向の中央部に配置し、平面視でこのオイルタンクと少なくともその一部が重なるように前記オイルキャッチタンクを配置したことを特徴とする。
また、本発明による不整地走行車両において、前記エンジンの前方に取り付けられると共にその前方に突出する排気管を有し、前記エンジンの車両幅方向の一側方を通って車両後方へ向けて延設するように前記排気管を平面視略U字状に湾曲させ、前記排気管の略U字状部とは反対側の車両幅方向の他方側に偏倚して前記オイルキャッチタンクを配置したことを特徴とする。
また、本発明による不整地走行車両において、前記エンジンのシリンダヘッド上面に上方へ突出するブリーザ出口を形成すると共に、前記オイルキャッチタンク上部の後面に後方へ突出するブリーザ入口を形成し、前記ブリーザ出口と前記ブリーザ入口とをブリーザホースを介して接続したことを特徴とする。
本発明によれば、オイルタンクおよびオイルキャッチタンクは、ラジエータとエンジンユニットとの間に配置される。これによりエンジンユニットを車体中心部に配置しながら、エンジンとラジエータとの間の空間を有効に利用することができる。仮にオイルタンクをラジエータの前方に配置したとすると、走行風によるラジエータの冷却が不十分になるが、これを回避してラジエータの高い冷却性能を保証することが可能になる。また、ラジエータを後方に後退させて配置した場合には、そのままではフロントフェンダ等のカバー部材により走行風がラジエータに当たり難くなる等の問題もあるが、そのような問題を解消することができる。
また、オイルタンクの上方にオイルキャッチタンクが配置される。容量の大きいオイルタンクを下方に配置することで、車両の低重心化を図り、走行安定性を向上させることができる。この場合、オイルタンクと少なくともその一部が車両幅方向に重なるようにオイルキャッチタンクを配置することで、車両幅方向の重量配分が左右均等に近くなり、この点でも走行安定性を向上させることができる。
また、排気管の略U字状に湾曲するのとは反対側の車両幅方向の他方側に偏倚してオイルキャッチタンクが配置される。このようにオイルキャッチタンクを配置することで、排気管のU字状部から離間させ、これにより排気管を着脱する際に両者が干渉しないようにし、排気管の着脱を伴う各種の整備作業等における作業性を向上させることができる。さらに、排気管のU字状部はエンジンユニット前端面から車両前方に一旦突出する構成のため、オイルキャッチタンクをU字状部から離間させない場合はU字状部との干渉を避けるにオイルキャッチタンクの容量を小さくせざるを得ない。
また、シリンダヘッドカバーの上面にブリーザ出口を形成すると共に、オイルキャッチタンク上部の後面にブリーザ入口を形成し、これらをブリーザホースを介して接続する。これによりブリーザホースを短縮することができ、その内壁に付着するオイル量を低減することができ、オイルを効率よくオイルキャッチタンク37に導入でき、さらにはオイルタンクに還流することができる。
以下、図面に基づき、本発明による不整地走行車両の好適な実施の形態を説明する。
図1および図2は、本発明の実施形態における不整地走行車両を示し、この実施形態ではたとえば鞍乗型4輪車10の例とする。図1および図2において、本実施形態に係る鞍乗型4輪車10の全体構成を説明する。なお、図中、矢印Frは前方を、また矢印Rrは後方をそれぞれ表している。また、図3において、右方および左方をそれぞれ矢印Rおよび矢印Lで表わす。鞍乗型4輪車10は基本骨格を構成する鋼管製の車体フレームを備え、基本構成において車体フレームの前部および後部に前輪11および後輪12を配設し、前輪11相互間に操舵装置13を装備すると共に、前輪11および後輪12との間の車体フレームにエンジンユニット14を搭載する。
ここで、車体フレームは図3および図4等に示されるように上部フレーム15A、下部フレーム15Bおよび前部フレーム15C等を含むメインフレーム15とボディフレーム16とシートフレーム17とからなる。そして、車幅方向にそれぞれ左右一対配設されるこれらのフレーム部材がクロスメンバ等によって相互に連結され、車両の基本骨格を構成している。車体フレーム、特にメインフレーム15とボディフレーム16の内側には一定の空間が画成され、この空間にエンジンユニット14等が収容支持される。
前輪11および後輪12の間に位置するように車体フレームに搭載されるエンジンユニット14は、たとえば水冷式4サイクル単気筒のエンジンを含み、その出力は、エンジンケース14Aに一体に組み込まれたトランスミッションを経てドライブスプロケットに伝達される。この実施形態ではエンジンユニット14は、ドライサンプ式にエンジン潤滑を行なうようになっており、エンジンユニット14とは別体に後述するオイルタンクを装備する。なお、詳細については省略するが、ドライブスプロケットはチェーンを介して、後輪12のドリブンスプロケットと結合し、これにより後輪12が回転駆動される。
シートフレーム17上にはシート底板18A(図4)を介して鞍乗型のシート18が設置され、その前方に燃料タンク19が設置され、さらにその前方には前輪11を操向するためのステアリングハンドル20およびこれを支持するステアリングシャフト21が設けられている。なお、燃料タンク19は、燃料タンクカバー19Aによって覆われている。ステアリングシャフト21は、その下端部が車両中央部における前輪11の車軸付近に位置する軸受部で回転可能に軸支されており、また、図1に示されるようにエンジン側すなわち後上方に傾斜配置される。
車体前部には前輪11および車体フレームの前部上方を覆うフロントフェンダ22が設けられ、また後輪12および車体フレームの後部上方を覆うリヤフェンダ23が設けられる。これらのフロントフェンダ22およびリヤフェンダ23は、合成樹脂材料により成形される。
つぎに、図3および図4をさらに参照して、ボディフレーム16の後方には、空気の吸込口24aを有するエアクリーナ24が搭載され、このエアクリーナ24の前部から延出するインテークパイプ25がスロットルボディ26と接続される。スロットルボディ26はエンジンユニット14のエンジンのインテークポートに接続される。燃料タンク19に接続された燃料ポンプ27からは、スロットルボディ26に装着されたインジェクタ28に燃料が供給され、インジェクタ28より所定のタイミングで燃料が噴射されるようになっている。なお、エンジンユニット14のシリンダ14Bをやや前傾させることで、可能な限りエンジン高さを低く抑えている。
一方、エンジンの前方には排気管29が取り付けられる。図4のようにシリンダ14Bのシリンダヘッド14Cに接続された排気管29は、前方に突出してその後、エンジンの車両幅方向の一側方を通って車両後方へ向けて延設する。この例では排気管29を、図3のようにエンジンの右側へ平面視で略U字状に湾曲させ、エアクリーナ24の後方に配置されたマフラ30まで延出させてこれに接続する。
上記の場合、図4に示されるようにボディフレーム16に設けたピボット軸31にスイングアーム32が揺動可能に支持され、該スイングアーム32の後端部に後輪12の車軸が支持されるようになっている。スイングアーム32は、クッションリンク33を介してリヤクッションユニット34と連結し、したがって後輪12はこの緩衝機構を介して車体フレームに支持される。なお、前輪11についても緩衝機構を備えている。
本発明においてステアリングシャフト21は前輪1とエンジンユニット14との間に配置されるが、ステアリングシャフト21の後方にラジエータ35を近接配置する。そして車両側面視で、このラジエータ35とエンジンユニット14との間にオイルタンク36とブリーザ装置のオイルキャッチタンク37とが配置される。
ここで、図5あるいは図6に示されるように、ラジエータ35は適度に前傾するように車体フレームに取付支持され、エンジンユニット14(特にシリンダヘッド14C)の略前方に配置される。ラジエータ35の上部および下部には流入側冷却水配管38および流出側冷却水配管39が接続され、これらの冷却水配管38,39はエンジンユニット14のシリンダヘッド14Cの側部およびエンジンケース14Aの側部付近にそれぞれ接続している。また、ラジエータ35の背部(後部)にはリザーバタンク40(図10参照)が付設されており、ラジエータ35の作動状態に応じてラジエータ35の冷却水の水量もしくは水位を調整するようになっている。なお、ラジエータ35の後面側にはクーリングファン41が搭載され、これらを左右両側から覆うようにラジエータカバー42が付設される。
さて、本発明において図5あるいは図6等に示されるように、オイルタンク36の上方にオイルキャッチタンク37が配置される。ここで、オイルタンク36は図8をも参照して縦長の略箱型を呈し、取付部36a,36bにてブラケット43,44を介して車体フレームに締着固定される。また、オイルキャッチタンク37は図9をも参照して側面視では略三角型を呈し、取付部37aにてブラケット45を介してシリンダヘッドカバー14Dに締着固定される。
この場合、オイルタンク36は図3のように車両幅方向の中央部に配置され、平面視でこのオイルタンク36と少なくともその一部が重なるように、言い換えると車両幅方向にその一部が重なるようにオイルキャッチタンク37を配置する。さらに、前述したように排気管29をエンジンの右側へ略U字状に湾曲させているが、かかる排気管29のU字状部とは反対側の車両幅方向の他方側、すなわち左側に偏倚してオイルキャッチタンク37が配置される。
また、上記のように配置されるオイルタンク36は図5あるいは図7に示すように、エンジンユニット14のオイルパンに溜まったオイルを回収する回収用のオイルホース46と、エンジンユニット14の後述するオイルポンプにオイルを供給する供給用のオイルホース47とを介して、エンジンユニット14と接続される。この場合、オイルタンク36の上部にはオイルホース46に対する接続口36cが、また底部にはオイルホース47に対する接続口36dがそれぞれ設けられる。また、オイルタンク36はオーバフローホース48を介してシリンダヘッド14C、より具体的にはシリンダヘッドカバー14Dと接続される。この場合、オイルタンク36の上部にはオーバフローホース48に対する接続口36eが設けられる。
一方、オイルキャッチタンク37はブリーザホース49を介して、シリンダヘッド14C、より具体的にはシリンダヘッドカバー14Dと接続されると共に、ブリーザホース50を介してインテークパイプ25と接続される。オイルキャッチタンク37はまた、オイル戻しホース51を介してエンジンケース14Aと接続される。
この場合、シリンダヘッドカバー14Dの上面に上方へ突出するブリーザ出口14Daを形成すると共に、図9に示されるようにオイルキャッチタンク37上部の後面に後方へ突出するブリーザ入口37bを形成する。そして、これらブリーザ出口14Daとブリーザ入口37bとがブリーザホース49を介して接続される。オイルキャッチタンク37の上部にはブリーザホース50に対する接続口37cが、また下部にはオイル戻しホース51に対する接続口37dがそれぞれ設けられる。
ここで、上述した特にオイルタンク36およびオイルキャッチタンク37まわりの配置構成において、先ず、これらは前述のようにラジエータ35とエンジンユニット14との間に配置される。これによりエンジンユニット14を車体中心部に配置しながら、エンジンとラジエータ35との間の空間を有効に利用することができる。ちなみに、仮にオイルタンク36をラジエータ35の前方に配置したとすると、走行風によるラジエータ35の冷却が不十分になるが、これを回避してラジエータ35の高い冷却性能を保証することが可能になる。また、ラジエータ35を後方に後退させて配置した場合には、フロントフェンダ22等のカバー部材により走行風がラジエータ35に当たり難くなる等の問題もある。
また、オイルタンク36の上方にオイルキャッチタンク37が配置される。容量が大きく、さらにオイルが満たされることで質量の大きいオイルタンク36を下方に配置し、ブローバイガスを取り込み気液分離するだけで軽量なオイルキャッチタンク37を上方に配置することで、車両の低重心化を図り、走行安定性を向上させることができる。この場合さらに、オイルタンク36と少なくともその一部が車両幅方向に重なるようにオイルキャッチタンク37を配置することで、車両幅方向の重量配分が左右均等に近くなり、この点でも走行安定性を向上させることができる。
また、特に排気管29との関係では、該排気管29の略U字状に湾曲するのとは反対側の車両幅方向の他方側に偏倚してオイルキャッチタンク37が配置される。このようにオイルキャッチタンク37を配置することで、排気管29のU字状部から離間させる。これにより排気管29を着脱する際に両者が干渉しないようにし、排気管29の着脱を伴う各種の整備作業等における作業性を向上させることができるとともに、オイルキャッチタンク37の容量も確保できる。
また、シリンダヘッドカバー14Dの上面にブリーザ出口14Daを形成すると共に、オイルキャッチタンク37上部の後面にブリーザ入口37bを形成し、これらをブリーザホース49を介して接続する。これによりブリーザホース49を短縮することができ、その内壁に付着するオイル量を低減することができ、オイルを効率よくオイルキャッチタンク37に導入でき、さらにはオイルタンク36に還流することができる。
つぎに、上述のオイルタンク36およびオイルキャッチタンク37を含めたオイル循環系について説明する。
この実施形態における鞍乗型4輪車10はドライサンプ式であるため、エンジンケース14A内にオイルパン等のオイル貯留室を区画形成しない。なお、エンジンケース内にオイル貯留室を形成するドライサンプ式エンジンもあるが、エンジンが大型化する上、エンジンケースの形状が複雑になる。これに対して本発明の鞍乗型4輪車10では、前述のようにエンジンケース14Aとは別体のオイルタンク36を備えており、エンジンを小型・軽量化し、さらにエンジンケース14Aの形状をシンプルにできる。
一方、エンジンケース14Aとは別体のオイルタンク36を設けるため、オイルをエンジンに取り込むオイルポンプ(E/Gオイルポンプ)と、エンジンからオイルタンク36にオイルを還流させるオイルポンプ(スカベンジングポンプ)とを備える。詳細については後述するが、E/Gオイルポンプはエンジンケースの右側部(エンジンケース右側半体の外側部)に配設され、また、スカベンジングポンプはエンジンケースの左側部(エンジンケース左側半体の内側部)に配設され、これら両オイルポンプは同軸上に配置されるオイルポンプ軸にそれぞれ配設される。
なお従来、ドライサンプ式のエンジンで別体オイルタンクを備えたものにおいて、オイルタンクからエンジン側にオイルを吸い込んでエンジンおよびミッション各部へ圧送するためのフィードポンプと、各部を潤滑してエンジンケース内のオイル貯留部に溜まったオイルをオイルポンプへ還流するためのスカベンジングポンプとを装備したものが知られている。
ここで、エンジンケース14A内にはクランク軸を始めとして、潤滑を必要とする多数の可動部材が配置され、先ずこれらの配置構成について説明する。図11はエンジンケース14Aを構成するエンジンケース右側半体100A(図11(a))およびエンジンケース左側半体100B(図11(b))を示している。シリンダ14Bの下方に配置されるクランク軸101の前方には、同一高さ位置にバランサ軸102が配置され、相互に所定の位相関係で回転するように連結される。
また、クランク軸101の後方にはカウンタ軸103、さらにはドライブ軸104が配置連結され、ドライブ軸104の出力によりチェーン等の動力伝達手段を介して後輪12を駆動するようになっている。カウンタ軸103およびドライブ軸104に加えて、変速操作装置を構成するシフトドラム105やリバースアイドラギヤ軸106によりトランスミッション系が構成される。なお、図11においては上述した各分材の主に配置関係を示し、個々の詳細構造についてはその説明を省略するものとする。
さて、図11(a)に示されるようにエンジンケース右側半体100Aにおいて、クランク軸101の下斜め後方にE/Gオイルポンプ107が配置される。E/Gオイルポンプ107は図12にも示すように、エンジンケース右側半体100Aの外側部にてオイルポンプ軸108上に配置構成される。この場合、クランク軸101の後方に配置されたオイルポンプアイドラギヤ軸109を有し、このオイルポンプアイドラギヤ軸109はクランク軸101によって回転駆動されるようになっている。オイルポンプアイドラギヤ軸109に設けたドライブギヤ110とオイルポンプ軸108に設けたドリブンギヤ111とが噛合し、これによりオイルポンプ軸108、すなわちE/Gオイルポンプ107がクランク軸101により駆動される。
E/Gオイルポンプ107は、エンジンケース右側半体100Aに形成された吸入通路112と連通し、この吸入通路112はエンジンケース右側半体100Aの外側面において吸入口112aとして開口する。この吸入口112aには、前述したオイルタンク36に接続されたオイルホース47が接続する。E/Gオイルポンプ107から吐出したオイルは、吐出通路113(図6参照)を通ってオイルフィルタ114へ送られ、さらにエンジン各部へ給送される。
一方、図11(b)に示されるようにエンジンケース左側半体100Bにおいて、クランク軸101の下斜め後方にスカベンジングポンプ115および後述するT/Mオイルポンプ116が配置される。スカベンジングポンプ115は図12にも示すように、エンジンケース左側半体100Bの内側部にてオイルポンプ軸108上に配置構成される。この例ではオイルポンプ軸108は中央部で分割され、かつその分割部位で相互に係合し合い結合する。
図12および図13に示すようにエンジンケース左側半体100Bにおいて、オイルポンプ軸108のまわりにスカベンジングポンプ室115aが形成される。このスカベンジングポンプ室115aは、エンジンケース左側半体100Bに形成された吸入通路117および吐出通路118と連通する。吸入通路117は、エンジンケース左側半体100Bの底部に形成されたE/G側オイル受部119と連通し、一方、吐出通路118は、エンジンケース左側半体100Bの外側面において吐出口118aとして開口する。この吐出口118aには、前述したオイルタンク36に接続されるオイルホース46が接続する(図5参照)。
エンジンケース左側半体100Bにおいてまた、スカベンジングポンプ室115aの左側(外側)に隣接して、オイルポンプ軸108のまわりにT/Mオイルポンプ室116aが形成される。このT/Mオイルポンプ室116aは、エンジンケース左側半体100Bに形成された吸入通路120および吐出通路121と連通する。吸入通路120は、エンジンケース左側半体100Bの底部に形成されたT/M側オイル受部122と連通し、一方、吐出通路121は、カウンタ軸103の左側端部(の軸受部)123と連通する。なお、カウンタ軸103の左側端部123には図13(b)のように、クラッチレリーズ室124が連通している。
さらに、図14に示されるようにエンジンケース14Aの底部においてE/G側オイル受部119とT/M側オイル受部122が車両前後方向に沿って前後に並設される。この場合、両者の間に隔壁125が設けられ、これによりE/G側オイル受部119およびT/M側オイル受部122間の連通が規制される。
上記のように本発明に係るオイル潤滑系では、E/Gオイルポンプ107はエンジンにのみオイルを送油する構成を採っているため、E/Gオイルポンプ107、スカベンジングポンプ115とは別にカウンタ軸103やドライブ軸104等(他にリバースアイドラギヤ軸106、変速操作装置を構成するシフトドラム105)のミッション軸にオイルを送るT/Mオイルポンプ116を備えている。このT/Mオイルポンプ116は、エンジンケース左側半体100Bの内側部に配置されたスカベンジングポンプ115の左側(外側部)に隣接して配置される。すなわち、このようにクランク軸101と平行に配設されるオイルポンプ軸108にE/Gオイルポンプ107、スカベンジングポンプ115およびT/Mオイルポンプ116の3つオイルポンプがエンジンケース14Aの右側から順に配設される。
なお、従来のように1つのフィードポンプではなく、E/Gオイルポンプ107とT/Mオイルポンプ116との2つのオイルポンプを備える理由は、エンジンを潤滑した後のオイルをミッションに供給することでカーボン等が各ギヤに付着してギヤの噛合い抵抗が増大するのを回避するためである。また、クラッチ(図示せず)にカーボン等が供給されると、クラッチのドライブプレートとドリブンプレートとの間にカーボンを噛み込む可能性があり、ドライブプレートおよびドリブンプレートの摩擦面が傷む等して早期に磨耗する虞がある。本発明ではエンジン潤滑用のE/Gオイルポンプ107とトランスミッション潤滑用のT/Mオイルポンプ116とをそれぞれ別に設け、さらにエンジンケース14Aの底部に並設されるE/G側オイル受部119とT/M側オイル受部122との連通を規制する隔壁125を設けることにより、トランスミッション潤滑系をエンジン潤滑系から若干分離することができ、燃料の燃焼で生成されるカーボン等の汚れがトランスミッション潤滑用オイルに混入する可能性を低減することができる。
また、エンジン潤滑用オイルとトランスミッション潤滑用オイルとでは要求量が異なり、エンジン潤滑用の方が多量のオイルを必要とする。このため従来のように1つのフィードポンプを使う場合はトランスミッション供給用のオイル通路に絞り用のオイルジェットを配設してトランスミッション供給用オイルの量を減らすべく調整する必要がある。これに対して本発明のようにエンジン潤滑用とトランスミッション潤滑用とにオイルポンプを分離すればオイルジェット等は不必要となる。
さらに、オイルフィルタ114に近接させてE/Gオイルポンプ107を配設し、また、クラッチレリーズ機構に近接させてT/Mオイルポンプ116を配設することができるのでエンジンケース14Aの加工性が良好となる。
ここで、この実施形態のオイル潤滑系における各オイルポンプ107,115,116の作用について説明する。
E/Gオイルポンプ
先ず、オイルタンク36の下面から外部管路であるオイルホース47(中央のホースとその両端に接続される金属製パイプにより構成される)を介して、エンジンケース右側半体100Aの吸入口112aに送られる。つぎに、エンジンケース右側半体100Aに形成された吸入通路112からE/Gオイルポンプ107に送られ、さらに、吐出通路113を通ってエンジンケース右側半体100Aのクランク軸101上方に配設されるオイルフィルタ114に送られる。このオイルフィルタ114で金属粉等が除去されたオイルは、クランク軸受やシリンダヘッド14Cの動弁系等に送られる。そして、エンジン各部を潤滑した後、オイルはオイル戻し通路を経るなどしてクランク室下方(エンジンケース14Aの前側底部)に形成されるE/G側オイル受部119と、ミッション室下方(エンジンケース14Aの後側底部)に形成されるT/M側オイル受部122とに溜まる。
スカベンジングポンプ
E/G側オイル受部119に溜まったオイルは、エンジンケース14Aの前側底部に形成された吸入通路117を介して、エンジンケース左側半体100Bのスカベンジングポンプ115により吸い出される。スカベンジングポンプ115から吐出されるオイルは、エンジンケース左側半体100Bに形成された吐出通路118を経て、外部管路であるオイルホース46(中央のホースとその両端に接続される金属製パイプにより構成される)を介して、エンジンケース14Aの吐出口118aからオイルタンク36の上面へと還流される。
T/Mオイルポンプ
T/M側オイル受部122に溜まったオイルは、エンジンケース14Aの後側底部に形成された吸入通路120を介して、エンジンケース左側半体100BのT/Mオイルポンプ116により吸い出される。T/Mオイルポンプ116から吐出されるオイルは、エンジンケース左側半体100Bに形成された吐出通路121を経て、カウンタ軸103の左側端部123に送られる。その後、カウンタ軸103やドライブ軸104、リバースアイドラギヤ軸106およびシフトドラム軸105を潤滑し、エンジンケース14Aの後側底部のT/M側オイル受部122に溜まる。この場合、基本的にT/M側オイル受部122のオイルはオイルタンク36へ還流されず、専らミッションのみを潤滑する。
上述したように従来1つのフィードポンプであったものをE/Gオイルポンプ107とT/Mオイルポンプ116との2つに分け、エンジン潤滑用のポンプとトランスミッション潤滑用のポンプとを備えたので、燃焼で生成されるカーボン等の汚れがトランスミッション潤滑用オイルに混入することを防止することができる。
また、3つのオイルポンプを同軸(オイルポンプ軸108)上に配置したので、オイルポンプ駆動系部品を集約することができ、エンジンの小型化が可能になり、マスの集中化に寄与する。
さらに、E/Gオイルポンプ107をエンジンケース14Aのクラッチ配設側に配置したので、エンジン潤滑用オイル系統の通路構成が複雑でなくなる。カウンタ軸端(右側端部)に装着されてミッションの一部を構成するクラッチは大型で大径となるが、ミッションとは無関係でエンジンのみを潤滑するためのE/Gオイルポンプ107をクラッチと同じ側のエンジンケース14A側面部に配設したので、クラッチとの干渉を避けて複雑な形状のオイル通路にしなくて済む。
また、エンジン左側にはスタータモータ126(図11(b)参照)やそのアイドルギヤ類が配設されるので、オイルフィルタ114を配設するスペースが僅少である。エンジン右側にはオイルフィルタ配設スペースがあるので、E/Gオイルポンプ107をエンジンケース14A右側(クラッチ配設側)に配置することで、E/Gオイルポンプ107とオイルフィルタ114との間のオイル通路を短縮化することができ、通路構造の複雑化を回避することができる。
さらにまた、T/Mオイルポンプ116をクラッチと反対側のエンジンケース14A側面部(最外側)に配設したので、T/Mオイルポンプ116からカウンタ軸端部(左側端部123)へのオイル通路(T/Mオイルポンプ116の吐出通路121)を、T/Mオイルポンプ室116aとカウンタ軸端部123との間で直線的に設けることができる。
通常、クラッチと反対側のエンジンケースの側面にはクラッチの断接を切り替えるクラッチレリーズ機構(クラッチレリーズ室124)が配設されており、T/Mオイルポンプ116の吐出通路121はエンジンケース14A下部に配置したT/Mオイルポンプ116からカウンタ軸103にかけてのエンジンケース14A下半部に概ね形成される。よって、カウンタ軸103を挟んで、その上下にクラッチレリーズ機構とT/Mオイルポンプ116の吐出通路121とを振り分けて配設することができ、互いに干渉することがない。
そしてまた、T/Mオイルポンプ116の吐出通路121をクラッチレリーズ機構と同軸上に配設したので、クラッチレリーズ収納部(クラッチレリーズ室124)とT/Mオイルポンプ116の吐出通路121とを同一方向からの機械加工により加工することができ、生産性が向上する。
以上、本発明を実施形態とともに説明したが、本発明はこの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
たとえば、エンジン形式についても本実施形態以外のものに対しても有効に適用可能である。
本発明の実施形態に係る不整地走行車両の例を示す側面図である。 本発明の実施形態に係る不整地走行車両の例を示す平面図である。 本発明の実施形態に係る不整地走行車両のフレームまわりを示す平面図である。 本発明の実施形態に係る不整地走行車両のエンジンユニットまわりを示す側面図である。 本発明の実施形態に係る不整地走行車両のエンジン潤滑系統まわりを示す側面図である。 本発明の実施形態に係る不整地走行車両のエンジン冷却系統まわりを示す側面図である。 本発明の実施形態に係る不整地走行車両のエンジン潤滑系統まわりを示す正面図である。 本発明の実施形態に係る不整地走行車両のオイルタンクの構成例を示す図である。 本発明の実施形態に係る不整地走行車両のオイルキャッチタンクの構成例を示す図である。 本発明の実施形態に係る不整地走行車両のリザーバタンクの構成例を示す図である。 本発明の実施形態に係る不整地走行車両のエンジンケース右側半体およびエンジンケース左側半体を示す側面図である。 本発明の実施形態に係る不整地走行車両のオイルポンプの配置構成例を示す図である。 図11(b)のA−A線およびB−B線に沿うそれぞれ断面図である。 本発明の実施形態に係る不整地走行車両のエンジンケース右側半体をエンジン内側から見た側面図である。
符号の説明
10 鞍乗型4輪車、11 前輪、12 後輪、14 エンジンユニット、15 メインフレーム、16 ボディフレーム、17 シートフレーム、18 シート、19 燃料タンク、20 ステアリングハンドル、21 ステアリングシャフト、22 フロントフェンダ、23 リヤフェンダ、24 エアクリーナ、25 インテークパイプ、26 スロットルボディ、29 排気管、30 マフラ、31 ピポッド軸、32 スイングアーム、34 リヤクッションユニット、35 ラジエータ、36 オイルタンク、37 オイルキャッチタンク、38 流入側冷却水配管、39 流出側冷却水配管、40 リザーバタンク、41 クーリングファン、46 回収用オイルホース、47 供給用オイルホース、48 オーバフローホース、49,50 ブリーザホース、51 オイル戻しホース、100A エンジンケース右側半体、100B エンジンケース左側半体、101 クランク軸、102 バランサ軸、103 カウンタ軸、104 ドライブ軸、105 シフトドラム、106 リバースアイドラギヤ軸、107 E/Gオイルポンプ、108 オイルポンプ軸、109 オイルポンプアイドラギヤ軸、110 ドライブギヤ、111 ドリブンギヤ、112,117,120 吸入通路、113,118,121 吐出通路、114 オイルフィルタ、115 スカベンジングポンプ、116 T/Mオイルポンプ、125 隔壁。

Claims (5)

  1. エンジンを車両の中央部に位置させて車体フレームに搭載し、前記車体フレームの前部に前輪を配置する一方、前記車体フレームの後部に後輪を配置する不整地走行車両であって、
    前記前輪を操舵するステアリングシャフトを該前輪と前記エンジンとの間に配置すると共に、前記ステアリングシャフトを前記エンジン側に傾斜させ、
    前記ステアリングシャフトの後方にラジエータを近接配置し、車両側面視でこのラジエータと前記エンジンとの間にオイルタンクとブリーザ装置のオイルキャッチタンクとを配置したことを特徴とする不整地走行車両。
  2. 前記オイルキャッチタンクを前記オイルタンクの上方に配置したことを特徴とする請求項1に記載の不整地走行車両。
  3. 前記オイルタンクを車両幅方向の中央部に配置し、平面視でこのオイルタンクと少なくともその一部が重なるように前記オイルキャッチタンクを配置したことを特徴とする請求項1または2に記載の不整地走行車両。
  4. 前記エンジンの前方に取り付けられると共にその前方に突出する排気管を有し、前記エンジンの車両幅方向の一側方を通って車両後方へ向けて延設するように前記排気管を平面視略U字状に湾曲させ、
    前記排気管の略U字状部とは反対側の車両幅方向の他方側に偏倚して前記オイルキャッチタンクを配置したことを特徴とする請求項3に記載の不整地走行車両。
  5. 前記エンジンのシリンダヘッド上面に上方へ突出するブリーザ出口を形成すると共に、前記オイルキャッチタンク上部の後面に後方へ突出するブリーザ入口を形成し、
    前記ブリーザ出口と前記ブリーザ入口とをブリーザホースを介して接続したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の不整地走行車両。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7946279B2 (en) * 2008-08-08 2011-05-24 Yamaha Hatsudoki Kabushiki Kaisha Straddle type vehicle having breather device

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