JP2007175918A - 化学・生物防護衣用基布 - Google Patents

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Teruyuki Awano
照幸 阿波野
Masanori Ikeda
池田  正紀
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Abstract

【課題】毒性化学薬剤、又は毒性病原微生物から身体を防護するための衣服用素材の提供。
【解決手段】酸強度が有機カルボン酸以上である酸性点を有する高分子膜を有することを特徴とする化学・生物防護衣用基布。
【選択図】なし

Description

本発明は、窒息剤、びらん剤、嘔吐剤、神経剤、催眠剤、血液毒、精神化学剤等の毒性化学薬剤、又は細菌、ウィルス、リケッチャ、真菌、生物毒等の毒性病原微生物から身体を防護する化学・生物防護衣用の基布に関するものである。
前記した毒性化学薬剤、又は毒性病原微生物は、細菌戦、化学戦において化学兵器・生物兵器として用いられる可能性が高く、また特に最近では、テロリズムによる使用の脅威が一段と高まって来ている。
現在、これらの毒性化学薬剤、又は毒性病原微生物から身体を防護する衣服用素材としては、以下の構成による素材が主に用いられている。
はじめに、高分子材料を主材として、外部からの毒性化学薬剤、又は毒性病原微生物を完全に遮断した素材である。例えば、ナイロン布の両面にブチル系ゴムをトッピングし、両面熱加硫して構成された防護衣素材、或いは不織布等の布地に多種多層の高分子材料から成るフィルムをラミネートさせることにより構成した防護衣素材等である。
しかし、これらの素材で製作された化学・生物防護衣は、生体化学上、大きな問題点を有していた。それは、人体からの発汗を外部に吸湿、放湿する機能が極めて低いために、ヒートストレスを生じることである。そのために着用時間、即ち行動時間が極めて短く、時には着用中に倒れてしまうとの事例も報告されている。
次に、これらの課題を解決するために、ドイツのブルーヒャ社で1990年代に開発されたサラトガスーツがある。この素材は、ベースとなる布地に球状活性炭を高密度でコーティングし、球状活性炭による吸着効果を利用したものである。更に同様な機能を利用したものとして、センテックグループ社で開発されたポリウレタンフォームに活性炭を染み込ませ、編状の繊維に定着させた素材がある。通常、この素材を用いた防護衣、特に軍事用防護衣は、外側を難燃性、撥水性を有する繊維で覆い、さらに内側を吸湿、放湿性の高い素材の繊維で構成された3重構造から成る。以上のことは、非特許文献1に記載されている。
しかし、この改良された防護衣素材も生体化学上の課題に対して、充分に満足出来る結果を得るものではなかった。即ち、外部から侵入する毒性化学薬剤を吸着し、且つ一定時間その効果を維持させること、更には、毒性病原微生物の大きさより緻密な構造としたフィルター効果により、病原微生物に対する防護性能を高めるには、多くの活性炭量が必要とされる。その結果、防護衣重量が重くなり、機動能力の低下、更には、重量から生じるヒートストレスが負荷されることになった。
現在、これらの従来材料技術の代替となる最先端技術として検討されているのが、高分子材料からなる選択的透過膜である。選択的透過膜において求められる機能は、体内からの発汗作用による水蒸気は吸湿、放湿することにより体外に放出し、外部から侵入する毒性化学薬剤、或いは毒性病原微生物からは身体を防護することにある。即ち、選択的透過膜中に構成された分子配列に伴う分子孔により、分子量の小さい水(水蒸気)は透過し、分子量のより大きい各種の毒性物質は遮断させる機能である。
しかし、高分子膜材料の分子配列に伴う分子孔のサイズに基づく分子篩効果で、水(水蒸気)のみを選択的に通過させ、それ以上の分子量の各種の毒性物質を完全に遮断することは困難であり、これまでその様な機能を有する高分子材料は知られていない。
対テロ・対犯罪のセキュリティシステム 発行所 株式会社 文林堂
本発明は、透湿性に優れ、かつ外部から侵入する毒性化学薬剤、或いは毒性病原微生物を防護できる化学・生物防護衣用基布の提供を目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、外部から侵入する毒性化学薬剤、或いは毒性病原微生物を分解する機能を有する膜材料を使用する新しい概念に基づく化学・生物防護衣用基布が極めて有効であることを見出し本発明に至った。
さらに詳しくは、本発明は、高い透湿性を有し、かつ強酸性点により外部から侵入する毒性化学薬剤、或いは毒性病原微生物の毒性を失活させる機能を有する膜材料を使用する化学・生物防護衣用基布に関するものである。
本発明は、これらの知見に基づき成し得たものである。
即ち、本発明は以下の通りである。
(1)酸強度が有機カルボン酸以上である酸性点を有する高分子膜を有することを特徴とする化学・生物防護衣用基布。
(2)酸性点が超強酸性を示す酸性点であることを特徴とする(1)に記載の化学・生物防護衣用基布。
(3)酸性点がフッ素置換有機スルホン酸構造であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の化学・生物防護衣用基布。
(4)該酸性点を有する高分子膜が、フルオロカーボン鎖を主鎖骨格とするフッ素化スルホン酸ポリマー膜であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1つに記載の化学・生物防護衣用基布。
(5)該フルオロカーボン鎖を主鎖骨格とするフッ素化スルホン酸ポリマーが、フルオロカーボン鎖を主鎖骨格とし、側鎖にエーテル基を介してスルホン酸基を有するフッ素化スルホン酸ポリマーであることを特徴とする(4)に記載の化学・生物防護衣用基布。
(6)該酸性点を有する高分子膜と粒状および/または繊維状活性炭素の層との複合構造から成る防護層により実質的に構成されていることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1つに記載の化学・生物防護衣用基布。
本発明の化学・生物防護衣用基布は、透湿性に優れ、かつ外部から侵入する毒性化学薬剤、或いは毒性病原微生物の高レベルの防護を可能にした新概念の化学・生物防護衣用基布である。
本発明の化学・生物防護衣用基布の優れた効果の発現機構については詳しく解明されているわけではないが、下記にその効果と推定作用機構を併せて紹介する。
1)高分子膜中の酸性点の作用により、あるいは該高分子膜中の酸性点を触媒とした酸性点近傍に吸蔵されている水との加水分解反応により、毒性化学薬剤あるいは毒性病原微生物を化学的に分解あるいは変性させて毒性を失活させる。
1−1)本発明の高分子膜は、下記の理由で、特に効果的に毒性薬剤を失活させることが出来る。すなわち、ホスゲンやサリンを代表とする各種の毒性化学薬剤は、大部分が不安定な極性構造をしている。したがって、これらの毒性化学薬剤は、本発明の高分子膜中において酸性点の触媒作用による変性や、当該酸性触媒近傍に吸蔵されている水との反応により加水分解を受けやすい。このような変性や加水分解により、毒性化学薬剤の毒性は劇的に低減される。
1−2)均一膜構造の該酸性点含有高分子膜の場合には、毒性病原微生物の透過抑制効果
と酸性点の作用による毒性病原微生物の変性・失活効果が同時に発現するので毒性病原微生物に対しても高い防護性能を有する。
2)該高分子膜中における高極性の酸性点の作用により、該高分子膜は水蒸気に対して高い溶解性と拡散性を有し、その結果として高い透湿性を示す。
3)該酸性点含有高分子膜と粒状および/または繊維状活性炭素の層との複合構造により、より高い防護性能を有する。
4)該酸性点含有高分子膜と粒状および/または繊維状活性炭素の層との複合構造から、重量当たりの防護性能を向上させることで防護衣の軽量化が図れ、その結果、重量に伴うヒートストレスが軽減される。
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明における化学薬剤とは、前記したように窒息剤、びらん剤、嘔吐剤、神経剤、催眠剤、血液毒、精神化学剤等を意味し、より具体的にはホスゲン、イペリット、ルイサイト、アダムサイト、ジフェニルクロルアルシン、タブン、サリン、ソマン、クロルアセトフェノン、プロムペンジルシアニド、クロロペンジルマロノニトリル、青酸、塩化青酸等の有害化学物質である。また、病原微生物とは、同様、前記したように細菌、ウィルス、リケッチャ、真菌、生物毒等を意味し、より具体的には、野兎病菌、炭そ菌、ペスト菌、ポツリヌス菌毒素等である。
以下に、本発明の化学・生物防護衣用基布について、更にその詳細を説明する。
本発明の化学・生物防護衣用基布は、酸強度が有機カルボン酸以上である酸性点を有する高分子膜を有することを特徴とする。
本発明における、「酸強度が有機カルボン酸以上である酸性点を有する高分子膜」としては、様々な酸性点含有高分子膜が使用可能である。
該高分子膜中の酸性点は、高分子化合物に化学的に結合した酸性点でも良いし、高分子化合物中に混合された酸性物質であっても良い。ただし、性能の安定性や操作性が良好であるという点では、高分子化合物に化学的に結合(例えば共有結合あるいはイオン結合)した酸性点である方が好ましい。
該高分子膜中の酸性点の種類としては、十分な透湿速度あるいは毒性化学物質や毒性病原微生物に対する十分な失活効果を発現させるためには、好ましくは出来るだけ酸強度が強い酸が好ましい。したがって、該高分子膜中の酸としては、例えば、水溶液中で25℃での酸解離指数pKaが好ましくは4.8以下、より好ましくは3.0以下、特に好ましくは1.0以下の酸が使用される。なお、各種の酸の酸解離指数pKaの定義とその値については、例えば、化学便覧(改訂3版)(丸善株式会社)、基礎編II、pII-337〜pII-342に記載されている。
当該酸性点の構造の例としては、例えば、有機カルボン酸(脂肪族系、芳香族系、ハロゲン(特にフッ素)置換体系)、有機リン酸(脂肪族系、芳香族系、ハロゲン(特にフッ素)置換体系)、あるいは有機スルホン酸(脂肪族系、芳香族系、ハロゲン(特にフッ素)置換体系)等が挙げられる。なお、高分子化合物中に混合された酸性物質としては、上記の有機酸以外に各種の無機酸を使用しても良い。
該高分子膜中の酸性点の量としては、酸性点の量をイオン交換容量で表すと、そのイオン交換容量の範囲は、好ましくは、100〜2,000(g/当量)、より好ましくは300〜1,600(g/当量)、更に好ましくは400〜1,400(g/当量)、特に好ましくは600〜1,200(g/当量)の範囲である。ここで、イオン交換容量とは、酸性点1当量当たりの高分子の重量(g)を表す。イオン交換容量が高すぎると、十分な透湿速度が得られない、あるいは毒性化学物質や毒性病原微生物の失活効果が不十分にな
る。一方、イオン交換容量が低すぎると、該高分子膜の機械的物性が不十分になる。
該高分子膜中の酸性点の種類としては有機カルボン酸以上の酸性を示す各種の酸が使用可能であるが、上記のように出来るだけ酸強度が強い酸が好ましい。より具体的には、該酸性点を含有する高分子膜の製造や操作性が容易で、かつ酸強度も強い酸の種類としては、有機カルボン酸以上の酸強度の酸、例えば、フッ素置換有機カルボン酸以上の酸強度の酸、有機リン酸以上又はフッ素置換有機リン酸以上の酸強度の酸、有機スルホン酸以上又はフッ素置換有機スルホン酸以上の酸強度の酸、あるいは超強酸性を示す酸が好適に使用される。
本発明に使用される酸としては、これらの酸の中でも、超強酸性を示す酸は酸強度が強いので特に好ましい。なお、超強酸性を示す酸とは、100%硫酸よりも強い酸強度を示す酸の総称である。超強酸性を示す酸の例としては、例えばフッ素置換有機スルホン酸構造やフッ素置換有機スルホンイミド構造を含む低分子又は高分子材料が挙げられる。
フッ素置換有機スルホン酸構造の具体例としては以下の構造が挙げられるが、
a)―O(CF2)mSO3Hあるいは―(CF2)mSO3H
ここで、m=1〜8が好ましく、m=2〜4がより好ましく、m=2
又は4が特に好ましい。
b)―OCF2CF(CF3)O−(CF2)mSO3H
ここで、mはa)と同じ。
フッ素置換有機スルホンイミド構造の具体例としては以下の構造が挙げられる。
c)―O(CF2)kSONHSO2Rfあるいは―(CF2)kSONHSO2Rf
ここで、k=1〜8が好ましく、k=2〜4がより好ましく、k=2
又は4が特に好ましい。Rfは、炭素数が1〜6の一価のフッ素置換炭
化水素基を表し、その例としては例えば-CF3、ーCF2CF3、ー
d)−OCF2CF(CF3)O―(CF2)kSONHSO2Rf
ここで、kとRfはc)と同じ。
これらの各種の超強酸の中でも、特にフッ素置換有機スルホン酸構造が製造及び操作性も良好なので特に好ましい。
本発明に使用されるフッ素置換有機スルホン酸構造を有する高分子膜としては、様々な形態と構造を有する高分子膜が挙げられるが、フッ素置換有機スルホン酸構造がポリマーに化学的に結合(例えば共有結合あるいはイオン結合)したポリマーの膜が好ましく、フッ素置換有機スルホン酸構造を側鎖に有するポリマーの膜が製造が容易でかつ高い性能を示すので特に好ましい。
本発明に使用されるフッ素置換有機スルホン酸構造がポリマーに化学的に結合したポリマーの膜としては様々な構造の膜が採用可能であるが、その中でもフルオロカーボン鎖を主鎖骨格とするフッ素化スルホン酸ポリマー膜が製造が容易で好ましい。また更に、該フルオロカーボン鎖を主鎖骨格とするフッ素化スルホン酸ポリマー膜の中でも、フルオロカーボン鎖を主鎖骨格とし、側鎖にエーテル基を介してスルホン酸基を有するフッ素化スルホン酸ポリマー膜が製造が容易でかつ特性にも優れているので特に好ましい。
以下に本発明の高分子膜の材料に適したフルオロカーボン鎖を主鎖骨格としたフッ素化スルホン酸ポリマーについて更に詳しく説明する。
当該ポリマーとしては、各種の構造のポリマーが採用できるが、合成が容易で操作性と特性に優れたポリマー構造としては、例えば下記の一般式[1]の繰り返し単位のポリマーが挙げられる。
Figure 2007175918
ここで、pは0又は1〜4の整数を表し、好ましくはpは0または1である。また、qは1〜10の整数を表し、qは好ましくは2〜8の整数であり、より好ましくは2〜6の整数であり、特に好ましくは2〜4の整数である。
本発明の高分子膜用のポリマー材料において、上記一般式[1]の繰り返し単位と組み合わせて使用される繰り返し単位としては多様な構造が採用可能であり、例えば、炭化水素オレフィン系モノマー単位、ハロゲン置換オレフィン系モノマー単位(例えば、−CFCF−,―CF(CF)CF−、−CFClCF−、―CFCH−等)、あるいは、各種の極性基含有オレフィン系モノマー単位(例えば、エーテル基、エステル基、アミド基、カルボニル基、ニトリル基、カルボキシル基、スルホン酸基、水酸基等の極性基含有構造)等が使用される。これらのモノマー単位の中でも、特に−CFCF−や −CFCH−等のフッ素原子置換オレフィン系モノマー単位が、共重合体の合成が容易でかつ優れた特性の共重合体を与えるので特に好ましい。
本発明の高分子膜用のポリマーとして特に好ましい構造のポリマーの例としては、フルオロカーボン鎖を主鎖骨格とし、側鎖にエーテル基を介してスルホン酸基を有するフッ素化スルホン酸ポリマー膜が挙げられる。その中でも、特に下記の一般式[2] で表される共重合体が安定性に優れているので好ましい。
Figure 2007175918

ここで、p’とq’は、それぞれ上記一般式[1]のpとqと同じである。なお、xとyは共重合体中のそれぞれの繰り返し単位数を表す。
上記一般式[2]において、p’が1でq’が2であるポリマーは、いわゆるNafion(R)(米国Du Pont社)の商品名で、様々な領域でフッ素系電解質ポリマーとして使用されている。また、類似構造のフッ素系電解質ポリマーがAciplex(R)(旭化成株式会社)、あるいはFlemion(R)(旭硝子株式会社)の商品名で幅広く使用されている。
上記のNafion(R)(米国Du Pont社)で代表される各種のフッ素化スルホン酸ポリマーは、フッ素原子の高い電子吸引効果により極めて高い酸性度を示す。また、当該フッ素化スルホン酸ポリマーは極めて高い親水性と高い透湿性を示すことも知られている。
本発明の高分子膜の原料として使用される各種のフッ素化スルホン酸ポリマー(例えば、フルオロカーボン鎖を主鎖骨格とするフッ素化スルホン酸ポリマー、あるいは上記一般
式[2]で表されるフッ素化スルホン酸ポリマー等)中の酸性点の量としては、酸性点の量をイオン交換容量で表すと、そのイオン交換容量の範囲は、好ましくは300〜1,600(g/当量)、より好ましくは400〜1,400(g/当量)、特に好ましくは600〜1,200(g/当量)の範囲である。
本発明の酸性点を有する高分子膜は、多孔質構造であっても良いし、均一非多孔質膜構造であっても良いが、外部からの毒性化学薬剤及び毒性病原微生物の捕捉及び変性・失活をより確実に実現するためには均一非多孔質膜構造が好ましい。
本発明の酸性点を有する高分子膜の膜厚は、該高分子膜の透湿性、毒性化学薬剤及び毒性病原微生物の変性活性、あるいはその機械的強度等を考慮して選択されるが、操作性と性能面からは、好ましくは1〜200μmの範囲の膜厚が、より好ましくは10〜150
μmの範囲の膜厚が、特に好ましくは20μm〜100μmの範囲の膜厚が採用される。
上記のように、本発明における酸性点を含有する高分子膜により、実質的には外部からの毒性化学薬剤及び毒性病原微生物を防護できる。しかしながら、酸性点を含有する高分子膜の作用により有害性が低減された物質であっても、高分子膜中において変性した物質が高分子膜を通過して直接身体へ接触することは好ましくない。本発明においては、そのような変性物質の身体への接触の可能性を無くすためと、外部からの毒性化学薬剤及び毒性病原微生物の捕捉をより確実にするために、該高分子膜の効果と粒状および/または繊維状活性炭素の層による吸着効果を複合化させることが好ましい。
即ち、本発明の高分子膜を使用した化学・生物防護衣用基布の好ましい使用形態としては、化学・生物防護衣用基布が本発明の酸性点を有する高分子膜と粒状および/または繊維状活性炭素の層との複合構造から成る防護層により実質的に構成されていることが好ましい。
このような複合構造の採用により、毒性化学薬剤及び毒性病原微生物に対するより高い防護性能が発現する。さらに、当該複合構造により、重量当たりの防護性能を向上させることで従来の防護衣と比べて軽量化が図れ、その結果、重量に伴うヒートストレスが軽減される。
本発明において用いられる粒状および/または繊維状活性炭素の層は、基本的には、現状、化学・生物防護衣用として用いられている素材の組み合わせで構わない。但し、前記したとおり、外部からの毒性化学薬剤及び毒性病原微生物は、実質的には酸性点を含有する高分子膜により防護されるため、粒状および/または繊維状活性炭素の使用量は極めて低くて構わない。
上記の酸性点を有する高分子膜と粒状および/または繊維状活性炭素の層との複合から成る防護層の外側は、好ましくは撥水、撥油処理がされた難燃性、或いは不燃性を有する繊維で覆われている。また、内側は、好ましくは吸湿性、放湿性の高い繊維で構成されている。通常、上記の撥水、撥油処理には、パーフルオロアルキル基を含有したパーフルオロアルキルアクリレート共重合体が用いられ、また、難燃性、或いは不燃性繊維としては、難燃化処理された難燃化ビニロンと綿との混紡繊維、或いはアラミド繊維、カーボン繊維、フェノール繊維等が用いられる。
以下に、本発明の高分子膜の1)透湿性に関する推定発現機構、および、2)毒性化学薬剤及び毒性病原微生物に対する推定作用機構を説明する。
1)透湿性に関する推定発現機構
本発明の高分子膜は、該高分子膜中における高極性の酸性点の作用により水蒸気に対して高い溶解性と拡散性を有し、その結果として高い透湿性を示す。
特に、高分子膜が、フルオロカーボン鎖を主鎖骨格とし、側鎖にエーテル基を介してスルホン酸基を有するフッ素化スルホン酸ポリマー膜の場合には、以下の作用機構で特に高い
透湿性が発現する。すなわち、当該フッ素化スルホン酸ポリマーは、疎水性である主鎖のフルオロカーボン鎖と高親水性のスルホン酸基を有する側鎖から成り、高親水性のスルホン酸基部は直径数ナノメートルのクラスター構造を形成していることが知られている。なお、このクラスターが連結して水分の通過チャンネルを形成しているので高い透湿性を発現するものと考えられる。したがって、この化学構造を有する高分子薄膜は、身体から発汗する水蒸気に対して高い吸水性を示し、且つ薄膜内おける水蒸気の拡散速度が大きいので放湿性を高め、身体のヒートストレスを低減させることができる。
2)毒性化学薬剤及び毒性病原微生物に対する推定作用機構
(1)高分子膜中の酸性点の作用により、あるいは該高分子膜中の酸性点を触媒とした酸性点近傍に吸着されている水との加水分解反応により、毒性化学物質あるいは毒性病原微生物を化学的に分解あるいは変性させて毒性を失活させる。この作用機構は、サリンのような加水分解しやすい官能基を有する毒性化学薬剤に対して特に有効である。
具体例を挙げると、外部から侵入した化学薬剤、例えば下記の式に示す化学構造を有するサリンがフッ素化スルホン酸ポリマーの膜を通過しようとした場合には、サリンは超強酸性を示すスルホン酸基を触媒として、スルホン酸基部のクラスター構造に貯蔵されている水分と反応して加水分解される。この際、サリンは加水分解により無害化され、加水分解生成物は高極性なので揮発性の低い物質として膜内で捕捉される。
Figure 2007175918
(2)毒性病原微生物、例えば、細菌類は数μmの大きさを有しており、それ以下のリケッチャ、或いはウィルスは1/10〜1/100μmの大きさである。一方、本発明における酸性点を含有する高分子膜が、物理的な孔を有さない無孔膜である場合には、本発明の高分子膜は、外部からの毒性病原微生物の通過抑制が可能である。したがって、均一膜構造の酸性点含有高分子膜の場合には、毒性病原微生物の透過抑制効果と酸性点の作用による毒性病原微生物の変性・失活効果が同時に発現するので毒性病原微生物に対する極めて高い防護性能を示す。
本発明を実施例に基づいて説明する。
[実施例1]
パーフルオロアルキル基を含有したパーフルオロアルキルアクリレート共重合体で撥水撥油処理された難燃ビニロンと綿からなる混紡布に、上記一般式[2]において、p’が1でq’が2であるポリマー(イオン交換容量:950g/当量)のフィルム(膜厚:50μm)をラミネート加工した。
更に、フェノール繊維を炭化、賦活化処理した繊維状活性炭素から成る目つけ80g/mの織物と前記ラミネート加工布を縫製により複合化させた。
係る方法により作成した化学・生物防護衣用基布を、血液バリア性試験及びウィルスバリア性試験をASTM F 739−85に従った試験を実施した。その結果、いずれの試験においても合格と判断された。
更に、サリンを想定した化学薬剤 Triisopropyl phosphate (iPrO)3P=O(bp224℃)およびDiethyl methylphosphonate Me(EtO)2P=O(bp194℃)を用いてASTM F 739−85に準拠した透過試験を実施した。その結果、10分間保持においても透過による破過は認められなかった。
本発明は、毒性化学薬剤、又は毒性病原微生物から身体を防護するための衣服用素材として有用である。

Claims (6)

  1. 酸強度が有機カルボン酸以上である酸性点を有する高分子膜を有することを特徴とする化学・生物防護衣用基布。
  2. 酸性点が超強酸性を示す酸性点であることを特徴とする請求項1に記載の化学・生物防護衣用基布。
  3. 酸性点がフッ素置換有機スルホン酸構造であることを特徴とする請求項1又は2に記載の化学・生物防護衣用基布。
  4. 該酸性点を有する高分子膜が、フルオロカーボン鎖を主鎖骨格とするフッ素化スルホン酸ポリマー膜であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の化学・生物防護衣用基布。
  5. 該フルオロカーボン鎖を主鎖骨格とするフッ素化スルホン酸ポリマーが、フルオロカーボン鎖を主鎖骨格とし、側鎖にエーテル基を介してスルホン酸基を有するフッ素化スルホン酸ポリマーであることを特徴とする請求項4に記載の化学・生物防護衣用基布。
  6. 該酸性点を有する高分子膜と粒状および/または繊維状活性炭素の層との複合構造から成る防護層により実質的に構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の化学・生物防護衣用基布。
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